IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アムジェン インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-161358胸腺間質性リンパ球性新生因子に結合することができる抗原結合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161358
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】胸腺間質性リンパ球性新生因子に結合することができる抗原結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20241112BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241112BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P37/08
A61P11/06
A61P11/02
A61P27/14
A61P17/00
A61P19/04
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P1/16
C07K16/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024111769
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2023014362の分割
【原出願日】2008-09-09
(31)【優先権主張番号】60/971,178
(32)【優先日】2007-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/091,676
(32)【優先日】2008-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】カメオー, マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】スモーザーズ, ジェームズ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, ボーリン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】メーリン, クリストファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗体を含む、ヒト胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)に結合する抗原結合タンパク質に関する組成物および方法を提供する。
【解決手段】本開示は、完全ヒト抗TSLP抗体、ヒト化抗TSLP抗体およびキメラ抗TSLP抗体、ならびにこのような抗体の誘導体を提供する。本開示は、このような抗体および抗体断片および誘導体をコードする核酸、ならびにこのような抗体を製造および使用する方法(TSLP関連炎症性障害および線維症障害を処置および予防する方法を含む)をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
a.以下:
i.A1~A27の軽鎖CDR3配列からなる群より選択されるCDR3配列から全部で2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR3配列;
ii.QQAXSFPLT(配列番号251);
からなる群より選択される軽鎖CDR3配列、ならびに
b.以下:
i.A1~A27の重鎖CDR3配列からなる群から選択されるCDR3配列から全部で3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR3配列と;
ii.GGGIX12VADYYX13YGMDV(配列番号255)と;
iii.DX21GX22SGWPLFX23Y(配列番号259)と;
からなる群より選択される重鎖CDR3配列、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離された抗原結合タンパク質であって、ここで、
は、N残基またはD残基であり;
12は、P残基またはA残基であり;
13は、Y残基またはF残基であり;
21は、G残基またはR残基であり;
22は、S残基またはT残基であり;
23は、A残基またはD残基であり、かつ
該抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する、
抗原結合タンパク質。
【請求項2】
さらに、以下:
a.以下:
i.A1~A27の軽鎖CDR1配列から3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR1配列と;
ii.RSSQSLXYSDGXTYLN(配列番号246)と;
iii.RASQXSSWLA(配列番号249)と;
からなる群より選択される軽鎖CDR1配列、
b.以下:
i.A1~A27のCDR2配列から2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR2配列と;
ii.KVSXWDS(配列番号247)と;
iii.XSSLQS(配列番号250)と;
iv.QDXKRPS(配列番号252)と;
からなる群より選択される軽鎖CDR2配列、
c.以下:
i.A1~A27のCDR1配列から2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR1配列と;
ii.X10YGMH(配列番号253)と;
iii.X1516YMX17(配列番号257)と;
からなる群より選択される重鎖CDR1配列、ならびに
d.以下:
i.A1~A27のCDR2配列から3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR2配列と;
ii.VIWX11DGSNKYYADSVKG(配列番号254)と;
iii.VISYDGSX14KYYADSVKG(配列番号256)と;
iv.WINPNSGGTNX181920KFQG(配列番号258)と;
からなる群より選択される重鎖CDR2配列、
からなる群より選択されるアミノ酸配列をさらに含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質であって、ここで、
は、V残基またはI残基であり;
は、N残基またはD残基であり;
は、Y残基またはN残基であり;
は、G残基またはS残基であり;
は、L残基またはI残基であり;
は、N残基またはT残基であり;
は、T残基またはA残基であり;
は、K残基またはN残基であり;
10は、S残基またはN残基であり;
11は、Y残基またはF残基であり;
14は、Y残基またはN残基であり;
15は、D残基またはG残基であり;
16は、Y残基またはD残基であり;
17は、Y残基またはH残基であり;
18は、Y残基またはH残基であり;
19は、V残基またはA残基であり;
20は、Q残基またはR残基であり、かつ
該抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する、
抗原結合タンパク質。
【請求項3】
以下:
a.以下:
i.A1~A27から選択される軽鎖CDR1配列;
ii.A1~A27から選択される軽鎖CDR2配列;
iii.A1~A27から選択される軽鎖CDR3配列、
を含む軽鎖可変ドメイン、または
b.以下:
i.A1~A27から選択される重鎖CDR1配列;
ii.A1~A27から選択される重鎖CDR2配列;および
iii.A1~A27から選択される重鎖CDR3配列、
を含む重鎖可変ドメイン、または
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン、
のいずれかを含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項4】
以下:
a.以下:
i.L1~L27から選択される軽鎖可変ドメイン配列に少なくとも80%同一な配列を有するアミノ酸;
ii.L1~L27の軽鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列に少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.L1~L27の軽鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列、
b.以下:
i.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸の
配列;
ii.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列に少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列、
からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列、または
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン、
のいずれかを含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する、抗原結合タンパク質。
【請求項5】
以下:
a.L1~L27からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列
b.H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメイン配列、または
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン
のいずれかを含む、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、特異的にTSLPに結合する、抗原結合タンパク質。
【請求項6】
L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13.1H13、L13.2H13、L14.1H14、L14.2H14、L15.1H15、L15.2H15、L16.1H16、L16.2H16、L17H17、L18.1H18、L18.2H18、L19.1H19、L19.2H19、L20.1H20、L20.2H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26およびL27H27からなる群より選択される軽鎖可変ドメイン配列および重鎖可変ドメイン配列を含む、請求項5に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記結合タンパク質が、A2、A3、A4およびA5からなる抗体の群より選択される参照抗体と実質的に同一のKdでTSLPに結合する、請求項1または5に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記結合タンパク質が、初代細胞OPGアッセイにしたがって、A2、A3、A4およびA5からなる抗体の群より選択される参照抗体と同一なIC50で、TSLP活性を阻害する、請求項1または5に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記抗原結合タンパク質が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、F(fa’)x断片、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、およびIgM抗体、およびIgG1抗体、およびIgG2抗体、およびIgG3抗体、およびIgG4抗体、およびH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減するヒンジ領域内の少なくとも1つの変異を有するIgG4抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記抗原結合タンパク質がヒト抗体である、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項11】
請求項9または10に記載の抗体を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項5に記載の抗原結合因子の軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメインまたはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項13】
前記配列がL1~L27、H1~H27またはその両方から選択される、請求項12に記載の単離された核酸。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項10に記載の抗体を産生することができるハイブリドーマ。
【請求項17】
請求項11に記載の抗体を生成する方法であって、該方法は、請求項15に記載の宿主細胞を、該細胞が該抗体を発現することを可能にする条件下で、インキュベートする工程を包含する、方法。
【請求項18】
TSLP関連炎症状態の処置を必要とする被験体において、TSLP関連炎症状態を処置する方法であって、該方法は、治療有効量の請求項11に記載の組成物を、該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記炎症状態が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎およびアトピー性皮膚炎からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
TSLP関連線維症障害の処置を必要とする被験体において、TSLP関連線維症障害を処置する方法であって、該方法は、治療有効量の請求項11に記載の組成物を、該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記線維症障害が、強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型肝炎もしくは慢性C型肝炎から生じる線維症、放射線誘発性線維症および創傷治癒から生じる線維症からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
