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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161352
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】可撓性ポリマー電解質
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/22 20060101AFI20241112BHJP
   C08F 214/24 20060101ALI20241112BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 77/442 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 83/02 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241112BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241112BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20241112BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08F214/22
C08F214/24
C08F220/18
C08G77/442
C08L83/02
C08L83/04
H01M10/0565
H01B1/06 A
C08J5/18 CEW
C08L27/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024111419
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2021534933の分割
【原出願日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】18215077.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フルオロポリマーに基づくハイブリッド有機/無機複合材料、それから得られるポリマー電解質、及び電気化学デバイスにおける前記ポリマー電解質の使用を提供する。
【解決手段】(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;(c)式(I):

の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]由来の繰り返し単位;並びに(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位;を含む半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって、繰り返し単位(b)の合計量が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~25重量%含まれ、繰り返し単位(d)の合計量が0.5重量%~4重量%含まれる、ポリマー(A)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;
(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;
(c)式(I):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)
の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]由来の繰り返し単位;並びに
(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位;
を含む半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって、
繰り返し単位b)の合計量が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~25重量%に含まれ、繰り返し単位d)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.5重量%~4重量%に含まれ、且つ
ASTM D3418に従って測定される少なくとも0.4J/gの融解熱を有する、
半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]。
【請求項2】
前記モノマー(MA)が、
- ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、
- 2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
- ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、
及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー(A)。
【請求項3】
- 8~20重量%のCTFEモノマー由来の繰り返し単位と、
- 0.4~1.5重量%の式(I)の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)由来の繰り返し単位と、
- 0.7~2.0重量%の、コモノマー(F)由来の繰り返し単位(F)と、
を含み、好ましくはこれらから本質的に構成され、
前記重量パーセントが前記ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対するものである、請求項1又は2に記載のポリマー(A)。
【請求項4】
前記フッ素化コモノマー(F)が、
(a)C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
(b)C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えば1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレン;
(c)式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(d)式CF=CFORf1の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Rf1は、パーフルオロアルキル基-CF(パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))、-C(パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE))、-C(パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE))、-C、又は-C11基である);
(e)クロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー(A)。
【請求項5】
VDF-CTFE-HEA-HFPテトラポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(A)。
【請求項6】
(i)
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリマー(A)と、
- 式(II):
4-mAY(II)
(式中、mは1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である)
の少なくとも1種の化合物(M)と、
の混合物を準備する工程;
(ii)ペンダント-Ym-1AX4-m基(式中、m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(A)の前記モノマー(MA)のRのヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程;
(iii)上で詳述された化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解及び/又は重縮合して、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を得る工程;
を含む、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造方法。
【請求項7】
