(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161254
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B32B3/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153546
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2021551115の分割
【原出願日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019181048
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西根 祥太
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】桜井 玲子
(57)【要約】
【課題】視覚的な立体感を有するとともに、耐摩耗性に優れた化粧材を提供する。
【解決手段】紙基材及び繊維基材から選ばれる基材を有する化粧材であって、前記化粧材は、平面内に、第一領域と第二領域とを有し、前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、表面が離型性を有する第一硬化物層を有し、前記第二領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、第二硬化物層を有してなり、前記第一硬化物層の厚みをt1、前記第二硬化物層の厚みをt2と定義した際に、t1が3.5μm超30.0μm以下であり、かつ、t1<t2の関係を満たす、化粧材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材及び繊維基材から選ばれる基材を有する化粧材であって、
前記化粧材は、平面内に、第一領域と第二領域とを有し、
前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、表面が離型性を有する第一硬化物層を有し、
前記第二領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、第二硬化物層を有してなり、
前記第一硬化物層の厚みをt1、前記第二硬化物層の厚みをt2と定義した際に、t1が3.5μm超30.0μm以下であり、かつ、t1<t2の関係を満たす、化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーブル、カウンター、壁、床等の表面には、チタン紙等の多孔質基材にメラミン樹脂の未硬化樹脂液を含浸させ、必要に応じてフェノールコア紙等に積層した上で含浸樹脂液を熱プレスで硬化せしめてなる化粧材が使用されている。このようなメラミン樹脂を含浸及び硬化させた化粧材は、強度、硬さ、耐熱性等の物性を示す。
【0003】
上述のような化粧材には、高級感を示す意匠が求められており、表面に凹凸形状を形成することにより視覚的な立体感を付与することが行われている。
表面に凹凸形状を有する化粧材としては、凹凸形状が形成されたエンボス板(テクスチャーを付けた鏡面板)を用いて、エンボス処理した化粧材が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている化粧材の表面に所望の凹凸模様の意匠感を付与する場合、模様ごとにエンボス板が必要であり、コストがかかり製造が困難であるという問題がある。また、この化粧材は、凹凸形状を下地の絵柄と同調させることが困難であり、高度な意匠性を付与しにくいという問題がある。
【0005】
一方、エンボス板を用いない表面凹凸形状を有する化粧材として、特許文献3の化粧材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-193209号公報
【特許文献2】特開2017-87544号公報
【特許文献3】国際公開第2016/148091号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の化粧材は、紙質基材と、紙質基材の表面の一部に設けられた、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む離型層と、紙質基材の表面の残部(紙質基材の表面のうち、離型層が設けられていない部分)に設けられた、メラミン樹脂の硬化物を含む表面層とを備えるものである。特許文献3の化粧板は、紙質基材の表面の一部に離型層を設ける工程、紙質基材にメラミン樹脂の未硬化物を含浸させるとともにメラミン樹脂の未硬化物により離型層を被覆した後、加熱することによりメラミン樹脂の未硬化物を熱硬化させる工程、及び、離型層を被覆する硬化樹脂膜を剥離する工程を含む方法により製造される。
特許文献3の化粧材はエンボス板を用いないため、特許文献1及び2の問題は解消できる。しかしながら、特許文献3の化粧材は、経時的に意匠性が低下するケースが頻発した。
本発明は、このような状況下になされたもので、視覚的な立体感を有するとともに、耐摩耗性に優れた化粧材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究した結果、特許文献3の化粧材は、メラミン樹脂の硬化物を含む表面層の厚みを厚くできないことにより、基材上の装飾層が経時的に摩耗してしまい、意匠性が低下することを見出した。
また、本発明者らは、特許文献3の化粧材の表面層の厚みを厚くできない原因が、離型層の厚みが薄いためであることを見出した。これは、離型層の厚みが薄い場合に表面層の厚みを厚くすると、離型層上の硬化樹脂膜の厚みが厚くなり、離型層上の硬化樹脂膜を剥離する際に硬化樹脂膜が凝集破壊してしまうためである。
【0009】
本発明は、下記[1]~[7]を提供することを目的とする。
[1]紙基材及び繊維基材から選ばれる基材を有する化粧材であって、前記化粧材は、平面内に、第一領域と第二領域とを有し、前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、表面が離型性を有する第一硬化物層を有し、前記第二領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、第二硬化物層を有してなり、前記第一硬化物層の厚みをt1、前記第二硬化物層の厚みをt2と定義した際に、t1が3.5μm超30.0μm以下であり、かつ、t1<t2の関係を満たす、化粧材。
[2]前記第一硬化物層が、硬化性樹脂及び無機フィラーを含む、[1]に記載の化粧材。
[3]前記無機フィラーの含有量が、前記硬化性樹脂100質量部に対して20質量部超40質量部以下である、[2]に記載の化粧材。
