(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161338
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】多孔性材料画像ファイルのバーチャルツインを生成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G16C 60/00 20190101AFI20241112BHJP
【FI】
G16C60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064577
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】18/312,388
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジェボム
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,ラリサ
(72)【発明者】
【氏名】トッド,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】サラザール-ティオ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】バラスブラマニアン,ガナパティ ラマン
(72)【発明者】
【氏名】スキナー,クワン
(72)【発明者】
【氏名】シュワイツァー,サビニ
(57)【要約】
【課題】 多孔性材料画像ファイルのバーチャルツインを生成するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】 多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像が生成される。多孔性材料系の化学ベースの3D構造が生成され、及び3D構造のコノリー表面が決定される。コノリー表面から3D化学ベース構造のボリュームフィールドが計算される。ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式のレイヤファイルが生成される。テキスト形式のレイヤファイルは、RAW形式のCTライクバイナリ画像ファイルに変換される。バイナリ画像ファイルは、白黒画像又はグレースケール画像に変換される。多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成するために細孔径分析(PSA)シミュレーションが行われる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造のために多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成するためのコンピュータベースの方法であって、
前記多孔性材料の化学ベースの三次元(3D)構造を生成するステップと、
前記化学ベースの3D構造のコノリー表面を決定するステップと、
前記コノリー表面から前記3D化学ベース構造のボリュームフィールドを計算するステップと、
前記ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式ファイルを生成するステップと、
前記テキスト形式のレイヤファイルをRAW形式のCTライクバイナリ画像ファイルに変換するステップと
を含むコンピュータベースの方法。
【請求項2】
前記バイナリ画像ファイルを画像に変換するステップと、
前記多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成するために細孔径分析(PSA)を行うステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有する前記テキスト形式ファイルを生成することは、
x、y及びz軸における予め定義された増分で前記3D化学ベース構造内に3Dグリッドをプロットするステップと、
前記3Dグリッドの点ごとに、前記対応するボリュームフィールドの位置が粒子又は細孔に対応するかどうかを決定するステップと、
前記3Dグリッドに基づき、各グリッド位置を粒子又は細孔の何れかとして表すバイナリ形式において、結果として得られるxyz行列をテキスト形式のレイヤファイルに書き込むステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テキスト形式のレイヤファイルをRAW形式の前記バイナリ画像ファイルに変換することは、
前記テキスト形式のレイヤファイルを開くステップと、
3D行列のためのメモリ空間を割り振るステップと、
前記テキスト形式のレイヤファイルから前記xyz行列のx、y、zの値を逐次的に読み出すステップと、
前記3D行列の要素に数値を割り当てるステップと、
前記3D行列に割り振られたメモリコンテンツをバイナリ形式の出力ファイル内に書き込むステップと
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
多孔性材料系の化学ベースの3D構造を生成することは、メソスケールレベルで前記多孔性材料をモデリングするステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メソスケールレベルで前記多孔性材料をモデリングすることは、散逸粒子動力学(DPD)シミュレーションを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多孔性材料系内の各粒子の溶解度パラメータを使用して、DPD力場入力パラメータを生成するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔性材料系のエネルギー最小化及び平衡化を決定するステップと、
前記多孔性材料の機械的特性を得るためにDPDシミュレーションを実施するステップと
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔性材料の機械的特性を決定することは、類似の材料の実験的な機械的特性を使用することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
実験データが入手可能でない場合、全原子分子動力学(MD)シミュレーションから前記多孔性材料の前記機械的特性を得るステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
