(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161296
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】チップソー
(51)【国際特許分類】
B23D 61/02 20060101AFI20241108BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20241108BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20241108BHJP
B26D 3/16 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
B23D61/02 Z
B23B27/14 B
B26D1/14 B
B26D3/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024156844
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2020212855の分割
【原出願日】2020-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】506113749
【氏名又は名称】有限会社辰野目立加工所
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】栗林 稔
(57)【要約】
【課題】 中空の被削材を切断する際にきれいな切断面を得ることができるチップソーを提供する。
【解決手段】 刃先部分に切刃片306を備えた円板状のチップソーは、切刃片306はチップソーの逆回転側へ伸びており、切刃306aを備えたチップソーの回転側の切刃部分とチップソーの逆回転側の支持部分とを有し、切刃片306は切刃部分から支持部分に亘ってチップソーの台金31の幅厚より幅厚に構成されており、切刃片306の支持部分は少なくとも隣り合う2つの切刃片306,306における一方の切刃306aから他方の切刃306aまでの間の中央位置まで伸びている。これにより、従来のチップソーに比べてチップソーの外周から台金31が露出する部分を狭めることができ、チップソーの製造コストを低減できる。
【選択図】
図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、前記切刃片はチップソーの逆回転側へ伸びており、切刃を備えたチップソーの回転側の切刃部分とチップソーの逆回転側の支持部分とを有し、前記切刃片は前記切刃部分から前記支持部分に亘ってチップソーの台金より幅厚に構成されており、
前記切刃片の前記支持部分は少なくとも隣り合う2つの前記切刃片における一方の前記切刃から他方の前記切刃までの間の中央位置まで伸びているチップソー。
【請求項2】
刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、前記切刃片はチップソーの逆回転側へ伸びており、切刃を備えたチップソーの回転側の切刃部分とチップソーの逆回転側の支持部分とを有し、前記切刃片は前記切刃部分から前記支持部分に亘ってチップソーの台金より幅厚に構成されており、
隣り合う2つの前記切刃片は円周方向に一部重なるチップソー。
【請求項3】
前記切刃片は前記切刃部分と前記支持部分とが互いに異なる材料から構成されており、前記支持部分は耐摩耗性の材料から構成されている請求項1又は2に記載のチップソー。
【請求項4】
前記切刃片の前記切刃部分は超硬合金から構成されている請求項3に記載のチップソー。
【請求項5】
前記切刃片の前記支持部分は超硬合金から構成されている請求項3に記載のチップソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸鋸の刃先部分にチップなどの切刃片を備えてなるチップソー(tip saw)に関する。
【背景技術】
【0002】
図29は従来のチップソーを用いてパイプ状の被削材を切断する状態を示す平面図である。
図30は
図29の一点鎖線viiで囲む範囲を示す拡大図である。
図29と
図30に示すように、超硬合金は高速度工具鋼(ハイスピード鋼、ハイス)より硬度が高く、高温時の硬度低下が少ないため、切削工具の刃先部分に用いるとよく切れる。このため、近年、超硬合金からなる切刃片1aを刃先部分に取り付けてなるチップソー1が多く使用されている。この種類のチップソー1では切刃片1aが台金1Aより幅厚に構成されている。
【0003】
図31は特許文献1に記載された従来のチップソーを示す平面図である。この
図31は特許文献1の
図1と同一の図である。
図31に示すように、特許文献1には木材の縦挽き用のチップソー2(丸鋸)が記載されている。このチップソー2は第1の切刃片2a(挿入体)と第2の切刃片2b(挿入体、フェーシング素子又は挿入体)とを有する。これら第1の切刃片2aと第2の切刃片2bとは超硬合金からなる。第1の切刃片2aはチップソー2の刃先部分に取り付けられており、第2の切刃片2bは刃先部分の間に配置された溝2s(スロット)の縁部に取り付けられている。この溝2sは径方向内側へ伸びており、チップソー2の回転中心Oを挟んで左右に1本ずつ形成されている。このため、第2の切刃片2bは溝2sと同様に、チップソー2の回転中心Oを挟んで左右に1つずつ設けられている。
【0004】
図32は特許文献2に記載された従来のチップソーを示す平面図である。この
図32は特許文献2の
図5と同一の図である。
図32に示すように、特許文献2には木材や木材パネルの切断に好適なチップソー3(丸鋸)が記載されている。このチップソー3は第1の切刃片3a(チップインサート)と第2の切刃片3b(第2ワイパーチップ)と第3の切刃片3c(第1ワイパーチップ)とを有する。これら第1の切刃片3aと第2の切刃片3bと第3の切刃片3cとは超硬合金からなる。第1の切刃片3aは刃先部分に取り付けられている。第2の切刃片3bはチップソー3に3つ設けられ、刃先部分の間の溝3s(拡張スリット)の縁部に取り付けられている。溝3sは径方向内側へ伸びており、回転中心Oの回りに所定の角度間隔を空けて6本形成されている。第2の切刃片3bは回転中心Oの回りに溝3sの1つおきに設けられている。第3の切刃片3cはチップソー3に3つ設けられており、台金3A(ベースディスク)の長孔3h(開口)の縁部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭47-11320号公報