工程(i)の混合物が少なくとも1種の有機溶媒(S)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の溶媒(S)がケトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の方法によって得られる無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料。
【請求項10】
無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質であって、前記ハイブリッドが、
(I)

(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;
(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;
(c)式(I):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、Rは、任意選択的に少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)
の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位、及び
(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位;
を含む少なくとも1種の半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって、
繰り返し単位b)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~25重量%に含まれ、繰り返し単位d)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.5重量%~4重量%に含まれ、且つASTM D3418に従って測定される少なくとも0.4J/gの融解熱を有する半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]と、
- 式(II):
4-mAY(II)
(式中、mは1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である)
の少なくとも1種の化合物(M)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(MS)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液(ES)と、
の混合物を準備する工程;
(II)ペンダント-Ym-1AX4-m基(式中、m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(A)の前記モノマー(MA)のR基のヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程;
(III)上で詳述された化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解及び/又は重縮合して、電解質溶液(ES)が取り込まれた無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質を得る工程;
を含む方法により得られる、ポリマー電解質。
【請求項11】
前記少なくとも1種の金属塩(MS)が、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、Rは、C、C又はCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、Csであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1又は2である)
からなる群から選択される、請求項10に記載のポリマー電解質。
【請求項12】
前記液体媒体(L)が、イオン液体(IL)、有機カーボネート、又はそれらの混合物から選択される、請求項10又は11に記載のポリマー電解質。
【請求項13】
圧縮成形又は押出技術によって請求項10~12のいずれか一項に記載のポリマー電解質を加工することを含む、ポリマー電解質膜の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られるポリマー電解質膜。
【請求項15】
請求項14に記載のポリマー電解質を含む電気化学デバイス。
【請求項16】
金属-イオン二次電池である、請求項15に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月21日出願の欧州特許出願第18215077.1号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特定のフルオロポリマーに基づくハイブリッド有機/無機複合材料、それから得られるポリマー電解質、及び電気化学デバイスにおける前記ポリマー電解質の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
有機及び無機化合物をナノメートルスケールでハイブリッド化することは、新規材料を創成するための重要な且つ発展的な方法である。有機ポリマーが無機固体中にナノ又は分子レベルで分散している、有機-無機ポリマーハイブリッドは、それらの独特の特性のために科学的、技術的及び工業的に高い注目を集めている。
【0004】
有機-無機ポリマーハイブリッドを作り出すために、最も有用な且つ重要な手法は、金属アルコキシドを使用するゾル-ゲル法である。予め形成された有機ポリマーの存在下に、金属アルコキシドの、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解及び重縮合の反応条件を適切に制御することによって、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。
【0005】
フルオロポリマーから、特にフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)から出発するゾル-ゲル手法により製造されたハイブリッドは、当技術分野において公知である。
【0006】
ゾル-ゲル手法から製造されたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料、特にPVDFから出発して製造されたものは、二次電池用の膜の作製における使用に特に適している。
【0007】
国際公開第2013/160240号パンフレット(S 2012/023)には、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含むフルオロポリマーフィルム、及び電気化学的用途のための膜の作製におけるその使用、より具体的にはリチウムイオン電池のセパレータとしての使用が開示されている。
【0008】
フレキシブル電池などのいくつかの最近の用途では、前記電池の構成要素は、所定の構造又はデバイスにおいて、寿命の間に複数回曲げられなければならない。
【0009】
金属イオン二次電池における膜としての用途では、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料膜は、電池動作中の高温ピークにもかかわらず、変化しないままでなければならない。そのため、これらの電池構成要素の損傷を避けるために、高融点且つ可撓性の複合材料が望まれる。
【0010】
さらに、より可撓性を有するポリマー電解質は、電極との接触を改善する傾向があり、セパレータと電極との間の接触がないゾーンを回避し、ひいては界面の抵抗を低下させる。
【0011】
加えて、我々の都市の大気中のCOの排出を回避するための電気自動車における電池の使用の現在の著しい増加を考慮すると、より環境に優しく持続可能なプロセスで前記電池を製造することは、最近では非常に重要になってきている。
【0012】
したがって、持続可能な形で製造され、その結果少量のエネルギー及び毒性のない溶媒しか要さない、高い熱安定性及び大きい可撓性を特徴とするフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料が求められている。
【発明の概要】
【0013】
今回、出願人は、驚くべきことに、特定の新規なフッ化ビニリデンコポリマーから出発して、汚染性の有機溶媒の使用を回避するプロセスによって製造することが可能な高い耐熱性及び大きい可撓性を特徴とするハイブリッド有機/無機複合材料を製造できることを見出した。
【0014】