メソスケールレベルで前記多孔性材料をモデリングすることは、粗視化(CG)シミュレーションを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
エレメンタリボリューム内に粒子をランダムに配置することにより、粗視化初期構造を構築するステップと、
前記材料の密度を調節するために、エネルギー最小化後に等温等圧条件でCG分子動力学(MD)シミュレーションを実施するステップと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
多孔性材料をモデリングし、前記多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成し、及び製造のために前記多孔性材料を分析するためのシステムであって、プロセッサと、前記プロセッサによって実行されるとき、以下のアプリケーションモジュール、即ち
化学ベースの材料モデル生成器であって、
前記多孔性材料の化学ベースの三次元(3D)構造を生成するステップと、
前記化学ベースの3D構造のコノリー表面を決定するステップと
を行うように構成される化学ベースの材料モデル生成器、
CT画像シミュレータであって、
前記コノリー表面から前記3D化学ベース構造のボリュームフィールドを計算するステップと、
前記ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式ファイルを生成するステップと、
前記テキスト形式のレイヤファイルをRAW形式のCTライクバイナリ画像ファイルに変換するステップと
を行うように構成されるCT画像シミュレータ、及び
多孔性材料分析器であって、
前記バイナリ画像ファイルを受信するステップと、
前記バイナリ画像ファイルを前記多孔性材料の3D画像に変換するステップと、
前記多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成するために細孔径分析(PSA)を行うステップと
を行うように構成される多孔性材料分析器
を実装する非一時的命令を記憶するように構成されるメモリとを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多孔性材料の化学ベースの3Dモデリングに関し、より詳細には、モデリングされた微細構造のイメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多孔性材料を分析する際の本来の及び典型的なワークフローは、マイクロCT(マイクロメータコンピュータ断層撮影)及びFIB-SEM(集束イオンビーム走査型電子顕微鏡)等の実験的顕微鏡3Dイメージング技法の使用から始まる。これらの実験的3D画像は、分析される材料の3D構造を再構築するために利用される。しかし、この画像ベースのワークフローは、新たに設計される材料、存在しない材料及び仮想的に設計される材料並びに一般的な実験測定の限界未満のナノ細孔を有する多孔性材料等、実験データが入手可能できないいかなる材料にも適用することができない。粗視化シミュレーション法から生成された電池電極構造の流体流動シミュレーションに格子ボルツマン法(LBM)ベースのアプリケーションが使用されてきたが、LBM法は、全般的な枠組みを含まない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
実験的なマイクロCT画像又はFIB-SEM画像は、多くの場合、入手不可能であるか又は周囲条件でのみ測定され、温度及び圧力条件が周囲条件よりもはるかに高い可能性がある現場条件で測定されない。これは、イメージングされる実際の微細構造に影響を与え得る。加えて、このような実験は、検出される細孔の大きさに対する制限を有し(例えば、0.01マイクロメートルのオーダー)、多くの場合、それらの小さい細孔は、捕捉画像内で統計的に表現する必要がある桁違いに大きい細孔と共存する。更に、ナノメートルスケールの細孔を走査し、その画像を作成することは、困難であり、費用もかかる。更に、材料の固有の化学的性質に応じて、細孔の大きさ、形状、分布、チャネル等は、異なる条件下で変化し得る。従って、新たに設計される材料、存在しない材料及び仮想的に設計される材料及び/又は一般的な実験測定の限界未満のナノ細孔を有する多孔性材料について、正確なCTライク画像を合成することが当業界で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明の実施形態は、多孔性材料のバーチャルツインを生成するためのシステム及び方法を提供する。簡単に説明すると、本発明は、多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成することを対象とする。多孔性材料系の化学ベースの3D構造が生成され、及び3D構造のコノリー表面が決定される。コノリー表面から3D化学ベース構造のボリュームフィールドが計算される。ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式のレイヤファイルが生成される。テキスト形式のレイヤファイルは、RAW形式のCTライクバイナリ画像ファイルに変換される。バイナリ画像ファイルは、白黒画像又はグレースケール画像に変換される。多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成するために細孔径分析(PSA)シミュレーションが行われる。
【0005】
本発明を実装するシステムは、実験からのCTライク画像が一切なくても、多孔性材料の構造特性及び多孔性材料における流動特性の調査を容易にする。
【0006】
以下の図面及び詳細な説明を考察することで本発明の他のシステム、方法及び特徴が当業者に明らかであるか又は明らかになる。全てのそのような追加のシステム、方法及び特徴がこの説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることを意図する。
【0007】
図面の簡単な説明
添付図面は、本発明の更なる理解を与えるために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、むしろ本発明の原理を明確に示すことに重点が置かれている。図面は、本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】Materials StudioのMesociteから生成された多孔性電極の3D構造を示す概略図である。
