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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161307
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】紙容器用積層シート及び紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157673
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2020088121の分割
【原出願日】2020-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 竜也
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
(57)【要約】
【課題】製造の工程数の増加を抑えつつ容器成形時のホットエア(加熱)によるバブリングを抑制することが可能な紙容器用積層シートを提供する。
【解決手段】紙容器用積層シートは、紙層の一方の面側に、バブリング抑制層、接着層、バリアフィルム層及びシーラント層がこの順に積層し、紙層の他方の面側に熱可塑性樹脂層が積層した紙容器用積層シートであって、バブリング抑制層は、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂で構成されており、樹脂の溶融張力が0.04N以上0.09N以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層の一方の面側に、バブリング抑制層、接着層、バリアフィルム層及びシーラント層がこの順に積層し、前記紙層の他方の面側に熱可塑性樹脂層が積層した紙容器用積層シートであって、
前記バブリング抑制層は、低密度ポリエチレンを含む樹脂で構成されており、
前記バブリング抑制層と前記接着層の膜厚の和が20μm以上40μm以下であり、
前記樹脂の溶融張力が0.04N以上0.09N以下であり、
前記熱可塑性樹脂層は、低密度ポリエチレンで構成されていることを特徴とする紙容器用積層シート。
【請求項2】
前記接着層は、無添加のポリエチレン、接着成分を含むポリエチレン、エチレン―アクリル酸共重合体のいずれかを含んだ樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用積層シート。
【請求項3】
前記バブリング抑制層を構成する樹脂と前記熱可塑性樹脂層を構成している樹脂の溶融張力が等しいことを特徴とする請求項1に記載の紙容器用積層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器用積層シート及びその紙容器用積層シートを用いた紙容器に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料、酒等の液体物や粉体物などを収容する容器には、ビン、缶、ペットボトル等の容器が採用されることが多かった。一方で近年、地球環境保護に対する意識の高まりから、リサイクル性に優れ、環境負荷の少ない紙容器が、飲料、酒、等の内容物を収容する収容体として広く用いられている。
一般に、液体を収容するための液体用紙容器は、内容物の保存性、容器としての強度、ガスバリア性等を確保するために、複数の材料を積層した積層シートからなる包装材料が用いられる。この液体用紙容器に用いられる包装材料(積層シート)としては、容器の外面側から、熱可塑性樹脂層/紙層/接着層/バリア層/シーラント層の順に積層した層構成となったものが知られている。上記接着層には紙層とバリアフィルム層への密着性が良好であるEMAA樹脂が使用されるのが一般的である。
【0003】
このような積層シートを用いた目的とする容器の形状に成形する際、シーラント層を溶融するためにホットエアを当てて加熱する加熱工程を有する。この加熱工程で、ホットエアをシーラント層へ当てた際に、その熱で紙層中に含まれる水分が急激に加熱されて水蒸気となる。そして、この水蒸気の膨張圧力によって、紙層/接着層間を剥離させる発泡現象(バブリング)が発生するおそれがある。接着層に使用するEMAA樹脂は膨張圧力に対する耐性が低いため、バブリングが発生しやすくなってしまう。
上記のようなバブリングが発生すると、それに伴ってシール不良、外観不良が発生する可能性がある。従って積層シートはバブリングが発生しにくいことが求められている。
バブリングを抑制する技術として、従来、特許文献1や特許文献2に記載したような方法が提案されている。
【0004】
特許文献1では、少なくとも、紙層とバリアフィルム層とを溶融押し出し樹脂層を介して積層した紙基材を主体とする積層材料を成形してなる紙容器であって、上記紙層紙基材の接着剤塗布面のJIS P8122の測定法に準拠したサイズ度が400秒以上であって、その接着剤塗布面にウレタン結合を有する2液硬化型接着剤からなる接着剤層を0.5g/m以上4g/m以下の塗布量で塗布形成し、その接着剤層を紙層と溶融押し出し樹脂層の間に介在させるようにして紙層とバリアフィルム層を積層した積層材料を成形してなることを特徴とする紙容器が提案されている。この場合、接着剤層を設けることにより耐熱性向上、または水蒸気膨張の圧力に耐えるだけの強度が付与されてバブリングを抑制することが可能となる。
