IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-超音波検査装置 図1
  • 特開-超音波検査装置 図2
  • 特開-超音波検査装置 図3
  • 特開-超音波検査装置 図4
  • 特開-超音波検査装置 図5
  • 特開-超音波検査装置 図6
  • 特開-超音波検査装置 図7
  • 特開-超音波検査装置 図8
  • 特開-超音波検査装置 図9
  • 特開-超音波検査装置 図10
  • 特開-超音波検査装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161245
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20241108BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/44
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153279
(22)【出願日】2024-09-05
(62)【分割の表示】P 2023520745の分割
【原出願日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2021080200
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】奈良 晃寛
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝生
(57)【要約】
【課題】超音波検査装置によって検査すべき被検体の面積が大きくても、高精度かつより短い時間で被検体における欠陥を検査することができる。
【解決手段】超音波検査装置は、被検体に向けて超音波ビームを送信する送信面を有する送信部と、被検体を透過した超音波ビームを受信する受信面を有し、アレイ状に配列された複数の受信部と、を備える。超音波ビームの波長をλとしたとき、受信面の面積は(10×λ)以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中において被検体に向けて超音波ビームを送信する送信面を有する送信部と、
前記被検体を透過した前記超音波ビームを空気中において受信する受信面を有し、所定のパターンに応じて配列された複数の受信部と、を備え、
前記超音波ビームの波長をλとしたときに、前記受信面の面積が(10×λ)以下である超音波検査装置。
【請求項2】
複数の前記受信部は、マトリクス状又はアレイ状に配列されている請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
正方形に形成された前記受信面の一辺の長さが、(10×λ)以下である請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
長方形に形成された前記受信面の短辺の長さが、(10×λ)以下である請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
円形に形成された前記受信面の直径の長さが、(10×λ)以下である請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記受信面の面積が(6×λ)以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項7】
前記受信面の面積が(4×λ)以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記受信面の面積が(2×λ)以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項9】
複数の前記受信部は、互いに間隔をあけて配列されている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項10】
隣り合う前記受信部の間に、音響的特性が前記受信部と異なる樹脂又は空気層が介在している請求項9に記載の超音波検査装置。
【請求項11】
リファレンス波形と、前記被検体のうち欠陥の有無の検査対象となる検査対象被検体を透過して前記受信部で受信した前記超音波ビームの波形である検査対象波形との関係に基づいて前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する判定部を備える請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項12】
前記リファレンス波形は、前記被検体のうちリファレンス被検体を透過して前記受信部で受信した場合の前記超音波ビームの波形であり、
前記判定部は、当該リファレンス波形の位相と、前記検査対象波形の位相との相関値を計算し、当該相関値の値に基づいて前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する請求項11に記載の超音波検査装置。
【請求項13】
前記リファレンス波形は、前記被検体のうちリファレンス被検体を透過して前記受信部で受信した場合の前記超音波ビームの波形であり、
前記判定部は、前記検査対象波形の位相が、前記リファレンス波形の位相と異なる位相を含むか否かによって、前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する請求項11に記載の超音波検査装置。
【請求項14】
