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特開2024-161325親和性成熟したMICA抗体及びその応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161325
(43)【公開日】2024-11-18
(54)【発明の名称】親和性成熟したMICA抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20241111BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241111BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241111BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20241111BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241111BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241111BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241111BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241111BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/30
C07K16/46
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
G01N33/53 D
G01N33/531 A
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074931
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】202310509684.7
(32)【優先日】2023-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523346629
【氏名又は名称】ヘーフェイ ティージー イミュノファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】カオ グオシュアイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン イン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヤンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ユーウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】親和性成熟したMICA抗体及びその応用に関し、より具体的に、抗体またはその抗原結合断片、核酸分子、発現ベクター、抗体またはその抗原結合断片の調製方法、組換え細胞、組成物及びその使用と薬物及びその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、抗体またはその抗原結合断片及びその使用を提出する。前記抗体またはその抗原結合断片は、特定の配列、または前記特定の配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す重鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列と、特定の配列、または前記特定の配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す軽鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列を含む。前記抗体またはその抗原結合断片は、高親和性でヒト及びサルのMICAタンパク質と結合でき、PBMC(ヒト末梢血単核細胞)による腫瘍の殺傷を促進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその抗原結合断片であって、
それぞれSEQ ID NO:1、2及び3またはSEQ ID NO:1、2及び3と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す重鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列と、
それぞれSEQ ID NO:4、5及び6またはSEQ ID NO:4、5及び6と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す軽鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列と、を含む、ことを特徴とする抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
SEQ ID NO:1で示す重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO:2で示す重鎖可変領域CDR2、SEQ ID NO:3で示す重鎖可変領域CDR3、SEQ ID NO:4で示す軽鎖可変領域CDR1、SEQ ID NO:5で示す軽鎖可変領域CDR2、及びSEQ ID NO:6で示す軽鎖可変領域CDR3を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片はMICAを特異的に識別する、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示される、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体は、ヒト化抗体である、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片は重鎖骨格領域配列と軽鎖骨格領域配列を含み、前記重鎖骨格領域配列と軽鎖骨格領域配列の少なくとも1つの少なくとも一部は、マウス由来抗体、ヒト由来抗体、霊長目由来抗体またはその変異体の少なくとも1つに由来する、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合断片は重鎖定常領域と軽鎖定常領域の少なくとも1つを含み、前記重鎖定常領域と軽鎖定常領域の少なくとも1つの少なくとも一部は、ヒト由来抗体、霊長目由来抗体及びマウス由来抗体またはその変異体のうちの少なくとも1つに由来し、
選択可能に、前記軽鎖定常領域と重鎖定常領域はいずれもマウス由来IgG1抗体、IgG2a抗体またはその変異体、またはヒト由来IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体またはその変異体に由来する、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合断片は一本鎖抗体、多量体抗体、CDR移植抗体、Fab抗体、Fv抗体のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
核酸分子であって、前記核酸分子は請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする、ことを特徴とする核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を担持する、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の調製方法であって、
前記抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸分子を担持する発現ベクターを細胞に導入するステップと、
前記細胞をタンパク質発現と分泌に適する条件下で培養し、前記抗体またはその抗原結合断片を取得するステップとを含み、
選択可能に、前記細胞は原核細胞または真核細胞であり、
選択可能に、前記細胞は真核細胞である、ことを特徴とする調製方法。
【請求項12】
組換え細胞であって、前記組換え細胞は請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を発現する、ことを特徴とする組換え細胞。
【請求項13】
組成物であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、ことを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の、MICA媒介性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の調製における使用。
【請求項15】
前記MICA媒介性疾患は癌であり、
選択可能に、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含み、MICA媒介性疾患を予防及び/又は治療するために使用される、ことを特徴とする薬物。
【請求項17】
前記MICA媒介性疾患は癌であり、
選択可能に、前記癌は肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項16に記載の薬物。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片の、MICAを検出するための試薬キットの調製における使用。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、ことを特徴とする試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗体の分野に関し、具体的に、本発明は、親和性成熟したMICA抗体及びその応用に関し、より具体的に、本発明は、抗体またはその抗原結合断片、核酸分子、発現ベクター、抗体またはその抗原結合断片の調製方法、組換え細胞、組成物及びその使用と薬物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は人類の生存発展に影響を与える重大な疾患であり、最新のデータによると、世界で毎年新たに発生する癌の症例は1900万人程度、毎年死亡する癌の症例は1000万人程度であり、発生率と死亡率は増加傾向にある。
【0003】
外科的切除に加えて、化学療法や放射線療法などの従来のがん治療法は副作用が強く、再発しやすい。近年、腫瘍標的抗体、免疫チェックポイント抗体、二重特異性抗体などの免疫治療は、抗癌の新たなホットスポットと新たな希望となっている。
【0004】