【
図1B】LAMMPSから生成された多孔性電極の3D構造を示す概略図である。
【
図2A】
図1Aの3D構造からボリュームフィールドデータを生成することを示す概略図である。
【
図2B】
図1Bの3D構造からボリュームフィールドデータを生成することを示す概略図である。
【
図3A】
図2Aのボリュームフィールドデータのボリュームフィールドデータから画像ファイルを生成することを示す概略図である。
【
図3B】
図2Bのボリュームフィールドデータのボリュームフィールドデータから画像ファイルを生成することを示す概略図である。
【
図4A】DigitalROCKのMaterials Studio(Mesociteモジュール)からの3D構造の原画像及び処理済み画像を並べて示す。
【
図4B】DigitalROCKにおけるLAMMPS(DPP2モデル)からの3D構造の原画像及び処理済み画像を並べて示す。
【
図5A】Materials StudioのMesociteからの3D構造の粒子(上)、細孔サイト(中央)及び細孔径分布プロット(下)を描写する図を示す。
【
図5B】LAMMPSのDPP2モデルからの3D構造の粒子(上)、細孔サイト(中央)及び細孔径分布プロット(下)を描写する図を示す。
【
図5C】
図5AによるMesociteからの3D構造のグラフィカルな細孔径分布を示す。
【
図5D】
図5BによるDPP2モデルからの3D構造のグラフィカルな細孔径分布を示す。
【
図6】特定の飽和濃度の液体によって飽和した材料の可視化された細孔構造(左上)、液体飽和濃度対高さ位置のプロット(右上)及び液体飽和度に対する毛管圧のプロット(下)を示す。
【
図7】多孔性材料のCTライク画像を生成するための例示的方法の実施形態のフローチャートである。
【
図8】
図7による、ボリュームフィールドをテキスト形式のファイルに変換するための例示的方法のフローチャートである。
【
図9】
図7による、テキスト形式のレイヤファイルをバイナリ画像ファイルに変換するための例示的方法のフローチャートである。
【
図10】本発明の機能を実行するためのシステムの一例を示す概略図である。
【
図11】多孔性材料をモデリングし、多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成し、及び製造のために多孔性材料を分析するためのシステムの例示的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の定義は、本明細書で開示する実施形態の特徴に適用される用語を解釈するのに有用であり、本開示内の要素を定義することのみを意図する。
【0010】
本開示で使用するとき、マイクロCTは、マイクロメータコンピュータ断層撮影を指し、FIB-SEMは、集束イオンビーム走査電子顕微鏡を指し、LBMは、格子ボルツマン法(格子に基づく応用による流体流動シミュレーション)を指す。本明細書では、マイクロCTによって生成された画像をCT画像と呼ぶ。概して、CT走査は、X線及びコンピュータを使用して、被写体の断面の一連のレイヤ画像で構成されるCT画像を生成する。従来、FIB-SEM画像及びCT画像を生成するために、マイクロCT又はFIB-SEM用の実世界の多孔性材料のサンプルを使用する必要があった。
【0011】
本開示で使用するとき、「CTライク画像」又は「擬似マイクロコンピュータ断層撮影画像」は、多孔性材料のサンプルに対して実際のCT又はFIB-SEMイメージング操作を行うのではなく、多孔性材料をモデリングすることによって得られるCT画像形式の多孔性材料の画像データを指す。CTライク画像は、その後の処理及び/又はシミュレーションのためにCT画像の代わりに使用することができる。
【0012】
本開示では、原子論的、粗視化及び散逸粒子動力学(DPD)の3種類のシミュレーションに言及する。
【0013】
原子論的シミュレーションに関して、原子シミュレーション環境(ASE)は、原子論的シミュレーションの設定、操作、実施、可視化及び分析のためのツール及びモジュールの組である。コードは、オープンソースライセンス下で自由に利用できる。ASEは、中心となる原子オブジェクト及びASEで利用可能な多くのアルゴリズムと共に使用される計算機によって様々なコードへのインタフェースを提供する。
【0014】
粗視化モデリング/モデルは、粗視化(簡略化)表現を用いて複雑系の挙動をシミュレーションすることを目的とする。
【0015】
DPDエミュレーションに関して、散逸粒子動力学(DPD)は、連続空間及び離散時間内で運動する粒子の組を含む格子外のメゾスコピックシミュレーション技法である。粒子は、単一の原子ではなく、分子全体又は流体領域を表し、原子論的な詳細は、取り組まれるプロセスに関係ないと考えられる。粒子の内部自由度は、積分消去され、単純化された対の散逸力及びランダム力によって置換され、運動量を局所的に保存し、正しい流体力学的挙動を保証する。この方法は、従来の分子動力学(MD)シミュレーションを使用して実現可能であるよりも長い時間スケール及び長さスケールを与える。数十マイクロ秒にわたる、長さ寸法で最大100nmまでのボリュームにおける高分子流体のシミュレーションが可能である。
【0016】
本開示で使用するとき、「動的粒子パッキング2(DPP2)」とは、リチウムイオン電池の微細構造、具体的には電池の正極コンポーネントを予測するために開発されたモデルを指し、そのような電池の容量、サイクル寿命及び安全性を最適化するために使用することができる。DPP2は、DPP1動的粒子パッキング(DPP)微細構造モデルを改善するものである。DPP1モデルは、ニュートンの運動法則を用いて周期境界下で球状粒子を移動させることにより、最終又は乾燥電極の構造をシミュレーションする。DPP2は、溶媒効果も含み、スラリーコーティング、乾燥及びカレンダリングプロセスのシミュレーションに使用される。
【0017】
本開示で使用するとき、「LAMMPS(大規模原子/分子超並列シミュレータ)」は、材料のモデリングに重点を置いた古典的な分子動力学コードを指す。
【0018】
本開示で使用するとき、「メソスケール」とは、10nm~100μmの直径範囲を有する分子/細孔を指す。
【0019】