したがって、本発明の第1の目的は、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造方法であり、前記方法は、
(i)

(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;
(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;
(c)式(I):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)
の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]由来の繰り返し単位;並びに
(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位
を含む少なくとも1種の半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって;
繰り返し単位b)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~25重量%に含まれ、繰り返し単位d)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.5重量%~4重量%に含まれる、半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]と;
-式(II):
4-mAY(II)
(式中、mは1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である)
の少なくとも1種の化合物(M)と、
の混合物を準備する工程;
(ii)ペンダント-Ym-1AX4-m基(m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(A)の前記モノマー(MA)のRのヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程;
(iii)上で詳述されたような、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解及び/又は重縮合して、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を得る工程
を含む。
【0015】
第2の目的では、本発明は、本発明の方法によって得られる無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を提供する。
【0016】
驚くべきことに、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造が、液体媒体と少なくとも1種の電解塩とを含む電解質溶液の存在下で行われる場合、自立型ポリマー電解質が得られることを見出した。そのようなポリマー電解質は、優れた可撓性を有し、優れたイオン伝導性及び熱安定性を有する。
【0017】
したがって、本発明の第3の目的は、無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質であり、前記ポリマー電解質は、
(I)

(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;
(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;
(c)式(I):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、Rは、任意選択的に少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)
の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位;及び
(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位
を含む少なくとも1種の半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって;
繰り返し単位b)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~20重量%に含まれ、繰り返し単位d)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.5重量%~4重量%に含まれる、半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]と;
-式(II):
4-mAY(II)
(式中、mは1~4の整数であり、Aは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは加水分解性基であり、Xは、1個以上の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である)
の少なくとも1種の化合物(M)と;
-少なくとも1種の金属塩[金属塩(MS)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液(ES)と、
の混合物を準備する工程;
(II)ペンダント-Ym-1AX4-m基(m、Y、A、及びXは上で詳述されたのと同じ意味を有する)を含むグラフトポリマーを得るために、前記ポリマー(A)の前記モノマー(MA)のR基のヒドロキシル基の少なくとも一部を前記化合物(M)の少なくとも一部と反応させる工程;
(III)上で詳述されたような、化合物(M)及び/又はペンダント-Ym-1AX4-m基を加水分解及び/又は重縮合して、電解質溶液(ES)が取り込まれた無機ドメインを含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質を得る工程
を含む方法によって得られる。
【0018】
本発明のポリマー電解質は、ポリマー電解質膜の製造のために適切に使用することができる。
【0019】
したがって、さらなる目的では、本発明は、圧縮成形又は押出技術によって上で定義されたポリマー電解質を加工することを含む、ポリマー電解質膜の製造方法を提供する。
【0020】
本発明のフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造に使用される上で定義したポリマー(A)は新規であり、したがって、本発明の別の目的を成す。
【0021】
本発明は、さらに、上で定義したポリマー電解質膜を含む電気化学デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位」(一般的に二フッ化ビニリデン1,1-ジフルオロエチレン、VDFとしても示される)という用語は、式CF=CHの繰り返し単位を示すことを意図する。
【0023】
「半結晶性」という用語は、検出可能な融点を有するフッ化ビニリデン(VDF)ポリマーを示すことを意図する。半結晶性VDFポリマーは、ASTM D 3418に従って測定される有利には少なくとも0.4J/g、好ましくは少なくとも0.5J/g、より好ましくは少なくとも1J/gの融解熱を有することが一般に理解されている。
【0024】
「クロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位」という用語は、式CF=CFClの繰り返し単位を示すことを意図する。
【0025】
本発明のポリマー(A)は、特に、最大0.50l/g、好ましくは最大0.45l/g、より好ましくは最大0.25l/g、さらに好ましくは最大0.20l/gの固有粘度を有する。
【0026】
本発明のポリマー(A)は、特に、少なくとも0.05l/g、好ましくは少なくとも0.08l/g、より好ましくは少なくとも0.15l/g、さらに好ましくは少なくとも0.10l/gの固有粘度を有する。
【0027】
ポリマー(A)の固有粘度は、典型的にはN,N-ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される。
【0028】
「少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)」という用語は、ポリマー(A)が、上述したような1種以上の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本明細書の残りの部分においては、「親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)」及び「モノマー(MA)」という表現は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方、即ち1つ以上の両方の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)を指すものと理解される。
