(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161167
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A01C15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146842
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023093952の分割
【原出願日】2018-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】石田 智之
(57)【要約】
【課題】ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことができ、作業効率の向上を図ることが出来ることを目的とする。
【解決手段】走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、圃場の衛星画像データと実際撮影された圃場の画像を用いて土壌の色味の分類を判断した土質分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと実際撮影された圃場の画像を用いて土壌の色味の分類を判断した土質分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと圃場の地形データを用いて土壌の色味の分類を判断した土質分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記走行車体(2)に前記圃場に苗を植える植付装置(50)を備え、
前記土質分類データから苗を圃場に植える植付深さを調節することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で苗の植付け等の作業を行う際に用いる苗移植機等の作業車両には、施肥装置とGPSを搭載し操舵部材を直進位置に保持して自動直進走行を行ない、機体の進行方向を自動的に修正することができる自動操舵装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業車両では、田植や苗の生育のノウハウが無い状態では収量を増やすことが困難である。また、圃場の形状を認識していないため、苗切れになるタイミングが把握できないため、作業効率低下する問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来の作業車両の課題に鑑みて、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことができると共に、圃場の形状を認識し、作業者は、苗と肥料補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと実際撮影された圃場の画像を用いて土壌の色味の分類を判断した土質分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両である。
【0007】
第2の本発明は、
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと圃場の地形データを用いて土壌の色味の分類を判断した土質分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両である。
【0008】
第3の本発明は、
前記走行車体(2)に前記圃場に苗を植える植付装置(50)を備え、
前記土質分類データから苗を圃場に植える植付深さを調節することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、分類されたデータから資材の供給量を調節することで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明にかかる実施の形態におけるロボット乗用田植機の左側面図
【
図2】本実施の形態におけるロボット乗用田植機の平面図
【
図3】本実施の形態のロボット乗用田植機における制御部と各種装置及び各種センサ等との接続関係を示すブロック図
【
図4】本実施の形態の圃場におけるロボット乗用田植機の走行経路、及び作業手順についての概要を説明するための圃場の平面模式図
【
図5】本実施の形態の圃場の各辺に沿ったマニュアル走行に基づいて、圃場の形状情報を取得する作業手順等についての概要を説明するための圃場の平面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の作業車両の一実施の形態にかかる8条植えのロボット乗用田植機について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1及び
図2は本実施の形態にかかるロボット乗用田植機の左側面図と平面図である。
【0013】
本実施の形態のロボット乗用田植機1は、
図1、
図2に示す様に、走行車体2の後側に昇降リンク装置30を介して植付装置50が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置3のホッパー3aが設けられている。昇降リンク装置30は、上側リンクアーム31と、下側リンクアーム32とを備えた平行リンクである。
【0014】
また、植付装置50の下方には、施肥装置3の施肥ホース(図示省略)から供給されてくる肥料を、作溝部(図示省略)で圃場に形成される溝部に投入した後、覆土する覆土部90(
図3参照)を備えている。また、覆土部90に設けられた覆土プレート駆動装置91は、制御部400からの指令に応じて覆土部90の覆土プレート(図示省略)を作動させる様に構成されており、これにより覆土量が変更可能となる構成である。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪4、4及び左右一対の後輪5、5を備えた四輪駆動車両ある。
【0016】
また、本実施の形態のロボット乗用田植機1には、圃場の水素イオン指数(pH値)を測定するpH測定器80(
図3参照)を備えている。具体的には、pH測定器80の電極センサが、ロボット乗用田植機1の左右一対の前輪4のリム部に対向配置されている。
【0017】
本実施の形態のロボット乗用田植機1の施肥作業中において、制御部400(
図3参照)が、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、圃場のある測定位置におけるpH値が予め定められた閾値以上であると判定した場合、その測定位置が還元作用の高い(即ち、排水性の悪い)場所であると判定して、覆土プレート駆動装置91に対して指令を出して、覆土プレートを作動させて、覆土の量を所定基準より少なくする方向に変更させる構成である。これにより、還元作用が高いと判定された測定位置の排水性を高め、酸化を促し土質を改善することが出来る。
【0018】
また、トランスミッションケース6の背面部に車体メインフレーム7の前端部が固着されており、他方、その車体メインフレーム7の後端左右両端部には、昇降リンク装置30を回動可能に支持する左右一対のリンク支持ステー10が固定されている。
【0019】
エンジン20は車体メインフレーム7の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置12及びHST(静油圧式無段階変速機)13を介してトランスミッションケース6に伝達される。トランスミッションケース6に伝達された回転動力は、トランスミッションケース6内の変速機構(副変速装置等)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪4、4、及び左右後輪5、5を駆動する。
【0020】
また、トランスミッションケース6から取出された外部取出動力は、植付クラッチ(図示省略)を介して植付伝動軸21によって植付装置50へ伝動される。
【0021】
また、
図1、
図2に示す様に、植付装置50は、第1苗植付部55a、第2苗植付部55b、第3苗植付部55c、第4苗植付部55dを備え、更にそれぞれの苗植付部には、苗を植付ける爪を有する植付具51が、左右両側に2つずつ回動可能に設けられ、合計8条の苗が圃場に植え付けられる構成である。
【0022】
また、
図1、
図2に示す通り、植付装置50の下部には、中央位置と、左右両側の位置に、それぞれフロート53が設けられている。これらフロート53が圃場の泥面上を整地しつつ滑走し、その整地跡に、植付具51により苗が圃場に植え付けられる。
【0023】
また、植付装置50の下部には、平面視で略門型形状に配置されたローター41を、左側後輪ギヤケース18Lから取り出される動力で、自在継手40aを介して回動させることにより、圃場面を整地する整地ローター40が設けられている。
【0024】
また、整地ローター40は、植付装置50に対して、昇降モータ(図示省略)の作動により昇降可能に取り付けられており、ローター41の回動の入り切りは、左側後輪ギヤケース18Lに設けられた所定のクラッチ(図示省略)の入り切り動作によって行われる。
【0025】
また、操縦座席22の前方には操縦ハンドル24が設けられている。操縦ハンドル24の右側又は左側には、整地ローター40を入り切りするための整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)が設けられている。整地ローター入/切スイッチ42を「入り」操作すると、後述する制御部400(
図3参照)からの指令により、整地ローター40が圃場面に降下すると共に、ローター41が回動を開始する構成である。また、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」操作すると、後述する制御部400(
図3参照)からの指令により、整地ローター40が圃場面から上昇すると共に、ローター41が回動を停止する構成である。
【0026】
また、操縦ハンドル24の右側又は左側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え及び走行速度などを設定するHST操作レバー(図示省略)、植付装置50の昇降及び植付作業の入切を操作する植付作業レバー14(
図2参照)等の各種レバーが設けられている。
【0027】
なお、本実施の形態のロボット乗用田植機1では、走行車体2が旋回したり、後進走行した場合には、それらの動作に連動して昇降リンク装置30が上昇することにより植付装置50が上昇すると共に植付作業が停止される構成である。
【0028】
また、操縦ハンドル24の下方には、各種操作ボタン(図示省略)と、後述する自動運転モードの入り切りを行うための自動運転モード入/切スイッチ61(
図3参照)と、各種メータや表示部を配置したメータパネル60(
図2参照)が設けられている。
【0029】
また、本実施の形態のロボット乗用田植機1は、
図3に示す様に、送受信装置70と、自動操舵装置200と、位置情報取得装置300等と、その他、各種センサ等を備えており、これらは後述する制御部400(
図3参照)に電気的に接続されている。
【0030】
図3は、ロボット乗用田植機1における制御部400と各種装置及び各種センサ等との接続関係を示すブロック図である。
【0031】
送受信装置70は、圃場の畦に居て、無人運転中のロボット乗用田植機1による自動植付作業を監視している作業者が、必要に応じて、作業者が携帯しているリモコン装置71(
図3)を用いて当該ロボット乗用田植機1を遠隔操作する際の信号の送受信を行うための装置である。
【0032】
自動操舵装置200は、操縦ハンドル24を自動で操作して、走行車体2を直進方向に維持したり、旋回させたりすることが可能な構成である。
【0033】
即ち、自動操舵装置200は、任意の回転力を自動で操縦ハンドル24に付与することにより、操縦ハンドル24を回転させる操舵モータ210と、操縦ハンドル24の回転角度(ハンドル切れ角)を検知するハンドルポテンショメータ220と、を有している。
【0034】
また、位置情報取得装置300は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に基づいて地球上でのロボット乗用田植機1の位置情報(即ち、座標情報)を取得する構成であり、人工衛星からの信号を所定間隔で受信する為の受信アンテナ310を備え、位置情報取得装置300により取得された位置情報は、制御部400に送られる構成である。
【0035】
制御部400に送られた位置情報や、後述する、当該位置情報に基づいて得られた圃場の形状情報や、圃場における自動植付作業時においてロボット乗用田植機1が走行すべき目標走行経路の位置情報(位置座標)等は、メモリ部410(
図3参照)に記録可能に構成されている。また、圃場の形状情報や、目標走行経路の位置情報等は、後述する演算部420により算出される。
【0036】
また、受信アンテナ310は、
図1、
図2に示す通り、正面視で門型のアンテナ固定部材320の上面中央部に固定されており、アンテナ固定部材320の左右の下端部321L、321Rは、フロアステップ23の前端部左右両側面に固定されている。
【0037】
なお、本実施の形態の走行車体2は、本発明の走行車体の一例にあたり、本実施の形態の植付装置50は、本発明の作業装置の一例にあたる。また、本実施の形態の整地ローター40は、本発明の整地装置の一例にあたり、本実施の形態の整地ローター入/切スイッチ42は、本発明の整地装置入/切スイッチの一例にあたる。また、本実施の形態の位置情報取得装置300は、本発明の位置情報取得装置の一例にあたり、本実施の形態の制御部400は、本発明の制御部の一例にあたる。また、本実施の形態の施肥装置3は、本発明の施肥装置の一例にあたる。また、本実施の形態のpH測定器80は、本発明の検知装置の一例にあたり、本実施の形態の覆土部90は、本発明の覆土部の一例にあたる。
【0038】
以上の構成において、本実施の形態のロボット乗用田植機1を用いた自動運転の動作について、主として
図4、
図5を用いて説明する。
【0039】
まず、
図4を用いて、ロボット乗用田植機1の走行経路、及び作業手順についての概要を説明する。
【0040】
図4は、圃場におけるロボット乗用田植機1の走行経路、及び作業手順についての概要を説明するための圃場の平面模式図である。
【0041】
図5は、圃場の各辺に沿ったマニュアル走行(手動走行)に基づいて、圃場の形状情報を取得する作業手順等についての概要を説明するための圃場の平面模式図である。
【0042】
本実施の形態の圃場500は、四方を第1辺501、第2辺502、第3辺503、及び第4辺504で囲まれた、略長方形状の圃場である。
【0043】
また、本実施の形態では、ロボット乗用田植機1に対する苗や肥料の補給作業は、圃場500の第4辺504側にて行うため、ロボット乗用田植機1が自動運転中は、リモコン装置71を携帯した作業者は、第4辺504側に待機して、その動作を監視しているものとする。
【0044】
また、本実施の形態では、圃場500の第4辺504側の畦が苗や肥料の補給作業を行うものであることを事前に設定することが出来る設定スイッチ(図示省略)が設けられており、その設定スイッチからの設定情報を受け付けた制御部400は、その情報をメモリ部410に記録する構成である。なお、当該設定スイッチは、操作性の向上を図るために、操縦ハンドル24の周辺又は、メータパネル60(
図2参照)周辺に設けられている。
【0045】
本実施の形態では、まず、ロボット乗用田植機1に作業者が乗車して、自動運転モード入/切スイッチ61を「入り」にして、作業者が操縦ハンドル24を操作することで、圃場500の第1辺501、第2辺502及び第3辺503に沿ってA工程511、B工程512、及びC工程513をマニュアル走行しながら、植付け作業を行うことなく、整地ローター40を作動させて枕地の整地作業を行う。
【0046】
このA工程511~C工程513を、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」操作と「切り」操作を適宜繰り返しながらマニュアル走行することにより、制御部400は、圃場500の形状情報の特定に必要な圃場の四隅に関する位置情報と、目標ラインの算出に必要な基準ラインの位置情報とを取得する。また、制御部400は、これら取得した各種の位置情報に基づいて、自動旋回動作可能な自動走行経路情報(第2列目L2以降の目標ラインの位置情報、第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2との位置情報等を含む)を演算により求め、それらの情報をメモリ部410に格納する。
【0047】
次に、圃場500の第4辺504に沿ったD工程514(
図4では、破線で示した)を植付け作業を行うことなくマニュアル走行して、第2列目L2の第1植付開始位置L2S(第1植付開始ラインLU1と第2列目L2との交点)の手前で時計回りに旋回して第1植付開始位置L2Sで走行を停止させた後、作業者はロボット乗用田植機1から降りて、第4辺504側の畦に移動する。
【0048】
なお、本実施の形態のロボット乗用田植機1において、作業者がD工程514をマニュアル走行する際は、整地ローター入/切スイッチ42は、「切り」状態に設定されているものとするが、これに限定されるものではない。
【0049】
その後、作業者は、第4辺504の畦の位置から自ら携帯しているリモコン装置71を操作して、ロボット乗用田植機1に対して無人の自動運転を開始させる指令を送信する。
