(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161269
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用樹脂フィルム及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/141 20210101AFI20241108BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241108BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20241108BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20241108BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M50/141
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/124
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154008
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2024513426の分割
【原出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2022164358
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 翼
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(57)【要約】
【課題】優れた絶縁性を備え、かつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制する、蓄電デバイス用樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 蓄電デバイス用樹脂フィルムであって、
前記蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されており、
前記2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層と、を含む、蓄電デバイス用樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス用樹脂フィルムであって、
前記蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されており、
前記2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層と、を含む、蓄電デバイス用樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用樹脂フィルム及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質などの蓄電デバイス素子を封止するために外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、従来、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような蓄電デバイス用外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層を熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蓄電デバイス素子の内部に水分が浸入すると、蓄電デバイスの性能が劣化することから、例えば外装材として前述したフィルム状の積層体を用いる場合であれば、バリア層(例えば金属箔により構成される)が設けられている。バリア層を設けることにより、バリア層の外側からの水分の浸入は抑制することができる。
【0008】
しかしながら、外装材の熱融着性樹脂層を熱融着させて蓄電デバイス素子を封止した場合、熱融着性樹脂層の端面は外部に露出することから、熱融着性樹脂層の端面から水分が浸入する虞がある。
【0009】
また、外装材で蓄電デバイス素子を封止するまでに、外装材の熱融着性樹脂層が吸水した場合、蓄電デバイス素子を封止した後に熱融着性樹脂層中の水分が蓄電デバイス素子に浸入する虞もある。
【0010】
また、蓄電デバイスに用いられる部材の中には、優れた絶縁性が求められる部材がある。
【0011】
このような状況下、本開示は、優れた絶縁性を備え、かつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制する、蓄電デバイス用樹脂フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、蓄電デバイス用樹脂フィルムを2層以上の層により構成し、2層以上の層のうち、少なくとも1層における吸水剤の含有率を5質量%以上とし、かつ、2層以上の層のうち、少なくとも1層における吸水剤の含有率を5質量%未満に設定することで、優れた絶縁性を備えつつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制し得ることを見出した。
【0013】
本開示は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
蓄電デバイス用樹脂フィルムであって、
前記蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されており、
前記2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層と、を含む、蓄電デバイス用樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、優れた絶縁性を備え、かつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制する、蓄電デバイス用樹脂フィルムを提供することができる。また、本開示によれば、当該技術を利用した蓄電デバイスを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図2】本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図3】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
【
図4】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図5】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図6】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図7】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図8】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図9】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【
図10】本開示の蓄電デバイスの一例を示す模式的斜視図である。
【
図11】本開示の蓄電デバイスの断面構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されており、当該2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層とを含むことを特徴とする。本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、当該構成を備えていることにより、優れた絶縁性を備え、かつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制することができる。
【0017】
以下、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムについて詳述する。なお、本開示において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0018】
また、蓄電デバイス用樹脂フィルムのMDの確認方法として、蓄電デバイス用樹脂フィルムの断面(例えば、酸変性ポリオレフィン層又はポリオレフィン層の断面)を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認する方法がある。当該方法においては、蓄電デバイス用樹脂フィルムの厚み方向に対して垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向を、MDと判断することができる。具体的には、蓄電デバイス用樹脂フィルムの長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面に対して垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、蓄電デバイス用樹脂フィルムの厚み方向に対して垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。また、例えば、150℃環境下に蓄電デバイス用樹脂フィルムを2分間放置した後の熱収縮率を測定し、収縮率がより大きい方をMDと判断することもできる。
【0019】
1.蓄電デバイス用樹脂フィルム
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されている。2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層とを含む。
図1及び
図2においては、2層以上の層のうち、吸水剤の含有率が5質量%以上である層Aを第1層11、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを第2層12とする。
図2において、第3層13は、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bとする。
【0020】
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、優れた絶縁性を備え、かつ、蓄電デバイス素子の内部への水分の浸入を抑制することができることから、蓄電デバイス用の樹脂フィルムとして好適に使用することができる。例えば、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される用途、2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される用途、3)蓄電デバイス用外装材のバリア層と熱融着性樹脂層との間の接着層として使用される用途、又は、4)蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される金属端子用接着性フィルムとして使用される用途として、好適である。さらに、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士が熱融着される位置において、熱融着性樹脂層の間に介在するように用いることもできる。
【0021】
1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される用途においては、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、
図5から
図9の模式図に示すように、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置される。
【0022】