A1~A27からなる群より選択される抗体と、TSLPへの結合について交差競合する、単離された抗原結合タンパク質。
【請求項23】
前記抗原結合タンパク質が、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項22に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項24】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K67E、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項25】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも高い結合親和性を有する、請求項24に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項26】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも高い結合親和性を有する、請求項25に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項27】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K21E、T25R、S28R、
S64RおよびK73Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項28】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項27に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項29】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項28に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項30】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K67E、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項27に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項31】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項32】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも高い結合親和性を有する、請求項31に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項33】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも高い結合親和性を有する、請求項32に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項34】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K10E、A14R、K21E、D22R、K73E、K75EおよびA76Rからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項35】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項34に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項36】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項35に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項37】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項34に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項38】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K12E、D22R、S40R、R122E、N124E、R125EおよびK129Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項39】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性
よりも低い結合親和性を有する、請求項38に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項40】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項39に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項41】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、S40R、S42R、H46R、R122EおよびK129Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項42】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項41に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項43】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項42に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項44】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、D2R、T4R、D7R、S42R、H46R、T49R、E50R、Q112R、R122E、R125EおよびK129Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項45】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項44に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項46】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項45に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項47】
野生型の親和性よりも高い親和性で、変異K101Eを含む変異したTSLPに結合する、請求項44に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項48】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、N5R、S17R、T18R、K21E、D22R、T25R、T33R、H46R、A63R、S64R、A66R、E68R、K73E、K75E、A76R、A92R、T93R、Q94RおよびA95Rからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項49】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項48に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項50】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項49に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項51】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項48に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項52】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、K21E、K21R、D22R、T25R、T33R、S64R、K73E、K75E、E111RおよびS114Rからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項53】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項52に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項54】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項53に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項55】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項52に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項56】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、E9R、K10E、K12E、A13R、S17R、S20R、K21E、K21R、K73E、K75E、N124EおよびR125Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項57】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項56に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項58】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項57に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項59】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K67E、K97E、K98E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項56に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項60】
野生型の親和性で野生型TSLPを結合する、単離された抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、野生型の親和性よりも低い親和性で、変異したTSLPの群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの群は、A14R、K21E、D22R、A63R、S64R、K67E、K73E、A76R、A92RおよびA95Rからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、抗原結合タンパク質。
【請求項61】
前記変異したTSLPの群のうちの任意の2つ以上のメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項60に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項62】
前記変異したTSLPの群のうちの全てのメンバーに対して、野生型の親和性よりも低い結合親和性を有する、請求項61に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項63】
前記抗原結合タンパク質が、野生型の親和性よりも高い親和性で、変異したTSLPの第2の群のうちのいずれかに結合し、該変異したTSLPの第2の群は、K97E、K98
E、R100E、K101EおよびK103Eからなる群より選択される変異を含む、変異したTSLPを含む、請求項60に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119の下、2008年8月25日に出願された米国仮特許出願第61/091,676号、および、2007年9月10日に出願された米国仮特許出願第60/971,178号(これらは、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、ヒト胸腺間質性リンパ球性新生因子(thymic stromal
lymphopoietin)に結合することができる抗体を含む抗原結合タンパク質の組成物、および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーなどのアレルギー性疾患の有病率は、近年、特に先進国において増大しているようであり、罹患人口の割合が増加している(非特許文献1)。胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)は、炎症促進性刺激(pro-inflammatory stimuli)に応答して産生される、上皮細胞由来サイトカインである。TSLPは、主に、樹状細胞およびマスト細胞に対するその活性を介して、アレルギー性炎症反応を促進することが発見されている(非特許文献2、非特許文献3)。ヒトTSLPの発現は、疾患の重症度と相関して喘息の気道において増大されることが報告されている(非特許文献4)。加えて、TSLPタンパク質レベルは、喘息患者およびアレルギー性障害に罹患した他の患者の濃縮された気管支肺胞洗浄(BAL)流体において検出可能である。また、増大したレベルのTSLPタンパク質およびmRNAは、アトピー性皮膚炎(AD)の患者の病変皮膚において見出される。したがって、TSLPアンタゴニストは、炎症性障害を処置するのに有用である。
【0004】
さらに、TSLPはまた、米国特許出願第11/344,379号で報告されるように、線維症を促進することが見出されている。線維症疾患は、組織修復過程の間、線維症段階(fibrosis phase)が阻止されずに(unchecked)継続する場合に生じ、これは、広範な組織リモデリングおよび永続的な瘢痕組織の形成をもたらす(非特許文献5)。米国における死亡のうちの最大45%が、多くの組織および臓器系を冒し得る線維増殖性疾患に原因があり得ると推定されている(非特許文献5)。
