(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161280
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241108BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154949
(22)【出願日】2024-09-09
(62)【分割の表示】P 2022194474の分割
【原出願日】2018-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】米本 智裕
(57)【要約】
【課題】包装材料として十分な強度や耐熱性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体の提供。
【解決手段】本発明の積層体は、基材と、ヒートシール層とを備え、基材およびヒートシール層がポリエチレンから構成され、基材が、ポリエチレンから構成される延伸樹脂フィルムであることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備え、
前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材が、ポリエチレンから構成される延伸樹脂フィルムであることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と、ヒートシール層との間に接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材が、中密度ポリエチレン層を備える、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材が、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材の長手方向(MD)の延伸倍率が、2倍以上10倍以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材の横手方向(TD)の延伸倍率が、2倍以上10倍以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
包装材料用途に用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。
【請求項9】
包装袋であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項10】
スタンドパウチであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とするスタンドパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などは、樹脂材料から構成される樹脂フィルムを用いて作製されている。例えば、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムは、適度な柔軟性、透明性を有すると共に、ヒートシール性に優れるため、包装材料に広く使用されている。
【0003】
通常、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムは、強度や耐熱性の面で劣るため、基材としては使用できず、ポリエステルやポリアミドなどから構成される樹脂フィルムなどと貼り合わせて使用されており、そのため、通常の包装材料などは、基材とヒートシール層とが異種の樹脂材料からなる積層フィルムから構成されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材料が求められている。しかしながら、従来の包装体は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来ヒートシール層として使用していたポリエチレンを、延伸樹脂フィルムにすることで基材として使用することができ、当該基材をポリエチレンから構成されるヒートシール層と積層して使用することで、十分な強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料などを作製とすることができるとの知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、包装材料などとして適用可能な十分な強度や耐熱性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から構成される包装材料を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製される包装袋を提供することである。
さらに、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製されるスタンドパウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層体は、基材と、ヒートシール層とを備え、
基材およびヒートシール層がポリエチレンから構成され、
基材が、ポリエチレンから構成される延伸樹脂フィルムであることを特徴とする。
【0009】
本発明の一実施形態においては、積層体は、基材と、ヒートシール層との間に接着層を備える。
【0010】
本発明の一実施形態においては、基材は、中密度ポリエチレン層を備える。
【0011】
本発明の一実施形態においては、基材は、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる構成を有する。
【0012】
本発明の一実施形態においては、基材の長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下である。
【0013】
本発明の一実施形態においては、基材の横手方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下である。
【0014】
本発明の一実施形態においては、積層体は、包装材料用途に用いられる。
【0015】
本発明の包装材料は、上記積層体を用いて作製されたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の包装袋は、上記積層体を用いて作製され、
ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下である。
【0017】
本発明のスタンドパウチは、上記積層体を用いて作製され、
ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、包装材料としての強度や耐熱性を有し、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図3】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図4】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図5】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図6】本発明の積層体を用いて作製した包装材料の一実施形態を表す斜視図である。
【
図7】本発明の積層体を用いて作製した包装材料の一実施形態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<積層体>
本発明による積層体を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、積層体10は、基材11と、ヒートシール層12とを備える。
【0021】
また、本発明の一実施形態において、
図2に示すように、積層体10は、基材11とヒートシール層12との間に、蒸着膜13を備えることができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態において、
図3に示すように、積層体10は、基材11と、ヒートシール層12または蒸着膜13との間に、接着層14を備えることができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態において、
図4に示すように、積層体10は、基材11とヒートシール層12との間に、蒸着膜15およびポリエチレン樹脂層16を備える中間層17を備えることができる。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態において、
図5に示すように、積層体10は、基材11と中間層17との間および中間層17とヒートシール層12との間に、接着層18を備えることができる。
【0025】
本発明の積層体において、ポリエチレンの含有量は、90質量%以上であることが好ましい。
本発明の積層体全体におけるポリエチレンの含有量を90質量%以上とすることにより、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
なお、積層体におけるポリエチレンの含有量とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の含有量の和に対する、ポリエチレンの含有量の割合を意味する。
【0026】
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0027】
<基材>
本発明の積層体が備える基材は、ポリエチレンにより構成されており、また下記するヒートシール層も同様にポリエチレンにより構成される。このような構成とすることにより、積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0028】
基材は、ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムを使用し、これにより積層体の耐熱性および強度を向上することができる。また、基材への印刷適性を向上することができる。
延伸樹脂フィルムとしては、一軸延伸樹脂フィルムであっても、二軸延伸樹脂フィルムであってもよい。
【0029】
延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材のヒートシール層側表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸樹脂フィルムの破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0030】