前記の通り、蓄電デバイス素子の内部に水分が浸入すると、蓄電デバイスの性能が劣化することから、フィルム状の外装材には、バリア層(例えば金属箔により構成される)が設けられている。バリア層を設けることにより、バリア層の外側からの水分の浸入は抑制することができる。しかしながら、外装材の熱融着性樹脂層を熱融着させて蓄電デバイス素子を封止した場合、熱融着性樹脂層の端面は外部に露出することから、熱融着性樹脂層の端面から水分が浸入する虞がある。また、外装材で蓄電デバイス素子を封止するまでに、外装材の熱融着性樹脂層が吸水した場合、蓄電デバイス素子を封止した後に熱融着性樹脂層中の水分が蓄電デバイス素子に浸入する虞もある。
【0023】
これに対して、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置することにより、外装材の熱融着性樹脂層の端部からの水分の浸入、及び外装材の熱融着性樹脂層に含まれる水分が蓄電デバイス素子に浸入することを効果的に抑制することができる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、吸水剤を含んでいることから、外装材の熱融着性樹脂層から浸入した水分を蓄電デバイス用樹脂フィルム1が吸水・保持することで、蓄電デバイス素子4にまで水分が到達することを抑制することができる。さらに、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bを備えていることから、優れた絶縁性を担保することができる。
【0024】
また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が、2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される用途においては、
図3に示されるように、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35として、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が、3)蓄電デバイス用外装材のバリア層と熱融着性樹脂層との間の接着層として使用される用途においては、
図3に示されるように、少なくとも、基材層31、バリア層33、接着層34、及び熱融着性樹脂層35をこの順に備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材3の接着層34として、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。
【0025】
前記の通り、外装材の熱融着性樹脂層を熱融着させて蓄電デバイス素子を封止した場合、熱融着性樹脂層の端面は外部に露出することから、熱融着性樹脂層の端面から水分が浸入する虞がある。また、外装材で蓄電デバイス素子を封止するまでに、外装材の熱融着性樹脂層が吸水した場合、蓄電デバイス素子を封止した後に熱融着性樹脂層中の水分が蓄電デバイス素子に浸入する虞もある。バリア層と熱融着性樹脂層との間に位置する接着層についても同様である。
【0026】
これに対して、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、外装材3の熱融着性樹脂層又は接着層として使用することにより、外装材の熱融着性樹脂層の端部からの水分の浸入、及び外装材の熱融着性樹脂層又は接着層に含まれる水分が蓄電デバイス素子に浸入することを効果的に抑制することができる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、吸水剤を含んでいることから、外装材の熱融着性樹脂層から浸入した水分を蓄電デバイス用樹脂フィルム1が吸水・保持することで、蓄電デバイス素子4にまで水分が到達することを抑制することができる。さらに、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bを備えていることから、優れた絶縁性を担保することができる。
【0027】
また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が、4)蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される金属端子用接着性フィルムとして使用される用途においては、
図4に示されるように、金属端子用接着性フィルム21として、蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。
【0028】
金属端子用接着性フィルムの端面は外部に露出することから、金属端子用接着性フィルムの端面から水分が浸入する虞がある。また、金属端子用接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に介在させるまでに、金属端子用接着性フィルムが吸水した場合、金属端子用接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に介在させた後、金属端子用接着性フィルム中の水分が蓄電デバイス素子に浸入する虞もある。
【0029】
これに対して、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、金属端子用接着性フィルムとして使用することにより、金属端子用接着性フィルムの端部からの水分の浸入、及び金属端子用接着性フィルムに含まれる水分の浸入を効果的に抑制することができる。すなわち、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、吸水剤を含んでいることから、金属端子用接着性フィルムから浸入した水分を蓄電デバイス用樹脂フィルム1が吸水・保持することで、蓄電デバイス素子4にまで水分が到達することを抑制することができる。さらに、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bを備えていることから、優れた絶縁性を担保することができる。
【0030】
本開示において、吸収対象となる水分は、気体および/または液体の水分である。吸収対象の水分は、例えば固体電解質タイプのリチウムイオンバッテリーに吸収された際に、種々のアウトガスを発生させてしまうものである。
【0031】
蓄電デバイス10は、例えば
図4から
図11に示されるように、外装材3で蓄電デバイス素子4を封止した構造を有している。金属端子2は、外装材3の外側に突出している。金属端子2は、蓄電デバイス素子4が備える正極及び負極の各々に接続されている。金属端子2と外装材3との間には、金属端子用接着性フィルム21が配置されており、金属端子2と外装材の熱融着性樹脂層35との密着性が高められている。蓄電デバイス10の封止は、蓄電デバイス素子4の周縁に外装材3のフランジ部(外装材3の周縁部3a)が形成できるようにして、蓄電デバイス素子4を外装材3で被覆し、外装材3のフランジ部をヒートシールして密封させることで行われる。外装材3を用いて蓄電デバイス素子4を収容する場合、外装材3の熱融着性樹脂層35が内側(蓄電デバイス素子4と接する面)になるようにして用いられる。本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、金属端子用接着性フィルムとして使用する場合、例えば、金属端子用接着性フィルムが着色されていることで、金属端子用接着性フィルムを金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に高い位置精度で配置できる。また、金属端子用接着性フィルムの金属端子側の表面を構成する層は、酸変性ポリオレフィンにより構成することが好ましい。これにより、金属端子用接着性フィルムの金属端子に対する密着性を高めることが可能となる。
【0032】
また、
図10及び
図11に示すように、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層が内側となるようにして、蓄電デバイス素子4(
図10及び
図11では直方体形状)の周囲に外装材3を巻きつけ(胴巻き)、熱融着性樹脂層同士をヒートシールすることで熱融着部70を形成し、両端の開口部をそれぞれ閉じるように蓋体60が配置されている。蓄電デバイスの外装材3の蓋体60と蓄電デバイス素子4との間に、蓄電デバイス用樹脂フィルム胴巻きする外装材3と蓄電デバイス素子4との間に本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を配置してもよい。この場合、蓋体60は、蓄電デバイス用外装材3の一部を構成しており、外装材3と蓄電デバイス素子4との間に、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が配置される。なお、蓋体60は、1つの部材により構成されていてもよいし、複数の部材により構成されていてもよい。
【0033】
前述の1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される用途において、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、外装材3の蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の全体に位置するようにしてもよいし、蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の一部に位置するようにしてもよい。本開示の効果を好適に発揮する観点から、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、外装材3の蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の全体に位置するようにして、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置することが好ましい(
図5から
図9の模式図を参照)。例えば、
図5に示すように、蓄電デバイス用外装材3と蓄電デバイス素子4との間のみに蓄電デバイス用樹脂フィルム1を配置してもよいし、
図6に示すように、外装材3の外装材の周縁部3a(熱融着部)と蓄電デバイス素子4との間に配置されていてもよいし、
図7に示すように、蓄電デバイス用樹脂フィルム1で蓄電デバイス素子4を覆ってもよいし、
図8に示すように、さらに金属端子2の表面の一部が蓄電デバイス用樹脂フィルム1で覆われていてもよい。さらに、
図9に示すように、蓄電デバイス素子4が蓄電デバイス用樹脂フィルム1によって封止されるようにして、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置することもできる。また、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、外装材3と金属端子2との間に存在してヒートシールされていてもよい。
【0034】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1が、外装材3のフランジ部(外装材3の周縁部3a)に位置する場合、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、熱融着性を有することが好ましい。例えば、
図9の模式図においては、外装材3がヒートシールされるフランジ部に蓄電デバイス用樹脂フィルム1が位置していることから、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、熱融着性樹脂層35及び金属端子用接着性フィルム21との熱融着性を有していることが好ましい。また、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は互いに熱融着性を有していることが好ましい。
【0035】
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1において、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aは、単層であってもよいし、複層であってもよく、好ましくは単層である。また、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bは、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0036】