前記リファレンス波形を記憶する記憶部を備える請求項11から請求項13のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項15】
前記送信部及び前記受信部の少なくとも一方は、前記超音波ビームの送信方向に交差する交差方向において、前記被検体の端部に対して少なくとも前記超音波ビームの波長の長さ分だけ内側に位置する請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項16】
前記受信部が受信した超音波ビームに対応する受信信号を出力する基板を備え、
複数の前記受信部は、前記基板に一体に設けられている請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に超音波を送信する送信部、及び、被検体を透過した超音波を受信する受信部を有し、受信部に対する超音波の受信状況を解析することで、被検体内部の欠陥を検出する超音波検査装置がある。特許文献1には、受信部の受信面を送信部の送信面よりも小さくすることで被検体内部の欠陥を高い精度で検出するようにした超音波検査装置(超音波探傷装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-176916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波検査装置では、被検体を広い範囲において高い精度(高い分解能)で欠陥の検査しようとすると、時間がかかってしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、検査すべき被検体の面積が大きくても、高精度かつより短い時間で被検体における欠陥の検査が可能な超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、空気中において被検体に向けて超音波ビームを送信する送信面を有する送信部と、前記被検体を透過した前記超音波ビームを空気中において受信する受信面を有し、マトリクス状又はアレイ状に配列された複数の受信部と、を備え、前記超音波ビームの波長をλとしたときに、前記受信面の面積が(10×λ)以下である超音波検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超音波検査装置によって検査すべき被検体の面積が大きくても、高精度かつより短い時間で被検体における欠陥を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る超音波検査装置の要部を模式的に示す断面図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3】一実施形態に係る超音波検査装置の受信ユニットの第一例を示す断面図である。
図4】一実施形態に係る超音波検査装置の受信ユニットの第二例を示す断面図である。
図5】一実施形態に係る超音波検査装置の受信部の受信面の第一例を示す平面図である。
図6】一実施形態に係る超音波検査装置の受信部の受信面の第二例を示す平面図である。
図7】一実施形態に係る超音波検査装置の受信部の受信面の第三例を示す平面図である。
図8】一実施形態に係る超音波検査装置において、被検体の端部と送信部及び受信部との位置関係を示す断面図である。
図9】一実施形態に係る超音波検査装置の機能ブロック図である。
図10】一実施形態に係る超音波検査装置の送信部から送信された超音波が被検体の欠陥の周縁において回折する様子を示す図である。
図11】他の実施形態に係る超音波検査装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~10を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態の超音波検査装置1は、超音波を用いて被検体100における欠陥の検査を行う。本実施形態における被検体100は、容器用部材101の縁を重ねて接合することで内部に収容空間102を形成した包装容器である。図示例における容器用部材101はシート部材であるが、容器用部材101はカップ状部材など任意であってよい。包装容器である被検体100のうち欠陥検査の対象となる部位は、容器用部材101を重ねて接合した接合部分103である。以下の説明では、この接合部分103を被検体100と呼ぶこともある。図10に例示するように、本実施形態の被検体100における欠陥104は、接合部分103における容器用部材101の剥離部分である。
【0010】
図面では、接合部分103において容器用部材101が重なる方向をZ軸方向で示している。また、接合部分103が、容器用部材101のうち接合されずに収容空間102を形成する非接合部分105から離れる方向を、接合部分103の幅方向とし、Y軸方向で示している。また、Z軸方向及びY軸方向に直交する接合部分103の長手方向をX軸方向で示している。
【0011】
図1,2に示すように、超音波検査装置1は、送信部10と、受信ユニット20と、を備える。
送信部10は、被検体100に向けて超音波ビームWを送信する送信面10aを有する。本実施形態において、送信部10は、超音波ビームWを被検体100である包装容器の接合部分103に向けて送信する。送信部10から送信された超音波ビームWは、概ね容器用部材101が重なる方向において接合部分103を透過する。超音波ビームWが接合部分103を透過する方向は、厳密に容器用部材101が重なる方向(Z軸方向)だけに限らず、容器用部材101が重なる方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【0012】