【0029】
式(I)の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)の非限定的な例としては、とりわけ:
- ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、
- 2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
- ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、
及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
より好ましくは、少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)はヒドロキシエチルアクリレート(HEA)である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマー(A)において、式(I)の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)由来の繰り返し単位は、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.1重量%~3重量%、好ましくは0.3~2重量%、より好ましくは0.4~1.5重量%の量で含まれる。
【0032】
「フッ素化コモノマー(F)」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和コモノマーを意味することが本明細書では意図される。
【0033】
好適なフッ素化コモノマー(F)の非限定的な例としては、特に、以下が挙げられる:
(a)C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン及びヘキサフルオロイソブチレン;
(b)C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えば1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレン;
(c)式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(d)式CF=CFORf1の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Rf1はパーフルオロアルキル基-CF(パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))、-C(パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE))、-C(パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE))、-C、又は-C11基である)、
(e)クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン。
【0034】
フッ素化コモノマー(F)は、好ましくはHFP又はPMVEである。
【0035】
フッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位は、好ましくは、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.7~2.0重量%の量でポリマー(A)に含まれる。
【0036】
本発明のより好ましい実施形態では、ポリマー(A)は、
- 8~20重量%のCTFEモノマー由来の繰り返し単位と、
- 0.4~1.5重量%の式(I)の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)由来の繰り返し単位と、
- 0.7~2.0重量%の、コモノマー(F)由来の繰り返し単位と、
を含み、好ましくはこれらから構成され、
これらの重量パーセントは、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対するものである。
【0037】
ポリマー(A)中のモノマーCTFE、モノマー(MA)、フッ素化コモノマー(F)、及びVDFの繰り返し単位の重量(平均モル)パーセントの決定は、任意の適切な方法によって行うことができ、NMRが好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマー(A)は、VDF-CTFE-HEA-HFPテトラポリマーである。好ましくは、前記好ましい実施形態のポリマー(A)は、少なくとも0.10l/gの固有粘度、及び少なくとも130℃、好ましくは少なくとも145℃、より好ましくは少なくとも150℃の第2の溶融温度(T2f)を有する。
【0039】
第2の溶融温度(T2f)は、典型的には、ASTM D 3418標準法に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0040】
本発明によるポリマー(A)は、例えば国際公開第2008/129041号パンフレットに記載された手順に従って懸濁液中、又は典型的には当該技術分野に記載(例えば米国特許第4,016,345号明細書、米国特許第4,725,644号明細書、及び米国特許第6,479,591号明細書を参照)の通りに行われるエマルジョン中、のいずれかで、典型的にはVDFモノマーと、少なくとも1種の水素化(メタ)アクリルモノマー(MA)と、CTFEモノマーと、少なくとも1種のフッ素化コモノマー(F)とを重合することにより得られる。
【0041】
重合反応は、通常25℃~150℃の温度で130バールまでの圧力で実施される。
【0042】
ポリマー(A)は、典型的には粉末の形態で供給される。
【0043】
ポリマー(A)は、任意選択的にさらに押し出されて、ペレットの形態のポリマー(A)を提供することができる。
【0044】
式X4-mAYの金属化合物(M)[化合物(M)]は、1つ以上の官能基を基X上と基Y上のいずれかで、好ましくは少なくとも1つの基X上で含むことができる。
【0045】
化合物(M)が少なくとも1種の官能基を含む場合は、これを官能性化合物(M)と称することとし;基X及び基Yがいずれも官能基を含まない場合は、化合物(M)を非官能性化合物(M)と称することとする。
【0046】
官能性化合物(M)は、有利には、官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を提供することができ、それによってハイブリッド複合材料の化学的性質及び特性が本来のポリマー(A)及び本来の無機相よりもさらに改質される。
【0047】
官能基の非限定的な例としては、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩若しくはハライドの形態)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩若しくはハライドの形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、若しくはハライドの形態)、チオール基、アミン基、第四級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基を挙げることができる。
【0048】
官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質を得る目的のためには、式X4-mAYの化合物(M)の基Xのいずれかが1つ以上の官能基を含み、mが1~3の整数であり、その結果有利には各A原子が、方法の工程(i)における完全な加水分解及び/又は重縮合の後であっても官能基を含む基に結合していることが通常好ましい。
【0049】
好ましくは、化合物(M)中のXは、C~C18炭化水素基から選択され、任意選択的には1つ以上の官能基を含む。より好ましくは、化合物(M)中のXはC~C12炭化水素基であり、任意選択的には1つ以上の官能基を含む。
【0050】