近年、PD-1/L1を代表とする免疫治療は大きな潜在力を示しているが、現在、最も適応症が広く認められているPD-1/L1療法の全体的な応答率が30%であっても、より多くの患者が利益を得られないことを無視できない。免疫チェックポイント分子は、T、NK、単核マクロファージ細胞などを含む免疫細胞の表面に発現される阻害性分子であり、対応するリガンドと結合した後、免疫細胞内に阻害性シグナルを伝達し、免疫細胞の抗癌機能を阻害する。腫瘍、腫瘍がリンパ球に浸潤する免疫チェックポイントがリガンド発現により非常に大きな異質性を有するため、単一種類の免疫チェックポイント阻害療法はすべての患者に適用できず、多くの患者はそこから利益を得ることができなく、他方で、免疫チェックポイント阻害療法を受けた一部の患者は、腫瘍が再発して該免疫チェックポイント阻害療法への耐性が生じ、投与を続けても治療効果が得られなく、また、T細胞は表面のT細胞受容体(TCR)を通じて新生抗原(neo-antigen)、つまり、腫瘍遺伝子が変異した抗原を識別し、一部の腫瘍の遺伝子の変異頻度が低く、新生抗原の種類が少なく、「冷たい腫瘍」と呼ばれる。従来の免疫チェックポイント阻害療法、例えばPD-1/L1療法は、T細胞自体の機能を回復させることで抗癌目的を達成するが、「冷たい腫瘍」では、T細胞は効果的に腫瘍を識別できないため、免疫チェックポイント阻害療法は冷たい腫瘍に有効ではない。
【0005】
NK細胞は他の非常に重要な抗癌免疫細胞である。NK細胞とT細胞が異なる識別メカニズムを有し、その表面には一連の活性化性受容体が発現し、それらは腫瘍の表面に発現するリガンドを識別して結合する。例えば、NK細胞は活性化性受容体NKG2Dにより腫瘍の表面のMICA、MICBなどのリガンドを識別して結合し、活性化して腫瘍細胞を死滅する。
【0006】
MICA、MICB(主要組織適合性複合体I類関連鎖Aと鎖Bポリペプチド)は自己遺伝子によってコードされるタンパク質であり、正常組織、細胞では発現しなく、細胞が悪性転移して腫瘍細胞になると、MICA、MICBは腫瘍細胞の表面を発現する。NK細胞はNKG2D-MICA/B相互作用によって腫瘍を識別して殺傷する。
【0007】
腫瘍は、様々なメカニズムで細胞表面のMICA/B発現を低下させ、マトリックスメタロプロテアーゼを介したMICA/B脱落を含む。MICA/BはI型貫通タンパク質であり、その細胞外セグメントはα1、α2、α3の3つのドメインを含み、α1、α2ドメインによりNKG2Dと結合する。マトリックスメタロプロテアーゼの作用下で、MICA/Bの細胞外セグメントのほとんどのアミノ酸(α1、α2ドメイン及びα3ドメインの一部を含む)は腫瘍細胞の表面から脱落する。NKG2Dは細胞の表面に残留される一部のα3ドメインを結合することができなく、このため、腫瘍はNK細胞の免疫モニタリングを逃れることができる。
【0008】
研究によると、α3ドメインと結合するMICA抗体は腫瘍の表面からのMICAの脱落を阻害し、さらにNKG2D-MICA/Bを介したNK細胞の識別を促進し、腫瘍の免疫逃れを阻害する。現在まで、1種類のMICAモノクローナル抗体薬物だけがI期臨床段階(CLN-619)に入っているため、標的となるMICAのモノクローナル抗体薬物を開発することは腫瘍の治療に重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に存在している技術的問題の少なくとも1つを少なくともある程度で解決する。
【0010】
本願は、発明者による以下の問題と事実の発見に基づいて提出される。
【0011】
MICAはほとんどの人の正常組織では発現せず、卵巣、睾丸などの組織でのみ低発現し、腫瘍組織では広く高発現しており、これは、MICAが非常に潜在力がある腫瘍治療の標的となっている。ここまで、CLN-619という臨床試験段階にあるMICAモノクローナル抗体は1種類しかありなく、なお、GenentechもMICA抗体(本特許では1D5V11はGenentechの特許に由来)を開発した。以上のように、MICAは潜在力がある治療標的であり、標的となるMICAのモノクローナル抗体薬物を開発することは非常に価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明の第1の態様では、本発明は、抗体またはその抗原結合断片を提出する。本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3またはSEQ ID NO:1、2及び3と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す重鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列、及びそれぞれSEQ ID NO:4、5及び6またはSEQ ID NO:4、5及び6と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列で示す軽鎖可変領域CDR1、CDR2、CDR3配列を含む。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記抗体または抗原結合断片は高い親和性でMICAと結合することができる。
【0014】
本発明の実施例によれば、前記抗体または抗原結合断片は、以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0015】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:1で示す重鎖可変領域CDR1配列、SEQ ID NO:2で示す重鎖可変領域CDR2、SEQ ID NO:3で示す重鎖可変領域CDR3、SEQ ID NO:4で示す軽鎖可変領域CDR1、SEQ ID NO:5で示す軽鎖可変領域CDR2、及びSEQ ID NO:6で示す軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片はMICAを特異的に識別する。
【0017】
本発明の実施例によれば、前記抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7で示され、且つ前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8で示される。
【0018】
本発明の実施例によれば、前記抗体は、ヒト化抗体である。
【0019】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は重鎖骨格領域配列と軽鎖骨格領域配列を含み、前記重鎖骨格領域配列と軽鎖骨格領域配列の少なくとも1つの少なくとも一部はマウス由来抗体、ヒト由来抗体、霊長目由来抗体またはその変異体の少なくとも1つに由来する。
【0020】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は重鎖定常領域と軽鎖定常領域の少なくとも1つを含み、前記重鎖定常領域と軽鎖定常領域の少なくとも1つの少なくとも一部はヒト由来抗体、霊長目由来抗体及びマウス由来抗体またはその変異体のうちの少なくとも1つに由来する。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記軽鎖定常領域と重鎖定常領域はいずれもマウス由来IgG1抗体、IgG2a抗体またはその変異体またはヒト由来IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体またはその変異体に由来する。
【0022】
本発明の実施例によれば、前記抗体またはその抗原結合断片は一本鎖抗体、多量体抗体、CDR移植抗体、Fab抗体、Fv抗体のうちの少なくとも1つである。
【0023】
本発明の第2の態様では、本発明は核酸分子を提出する。本発明の実施例によれば、前記核酸分子は第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする。
【0024】
説明する必要がある点として、本発明の明細書と請求の範囲に言及された核酸に対して、当業者は相補的な二本鎖のいずれか、または2本を含むことを理解すべきである。便宜のため、本明細書と請求の範囲では、ほとんどの場合で一本鎖しか示されていないが、実際にはそれと相補的なもう一つの鎖も公開されている。また、本願における核酸配列はDNA形式またはRNA形式を含み、一方を公開することは、他方も公開されることを意味する。
【0025】
本発明の第3の態様では、本発明は、発現ベクターを提出する。本発明の実施例によれば、前記発現ベクターは第2の態様に記載の核酸分子を担持する。前記発現ベクターは、前記核酸分子に操作可能に接続される選択可能な制御配列を含むことができる。前記制御配列は、宿主における前記核酸分子の発現を指導できる1つまたは複数の制御配列である。本発明の実施例で提出された発現ベクターは適切な宿主細胞で前記抗体または抗原結合断片を効率よく大量で発現することができる。
【0026】
本発明の実施例で提出された発現ベクターは適切な受容体細胞で前述した抗体またはその抗原結合断片を効率よく発現することができ、本発明で設計された抗体またはその抗原結合断片はより強い特異性及びより高い安全性を有する。
【0027】
本発明の第4の態様では、本発明は、上記抗体またはその抗原結合断片の調製方法を提出する。本発明の実施例によれば、前記方法は、第3の態様に記載の発現ベクターを細胞に引き入れ、前記細胞はタンパク質の発現と分泌に適する条件で培養し、前記抗体またはその抗原結合断片を得る。
【0028】
発明者らは、本発明の実施例によって調製された抗体またはその抗原結合断片は高純度の抗体またはその抗原結合断片をより効率よく培養することができ、且つ操作ステップが簡単で、コストが低いと発見した。
【0029】
本発明の幾つかの具体的な実施形態によれば、前記細胞は特に制限されず、原核細胞でも、真核細胞でも使用できる。
【0030】
本発明の幾つかの具体的な実施形態によれば、前記細胞は真核細胞である。
【0031】
本発明の幾つかの具体的な実施形態によれば、前記真核細胞は哺乳動物細胞である。本発明の幾つかの具体的な実施例によれば、前記細胞は真核細胞、例えば哺乳動物細胞である場合、前記組換え抗体の発現効率は高い。
【0032】
本発明の第5の態様では、本発明は、組換え細胞を提出する。本発明の実施例によれば、前記組換え細胞は第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片を発現し、第2の態様に記載の核酸分子または第3の態様に記載の発現ベクターを担持する。前記組換え細胞は前記発現ベクターをトランスフェクションまたは形質転換することによって得られる。本発明の幾つかの具体的な実施形態によれば、前記組換え細胞は適切な条件で上記抗体または抗原結合断片を効率よく大量で発現することができる。
【0033】
本発明の幾つかの具体的な実施例によれば、前記組換え細胞は適切な条件で抗体またはその抗原結合断片を効率よく大量で発現することができ、前記抗体またはその抗原結合断片はより強い特異性、より長い半減期及びより高い効力を有し、少ない投与量で、抗体薬物を標的細胞に送達することができ、MICA媒介性疾患の有効な治療または予防を実現し、その毒副作用が低く、より高い安全性を有する。