また、延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材のヒートシール層側表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸樹脂フィルムの破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0031】
延伸樹脂フィルムのヘイズ値は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。これにより、延伸樹脂フィルムの透明性を向上することができる。
なお、本発明において、延伸樹脂フィルムのヘイズ値は、JIS K 7105に準拠して測定する。
【0032】
基材は、その表面に画像が形成されていてもよい。
外気との接触を防止することができ、経時的な劣化を防止することができるため、下記するヒートシール層が設けられる面側に、画像が形成されていることが好ましい。
形成される画像は、特に限定されず、文字、柄、記号およびこれらの組み合わせなどが表される。
基材への画像形成は、バイオマス由来のインキを用いて行われることが好ましく、これにより本発明の積層体を用いて、環境負荷のより少ない包装材料を作製することができる。
画像の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0033】
基材に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)を使用することができる。
ここで、高密度ポリエチレンとしては、密度が0.945g/cm3以上のポリエチレンを使用することができ、中密度ポリエチレンとしては、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。
これらの中でも、本発明の積層体の印刷適性、強度および耐熱性、並びにフィルムの延伸適正という観点から、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。
【0034】
一実施形態において、基材として、高密度ポリエチレンから構成される層(以下、高密度ポリエチレン層という)および中密度ポリエチレンから構成される層(以下、中密度ポリエチレン層という)を備える構成のものを使用することができる。
基材の外側に高密度ポリエチレン層を備えることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性をより向上することができる。また、中密度ポリエチレン層を備えることにより、基材を構成する樹脂フィルムの延伸適性をより向上することができる。
【0035】
例えば、外側から、高密度ポリエチレン層と中密度ポリエチレン層との共押フィルムの構成を有する。
このような構成とすることにより、フィルムの延伸適性を向上することができる。また、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。
このとき、高密度ポリエチレン層の厚さは、中密度ポリエチレン層の厚さよりも薄いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/5以上1/2以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/10以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性をより向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、樹脂フィルムの延伸適性をより向上することができる。
【0036】
また、例えば、外側から、高密度ポリエチレン層と中密度ポリエチレン層と高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成とすることもできる。
このような構成とすることにより、樹脂フィルムの延伸適性をより向上することができる。また、本発明の積層体の強度および耐熱性をより向上することができる。さらに、基材におけるカールの発生を防止することができる。
このとき、高密度ポリエチレン層の厚さは、中密度ポリエチレン層の厚さよりも薄いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/5以上1/2以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/10以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性をより向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、樹脂フィルムの延伸適性をより向上することができる。
【0037】
また、例えば、外側から、高密度ポリエチレン層と中密度ポリエチレン層と低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層(該段落においては、記載簡略化のため、まとめて低密度ポリエチレン層と記載する。)と中密度ポリエチレン層と高密度ポリエチレン層の五層共押フィルムの構成とすることもできる。
このような構成とすることにより、フィルムの延伸適性を向上することができる。また、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。また、基材におけるカールの発生を防止することができる。
さらに、下記するようにフィルムの生産効率を向上することができる。
このとき、高密度ポリエチレン層の厚さは、中密度ポリエチレン層の厚さよりも薄いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/5以上1/2以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/10以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、フィルムの延伸適性を向上することができる。
また、高密度ポリエチレン層の厚さは、低密度ポリエチレン層の厚さと同じまたは低密度ポリエチレンの厚さよりも厚いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/0.25以上1/2以下であることが好ましく、1/0.5以上1/1以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/0.25以上とすることにより、耐熱性を向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、中密度ポリエチレン層間の密着性を向上することができる。
一実施形態において、このような構成の基材は、例えば、インフレーション法により作製することができる。
具体的には、外側から、高密度ポリエチレンと、中密度ポリエチレン層と、および低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層とをチューブ状に共押出し、次いで、対向する低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層同士を、これをゴムロールなどにより、圧着することによって作製することができる。
このような方法により作製することにより、製造における欠陥品数を顕著に低減することができ、最終的には、生産効率を向上することができる。
また、インフレーション製膜機において、延伸も合わせて行うことができ、これにより、生産効率をより向上することができる。
【0038】
上記したような密度や分岐の違うポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0039】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0040】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基などである。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基などから選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体などを形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0041】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどが挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基などの置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基などの置換ゲルミレン基などが挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0042】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物などが挙げられる。
【0043】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイトなどのイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2などまたはこれらの混合物が挙げられる。また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物などが例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0044】
また、本発明の特性を損なわない範囲において、エチレンと他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。エチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体が挙げられ、炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3ーメチルー1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンなどが挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、酢酸ビニルまたはアクリル酸エステルなどとの共重合体であってもよい。
【0045】
