(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161332
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】着圧ストッキング
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A41B11/00 D
A41B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076426
(22)【出願日】2023-05-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523167563
【氏名又は名称】九州メディカルサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】森 崇徳
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AB02
3B018AC01
3B018AD02
(57)【要約】
【課題】従来品と比較して着用し易く、着用時に必要な締付圧力が確保されて膝下の浮腫を緩和し且つ着用部位における足及び皮膚への負担を軽減可能な着圧ストッキングを提供する。
【解決手段】着圧ストッキング1は、第1開口部102と第2開口部102を形成した筒状体で通気性を有する伸縮性編地の胴部10を備え、胴部の長手方向中間に位置する第1領域部分11、第1領域部分と第2開口部の間に位置する所定長さの筒状部分で足甲に適用する第2領域部分12、第1領域部分と第1開口部の間に位置する所定長さの筒状部分で膝元に適用する第3領域部分13を有する。第1領域部分11と第2領域部分12は、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造である。第1領域部分11は、第1締付部分111(締付圧力8mmHg)が脹脛に、第2締付部分112(締付圧力11mmHg)が足首に、各々適用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝元から足甲に至る領域に着用可能であって、着用状態で体幹側となる第1開口部と下肢先部側となる第2開口部とが形成された筒状体であり、通気性及び伸縮性を有する生地製の胴部を備え、
該胴部は、前記胴部の長手方向中間に位置し、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造であり、着用状態で生じる締付圧力が8~11mmHgの範囲内に設定されている第1領域部分、該第1領域部分と前記第2開口部の間に位置する所定長さの筒状部分であって、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造である第2領域部分、及び、前記第1領域部分と前記第1開口部の間に位置する所定長さの筒状部分であって、伸縮性を有し、着用状態で生じる締付圧力が前記第1領域部分及び前記第2領域部分よりも弱く設定されている第3領域部分、を有し、
前記第2領域部分が足甲に適用されると共に、前記第3領域部分が膝元に適用され、前記第1領域部分において8mmHgの締付圧力が生じる第1締付部分が脹脛に適用され、11mmHgの締付圧力が生じる第2締付部分が足首に適用される
着圧ストッキング。
【請求項2】
前記第3領域部分の構成材が、前記第1領域部分よりも柔軟且つ平滑なものであり、前記第1開口部の口縁部分が前記第1領域部分との連結部位よりも拡張しやすく設けられている
請求項1に記載の着圧ストッキング。
【請求項3】
前記第1領域部分において、前記第2締付部分と前記第1領域部分及び前記第2領域部分の連結部位の間に、長手方向に伸長しにくく、且つ、前記第2締付部分よりも弱圧な締付圧力を以て短手方向に伸縮可能な構造である、踵適用領域が設けられている
請求項1に記載の着圧ストッキング。
【請求項4】
前記第2領域部分において8~10mmHgの範囲内の締付圧力が生じるように設定されると共に、前記第3領域部分において5~7mmHgの範囲内の締付圧力が生じるように設定されている