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、例えば
図1及び
図2に示されるように2層以上の層により構成されている。
図1には、第1層11及び第2層12が積層された2層構成の積層体により構成された蓄電デバイス用樹脂フィルム1を示し、
図2には、第2層12、第1層11、及び第3層13がこの順に積層された3層構成の積層体により構成された蓄電デバイス用樹脂フィルム1を示している。前記の通り、
図1及び
図2において、第1層11は吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aであり、第2層12及び第3層13は吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bである。
【0037】
本開示において、吸水剤を含む層を「吸水層」と表記することがある。すなわち、本開示において、吸水剤の含有率が5質量%以上の層A(第1層11)は吸水層であり、吸水剤の含有率が5質量%未満の層B(第2層12及び第3層13)についても、吸水剤を含む場合には、吸水層となる。蓄電デバイス用樹脂フィルム1の積層構成の具体例としては、例えば
図1において、第1層11が吸水層であり、第2層12が吸水剤を含まない層である積層構成が挙げられる。また、例えば
図2において、中間に位置する第1層11が吸水層であり、表面に位置する第2層12及び第3層13が吸水剤を含まない層である積層構成などが挙げられる。
【0038】
本開示において、蓄電デバイス用樹脂フィルムの2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bを少なくとも1層とを含めばよいが、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、層Aにおける吸水剤の含有率は、好ましくは約10質量%以上、さらに好ましくは約15質量%以上であり、また、好ましくは約50質量%以下、より好ましくは約40質量%以下、さらに好ましくは約30質量%以下であり、好ましい範囲としては、5~50質量%程度、5~40質量%程度、5~30質量%程度、10~50質量%程度、10~40質量%程度10~30質量%程度、15~50質量%程度、15~40質量%程度、15~30質量%程度などが挙げられる。層Aにおける吸水剤の含有率が50質量%を超えると、層A中の異物発生による製膜不良、層間密着性の低下、ラミネート強度又はシール強度の低下が懸念される。一方、吸水剤の含有率が5%以下であると、十分な吸水性が発揮できなくなる。
【0039】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bにおける吸水剤の含有率は、好ましくは約3質量%以下、さらに好ましくは0質量%であり、好ましい範囲としては、0~5質量%程度、0~3質量%程度などが挙げられる。
【0040】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aの厚みは、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約5μm以上、さらに好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約150μm以下、さらに好ましくは約100μm以下であり、好ましい範囲としては、3~200μm程度、3~150μm程度、3~100μm程度、5~200μm程度、5~150μm程度、5~100μm程度、10~200μm程度、10~150μm程度、10~100μm程度などが挙げられる。
【0041】
また、本開示の効果(特に、優れた絶縁性)をより好適に発揮する観点から、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bの厚みは、好ましくは約3μm以上、より好ましくは約5μm以上、さらに好ましくは約10μm以上であり、また、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約80μm以下、さらに好ましくは約50μm以下であり、好ましい範囲としては、3~100μm程度、3~80μm程度、3~50μm程度、5~100μm程度、5~80μm程度、5~50μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、10~50μm程度などが挙げられる。
【0042】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1の総厚みとしては、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されず、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約1000μm以下、より好ましくは約900μm以下、さらに好ましくは約500μm以下である。当該厚みの好ましい範囲としては、10~1000μm程度、10~900μm程度、10~500μm程度、15~1000μm程度、15~900μm程度、15~500μm程度、20~1000μm程度、20~900μm程度、20~500μm程度が挙げられる。
【0043】
また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を金属端子用接着性フィルムとして用いる場合の総厚みとしては、前記の範囲であればよいが、好ましくは約30μm以上、より好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約60μm以上であり、また、好ましくは約1000μm以下、より好ましくは約500μm以下、さらに好ましくは約300μm以下であり、好ましい範囲としては、30~1000μm程度、30~500μm程度、30~300μm程度、50~1000μm程度、50~500μm程度、50~300μm程度、60~1000μm程度、60~500μm程度、60~300μm程度が挙げられる。
【0044】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の総厚みに対する、吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bの厚みの比(層Bの厚み/総厚み)は、好ましくは約0.80以下、より好ましくは約0.75以下、さらに好ましくは約0.50以下であり、下限については、例えば約0.01、約0.05、約0.10が挙げられ、好ましい範囲としては、0.01~0.80程度、0.01~0.75程度、0.01~0.50程度、0.05~0.80程度、0.05~0.75程度、0.05~0.50程度、0.10~0.80程度、0.10~0.75程度、0.10~0.50程度が挙げられる。
【0045】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1の2層以上の層のうち、少なくとも1層は、熱融着性樹脂を含むことが好ましい。さらに、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の片面又は両面が熱融着性を有していることが好ましい。例えば、前述の2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される用途においては、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の少なくとも一方面は、熱融着性を有している必要がある。蓄電デバイス用樹脂フィルム1の全ての層が、熱融着性樹脂を含むことが特に好ましい。
【0046】
前述の1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される用途において、蓄電デバイス用樹脂フィルム1が外装材3のフランジ部(外装材3の周縁部3a)に位置する場合、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の熱融着性を高めることが好ましい。例えば蓄電デバイス用樹脂フィルム1が3層以上により構成されている場合、表面に位置する層(
図2であれば、第2層12及び第3層13)は、熱融着性樹脂を含むことが好ましい。また、表面に位置する層の熱融着性の低下を抑制する観点からは、表面に位置する層には吸水剤(特に無機系吸水剤)が含まれないことが好ましい。蓄電デバイスにおいて、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の吸水層による吸水性能をより一層好適に発揮させる観点から、吸水層は、表面に位置する層の間に設けられていることが好ましい。吸水層が表面に位置していると、蓄電デバイスが製造される迄に大気中の水分を吸収し、吸水層の吸水性能が低下しやすいためである。また、蓄電デバイスにおいて、吸水層は、外装材3側に位置している第3層13が吸水層であることも好ましい。これは、第3層13が外装材3に近く、外装材3側から浸入した水分が吸着されやすいからである。また、蓄電デバイスにおいて、吸水層は、蓄電デバイス素子4側に位置している第2層12が吸水層であることも好ましい。これは、第2層12が蓄電デバイス素子4に近く、蓄電デバイス素子4に含まれる水分が吸着されやすいからである。
【0047】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1に含まれる樹脂としては、本開示の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂であることが好ましく、熱融着性樹脂であることがより好ましい。樹脂の具体例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、蓄電デバイス用樹脂フィルム1を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。これらの中でも、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱融着性樹脂が好ましい。
【0048】
また、ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱融着性に優れることから、ポリプロピレンが特に好ましい。ポリプロピレンは、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンのいずれであってもよいが、吸水速度の観点、成膜性の観点からは、ランダムポリプロピレンが好ましい。
【0049】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、耐熱性及び耐圧性(例えば、外装材3で蓄電デバイス素子4を封止する際の絶縁性の低下(ヒートシールによる潰れに起因する))を高める観点から、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0050】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1に含まれる樹脂は、エラストマーを含んでいてもよい。エラストマーは、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高める役割を果たすものである。好ましいエラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエーテル系から選ばれる少なくとも1種以上の熱可塑性エラストマー、または、これらの共重合体である熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。蓄電デバイス用樹脂フィルム1において、エラストマーの含有量としては、蓄電デバイス用樹脂フィルム1の高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高められる程度であれば、特に制限はなく、例えば約0.1質量%以上、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上、さらに好ましくは約3.0質量%以上である。また、当該含有量は、例えば約10.0質量%以下、約8.0質量%以下、約5.0質量%以下などである。当該含有量の好ましい範囲としては、0.1~10.0質量%程度、0.1~8.0質量%程度、0.1~5.0質量%程度、0.5~10.0質量%程度、0.5~8.0質量%程度、0.5~5.0質量%程度、1.0~10.0質量%程度、1.0~8.0質量%程度、1.0~5.0質量%程度、3.0~10.0質量%程度、3.0~8.0質量%程度、3.0~5.0質量%程度などが挙げられる。