【0034】
注意する必要がある点として、本発明の前記組換え細胞は特に制限されず、原核細胞、真核細胞またはバクテリオファージであってもよい。前記原核細胞は大腸菌、枯草菌、ストレプトコッカスまたはグロテスク変形菌などであってもよい。前記真核細胞はピキア・パスツール、出芽酵母、分裂酵母、トリコデルマなどの真菌、ツマジロクサヨトウなどの昆虫細胞、タバコなどの植物細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、骨髄腫細胞などの哺乳動物細胞を含む。幾つかの実施例において、本発明に記載の組換え細胞は、哺乳動物細胞が好ましく、BHK細胞、CHO細胞、NSO細胞またはCOS細胞を含み、且つ動物生殖細胞、受精卵または胚胎幹細胞を含まない。
【0035】
説明する必要がある点として、本願の明細書に記載の「適切な条件」とは、本願に記載の抗体または抗原結合断片の発現に適する条件を指す。当業者として、抗体または抗原結合断片の発現に適する条件は、適切な形質転換またはトランスフェクション方式、適切な形質転換またはトランスフェクション条件、健康な宿主細胞状態、適切な宿主細胞密度、適切な細胞培養環境、適切な細胞培養時間を含むが、これらに制限されないことを容易に理解できる。「適切な条件」は特に制限されず、当業者は、実験室の具体的な環境に応じて、最適な前記抗体または抗原結合断片の発現の条件を最適化することができる。
【0036】
本発明の第6の態様では、本発明は組成物を提出する。本発明の実施例によれば、前記組成物は、第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクターまたは第5の態様に記載の組換え細胞を含む。
【0037】
以上のように、本発明の幾つかの具体的な実施形態による前記抗体または抗原結合断片は、ヒトMICAタンパク質と効果的に結合して腫瘍細胞の増殖を効果的に阻害することができるため、上記物質を含む組成物は同様にヒトMICAタンパク質と効果的に結合することができ、MICA媒介性疾患を予防及び/又は治療する良好的な効果があり、前記組成物の種類は、特に制限されず、食品組成物または薬物組成物であってもよい。
【0038】
本発明の組成物は、互いに組み合わせ、または1種または多種の他の治療化合物と組み合わせて投与してもよく、例えば、化学療法剤と組み合わせて投与してもよい。このため、前記組成物は化学療法剤を含んでもよい。本発明の抗体またはその抗原結合断片、核酸分子、発現ベクターまたは組換え細胞は、第2の治療剤と組み合わせてもよく、前記第2の治療剤の例示的な試薬は、MICA活性を阻害する他の試薬(他の抗体またはその抗原結合断片、ペプチド阻害剤、小分子拮抗薬等を含む)及び/又はMICA上流または下流シグナル伝達に干渉する試薬を含むが、これらに制限されない。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記組成物は、共同で機能して本発明の目的を実現できる限り、時間及び/又は空間的に分離された組み合わせを含む。例えば、前記組成物に含まれる成分は、全体として被験者に投与してもよいし、または別々に被験者に投与してもよい。前記組成物に含まれる成分は別々に被験者に投与されると、各成分は同時または順に被験者に投与されることができる。
【0040】
通常、前記抗体またはその抗原結合断片を、有効量、即ち所望の治療及び/又は予防効果を実現するのに十分な量、例えば、治療対象の疾患に関連する症状の予防または緩和を引き起こす量で投与する。前記疾患は、例えばMICAに関連する疾患である。被験者に投与される組成物の有効量は疾患のタイプと重症度、及び一般的な健康状態、年齢、性別、体重及び薬物に対する耐性などの個体の特徴に依存し、疾患の重症度及びタイプにも依存し、当業者はこれらの要素などに応じて適切な投与量を決定することができる。
【0041】
本発明の実施例によれば、本発明の組成物は生体内に進入した後、抗体またはその抗原結合断片、核酸分子、発現ベクター及び組換え細胞と同様な治療効果を達成することができる。
【0042】
本発明の第7の態様では、本発明は第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクター、第5の態様に記載の組換え細胞または第6の態様に記載の組成物の、薬物の調製における使用を提出する。本発明の実施例によれば、前記薬物はMICA媒介性疾患を予防及び/又は治療するために使用される。以上のように、本発明の幾つかの具体的な実施形態に記載の抗体または抗原結合断片はヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、有効量の前記抗体または抗原結合断片またはその一連の物質を含む薬物は同様に効果的にヒトMICAタンパク質と結合でき、MICA媒介性疾患、例えば癌を予防及び/又は治療する良好な効果がある。
【0043】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性疾患は癌である。
【0044】
本発明の実施例によれば、前記癌は肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つである。
【0045】
本発明の第8の態様では、本発明は、薬物を提出する。本発明の実施例によれば、前記薬物は、第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクター、第5の態様に記載の組換え細胞または第6の態様に記載の組成物を含み、前記薬物はMICA媒介性疾患を予防及び/又は治療するために使用される。
【0046】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性疾患は癌である。
【0047】
本発明の実施例によれば、前記疾患は肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つである。
【0048】
本発明の実施例によれば、前記薬物は薬学的に許容できる担体を含んでもよい。
【0049】
本発明に記載の抗体または抗原結合断片の有効量は投与パターンや治療対象の疾患の重症度などによって変化することができる。好ましい有効量の選択は、当業者が様々な要素に応じて(例えば臨床試験により)決定することができる。前記要素は、バイオアベイラビリティ、代謝、半減期などの前記活性成分的薬物動態パラメータ、患者が治療しようとする疾患の重症度、患者の体重、患者の免疫状况、投与の経路などを含むが、これらに制限されない。例えば、治療状況の切実な要求により、1日に何回かに分けて投与したり、投与量を比例的に減少させたりすることができる。
【0050】
本発明の第9の態様では、本発明は第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクターまたは第5の態様に記載の組換え細胞の、試薬キットの調製における使用を提出する。本発明の実施例によれば、前記試薬キットはMICAを検出するために使用される。以上のように、本発明の幾つかの具体的な実施形態による抗体または抗原結合断片は、ヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、前記抗体または抗原結合断片は、MICAタンパク質を検出する試薬キットを調製するために使用でき、前記試薬キットは、ヒトMICAタンパク質を効果的に定性的または定量的に検出することができる。
【0051】
本発明の実施例によれば、前記試薬キットはMICAをより効率よく、正確に検出し、臨床治療のために時間と探索コストを節約する。
【0052】
本発明の第10の態様では、本発明は、試薬キットを提出する。本発明の実施例によれば、前記試薬キットは第1の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクターまたは第5の態様に記載の組換え細胞を含む。
【0053】
以上のように、本発明の幾つかの具体的な実施形態による抗体または抗原結合断片はヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、前記抗体または抗原結合断片を含む試薬キットは、ヒトMICAタンパク質を定性的または定量的に効果的に検出することができる。本発明による試薬キットは、例えば免疫印影、免疫沈殿など、ヒトMICAタンパク質と抗体の特異的結合性を利用して検出する試薬キットなどに用いられることができる。これらの試薬キットは、拮抗薬、抗MICA抗体または薬物参照材料、タンパク質精製カラム、免疫グロブリン親和性精製緩衝剤、細胞の測定希釈剤、明細書や文献などの任意の1種または多種を含むことができる。抗MICA抗体は、異なるタイプの診断テストに用いることができ、例えば体外または体内で様々な疾患または薬物、毒素または他のタンパク質などの存在を検出することができ、例えば被験者の血清または血液を検出することによって、関連する疾患をテストするために用いられることができ、前記試薬キットを利用して被検体中のヒトMICAタンパク質を検出する科学研究も可能である。このような関連疾患は、MICA関連疾患、例えば癌を含むことができる。無論、本文で提供された抗体または抗原結合断片は、上記疾患の放射線免疫検査や放射免疫治療などにも用いることができる。上記の応用シーンの場合、前記結合分子は同様に適用できるが、ここで繰り返して説明しない。
【0054】
本発明の幾つかの具体的な実施例によれば、前記試薬キットは、MICAを検出するための従来のコーティング液などを含むこともできる。
【0055】
本発明の第11の態様では、本発明は、MICA媒介性の関連疾患を治療または予防する方法を提出する。本発明の実施例によれば、前記方法は、被験者に1)第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、2)第2の態様に記載の核酸分子、3)第3の態様に記載の発現ベクター、4)第5の態様に記載の組換え細胞、5)第6の態様に記載の組成物、及び6)第8の態様に記載の薬物のうちの少なくとも1つを投与するステップを含む。以上のように、前記抗体または抗原結合断片はヒトMICAタンパク質と結合でき、MICA媒介性の関連疾患、好ましくは癌を効果的に治療または予防することができるため、本発明の実施例による方法は、MICA媒介性の関連疾患を効果的に治療または予防することができる。
【0056】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0057】