本実施形態において、送信部10の送信面10aは、図2に示すようにY軸方向から見てZ軸正方向側に窪む円弧状に形成されている。また、送信面10aは、図1に示すようにY軸方向に直線状に延びている。このため、Y軸方向から見た送信面10aの形状は、Y軸方向の位置にかかわらず変化しない。すなわち、本実施形態の送信面10aの形状は、円筒の内周面の周方向の一部と同じような形状である。
送信面10aが上記のように形成されていることで、送信部10の送信面10aから送信された超音波ビームWは、図1,2に示すように、Z軸負方向に向かうにしたがってX軸方向において収束(フォーカス)するが、Y軸方向においては収束しない。これにより、超音波ビームWは、収束した位置において、X軸方向における長さが小さく、Y軸方向における長さが大きい線状となる。
【0013】
受信ユニット20は、複数の受信部21を有する。各受信部21は、被検体100を透過した超音波ビームWを受信する受信面21aを有する。受信面21aの面積には制約があり、超音波ビームWの波長を用いて表される。受信面21aの面積は、超音波ビームWの波長をλとして、例えば(10×λ)以下である。
受信部21の受信面21aは、例えば図5に示すように、正方形に形成されてよい。受信面21aの面積が(10×λ)以下である場合には、受信面21aの一辺の長さl1は(10×λ)以下であるとよい。なお、正方形である受信面21aの対角線の長さが(10×λ)以下であってもよい。
【0014】
受信部21の受信面21aは、例えば図6に示すように、長方形に形成されてもよい。受信面21aの面積が(10×λ)以下である場合には、受信面21aの短辺の長さl2が、(10×λ)以下であるとよい。なお、長方形である受信面21aの長辺や対角線の長さが(10×λ)以下であってもよい。
受信部21の受信面21aは、例えば図7に示すように、円形に形成されてもよい。受信面21aの面積が(10×λ)以下である場合には、受信面21aの直径の長さl3が、(10×λ)以下であるとよい。
【0015】
なお、受信面21aの面積は、例えば(6×λ)以下であってもよい。この場合には、正方形である受信面21aの一辺の長さl1、長方形である受信面21aの短辺の長さl2、円形である受信面21aの直径の長さl3などが、(6×λ)以下であるとよい。
また、受信面21aの面積は、例えば(4×λ)以下であってもよい。この場合には、正方形である受信面21aの一辺の長さl1、長方形である受信面21aの短辺の長さl2、円形である受信面21aの直径の長さl3などが、(4×λ)以下であるとよい。
さらに、受信面21aの面積は、例えば(2×λ)以下であってもよい。この場合には、正方形である受信面21aの一辺の長さl1、長方形である受信面21aの短辺の長さl2、円形である受信面21aの直径の長さl3などが、(2×λ)以下であるとよい。
【0016】
図1,2に示すように、複数の受信部21は、収束した線状の超音波ビームWに対応するアレイ状に配列されている。すなわち、複数の受信部21は、Y軸方向に一列に並んでいる。複数の受信部21は、超音波ビームWが収束した位置に厳密に配置されることに限らず、例えば超音波ビームWが収束した位置よりも送信部10から離れた方向(Z軸負方向)にずらした位置に配置されてよい。ただし、複数の受信部21は、できる限り超音波ビームWが収束した位置の近くに配置されることがより好ましい。
【0017】
本実施形態において、複数の受信部21は、図3,4に示すように、互いに間隔をあけて配列されている。互いに隣り合う受信部21の間には、受信部21とは音響的特性が異なる層または部材が介在してよい。音響的特性には、音響インピーダンスが含まれる。図3,4に例示する受信ユニット20では、隣り合う受信部21の間に、樹脂22が介在している。なお、隣り合う受信部21の間に、例えば空気層や紙などが介在してもよい。
本実施形態において、樹脂22は、複数の受信部21を一体に固定している。
【0018】
本実施形態の受信ユニット20は、FET基板23をさらに備える。FET基板23は、受信部21が受信した超音波ビームWに対応する受信信号を外部に出力するものである。複数の受信部21は、このFET基板23に一体に設けられている。図3,4においては、受信部21とFET基板23との間に樹脂22が介在しているが、例えば受信部21とFET基板23とが直接接触していてもよい。
【0019】
本実施形態の受信ユニット20は、区画壁部24をさらに備える。区画壁部24は、受信部21の受信面21aから離れる方向(Z軸正方向)に延びて、複数の受信面21a上の空間を受信面21a毎に区画する。区画壁部24は、各受信面21aの周囲からZ軸正方向に延びる複数の筒状体25を構成している。
【0020】
受信ユニット20は、例えば図4に示すように、区画壁部24(筒状体25)の延長方向の先端の開口を覆う蓋部26をさらに備えてもよい。蓋部26には、各筒状体25の内側と外側とをつなぐ連通孔27が形成されている。Z軸方向から見て、連通孔27の大きさは、筒状体25の内側の空間よりも小さい。
【0021】
図1,2に示すように、送信部10と受信ユニット20(特に受信部21)との間には、被検体100が配置される。具体的に、被検体100である包装容器の接合部分103は、送信部10から送信された超音波ビームWが収束した位置に配される。また、包装容器の接合部分103は、その幅方向(Y軸方向)が収束した線状の超音波ビームWの長手方向に向くように配置される。これにより、送信部10から送信された超音波ビームWは、被検体100である接合部分103を透過した上で受信部21において受信される。