請求項1乃至3のいずれかに記載の着圧ストッキング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着圧ストッキングに関する。更に詳しくは、従来の同種品と比較して着用しやすく、着用時には必要な締付圧力が確保されて膝下の浮腫を緩和すると共に、着用部位における足及び皮膚への負担を軽減することができる着圧ストッキングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浮腫の改善や術後の患部保護、保温等の医療用途で、通常のストッキングよりも着用時の圧力が強い着圧ストッキング(弾性ストッキングともいう)が使用されている。このような着圧ストッキングとしては、例えば、下記の非特許文献1に示すような製品「アンシルク(登録商標)・3(商品名)」が提案されている。「アンシルク(登録商標)・3」は、足首の圧迫圧は40hPa(30mmHg)で強い圧迫が得られ、強い圧迫によるつま先の圧迫を軽減できるようにつま先部分が開口しているものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アンシルク(登録商標)・3 アンシルク(登録商標)シリーズ 製品の紹介 アルケア株式会社 インターネット<URL:>https://www.alcare.co.jp/medical/ansilk/product3.html#pd_3_1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1に記載した着圧ストッキングは、40hPaと圧力が強く、若年乃至初老程度の着用者であれば左程問題無く着用できるものの、術後或いは病中、障害又は加齢に起因して握力や腕力が弱まっている者(特に高齢者や障害者)にとって、自身では着用しにくい(履きにくい)ものであり、また、前述した高齢者等を介助する介助者からしても着用させにくいものである。
【0005】
また、前述した着圧ストッキングは、その強い圧力に起因して着用部位の動きが制限されたり食い込んだりするため、着用中のリハビリ作業等において不快感や苦痛の原因ともなり、更に脱いだ後に、その圧力に起因して着用部位の皮膚に痕が残る等、足及び皮膚への負担が大きい傾向があった。
【0006】
一方、医療用途で使用される着圧ストッキングは、着圧が弱すぎると、浮腫を低減する効果が低下するか又は効果が無くなると、着用の意味が無くなる。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みて鋭意研究を重ねて創案されたものであり、従来の同種品と比較して着用しやすく、着用時には必要な締付圧力が確保されて膝下の浮腫を緩和すると共に、着用部位における足及び皮膚への負担を軽減することができる着圧ストッキングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の着圧ストッキングは、膝元から足甲に至る領域に着用可能であって、着用状態で体幹側となる第1開口部と下肢先部側となる第2開口部とが形成された筒状体であり、通気性及び伸縮性を有する生地製の胴部を備え、該胴部は、前記胴部の長手方向中間に位置し、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造であり、着用状態で生じる締付圧力が8~11mmHgの範囲内に設定されている第1領域部分、該第1領域部分と前記第2開口部の間に位置する所定長さの筒状部分であって、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造である第2領域部分、及び、前記第1領域部分と前記第1開口部の間に位置する所定長さの筒状部分であって、伸縮性を有し、着用状態で生じる締付圧力が前記第1領域部分及び前記第2領域部分よりも弱く設定されている第3領域部分、を有し、前記第2領域部分が足甲に適用されると共に、前記第3領域部分が膝元に適用され、前記第1領域部分において8mmHgの締付圧力が生じる第1締付部分が脹脛に適用され、11mmHgの締付圧力が生じる第2締付部分が足首に適用されるものである。
【0009】
本発明の着圧ストッキングは、着用者の足を第1開口部から入れて胴部を通過させ、第2開口部から足先(足甲よりも先)を出すようにして着用し、第2領域部分が足甲に、第3領域部分が膝元に、第1領域部分が脹脛乃至足首に、それぞれ適用され、足への着用時において、前述した各領域は、通気性を有するため適用箇所が蒸れず、且つ、伸縮性を有するため、適度な圧迫を加える。
【0010】