【特許文献2】特許第4754260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図29と
図30に戻って、従来のチップソー1を用いてパイプ状やコラム状(角筒状)等の中空の(内部に空洞を備えた)被削材Pを切断すると、切刃片1aが台金1Aより幅厚に構成されているので、切刃片1aの切刃が被削材Pを切削して切り溝Pcを形成し、この切り溝Pcの中に切刃片1aが挿入すると、切り溝Pcの幅長が切刃片1aの厚みと同一に保持されるが、切り溝Pcの中に切刃片1aが挿入しないと、切り溝Pcの幅長が台金1Aの厚みと同一、すなわち、切刃片1aの厚みより幅狭に保持される。このため、中空の被削材Pを切断する際に被削材Pの切り溝Pcの幅長が大きくなったり小さくなったり変動するので、被削材Pの切断面が汚くなってしまうという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために、チップソー1の切刃片1aの数量を増やすと、隣り合う2つの切刃片1a,1aの間隔が狭まるので、チップソー1の切屑排出性が悪化してしまう。
図31と
図32に示す特許文献1と特許文献2に記載のチップソー2,3を改良して、第2の切刃片2b,3bの数量を増やすと、台金2A,3Aに形成された溝2s,3sの数量が増加するので、台金2A,3Aの強度が低下してしまい、チップソー2,3によって木材を切断できなくなってしまうおそれがある。このため、特許文献1と2ではこのような改良は想定されないと考える。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、中空の被削材を切断する際にきれいな切断面を得ることができるチップソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のチップソーは、刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、隣り合う2つの前記切刃片の間に支持片が配置されており、前記切刃片と前記支持片とはチップソーの台金の厚みより幅厚に構成されており、前記支持片は前記切刃片の厚みと同一又は同一に近い厚みを備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、隣り合う2つの前記切刃片の間に支持片が配置されており、前記切刃片と前記支持片とはチップソーの台金の厚みより幅厚に構成されており、前記支持片は前記切刃片の厚みと同一又は同一に近い厚みを備えていることにより、前記支持片が前記切刃片と同一又は同一に近い厚みを備えており、隣り合う2つの前記切刃片の間に配置されているので、チップソーの前記切刃片の数量を増加させることなく、前記支持片によって前記切刃片が被削材に形成した切り溝の幅長を前記切刃片の厚みと同一又は同一に近い厚みに保持できる。
【0011】
本発明において、前記支持片は隣り合う2つの前記切刃片の間における少なくとも中央位置又はその近くの位置を含むように配置されていることが好ましい。この発明によれば、前記支持片は隣り合う2つの前記切刃片の間における少なくとも中央位置又はその近くの位置を含むように配置されていることにより、前記支持片が隣り合う2つの前記切刃片のいずれか一方へ片寄っており、前記支持片の一部が隣り合う2つの前記切刃片の間における中央位置又は近くの位置に配置されていない場合に比べて、隣り合う前記切刃片と前記支持片との間の距離のばらつきを低減できる。
【0012】
ここで、前記支持片は隣り合う2つの前記切刃片の間における少なくとも中央位置又はその近くの位置を含むように配置されているには、以下の場合が含まれる。前記支持片が隣り合う2つの前記切刃片の間の中央位置に配置されている場合。前記支持片の全体が隣り合う2つの前記切刃片のいずれか一方へ片寄っており、前記支持片の一部が隣り合う2つの前記切刃片の間の中央位置又はその近くの位置に配置されている場合。前記支持片の一部が隣り合う2つの前記切刃片のいずれか一方と円周方向に重なっており、前記支持片の他部が隣り合う2つの前記切刃片の間の中央位置又はその近くの位置に配置されている場合。前記支持片が隣り合う2つの前記切刃片を掛け渡すように伸びている場合。この場合、前記支持片の両端部が隣り合う2つの前記切刃片の双方と円周方向に重なっていてもよい。
【0013】
本発明において、前記支持片はチップソーの逆回転側の隣の前記切刃片と円周方向に重なるように伸びていることが好ましい。この発明によれば、前記支持片はチップソーの逆回転側の隣の前記切刃片と円周方向に重なるように伸びていることにより、チップソーを外周から見て、前記支持片とチップソーの逆回転側の隣の前記切刃片とが隣接配置されるので、チップソーの台金より幅厚の部分を前記支持片からチップソーの逆回転側の隣の前記切刃片まで隙間なく連続させることができる。
【0014】
本発明において、前記支持片は前記台金の外側に取り付けられていることが好ましい。この発明によれば、前記支持片は前記台金の外側に取り付けられていることにより、前記支持片が前記台金の内側に設けられている場合に比べて、前記台金の強度を低下させることなく、容易かつ低コストにチップソーを製造できる。
【0015】
ここで、前記台金の外側とは前記台金の外周縁から外側のことである。チップソーの外周部に設けられた歯部と凹部とは前記台金の一部である。このため、前記台金の外側に前記歯部の外側も含まれるし、前記凹部の外側も含まれる。
【0016】