【0005】
現在、抗炎症処置は、線維症障害を処置するために使用される。なぜなら、線維症は、特発性肺線維症、進行性腎臓疾患および肝硬変のような多くの持続性の炎症疾患に一般的であるからである。しかしながら、線維症の制御に関与する機構は、炎症の機構とは全く異なっているようであり、抗炎症療法は、線維症を低減または予防するのに常に有効とは限らない(非特許文献5)。したがって、線維症を低減および予防する処置を開発するための必要性が残っている。
【0006】
したがって、TSLPに対するアンタゴニストは、これらの炎症性障害および線維症障害を処置するのに有用であることが期待される。本開示は、このような処置および処置方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kay, N Engl.J.Med.(2001)344:30-37
【非特許文献2】Soumelisら、Nat Immun(2002)3(7):673-680
【非特許文献3】Allakhverdiら、J.Exp.Med.(2007)204(2):253~258
【非特許文献4】Yingら、J.Immunol.(2005)174:8183~8190
【非特許文献5】Wynn、Nature Rev.Immunol.(2004)4、583
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
一局面において、本開示は、単離された抗原結合タンパク質を提供し、この単離された抗原結合タンパク質は、
a.以下:
i.A1~A27の軽鎖CDR3配列からなる群より選択されるCDR3配列から全部で2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR3配列;
ii.QQAXSFPLT(配列番号251);
から選択される軽鎖CDR3配列、ならびに
b.以下:
i.A1~A27の重鎖CDR3配列からなる群から選択されるCDR3配列から全部で3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR3配列;
ii.GGGIX12VADYYX13YGMDV(配列番号255);
iii.DX21GX22SGWPLFX23Y(配列番号259)
から選択される重鎖CDR3配列を含み、ここでXは、N残基またはD残基であり;X12は、P残基またはA残基であり;X13は、Y残基またはF残基であり;X21は、G残基またはR残基であり;X22は、S残基またはT残基であり;X23は、A残基またはD残基であり、そして上記抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する。
【0009】
別の局面において、本開示の単離された抗原結合タンパク質はさらに、以下:
a.以下:
i.A1~A27の軽鎖CDR1配列から3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR1配列;
ii.RSSQSLXYSDGXTYLN(配列番号246);
iii.RASQXSSWLA(配列番号249);
から選択される軽鎖CDR1配列
b.以下:
i.A1~A27のCDR2配列から2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる軽鎖CDR2配列;
ii.KVSX(配列番号247の残基1~4);
iii.XSSLQS(配列番号250);あるいは
iv.QDXKRPS(配列番号252)
から選択される軽鎖CDR2配列;ならびに
c.以下:
i.A1~A27のCDR1配列から2アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR1配列と;
ii.X10YGMH(配列番号253)と;
iii.X1516YMX17(配列番号257)と;
から選択される重鎖CDR1配列、ならびに
d.以下:
i.A1~A27のCDR2配列から3アミノ酸以下の付加、置換および/または欠失だけ異なる重鎖CDR2配列と;
ii.VIWX11DGSNKYYADSVKG(配列番号254)と;
iii.VISYDGSX14KYYADSVKG(配列番号256)と;
iv.WINPNSGGTNX181920KFQG(配列番号258)と;
から選択される重鎖CDR2配列のうちの少なくとも1つを含み、ここで、Xは、V残基またはI残基であり;Xは、N残基またはD残基であり;Xは、Y残基またはN残基であり;Xは、G残基またはS残基であり;Xは、L残基またはI残基であり;Xは、N残基またはT残基であり;Xは、T残基またはA残基であり;Xは、K残基またはN残基であり;X10は、S残基またはN残基であり;X11は、Y残基またはF残基であり;X14は、Y残基またはN残基であり;X15は、D残基またはG残基であり;X16は、Y残基またはD残基であり;X17は、Y残基またはH残基であり;X18は、Y残基またはH残基であり;X19は、V残基またはA残基であり;X20は、Q残基またはR残基であり、そして上記抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する。
【0010】
本開示の別の局面において、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質は:
a.以下:i.A1~A27から選択される軽鎖CDR1配列;ii.A1~A27から選択される軽鎖CDR2配列;iii.A1~A27から選択される軽鎖CDR3配列を含む、軽鎖可変ドメイン;または
b.以下:i.A1~A27から選択される重鎖CDR1配列;ii.A1~A27から選択される重鎖CDR2配列、およびiii.A1~A27から選択される重鎖CDR3配列を含む、重鎖可変ドメイン;または
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン
のいずれかを含む。
【0011】
さらなる局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、以下:
a.以下:
i.L1~L27から選択される軽鎖可変ドメイン配列に少なくとも80%同一な配列を有するアミノ酸;
ii.L1~L27の軽鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列に少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.L1~L27の軽鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖(complement)に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
から選択される軽鎖可変ドメイン配列
b.以下:から選択される重鎖可変ドメイン配列
i.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列に少なくとも80%同一であるアミノ酸の配列;
ii.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列をコードするポリヌクレオチド配列に少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;
iii.H1~H27の重鎖可変ドメイン配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列;あるいは
c.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン、
のいずれかを含み、上記抗原結合タンパク質は特異的にTSLPに結合する。
【0012】
さらなる局面において、本開示の単離された抗原結合タンパク質は、a.L1~L27から選択される軽鎖可変ドメイン配列;b.H1~H27から選択される重鎖可変ドメイン配列;またはc.(a)の軽鎖可変ドメインおよび(b)の重鎖可変ドメイン、のいずれかを含み、上記抗原結合タンパク質は、特異的にTSLPに結合する。
【0013】
さらなる局面において、上記単離された結合タンパク質は、L1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13.1H13、L13.2H13、L14.1H14、L14.2H14、L15.1H15、L15.2H15、L16.1H16、L16.2H16、L17H17、L18.1H18、L18.2H18、L19.1H19、L19.2H19、L20.1H20、L20.2H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26およびL27H27から選択される、軽鎖可変ドメイン配列および重鎖可変ドメイン配列を含む。
【0014】
さらなる局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、A2、A3、A4およびA5から選択される参照抗体と実質的に同一なKdでTSLPに結合する結合タンパク質を含む。別の局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、初代細胞OPGアッセイにしたがって、A2、A3、A4またはA5から選択される参照抗体と同一なIC50で、TSLP活性を阻害する結合タンパク質を含む。
【0015】
なおさらなる局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、参照抗体とTSLPの結合に関して交差競合(cross-compete)する。別の局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、参照抗体(例えば、A2、A4、A5、A6、A7、A10、A21、A23またはA26)と同じエピトープと結合する。
【0016】
一局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体(single-chain antibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ、Fab断片、F(fa’)x断片、ドメイン抗体、IgD抗体、IgE抗体、およびIgM抗体、およびIgG1抗体、およびIgG2抗体、およびIgG3抗体、およびIgG4抗体、およびH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減するヒンジ領域内の少なくとも1つの変異を有するIgG4抗体から選択される。一局面において、上記の単離された抗原結合タンパク質はヒト抗体である。
【0017】
本開示の抗原結合因子の、軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメインまたはその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子もまた提供される。一実施形態において、上記ポリヌクレオチドは、軽鎖可変配列L1~L27および/または重鎖可変配列H1~H27、あるいはその両方を含む。
【0018】
本開示のポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。一実施形態において、このベクターは発現ベクターである。このベクターを含む宿主細胞もまた提供される。本発明の抗原結合タンパク質を産生することができるハイブリドーマもまた提供される。この宿主細胞がこの抗原結合タンパク質を発現することを可能にする条件下で、この宿主細胞を培養する工程を包含する、この抗原結合タンパク質を作製する方法もまた提供される。
【0019】
本発明の抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物もまた提供される。一実施形態において、この薬学的組成物はヒト抗体を含む。TSLP関連炎症状態の処置を必要とする被験体においてTSLP関連炎症状態を処置する方法もまた提供され、この方法は、治療有効量の上記組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。一実施形態において、この炎症
状態は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎またはアトピー性皮膚炎である。TSLP関連線維症障害の処置を必要とする被験体においてTSLP関連線維症障害を処置する方法もまた提供され、この方法は、治療有効量の上記組成物を上記被験体に投与する工程を包含する。一実施形態において、この線維症障害は、強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型肝炎もしくは慢性C型肝炎から生じる線維症、放射線誘発性線維症、および創傷治癒から生じる線維症である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図1B】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図1C】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図1D】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図1E】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図1F】A1~A27の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに、各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2A】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2B】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2C】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2D】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2E】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