第1領域部分は、前述した構造であることにより、膝下部分(脹脛乃至足首に至る部分及びその向こう脛部分を含む意味で使用する。以下同じ)を包むように適用することができ、着用後は当該部分から生じる適度な締付圧力(従来品よりも弱圧な8~11mmHgの範囲内の締付圧力)を以て着用者の膝下部分における浮腫の緩和に寄与することができる。
【0011】
なお、第1領域部分には、脹脛に適用される8mmHgの締付圧力が生じる部分(第1締付部分)と、足首に適用される11mmHgの締付圧力が生じる部分(第2締付部分)を有する。発明者の研究の結果、特別な事例を除き、一般的な浮腫(特に老人に生じる浮腫)に対しては、脹脛に8mmHgの締付圧力を加え、且つ、足首に11mmHgの締付圧力を加えることで、着用者の症状が緩和(改善)されることが判明している。加えて、当該締付圧力の範囲内であれば、着用部位の皮膚に対する過度な食い込みが抑制され、着用時の違和感も少ないことも判明している。
【0012】
更に、第1領域部分は、前述した構造であることにより、着圧ストッキングに足を通して全体を引き上げる動作を行った際に、長手方向へ無駄に伸長せず、引き上げる力が分散しにくいので、引き上げを行うにあたり少ない力で済む。つまり、第1領域部分は、着用動作のしやすさに寄与する部分となっている。
【0013】
第2領域部分は、前述した構造であることにより、足甲(足甲及びその足裏部分を含む意味で使用する。以下同じ)を包むように適用することができ、着用後は、伸縮性により生じる締付圧力を以て適用位置で継続的に保持することができる。なお、第2領域部分は、所定長さの筒状部分であることから、二重に折り返し、着圧ストッキング全長方向における長さ調整に使用することもできる。
【0014】
第2領域部分の説明における「所定長さ」とは、着圧ストッキング全長方向における長さを意味し、本発明の設計思想上、例えば3cm以上~25cmの範囲内であることが好ましく、12cm以上~20cmの範囲内であることが更に好ましい。「所定長さ」は、3cm未満であると、足甲における適用位置の適当な箇所に保持し続ける保持力が不足するため、好ましくない。一方、「所定長さ」は、25cmを超えると、一般的な人の足長を考慮しても長過ぎ、第2領域部分の先端が足指部分にまでかかるため、足指部分の蒸れや可動領域の制限可能性を考慮すると好ましくなく、仮に、第2領域部分を二重に折り返して使用するとしても被覆する面積が拡大し、被覆部分の通気性が低下して蒸れが生じる可能性があるため好ましくなく、また、三重以上に折り返して使用することも可能であるが、前述の蒸れが生じる可能性に加え、設定値を超える締付圧力が生じて足及び皮膚への過度な負担(食い込む等)が生じる可能性もありうるので好ましくない。
【0015】
第3領域部分は、前述した構造であることにより、膝元(膝及びその直下、膝裏部分を含む意味で使用する。以下同じ)を包むように適用することができ、着用後は、伸縮性により生じる締付圧力を以て適用位置で継続的に保持することができる。なお、第3領域部分は、所定長さの筒状部分であることから、二重に折り返し、着圧ストッキング全長方向における長さ調整に使用することもできる。
【0016】
前述の通り、従来の着圧ストッキングは着用に苦労するものであったが、本発明の着圧ストッキングでは、第3領域部分の締付圧力が第1領域部分及び第2領域部分よりも弱く設定されていることにより、第1領域部分及び第2領域部分に足先を進める(換言すると、履く)動作を行う際に、第3領域部分を拡げやすく且つ第3領域部分に起因する抵抗が少ないので、高齢者が自ら着用する際であっても力が少なくて済むことから楽に着用することができ、また、介助者が着用させる際にも作業がしやすい。
【0017】
第3領域部分の説明における「所定長さ」とは、着圧ストッキング全長方向における長さを意味し、本発明の設計思想上、例えば5cm以上~15cmの範囲内であることが好ましく、7cm以上~10cmの範囲内であることが更に好ましい。「所定長さ」は、5cm未満であると、膝元における適用位置の適当な箇所に保持し続ける保持力が不足し、また、着用の際の掴み代(引き上げのために掴む部分)が小さくなるため、好ましくない。一方、「所定長さ」は、15cmを超えると、一般的な人の膝下の長さを考慮しても長過ぎ、相対的に第3領域部分の下部が脹脛にまでかかるため、第1領域部分における第1締付部分の作用効果が十分に発揮されなくなる可能性があり、また、着用の際の掴み代が大きくなりすぎて引き上げる力が分散されて着用に支障が出る可能性があることを考慮すると好ましくない。更に「所定長さ」が15cmを超えると、仮に、第3領域部分を二重に折り返して使用するとしても被覆する面積が拡大し、被覆部分の通気性が低下して蒸れが生じる可能性があるため好ましくなく、また、三重以上に折り返して使用することも可能であるが、前述の蒸れが生じる可能性に加え、設定値を超える締付圧力が生じて足及び皮膚への過度な負担(食い込む等)が生じる可能性もありうるので好ましくない。
