(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161185
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】伸縮包装材および伸縮包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 21/08 20060101AFI20241108BHJP
B29C 53/02 20060101ALI20241108BHJP
B29C 53/30 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B65D21/08
B29C53/02
B29C53/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151382
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2023105702の分割
【原出願日】2019-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】清水 怜子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 貴世
(57)【要約】
【課題】包装されている内容物が減ってきたときに内容物を取り出しやすくする。
【解決手段】伸縮カップ1の胴部10に形成された帯状切取り部を切取ると,帯状切取り部の内側にある可撓性シート14が現れる。胴部10は可撓性シート14を挟んで上側胴部10aと下側胴部10bとに分離される。上側胴部10aを下側胴部10bに向けて押し下げると,可撓性シート14が変形して伸縮カップ1の背が低くなる。底の方に残っている内容物を取り出しやすくすることができる。上側胴部10aの下縁および下側胴部10bの上縁に層間剥離部19が残る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと可撓性シートとを備え,
上記基材シートの表面に,上記基材シートの両側端を結ぶ方向にのびる一対の表面側ハーフカットが上下に間隔をあけて形成されており,
上記基材シートの裏面において上記一対の表面側ハーフカットによって挟まれる範囲内に,上記基材シートの両側端を結ぶ方向にのびる一対の裏面側ハーフカットが,上記一対の表面側ハーフカットよりも狭い間隔をあけて上下に形成されており,
上記可撓性シートが,上記一対の裏面側ハーフカットによって挟まれる範囲の上方および下方のそれぞれにおいて,上記基材シートの裏面に固定されている,
伸縮包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は伸縮包装材およびこれを用いた伸縮包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装箱や包装体によって包装された内容物を取り出しやすくするために様々な工夫が行われている。特許文献1は前壁上部を破り取るタイプの包装箱を開示する。特許文献2は上下の破断線によって挟まれる周壁部分を破り取り,上側破断線よりも上側の部分を取り外すことでアイスクリームの上部を露出させる包装体を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-23852号公報
【特許文献2】特開2015-163536号公報
【0004】
包装された内容物が少しずつ取り出されたり,食べられたりすると,内容物は次第に減り,包装箱や包装体から取り出しにくくなる。特許文献1に記載のものは前壁上部をはじめから破り取るものであるから,内容物が減ったときに取り出しやすくするものではない。特許文献2もはじめから上側破断線よりも上側の部分を取り外すものであるから,やはり内容物が減ったときに取り出しやすくするものではない。
【発明の開示】
【0005】
この発明は,包装されている内容物が減ってきたときに内容物を取り出しやすくすることを目的とする。
【0006】
この発明はまた,包装箱や包装体を減容化し,持ち運びしやすくしたり,廃棄しやすくしたりすることを目的とする。
【0007】
この発明はさらに,断熱効果を得ることができるようにすることを目的とする。
【0008】
また,この発明は,切取り部分の段差および毛羽立ちの軽減を目的とする。
【0009】
