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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161166
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146841
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023062053の分割
【原出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(57)【要約】
【課題】操舵アシストの作業性能や利便性を向上させることを目的とする。
【解決手段】
車体(10)へ昇降可能に取付けられた作業装置(100)と、操舵部材(52)を駆動する操舵部材駆動装置(45)と、前記操舵部材駆動装置(45)に前記操舵部材(52)を駆動させ操舵することができる制御装置(200)と、を備え、前記制御装置(200)により、車体(10)の走行軌跡がコの字型になるように操舵し、次の走行経路へ移行するための車体停止状態において、車速の上限を規制しながら後進すると共に、後進後の車体停止は、所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、回制御動作がスタンバイされることを特徴とする作業車両。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)へ昇降可能に取付けられた作業装置(100)と、
操舵部材(52)を駆動する操舵部材駆動装置(45)と、
前記操舵部材駆動装置(45)に前記操舵部材(52)を駆動させ操舵することができる制御装置(200)と、を備え、
前記制御装置(200)により、車体(10)の走行軌跡がコの字型になるように操舵し、
次の走行経路へ移行するための車体停止状態において、車速の上限を規制しながら後進すると共に、
後進後の車体停止は、所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、
旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記コの字型における第1段階旋回と第2段階旋回との間の直進においては、前記操舵部材(52)の位置が直進中央位置へ復帰し、直進制御動作が開始されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業装置(100)が非対地状態場合において、前記車体(10)の旋回アシストを許容し、
車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー(53)のレバー位置が後進側位置となるように前記主変速レバー(53)によるレバー操作を行うと、上限が規制される車速が前記主変速レバー(53)のレバー位置に応じて設定される、バックターンアシスト制御動作が開始され、
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー(210)の検出を利用して得られた車体後進距離(Db)が所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、
後進後の車体停止が自動で行われる場合においては、後進後の車体停止は、搭乗作業者が操作を行わなくても、行われ、旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
車体後進距離OKまたはNG判定が前記車体後進距離(Db)により行われ、前記車体後進距離OKまたは前記NG判定は、モニターなどに表示されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機などのような移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
車体へ昇降可能に取付けられた植付け装置と、ステアリングハンドルを駆動するステアリングモーターと、ステアリングモーターにステアリングハンドルを駆動させ、車体の旋回をアシストする制御装置と、を有する田植え機が、知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-24541号公報
【特許文献2】特開2002-335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された田植え機などのような従来の作業車両は、操舵アシストによる作業性能や利便性が考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、車体の操舵アシストの作業性能や利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、車体(10)へ昇降可能に取付けられた作業装置(100)と、
操舵部材(52)を駆動する操舵部材駆動装置(45)と、
前記操舵部材駆動装置(45)に前記操舵部材(52)を駆動させ操舵することができる制御装置(200)と、を備え、
前記制御装置(200)により、車体(10)の走行軌跡がコの字型になるように操舵し、
次の走行経路へ移行するための車体停止状態において、車速の上限を規制しながら後進すると共に、
後進後の車体停止は、所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする作業車両である。
【0007】
第2の本発明は、前記コの字型における第1段階旋回と第2段階旋回との間の直進においては、前記操舵部材(52)の位置が直進中央位置へ復帰し、直進制御動作が開始されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
第3の本発明は、前記作業装置(100)が非対地状態場合において、前記車体(10)の旋回アシストを許容し、
車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー(53)のレバー位置が後進側位置となるように前記主変速レバー(53)によるレバー操作を行うと、上限が規制される車速が前記主変速レバー(53)のレバー位置に応じて設定される、バックターンアシスト制御動作が開始され、
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー(210)の検出を利用して得られた車体後進距離(Db)が所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、
後進後の車体停止が自動で行われる場合においては、後進後の車体停止は、搭乗作業者が操作を行わなくても、行われ、旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【0009】
第4の本発明は、車体後進距離OKまたはNG判定が前記車体後進距離(Db)により行われ、前記車体後進距離OKまたは前記NG判定は、モニターなどに表示されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明により、正確な作業が可能である。また、車体(10)が停止した場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を許容することが可能である。また、前記車体(10)が停止した以外の場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を禁止することが可能である。
【0011】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、正確な作業が可能である。
【0012】
第3の本発明により、第1または2に記載の本発明の効果に加えて、車体(10)が停止した場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を許容することが可能である。
また、前記車体(10)が停止した以外の場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を禁止することが可能である。
【0013】
第4の本発明により、第3の本発明の効果に加えて、利便性をさらに向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における実施の形態の田植え機の斜視図
図2】本発明における実施の形態の田植え機の動力伝達系のブロック図
図3】本発明における実施の形態の田植え機の制御系のブロック図
図4】本発明における実施の形態の田植え機のバックターンの説明図
図5】本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストレバー近傍の部分斜視図
図6】本発明における実施の形態の田植え機のアシストモードスイッチ近傍の部分斜視図
図7】(a)本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ近傍の部分正面図、(b)本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ近傍の部分左側面図
図8】本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナステー近傍の部分斜視図
図9】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その一)
図10】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その二)
図11】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その三)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態の田植え機は、本発明における移植機の例である。
【0017】
植付け装置100は本発明における作業装置の例であり、ステアリングハンドル52は本発明における操舵部材の例であり、ステアリングモーター45は本発明における操舵部材駆動装置の例である。
【0018】
はじめに、図1および2を参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
【0019】
ここに、図1は本発明における実施の形態の田植え機の斜視図であり、図2は本発明における実施の形態の田植え機の動力伝達系のブロック図である。
【0020】
本実施の形態の田植え機の動作について説明しながら、本発明に関連した発明の旋回アシスト方法についても説明する。
【0021】
本実施の形態の田植え機は8条植えの乗用マット苗田植え機であり、植付け装置100は4個の植付けユニットを有し、各々の植付けユニットは左右一対の2個の植付け具を有する。
【0022】
もちろん、田植え機は、8条植えの乗用マット苗田植え機に限らず、たとえば、10条植えの乗用ポット苗田植え機であってもよい。
【0023】
最初に説明されるのは、本実施の形態の田植え機の基本的な構成および動作である。したがって、制御装置200の動作などについては、後に詳細に説明する。
【0024】
運転ユニット50は、エンジンカバーの上方に設けられた座席51を有する。
【0025】
座席51の前方には、前輪31を操作するためのステアリングハンドル52が設けられている。そして、エンジンカバーの左右両側には、水平なステップフロアが設けられている。さらに、ステアリングハンドル52の左右両側には、予備苗載せ台101が設けられている。
【0026】
走行装置30は、前輪31および後輪32で車体10を走行させる装置である。
【0027】
整地装置60は、整地ローター機構61および整地フロート機構62で圃場を整地する装置である。
【0028】
線引きマーカー80は、つぎの植付け走行経路の目安となる直線のマーキングを圃場へ形成する、車体10へ収納可能に取付けられたマーカーである。
【0029】
植付け装置100は、植付け装置昇降装置90を介して車体10の後側へ取付けられている。
【0030】
メインフレームへ取付けられたエンジン20の回転動力は、HST(Hydro Static Transmission)機構である主変速機構41などへ伝達される。主変速機構41および副変速機構42において変速された回転動力は、走行装置30などにおいて利用される走行動力と、植付け装置100などにおいて利用される外部取出動力と、に分離される。
【0031】
走行動力の一部は左右の前輪ファイナルケースへ伝達されて左右一対の前輪31を駆動し、走行動力の残りが左右の後輪ギヤケース43へ伝達されて左右一対の後輪32を駆動する。そして、後輪ギヤケース43へ伝達された走行動力の一部は、整地装置60および施肥装置70へ伝達される。
【0032】
つぎに、図3および4を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0033】
ここに、図3は本発明における実施の形態の田植え機の制御系のブロック図であり、図4は本発明における実施の形態の田植え機のバックターンの説明図である。
【0034】
制御装置200は、主変速レバー53、副変速レバー54または直進アシストレバー55によるレバー操作、およびアシストモードスイッチ56によるスイッチ操作のみならず、後輪回転数センサー210または植付け装置昇降センサー220による検出結果なども利用してさまざまな制御を行う装置である。
【0035】
測位システム300は、たとえば、典型的なGNSS(Global Navigation Satellite System)であるGPS(Global Positioning System)を利用する、DGPS(Differential Global Positioning System)技術により測位を行うシステムである。
【0036】