本発明の第12の態様では、本発明は、MICA媒介性の関連疾患を診断する方法を提出する。本発明の実施例によれば、1)第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、2)第2の態様に記載の核酸分子、3)第3の態様に記載の発現ベクター、及び4)第5の態様に記載の組換え細胞のうちの少なくとも1つを使用して被検体中のMICAを検出し、前記MICAの検出結果に基づいて、前記被検体中のMICAの含有量を決定するステップを含む。本願で提出される前記抗体または抗原結合断片、または核酸分子、発現ベクター、組換え細胞が発現する抗体または抗原結合断片はいずれもヒトMICAタンパク質と効果的に結合でき、または核酸分子、発現ベクター、組換え細胞が発現する抗体または抗原結合断片はいずれもMICAと効果的に結合することができるため、本願に記載の方法を採用して被験個体由来の被検体中のMICAの含有量を効果的に検出し、MICAによる関連疾患を効果的に診断することができる。
【0058】
本発明の実施例によれば、上記疾患の診断方法は、以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の実施例によれば、前記被検体中のMICAの含有量が罹患の最低基準以上であることは、被検体がMICAによる関連疾患を罹患する患者由来の指示である。前記最低基準の値は前記MICAによる関連疾患を罹患する多数の個体と多数の健康な個体の被検体中のMICAの含有量の差異を比較分析し、検証することによって、決定することができる。
【0060】
本発明の実施例によれば、前記被検体は、血液、唾液、汗液、組織、細胞、血液、血清、血漿、糞便及び尿液のうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性の関連疾患は癌を含む。
【0062】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0063】
本発明の第13の態様では、本発明は、MICA媒介性の関連疾患の病期分類方法を提出する。本発明の実施例によれば、1)第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、2)第2の態様に記載の核酸分子、3)第3の態様に記載の発現ベクター、及び4)第5の態様に記載の組換え細胞のうちの少なくとも1つを使用して被検体中のMICAを検出し、前記MICAの検出結果に基づいて、前記被検体中のMICAの含有量を決定する。本願による前記抗体または抗原結合断片、または核酸分子、発現ベクター、組換え細胞が発現する抗体または抗原結合断片はいずれもヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、本願に記載の方法を採用することによって、被験個体由来の被検体中のMICAの含有量を効果的に検出し、前記MICAの含有量に基づいてMICAによる関連疾患の病期を評価することができる。
【0064】
本発明の実施例によれば、上記疾患の病期分類方法は以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0065】
本発明の実施例によれば、前記被検体中のMICAの含有量が腫瘍IV期の罹患の基準レベル以上であることは、被検体が腫瘍IV期を罹患する患者由来の指示であり、前記被検体中のMICAの含有量が腫瘍IV期とIII期の罹患の基準レベルの間にあることは、被検体が腫瘍III期を罹患する患者由来の指示であり、前記被検体中のMICAの含有量が腫瘍III期とII期の罹患の基準レベルの間にあることは、被検体が腫瘍II期を罹患する患者由来の指示であり、前記被検体中のMICAの含有量がI期とII期の罹患の基準レベルの間にあることは、被検体が腫瘍I期を罹患する患者由来の指示である。当業者として、前記腫瘍I期、II期、III期、IV期の罹患の場合のMICAのレベルは腫瘍の種類によって変化し、腫瘍の病期について、前記被検体中のMICAの含有量と対応する該腫瘍段階のMICAの基準レベルを比較することによって判定することができるか、または前記被検体中のMICAの含有量と既知の罹患病期の個体または群体由来のサンプルMICAの含有量を比較することによって判定することができることを理解できる。前記腫瘍I期、II期、III期、IV期基準レベルの値を、前記のMICAによる関連疾患を罹患する多数の個体と多数の健康な個体の被検体中のMICAの含有量の差異を比較分析し、検証することによって、決定することができる。
【0066】
本発明の実施例によれば、前記被検体は、血液、唾液、汗液、組織、細胞、血液、血清、血漿、糞便及び尿液のうちの少なくとも1つを含む。
【0067】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性の関連疾患は癌を含む。
【0068】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0069】
本発明の第14の態様では、本発明は、MICA媒介性の関連疾患の予後の評価方法を提出する。本発明の実施例によれば、1)第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、2)第2の態様に記載の核酸分子、3)第3の態様に記載の発現ベクター、及び4)第5の態様に記載の組換え細胞のうちの少なくとも1つを使用して被検体中のMICAを検出し、前記MICAの検出結果に基づいて、前記被検体中のMICAの含有量を決定するステップを含む。以上のように、MICAの含有量は癌に重要な影響を与え、関連疾患を罹患する個体を治療した後、その組織または排泄物、例えば末梢血、尿液などのMICAの含有量を監視することによって当該疾患の予後を効果的に評価することができ、例えば、治療前後の被験者体内のMICAの含有量を比較し、または治療後の被験者の体内MICAの含有量と正常な個体または罹患した個体のMICAレベルを比較するなどの方式であり、本願で提出される前記抗体または抗原結合断片、または核酸分子、発現ベクター、組換え細胞が発現する抗体または抗原結合断片はいずれもヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、本願に記載の方法を採用することによって、被験個体由来の被検体中のMICAの含有量を効果的に検出し、前記MICAの含有量に基づいてMICAによる関連疾患の予後を評価することができる。
【0070】
本発明の実施例によれば、上記疾患予後の評価方法は以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0071】
本発明の実施例によれば、前記被検体は、治療前または治療後のMICA媒介性の関連疾患を罹患する患者に由来する。
【0072】
本発明の実施例によれば、前記被検体は、血液、唾液、汗液、組織、細胞、血液、血清、血漿、糞便及び尿液のうちの少なくとも1つを含む。
【0073】
本発明の実施例によれば、前記治療前または治療後のMICA媒介性の関連疾患を罹患する患者の被検体中のMICAの含有量に基づいて、MICA媒介性の関連疾患の予後効果を決定する。
【0074】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性の関連疾患は癌を含む。
【0075】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0076】
本発明の第15の態様では、本発明は、本発明で提出された第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクター、第5の態様に記載の組換え細胞、第6の態様に記載の組成物または第8の態様に記載の薬物の、MICA媒介性の関連疾患の治療または予防における使用を提出する。以上のように、前記抗体または抗原結合断片はヒトMICAタンパク質と効果的に結合でき、MICA媒介性の関連疾患を効果的に治療または予防することができる。
【0077】
本発明の実施例によれば、上記使用は以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0078】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性の関連疾患は癌を含む。
【0079】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0080】
本発明の第16の態様では、本発明は、第1の態様に記載の抗体または抗原結合断片、第2の態様に記載の核酸分子、第3の態様に記載の発現ベクターまたは第5の態様に記載の組換え細胞の、MICA媒介性の関連疾患の診断、MICA媒介性の関連疾患の病期分類またはMICA媒介性の関連疾患予後の評価における使用を提出する。以上のように、本願で提出される前記抗体または抗原結合断片、または核酸分子、発現ベクター、組換え細胞が発現する抗体または抗原結合断片はいずれもヒトMICAタンパク質と効果的に結合できるため、本願に記載の方法を採用することによって、被験個体由来の被検体中のMICAの含有量を効果的に検出し、MICA媒介性の関連疾患に診断、疾患病期分類及び疾患予後評価を効果的に行うことができる。
【0081】
本発明の実施例によれば、上記使用は以下の付加的な技術的特徴のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0082】
本発明の実施例によれば、前記MICA媒介性の関連疾患は癌を含む。
【0083】
本発明の実施例によれば、前記癌は、肺癌、肝癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膀胱癌、結腸癌、乳癌、神経膠腫、腎癌、胃癌、食道癌、口腔扁平上皮癌及び頭頚部癌のうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
本発明に関する「被験者」または「個体」は、一般的に霊長類動物及び/又は齧歯類動物など、特にヒト、サルまたはマウスの哺乳動物を指す。
【発明の効果】
【0085】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
1)本発明で得られた親和性成熟した抗体h5A1002は、親抗体h5A1、同種抗体CLN-619(Cullinan、I期臨床段階にある)より強い結合活性を有する。
2)本発明で得られた親和性成熟した抗体h5A1002は、親抗体h5A1、同種抗体CLN-619(Cullinan、I期臨床段階にある)より強いPBMC(ヒト末梢血単核細胞)による腫瘍の殺傷を促進する活性を有する。
3)本発明で得られた親和性成熟した抗体h5A1002は同種抗体CLN-619(Cullinan、I期臨床段階にある)より弱いエンドサイトーシス活性を有し、モノクローナル抗体、二次抗体としてより良い創薬性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の上記及び/又は付加的な態様及び利点は、以下の図面を組み合わせて実施例の説明から明らかになり、容易に理解される。
図1】本発明の実施例による親ヒト化抗体であるh5A1抗体とMICAタンパク質との親和性測定のSPR結果図である。