以下の説明では、非接合部分105に対する接合部分103の延長方向(Y軸負方向)の先端を、接合部分103(被検体100)の端部103Aと呼ぶ。
【0022】
図8に示すように、本実施形態では、送信部10及び受信部21が、超音波ビームWの送信方向(主にZ軸負方向)に直交する直交方向(Y軸方向)において、接合部分103(被検体100)の端部103Aに対して内側(Y軸正方向側)に位置している。すなわち、送信部10及び受信部21は、接合部分103の端部103AよりもY軸負方向側に張り出さないように位置する。Y軸方向における接合部分103の端部103Aと送信部10との間隔d1、及び、接合部分103の端部103Aと受信部21との間隔d2の少なくとも一方は、超音波ビームWの波長の長さ以上となっている。
【0023】
なお、上記した構成において、送信部10や受信部21は、例えば、接合部分103(被検体100)の端部103Aより外側(Y軸負方向側))にはみ出すように配置されてもよい。この場合には、送信部10や受信部21のうち端部103Aからはみ出した部分で送信あるいは受信された超音波ビームWを信号処理において無視すればよい。これにより、送信部10や受信部21が接合部分103の端部103Aから外側にはみ出した状態は、実質的に、送信部10及び受信部21が接合部分103の端部103Aよりも内側(Y軸正方向側)に位置した状態と同等である、と見なすことができる。
【0024】
また、上記した構成において、非接合部分105に対して接合部分103が延びる方向は、超音波ビームWの送信方向に対して厳密に直交していなくてもよい。このため、送信部10及び受信部21は、例えば超音波ビームWの送信方向(主にZ軸負方向)に対して交差する交差方向において接合部分103(被検体100)の端部103Aに対して内側に位置してもよい。
【0025】
図9に示すように、本実施形態の超音波検査装置1は、記憶部30と、判定部40と、をさらに備える。また、本実施形態の超音波検査装置1は、出力部50も備える。
記憶部30は、被検体100に欠陥104(図10参照)がないリファレンス被検体を透過して受信部21で受信した場合の超音波ビームWの波形をリファレンス波形として記憶する。リファレンス波形は、実際に受信部21で受信した超音波ビームWの波形であってもよいし、受信部21で受信した場合の超音波ビームWの波形を模した波形であってもよい。
【0026】
判定部40は、欠陥104の有無の検査対象となる検査対象被検体(すなわち被検体100)を透過して受信部21で受信した超音波ビームWの波形である検査対象波形の位相と、記憶部30に記憶されたリファレンス波形の位相とに基づいて、検査対象被検体100における欠陥104の有無を判定する。
出力部50は、判定部40において判定された結果を表示装置等に出力する。
【0027】
以下、判定部40が欠陥104の有無を判定する方法の一例について説明する。
まず、判定部40は、記憶部30に記憶されたリファレンス波形の位相と検査対象波形の位相との相関値を計算する。相関値は、リファレンス波形と検査対象波形との掛け算を積分した値である。その後、判定部40は、相関値の値に基づいて検査対象被検体100における欠陥104の有無を判定する。具体的に、相関値が高い場合には判定部40が検査対象被検体100に欠陥104がないと判定し、相関値が低い場合には判定部40が検査対象被検体100に欠陥104があると判定する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の超音波検査装置1では、送信部10から送信された超音波ビームWを受信する各受信部21の受信面21aの面積が(10×λ)以下とされており、受信面21aの面積が十分に小さい。これにより、高い精度で被検体100における欠陥104の検出を行うことができる。
また、受信面21aのサイズが小さい複数の受信部21をアレイ状に配列することで、受信面21aの合計面積を広くすることができる。これにより、検査すべき被検体100の面積が大きくても、高精度かつ短い時間で被検体100における欠陥104の検査を行うことができる。
【0029】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、正方形に形成された受信面21aの一辺の長さl1、あるいは、円形に形成された受信面21aの直径の長さl3を、(2×λ)以下とすることで、受信面21aの面積を(2×λ)以下とすることができる。
また、長方形である受信面21aの短辺の長さl2を(10×λ)よりも小さくすることで、受信面21aの面積を(10×λ)以下とするために、長方形である受信面21aの長辺の長さが(10×λ)を越えることを許容できる。
【0030】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、複数の受信部21が、互いに間隔をあけて配列されている。このため、所定の受信部21において受信した超音波ビームWの音圧が、隣り合う別の受信部21に伝わってしまうことを抑制できる。すなわち、隣り合う受信部21間を音響的に絶縁することができる。したがって、互い隣り合う受信部21間での物理的なクロストークを低減することができる。
