(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161215
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリシロキサン粒子分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20241108BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20241108BHJP
C08G 77/20 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L83/07
C08F290/14
C08G77/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152258
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2020099496の分割
【原出願日】2020-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】柏原 宮人
(57)【要約】
【課題】小粒径のポリシロキサン粒子を高濃度に含むポリシロキサン粒子分散液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液であって、固形分が4.8質量%以上であり、前記ポリシロキサン粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上、2.0μm以下であり、前記ポリシロキサン粒子の粒子径の個数基準での変動係数が7.2%以下であることを特徴とするポリシロキサン粒子分散液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液であって、
固形分が4.8質量%以上であり、
前記ポリシロキサン粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上、2.0μm以下であり、前記ポリシロキサン粒子の粒子径の個数基準での変動係数が7.2%以下であることを特徴とするポリシロキサン粒子分散液。
【請求項2】
前記ラジカル重合性基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のポリシロキサン粒子分散液。
【請求項3】
ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基よりなる群から選択される少なくとも1種のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤、水を含む溶媒、酸を混合する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた混合液に塩基を添加する工程(2)を経て得られることを特徴とするラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子分散液。
【請求項4】
ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液の製造方法であって、
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤、水を含む溶媒、及び酸を混合する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた混合液に塩基を添加する工程(2)を含むラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン粒子分散液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化が益々進展している。それに伴い、電気機器に搭載される電子部品の小型化、高密度実装化が進んでおり、電子回路における電極や配線は一層微細化、狭小化する流れにある。従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電インク、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や基材とする樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。
【0003】
そして、上述したように電子回路の電極や配線の微細化、狭小化が進展するなか、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子についても、粒子径がより小さく、かつ粒子径の変動係数が小さいものが要求されている。基材とする樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆した導電性微粒子においてこの要求を満たすためには、導電性金属層を被覆する前の基材粒子においても、粒子径及び粒子径の変動係数が小さいことが重要である。
【0004】
例えば、特許文献1には、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを、アンモニア水の存在下、加水分解、縮合反応を行って、ポリシロキサン粒子の乳濁液を得て、該ポリシロキサン粒子にスチレン等の単量体を吸収させた後、ラジカル重合を行って、樹脂粒子を得て、これを導電性微粒子の基材となる樹脂粒子として用いたことが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、電子機器の需要は依然として高く、導電性微粒子を効率よく生産できることが求められる。特許文献1では、1.85μm程度のポリシロキサン粒子が得られたことが開示されるが、導電性微粒子の生産性を向上させるためには、導電性微粒子の基材となる樹脂粒子を作製するにあたり、このような小粒径のポリシロキサン粒子を効率良く得ることが重要である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小粒径のポリシロキサン粒子を高濃度に含むポリシロキサン粒子分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液であって、
固形分が4.8質量%以上であり、
前記ポリシロキサン粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上、2.0μm以下であり、前記ポリシロキサン粒子の粒子径の個数基準での変動係数が7.2%以下であることを特徴とするポリシロキサン粒子分散液。
[2]前記ラジカル重合性基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基より
なる群から選択される少なくとも1種である[1]に記載のポリシロキサン粒子分散液。[3]ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基よりなる群から選択される少なくとも1種のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤、水を含む溶媒、酸を混合する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた混合液に塩基を添加する工程(2)を経て得られることを特徴とするラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子分散液。
[4]ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液の製造方法であって、
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤、水を含む溶媒、及び酸を混合する工程(1)と、