図2】本発明の実施例による親和性成熟した抗体であるh5A1002抗体とMICAタンパク質との親和性測定のSPR結果図である。
図3】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*002-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図4】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*005-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図5】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*008-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図6】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*004-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図7】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICB*001-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図8】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とMICB*005-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図9】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とヒトメラノーマA-375細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図10】本発明の実施例による親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002とヒト直腸癌HCT-15細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図11】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICA*002-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図12】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICA*005-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図13】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICA*008-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図14】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICA*004-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図15】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICB*001-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図16】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とMICB*005-Fcタンパク質とを結合するELISA結果図である。
図17】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とヒトメラノーマA-375細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図18】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)と人非小細胞肺癌A549細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図19】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とヒト直腸癌HCT-15細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図20】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)とヒト乳癌MDA-MB-231細胞とを結合するフローサイトメトリー結果図である。
図21】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)、1D5V11(Genentech)及びh5A1002-Biotin抗体とヒト直腸癌HCT-15細胞とを競合的に結合するフローサイトメトリー結果図である。
図22】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)がヒト乳癌MDA-MB-231細胞によってエンドサイトーシスされるフローサイトメトリー結果図である。
図23】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002がPBMCによるヒトメラノーマA-375細胞の殺傷を促進する結果図である。
図24】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)がPBMCによるヒト直腸癌HCT-15細胞の殺傷を促進する結果図である。
図25】本発明の実施例による親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan)及び1D5V11(Genentech)がPBMCによるヒトメラノーマA-375細胞の殺傷を促進する結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明される実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためのもの過ぎず、本発明を制限するものと理解されてはならない。
【0088】
説明する必要がある点として、「第1」、「第2」という用語は、説明のためだけに使用され、相対的な重要性を明示又は暗示するかあるいは示される技術的特徴の数を示唆するものとして理解できない。したがって、「第1」、「第2」によって限定される特徴は、1つ又は1つ以上の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」とは、特に限定されていない限り、2つ又は2つ以上を意味する。
【0089】
本明細書では、「含む」または「備える」という用語は被限定的な表現であり、本発明が示す内容を含むが、他の態様の内容を排除するものではない。
【0090】
本明細書では、「選択可能に」、「選択可能な」または「選択可能」という用語は通常、後述するイベントまたは状況が発生してもよいが、必ずしも発生していないことを意味し、且つこの説明には、そのイベントまたは状況が発生した場合と、そのイベントまたは状況が発生していない場合とが含まれる。
【0091】
本発明をより容易に理解するために、以下に、具体的にいくつかの技術的用語および科学用語を定義する。本明細書において明示的に定義されている場合を除き、本明細書で使用される他のすべての技術的用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味を有している。アミノ酸残基の略語は、当該分野で使用されている20つの一般的なL-アミノ酸の1つを指す標準的な3文字及び/又は1文字コードである。
【0092】
本発明に記載の抗体または抗原結合断片は、通常、生物合成の方法により調製される。本発明に記載のヌクレオチド配列によれば、当業者は様々な公知の方法で本発明のコード核酸を容易に製造することができる。これらの方法は、例えば、PCR、DNA人工合成などが挙げられるが、これらに制限されなく、具体的な方法は、J.Sambrook、『分子クローン実験ガイド』を参照することができる。本発明の一実施形態として、ヌクレオチド配列を段階的に合成してさらにPCRを重ねて伸長する方法によって、本発明のコード核酸配列を構築することができる。前記抗体または抗原断片はKabat番号システムを用いて番号付けと定義を行う。
【0093】
本明細書では、前記「モノクローナル抗体」とは、単一抗原結合部位を有する抗体を指す。
【0094】
本明細書では、前記「ポリクローナル抗体」とは、2つまたは2つ以上の異なる抗原結合部位を有する抗体を指す。
【0095】
本明細書では、「変異体」または「バリアント」という用語は、任意の天然に存在するまたはエンジニアリング化された分子に対して1つまたは複数のヌクレオチドまたはアミノ酸を含む変異を行った分子を含むことを意味することができる。
【0096】
「相補決定領域」または「CDR」または「CDR配列」という用語は、抗体中の抗原結合を担うアミノ酸配列を意味し、例えば、通常、軽鎖可変領域中の23-34(L1)、50-56(L2)と89-97(L3)付近と、重鎖可変領域中の31-35B(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)付近のアミノ酸残基(Kabatらなど、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.(1991))、及び/又は「高変環」(例えば、軽鎖可変領域中の26-32(LI)、50-52(L2)及び91-96(L3)と、重鎖可変領域中の26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)付近のアミノ酸残基(ChothiaとLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。
【0097】
本明細書の「操作可能に接続する」とは、外来遺伝子を担体に接続することを意味し、担体内の制御素子、例えば転写制御配列や翻訳制御配列などは、その所望の外来遺伝子の転写と翻訳を調整する機能を発揮することができる。上記核酸分子を担体に接続する際に、核酸分子と担体上の制御素子を直接または間接的に接続することができ、これらの制御素子は核酸分子の翻訳と発現などを制御すればよい。無論、これらの制御素子は、担体自体に直接由来しても、外来性であってもよく、すなわち担体自体に由来していなくてもよい。当業者が理解きる点として、抗体または抗原結合断片をコードするための核酸分子は、それぞれ独立して異なる担体に挿入することができ、同一の担体に挿入する場合が多い。通常の担体は、例えばプラスミド、バクテリオファージなど、例えばPlasmid-Xプラスミドであってもよい。