[4]前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材と前記第一硬化物層との間の少なくとも一部に第一装飾層を有する、[1]~[3]の何れかに記載の化粧材。
[5]前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材と前記第一硬化物層との間に浸透防止層を有する、[1]~[3]の何れかに記載の化粧材。
[6]前記第二領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材と前記第二硬化物層との間の少なくとも一部に第二装飾層を有する、[1]~[5]の何れかに記載の化粧材。
[7]前記第二硬化物層がメラミン樹脂を含む、[1]~[6]の何れかに記載の化粧材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、視覚的な立体感を有するとともに、耐摩耗性に優れた化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の化粧材の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の化粧材の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の化粧材の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の化粧材の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図5】本発明の化粧材の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図6】本発明の化粧材の製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[化粧材]
本発明の化粧材は、紙基材及び繊維基材から選ばれる基材を有する化粧材であって、前記化粧材は、平面内に、第一領域と第二領域とを有し、前記第一領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、表面が離型性を有する第一硬化物層を有し、前記第二領域に該当する箇所の前記化粧材は、前記基材上に、第二硬化物層を有してなり、前記第一硬化物層の厚みをt1、前記第二硬化物層の厚みをt2と定義した際に、t1が3.5μm超30.0μm以下であり、かつ、t1<t2の関係を満たすものである。
【0013】
図1及び
図2は、本発明の化粧材100の実施の形態を示す断面図である。
図1及び
図2の化粧材100は、平面内に、第一領域R1と第二領域R2とを有している。また、
図1及び
図2の化粧材100は、第一領域R1に該当する箇所において、基材10上に、表面が離型性を有する第一硬化物層32を有している。なお、
図2の化粧材100は、基材10と第一硬化物層32との間に、浸透防止層31を有している。
図1及び
図2において、t1は離型性を有する第一硬化物層32の厚み、t2は第二硬化物層22の厚みを示している。
図1及び
図2の化粧材100は、t1<t2の関係を満たしている。また、
図2において、t0は浸透防止層31の厚みを示している。
また、
図1及び
図2の化粧材100は、第一領域R1に該当する箇所において、基材10と第一硬化物層32との間に第一装飾層33を有している。また、
図1及び
図2の化粧材100は、第二領域R2に該当する箇所において、基材10と第二硬化物層22との間に第二装飾層23を有している。
【0014】
本明細書において「平面」とは、本発明の化粧材の基材を基準とした浸透防止層を有する側の面(
図1の化粧材を、基材を基準として浸透防止層側から視認したxy面内)を意味する。また、本明細書において「平面視」とは、本発明の化粧材を、基材を基準として浸透防止層を有する側から垂直に視認することを意味する。
【0015】
<基材>
基材は、紙基材及び繊維基材から選ばれるものであり、紙基材が好ましい。
紙基材及び繊維基材は、硬化性樹脂を含浸することにより優れた機械的物性等を付与することができ、ひいては化粧材の表面の鉛筆硬度を高め、化粧材表面を傷付き難くしやすくできる点で好ましい。
【0016】
紙基材としては、例えばクラフト紙、チタン紙、リンター紙、樹脂含浸紙、薄葉紙及び和紙等が挙げられる。
繊維基材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維で構成される繊維基材、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の各種合成樹脂の有機繊維で構成される繊維基材、またこれらの複合体等の基材が挙げられる。また、繊維基材は、不織布であってもよいし、織布であってもよい。
【0017】
基材の厚さは、特に制限はなく、所望の性能に応じて適宜選択すればよく、機械的物性の確保、取扱性の観点から通常10~150μm程度、好ましくは20~120μm、更に好ましくは30~100μmである。また、基材として紙基材を用いる場合、これと同様の観点から、その坪量は、通常20~150g/m2程度、好ましくは30~100g/m2である。
【0018】
基材は硬化性樹脂を含浸してなるものが好ましい。かかる構成により、化粧材の機械的強度を向上することができ、ひいては化粧材の表面の鉛筆硬度を高め、化粧材表面を傷付き難くしやすくできる。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができ、取り扱い性の観点から熱硬化性樹脂が好ましい。
【0019】
基材に含浸させる硬化性樹脂としては、化粧材の質感をより高めるとともに、化粧材の機械的強度の向上を図る観点から、メラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素樹脂、グアナミン樹脂、スルホンアミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、ケイ素樹脂及びポリシロキサン樹脂等が好ましく、中でもメラミン樹脂、尿素樹脂、メラミン-尿素樹脂、フェノール樹脂、グアナミン樹脂及びスルホンアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂の中でもメラミン樹脂、メラミン-尿素樹脂及びフェノール樹脂が好ましく、特にメラミン樹脂が好ましい。
【0020】
基材中に熱硬化性樹脂を含浸する手段としては、未硬化の熱硬化性樹脂の組成物を用意し、該組成物を該基材中に含浸させる手段が挙げられる(例えば、後述の工程(3)。)。
含浸した該組成物は、適宜の時点において、加熱して架橋反応、重合反応等の反応により硬化させることで、熱硬化性樹脂の硬化物となる(例えば、後述の工程(5)。)。
【0021】