【0005】
特許文献2では、主体とする厚紙層の一面に少なくとも外層樹脂層をラミネートし、その厚紙層の他面にプラスチック樹脂層等の接着層やバリア層などを介して内層シーラント樹脂層をラミネートした液体包装用の紙製容器材料において、上記外層樹脂層に厚紙層に達する水蒸気透過性の微細な孔設部が設けられていることを特徴とする液体包装用の紙製容器シート材料が提案されている。この方法によれば、外層樹脂層の孔設部がホットエアにて蒸発した水蒸気の逃げ道となって水蒸気による膨張圧力を下げられるため、バブリングを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4577001号公報
【特許文献2】特開2000-203565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、紙層と溶融押し出し樹脂層の間に接着剤層を設けることが必要となる。このため、特許文献1に記載の方法では、材料コスト、工程数が増えることにより製造コストが上がる。
また、特許文献2に記載の方法では、孔設部を設ける工程を要し、工程数が増えてしまうため、さらなる工程の簡略化が求められている。また、特許文献2に記載の方法では、紙容器の使用時に、空気中の水分や臭気などが細孔を介して紙層へ入り込むおそれもある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、製造の工程数の増加を抑えつつ容器成形時のホットエア(加熱)によるバブリングを抑制することが可能な紙容器用積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の紙容器用積層シートは、紙層の一方の面側に、バブリング抑制層、接着層、バリアフィルム層及びシーラント層がこの順に積層し、上記紙層の他方の面側に熱可塑性樹脂層が積層した紙容器用積層シートであって、上記バブリング抑制層は、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂で構成されており、上記樹脂の溶融張力が0.04N以上0.09N以下である。
【0009】
また、上記紙容器用積層シートは、上記バブリング抑制層と上記接着層の膜厚の和が20μm以上40μm以下で、且つ上記バブリング抑制層の厚みが10μm以上35μm以下で、且つ上記接着層の厚みが5μm以上10μm以下であってもよい。
また、上記紙容器用積層シートは、上記接着層と上記バリアフィルム層のラミネート強度が2N/15mm以上であってもよい。
また、上記紙容器用積層シートは、上記接着層は、無添加のポリエチレン、接着成分を含むポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体のいずれかを含んだ樹脂で構成されてもよい。
【0010】
また、上記紙容器用積層シートは、上記バリアフィルム層が、以下の(1)から(3)の中から選ばれるいずれかのフィルムであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の紙容器用積層シートである。
(1)金属の蒸着膜を設けたPETフィルム
(2)無機酸化物の蒸着膜を設けたPETフィルム
(3)アルミニウム箔とPETフィルムの積層フィルム
また、本発明の一態様の紙容器は、上記紙容器用積層シートを容器形状に成形してなる。
また、上記紙容器は、上記紙容器の形状が、ゲーゲルトップ型形状、カップ形状、又は円筒形状のいずれかの形状であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、製造の工程数の増加を抑えつつ容器成形時のホットエアによるバブリングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に基づく一実施形態に係る紙容器用積層シートの構成例を説明する断面模式図である。
図2】本発明に基づく一実施形態に係る紙容器製造の工程例を示す図である。
図3】本発明に基づく一実施形態に係る紙容器用積層シートの製造例を説明する概念図である。
図4】本発明に基づく一実施形態に係る紙容器の製造工程の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易に知るために適宜誇張して示している。また、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(紙容器用積層シート)
図1は、本発明に基づく一実施形態に係る紙容器用積層シートの構成例を説明する断面模式図である。本実施形態の紙容器用積層シート10は、紙層2の一方の面側にバブリング抑制層3、接着層4、バリアフィルム層5及びシーラント層6がこの順に積層されており、紙層2の他方の面側に熱可塑性樹脂層1が積層された構造を有している。
【0014】
次に、紙容器用積層シート10を構成する各層について個別に説明する。
(紙層2)