本発明において、前記支持片は前記台金の内側に設けられていることが好ましい。この発明によれば、前記支持片は前記台金の内側に設けられていることにより、前記支持片が前記台金の外側に取り付けられている場合に比べて、チップソーの凹部を狭めることがないので、チップソーの切屑排出性の悪化を防止できる。
【0017】
ここで、前記台金の内側とは前記台金の外周縁から径方向内側のことである。チップソーの外周部に設けられた歯部と凹部とは前記台金の一部である。このため、前記台金の内側に前記歯部の内側も含まれるし、前記凹部の内側も含まれる。
【0018】
本発明において、前記切刃片と前記支持片とは互いに異なる材料から構成されていることが好ましい。この発明によれば、前記切刃片と前記支持片とは互いに異なる材料から構成されているので、前記支持片の材料コストを前記切刃片の材料コストより低減させて、チップソーの製造コストを低減できる。
【0019】
本発明のチップソーは、刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、前記切刃片はチップソーの逆回転側へ伸びており、切刃を備えたチップソーの回転側の切刃部分とチップソーの逆回転側の支持部分とを有し、前記切刃片は前記切刃部分から前記支持部分に亘ってチップソーの台金より幅厚に構成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、前記切刃片はチップソーの逆回転側へ伸びており、切刃を備えたチップソーの回転側の切刃部分とチップソーの逆回転側の支持部分とを有し、前記切刃片は前記切刃部分から前記支持部分に亘ってチップソーの台金より幅厚に構成されていることにより、チップソーによって被削材を切断する際に前記切刃片が被削材に形成した切り溝の中に前記切刃片の前記切刃部分と前記支持部分とが隙間なく順次連続して挿入するので、支持片が隣り合う2つの前記切刃片の間に配置される場合に比べて、被削材の切り溝の幅長をチップソーの台金より幅厚に長時間保持できる。
【0021】
本発明において、前記切刃片の前記支持部分は少なくとも隣り合う2つの前記切刃片における一方の前記切刃から他方の前記切刃までの間の中央位置まで伸びていることが好ましい。この発明によれば、前記切刃片の前記支持部分は少なくとも隣り合う2つの前記切刃片における一方の前記切刃から他方の前記切刃までの間の中央位置まで伸びていることにより、前記切刃片の前記支持部分が前記中央位置に届かない場合に比べて、被削材の切り溝の幅長を長時間保持できる。
【0022】
本発明において、隣り合う2つの前記切刃片は円周方向に一部重なることが好ましい。この発明によれば、隣り合う2つの前記切刃片は円周方向に一部重なることにより、チップソーを外周から見て隣り合う2つの前記切刃片が隣接配置され、前記切刃片がチップソーの台金を周回状に隙間なく取り囲むので、被削材を切断する際に、前記切刃片が被削材に形成した切り溝の中に前記切刃片を隙間なく連続して挿入でき、前記切り溝の幅長を常時保持できる。
【0023】
本発明において、前記切刃片は前記切刃部分と前記支持部分とが互いに異なる材料から構成されていることが好ましい。この発明によれば、前記切刃片は前記切刃部分と前記支持部分とが互いに異なる材料から構成されているので、前記支持部分の材料コストを前記切刃部分の材料コストより低減させて、チップソーの製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように本発明によれば、刃先部分に切刃片を備えた円板状のチップソーであって、隣り合う2つの前記切刃片の間に支持片が配置されるので、又は、前記切刃片はチップソーの逆回転側へ伸びる支持部分を備えるので、チップソーによって被削材を切断する際に、前記切刃片が被削材に形成した切り溝の中に前記支持片又は前記支持部分を挿入させて、被削材の切り溝の幅長を保持できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のチップソーを示す平面図である。
【
図2】
図1の一点鎖線iで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図3】
図2の矢印L1から見た状態を示す概略端面図である。
【
図4】第1実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
【
図5】
図4の一点鎖線iiで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図6】第2実施形態のチップソーを示す平面図である。
【
図7】
図6の一点鎖線iiiで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図8】
図7の矢印L2から見た状態を示す概略端面図である。
【
図9】第2実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
【
図10】
図9の一点鎖線ivで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図11】第3の実施形態のチップソーを示す平面図である。
【
図13】
図12の矢印L3から見た状態を示す概略端面図である。
【
図14】第3実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
【
図15】