【0050】
送受信装置70を介して、自動運転開始指令を受信した制御部400は、メモリ部410に格納されている自動走行経路情報に基づいて、自動操舵装置200等に指令を出して、第2列目L2~第n列目Lnにおける旋回を含む走行動作と植付作業とを、第4辺504の畦側において行われる肥料や苗の補給作業等の例外を除き、無人のまま自動で行わせる。
【0051】
次に、第n列目Lnの自動植付作業が終了した後、制御部400は、引き続き、メモリ部410に記録されている自動走行経路情報に基づいて、自動操舵装置200等に指令を出して、圃場500の枕地(第1列目L1と、第2辺502に概ね平行な列と、第(n+1)列目Ln+1と、第4辺504に概ね平行な列と含む)を無人のまま又は作業者が乗車して自動運転により走行させながら自動植付作業を行わせた後、自動運転を終了する。
なお、制御部400は、第1列目L1の自動走行については、後述する第1列目の基準ラインの位置情報を利用し、第(n+1)列目Ln+1の自動走行については、第(n+1)列目Ln+1に対応する目標ラインの位置情報を利用する。無人の場合は、作業者によるリモコン装置71からの指令により自動運転を終了する。
【0052】
なお、枕地の植付作業は、全部又は一部の走行・旋回工程においてマニュアルにより実行しても良い。
【0053】
ここで、
図4に示す、第1植付開始ラインLU1は、第2列目L2~第n列目Lnの第4辺504側における、植付開始位置と植付停止位置の基準位置を示すための直線であり、第2植付開始ラインLU2は、第2列目L2~第n列目Lnの第2辺502側における、植付停止位置と植付開始位置の基準位置を示すための直線である。これらのラインの演算部420による設定については更に後述する。
【0054】
次に、主として
図5を用いて、A工程511~C工程513において作業者が乗車してマニュアル走行することにより、制御部400が圃場500の形状情報、及び自動走行経路情報を演算により取得する動作を中心に更に説明する。
【0055】
作業者は、A工程511(
図4参照)において、ロボット乗用田植機1の整地ローター40のローター41の左端部が、圃場500の第1辺501と第4辺504の隅部の位置に、出来る限り近づく様にロボット乗用田植機1を配置する。
【0056】
作業者は、上述した様に、自動運転モード入/切スイッチ61を「入り」にした後、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)を「入り」状態に設定し、植付け作業を行うことなくA工程511におけるマニュアル走行を開始する。制御部400は、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)からの「入り」状態を示す信号を受け付けて、整地ローター40を圃場面に降下させると共にローター41の回動を開始させる。
【0057】
なお、本実施の形態におけるマニュアル走行は、作業者が、ロボット乗用田植機1を圃場500の各辺の凹凸に沿って走行させるものであり、その走行軌跡が直線的なものになるとは限らない。
【0058】
また、自動運転モード入/切スイッチ61が「入り」に設定されており自動運転モードが「入り」状態にある場合において、整地ローター入/切スイッチ42が「入り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、その信号を本来の意味以外に始点取得トリガー信号でもあると判定し、演算部420に対して、その判定の直後又は直前において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の最新の位置情報(座標値)と、後述する所定の後端位置変換定数とを利用して、整地ローター40のローター41の左端部の位置情報(座標値)を求めさせ、その演算結果を第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0059】
なお、上記信号を始点取得トリガー信号であると判定した直前又は直後において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ始点PA1S参照)の最新の位置情報もメモリ部410に記録する構成であり、制御部400が、後述する終点取得トリガー信号の判定をした場合についても、同様に、受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ終点PA1E参照)の最新の位置情報をメモリ部410に記録する構成である。
【0060】
ロボット乗用田植機1を圃場500の第1辺501の凹凸に沿ってマニュアル走行させることでA工程511の終端部までくると、作業者は、ロボット乗用田植機1の走行車体2の前端部2a(
図1参照)が、圃場500の第2辺502の直前まで達した位置でロボット乗用田植機1の走行を停止させ、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」状態に設定するので、これに連動して制御部400からの指令により、整地ローター40は回動を停止すると共に、所定高さまで上昇する。
【0061】
また、自動運転モード入/切スイッチ61が「入り」に設定されており自動運転モードが「入り」状態にある場合において、整地ローター入/切スイッチ42が「切り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、その信号を本来の意味以外に終点取得トリガー信号でもあると判定し、演算部420に対して、その判定の直後又は直前において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の最新の位置情報(座標値)と、後述する所定の前端位置変換定数とを利用して、ロボット乗用田植機1の後述する左前端仮想点の位置情報(座標値)を求めさせ、その演算結果を第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0062】
ここで、所定の後端位置変換定数とは、受信アンテナ310の位置における位置情報(座標値)を用いて、整地ローター40のローター41の左端部の位置(即ち、上記の第1辺始点P1S(
図5参照)の位置)における位置情報(座標値)を演算で求めるための変換定数であり、ロボット乗用田植機1の構成及びサイズによって両者の位置関係は予め確定した値であり、メモリ部410に予め格納されているものとする。
【0063】
また、所定の前端位置変換定数とは、受信アンテナ310の位置における位置情報(座標値)を用いて、ロボット乗用田植機1の走行車体2の前端部2a(
図1参照)を通り、走行車体2の左右方向に平行に伸びる第1仮想直線と、整地ローター40のローター41の左端部の位置を通り、走行車体2の前後方向に平行に伸びる第2仮想直線との、平面視における交点(これを、左前端仮想点と称す)の位置(即ち、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置)における位置情報(座標値)を演算で求めるための変換定数であり、ロボット乗用田植機1の構成及びサイズによって両者の位置関係は予め確定した値であり、メモリ部410に予め格納されているものとする。
【0064】
上記の様に、ロボット乗用田植機1を圃場500の隅部に出来る限り近づく様にマニュアルで操縦して、第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報と、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報とを得ることにより、これらの位置情報を圃場500の第1辺501の両端部の位置情報の近似値として利用することが出来る。
【0065】
また、制御部400は、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ始点PA1S(
図5参照照)の位置情報(座標点)と、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ終点PA1E(
図5参照照)の位置情報(座標点)とを利用して、第1列目の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0066】
また、上記の様に、自動運転モードが「入り」状態にある場合、既存のスイッチである、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」、「切り」の操作が、その操作の本来の意味以外に、始点の位置情報の取得、終点の位置情報の取得のトリガー信号としての意味をも兼ねている構成としたことにより、始点と終点の位置情報を取得するための専用のスイッチやレバー等を必要とせず部品点数の削減を図ることが出来る。
【0067】
次に、作業者は、A工程511での整地作業を終了して、整地ローター40を上昇させたまま時計回りに旋回操作し、B工程512において上述したA工程と同様の操作を実行する。
【0068】
即ち、作業者が、B工程512において、上述したA工程511での操作と同じ操作をしてマニュアル走行することにより、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)から「入り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、上記と同様に、その信号を始点取得トリガー信号でもあると判定し、整地ローター40のローター41の左端部の位置情報(座標値)を第2辺始点P2S(
図5参照)の位置情報(座標値)として演算し、メモリ部410に格納し、更に、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」状態に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、上記と同様に、その信号を終点取得トリガー信号でもあると判定し、ロボット乗用田植機1の上述した左前端仮想点(図示省略)の位置情報(座標値)を第2辺終点P2E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0069】
また、制御部400は、B工程512のマニュアル走行において、A工程の場合と同様に、少なくとも、始点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のB工程アンテナ始点PB2S参照)の最新の位置情報と、終点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のB工程アンテナ終点PB2E参照)の最新の位置情報とを、メモリ部410に記録する構成である。
【0070】
また、制御部400は、B工程512のマニュアル走行におけるB工程アンテナ始点PB2S(
図5参照照)の位置情報(座標点)と、B工程512のマニュアル走行におけるB工程アンテナ終点PB2E(
図5参照照)の位置情報(座標点)とを利用して、第2辺502に沿った枕地を自動走行する際に利用する第2辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0071】
また、B工程512からC工程513に移動した後についても、上記と同様に、制御部400は、始点取得トリガー信号を得て、第3辺始点P3S(
図5参照)の位置情報(座標値)を演算しメモリ部410に格納し、終点取得トリガー信号を得て、第3辺終点P3E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0072】
制御部400は、演算部420において、上記の様にしてメモリ部410に格納された第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報、第2辺始点P2S(
図5参照)の位置情報、第2辺終点P2E(
図5参照)の位置情報、第3辺始点P3S(
図5参照)の位置情報、及び第3辺終点P3E(
図5参照)の位置情報を用いて、圃場500の形状情報を演算させる。
【0073】
即ち、演算部420は、第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報と、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報とから、第1辺始点P1Sと第1辺終点P1Eとを通る第1直線521(
図5参照)の位置情報を求め、同様に、第2辺始点P2Sと第2辺終点P2Eとを通る第2直線522の位置情報を求め、また同様に、第3辺始点P3Sと第3辺終点P3Eとを通る第3直線523の位置情報を求め、また同様に、第1辺始点P1Sと第3辺終点P3Eとを通る第4直線524の位置情報を求める。
【0074】
この様にして、制御部400により、第1直線521~第4直線524により四方を囲まれた四角形の形状が圃場500の形状情報として近似的に認定される。
【0075】
なお、制御部400は、第4直線524の位置情報から所定距離(整地幅WRの半分の距離に所定の余裕度を加算した距離)隔てた平行な直線の位置情報を利用して、第4辺502に沿った枕地を自動走行する際に利用する第4辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0076】
上述した様に、本実施の形態によれば、圃場500の第1辺501~第3辺503の各辺において、ロボット乗用田植機1を極力隅部に近づけて始点と終点を取得出来るので、自動旋回の旋回開始位置及び旋回終了位置の基準となる第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2とを適切に設定することで、自動植付の精度向上を図ることが出来る。
【0077】
なお、上記構成によれば、第1辺始点P1S(
図5参照)と、第1直線521と第2直線522の第1交点と、第2直線522と第3直線523の第2交点と、第3辺終点との、合計4つの点の位置情報が、演算部420において同時に取得される。従って、本実施の形態の圃場500の形状情報は、第1辺始点P1S(
図5参照)と第1交点とを繋ぐ第1線分と、第1交点と第2交点を繋ぐ第2線分と、第2交点と第3辺終点とを繋ぐ第3線分と、第3辺終点と第1辺始点P1Sとを繋ぐ第4線分により形成された四角形として認定しても良い。
【0078】
なお、圃場500の四隅の位置情報として取得した、第1辺501~第3辺503のそれぞれの辺における始点と終点の位置情報については、圃場の形状やロボット乗用田植機1の隅部への配置状況等によって、第1辺終点と第2辺始点との位置情報は一致する場合もあるし異なる場合もあり、また、第2辺終点と第3辺始点との位置情報は一致する場合もあるし異なる場合もある。
【0079】
上記の通り、本実施の形態では、圃場500の第1辺501~第4辺504は、実際には凹凸部が存在するかもしれないが、上述した通り、第1辺501~第3辺503において取得した始点と終点の位置情報からそれらを通る直線(又は、線分)、即ち、第1直線521~第4直線524(又は、第1線分~第4線分)で囲まれる形状により圃場500の形状を近似的に認定する構成としている。
【0080】
次に、制御部400において、上述した圃場の形状情報に基づいて、第2列目以降の自動走行経路情報を演算により求める動作について説明する。
【0081】
制御部400は、上述した通り、A工程511のマニュアル走行において、少なくとも、始点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ始点PA1S参照)の最新の位置情報と、終点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ終点PA1E参照)の最新の位置情報とを、メモリ部410に格納している。
【0082】
そこで、制御部400は、上述した様にメモリ部410に格納されている、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ始点PA1S(
図5参照照)の位置情報、即ち、始点取得トリガー信号を受信した時の受信アンテナ310の位置の座標点と、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ終点PA1E(
図5参照照)の位置情報、即ち、終点取得トリガー信号を受信した時の受信アンテナ310の位置の座標点と、を通る直線を第1列目の基準ラインとして算出し、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路を、当該基準ラインに平行で、且つ、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の内の隣り合う列のそれぞれにおける整地ローター40による整地幅を利用した互いに所定の距離を隔てた複数の直線(目標ライン)として算出する。なお、第1列目の基準ラインの位置情報と、目標ラインの位置情報は、メモリ部410に記録される。
【0083】
上述した様に、本実施の形態のロボット乗用田植機1では、圃場外において作業者が操作する場面があり得ない整地ローター入/切スイッチ42からの入り信号又は切り信号を、始点取得トリガー信号又は終点取得トリガー信号として利用することで、基準ラインの位置情報を取得する構成としたことにより、基準ラインの位置情報を圃場外において誤取得することを防止出来る。
【0084】