図2F】A1~A27の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域のアミノ酸配列を提供する。さらに各CDRをコードする例示的なヌクレオチド配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、サイトカインであるヒト胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)に特異的に結合する抗原結合因子(抗原結合タンパク質を含む)に関し、これらとしては、拮抗性TSLP抗体、抗体断片および抗体誘導体のような、TSLPの結合およびシグナル伝達を阻害する抗原結合タンパク質が挙げられる。これらの抗原結合因子は、TSLPがそのレセプターに結合することを阻害またはブロックするのに有用であり、そして炎症疾患、線維症疾患および他の関連状態を処置するのに有用である。
【0022】
本発明はさらに、TSLPに結合する抗原結合タンパク質に関する組成物、キットおよび方法を提供する。抗TSLP抗体、抗体断片、または抗体誘導体の全てまたはその一部をコードする核酸のような、TSLPに結合するポリペプチドの全てまたはその一部をコードするポリヌクレオチドの配列を含む、核酸分子ならびにその誘導体および断片もまた提供される。本発明はさらに、そのような核酸を含むベクターおよびプラスミド、ならびにそのような核酸および/またはベクターおよびプラスミドを含む細胞または細胞株を提供する。提供される方法は、例えば、ヒトTSLPに結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗TSLP抗体)を作製、同定または単離する方法、抗原結合タンパク質がTSLP
に結合するか否かを決定する方法、TSLPに結合する抗原結合タンパク質を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を作製する方法、ならびに被験体にTSLPに結合する抗原結合タンパク質を投与するための方法(例えば、TSLPによって媒介される状態を処置するための方法)、およびインビトロもしくはインビボでTSLPシグナル伝達に関連する生物学的活性を調節するための方法を含む。
【0023】
TSLP
胸腺間質性リンパ球性新生因子(TSLP)とは、4つのα-ヘリックス束(α-helical bundle)のI型サイトカインをいい、これは、IL-2ファミリーのメンバーであるが、IL-7に最も密接に関連する。サイトカインは、特定の刺激に応答して分泌される低分子量の調節性タンパク質であり、これは、標的細胞の膜上のレセプターに作用する。サイトカインは、種々の細胞応答を調節する。サイトカインは、概して、Cytokines、A.Mire-SluisおよびR.Thorne編、Academic Press,New York,(1998)のような参考文献に記載される。
【0024】
TSLPは、元々、マウス胸腺間質細胞株からクローニングされ(Simsら、J.Exp.Med 192(5),671-680(2000))、初期のB細胞およびT細胞の発達を支持することが見出されている。後に、ヒトTSLPがクローニングされ、マウスのホモログに対してアミノ酸配列で43%の同一性を有することが見出された(Quentmeierら、Leukemia 15、1286-1292(2001)および米国特許第6,555,520号(これは、参考として本明細書に援用される))。ヒトTSLPのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および2で提示される。TSLPは、TSLPレセプター(TSLPR)(これは、米国特許出願第09/895,945号(公開番号:2002/0068323)に記載される)(配列番号3および4)と呼ばれるヘマトポイエチンレセプターファミリーからのレセプター鎖に対して低い親和性で結合することが見出されている。それぞれ、ヒトTSLPRをコードするポリヌクレオチド配列は、この出願の配列番号3として提示され、そのアミノ酸配列は、この出願の配列番号4として提示される。TSLPRの可溶性ドメインは、配列番号4のおおよそアミノ酸25~231である。TSLPは、TSLPRのヘテロ二量体複合体およびインターロイキン7レセプターαIL-7Rαに対して高い親和性で結合する(Parkら、J.Exp.Med 192:5(2000)、米国特許出願第09/895,945号、公開番号U.S.2002/0068323)。IL-7レセプターαの配列は、米国特許第5,264,416号(これは、参考として本明細書に援用される)の図2に示される。IL-7レセプターαの可溶性ドメインの配列は、米国特許第5,264,416号の図2のアミノ酸1~219である。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「TSLPポリペプチド」とは、免疫原として有用なTSLPの種々の形態をいう。これらとしては、PCT特許出願公報WO03/032898に記載されるように、フューリン(furin)切断部位がアミノ酸配列の改変を通して除去された、改変された形態で発現されるTSLPが挙げられる。改変されたTSLPは活性を保持するが、全長の配列は、CHO細胞のような哺乳動物細胞でより容易に発現される。TSLPポリペプチドの例としては、配列番号2、配列番号373および配列番号375が挙げられる。
【0026】
さらに、カニクイザル(cynomolgus)TSLPが同定され、それは、以下の実施例1で示され、例えば配列番号380に示される。
【0027】
TSLPは、定量的mRNA分析によって測定されるように、皮膚上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、および気道上皮細胞、ケラチノサイト、間質およびマスト細胞、平滑筋細胞ならびに肺および皮膚線維芽細胞を含む、ヒト上皮細胞で産生される(Sou
melisら、Nature Immunol.3(7)673-680(2002))。マウスTSLPおよびヒトTSLPの両方は、アレルギー性炎症を促進することに関与している。
【0028】
【表1】
TSLP活性
TSLP活性は、PCT特許出願公報WO03/032898に記載されるように、ヒトTSLPRを発現するBAF細胞(BAF/HTR)の増殖を含む。BAF/HTRバイオアッセイは、ヒトTSLPレセプターでトランスフェクトされたマウスプロBリンパ球(pro B lymphocyte)細胞株を利用する。BAF/HTR細胞は、成長に関してhuTSLPに依存し、そして試験サンプルに添加された活性なhuTSLPに応答して増殖する。インキュベーション期間後、細胞増殖は、アラマーブルー色素Iまたはトリチウムチミジンを添加することによって測定される。増殖はまた、CYQUANT細胞増殖アッセイキット(Invitrogen)のような市販のキットを使用して測定され得る。
【0029】
huTSLP活性についてのさらなるアッセイは、例えば、米国特許第6,555,520号に記載されるような、TSLPによるヒト骨髄からのT細胞の成長の誘導を測定するアッセイを含む。別のTSLP活性は、Levinら、J.Immunol.162:677-683(1999)およびPCT特許出願WO03/032898に関して記載されるように、STAT5を活性化する活性である。
【0030】
さらなるアッセイは、米国出願公開番号2006/0039910(連続番号11/2
05,909)に記載されるように、初代ヒト単球細胞および樹状細胞からのTSLPに誘導されたCCL17/TARCの産生を含む。
【0031】
TSLP活性を測定するのに有用な細胞ベースのアッセイは、以下の実施例に記載される。これらは、上記のBAF細胞増殖アッセイ、および初代ヒト樹状細胞からのTSLPに誘導されたオステオプロテゲリン(OPG)の産生を測定する、以下に記載の初代細胞アッセイ、および以下にまた記載の、カニクイザル末梢血単核細胞アッセイを含む。
【0032】
TSLP活性はさらにインビボ活性を含む。これらは、マウスモデルにおいて測定され得る(例えば、Zhouら、Nat Immunol 6(10)1047-1053(2005)およびYooら、J Exp Med.202(4)541-549(2005)に記載されるようなもの)。例えば、抗マウスTSLP抗体は、Ova-喘息モデルにおいてBALFの細胞充実性ならびにIL-5およびIl-13のBALFレベルを低減させることが示されている(Zhouら)。
【0033】
定義
ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列は、標準的な一文字または三文字略字を使用して示される。他に指定されない限り、ポリペプチド配列は、左側にそのアミノ末端を有し、右側にそのカルボキシ末端を有し、そして一本鎖核酸配列、および二本鎖核酸配列の上部の鎖(top strand)は、左側にその5’末端を有し、右側にその3’末端を有する。また、特定のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、それが参照配列からどのように異なっているのか説明することによって記載され得る。
【0034】
特定の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメイン(L1(「軽鎖可変ドメイン1」)、H1(「重鎖可変ドメイン1」)など)のポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列。軽鎖および重鎖を含む抗体は、軽鎖可変ドメインの名称および重鎖可変ドメインの名称を合わせることによって示される。例えば、「L4H7」は、L4の軽鎖可変ドメインおよびH7の重鎖可変ドメインを含む抗体を示す。
【0035】
本明細書で他に定義されない限り、本発明と関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、状況によって他に必要とされない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は、単数を含む。一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連した学術用語およびそれらの技術は、周知であり、当該技術分野において一般的に使用されるものである。本発明の方法および技術は、他に指定されない限り、概して、当該技術分野で周知であり、そして本明細書を通して引用および考察される種々の一般的かつより具体的な参考文献に記載される従来の方法にしたがって実行される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、ならびにAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992)、ならびにHarlowおよびLane Antibodies:A Laboratory Manual
Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)(これらは参考として本明細書に援用される)を参照のこと。酵素反応および精製技術は、製造者の仕様書にしたがって、当該技術分野で一般的に完遂されるかまたは本明細書に記載されるように実行される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して使用される専門用語ならびにそれらの実験室手順および技術は、周知であり、当該
技術分野において一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製物、処方物、および送達および患者の処置に対して標準的な技術が使用され得る。
【0036】
以下の用語は、他に指定されない限り、以下の意味を有すると理解される。用語「単離された分子」(この分子が、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体である場合)は、その起源または誘導物の供給源に基づき、(1)その天然の状態ではそれに付随する天然では付随している成分を伴わないか、(2)同一の種に由来する他の分子を実質的に含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)天然には存在しない分子である。したがって、化学的に合成されるか、またはそれが天然で生じる細胞とは異なる細胞系で発現される分子は、その天然では付随している成分から「単離」されている。分子はまた、当該技術分野で周知の精製技術を使用して、単離によって天然では付随している成分を実質的に含まないようにされ得る。分子の純度または均質性は、当該技術分野で周知の多くの方法によってアッセイされ得る。例えば、ポリペプチドサンプルの純度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動および当該技術分野で周知の技術を使用してポリペプチドを可視化するゲルの染色を使用してアッセイされ得る。特定の目的のために、より高い分離能(resolution)が、HPLCまたは精製に関して当該技術分野で周知である他の手段を使用することによって提供され得る。
【0037】
用語「TSLPインヒビター」および「TSLPアンタゴニスト」は、相互に交換可能に使用される。各々は、TSLPシグナル伝達を検出可能に阻害する分子である。TSLPインヒビターによって生じるこの阻害は、アッセイを使用してそれが検出可能である限りは、完全である必要はない。例えば、以下の実施例4に記載される細胞ベースのアッセイは、TSLPシグナル伝達の阻害を測定するのに有用なアッセイを実証する。
【0038】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」とはそれぞれ、ペプチド結合によって互いに連結した2つ以上のアミノ酸残基を含む分子をいう。これらの用語は、例えば、天然および人工タンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチドアナログ(例えば、ムテイン、改変体および融合タンパク質)、ならびに翻訳後、またはその他の方法で共有結合的もしくは非共有結合的に改変されたタンパク質を包含する。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体または多量体であり得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド断片」とは、対応する全長タンパク質と比較してアミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドをいう。例えば、断片は、長さが少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150または200アミノ酸であり得る。例えば、断片はまた、長さが多くても1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11または10アミノ酸であり得る。断片はさらに、そのいずれかの末端または両方の末端に、1つ以上の追加のアミノ酸(例えば、天然に存在する異なるタンパク質(例えば、Fcまたはロイシンジッパードメイン)に由来するアミノ酸の配列または人工のアミノ酸配列(例えば、人工のリンカー配列))を含み得る。