本開示で使用するとき、「コノリー表面」とは、分子構造とその環境との間の境界を定める表面を指す。コノリー表面の形状は、構造を検査するために使用されるプローブの半径に依存する。
【0020】
本開示で使用するとき、「BIOVIA」とは、製薬、バイオテクノロジー、消費者向けパッケージ商品、航空宇宙、エネルギー及び化学産業向けの化学、材料及び生物科学研究のためのソフトウェアを提供する、米国に本拠を置くソフトウェア企業を指す。
【0021】
本開示で使用するとき、「Materials Studio」とは、材料をシミュレーション及びモデリングするための商用ソフトウェアベースのプラットフォームを指す。Materials Studioは、BIOVIAによって開発及び配布されている。
【0022】
本開示で使用するとき、「Forcite」は、BIOVIA Materials Studioの古典分子力学ツールであり、分子及び周期系の構造最適化並びに力学的、熱力学的及び機械的特性を計算する。例えば、Forciteは、モデリングされた材料に対するエネルギー最小化及び平衡化を行うためのモジュールを有する。
【0023】
本開示で使用するとき、「カノニカル条件」とは、原子論的シミュレーションに使用されるのと同様の条件(温度、圧力等)下に粗視化モデルが置かれることを指す。本開示で使用するとき、「RAWファイル」とは、画像データが非圧縮及び未処理の画像である画像ファイル、例えばデジタルカメラ又はスキャナセンサによって捕捉されるデータを指す。
【0024】
ここで、添付図面にその例を示す本発明の実施形態を詳細に参照する。同じ又は同様の部分を指すために、可能な限り同じ参照番号を図面及び説明で使用する。
【0025】
本発明の実施形態は、マイクロメートルスケールの長さにおける材料の固有の化学的性質に基づき、多孔性材料モデルから合成されたCTライク画像を生成した。本実施形態は、実験情報なしにCTライク画像を生成するために、多孔性材料の流動特性のマイクロスケールレベルでのモデリング及び最適化を可能にする。従来、流動挙動をモデリングするために材料サンプルの画像が必要であった。この画像は、例えば、マイクロCT及び/又はFIB/SEMから得られていた。本発明の例示的実施形態は、物理的材料サンプルの画像の代わりに、3D化学に基づくモデルを入力として使用する。実施形態は、例えば、Dassaultの3DEXPERIENCEプラットフォーム等のデータモデリング及びシミュレーションエコシステム内で全てのステップを行うことにより、完全に自動化された最適化プロセスを組み込むことができる。
【0026】
本実施形態は、実世界の多孔性材料に対する実験を一切行うことなく、多孔性材料の構造特性及び多孔性材料における流動特性を研究者が調査することを可能にする。これは、合成(又は購入)されていない微孔性材料をスクリーニングする機能並びに実験的に測定することが困難又は不可能である温度及び圧力の極限条件下での微孔性材料の挙動を決定する機能を提供する。以下に記載する例示的実施形態は、球状粒子及び/又は様々な大きさの球状粒子として表される材料を対象とする。代替的実施形態では、非球状粒子をモデリングすることができる。
【0027】
この実施形態は、例えば、BIOVIAのMaterials Studio内のMesociteモジュール、及び/又はLAMMPS、及び/又はGROMACS、及び/又は他の離散要素法(DEM)パッケージ、及び/又は他の粗視化パッケージを使用し、多孔性材料の化学ベースの仮想3Dモデルがシミュレーションされ、CTライク画像に変換されるワークフローを組み込む。画像は、画像分析に基づいて多孔性材料の流動特性をモデリングするためのソフトウェア、例えばSIMULIAのDigitalROCK又は他のモデリングソフトウェアによって入力として受け取られる。更に、このワークフローは、材料及び微細構造を含む大域的最適化を目的とし、3DEXPERIENCEプラットフォーム等のシミュレーション最適化エコシステム内で自動化することができる。
【0028】
本実施形態は、時間のかかる無駄で高価な実験を行う必要性を低減する「モデルファースト」手法を提供する。更に、例えば3DEXPERIENCE内でワークフローを実装することにより、実施形態がクラウド内で実装される場合、化学ベースの多孔性媒体のバーチャルツインエクスペリエンスは、多くの産業のイノベーションを加速させ得る。
【0029】
モデル多孔性材料のモデリングは、実験結果の基礎の上に構築されてきた。しかし、これらの結果をもたらす実験は、実世界の条件及びシナリオを正しく反映する実験結果を得るのが困難であることを含め、幾つかの要因によって制限されることが多い。更に、実験は、実施が困難若しくは非現実的であり得るか、又は例えばマイクロメートルスケール以下の非常に小さい粒径及び細孔径について信頼できない結果をもたらし得る。例示的実施形態は、固有の化学的性質に基づいて及びマイクロメートルスケール以下の長さまで多孔性材料をモデリングするように、多孔性材料をより正確にモデリングする。
【0030】
以下に示す例示的方法の実施形態は、ステップ4及び5(下記を参照されたい)のためのクラウドコンピューティング環境内のGUIベースのCADシステム、例えばDassault Systemesの3DEXPERIENCEプラットフォームに関連して説明される。必要に応じて、コマンドラインインタフェースのスクリプトによってこれらのステップを行うことも可能である。
【0031】
最初のステップ(「ステップ1」)では、計算化学的手法を用いて多孔性材料系の化学ベースの3D構造を生成する。第1の例示的実施形態は、メソスケールレベルの構造のモデリングを対象とするが、代替的実施形態では、スケール及び計算法に制限はない。第1の実施形態では、2つの異なるシミュレーション法、例えば1)Materials Studio内のMesociteモジュールを用いた散逸粒子動力学(DPD)シミュレーション、及び2)LAMMPSを用いた動的粒子パッキング2(DPP2)モデルに基づく粗視化(CG)シミュレーションによる2つのメソスケール多孔性電極構造を本明細書で使用することができる。
【0032】
