(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161265
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】金属加工油用基油
(51)【国際特許分類】
C10M 105/38 20060101AFI20241108BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20241108BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C10M105/38
C10N40:20 Z
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153875
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2022042368の分割
【原出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 和洋
(57)【要約】
【課題】
高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有する、不水溶性
金属加工油組成物に配合される金属加工油用基油を提供すること。
【解決手段】
脂肪酸とグリセリンとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、
前記脂肪酸が、カプリル酸とドデカン酸を含み、前記カプリル酸と前記ドデカン酸のモ
ル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/10以下であり、
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、80モル%以上であ
る、金属加工油用基油。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸とグリセリンとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、
前記脂肪酸が、カプリル酸とドデカン酸を含み、前記カプリル酸と前記ドデカン酸のモ
ル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/10以下であり、
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、80モル%以上であ
る、金属加工油用基油。
【請求項2】
前記エステルが、前記カプリル酸と前記ドデカン酸の混合脂肪酸と前記グリセリンとの
トリエステルを含む、請求項1に記載の金属加工油用基油。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属加工油用基油を含有する、不水溶性金属加工油組成物。
【請求項4】
前記金属加工油用基油の含有量が90質量%以上である、請求項3に記載の不水溶性金
属加工油組成物。
【請求項5】
以下の工程1及び工程2を含む金属加工油用基油の製造方法。
工程1:グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応を行う工程であって、前記グリセリン
の水酸基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基の当量が1.1当量以上であり、前記
脂肪酸がカプリル酸とドデカン酸の混合脂肪酸であり、前記脂肪酸中の前記カプリル酸と
前記ドデカン酸の合計含有量が、80モル%以上であり、前記混合脂肪酸中の前記カプリ
ル酸と前記ドデカン酸のモル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/1
0以下である工程
工程2:エステル化反応後に過剰分の前記脂肪酸を除去する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工油用基油に関する。
【背景技術】
【0002】
切削・研削加工において、切削工具の冷却性による寿命延長や潤滑性による加工能率の
増大等を目的に金属加工油が使用されている。金属加工油組成物には、水に潤滑成分を分
散/溶解させた、寿命延長に優れる水溶性金属加工油と、鉱物油や合成油等の油性成分を
基材とする加工能率の増大に優れる不水溶性金属加工油との2種類に大別される。
【0003】
不水溶性金属加工油は油性成分を基材とするため可燃性の問題がある。
【0004】
下記特許文献1、2には、油性成分を基材とする不水溶性金属加工油よりも高い引火点
を有する合成エステル系金属加工油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-147787号公報
【特許文献2】特開2000-73079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の合成エステル系金属加工油組成物は、高い引火点を低い粘度の両立とい
う点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有する
、不水溶性金属加工油組成物に配合される金属加工油用基油を提供することを目的とする
。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
脂肪酸とグリセリンとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、
前記脂肪酸が、カプリル酸とドデカン酸を含み、前記カプリル酸と前記ドデカン酸のモ
ル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/10以下であり、
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、80モル%以上であ
る、金属加工油用基油である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を
有する、不水溶性金属加工油組成物に配合される金属加工油用基油を提供することができ
る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<金属加工油用基油>
本実施形態の金属加工油用基油は、
脂肪酸とグリセリンとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、
前記脂肪酸が、カプリル酸とドデカン酸を含み、前記カプリル酸と前記ドデカン酸のモ
ル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/10以下であり、