【0040】
本発明のポリペプチドは、例えば、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を変更する、(4)結合親和性を変更する、および(4)他の物理化学的特性または機能特性を付与または改変する任意の方法および任意の理由で改変されたポリペプチドを含む。アナログは、ポリペプチドのムテインを含む。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(例えば、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの一部)でなされ得る。「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に存在するヘ
リックスを破壊する傾向もなく、親配列を特徴付けるかまたはその機能性に必要とされる他の型の二次構造を破壊する傾向もないはずである)ものである。当該技術分野で認識されるポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));およびThorntonら、Nature 354:105(1991)(これらは、それぞれ参考として本明細書に援用される)に記載される。
【0041】
ポリペプチドの「改変体」は、アミノ酸配列であって、1つ以上のアミノ酸残基を、別のポリペプチド配列と比較して、そのアミノ酸配列に挿入するか、それから欠失させるか、および/または置換させた、アミノ酸配列を含む。本発明の改変体は融合タンパク質を含む。本明細書に記載される抗体の改変体はまた、プロセシングに由来するものを含む。このような改変体は、例えば、非効率的なシグナル配列の切断の結果として、軽鎖または重鎖のN末端に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の追加のアミノ酸を有するものを含む。このような改変体は、軽鎖または重鎖のN末端またはC末端から1つ以上のアミノ酸を欠失したものも含む。
【0042】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学的な部分(例えば、ポリエチレングリコール、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)など)への結合体化、リン酸化およびグリコシル化を介して化学的に改変されたポリペプチド(例えば、抗体)である。他に指定されない限り、用語「抗体」は、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体に加えて、その誘導体、改変体、断片およびムテインを含む。これらの例は、以下に記載される。
【0043】
本開示にしたがう「抗原結合タンパク質」は、抗原に結合することができるタンパク質、および必要に応じて、抗原結合部分が、抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進するコンフォメーションを採用することを可能にする足場(scaffold)またはフレームワーク部分である。一実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、少なくとも1つのCDRを含む。抗原結合タンパク質の例は、抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体および抗体アナログを含む。この抗原結合タンパク質は、例えば、グラフト化されたCDRまたはCDR誘導体を有する代替的なタンパク質足場または人工の足場を含み得る。このような足場としては、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化する、導入された変異を含む抗体由来の足場、ならびに例えば、生体適合性ポリマーを含む完全な合成足場が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Korndorferら、2003、Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics、第53巻、1号:121~129;Roqueら、2004、Biotechnol.Prog.20:639~654を参照のこと。さらに、ペプチド抗体模倣物(peptide antibody mimetic)(「PAM」)ならびに足場としてフィブロネクチン成分を利用する足場に基づく抗体模倣物が使用され得る。
【0044】
抗原結合タンパク質は、例えば、天然に存在する免疫グロブリンの構造を有し得る。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対から構成され、各対は、1つの「軽い」鎖(約25kDa)および1つの「重い」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識の主役をなす、約100~110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター作用の主役をなす定常領域を規定する。ヒト
軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖と分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεと分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10個超のアミノ酸の「D」領域を含む。一般的に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))(これは、全ての目的のために、その全体が参考として本明細書に援用される)を参照のこと。各軽鎖/重鎖の対の可変領域は、抗体結合部位を形成し、その結果、インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を有する。
【0045】
天然に存在する免疫グロブリン鎖は、3つの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる)によって連結された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同様な一般的構造を示す。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabatら、Sequences of Proteins
of Immunological Interest、第5版、US Dept.of Health and Human Services、PHS、NIH、NIH Publication no.91~3242、1991の定義にしたがう。インタクトな抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または全長の重鎖および軽鎖を有する完全ヒト抗体を含む。
【0046】
「抗体」とは、他に特定されない限り、特異的な結合に関してインタクトな抗体と競合する、インタクトな免疫グロブリンまたはその抗原結合部分をいう。抗原結合部分は、組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的切断もしくは化学的切断によって生成され得る。抗原結合部分としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、およびドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ならびに、ポリペプチドに対する特異的な抗原結合を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。
【0047】
Fab断片は、V、V、CおよびC1ドメインを有する一価の断片であり;F(ab’)断片は、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価の断片であり;Fd断片は、VドメインおよびC1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一のアーム(arm)のVドメインおよびVドメインを有し;そして、dAb断片は、Vドメイン、Vドメイン、またはVもしくはVドメインの抗原結合断片を有する(米国特許第6,846,634号、同第6,696,245号、米国特許出願公開第05/0202512号、同第04/0202995号、同第04/0038291号、同第04/0009507号、同第03/0039958号、Wardら、Nature 341:544-546、1989)。
【0048】
単鎖抗体(scFv)は、VおよびV領域が、リンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)によって連結され、連続的なタンパク質鎖(ここで、このリンカーは、このタンパク質鎖がそれ自体に折り重なることを可能にするのに十分長い)を形成し、一価の抗原結合部位を形成する抗体である(例えば、Birdら、1988、Science 242:423-26、およびHustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879~83を参照のこと)。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体であり、ここで、各ポリペプチド鎖は、リンカーによって連結されたVドメインおよびVドメインを含み、このリンカーは、同一の鎖上の2つのドメイン間で対形成させるのには短すぎ、したがって、各ドメインが、別のポリペプチド鎖上の相補的なドメインと対形成することを可能にする(例えば、Holligerら、
1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-48、およびPoljakら、1994、Structure 2:1121-23を参照のこと)。ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合、それらの対形成から生じるダイアボディは、2つの同一な抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖が使用され得、2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製し得る。同様に、トリアボディ(tribody)およびテトラボディは、それぞれ、3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ、同一でも異なっていてもよい3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体である。
【0049】
所定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Dept.of Health and Human Services、PHS、NIH、NIH Publication no.91~3242、1991によって記載される体系的方法を使用して同定され得る。1つ以上のCDRは、共有結合的または非共有結合的のいずれかで分子に組み込まれ得、その分子を抗原結合タンパク質にする。抗原結合タンパク質は、より長いポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込み得るか、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合的に連結し得るか、または非共有結合的にCDRを組み込み得る。これらのCDRは、この抗原結合タンパク質が目的の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。
【0050】
抗原結合タンパク質は、1つ以上の結合部位を有し得る。1つより多い結合部位が存在する場合、結合部位は、互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、天然に存在するヒト免疫グロブリンは、代表的に2つの同一な結合部位を有し、一方、「二重特異性」または「二機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0051】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ以上の可変領域および定常領域を有する、全ての抗体を含む。一実施形態において、全ての可変ドメインおよび定常ドメインは、ヒト免疫グロブリン配列より得られる(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、種々の方法(その例(ヒト重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子から得られる抗体を発現するように遺伝的に改変されているマウスの、目的の抗原を使用しての免疫化を介するものを含む)は、以下に記載される)で調製され得る。
【0052】
ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって、非ヒト種から得られる抗体の配列とは異なる配列を有し、その結果、このヒト化抗体は、ヒト被験体に投与された場合に、非ヒト種の抗体と比較して免疫応答を惹起する可能性が少ないか、そして/またはより重篤ではない免疫応答を惹起する。一実施形態において、非ヒト種の抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークドメインおよび定常ドメイン内の特定のアミノ酸は、ヒト化抗体を生成するように変異される。別の実施形態において、ヒト抗体由来の定常ドメインを、非ヒト種の可変ドメインに融合する。別の実施形態において、非ヒト抗体の1つ以上のCDR配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、ヒト被験体に投与された場合に、非ヒト抗体の可能性のある免疫原性を低減するように変更され、ここで、変更されたアミノ酸残基は、抗体の、その抗原に対する免疫特異的な結合に重要ではないか、アミノ酸配列へなされた変化は、保存的変化であるかのいずれかであり、その結果、ヒト化抗体の抗原への結合は、非ヒト抗体の抗原への結合よりも有意には劣っていない。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号に見出され得る。