たとえば、地点P0から地点P1に至る直進のための直進制御プログラムは測位システム300の直進制御ECU(Electronic Control Unit)に格納されるが、畦ぎわFなどにおけるUターンおよびバックターンのための旋回制御プログラムはボンネット内の旋回制御ECUに格納される。
【0037】
地点P1から地点P2、P3およびP4を経て地点P5に至るバックターンの最終段階におけるつぎの植付け走行経路への走行経路合わせが直進制御プログラムを利用して行われるように、旋回制御から直進制御への移行は地点P4と地点P5との間で行われる。ステアリングモーター45への制御出力については、旋回制御ECU側の制御信号が直進制御ECU側から出力される。
【0038】
図5に示されているように、直進アシストは直進アシストレバー55による矢印Xuの向きのフィンガーアップレバー操作により開始される。
【0039】
ここに、図5は、本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストレバー55近傍の部分斜視図である。
【0040】
直進アシストのための開始基準点であるA点の取得は直進アシストレバー55による矢印Xdの向きのフィンガーダウンレバー操作により行われ、直進アシストのための終了基準点であるB点の取得は直進アシストレバー55による矢印Xdの向きの続くフィンガーダウンレバー操作により行われる。
【0041】
図9を主として参照しながら、A点取得動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0042】
ここに、図9は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その一)である。
【0043】
(1)車体走行状態または車体停止状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーダウンレバー操作を行うと、A点取得動作が行われる。このとき、動作条件は、直進アシスト条件に準じる。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプはオフされ、直進ランプはオフされ、Uターンランプはオフされ、バックターンランプはオンされ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、A点取得信号出力が行われる。
【0044】
図9を主として参照しながら、B点取得動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0045】
(2)車体走行状態または車体停止状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーダウンレバー操作を行うと、B点取得動作が行われる。このとき、動作条件は直進アシスト条件に準じるが、左右両方の線引きマーカー80の振出しを含まない、オートマーカー動作が行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオフされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、B点取得信号出力のみならず、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力も行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、基準線取得動作が行われ、目標線生成動作が作業幅および目標線選択信号出力に応じて行われる。
【0046】
図9を主として参照しながら、スタンバイ動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0047】
(3)車体前進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、直進制御動作が開始され、旋回制御動作がスタンバイされる。このとき、直進アシスト条件が満足されなければならず、植付け装置100が下降されている、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、自動ステアリング信号出力のみならず、中央の目標線選択信号出力も行われ、ステアリングモーター45の回転速度設定動作が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線へ向かって走行するためのステアリングモーター45の出力制御動作が行われる。
【0048】
(4)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、目標線方向出力動作が行われる。このとき、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が行われていなければならず、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線決定動作が指示方向に応じて行われる。
【0049】
(5)車体前進状態において、搭乗作業者が畦ぎわ警報解除スイッチの押下げ操作を行うと、畦ぎわ停止制御動作が解除され、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が停止される。このとき、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が行われていなければならず、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。
【0050】
図6に示されているように、アシストモードスイッチ56が追加されているので、直進アシストモードのみならずUターンアシストモードおよびバックターンアシストモードも選択可能であり、利便性に優れた旋回パターン切換えが実現される。
【0051】
ここに、図6は、本発明における実施の形態の田植え機のアシストモードスイッチ56近傍の部分斜視図である。
【0052】
制御装置200は、ステアリングハンドル52を駆動するステアリングモーター45にステアリングハンドル52を駆動させ、車体10の旋回をアシストする。
【0053】
車体10へ昇降可能に取付けられた植付け装置100が上昇されている場合において、車体10の旋回アシストの開始を許容するモードが、設けられている。
【0054】
植付け装置100が上昇されている場合において旋回アシストの開始を許容するこのようなモードは、後に詳細に説明される、バックターンアシストに利用される。
【0055】
植付け装置100が上昇されている場合において、車体10の旋回アシストの開始を禁止するモードも、設けられている。
【0056】
植付け装置100が上昇されている場合において旋回アシストの開始を禁止するこのようなモードは、Uターンアシストに利用される。
【0057】
植付け装置100が上昇されている場合とは、植付け装置100が下降され、車体10が前進しながら植付け装置100による作業が行われ、車体10が停止して後進し、植付け装置100が上昇された後に、車体10が停止した場合である。
【0058】
旋回アシスト開始条件が満足されない場合においては、旋回アシストの開始は許容されない。
【0059】
旋回アシスト開始条件とは、車体10が停止して後進し、植付け装置100が上昇された後に、車体10が停止するまでの車体後進距離Dbに関する条件である。
【0060】
旋回アシスト開始条件とは、植付け装置100が下降され、車体10が前進しながら植付け装置100による作業が行われ、車体10が停止するまでの車体前進距離Dfに関する条件である。
【0061】
図10を主として参照しながら、バックターンアシストモードが選択されている場合における地点P1から地点P2に至るための後進制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。 ここに、図10は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その二)である。
【0062】
(6)車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が後進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作が開始される。具体的には、植付け動作がオフされ、植付け装置100が上昇され、車体10が後進し、後輪パルスカウント動作による後輪回転数センサー210の検出が行われ、上限が最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、エンジン20が動作していなければならず、A点取得動作およびB点取得動作が完了していなければならず、測位システム300が受信動作などを正常に行っていなければならず、地点P1から地点P2に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が30度未満でなければならず、ステアリングハンドル52のステアリング角度が30度以下でなければならず、車体10の傾斜角度が8度未満でなければならず、副変速レバー54のレバー位置が路上走行車速位置と異なる植付け走行車速位置のようなレバー位置でなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチがオンされていなければならず、左右一方のみの線引きマーカー80の振出しが行われる、オートマーカー動作が行われていなければならず、現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下でなければならない。たとえば、このような差分が5メートルを超える場合においては、バックターンアシスト制御動作が解除されてもよい。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは後進終了まで短いブザー音を連続的に出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0063】
後輪回転数センサー210のカウントに関しては、カウント積算条件は、後進が行われているとき、カウントが常時行われるという条件であり、禁止条件はなく、リセット条件は、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチがオンされたとき、および現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下であってバックターンアシスト制御動作が開始されたとき、リセットが行われるという条件である。
【0064】
車体前進距離Dfが植付け装置100の上昇にともなってリセットされないので、現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下であることを植付け装置100が上昇されている場合においても判定することができる。したがって、バックターンアシストモードがアシストモードスイッチ56により選択されている場合において、車体10の旋回アシストの開始が適切に許容されるのみならず、安全性も向上する。
【0065】
車体10が後進していることを検出するための車体後進検出スイッチがオンされているときのみ、バックターンアシスト制御動作が行われることが望ましい。たとえば、車体10が後進していなければ、上述されたブザー音の間欠的な出力は行われないことが望ましい。これは、搭乗作業者が主変速レバー53によるレバー操作を利用して畦ぎわFにおける苗補給のためのバックリフトを行った場合においては、車体10は後進しておらず停止しているので、車体後進検出スイッチはオンされず、無意味なブザー音の出力は行われないからである。
【0066】
直進アシスト中に、後輪回転数センサー210により植付け装置100を下して走行した距離を測定し、前回の走行距離との差が一定距離以内の場合、バックターンアシスト制御が可能となる構成としてもよい。
【0067】
前回の走行距離との差が一定距離以内で主変速レバー53を後進側に入れた場合、バックターンアシスト制御のバック工程モードに移り、そして、主変速レバー53を前進側に入れた場合、バックターンアシスト制御の旋回工程モードに移る構成とする。
【0068】
機体のGNSSアンテナ310に搭載した測位センサー300により機体の方位を取得し、直進アシストの基準線との方位の位相差を0にするようステアリングモーター45を制御しながら後進する構成である。
【0069】
よって、旋回動作に移行する前の機体10位置と向き(方位)を調整しながら後進させることができるため、バックターンアシスト制御の精度を向上させることができる。また、直進アシストの基準線に沿うように後進してもよい。
【0070】
また、バック工程中に車体速度が0の状態が一定時間以上続いた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバックターンアシスト制御を不可とする。
【0071】
また、バック行程中に車体水平センサ(図示省略)によって感知される機体10のローリング角度が所定以上となった場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバック旋回をできなくする構成でもよい。
【0072】
また、機体10が前進を始めてから例えば、0.5秒後にステアリングハンドル52を切る前で、次の植付作業工程の基準線を作成する構成としてもよい。
【0073】
また、旋回工程モード時に車体速度が0の状態が一定時間以上続いた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバックターンアシスト制御を不可とする構成としてもよい。
【0074】
また、旋回工程モード時に車体水平センサ(図示省略)によって感知される機体10のローリング角度が一定以上となった場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としてもよい。
【0075】