紙層2は、主に容器の成形性や剛性を付与するための層である。紙層2としては、例えば、表面処理されたコート紙や、処理されていないノーコート紙が例示できる。紙層2には、紙容器に用いられている公知の紙材を用いればよい。
紙層2の紙坪量は、例えば200g/m以上500g/m以下が好ましいが、容器サイズに合わせて適宜選択すればよい。
ここで、紙層2の表面に対し、熱可塑性樹脂層1やバブリング抑制層3との接着性を向上させるために、適宜コロナ処理などの表面処理が施されていることが好ましい。
【0015】
(バブリング抑制層3)
バブリング抑制層3はバブリングを抑制するために設ける層である。バブリング抑制層3に選択される樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはそれらを含む樹脂が挙げられる。バブリング抑制層3に選択される材料は、紙層2への密着性が良好であり、押出加工がしやすく、コストが安価であるものが好ましいが、ポリエチレンは後述する接着層4に使用する樹脂と共押出しやすく、密着性も良好なため、加工性に優れながら良好な接着強度を得ることができる。また、紙層2に対する密着性も優れる。ポリエチレン以外の樹脂を使用した場合は紙層2と接着層4への密着性を両立するのが困難となり、どちらかの界面において十分な接着強度を得ることができずデラミ等が生じる原因となりうる。
【0016】
バブリング抑制層3には溶融張力が0.04N以上0.09N以下の範囲のポリエチレン樹脂を使用する。紙層に隣接するバブリング抑制層3に上記範囲の溶融張力を有する樹脂を配置すると、紙中水分の蒸気による膨張圧力への耐性が上がり、バブリングを抑制する効果が得られる。このとき溶融張力が0.09Nより大きい場合、紙層2との密着性が低下し、層間剥離が起きるやすくなるため、容易にバブリングが発生してしまう。また、溶融張力が0.04Nよりも小さい場合、樹脂の粘り強さがなく、蒸気の膨張圧力への耐性が得られなくなる。
【0017】
なお溶融張力は、キャピラリー式レオメーター(NETZSCH社製 Rosand RH-7D)を用いて、測定温度:200℃、ピストン速度:20mm/min、引取速度:10m/minでの測定したときの数値である。
バブリング抑制層3の厚さは、10μm以上35μm以下で使用することが好ましい。
紙層2や接着層4の接着性を保持させる上で、10μm以下では接着性が低下しデラミが発生する可能性がある。35μm以上では容器成形時の際に罫線が入りにくいなど容器成形工程の際に不具合が発生する。
【0018】
バブリング抑制層3の積層方法としては、押出コーティング法や、後述する接着層4と共押出ラミネート法にてバリアフィルム層5を積層する方法が挙げられる。なお、接着層4と共押出ラミネートする場合、一挙に複数の層を積層することが可能となり、製造工程を簡略化することができるため、積層方法としてより好ましい。
接着層4を単層構成にて押出コーティングする場合は、接着性を向上させるためにバブリング抑制層3に適宜コロナ処理を実施することが可能である。
【0019】
(接着層4)
接着層4は、バブリング抑制層3の一方の面側に、後述するバリアフィルム層5を接着するために設けられる。
接着層4とバリアフィルム層5のラミネート強度は2N/15mm以上であることが好ましい。ラミネート強度が2N/15mm以上であれば、容器に液体を入れた際にシール不良による液漏れを防止することができる。
接着層4は、上述の通りバリアフィルム層への接着性に加え、バブリング抑制層3との接着性を有する熱可塑性樹脂であれば、特に制限されない。
熱可塑性樹脂を使用するのは、バブリング抑制層3と共押出ラミネート法によって、少ない工程数で積層することが可能となるためである。
【0020】
接着層4を構成する熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-αオレフィンの共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などのエチレン-不飽和カルボン酸又はそのエステル化合物との共重合体、アイオノマー樹脂などが挙げられる。中でもバブリング抑制層3を構成する低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンとの密着性が良好な無添加のポリエチレン、接着成分を含むポリエチレン、エチレン-アクリル酸共重合体などがより好ましい。
【0021】
バブリング抑制層3と接着層4の膜厚の和は20μm以上40μm以下とすることが好ましい。バブリング抑制層3と接着層4の膜厚の和が20μmよりも薄い場合には、ホットエアによる加熱の際に、バブリング発生箇所である紙までの伝熱が早くなるため、バブリングが発生しやすくなる。バブリング抑制層3と接着層4の膜厚の和が40μmより厚い場合には、容器成形のための罫線が入りにくくなるなどの不具合が生じやすくなる。
接着層4の厚さは、5μm以上10μm以下とするのが好ましい。5μmより薄い場合、バブリング抑制層3とバリアフィルム層5に対する接着性が低下し、デラミが発生しやすくなる。接着層4の厚さが10μmよりも厚い場合には、バブリング抑制層3と接着層4の膜厚の和を前述した好ましい範囲に設計した際に、バブリング抑制層3の厚みを十分に確保できなくなる。