図14の一点鎖線viで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図16】第1実施形態に関する他のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図17】第1実施形態に関する別のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図18】第2実施形態に関する他のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図19】第2実施形態に関するさらに他のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図20】第2実施形態に関する別のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図21】第2実施形態に関するさらに別のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図22】第3実施形態に関する他のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図23】第3実施形態に関するさらに他のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図24】第3実施形態に関する別のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図25】第3実施形態に関するさらに別のチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図26】第3実施形態に関する異なるチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図27】第3実施形態に関するさらに異なるチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図28】第3実施形態に関する違うチップソーの外周部を示す拡大図である。
【
図29】従来のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す平面図である。
【
図30】
図29の一点鎖線viiで囲む範囲を示す拡大図である。
【
図31】特許文献1に記載のチップソーを示す平面図である。
【
図32】特許文献2に記載のチップソーを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態のチップソーについて詳細に説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態のチップソーの平面図である。
図1に示すように、チップソー10は円板状の丸鋸であり、台金11と切刃片12と支持片13とを有する。
【0027】
【0028】
台金11は円板状であり、その外周部に歯部14と凹部15とが一体形成されている。この歯部14は略矩形状であり、矢印Otで示すチップソー10の径方向外側へ突出している。凹部15は凹状であり、矢印Inで示すチップソー10の径方向内側へ凹んでいる。この凹部15の内底は円弧状に湾曲している。これら歯部14と凹部15とは矢印Rtと矢印Rvで示すチップソー10の円周方向に1つずつ交互に配列されている。言い換えると、歯部14と凹部15とは回転中心Oの回りに1つずつ交互に配列されている。図示例では、歯部14と凹部15は台金11の一部である。歯部14と凹部15はそれぞれ60個設けられている。歯部14は回転中心Oの回りに6°の角度を開けて配列されている。
【0029】
台金11の中心には取付孔11aが形成されている。この取付孔11aはチップソー10を回転させる図示しない装置と連結するための開口であり、台金11の表裏の板面を貫通している。すなわち、台金11の取付孔11aは表面11Aから背面11Bまで貫通している。この取付孔11aの形状は特に限定されず、図示例では表面11Aから見て円形に形成されている。取付孔11aの中心位置にはチップソー10の回転中心Oが設けられている。言い換えると、チップソー10は回転中心Oの回りに回転可能に構成されている。
【0030】
図2は
図1の一点鎖線iで囲む範囲を示す拡大図である。
図2に示すように、切刃片12は略矩形状の小片(チップ)であり、切削工具の材料から構成されている。この材料は、例えば、超硬合金や、ダイヤモンド焼結体(ポリクリスタルラインダイヤモンド,Pory Crystalline Diamond,PCD)や、CBN焼結体(立方晶窒化ホウ素,Cubic Boron Nitride)や、サーメット(cermet,セラミックスと金属の複合材料)や、サーメタル(登録商標)(セラミックスと超硬合金の中間に位置する材料)などである。切刃片12の矢印Rtで示すチップソーの回転側と径方向外側とが交差する角部には切刃12aが形成されている。この切刃12aは切刃片12の表面12Aから背面12Bまで厚み方向に伸びている(
図3参照)。切刃12aによって切刃片12は被削材を切削可能に構成されている。
【0031】
次に、支持片13は切刃片12と同様に、略矩形状の小片(チップ)であり、耐摩耗性の材料から構成されている。例えば、超硬合金などである。この支持片13は切刃片12と同一の材料から構成されていてもよいし、切刃片12と異なる材料から構成されていてもよい。支持片13が切刃片12と異なる材料から構成される場合には、支持片13の材料コストを切刃片12の材料コストより低減させることによってチップソー10の製造コストを低減できる。
【0032】
ここで、代表的な超硬合金は炭化タングステン(WC、タングステン・カーバイト)と結合剤(バインダ)であるコバルト(Co)とを混合して焼結したものであり、必要に応じて炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)などが添加される場合もある。
【0033】
切刃片12は歯部14の矢印Rtで示すチップソー10の回転側に取り付けられており、支持片13は歯部14の矢印Rvで示すチップソー10の逆回転側に取り付けられている。このため、切刃片12と支持片13は歯部14をチップソー10の回転側と逆回転側の両側から挟むように配置されている。これにより、切刃片12と支持片13とはチップソー10の回転中心Oの回りに所定角度を開けて1つずつ交互に配列されている。図示例では、切刃片12と支持片13とは歯部14と同様にそれぞれ60個設けられている。なお、これら切刃片12と支持片13の取り付け方法は特に限定されず、例えば、ろう付けやはんだ付けや溶接等である。
【0034】
図3は
図2の矢印L1から見た状態を示す概略端面図である。