また、バック工程モードに入る際、機体10の方位が直進アシストの基準線と一定角度以上離れていた場合、モニター及び音で警告を出し、バック工程モードに入らないようにする構成とてもよい。
【0076】
また、バック工程開始時の機体10と直進アシストの基準線との位相差が、バック工程終了時に変化無し、または増加していた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としてもよい。
【0077】
また、旋回工程モード時にGNSSアンテナ310内のセンサーのピッチ角が所定値以上となった場合は、機体10が畦に乗り上げたと判断し、エンジン20を停止する構成としてもよい。
【0078】
また、バックターンアシスト制御終了後の機体10の位置と旋回後に走行する基準線との差が所定以上の場合、機体10を停車させるまたは、モニター及び音で警告を出し、バックターンアシスト制御が正確に行われなかったことを作業者に伝える構成としてもよい。
【0079】
また、バックターンアシスト制御中に例えば、アシストモードスイッチ56の切替操作が行われると、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としても良い。また、アシストモードスイッチ56以外の何らかの操作が行われてもバックターンアシスト制御を中断してもよい。
【0080】
後輪駆動によるバックターンアシスト制御動作が安定するようにステアリングハンドル52のハンドル位置は直進中央位置へ固定されてもよい。
【0081】
直進アシストが解除された場合においては、ステアリングハンドル52による搭乗作業者のハンドル操作が地点P1に至るために必要となる。したがって、地点P1から地点P2に至るための後進制御動作は、必ずしも正確ではない搭乗作業者のハンドル操作に依存しない、地点P1から地点P2に至る正確な方向を基準として行われることが望ましい。
【0082】
HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が上述された車速の上限の規制のために行われるので、車体停止地点である地点P2がずれにくく、ステアリングが安定し、安全性も向上する。
【0083】
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー210の検出を利用して得られた車体後進距離Dbが1メートルへ到達したことを判定することにより自動で行われてもよいし、主変速レバー53による搭乗作業者のレバー操作を利用して手動で行われてもよい。
【0084】
後者の場合においては、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うこともあるので、車体後進距離OKまたはNG判定が車体後進距離Dbにより行われることが望ましい。車体後進距離Dbが1メートル未満であるまたは3メートル以上であるとき、車体後進距離NG判定が行われ、バックターンアシスト制御動作は解除される。車体後進距離Dbが1メートル以上であり3メートル未満であるとき、車体後進距離OK判定が行われ、バックターンアシスト制御動作は継続される。
【0085】
車体後進距離Dbが小さすぎると、車体10のサイズが大きい場合においては、旋回する車体10が畦ぎわFと接触することがある。
【0086】
車体後進距離Dbが大きすぎると、旋回精度が悪化することがある。すなわち、地点P2から地点P3に至るための第1段階旋回においては、車体10の位置にかかわらずに、主として車体10の方向が変化させられ、地点P4から地点P5に至るための第2段階旋回においては車体10の位置調節によるつぎの植付け走行経路への走行経路合わせが行われるが、車体後進距離Dbが大きすぎると、植付け走行経路間距離のずれが発生しやすい。
【0087】
後輪回転数センサー210の検出を利用して得られた車体後進距離Dbのみならず、車体後進距離OKまたはNG判定が、モニターなどに表示されてもよい。
【0088】
(7)なお、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が中立位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行う、または車体停止ペダル踏込み操作を行うと、車体10は主変速レバー53のレバー位置に応じて停止するが、バックターンアシスト制御動作は停止されない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0089】
(8)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル操作待ちのステアリング信号出力が行われ、トルクがオフされるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0090】
(9)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0091】
(10)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。このとき、動作条件は、自動旋回中断条件に応じる。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプはオンオフされ、バックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0092】
(11)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者がステアリングハンドル52によるハンドル操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止されてもよい。
【0093】
(12)車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、後進が停止されて車体停止が行われ、旋回制御動作がスタンバイされる。このとき、後輪回転数センサー210の検出値は、第1所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプはオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線決定動作が指示方向に応じて行われる。
【0094】
図11を主として参照しながら、バックターンアシストモードが選択されている場合における地点P2から地点P3およびP4を経て地点P5に至るための旋回制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0095】
ここに、図11は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その三)である。
【0096】
(13)車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、上限が最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、ステアリングモーター45の出力制御動作が行われてステアリングハンドル52が指示方向に応じて回動される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100は上昇されていなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは旋回終了まで短いブザー音を連続的に出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、旋回のステアリング信号出力が行われ、目標線方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0097】
後進後の車体停止が主変速レバー53による搭乗作業者のレバー操作を利用して手動で行われる場合においては、上述された車体後進距離OK判定が行われ、バックターンアシスト制御動作が継続されるとき、現植付け走行経路の線引きマーカー80の振出し方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0098】
HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が上述された車速の上限の規制のために行われるので、ステアリングモーター45の応答速度上限が170度/秒であっても、ステアリングハンドル52が回動されているときの旋回半径が車体走行距離の増大にともなって大きくなりにくく、ステアリングが安定し、安全性も向上する。
【0099】
(14)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングモーター45の回転は停止されてステアリング角度は保持される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーとして利用されるトランスミッション部ステアリング角度センサーの検出値は設定角度値でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0100】
ステアリングが旋回初期車速の抑制により安定するように、ステアリング角度が目標ステアリング角度に近付くにつれて、上述された主変速機構41のトラニオン開度の上限は大きくされてもよい。
【0101】
旋回精度に影響する旋回開始地点がばらつきにくいように、車体10は、たとえば、地点P1から車体後進距離Dbが1メートルである旋回開始地点への到達までは、直進させられてもよい。旋回開始地点への到達が後輪回転数センサー210による車体前進距離および車体後進距離の検出を利用することにより判定され、ステアリング角度が直進のために固定されてもよいし、旋回開始地点への到達が植付け装置100の上昇時点からの測位システム300によるDGPSデータ受信を利用することにより判定され、地点P0から地点P1に至る方向である基準線方向に沿った直進ステアリングが行われてもよい。前者の場合においては制御が直進制御ECUの利用により簡素化され、後者の場合においては精度が旋回制御ECUの利用により向上する。
【0102】
(15)なお、車体前進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が中立位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行う、または車体停止ペダル踏込み操作を行うと、車体10は主変速レバー53のレバー位置に応じて停止するが、バックターンアシスト制御動作は停止されない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0103】
(16)また、車体前進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル操作待ちのステアリング信号出力が行われ、トルクがオフされるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0104】
(17)また、車体前進状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が後進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0105】
(18)また、車体前進状態において、搭乗作業者が植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。このとき、動作条件は、自動旋回中断条件に応じる。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプはオンオフされ、バックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0106】
(19)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、旋回内側の後輪32の後輪回転数センサー210の検出値は第2所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
第1段階旋回の終了点である地点P3への到達は、後輪回転数センサー210の検出値を利用しないで、地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が70度以上であることを判定することにより行われる。したがって、圃場における車輪スリップの影響を無視することができる。
【0107】
いわゆるコの字旋回における第1段階旋回と第2段階旋回との間の一時的直進においては、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰され、ステアリング角度が固定される一時的直進制御動作が開始される。
【0108】
地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が0度以上90度未満である場合においては、ステアリングハンドル52が、小さすぎた第1段階旋回に応じて、一時的直進制御動作においても旋回方向角度と同じ一定角度で回動されてもよい。地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が90度以上である場合においては、ステアリングハンドル52が、大きすぎた第1段階旋回に応じて、一時的直進制御動作においても旋回方向角度と逆の一定角度で回動されてもよい。地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が87(=90-3)度と93(=90+3)度との間である場合においては、ステアリング角度は直進状態を維持するために保持されてもよい。
【0109】
一時的直進の終了点である地点P4への到達は、後輪回転数センサー210の検出値を利用して行われる。たとえば、地点P4への到達は、一時的直進制御動作が開始された後に、旋回内側の後輪32の後輪回転数センサー210の検出値である後輪パルスカウントが30へ到達したことを判定することにより行われる。