この発明による伸縮包装材は,基材シートと可撓性シートとを備え,上記基材シートの表面に,上記基材シートの両側端を結ぶ方向にのびる一対の表面側ハーフカットが上下に間隔をあけて形成されており,上記基材シートの裏面において上記一対の表面側ハーフカットによって挟まれる範囲内に,上記基材シートの両側端を結ぶ方向にのびる一対の裏面側ハーフカットが,上記一対の表面側ハーフカットよりも狭い間隔をあけて上下に形成されており,上記可撓性シートが,上記一対の裏面側ハーフカットによって挟まれる範囲の上方および下方のそれぞれにおいて,上記基材シートの裏面に固定されていることを特徴とする。伸縮包装材とは,以下に詳述するように,包装材(包装材を構成する可撓性シート)自体を伸び縮みさせるものではなく,剛度(腰強度)の大きい領域と小さい領域とを有し,剛度の小さい領域を変形させる(屈伸させる)ことによって全体寸法を伸び縮みさせることができる,そのような包装材を言う。
【0010】
基材シートの表面に一対の表面側ハーフカットが,裏面に一対の裏面側ハーフカットが,それぞれ上下に間隔をあけて形成されている。一対の表面側ハーフカットの間隔の方が一対の裏面側ハーフカットの間隔よりも広く,基材シートの裏面の一対の裏面側ハーフカットは,表面の一対の表面側ハーフカットによって挟まれる範囲内に位置する。
【0011】
一対の裏面側ハーフカットによって挟まれる範囲の上方および下方のそれぞれにおいて,基材シートの裏面に,可撓性シートが固定されている。可撓性シートは,一対の表面側ハーフカットによって挟まれる上記基材シートの範囲を覆う大きさを備える。もっとも可撓性シートは基材シートの裏面の全体を覆う大きさのものであってもよい。
【0012】
一対の表面側ハーフカットおよび一対の裏面側ハーフカットはいずれも基材シートの両側端部を結ぶ方向にのびるので,一対の表面側ハーフカットおよび一対の裏面側ハーフカットによって挟まれる部分を基材シートから切取ると,基材シートは上側部分と下側部分とに分離し,その間に可撓性シートが残る(現れる,露出する)。また,上側の表面側ハーフカットと上側の裏面側ハーフカットの間,および下側の表面側ハーフカットと下側の裏面側ハーフカットの間のそれぞれにおいて,基材シートの層間剥離が生じる。すなわち,基材シートの一部分を上述のように切取ると,上側の表面側ハーフカットと上側の裏面側ハーフカットの間に,たとえば基材シートの厚さの約半分の厚さを持つ層間剥離部が残り,下側の表面側ハーフカットと下側の裏面側ハーフカットの間にも層間剥離部が残る。切取り部分の段差や毛羽立ちが少なくなり,手を負傷するリスクを軽減することができる。
【0013】
上下に分離した2つの基材シート(基材シートとその裏面に固定された可撓性シートの重ね合わせ部分)を近づける(一方を他方に向けて押す)ことで,上下に分離した2つの基材シートに挟まれた剥き出しの可撓性シートの部分を変形させる(つぶす,ひしゃげる,可撓性シート同士を重ね合わせる)ことができ,2つの基材シートの端面同士の間の距離を近づけることができる。好ましくは,上下の基材シートを近づけたときに可撓性シートのみを変形させるために,基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分の剛度(腰強度)よりも小さい剛度を持つ可撓性シートが用いられる。基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分を変形させることなく,または変形の程度を小さく保ちつつ,可撓性シートを変形させることができ,基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分の形状をたとえば保ったまま,それらの端面同士の間の距離を縮めることができる。もちろん,上下に分離した2つの基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分を互いに離すことで,一旦縮まった距離を伸ばす(元に戻す)こともできる。
【0014】
基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分と可撓性シートにはそれらの剛度(腰強度)に差があればよい。もっとも,剛度差(または剛度比)が小さすぎると基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分の形状が保たれにくくなる(可撓性シートは当然に変形するものの,基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分もまた同時に変形してしまう)ことが考えられるので,基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分の形状をある程度保つ(保形する)ことができるようにする,換言すると可撓性シートのみを変形させることができるようにする程度の剛度差(剛度比)が,基材シートおよび可撓性シートの重ね合わせ部分と可撓性シートとの間にあることが好ましい。
【0015】