なお、本明細書において、単に「熱硬化性樹脂」と称する場合は、熱硬化性樹脂の未硬化物を硬化させてなる硬化物を意味する。電離放射線硬化性樹脂等の他の硬化性樹脂についても同様である。
また、本明細書において、硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物と称する場合は、特に断りのない限り、未硬化であることを意味する。
【0022】
基材は、化粧材を構成する他の層との層間密着性の向上、被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成したりしたものであってもよい。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が、表面処理の効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
【0023】
<領域>
本発明の化粧材は、平面内に、第一領域R1と第二領域R2とを有する。
第一硬化物層の厚みをt1、第二硬化物層の厚みをt2と定義した際に、t1とt2との差は、第一領域R1の標高と、第二領域R2との標高との標高差の指標となる。
よって、t1<t2の関係を満たすことにより、第一領域R1は凹んで視認され、第二領域R2は浮かび上がって視認されることとなり、両領域のコントラストにより化粧材の立体感を良好なものとすることができる。
なお、第一領域が厚みt0の浸透防止層を有する場合、立体感を良好にするため、t0+t1<t2の関係を満たすことが好ましい。
【0024】
t2-t1は、2.0μm以上45.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上35.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以上30.0μm以下であることがさらに好ましい。
t2-t1を0.1μm以上とすることにより、立体感を良好にしやすくできる。また、t2-t1を20μm以下とすることにより、表面を擦った際に応力が第二領域に集中することを抑制し、第二領域の部分的な欠落などが抑制され、耐摩耗性を良好にしやすくできる。
第一領域が厚みt0の浸透防止層を有する場合、t2-(t0+t1)は、2.0μm以上45.0μm以下であることが好ましく、5.0μm以上35.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以上30.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
t0、t1及びt2は、20箇所の厚みの平均値として算出することが好ましい。厚みは、例えば化粧材の断面写真から算出できる。なお、平均値を算出するための20箇所は、場所の偏りがないようにピックアップすることが好ましい。
【0026】
化粧材の第一領域R1の面積をS1、第二領域の面積をS2と定義した際に、S2/S1が、0.5~20であることが好ましく、1.0~10であることがより好ましい。
S2/S1を0.5以上とすることにより、化粧材の平面内の標高の高い割合が増加するため、化粧材の耐摩耗性を良好にしやすくできる。また、S2/S1を20以下とすることにより、凹んで視認される箇所と浮かび上がって視認される箇所との割合のバランスを適切な範囲として、意匠性を良好にしやすくできる。
【0027】
《第一領域》
第一領域は、第二領域と比べて凹んで視認される領域である。
第一領域は、基材上に、浸透防止層と、表面が離型性を有する第一硬化物層とをこの順に有する。
【0028】
第一領域は、表面が粗面化されてなることが好ましい。第一領域の表面を粗面化することにより、第一領域が凹んで見えやすくなり、立体感をより良好にしやすくできる。
【0029】
―第一硬化物層―
第一硬化物層は、表面が離型性を有するものである。第一硬化物層は表面が離型性を有するため、第一硬化物層上の第二硬化物層は殆どが剥離される。第一硬化物層上の第二硬化物層は、表面凹凸による立体感を良好にする観点から完全に剥離することが好ましいが、第一硬化物層上から第二硬化物層を完全に剥離できない場合も多い。このため、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、第一硬化物層上に微量の第二硬化物層が残存していてもよい。
第一硬化物層上の第二硬化物層は殆どが剥離されるため、第一硬化物層を有する領域は、原則として化粧材の第一領域を形成する。
【0030】
第一硬化物層の厚みt1は、3.5μm超30.0μm以下であることを要する。
t1を3.5μm超とすることにより、第二硬化物層の厚みを厚くしても、第一領域R1から第二硬化物層を剥離する際に、第一領域内で第二硬化物層が凝集破壊することを抑制することができる(後述の工程(7)参照。)。すなわち、t1を3.5μm超とすることにより、第二硬化物層の厚みを厚くすることが可能となり、その結果、化粧材の耐摩耗性を良好にしやすくできる。
また、t1を30.0μm以下とすることにより、安定的に第1硬化物層を形成することができる。
t1は、5.0μm以上25.0μm以下であることが好ましく、7.0μm以上20.0μm以下であることがより好ましい。
【0031】
第一硬化物層の厚みt1は、第一硬化物層を形成する組成物の粘度を高くしたり、浸透防止層を形成したりすることにより、上記範囲としやすくできる。
【0032】
第一硬化物層は、硬化性樹脂により形成される層、より具体的には、未硬化の硬化性樹脂組成物の硬化物により形成される層である。
硬化性樹脂としては、より質感の高い意匠性及びより優れた表面特性を得る観点から、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が好ましく挙げられ、電離放射線硬化性樹脂がより好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、上記基材に含浸し得る熱硬化性樹脂として例示したものと同じものを好ましく例示することができる。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基等が好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを混合して用いることが好ましい。
重合性モノマー単独の場合、第一硬化物層の架橋密度を高め、第一硬化物層上の第二硬化物層を剥離しやすくできる(後述の工程(7)参照)。しかし、重合性モノマー単独の場合、第一硬化物層を形成する組成物の粘度が低くなりやすく、第一硬化物層の厚みを厚くする点で好ましくない。一方、重合性オリゴマー単独の場合、第一硬化物層を形成する組成物の粘度を高くしやすくできるが、第一硬化物層の架橋密度を高くしにくくなる。このため、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを混合して用いることは、第一硬化物層の架橋密度及び第一硬化物層を形成する組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすくなる点で好ましい。