【0110】
バックターンアシスト制御動作が開始されるとき、地点P0から地点P1に至る方向の基準線と垂直である、地点P3から地点P4に至る方向の直線が旋回目標線として設定されてもよい。植付け装置100が上昇された地点である地点P1と旋回目標線との間の距離Δは、植付け条間距離と田植え機植付け条数の半分の4(=8/2)との積とほぼ一致する距離である。したがって、圃場内の旋回目標線と畦ぎわFとの間の距離は十分に大きいので、旋回する車体10が畦ぎわFと接触しない。後進後の車体前進が緯度および経度を利用して正確に設定されるこのような旋回目標線へ向かって行われるので、コの字旋回の精度が向上する。
【0111】
地点P4が、地点P3から地点P4に至る方向の直線である旋回目標線の代わりに、地点P0から地点P1に至る方向の現植付け走行経路の基準線と地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線との間の旋回目標点として設定されてもよい。旋回目標点とつぎの植付け走行経路の基準線との間の距離δは、旋回半径とほぼ一致する距離である。一時的直進が緯度および経度を利用して正確に設定されるこのような旋回目標点への到達にともなって終了するので、コの字旋回の精度が向上する。
【0112】
(20)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーを利用することにより、ステアリングハンドル52が設定角度値に応じて回動される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、後輪回転数センサー210の検出値は第3所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、旋回のステアリング信号出力が行われ、目標線方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0113】
(21)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングモーター45の回転は停止されてステアリング角度は保持される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーの検出値は設定角度値でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0114】
このように、一時的直進が終了すると、ステアリングハンドル52が旋回方向に応じて回動され、第2段階旋回が行われる。
【0115】
(22)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が所定角度値以下でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0116】
このように、たとえば、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が20度未満となると、ステアリングハンドル52のハンドル位置は直進中央位置へ復帰され、第2段階旋回がステアリング直進検出にともない終了する。 図11を主として参照しながら、地点P5から地点P6に至るための直進アシスト制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0117】
(23)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、直進アシスト制御動作への移行が行われる。このとき、ステアリングハンドル52のステアリング角度が120度以下でなければならず、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が3度以下でなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンオフされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、自動ステアリング信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線へ向かって走行するためのステアリングモーター45の出力制御動作が行われる。
【0118】
(24)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される上限が解除された車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、直進アシスト制御動作が行われる。このとき、ステアリングハンドル52のステアリング角度が30度以下であり、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が3度以下である状態が、少なくとも3秒間にわたって継続しなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンオフされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0119】
このように、直進アシスト制御動作が、旋回制御動作の終了にともなって開始される。
【0120】
直進アシスト制御動作は地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線を目標線として設定することにより行われるので、つぎの植付け走行経路への自動走行経路合わせが実現され、植付け走行経路間距離のずれは発生しにくい。
【0121】
地点P0から地点P1に至る方向の現植付け走行経路の基準線と地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線との間の距離が植付け条間距離と田植え機植付け条数の8との積とほぼ一致するように、このような目標線設定は直線平行移動を利用して自動で行われてもよい。
【0122】
バックターンアシスト制御動作についてより具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0123】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、搭乗作業者が車速またはステアリングの自動制御を容易に認識することができるように、短いブザー音の間欠的な出力が連続的に行われてもよい。バックターンアシスト制御動作が何らかの理由で停止された場合においては、搭乗作業者が自動制御中断などを容易に認識することができるように、1回の長いブザー音の出力が行われてもよい。
【0124】
さまざまなバックターンアシスト制御動作中断条件がつぎの通り考えられることは、言うまでもない。
【0125】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、バックターンアシスト制御動作における車体走行向きとは整合しない主変速レバー53によるレバー操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0126】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、アシストモードスイッチ56によるスイッチ操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、Uターンアシストモードが選択されるようにアシストモードスイッチ56によるスイッチ操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0127】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチ操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0128】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、オートマーカー動作をオフするための操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0129】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作またはフィンガーダウンレバー操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0130】
バックターンアシスト制御動作が終了したとき、上述された車速の上限の規制は解除されてもよい。HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が解除され、搭乗作業者が主変速レバー53による車速減少レバー操作を行わなくても車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、目標車速への復帰が自動で行われる。バックターンアシスト制御動作の終了にともなう急激な車速増大が回避されるように、このような目標車速への自動復帰は通常の車速増大レバー操作による応答速度とは異なる応答速度でゆっくりと行われることが望ましい。
【0131】
つぎに、図7(a)および7(b)、ならびに8を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0132】
ここに、図7(a)は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ310近傍の部分正面図であり、図7(b)は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ310近傍の部分左側面図であり、図8は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナステー320近傍の部分斜視図である。
【0133】
GNSSアンテナステー320は、田植え機自動ステアリングシステムを実現するための測位システム300のGNSSアンテナ310が取付けられているステーである。
【0134】
GNSSアンテナ310は座席51の直上には位置しないので、GNSSアンテナ310の高さがあまり大きくなくても、搭乗作業者が座席51から立上ったとき、搭乗作業者の頭などがGNSSアンテナ310にぶつかりにくい。
【0135】
GNSSアンテナ310の高さがあまり大きくなくてもよいので、GNSSアンテナ310が障害物などと干渉しにくいのみならず、車体10の地上高も抑制される。そして、GNSSアンテナステー320を短縮することができるので、GNSSアンテナステー320の剛性も向上する。
【0136】
GNSSアンテナ310は、車体左右方向を基準とした中央に位置するが、ステアリングハンドル52、および座席51に座っている搭乗作業者の頭の上方に設けられている。
したがって、搭乗作業者の視界は、GNSSアンテナ310により遮られにくい。
【0137】
GNSSアンテナステー320の上下方向を基準とした中央部には、GNSSアンテナステー補強プレート321が取付けられている。
【0138】
GNSSアンテナステー補強プレート321の車体左右方向を基準とした中央部には、自動ステアリング状態を表示するためのモニターなどが取付けられていてもよい。
【0139】
ロゴマークのラベルなどをGNSSアンテナステー補強プレート321へ貼付するためのスペースが、確保されていてもよい。
【0140】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の旋回アシスト方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0141】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の旋回アシスト方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0142】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0143】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0144】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0145】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0146】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0147】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明における移植機は、作業装置が上昇されている場合において、車体の旋回アシストの開始を許容することができ、田植え機などのような移植機に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0149】
10 車体
20 エンジン
30 走行装置
31 前輪
32 後輪
41 主変速機構
42 副変速機構
43 後輪ギヤケース
45 ステアリングモーター
50 運転ユニット
51 座席
52 ステアリングハンドル
53 主変速レバー
54 副変速レバー
55 直進アシストレバー
56 アシストモードスイッチ
60 整地装置
61 整地ローター機構
62 整地フロート機構
70 施肥装置
80 線引きマーカー
90 植付け装置昇降装置
100 植付け装置
101 予備苗載せ台
200 制御装置
210 後輪回転数センサー
220 植付け装置昇降センサー
300 測位システム
310 GNSSアンテナ
320 GNSSアンテナステー