なお、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出においては、メモリ部410に予め格納されているロボット乗用田植機1の整地ローター40の左右横方向における整地幅WR(
図2参照)と、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により予め設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)と、上記演算によりメモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第1直線521と第3直線523との間の距離等が利用される。
【0085】
重複幅可変ボリューム43(
図3参照)は、操縦ハンドル24の下方の各種操作ボタン(図示省略)の近傍に配置されており、隣り合う列における整地ローター40の整地幅WRの重なり代の寸法を、作業者が手動で調整するためのボリューム式のスイッチである。
重複幅可変ボリューム43を基準位置(ゼロ位置)から時計回りの方向に回すと整地幅WRの重なり代の寸法がゼロからプラス方向に次第に増加し、反時計回りの方向に回すと、整地幅WRの重なり代の寸法がゼロからマイナス方向に次第に増加、即ち、整地幅WRの縁部同士に隙間が生じてその隙間が次第に増加する様に設定可能となっている。
【0086】
これにより、重複幅可変ボリューム43により、整地幅WRの重なり代の寸法を、ゼロを基準として、プラス方向にもマイナス方向にも自由に調整出来るので、圃場の状況に応じて、重複幅可変ボリューム43をプラス方向に調整すれば、未整地領域の発生が防止出来て圃場の整地性が向上し植付精度が向上すると共に、圃場内の水が均一に供給され易くなるため苗の生育にムラが生じ難くすることが出来、また、重複幅可変ボリューム43をマイナス方向に調整すれば、整地幅WRの縁部が重なり合う場合に比べて、隣り合う列間の隙間が広くなり、風通しが良くなって苗の生育の向上を図れる。
【0087】
また、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出の結果、第(n+1)列目Ln+1の植付幅のスペースが狭くなり、8条分の植付幅が確保出来ないと制御部400により判定された場合、制御部400は、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅より所定範囲内において狭くした変更幅を利用して調整する。その場合、制御部400は、メータパネル60に、各列の間隔が変更幅により調整された旨を表示する。
【0088】
これにより、植付装置50の植付具51による植付作業を部分的に入り切りする部分クラッチ(図示省略)等の機構を備えることなく、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の全ての列において8条植えを行うことが出来て、部品点数の削減や、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0089】
なお、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出の結果、第(n+1)列目Ln+1の植付幅のスペースが8条分の植付幅より広くなると制御部400により判定された場合、制御部400は、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅より所定範囲内において広くした変更幅を利用して調整する。その場合、制御部400は、メータパネル60に、各列の間隔が変更幅により調整された旨を表示する。
【0090】
次に、制御部400において、枕地における整地ローター40による整地幅の範囲内で自動旋回が出来る様にするために旋回幅をも考慮して、第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2とを適切に設定する構成と、それを利用した旋回動作について説明する。
【0091】
即ち、制御部400は、演算部420において、メモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第4直線524の位置情報を基準として、第2辺502側にロボット乗用田植機1の整地幅WR(
図2参照)に所定の余裕幅Wαを加算した距離分だけ離れた位置(
図4参照)に、上述した第1植付開始ラインLU1を設定し、その第1植付開始ラインLU1の位置情報をメモリ部410に格納する。
【0092】
また、制御部400は、演算部420において、メモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第2直線522の位置情報を基準として、第4辺504側にロボット乗用田植機1の整地幅WR(
図2参照)に所定の余裕幅Wαを加算した距離分だけ離れた位置(
図4参照)に、上述した第2植付開始ラインLU2を設定し、その第2植付開始ラインLU2の位置情報をメモリ部410に格納する。
【0093】
ここで、所定の余裕幅Wαは、例えば、各列の始端又は終端に植え付けられる苗と、枕地の左右幅方向の端(
図4では、走行方向を基準として右端)に植え付けられる苗との間隔(例えば、約30cm)を確保するため等に設定されるものであり、ボリューム等により変更可能に構成されている。
【0094】
また、本実施の形態では、操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定した場合のロボット乗用田植機1の旋回幅WT(
図4参照)が、整地幅WRより小さくなる様に構成されている。更にまた、制御部400は、自動運転モードが「入り」状態である場合、自動操舵装置200に対して自動旋回を行わせる際に、操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定する様に構成されている。
【0095】
これにより、ロボット乗用田植機1が、例えば、第2列目L2の目標ライン上を自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行をして、植付具51の植付位置が第2植付開始ラインLU2に到達したと制御部400が判定すると、制御部400は、整地ローター40による整地動作を停止させ上昇させ、且つ植付装置50による植付動作を停止させ上昇させると共に、自動操舵装置200に対して操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定させて、第3列目L3の目標ラインに移動すべく略90°旋回を行わせる。そして制御部400は、更に、隣り合う目標ライン同士の間隔に応じて予めメモリ部410に記録されている所定の直線距離だけ第2植付開始ラインLU2に平行に直進走行させる。そして制御部400は、最後に再び、自動操舵装置200に対して操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定させて、第3列目L3の目標ライン上に移動させ、第2植付開始ラインLU2において、植付装置50と整地ローター40を降下させると共に、自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行を開始させる。
【0096】
なお、ロボット乗用田植機1が、例えば、第3列目L3の目標ライン上を自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行をして、植付具51の植付位置が第1植付開始ラインLU1に到達したと制御部400が判定した場合も、上記と同様の旋回動作を行う。
【0097】
以上のことから本実施の形態では、枕地における整地ローター40による整地幅の範囲内で自動旋回が行われるので、旋回開始位置周辺での未整地且つ未植付領域の発生を防止すると共に自動植付の精度向上を図ることが出来る。
【0098】
なお、ここで、旋回開始位置周辺での未整地且つ未植付領域の発生を防止することについて、更に説明する。
【0099】
上記構成とは異なる別のロボット乗用田植機において、枕地における整地ローター40の整地幅WRよりも旋回幅WTの方が大きい場合の旋回動作を、
図4を用いて説明すると次の通りである。
【0100】
即ち、例えば、第2列目L2の目標ライン上を自動直進走行した後、第2辺502の畦に干渉しない様に旋回させるためには、上述した第2植付開始ラインLU2の所定距離手前の位置から植付作業を停止させて自動旋回を開始する必要がある。そのため、最後に行う枕地の植付作業が完了した時点において、枕地に植え付けられた8条植えの両端の苗の内、第2植付開始ラインLU2側の苗と、第2列目L2の最後に植え付けられた苗との間には、上述した様に所定距離手前の位置から植付作業を停止させて自動旋回を開始させているので、その所定距離に対応する領域は、苗の植付が行われておらず、且つ、整地も行われていない領域として残る。そのため、その様な領域については、作業者が手作業で苗を植付けるが、未整地状態であるので、植付作業の前に整地作業も手作業で行う必要があり作業効率が低下する。
【0101】
これに対して、上述した様な本実施の形態のロボット乗用田植機1の構成によれば、この様な作業効率の低下を防止出来るものである。
【0102】
以上の様にして、制御部400は、第2列目L2~第n列目Lnにおける自動直進走行に必要な目標ラインの位置情報と、第2列目L2~第n列目Lnにおける植付開始と植付停止の基準位置の設定に必要な、換言すれば、植付開始位置に対応した旋回終了位置と植付停止位置に対応した旋回開始位置の基準位置の設定に必要な、第1植付開始ラインLU1(これを第1旋回基準ラインとも称す)と第2植付開始ラインLU2(これを第2旋回基準ラインとも称す)とを設定し、メモリ部410に格納する。
【0103】
なお、上記実施の形態では、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出において、整地ローター40の左右横方向における整地幅WR(
図2参照)と、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により予め設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)と、圃場の形状情報等が利用される場合について説明したが、これに限らず例えば、上記項目に加えて、植付装置50の左右両端に配置された植付具51間の植付幅WU(即ち、植付装置50の左右両端間の植付幅)(
図2参照)も利用した構成としても良い。この構成の場合、整地幅WRと植付幅WUとの情報から、整地ローター40の左右両端部が、平面視で、植付装置50の左右両端に配置された植付具51の植付位置を基準として、どれだけ外側に突き出しているかを示す突き出し寸法Wd(=(WR-WU)÷2)が固定値として特定出来るので、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により整地幅の縁部同士の重なり代の寸法をゼロに設定した際の、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkは、突き出し寸法Wdの2倍として特定することが出来る。
【0104】
よって、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)をWkとすると、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkは、2×Wd-Wkとして表すことが出来るので、作業者が、重複幅可変ボリューム43により重なり代の寸法Wkを調整することにより、当該植付け間隔Nk(=2×Wd-Wk=WR-WU-Wk)をも制御することが可能となる。
【0105】
例えば、突き出し寸法Wdが20cmの固定値である場合、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkを通常の30cmに設定しようとすれば、重複幅可変ボリューム43による重なり代の寸法Wk(=2×Wd-Nk)を10cmに設定すれば良い。また、例えば、突き出し寸法Wdが20cmの固定値である場合、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkを通常より広くして50cmに設定しようとすれば、重複幅可変ボリューム43による重なり代の寸法Wkを-10cmに設定すれば良い。即ち、重なり代の寸法Wkを-10cmに設定した場合、隣り合う列の整地ローター40による整地幅WRの縁部同士に隙間が生じており、その隙間が10cmとなり、隣り合う列間の植付け間隔Nkが30cmより広い50cmに設定出来て、風通しが良くなって苗の生育の向上を図れる。
【0106】
即ち、上記構成の場合、重複幅可変ボリューム43が、例えば、円柱形状を成した、整地幅の縁部同士の重なり代の寸法Wk=0を設定する基準位置に対して時計回り(プラス方向の設定)と反時計回り(マイナス方向の設定)の何れの方向にも回すことが可能なつまみであるとすれば、その重複幅可変ボリューム43が配置されている操作パネル側には、重複幅可変ボリューム43の回動軸芯を中心とする円弧状の第1ラインが表記されており、整地幅の縁部同士の重なり代の寸法Wkの数値がその第1ライン上に目盛りとして表示されている。更に、その第1ラインの外周側には、重複幅可変ボリューム43の回動軸芯を中心とする円弧状の第2ラインが表記されており、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkの数値が、第1ライン上の目盛りと対応付けて第2ライン上に目盛りとして表示されている構成としても良い。また、上記の第1ライン上の目盛りと第2ライン上の目盛りを用いたアナログ表示に代えて、重複幅可変ボリューム43の設定値をデジタル表示しても良い。 次に、本実施の形態のロボット乗用田植機1の自動運転制御中において、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作を中心に説明する。
【0107】
なお、本実施の形態では、上述した様に、圃場500の第4辺504側の畦が苗や肥料の補給作業を行うものであることが、設定スイッチにより事前に設定されてメモリ部410に記録されているものとする。
【0108】
即ち、施肥装置3から圃場に繰り出される肥料を検知する肥料繰出量検知センサ82(
図3参照)を設け、制御部400が、その検知結果から施肥量を積算すると共にホッパーにおける肥料残量を算出する構成とし、制御部400は、第2列目L2~第n列目Lnの内の奇数列目の自動直進走行中において、機体が第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)(
図4参照)に接近し次の旋回動作に入る直前の時点で算出した肥料残量と、肥料繰出量と、1往復の距離と、車速とから、次の旋回動作の後の1往復の自動走行の途中、換言すれば、次の旋回動作の後、機体が次に第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)(
図4参照)に達するまでの走行途中において、肥料が無くなるか否かを判定する。
【0109】
即ち、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる。
【0110】
これにより、次の1往復の植付工程の途中で肥料切れになることが回避出来るので、第4辺504の畦際で停止しているロボット乗用田植機1に対して、作業者は、ホッパー3への肥料補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来る。なお、肥料補給作業の後、作業者が、自動運転継続スイッチ(図示省略)をONすることにより、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0111】
また、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる構成としたことにより、作業者が乗車している場合の安全が確保出来る。
【0112】
なお、上記説明では、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作について説明したが、これに限らず例えば、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなり欠株となる状況を回避するために、上記と同様、制御部400は、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる構成としても良い。
【0113】
ここで、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるか否かの判定は、株間、植付具51の苗取り量、苗タンク52の横送り量等の各データをメモリ部410に記録することにより、苗タンク52上にある苗の残量で、次の1往復での植付作業が可能かどうかを制御部400が判定する。
【0114】
これにより、次の1往復の植付工程の途中で苗切れになることが回避出来るので、第4辺504の畦際で停止しているロボット乗用田植機1に対して、作業者は、苗タンク52への苗補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来る。なお、苗補給作業の後、作業者が、自動運転継続スイッチ(図示省略)をONすることにより、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0115】