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、80モル%以上であ
る。
本実施形態の金属加工油用基油は、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に
低温での流動性を有する。
【0011】
前記カプリル酸と前記ドデカン酸のモル比(カプリル酸/ドデカン酸)は、引火点を高
くし、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、70/30以上、
好ましくは72.5/27.5以上、より好ましくは75/25以上であり、そして、9
0/10以下、好ましくは88.5/11.5以下、より好ましくは87/13以下であ
る。
【0012】
前記脂肪酸中の前記カプリル酸の含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、潤滑
性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは70モル%以上、
より好ましくは72.5モル%以上、更に好ましくは75モル%以上であり、そして、好
ましくは90モル%以下、より好ましくは88.5モル%以下、更に好ましくは87モル
%以下である。
【0013】
前記脂肪酸中の前記ドデカン酸の含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、潤滑
性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、
より好ましくは11.5モル%以上、更に好ましくは13モル%以上であり、そして、好
ましくは30モル%以下、より好ましくは27.5モル%以下、更に好ましくは25モル
%以下である。
【0014】
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量は、引火点を高くし、潤
滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、80モル%以上、好ましく
は90モル%以上、より好ましくは100モル%以上である。
【0015】
前記脂肪酸は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記カプリル酸及び前記ドデカン酸
以外の脂肪酸を含有してもよい。前記カプリル酸及び前記ドデカン酸以外の脂肪酸として
は、例えば、吉草酸、2-メチル吉草酸、4-メチル吉草酸、n-ヘキサン酸、2-メチ
ルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、
2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,5,
5-トリメチルヘキサン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸などの炭素数5以上10以下の
脂肪酸;トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸
、リノール酸、エイコサン酸、ベヘン酸、セロチン酸などの炭素数13以上26以下の脂
肪酸;13-メチルテトラデカン酸、12-メチルテトラデカン酸、15-メチルヘキサ
デカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、10-メチルヘキサデカン酸、2-ヘキシルデ
カン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、フィタン酸などの炭素
数15以上20以下の分岐脂肪酸;シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸
、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、
メチルシクロヘキサンカルボン酸などの炭素数4以上8以下のシクロアルカンモノカルボ
ン酸などが挙げられる。
【0016】
前記エステルは、グリセリントリエステルを主に含むが、本発明の効果を阻害しない範
囲で、グリセリン部分エステルを含んでいてもよい。前記グリセリントリエステルとして
は、カプリル酸とグリセリンとのトリエステル、ドデカン酸とグリセリンとのトリエステ
ル、及びカプリル酸とドデカン酸の混合脂肪酸とグリセリンとのトリエステルなどが挙げ
られる。
【0017】
前記グリセリンに対する前記脂肪酸のモル比は、引火点を高くし、潤滑性を向上させ、
かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.
8以上、更に好ましくは2.9以上であり、そして、好ましくは3.4以下、より好まし
くは3.2以下、更に好ましくは3.1以下である。
【0018】
前記エステルは、引火点を高くし、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させ
る観点から、カプリル酸とドデカン酸の混合脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを含む
ことが好ましい。
【0019】
前記エステル中の前記グリセリントリエステルの含有量は特に制限されないが、引火点
を高くし、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは8
0モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは実質的に100モル%、
より更に好ましくは100モル%である。なお、本明細書において「実質的に100モル
%」とは不可避的に微量の不純物等を含んでいる状態を言う。
【0020】
前記金属加工油用基油は、前記エステル以外の基油を含有してもよい。前記エステル以
外の基油としては、例えば、鉱油及び合成油が挙げられる。鉱油としては、例えば、パラ
フィン基系原油、中間基系原油、又はナフテン基系原油を常圧蒸留するか常圧蒸留の残渣
油を減圧蒸留して得られる留出油、あるいはこれを常法にしたがって精製することによっ
て得られる精製油(例えば、溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等)な
どが挙げられる。また、合成油としては、例えば、本発明の前記エステル以外のエステル
、ポリ-α-オレフィン、オレフィンコポリマーアルキルベンゼン、アルキルナフタレン
、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