【0053】
用語「キメラ抗体」とは、1つの抗体に由来する1つ以上の領域、および1つ以上の他の抗体に由来する1つ以上の領域を含む抗体をいう。一実施形態において、CDRのうちの1つ以上が、ヒト抗TSLP抗体から得られる。別の実施形態において、CDRのうち
の全てが、ヒト抗TSLP抗体から得られる。別の実施形態において、1つより多いヒト抗TSLP抗体に由来するCDRが、キメラ抗体内で混合および調和される。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗TSLP抗体の軽鎖由来のCDR1、第二のヒト抗TSLP抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3、ならびに第三の抗TSLP抗体の重鎖由来のCDRを含み得る。さらに、フレームワーク領域は、同じ抗TSLP抗体のうちの1つ、1つ以上の異なる抗体(例えば、ヒト抗体)、またはヒト化抗体から得られ得る。キメラ抗体の一例において、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体と同一であるか、その抗体に相同であるか、あるいはその抗体から得られるが、一方、鎖の残りは、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体と同一であるか、その抗体に相同であるか、あるいはその抗体から得られる。所望の生物学的活性(すなわち、ヒトTSLPレセプターに特異的に結合する能力)を示す、このような抗体の断片もまた含まれる。
【0054】
抗体の断片またはアナログは、本明細書の教示にしたがい、そして当該技術分野で周知の技術を使用して、当業者によって容易に調製され得る。断片またはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能性ドメインの境界の近傍に存在する。構造ドメインおよび機能性ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸の配列データと公開または専有の配列データベースとの比較によって同定され得る。コンピュータ化された比較方法が、既知の構造および/または機能を有する他のタンパク質に存在する、配列モチーフまたは予測されたタンパク質コンフォメーションドメインを同定するために使用され得る。既知の三次元構造に折りたたむタンパク質配列を同定するための方法は公知である。例えば、Bowieら、1991、Science 253:164を参照のこと。
【0055】
「CDRグラフト化抗体」は、特定の種もしくはアイソタイプの抗体に由来する1つ以上のCDR、および同じもしくは異なる種もしくはアイソタイプの別の抗体のフレームワークを含む抗体である。
【0056】
「多特異性抗体」は、1つ以上の抗原上の1つより多いエピトープを認識する抗体である。抗体のこの型のサブクラスは、同一または異なる抗原上の2つの異なるエピトープを認識する「二重特異性抗体」である。
【0057】
抗体を含む抗原結合タンパク質は、それが、10-7M以下のKd(または、以下に定義される、対応するKb)値によって決定されるように高い結合親和性でTSLPのような抗原に結合する場合、その抗原に「特異的に結合する」。
【0058】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、そしてその抗原に対する抗原結合タンパク質の特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含む抗原結合タンパク質の一部である。抗原に特異的に結合する抗体に関して、これは、そのCDRドメインのうちの少なくとも1つの少なくとも一部を含む。
【0059】
2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列の「パーセント同一性」は、GAPコンピュータプログラム(GCG Wisconsin Package、version 10.3(Accelrys、San Diego、CA)の一部)を、そのデフォルトパラメータを使用してそれらの配列を比較することによって決定される。
【0060】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、通して相互に交換可能に使用され、これらは、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチドアナログ(例えば、ペプチド核酸および天然に存在しないヌクレオチドアナログ)を使用して生成されたDNAもしくはRNAの
アナログ、およびそれらのハイブリッドを含む。この核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。一実施形態において、本発明の核酸分子は、本発明の抗体、またはその断片、誘導体、ムテイン、もしくは改変体をコードする連続的なオープンリーディングフレームを含む。
【0061】
2つの一本鎖ポリヌクレオチドの配列を、アンチパラレルな配向で整列し得、その結果、一方のポリヌクレオチド中の全てのヌクレオチドが、ギャップを導入することなく、そしてどちらの配列の5’末端にも3’末端にも対形成しないヌクレオチドを有さずに、他方のポリヌクレオチド中のその相補的なヌクレオチドと向かい合う場合、それらの2つの一本鎖ポリヌクレオチドは、互いの「相補鎖」である。2つのポリヌクレオチドが中程度にストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズし得る場合、このポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドに対して「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、その相補鎖ではない別のポリヌクレオチドに対して相補的であり得る。
【0062】
「ベクター」は、それに連結された別の核酸を細胞に導入するために使用され得る核酸である。1つの型のベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加の核酸セグメントがライゲーションされ得る線状または環状の二本鎖DNA分子をいう。別の型のベクターは、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)であり、追加のDNAセグメントが、ウイルスゲノムに導入され得る。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律性の複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム性の哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、エピソーム性ではない哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主のゲノムとともに複製される。「発現ベクター」は、選択したポリヌクレオチドの発現を誘導することができる、1つの型のベクターである。
【0063】
ヌクレオチド配列は、調節配列が、そのヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは場所)に影響を与える場合、その調節配列に「作動可能に連結されている」。「調節配列」は、それが作動可能に連結されている核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは場所)に影響を与える核酸である。調節配列は、例えば、調節された核酸に対して、直接的にまたは1つ以上の他の分子(例えば、その調節配列および/またはその核酸に結合するポリペプチド)の作用を介して、その影響を発揮し得る。調節配列の例としては、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)が挙げられる。調節配列のさらなる例は、例えば、Goeddel、1990、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA、ならびにBaronら、1995、Nucleic Acids Res.23:3605~06に記載される。
【0064】
「宿主細胞」は、核酸(例えば、本発明の核酸)を発現するために使用され得る細胞である。宿主細胞は、原核生物(例えば、E.coli)であり得るか、または、それは、真核生物、例えば、単細胞真核生物(例えば、酵母または他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)またはハイブリドーマであり得る。例示的な宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、またはDHFRを欠損するCHO株DXB-11(Urlaubら、1980、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216~20を参照のこと)、無血清培地で増殖するCHO細胞株(Rasmussenら、1998、Cytotechnology 28:31を参照のこと)、CS-9細胞(DXB-11 CHO細胞の誘導体)およびAM-1/D細胞(米国特許第6,210,924号に記載される)を含むそれらの誘導体が
挙げられる。他のCHO細胞株としては、CHO-K1(ATCC# CCL-61)、EM9(ATCC# CRL-1861)およびUV20(ATCC# CRL-1862)が挙げられる。他の宿主細胞の例としては、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC
CRL 1651)(Gluzmanら、1981、Cell 23:175を参照のこと)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1から得られるCV1/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)(McMahanら、1991、EMBO J.10:2821を参照のこと)、293、293 EBNAまたはMSR 293のようなヒト胚性腎臓細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、通常の二倍体細胞、一次組織(primary tissue)のインビトロ培養物から得られる細胞株、一次外植片(primary explant)、HL-60、U937、HaKまたはJurkat細胞が挙げられる。代表的に、宿主細胞は、ポリペプチドをコードする核酸(これは、その後、その宿主細胞内で発現され得る)で形質転換またはトランスフェクトされ得る、培養された細胞である。句「組換え宿主細胞」は、発現されるべき核酸で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を意味するために使用され得る。宿主細胞はまた、核酸を含むが、調節配列が、その核酸と作動可能に連結されるようにその宿主細胞に導入されない限りは所望のレベルでその核酸を発現しない細胞であり得る。用語である宿主細胞とは、特定の対象細胞をいうだけでなく、このような細胞の子孫または可能性のある子孫もいうことが理解される。例えば、変異または環境の影響に起因して、特定の改変が続く世代で生じ得るので、実際には、このような子孫は、親細胞と同一ではない可能性があるが、依然として、本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0065】
抗原結合タンパク質
一局面において、本開示は、ヒトTSLPに結合する、抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体ムテインおよび抗体改変体のような抗原結合タンパク質を提供する。本開示にしたがう抗原結合タンパク質は、ヒトTSLPに結合し、それによってTSLP活性を低減する抗原結合タンパク質を含む。例えば、抗原結合タンパク質は、TSLPの、そのレセプターへの結合を妨害し得、したがってTSLP活性を低減し得る。
【0066】
一実施形態において、本発明は、図1A~1Fまたは図2A~2Fに示されるCDR配列から、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下または0個以下のアミノ酸残基だけ異なる1つ以上のCDR配列を含む抗原結合タンパク質を提供する。
【0067】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質のCDR3配列の少なくとも1つは、図1A~1Fまたは図2A~2Fの配列である。別の実施形態において、抗原結合タンパク質の軽鎖CDR3配列は、A1~A27の軽鎖配列であり、抗原結合タンパク質の重鎖CDR3配列は、A1~A27の重鎖CDR3配列である。
【0068】
別の実施形態において、上記の抗原結合タンパク質はさらに、1、2、3、4または5つのCDR配列を含み、これらは、それぞれ独立して、A1~A27のCDR配列から5、4、3、2、1または0個の単一アミノ酸の付加、置換および/または欠失だけ異なる。例示的な抗原結合タンパク質A1~A27の軽鎖CDRの配列および例示的な結合タンパク質A1~A27の重鎖CDRの配列は、それぞれ図1A~1Fおよび図2A~2Fに示される。CDRのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列もまた示される。さらに、CDR配列のコンセンサス配列は、以下に提供される。
【0069】
【数1】
【0070】
【数2】
【0071】
【数3】
【0072】
【数4】
【0073】
【数5】
【0074】
以下の表2は、例示的なTSLP抗原結合タンパク質A1~A27に関して、可変重鎖ドメイン(variable heavy domain)(H#)および可変軽鎖ドメイン(variable light domain)(L#)をコードする核酸(DNA)配列、ならびに可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列をそれぞれ提供する。各可変ドメインについてのCDR1、2および3は、各配列の最初から最後まで連続的である。フレームワーク(Fr)領域は下線が引かれている。各可変ドメインについてのフレームワーク1、2、3および4は、各配列の最初から最後まで連続的である