前記工程(1)で得られた混合液に塩基を添加する工程(2)を含むラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小粒径のポリシロキサン粒子を高濃度に含むポリシロキサン粒子分散液及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリシロキサン粒子分散液は、ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子の分散液であって、固形分が4.8質量%以上であり、前記ポリシロキサン粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上、2.0μm以下であり、前記ポリシロキサン粒子の粒子径の個数基準での変動係数が7.2%以下である。
【0011】
1.ポリシロキサン粒子分散液
本発明のラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子は、後述する通り、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を加水分解及び縮合することで得ることができ、シロキサン結合(-Si-O-)のケイ素原子にラジカル重合性基が結合した構造を有する。
【0012】
ラジカル重合性基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリロイル基及びメタクリロイル基よりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0013】
前記ポリシロキサン粒子の、個数基準の平均粒子径は0.5μm以上、2.0μm以下である。該平均粒子径は、0.7μm以上が好ましく、より好ましくは0.9μm以上であり、更に好ましくは1.0μm以上であり、また1.8μm以下が好ましく、より好ましくは1.6μm以下であり、更に好ましくは1.4μm以下である。
【0014】
また、前記ポリシロキサン粒子の粒子径の、個数基準での変動係数(CV値)は7.2%以下であり、好ましくは6.5%以下であり、より好ましくは6.0%以下であり、更に好ましくは5.5%以下である。該変動係数の下限は特に限定されないが、1.5%程度であってもよい。変動係数は、平均粒子径に対する粒子径の変動係数の割合を百分率で示した値である。
【0015】
前記した平均粒子径及び変動係数は、後述する実施例で示した要領で測定することができ、具体的には、ポリシロキサン粒子濃度が0.01~1%程度、界面活性剤濃度が0.1~5%程度、溶媒における水の割合が80~100%程度となるようにポリシロキサン粒子分散液を調整し、コールターカウンターにより測定すればよい。
【0016】
本発明では、後述する製造方法を採用することで、0.5μm以上、2.0μm以下という平均粒子径が小さいポリシロキサン粒子が高濃度に分散した液を得ることができる。
高濃度のポリシロキサン粒子分散液を得ることで、該ポリシロキサン粒子を用いて後記する樹脂粒子を製造する際に、所定サイズの反応容器から得られる樹脂粒子の収量を高めることができ、生産性が向上する。前記分散液における固形分(ポリシロキサン粒子濃度)は、4.8質量%以上であり、好ましくは5.5質量%以上であり、より好ましくは6.0質量%以上であり、更に好ましくは7.0質量%以上である。固形分の上限は特に限定されないが、16質量%程度であってもよい。固形分は、後述するシランカップリング剤の重量を本発明の分散液の総重量で除した割合を百分率で示した値である。
【0017】
前記分散液における溶媒は、後述する工程(1)及び工程(2)における溶媒(つまり、シランカップリング剤の加水分解及び縮合反応の反応液における溶媒)、すなわち、水を含む溶媒をそのまま用いてもよいし、溶媒置換を行って前記反応液における溶媒とは異なる溶媒に置き換えてもよい。前記分散液における溶媒は、水及び有機溶剤の少なくとも1種であることが好ましく、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記溶媒は水を含むことが好ましく、溶媒中の水の割合は、例えば50~95質量%であり、より好ましくは70~90質量%である。
【0019】
また、前記分散液には、後記する酸、塩基又は界面活性剤が含まれていてもよい。
【0020】
上記ポリシロキサン粒子分散液は、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤、水を含む溶媒、及び酸を混合する工程(1)と、前記工程(1)で得られた混合液に塩基を添加する工程(2)を含む方法により製造することができる。前記工程(1)では、酸の存在下で、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を、水を含む溶媒中で加水分解することができ、前記工程(2)では、前記工程(1)で得られる混合液、すなわちシランカップリング剤の加水分解物を含む液に塩基を添加して、シランカップリング剤の加水分解物を縮合することができる。
【0021】
上述の特許文献1ではアンモニア水の存在下、シランカップリング剤の加水分解が行われていたが、本発明においては、シランカップリング剤と、水を含む溶媒と、酸とを混合することが重要であり、この混合工程により酸の存在下で前記シランカップリング剤を加水分解することができる。用いる酸としては、例えば酢酸、クエン酸、又はギ酸を挙げることができ、より好ましくは酢酸である。
【0022】
前記酸の仕込み量は、前記シランカップリング剤の仕込み量100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以下である。
【0023】
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチル
ジアセトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルエチルジアセトキシシラン、3-メタクリロキシエトキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシエトキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能性シランカップリング剤;;ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のビニル基含
有2官能性シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有3官能性シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のビニル基含有3官能性シランカップリング剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤として用いることができる。中でも、(メタ)アクリロイル基含有3官能性シランカップリング剤が好ましく、特に3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0024】
前記シランカップリング剤の仕込み量は、水の仕込み量100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは7質量部以上であり、また40質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以下である。
【0025】
前記工程(1)では、シランカップリング剤、水を含む溶媒、及び酸と共に、界面活性剤を混合することが好ましく、界面活性剤を用いることで、前記加水分解を、酸と共に、界面活性剤の存在下に行うことができるため好ましい。界面活性剤を用いることで、最終的に得られるポリシロキサン粒子の粒子径をより小さくできる。界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤のうちのいずれを用いてもよいが、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0026】