前記金属加工油用基油中の前記エステルの含有量は特に制限されないが、引火点を高く
し、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは90質量
%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%、より更
に好ましくは100質量%である。
【0022】
前記金属加工油用基油の40℃動粘度は、加工性を向上させる観点から、好ましくは1
6mm2/s以下、より好ましくは15mm2/s以下であり、耐摩耗性を向上させる観
点から、好ましくは14mm2/s以上である。
【0023】
前記金属加工油用基油の粘度指数は、温度による粘度変化を小さくする観点から、好ま
しくは100以上、より好ましくは120以上である。
【0024】
前記金属加工油用基油の流動点は、低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは
-10℃以下、より好ましくは-15℃以下である。
【0025】
前記金属加工油用基油の引火点は、可燃性を低下させる観点から、好ましくは250℃
以上である。
【0026】
〔エステルの製造方法〕
前記エステルは、前記脂肪酸とグリセリンを、公知の方法に従って、エステル化反応を
行うことにより調製することができる。例えば、カプリル酸とグリセリンとのエステル化
反応により得られるトリエステルと、ドデカン酸とグリセリンとのエステル化反応により
得られるトリエステルとを、特定比率で混合して得る方法、特定比率のカプリル酸とドデ
カン酸の混合脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応により得る方法が挙げられ、低温で
の流動性を向上させる観点から、特定比率のカプリル酸とドデカン酸の混合脂肪酸とグリ
セリンとのエステル化反応により得る方法が好ましい。脂肪酸とグリセリンとのエステル
におけるカプリル酸とドデカン酸のモル比は、エステルの調製に用いたカプリル酸とドデ
カン酸のそれぞれのモル数から計算することができる。
【0027】
前記エステルの製造において、エステル化反応促進の観点から、前記グリセリンの水酸
基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基を1当量より過剰量を用いてエステル化反応
を行う工程と、エステル化反応後に過剰分の脂肪酸を除去する工程を含むことが好ましい
。前記脂肪酸のカルボキシ基の当量は、前記グリセリンの水酸基1当量に対して、1.1
当量以上が好ましく、そして、脂肪酸を除去する工程での負荷を低減する観点から、1.
5当量以下が好ましく、1.3当量以下がより好ましい。得られるエステルの水酸基価が
、好ましくは3.0mgKOH/g以下、より好ましくは1.5mgKOH/g以下にな
るまでエステル化反応を行うことが好ましい。エステル化反応後に過剰の脂肪酸を除去す
る方法としては、例えば、減圧留去、スチーミング、吸着剤を用いた吸着除去などが挙げ
られる。得られるエステルの酸価が、好ましくは0.3mgKOH/g以下、より好まし
くは0.1mgKOH/g以下になるまで脂肪酸を除去することが好ましい。
【0028】
具体的には、前記金属加工油用基油の製造方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
以下の工程1及び工程2を含む金属加工油用基油の製造方法。
工程1:グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応を行う工程であって、前記グリセリン
の水酸基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基の当量が1.1当量以上であり、前記
脂肪酸がカプリル酸とドデカン酸の混合脂肪酸であり、前記脂肪酸中の前記カプリル酸と
前記ドデカン酸の合計含有量が、90モル%以上であり、前記混合脂肪酸中の前記カプリ
ル酸と前記ドデカン酸のモル比(カプリル酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/1
0以下である工程
工程2:エステル化反応後に過剰分の前記脂肪酸を除去する工程
【0029】
<不水溶性金属加工油組成物>
本実施形態の不水溶性金属加工油組成物は、少なくとも前記金属加工油用基油を含有す
る。前記不水溶性金属加工油組成物中の前記金属加工油用基油の含有量は、引火点を高く
し、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは90質量
%以上であり、より好ましくは実質的に100質量%以上、更に好ましくは100質量%
である。なお、本明細書において「実質的に100質量%」とは不可避的に微量の不純物
等を含んでいる状態を言う。
【0030】
前記不水溶性金属加工油組成物は、前記金属加工油用基油の他に、一般的な不水溶性金
属加工油組成物に配合される添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、油
性剤、極圧剤、界面活性剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、及び金属不活性化剤
などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記不水溶性金属加工油組成物は、前記金属加工油用基油を含有するため、高い引火点
と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有するものであり、金属の切削
・研削加工などに好適に用いられる。
【実施例0032】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例
のみに限定されるものではない。また、各種測定、評価方法は以下のとおりである。
【0033】
<縮合エステルの調製>
〔実施例1〕
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた1リットルの4つ口フラスコに
、脂肪酸として、カプリル酸387.81g、ドデカン酸124.32gを加えて混合脂
肪酸を調製し、さらに、グリセリン127.00gを添加した。なお、脂肪酸の添加量は
、グリセリンの水酸基1当量に対して脂肪酸の総カルボキシ基が0.8当量になるように
した。次に、フラスコ内に、窒素ガスを吹き込み、攪拌しながら230℃まで昇温し、5
時間230℃を維持し、留出する水分を冷却管を用いてフラスコ外へ除去した。反応終了
後、追加でカプリル酸238.65gを添加し、再度230℃まで昇温した。7時間23
0℃を維持し、留出する水分は冷却管を用いてフラスコ外へ除去した。反応終了後、0.