例えば、Dassault Systemes BIOVIA Materials Studio内のMesociteを使用し、まずMaterials Studio内のMesostructureツールを使用してメソスケール3D構造を構築する。次に、系内の各粒子の溶解度パラメータを使用して、DPD力場(入力パラメータ)を作成する。例えば、溶解度パラメータは、実験データから得ることができるか、又はMaterials Studio内のForciteモジュールを使用した原子論的分子動力学(MD)シミュレーション若しくはCOSMOthermから計算することができる。高分子化合物の溶解度パラメータは、Materials Studio内のSynthiaからも得ることができる。エネルギー最小化及び平衡化後にDPDシミュレーションが行われ、Materials Studioを使用して機械的特性を得る。
【0033】
類似の材料の実験的な機械的特性が入手可能な場合、ユーザは、シミュレーション結果と実験結果とを直接比較することができる。
【0034】
実験データが得られない系では、各化合物の全原子分子動力学(MD)シミュレーションから得られた特性を参考として利用すべきである。
図1Aは、Materials Studio内のMesociteから生成した多孔性電極の3D構造を示す。
【0035】
LAMMPSでは、以下のように粗視化DPP2モデルを作成することができる。まず、ボックス内に粒子をランダムに配置することにより、粗視化された初期構造を構築し、ボックスとは、x次元、y次元、z次元の3次元の代表単位を指す。計算コストのため、化学系、材料系又は生物系全体をモデリングすることは、現実的ではないが、実際の系が、ボックス内のモデリングされた構造から周期的に複製された系に近似され得るという仮定下において、関心のある分子系のごく一部で系を設定することは、現実的(及び合理的)である。シミュレーション中にボックスのサイズを調節して、モデル系の密度を実系又は標的系に一致させることができるため、ボックスのサイズは、最初に、標的密度から計算されるサイズよりもわずかに大きいサイズに設定される。その後、材料の密度を調節するために、(例えば、Forciteを用いた)エネルギー最小化後に等温等圧条件でCG MDシミュレーションを実施することができる。実験密度が入手可能な場合、シミュレーション結果と実験結果とを直接比較することができる。必要に応じて、ユーザは、シミュレーション結果と実験結果との間のより優れた一致を得るために、DPP2パラメータを調節することができる。実験データが得られない系では、各化合物の全原子分子動力学(MD)シミュレーションから得られた特性を参照として利用することができる。次いで、カノニカル条件内で上記の平衡化された構造を使用してCGシミュレーションを実施し、ユーザがモデルを検証するための構造的及び機械的特性を得る。
図1Bは、LAMMPSから生成された多孔性電極の3D構造を示す。
【0036】
第1の例示的実施形態の第2のステップ(「ステップ2」)では、当業者によく知られているように、モデリングされた構造のコノリー表面に基づいて3D構造のボリュームフィールドが計算される。ボリュームフィールドは、ある位置が標的分子構造の材料又は粒子によって占有されているかどうかを決定するためのメトリックとして使用される。
【0037】
例えば、BIOVIAソフトウェア内のスクリプトを使用することにより、3D構造のボリュームフィールド情報をレイヤごとに含むテキスト形式ファイルが生成される。
図2Aは、Materials Studio内のMesociteを使用してシミュレーションされた3D構造からボリュームフィールドデータを生成することを示す。テキスト形式ファイルでは、最初の3列が3D構造の座標又は画像ファイル内のピクセル位置を表し、最後の列は、この位置が粒子(0)又は細孔(1)によって占められているかどうかを示す。
図2Bは、LAMMPS内のDPP2モデルを使用してシミュレーションされた3D構造からボリュームフィールドデータを生成することを示す。
【0038】
図8は、ボリュームフィールドをテキスト形式ファイルに変換するための例示的方法の実施形態のフローチャートである。ここでは、ボリュームフィールドがレイヤ(z軸)にスライスされ、その後、x-y面内のグリッドに区分される。本発明の技術分野の当業者によって理解されるように、フローチャート内のいかなるプロセスの説明又はブロックも、プロセス内の特定の論理機能を実装するための1つ又は複数の命令を含むモジュール、セグメント、コードの一部又はステップを表すものとして理解されるべきであり、関与する機能にもよるが、図示するか又は論じたのと異なるほぼ同時又は逆順を含む順序で機能が実行され得る代替的実装形態が本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0039】
ブロック810によって示すように、x、y及びz軸における予め定義された増分で3Dグリッドの点が標的分子構造内に生成される。ブロック820によって示すように、3Dグリッドの点ごとに、対応するボリュームフィールドの値が粒子によって占有されているか(ボリュームフィールド<=0.0)、又は空孔若しくは細孔であるか(ボリュームフィールド>0.0)を決定する。ブロック830によって示すように、結果として得られるxyz行列は、各位置におけるバイナリ形式(0:粒子、1:細孔)のテキスト形式のレイヤファイルにプリントされる。
【0040】
第1の例示的実施形態の第3のステップ(「ステップ3」)では、以下で更に説明するように、テキスト形式のレイヤファイルがRAW画像形式のバイナリ画像ファイルに変換される。
図3A及び
図3Bによって示す画像ファイルでは、白い領域が粒子を表し、黒い領域が細孔を表す。
【0041】
図9は、テキスト形式のレイヤファイルをバイナリ画像ファイルに変換するための例示的方法のフローチャートである。ブロック910によって示すように、ブロック830(
図8)からのテキスト形式のレイヤファイルが開かれる。ブロック920によって示すように、次元Lx、Ly、Lz及びデータ型floatの3D行列のためのメモリ空間が割り振られる。ブロック930によって示すように、x、y、zの値がテキスト形式のレイヤファイルのxyzの行列_xyzから逐次的に読み出される。ブロック940によって示すように、3D行列の各レイヤLの要素に数値が割り当てられる。
行列[i]=行列_xyz、ここで、i=x+y
*Lx+z
*Lx
*Lyである (式1)
ブロック950によって示すように、3D行列に割り振られたメモリコンテンツがバイナリ形式の出力ファイル内に書き込まれる。CT画像ファイルを受け入れるように構成される外部アプリケーションが入力としてファイルを受け入れることができるように、ここでの出力ファイルは、擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像形式である。