前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸油等のカルボン酸型アニオン性界面活性剤;ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホこはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン性界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、油脂硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン性界面活性剤;アルキルりん酸塩、アルキルりん酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルりん酸塩等のりん酸エステル型アニオン性界面活性剤;等が挙げられ、スルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤が好ましく、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0027】
硫酸エステル型アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル硫酸ナトリウム(好ましくは、ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル硫酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を挙げることができ、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウムが最も好ましい。
【0028】
界面活性剤の仕込み量は、前記シランカップリング剤の仕込み量100質量部に対して
0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であり、更に好ましくは0.1質量部以上であり、また20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以下である。
【0029】
前記工程(1)における溶媒には、上記した水、酸、界面活性剤の他、有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。有機溶剤は、アルコール類であることが好ましい。
【0030】
前記有機溶剤の仕込み量は、水の仕込み量100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは12質量部以上であり、また40質量部以下が好ましく、より好ましくは30質量部以下であり、更に好ましくは25質量部以下である。
【0031】
前記工程(1)では、前記シランカップリング剤、水、酸及び必要に応じて用いられる他の材料を混合して撹拌すればよい。前記工程(1)における材料の添加順序は特に限定されないが、水、酸、及び必要に応じて用いられる界面活性剤、有機溶剤を混合した液を作製しておき、当該混合液に前記シランカップリング剤を添加して撹拌することが好ましい。撹拌時の温度は例えば20~50℃、好ましくは28~35℃、より好ましくは30~33℃である。シランカップリング剤を添加し始めてからの撹拌時間は例えば10分以上であり、好ましくは20分以上であり、より好ましくは30分以上であり、また2時間以下が好ましく、より好ましくは100分以下であり、更に好ましくは90分以下である。撹拌温度及び時間が前記範囲であることは、得られるポリシロキサン粒子の粒径を小さくする上で好ましい。
【0032】
前記工程(1)の後、前記工程(1)で得られた混合液(すなわち、前記シランカップリング剤の加水分解物を含む液)に塩基を添加する(工程(2))。前記工程(2)によって、前記シランカップリング剤の加水分解物を縮合して、重合性官能基を有するポリシロキサン粒子を形成することができる(縮合工程)。
【0033】
塩基は、NaOHまたはKOHであることが好ましい。塩基の仕込み量は、前記工程(1)でのシランカップリング剤の仕込み量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上であり、また5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。
【0034】
塩基を添加した後、撹拌することが好ましく、撹拌時間は例えば5~30分程度とすればよい。また前記した工程(1)で前記界面活性剤を用いる(特に前記シランカップリング剤の添加時以前に前記界面活性剤を添加する)とともに、工程(2)の撹拌中にも界面活性剤を添加することが好ましい。工程(2)中に添加する界面活性剤は、上記工程(1)で用いる界面活性剤として例示したものを用いることができ、またその量は工程(1)で用いる界面活性剤の量に対して、例えば3質量倍~100質量倍であり、好ましくは5質量倍~80質量倍である。このように、工程(1)時の界面活性剤量に対して工程(2)での界面活性剤量を多くすることによって、工程(1)での初期の核形成の小粒子径化及び安定化の効果を得るとともに、工程(2)で析出した粒子の安定化という効果を得ることができるため好ましい。工程(1)での界面活性剤量が過剰になると、CV値が大き
くなる傾向になる。
【0035】
2.樹脂粒子
上述した、ラジカル重合性基を有するポリシロキサン粒子には、該ポリシロキサン粒子をシード粒子として該シード粒子に前記ラジカル重合性基とラジカル重合可能な基を有する単量体を吸収させる工程、及び重合工程を含むシード重合法を採用することが好ましく、該シード重合法により、前記単量体と複合化して樹脂粒子を形成させることができる。
【0036】
前記吸収工程では、前記ポリシロキサン粒子に単量体成分を吸収させる。吸収させる方法は、前記ポリシロキサン粒子の存在下に、単量体成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、前記ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に単量体成分を加えてもよいし、単量体成分を含む溶媒中に前記ポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予め前記ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、単量体成分を加えるのが好ましい。特に、工程(1)及び(2)(すなわち、加水分解、縮合工程)で得られた前記ポリシロキサン粒子を反応液(ポリシロキサン粒子分散液)から取り出すことなく、必要に応じて水を追加して、この反応液に単量体成分を加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。
【0037】
前記吸収工程において、単量体成分の添加のタイミングは特に限定されず、一括で加えてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、単量体成分を加えるにあたっては、単量体成分のみを添加しても単量体成分の溶液を添加してもいずれでもよいが、単量体成分を予め乳化剤で水又は水性媒体に乳化分散させた乳化液をポリシロキサン粒子に混合することが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0038】