重合性モノマーと重合性オリゴマーとは、重合性モノマー100質量部に対して、重合性オリゴマーが10~80質量部となるように混合することが好ましく、より好ましくは20~60質量部、さらに好ましくは30~50質量部である。
【0036】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、より質感の高い意匠性及びより優れた表面特性を得る観点から、アクリロイル基を有するアクリレートモノマーが好ましい。
より質感の高い意匠性及びより優れた表面特性を得る観点から、官能基数は好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
このような重合性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレート;が好ましく挙げられる。中でも、より質感の高い意匠性及びより優れた表面特性を得る観点から、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール系重合性モノマーが好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとを併用することが特に好ましい。
【0038】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
より質感の高い意匠性及びより優れた表面特性を得る観点から、これらの重合性オリゴマーの官能基数は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【0040】
重合性オリゴマーの重量平均分子量は、700以上が好ましく、より好ましくは1,000以上であり、上限として好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0041】
第一硬化物層は、硬化性樹脂に加えて、さらに、離型剤又は無機フィラーを含むことが好ましく、離型剤及び無機フィラーを含むことがより好ましい。
【0042】
離型剤としては、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等が挙げられ、より質感の高い意匠性を得る観点から、シリコーン系離型剤が好ましい。
シリコーン系離型剤としては、ポリシロキサン構造を基本構造とするものが挙げられ、中でもその側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基が導入された変性シリコーンオイルが好ましく、両末端に有機基が導入された変性シリコーンオイルがより好ましい。有機基としては、より質感の高い意匠性を得る観点から、(メタ)アクリル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルビノール基、フェノール基、カルボキシル基等の反応性官能基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、アルキル基、脂肪酸アミド基、フェニル基等の非反応性基官能基等が好ましく挙げられる。中でも反応性官能基が好ましく、特に(メタ)アクリル基が好ましい、すなわち特に(メタ)アクリル変性シリコーンオイルが好ましい。また、これらの有機基は窒素原子、硫黄原子、水酸基、アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0043】
第一硬化物層が離型剤を含むことにより、離型性インキ装飾層の表面(第一硬化物層の表面)に他の樹脂を積層しても剥離できる一方で、第二領域には他の樹脂が接着して剥離されないため、第一領域と第二領域とに標高差を付与しやすくできる。
【0044】
離型剤の含有量は、第一硬化物層を形成する硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部、更に好ましくは1~2質量部である。離型剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に離型剤の添加効果が得られる。
【0045】
第一硬化物層は無機フィラーを含むことが好ましい。第一硬化物層が無機フィラーを含むことにより、第一領域の表面を粗面化して、化粧材の視覚的な立体感を良好にしやすくできる。また、第一硬化物層が所定量の無機フィラーを含む(≒第一硬化物層を形成する組成物が無機フィラーを含む)ことにより、第一硬化物層を形成する組成物の粘度を高め、第一硬化物層の厚みを厚くしやすくできる。
【0046】
無機フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニア等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸等のケイ酸塩等の無機材料からなる粒子が挙げられる。中でも、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物が好ましく、特にシリカが好ましい。
【0047】
無機フィラーの平均粒径は、Ra1を後述する範囲としやすくする観点から、好ましくは0.3~10μm、より好ましくは0.5~7μmであり、さらに好ましくは1~5μmであり、よりさらに好ましくは2~4μmである。第一硬化物層を形成する組成物の粘度を高くする観点からは、無機フィラーの平均粒径は5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
本明細書において、フィラーの平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定される値である。
【0048】
無機フィラーの含有量は、第一硬化物層を形成する硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部超40質量部以下であり、より好ましくは23~35質量部、更に好ましくは25~30質量部である。
無機フィラーの含有量を20質量部超とすることにより、第一硬化物層を形成する組成物の粘度を高くして、第一硬化物層の厚みを厚くしやすくできる。また、無機フィラーの含有量を40質量部以下とすることにより、第一硬化物層の塗膜強度の低下を抑制できる。また、無機フィラーの含有量が上記範囲内であると、Ra1を後述する範囲としやすくできる。
【0049】
―第一装飾層―
本発明の化粧材は、第一領域に該当する箇所において、基材と第一硬化物層との間の少なくとも一部に第一装飾層を有することが好ましい。