【0042】
第1の例示的実施形態の第4のステップ(「ステップ4」)では、CT画像を入力として受け入れるように構成される材料分析アプリケーション、例えばDigitalROCK内に第3のステップで生成された画像ファイルがアップロードされ、そこで処理され、白黒画像又はグレースケール画像に変換される。
図4Aは、DigitalROCK内のMaterials Studio(Mesociteモジュール)からの3D構造の原画像及び処理済み画像を並べて示す。
図4Bは、DigitalROCK内のLAMMPS(DPP2モデル)からの3D構造の原画像及び処理済み画像を並べて示す。
【0043】
第1の例示的実施形態の第5のステップ(「ステップ5」)では、
図5A及び
図5Bによって示すように、DigitalROCK等の材料分析アプリケーション内でPSA(細孔径分析)シミュレーションを実施した後、アプリケーションは、CTライク画像ファイルによって提出された材料構造の粒子510、511及び細孔520、521について画像を生成することができる。
【0044】
第5のステップ下で行われる分析は、ランダムに配置されたプローブ材料を活用し、このプローブ材料が系内の粒子と重なるかどうかを決定するボイドボリューム分析法と比較し、実験的な水銀圧入測孔法によるものに近い細孔構造及び分布を提供する。この従来のボイドボリューム分析法の性能は、プローブ材料の種類に依存し、この方法は、プローブ材料がアクセスできないボイドボリューム又は細孔を検査できないが、DigitalROCKは、生成画像に基づいて細孔全体にアクセスすることができる。加えて、材料内部のグラフィカルな細孔径分布530、531並びに
図5C及び
図5Dによって示すように細孔径分布プロットも利用可能である。
【0045】
図6によって示すように、異なる種類の流体の飽和度の関数として絶対浸透率及び相対浸透率並びに毛管圧等の特性を計算するために、流体流動シミュレーションが材料分析アプリケーションによってもたらされることもある。ここでは、電極内部の飽和細孔を可視化する、シミュレーションされた多孔性電極構造における電解質の膨潤が示されている。
図6は、特定の飽和濃度の液体によって飽和した材料の可視化された細孔構造(左上)、液体飽和濃度対高さ位置のプロット(右上)及び液体飽和度に対する毛管圧のプロット(下)を示す。
【0046】
図7は、多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成するための、上述の第1の例示的方法を要約したフローチャートである。ブロック710によって示すように、多孔性材料系の化学ベースの3D構造が構築される。例えば、これは、原子論的シミュレーション、粗視化シミュレーション又はDPD(散逸粒子動力学)シミュレーションを行うためのパラメータを計算することと、原子論的シミュレーション、粗視化シミュレーション又はDPDシミュレーションを実施することとを含み得る。ブロック720によって示すように、化学ベースの3D構造のコノリー表面が決定される。ブロック730によって示すように、コノリー表面からの3D化学ベース構造のボリュームフィールドが計算される。このボリュームフィールドは、レイヤ(セグメント)にスライスされる。ブロック740によって示すように、ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式ファイルが生成される(
図8を参照されたい)。スライスされたボリュームフィールドは、RAW形式の画像ファイルに変換される。まず、ブロック750によって示すように、テキスト形式のレイヤファイルがRAW形式のバイナリ画像ファイルに変換される(
図9を参照されたい)。次に、ブロック760によって示すように、バイナリ画像ファイルがCTライクの白黒画像又はグレースケール画像に変換される。ブロック770によって示すように、多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成するために細孔径分析(PSA)シミュレーションが行われる。例えば、細孔スケールシミュレーションは、コマンドラインインタフェースのスクリプトを実施することによって又はGUI(グラフィカルユーザインタフェース)によって絶対/相対浸透率及び毛管圧をモデリングすることができる。例示的実装形態では、クラウドベースの3DEXPERIENCEプラットフォームエコシステムが上記の全てのステップを行い、3D化学モデリング、データ転送、微細構造特性の細孔スケールシミュレーション及び最適な微細構造特性に基づいて最適な3D化学モデルを探索するための最適化アルゴリズムを含む。
【0047】
上記で詳細に説明した機能を実行するための本システムは、
図10の概略図によってその一例を示すコンピュータであり得る。システム1000は、プロセッサ1002と、記憶装置1004と、上記で述べた機能を定めるソフトウェア1008を記憶しているメモリ1006と、入力及び出力(I/O)装置1010(又は周辺装置)と、システム1000内の通信を可能にするローカルバス又はローカルインタフェース1012とを含む。ローカルインタフェース1012は、例えば、限定されないが、当技術分野で知られている1つ若しくは複数のバス又は他の有線接続若しくは無線接続であり得る。ローカルインタフェース1012は、通信を可能にするためのコントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、中継器及び受信機等、簡潔にするために省いてある更なる要素を有し得る。更に、ローカルインタフェース1012は、上述の構成要素間の適切な通信を可能にするためのアドレス、制御及び/又はデータ接続を含み得る。
【0048】
プロセッサ1002は、とりわけメモリ1006内に記憶されるソフトウェアを実行するためのハードウェア装置である。プロセッサ1002は、任意の特注又は市販のシングルコア又はマルチコアプロセッサ、中央処理装置(CPU)、本システム1000に関連する幾つかのプロセッサ内の補助プロセッサ、半導体ベースの(マイクロチップ又はチップセット形式の)マイクロプロセッサ、マクロプロセッサ又は広くソフトウェア命令を実行するための任意の装置であり得る。
【0049】