【0098】
本明細書では、「同一性」、「相同性」または「類似性」という用語は、いずれも参照配列に対するアミノ酸配列または核酸配列を記述するために使用される場合、通常の方法で2つのアミノ酸配列または核酸配列の間の同じアミノ酸またはヌクレオチドの割合を決定し、例えば、Ausubelなど、編著(1995)、Current Protocols in Molecular Biology、第19章(Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York);及びALIGNプログラム (Dayhoff(1978)、Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Suppl.3(National Biomedical Research Foundation、Washington、D.C.)を参照する。照合配列と測定配列の同一性については、Needlemanなど(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性照合アルゴリズム、Smith等(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズム、Pearsonなど(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444の類似性検索方法、Smith-Watermanアルゴリズム(Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)、BLASTP、BLASTN、とBLASTXアルゴリズム(Altschulなど(1990)J.Mol.Biol.215:403-410)の多くのアルゴリズムを含む。これらのアルゴリズムを利用したコンピュータプログラムも得られることができ、且つ、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア、またはWU-BLAST-2(Altschulなど、Meth.Enzym.、266:460-480(1996))、またはGAP、BESTFIT、BLAST Altschulなど、Genetics Computing Group(GCG)パック、バージョン8、Madison、Wisconsin、USAから得られる以上のFASTAとTFASTA、及びIntelligenetics、Mountain View、Californiaによって提供されるPC/GeneプログラムにおけるCLUSTALを含むが、これらに制限されない。
【0099】
抗体活性(少なくとも95%の活性を保つ)に実質的に影響を及ぼすことなく、当業者は本発明の配列を1つまたは複数の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上)アミノ酸に置き換え、添加及び/又は欠損させて、前記抗体またはその機能性断片の配列のバリアントを取得する。それらは、可変領域で類似性を有するアミノ酸を置き換えるなど、本発明が保護する範囲内に含むと考えられる。本発明の前記バリアント配列は参照配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の一致性(または相同性)を有する。本発明に記載の配列の一致性は、配列分析ソフトウェアで測定することができる。例えばデフォルトパラメータのコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNを使用する。本発明に記述されたアミノ酸配列はいずれもN端からC端まで示される。
【0100】
以上のように、本発明のモノクローナル抗体は、全長抗体であってもよく、またはその機能性断片(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv断片)のみを含み、または機能に影響を及ぼすように修飾されてもよい。本発明は、修飾されたグリコシル化モードを有する抗MICA抗体を含む。幾つかの応用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するように修飾することが有用であり、またはオリゴ糖鎖上にフコイダン部分が存在しなく、例えば抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能を高める抗体であってもよい。他の幾つかの応用では、ガラクトシル化修飾を行って補体依存性細胞毒性(CDC)を変化させることができる。
【0101】
本明細書では、前記「全長抗体」とは、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)または免疫グロブリンE(IgE)など、2本の同じ軽鎖と2本の同じ重鎖が鎖間ジスルフィド結合で接続されたテトラペプチド鎖構造である。同じ種類の免疫グロブリンもアミノ酸組成によって異なるサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。免疫グロブリン軽鎖は、定常領域によってκ鎖またはλ鎖に分けられる。
【0102】
本文で使用される用語「機能性断片」は、特に、CDR移植抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFv、ナノ抗体などの抗体断片、または化学修飾またはリポソームN導入することにより半寿命期間を増加させることができる任意の断片を指し、前記化学修飾は、例えば、ポリエチレングリコール(「ポリエチレングリコール化、PEG化」)(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)2-PEGまたはFab’-PEGのポリエチレングリコール化断片と呼ばれる)(「PEG」はポリエチレングリコールである)などのポリ-アルキレングリコールを添加することを指し、前記断片はMICA結合活性を有する。好ましくは、前記機能性断片は、その由来抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の部分配列からなり、またはそれらを含み、前記部分配列はその由来抗体と同様の結合特異性と十分な親和性を保つのに十分であり、MICAについて、好ましくは、少なくともその由来抗体の親和性の1/100と等しく、より好ましい方式では、少なくとも1/10と等しい。このような機能断片は、少なくとも3つのアミノ酸を含み、好ましくは、その由来の抗体配列の5、10、15、25、50及び100つの連続アミノ酸を含む。
【0103】
本発明において、反対の陳述がない場合、使用される用語「抗原結合断片」は、通常、抗原結合性抗体断片を指し、一般的に抗原結合領域または可変領域である完全な抗体の一部を含んでもよく、例として、CDR移植抗体、Fab、Fab、F(ab’)2、FvまたはscFv、ナノ抗体などを含む。
【0104】
本明細書では、「CDR移植抗体」という用語は、ある種のモノクローナル抗体のCDRを別の種の抗体可変領域に移植することを指す。例えば、マウス由来モノクローナル抗体のCDRをヒト由来抗体可変領域に移植することができ、ヒト由来抗体CDRの代わりに、ヒト由来抗体にマウス由来モノクローナル抗体の抗原結合特異性を取得させると同時に、その異源性を減少することができる。
【0105】
本明細書では、「Fab抗体」または「Fab」という用語は、通常、Fab分子のみを含む抗体を指し、重鎖のVHとCH1及び完全な軽鎖からなり、軽鎖と重鎖とは1つのジスルフィド結合を介して接続される。
【0106】
本明細書では、「ナノ抗体」(単一ドメイン抗体またはVHH抗体)という用語は、最初「重鎖抗体」(即ち「軽鎖がない抗体」)の抗原結合免疫グロブリン(可変)ドメインとして記述され(Hamers-Casterman C,AtarhouchT,Muyldermans S,Robinson G,Hamers C,Songa EB,Bendahman N,Hamers R .:「Naturallyoccurring antibodies devoid of light chains」;Nature 363,446-448(1993))、重鎖可変領域(VH)と通常のCH2とCH3領域のみを含み、重鎖可変領域を介して抗原と特異的に結合する。
【0107】
本明細書では、「Fv抗体」という用語は、通常、軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)のみが非共有結合で接続される抗体を指し、抗体分子が完全な抗原結合部位を保持する最小の機能断片である。
【0108】
本明細書では、「一本鎖抗体」または「scFv」という用語は、抗体重鎖可変領域と軽鎖可変領域が短いペプチドで接続される断片を指す。
【0109】
本明細書では、「有効量」または「有効投与量」という用語は、ヒト及び/又は動物に機能または活性をもたらすことができ、且つヒト及び/又は動物に受け入れられる量を指す。
【0110】
本明細書では、「薬学的に許容できる」成分は、過度の不良な副作用(毒性、刺激及びアレルギー反応)なしに、ヒト及び/又は哺乳動物に適用され、即ち合理的利益/リスク比を有する物質である。「薬学的に許容できる担体」という用語は、治療剤投与用の担体を指し、様々な賦形剤と希釈剤を含む。
【0111】
本発明の薬物は、安全で有効な量の本発明の活性成分及び薬学的に許容できる担体を含む。このような担体は、食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセリン、エタノール、及びその組み合わせを含む(これらに制限されない)。通常、薬物製剤は、投与方式に適合する必要があり、投与方式は経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与、静脈投与、または腹腔内投与であってもよく、本発明の薬物の剤形は注射剤、経口製剤(錠剤、カプセル、経口液)、経皮剤、徐放剤である。例えば生理食塩水またはグルコースやその他の補助剤を含む水溶液を通常の方法によって調製する。前記薬物は無菌条件で製造するのに適する。前記抗体または抗原結合断片は静脈輸液または注射または筋肉内または皮下注射により投与することができる。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、抗体の生体受容性をさらに高めるために、抗体をヒト化することもでき、即ち、前記抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。「キメラ抗体」という用語は、組換えDNA技術を利用し、ある種の(例えばマウス)からのモノクローナル抗体の定常領域のアミノ酸配列を別の種の(例えばヒト)からの抗体の定常領域に置き換えた組換え抗体を指す。「ヒト化抗体」という用語は、組換えDNA技術を利用し、ある種の(例えばマウス)からのモノクローナル抗体の定常領域と可変領域の非CDR(Fvフレーム領域(FR))アミノ酸配列をすべて別の種の(例えばヒト)からの抗体の定常領域と可変領域の非CDRアミノ酸配列に置き換えた組換え抗体を指す。即ち、1つの抗体の定常領域はヒト化される場合にキメラ抗体と呼ばれ、定常領域と可変領域の非CDRアミノ酸配列はすべてヒト化された場合、ヒト化抗体と呼ばれる。ヒト化の方法について、通常の抗体工程技術を参照して行うことができ、ここで繰り返して説明しない。