【0031】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、隣り合う受信部21の間に音響的特性が受信部21と異なる樹脂22が介在している。このため、隣り合う受信部21同士の間隔を小さくしても、互い隣り合う受信部21間での物理的なクロストークをより効果的に低減することができる。したがって、より高い精度で被検体100における欠陥104の検査を行うことが可能となる。また、樹脂22が受信部21の間に介在する場合には、当該樹脂22を利用して複数の受信部21を一体に固定することもできる。
なお、隣り合う受信部21の間に空気層が介在する場合であっても、空気層と受信部21とでは音響的特性が異なるため、上記と同様の効果を奏し得る。
【0032】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、判定部40が、記憶部30に記憶されたリファレンス波形の位相と検査対象波形の位相との相関値を計算し、相関値の値に基づいて検査対象被検体100における欠陥104の有無を判定する。このため、検査対象被検体100における欠陥104のサイズが受信部21(受信面21a)のサイズと同等以下になった場合でも、当該欠陥104を検出することができる。以下、この点について説明する。
【0033】
判定部40は、相関値の計算により、検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と一致するか否かを判定することができる。そして、検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と一致する場合、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104がないと判定することができる。一方、リファレンス波形の位相と検査対象波形の位相とがずれている場合には、図10に示すように、超音波ビームW2がサイズの小さな欠陥104の周縁において回折した上で受信部21の受信面21aに到達する。このため、欠陥104において回折した超音波ビームW2の位相は、回折しない超音波ビームW1の位相に対してずれる。これにより、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104があると判定することができる。
以上のことから、本実施形態の超音波検査装置1では、受信部21のサイズと同等以下の欠陥104も検出することができる。すなわち、欠陥104の検出性能を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、送信部10及び受信部21の少なくとも一方が、超音波ビームWの送信方向(Z軸方向)に交差する交差方向(例えばY軸方向)において、被検体100の端部103Aに対して少なくとも超音波ビームWの波長の長さ分だけ内側に位置する。このため、図8に示すように、送信部10から被検体100を透過せずに受信部21に到達する超音波ビームW3は、被検体100の端部103Aを回り込む回折波となる。この回折波の経路は、送信部10から被検体100を透過して受信部21に到達する超音波ビームW1(透過波)の経路よりも長くなる。このため、所定時刻に超音波ビームW1,W3が送信されてから、回折波(超音波ビームW3)が受信部21に到達するまでの時間は、透過波(超音波ビームW1)が受信部21に到達するまでの時間よりも長い。これにより、超音波ビームWのうち被検体100の端部103Aを回り込む回折波(超音波ビームW3)が受信部21に受信される時刻よりも早い時刻に時間窓を設け、時間窓において被検体100を透過して受信部21に受信される透過波(超音波ビームW1)のみに基づいて、被検体100における欠陥104の有無を検査することができる。
【0035】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、複数の受信部21がFET基板23に一体に設けられていることで、超音波検査装置1における感度の低下を抑制することができる。
この点について説明すれば、受信部21の受信面21aのサイズが小さくなると、受信部21において受信される超音波ビームWの強度(振幅)が小さくなる。このため、受信部21とFET基板23とが別個に形成されて互いに電気配線で接続されると、電気的な損失によって感度が低下してしまう。これに対し、受信部21がFET基板23に一体に設けられることで、上記の電気配線を無くしたり短くしたりすることができる。これにより、電気的な損失によって感度が低下することを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態の超音波検査装置1は、複数の受信面21a上の空間を受信面21a毎に区画する区画壁部24を備えている。区画壁部24は、各受信面21aから離れる方向に延びる筒状体25を構成している。これにより、互いに隣り合う受信部21(受信面21a)間での物理的なクロストークをさらに低減することができる。また、区画壁部24によって構成された筒状体25を共鳴管として活用することで、受信部21(受信面21a)が受信する超音波ビームWの感度を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の超音波検査装置1は、図4に例示したように区画壁部24(筒状体25)の延長方向(Z軸正方向)の先端の開口を覆う蓋部26を備えてもよい。蓋部26には、筒状体25の内側と外側とをつなぐ連通孔27が形成されている。Z軸方向から見た連通孔27の大きさは、筒状体25の内側の大きさよりも小さい。区画壁部24の先端に蓋部26が設けられる場合、筒状体25及び蓋部26をヘルムホルツ共鳴器として構成することができる。すなわち、連通孔27の面積を変化させることで筒状体25における共鳴周波数を調整して、受信部21(受信面21a)が受信する超音波の感度を適切に調整することが可能となる。