メモリ1006は、揮発性メモリ要素(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAM等のRAM))及び不揮発性メモリ要素(例えば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROM等)の何れか1つ又は組み合わせを含み得る。更に、メモリ1006は、電子、磁気、光学及び/又は他の種類の記憶媒体を組み込むことができる。メモリ1006は、様々な構成要素が互いに離れて位置するが、プロセッサ1002によってアクセスされ得る分散アーキテクチャを有し得ることに留意されたい。
【0050】
ソフトウェア1008は、本発明に従ってシステム1000によって行われる機能を定める。メモリ1006内のソフトウェア1008は、1つ又は複数の別個のプログラムを含み得、以下で説明するように、かかるプログラムのそれぞれは、システム1000の論理機能を実装するための実行可能命令の順序付き一覧を含む。メモリ1006は、オペレーティングシステム(O/S)1020を含み得る。オペレーティングシステムは、システム1000内のプログラムの実行を実質的に制御し、スケジューリング、入力-出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理並びに通信制御及び関連サービスを提供する。
【0051】
I/O装置1010は、入力装置、例えば、限定されないが、キーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォン等を含み得る。更に、I/O装置1010は、出力装置、例えば、限定されないが、プリンタ、ディスプレイ等も含み得る。最後に、I/O装置1010は、入力及び出力の両方によって通信する装置、例えば、限定されないが、変調復調器(別の装置、システム又はネットワークにアクセスするためのモデム)、無線周波数(RF)又は他のトランシーバ、電話インタフェース、ブリッジ、ルータ又は他の装置を更に含み得る。
【0052】
システム1000が動作中である場合、メモリ1006との間でデータを通信し、及び上記で説明したようにソフトウェア1008に準じてシステム1000の動作を概して制御するために、プロセッサ1002は、メモリ1006内に記憶されるソフトウェア1008を実行するように構成される。
【0053】
システム1000の機能が動作中である場合、メモリ1006との間でデータを通信し、及びソフトウェア1008に準じてシステム1000の動作を概して制御するために、プロセッサ1002は、メモリ1006内に記憶されるソフトウェア1008を実行するように構成される。オペレーティングシステム1020は、プロセッサ1002によって読み出され、場合によりプロセッサ1002内にバッファされ、その後、実行される。
【0054】
システム1000がソフトウェア1008内に実装される場合、システム1000を実装するための命令は、任意のコンピュータ関連装置、システム若しくは方法によって使用するための又はそれらに関連する任意のコンピュータ可読媒体上に記憶され得ることに留意すべきである。かかるコンピュータ可読媒体は、一部の実施形態では、メモリ1006又は記憶装置1004の何れか又は両方に対応し得る。本明細書に関連して、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ関連装置、システム若しくは方法によって使用するための又はそれらに関連するコンピュータプログラムを含むか又は記憶することができる電子、磁気、光学又は他の物理装置又は手段である。システムを実装するための命令は、プロセッサ又は他のかかる命令実行システム、機器若しくは装置によって使用するための又はそれらに関連する任意のコンピュータ可読媒体によって具体化することができる。例として、プロセッサ1002に言及したが、かかる命令実行システム、機器又は装置は、一部の実施形態では、命令実行システム、機器又は装置から命令を取り出し、その命令を実行することができる任意のコンピュータベースのシステム、プロセッサ含有システム又は他のシステムであり得る。本明細書に関連して、「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサ又は他のかかる命令実行システム、機器若しくは装置によって使用するための又はそれらに関連するプログラムを記憶、通信、伝搬又は搬送することができる任意の手段であり得る。
【0055】
かかるコンピュータ可読媒体は、例えば、限定されないが、電子、磁気、光学、電磁、赤外線又は半導体のシステム、機器、装置又は伝搬媒体であり得る。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的一覧)は、1つ又は複数の配線を有する電気接続(電子)、ポータブルコンピュータディスケット(磁気)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(電子)、読取専用メモリ(ROM)(電子)、消去プログラム可能読取専用メモリ(EPROM、EEPROM又はフラッシュメモリ)(電子)、光ファイバ(光学)及びポータブルコンパクトディスク読取専用メモリ(CDROM)(光学)を含む。プログラムは、例えば、紙又は他の媒体を光学的に走査することによって電子的に捕捉し、次いで必要に応じてコンパイル、解釈又は他に適切な方法で処理し、その後、コンピュータメモリ内に記憶することができるため、コンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙又は別の適切な媒体でさえもあり得ることに留意されたい。
【0056】
システム1000がハードウェアによって実装される代替的実施形態では、システム1000は、当技術分野でそれぞれよく知られている以下の技術、即ちデータ信号に基づいて論理関数を実装するための論理ゲートを有するディスクリート論理回路、適切な組み合わせ論理ゲートを有する特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能ゲートアレイ(PGA)、書換可能ゲートアレイ(FPGA)等の何れか又は組み合わせを用いて実装することができる。
【0057】