13kPaの減圧下で過剰の脂肪酸を留去し、吸着剤(商品名:キョーワード500SH
、協和化学工業株式会社製)に残存している脂肪酸を吸着させた後、濾過を行い、縮合エ
ステルを得た。得られた縮合エステルは、酸価が0.1mgKOH/g未満、水酸基価が
1.0mgKOH/g未満であり、グリセリンの部分エステル、未反応の脂肪酸、未反応
のグリセリンのいずれも実質的に含まないことを確認した。得られた縮合エステルは、グ
リセリンのトリエステルが実質的に100%であった。得られた縮合エステルは、カプリ
ル酸のトリエステル、ドデカン酸のトリエステル、及びカプリル酸とドデカン酸のトリエ
ステルを含む混合物である。すなわち、得られた縮合エステルは、カプリル酸とドデカン
酸の混合脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを含む混合物である。
【0034】
〔実施例2及び3、比較例1及び2〕
表1に示したカプリル酸とドデカン酸のモル比に変えた以外は実施例1と同様の方法で
実施例2及び3、比較例1及び2に係る縮合エステルを調製した。
【0035】
<評価方法>
〔脂肪酸結合比率の評価〕
得られた縮合エステルの脂肪酸結合比率は、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと省
略)により測定した。具体的には、試料10mgをヘキサン溶媒1mLに溶解させ、GC
測定を行い、得られた各化合物ピークの面積比より算出した。測定に使用した装置および
分析条件は次の通りである。
GC装置:商品名8890 GC System(Agilent Technolog
y製)
カラム:商品名DB―1 30m×250μm×0.1μm(Agilent Tech
nology製)
検出器:水素炎イオン検出器(FID)
インジェクション温度:270℃
ディテクター温度:310℃
オーブン:60℃(0min.)→10℃/min.→300℃→300℃(36min.
)
【0036】
〔潤滑性(動粘度)の評価〕
動粘度の評価は、ASTM D7042で要求される精度を満たしたスタビンガー動粘
度計(商品名:SVM3000、Anton Paar社製)により、40℃動粘度を測
定し潤滑性の評価とした。
【0037】
〔流動点の評価〕
流動点の評価は、JIS K2269に従った測定方法により流動点(℃)を測定した
。
【0038】
〔引火点の評価〕
引火点の評価は、JIS K2265に従った測定方法(クリーブランドオープンカッ
プ式)により引火点(℃)を測定した。具体的には、試料を金属カップの標線ぴったりに
入れ、クリーブランド開放式 引火点・燃焼点測定器(商品名OptiFlash、PA
C製)により測定した。
【0039】
各評価結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
表1から、カプリル酸とドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、70/30
以上90/10以下であり、前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有
量が、60モル%以上である実施例1~3の縮合エステルは、0℃動粘度が16(mm2
/s)以下、かつ引火点が250℃以上であり、高い引火点と室温付近での低い粘度を両
立するものであることがわかる。また、実施例1~3の縮合エステルは、流動点が-10
℃以下であり、低温での流動性に優れるものである。一方、カプリル酸とドデカン酸のモ
ル比(デカン酸/ドデカン酸)が、70/30以上90/10以下を満たさない比較例1
、2の縮合エステルは、40℃動粘度が16(mm2/s)を超えるか、あるいは引火点
が250℃未満であり、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立することができない。
前記脂肪酸中の前記カプリル酸と前記ドデカン酸の合計含有量は、引火点を高くし、潤滑性を向上させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは100モル%である。