単量体成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のアルキルスチレン類;o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);等が挙げられる。中でも、アルカンジオールジアクリレート、スチレン又はスチレン系多官能モノマー(特に、ジビニルベンゼン)が好ましい。
【0039】
また単量体成分の仕込み量は、前記ポリシロキサン粒子の製造工程におけるシランカップリング剤の仕込み量に対して、1.5~10質量倍とすればよい。
【0040】
前記乳化剤は特に限定されないが、上記したポリシロキサン粒子の製造工程で例示した界面活性剤を用いることができる。
【0041】
重合工程では、前記ポリシロキサン粒子に吸収された単量体成分を重合反応させると共に、吸収させた単量体成分とポリシロキサン粒子が有するラジカル重合性基とが重合して、ポリシロキサン骨格と単量体成分から得られる重合体とが複合化する。重合方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法が挙げられ、前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
ラジカル重合を行う際の反応温度は40℃以上、100℃以下が好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず複合粒子の機械的特性が不充分となる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。なお、ラジカル重合を行う際の反応時間は、用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5分以上、300分以下である。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0043】
合成後の樹脂粒子の個数基準の平均分散粒子径は、例えば1.1μm以上、3.0μm以下であり、後述の実施例の方法で測定される分散粒子径の個数基準の変動係数は例えば2%以上、10%以下ある。また、樹脂粒子の直径が10%変位したときの圧縮弾性率(10%K値)が2500N/mm2以上、15000N/mm2以下であることが好ましい。10%K値が2500N/mm2以上であることにより、当該樹脂粒子を基材として得
られる導電性微粒子の低圧接続における接続信頼性が向上する。そのため10%K値は、より好ましくは3000N/mm2以上、更に好ましくは3500N/mm2以上である。一方、10%K値が15000N/mm2以下であることにより、低圧接続でも電極との
接続面積を確保し易くすることができる。本発明により得られるポリシロキサン粒子は粒子径が小さいため、所定粒子径の樹脂粒子を得る際に、樹脂粒子における単量体成分の割合を多くすることができ10%K値を所定以下にすることができる。10%K値は、より好ましくは14000N/mm2以下、更に好ましくは13000N/mm2以下である。
【0044】
10%K値とは試験粒子の中心方向へ荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%になったときの圧縮弾性率のことである。圧縮弾性率は10%圧縮変位時の荷重値を測定することにより求めることができる。より具体的には10%K値(10%圧縮変位時の圧縮弾性率)は、後記する実施例に示す方法で圧縮荷重値を測定し、下記式により求められる。
【0045】
【0046】
上記式中、Eは圧縮弾性率(N/mm2)、Fは圧縮荷重(N)、Sは圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。
【0047】
3.導電粒子
前記樹脂粒子表面に少なくとも一層の導電性金属層を形成して導電粒子を形成することができる。導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル-
リン、ニッケル-ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。
【0048】
前記導電性金属層の厚さは、例えば0.01μm以上、0.20μm以下である。導電性金属層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持できる。
【0049】
導電性金属層の形成方法は特に限定されず、例えば、基材表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;等により形成できる。これらの中でも特に無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。
【0050】
前記導電粒子の個数平均粒子径は、1.1μm以上、2.8μm以下であることが好ましい。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線の電気接続に対して、好適に使用できる。
【0051】
前記導電粒子を、後記する実施例に記載の方法で測定した初期抵抗値は5Ω以下であることが好ましく、より好ましくは2Ω以下であり、また抵抗値上昇率は5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下である。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0053】
以下の実施例及び比較例で示す物性は、以下の方法で測定した。
【0054】
<ポリシロキサン粒子分散液、および樹脂粒子の個数平均粒子径・変動係数(CV値)>
ポリシロキサン粒子分散液の場合には、シランカップリング剤の加水分解、縮合反応で得られた分散液をポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N-08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とし、樹脂粒子の場合には、樹脂粒子0.1部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N-08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料として、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径(μm)を測定し、個数平均粒子径を求めた。また個数平均粒子径とともに個数基準での粒子径の標準偏差を求め、下記式に従って粒子径の変動係数(CV値)を算出した。
粒子径の変動係数(CV値)(%)=100×(個数基準での粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
【0055】
<導電性金属層の膜厚>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製「FPIA(登録商標)-3000」)を用いて、基材粒子(樹脂粒子)3000個の個数平均粒子径X(μm)および導電性微粒子3000個の個数平均粒子径Y(μm)を測定した。なお、測定は、粒子0.25部に、乳化剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)430」)の1.4%水溶液17.5部を加え、超音波で10分間分散させた後に行なった。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y-X)/2
【0056】
<導電粒子用基材粒子の10%K値>