【0051】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1に含まれる樹脂の含有率としては、例えば40.0質量%以上、45.0質量%以上、50.0質量%以上、55.0質量%以上、60.0質量%以上、65.0質量%以上、70.0質量%以上、75.0質量%以上、80.0質量%以上、85.0質量%以上、90.0質量%以上、95.0質量%以上、99.0質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上などが挙げられる。
【0052】
また、本開示の効果をより好適に発揮する観点から、蓄電デバイス用樹脂フィルムに含まれる吸収剤の含有率としては、好ましくは3質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、好ましい範囲としては、3~30質量%程度、3~25質量%程度、3~20質量%程度、6~30質量%程度、6~25質量%程度、6~20質量%程度、9~30質量%程度、9~25質量%程度、9~20質量%程度が挙げられる。
【0053】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1に含まれる吸水剤は、樹脂フィルム中に分散させて吸水性を発揮するものであれば、特に制限されない。例えば、蓄電デバイス中における経時安定性の観点から、無機系吸水剤を好適に使用することができる。無機系吸水剤としては、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などが好ましい。無機系吸水剤の好ましい具体例としては、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンなどが挙げられる。一般的に、無機系吸水剤の中でも無機系化学吸水剤は、無機系物理吸水剤よりも吸水効果が高く、含有量を低減することが可能であり、十分な吸水性と熱融着性を単層で実現しやすい。そして、無機系化学吸水剤の中でも、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムは、水分の再放出が少なく、包装体内の低湿度状態の経時安定性が高く、絶乾効果を有することから、特に好ましい。なお、絶乾効果とは、相対湿度が0%付近になるまで吸水する効果を示し、調湿効果とは、湿度が高い時には吸水し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定にする効果を指す。また、例えば全固体電池のように高温環境で使用される場合、水分を再放出する温度帯が高い無機系化学吸収剤が好ましい。
【0054】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1において、吸水層に含有される吸水剤は、例えば、吸水剤と樹脂をメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。具体的には、吸水剤を樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調製する。得られたマスターバッチをさらに樹脂と混合し、フィルム状に成形することで吸水層を形成することができる。吸水剤のマスターバッチ中の含有量は、好ましくは20~90質量%程度、より好ましくは30~70質量%程度である。上記の範囲であれば、吸水層中に必要かつ十分な量の吸水剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0055】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。その含有量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー(充填剤)、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を含有することができる。
【0056】
本開示の効果(特に、優れた絶縁性)をより好適に発揮する観点から、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1において2層以上の層のうち、層Aにおける固体粒子の含有率は、好ましくは約10質量%以上、さらに好ましくは約15質量%以上であり、また、好ましくは約50質量%以下、より好ましくは約40質量%以下、さらに好ましくは約30質量%以下であり、好ましい範囲としては、5~50質量%程度、5~40質量%程度、5~30質量%程度、10~50質量%程度、10~40質量%程度、10~30質量%程度、15~50質量%程度、15~40質量%程度、15~30質量%程度などが挙げられる。また吸水剤の含有率が5質量%未満の層Bは、固体粒子の含有率が、好ましくは約5%未満、より好ましく約3質量%未満、さらに好ましくは0質量%であり、好ましい範囲としては、0~5質量%程度、0~3質量%程度などが挙げられる。固体粒子としては、例えば、先に例示した吸水剤の一部は固体粒子であり、また、顔料(例えば、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等)、フィラー(シリカ等)なども固体粒子である。
【0057】
本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、下記の測定方法によって測定される、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムの絶縁破壊強さが、好ましくは約40kV/mm以上、より好ましくは50~200kV/mm程度、さらに好ましくは50~150kV/mm程度である。
【0058】
(吸水後の絶縁破壊強さの測定)
10cm角の蓄電デバイス用樹脂フィルムを用意し、80℃の温水中に浸漬させる。蓄電デバイス用樹脂フィルム中の吸水剤が100%吸水した状態になるまで浸漬を継続して、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムを得る。浸漬による樹脂フィルムの重量変化がなくなったときを樹脂フィルム中の吸水剤が100%吸水した状態として判断する。蓄電デバイス用樹脂フィルムの吸水度は、浸漬前後のフィルム重量から算出する。次に、JIS C 2110-1:2016の規定に準拠し、測定環境は大気中23℃、昇圧方式は短時間法(交流、50Hz)、昇圧速度は0.3kV/s、電極は25mmφ円柱/75mmφ円柱の測定条件にて、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムについて、絶縁破壊強さを測定する。測定値は、サンプル数5の平均値とする。
【0059】
(蓄電デバイス用樹脂フィルムの製造方法)
蓄電デバイス用樹脂フィルム1の製造方法は、蓄電デバイス用樹脂フィルム1が得られれば特に限定されず、公知または慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。蓄電デバイス用樹脂フィルム1の製造は、例えば、押出法または共押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の、公知の製膜化法および/または積層法により行うことができる。例えば、予め作製された各層を構成するフィルムを、接着剤層を介して積層してもよく、予め作製された層上に溶融した樹脂組成物を押出または共押出によって積層してもよく、複数層を同時に作製しながら溶融圧着によって積層してもよく、または、他の層上に、1種または2種以上の樹脂を、塗布及び乾燥してコーティングしてもよい。
【0060】
蓄電デバイス用樹脂フィルム1を構成する層を、押出しまたは共押出しで、エクストルージョンコート法で積層したり、インフレーション法やキャスト法により製膜後に接着層を介して積層したりすることもできる。エクストルージョンコート法の場合でも、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。または、予め製膜されたフィルムを、エクストルージョンコート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等により積層された接着層を介して積層、接着してもよい。そして、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
【0061】
例えば、エクストルージョンコート法により各層を積層する場合においては、まず、該層を形成する樹脂組成物を加熱して溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出しまたは共押出、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、該層の形成と、被積層面への積層および接着を同時に行うことができる。エクストルージョンコート法により積層する場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~50g/10分が好ましく、0.5~30g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい、または大きいと加工適性が劣り易い。なお、本明細書において、MFRとはJIS K7210に準拠した手法から測定された値である。
【0062】
インフレーション法を用いる場合の各層に含まれる樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、0.2~10g/10分が好ましく、0.2~9.5g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さいまたは大きいと、加工適性が劣り易い。
【0063】
また、蓄電デバイス用樹脂フィルムを構成する各層間には、接着性を向上させるために、各層の表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理を施すことができる。例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理等の前処理を任意に施して、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を形成して設けることができる。或いは、表面に、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、蒸着アンカーコート剤層等の各種コート剤層を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記の各種コート剤層には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
【0064】
蓄電デバイス用樹脂フィルムを構成する各層は、さらに、必要に応じて、テンター方式やチューブラー方式等を利用して、従来公知の方法によって、1軸延伸または2軸延伸することができる。
【0065】
2.蓄電デバイス
本開示の蓄電デバイス10は、前記の通り、外装材3で蓄電デバイス素子4を封止した構造を有している。蓄電デバイス10の封止は、蓄電デバイス素子4の周縁に外装材3のフランジ部(外装材3の周縁部3a)が形成できるようにして、蓄電デバイス素子4を外装材3で被覆し、外装材3のフランジ部をヒートシールして密封させることで行われる。
【0066】