親水性又はイオン伝導性に関する機能挙動を発揮することができるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質を製造することを目的とする場合、化合物(M)の官能基は、好ましくは、カルボン酸基(その酸、無水物、塩、又はハライド形態)、スルホン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)、リン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)、アミン基、及び第四級アンモニウム基から;最も好ましくは、カルボン酸基(その酸、無水物、塩、又はハライド形態)及びスルホン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)から選択されるであろう。
【0051】
化合物(M)の加水分解性基Yの選択は、適切な条件下で-O-A≡結合を形成できるものであれば特に限定されず;前記加水分解性基は、特に、ハロゲン(特に塩素原子)、ヒドロカルビル基、アクリロキシ基、又はヒドロキシル基とすることができる。
【0052】
官能性化合物(M)の例は、特にビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミン酸、式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0053】
非官能性化合物(M)の例は、特に、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0054】
本発明の方法には、1種以上の官能性化合物(M)及び1種以上の非官能性化合物(M)の混合物を使用することができる。別のやり方では、官能性化合物(M)又は非官能性化合物(M)は、別々に使用することができる。
【0055】
本発明の方法で使用される化合物(M)の量は、工程(i)の混合物が、有利には、前記混合物中のポリマー(A)と化合物(M)の総重量を基準として少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の前記化合物(M)を含むような量である。
【0056】
本発明の方法で使用される化合物(M)の量は、工程(i)の混合物が、有利には、前記混合物中のポリマー(A)と化合物(M)の総重量を基準として最大95重量%、好ましくは最大75重量%、より好ましくは最大55重量%の前記化合物を含むような量である。
【0057】
上で定義した式(I)を有する少なくとも1種のモノマー(MA)由来の繰り返し単位を含むポリマー(A)及び化合物(M)は、特に溶融相で反応させることができる。
【0058】
押出機、溶融ニーダー又は他の装置などの溶融混錬機をこの目的のために有利に用いることができる。
【0059】
ポリマー(A)及び化合物(M)は、特に液相で反応させることもできる。それらが液相で反応する場合には、本発明の方法の工程(i)の混合物は、少なくとも1種の有機溶媒(S)を含み得る。
【0060】
有機溶媒(S)の選択は、それが30℃より低い温度で本発明のポリマー(A)を可溶化するのに適している限りは特に限定されない。
【0061】
有機溶媒(S)は、典型的には、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級ケトン、及びイソホロン、メチルイソブチルケトン(MIK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどの高級ケトンを含むケトン;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素などのアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの酸素及び/又は窒素ヘテロ原子を含む極性非プロトン性溶媒;リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、及びそれらの混合物などの有機リン酸塩からなる群から選択される。
【0062】
ポリマー組成物の調製における非毒性溶媒の選択は、近年絶えず増加している市場である携帯機器又は電気自動車用のものなどの二次電池の構成要素の製造における使用に特に適している。
【0063】
二次電池用構成要素の製造における有毒且つ汚染性の溶媒の使用を回避することにより、コストを取り除き、大量の前記溶媒の取り扱いに関連する安全性及び環境上の懸念を回避することができる。
【0064】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、有機溶媒(S)は非毒性溶媒であり、好ましくはケトンである。
【0065】
ケトンが、120℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは70℃未満の標準沸点を有する直鎖脂肪族ケトン、好ましくはアセトンである場合に、非常によい結果が得られた。
【0066】
ポリマー(A)及び金属化合物(M)が液相で反応する場合、混合は、室温(約25℃)又は加熱時に行うことができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、本発明の方法の工程(i)の混合物は、少なくとも1種の無機充填剤(I)をさらに含むことができる。
【0068】
そのような無機フィラー(I)を添加することにより、有利には、機械的性質が改善されたフルオロポリマーフィルムを得ることが可能になるであろう。
【0069】
無機フィラー(I)は、通常は、混合物中に粒子形態で提供される。
【0070】
無機フィラー(I)粒子は、通常は、平均粒度が0.001μm~1000μm、好ましくは0.01μm~800μm、より好ましくは0.03μm~500μmである。
【0071】
無機フィラー(I)の選択は特に制限されないが;一般には、無機フィラーがその表面に化合物(M)と反応する基を有することが好ましい。
【0072】
表面反応性基の中でも特にヒドロキシル基が挙げられる。
【0073】
この理論に束縛されるわけではないが、本出願人は、化合物(M)の少なくとも一部と無機フィラー(I)の前記表面反応性基の少なくとも一部との反応は、化合物(M)の少なくとも一部とモノマー(MA)のRのヒドロキシル基の少なくとも一部との反応と同時に行うことができ、こうすることによって、その後に続く加水分解及び/又は重縮合工程において、ポリマー(A)と無機フィラーとの間に、化合物(M)から誘導された無機ドメインを介した化学結合が形成されやすくなると考えている。
【0074】
本発明の方法において好適に使用される無機フィラー(I)の中では、無機酸化物(混合オキシデス(mixed oxydes)を含む)、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物等を挙げることができる。
【0075】
金属酸化物の中で、SiO、TiO、ZnO、Alを挙げることができる。
【0076】
本発明のこの実施形態との関連の中で特に良好な結果を与える化合物の種類は、とりわけ、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムであり、全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する。
【0077】
これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、一般に、層状構造を有するとして知られている。
【0078】
全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する、これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、とりわけモンモリロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイトなどの、場合により天然起源の、とりわけ、スメクチック粘土であることができる。或いは、全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの追加の金属を任意選択的に含有する、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、とりわけフルオロヘクトライト、ヘクトライト、ラポナイトのような、合成粘土の中から選択することができる。
【0079】
本発明の方法の工程(iii)の加水分解及び/又は重縮合は、ポリマー(A)のヒドロキシル基と化合物(M)の加水分解性基(Y)とを反応させる工程(ii)と同時に行うことができ、或いは前記反応が生じた後に行うことができる。
【0080】
典型的には、特にAがSiである化合物の場合、この加水分解及び/又は重縮合は、少なくとも1種の適切な触媒及び/又は反応物を添加することにより開始される。一般に、この反応を促進するために水又は水と酸との混合物を使用することができる。