微小圧縮試験機(島津製作所社製「MCT-W500」)を用いて、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS材平板)上に散布した基材粒子(樹脂粒子)1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、「軟質表面検出」モードで、基材粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.231mN/秒)で最大荷重(49.0mN)まで荷重をかけ、圧縮変位が基材粒子の個数平均粒子径の10%になったときの荷重値(10%圧縮荷重値)(mN)およびそのときの変位量(μm)を測定した。なお、測定は各試料について、異なる10個の基材粒子に対して行い、平均した値を測定値とした。そして、得られた圧縮荷重値(mN)を圧縮荷重(N)に換算し、そのとき得られた変位量(μm)を圧縮変位(mm)に換算し、導電粒子用基材粒子の個数平均粒子径(μm)から基材粒子の半径(mm)を算出し、これらを用いて下記式に基づき算出した。上記測定は、25℃の恒温雰囲気下で行った。
【0057】
【数2】
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm
2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)
、R:粒子の半径(mm)である。)
【0058】
<基材樹脂粒子の生産性>
反応容器容量5Lから得られる基材樹脂粒子の最大理想収量を5000gとした場合の、最大理想収量に対する基材樹脂粒子の収量の割合が10%以上の場合を「○○」、5%以上10%未満の場合を「○」、5%未満の場合を「×」と評価した。
【0059】
<初期抵抗値>
下記実施例及び比較例で得られた接続構造体の電極間の初期抵抗値を測定し、初期抵抗値が2Ω以下の場合を「○○」、5Ω以下の場合を「○」、5Ωを超える場合を「×」と評価した。
【0060】
<接続信頼性>
接続構造体の電極間の初期抵抗値Aを測定し、さらに、得られた接続構造体を85℃、85%RHの雰囲気下に500時間放置した後、上記初期抵抗値Aと同様に抵抗値を測定し、抵抗値Bとした。下記式に基づき算出した抵抗値上昇率(%)が2%以下の場合を「○○」、2%超え5%以下の場合を「○」、5%を超える場合を「×」、と評価した。
抵抗値上昇率(%)=[(B-A)/A]×100
【0061】
(実施例1)
<ポリシロキサン粒子分散液No.1の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2040部、メタノール360部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を1.2部および酢酸1.2部を仕込み、撹拌しながら30℃に保持した。その中へ、シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)173部を滴下し、内温を30℃で30分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解を行なった。加水分解の進行により、無色透明な溶液が得られた。続いて撹拌しながら50
w/v%水酸化ナトリウム水溶液(富士フィルム和光社製)5.3部を添加することで3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物の縮合反応を行い、10分後にポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を8.6部添加し、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.1を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は6.7%、個数平均粒子径は1.01μm、変動係数(CV値)は4.6%であった。
【0062】
<ポリシロキサン粒子分散液No.1を用いた樹脂粒子No.1の作製>
5Lガラス製反応器にポリシロキサン粒子分散液を1837部(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは120部相当)、固形分調整による分散安定性向上のためにイオン交換水941部を入れ、ポリシロキサン粒子の乳濁液を調製した。続いて乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液15部をイオン交換水600部で溶解した溶液に、スチレン600部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)7.2部とを溶解した溶液を加えて、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により13000rpmで15分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。このモノマーエマルションをポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から1時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液に乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液15部とイオン交換水615部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下80℃で4時間減圧乾燥することで、樹脂粒子No.1を得た。得られた樹脂粒子No.1の収量は576部であり、最大理想収量に対する基材樹脂粒子の収量の割合は11.5%であった。個数平均粒子径は2.03μm、変動係数(CV値)は3.6%、10%K値は5057N/mm2であった。結果を表1-2に示す。
【0063】
<導電粒子の作製(導電性金属層の形成)>
前記樹脂粒子No.1に、水酸化ナトリウムによるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させることによりセンシタイジングし、次いで二塩化パラジウム溶液に浸漬させることによりアクチベーティングする方法(センシタイジング-アクチベーション法)によって、パラジウム核を形成させた。次に、パラジウム核を形成させた樹脂粒子2部をイオン交換水400部に添加し、超音波分散処理を行った後、得られた樹脂粒子懸濁液を70℃の温浴で加温した。このように懸濁液を加温した状態で、別途70℃に加温した無電解めっき液(日本カニゼン(株)製「シューマーS680」)600部を加えることにより、無電解ニッケルめっき反応を生じさせた。水素ガスの発生が終了したことを確認した後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄し、100℃で2時間真空乾燥して、ニッケルめっきを施した粒子を得た。次いで、得られたニッケルめっき粒子を、シアン化金カリウムを含有する置換金めっき液に加え、ニッケル層表面にさらに金めっきを施すことにより、導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子における導電性金属層の膜厚は表1-2に示すとおりであった。
【0064】
(実施例2)
<ポリシロキサン粒子分散液No.2の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2040部、メタノール360部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウ
ム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を1.2部および酢酸1.2部を仕込み、撹拌しながら30℃に保持した。その中へシラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)189部を滴下し、内温を30℃で30分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解を行なった。加水分解の進行により、無色透明な溶液が得られた。続いて撹拌しながら50w/v%水酸化ナトリウム水溶液(富士フィルム和光社製)5.3部を添加することで3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物の縮合反応を行い、10分後にポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を9.4部添加し、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.2を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は7.3%、個数平均粒子径は1.00μm、変動係数(CV値)は4.9%であった。
【0065】
<ポリシロキサン粒子分散液No.2を用いた樹脂粒子No.2の作製>
5Lガラス製反応器にポリシロキサン粒子分散液を1657部(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは120部相当)を入れた。続いて乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液60部をイオン交換水600部で溶解した溶液に、1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレート1.6-HXA」)を300部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 DVB960)108部、スチレン192部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)7.2部を溶解した溶液を加えて、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により13000rpmで30分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。このモノマーエマルションをポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から1時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液に乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液93部とイオン交換水1328部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下230℃で1時間加熱処理を施すことで、樹脂粒子No.2を得た。得られた樹脂粒子No.2の収量は612部であり、最大理想収量に対する基材樹脂粒子の収量の割合は12.2%であった。個数平均粒子径は1.94μm、変動係数(CV値)は3.6%、10%K値は12652N/mm2であった。結果を表1-2に示す。
【0066】
<導電粒子の作製(導電性金属層の形成)>
基材として樹脂粒子No.2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。得られた導電性微粒子における粒子径及び導電性金属層の膜厚は表1-2に示すとおりであった。
【0067】
(実施例3)
<ポリシロキサン粒子分散液No.3の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水8500部、メタノール1500部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を1.3部および酢酸5.0部を仕込み、撹拌しながら30℃に保持した。その中へシラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン(信越化学工業社製、「KBM503」)1667部を滴下し、内温を30℃で30分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解を行なった。加水分解の進行により、無色透明な溶液が得られた。続いて撹拌しながら50w/v%水酸化ナトリウム水溶液(富士フィルム和光社製)21.2部を添加することで3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物の縮合反応を行い、10分後にポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を83.4部添加し、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.3を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は14.2%、個数平均粒子径は1.74μm、変動係数(CV値)は2.2%であった。
【0068】
(比較例1)
<ポリシロキサン粒子分散液No.4の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水141.1部と25%アンモニア水2.9部、メタノール10.1部を仕込み25℃に保持した。その中へ架橋性シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)26部とメタノール54部を添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液(ポリシロキサン粒子分散液)No.4を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は11.1%、個数平均粒子径は4.02μm、変動係数(CV値)は3.8%であった。
【0069】
(比較例2)
<ポリシロキサン粒子分散液No.5の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水141.1部と25%アンモニア水5.8部、メタノール10.1部を仕込み25℃に保持した。その中へ架橋性シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)13.2部とメタノール51部を添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.5を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は6.0%、個数平均粒子径は0.95μm、変動係数(CV値)は7.3%であった。
【0070】
(比較例3)
<ポリシロキサン粒子分散液No.6の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2200部と25%アンモニア水24部、メタノール200部を仕込み30℃に保持した。その中へ架橋性シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)120部を添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.6を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は4.7%、個数平均粒子径は0.85μm、変動係数(CV値)は8.0%であった。
【0071】
(比較例4)