本開示の蓄電デバイス10において、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、前述の1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される用途では、外装材3の蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の全体に位置していてもよいし、蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の一部に位置していてもよい。本開示の効果を好適に発揮する観点から、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、外装材3の蓄電デバイス素子4側(熱融着性樹脂層35側)の面の全体に位置するようにして、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置されていることが好ましい(
図5から
図9の模式図を参照)。例えば、
図5に示すように、蓄電デバイス用外装材3と蓄電デバイス素子4との間のみに蓄電デバイス用樹脂フィルム1を配置してもよいし、
図6に示すように、外装材3の外装材の周縁部3a(熱融着部)と蓄電デバイス素子4との間に配置されていてもよいし、
図7に示すように、蓄電デバイス用樹脂フィルム1で蓄電デバイス素子4を覆ってもよいし、
図8に示すように、さらに金属端子2の表面の一部が蓄電デバイス用樹脂フィルム1で覆われていてもよい。さらに、
図9に示すように、蓄電デバイス素子4が蓄電デバイス用樹脂フィルム1によって封止されるようにして、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1を、蓄電デバイス10の外装材3と蓄電デバイス素子4との間に配置することもできる。また、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、外装材3と金属端子2との間に存在してヒートシールされていてもよい。
【0067】
また、本開示の蓄電デバイス10において、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、前述の2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される用途においては、
図3に示されるように、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35として、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。
【0068】
また、本開示の蓄電デバイス10において、蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、前述の4)蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される金属端子用接着性フィルムとして使用される用途においては、
図4に示されるように、金属端子用接着性フィルム21として、蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。
【0069】
[外装材3]
外装材3は、金属缶であってもよいし、バリア層を備える積層フィルムであってもよい。積層フィルムにより構成された外装材3としては、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。
図3に、外装材3の断面構造の一例として、基材層31、必要に応じて設けられる接着剤層32、バリア層33、必要に応じて設けられる接着層34、及び熱融着性樹脂層35がこの順に積層されている態様について示す。外装材3においては、基材層31が外層側になり、熱融着性樹脂層35が最内層になる。蓄電デバイスの組み立て時に、蓄電デバイス素子4の周縁に位置する熱融着性樹脂層35同士を接面させて熱融着することにより蓄電デバイス素子4が密封され、蓄電デバイス素子4が封止される。なお、
図4から
図9には、エンボス成形などによって成形されたエンボスタイプの外装材3を用いた場合の蓄電デバイス10を図示しているが、外装材3は成形されていないパウチタイプであってもよい。なお、パウチタイプには、三方シール、四方シール、ピロータイプなどが存在するが、何れのタイプであってもよい。
【0070】
外装材3を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約190μm以下、好ましくは約180μm以下、約160μm以下、約155μm以下、約140μm以下、約130μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子4を保護するという外装材3の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上、約80μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35~190μm程度、35~180μm程度、35~160μm程度、35~155μm程度、35~140μm程度、35~130μm程度、35~120μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~160μm程度、45~155μm程度、45~140μm程度、45~130μm程度、45~120μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~160μm程度、60~155μm程度、60~140μm程度、60~130μm程度、60~120μm程度、80~190μm程度、80~180μm程度、80~160μm程度、80~155μm程度、80~140μm程度、80~130μm程度、80~120μm程度が挙げられる。
【0071】
また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、全固体電池用外装材に対して好適に適用することができ、全固体電池用外装材を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約10000μm以下、約8000μm以下、約5000μm以下が挙げられ、電池素子を保護するという全固体電池用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約100μm以上、約150μm以上、約200μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、100~10000μm程度、100~8000μm程度、100~5000μm程度、150~10000μm程度、150~8000μm程度、150~5000μm程度、200~10000μm程度、200~8000μm程度、200~5000μm程度が挙げられ、特に200~5000μm程度が好ましい。
【0072】
(基材層31)
外装材3において、基材層31は、外装材の基材として機能する層であり、最外層側を形成する層である。
【0073】
基材層31を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層31を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層31の形成素材として好適に使用される。また、ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層31の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層31の形成素材として好適に使用される。
【0074】
基材層31は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層31として好適に使用される。
【0075】
これらの中でも、基材層31を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステルが挙げられる。また、全固体電池は150℃以上の耐用温度にするため、200℃以上の高温でシールする場合が多く、2軸延伸ポリエステルが最も適している。
【0076】
基材層31は、耐ピンホール性及び蓄電デバイスの包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層31を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。上記、高温シールの為、少なくとも最外層は2軸延伸ポリエステルであることが望ましい。
【0077】
また、基材層31は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層31を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層31を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0078】
基材層31の厚さについては、例えば、約3μm以上、約4μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約15μm以上であり、また、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約30μm以下であり、好ましい範囲としては、3~100μm程度、3~75μm程度、3~50μm程度、3~30μm程度、4~100μm程度、4~75μm程度、4~50μm程度、3~30μm程度、5~100μm程度、5~75μm程度、5~50μm程度、5~30μm程度、10~100μm程度、10~75μm程度、10~50μm程度、10~30μm程度、15~100μm程度、15~75μm程度、15~50μm程度、15~30μm程度が挙げられる。
【0079】
(接着剤層32)
外装材3において、接着剤層32は、基材層31に密着性を付与させるために、必要に応じて、基材層31上に配置される層である。即ち、接着剤層32は、基材層31とバリア層33の間に設けられる。
【0080】
接着剤層32は、基材層31とバリア層33とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層32の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤層32の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0081】
接着剤層32の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層31とバリア層33との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0082】
また、接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層32を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層31とバリア層33とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層31側に配される接着剤成分として基材層31との接着性に優れる樹脂を選択し、バリア層33側に配される接着剤成分としてバリア層33との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、バリア層33側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂、脂環式イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0083】
接着剤層32の厚さについては、例えば、2~50μm程度、好ましくは3~25μm程度が挙げられる。
【0084】
(バリア層33)