【0113】
本明細書では、本発明に記載の抗体親和性成熟(antibody affinity maturation)とは、生体が正常に存在する免疫機能状態のことを指す。体液性免疫では、再応答による抗体の平均親和性が初回の免疫応答よりも高く、このような現象は、抗体親和性成熟と呼ぶ。生体のこのような機能状態は長期的な進化と外部環境への継続的な適応の結果であり、生体防御と自己免疫モニタリングの維持に非常に重要な意義がある。本発明は、体外抗体親和性成熟技術を利用し、具体的に、分子生物学技術を利用し、抗体のCDRアミノ酸を変異させ、変異後の抗体バンクからスクリーニングし、親和性が著しく向上した抗体を得る過程である。
【0114】
本発明に関するアミノ酸または核酸配列を表1に詳細に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明する実施例は例であり、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものと理解されるべきではない。実施例に具体的な技術または条件が示されない場合、当該分野の文献に記載されている技術または条件に従って、または製品の明細書に従って実行する必要がある。用いられる試薬または機器にメーカーが示されない場合、市販によって購入できる従来の製品である。
【0117】
実施例1: 抗体の生産
【0118】
抗体の生産は、具体的な実験操作が以下の通りである。(1)ExpiCHO Expression Medium培地(Thermo Fisherから購入)でExpiCHO細胞(Thermo Fisherから購入)を培養し、細胞濃度を6×10/mLに調整し、ExpiCHO細胞溶液を取得する。(2)抗体重鎖と抗体軽鎖を含むpcDNA3.4担体(南京金斯瑞に合成を依頼する)を1:1の比で2mLのOptiSFM培地(Thermo Fisherから購入)に入れ、溶液Aを取得する。(3)160μLのExpiFectamineCHOトランスフェクション試薬(Thermo Fisherから購入)を2mLのOptiSFM培地(Thermo Fisherから購入)に入れ、溶液Bを取得する。(4)次に、溶液Aと溶液Bを混合し、トランスフェクション混合物を取得し、5分間内でトランスフェクション混合物をすべて50mLのExpiCHO細胞溶液に入れる。(5)37℃で、5%のCO条件下で1日培養した後、8mLのFeed、300μLのEnhancer(Thermo Fisherから購入)を加え、32℃、5%のCO条件下で9日培養した後に培養上清を取得し、5日目に8mLのFeedを加える。(6)ProteinA精製カラム(納微から購入)を利用して培養上清から親和精製し、親ヒト化抗体h5A1抗体を得る。
【0119】
実施例2:抗体親和性成熟
【0120】
天然抗体が親和性成熟の過程では、体細胞の高頻度変異は主にCDR領域に主に集中する。体外実験によってCDR領域の各部位で一点飽和変異を行うことで、十分な変異多様性を得ると同時に、タンパク質構造を破壊しなく、この経路は天然抗体の体内での体細胞の高頻度変異と最も類似した体外再現を実現できる。
【0121】
CDR領域の各アミノ酸部位に対して一点飽和変異を行い、親抗体の偏りのない一点飽和変異プラスミドライブラリを構築する。ELISAを利用して抗原と特異的に結合して強化する変異部位をスクリーニングし、さらにこれらの部位を組み合わせてスクリーニングすることで候補となる抗体変異配列が得られる。
【0122】
該技術的経路により、親ヒト化抗体h5A1(実施例1に記載の方法で調製され、重鎖可変領域SEQ ID NO:9と軽鎖可変領域SEQ ID NO:10は、特許CN114369162Aから)を親和性成熟させ、高親和性MICAモノクローナル抗体h5A1002(実施例1に記載の方法で調製される)を取得し、重鎖可変領域(SEQ ID NO:7)と軽鎖可変領域(SEQ ID NO: 8)の配列を有する。親ヒト化抗体h5A1と親和性成熟抗体h5A1002のCDR配列の比較を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
実施例3:抗体親和性検出
【0125】
Biacoreは、光学表面プラズモン共鳴(SPR)原理に基づく生物分子相互作用を分析する方法であり、抗原と抗体との間の特異的な結合を検出するだけでなく、分子間の結合速度定数(Ka)、解離速度定数(Kd)、平衡解離定数(KD)など薬物研究開発において非常に重要なデータを得て、これにより、抗体の親和性を計算する。
【0126】
Biacore 8K((Cytiva)システムでは、作動緩衝液(HBS-EP)で抗体を10μg/mLに希釈し、流速10μL/minの条件下で抗体をproteinA((Cytiva,29127556)チップにカップリングする。流速30μL/minの条件下で、抗原と抗体の結合の動力学と親和性データを検出し、所定の結合時間は120sであり、解離時間は800sである。
【0127】
親抗体h5A1と親和性成熟した抗体h5A1002がMICAと結合する動力学と親和性データを検出し、結果を表3に示すように、親抗体h5A1に比べて、親和性成熟した抗体h5A1002とMICA親和性は大幅に39倍向上した。
【0128】
【表3】
【0129】
備考:Kaは結合速度定数(数値が大きいほど、親和性が強いのを示す)を示し、Kdは、解離速度定数(数値が小さいほど、親和性が強いのを示す)を示し、化合物標的に対する親和性の大きさを反映し、KDは、Kd/Kaを示し、平衡解離定数(親和性定数)であり、KDが小さいほど、解離が少なく、親和性が強いのを示す。
【0130】
実施例4:MICA抗体ELISA結合実験
【0131】
(1)ELISAを利用して親抗体h5A1、親和性成熟した抗体h5A1002及びMICA、MICBのα3ドメインの結合特性を検出する。発明者は、得られた多種のMICA、MICBバリアント細胞外領域α3ドメイン(MICA-002、005、008、004、MICB-001、005的α3ドメイン)Fc融合タンパク質を96ウェルプレートにコーティングし、抗体添加後にシグナルの強さは、抗体とMICA、MICBとの結合特性を判断するために使用される。
【0132】
PBS緩衝液で融合タンパク質(本実験室で生産する。MICA002α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:22に示され、MICA005α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:24に示され、MICA008α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:25に示され、MICA004α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:23に示され、MICB001α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:26に示され、MICB005α3-Fcアミノ酸配列はSEQ ID NO:27に示される)を1μg/mlに希釈し、100μL/ウェルの体積で96ウェルプレートに加え、4℃で一晩放置する。96ウェルプレート中のPBS緩衝液を吸引して除去し、PBST(即ちpH7.2のPBSに0.1体積%のTween20を含む)緩衝液でプレートを6回洗浄した後、200μL/ウェルの10%のBSAを含むPBSを添加し、37℃で2hインキュベートして閉鎖する。閉鎖液を取り除き、PBSTでプレートを6回洗浄した後、100μL/ウェルの0.05%のBSAのPBST勾配で希釈(最高動作濃度20000ng/ml、5倍希釈、8勾配)したh5A1抗体(重鎖配列SEQ ID NO:11と軽鎖配列SEQ ID NO:12)、h5A1002抗体(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、照合IgG1(百英生物から購入)を添加し、37℃で1hインキュベートする。ウェル中の反応系を吸引し、PBSTでプレートを6回洗浄した後、100μL/ウェルで0.05%のBSAを含むPBSTでHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)でマークした抗ヒト抗体二次抗体(Fab特異性)(Sigmaから購入)で希釈し、37℃で1hインキュベートする。ウェル中の二次抗体を吸引して除去し、PBSTを用いてプレートを6回洗浄した後、80μL/ウェルのTMB(テトラメチルベンジジン)を添加し、室温で3minインキュベートし、80μL/ウェルの4M硫酸を添加して反応を停止する。マイクロプレートリーダーで450mmの吸光度値を読み取る。
【0133】
結果を図3、4、5、6、7、8に示すように、本発明の抗体がMICA*002、MICA*005、MICA*008、MICA*004、MICB*001、MICB*005と結合でき、且つ親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*002、MICA*005、MICA*008の結合は親ヒト化抗体h5A1より強いことを示す。
【0134】
(2)ELISAで親和性成熟した抗体h5A1002、同種抗体CLN-619(Cullinan、配列が特許US20210253711A1からのものであり、実施例1に記載の方法で調製される)、1D5V11(Genentech、配列は特許US20200055939A1からのものであり、実施例1に記載の方法で調製される)とMICA、MICBのα3ドメインの結合特性を検出する。発明者は、得られた多種のMICA、MICBバリアント細胞外領域α3ドメイン(MICA -002、005、008、004、MICB -001、005のα3ドメイン)Fc融合タンパク質を96ウェルプレートにコーティングし、抗体添加後にシグナルの強さは、抗体とMICA、MICBとの結合特性を判断するために使用される。
【0135】
実験過程をステップ(1)に示し、結果を図11、12、13、14、15、16、に示し、本発明の抗体がMICA*002、MICA*005、MICA*008、MICA*004、MICB*001、MICB*005と結合でき、且つ親和性成熟した抗体h5A1002とMICA*002、MICA*005、MICA*008との結合が同じ標的抗体CLN-619(Cullinan)より強いことを示す。
【0136】
実施例5:MICA抗体フローサイトメトリー結合実験
【0137】