【0018】
また、前述の着圧ストッキングは、第3領域部分の構成材が、第1領域部分よりも柔軟且つ平滑なものであり、第1開口部の口縁部分が第1領域部分との連結部位よりも拡張しやすく設けられているものであってもよい。
【0019】
本態様の着圧ストッキングは、第3領域部分が前述した構成であることにより、着用前後における着用者の負担を更に軽減することができる。詳しくは、本態様の着圧ストッキングによれば、足先を進める動作を行う際に、口縁が拡がりやすく(拡げやすく)且つ差し入れる足に対する滑りが良いので、着用動作が更に楽である。加えて、本態様の着圧ストッキングによれば、同部分が全体として平滑且つ第1開口部の口縁部分が柔らかい(拡張しやすい)ので、着用後に皮膚に痕が付きにくく食い込みによる痛みも生じにくい。つまり、本態様の着圧ストッキングによれば、着用前後における着用者の負担を更に軽減することができる。
【0020】
また、前述の着圧ストッキングは、第1領域部分において、第2締付部分と第1領域部分及び第2領域部分の連結部位の間に、長手方向に伸長しにくく、且つ、第2締付部分よりも弱圧な締付圧力を以て短手方向に伸縮可能な構造である、踵適用領域が設けられているものであってもよい。
【0021】
本態様の着圧ストッキングは、前述した位置に踵適用領域が設けられていることにより、相対的に足首に適用する第2締付部分の位置がわかりやすくなり、着用時に、本発明の企図する最大効果を発揮できる正しい方法で装着することができる。また、踵適用領域は前述した構成であることにより、着圧ストッキングに足を通して全体を引き上げる動作を行った際に、長手方向へ無駄に伸長せず、引き上げる力が分散しにくいので、引き上げを行うにあたり少ない力で済む。一方、踵適用領域は、短手方向への伸縮における締付圧力が第2締付部分よりも弱圧であることから、張り出した形状であると共に太い部分でもある踵に適用された際に窮屈さを緩和し、使い心地の向上に貢献する。
【0022】
また、前述の着圧ストッキングは、第2領域部分において8~10mmHgの範囲内の締付圧力が生じるように設定されると共に、第3領域部分において5~7mmHgの範囲内の締付圧力が生じるように設定されているものであってもよい。
【0023】
本態様の着圧ストッキングは、第2領域部分及び第3領域部分が前述した構成であることにより、着用前後における着用者の負担を更に軽減することができる。詳しくは、本態様の着圧ストッキングは、第2領域部分が前述した構成であることにより、従来品において相当する部分と比較して締付圧力が強過ぎず、進んだ足先が同部分に至ったときに第2開口部の口縁部分から足先を出しやすいので、着用動作が更に楽である。また、発明者の研究の結果、第2領域部分における締付圧力が前述した数値範囲内であれば、足甲部分の浮腫の症状が緩和(改善)されることが判明している。加えて、本態様の着圧ストッキングは、第3領域部分が前述した構成であることにより、従来品において相当する部分と比較して締付圧力が強過ぎず、着用後に皮膚に痕が付きにくい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の着圧ストッキングによれば、従来の同種品と比較して着用しやすく、着用時には必要な締付圧力が確保されて膝下の浮腫を緩和すると共に、着用部位における足及び皮膚への負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る着圧ストッキングの平面図である。
【
図2】(a)は
図1に示す着圧ストッキングの第2領域部分の折り畳み前後を示す説明図であり、(b)は
図1に示す着圧ストッキングの第3領域部分の折り畳み前後を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す着圧ストッキングを足に着用した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0027】