321 GNSSアンテナステー補強プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)へ昇降可能に取付けられた作業装置(100)と、
操舵部材(52)を駆動する操舵部材駆動装置(45)と、
前記操舵部材駆動装置(45)に前記操舵部材(52)を駆動させ操舵することができる制御装置(200)と、を備え、
次の走行経路へ移行するための制御動作がスタンバイされ、
前記制御装置(200)により、車体(10)の車速の上限を規制しながら走行軌跡がコの字型になるように操舵ることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記コの字型における第1段階旋回と第2段階旋回との間の直進においては、前記操舵部材(52)の位置が直進中央位置へ復帰し、直進制御動作が開始されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業装置(100)が非対地状態場合において、前記車体(10)の旋回アシストを許容し、
車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー(53)のレバー位置が後進側位置となるように前記主変速レバー(53)によるレバー操作を行うと、上限が規制される車速が前記主変速レバー(53)のレバー位置に応じて設定される、バックターンアシスト制御動作が開始され、
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー(210)の検出を利用して得られた車体後進距離(Db)が所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、
後進後の車体停止が自動で行われる場合においては、後進後の車体停止は、搭乗作業者が操作を行わなくても、行われ、旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
車体後進距離OKまたはNG判定が前記車体後進距離(Db)により行われ、前記車体後進距離OKまたは前記NG判定は、モニターなどに表示されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機などのような移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
車体へ昇降可能に取付けられた植付け装置と、ステアリングハンドルを駆動するステアリングモーターと、ステアリングモーターにステアリングハンドルを駆動させ、車体の旋回をアシストする制御装置と、を有する田植え機が、知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-24541号公報
【特許文献2】特開2002-335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された田植え機などのような従来の作業車両は、操舵アシストによる作業性能や利便性が考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、車体の操舵アシストの作業性能や利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、車体(10)へ昇降可能に取付けられた作業装置(100)と、
操舵部材(52)を駆動する操舵部材駆動装置(45)と、
前記操舵部材駆動装置(45)に前記操舵部材(52)を駆動させ操舵することができる制御装置(200)と、を備え、
次の走行経路へ移行するための制御動作がスタンバイされ、
前記制御装置(200)により、車体(10)の車速の上限を規制しながら走行軌跡がコの字型になるように操舵ることを特徴とする作業車両である。
【0007】
第2の本発明は、前記コの字型における第1段階旋回と第2段階旋回との間の直進においては、前記操舵部材(52)の位置が直進中央位置へ復帰し、直進制御動作が開始されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0008】
第3の本発明は、前記作業装置(100)が非対地状態場合において、前記車体(10)の旋回アシストを許容し、
車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー(53)のレバー位置が後進側位置となるように前記主変速レバー(53)によるレバー操作を行うと、上限が規制される車速が前記主変速レバー(53)のレバー位置に応じて設定される、バックターンアシスト制御動作が開始され、
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー(210)の検出を利用して得られた車体後進距離(Db)が所定の距離へ到達したことを判定することにより自動で行われ、
後進後の車体停止が自動で行われる場合においては、後進後の車体停止は、搭乗作業者が操作を行わなくても、行われ、旋回制御動作がスタンバイされることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【0009】
第4の本発明は、車体後進距離OKまたはNG判定が前記車体後進距離(Db)により行われ、前記車体後進距離OKまたは前記NG判定は、モニターなどに表示されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明により、正確な作業が可能である。
【0011】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、正確な作業が可能である。
【0012】
第3の本発明により、第1または2に記載の本発明の効果に加えて、車体(10)が停止した場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を許容することが可能である。
また、前記車体(10)が停止した以外の場合において、車体(10)の旋回アシストの開始を禁止することが可能である。
【0013】
第4の本発明により、第3の本発明の効果に加えて、利便性をさらに向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における実施の形態の田植え機の斜視図
図2】本発明における実施の形態の田植え機の動力伝達系のブロック図
図3】本発明における実施の形態の田植え機の制御系のブロック図
図4】本発明における実施の形態の田植え機のバックターンの説明図
図5】本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストレバー近傍の部分斜視図
図6】本発明における実施の形態の田植え機のアシストモードスイッチ近傍の部分斜視図
図7】(a)本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ近傍の部分正面図、(b)本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ近傍の部分左側面図
図8】本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナステー近傍の部分斜視図
図9】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その一)
図10】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その二)
図11】本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その三)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態の田植え機は、本発明における移植機の例である。
【0017】
植付け装置100は本発明における作業装置の例であり、ステアリングハンドル52は本発明における操舵部材の例であり、ステアリングモーター45は本発明における操舵部材駆動装置の例である。
【0018】
はじめに、図1および2を参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
【0019】
ここに、図1は本発明における実施の形態の田植え機の斜視図であり、図2は本発明における実施の形態の田植え機の動力伝達系のブロック図である。
【0020】
本実施の形態の田植え機の動作について説明しながら、本発明に関連した発明の旋回アシスト方法についても説明する。
【0021】
本実施の形態の田植え機は8条植えの乗用マット苗田植え機であり、植付け装置100は4個の植付けユニットを有し、各々の植付けユニットは左右一対の2個の植付け具を有する。
【0022】
もちろん、田植え機は、8条植えの乗用マット苗田植え機に限らず、たとえば、10条植えの乗用ポット苗田植え機であってもよい。
【0023】
最初に説明されるのは、本実施の形態の田植え機の基本的な構成および動作である。したがって、制御装置200の動作などについては、後に詳細に説明する。
【0024】
運転ユニット50は、エンジンカバーの上方に設けられた座席51を有する。
【0025】
座席51の前方には、前輪31を操作するためのステアリングハンドル52が設けられている。そして、エンジンカバーの左右両側には、水平なステップフロアが設けられている。さらに、ステアリングハンドル52の左右両側には、予備苗載せ台101が設けられている。
【0026】
走行装置30は、前輪31および後輪32で車体10を走行させる装置である。
【0027】
整地装置60は、整地ローター機構61および整地フロート機構62で圃場を整地する装置である。
【0028】
線引きマーカー80は、つぎの植付け走行経路の目安となる直線のマーキングを圃場へ形成する、車体10へ収納可能に取付けられたマーカーである。
【0029】
植付け装置100は、植付け装置昇降装置90を介して車体10の後側へ取付けられている。
【0030】
メインフレームへ取付けられたエンジン20の回転動力は、HST(Hydro Static Transmission)機構である主変速機構41などへ伝達される。主変速機構41および副変速機構42において変速された回転動力は、走行装置30などにおいて利用される走行動力と、植付け装置100などにおいて利用される外部取出動力と、に分離される。
【0031】
走行動力の一部は左右の前輪ファイナルケースへ伝達されて左右一対の前輪31を駆動し、走行動力の残りが左右の後輪ギヤケース43へ伝達されて左右一対の後輪32を駆動する。そして、後輪ギヤケース43へ伝達された走行動力の一部は、整地装置60および施肥装置70へ伝達される。
【0032】
つぎに、図3および4を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0033】
ここに、図3は本発明における実施の形態の田植え機の制御系のブロック図であり、図4は本発明における実施の形態の田植え機のバックターンの説明図である。
【0034】
制御装置200は、主変速レバー53、副変速レバー54または直進アシストレバー55によるレバー操作、およびアシストモードスイッチ56によるスイッチ操作のみならず、後輪回転数センサー210または植付け装置昇降センサー220による検出結果なども利用してさまざまな制御を行う装置である。
【0035】
測位システム300は、たとえば、典型的なGNSS(Global Navigation Satellite System)であるGPS(Global Positioning System)を利用する、DGPS(Differential Global Positioning System)技術により測位を行うシステムである。
【0036】
たとえば、地点P0から地点P1に至る直進のための直進制御プログラムは測位システム300の直進制御ECU(Electronic Control Unit)に格納されるが、畦ぎわFなどにおけるUターンおよびバックターンのための旋回制御プログラムはボンネット内の旋回制御ECUに格納される。
【0037】
地点P1から地点P2、P3およびP4を経て地点P5に至るバックターンの最終段階におけるつぎの植付け走行経路への走行経路合わせが直進制御プログラムを利用して行われるように、旋回制御から直進制御への移行は地点P4と地点P5との間で行われる。ステアリングモーター45への制御出力については、旋回制御ECU側の制御信号が直進制御ECU側から出力される。
【0038】
図5に示されているように、直進アシストは直進アシストレバー55による矢印Xuの向きのフィンガーアップレバー操作により開始される。
【0039】
ここに、図5は、本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストレバー55近傍の部分斜視図である。
【0040】
直進アシストのための開始基準点であるA点の取得は直進アシストレバー55による矢印Xdの向きのフィンガーダウンレバー操作により行われ、直進アシストのための終了基準点であるB点の取得は直進アシストレバー55による矢印Xdの向きの続くフィンガーダウンレバー操作により行われる。
【0041】
図9を主として参照しながら、A点取得動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0042】
ここに、図9は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その一)である。
【0043】
(1)車体走行状態または車体停止状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーダウンレバー操作を行うと、A点取得動作が行われる。このとき、動作条件は、直進アシスト条件に準じる。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプはオフされ、直進ランプはオフされ、Uターンランプはオフされ、バックターンランプはオンされ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、A点取得信号出力が行われる。