所望の剛度差は基材シートと可撓性シートの材料または構成(素材,層構成など)を異ならせることによって生じさせることができる。これに加えてまたは変えて,基材シートと可撓性シートの厚さを異ならせることで所望の剛度差を生じさせてもよい。すなわち基材シートと可撓性シートとは同一材料のものであってもよい。厚さを異ならせることで所望の剛度差を生じさせることができる。物を包装する包装材としての用途および上述した層間剥離部を形成することを考えると,基材シートの材料として,紙(層間剥離部を残すことができる程度の紙厚を持つもの),紙とポリスチレン,紙とポリエチレンテレフタレート,紙とポリプロピレン,紙とナイロンとの積層体等が挙げられる。可撓性シートの材料として,たとえばポリスチレン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレン,ナイロン等の樹脂,アルミニウム箔等の金属,これらの積層体が挙げられる。
【0016】
上記一対の表面側ハーフカットおよび一対の裏面側ハーフカットは,一実施態様ではそれぞれ平行である。上下に分けられた2つの基材シートを,傾きを生じさせることなく互いに近づけることができる。もっとも一対の表面側ハーフカットおよび一対の裏面側ハーフカットは,必ずしも平行である必要はないのは言うまでもない。
【0017】
上述した伸縮包装材は,包装体(包装容器,包装袋,包装箱等)の胴部または壁部に用いることができる。包装体に収容されている内容物が減ってきたときに,上下に分けられた2つの基材シートの端面同士を近づけて高さ(背)を低くすることで,内容物を取り出しやすくすることができる。
【0018】
上記胴部または壁部が下部から上部に向けて全体的に径が大きくなっているものであってもよい。包装体を縮めたときに,可撓性シートの上部の胴部または壁部の内側に,可撓性シートの下部の胴部または壁部を収めることができるので,包装体の減容化を図ることができる。また,可撓性シートの上部の胴部または壁部と,可撓性シートの下部の胴部または壁部とが内外方向に二重になるので,断熱効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1のII-II線に沿う一部破断正面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿う拡大断面図である。
【
図5】帯状切取り部を切取った状態の伸縮カップの斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図10】第2実施例の包装体の胴部の展開図である。
【
図15】さらに縮めた状態の包装箱の斜視図である。
【実施例0020】
図1から
図7は第1実施例の伸縮カップを示している。
図1は伸縮カップの斜視図を,
図2は
図1のII-II線に沿う伸縮容器の一部破断正面図を,
図3は伸縮カップを構成する胴部を外側から示す展開図(ブランク図)を,
図4は
図3のIV-IV線に沿う拡大断面図をそれぞれ示している。
図1および
図2において伸縮カップの開口を塞ぐ蓋材の図示は省略されている。
図5は後述する胴部の帯状切取り部を切取った状態の伸縮カップの斜視図を,
図6は縮めた状態の伸縮カップの斜視図を,
図7は
図6のVII-VII線に沿う断面図を,それぞれ示している。
【0021】
伸縮カップ1は胴部10と底部20から構成される。胴部10は上の径が大きく,下にいくほど径が小さくなる円筒状で,開口する胴部10の上縁周端部は丸みを帯びるように外側に巻かれてカール部11が形成されている。胴部10の上縁周端部を単に折り畳み,わずかに外向きに広がるフランジ部を形成してもよい。カール部11によって形成される環状の上面に蓋材(図示略)が接着されることで胴部10の開口は閉じられる。底部20は円形で,その周端部が下向きに屈曲されている(屈曲部21)。底部20は胴部10の下端開口内にぴったりと嵌り,胴部10の下端部が内側に折り返され(折り返し部12),この折り返し部12が底部20の屈曲部21を挟んでいる。底部20の屈曲部21の内外両面とこれを挟む胴部10の下端部の折り返し部12の内面とは接着または溶着される。
【0022】
図3を参照して,伸縮カップ1を構成する胴部10は弧状に形成されたブランクから作られる。弧状のブランクの一側部に設けられた接着部Nによってブランクの側部同士を接着して円筒状にし,上述のように上縁周端部および下端部を折り返すことで円筒状の胴部10は作られる。
【0023】
図3および
図4を参照して,胴部10は,基材シート(外層材)13と可撓性シート(内層材)(可撓性フィルム)14とを積層した積層構造を備えている。胴部10の表面側に基材シート13が,裏面側に可撓性シート14が,それぞれ位置する。