(着圧ストッキング1)
図1~
図3を参照して、着圧ストッキング1について説明する。着圧ストッキング1は、着用者の膝元から足甲に至る領域に着用可能なものであって、着用状態で体幹側となる第1開口部101と下肢先部側となる第2開口部102とが形成された筒状の胴部10を備える。胴部10は、通気性を有する伸縮性編地(通気性及び伸縮性を有する生地)製であり、第1領域部分11、第2領域部分12、及び、第3領域部分13を有する。各部については以下詳述する。
【0028】
(第1領域部分11)
第1領域部分11は、胴部10の長手方向中間に位置し、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造であり、第1締付部分111、第2締付部分112及び踵適用領域113が設けられている。
【0029】
第1締付部分111は、着用時において脹脛に適用される部分であり、着用前状態において、第1領域部分11の中間から第3領域部分13基端側に至る領域である(
図1参照)。第1締付部分111は、着用時において脹脛に対して8mmHgの締付圧力が生じるよう設定されている。
【0030】
本実施形態において、第1締付部分111は、構成生地の胴部周方向に8mmHgの締付圧力を生じせしめる弾性糸(第1の弾性糸)を挿入し、締付圧力(緊締力ともいう)が生じる構造に設けられているが、これに限定するものではなく、例えば、長手方向に伸長しにくく且つ短手方向に8mmHgの締付圧力を以て伸縮可能なものであれば、特に限定するものではない。
【0031】
第2締付部分112は、着用時において足首に適用される部分であり、着用前状態において、第1領域部分11の中間から第2領域部分12基端側に至る領域である(
図1参照)。第2締付部分112は、着用時において足首に対して11mmHgの締付圧力が生じるよう設定されている。
【0032】
本実施形態において、第2締付部分112は、構成生地の胴部周方向に11mmHgの締付圧力を生じせしめる弾性糸(第2の弾性糸)を挿入し、締付圧力が生じる構造に設けられているが、これに限定するものではなく、例えば、長手方向に伸長しにくく且つ短手方向に11mmHgの締付圧力を以て伸縮可能なものであれば、特に限定するものではない。
【0033】
踵適用領域113は、第2締付部分112と、第1領域部分11及び第2領域部分12の連結部位の間に設けられている。踵適用領域113は、長手方向に伸長しにくく、且つ、第2締付部分112よりも弱圧な締付圧力を以て短手方向に伸縮可能な構造である。踵適用領域113は、胴部10の周方向へ長径な楕円形であり、第1領域部分11の他の部分よりも薄手且つ僅かに長手方向に伸長可能な生地を立体編みとして踵の形状に合わせて膨出させて設けられている。
【0034】
本実施形態において、踵適用領域113は、前述の構造と成すべく第1領域部分11の他の部分と別の生地で設けているが、これに限定するものではなく、例えば、第2領域部12分や第3領域部分13と同様の生地で設けてもよく、他方、第1領域部分11の他の部分と同様の生地で設けることを除外するものではない。
【0035】
(第2領域部分12)
第2領域部分12は、胴部10の第2開口部102方向に位置し、長手方向に伸長しにくく短手方向に伸縮可能な構造であり、その先端が第2開口部102口縁であり、その基端が第1領域部分11との連結部分である位置に配設された長さ約18cmの筒状部分である。第2開口部102は、その口縁が第2領域部分12の胴部10の中間位置に係る周方向よりも、僅かに径小な(換言すると、絞られた)形状である。
【0036】
第2領域部分12は、着用時において足先(主に足甲)に適用される部分であり、第2締付部分112よりも径大であり、着用時において足甲に対して10mmHgの締付圧力が生じるよう設定されている。
【0037】
本実施形態において、第2領域部分12は、構成生地の胴部周方向に10mmHgの締付圧力を生じせしめる弾性糸(第3の弾性糸)を挿入し、締付圧力(緊締力ともいう)が生じる構造に設けられているが、これに限定するものではなく、例えば、長手方向に伸長しにくく且つ短手方向に10mmHgの締付圧力を以て伸縮可能なものであれば、特に限定するものではない。
【0038】
(第3領域部分13)