また、本発明においては、上記高密度ポリエチレンなどを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、より一層、環境負荷の少ない包装材料とすることができる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば。ブラスケム社から市販されているグリーンPEなど)を使用してもよい。
【0046】
また、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。
【0047】
基材は、本発明の特性を損なわない範囲において、添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などが挙げられる。
【0048】
基材は、その表面に、下記する蒸着膜を備えていてもよい。
【0049】
また、基材は、表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
また、基材表面に従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0050】
基材の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。
基材の厚さを10μm以上とすることにより、本発明の積層体の強度を向上することができる。また、基材の厚さを50μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
【0051】
基材は、ポリエチレンをTダイ法またはインフレーション法などにより製膜し、フィルムを作製した後、延伸することにより作製することができる。
【0052】
Tダイ法により、基材を作製する場合、ポリエチレンのMFRは、3g/10分以上20g/10分以下であることが好ましい。
ポリエチレンのMFRを3g/10分以上とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。また、ポリエチレンのMFRを20g/10分以下とすることにより、樹脂フィルムが破断してしまうことを防止することができる。
【0053】
インフレーション法により、基材を作製する場合、ポリエチレンのMFRは、0.5g/10分以上5g/10分以下であることが好ましい。
ポリエチレンのMFRを0.5g/10分以上とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。また、ポリエチレンのMFRを5g/10分以下とすることにより、製膜性を向上することができる。
【0054】
なお、基材は上記方法により作製されたものに限られず、市販されるものを使用してもよい。
【0055】
<ヒートシール層>
本発明の積層体が備えるヒートシール層は、上記した基材同様、ポリエチレンにより構成されていることを特徴とする。このような構成とすることにより、十分な強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料などを作製することができる。
但し、ポリエチレン樹脂層は、未延伸のポリエチレン樹脂フィルムにより形成するか、或いはポリエチレンの溶融押出により形成する。
【0056】
ヒートシール層を構成するポリエチレンは、ヒートシール性という観点からは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超密度ポリエチレン(VLDPE)が好ましい。
本発明の特性を損なわない範囲において、エチレンとその他のモノマーとの共重合体を使用することができる。
また、環境負荷の観点から、バイオマス由来のポリエチレンまたはリサイクルされたポリエチレンであることが好ましい。
【0057】
ヒートシール層は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0058】
一実施形態において、ヒートシール層は多層構造を有し、中間層として、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの少なくとも一方を含む層を備える。
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層/中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層/低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層からなる構成とすることができる。
このような構成とすることにより、ヒートシール性を維持しつつ、本発明の積層体の製袋適性および強度をより向上することができる。
【0059】
ヒートシール層の厚さは、本発明の積層体により作製される包装材料に充填する内容物の重量に応じ適宜変更することが好ましい。
例えば、1g以上、200g以下の内容物を充填する
図6に示すような包装袋20を作製する場合、ヒートシール層の厚さは、20μm以上、60μm以下であることが好ましい。
ヒートシール層の厚さを20μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、ヒートシール層を60μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
【0060】
また、例えば、50g以上、2000g以下の内容物を充填する
図7に示すようなスタンドパウチ30を作製する場合、ヒートシール層の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。
ヒートシール層の厚さを50μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、ヒートシール層の厚さを200μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
なお、
図6および7における斜線部分は、ヒートシール部である
【0061】
<蒸着膜>
本発明の積層体は、基材と、ヒートシール層との間に蒸着膜を備えることができる。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0062】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0063】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができると共に、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0064】
蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であるには、そのOD値は、2以上3.5以下であることが好ましい。これにより、本発明の積層体の生産性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。なお、本発明において、OD値は、JIS-K-7361に準拠して測定することができる。
【0065】
蒸着膜は、従来公知の方法を用いて形成することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0066】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度は、10~800m/min程度とすることができる。
【0067】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0068】
<接着層>
一実施形態において、本発明の積層体は、基材と、ヒートシール層または蒸着膜との間に、接着層を備えることができる。これにより、これら層間の密着性を向上することができる。
また、一実施形態において、積層体は、基材と、下記する中間層との間、および中間層と、ヒートシール層との間に接着層を備えることができる。
【0069】
接着層は、少なくとも1種の接着剤を含み、1液硬化型若しくは2液硬化型、または非硬化型のいずれも接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよいが、環境負荷の観点からは、無溶剤型の接着剤が好ましく使用できる。
無溶剤型接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤などが挙げられ、これらのなかでも2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく使用することができる。
溶剤型接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびオレフィン系接着剤などが挙げられる。
【0070】
また、アルミニウム蒸着膜である蒸着膜と隣接するように接着層を設ける場合には、接着層を、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成することが好ましい。
接着層をこのような構成とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより一層向上させることができる。
また、蒸着膜を備えた積層体を包装材料に適用する際には、成形機などにより積層体に屈曲負荷がかかるため、アルミニウム蒸着膜に亀裂などが生じる恐れがある。上記したような特定の接着剤を使用することで、アルミニウム蒸着膜に亀裂が生じた場合であっても、酸素バリア性および水蒸気バリア性の低下を抑制することができる。
【0071】
ポリエステルポリオールは、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する。また、イソシアネート化合物は、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有する。
ポリエステルポリオールは、主骨格として、例えばポリエステル構造、またはポリエステルポリウレタン構造を有する。
【0072】
ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物およびリン酸変性化合物を含有する樹脂組成物の具体例としては、DIC株式会社から販売されている、パスリム(PASLIM)のシリーズが使用できる。
【0073】
該樹脂組成物は、板状無機化合物、カップリング剤、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体などをさらに含んでいてもよい。
【0074】
官能基として1分子中に水酸基を2個以上有するポリエステルポリオールとしては、例えば下記の〔第1例〕~〔第3例〕を用いることができる。
〔第1例〕オルト配向多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール
〔第2例〕グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール
〔第3例〕イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール
以下、各ポリエステルポリオールについて説明する。
【0075】
第1例に係るポリエステルポリオールは、オルトフタル酸およびその無水物を少なくとも1種以上含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分とを重縮合して得られる重縮合体である。
特に、オルトフタル酸およびその無水物の、多価カルボン酸全成分に対する含有率が70~100質量%であるポリエステルポリオールが好ましい。
【0076】
第1例に係るポリエステルポリオールは、多価カルボン酸成分としてオルトフタル酸およびその無水物を必須とするが、本実施の形態の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。
具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸など脂肪族多価カルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和結合含有多価カルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族多価カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、これらジカルボン酸の無水物およびこれらジカルボン酸のエステル形成性誘導体などの芳香族多価カルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸およびこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体などの多塩基酸などが挙げられる。これらの中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。
なお、上記その他の多価カルボン酸を2種以上使用してもよい。
【0077】
第2例に係るポリエステルポリオールとして、一般式(1)で表されるグリセロール骨格を有するポリエステルポリオールを挙げることができる。
【化1】
一般式(1)において、R1、R2、R3は、各々独立に、H(水素原子)または下記の一般式(2)で表される基である。
【化2】
【0078】
式(2)において、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、および2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す)で表される基を表す。
但し、R1、R2、R3のうち少なくとも一つは、一般式(2)で表される基を表す。
【0079】
一般式(1)において、R1、R2、R3の少なくとも1つは一般式(2)で表される基である必要がある。中でも、R1、R2、R3全てが一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0080】
また、R1、R2、R3のいずれか1つが一般式(2)で表される基である化合物と、R1、R2、R3のいずれか2つが一般式(2)で表される基である化合物と、R1、R2、R3の全てが一般式(2)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。
【0081】
Xは、1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基および2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
Xが置換基によって置換されている場合、1または複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0082】
一般式(2)において、Yは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基およびジメチルブチレン基などの炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。Yは、中でも、プロピレン基およびエチレン基が好ましくエチレン基が最も好ましい。
【0083】
一般式(1)で表されるグリセロール骨格を有するポリエステル樹脂化合物は、グリセロールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコール成分とを必須成分として反応させることにより合成することができる。
【0084】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、オルトフタル酸またはその無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸またはその無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸またはその無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸またはその無水物、および2,3-アントラセンカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0085】
また、多価アルコール成分としては炭素原子数2~6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオールおよびジメチルブタンジオールなどのジオールを例示することができる。
【0086】
第3例に係るポリエステルポリオールは、下記一般式(3)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオールである。
【化3】
一般式(3)において、R1、R2、R3は、各々独立に、「-(CH2)n1-OH(但しn1は2~4の整数を表す)」、または、一般式(4)の構造を表す。
【化4】
【0087】
一般式(4)中、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表し、Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基および2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す)で表される基を表す。但しR1、R2、R3の少なくとも1つは一般式(4)で表される基である。
【0088】
一般式(3)において、-(CH2)n1-で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状でもよい。n1は、中でも2または3が好ましく、2が最も好ましい。
【0089】
一般式(4)において、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表す。
Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、および2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
【0090】
Xが置換基によって置換されている場合、1または複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
Xの置換基は、中でもヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基およびフェニル基が好ましくヒドロキシル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、フタルイミド基およびフェニル基が最も好ましい。
【0091】
一般式(4)において、Yは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基およびジメチルブチレン基などの炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。Yは、中でも、プロピレン基およびエチレン基が好ましくエチレン基が最も好ましい。
【0092】
一般式(3)において、R1、R2、R3の少なくとも1つは一般式(4)で表される基である。中でも、R1、R2、R3全てが一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【0093】
また、R1、R2、R3のいずれか1つが一般式(4)で表される基である化合物と、R1、R2、R3のいずれか2つが一般式(4)で表される基である化合物と、R1、R2、R3の全てが一般式(4)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。
【0094】
一般式(3)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオールは、イソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコール成分とを必須成分として反応させることにより合成することができる
【0095】
イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸および1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸などのイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0096】
また、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、オルトフタル酸またはその無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸またはその無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸またはその無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸またはその無水物、および2,3-アントラセンカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。
【0097】
該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0098】