図11は、多孔性材料をモデリングし、多孔性材料の擬似マイクロコンピュータ断層撮影(CTライク)画像を生成し、製造のために多孔性材料を分析するためのシステム1110の例示的実施形態の概略図である。概念的には、このコンピュータベースのシステムは、3つのモジュール1110、1120、1130に大別することができる。化学ベースの材料モデル生成器1110は、例えば、上述のようにメソスケール3D構造及び/又は粗視化DPP2モデルを生成することによって多孔性材料の化学ベースの3Dモデルを生成するように構成される。化学ベースの3D構造に対するコノリー表面が決定される。
【0058】
CT画像シミュレータ1120は、上述のようにコノリー表面から3D化学ベース構造のボリュームフィールドを計算し、ボリュームフィールドのレイヤごとの情報を有するテキスト形式のファイルを生成し、テキスト形式のレイヤファイルをRAW形式のCTライクバイナリ画像ファイルに変換する。CTライク画像ファイルを受信した多孔性材料分析器1130は、上述のように画像ファイルを多孔性材料の3D画像に変換し、細孔径分析(PSA)を行って多孔性材料系の粒子画像及び細孔画像を生成する。例えば、多孔性材料分析器は、DigitalROCKプラットフォームであり得、様々な条件下で多孔性材料をシミュレーションするために使用することができる。多孔性材料分析器の結果は、多孔性材料の所望の特性が策定されるとき、その後のプロセスの反復において化学ベースの材料モデルを変えるために使用することができる。その後、多孔性材料を製造するための製造プロセスを制御するために多孔性材料分析器1130を使用することができる。
【0059】
モジュール1110、1120、1130は、別々のプロセッサ上で実施される別々のソフトウェアアプリケーションであり得る。代わりに、モジュール1110、1120、1130の2つ以上が同じプロセッサ上で実施され得る。更に、モジュール1110、1120、1130の2つ以上の機能が同じソフトウェアパッケージ又は環境内に共存することができる。例えば、CT画像シミュレータ1120は、化学ベースの材料モデル生成器1110内のスクリプトとして実装することができる。更に、モジュール1110、1120、1130の1つ又は複数は、幾つかのサブプロセスを含み得、及び/又は自らの機能を行うために外部アプリケーションと相互作用し得る。
【0060】
有利には、例示的実施形態は、多孔性材料の実際のマイクロCT又はFIB-SEM画像等の実験的入力を一切必要としない。材料の化学的性質から出発し、入力画像ファイルをそれから生成し得る3D顕微鏡構造をシミュレーションすることができる。上述した実施形態で示したワークフローは、実際の(シミュレーションされていない)材料を合成しなくても、材料を取得し、材料を処理し、限定されないが、細孔分析、毛管圧及び透過率の計算及び流体流動シミュレーションを含む分析のために材料をイメージングすることを含む従来の手法と比較してより人間工学的であり、より速く、より効率的であり、より安価な手法を表す。
【0061】
本実施形態は、この目的のための初めてのワークフローを提示する。潜在的な用途は、薬物輸送、血流、皮膚透過性又は医療用途及び製薬用途の他の流動関連挙動及び輸送関連挙動等、人体の膜又は組織における流動挙動のモデリングを含み得る。更なる用途は、骨/組織工学分野での骨再生において、多孔率、細孔径、細孔形状及び細孔分布が極めて重要な因子である整形外科足場の設計を含む。
【0062】
本実施形態は、製造前の仮想的な試験及び分析により、材料の消費及び無駄を削減することによって持続可能性を高めることができ、最良の微細構造を得るための大域的最適化探索は、3DExperienceプラットフォーム等のモデリング及びシミュレーションエコシステム内で自動的に行うことができる。加えて、動物実験及び患者を対象としたリスクの高い臨床試験を削減又は置換することさえできる。更に、多孔性材料又は多孔性エネルギー貯蔵材料に基づくフィルタシステムの設計又は改善は、エネルギー及び材料の消費を削減することを可能にするため、本発明の潜在的な応用である。ヘルスケア及びパーソナルケア分野での応用に加えて、本発明は、電池セル、燃料電池及び他のエネルギー装置にも適用可能であり得る。持続可能性の分野では、本実施形態は、地球化学的応用における流体注入(CO2貯蔵を含む)及び移動の経済性を評価する際に大いに役立ち得る。
【0063】
本発明の実施形態は、知られている走査プロセスでは場合により又は実際には走査できない材料のCTライク画像ファイルを生成する。このCTライク画像ファイルは、CTスキャナによって生成されたCT画像と同様の方法で後続のアプリケーションによって受信及び処理され得る。
【0064】
本発明の技術的効果は、材料の実際の走査を生成することが現実的でないか又は不可能なシナリオで材料のCTライク画像を生成することである。本実施形態によって生成されるCTライク画像は、例えば、実際のCT画像を受信するように構成されるアプリケーションによってCTライク画像が入力として受信される場合、実際のCT画像の代わりに使用することができる。例えば、CTライク画像は、(以前には)走査不可能であった材料の製造中に使用することができる。例えば、CTライク画像に基づく後続のシミュレーションは、対応する実世界の材料の製造プロセスを定めるために使用することができる。例えば、シミュレーションは、製造された材料の構成要素の材料特性の範囲を決定することができる。
【0065】
概して本実施形態は、(例えば、DigitalROCKにおける)材料のその後のシミュレーションに必要な入力(CTライク画像)を生成し、その後のシミュレーションは、例えば、エネルギー変換効率の改善、流体流動特性の改善、熱放散の改善、実世界材料の動作特性の改善等の実世界材料の物理的特性を改善し、及び/又は実世界材料の製造プロセスを改善するために(例えば、製造プロセスのエネルギー消費量の低減、製造プロセスの歩留まり率の向上、製造プロセスの生産効率の高速化)、実世界材料の設計の変更をもたらす。
【0066】
上述の実施形態は、概して、球形形状の粒子に言及しているが、当業者であれば、上記の教示を、他の(非球形)形状を有する粒子に適用することができるであろう。
【0067】
本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本発明の構造に対する様々な修正形態及び改変形態がなされ得ることが当業者に明らかになる。上記の内容に鑑みて、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲に含まれることを条件として、本発明の修正形態及び改変形態を包含することを意図する。
【外国語明細書】