第3領域部分13は、胴部10の第1開口部101方向に位置し、その先端が第1開口部101口縁であり、その基端が第1領域部分11との連結部分である位置に配設された長さ8cmの筒状部分であって、胴部10の長手方向及び短手方向(胴部10の周方向)に伸縮可能な構造である。
【0039】
第3領域部分13は、着用時において膝元に適用される部分であり、第1締付部分111よりも僅かに径大であり、着用時において足甲に対して6mmHgの締付圧力が生じるよう設定されている。また、第3領域部分13は、その生地(構成材)が、第1領域部分11及び第2領域部分12よりも柔軟且つ平滑なものであり、第1開口部101の口縁部分が第1領域部分11との連結部位よりも拡張しやすく設けられている。
【0040】
なお、第1領域部分11、第2領域部分12及び第3領域部分13の説明において記載した締付圧力の各数値は、あくまで各領域部分における平均値であり、繊維製品である以上、各領域部分の更に一部分において平均値を僅かに上回る又は下回る(概ね各平均値から上下1mmHgの誤差が生じる)こともあり得る。
【0041】
(作 用)
図1~
図3を参照して、本実施形態の着圧ストッキング1の作用効果について説明する。着圧ストッキング1は、前述した各部を備えることにより、以下の作用効果を奏する。
【0042】
着圧ストッキング1は、着用者の足Fを第1開口部101から入れて胴部10を通過させ、第2開口部102から足先(足甲よりも先)を出すようにして着用し、第2領域部分12が足甲に、第3領域部分13が膝元に、第1領域部分11が脹脛乃至足首に、それぞれ適用させる。そして、着圧ストッキング1は、足Fへの着用時において、前述した各領域11・12・13は、通気性を有するため適用箇所が蒸れず、且つ、伸縮性を有するため足Fに対して適度な圧迫を加える。
【0043】
第1領域部分11は、前述した構造であることにより、膝下部分を包むように適用することができ、着用後は当該部分から生じる適度な締付圧力(従来品よりも弱圧な8~11mmHgの範囲内の締付圧力)を以て着用者の膝下部分における浮腫の緩和に寄与することができる。
【0044】
なお、第1領域部分11は、一般的な浮腫(特に老人に生じる浮腫)に対しては、第1締付部分111が脹脛に8mmHgの締付圧力を加え、且つ、第2締付部分112が足首に11mmHgの締付圧力を加える。これら締付圧力の付与により、着用者の浮腫の症状が緩和(改善)され、一方、当該締付圧力の範囲内であれば、着用部位の皮膚に対する過度な食い込みが抑制され、着用時の違和感も少ない。
【0045】
更に、第1領域部分11は、前述した構造であることにより、着圧ストッキング1に足Fを通して全体を引き上げる動作を行った際に、長手方向へ無駄に伸長せず、引き上げる力が分散しにくいので、引き上げを行うにあたり少ない力で済む。つまり、第1領域部分11は、着用動作のしやすさに寄与する部分となっている。
【0046】
第1領域部分11は、構成生地の胴部周方向に前述した少なくとも2種類の弾性糸を挿入して締付圧力が生じる構造に設けたことにより、第1締付部分111と第2締付部分112における締付圧力の差別化を実現している。なお、本実施形態では、第1領域部分11において締付圧力の相違が2段階であるが、これに限定するものではなく、例えば、3種類以上の弾性糸を挿入して3段階以上の相違する締付圧力が生じる構造に設けた態様であってもよい。
【0047】
前述した位置に設けた踵適用領域113は、相対的に足首に適用する第2締付部分112の位置がわかりやすくし、着用時に、本発明の企図する最大効果を発揮できる正しい方法で装着することができる。
【0048】
また、踵適用領域113は、着圧ストッキング1に足を通して全体を引き上げる動作を行った際に、長手方向へ無駄に伸長せず、引き上げる力が分散しにくいので、引き上げを行うにあたり少ない力で済む。一方、踵適用領域113は、短手方向への伸縮における締付圧力が第2締付部分112よりも弱圧であることから、張り出した形状であると共に太い部分でもある踵に適用された際に窮屈さを緩和し、使い心地の向上に貢献する。
【0049】
第2領域部分12は、前述した構造であることにより、足甲を包むように適用することができ、着用後は、伸縮性により生じる締付圧力を以て適用位置で継続的に保持することができる。加えて、第2領域部分12は、前述した数値の締付圧力を以て足甲部分の浮腫の症状を緩和(改善)する。