【0044】
図9を主として参照しながら、B点取得動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0045】
(2)車体走行状態または車体停止状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーダウンレバー操作を行うと、B点取得動作が行われる。このとき、動作条件は直進アシスト条件に準じるが、左右両方の線引きマーカー80の振出しを含まない、オートマーカー動作が行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオフされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、B点取得信号出力のみならず、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力も行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、基準線取得動作が行われ、目標線生成動作が作業幅および目標線選択信号出力に応じて行われる。
【0046】
図9を主として参照しながら、スタンバイ動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0047】
(3)車体前進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、直進制御動作が開始され、旋回制御動作がスタンバイされる。このとき、直進アシスト条件が満足されなければならず、植付け装置100が下降されている、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、自動ステアリング信号出力のみならず、中央の目標線選択信号出力も行われ、ステアリングモーター45の回転速度設定動作が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線へ向かって走行するためのステアリングモーター45の出力制御動作が行われる。
【0048】
(4)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、目標線方向出力動作が行われる。このとき、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が行われていなければならず、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線決定動作が指示方向に応じて行われる。
【0049】
(5)車体前進状態において、搭乗作業者が畦ぎわ警報解除スイッチの押下げ操作を行うと、畦ぎわ停止制御動作が解除され、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が停止される。このとき、畦ぎわ警報ブザー鳴動動作が行われていなければならず、直進アシストが行われていなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。
【0050】
図6に示されているように、アシストモードスイッチ56が追加されているので、直進アシストモードのみならずUターンアシストモードおよびバックターンアシストモードも選択可能であり、利便性に優れた旋回パターン切換えが実現される。
【0051】
ここに、図6は、本発明における実施の形態の田植え機のアシストモードスイッチ56近傍の部分斜視図である。
【0052】
制御装置200は、ステアリングハンドル52を駆動するステアリングモーター45にステアリングハンドル52を駆動させ、車体10の旋回をアシストする。
【0053】
車体10へ昇降可能に取付けられた植付け装置100が上昇されている場合において、車体10の旋回アシストの開始を許容するモードが、設けられている。
【0054】
植付け装置100が上昇されている場合において旋回アシストの開始を許容するこのようなモードは、後に詳細に説明される、バックターンアシストに利用される。
【0055】
植付け装置100が上昇されている場合において、車体10の旋回アシストの開始を禁止するモードも、設けられている。
【0056】
植付け装置100が上昇されている場合において旋回アシストの開始を禁止するこのようなモードは、Uターンアシストに利用される。
【0057】
植付け装置100が上昇されている場合とは、植付け装置100が下降され、車体10が前進しながら植付け装置100による作業が行われ、車体10が停止して後進し、植付け装置100が上昇された後に、車体10が停止した場合である。
【0058】
旋回アシスト開始条件が満足されない場合においては、旋回アシストの開始は許容されない。
【0059】
旋回アシスト開始条件とは、車体10が停止して後進し、植付け装置100が上昇された後に、車体10が停止するまでの車体後進距離Dbに関する条件である。
【0060】
旋回アシスト開始条件とは、植付け装置100が下降され、車体10が前進しながら植付け装置100による作業が行われ、車体10が停止するまでの車体前進距離Dfに関する条件である。
【0061】
図10を主として参照しながら、バックターンアシストモードが選択されている場合における地点P1から地点P2に至るための後進制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。 ここに、図10は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その二)である。
【0062】
(6)車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が後進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作が開始される。具体的には、植付け動作がオフされ、植付け装置100が上昇され、車体10が後進し、後輪パルスカウント動作による後輪回転数センサー210の検出が行われ、上限が最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、エンジン20が動作していなければならず、A点取得動作およびB点取得動作が完了していなければならず、測位システム300が受信動作などを正常に行っていなければならず、地点P1から地点P2に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が30度未満でなければならず、ステアリングハンドル52のステアリング角度が30度以下でなければならず、車体10の傾斜角度が8度未満でなければならず、副変速レバー54のレバー位置が路上走行車速位置と異なる植付け走行車速位置のようなレバー位置でなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチがオンされていなければならず、左右一方のみの線引きマーカー80の振出しが行われる、オートマーカー動作が行われていなければならず、現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下でなければならない。たとえば、このような差分が5メートルを超える場合においては、バックターンアシスト制御動作が解除されてもよい。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは後進終了まで短いブザー音を連続的に出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0063】
後輪回転数センサー210のカウントに関しては、カウント積算条件は、後進が行われているとき、カウントが常時行われるという条件であり、禁止条件はなく、リセット条件は、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチがオンされたとき、および現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下であってバックターンアシスト制御動作が開始されたとき、リセットが行われるという条件である。
【0064】
車体前進距離Dfが植付け装置100の上昇にともなってリセットされないので、現植付け走行経路の車体前進距離Dfと直前の植付け走行経路の車体前進距離Dfとの間の差分が5メートル以下であることを植付け装置100が上昇されている場合においても判定することができる。したがって、バックターンアシストモードがアシストモードスイッチ56により選択されている場合において、車体10の旋回アシストの開始が適切に許容されるのみならず、安全性も向上する。
【0065】
車体10が後進していることを検出するための車体後進検出スイッチがオンされているときのみ、バックターンアシスト制御動作が行われることが望ましい。たとえば、車体10が後進していなければ、上述されたブザー音の間欠的な出力は行われないことが望ましい。これは、搭乗作業者が主変速レバー53によるレバー操作を利用して畦ぎわFにおける苗補給のためのバックリフトを行った場合においては、車体10は後進しておらず停止しているので、車体後進検出スイッチはオンされず、無意味なブザー音の出力は行われないからである。
【0066】
直進アシスト中に、後輪回転数センサー210により植付け装置100を下して走行した距離を測定し、前回の走行距離との差が一定距離以内の場合、バックターンアシスト制御が可能となる構成としてもよい。
【0067】
前回の走行距離との差が一定距離以内で主変速レバー53を後進側に入れた場合、バックターンアシスト制御のバック工程モードに移り、そして、主変速レバー53を前進側に入れた場合、バックターンアシスト制御の旋回工程モードに移る構成とする。
【0068】
機体のGNSSアンテナ310に搭載した測位センサー300により機体の方位を取得し、直進アシストの基準線との方位の位相差を0にするようステアリングモーター45を制御しながら後進する構成である。
【0069】
よって、旋回動作に移行する前の機体10位置と向き(方位)を調整しながら後進させることができるため、バックターンアシスト制御の精度を向上させることができる。また、直進アシストの基準線に沿うように後進してもよい。
【0070】
また、バック工程中に車体速度が0の状態が一定時間以上続いた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバックターンアシスト制御を不可とする。
【0071】
また、バック行程中に車体水平センサ(図示省略)によって感知される機体10のローリング角度が所定以上となった場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバック旋回をできなくする構成でもよい。
【0072】
また、機体10が前進を始めてから例えば、0.5秒後にステアリングハンドル52を切る前で、次の植付作業工程の基準線を作成する構成としてもよい。
【0073】
また、旋回工程モード時に車体速度が0の状態が一定時間以上続いた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御が可能となる工程を踏むまでバックターンアシスト制御を不可とする構成としてもよい。
【0074】
また、旋回工程モード時に車体水平センサ(図示省略)によって感知される機体10のローリング角度が一定以上となった場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としてもよい。
【0075】
また、バック工程モードに入る際、機体10の方位が直進アシストの基準線と一定角度以上離れていた場合、モニター及び音で警告を出し、バック工程モードに入らないようにする構成とてもよい。
【0076】
また、バック工程開始時の機体10と直進アシストの基準線との位相差が、バック工程終了時に変化無し、または増加していた場合、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としてもよい。
【0077】
また、旋回工程モード時にGNSSアンテナ310内のセンサーのピッチ角が所定値以上となった場合は、機体10が畦に乗り上げたと判断し、エンジン20を停止する構成としてもよい。
【0078】
また、バックターンアシスト制御終了後の機体10の位置と旋回後に走行する基準線との差が所定以上の場合、機体10を停車させるまたは、モニター及び音で警告を出し、バックターンアシスト制御が正確に行われなかったことを作業者に伝える構成としてもよい。
【0079】
また、バックターンアシスト制御中に例えば、アシストモードスイッチ56の切替操作が行われると、バックターンアシスト制御を中断し、再びバックターンアシスト制御の工程を踏むまでバックターンアシスト制御をできなくする構成としても良い。また、アシストモードスイッチ56以外の何らかの操作が行われてもバックターンアシスト制御を中断してもよい。
【0080】
後輪駆動によるバックターンアシスト制御動作が安定するようにステアリングハンドル52のハンドル位置は直進中央位置へ固定されてもよい。
【0081】
直進アシストが解除された場合においては、ステアリングハンドル52による搭乗作業者のハンドル操作が地点P1に至るために必要となる。したがって、地点P1から地点P2に至るための後進制御動作は、必ずしも正確ではない搭乗作業者のハンドル操作に依存しない、地点P1から地点P2に至る正確な方向を基準として行われることが望ましい。
【0082】
HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が上述された車速の上限の規制のために行われるので、車体停止地点である地点P2がずれにくく、ステアリングが安定し、安全性も向上する。
【0083】