また、多価アルコール成分としては炭素原子数2~6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオールおよびジメチルブタンジオールなどのジオールが挙げられる。
中でも、イソシアヌル環を有するトリオール化合物として1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、または1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸を使用し、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物としてオルトフタル酸無水物を使用し、多価アルコールとしてエチレングリコールを使用したイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール化合物が、酸素バリア性や接着性に特に優れ好ましい。
【0099】
イソシアヌル環は高極性であり且つ3官能であり、系全体の極性を高めることができ、且つ、架橋密度を高めることができる。このような観点からイソシアヌル環を接着剤樹脂全固形分に対し5質量%以上含有することが好ましい。
【0100】
イソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有する。
また、イソシアネート化合物は、芳香族であっても、脂肪族であってもよく、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
さらに、イソシアネート化合物は、公知のイソシアネートブロック化剤を用いて公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られたブロック化イソシアネート化合物であってもよい。
中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物が好ましく、酸素バリア性および水蒸気バリア性の観点からは、芳香族であることが好ましい。
【0101】
イソシアネート化合物の具体的な化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体、並びにこれらのイソシアネート化合物と、低分子活性水素化合物若しくはそのアルキレンオキシド付加物、または高分子活性水素化合物とを反応させて得られるアダクト体、ビュレット体およびアロファネート体などが挙げられる。
低分子活性水素化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびメタキシリレンジアミンなどが挙げられ、分子活性水素化合物としては、各種ポリエステル樹脂、ポリエーテルポリオールおよびポリアミドの高分子活性水素化合物などが挙げられる。
【0102】
リン酸変性化合物は、例えば下記の一般式(5)または(6)で表される化合物である。
【化5】
一般式(5)において、R1、R2、R3は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1~4のアルキル基から選ばれる基であるが、少なくとも一つは水素原子であり、nは、1~4の整数を表す。
【化6】
式中、R4、R5は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1~4のアルキル基から選ばれる基であり、nは1~4の整数、xは0~30の整数、yは0~30の整数を表すが、xとyが共に0である場合を除く。
【0103】
より具体的には、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェートおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0104】
樹脂組成物におけるリン酸変性化合物の含有量は、0.005質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
リン酸変性化合物の含有量を0.005質量%以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。また、リン酸変性化合物の含有量を10質量%以下とすることにより、接着層の接着性を向上することができる。
【0105】
ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物およびリン酸変性化合物を含有する樹脂組成物は、板状無機化合物を含んでいてもよく、これにより、接着層の接着性を向上することができる。また、本発明の積層体の耐屈曲負荷性を向上させることができる。
板状無機化合物としては、例えば、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、クリソタイルなど)およびパイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライなど)などが挙げられる。
【0106】
カップリング剤としては、例えば、下記一般式(7)であらわされるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。なお、これらのカップリング剤は、単独でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【化7】
【0107】
シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよび3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)などが挙げられる。
【0108】
また、チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジドデシルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネートおよびジクミルフェニルオキシアセテートチタネートなどが挙げられる。
【0109】
また、アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)、アルミニウム-2-エチルヘキサノエートオキサイドトリマー、アルミニウムステアレートオキサイドトリマーおよびアルキルアセトアセテートアルミニウムオキサイドトリマーなどが挙げられる。
【0110】
樹脂組成物は、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体を含むことができ、これにより、接着層の接着性を向上することができる。また、本発明の積層体の耐屈曲負荷性をより向上できる。
具体的には、例えば、シクロデキストリン、アルキル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリンおよびヒドロキシアルキル化シクロデキストリンなどのシクロデキストリンのグルコース単位の水酸基の水素原子を他の官能基で置換したものなどを用いることができる。また、分岐環状デキストリンも用いることができる。
また、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体におけるシクロデキストリン骨格は、6個のグルコース単位からなるα-シクロデキストリン、7個のグルコース単位からなるβ-シクロデキストリン、8個のグルコース単位からなるγ-シクロデキストリンのいずれであってもよい。
これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、これらシクロデキストリンおよび/またはその誘導体を以降、デキストリン化合物と総称する場合がある。
【0111】
樹脂組成物への相溶性および分散性の観点から、シクロデキストリン化合物としては、シクロデキストリン誘導体を用いることが好ましい。
【0112】
アルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、メチル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリンおよびメチル-γ-シクロデキストリンなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0113】
アセチル化シクロデキストリンとしては、例えば、モノアセチル-α-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリンおよびモノアセチル-γ-シクロデキストリンなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0114】
ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0115】
接着層の厚さは、0.5μm以上6μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましく、1μm以上4.5μm以下であることがさらに好ましい。
接着層の厚さを0.5μm以上とすることにより、接着層の接着性を向上することができる。また、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物からなる接着層を、アルミニウム蒸着膜と隣接するように設けた場合には、積層体の耐屈曲負荷性を向上することができる。
接着層の厚さを6μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。
【0116】
接着層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、基材などの上に塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0117】
<中間層>
一実施形態において、本発明の積層体は、基材と、ヒートシール層との間に、蒸着膜およびポリエチレン樹脂層を備える中間層を備えることができる。これにより、積層体の強度、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
【0118】
(蒸着膜)
中間層は、蒸着膜を備え、これにより、ガスバリア性、とりわけ酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0119】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0120】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができると共に、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0121】
蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であるには、そのOD値は、2以上3.5以下であることが好ましい。これにより、本発明の積層体の生産性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。なお、本発明において、OD値は、JIS-K-7361に準拠して測定することができる。
【0122】
蒸着膜は、上記方法により形成することができる。
【0123】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0124】
(ポリエチレン樹脂層)
中間層を構成するポリエチレン樹脂層は、上記した基材およびヒートシール層同様ポリエチレンにより構成されていることを特徴とする。このような構成とすることにより、より高い強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料とすることができる。
【0125】
ポリエチレン樹脂層は、包装材料としての強度や耐熱性をより向上させるため、ポリエチレンにより構成される延伸樹脂フィルムを使用する。延伸樹脂フィルムとしては、一軸延伸樹脂フィルムであっても、二軸延伸樹脂フィルムであってもよい。
【0126】
延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。一方、延伸樹脂フィルムの長手方向(MD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸樹脂フィルムの破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0127】
また、延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。一方、延伸樹脂フィルムの横手方向(TD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、延伸樹脂フィルムの破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0128】
ポリエチレン樹脂層に含まれるポリエチレンとしては、上記した中でも、強度および耐熱性およびフィルムの延伸適正という観点から、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。
また、中間層は、基材同様、上記した多層構造からなるものであってもよい。
【0129】
ポリエチレン樹脂層は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0130】
ポリエチレン樹脂層の厚さは、9μm以上、50μm以下であることが好ましく、12μm以上、30μm以下であることがより好ましい。
ポリエチレン樹脂層の厚さを9μm以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性をより向上することができる。また、ポリエチレン樹脂層の厚さを50μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
【0131】
ポリエチレン樹脂層は、上記Tダイ法やインフレーション法により作製したものを使用してもよく、市販されるものを使用してもよい。
【0132】
<用途>
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。
包装材料の形状としては、特に限定されず、
図6に示すように、包装袋20であってもよく、
図7に示すように、胴部31および底部32を備えるスタンドパウチ30であってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていても、底部のみが上記積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。
【0133】
包装袋は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、包装袋は、2枚の積層体を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることによっても製造することができる。
【0134】
スタンドパウチは、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、筒状にヒートシールすることにより、胴部を形成し、次いで、ヒートシール層が内側となるように、上記積層体をV字状に折り、胴部の一端から挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成し、製造することができる。
【0135】
ヒートシールの方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0136】
包装材料に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。また、食品であっても、非食品であってもよい。
内容物充填後、開口をヒートシールすることにより、包装体とすることができる。
【実施例0137】
本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0138】
<実施例1-1>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。基材Aのヘイズ値を、JIS K 7105に準拠して測定したところ、ヘイズ値は6.5%であった。
【0139】
基材Aの一方の面に、水性フレキソインキ(東洋インキ(株)製、商品名:アクワリオナ)を用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0140】
ヒートシール層として、厚さ120μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ(株)、商品名:TUX-TCS)を準備し、これを、基材Aの画像形成面に、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0141】
<実施例1-2>
高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)および上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さがそれぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが12μmである、総厚さ20μmの基材Bを得た。基材Bのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は8.9%であった。
【0142】
基材Bの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0143】
ヒートシール層として、厚さ120μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材Bの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0144】
<実施例1-3>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Cを得た。基材Cのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は5.1%であった。
【0145】
基材Cの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0146】
ヒートシール層として、厚さ120μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材Cの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0147】
<比較例1-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmの基材aを得た。基材aのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は23.5%であった。
【0148】
基材aの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0149】
ヒートシール層として、厚さ120μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材aの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0150】
<比較例1-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる基材bを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。基材bのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は28.8%であった。
【0151】
基材bの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0152】
ヒートシール層として、厚さ120μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材bの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0153】
<比較例1-3>
基材Aを、厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)商品名:E5100)とした以外は、実施例1-1と同様にして積層体を得た。また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、88質量%であった。
【0154】
<実施例2-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Dを得た。基材Dのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は6.5%であった。
【0155】
基材Dの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0156】
ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ(株)商品名:TUX-TCS)を準備し、基材Dの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0157】
<実施例2-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さがそれぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが12μmである、総厚さ20μmの基材Eを得た。基材Eのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は8.9%であった。
【0158】
基材Eの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0159】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材Eの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0160】
<実施例2-3>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Fを得た。基材Fのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は5.1%であった。
【0161】
基材Fの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0162】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材Fの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0163】
<比較例2-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmの基材cを得た。基材cのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は23.5%であった。
【0164】
基材cの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0165】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材cの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0166】
<比較例2-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる基材dを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。基材dのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は28.8%であった。
【0167】
基材dの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0168】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、基材dの画像形成面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0169】
<比較例2-3>
基材Dを、厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)商品名:E5100)とした以外は、実施例2-1と同様にして積層体を得た。また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、71質量%であった。
【0170】
<実施例3-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Gを得た。基材Gのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は6.5%であった。
【0171】
基材Gの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0172】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0173】
基材Gの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0174】
<実施例3-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さがそれぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが12μmである、総厚さ20μmの基材Hを得た。基材Hのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は8.9%であった。
【0175】
基材Hの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0176】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0177】
基材Hの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0178】
<実施例3-3>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Iを得た。基材Iのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は5.1%であった。
【0179】
基材Iの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0180】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0181】
基材Iの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着膜とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0182】
<実施例3-4>
実施例3-1において、基材Gの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面との接着を、イソシアネート化合物およびリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤(DIC(株)製、PASLIM VM001/VM102CP)により行った以外は、実施例3-1と同様にして、本発明の積層体を作製した。
【0183】
<比較例3-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmの基材eを得た。基材eのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は23.5%であった。
【0184】
基材eの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0185】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0186】
基材eの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。
【0187】
<比較例3-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる基材fを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。基材fのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は28.8%であった。
【0188】
基材fの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0189】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0190】
基材fの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、97質量%であった。
【0191】
<比較例3-3>
基材Gを厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)商品名:E5100)とした以外は、実施例3-1と同様にして積層体を得た。このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、71質量%であった。
【0192】
<実施例4-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Jを得た。基材Jのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は6.5%であった。
【0193】
基材Jの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0194】
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た後、長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmのポリエチレン樹脂層Aを得た。次いで、該ポリエチレン樹脂層Aの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Aを得た。
【0195】
基材Jの画像形成面を、中間層Aの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0196】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、中間層Aの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0197】
<実施例4-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さが、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが、12μmである、総厚さ20μmの基材Kを得た。基材Kのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は8.9%であった。