【0038】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0039】
本発明において、判定部40は、上記実施形態と異なる方法で欠陥104の有無を判定してもよい。例えば、判定部40は、検査対象波形の位相が記憶部30に記憶されたリファレンス波形(欠陥104がない場合の波形)の位相と異なる位相を含まない場合に、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104が無いと判定し、検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と異なる位相を含む場合に、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104があると判定してもよい。
判定部40が上記のように欠陥104の有無を判定する場合には、検査対象被検体100における欠陥104のサイズが受信部21(受信面21a)のサイズと同等以下であっても、当該欠陥104を検出することができる。以下、この点について説明する。
【0040】
検査対象波形の位相が、リファレンス波形の位相と異なる位相(特定の位相)を含むことは、図10に例示するように、超音波ビームW2がサイズの小さな欠陥104の周縁において回折した上で受信部21に到達していることを意味する。これは、超音波ビームW2がサイズの小さな欠陥104の周縁において回折した上で受信部21に到達することで、回折した超音波ビームW2の位相が、回折しない超音波ビームW1の位相に対してずれることに起因する。したがって、検査対象波形の位相が、リファレンス波形の位相と異なる位相(特定の位相)を含む場合には、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104があると判定することができる。
【0041】
本発明において、記憶部30は、例えば欠陥のある被検体100をリファレンス被検体とし、当該リファレンス被検体の欠陥部分を透過して受信部21で受信した場合の超音波ビームWの波形をリファレンス波形として記憶してもよい。
この場合、判定部40がリファレンス波形の位相と検査対象波形の位相との相関値を計算することで欠陥の有無を判定する際に、判定部40は、相関値が高い場合に検査対象被検体100に欠陥104があると判定する。また、判定部40は、相関値が低い場合には判定部40が検査対象被検体100に欠陥104が無いと判定する。
【0042】
また、リファレンス波形が欠陥部分を透過した波形である場合に、判定部40が検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と異なる位相を含むか否かに基づいて欠陥の有無を判定する際は、判定部40は、検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と異なる位相を含まない場合に、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104があると判定する。また、判定部40は、検査対象波形の位相がリファレンス波形の位相と異なる位相を含む場合に、判定部40は検査対象被検体100に欠陥104が無いと判定する。
【0043】
本発明において、送信部10の送信面10aは、例えば図11に示すように、平坦面であってもよい。この場合、送信部10の送信面10aから送信された超音波ビームWは、収束することなく、被検体100に向けて伝播する。このため、超音波ビームWの送信方向(Z軸負方向)に直交する超音波ビームWの形状は、Z軸方向の位置に関わらず、送信面10aの形状に対応する面状となる。図11に例示する送信面10aの形状は、長方形(又は正方形)に形成されているため、超音波ビームWの送信方向に直交する超音波ビームWの形状も長方形状(又は正方形状)となる。図11では、超音波ビームWの送信方向に直交する超音波ビームWの形状(領域)を、符号BAで示している。
【0044】
この場合、複数の受信部21は、上記した面状の超音波ビームWに対応するマトリクス状に配列される。すなわち、複数の受信部21は、Z軸方向に直交する2つの方向(X軸方向及びY軸方向)に並ぶ。図11では、複数の受信部21がZ軸方向に直交する2つの方向に並ぶことで、複数の受信部21の受信面21a全体の形状が、送信面10aの形状に対応する長方形(又は正方形)となっている。なお、複数の受信部21は、Z軸方向においてできる限り被検体100の近くに配置されることがより好ましい。
受信面21aのサイズが小さい(受信面21aの面積が(2×λ)以下)である受信部21がマトリクス状に配列されていることで、上記実施形態と同様に受信面21aの合計面積を広くすることができる。これにより、検査すべき被検体100の面積が大きくても、高精度かつ短い時間で被検体100における欠陥104の検査を行うことができる。
【0045】