【0022】
接着層4の積層方法としては、バブリング抑制層3とバリアフィルム層5の間に溶融状態でサンドイッチする押出ラミネート法など公知の方法が挙げられる。また、バブリング抑制層3と接着層4を共押出し、紙層2とバリアフィルム層5の間に溶融状態でサンドイッチする共押出ラミネート法を適用することができる。2層共押出ラミネート法であれば、バリアフィルム層3の積層と接着層4の積層を同時に行うことができ、工程を省略できるため、より好ましい。
【0023】
(バリアフィルム層5)
バリアフィルム層5は、容器にガスバリア性を持たせるために設ける。バリアフィルム層5には、例えば、2軸延伸のポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂等の基材フィルム等にシリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機物を蒸着したフィルムが使用できる。そして、この基材フィルムの厚さは5~30μm程度が適当である。また、蒸着膜自体の厚さは、必要とするガスバリア性を発現するのに十分な厚さに蒸着されていればよく、例えばシリカを蒸着する場合は30~200nm程度が好ましい。
【0024】
また、バリアフィルム層5はアルミニウム箔と上述の基材フィルムをドライラミネート法にて接着して作製してもよい。
バリアフィルム層5は接着層4やシーラント層6と積層させる際には接着性を向上させるために表面に適宜コロナ処理を実施することができる。
バリアフィルム層5としては、以下の(1)から(3)の中から選ばれるいずれかのフィルムであることが好ましい。
(1)金属の蒸着膜を設けたPETフィルム
(2)無機酸化物の蒸着膜を設けたPETフィルム
(3)アルミニウム箔とPETフィルムの積層フィルム
ここで、上記の「設けた」とは、PETフィルムの片面に設ける場合だけではなく、両面に設ける場合も含まれる。
【0025】
(シーラント層6)
シーラント層6は、一般的にシーラント層として使用されている樹脂を用いることができる。シーラント層6を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィンの共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン等が挙げられる。シーラント層6は、これらの樹脂を単層、又は複数組み合わせた多層として使用することもできる。
【0026】
シーラント層6の厚さは、容器成形時に十分なシール性を有していれば特に限定されず、公知の厚みを用いることができる。シーラント層6の厚さは、例えば、30μm以上100μm以下が適当である。
シーラント層6の積層方法は特に限定されないが、フィルム製膜後にウレタン結合を有する2液硬化型接着剤を用いたドライラミネート法や、溶融状態でバリアフィルム層5に積層する押出コーティング法が一般的である。押出コーティングについては、バリアフィルム層5との密着性を高めるために、予めバリアフィルム層5に接着剤を塗布し、その後溶融状態のシーラント層6を積層してもよい。
【0027】
(熱可塑性樹脂層1)
熱可塑性樹脂層1は、容器成型後の最外層となる層であり、紙層の保護や印刷を行うために設ける。熱可塑性樹脂層1に求められる性質として、積層シートを角形或いは丸形等の各種容器形態に成形する際に熱可塑性樹脂層どうしを熱融着するためのヒートシール性や印刷適性など有する必要がある。
熱可塑性樹脂層1に選択される樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィンの共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂などのエチレン-不飽和カルボン酸又はそのエステル化合物との共重合体などが挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂層1の厚さは、紙容器の熱可塑性樹脂層に用いられている公知の厚さを適用することができる。熱可塑性樹脂層1の厚さは、容器成形時に熱可塑性樹脂層同士を熱
融着し、容器成形後に落下等の衝撃に耐えるのに最低限必要な厚さを有していれば良い。熱可塑性樹脂層1の厚さは、一般的には10μm以上30μm以下とされる。
熱可塑性樹脂層1の積層には、溶融状態で紙層に積層する押出コーティング法を用いることができる。ドライラミネート法を用いた場合、ホットエア加熱時に、接着剤の層が紙層2にて発生した水蒸気の逃げ道を塞いでしまい、紙層2中の内部圧力が高まりやすくなり、バブリングが発生しやすくなってしまうため好ましくない。
紙層2に対して各層を積層する順番は特に限定されず、先に熱可塑性樹脂層1を積層したのちに、バブリング抑制層3の積層を実施しても、その逆の順で積層しても良い。
熱可塑性樹脂層1の表面に対し、必要に応じてコロナ処理などの表面処理を施し、印刷を行うことができる。
【0029】
(紙容器)
図2は、本発明に基づく一実施形態に係る紙容器製造の工程例を示す図である。紙容器は、上記実施形態で説明した紙容器用積層シート10を用いて成形される。紙容器用積層シート10から目的の容器形状からなる紙容器を製造する製造工程20には、図2に示すように、加熱工程20Aと、成型工程20Bとを有する。