図3に示すように、切刃片12は台金11より幅厚に構成されている。切刃片12の厚み方向は矢印Frと矢印Bkで示すチップソー10の厚み方向である。切刃片12の表面12Aは台金11の表面11Aの位置より矢印Frで示すチップソー10の表面側へ突出しており、切刃片12の背面12Bは台金11の背面11Bの位置より矢印Bkで示すチップソー10の背面側へ突出している。切刃片12の厚みをD2とし、台金11の厚みをD1とすると、切刃片12の厚みD2は台金11の厚みD1より大きい(D2>D1)。切刃片12の厚みD2は厚み方向に表面12Aから背面12Bまでの距離であり、台金11の厚みD1は厚み方向に表面11Aから背面11Bまでの距離である。これにより、切刃片12は台金11の厚みD1より幅広に被削材を切削可能に構成されている。なお、歯部14と凹部15とはいずれも台金11の一部であり、台金11の厚みD1と同一の厚み又は同一に近い厚みを備えている。
【0035】
同様に、支持片13は台金11より幅厚に構成されている。支持片13の表面13Aは台金11の表面11Aの位置よりチップソーの表面側へ突出しており、支持片13の背面13Bは台金11の背面11Bの位置よりチップソーの背面側へ突出している。支持片13の厚みをD3とし、台金11の厚みをD1とすると、支持片13の厚みD3は台金11の厚みより大きい(D3>D1)。支持片13の厚みD3は厚み方向に表面13Aから背面13Bまでの距離である。
【0036】
また、支持片13は切刃片12と同一の厚み又は同一に近い厚みを備えている。支持片13の表面13Aは厚み方向に切刃片12の表面12Aと同一の位置又は同一に近い位置に配置されており、支持片13の背面13Bは厚み方向に切刃片12の背面12Bと同一の位置又は同一に近い位置に配置されている。すなわち、支持片13の厚みD3は切刃片12の厚みD2と同一又は同一に近い(D3=D2又はD3≒D2)。
【0037】
図2と
図3に示すように、支持片13は円周方向に隣り合う2つの切刃片12,12の間に配置されている。切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までの間と、切刃片12から逆回転側の隣の支持片13までの間とにはそれぞれ台金11がチップソー10の外周から露出している。このため、チップソー10を外周から見て、切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までの間部分と、切刃片12からチップソー10の逆回転側の隣の支持片13までの間部分とはチップソー10の厚み方向の厚みが切刃片12や支持片13の厚みより小さい。言い換えると、切刃片12からチップソー10の回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離は、切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までであり、切刃片12からチップソー10の逆回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離は、切刃片12からチップソー10の逆回転側の隣の支持片13までとなっている。
【0038】
ここで、切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までの間の距離をW1aとし、切刃片12からチップソー10の逆回転側の隣の支持片13までの距離をW1bとし、隣り合う2つの切刃片12,12の間の距離をW1とすると、距離W1aと距離W1bとはそれぞれ距離W1より短いとともに、距離W1aと距離W1bの和は支持片13のチップソー10の円周方向の長さ分だけ距離W1より短い(W1a<W1、W1b<W1、W1a+W1b<W1)。この場合において、距離W1aは切刃片12からチップソー10の回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離となっており、距離W1bは切刃片12からチップソー10の逆回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離となっている。
【0039】
また、支持片13は少なくとも隣り合う2つの切刃片12,12の間における中央位置又はその近くの位置を含むようにそれぞれ配置されている。これは支持片13が隣り合う2つの切刃片12,12の間の中央に位置する場合と、支持片13の全体が隣り合う2つの切刃片12,12のいずれか一方へ片寄った状態で、支持片13の一部が隣り合う2つの切刃片12,12の間の中央に位置する場合とを含む。この場合には、距離W1aと距離W1bとはいずれも距離W1の半分より小さくなり(W1a<1/2・W1、W1b<1/2・W1)、距離W1aと距離W1bのばらつきが低減される。言い換えると、チップソー10を外周から見て、台金11が露出する部分がチップソー10の円周方向に小さくなる。
【0040】
図4は第1実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
図5は
図3の一点鎖線iiで囲む範囲を示す拡大図である。
図4と
図5に示すように、チップソー10によって中空の被削材Pを切断する際に、切刃片12が被削材Pに切り込んで切り溝Pcを形成し、その切り溝Pcの中に切刃片12が挿入すると、切り溝Pcの幅長は切刃片12の厚みD2と同一の幅長に保持され、切り溝Pcの中に支持片13が挿入すると、切り溝Pcの幅長は支持片13の厚みD3と同一の幅長に保持される。被削材Pの切り溝Pcの中に台金11の部分のみが挿入すると、切り溝Pcの幅長は台金11の厚みD1と同一の幅長に保持される。このとき、支持片13の厚みD3は台金11の厚みD1より大きいとともに(D3>D1)、切刃片12の厚みD2と同一又は同一に近い(D3=D2又はD3≒D2)。これにより、支持片13が被削材Pの切り溝Pcの中に挿入すると、切り溝Pcの幅長は台金11の厚みD1より大きく、切刃片12の厚みD2と同一の幅長又は同一に近い幅長に保持されるようになっている。
【0041】