<ポリシロキサン粒子分散液No.7の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水2400部と25%アンモニア水72部、メタノール1200部を仕込み30℃に保持した。その中へ架橋性シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)81部を添加して、3-メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った後、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を96部添加して、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.7を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は2.1%、個数平均粒子径は1.54μm、変動係数(CV値)は4.1%であった。
【0072】
<ポリシロキサン粒子分散液No.7を用いた樹脂粒子No.7の作製>
5Lガラス製反応器にポリシロキサン粒子分散液を3810部(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは80部相当)を入れ、ポリシロキサン粒子の乳濁液を準備した。続いて乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液2部をイオン交換水80部で溶解した溶液に、スチレン80部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)0.96部とを溶解した溶液を加えて、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により13000rpmで15分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。このモノマーエマルションをポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から1時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液に乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液20部とイオン交換水800部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下80℃で4時間減圧乾燥することで、樹脂粒子No.7を得た。得られた樹脂粒子No.7の収量は80部であり、最大理想収量に対する基材樹脂粒子の収量の割合は1.6%であった。個数平均粒子径は2.02μm、変動係数(CV値)は3.2%であった。結果を表1-2に示す。
【0073】
<導電粒子の作製(導電性金属層の形成)>
基材として樹脂粒子No.7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。得られた導電性微粒子における粒子径及び導電性金属層の膜厚は表1-2に示すとおりであった。
【0074】
(比較例5)
<ポリシロキサン粒子分散液No.8の作製>
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水8320部と25%アンモニア水104部、メタノール2080部を仕込み30℃に保持した。その中へ架橋性シラン系単量体(シランカップリング剤)である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)171.7部を添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解・縮合を行った後、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF-08」)の20%水溶液を8部添加して、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子分散液No.8を得た。表1-1に示す通り、得られたポリシロキサン粒子分散液の固形分は1.6%、個数平均粒子径は1.01μm、変動係数(CV値)は5.0%であった。
【0075】
<ポリシロキサン粒子分散液No.8を用いた樹脂粒子No.8の作製>
5Lガラス製反応器にポリシロキサン粒子分散液を3125部(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは50部相当)を入れ、ポリシロキサン粒子の乳濁液を準備し
た。続いて乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液6.3部をイオン交換水250部で溶解した溶液に、1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレート1.6-HXA」)を125部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学社製 DVB960)45部、スチレン80部、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)3部とを溶解した溶液を加えて、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により13000rpmで30分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。このモノマーエマルションをポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から1時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、反応液に乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール NF-08」)の20%水溶液33.3部とイオン交換水1000部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下230℃で1時間加熱処理を施すことで、樹脂粒子No.8を得た。得られた樹脂粒子No.8の収量は238部であり、最大理想収量に対する基材樹脂粒子の収量の割合は4.8%であった。個数平均粒子径は2.04μm、変動係数(CV値)は4.0%であった。結果を表1-2に示す。
【0076】
<導電粒子の作製(導電性金属層の形成)>
基材として樹脂粒子No.8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性微粒子を作製した。得られた導電性微粒子における粒子径及び導電性金属層の膜厚は表1-2に示すとおりであった。
【0077】
<接続構造体の作製>
実施例1、2、及び比較例4、5で得られた導電性微粒子を用い、下記の方法で異方性導電材料(異方性導電フィルム)を作製し、その性能を下記の方法で評価した。
すなわち、導電性微粒子1部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製「JER828」)100部と、硬化剤(三新化学社製「サンエイド(登録商標)SI-150」)2部と、トルエン100部とを加え、さらにφ1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス鋼製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間攪拌して分散させた。そして、得られたペースト状組成物をバーコーターにて剥離処理を施したPETフィルム上に塗布し乾燥させることにより異方性導電フィルムを得た。
【0078】
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と20μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間に挟みこみ、1MPa、190℃の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。上記した方法で測定した初期抵抗値及び接続信頼性の結果を表1-2に示す。
【0079】
【0080】