本発明において、複数の受信部21は縦横に隙間なく並ぶマトリクス状、又は、直線方向に隙間なく並ぶアレイ状に配列されることに限らず、少なくとも所定のパターンに応じて配列されていればよい。複数の受信部21は、例えばマトリクス配列された状態から所定の法則で受信部21を取り除いたパターン(例えば格子状(lattice pattern)や市松模様(checkered pattern)に配列されてよい。また、複数の受信部21は、湾曲した線状(例えば螺旋状)に沿って一列に配列されてもよい。また、複数の受信部21は、例えば隙間なく一列に配列された状態から所定の法則で受信部21を取り除いたパターン(例えば2つの受信部21からなるユニットを間隔をあけて一列に配置したパターン)に配列されてもよい。
【0046】
本発明において、送信部10は、例えば送信部10の送信面10aから離れるにしたがって扇状、球面状に広がるように超音波ビームWを送信してもよい。
【0047】
本発明において、前述したように、検査対象被検体100における欠陥の有無を判定する判定部40は、リファレンス波形の位相と検査対象波形の位相との関係に基づいて判定することに限らない。判定部40は、例えばリファレンス波形の形と検査対象波形の形との関係に基づいて判定してもよい。具体例として、判定部40は、リファレンス波形と検査対象波形との形状の違いに基づいて欠陥の有無を判定してよい。すなわち、本発明の判定部40は、リファレンス波形と検査対象波形との関係に基づいて欠陥の有無を判定してよい。
【0048】
本発明の超音波検査装置は、例えばリファレンス波形を記憶する記憶部30を備えなくてもよい。この場合、超音波検査装置では、例えば、被検体100に対して超音波を送信して検査対象波形を得ると同時に、別途用意するリファレンス被検体にも超音波を送信してリファレンス波形を生成することで、これらリファレンス波形と検査対象波形とを比較するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…超音波検査装置、10…送信部、10a…送信面、21…受信部、21a…受信面、22…樹脂、23…FET基板、30…記憶部、40…判定部、100…被検体、104…欠陥、W…超音波ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に向けて超音波ビームを送信する送信面を有する送信部と、
前記被検体を透過した前記超音波ビームを受信する受信面を有し、所定のパターンに応じて配列された複数の受信部と、を備え、
前記受信部が受信した超音波ビームに対応する受信信号を出力する基板を備え、
前記受信部と前記基板との間に樹脂が介在する、あるいは、前記受信部と前記基板とが直接接触することで、複数の前記受信部が前記基板に一体に設けられる超音波検査装置。
【請求項2】
複数の前記受信部は、マトリクス状又はアレイ状に配列されている請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
複数の前記受信部は、互いに間隔をあけて配列されている請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
隣り合う前記受信部の間に、音響的特性が前記受信部と異なる樹脂又は空気層が介在している請求項3に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
リファレンス波形と、前記被検体のうち欠陥の有無の検査対象となる検査対象被検体を透過して前記受信部で受信した前記超音波ビームの波形である検査対象波形との関係に基づいて前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する判定部を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記リファレンス波形は、前記被検体のうちリファレンス被検体を透過して前記受信部で受信した場合の前記超音波ビームの波形であり、
前記判定部は、当該リファレンス波形の位相と、前記検査対象波形の位相との相関値を計算し、当該相関値の値に基づいて前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する請求項5に記載の超音波検査装置。
【請求項7】
前記リファレンス波形は、前記被検体のうちリファレンス被検体を透過して前記受信部で受信した場合の前記超音波ビームの波形であり、
前記判定部は、前記検査対象波形の位相が、前記リファレンス波形の位相と異なる位相を含むか否かによって、前記検査対象被検体における欠陥の有無を判定する請求項5に記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記リファレンス波形を記憶する記憶部を備える請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【請求項9】
前記送信部及び前記受信部の少なくとも一方は、前記超音波ビームの送信方向に交差する交差方向において、前記被検体の端部に対して少なくとも前記超音波ビームの波長の長さ分だけ内側に位置する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の超音波検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の第一の態様は、検体に向けて超音波ビームを送信する送信面を有する送信部と、前記被検体を透過した前記超音波ビームを受信する受信面を有し、所定のパターンに応じて配列された複数の受信部と、を備え、前記受信部が受信した超音波ビームに対応する受信信号を出力する基板を備え、前記受信部と前記基板との間に樹脂が介在する、あるいは、前記前記受信部と前記基板とが直接接触することで、前記複数の前記受信部が前記基板に一体に設けられる超音波検査装置である。