加熱工程20Aは、紙容器の内側となる紙容器用積層シート10のシーラント層6側、および紙容器の外側となる紙容器用積層シート10の熱可塑性樹脂層1側の両側から熱を加えて、シーラント層6と熱可塑性樹脂層1を一時的に溶融状態とする処理を行う工程である。
加熱工程20Aによる加熱処理は、例えば、温度340℃の温風(ホットエア)を、1秒間吹き付けることで実行する。
成形工程20Bでは、加熱工程20Aを経て一時的に溶融状態となったシーラント層6と熱可塑性樹脂層1に対し、荷重をかけてシールすると同時に立体的に容器形状に成形する工程である。
加熱工程20A、成型工程20Bは、まず容器底部に対して実施する。容器底部成型の後に内容物充填を実施し、その後容器上部の密封、成型を行うために再度、加熱工程20A、成型工程20Bを実施する。
【0030】
(製造工程例)
本実施形態の紙容器用積層シート及び紙容器の製造方法の一例を示す。図3は、本発明に基づく一実施形態に係る紙容器用積層シートの製造例を説明する概念図である。図4は、本発明に基づく一実施形態に係る紙容器の製造工程の一例を説明する図である。
【0031】
<紙容器用積層シート10の製造例>
まず、図3(a)のように、予め接着剤を塗工したバリアフィルム層5に対し、シーラント層6を構成する樹脂を押出コーティング法によって積層した積層シート(5,6)を製造する。
次に、図3(b)のように、上記の製造した積層シート(5,6)と紙層2に対して、バブリング抑制層3と接着層4の共押出ラミネートを行い、積層シート(2~6)を製造する。
次に、図3(c)のように、上記の製造した積層シート(2~6)と熱可塑性樹脂層1とを押出成形によって積層して、順次、紙容器用積層シート10とし、その紙容器用積層シート10をロール状とする。
【0032】
<紙容器の製造例>
図4(a)のように、製造した紙容器用積層シート10からシート状にカットして、図4(b)のようなブランク材を得る(打ち抜き工程)。
次に、図4(c)のように、組み立てやすいように、ブランク材に折り目を付ける罫線工程を行う。
次に、図4(d)のように、筒状に成形する。
次に、図4(e)のように、筒状とした成形品における底部側のシーラント層6側(内面)および熱可塑性樹脂1側(外面)をホットエアにて加熱し(加熱工程20A)、シールすることで容器の底部を閉塞する成形処理を実行する。(成形工程20B)
次に、図4(f)のように、トップ側から内容物を充填する(充填工程)。
次に、図4(g)のように、トップ側のシーラント層6側の面(内面)および熱可塑性樹脂1側(外面)をホットエアにて加熱し(加熱工程20A)、シールすることで容器のトップ部を閉塞する成形処理を実行する。(成形工程20B)
【0033】
[実施例1]
シーラント層6として予め片面にコロナ処理を施したLDPEフィルム(厚み55μm)と、バリアフィルム層5として片面にシリカ蒸着、反対側の面にコロナ処理を施したPETフィルム(厚み12μm)を用意し、シリカ蒸着面とLDPEフィルムのコロナ処理面を、ウレタン系接着剤を用いてドライラミネート法にて積層し、バリアフィルム層5/シーラント層6の積層シートを作製した。また、バリアフィルム層5/シーラント層6の積層シートにおけるバリアフィルム層5側に露出しているPET面に対してコロナ処理を行った。
【0034】
紙層2として坪量380g/mのノーコート紙を用意し、紙層2の両面にコロナ処理を行った後に、紙基材の片面にタンデム押出機のうち第一のTダイからLDPE(旭化成(株)製サンテックL2340)を18μmの厚みで押出コーティングし、紙層2の上に熱可塑性樹脂層1を積層した。続いて紙基材の熱可塑性樹脂層1を形成した面の反対面と、バリアフィルム層5/シーラント層6の積層フィルムのPETフィルム面に対して、第二のTダイからバブリング抑制層3としてLDPE(旭化成(株)製 L2340、溶融張力0.08N、厚み20μm)と接着層4としてEMAA(三井デュポンポリケミカル(株)製 AN4228C、厚み10μm)を共押出してサンドラミネートを行い、積層シートを作製した。
【0035】
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)(1)/紙(坪量380g/m)(2)/LDPE(L2340、溶融張力0.08N、厚み20μm)(3)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)(4)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)(5)/LDPE(厚み55μm)(6)である。(図1参照)。
【0036】
[実施例2]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂をLDPE(旭化成(株)製 L1640、溶融張力0.05N)に変更した以外は実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、L2340(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(L1640、溶融張力0.05N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0037】