【0081】
酸の選択は特に制限されず;有機及び無機酸の両方を使用することができる。中でもギ酸が本発明の方法に使用することができる好ましい酸である。
【0082】
一般に、好ましくは酸を含む水性媒体の添加が、加水分解及び/又は重縮合を促すために好ましい方法であろう。
【0083】
この加水分解及び/又は重縮合は室温(25℃)で行うことができるが、一般には、この工程を50℃を超える温度で加熱しながら実施することが好ましい。
【0084】
実際の温度は、存在する場合には有機溶媒(S)の沸点及び/又は安定性を考慮して選択されるであろう。一般に、20℃~150℃、好ましくは40℃~120℃の温度が好ましいであろう。
【0085】
本発明の方法の工程(iii)において、化合物(M)の、及び任意選択には上で定義した式-Ym-1AX4-mのペンダント基の、加水分解性基Yが反応して、ポリマー(A)の鎖からなるポリマードメインと化合物(M)由来の残基からなる無機ドメインとを含むハイブリッド複合材料が得られることが理解される。
【0086】
当業者によって認識されるように、加水分解及び/又は重縮合反応によって通常、低分子量の副生成物が生成する。これは、金属化合物(M)の性質に応じて、特に水又はアルコールとなる可能性がある。
【0087】
本発明の第2の目的によれば、上で定義したフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づくポリマー電解質が提供される。
【0088】
本発明のポリマー電解質は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料のゾル-ゲルマトリックスに取り込まれた電解質溶液(ES)を含む。フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、実際に電解質溶液を保持する能力を有しており、これはゾル-ゲルマトリックスに取り込まれ、自立型ポリマー電解質を提供する。
【0089】
電解質溶液(ES)は、少なくとも1種の金属塩[金属塩(MS)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む。
【0090】
「金属塩(MS)」という用語は、導電性イオンを含む金属塩を示すことが意図されている。
【0091】
様々な金属塩が金属塩(MS)として用いられ得る。選択される液体媒体(L)中で安定であり、且つ可溶である金属塩が通常使用される。
【0092】
好適な金属塩(MS)の非限定的な例としては、とりわけ、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(CIO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるMe[N(CFSO)(RSO)]、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、Csであり、nは前記金属の原子価であり、典型的にはnは1又は2である)が挙げられる。
【0093】
好ましい金属塩(MS)は、LiI、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCFSO、LiN(CFSO(「LiTFSI」)、LiN(CSO、RがC、C、CFOCFCFであるM[N(CFSO)(RSO)]、LiAsF、LiC(CFSO、Li及びこれらの組み合わせから選択される。
【0094】
液体媒体は、イオン液体(IL)、有機カーボネート、又はそれらの混合物から適切に選択することができる。
【0095】
「イオン液体(IL)」という用語は、本明細書では大気圧下で100℃未満の温度で液体状態で存在する、正に帯電したカチオンと負に帯電したアニオンとの組み合わせによって形成される化合物を指すことが意図されている。
【0096】
イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(IL)、非プロトン性イオン液体(IL)、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0097】
「プロトン性イオン液体(IL)」という用語は、本明細書ではカチオンが1つ以上のH水素イオンを含むイオン液体を指すことが意図されている。
【0098】
1つ以上のH水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、特に、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はピペリジニウム環が挙げられ、正電荷を有する窒素原子はH水素イオンに結合している。
【0099】
「非プロトン性イオン液体(IL)」という用語は、本明細書ではカチオンがH水素イオンを含まないイオン液体を指すことが意図されている。
【0100】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン、又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環、又はピペリジウム環(前記環は任意選択的に窒素原子上が置換されていてもよく、特には1~8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、また炭素原子上が特には1~30個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよい)を含むものから選択される。
【0101】
本発明の意味において、「アルキル基」という用語は、飽和炭化水素鎖、又は1つ以上の二重結合を有し、1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらに有利には1~8個の炭素原子を有するものを意味する。例として、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、へプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-へプチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシル基を挙げることができる。
【0102】
本発明の有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは、以下のものから選択される:
- 以下の式(III):
(式中、R及びRは、それぞれ独立して1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子か、又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、より有利には1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)のピロリジニウム環、及び
- 以下の式(IV):
(式中、R及びRは、それぞれ互いに独立して1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R~Rは、それぞれ互いに独立して、水素原子か、又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらに有利には1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)のピペリジニウム環。
【0103】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは以下から選択される:
【0104】
イオン液体(IL)は、有利には、アニオンとしてハライドアニオン、パーフルオロアニオン、及びホウ酸塩から選択されるものを含むものから選択される。
【0105】
ハライドアニオンは、特に、塩化物アニオン、臭化物アニオン、フッ化物アニオン、又はヨウ化物アニオンから選択される。
【0106】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のアニオンは以下から選択される:
- 式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF のテトラフルオロボレート、
- 式:
のオキサロボレート。
【0107】
本発明の方法で使用される液体媒体中の1種以上のイオン液体(IL)の量は、前記混合物中のポリマー(A)及びイオン液体(IL)の総重量を基準として、工程(i)の混合物が有利には少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%のイオン液体(IL)を含むような量である。