(例えば、各配列において、配列の最初の下線が引かれた部分はFr1であり、2番目のものはFr2であり、3番目のものはFr3であり、そして最後のものはFr4である)。
【0075】
【表2-1】
【0076】
【表2-2】
【0077】
【表2-3】
【0078】
【表2-4】
【0079】
【表2-5】
【0080】
【表2-6】
【0081】
【表2-7】
【0082】
【表2-8】
【0083】
【表2-9】
【0084】
【表2-10】
【0085】
【表2-11】
【0086】
【表2-12】
【0087】
【表2-13】
【0088】
【表2-14】
【0089】
【表2-15】
【0090】
【表2-16】
本発明の抗原結合タンパク質の特定の実施形態は、CDRのうちの1つ以上のアミノ酸配列と同一である1つ以上のアミノ酸配列を含み、さらに先に示される1つ以上のFRを含み得る。一実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される軽鎖CDR1配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される軽鎖CDR2配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される軽鎖CDR3配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される重鎖CDR1配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される重鎖CDR2配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質は、先に示される重鎖CDR3配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさ
らに、先に示される軽鎖FR1配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される軽鎖FR2配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される軽鎖FR3配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される軽鎖FR4配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される重鎖FR1配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される重鎖FR2配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される重鎖FR3配列を含む。別の実施形態において、この抗原結合タンパク質はさらに、先に示される重鎖FR4配列を含む。
【0091】
一実施形態において、本開示は、L1~L27からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列から15残基、14残基、13残基、12残基、11残基、10残基、9残基、8残基、7残基、6残基、5残基、4残基、3残基、2残基、1残基または0残基のみ異なるアミノ酸の配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗原結合タンパク質を提供し、ここで、このような配列の差異は、各々独立して1アミノ酸残基の欠失、挿入または置換のいずれかである。別の実施形態において、この軽鎖可変ドメインは、L1~L27からなる群より選択される軽鎖可変ドメインの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一である、アミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この軽鎖可変ドメインは、L1~L27からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一である、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この軽鎖可変ドメインは、L1~L27からなる群より選択される軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補鎖に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この軽鎖可変ドメインは、L1~L27の軽鎖ポリヌクレオチドの相補鎖に、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。
【0092】
別の実施形態において、本発明は、H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列から15残基、14残基、13残基、12残基、11残基、10残基、9残基、8残基、7残基、6残基、5残基、4残基、3残基、2残基、1残基または0残基のみ異なるアミノ酸の配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗原結合タンパク質を提供し、ここで、このような配列の差異は、各々独立して1アミノ酸残基の欠失、挿入または置換のいずれかである。別の実施形態において、この重鎖可変ドメインは、H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメインの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%同一である、アミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この重鎖可変ドメインは、H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%同一である、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この重鎖可変ドメインは、H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補鎖に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。別の実施形態において、この重鎖可変ドメインは、H1~H27からなる群より選択される重鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチドの相補鎖に、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸の配列を含む。
【0093】
先の表2に提供される実施形態の一部において、2つの軽鎖は、単一の重鎖と結合しており、例えば、L-12.1、L-12.2などとして識別される。これらの代替的な軽鎖は、各々単一の重鎖と対形成する。これらの実施形態において、軽鎖および重鎖の組み
合わせは、以下に記載されるようにアッセイされ得、より高いTSLP中和活性を提供する軽鎖と重鎖との組み合わせが選択され得る。
【0094】
さらなる実施形態は、組み合わせL1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13H13、L14H14、L15H15、L16H16、L17H17、L18H18、L19H19、L20H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26およびL27H27を含む抗原結合タンパク質を含む。
【0095】
本発明の抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗体断片および抗体誘導体)はさらに、当該技術分野で公知の任意の定常領域を含み得る。軽鎖定常領域は、例えば、κ型またはλ型の軽鎖定常領域(例えば、ヒトκ型またはλ型の軽鎖定常領域)であり得る。重鎖定常領域は、例えば、α型、δ型、ε型、γ型またはμ型の重鎖定常領域(例えば、ヒトα型、δ型、ε型、γ型またはμ型の重鎖定常領域)であり得る。一実施形態において、この軽鎖または重鎖定常領域は、天然に存在する定常領域の断片、誘導体、改変体またはムテインである。
【0096】
一実施形態において、上記の抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のようなIgGを含む。
【0097】
目的の抗体とは異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を取得するための技術(すなわち、サブクラス転換(subclass switching))は公知である。したがって、例えば、IgG抗体は、IgM抗体から取得され得、逆にIgM抗体は、IgG抗体から取得され得る。このような技術は、所定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、親抗体のものとは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連した生物学的特性も示す、新規な抗体の調製を可能にする。組換えDNA技術が使用され得る。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローニングされたDNA(例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNA)は、このような手順に使用され得る。Lanttoら、2002、Methods Mol.Biol.178:303~16もまた参照のこと。
【0098】
一実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、IgG1重鎖定常ドメインまたはIgG1重鎖ドメインの断片を含む。一実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質はさらに、軽鎖κ定常ドメインもしくは軽鎖λ定常ドメインまたはこれらの断片を含む。軽鎖定常領域、およびこれらをコードするポリヌクレオチドは、以下の表3に提供される。別の実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質はさらに、以下の表3に示されるIgG2重鎖定常領域のような重鎖定常ドメインまたはその断片を含む。
【0099】
重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインをコードする核酸(DNA)、ならびに重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインのアミノ酸配列は、以下に提供される。λ可変ドメインはλ定常ドメインに融合され得、そしてκ可変ドメインはκ定常ドメインに融合され得る。
【0100】
【表3】
本発明の抗原結合タンパク質としては、例えば、所望のアイソタイプ(例えば、IgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgEおよびIgD)を有する、可変ドメインの組み合わせL1H1、L2H2、L3H3、L4H4、L5H5、L6H6、L7H7、L8H8、L9H9、L10H10、L11H11、L12H12、L13.1H13、L13.2H13、L14.1H14、L14.2H14、L15.1H15、L15.2H15、L16.1H16、L16.2H16、L17H17、L18.1H18、L18.2H18、L19.1H19、L19.2H19、L20.1H20、L20.2H20、L21H21、L22H22、L23H23、L24H24、L25H25、L26H26およびL27H27を含むもの、ならびにそれらのFabまたはF(ab’)断片が挙げられる。さらに、IgG4が所望される場合、Bloomら、1997、Protein Science 6:407(参考として本明細書に援用される)に記載されるように、IgG4抗体の不均質性をもたらし得るH鎖内ジスルフィド結合を形成する傾向を軽減するために、ヒンジ領域内に点変異を導入することも望ましくあり得る。
【0101】
抗体および抗体断片
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、本明細書の定義のセクションに記載されるように、インタクトな抗体またはその抗原結合断片をいう。抗体は、完全な抗体分子(全長の重鎖および/または軽鎖を有するポリクローナルバージョン、モノクローナルバージョン、キメラバージョン、ヒト化バージョンまたはヒトバージョンを含む)を含み得るか、またはその抗原結合断片を含み得る。抗体断片としては、F(ab’)断片、Fab断片、Fab’断片、Fv断片、Fc断片およびFd断片が挙げられ、これらは、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、細胞内抗体(intrabody)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびbis-scFvに取り込まれ得る(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology、23、9、1126-1136を参照のこと)。フィブロネクチンポリペプチドモノボディ(monobody)を含む抗体ポリペプチドはまた、米国特許第6,703,199号に開示される。他の抗体ポリペプチドは、米国特許出願公開第2005/0238646号に開示される(これは、単鎖ポリペプチドである)。一価の抗体断片は、米国特許出願公開第20050227324号に開示される。
【0102】
抗体に由来する抗原結合断片は、例えば、抗体のタンパク質分解性の加水分解(例えば、従来の方法にしたがう抗体全体のペプシンまたはパパイン消化)によって取得され得る。例として、抗体断片は、F(ab’)と称する5S断片を提供するために、ペプシンを使用する抗体の酵素切断によって生成され得る。この断片はさらに、チオール還元剤を使用して切断され得、3.5SのFab’一価断片を生じ得る。必要に応じて、切断反応は、ジスルフィド結合の切断に起因するスルフヒドリル基のためのブロック基(blocking group)を使用して実行され得る。代替法として、パパインを使用する酵素切断は、2つの一価のFab断片および1つのFc断片を直接生じる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,331,647号、Nisonoffら、Arch.Biochem.Biophys.89:230、1960;Porter、Biochem.J.73:119、1959;Edelmanら、Methods