また、上記説明では、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作について説明したが、これに加えて、肥料補給作業のタイミングで、補助苗の補給作業も連動させて行う構成としても良い。即ち、この構成の場合、次の1往復の植付工程の途中で肥料切れになるものと制御部400が判定したことにより、ロボット乗用田植機1が第4辺504の畦際で停止すると、それに連動して制御部400からの指令により自動的にレール状態になる電動補助苗枠が設けられている。また、電動補助苗枠は、手動操作により元に戻すことが出来て、元に戻すことにより、制御部400は、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0116】
これにより、通常、肥料補給のタイミングで補助苗も補給することが多いので、双方の補給作業を連動させて行わせることにより、作業効率の向上を図ることが出来る。
【0117】
また、上記構成では、制御部400は、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504の畦際まで直進走行させて停止させる場合について説明した。この構成の場合、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、減速させながら90°旋回させて機体が第4辺504の畦に平行になった状態を苗供給位置として停止させる構成としても良い。また、この構成の場合、苗タンク52の上部にレール状補助苗枠を備え、苗供給位置は、当該レールが畦まで届く位置で設定する。
【0118】
なお、上記実施の形態では、圃場500の枕地をマニュアル走行することにより、圃場500の形状情報を取得する場合について説明したが、これに限らず例えば、圃場500の形状情報として、予め取得されている地図情報や、トラクター等による走行情報を記録させて用いても良い。
【0119】
また、上記実施の形態では、第(n+1)列目Ln+1の8条の植付を確保するために、制御部400が、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅から変更幅に自動的に変える構成について説明したが、これに限らず例えば、第n列目Lnと第(n+1)列目Ln+1の最外位置に植え付けられる隣り合う苗同士の植付け間隔Nkのみ変更すれば、第(n+1)列目Ln+1の8条の植付を確保することが可能であると制御部400が判定した場合は、第n列目Lnと第(n+1)列目Ln+1の最外位置に植え付けられる隣り合う苗同士の植付け間隔Nkのみ設定幅から変更幅に変更する構成としても良い。
【0120】
また、上記実施の形態では、任意の目標ライン上から自動旋回により隣の目標ラインに移動する場合に、隣り合う目標ライン同士の間隔に応じて予めメモリ部410に記録されている所定の直線距離だけ第1植付開始ラインLU1に、又は第2植付開始ラインLU2に平行に直進走行させる構成について説明したが、これに限らず例えば、メモリ部410に記録されている所定の直線距離を作業者がボリューム操作により微調整出来る構成としても良い。これにより植付開始位置の精度の向上が図れる。
【0121】
また、上記実施の形態では、作業者がD工程514をマニュアル走行する際は、整地ローター入/切スイッチ42は、「切り」状態に設定されているものとして説明したが、これに限らず例えば、自動運転モードが「入り」状態であって、作業者は、D工程514においてマニュアル走行を開始するときに、整地ローター入/切スイッチ42を「入り」操作し、D工程514においてマニュアル走行を停止するときに、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」操作する構成としても良い。
【0122】
この構成の場合、上記構成例と同様に、制御部400は、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」信号と「切り」信号を、それぞれ始点取得トリガー信号、終点取得トリガー信号であると判定して、それぞれの判定に基づいて、そのときの受信アンテナ310の位置の最新の位置情報を、D工程アンテナ始点の位置情報(座標値)、D工程アンテナ終点の位置情報(座標値)としてそれぞれメモリ部410に記録し、且つ、そのときの整地ローター40のローター41の左端部(ことを第4辺始点と称す)の位置情報(座標値)とロボット乗用田植機1の左前端仮想点(これを第4辺終点と称す)の位置情報(座標値)とを演算させてメモリ部410に記録する構成としても良い。これにより、第4直線524を、第4辺始点と第4辺終点とを通る直線として決定することが出来て、その位置情報を求めることが出来る。また、この構成の場合、制御部400は、D工程514のマニュアル走行におけるD工程アンテナ始点の位置情報(座標点)と、D工程514のマニュアル走行におけるD工程アンテナ終点の位置情報(座標点)とを利用して、第4辺504に沿った枕地を自動走行する際に利用する第4辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成としても良い。
【0123】
また、上記実施の形態では、第2列目L2以降の自動走行は、ロボット乗用田植機1の直前の列における実際の走行軌跡に関係なく、目標ラインの位置情報を基準として自動走行する構成について説明したが、これに限らず例えば、ロボット乗用田植機1の直前の列における実際の走行軌跡の位置情報をメモリ部410に記録させ、直前の列に対応する目標ラインとその実際の走行軌跡とのズレ量を演算させ、その演算結果が所定範囲を超えていると制御部が判定した場合は、制御部は、そのズレの位置と演算結果(ズレ量)とに基づいて、次の列に対応する目標ラインの位置情報を修正した上で、次の列の自動走行を実行させる構成としても良い。
【0124】
また、上記実施の形態では、苗補給や肥料補給が必要な場合に、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行させ畦際で停止させる構成について説明したが、これに加えて例えば、エラーが発生したと、制御部400が判定した場合には、安全性の確保のために、第4辺504の畦際まで戻ってくる構成としても良い。
【0125】
また、制御部400は、自動運転モード状態で自動走行中において、エラーが発生したと判定した場合には、警告音を鳴らして停車させ、警告音が鳴っている間に手動操作に変更した場合、手動操作を優先させる構成としても良い。
【0126】
また、ロボット乗用田植機1において、人が乗車していることを検知するセンサを備え、当該センサにより人が乗車していると検知した場合には、安全性の確保のために、制御部400は、旋回速度を無人の場合に比べて遅くさせる構成としても良い。
【0127】
また、ロボット乗用田植機1において、フロート53の泥押し検知装置として、フロート53のリンク支点部に圧力センサ(図示省略)を設け、その検知結果から、泥押しにより圧力値が高くなったと判定された場合は、フロート53の感度を、標準から敏感側に変更する構成としても良い。これにより、自動で感度調節が行える。
【0128】
また、ロボット乗用田植機1において、フロート53の泥押し検知装置として、フロート53のリンク支点部の後方に、バネ鋼とリミットスイッチ(図示省略)を設け、フロート53が泥押しされたときには、バネ鋼の復元力に対抗してリンク支点部が標準位置より後方に移動することでリミットスイッチがONし、泥押しの無いときは、バネ鋼の復元力によりリンク支点部が標準位置に戻り、リミットスイッチがOFFする構成としても良い。これにより、高額の圧力センサを用いずにメカ式の構成により自動感度調節が行える。
【0129】
また、ロボット乗用田植機1において、水管理をしやすくするために、植付時は端条外側に溝堀りを行う構成としても良い。この構成の場合、前板ガード部の一部に溝きり機構を設けることで、植付と同時に溝きりを行うことが出来る。
【0130】
また、ロボット乗用田植機1において、水管理をしやすくするために、植付時は端条外側に溝堀りを行う構成としても良い。この構成の場合、フロート53の一部に溝きり機構を設けることで、植付と同時に機体外側の溝きりを行うことが出来る。
【0131】
また、ロボット乗用田植機1において、前板ガード部に溝堀り機を設け、A工程511~D工程514の全周をマニュアル走行によりティーチングする際、畦と植付条の間に溝を掘ることで、ケラや鼠の被害を少なくし、雑草が圃場に入ってこない様にする構成としても良い。これにより、苗の生育ムラを避け、収量を上げることが出来る。また、後の生育管理(給排水、中干し)が楽になる。
【0132】
また、ロボット乗用田植機1において、前板ガード部に溝堀り機を設けると共に、畦の判別用として画像認識装置を設け、土畦など特に境界が曖昧(不連続)である場合に、畦と植付条の間に溝を掘る構成としても良い。これにより、苗の生育ムラを避け、収量を上げることが出来る。また、後の生育管理(給排水、中干し)が楽になる。
【0133】
また、植付部の高さ制御装置を備えたロボット乗用田植機1において、溝堀り機を植付部に設け、植付部をより下げると溝の深さが深くなり植付部をより上げると溝の深さは浅くなるので、水口の排水側に向かって、徐々に植付部を下げることで溝の高度が下がる様に溝きりを行う構成としても良い。この構成の場合、水口(給水側、排水側)の位置情報を事前に設定し、位置情報取得装置300により取得されるロボット乗用田植機1の位置情報を利用して、溝きりの適正化を図ることが出来る。これにより、排水性が向上し苗の生育が安定する。
【0134】
また、ローリング制御機構を備えたロボット乗用田植機1において、溝堀り機を設け、水口の排水側に向かって、溝の高度が下がる様に溝きりを行う構成としても良い。この構成の場合、水口(給水側、排水側)の位置情報を事前に設定し、位置情報取得装置300により取得されるロボット乗用田植機1の位置情報を利用して、ローリングによる車体の左右方向への傾斜角度を制御することで、溝の高度を変化させて溝きりの適正化を図ることが出来る。これにより、排水性が向上し苗の生育が安定する。
【0135】
また、上記実施の形態では、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、イオン化傾向の測定に加えて、同時にpH値の測定も行うこととし、制御部がpH値に応じて土壌の排水性を推算し、排水性が悪い場所では、還元作用によりアルカリ化している点や施肥効果が薄い点等を考慮して、制御部が施肥量を標準量に比べて少なく設定する構成としても良い。これにより、可変施肥の効率を向上させることが出来る。また、この構成の場合、pH測定器電極を電気抵抗値の測定機構と共用する構成としても良い。
【0136】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両は、作業装置の一例として植付装置50が走行車体2に連結されたロボット乗用田植機である場合について説明したが、これに限らず例えば、本発明の作業車両は、作業装置の他の例として播種機を連結したロボット作業車両であっても良い。この構成の場合、圃場のpH値を測定することで制御部が排水性を推算し、それに応じて制御部が覆土を変化させる構成としても良い。具体的には、排水性が悪いと制御部により判定された場所では、覆土を標準量に比べて少なくするよう制御する構成としても良い。これにより、苗立ち性の向上が図られる。
【0137】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両は、作業装置の一例として植付装置50が走行車体2に連結されたロボット乗用田植機である場合について説明したが、これに限らず例えば、本発明の作業車両は、作業装置の他の例として播種機を連結したロボット作業車両であっても良い。この構成の場合、圃場のpH値を測定することで制御部が排水性を推算し、それに応じて制御部が溝きりを変化させる構成としても良い。具体的には、排水性が悪いと制御部により判定された場所では、溝きりを標準量に比べて深くするよう制御する構成としても良い。これにより、苗立ち性の向上が図られる。
【0138】
また、上記実施の形態では、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、pH測定器によりpH値の測定を行うことで排水性を推定し、その推定結果に応じて(例えば、排水性の良い場所では施肥量を標準量に比べて多くする)、可変施肥を行う構成としても良い。これにより高額なセンサ類を備えなくても、安価に可変施肥を実現出来る。
【0139】
また、上記実施の形態では、pH測定器80)(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、リンクセンサが検出するリンク角度に応じて耕深(圃場の深さ)を計り、それに応じて(例えば、浅い場所では施肥量を標準量に比べて多くする)、可変施肥を行う構成としても良い。なお、この構成の場合、本来、植付装置50の高さを検出するために、フロート53を支持する回動支点のリンク角度を検出するリンクセンサが設けられており、そのリンクセンサの検出結果を、本来の役割以外に可変施肥の実現にも兼用している。
これにより高額なセンサ類を新たに備えなくても、安価に可変施肥を実現出来る。
【0140】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、地形データと衛星画像データと土質分布データから、制御部が、その圃場が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0141】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、地形データと衛星画像データとによって分類された土質分布と、実際撮影された圃場の土画像とから、制御部が、その圃場土質が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0142】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、実際撮影された圃場の土画像から、制御部が、その圃場土質が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0143】
また、自律直進田植機において、学習機会として、ティーチング時の操舵を利用し、想定される出力と実出力が同じで実入力が異なる場合、その時センシングしたパラメータで寄与率が高いものを取り上げ、同一圃場での制御パラメータとして重みを多くつける構成としても良い。通常、学習を人工知能まかせにするとデータ量が必要となり時間がかかるが、上記構成によれば、ティーチング時の操舵を利用しながら、学習速度を速めることが出来る。
【0144】
また、上記のロボット乗用田植機1において、畦の自動検知としてエアブローを行いながら、カメラ撮影することで、雑草などによるノイズを除去しやすくする構成としても良い。通常、静止している物体は障害物として認識してしまうが、上記構成によれば、ノイズを低減し、畦の自動検知を行うことが出来る。また、エアブローに代えて、エンジンの排気方向を畦に向ける構成としても良い。これにより、ブロアを新たに設けることなく、撮影時のノイズを低減出来る。
【0145】
また、上記のロボット乗用田植機1において、超音波センサを用いて畦の検出を行う構成としても良い。この構成の場合、サイドマーカー位置に当該センサを設け、植付圃場との距離の違いから畦を検出する構成であり、また、機体姿勢の変化によって検出値の補正を行う構成である。これにより、地形をマッピングしていくことが出来る。
【0146】
また、自律直進制御において、スリップ率と耕深によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、衛星測位システムと耕深センサ(昇降リンク角度センサ)を用いて経路からのズレとそれに対する出力とともにデータを収集し、その相関の強さを算定し、相関の強いデータと出力とを紐付ける構成としても良い。これにより、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0147】
また、自律直進制御において、走行速度によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、走行速度の速い場合は旋回出力を小さくし、遅い場合は旋回出力を大きくし、重み付けは、衛星測位システムによる経路からのズレとそれに対する出力とともに収集した速度データにより決定する構成としても良い。これにより、速度以外の状況によっても左右される重み付け値を一律に固定してしまうことが無いので多様な状況にも適応出来て、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0148】
また、自律直進制御において、各種条件によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、衛星測位システムによる経路からのズレとそれに対する出力とともに収集したデータ(速度、圃場スリップ率、耕深)によって、相関の高さによってデータに重み付けをし、重み付け値は、圃場情報としてメモリ部に記録する構成としても良い。これにより、重み付け値が一定値になることがないので多様な状況にも適応可能となり、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0149】