【0050】
第一装飾層は、第一領域内に任意のパターンで形成すればよい。該任意のパターンは、化粧材全体で付与したい意匠によって異なる。
例えば、化粧材全体で付与する意匠が木材の模様の場合、第一装飾層は、導管、秋材及び節から選ばれる1種以上の模様を形成してなることが好ましい。言い換えると、第一領域は、木材の導管、秋材及び節から選ばれる1種以上の模様を形成してなることが好ましい。導管とは、水分の通路となる円筒形の細胞であり、微小な導管が配列することにより、人の目には該配列に沿って濃色の絵柄が形成されているようにみえる。秋材とは、夏から秋にかけて形成される目幅が狭く色の濃い部分のことである。なお、春から夏にかけてつくられる目幅の大きな部分は春材と称し、春材と秋材とが交互に繰り返されることで木材の年輪が形成される。節とは、幹に取り込まれた枝の痕跡であり、円形又は楕円形に近い形状をしており、周辺組織よりも濃い色を有している。
また、化粧材全体で付与する意匠がトラバーチン等の石の模様の場合、第一装飾層は凹陥部模様とすることが好ましい。言い換えると、第一領域は、石の凹陥部模様を形成してなることが好ましい。
また、化粧材全体で付与する意匠がタイル模様又はレンガ模様の場合、第一装飾層は目地模様とすることが好ましい。言い換えると、第一領域は、タイル又はレンガの目地模様を形成してなることが好ましい。
第一装飾層により付与する意匠を上記のようにすることにより、第一領域が窪んで見えやすくなり、視覚的な立体感をより良好なものとすることができる。
【0051】
第一装飾層は、例えば、着色剤及びバインダー樹脂を含む第一装飾層形成用インキを用いた印刷により形成することができる。
【0052】
第一装飾層の着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、あるいは染料等が挙げられる。第一装飾層の着色剤は光輝性顔料を含まないことが好ましい。
第一装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0053】
第一装飾層の厚みは、目的とする意匠性を考慮して、0.1~20μm程度の範囲で適宜調整することができる。
【0054】
-浸透防止層-
本発明の化粧材は、第一領域に該当する箇所において、基材と第一硬化物層との間に浸透防止層を有していてもよい。化粧材が第一装飾層を有する場合、浸透防止層は、第一装飾層と第一硬化物層との間に配置すること好ましい。
基材と第一硬化物層との間に浸透防止層を有することにより、第一硬化物層を構成する組成物が基材側に浸透することが抑制され、第一硬化物層の厚みを厚くしやすくすることができ、ひいては第二硬化物層の厚みを厚くしやすくできるようになり、化粧材の耐摩耗性を良好にしやすくできる。
【0055】
浸透防止層は基材上の全部ではなく、基材上の一部に有することが肝要である。基材上の全部に浸透防止層を形成した場合、基材中に硬化性樹脂が含浸しにくくなるためである。このため、化粧材を平面視した際の浸透防止層の全面積を100とした際に、第一領域内に存在する浸透防止層の面積が90以上であることが好ましく、95以上であることがより好ましく、97以上であることがさらに好ましく、99以上であることがよりさらに好ましい。言い換えると、化粧材の平面内において、浸透防止層は、第一領域以外の箇所に実質的に存在しないことが好ましい。
また、化粧材の平面内において、浸透防止層は、第一硬化物層のパターンと同調させて形成することが好ましい。例えば、化粧材を平面視した際の浸透防止層の全面積を100とした際に、第一硬化物層と同調する浸透防止層の面積が90以上であることが好ましく、95以上であることがより好ましく、97以上であることがさらに好ましく、99以上であることがよりさらに好ましい。
【0056】
浸透防止層は、硬化性樹脂を含むことが好ましい。言い換えると、浸透防止層は、未硬化の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
また、硬化性樹脂の含有量は、浸透防止層を構成する全固形分の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましい。
浸透防止層が硬化性樹脂を含むことにより、浸透防止層による第一硬化物層の目止め効果を良好にすることができる。
【0057】
浸透防止層の硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が好ましく挙げられ、電離放射線硬化性樹脂がより好ましい。
【0058】
熱硬化性樹脂としては、上記基材に含浸し得る熱硬化性樹脂として例示したものと同じものを好ましく例示することができる。
電離放射線硬化性樹脂としては、第一硬化物層の電離放射線硬化性樹脂として例示したものと同じものを好ましく例示することができる。なお、第一硬化物層の電離放射線硬化性樹脂は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを混合することが好ましい実施形態であるのに対して、浸透防止層の電離放射線硬化性樹脂は、重合性オリゴマーの配合量が少ないことが好ましく、重合性モノマーのみであることがより好ましい。重合性モノマーの量を多くすることにより、浸透防止層の架橋密度を高め、第一硬化物層を構成する組成物が基材側に浸透することを抑制しやすくできる。
【0059】
浸透防止層は、第一硬化物層を形成しやすくする観点から、離型剤を実質的に含有しないことが好ましい。離型剤を実質的に含有しないとは、離型剤の含有量が、浸透防止層の全固形分の0.1質量%未満であることを意味し、好ましくは0.01質量%以下であり、より好ましくは0質量%(離型剤を含有しない)である。
【0060】
浸透防止層の厚みt0は、0.1~10.0μmであることが好ましく、0.5~5.0μmであることがより好ましい。
t0を0.1μm以上とすることにより、第一硬化物層形成用インキに含まれる未硬化の硬化性樹脂組成物が基材側に浸透することを抑制しやすくできる。また、t0を10μm以下とすることにより、他領域に影響を与えることなく安定的に浸透防止層を形成できる。
【0061】
―表面形状―
第一領域の表面のカットオフ値0.8mmにおけるJIS B0601:1994の算術平均粗さRaは、1.0~5.0μmであることが好ましく、1.0~3.0μmであることがより好ましい。
第一領域のRaを1.0μm以上とすることにより、第一領域を凹んで見えやすくすることができる。また、第一領域のRaを5.0μm以下とすることにより、第一領域が白っぽく見えることを抑制し、意匠性を良好にしやすくできる。
【0062】
第一領域のRaは、例えば、基材を粗面化すること、基材上に形成する層(後述する第一硬化物層等)を粗面化すること、などにより調整できる。