外装材において、バリア層33は、外装材の強度向上の他、蓄電デバイス素子の内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層33は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層33を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層33は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。外装材の製造時に、バリア層33にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0085】
バリア層33の厚さについては、外装材を薄型化しつつ、成形によってもピンホールの発生し難いものとする観点から、好ましくは10~200μm程度、より好ましくは20~100μm程度、蓄電デバイス用外装材3に高成形性又は高剛性を付与する観点からは、バリア層33の厚みは、好ましくは約45μm以上、さらに好ましくは約50μm以上、好ましくは約85μm以下、より好ましくは75μm以下、好ましい範囲としては、45~85μm程度、45~75μm程度、50~85μm程度、50~75μm程度が挙げられる。
【0086】
また、バリア層33は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐食性皮膜を形成する処理をいう。
【0087】
(接着層34)
外装材3において、接着層34は、熱融着性樹脂層35を強固に接着させるために、バリア層33と熱融着性樹脂層35の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0088】
接着層34は、バリア層33と熱融着性樹脂層35を接着可能である接着剤によって形成される。接着層の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール化合物と脂環式イソシアネート化合物からなる接着剤が挙げられる。
【0089】
接着層34の厚さについては、例えば、1~40μm程度、好ましくは2~30μm程度が挙げられる。
【0090】
(熱融着性樹脂層35)
外装材3において、熱融着性樹脂層35は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する層である。
【0091】
熱融着性樹脂層35に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、外装材においては、一般には、ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が、前述の2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される用途においては、
図3に示されるように、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35として、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1が使用される。
【0092】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0093】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。構成モノマーとしては、スチレンも挙げられる。
【0094】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
【0095】
熱融着性樹脂層35は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。
【0096】
また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、特に制限されないが、2~2000μm程度、好ましくは5~1000μm程度、さらに好ましくは10~500μm程度が挙げられる。
【0097】
また、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1は、全固体電池用外装材に対して好適に適用することができ、全固体電池用外装材の熱融着性樹脂層35の融点は、好ましくは150~250℃であり、より好ましくは180~270℃、さらに好ましくは200~270℃、さらに好ましくは200~250℃である。
【0098】
また、全固体電池用外装材の熱融着性樹脂層35に含まれる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリブチレンテレフタレートは耐熱性に優れているため、全固体電池用外装材において、熱融着性樹脂層35は、好ましくはポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている。また、熱融着性樹脂層35がポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されることにより、本開示の蓄電デバイス用樹脂フィルム1との密着性も優れている。なお、熱融着性樹脂層35を形成するポリブチレンテレフタレートフィルムは、予め用意したポリブチレンテレフタレートフィルムを接着層34と積層して熱融着性樹脂層35としてもよいし、ポリブチレンテレフタレートフィルムを形成する樹脂を溶融押出しするなどしてフィルムとすると共に、接着層34と積層してもよいし、熱融着性樹脂層35を形成する樹脂と接着層34を形成する樹脂を共押出しするなどして積層することもできる。
【0099】
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであってもよいし、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであってもよく、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0100】
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、ポリブチレンテレフタレートに加えて、さらに、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーは、ポリブチレンテレフタレートフィルムの高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高める役割を果たすものである。好ましいエラストマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエーテル系から選ばれる少なくとも1種以上の熱可塑性エラストマー、または、これらの共重合体である熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ポリブチレンテレフタレートフィルムにおいて、エラストマーの含有量としては、ポリブチレンテレフタレートフィルムの高温環境における耐久性を担保しつつ、その柔軟性を高められる程度であれば、特に制限はなく、例えば約0.1質量%以上、好ましくは約0.5質量%以上、より好ましくは約1.0質量%以上、さらに好ましくは約3.0質量%以上である。また、当該含有量は、例えば約10.0質量%以下、約8.0質量%以下、約5.0質量%以下などである。当該含有量の好ましい範囲としては、0.1~10.0質量%程度、0.1~8.0質量%程度、0.1~5.0質量%程度、0.5~10.0質量%程度、0.5~8.0質量%程度、0.5~5.0質量%程度、1.0~10.0質量%程度、1.0~8.0質量%程度、1.0~5.0質量%程度、3.0~10.0質量%程度、3.0~8.0質量%程度、3.0~5.0質量%程度などが挙げられる。
【0101】
熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。熱融着性樹脂層35が2層以上で形成されている場合、少なくとも1層が、ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されており、ポリブチレンテレフタレートフィルムは、全固体電池用外装材の最内層であることが好ましい。また、接着層34と接着する層は、ポリブチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。熱融着性樹脂層35が2層以上で形成されている場合、ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されていない層については、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリオレフィンなどにより形成された層であってもよい。ただし、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィンは、ポリブチレンテレフタレートと比較すると、高温環境下における耐久性が低いため、熱融着性樹脂層35は、ポリブチレンテレフタレートフィルムのみによって構成されていることが好ましい。
【0102】
本開示の蓄電デバイスは、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスである。また、本開示の蓄電デバイスは、一次電池、二次電池のいずれであってもよいが、好ましくは二次電池に使用される。二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイスとして、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池が挙げられ、特に全固体電池に好適に使用される。
【実施例0103】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0104】
<蓄電デバイス用樹脂フィルムの製造>
(実施例1)
吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0105】
(実施例2)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例2の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)側を外装材側、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)を蓄電デバイス素子側に配置するようにして用いる。
【0106】
(実施例3)
実施例2と同様にして、吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。ただし、実施例3の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、r-PP(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)側を蓄電デバイス素子側、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)を外装材側に配置するようにして用いる。
【0107】
(実施例4)
ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)の両面に、それぞれ、吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み15μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率20質量% 15μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 15μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0108】
(実施例5)
吸水剤としてのCaOを20質量%および固体粒子としての酸化チタン粒子を5質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0109】
(実施例6)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むポリブチレンテレフタレートフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、ポリブチレンテレフタレートフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、PBT(吸水剤含有率0質量% 10μm)/PBT(吸水剤含有率20質量% 30μm)/PBT(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0110】