また、上記のロボット乗用田植機1において、植付時の圃場データ(速度、圃場スリップ率、耕深)と植付データ(植付株数、苗取り量、植付深さ)を記録し、衛星画像での実り具合や収量コンバインによる計量結果との相関を探り、最も相関の高いデータを割り出し、植付条件を最適化する構成としても良い。これにより、圃場状態によらず最適条件で植付が出来ると共に、過学習を回避することが出来る。
【0150】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として8条型のロボット乗用田植機1について説明したが、これに限らず例えば、4条植え、5条植え、或いは6条植え等の構成であっても良く、条数に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明によれば、整地装置による未整地領域の有無を事前に把握することが出来、例えば、ロボット乗用田植機等として有用である。
【符号の説明】
【0152】
1 ロボット乗用田植機
2 走行車体
24 操舵ハンドル
40 整地ローター
43 重複幅可変ボリューム
300 位置情報取得装置
400 制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと実際撮影された圃場の画像を用いて色味の分類を判断した分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと圃場の地形データを用いて色味の分類を判断した分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
前記分類データとは土質を分類した土質分類データであり、
前記走行車体(2)に前記圃場に苗を植える植付装置(50)を備え、
前記土質分類データから苗を圃場に植える植付深さを調節することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で苗の植付け等の作業を行う際に用いる苗移植機等の作業車両には、施肥装置とGPSを搭載し操舵部材を直進位置に保持して自動直進走行を行ない、機体の進行方向を自動的に修正することができる自動操舵装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業車両では、田植や苗の生育のノウハウが無い状態では収量を増やすことが困難である。また、圃場の形状を認識していないため、苗切れになるタイミングが把握できないため、作業効率低下する問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来の作業車両の課題に鑑みて、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことができると共に、圃場の形状を認識し、作業者は、苗と肥料補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと実際撮影された圃場の画像を用いて色味の分類を判断した分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両である。
【0007】
第2の本発明は、
走行車体(2)と、前記走行車体(2)に、圃場に資材を供給する供給装置を備え、
圃場の衛星画像データと圃場の地形データを用いて色味の分類を判断した分類データから前記資材の供給量を調節することを特徴とする作業車両である。
【0008】
第3の本発明は、
前記分類データとは土質を分類した土質分類データであり、前記走行車体(2)に前記圃場に苗を植える植付装置(50)を備え、前記土質分類データから苗を圃場に植える植付深さを調節することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、分類されたデータから資材の供給量を調節することで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明にかかる実施の形態におけるロボット乗用田植機の左側面図
【
図2】本実施の形態におけるロボット乗用田植機の平面図
【
図3】本実施の形態のロボット乗用田植機における制御部と各種装置及び各種センサ等との接続関係を示すブロック図
【
図4】本実施の形態の圃場におけるロボット乗用田植機の走行経路、及び作業手順についての概要を説明するための圃場の平面模式図
【
図5】本実施の形態の圃場の各辺に沿ったマニュアル走行に基づいて、圃場の形状情報を取得する作業手順等についての概要を説明するための圃場の平面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の作業車両の一実施の形態にかかる8条植えのロボット乗用田植機について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1及び
図2は本実施の形態にかかるロボット乗用田植機の左側面図と平面図である。
【0013】
本実施の形態のロボット乗用田植機1は、
図1、
図2に示す様に、走行車体2の後側に昇降リンク装置30を介して植付装置50が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置3のホッパー3aが設けられている。昇降リンク装置30は、上側リンクアーム31と、下側リンクアーム32とを備えた平行リンクである。
【0014】
また、植付装置50の下方には、施肥装置3の施肥ホース(図示省略)から供給されてくる肥料を、作溝部(図示省略)で圃場に形成される溝部に投入した後、覆土する覆土部90(
図3参照)を備えている。また、覆土部90に設けられた覆土プレート駆動装置91は、制御部400からの指令に応じて覆土部90の覆土プレート(図示省略)を作動させる様に構成されており、これにより覆土量が変更可能となる構成である。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪4、4及び左右一対の後輪5、5を備えた四輪駆動車両ある。
【0016】
また、本実施の形態のロボット乗用田植機1には、圃場の水素イオン指数(pH値)を測定するpH測定器80(
図3参照)を備えている。具体的には、pH測定器80の電極センサが、ロボット乗用田植機1の左右一対の前輪4のリム部に対向配置されている。
【0017】
本実施の形態のロボット乗用田植機1の施肥作業中において、制御部400(
図3参照)が、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、圃場のある測定位置におけるpH値が予め定められた閾値以上であると判定した場合、その測定位置が還元作用の高い(即ち、排水性の悪い)場所であると判定して、覆土プレート駆動装置91に対して指令を出して、覆土プレートを作動させて、覆土の量を所定基準より少なくする方向に変更させる構成である。これにより、還元作用が高いと判定された測定位置の排水性を高め、酸化を促し土質を改善することが出来る。
【0018】
また、トランスミッションケース6の背面部に車体メインフレーム7の前端部が固着されており、他方、その車体メインフレーム7の後端左右両端部には、昇降リンク装置30を回動可能に支持する左右一対のリンク支持ステー10が固定されている。
【0019】
エンジン20は車体メインフレーム7の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置12及びHST(静油圧式無段階変速機)13を介してトランスミッションケース6に伝達される。トランスミッションケース6に伝達された回転動力は、トランスミッションケース6内の変速機構(副変速装置等)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪4、4、及び左右後輪5、5を駆動する。
【0020】
また、トランスミッションケース6から取出された外部取出動力は、植付クラッチ(図示省略)を介して植付伝動軸21によって植付装置50へ伝動される。
【0021】
また、
図1、
図2に示す様に、植付装置50は、第1苗植付部55a、第2苗植付部55b、第3苗植付部55c、第4苗植付部55dを備え、更にそれぞれの苗植付部には、苗を植付ける爪を有する植付具51が、左右両側に2つずつ回動可能に設けられ、合計8条の苗が圃場に植え付けられる構成である。
【0022】
また、
図1、
図2に示す通り、植付装置50の下部には、中央位置と、左右両側の位置に、それぞれフロート53が設けられている。これらフロート53が圃場の泥面上を整地しつつ滑走し、その整地跡に、植付具51により苗が圃場に植え付けられる。
【0023】
また、植付装置50の下部には、平面視で略門型形状に配置されたローター41を、左側後輪ギヤケース18Lから取り出される動力で、自在継手40aを介して回動させることにより、圃場面を整地する整地ローター40が設けられている。
【0024】
また、整地ローター40は、植付装置50に対して、昇降モータ(図示省略)の作動により昇降可能に取り付けられており、ローター41の回動の入り切りは、左側後輪ギヤケース18Lに設けられた所定のクラッチ(図示省略)の入り切り動作によって行われる。
【0025】
また、操縦座席22の前方には操縦ハンドル24が設けられている。操縦ハンドル24の右側又は左側には、整地ローター40を入り切りするための整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)が設けられている。整地ローター入/切スイッチ42を「入り」操作すると、後述する制御部400(
図3参照)からの指令により、整地ローター40が圃場面に降下すると共に、ローター41が回動を開始する構成である。また、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」操作すると、後述する制御部400(
図3参照)からの指令により、整地ローター40が圃場面から上昇すると共に、ローター41が回動を停止する構成である。
【0026】
また、操縦ハンドル24の右側又は左側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え及び走行速度などを設定するHST操作レバー(図示省略)、植付装置50の昇降及び植付作業の入切を操作する植付作業レバー14(
図2参照)等の各種レバーが設けられている。
【0027】
なお、本実施の形態のロボット乗用田植機1では、走行車体2が旋回したり、後進走行した場合には、それらの動作に連動して昇降リンク装置30が上昇することにより植付装置50が上昇すると共に植付作業が停止される構成である。
【0028】
また、操縦ハンドル24の下方には、各種操作ボタン(図示省略)と、後述する自動運転モードの入り切りを行うための自動運転モード入/切スイッチ61(
図3参照)と、各種メータや表示部を配置したメータパネル60(
図2参照)が設けられている。
【0029】
また、本実施の形態のロボット乗用田植機1は、
図3に示す様に、送受信装置70と、自動操舵装置200と、位置情報取得装置300等と、その他、各種センサ等を備えており、これらは後述する制御部400(
図3参照)に電気的に接続されている。
【0030】
図3は、ロボット乗用田植機1における制御部400と各種装置及び各種センサ等との接続関係を示すブロック図である。
【0031】
送受信装置70は、圃場の畦に居て、無人運転中のロボット乗用田植機1による自動植付作業を監視している作業者が、必要に応じて、作業者が携帯しているリモコン装置71(
図3)を用いて当該ロボット乗用田植機1を遠隔操作する際の信号の送受信を行うための装置である。
【0032】
自動操舵装置200は、操縦ハンドル24を自動で操作して、走行車体2を直進方向に維持したり、旋回させたりすることが可能な構成である。
【0033】
即ち、自動操舵装置200は、任意の回転力を自動で操縦ハンドル24に付与することにより、操縦ハンドル24を回転させる操舵モータ210と、操縦ハンドル24の回転角度(ハンドル切れ角)を検知するハンドルポテンショメータ220と、を有している。
【0034】
また、位置情報取得装置300は、GNSS(Global Navigation Satellite System)に基づいて地球上でのロボット乗用田植機1の位置情報(即ち、座標情報)を取得する構成であり、人工衛星からの信号を所定間隔で受信する為の受信アンテナ310を備え、位置情報取得装置300により取得された位置情報は、制御部400に送られる構成である。
【0035】
制御部400に送られた位置情報や、後述する、当該位置情報に基づいて得られた圃場の形状情報や、圃場における自動植付作業時においてロボット乗用田植機1が走行すべき目標走行経路の位置情報(位置座標)等は、メモリ部410(
図3参照)に記録可能に構成されている。また、圃場の形状情報や、目標走行経路の位置情報等は、後述する演算部420により算出される。
【0036】
また、受信アンテナ310は、
図1、
図2に示す通り、正面視で門型のアンテナ固定部材320の上面中央部に固定されており、アンテナ固定部材320の左右の下端部321L、321Rは、フロアステップ23の前端部左右両側面に固定されている。
【0037】
なお、本実施の形態の走行車体2は、本発明の走行車体の一例にあたり、本実施の形態の植付装置50は、本発明の作業装置の一例にあたる。また、本実施の形態の整地ローター40は、本発明の整地装置の一例にあたり、本実施の形態の整地ローター入/切スイッチ42は、本発明の整地装置入/切スイッチの一例にあたる。また、本実施の形態の位置情報取得装置300は、本発明の位置情報取得装置の一例にあたり、本実施の形態の制御部400は、本発明の制御部の一例にあたる。また、本実施の形態の施肥装置3は、本発明の施肥装置の一例にあたる。また、本実施の形態のpH測定器80は、本発明の検知装置の一例にあたり、本実施の形態の覆土部90は、本発明の覆土部の一例にあたる。
【0038】
以上の構成において、本実施の形態のロボット乗用田植機1を用いた自動運転の動作について、主として
図4、
図5を用いて説明する。
【0039】
まず、
図4を用いて、ロボット乗用田植機1の走行経路、及び作業手順についての概要を説明する。
【0040】
図4は、圃場におけるロボット乗用田植機1の走行経路、及び作業手順についての概要を説明するための圃場の平面模式図である。
【0041】
図5は、圃場の各辺に沿ったマニュアル走行(手動走行)に基づいて、圃場の形状情報を取得する作業手順等についての概要を説明するための圃場の平面模式図である。
【0042】
本実施の形態の圃場500は、四方を第1辺501、第2辺502、第3辺503、及び第4辺504で囲まれた、略長方形状の圃場である。
【0043】
また、本実施の形態では、ロボット乗用田植機1に対する苗や肥料の補給作業は、圃場500の第4辺504側にて行うため、ロボット乗用田植機1が自動運転中は、リモコン装置71を携帯した作業者は、第4辺504側に待機して、その動作を監視しているものとする。
【0044】
また、本実施の形態では、圃場500の第4辺504側の畦が苗や肥料の補給作業を行うものであることを事前に設定することが出来る設定スイッチ(図示省略)が設けられており、その設定スイッチからの設定情報を受け付けた制御部400は、その情報をメモリ部410に記録する構成である。なお、当該設定スイッチは、操作性の向上を図るために、操縦ハンドル24の周辺又は、メータパネル60(
図2参照)周辺に設けられている。
【0045】
本実施の形態では、まず、ロボット乗用田植機1に作業者が乗車して、自動運転モード入/切スイッチ61を「入り」にして、作業者が操縦ハンドル24を操作することで、圃場500の第1辺501、第2辺502及び第3辺503に沿ってA工程511、B工程512、及びC工程513をマニュアル走行しながら、植付け作業を行うことなく、整地ローター40を作動させて枕地の整地作業を行う。
【0046】
このA工程511~C工程513を、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」操作と「切り」操作を適宜繰り返しながらマニュアル走行することにより、制御部400は、圃場500の形状情報の特定に必要な圃場の四隅に関する位置情報と、目標ラインの算出に必要な基準ラインの位置情報とを取得する。また、制御部400は、これら取得した各種の位置情報に基づいて、自動旋回動作可能な自動走行経路情報(第2列目L2以降の目標ラインの位置情報、第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2との位置情報等を含む)を演算により求め、それらの情報をメモリ部410に格納する。
【0047】
次に、圃場500の第4辺504に沿ったD工程514(
図4では、破線で示した)を植付け作業を行うことなくマニュアル走行して、第2列目L2の第1植付開始位置L2S(第1植付開始ラインLU1と第2列目L2との交点)の手前で時計回りに旋回して第1植付開始位置L2Sで走行を停止させた後、作業者はロボット乗用田植機1から降りて、第4辺504側の畦に移動する。
【0048】
なお、本実施の形態のロボット乗用田植機1において、作業者がD工程514をマニュアル走行する際は、整地ローター入/切スイッチ42は、「切り」状態に設定されているものとするが、これに限定されるものではない。
【0049】
その後、作業者は、第4辺504の畦の位置から自ら携帯しているリモコン装置71を操作して、ロボット乗用田植機1に対して無人の自動運転を開始させる指令を送信する。
【0050】