【0063】
《第二領域》
第二領域は、第一領域と比べて高く視認される領域である。
第二領域は、基材上に第二硬化物層を有する。
【0064】
―第二硬化物層―
第二硬化物層は、硬化性樹脂により形成される層、より具体的には、未硬化の硬化性樹脂組成物の硬化物により形成される層である。
【0065】
第二硬化物層の硬化性樹脂としては、より質感の高い意匠性を得る観点から、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が好ましく挙げられ、熱硬化性樹脂がより好ましい。これらの硬化性樹脂は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよく、例えば熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂とを併用してもよいし、またこれらの硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、基材に含浸し得る熱硬化性樹脂として例示したものと同じものを好ましく例示することができ、上記の各種熱硬化性樹脂が好ましいこと、特にメラミン樹脂が好ましいことも同じである。このような硬化性樹脂を用いることで、より質感の高い意匠性が得られるとともに、基材との密着性が向上し、より優れた機械的強度が得られる。電離放射線硬化性樹脂については、浸透防止層で例示したものと同様のものが挙げられる。
硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する場合、これらの樹脂の合計に対する硬化性樹脂の含有量は、通常50質量%以上100質量%未満程度であり、好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
【0066】
第二硬化物層は、拡散を低減する観点から粒子を含まないことが好ましい。
【0067】
第二硬化物層の厚みt2は、5.0μm以上100μm以下であることが好ましく、10.0μm以上60.0μm以下であることがより好ましく、25.0μm以上50.0μm以下であることがより好まし、い。
t2を5.0μm以上とすることにより、化粧材の耐摩耗性を良好にしやすくできる。また、t2を100μm以下とすることにより、安定的な第一硬化物層の意匠発現ができる。
【0068】
―第二装飾層―
本発明の化粧材は、第二領域に該当する箇所において、基材と第二硬化物層との間の少なくとも一部に第二装飾層を有することが好ましい。
【0069】
第二装飾層は、例えば、着色剤及びバインダー樹脂を含む第二装飾層形成用インキを用いた印刷により形成することができる。
第二装飾層の着色剤及びバインダー樹脂としては、後述する第一装飾層の着色剤及びバインダー樹脂で例示するものが挙げられる。
【0070】
第二装飾層は、例えば、基材上に任意のパターンで形成すればよい。
該任意のパターンは、付与したい意匠によって異なる。例えば、該任意のパターンは、化粧材全体で木目模様を付与する場合には木肌模様(導管溝模様及び/又は節目模様以外の部分)とすることが好ましく、化粧材全体でトラバーチン等の石の模様を付与する場合には凹陥部以外の模様とすることが好ましく、化粧材全体でタイル模様又はレンガ模様を付与する場合にはタイル部分又はレンガ部分とすることが好ましい。
【0071】
第二装飾層の厚みは、目的とする意匠性を考慮して、0.1~20μm程度の範囲で適宜調整することができる。
【0072】
-表面形状-
第二領域の表面のカットオフ値0.8mmにおけるJIS B0601:1994の算術平均粗さRaは、2.0μm以下であることが好ましく、0.5~1.5μmであることがより好ましい。
【0073】
<補強層>
本発明の化粧材は、化粧材を補強するために、基材の第一硬化物層を有する側とは反対側の面に補強層を有することが好ましい。
特に、基材として、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維基材又は紙基材を採用した場合、補強層を組み合わせることで、より機械的物性に優れる熱硬化性樹脂化粧板が得られる。
【0074】
補強層としては、熱硬化性樹脂含浸シートが挙げられる。
熱硬化性樹脂含浸シートに用いられる繊維基材、紙基材の種類としては、基材の繊維基材、紙基材として例示したものであれば特に制限はなく、坪量は好ましくは100~300g/m2、より好ましくは150~250g/m2である。また、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物の状態で基材に含浸し得るものであれば特に限定することなく使用することができ、フェノール樹脂が好ましい。すなわち、補強層としてはフェノール樹脂含浸紙が好ましい。
フェノール樹脂含浸紙としては、例えば坪量150~250g/m2のクラフト紙に、フェノール樹脂を含浸率20~60%程度となるように含浸させて、100~140℃程度で乾燥させることにより製造されるものが好ましく用いられる。
【0075】
<プライマー層>
本発明の化粧材は、各層の密着性向上のため、各層間にプライマー層を設けることができる。
プライマー層を形成する樹脂材料としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。また、プライマー層の厚さは、優れた密着性を効率よく得る観点から、通常0.1~15μm程度、好ましくは1~10μmである。
【0076】
<被着材>
本発明の化粧材は、基材の裏面(基材の第一硬化物層を有する側とは反対側の面)に被着材を積層して一体化したものであってもよい。
【0077】
被着材は、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)、集成材等の木質板;石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板;ポリオレフィン樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化型樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
【0078】
基材と各種被着材との積層方法としては特に限定されるものではなく、例えば接着剤によりシートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0079】
<用途>
本発明の化粧材は、例えば、各種カウンター及び机等の天板;家具;台所製品のキャビネット;ドア等の住宅用建材;等に用いられる。この中でも、カウンター及び机等に用いられる天板等の水平面を含む部位にて使用される部材は、垂直面にて使用される部材と比して、視覚的な立体感が求められ、かつ、衣服、清掃用品及び時計等の様々なもので擦られるため耐摩耗性が求められることから、本発明の化粧板の効果を発揮しやすい点で好ましい。