(実施例7)
蓄電デバイス用樹脂フィルムを実施例2と同様に製造し、これを蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層とした。蓄電デバイス用外装材の基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm又は12μm)の貼り合わせ面側にコロナ処理を施したもの、ナイロンフィルム(厚み25μm)を用意した。また、バリア層として、アルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ40μm)を用意した。また、熱融着性樹脂層として、前記の蓄電デバイス用樹脂フィルムを用いた。次に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと脂環式イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルム、ナイロンフィルムとバリア層とを接着した積層体を作製した。さらに2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと脂環式イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、得られた積層体のバリア層側と、蓄電デバイス用樹脂フィルムとを接着し、バリア層の上に接着層(4μm)/蓄電デバイス用樹脂フィルムを積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、ポリエチレンテレフタレートフィル/接着剤層/ナイロンフィルム/接着剤層/バリア層/接着層/蓄電デバイス用樹脂フィルムがこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。熱融着性樹脂層は、バリア層側から順に、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)の順に積層されている。
【0111】
(実施例8)
蓄電デバイス用樹脂フィルムを実施例2と同様に2枚製造し、これらを金属端子用接着性フィルム(長さ10mm、幅55mm)とした。アルミニウム製の金属端子(長さ60mm、幅45mm、厚み400μm)の長さ方向の中心部において、長さ方向に直交するようにして、2枚の金属端子用接着性フィルムで金属端子を挟み、両側から熱プレス(温度190℃、圧力0.25MPa、16秒間の条件)することにより、金属端子に金属端子用接着性フィルムを取り付け、金属端子用接着性フィルム付き金属端子を得た。金属端子用接着性フィルムは、金属端子側から順に、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)の順に積層されている。
【0112】
(実施例9)
吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を15質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み40μm)の両面に、それぞれ、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み5μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 5μm)/r-PP(吸水剤含有率15質量% 40μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 5μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0113】
(実施例10)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み90μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 90μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例10の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、r-PP(吸水剤含有率0質量% 90μm)側を外装材側、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)を蓄電デバイス素子側に配置するようにして用いる。
【0114】
(実施例11)
吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を17.4質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を4質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率4質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率4質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率17.4質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率4質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0115】
(実施例12)
ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み30μm)の片面に、吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率20質量% 厚み90μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率20質量% 90μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例12の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、r-PP(吸水剤含有率20質量% 90μm)側を外装材側、r-PP(吸水剤含有率0質量% 30μm)を蓄電デバイス素子側に配置するようにして用いる。
【0116】
(実施例13)
ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)の片面に、吸水剤としてのCaOを45質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率45質量% 厚み30μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率45質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例13の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、r-PP(吸水剤含有率45質量% 30μm)側を外装材側、r-PP(吸水剤含有率0質量% 20μm)を蓄電デバイス素子側に配置するようにして用いる。
【0117】
(実施例14)
吸水剤としての酸化マグネシウム(MgO)を20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0118】
(実施例15)
吸水剤としての硫酸マグネシウム(MgSO4)を20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0119】
(実施例16)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)を積層して、r-PPa(吸水剤含有率0質量% 20μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例16の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、金属端子用接着性フィルムであり、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)側を外装材側、r-PPa(吸水剤含有率0質量% 20μm)を金属端子側に配置するようにして用いる。
【0120】
(実施例17)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むホモポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、無水マレイン酸変性ホモポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み20μm)を積層して、h-PPa(吸水剤含有率0質量% 20μm)/h-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例17の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、金属端子用接着性フィルムであり、h-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)側を外装材側、h-PPa(吸水剤含有率0質量% 20μm)を金属端子側に配置するようにして用いる。
【0121】
(実施例18)
吸水剤としてのCaOを20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の片面に、吸水剤としてのCaOを1質量%含む無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレンフィルム(厚み20μm)を積層して、r-PPa(吸水剤含有率1質量% 20μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)の2層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例18の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、金属端子用接着性フィルムであり、r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)側を外装材側、r-PPa(吸水剤含有率1質量% 20μm)を金属端子側に配置するようにして用いる。
【0122】
(実施例19)
吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を20質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の一方面に、無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層し、他方面に、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、r-PPa(吸水剤含有率0質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例19の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、金属端子用接着性フィルムであり、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)側を外装材側、r-PPa(吸水剤含有率0質量% 10μm)を金属端子側に配置するようにして用いる。
【0123】
(実施例20)