【0108】
本発明の方法で使用される液体媒体中の1種以上のイオン液体(IL)の量は、前記混合物中のポリマー(A)及びイオン液体(IL)の総重量を基準として、工程(i)の混合物が有利には最大95重量%、好ましくは最大85重量%、より好ましくは最大75重量%のイオン液体(IL)を含むような量である。
【0109】
適切な有機カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート;及びそれらの混合物である。
【0110】
電解質溶液(ES)中の媒体(L)は、少なくとも1種の添加剤[添加剤(A)]をさらに含んでいてもよい。
【0111】
1種以上の添加剤(A)が液体媒体中に存在する場合、適切な添加剤(A)の非限定的な例には、特に媒体(L)に可溶性であるものが含まれる。
【0112】
添加剤(A)は、好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、及びこれらの混合物などの有機カーボネートからなる群から選択される。
【0113】
液体媒体中の1種以上の添加剤(A)の量は、存在する場合には、液体媒体の総重量を基準として、典型的には0.1重量%~95重量%、好ましくは1.0重量%~70重量%、より好ましくは5.0重量%~50重量%に含まれる。
【0114】
本発明のポリマー電解質は、フィルムへと加工することで、電気化学デバイス、特に金属イオン二次電池のセパレータとして使用するためのポリマー電解質膜を提供することができる。
【0115】
さらなる目的は、本発明は、圧縮成形又は押出技術によって本発明のポリマー電解質を加工することを含む、膜の製造方法に関する。
【0116】
したがって、本発明のさらなる目的は、上で定義した方法によって得ることができるポリマー電解質膜である。
【0117】
このようにして得られた膜は、典型的には5μm~100μm、好ましくは10μm~30μmの厚さを有する。
【0118】
本発明のポリマー電解質膜は、電気化学及び光電気化学デバイスにおけるポリマー電解質セパレータとして有利に使用することができる。
【0119】
適切な電気化学デバイスの非限定的な例としては、特に、二次電池、特にリチウムイオン電池及びリチウム硫黄電池、並びにキャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0120】
本発明は、さらに、ポリマー電解質セパレータとして、上で定義した本発明のポリマー電解質膜を含む金属イオン二次電池に関する。
【0121】
金属イオン二次電池は、通常、負極(アノード)と、上で定義した本発明のポリマー電解質膜と、正極(カソード)とを組み立てることによって形成される。
【0122】
金属イオン二次電池は、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類二次電池であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0123】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0124】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0125】
実験の部
原材料
Aldrich Chemistryから液体として市販されているテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、純度>99%。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)。
イオン液体(IL):下記式のN-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr13TFSI):
ES:Pyr13TFSI中の0.5MのLiTFSI。
【0126】
可撓性
フィルムの可撓性は、以下の操作条件で、非強化及び強化プラスチック並びに電気絶縁材料の曲げ特性についてのASTM D 790-10標準試験方法に従って評価した:
温度:24.2℃;湿度:32.5%;速度:1.5mm/min。
【0127】
結果は弾性率(MPa)に関して示されている。値が低いほど、ポリマー電解質の可撓性が大きい。
【0128】
イオン伝導率(σ)の測定
ポリマー電解質膜を、18mmステンレス鋼EL-CELLプロトタイプに配置する。ポリマー電解質膜の抵抗を25℃で測定し、イオン伝導率(σ)を以下の式:
(式中、dはフィルムの厚さであり、Rはバルク抵抗であり、Sはステンレス鋼電極の面積である)を使用して得た。
【0129】
ポリマー(A)の固有粘度の測定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマー(A)を約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることによって得られた溶液の、25℃での落下時間に基づいて、以下の式:
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、ηは、相対粘度、即ち試料溶液の滴下時間と溶媒の滴下時間との間の比であり、ηspは、比粘度、即ちη-1であり、Γは、ポリマー(A)について3に対応する実験因子である)を用いて測定した。
【0130】
実施例1:VDFコポリマー(ポリマーA1、A2、並びに比較ポリマー1、2、3、及び4)の調製
650rpmの速度で作動するインペラを備えた4リットルの反応器に、2850gの脱塩水並びに懸濁剤としての0.6gのAlkox(登録商標)E-45及び0.2gのMethocell(登録商標)K100/kg Mni(反応前に反応器に供給されたモノマーの初期量)を連続して入れた。反応器を、20℃で連続した真空(30mmHg)及び窒素パージでパージした。次いで、イソドデカン(TAPPI)中のt-アミル-ペルピバレートの75重量%溶液を添加した。ジエチルカーボネート(DEC)、初期量のHEA、HFP、CTFE、その後約1200gのVDFを反応器に入れた。モノマーの量及び温度条件を表1に示す。
【0131】
反応器を57℃の設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。表1に示されている通りに重合中にヒドロキシエチルアクリレート水溶液を供給することにより、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力が低下し始めた。大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。約80%のVDFの変換率に到達した。CTFEとHEAは実質的に全て消費され、HFPの約半分は未反応のままであった。次いで、このように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃で一晩乾燥させた。
【0132】
【0133】
MnTは反応器に供給されるモノマーの合計量である。
【0134】
実施例2:溶解性試験
各比較ポリマー1~4並びにポリマーA1及びポリマーA2のアセトン中の8重量%の組成物を調製した。室温で透明且つ濁りのない溶液は、ポリマーのアセトンへの25℃における溶解性を意味する。
溶解性を評価するために、50℃でも組成物を試験した。
結果を表2にまとめる。
【0135】
【0136】
結果は、CTFE、MAに由来する一定量の繰り返し単位と、HFP由来の繰り返し単位とが同時に存在しているおかげで、本発明によるポリマーが室温でアセトンに可溶性であることを示している。CTFEとモノマーMA若しくはHFPのうちの1つとに由来する繰り返し単位のみを有するポリマー、又は異なる量のCTFEモノマーを有するポリマーについては同じことは当てはまらない。
【0137】
実施例3:ポリマー5の調製:25℃のDMF中で0.11l/gの固有粘度を有するVDF/HEA(0.8重量%)/HFP(5重量%)コポリマー。