【0024】
基材シート13はたとえば平坦な紙材であり,たとえば 260g/m2の坪量のものを用いることができる。可撓性シート14には樹脂フィルムや金属フィルムから構成される積層体が用いられ,一例として,内側から外側に向けて40μm厚のポリエチレン(PE)/12μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)/接着剤/7μm厚のアルミニウム(AL)/15μm厚のエチレン・メタアクリル酸共重合(EMAA)を積層したものが用いられる。基材シート13および可撓性シート14の素材は伸縮カップ1に求められる機能(遮光性,耐油性,耐水性等)に応じて適宜選択され,その厚みも内容物等に応じて適宜調整される。可撓性シート14の厚さは薄く(上述のように全体で数十μm),可撓性を持つ。他方,基材シート13は厚さを持つ紙材等によって構成され,可撓性シート14に比べて剛度(腰強度)が大きく(高く),一般に可撓性はない(もちろん可撓性を持たせてもよい)。一例として,基材シート13には,厚さ 280μm,ループスティフネス値3760mN・m/15mmの紙材が採用される。可撓性シート14には,厚さ74μm,ループスティフネス値13mN・m/15mmの積層体が採用される。この場合,基材シート13および可撓性シート14の重ね合わせ部分と,可撓性シート14との剛度差は3686mN・m/15mmである。
【0025】
基材シート13および可撓性シート14のループスティフネス値は薄材料の腰強度を意味し,たとえばループスティフネステスター((株)東洋精機製作所製)を用いて測定することができる。測定値の単位はmN/15mmである。ループスティフネス値とはループ状部材のつぶれ抵抗のことであり,ループ長を設定し,その長さを持つようにチャックを用いてループを作り,圧子とチャックとの間の距離を設定し,圧子でループ状部材を上記設定距離まで押し込んだときの抵抗値を意味する。この数値が大きい薄材料は腰があることを意味する。上述した基材シート13と可撓性シート14のループスティフネス値は,幅15mm×長さ165mmの試験片を用意し,ループ長を120mmに設定し,圧子-チャック間距離を20mmとして測定した。具体的には,上述した寸法の試験片の両端部を 120mmの間隔をあけてそれぞれチャックで掴み,チャックを互いに近づけることで 120mmのループ長を持つループ状試験片を作り(ループ状試験片の根元にチャックが位置する),ループ状試験片を,圧子を用いて,圧子-チャック間距離が20mmになるまでチャックに向けて押し込み,ループ状試験片を押しつぶす。このときに測定される値(抵抗値)がループスティフネス値である。この明細書に記載の「剛度」は「ループスティフネス値」または「腰強度」に読み替えてもよい。
【0026】
図2を参照して,底部20についても基材シート22と可撓性シート23とから構成することができる。底部20を構成する基材シート22,可撓性シート23は,それぞれ胴部10を構成する基材シート13,可撓性シート14と同一素材としてもよいし,異なる素材を用いてもよい。
【0027】
図3を参照して,胴部10を構成する基材シート13には,その表面(外面)側に,基材シート13の両側縁部を結ぶ方向に弧状に平行にのびる2本のハーフカット線(半切線)(以下,「表面側ハーフカット」と呼ぶ)16A,16Bが上下に間隔をあけて形成され,裏面(内面)側であって表面側ハーフカット16A,16Bによって挟まれる範囲内に,基材シート13の両側縁部を結ぶ方向に弧状に平行にのび,上記表面側ハーフカット16A,16Bよりも幅狭の2本のハーフカット線(以下,「裏面側ハーフカット」と呼ぶ)17A,17Bが上下に形成されている。表面側ハーフカット16A,16Bおよび裏面側ハーフカット17A,17Bは連続的に形成してもよいし,長さの短いハーフカットを間欠的に多数形成してもよい。以下,表面側ハーフカット16A,16B,裏面側ハーフカット17A,17Bによって挟まれ,後述するように胴部10から切り取られる部分を,「帯状切取り部18」と呼ぶ。
【0028】
後述するように,帯状切取り部18は,表面側ハーフカット16A,16B,裏面側ハーフカット17A,17Bに沿って基材シート13から切り取られる。帯状切取り部18を切取るときに帯状切取り部18の先端部を摘みやすくするために,
図3に示すように,帯状切取り部18の一端部については,表面側ハーフカット16A,16Bおよび裏面側ハーフカット17A,17Bに代えて,一対の貫通切込み15を形成してもよい。もっとも,貫通切込み15は必須ではなく,全体に表面側ハーフカット16A,16Bおよび裏面側ハーフカット17A,17Bを形成することもできる。
【0029】