【0050】
また、第2領域部分12は、長さ約18cmの筒状部分であることから、二重に折り返し、着圧ストッキング1の全長方向における長さ調整に使用することもできる。そして、第2領域部分12は、その長さが約18cmであることから、一般的な人の足長を考慮すると、足指部分の蒸れや可動領域の制限可能性を懸念する必要がほぼ無い適当な長さであって、足甲における適用位置の適当な箇所に保持し続ける保持力も十分であり、仮に、第2領域部分12を二重に折り返して使用するとしても被覆する面積(長さ方向に9cm程度)が小さくて済むので、折り返した被覆部分に起因する通気性の低下や足及び皮膚への過度な負担の発生可能性が低い。
【0051】
更にまた、第2領域部分12は、従来品において相当する部分と比較して締付圧力が強過ぎず、進んだ足先が同部分に至ったときに第2開口部102の口縁部分から足先を出しやすいので、着圧ストッキング1の着用動作が更に楽であり、着用前後における着用者の負担を更に軽減することができる。
【0052】
第3領域部分13は、膝元を包むように適用することができ、着用後は、伸縮性により生じる締付圧力を以て適用位置で継続的に保持することができる。加えて、着圧ストッキング1の第3領域部分13は、従来品において相当する部分と比較して締付圧力が強過ぎず、着用後に皮膚に痕が付きにくい。
【0053】
また、第3領域部分13は、長さ8cmの筒状部分であることから、二重に折り返し、着圧ストッキング1の全長方向における長さ調整に使用することもできる。そして、第3領域部分13は、長さ8cmの筒状部分であることから、一般的な人の膝下の長さを考慮しても丁度良く、膝元における適用位置の適当な箇所に保持し続ける保持力が十分であると共に、着用の際の掴み代(引き上げのために掴む部分)としても大きさが十分であり、仮に、第3領域部分13を二重に折り返して使用するとしても被覆する面積(長さ方向に4cm程度)が小さくて済むので、折り返した被覆部分に起因する通気性の低下や足及び皮膚への過度な負担の発生可能性が低い。
【0054】
更に、第3領域部分13は、前述した構成であることにより、着用前後における着用者の負担を更に軽減することができる。詳しくは、前述した構成の第3領域部分13を有することにより、足先を進める動作を行う際に、口縁が拡がりやすく(拡げやすく)且つ差し入れる足に対する滑りが良いので、着用動作が更に楽である。加えて、前述した構成の第3領域部分13を有することにより、同部分が全体として平滑且つ第1開口部101の口縁部分が柔らかい(拡張しやすい)ので、着用後に皮膚に痕が付きにくく食い込みによる痛みも生じにくい。
【0055】
着圧ストッキング1では、第3領域部分13の締付圧力が第1領域部分11及び第2領域部分12よりも弱く設定されていることにより、第1領域部分11及び第2領域部分12に足先を進める動作を行う際に、第3領域部分13を拡げやすく且つ第3領域部分13に起因する抵抗が少ない。
【0056】
このような第3領域部分13を有することにより、着圧ストッキング1は、従来の着圧ストッキングと比較して、高齢者が自ら着用する際であっても力が少なくて済むことから楽に着用することができ、また、介助者が着用させる際にも作業がしやすいものとなっている。
【0057】
このように、着圧ストッキング1によれば、胴部10を構成する第1領域部分11、第2領域部分12及び第3領域部分13が協働することにより、従来の同種品と比較して着用しやすく、着用時には必要な締付圧力が確保されて膝下の浮腫を緩和すると共に、着用部位における足及び皮膚への負担を軽減することができる。
【0058】
本実施形態では、第1~第3の弾性糸としてNDX(登録商標)ゴム糸を使用しており、該ゴム糸はその長短による伸縮性及び胴部の外径の大小によって締付圧力の差別化を実現しているが、これに限定するものではなく、例えば、太さや伸縮力が異なる弾性糸を使用、又は、生地の織り方或いは織り方の異なる生地の組み合わせ等によって締付圧力の差別化を実現したものであってもよい。
【0059】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0060】
1 着圧ストッキング1
10 胴部
101 第1開口部
102 第2開口部
11 第1領域部分
111 第1締付部分
112 第2締付部分
113 踵適用領域
12 第2領域部分
13 第3領域部分
F 足(膝下)