上述のように構成されたチップソー10は、回転中心Oの回りにチップソー10の回転側へ回転させて中空の被削材Pに切り込むと、切刃片12の切刃12aが被削材Pを切削して切り溝Pcを形成しつつ、この切り溝Pcの中に切刃片12と台金11の部分と支持片13と台金11の部分とが順繰りに挿入して、被削材Pを切断する。
【0042】
第1実施形態においては、支持片13が隣り合う2つの切刃片12,12の間に配置されており、支持片13の厚みD3が台金11の厚みより大きく、切刃片12の厚みD2と同一又は同一に近いことにより、チップソー10を回転させて中空の被削材Pに切り込むと、切刃片12の切刃12aが被削材Pに切り溝Pcを形成してから、この切り溝Pcの中に切刃片12と支持片13とが1つずつ交互に連続して挿入して、切り溝Pcの幅長を切刃片12の厚みD2と同一の幅長又は同一に近い幅長に保持しながら、被削材Pを切断するので、支持片13が存在しないチップソーに比べて、中空の被削材Pの切断面をきれいに形成できる。
【0043】
この第1実施形態においては、切刃片12からチップソー10の回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離が、切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までの間の距離W1aであり、切刃片12からチップソー10の逆回転側へ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離が、切刃片12からチップソー10の逆回転側の隣の支持片13までの間の距離W1bであり、これら距離W1aと距離W1bとは隣り合う2つの切刃片12,12の間の距離W1より短いことにより(W1a<W1、W1b<W1)、支持片13が設けられていない場合、すなわち、切刃片12からチップソー10の回転側と逆回転側とへ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離がそれぞれ距離W1となっている場合に比べて、切刃片12からチップソー10の回転側と逆回転側とへ円周方向に台金11の厚みD1の状態で伸びる距離がそれぞれ短くなるので、チップソー10によって被削材Pを切断する際に、被削材Pの切り溝Pcの幅長を支持片13によって幅広に保持できる。
【0044】
また、支持片13は少なくとも隣り合う2つの切刃片12,12の間における中央位置又はその近くの位置を含むように配置されていることにより、切刃片12からチップソー10の回転側の隣の支持片13までの距離W1aと、切刃片12からチップソー10の逆回転側の隣の支持片13までの距離W1bとのいずれもが隣り合う2つの切刃片12,12の間の距離W1の半分より小さくなるので(W1a<1/2・W1、W1b<1/2・W1)、チップソー10によって被削材Pを切断する際に、切刃片12と支持片13とが1つずつ交互に被削材Pの切り溝Pcの中に挿入するタイミングのばらつきを低減できる。
【0045】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態のチップソーを示す平面図である。
図7は
図6の一点鎖線iiiで囲む範囲を示す拡大図である。
図6と
図7に示すように、第1実施形態のチップソー10は支持片13が台金11の外側に取り付けられているが、第2実施形態のチップソー20は支持片23が台金21の内側に設けられている。この台金21の内側は台金21の外周縁より径方向内側を意味する。歯部24と凹部25は台金21の一部であるため、台金21の内側には歯部24の外周縁より径方向内側や凹部25の外周縁より径方向内側を含む。なお、第1実施形態のチップソー10と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態の切刃片12は第1実施形態の切刃片12と同じものである。第2実施形態の支持片23は第1実施形態の支持片13と同一の材料からなる。
【0046】
図7に示すように、台金21の内側とは台金21の外周縁より径方向内側を意味する。具体的には、台金21には切り欠き21nが形成されている。この切り欠き21nは歯部24から凹部25に亘る部分の径方向内側にそれぞれ配置されている。切り欠き21nは台金21の表面21Aから見て長円形又は楕円形であり、台金21の表面21Aから背面21Bまで貫通している。支持片23は切り欠き21nに嵌め込まれており、切り欠き21nと同一の平面形状を備えている。換言すると、支持片23は長円形又は楕円形である。このため、支持片23が歯部24の外側に取り付けられている場合に比べて、チップソー20の凹部25を狭めることなく、切屑排出性の悪化を防止できる。なお、切り欠き21nは台金21の外縁部に形成されているが、台金21の外縁部より径方向内側に設けられた開口や貫通孔でもよい。
【0047】
図8は
図7の矢印L2から見た状態を示す概略端面図である。
図7と
図8に示すように、支持片23は隣り合う2つの切刃片12,12の間において、チップソー20の逆回転側の切刃片12に片寄った位置に配置されており、一部が隣り合う2つの切刃片12、12の間の中央に位置するとともに、他部がチップソー20の逆回転側の切刃片12と円周方向に重なるように伸びている。このとき、第2実施形態の台金21と支持片23と切刃片12とは、第1実施形態の台金11と支持片13と切刃片12と同一の厚みD1、D3、D2をそれぞれ備えている。このため、チップソー20を外周から見て、支持片23とその逆回転側の隣の切刃片12とは円周方向に隣接配置しており、同一の厚み又は同一に近い厚みで連続している。換言すると、支持片23の表面23Aとその逆回転側の隣の切刃片12の表面12Aとは円周方向に段差なく連続しているとともに、支持片23の背面23Bとその逆回転側の隣の切刃片12の背面12Bとは円周方向に段差なく連続している。
【0048】
また、