送受信装置70を介して、自動運転開始指令を受信した制御部400は、メモリ部410に格納されている自動走行経路情報に基づいて、自動操舵装置200等に指令を出して、第2列目L2~第n列目Lnにおける旋回を含む走行動作と植付作業とを、第4辺504の畦側において行われる肥料や苗の補給作業等の例外を除き、無人のまま自動で行わせる。
【0051】
次に、第n列目Lnの自動植付作業が終了した後、制御部400は、引き続き、メモリ部410に記録されている自動走行経路情報に基づいて、自動操舵装置200等に指令を出して、圃場500の枕地(第1列目L1と、第2辺502に概ね平行な列と、第(n+1)列目Ln+1と、第4辺504に概ね平行な列と含む)を無人のまま又は作業者が乗車して自動運転により走行させながら自動植付作業を行わせた後、自動運転を終了する。
なお、制御部400は、第1列目L1の自動走行については、後述する第1列目の基準ラインの位置情報を利用し、第(n+1)列目Ln+1の自動走行については、第(n+1)列目Ln+1に対応する目標ラインの位置情報を利用する。無人の場合は、作業者によるリモコン装置71からの指令により自動運転を終了する。
【0052】
なお、枕地の植付作業は、全部又は一部の走行・旋回工程においてマニュアルにより実行しても良い。
【0053】
ここで、
図4に示す、第1植付開始ラインLU1は、第2列目L2~第n列目Lnの第4辺504側における、植付開始位置と植付停止位置の基準位置を示すための直線であり、第2植付開始ラインLU2は、第2列目L2~第n列目Lnの第2辺502側における、植付停止位置と植付開始位置の基準位置を示すための直線である。これらのラインの演算部420による設定については更に後述する。
【0054】
次に、主として
図5を用いて、A工程511~C工程513において作業者が乗車してマニュアル走行することにより、制御部400が圃場500の形状情報、及び自動走行経路情報を演算により取得する動作を中心に更に説明する。
【0055】
作業者は、A工程511(
図4参照)において、ロボット乗用田植機1の整地ローター40のローター41の左端部が、圃場500の第1辺501と第4辺504の隅部の位置に、出来る限り近づく様にロボット乗用田植機1を配置する。
【0056】
作業者は、上述した様に、自動運転モード入/切スイッチ61を「入り」にした後、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)を「入り」状態に設定し、植付け作業を行うことなくA工程511におけるマニュアル走行を開始する。制御部400は、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)からの「入り」状態を示す信号を受け付けて、整地ローター40を圃場面に降下させると共にローター41の回動を開始させる。
【0057】
なお、本実施の形態におけるマニュアル走行は、作業者が、ロボット乗用田植機1を圃場500の各辺の凹凸に沿って走行させるものであり、その走行軌跡が直線的なものになるとは限らない。
【0058】
また、自動運転モード入/切スイッチ61が「入り」に設定されており自動運転モードが「入り」状態にある場合において、整地ローター入/切スイッチ42が「入り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、その信号を本来の意味以外に始点取得トリガー信号でもあると判定し、演算部420に対して、その判定の直後又は直前において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の最新の位置情報(座標値)と、後述する所定の後端位置変換定数とを利用して、整地ローター40のローター41の左端部の位置情報(座標値)を求めさせ、その演算結果を第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0059】
なお、上記信号を始点取得トリガー信号であると判定した直前又は直後において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ始点PA1S参照)の最新の位置情報もメモリ部410に記録する構成であり、制御部400が、後述する終点取得トリガー信号の判定をした場合についても、同様に、受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ終点PA1E参照)の最新の位置情報をメモリ部410に記録する構成である。
【0060】
ロボット乗用田植機1を圃場500の第1辺501の凹凸に沿ってマニュアル走行させることでA工程511の終端部までくると、作業者は、ロボット乗用田植機1の走行車体2の前端部2a(
図1参照)が、圃場500の第2辺502の直前まで達した位置でロボット乗用田植機1の走行を停止させ、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」状態に設定するので、これに連動して制御部400からの指令により、整地ローター40は回動を停止すると共に、所定高さまで上昇する。
【0061】
また、自動運転モード入/切スイッチ61が「入り」に設定されており自動運転モードが「入り」状態にある場合において、整地ローター入/切スイッチ42が「切り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、その信号を本来の意味以外に終点取得トリガー信号でもあると判定し、演算部420に対して、その判定の直後又は直前において位置情報取得装置300により取得されている受信アンテナ310の最新の位置情報(座標値)と、後述する所定の前端位置変換定数とを利用して、ロボット乗用田植機1の後述する左前端仮想点の位置情報(座標値)を求めさせ、その演算結果を第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0062】
ここで、所定の後端位置変換定数とは、受信アンテナ310の位置における位置情報(座標値)を用いて、整地ローター40のローター41の左端部の位置(即ち、上記の第1辺始点P1S(
図5参照)の位置)における位置情報(座標値)を演算で求めるための変換定数であり、ロボット乗用田植機1の構成及びサイズによって両者の位置関係は予め確定した値であり、メモリ部410に予め格納されているものとする。
【0063】
また、所定の前端位置変換定数とは、受信アンテナ310の位置における位置情報(座標値)を用いて、ロボット乗用田植機1の走行車体2の前端部2a(
図1参照)を通り、走行車体2の左右方向に平行に伸びる第1仮想直線と、整地ローター40のローター41の左端部の位置を通り、走行車体2の前後方向に平行に伸びる第2仮想直線との、平面視における交点(これを、左前端仮想点と称す)の位置(即ち、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置)における位置情報(座標値)を演算で求めるための変換定数であり、ロボット乗用田植機1の構成及びサイズによって両者の位置関係は予め確定した値であり、メモリ部410に予め格納されているものとする。
【0064】
上記の様に、ロボット乗用田植機1を圃場500の隅部に出来る限り近づく様にマニュアルで操縦して、第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報と、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報とを得ることにより、これらの位置情報を圃場500の第1辺501の両端部の位置情報の近似値として利用することが出来る。
【0065】
また、制御部400は、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ始点PA1S(
図5参照照)の位置情報(座標点)と、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ終点PA1E(
図5参照照)の位置情報(座標点)とを利用して、第1列目の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0066】
また、上記の様に、自動運転モードが「入り」状態にある場合、既存のスイッチである、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」、「切り」の操作が、その操作の本来の意味以外に、始点の位置情報の取得、終点の位置情報の取得のトリガー信号としての意味をも兼ねている構成としたことにより、始点と終点の位置情報を取得するための専用のスイッチやレバー等を必要とせず部品点数の削減を図ることが出来る。
【0067】
次に、作業者は、A工程511での整地作業を終了して、整地ローター40を上昇させたまま時計回りに旋回操作し、B工程512において上述したA工程と同様の操作を実行する。
【0068】
即ち、作業者が、B工程512において、上述したA工程511での操作と同じ操作をしてマニュアル走行することにより、整地ローター入/切スイッチ42(
図3参照)から「入り」に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、上記と同様に、その信号を始点取得トリガー信号でもあると判定し、整地ローター40のローター41の左端部の位置情報(座標値)を第2辺始点P2S(
図5参照)の位置情報(座標値)として演算し、メモリ部410に格納し、更に、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」状態に設定されたことを示す信号を受け付けた制御部400は、上記と同様に、その信号を終点取得トリガー信号でもあると判定し、ロボット乗用田植機1の上述した左前端仮想点(図示省略)の位置情報(座標値)を第2辺終点P2E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0069】
また、制御部400は、B工程512のマニュアル走行において、A工程の場合と同様に、少なくとも、始点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のB工程アンテナ始点PB2S参照)の最新の位置情報と、終点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のB工程アンテナ終点PB2E参照)の最新の位置情報とを、メモリ部410に記録する構成である。
【0070】
また、制御部400は、B工程512のマニュアル走行におけるB工程アンテナ始点PB2S(
図5参照照)の位置情報(座標点)と、B工程512のマニュアル走行におけるB工程アンテナ終点PB2E(
図5参照照)の位置情報(座標点)とを利用して、第2辺502に沿った枕地を自動走行する際に利用する第2辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0071】
また、B工程512からC工程513に移動した後についても、上記と同様に、制御部400は、始点取得トリガー信号を得て、第3辺始点P3S(
図5参照)の位置情報(座標値)を演算しメモリ部410に格納し、終点取得トリガー信号を得て、第3辺終点P3E(
図5参照)の位置情報(座標値)として、メモリ部410に格納する。
【0072】
制御部400は、演算部420において、上記の様にしてメモリ部410に格納された第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報、第2辺始点P2S(
図5参照)の位置情報、第2辺終点P2E(
図5参照)の位置情報、第3辺始点P3S(
図5参照)の位置情報、及び第3辺終点P3E(
図5参照)の位置情報を用いて、圃場500の形状情報を演算させる。
【0073】
即ち、演算部420は、第1辺始点P1S(
図5参照)の位置情報と、第1辺終点P1E(
図5参照)の位置情報とから、第1辺始点P1Sと第1辺終点P1Eとを通る第1直線521(
図5参照)の位置情報を求め、同様に、第2辺始点P2Sと第2辺終点P2Eとを通る第2直線522の位置情報を求め、また同様に、第3辺始点P3Sと第3辺終点P3Eとを通る第3直線523の位置情報を求め、また同様に、第1辺始点P1Sと第3辺終点P3Eとを通る第4直線524の位置情報を求める。
【0074】
この様にして、制御部400により、第1直線521~第4直線524により四方を囲まれた四角形の形状が圃場500の形状情報として近似的に認定される。
【0075】
なお、制御部400は、第4直線524の位置情報から所定距離(整地幅WRの半分の距離に所定の余裕度を加算した距離)隔てた平行な直線の位置情報を利用して、第4辺502に沿った枕地を自動走行する際に利用する第4辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成である。
【0076】
上述した様に、本実施の形態によれば、圃場500の第1辺501~第3辺503の各辺において、ロボット乗用田植機1を極力隅部に近づけて始点と終点を取得出来るので、自動旋回の旋回開始位置及び旋回終了位置の基準となる第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2とを適切に設定することで、自動植付の精度向上を図ることが出来る。
【0077】
なお、上記構成によれば、第1辺始点P1S(
図5参照)と、第1直線521と第2直線522の第1交点と、第2直線522と第3直線523の第2交点と、第3辺終点との、合計4つの点の位置情報が、演算部420において同時に取得される。従って、本実施の形態の圃場500の形状情報は、第1辺始点P1S(
図5参照)と第1交点とを繋ぐ第1線分と、第1交点と第2交点を繋ぐ第2線分と、第2交点と第3辺終点とを繋ぐ第3線分と、第3辺終点と第1辺始点P1Sとを繋ぐ第4線分により形成された四角形として認定しても良い。
【0078】
なお、圃場500の四隅の位置情報として取得した、第1辺501~第3辺503のそれぞれの辺における始点と終点の位置情報については、圃場の形状やロボット乗用田植機1の隅部への配置状況等によって、第1辺終点と第2辺始点との位置情報は一致する場合もあるし異なる場合もあり、また、第2辺終点と第3辺始点との位置情報は一致する場合もあるし異なる場合もある。
【0079】
上記の通り、本実施の形態では、圃場500の第1辺501~第4辺504は、実際には凹凸部が存在するかもしれないが、上述した通り、第1辺501~第3辺503において取得した始点と終点の位置情報からそれらを通る直線(又は、線分)、即ち、第1直線521~第4直線524(又は、第1線分~第4線分)で囲まれる形状により圃場500の形状を近似的に認定する構成としている。
【0080】
次に、制御部400において、上述した圃場の形状情報に基づいて、第2列目以降の自動走行経路情報を演算により求める動作について説明する。
【0081】
制御部400は、上述した通り、A工程511のマニュアル走行において、少なくとも、始点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ始点PA1S参照)の最新の位置情報と、終点取得トリガー信号を受信した際に取得された受信アンテナ310の位置(
図5のA工程アンテナ終点PA1E参照)の最新の位置情報とを、メモリ部410に格納している。
【0082】
そこで、制御部400は、上述した様にメモリ部410に格納されている、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ始点PA1S(
図5参照照)の位置情報、即ち、始点取得トリガー信号を受信した時の受信アンテナ310の位置の座標点と、A工程511のマニュアル走行におけるA工程アンテナ終点PA1E(
図5参照照)の位置情報、即ち、終点取得トリガー信号を受信した時の受信アンテナ310の位置の座標点と、を通る直線を第1列目の基準ラインとして算出し、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路を、当該基準ラインに平行で、且つ、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の内の隣り合う列のそれぞれにおける整地ローター40による整地幅を利用した互いに所定の距離を隔てた複数の直線(目標ライン)として算出する。なお、第1列目の基準ラインの位置情報と、目標ラインの位置情報は、メモリ部410に記録される。
【0083】
上述した様に、本実施の形態のロボット乗用田植機1では、圃場外において作業者が操作する場面があり得ない整地ローター入/切スイッチ42からの入り信号又は切り信号を、始点取得トリガー信号又は終点取得トリガー信号として利用することで、基準ラインの位置情報を取得する構成としたことにより、基準ラインの位置情報を圃場外において誤取得することを防止出来る。
【0084】
なお、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出においては、メモリ部410に予め格納されているロボット乗用田植機1の整地ローター40の左右横方向における整地幅WR(
図2参照)と、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により予め設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)と、上記演算によりメモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第1直線521と第3直線523との間の距離等が利用される。