(1)PBSで腫瘍細胞を2×10/mLに希釈し、100μL/チューブの体積で1.5mlのEPチューブに添加し、その中に10μL/チューブのヤギ血清を添加し、4℃で30min閉鎖する。勾配で希釈(最高動作濃度が50μg/mlで、10勾配、各勾配で3倍希釈する)したh5A1抗体(重鎖配列SEQ ID NO:11と軽鎖配列SEQ ID NO:12)、h5A1002抗体(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、照合IgG1(百英生物から購入)を添加し、4℃で30minインキュベートする。EPチューブに1mLのPBSを加え、4℃で3500rpm×5min遠心し、上清を捨て、PBSで一回洗う。遠心した後に上清を捨て、100μl/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、その中に1μL/チューブのAlexa-647でマークしたヤギ抗ヒト抗体二次抗体(Jackson labから購入)を加え、4℃で30min遮光インキュベートする。PBSで2回洗浄し、遠心した後に上清をすべて捨てる。200μL/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、フローサイトメーターで検出し、結果を図9、10に示すように、本発明の親和性成熟した抗体h5A1002とA-375メラノーマ細胞、HCT-15大腸癌細胞との結合は親ヒト化抗体h5A1より強いことを示す。
【0138】
(2)PBSで腫瘍細胞を2×10/mLに希釈し、100μL/チューブの体積で1.5mlのEPチューブに添加し、その中に10μL/チューブのヤギ血清を添加し、4℃で30min閉鎖する。勾配で希釈(最高動作濃度が50μg/mlで、10勾配、各勾配で3倍希釈する)したh5A1抗体(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、CLN-619抗体(重鎖配列SEQ ID NO:17と軽鎖配列SEQ ID NO:18)、1D5V11抗体(重鎖配列SEQ ID NO:19と軽鎖配列SEQ ID NO:20)、照合IgG1(百英生物から購入)を添加し、4℃で30minインキュベートする。EPチューブに1mLのPBSを加え、4℃で3500rpm×5min遠心し、上清をすべて捨て、PBSで一回洗う。遠心した後に上清をすべて捨て、100μl/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、その中に1μL/チューブのAlexa-647でマークしたヤギ抗ヒト抗体二次抗体(Jackson labから購入)を加え、4℃で30min遮光インキュベートする。PBSで2回洗浄し、遠心した後に上清をすべて捨てる。200μL/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、フローサイトメーターで検出し、結果を図17、18、19、20に示すように、本発明の親和性成熟した抗体h5A1002と腫瘍細胞であるA-375メラノーマ細胞、A-549非小細胞肺癌細胞、HCT-15大腸癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞との結合は同じ標的抗体CLN-619(Cullinan)より強いことを示す。
【0139】
実施例6:エピトープ競争実験
【0140】
フローサイトメトリーで親和性成熟した抗体h5A1002と同種抗体CLN-619(Cullinan)、1D5V11(Genentech)抗原エピトープ競争状況を検出する。
【0141】
PBSで腫瘍細胞を2×10/mLに希釈し、100μL/チューブの体積で1.5mlのEPチューブに添加し、その中に10μL/チューブのヤギ血清を添加し、4℃で30min閉鎖する。勾配で希釈(最高動作濃度が300μg/mlで、10勾配、各勾配で3倍希釈する)した親和性成熟した抗体h5A1002(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、CLN-619抗体(重鎖配列SEQ ID NO:17と軽鎖配列SEQ ID NO:18)、1D5V11抗体(重鎖配列SEQ ID NO:19と軽鎖配列SEQ ID NO:20)、hIgG1(百英生物から購入)を添加し、4℃で30minインキュベートする。ビオチンでマークした親和性成熟した抗体Biotin-h5A1002(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)を加え、4℃で30minインキュベートする。EPチューブに1mLのPBSを加え、4℃で3500rpm×5min遠心し、上清をすべて捨て、PBSで一回洗う。遠心した後に上清をすべて捨て、100μl/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、その中に1μL/チューブのAlexa-647でマークしたStreptavidin二次抗体(Biolegendから購入)を加え、4℃で30min遮光インキュベートする。PBSで2回洗浄し、遠心した後に上清をすべて捨てる。200μL/チューブのPBSで細胞を重懸濁し、フローサイトメーターで検出し、結果を図21に示すように、本発明の親和性成熟した抗体h5A1002とCLN-619(Cullinan)との結合の抗原エピトープに重なりがあり、h5A1002と1D5V11(Genentech)は異なる抗原エピトープと結合する。
【0142】
実施例7:MICA抗体エンドサイトーシス実験
【0143】
親和性成熟した抗体h5A1002と同種抗体CLN-619(Cullinan)、1D5V11(Genentech)をpHrodo(Thermoから購入)でマークし、細胞培養系に加え、24hインキュベートした後、細胞蛍光を検出し、蛍光シグナルの強さは、抗体エンドサイトーシスの状況を反映する。
【0144】
PBSでMDA-MB-231細胞を1×10/mLに希釈し、200μL/ウェルの体積で96ウェルプレート内に加え、その中に勾配で希釈(動作濃度最高濃度が50μg/mlで、10勾配、各勾配で3倍希釈する)したh5A1002-pHrodo(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、CLN-619-pHrodo(重鎖配列SEQ ID NO:17と軽鎖配列SEQ ID NO:18)、1D5V11-pHrodo(重鎖配列SEQ ID NO:19と軽鎖配列SEQ ID NO:20)を加え、37℃で、5%COで24h培養し、次にフローサイトメトリーで抗体エンドサイトーシスを検出する。結果を図22に示すように、本発明の親和性成熟した抗体h5A1002のエンドサイトーシスは同種抗体CLN-619と1D5V11より弱く、モノクローナル抗体の創薬性としてより良いことを示す。
【0145】
実施例8: MICA抗体のPBMCの腫瘍細胞に対する殺傷の促進
【0146】
MICAモノクローナル抗体によるPBMCA-375メラノーマ細胞、HCT-15大腸癌細胞の殺傷を促進する能力を検出する。
(1)50μL/ウェルの体積で16ウェルのRTCAプレートに完全RPMI-1640培地を加え、機器でキャリブレーションする。
(2)完全RPMI-1640培地で腫瘍細胞を2×10/mLに希釈し、50μL/ウェルの体積でそれぞれ独立してステップ(1)で得られたRTCAプレートに添加し、次に、37℃で、5%のCO条件下でxCELLigence RTCA MP装置を使用して細胞係数を24h検出する。
(3)完全RPMI-1640培地でh5A1002(重鎖配列SEQ ID NO:13と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、h5A1002-hIgG1LALA(実施例1に記載の方法で調製される;重鎖配列SEQ ID NO:15と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、h5A1002-hIgG1DLE(実施例1に記載の方法で調製される;重鎖配列SEQ ID NO:16と軽鎖配列SEQ ID NO:14)、CLN-619抗体(重鎖配列SEQ ID NO:17と軽鎖配列SEQ ID NO:18)、1D5V11抗体(重鎖配列SEQ ID NO:19と軽鎖配列SEQ ID NO:20)、hIgG1(百英生物から購入)を勾配で希釈し(図23の最高濃度が10μg/mlで、8勾配、各勾配で3倍希釈し、図24、25の最高濃度が50μg/mlで、12勾配、各勾配で5倍希釈する)、ステップ(2)で得られたRTCAプレートに加え、添加体積が20μL/ウェルである。
(4)完全RPMI-1640培地でPBMC(妙順生物から購入)を1.25×10個/mLに希釈し、ステップ(3)で得られたRTCAプレートに加え、添加体積が80μL/ウェルである。
(5)ステップ(4)で得られた反応系を37℃で、5%のCOでxCELLigence RTCA MP装置を使用して細胞係数を24h検出した。
【0147】
図23に示すように、本発明のMICA抗体はPBMCによる腫瘍の殺傷を促進し、且つhIgG1亜型抗体h5A1002、ADCC機能のない抗体h5A1002-hIgG1LALA、ADCC強化型抗体h5A1002-hIgG1DLEはいずれも促進機能を持つ。
【0148】
図24、25に示すように、本発明のh5A1002抗体はPBMCによる腫瘍の殺傷を促進し、且つhIgG1亜型抗体(h5A1002)の殺傷の促進機能は同標的抗体CLN-619(同様にhIgG1亜型)より優れ、ADCC強化型抗体h5A1002-hIgG1DLEは最も強い促進機能を持ち、その他の全ての抗体より強い。
【0149】
本明細書の説明では、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」、または「いくつかの例」という参考用語などの説明は、該実施例または例を組み合わせて説明する具体的な特徴、構造、材料または特点は本発明の少なくとも1つの実施例または例に含まれる。本明細書では、上記用語例示的な叙述は必ずしも同じ実施例または例を対象とする必要がない。また、説明する具体的な特徴、構造、材料または特点はいずれかまたは複数の実施例または例では適切な方式で結合することができる。なお、互いに衝突しない場合、当業者は本明細書に説明される異なる実施例または例及び異なる実施例または例の特徴を結合と組み合わせることができる。
【0150】
本発明の実施例を提示し記述したが、上記実施例は例示的なものであり、本発明を制限するためのものとして理解することができなく、当業者であれば、本発明の範囲で上記実施例について様々な変化、修正、置換および変形が可能であることが理解できる。
図1
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【配列表】
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