図8に示すように、チップソー20を外周から見て、台金21の厚みD1を備えた部分が切刃片12からチップソー20の逆回転側へ伸びているが、切刃片12からチップソー20の回転側へは伸びていない。この台金21の厚みD1を備えた部分の円周方向の距離は切刃片12からチップソー20の逆回転側の隣の支持片23までの距離W2bである。換言すると、隣り合う2つの切刃片12,12の間の距離W2のうち、台金21の厚みD1を備えた部分は距離W2bのみである。このため、チップソー20は第1実施形態のチップソー10に比べて、チップソー20の外周から露出する台金21の厚みD1の部分を小さくすることができる。
【0049】
図9は第2実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
図10は
図9の一点鎖線ivで囲む範囲を示す拡大図である。
図9と
図10に示すように、チップソー20によって中空の被削材Pを切断する際に、切刃片12の切刃12aが形成する被削材Pの切り溝Pcの中に支持片23が挿入すると、切り溝Pcの幅長は支持片23の厚みD3と同一の幅長、つまり、切刃片12の厚みD2と同一の幅長又は同一に近い幅長に保持される。
【0050】
上述のように構成されたチップソー20は、回転中心Oの回りにチップソーの回転側へ回転させて中空の被削材Pに切り込むと、切刃片12の切刃12aが被削材Pを切削して切り溝Pcを形成しつつ、この切り溝Pcの中に切刃片12と台金21の部分と支持片23とが順繰りに挿入して、被削材Pを切断する。
【0051】
第2実施形態においては、支持片23が台金21の内側に配置されていることにより、支持片13を歯部14の外側に取り付ける第1実施形態のチップソー10に比べて、支持片23によってチップソー20の凹部25を狭めることがないので、チップソー20の切屑排出性の悪化を防止できる。
【0052】
この第2実施形態においては、支持片23とチップソー20の逆回転側の隣の切刃片12とが円周方向に重なっており、チップソー20を外周から見て、支持片23とチップソー20の逆回転側の隣の切刃片12とが隣接配置されていることにより、支持片23とチップソー20の逆回転側の隣の切刃片12とが同一の厚み又は同一に近い厚みで連続しているので、被削材Pの切り溝Pcの幅長を第1実施形態のチップソー10より長時間幅広に保持できる。
【0053】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態のチップソーを示す平面図である。
図12は
図11の一点鎖線vで囲む範囲を示す拡大図である。
図11と
図12に示すように、第1実施形態のチップソー10と第2実施形態のチップソー20とは隣り合う2つの切刃片12,12の間に支持片13,23が設けられているが、第3の実施形態のチップソー30は支持片が設けられておらず、切刃片32がチップソー30の逆回転側へ伸びている。なお、第1実施形態のチップソー10と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。第3実施形態の切刃片32は第1実施形態の切刃片12と同一の材料からなる。
【0054】
第3実施形態の切刃片32は細長い形状であり、チップソー30の回転側の端部に切刃32aを備えている。切刃片32は歯部34の径方向外側に取り付けられており、回転側の切刃32aからチップソー30の逆回転側へ歯部34の外周縁に沿って斜めに伸びている。図示例では、切刃片32は歯部34の外周縁を全て覆っている。なお、切刃片32の歯部34への取付方法は特に限定されず、例えば、ろう付けやはんだ付けや溶接などである。
【0055】
図12に示すように、切刃片32は切刃部分32xと支持部分32yとを有する。切刃部分32xは切刃片32のチップソー30の回転側の部分であり、切刃32aを含んでいる。支持部分32yは切刃片32のチップソー30の逆回転側の部分である。切刃部分32xと支持部分32yは同一の厚みD2を備えている。これにより、切刃片32は切刃部分32xの切刃32aによって被削材Pに切り溝Pcを形成した後、支持部分32yによって切り溝Pcの幅長を切刃片32の厚みD2と同一に保持できるようになっている。
【0056】
図13は
図12を矢印L3から見た状態を示す端面図である。
図12と
図13に示すように、切刃片32は一部がチップソー30の逆回転側の隣の切刃片32と円周方向に重なっている。換言すると、隣り合う2つの切刃片32,32は円周方向に一部が重なる。具体的には、隣り合う2つの切刃片32,32のうち、一方の切刃片32の支持部分32yが他方の切刃片32の切刃部分32xと円周方向に重なっている。換言すると、切刃片32は一部が円周方向に重なるように回転中心Oの回りに所定角度を開けて配列されており、台金31を円周方向に隙間なく取り囲んでいる。
【0057】
図13に示すように、この状態において、チップソー30を外周から見ると、隣り合う2つの切刃片32,32は円周方向に隙間なく隣接配置されており、一方の切刃片32から他方の切刃片32まで同一の厚みD2で連続している。言い換えると、隣り合う2つの切刃片32,32のうち一方の切刃片32の表面32Aと他方の切刃片32の表面32Aとは円周方向に段差なく連続しているとともに、一方の切刃片32の背面32Bと他方の切刃片32の背面32Bとは円周方向に段差なく連続している。これにより、切刃片32は被削材Pの切り溝Pの中に間隔を空けることなく連続して挿入できるようになっている。
【0058】
図14は第3実施形態のチップソーによって中空の被削材を切断する状態を示す概略平面図である。
図15は
図14の一点鎖線viで囲む範囲を示す拡大図である。
図14と
図15に示すように、チップソー30によって中空の被削材Pを切断する際に、切刃片32の切刃32aが形成した切り溝Pcの中に切刃片32が挿入すると、切り溝Pcの幅長は切刃片32の厚みD2と同一の幅長に保持される。
【0059】
上述のように構成されたチップソー30は、回転中心Oの回りに回転側へ回転させて中空の被削材Pに切り込むと、切刃片32の切刃32aが被削材Pを切削して切り溝Pcを形成しつつ、この切り溝Pcの中に切刃片32が間隔を空けることなく連続して挿入して、被削材Pを切断する。
【0060】