【0198】
基材Kの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0199】
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さが、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが、12μmである、総厚さ20μmのポリエチレン樹脂層Bを得た。次いで、ポリエチレン樹脂層Bの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Bを得た。
【0200】
基材Kの画像形成面を、中間層Bの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0201】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、中間層Bの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0202】
<実施例4-3>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Lを得た。基材Lのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は5.1%であった。
【0203】
基材Lの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0204】
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmのポリエチレン樹脂層Cを得た。次いで、該ポリエチレン樹脂層Cの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Cを得た。
【0205】
基材Lの画像形成面を、中間層Cの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0206】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、中間層Cの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0207】
<実施例4-4>
実施例4-1において、基材Jの画像形成面と、中間層Aの蒸着面との接着を、イソシアネート化合物およびリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤(DIC(株)製、PASLIM VM001/VM102CP)により行った以外は、実施例4-1と同様にして、本発明の積層体を作製した。
【0208】
<比較例4-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmの基材gを得た。基材gのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は23.5%であった。
【0209】
基材gの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0210】
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ20μmのポリエチレン樹脂層aを得た。次いで、該ポリエチレン樹脂層aの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層aを得た。
【0211】
基材gの画像形成面を、中間層aの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0212】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、中間層aの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0213】
<比較例4-2>
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる基材hを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。基材hのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は23.5%であった。
【0214】
基材hの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0215】
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレン樹脂層bを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmであった。
次いで、該ポリエチレン樹脂層bの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層bを得た。
【0216】
基材hの画像形成面を、中間層bの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0217】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、中間層bの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0218】
<比較例4-3>
基材および中間層のポリエチレン樹脂層を、厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)商品名:E5100)に変更した以外は、実施例4-1と同様にして積層体を得た。このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、56質量%であった。
【0219】
<リサイクル性評価>
上記実施例および比較例において得られた積層体のリサイクル性を下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1~4にまとめた。
(評価基準)
○:積層体におけるポリエチレンの含有量が90質量%以上であった。
×:積層体におけるポリエチレンの含有量が90質量%未満であった。
【0220】
<耐熱性評価>
上記実施例1-1~1-3および比較例1-1~1-2において得られた積層体から、縦110mm×横150mmの試験片をそれぞれ2枚ずつ作製した。
2枚の試験片を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、2辺を140℃でヒートシールし、筒状の胴部を形成した。
次いで、上記実施例1-1~1-3および比較例1-1~1-2において得られた積層体から、縦110mm×横150mmの試験片を1枚作製し、これをヒートシール層が外側となるように、V字に折り、上記筒状の胴部と140℃でヒートシールし、底部を形成すると共に、スタンドパウチを作製した。
上記実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-2、実施例3-1~3-4および比較例3-1~3-2並びに実施例4-1~4-4および比較例4-1~4-3において得られた積層体から、縦80mm×横80mmの試験片をそれぞれ2枚ずつ作製した。
2枚の試験片を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、3辺を140℃でヒートシールし、包装袋を作製した。
作製した包装材料を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1~4にまとめた。
(評価基準)
○:包装材料表面にシワなどが発生しておらず、また、ヒートシールバーへの付着が見られなかった。
×:包装材料表面にシワなどが発生しており、また、ヒートシールバーへの付着が見られ、製袋できなかった。
【0221】
<印刷適性評価>
上記実施例および比較例において作製した積層体が備える基材に形成した画像を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1~4にまとめた。
(評価基準)
○:印刷時の寸法安定性が良好であり、擦れ、滲みなどが生じていない良好な画像を形成することができていた。
×:印刷時にフィルムの伸び縮みが発生し、形成した画像に擦れや滲みが生じていた。
【0222】
<剛性評価>
上記実施例および比較例において作製した積層体を、10mm幅の試験片とし、ループスティフネス測定試験器(東洋精機製作所製、商品名:ループステフネステスタ)によりその剛性を測定した。なお、ループの長さは、60mmとした。測定結果を表1~4にまとめた。
【0223】
<強度試験>
上記実施例および比較例において作製した積層体を、引っ張り試験機(オリエンテック社製、商品名:RTC-1310A)により、直径0.5mmの針を突き刺した際の強度を測定した。なお、突き刺し速度は、50mm/分とした。測定結果を表1~4にまとめた。
【0224】
<耐屈曲負荷性試験>
まず、上記実施例3-1~3-4および比較例3-1~3-2並びに実施例4-1~4-4および比較例4-1~4-3で得られた積層体の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
酸素透過度の測定には、MOCON製 OXTRAN2/20を使用し、23℃、90%RHn条件下において、水蒸気透過度の測定には、MOCON製 PERMATRAN3/31を使用し、40℃、90%RHの条件下において、それぞれ測定した。
さらに、上記実施例3-1~3-4および比較例3-1~3-2並びに実施例4-1~4-4および比較例4-1~4-3で得られた積層体について、ゲルボフレックステター(テスター産業(株)性、商品名:BE1006BE)を用い、ASTM F 392に準拠して屈曲負荷(ストローク:155mm、屈曲動作:440°)を5回与えた。
屈曲負荷後、積層体の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
屈曲負荷性試験前後の積層体の酸素透過度および水蒸気透過度を表3および4に示す。
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
10:積層体、11:基材、12:ヒートシール層、13:蒸着膜、14:接着層、15:蒸着膜、16:ポリエチレン樹脂層、17:中間層、18:接着層、20:包装袋、30:スタンドパウチ、31:胴部、32:底部