図4を参照して,基材シート13と可撓性シート14の接着範囲を符号Nで示す。
図4に示すように,胴部10を構成する基材シート13および可撓性シート14は,上側の裏面側ハーフカット17Aの上領域および下側の裏面側ハーフカット17Bの下領域において互いに接着され(接着領域),これらに挟まれる帯状切取り部18の範囲では基材シート13と可撓性シート14とは接着されない(未接着領域)または仮粘着にとどめられる。このため,帯状切取り部18を基材シート13(胴部10)から切取っても,可撓性シート14はそのまま残り,帯状切取り部18と一緒に切り取られることはない。たとえば基材シート13の内面全体に接着剤を一旦塗布し,その後に未接着領域の接着剤に重ね合わせて剥離ニス(剥離剤)をさらに塗布して,基材シート13の内面に可撓性シート14を接着することで接着領域のみを接着する(未接着領域を接着させないようにする)ことができる。接着剤にヒートシール剤を用いる場合には接着領域のみに熱を加えるようにすればよい。もちろん,接着領域にのみ接着剤を塗布し,未接着領域には接着剤を塗布しないようにしてもよい。
【0030】
図1を参照して,円筒状にされた胴部10において帯状切取り部18は胴部10を一周する。
図5を参照して,帯状切取り部18を一周にわたって切り取ると,切り取られた帯状切取り部18の内側に位置する可撓性シート14が現れる。また,表面側ハーフカット16A,16Bの間の幅が広く,それよりも裏面側ハーフカット17A,17Bの間の幅が狭いので,表面側ハーフカット16Aと裏面側ハーフカット17Aの間,および表面側ハーフカット16Bと裏面側ハーフカット17Bの間のそれぞれにおいて紙の層間剥離が生じ,たとえば基材シート13(胴部10)の紙厚の半分程度の厚さを持つ層間剥離部19が,帯状切取り部18の上縁部および下縁部に相当する箇所に残る。層間剥離部19を残すことで切取り部分の段差や毛羽立ちが少なくなり,手を負傷するリスクを軽減することができる。
【0031】
帯状切取り部18が切り取られることで,胴部10(基材シート13と可撓性シート14の重なり部分)は露出する可撓性シート14を挟んで上下2つに分かれることになる。以下,2つに分かれた胴部10の上側部分を上側胴部10a,下側部分を下側胴部10bと呼ぶ。表面側ハーフカット16A,16Bおよび裏面側ハーフカット17A,17Bは胴部10を構成する基材シート13に形成され,可撓性シート14には形成されていないので,帯状切取り部18を切取ってもその範囲は可撓性シート14によって覆われたままであり,伸縮カップ1のバリア性を確保し続けることができる。
【0032】
帯状切取り部18は,典型的には,伸縮カップ1によって包装されている内容物,たとえばスティック状菓子K1をある程度食べ進んだタイミングで切り取られる。
図6および
図7を参照して,帯状切取り部18を切取った後,上側胴部10aを下側胴部10bに向けて押すと,剛度の比較的大きい上下胴部10a,10bはほとんど変形せず,剛度の小さい可撓性シート14のみが変形する。上側胴部10aの内側に下側胴部10bの上端部が入り込み,上側胴部10aと下側胴部10bとが部分的に重なり合う。上側胴部10aと下側胴部10bの間の可撓性シート14は,上側胴部10aの内面と下側胴部10bの外面の間に挟まれて隠れる。伸縮カップ1の背(高さ)が低くなり,伸縮カップ1の底と伸縮カップ1の開口との間の距離が近づくので,底の方に残っているスティック状菓子K1が取り出しやすくなる。また,高さが低くされることで伸縮カップ1はコンパクトになり,持ち運びしやすく,スティック状菓子K1を食べ終えて伸縮カップ1を廃棄するときのゴミの減容化を図ることもできる。
【0033】
また,高さが低くされた状態の伸縮カップ1は,その上端部分が上側胴部10aと下側胴部10bとによって二重構造になる。二重構造の箇所(上側胴部10a)を手で掴むことで,伸縮カップ1にお湯等を注いだときに手に熱さを感じずに済む。伸縮カップ1はこのように断熱性も提供する。
【0034】
図8は胴部の変形例を示すもので,
図3に相当する展開図を示している。
【0035】
図8に示す変形例の胴部10Aは,可撓性シート14Aが帯状切取り部18を包含する帯状範囲に部分的に設けられている点が,基材シート13の内面全体に可撓性シート14が設けられている上述した胴部10(
図3,
図4参照)と異なる。帯状の可撓性シート14Aは,基材シート13に形成された裏面側ハーフカット17Aの上方および裏面側ハーフカット17Bの下方において,それぞれ基材シート13の裏面側に接着される。変形例の胴部10Aについても,帯状切取り部18を切取ると,帯状切取り部18の内側に位置する可撓性を持つ可撓性シート14Aが上下2つに分かれた胴部10Aによって挟まれたものになる。