【0085】
重複幅可変ボリューム43(
図3参照)は、操縦ハンドル24の下方の各種操作ボタン(図示省略)の近傍に配置されており、隣り合う列における整地ローター40の整地幅WRの重なり代の寸法を、作業者が手動で調整するためのボリューム式のスイッチである。
重複幅可変ボリューム43を基準位置(ゼロ位置)から時計回りの方向に回すと整地幅WRの重なり代の寸法がゼロからプラス方向に次第に増加し、反時計回りの方向に回すと、整地幅WRの重なり代の寸法がゼロからマイナス方向に次第に増加、即ち、整地幅WRの縁部同士に隙間が生じてその隙間が次第に増加する様に設定可能となっている。
【0086】
これにより、重複幅可変ボリューム43により、整地幅WRの重なり代の寸法を、ゼロを基準として、プラス方向にもマイナス方向にも自由に調整出来るので、圃場の状況に応じて、重複幅可変ボリューム43をプラス方向に調整すれば、未整地領域の発生が防止出来て圃場の整地性が向上し植付精度が向上すると共に、圃場内の水が均一に供給され易くなるため苗の生育にムラが生じ難くすることが出来、また、重複幅可変ボリューム43をマイナス方向に調整すれば、整地幅WRの縁部が重なり合う場合に比べて、隣り合う列間の隙間が広くなり、風通しが良くなって苗の生育の向上を図れる。
【0087】
また、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出の結果、第(n+1)列目Ln+1の植付幅のスペースが狭くなり、8条分の植付幅が確保出来ないと制御部400により判定された場合、制御部400は、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅より所定範囲内において狭くした変更幅を利用して調整する。その場合、制御部400は、メータパネル60に、各列の間隔が変更幅により調整された旨を表示する。
【0088】
これにより、植付装置50の植付具51による植付作業を部分的に入り切りする部分クラッチ(図示省略)等の機構を備えることなく、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の全ての列において8条植えを行うことが出来て、部品点数の削減や、製造コストの低減を図ることが出来る。
【0089】
なお、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出の結果、第(n+1)列目Ln+1の植付幅のスペースが8条分の植付幅より広くなると制御部400により判定された場合、制御部400は、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅より所定範囲内において広くした変更幅を利用して調整する。その場合、制御部400は、メータパネル60に、各列の間隔が変更幅により調整された旨を表示する。
【0090】
次に、制御部400において、枕地における整地ローター40による整地幅の範囲内で自動旋回が出来る様にするために旋回幅をも考慮して、第1植付開始ラインLU1と第2植付開始ラインLU2とを適切に設定する構成と、それを利用した旋回動作について説明する。
【0091】
即ち、制御部400は、演算部420において、メモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第4直線524の位置情報を基準として、第2辺502側にロボット乗用田植機1の整地幅WR(
図2参照)に所定の余裕幅Wαを加算した距離分だけ離れた位置(
図4参照)に、上述した第1植付開始ラインLU1を設定し、その第1植付開始ラインLU1の位置情報をメモリ部410に格納する。
【0092】
また、制御部400は、演算部420において、メモリ部410に格納されている圃場500の形状情報から得られる第2直線522の位置情報を基準として、第4辺504側にロボット乗用田植機1の整地幅WR(
図2参照)に所定の余裕幅Wαを加算した距離分だけ離れた位置(
図4参照)に、上述した第2植付開始ラインLU2を設定し、その第2植付開始ラインLU2の位置情報をメモリ部410に格納する。
【0093】
ここで、所定の余裕幅Wαは、例えば、各列の始端又は終端に植え付けられる苗と、枕地の左右幅方向の端(
図4では、走行方向を基準として右端)に植え付けられる苗との間隔(例えば、約30cm)を確保するため等に設定されるものであり、ボリューム等により変更可能に構成されている。
【0094】
また、本実施の形態では、操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定した場合のロボット乗用田植機1の旋回幅WT(
図4参照)が、整地幅WRより小さくなる様に構成されている。更にまた、制御部400は、自動運転モードが「入り」状態である場合、自動操舵装置200に対して自動旋回を行わせる際に、操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定する様に構成されている。
【0095】
これにより、ロボット乗用田植機1が、例えば、第2列目L2の目標ライン上を自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行をして、植付具51の植付位置が第2植付開始ラインLU2に到達したと制御部400が判定すると、制御部400は、整地ローター40による整地動作を停止させ上昇させ、且つ植付装置50による植付動作を停止させ上昇させると共に、自動操舵装置200に対して操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定させて、第3列目L3の目標ラインに移動すべく略90°旋回を行わせる。そして制御部400は、更に、隣り合う目標ライン同士の間隔に応じて予めメモリ部410に記録されている所定の直線距離だけ第2植付開始ラインLU2に平行に直進走行させる。そして制御部400は、最後に再び、自動操舵装置200に対して操舵モータ210によるハンドル切れ角を最大切れ角に設定させて、第3列目L3の目標ライン上に移動させ、第2植付開始ラインLU2において、植付装置50と整地ローター40を降下させると共に、自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行を開始させる。
【0096】
なお、ロボット乗用田植機1が、例えば、第3列目L3の目標ライン上を自動植付作業と整地作業を伴う自動直進走行をして、植付具51の植付位置が第1植付開始ラインLU1に到達したと制御部400が判定した場合も、上記と同様の旋回動作を行う。
【0097】
以上のことから本実施の形態では、枕地における整地ローター40による整地幅の範囲内で自動旋回が行われるので、旋回開始位置周辺での未整地且つ未植付領域の発生を防止すると共に自動植付の精度向上を図ることが出来る。
【0098】
なお、ここで、旋回開始位置周辺での未整地且つ未植付領域の発生を防止することについて、更に説明する。
【0099】
上記構成とは異なる別のロボット乗用田植機において、枕地における整地ローター40の整地幅WRよりも旋回幅WTの方が大きい場合の旋回動作を、
図4を用いて説明すると次の通りである。
【0100】
即ち、例えば、第2列目L2の目標ライン上を自動直進走行した後、第2辺502の畦に干渉しない様に旋回させるためには、上述した第2植付開始ラインLU2の所定距離手前の位置から植付作業を停止させて自動旋回を開始する必要がある。そのため、最後に行う枕地の植付作業が完了した時点において、枕地に植え付けられた8条植えの両端の苗の内、第2植付開始ラインLU2側の苗と、第2列目L2の最後に植え付けられた苗との間には、上述した様に所定距離手前の位置から植付作業を停止させて自動旋回を開始させているので、その所定距離に対応する領域は、苗の植付が行われておらず、且つ、整地も行われていない領域として残る。そのため、その様な領域については、作業者が手作業で苗を植付けるが、未整地状態であるので、植付作業の前に整地作業も手作業で行う必要があり作業効率が低下する。
【0101】
これに対して、上述した様な本実施の形態のロボット乗用田植機1の構成によれば、この様な作業効率の低下を防止出来るものである。
【0102】
以上の様にして、制御部400は、第2列目L2~第n列目Lnにおける自動直進走行に必要な目標ラインの位置情報と、第2列目L2~第n列目Lnにおける植付開始と植付停止の基準位置の設定に必要な、換言すれば、植付開始位置に対応した旋回終了位置と植付停止位置に対応した旋回開始位置の基準位置の設定に必要な、第1植付開始ラインLU1(これを第1旋回基準ラインとも称す)と第2植付開始ラインLU2(これを第2旋回基準ラインとも称す)とを設定し、メモリ部410に格納する。
【0103】
なお、上記実施の形態では、第2列目L2~第(n+1)列目Ln+1の自動走行経路の算出において、整地ローター40の左右横方向における整地幅WR(
図2参照)と、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により予め設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)と、圃場の形状情報等が利用される場合について説明したが、これに限らず例えば、上記項目に加えて、植付装置50の左右両端に配置された植付具51間の植付幅WU(即ち、植付装置50の左右両端間の植付幅)(
図2参照)も利用した構成としても良い。この構成の場合、整地幅WRと植付幅WUとの情報から、整地ローター40の左右両端部が、平面視で、植付装置50の左右両端に配置された植付具51の植付位置を基準として、どれだけ外側に突き出しているかを示す突き出し寸法Wd(=(WR-WU)÷2)が固定値として特定出来るので、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により整地幅の縁部同士の重なり代の寸法をゼロに設定した際の、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkは、突き出し寸法Wdの2倍として特定することが出来る。
【0104】
よって、重複幅可変ボリューム43(
図3参照)により設定された整地幅の縁部同士の重なり代の寸法(プラス方向の設定値と、ゼロの設定値と、マイナス方向の設定値を含む)をWkとすると、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkは、2×Wd-Wkとして表すことが出来るので、作業者が、重複幅可変ボリューム43により重なり代の寸法Wkを調整することにより、当該植付け間隔Nk(=2×Wd-Wk=WR-WU-Wk)をも制御することが可能となる。
【0105】
例えば、突き出し寸法Wdが20cmの固定値である場合、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkを通常の30cmに設定しようとすれば、重複幅可変ボリューム43による重なり代の寸法Wk(=2×Wd-Nk)を10cmに設定すれば良い。また、例えば、突き出し寸法Wdが20cmの固定値である場合、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkを通常より広くして50cmに設定しようとすれば、重複幅可変ボリューム43による重なり代の寸法Wkを-10cmに設定すれば良い。即ち、重なり代の寸法Wkを-10cmに設定した場合、隣り合う列の整地ローター40による整地幅WRの縁部同士に隙間が生じており、その隙間が10cmとなり、隣り合う列間の植付け間隔Nkが30cmより広い50cmに設定出来て、風通しが良くなって苗の生育の向上を図れる。
【0106】
即ち、上記構成の場合、重複幅可変ボリューム43が、例えば、円柱形状を成した、整地幅の縁部同士の重なり代の寸法Wk=0を設定する基準位置に対して時計回り(プラス方向の設定)と反時計回り(マイナス方向の設定)の何れの方向にも回すことが可能なつまみであるとすれば、その重複幅可変ボリューム43が配置されている操作パネル側には、重複幅可変ボリューム43の回動軸芯を中心とする円弧状の第1ラインが表記されており、整地幅の縁部同士の重なり代の寸法Wkの数値がその第1ライン上に目盛りとして表示されている。更に、その第1ラインの外周側には、重複幅可変ボリューム43の回動軸芯を中心とする円弧状の第2ラインが表記されており、隣り合う列の最外位置に植え付けられる苗同士の植付け間隔Nkの数値が、第1ライン上の目盛りと対応付けて第2ライン上に目盛りとして表示されている構成としても良い。また、上記の第1ライン上の目盛りと第2ライン上の目盛りを用いたアナログ表示に代えて、重複幅可変ボリューム43の設定値をデジタル表示しても良い。 次に、本実施の形態のロボット乗用田植機1の自動運転制御中において、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作を中心に説明する。
【0107】
なお、本実施の形態では、上述した様に、圃場500の第4辺504側の畦が苗や肥料の補給作業を行うものであることが、設定スイッチにより事前に設定されてメモリ部410に記録されているものとする。
【0108】
即ち、施肥装置3から圃場に繰り出される肥料を検知する肥料繰出量検知センサ82(
図3参照)を設け、制御部400が、その検知結果から施肥量を積算すると共にホッパーにおける肥料残量を算出する構成とし、制御部400は、第2列目L2~第n列目Lnの内の奇数列目の自動直進走行中において、機体が第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)(
図4参照)に接近し次の旋回動作に入る直前の時点で算出した肥料残量と、肥料繰出量と、1往復の距離と、車速とから、次の旋回動作の後の1往復の自動走行の途中、換言すれば、次の旋回動作の後、機体が次に第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)(
図4参照)に達するまでの走行途中において、肥料が無くなるか否かを判定する。
【0109】
即ち、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる。
【0110】
これにより、次の1往復の植付工程の途中で肥料切れになることが回避出来るので、第4辺504の畦際で停止しているロボット乗用田植機1に対して、作業者は、ホッパー3への肥料補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来る。なお、肥料補給作業の後、作業者が、自動運転継続スイッチ(図示省略)をONすることにより、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0111】
また、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる構成としたことにより、作業者が乗車している場合の安全が確保出来る。
【0112】
なお、上記説明では、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作について説明したが、これに限らず例えば、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなり欠株となる状況を回避するために、上記と同様、制御部400は、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、車速を減速させて第4辺504の畦際で停止させる構成としても良い。
【0113】
ここで、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるか否かの判定は、株間、植付具51の苗取り量、苗タンク52の横送り量等の各データをメモリ部410に記録することにより、苗タンク52上にある苗の残量で、次の1往復での植付作業が可能かどうかを制御部400が判定する。
【0114】
これにより、次の1往復の植付工程の途中で苗切れになることが回避出来るので、第4辺504の畦際で停止しているロボット乗用田植機1に対して、作業者は、苗タンク52への苗補給を迅速に行えて、作業効率の向上を図ることが出来る。なお、苗補給作業の後、作業者が、自動運転継続スイッチ(図示省略)をONすることにより、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0115】
また、上記説明では、制御部400は、次の1往復の途中で肥料がなくなる状況を回避するための構成と動作について説明したが、これに加えて、肥料補給作業のタイミングで、補助苗の補給作業も連動させて行う構成としても良い。即ち、この構成の場合、次の1往復の植付工程の途中で肥料切れになるものと制御部400が判定したことにより、ロボット乗用田植機1が第4辺504の畦際で停止すると、それに連動して制御部400からの指令により自動的にレール状態になる電動補助苗枠が設けられている。また、電動補助苗枠は、手動操作により元に戻すことが出来て、元に戻すことにより、制御部400は、ロボット乗用田植機1に対して、自動運転制御を継続させることが出来る。
【0116】
これにより、通常、肥料補給のタイミングで補助苗も補給することが多いので、双方の補給作業を連動させて行わせることにより、作業効率の向上を図ることが出来る。
【0117】