[実施例3]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂を、LDPE(旭化成(株)製 LC500、溶融張力0.04N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(LC500、溶融張力0.04N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0038】
[実施例4]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂をLDPE(旭化成(株)製 M2629 溶融張力0.09N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(M2629、溶融張力0.09N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、溶融張力0.02N、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0039】
[実施例5]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂をLDPE(日本ポリエチレン(株)製 LC522 溶融張力0.09N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(LC522、溶融張力0.09N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、溶融張力0.02N、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0040】
[比較例1]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂をEMAA(三井デュポンポリケミカル(株)製
AN4228C 溶融張力0.02N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/EMAA(AN4228C、溶融張力0.02N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、溶融張力0.02N、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0041】
[比較例2]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂をLDPE(旭化成(株)製 L6810、溶融張力0.03N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(L6810、溶融張力0.03N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0042】
[比較例3]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂を、LDPE(旭化成(株)製 M6520、溶融張力0.007N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/LDPE(M6520、溶融張力0.007N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
【0043】
[比較例4]
実施例1のバブリング抑制層3の樹脂を、PP(日本ポリプロ(株)製 MFX3、溶融張力0.007N)に変更した以外は、実施例1と同様に積層シートを作製した。
得られた積層シートの構成は、LDPE(L2340、厚み18μm)/紙(坪量380g/m)/PP(MFX3、溶融張力0.16N、厚み20μm)/EMAA(AN4228C、厚み10μm)/シリカ蒸着PETフィルム(厚み12μm)/LDPE(厚み55μm)である。
上記で作製した実施例1~5および比較例1~4についてバブリング耐性を評価した結果を表1に示した。
【0044】
[評価方法]
シーラント層6側からヒートガン7((株)高儀製 アースマンHG-1450B)にて240℃のホットエアを2cmの距離をあけて噴射したときにバブリングが発生した時間を測定した。比較例1のEMAAのバブリング発生時間を基準とし、バブリング発生までの時間が長ければ○、短ければ×と判定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されたように、バブリング抑制層3に溶融張力0.04~0.09Nの樹脂を使用することで、バブリング発生時間が遅くなっていることが確認され、バブリング耐性が改善されることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0047】
1…熱可塑性樹脂層
2…紙層
3…バブリング抑制層
4…接着層
5…バリアフィルム層
6…シーラント層
10…紙容器用積層シート
図1
図2
図3
図4