250rpmの速度で作動するインペラを備えた80リットルの反応器に、50.2kgの脱塩水、いくつかの懸濁剤としての3.80gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR及び15.21gのAlkox(登録商標)E45を連続して入れた。反応器を、真空(30mmHg)及び20℃での窒素パージの複数回の手順でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液187.3gを導入した。撹拌の速度を300rpmに上げた。最後に、16.3gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び2555gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入し、引き続き22.8kgのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を55℃の設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中、188gのHEAを含む16.96kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力が低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。コモノマーのほぼ81%転化率が得られた。次いで、このように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0138】
実施例4:ポリマーA1を使用するポリマー電解質の調製
冷却器を備えたフラスコ中で、ポリマーA1(4.14g)を、アセトン(23.46g)(15重量%)に溶解し、60℃で30分間加熱した。ES(5g)及びTEOS(0.35g)を溶液に添加し、40℃で10分間撹拌した。39体積%(45重量%)のポリマーA1、60体積%(54重量%)の電解質溶液、及び1.2体積%(1.09重量%)のSiO(TEOSの完全に縮合された当量)を含む混合物が得られた。
その後、0.154gのギ酸を混合物に添加し、混合物を35℃で2分間撹拌した。
混合物を、ドクターブレードを使用してHalar(登録商標)膜支持体にキャストした。ブレードの開口部は650μmに設定した。約650μmの溶液の膜が得られた。膜を、室温で15分間、次いで換気オーブン内で50℃で40分間乾燥した。次いで、25分間継続する150℃までの温度上昇を伴う熱による後処理を行い、その後支持体から膜を剥がした。74~78μmの厚さを有するポリマー電解質膜が得られた。前記膜は、表3に示されているように、イオン伝導性及び可撓性を有する。
【0139】
実施例5:ポリマーA2を使用するポリマー電解質の調製
冷却器を備えたフラスコ中で、ポリマーA2(4.97g)を、アセトン(19.87g)(20重量%)に溶解し、60℃で30分間加熱した。ES(6g)及びTEOS(0.419g)を溶液に添加し、40℃で10分間撹拌した。39体積%(45重量%)のポリマーA2、60体積%(54重量%)の電解質溶液、及び1.2体積%(1.09重量%)のSiO(TEOSの完全に縮合された当量)を含む混合物が得られた。
その後、0.185gのギ酸を混合物に添加し、混合物を35℃で2分間撹拌した。
混合物を、ドクターブレードを使用してHalar(登録商標)膜支持体にキャストした。ブレードの開口部は650μmに設定した。約650μmの厚さの溶液の膜が得られた。膜を、室温で15分間、次いで換気オーブン内で50℃で40分間乾燥した。次いで、25分間継続する150℃までの温度上昇を伴う熱による後処理を行い、その後支持体から膜を剥がした。74μmの厚さを有するポリマー電解質膜が得られた。前記膜は、表3に示されているように、イオン伝導性及び可撓性を有する。
【0140】
比較例6:ポリマー5を使用するポリマー電解質の調製
冷却器を備えたフラスコ中で、ポリマー5(8g)を、DMF(32g)(20重量%)に溶解し、60℃で30分間加熱した。ES(8g)及びTEOS(0.56g)を溶液に添加し、40℃で10分間撹拌した。39体積%(45重量%)のポリマー5、60体積%(54重量%)の電解質溶液、及び1.2体積%(1.09重量%)のSiO(TEOSの完全に縮合された当量)を含む混合物が得られた。
その後、0.247gのギ酸を混合物に添加し、混合物を35℃で2分間撹拌した。
混合物を、ドクターブレードを使用してHalar(登録商標)膜支持体にキャストした。ブレードの開口部は650μmに設定した。約650μmの厚さの溶液の膜が得られた。膜を、室温で15分間、次いで換気オーブン内で50℃で40分間乾燥した。次いで、25分間継続する150℃までの温度上昇を伴う熱による後処理を行い、支持体から膜を剥がした。77μmの厚さを有するポリマー電解質膜が得られた。前記膜は、表3に示されているように、イオン伝導性及び可撓性を有する。
【0141】
【0142】
表3のデータは、本発明のポリマー電解質フィルムが、従来技術の標準的なポリマー電解質よりも可撓性を有することを示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位;
(b)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)由来の繰り返し単位;
(c)式(I):
(式中、互いに等しいか又は異なる、R1、R2、R3のそれぞれは、独立して、水素原子又はC~C炭化水素基であり、Rは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である)
の少なくとも1種の親水性(メタ)アクリルモノマー[モノマー(MA)]由来の繰り返し単位;並びに
(d)VDF及びCTFEとは異なる1種以上のフッ素化コモノマー(F)由来の繰り返し単位;
を含む半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]であって、
繰り返し単位b)の合計量が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して6重量%~25重量%に含まれ、繰り返し単位d)の合計量がポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対して0.5重量%~4重量%に含まれ、且つ
ASTM D3418に従って測定される少なくとも0.4J/gの融解熱を有する、
半結晶性フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー[ポリマー(A)]。
【請求項2】
前記モノマー(MA)が、
- ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、
- 2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
- ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、
及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー(A)。
【請求項3】
- 8~20重量%のCTFEモノマー由来の繰り返し単位と、
- 0.4~1.5重量%の式(I)の親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)由来の繰り返し単位と、
- 0.7~2.0重量%の、コモノマー(F)由来の繰り返し単位(F)と、
を含み、好ましくはこれらから本質的に構成され、
前記重量パーセントが前記ポリマー(A)の繰り返し単位の総重量に対するものである、請求項1又は2に記載のポリマー(A)。
【請求項4】
前記フッ素化コモノマー(F)が、
(a)C~Cフルオロ及び/又はパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
(b)C~C水素化モノフルオロオレフィン、例えば1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレン;
(c)式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
(d)式CF=CFORf1の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(式中、Rf1は、パーフルオロアルキル基-CF(パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))、-C(パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE))、-C(パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE))、-C、又は-C11基である);
(e)クロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー(A)。
【請求項5】
VDF-CTFE-HEA-HFPテトラポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー(A)。
【外国語明細書】