後進後の車体停止は、後輪回転数センサー210の検出を利用して得られた車体後進距離Dbが1メートルへ到達したことを判定することにより自動で行われてもよいし、主変速レバー53による搭乗作業者のレバー操作を利用して手動で行われてもよい。
【0084】
後者の場合においては、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うこともあるので、車体後進距離OKまたはNG判定が車体後進距離Dbにより行われることが望ましい。車体後進距離Dbが1メートル未満であるまたは3メートル以上であるとき、車体後進距離NG判定が行われ、バックターンアシスト制御動作は解除される。車体後進距離Dbが1メートル以上であり3メートル未満であるとき、車体後進距離OK判定が行われ、バックターンアシスト制御動作は継続される。
【0085】
車体後進距離Dbが小さすぎると、車体10のサイズが大きい場合においては、旋回する車体10が畦ぎわFと接触することがある。
【0086】
車体後進距離Dbが大きすぎると、旋回精度が悪化することがある。すなわち、地点P2から地点P3に至るための第1段階旋回においては、車体10の位置にかかわらずに、主として車体10の方向が変化させられ、地点P4から地点P5に至るための第2段階旋回においては車体10の位置調節によるつぎの植付け走行経路への走行経路合わせが行われるが、車体後進距離Dbが大きすぎると、植付け走行経路間距離のずれが発生しやすい。
【0087】
後輪回転数センサー210の検出を利用して得られた車体後進距離Dbのみならず、車体後進距離OKまたはNG判定が、モニターなどに表示されてもよい。
【0088】
(7)なお、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が中立位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行う、または車体停止ペダル踏込み操作を行うと、車体10は主変速レバー53のレバー位置に応じて停止するが、バックターンアシスト制御動作は停止されない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0089】
(8)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル操作待ちのステアリング信号出力が行われ、トルクがオフされるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0090】
(9)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0091】
(10)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。このとき、動作条件は、自動旋回中断条件に応じる。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプはオンオフされ、バックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0092】
(11)また、車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者がステアリングハンドル52によるハンドル操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止されてもよい。
【0093】
(12)車体停止までの車体後進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、後進が停止されて車体停止が行われ、旋回制御動作がスタンバイされる。このとき、後輪回転数センサー210の検出値は、第1所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンされ、B点ランプはオンされ、自動ランプはオンされ、直進ランプはオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、オートマーカーランプ出力と同じである、左または右の目標線選択信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線決定動作が指示方向に応じて行われる。
【0094】
図11を主として参照しながら、バックターンアシストモードが選択されている場合における地点P2から地点P3およびP4を経て地点P5に至るための旋回制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0095】
ここに、図11は、本発明における実施の形態の田植え機の動作説明図(その三)である。
【0096】
(13)車体停止状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、上限が最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、ステアリングモーター45の出力制御動作が行われてステアリングハンドル52が指示方向に応じて回動される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100は上昇されていなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは旋回終了まで短いブザー音を連続的に出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、旋回のステアリング信号出力が行われ、目標線方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0097】
後進後の車体停止が主変速レバー53による搭乗作業者のレバー操作を利用して手動で行われる場合においては、上述された車体後進距離OK判定が行われ、バックターンアシスト制御動作が継続されるとき、現植付け走行経路の線引きマーカー80の振出し方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0098】
HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が上述された車速の上限の規制のために行われるので、ステアリングモーター45の応答速度上限が170度/秒であっても、ステアリングハンドル52が回動されているときの旋回半径が車体走行距離の増大にともなって大きくなりにくく、ステアリングが安定し、安全性も向上する。
【0099】
(14)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングモーター45の回転は停止されてステアリング角度は保持される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーとして利用されるトランスミッション部ステアリング角度センサーの検出値は設定角度値でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0100】
ステアリングが旋回初期車速の抑制により安定するように、ステアリング角度が目標ステアリング角度に近付くにつれて、上述された主変速機構41のトラニオン開度の上限は大きくされてもよい。
【0101】
旋回精度に影響する旋回開始地点がばらつきにくいように、車体10は、たとえば、地点P1から車体後進距離Dbが1メートルである旋回開始地点への到達までは、直進させられてもよい。旋回開始地点への到達が後輪回転数センサー210による車体前進距離および車体後進距離の検出を利用することにより判定され、ステアリング角度が直進のために固定されてもよいし、旋回開始地点への到達が植付け装置100の上昇時点からの測位システム300によるDGPSデータ受信を利用することにより判定され、地点P0から地点P1に至る方向である基準線方向に沿った直進ステアリングが行われてもよい。前者の場合においては制御が直進制御ECUの利用により簡素化され、後者の場合においては精度が旋回制御ECUの利用により向上する。
【0102】
(15)なお、車体前進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が中立位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行う、または車体停止ペダル踏込み操作を行うと、車体10は主変速レバー53のレバー位置に応じて停止するが、バックターンアシスト制御動作は停止されない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0103】
(16)また、車体前進状態において、搭乗作業者が直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作を行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル操作待ちのステアリング信号出力が行われ、トルクがオフされるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0104】
(17)また、車体前進状態において、搭乗作業者が主変速レバー53のレバー位置が後進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行うと、車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、バックターンアシスト制御動作は停止される。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0105】
(18)また、車体前進状態において、搭乗作業者が植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作などを行うと、バックターンアシスト制御動作は停止される。このとき、動作条件は、自動旋回中断条件に応じる。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプおよび自動ランプの動作は直進アシストスタンバイにおける動作に準じ、直進ランプはオンオフされ、Uターンランプはオンオフされ、バックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の長いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0106】
(19)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、旋回内側の後輪32の後輪回転数センサー210の検出値は第2所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。 第1段階旋回の終了点である地点P3への到達は、後輪回転数センサー210の検出値を利用しないで、地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が70度以上であることを判定することにより行われる。したがって、圃場における車輪スリップの影響を無視することができる。
【0107】
いわゆるコの字旋回における第1段階旋回と第2段階旋回との間の一時的直進においては、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰され、ステアリング角度が固定される一時的直進制御動作が開始される。
【0108】
地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が0度以上90度未満である場合においては、ステアリングハンドル52が、小さすぎた第1段階旋回に応じて、一時的直進制御動作においても旋回方向角度と同じ一定角度で回動されてもよい。地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が90度以上である場合においては、ステアリングハンドル52が、大きすぎた第1段階旋回に応じて、一時的直進制御動作においても旋回方向角度と逆の一定角度で回動されてもよい。地点P6から地点P5に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が87(=90-3)度と93(=90+3)度との間である場合においては、ステアリング角度は直進状態を維持するために保持されてもよい。
【0109】
一時的直進の終了点である地点P4への到達は、後輪回転数センサー210の検出値を利用して行われる。たとえば、地点P4への到達は、一時的直進制御動作が開始された後に、旋回内側の後輪32の後輪回転数センサー210の検出値である後輪パルスカウントが30へ到達したことを判定することにより行われる。
【0110】
バックターンアシスト制御動作が開始されるとき、地点P0から地点P1に至る方向の基準線と垂直である、地点P3から地点P4に至る方向の直線が旋回目標線として設定されてもよい。植付け装置100が上昇された地点である地点P1と旋回目標線との間の距離Δは、植付け条間距離と田植え機植付け条数の半分の4(=8/2)との積とほぼ一致する距離である。したがって、圃場内の旋回目標線と畦ぎわFとの間の距離は十分に大きいので、旋回する車体10が畦ぎわFと接触しない。後進後の車体前進が緯度および経度を利用して正確に設定されるこのような旋回目標線へ向かって行われるので、コの字旋回の精度が向上する。
【0111】
地点P4が、地点P3から地点P4に至る方向の直線である旋回目標線の代わりに、地点P0から地点P1に至る方向の現植付け走行経路の基準線と地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線との間の旋回目標点として設定されてもよい。旋回目標点とつぎの植付け走行経路の基準線との間の距離δは、旋回半径とほぼ一致する距離である。一時的直進が緯度および経度を利用して正確に設定されるこのような旋回目標点への到達にともなって終了するので、コの字旋回の精度が向上する。