また、上記構成では、制御部400は、次の1往復の途中で苗タンク52上の苗がなくなるものと判定した場合、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504の畦際まで直進走行させて停止させる場合について説明した。この構成の場合、第4辺504に向けて直進走行して、第1植付開始ラインLU1(第1旋回基準ライン)に到達した後、減速させながら90°旋回させて機体が第4辺504の畦に平行になった状態を苗供給位置として停止させる構成としても良い。また、この構成の場合、苗タンク52の上部にレール状補助苗枠を備え、苗供給位置は、当該レールが畦まで届く位置で設定する。
【0118】
なお、上記実施の形態では、圃場500の枕地をマニュアル走行することにより、圃場500の形状情報を取得する場合について説明したが、これに限らず例えば、圃場500の形状情報として、予め取得されている地図情報や、トラクター等による走行情報を記録させて用いても良い。
【0119】
また、上記実施の形態では、第(n+1)列目Ln+1の8条の植付を確保するために、制御部400が、各列の間隔を、重複幅可変ボリューム43により作業前に事前に設定された設定値を基準とした設定幅から変更幅に自動的に変える構成について説明したが、これに限らず例えば、第n列目Lnと第(n+1)列目Ln+1の最外位置に植え付けられる隣り合う苗同士の植付け間隔Nkのみ変更すれば、第(n+1)列目Ln+1の8条の植付を確保することが可能であると制御部400が判定した場合は、第n列目Lnと第(n+1)列目Ln+1の最外位置に植え付けられる隣り合う苗同士の植付け間隔Nkのみ設定幅から変更幅に変更する構成としても良い。
【0120】
また、上記実施の形態では、任意の目標ライン上から自動旋回により隣の目標ラインに移動する場合に、隣り合う目標ライン同士の間隔に応じて予めメモリ部410に記録されている所定の直線距離だけ第1植付開始ラインLU1に、又は第2植付開始ラインLU2に平行に直進走行させる構成について説明したが、これに限らず例えば、メモリ部410に記録されている所定の直線距離を作業者がボリューム操作により微調整出来る構成としても良い。これにより植付開始位置の精度の向上が図れる。
【0121】
また、上記実施の形態では、作業者がD工程514をマニュアル走行する際は、整地ローター入/切スイッチ42は、「切り」状態に設定されているものとして説明したが、これに限らず例えば、自動運転モードが「入り」状態であって、作業者は、D工程514においてマニュアル走行を開始するときに、整地ローター入/切スイッチ42を「入り」操作し、D工程514においてマニュアル走行を停止するときに、整地ローター入/切スイッチ42を「切り」操作する構成としても良い。
【0122】
この構成の場合、上記構成例と同様に、制御部400は、整地ローター入/切スイッチ42の「入り」信号と「切り」信号を、それぞれ始点取得トリガー信号、終点取得トリガー信号であると判定して、それぞれの判定に基づいて、そのときの受信アンテナ310の位置の最新の位置情報を、D工程アンテナ始点の位置情報(座標値)、D工程アンテナ終点の位置情報(座標値)としてそれぞれメモリ部410に記録し、且つ、そのときの整地ローター40のローター41の左端部(ことを第4辺始点と称す)の位置情報(座標値)とロボット乗用田植機1の左前端仮想点(これを第4辺終点と称す)の位置情報(座標値)とを演算させてメモリ部410に記録する構成としても良い。これにより、第4直線524を、第4辺始点と第4辺終点とを通る直線として決定することが出来て、その位置情報を求めることが出来る。また、この構成の場合、制御部400は、D工程514のマニュアル走行におけるD工程アンテナ始点の位置情報(座標点)と、D工程514のマニュアル走行におけるD工程アンテナ終点の位置情報(座標点)とを利用して、第4辺504に沿った枕地を自動走行する際に利用する第4辺の枕地の基準ラインを算出しメモリ部410に記録する構成としても良い。
【0123】
また、上記実施の形態では、第2列目L2以降の自動走行は、ロボット乗用田植機1の直前の列における実際の走行軌跡に関係なく、目標ラインの位置情報を基準として自動走行する構成について説明したが、これに限らず例えば、ロボット乗用田植機1の直前の列における実際の走行軌跡の位置情報をメモリ部410に記録させ、直前の列に対応する目標ラインとその実際の走行軌跡とのズレ量を演算させ、その演算結果が所定範囲を超えていると制御部が判定した場合は、制御部は、そのズレの位置と演算結果(ズレ量)とに基づいて、次の列に対応する目標ラインの位置情報を修正した上で、次の列の自動走行を実行させる構成としても良い。
【0124】
また、上記実施の形態では、苗補給や肥料補給が必要な場合に、次の旋回を中止し、そのまま、第4辺504に向けて直進走行させ畦際で停止させる構成について説明したが、これに加えて例えば、エラーが発生したと、制御部400が判定した場合には、安全性の確保のために、第4辺504の畦際まで戻ってくる構成としても良い。
【0125】
また、制御部400は、自動運転モード状態で自動走行中において、エラーが発生したと判定した場合には、警告音を鳴らして停車させ、警告音が鳴っている間に手動操作に変更した場合、手動操作を優先させる構成としても良い。
【0126】
また、ロボット乗用田植機1において、人が乗車していることを検知するセンサを備え、当該センサにより人が乗車していると検知した場合には、安全性の確保のために、制御部400は、旋回速度を無人の場合に比べて遅くさせる構成としても良い。
【0127】
また、ロボット乗用田植機1において、フロート53の泥押し検知装置として、フロート53のリンク支点部に圧力センサ(図示省略)を設け、その検知結果から、泥押しにより圧力値が高くなったと判定された場合は、フロート53の感度を、標準から敏感側に変更する構成としても良い。これにより、自動で感度調節が行える。
【0128】
また、ロボット乗用田植機1において、フロート53の泥押し検知装置として、フロート53のリンク支点部の後方に、バネ鋼とリミットスイッチ(図示省略)を設け、フロート53が泥押しされたときには、バネ鋼の復元力に対抗してリンク支点部が標準位置より後方に移動することでリミットスイッチがONし、泥押しの無いときは、バネ鋼の復元力によりリンク支点部が標準位置に戻り、リミットスイッチがOFFする構成としても良い。これにより、高額の圧力センサを用いずにメカ式の構成により自動感度調節が行える。
【0129】
また、ロボット乗用田植機1において、水管理をしやすくするために、植付時は端条外側に溝堀りを行う構成としても良い。この構成の場合、前板ガード部の一部に溝きり機構を設けることで、植付と同時に溝きりを行うことが出来る。
【0130】
また、ロボット乗用田植機1において、水管理をしやすくするために、植付時は端条外側に溝堀りを行う構成としても良い。この構成の場合、フロート53の一部に溝きり機構を設けることで、植付と同時に機体外側の溝きりを行うことが出来る。
【0131】
また、ロボット乗用田植機1において、前板ガード部に溝堀り機を設け、A工程511~D工程514の全周をマニュアル走行によりティーチングする際、畦と植付条の間に溝を掘ることで、ケラや鼠の被害を少なくし、雑草が圃場に入ってこない様にする構成としても良い。これにより、苗の生育ムラを避け、収量を上げることが出来る。また、後の生育管理(給排水、中干し)が楽になる。
【0132】
また、ロボット乗用田植機1において、前板ガード部に溝堀り機を設けると共に、畦の判別用として画像認識装置を設け、土畦など特に境界が曖昧(不連続)である場合に、畦と植付条の間に溝を掘る構成としても良い。これにより、苗の生育ムラを避け、収量を上げることが出来る。また、後の生育管理(給排水、中干し)が楽になる。
【0133】
また、植付部の高さ制御装置を備えたロボット乗用田植機1において、溝堀り機を植付部に設け、植付部をより下げると溝の深さが深くなり植付部をより上げると溝の深さは浅くなるので、水口の排水側に向かって、徐々に植付部を下げることで溝の高度が下がる様に溝きりを行う構成としても良い。この構成の場合、水口(給水側、排水側)の位置情報を事前に設定し、位置情報取得装置300により取得されるロボット乗用田植機1の位置情報を利用して、溝きりの適正化を図ることが出来る。これにより、排水性が向上し苗の生育が安定する。
【0134】
また、ローリング制御機構を備えたロボット乗用田植機1において、溝堀り機を設け、水口の排水側に向かって、溝の高度が下がる様に溝きりを行う構成としても良い。この構成の場合、水口(給水側、排水側)の位置情報を事前に設定し、位置情報取得装置300により取得されるロボット乗用田植機1の位置情報を利用して、ローリングによる車体の左右方向への傾斜角度を制御することで、溝の高度を変化させて溝きりの適正化を図ることが出来る。これにより、排水性が向上し苗の生育が安定する。
【0135】
また、上記実施の形態では、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、イオン化傾向の測定に加えて、同時にpH値の測定も行うこととし、制御部がpH値に応じて土壌の排水性を推算し、排水性が悪い場所では、還元作用によりアルカリ化している点や施肥効果が薄い点等を考慮して、制御部が施肥量を標準量に比べて少なく設定する構成としても良い。これにより、可変施肥の効率を向上させることが出来る。また、この構成の場合、pH測定器電極を電気抵抗値の測定機構と共用する構成としても良い。
【0136】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両は、作業装置の一例として植付装置50が走行車体2に連結されたロボット乗用田植機である場合について説明したが、これに限らず例えば、本発明の作業車両は、作業装置の他の例として播種機を連結したロボット作業車両であっても良い。この構成の場合、圃場のpH値を測定することで制御部が排水性を推算し、それに応じて制御部が覆土を変化させる構成としても良い。具体的には、排水性が悪いと制御部により判定された場所では、覆土を標準量に比べて少なくするよう制御する構成としても良い。これにより、苗立ち性の向上が図られる。
【0137】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両は、作業装置の一例として植付装置50が走行車体2に連結されたロボット乗用田植機である場合について説明したが、これに限らず例えば、本発明の作業車両は、作業装置の他の例として播種機を連結したロボット作業車両であっても良い。この構成の場合、圃場のpH値を測定することで制御部が排水性を推算し、それに応じて制御部が溝きりを変化させる構成としても良い。具体的には、排水性が悪いと制御部により判定された場所では、溝きりを標準量に比べて深くするよう制御する構成としても良い。これにより、苗立ち性の向上が図られる。
【0138】
また、上記実施の形態では、pH測定器80(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、pH測定器によりpH値の測定を行うことで排水性を推定し、その推定結果に応じて(例えば、排水性の良い場所では施肥量を標準量に比べて多くする)、可変施肥を行う構成としても良い。これにより高額なセンサ類を備えなくても、安価に可変施肥を実現出来る。
【0139】
また、上記実施の形態では、pH測定器80)(
図3参照)による圃場のpH値(水素イオン指数)の測定結果から、覆土の量を調整する構成について説明したが、これに限らず例えば、リンクセンサが検出するリンク角度に応じて耕深(圃場の深さ)を計り、それに応じて(例えば、浅い場所では施肥量を標準量に比べて多くする)、可変施肥を行う構成としても良い。なお、この構成の場合、本来、植付装置50の高さを検出するために、フロート53を支持する回動支点のリンク角度を検出するリンクセンサが設けられており、そのリンクセンサの検出結果を、本来の役割以外に可変施肥の実現にも兼用している。
これにより高額なセンサ類を新たに備えなくても、安価に可変施肥を実現出来る。
【0140】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、地形データと衛星画像データと土質分布データから、制御部が、その圃場が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0141】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、地形データと衛星画像データとによって分類された土質分布と、実際撮影された圃場の土画像とから、制御部が、その圃場土質が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0142】
また、上記実施の形態のロボット乗用田植機1において、実際撮影された圃場の土画像から、制御部が、その圃場土質が灰色低地土、黄色土、グライ土の何れに当てはまるかを分類し、黄色土に分類されると判定した場合は、肥料を基本設定値より多くし、グライ土に分類されると判定した場合は、浅植え、作溝を行う構成としても良い。通常、黄色土は養分が流れやすく、グライ土の場合は、土中での養分の透過率が悪いという傾向にあるが、上記構成によれば、土の状態により植付作業を変えることで、ノウハウが無い状態からでも収量を増やすことが出来る。
【0143】
また、自律直進田植機において、学習機会として、ティーチング時の操舵を利用し、想定される出力と実出力が同じで実入力が異なる場合、その時センシングしたパラメータで寄与率が高いものを取り上げ、同一圃場での制御パラメータとして重みを多くつける構成としても良い。通常、学習を人工知能まかせにするとデータ量が必要となり時間がかかるが、上記構成によれば、ティーチング時の操舵を利用しながら、学習速度を速めることが出来る。
【0144】
また、上記のロボット乗用田植機1において、畦の自動検知としてエアブローを行いながら、カメラ撮影することで、雑草などによるノイズを除去しやすくする構成としても良い。通常、静止している物体は障害物として認識してしまうが、上記構成によれば、ノイズを低減し、畦の自動検知を行うことが出来る。また、エアブローに代えて、エンジンの排気方向を畦に向ける構成としても良い。これにより、ブロアを新たに設けることなく、撮影時のノイズを低減出来る。
【0145】
また、上記のロボット乗用田植機1において、超音波センサを用いて畦の検出を行う構成としても良い。この構成の場合、サイドマーカー位置に当該センサを設け、植付圃場との距離の違いから畦を検出する構成であり、また、機体姿勢の変化によって検出値の補正を行う構成である。これにより、地形をマッピングしていくことが出来る。
【0146】
また、自律直進制御において、スリップ率と耕深によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、衛星測位システムと耕深センサ(昇降リンク角度センサ)を用いて経路からのズレとそれに対する出力とともにデータを収集し、その相関の強さを算定し、相関の強いデータと出力とを紐付ける構成としても良い。これにより、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0147】
また、自律直進制御において、走行速度によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、走行速度の速い場合は旋回出力を小さくし、遅い場合は旋回出力を大きくし、重み付けは、衛星測位システムによる経路からのズレとそれに対する出力とともに収集した速度データにより決定する構成としても良い。これにより、速度以外の状況によっても左右される重み付け値を一律に固定してしまうことが無いので多様な状況にも適応出来て、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0148】
また、自律直進制御において、各種条件によってアウトプットを変化させる旋回装置を備え、衛星測位システムによる経路からのズレとそれに対する出力とともに収集したデータ(速度、圃場スリップ率、耕深)によって、相関の高さによってデータに重み付けをし、重み付け値は、圃場情報としてメモリ部に記録する構成としても良い。これにより、重み付け値が一定値になることがないので多様な状況にも適応可能となり、圃場状態によって直進性に差が生じることなく、直進制御を行える。
【0149】
また、上記のロボット乗用田植機1において、植付時の圃場データ(速度、圃場スリップ率、耕深)と植付データ(植付株数、苗取り量、植付深さ)を記録し、衛星画像での実り具合や収量コンバインによる計量結果との相関を探り、最も相関の高いデータを割り出し、植付条件を最適化する構成としても良い。これにより、圃場状態によらず最適条件で植付が出来ると共に、過学習を回避することが出来る。
【0150】
また、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として8条型のロボット乗用田植機1について説明したが、これに限らず例えば、4条植え、5条植え、或いは6条植え等の構成であっても良く、条数に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明によれば、整地装置による未整地領域の有無を事前に把握することが出来、例えば、ロボット乗用田植機等として有用である。
【符号の説明】
【0152】
1 ロボット乗用田植機
2 走行車体
24 操舵ハンドル
40 整地ローター
43 重複幅可変ボリューム
300 位置情報取得装置
400 制御部