吸水剤としての酸化カルシウム(CaO)を20質量%含むホモポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の一方面に、黒色顔料を含む無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層し、他方面に、ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 厚み10μm)を積層して、黒色のr-PPa(吸水剤含有率0質量% 10μm)/h-PP(吸水剤含有率20質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。実施例20の蓄電デバイス用樹脂フィルムは、金属端子用接着性フィルムであり、黒色のr-PPa(吸水剤含有率0質量% 10μm)側を金属端子側、r-PP(吸水剤含有率0質量% 10μm)を外装材側に配置するようにして用いる。
【0124】
(比較例1)
吸水剤としてのCaOを12質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率12質量% 50μm 単層構成)を蓄電デバイス用樹脂フィルムとした。
【0125】
(比較例2)
ランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率0質量% 50μm 単層構成)を蓄電デバイス用樹脂フィルムとした。
【0126】
(比較例3)
吸水剤としてのCaOを12質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(厚み30μm)の両面に、それぞれ、CaOを12質量%含むランダムポリプロピレンフィルム(吸水剤含有率12質量% 厚み10μm)を積層して、r-PP(吸水剤含有率12質量% 10μm)/r-PP(吸水剤含有率12質量% 30μm)/r-PP(吸水剤含有率12質量% 10μm)の3層構成の蓄電デバイス用樹脂フィルムを製造した。
【0127】
<樹脂フィルムの吸水性評価>
10cm角の樹脂フィルム(樹脂フィルムを作製直後に真空オーブン(-50MPa)で24時間静置して乾燥させたもの)を用意し、80℃の温水中に浸漬した。浸漬前後の樹脂フィルム重量より吸水量を算出し、浸漬による樹脂フィルムの重量変化がなくなったときを樹脂フィルム中の吸水剤が100%吸水した状態とした。その時の単位面積当たりの重量増加分を水分吸収性能(水分放出量(g/m2))とした。検出限界は0.1mg/m2である。結果を表1に示す。
水分吸収性能(g/m2)=(浸漬後の樹脂フィルム重量(g)-浸漬前の樹脂フィルム重量(g))/浸漬後の樹脂フィルムの面積(m2)
【0128】
<吸水後の樹脂フィルムの絶縁性評価>
JIS C 2110-1:2016の規定に準拠して絶縁性を評価した。具体的には、試験環境は大気中23℃とし、前記の<樹脂フィルムの吸水性評価>で得られた吸水後の樹脂フィルムの各5枚について、それぞれ、絶縁破壊強さを測定した。各5枚の絶縁破壊強さ(絶縁破壊電圧を単位厚みに換算)の平均値に基づき、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。測定条件は以下の通りである。
昇圧方式:短時間法(交流、50Hz)
昇圧速度:0.3kV/s
電極:25mmφ円柱/75mmφ円柱
装置:絶縁破壊試験装置 YST-243-100RHO(ヤマヨ試験器(有))
(評価基準)
A':絶縁破壊強さが100kV/mm以上
A:絶縁破壊強さが50kV/mm以上100kV/mm未満
B:絶縁破壊強さが40kV/mm以上50kV/mm未満
C:絶縁破壊強さが40kV/mm未満
【0129】
(金属端子用接着性フィルム付き金属端子の調製)
実施例8,16~20の金属端子用接着性フィルムを用いて、それぞれ、金属端子用接着性フィルム付き金属端子を作製した。厚さ400μm×TD45mm×MD60mmのアルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8079H-O)を金属端子とし、これを、アクリル樹脂、硝酸クロム(III)化合物、リン酸の3成分からなる処理剤で処理層が約100nmの厚さとなるように焼き付け、表面処理金属端子を作製した。次にTD10mm×MD55mmのサイズにカットした金属端子用接着性フィルムを2枚用意し、これらの2枚の金属端子用接着性フィルムと表面処理金属端子の幅方向の中心が一致するようにして、表面処理金属端子の長さ方向端から10mmの位置の両面に配した。次に、上下とも厚さ3.0mm、硬度40のシリコンゴムを貼った金属ヘッドの平板プレス機で190℃×0.25MPa(シリコンゴムにかかる面圧)×16秒の条件で熱シールし、金属端子用接着性フィルム/表面処理金属端子/金属端子用接着性フィルムが順に積層された金属端子用接着性フィルム付き金属端子を調製した。このとき、金属端子のMDと金属端子用接着性フィルムのMDとが直交するように配置した。
【0130】
<金属端子用接着性フィルムの接着性評価>
蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」と表記することがある)を作製した。ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/接着剤層(厚さ3μm)/ナイロンフィルム(厚さ15μm)からなる基材層(厚さ30μm)を、アルミニウム合金箔(厚さ40μm JIS H4160:1994 A8079H-O)の上にドライラミネート法により積層させ、もう一方面に熱融着樹脂層を共押出により積層させた。具体的には、ナイロンフィルムの上に2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、ナイロンフィルム上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、ナイロンフィルム上に接着剤層とポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し基材層を作製した。次いで、アルミニウム合金箔からなるバリア層の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、アルミニウム合金箔上に接着剤層とナイロンフィルム側を接着面とした基材層を積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。次に、積層体のバリア層の上に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂からなる接着層(厚さ40μm、金属層側に配置)と、ランダムポリプロピレン樹脂からなる熱融着性樹脂層(厚さ40μm、最内層)を共押し出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させ、基材層、接着剤層、バリア層、接着層、熱融着性樹脂層がこの順に積層された蓄電デバイス用外装材を得た。
【0131】
次に、外装材をTD60mm、MD200mmのサイズに裁断し、外装材の熱融着性樹脂層が内側になるようにして互いに対向させ、対向する熱融着性樹脂層の間に、前記で得られた金属端子用接着性フィルム付き金属端子を挟んだ。このとき、外装材のMDとTDが、それぞれ金属端子用接着性フィルム付き金属端子のTD方向およびMD方向と一致するように積層した。この状態で、ヒートシールテスターを用いて、幅7mm、190℃×0.25MPa×16秒の条件でヒートシールし、25℃まで自然冷却して、外装材と接着性フィルムとの間を熱融着させた積層体を得た。7mm幅が外装材のMDの方向である。なお、これらのヒートシール条件は、金属端子用接着性フィルムに用いた樹脂に適した温度条件である。得られた積層体のヒートシール部は、外装材/金属端子用接着性フィルム/金属端子/金属端子用接着性フィルム/外装材が順に積層された構成となっている。次に、シール幅7mmと直角方向に積層体を裁断して、幅15mmのサンプルを取得した。このとき、サンプルは積層体の中心部分から取得した。幅15mmが外装材のTDの方向である。次に、サンプルの片側の外装材と、金属端子をチャックし、50mm/minの速度で外装材と金属端子を180℃方向に引っ張り、シール強度を測定した。これらの測定は25℃50%環境下で行った。金属端子に対するシール性の評価を以下の基準で行った。結果を表2に示す。
A:シール強度が20N/15mm以上である。
B:シール強度が10N/15mm以上20N/15mm未満である。
C:シール強度が10N/15mm未満である。
【0132】
【0133】
【0134】
以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1. 蓄電デバイス用樹脂フィルムであって、
前記蓄電デバイス用樹脂フィルムは、2層以上の層により構成されており、
前記2層以上の層は、吸水剤の含有率が5質量%以上の層Aを少なくとも1層と、吸水剤の含有率が5質量%未満である層Bを少なくとも1層と、を含む、蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項2. 前記層Bの少なくとも1層は、吸水剤の含有率が0%である、項1に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項3. 前記2層以上の層のうち、少なくとも1層は、固体粒子の含有率が5質量%未満である、項1又は2に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項4. 前記吸水剤は、無機系吸水剤を含む、項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項5. 前記吸水剤は、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項6. 前記2層以上の層のうち、少なくとも1層は、熱融着性樹脂を含む、項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項7. 前記熱融着性樹脂が、ポリエステル及びポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項6に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項8. 下記の測定方法によって測定される、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムの絶縁破壊強さが、40kV/mm以上である、項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
(吸水後の絶縁破壊強さの測定)
10cm角の蓄電デバイス用樹脂フィルムを用意し、80℃の温水中に浸漬させる。蓄電デバイス用樹脂フィルム中の吸水剤が100%吸水した状態になるまで浸漬を継続して、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムを得る。蓄電デバイス用樹脂フィルムの吸水度は、浸漬前後のフィルム重量から算出する。次に、JIS C 2110-1:2016の規定に準拠し、測定環境は大気中23℃、昇圧方式は短時間法(交流、50Hz)、昇圧速度は0.3kV/s、電極は25mmφ円柱/75mmφ円柱の測定条件にて、吸水後の蓄電デバイス用樹脂フィルムについて、絶縁破壊強さを測定する。測定値は、5サンプルについて測定した平均値とする。
項9. 前記蓄電デバイス用樹脂フィルムは、1)蓄電デバイス用外装材と蓄電デバイス素子との間に配置される、2)蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層として使用される、3)蓄電デバイス用外装材のバリア層と熱融着性樹脂層との間の接着層として使用される、又は、4)蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される金属端子用接着性フィルムとして使用される、項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルム。
項10. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイスであって、
前記外装材と前記蓄電デバイスとの間に、項1~9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用樹脂フィルムが配置されている、蓄電デバイス。