【0080】
[化粧材の製造方法]
本発明の化粧材は、例えば、下記(1)~(7)の工程で製造することができる。
(1)基材を準備する工程。
(2)前記基材上の第一領域を形成する箇所に、表面が離型性を有する第一硬化物層を形成してなる、積層体Aを得る工程。
(3)前記積層体Aを硬化性樹脂組成物に含浸し、前記積層体Aの第一硬化物層を有する側の全面に、未硬化の硬化性樹脂組成物層を形成してなる積層体Bを得る工程。
(4)前記積層体Bの前記未硬化の硬化性樹脂組成物層側に剥離フィルムを配置してなる、積層体Cを得る工程。
(5)前記積層体Cの両面を鏡面板で挟んだ状態で熱プレスし、前記未硬化の硬化性樹脂組成物層を硬化してなる第二硬化物層を形成する工程。
(6)前記鏡面板の間から前記積層体Cを取り出す工程。
(7)前記積層体Cから前記剥離フィルムを剥離除去する際に、前記剥離フィルムとともに前記第二硬化物層のうち第一硬化物層上の第二硬化物層を除去し、凹状の第一領域を形成するとともに、第一領域形成層を有さない箇所に形成した第二硬化物層が残存してなる凸状の第二領域を形成する工程。
【0081】
工程(1)は、基材10を準備する工程である。
【0082】
工程(2)は、基材10上の第一領域を形成する箇所に、表面が離型性を有する第一硬化物層32を形成してなる積層体A(71)を得る工程である(
図4)。第一硬化物層の形成に用いる硬化性樹脂組成物は、この段階で硬化することが好ましい。
基材10上に第一硬化物層32を形成した箇所が、本発明の製造方法により得られた化粧材の第一領域R1に相当する箇所となる。
【0083】
化粧材100が第一装飾層33及び/又は第二装飾層23を有する場合、工程(1)と工程(2)との間に、第一装飾層33及び/又は第二装飾層23を形成する工程を有することが好ましい(
図3)。
【0084】
また、化粧材100が浸透防止層31を有する場合、工程(1)と工程(2)との間に、浸透防止層31を形成する工程を有することが好ましい。浸透防止層31の形成に用いる硬化性樹脂組成物は、この段階で硬化することが好ましい。
【0085】
工程(3)は、積層体Aを硬化性樹脂組成物に含浸し、積層体Aの第一硬化物層32を有する側の全面に、未硬化の硬化性樹脂組成物層22aを形成してなる積層体B(72)を得る工程である(
図5)。
なお、工程(3)の最中に、基材10の中に硬化性樹脂組成物を含浸させることができる。
【0086】
工程(4)は、積層体Bの未硬化の硬化性樹脂組成物層22a側に剥離フィルム80を配置してなる積層体C(73)を得る工程である(
図6)。
剥離フィルム80は、後述の工程(7)において、未硬化の硬化性樹脂組成物層22aを硬化した第二硬化物層のうち、表面が離型性を有する第一硬化物層32上の第二硬化物層を除去する役割を有する。すなわち、剥離フィルム80と第二硬化物層との接着力をA1、第二硬化物層と、該硬化物層の基材10側に位置する層(第一領域R1の場合は第一硬化物層32、第二領域R2の場合は第二装飾層23又は基材10)との接着力をA2とした際に、第一領域R1ではA1>A2、第二領域R2ではA1<A2、の関係を満たすものであれば、剥離フィルム80の材質等は特に限定されない。
【0087】
剥離フィルム80としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;アクリル樹脂;等の各種樹脂のシートの単層、あるいは、これら樹脂シート上に樹脂層を形成したものが挙げられる。
【0088】
化粧材100が補強層60を有する場合、工程(4)において、積層体Bの基材10側に補強層60を配置することが好ましい。
【0089】
工程(5)は、積層体C(73)の両面を鏡面板で挟んだ状態で、積層体C(73)を熱プレスし、未硬化の硬化性樹脂組成物層22aを硬化してなる第二硬化物層22を形成する工程である。
工程(5)の最中に、基材10中に含浸した硬化性樹脂組成物も硬化させることができる。
【0090】
熱プレスの条件は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよく、特に制限はないが、通常100~200℃の温度条件で、圧力は0.1~9.8MPa、時間は10秒から120分間である。
【0091】
工程(6)は、鏡面板の間から積層体Cを取り出す工程である。
工程(7)は、積層体Cから剥離フィルム80を剥離除去する際に、剥離フィルム80とともに第二硬化物層のうち第一硬化物層32上の第二硬化物層を除去し、凹状の第一領域R1を形成し、同時に、第一領域形成層30を有さない箇所に形成した第二硬化物層22が残存してなる凸状の第二領域R2を形成する工程である(
図1)。
本発明の化粧材の製造方法は、第一硬化物層の厚みが厚いため、第二硬化物層の厚みを厚くしても、工程(7)の際に、第一領域R1上の第二硬化物層が凝集破壊することなく綺麗に剥離することができる。
【実施例0092】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0093】
1.評価
1-1.耐摩耗性
東洋精機製作所社製の商品名「ロータリーアブレージョンテスタ」を用いて、JIS K6902:2008の「6.2 耐摩耗B法」に準拠して、実施例及び比較例で得られた化粧材の耐摩耗性を評価した。研磨材は、JIS R6252に準拠した研磨紙「品番:S-42、3M company」を用いた。化粧材の印刷模様の50%が消し去られたときの回転盤の回転数を表1に示す。
【0094】
1-2.第二硬化物層の剥離性
実施例及び比較例で得られた化粧材について、第二硬化物層の剥離性を目視で評価した。第一領域上に第二硬化物層が残存していないものを「A」、剥離フィルムを剥離する際に、第一領域上で第二硬化物層が凝集破壊するか、あるいは第二硬化物層が殆ど剥離されることなく、第一領域上の一部に第二硬化物層が残存しているものを「C」とした。結果を表1に示す。
【0095】
1-3.立体感
実施例及び比較例で得られた化粧材について、蛍光灯の照明下で、任意の成人20人に、立体感を有するか否かについて目視評価をさせた。結果を表1に示す。
A:立体感の高い意匠性を有すると答えた人が18人以上であった。
B:立体感の高い意匠性を有すると答えた人が15~17人であった。
C:立体感の高い意匠性を有すると答えた人が14人以下であった。
【0096】
2.化粧材の作製
[実施例1]
基材(建材用チタン紙原紙、KJ特殊紙株式会社製の商品名「PM-67P」、坪量:80g/m2、厚さ:100μm)上に、印刷インキ(DICグラフィックス株式会社製、「オーデSPTI」)を用いて、グラビア印刷により厚さ3μmの第一装飾層(木目の導管部分)及び第二装飾層(木目の木肌部分)を形成した。