【0112】
(20)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーを利用することにより、ステアリングハンドル52が設定角度値に応じて回動される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、後輪回転数センサー210の検出値は第3所定値へ到達していなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、旋回のステアリング信号出力が行われ、目標線方向への動作のためのステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0113】
(21)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングモーター45の回転は停止されてステアリング角度は保持される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回ステアリング角度センサーの検出値は設定角度値でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ステアリング信号出力は保持されるが、ステアリングモーター45の出力動作は停止されてステアリング角度は保持される。
【0114】
このように、一時的直進が終了すると、ステアリングハンドル52が旋回方向に応じて回動され、第2段階旋回が行われる。
【0115】
(22)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰される。このとき、バックターンアシスト制御動作が行われていなければならず、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が所定角度値以下でなければならない。表示および警告については、A点ランプ、B点ランプ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプ、バックターンランプおよび電子ブザーの動作は上述された項目における動作に準じる。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、ハンドル中央のステアリング信号出力が行われ、ステアリングハンドル52のハンドル位置が直進中央位置へ復帰されるようにステアリングモーター45の出力動作が行われる。
【0116】
このように、たとえば、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が20度未満となると、ステアリングハンドル52のハンドル位置は直進中央位置へ復帰され、第2段階旋回がステアリング直進検出にともない終了する。 図11を主として参照しながら、地点P5から地点P6に至るための直進アシスト制御動作について具体的に説明するとつぎの通りである。
【0117】
(23)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、直進アシスト制御動作への移行が行われる。このとき、ステアリングハンドル52のステアリング角度が120度以下でなければならず、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が3度以下でなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンオフされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力については、自動ステアリング信号出力が行われる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力については、目標線へ向かって走行するためのステアリングモーター45の出力制御動作が行われる。
【0118】
(24)車体前進状態において、搭乗作業者が操作を行わなくても、最大速度の50パーセントである0.9メートル/秒の規制値により規制される上限が解除された車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、直進アシスト制御動作が行われる。このとき、ステアリングハンドル52のステアリング角度が30度以下であり、地点P5から地点P6に至る方向である目標線方向を基準としたずれ角度が3度以下である状態が、少なくとも3秒間にわたって継続しなければならない。表示および警告については、A点ランプはオンオフされ、B点ランプはオンオフされ、自動ランプ、直進ランプ、Uターンランプおよびバックターンランプの動作は上述された項目における動作に準じ、電子ブザーは1回の短いブザー音を出力する。旋回制御ECU側から直進制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。直進制御ECU側から旋回制御ECU側への信号出力は、上述された項目における信号出力に準じる。
【0119】
このように、直進アシスト制御動作が、旋回制御動作の終了にともなって開始される。
【0120】
直進アシスト制御動作は地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線を目標線として設定することにより行われるので、つぎの植付け走行経路への自動走行経路合わせが実現され、植付け走行経路間距離のずれは発生しにくい。
【0121】
地点P0から地点P1に至る方向の現植付け走行経路の基準線と地点P6から地点P5に至る方向のつぎの植付け走行経路の基準線との間の距離が植付け条間距離と田植え機植付け条数の8との積とほぼ一致するように、このような目標線設定は直線平行移動を利用して自動で行われてもよい。
【0122】
バックターンアシスト制御動作についてより具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0123】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、搭乗作業者が車速またはステアリングの自動制御を容易に認識することができるように、短いブザー音の間欠的な出力が連続的に行われてもよい。バックターンアシスト制御動作が何らかの理由で停止された場合においては、搭乗作業者が自動制御中断などを容易に認識することができるように、1回の長いブザー音の出力が行われてもよい。
【0124】
さまざまなバックターンアシスト制御動作中断条件がつぎの通り考えられることは、言うまでもない。
【0125】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、バックターンアシスト制御動作における車体走行向きとは整合しない主変速レバー53によるレバー操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、主変速レバー53のレバー位置が前進側位置となるように主変速レバー53によるレバー操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0126】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、アシストモードスイッチ56によるスイッチ操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、Uターンアシストモードが選択されるようにアシストモードスイッチ56によるスイッチ操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0127】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、植付け装置100の上昇などを旋回にともなって自動で行うための自動旋回モードスイッチによるスイッチ操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。たとえば、上述された車体後進状態において、搭乗作業者が、自動旋回モードスイッチによるスイッチオフ操作を行った場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0128】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、オートマーカー動作をオフするための操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0129】
バックターンアシスト制御動作が行われているとき、直進アシストレバー55によるフィンガーアップレバー操作またはフィンガーダウンレバー操作が行われた場合においては、バックターンアシスト制御動作は中断されてもよい。
【0130】
バックターンアシスト制御動作が終了したとき、上述された車速の上限の規制は解除されてもよい。HST機構である主変速機構41のトラニオン開度の上限の規制が解除され、搭乗作業者が主変速レバー53による車速減少レバー操作を行わなくても車速が主変速レバー53のレバー位置に応じて設定され、目標車速への復帰が自動で行われる。バックターンアシスト制御動作の終了にともなう急激な車速増大が回避されるように、このような目標車速への自動復帰は通常の車速増大レバー操作による応答速度とは異なる応答速度でゆっくりと行われることが望ましい。
【0131】
つぎに、図7(a)および7(b)、ならびに8を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0132】
ここに、図7(a)は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ310近傍の部分正面図であり、図7(b)は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナ310近傍の部分左側面図であり、図8は本発明における実施の形態の田植え機のGNSSアンテナステー320近傍の部分斜視図である。
【0133】
GNSSアンテナステー320は、田植え機自動ステアリングシステムを実現するための測位システム300のGNSSアンテナ310が取付けられているステーである。
【0134】
GNSSアンテナ310は座席51の直上には位置しないので、GNSSアンテナ310の高さがあまり大きくなくても、搭乗作業者が座席51から立上ったとき、搭乗作業者の頭などがGNSSアンテナ310にぶつかりにくい。
【0135】
GNSSアンテナ310の高さがあまり大きくなくてもよいので、GNSSアンテナ310が障害物などと干渉しにくいのみならず、車体10の地上高も抑制される。そして、GNSSアンテナステー320を短縮することができるので、GNSSアンテナステー320の剛性も向上する。
【0136】
GNSSアンテナ310は、車体左右方向を基準とした中央に位置するが、ステアリングハンドル52、および座席51に座っている搭乗作業者の頭の上方に設けられている。
したがって、搭乗作業者の視界は、GNSSアンテナ310により遮られにくい。
【0137】
GNSSアンテナステー320の上下方向を基準とした中央部には、GNSSアンテナステー補強プレート321が取付けられている。
【0138】
GNSSアンテナステー補強プレート321の車体左右方向を基準とした中央部には、自動ステアリング状態を表示するためのモニターなどが取付けられていてもよい。
【0139】
ロゴマークのラベルなどをGNSSアンテナステー補強プレート321へ貼付するためのスペースが、確保されていてもよい。
【0140】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の旋回アシスト方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0141】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の旋回アシスト方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0142】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0143】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0144】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0145】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0146】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0147】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明における移植機は、作業装置が上昇されている場合において、車体の旋回アシストの開始を許容することができ、田植え機などのような移植機に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0149】
10 車体
20 エンジン
30 走行装置
31 前輪
32 後輪
41 主変速機構
42 副変速機構
43 後輪ギヤケース
45 ステアリングモーター
50 運転ユニット
51 座席
52 ステアリングハンドル
53 主変速レバー
54 副変速レバー
55 直進アシストレバー
56 アシストモードスイッチ
60 整地装置
61 整地ローター機構
62 整地フロート機構
70 施肥装置
80 線引きマーカー
90 植付け装置昇降装置
100 植付け装置
101 予備苗載せ台
200 制御装置
210 後輪回転数センサー
220 植付け装置昇降センサー
300 測位システム
310 GNSSアンテナ
320 GNSSアンテナステー
321 GNSSアンテナステー補強プレート