第3実施形態においては、チップソー30には支持片13、23が設けられていないので、切刃片12と支持片13,23との両方を備えた第1実施形態や第2実施形態のチップソー10、20に比べて、部品点数を低減できるとともに製造コストを低減できる。
【0061】
この第3実施形態においては、切刃片32がチップソー30の逆回転側へ伸びており、隣り合う2つの切刃片32,32が円周方向に一部が重なるように、切刃片32が台金31を周回状に隙間なく取り囲んでいることにより、チップソー30によって中空の被削材Pを切断する際に、切刃片32の切刃32aが形成した被削材Pの切り溝Pcの中に切刃片32が間隔を空けることなく連続して挿入するので、切り溝Pcの幅長を切刃片32の厚みD2と同一の幅長に常時保持でき、第1実施形態や第2実施形態のチップソー10、20よりきれいな切断面を得ることができる。
【0062】
尚、第1実施形態から第3実施形態までのチップソー10、20、30は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第1実施形態の支持片13は角が丸い矩形状であるが(
図2参照)、支持片101は角が尖った矩形状でもよいし(
図16参照)、支持片102は歯部14の径方向外側の端部(突出端)から凹部15の内底まで直線状に伸びる斜辺を備えた略三角状でもよい(
図17参照)。
【0063】
また、第2実施形態における支持片23は歯部24から凹部25に亘る部分の径方向内側に配置されているが(
図7参照)、歯部24の径方向内側(歯部24の根元)に配置されていてもよいし、凹部25の径方向内側に配置されていてもよい。支持片201、202、203、204は歯部24のチップソー20の逆回転側の部分にそれぞれ配置されていてもよい(
図18~
図21参照)。
【0064】
なお、第2実施形態における支持片23は長円形又は楕円形であるが(
図7参照)、支持片23の平面形状は特に限定されず、例えば、円形でもよいし、五角形や六角形や八角形等の多角形でもよい。また、支持片201は矩形状でもよいし(
図18参照)、支持片202はかまぼこ状でもよいし(
図19参照)、支持片203は半円形でもよいし(
図20参照)、支持片204は三日月状でもよい(
図21参照)。
【0065】
また、第3実施形態における切刃片32はチップソー30の回転側から逆回転側へ斜めに伸びる直線状であるが(
図12参照)、切刃片301は湾曲状でもよい(
図22参照)。
【0066】
なお、第3実施形態における切刃片32は径方向内側の部分、つまり、歯部34と接する部分が平坦であるが(
図12参照)、切刃片302、303、304の歯部34と接する部分は凹凸状であることが好ましい(
図23~
図25参照)。これにより、切刃片302、303、304を歯部34から外れ難くすることができる。具体的には、切刃片302には切刃片302の伸びる方向に突出する凸部302pと凹む窪み302qとが形成されている(
図23参照)。切刃片303には切刃片303の伸びる方向に対して交差する方向、すなわち、歯部34と接する方向に突出する凸部303pと凹む窪み303qが形成されている(
図24参照)。切刃片304には歯部34と接する方向に凹むアリ溝304q,304qが形成されている(
図25参照)。
【0067】
また、第3実施形態における切刃片32は全体が1つの材料から構成されているが、切刃片32はチップソー30の回転側の切刃部分32xとチップソー30の逆回転側の支持部分32yとで異なる材料から構成されていてもよい。例えば、
図26に示すように、切刃片305は切刃部分305xが第1実施形態の切刃片12と同一の切削工具の材料から構成されており、支持部分305yが第1実施形態の支持片13と同一の耐摩耗性の材料から構成されている。これにより、チップソーの製造コストを低減できる。
【0068】
また、第3実施形態における隣り合う2つの切刃片32,32が円周方向に一部が重なるように配置されているが、隣り合う2つの切刃片306,306、307,307が円周方向に重ならないように配置されていてもよい(
図27と
図28参照)。例えば、
図27に示すように、隣り合う2つの切刃片306,306は一方の切刃306aから他方の切刃306aまでの距離をW3とすると、切刃片306は少なくとも円周方向の距離W3の半分(1/2・W3)に対応する位置まで歯部34の外周縁に沿って伸びていてもよい。これにより、従来のチップソーに比べてチップソーの外周から台金31が露出する部分を狭めることができるとともに、チップソーの製造コストを低減できる。
【0069】
この場合において、
図28に示すように、切刃片307はチップソー30の回転側の切刃部分307xとチップソー30の逆回転側の支持部分307yとは互いに異なる材料から構成されていてよい。すなわち、切刃片307の切刃部分307xは第1実施形態の切刃片12と同じ切削工具の材料から構成されており、切刃片307の支持部分307yは第1実施形態の支持片13と同じ耐摩耗性の材料から構成されている。これにより、チップソーの製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0070】
1,2,3,10,20,30…チップソー、1a,12,32,301,302,303,304,305,306,307…切刃片、1A,3A、11,21,31…台金、2a,3a…第1の切刃片、2b,3b…第2の切刃片、2s,3s…溝、3c…第3の切刃片、3h…長孔、11a…取付孔、11A,12A,13A,21A,23A,32A…表面、11B,12B,13B,21B,23B,32B…背面、12a,32a,306a…切刃、13,23,101,102,201,202,203,204…支持片、14,24,34…歯部、15,25…凹部、21n…切り欠き、302p,303p…凸部、302q,303q…窪み、304q…アリ溝、32x,305x,307x…切刃部分、32y,305y,307y…支持部分、D1,D2,D3…厚み、O…回転中心、P…被削材、Pc…切り溝、Rt,Rv,Ot,In,Fr,Bk,L1,L2,L3…矢印、W1,W1a,W1b,W2,W2b,W3…距離、i,ii,iii,iv,v,vi…一点鎖線