次いで、第一装飾層上に、下記の第一硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物1を印刷し、電子線(加圧電圧:165KeV、3Mrad(30kGy))を照射して硬化させて、厚みt1が15.0μmの第一硬化物層を形成してなる積層体Aを得た。
次いで、積層体Aを下記の第二硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物に含浸し、乾燥させてなる積層体Bを得た(乾燥時の硬化樹脂組成物の量が80g/m2となるように含浸)。
次いで、積層体Bの基材とは反対側の面(未硬化の第二硬化物層を有する側の面)上に、下記の剥離フィルムを積層し、積層体Bの基材側の面に、補強層(クラフト紙にフェノール樹脂からなる液体状の未硬化樹脂組成物に含浸させて得られた坪量245g/m2のフェノール樹脂含浸コア紙(太田産業株式会社製、太田コア)を3枚重ねたもの)を積層してなる積層体Cを得た。
次いで、積層体Cの両面を鏡面板で挟み(補強層側に鏡面板、剥離フィルム側にエンボス板を配置)、熱プレス機を用いて、成形温度:150℃、成形圧力:100kg/cm2で10分間、加熱加圧成形を行った。成形後、2枚の鏡面板の間から積層体Cを取り出し、積層体Cから剥離用フィルムを剥離することにより、実施例1の化粧板を得た。
なお、積層体Cから剥離フィルムを剥離除去する際に、剥離フィルムとともに第二硬化物層のうち第一硬化物層上の第二硬化物層が除去され、凹状の第一領域が形成された。また、第一硬化物層を有さない箇所には第二硬化物層が残存してなる凸状の第二領域が形成された。
実施例1の化粧材は、t1が15.0μm、t2は30.0μmであった。また、第一領域の面積S1と、第二領域の面積S2との比(S2/S1)は約3.0であった。
【0097】
<第一硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物1>
以下の各成分を、プロセスホモジナイザー(株式会社エスエムテー製、「PH91」)を用いて、回転数:2000rpmで1時間撹拌して樹脂組成物を得た。
・電離放射線硬化性モノマー:37質量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(官能基数5)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数6)との混合物、東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM400」)
・電離放射線硬化性オリゴマー:15質量部
(荒川化学工業社製の商品名「ビームセット575」、官能基数3~6)
・シリコーン系離型剤:0.6質量部
(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、信越化学株式会社製の商品名「X-22-164B」)
・シランカップリング処理シリカ:15質量部
(平均粒子径3.0μm)
・メチルエチルケトン:48質量部
【0098】
<第二硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物>
・メラミンホルムアルデヒド樹脂:60質量部
・水:35質量部
・イソプロピルアルコール:5質量
【0099】
<剥離フィルムの作製>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製の商品名「コスモシャイン A4610」)の易接着面に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、電子線(加圧電圧:165KeV、5Mrad(50kGy))を照射して硬化し、厚さ5μmの硬化物層を形成し、剥離フィルムを得た。
<<電離放射線硬化性樹脂組成物>>
・電離放射線硬化性樹脂:100質量部
(トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンボトムオキシド変性物、東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM350」)
・シリコーン系離型剤:2質量部
(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、信越化学株式会社製の商品名「X-22-164B」)
・シリカ粒子:8質量部
(富士シリシア化学株式会社製の商品名「サイリシア450」、平均粒径:5.2μm)
・酢酸エチル:50質量部
【0100】
[実施例2~4]
t1及びt2を表1の値に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の化粧材を得た。
【0101】
[比較例1]
第一硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物1を、下記の第一硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物2に変更した以外は、実施例1と同様の手法で比較例1の化粧材を得た。比較例1の化粧材のt1が実施例1よりも小さい値を示す理由は、比較例1では第一硬化物層の形成材料の粘度が低く、第一硬化物層を厚く形成できなかったためである。
【0102】
<第一硬化物層形成用の硬化性樹脂組成物2>
以下の各成分を、プロセスホモジナイザー(株式会社エスエムテー製、「PH91」)を用いて、回転数:2000rpmで1時間撹拌して樹脂組成物を得た。
・電離放射線硬化性モノマー:60質量部
(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(官能基数5)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数6)との混合物、東亞合成株式会社製の商品名「アロニックスM400」)
・シリコーン系離型剤:0.6質量部
(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、信越化学株式会社製の商品名「X-22-164B」)
・シランカップリング処理シリカ:11質量部
(平均粒子径3.0μm)
・メチルエチルケトン:40質量部
【0103】
[比較例2]
t2を表1の値に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の化粧材を得た。
【0104】
【0105】
表1の結果から、実施例1~4の化粧材は、視覚的な立体感を有するとともに、耐摩耗性に優れたものであることが確認できる。なお、比較例1の立体感の評価が実施例より劣る理由は、比較例1はt1が小さいため、第一領域R1から第二硬化物層がうまく剥離されずに第一領域内に第二硬化物層が残存してしまうためである。