in Enzymology 1:422(Academic Press 1967);ならびにAndrews,S.M.およびTitus、J.A.、Current Protocols in Immunology(Coligan J.E.ら編)、John Wiley & Sons、New York(2003)、頁2.8.1~2.8.10および2.10A.1~2.10A.5によって記載される。重鎖を分離して一価の軽鎖-重鎖断片(Fd)を形成する、断片をさらに切断する、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的な技術のような抗体を切断するための他の方法もまた、その断片がインタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り使用され得る。
【0103】
抗体断片はまた、任意の合成タンパク質であっても、遺伝的に操作されたタンパク質であってもよい。例えば、抗体断片としては、軽鎖可変領域からなる単離された断片、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とがペプチドリンカーによって接続される組換え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が挙げられる。
【0104】
抗体断片の別の形態は、抗体の1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDR(「最小認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)は、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することによって取得され得る。このようなポリヌクレオチドは、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として使用して可変領域を合成するポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される(例えば、Larrickら、Methods:A Companion to Methods in Enzym
ology 2:106、1991;Courtenay-Luck、“Genetic
Manipulation of Monoclonal Antibodies,”、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application、Ritterら(編)、166頁(Cambridge University Press 1995);ならびにWardら、“Genetic Manipulation and Expression of Antibodies,”、Monoclonal Antibodies:Principles and Applications、Birchら(編)、137頁(Wiley-Liss、Inc.1995)を参照のこと)。
【0105】
したがって、一実施形態において、上記の結合因子は、本明細書に記載される少なくとも1つのCDRを含む。この結合因子は、本明細書に記載される少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRを含み得る。この結合因子はさらに、本明細書に記載される抗体の少なくとも1つの可変領域ドメインを含み得る。この可変領域ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってもよく、一般的に、TSLPへの結合に関与する少なくとも1つのCDR配列(例えば、本明細書に具体的に記載された重鎖CDR1、CDR2、CDR3および/または軽鎖CDR)を含み、このCDR配列は、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するか、それとインフレームである。概して、可変(V)領域ドメインは、免疫グロブリン重(V)鎖可変ドメインおよび/または軽(V)鎖可変ドメインの任意の適切な配列(arrangement)であり得る。したがって、例えば、V領域ドメインは、単量体であり得、以下に記載されるように、少なくとも1×10-7M以下の親和性でヒトTSLPに独立して結合することができるVまたはVドメインであり得る。あるいは、このV領域ドメインは、二量体であり得、そしてV-V、V-VまたはV-V二量体を含み得る。このV領域二量体は、非共有結合的に結合し得る少なくとも1つのV鎖および少なくとも1つのV鎖を含む(以後、Fという)。所望される場合、これらの鎖は、2つの可変ドメインの間のジスルフィド結合を介して直接的にか、またはリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介してのいずれかで共有結合的にカップリングされ得、単鎖Fv(scF)を形成し得る。
【0106】
上記の可変領域ドメインは、任意の天然に存在する可変ドメインまたはその操作されたバージョンであり得る。操作されたバージョンによって、組換えDNA操作技術を使用して作製された可変領域ドメインが意味される。このような操作されたバージョンとしては、例えば、特定の抗体のアミノ酸配列におけるもしくはそれへの挿入、欠失または変更によって特定の抗体の可変領域から作製されるものが挙げられる。特定の例としては、第一の抗体に由来する少なくとも1つのCDRおよび必要に応じて1つ以上のフレームワークアミノ酸、ならびに第二の抗体に由来する可変領域ドメインの残りを含む、操作された可変領域ドメインが挙げられる。
【0107】
上記の可変領域ドメインは、C末端アミノ酸において、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはその断片に共有結合的に付着され得る。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはその断片に連結され得る。同様に、Vドメインは、Cドメインまたはその断片に連結され得る。この方法において、例えば、抗体は、その抗原結合ドメインが、結合したVドメインおよびVドメイン(このVドメインおよびVドメインは、それらのC末端でそれぞれCH1ドメインおよびCドメインに共有結合的に連結されている)を含むFab断片であり得る。このCH1ドメインは、さらなるアミノ酸で伸長され得、例えば、Fab’断片に見出されるヒンジ領域もしくはヒンジ領域ドメインの一部を提供し得るか、または抗体CH2およびCH3ドメインのようなさらなるドメインを提供し得る。
【0108】
抗原結合タンパク質の誘導体
図1A~1F、図2A~2F、および上記の表2に示されるヌクレオチド配列を、例えば、無作為な変異誘発または部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)(例えば、オリゴヌクレオチド誘導部位特異的変異誘発(site-specific mutagenesis))によって変更し得、変異させていないポリヌクレオチドと比べて、1個以上の特定のヌクレオチドの置換、欠失または挿入を含む変更されたポリヌクレオチドを作製し得る。このような改変物を作製するための技術の例は、Walderら、1986、Gene 42:133;Bauerら、1985、Gene 37:73;Craik、BioTechniques、January 1985、12-19;Smithら、1981、Genetic Engineering:Principles and Methods、Plenum Press;ならびに米国特許第4,518,584号および同第4,737,462号に記載される。これらおよび他の方法は、例えば、所望の特性(例えば、誘導体化されていない抗原結合タンパク質と比べて、TSLPに対する増大した親和性、アビディティもしくは特異性、インビボもしくはインビトロでの増大した活性もしくは安定性、または低減されたインビボ副作用)を有するTSLP抗原結合タンパク質の誘導体を作製するために使用され得る。
【0109】
本発明の範囲内の抗体を含む抗TSLP抗原結合タンパク質の他の誘導体としては、抗TSLP抗体ポリペプチドのN末端もしくはC末端に融合された異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現などによる、抗TSLP抗体もしくはその断片と、他のタンパク質もしくはポリペプチドとの共有結合性の結合体または集合性の結合体が挙げられる。例えば、結合体化されたペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ポリペプチド(例えば、酵母αファクターのリーダー)またはエピトープタグのようなペプチドであり得る。抗原結合タンパク質含有融合タンパク質は、抗原結合タンパク質の精製または同定を促進するために付加されたペプチド(例えば、ポリHis)を含み得る。抗原結合タンパク質はまた、Hoppら、Bio/Technology 6:1204、1988および米国特許第5,011,912号に記載されるようにFLAGペプチドに連結され得る。FLAGペプチドは、高度に抗原性であり、特異的なモノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、これは、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。FLAGペプチドが所定のポリペプチドに融合された融合タンパク質を調製するのに有用な試薬は、市販されている(Sigma、St.Louis、MO)。
【0110】
1つ以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーは、TSLPアンタゴニストとして使用され得る。オリゴマーは、共有結合的に連結されたまたは非共有結合的に連結された二量体、三量体またはより高次のオリゴマーの形態であり得る。2つ以上の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーが、使用について意図され、その一例は、ホモ二量体である。他のオリゴマーとしては、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ四量体、ヘテロ四量体などが挙げられる。
【0111】
一実施形態は、抗原結合タンパク質に融合されたペプチド部分間の共有結合的または非共有結合的な相互作用を介して連結された複数の抗原結合タンパク質を含むオリゴマーに関する。このようなペプチドは、ペプチドリンカー(スペーサー)またはオリゴマー化を促進する特性を有するペプチドであり得る。ロイシンジッパーおよび抗体に由来する特定のポリペプチドは、以下により詳細に記載されるように、ペプチドに付着した抗原結合タンパク質のオリゴマー化を促進し得るペプチドのうちの一つである。
【0112】
特定の実施形態において、上記のオリゴマーは、TSLPに結合することができる2~4つの抗原結合タンパク質を含む。オリゴマーの抗原結合タンパク質は、上記の形態(例えば、改変体または断片)のいずれかのような任意の形態であり得る。
【0113】
一実施形態において、オリゴマーは、免疫グロブリンに由来するポリペプチドを使用して調製される。抗体由来のポリペプチド(Fcドメインを含む)の種々の部分に融合した特定の異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenaziら、1991、PNAS USA 88:10535;Byrnら、1990、Nature 344:677;およびHollenbaughら、1992 “Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”、Current Protocols in Immunology、補遺4、頁10.19.1~10.19.11によって記載されている。
【0114】
本発明の一実施形態は、抗TSLP抗体の断片を抗体のFc領域に融合させることによって作製される、2つの融合タンパク質を含む二量体に関する。この二量体は、例えば、融合タンパク質をコードする遺伝子融合物を適切な発現ベクターに挿入すること、組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞内で、この遺伝子融合物を発現させること、そして発現した融合タンパク質を、抗体分子によく似せて組立てさせ、この際、鎖間ジスルフィド結合がFc部分の間で形成し、二量体を得ることによって作製され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「Fcポリペプチド」は、抗体のFc領域に由来するポリペプチドの天然形態およびムテイン形態を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含むこのようなポリペプチドの短縮化された形態もまた含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(およびそれから形成されるオリゴマー)は、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムよりも優れた、アフィニティクロマトグラフィによる容易な精製の利点を提供する。
【0116】
PCT特許出願第WO93/10151号(参考として本明細書に援用される)に記載される、1つの適切なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体のFc領域のN末端ヒンジ領域から天然のC末端まで延びる単鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaumら、1994、EMBO J.13:3992-4001に記載されるFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaへ変更され、アミノ酸20がLeuからGluへ変更され、そしてアミノ酸22がGlyからAlaへ変更されたこと以外は、WO93/10151に提示される天然のFc配列のものと同一である。このムテインは、Fcレセプターに対する低減された親和性を示す。
【0117】
他の実施形態において、抗TSLP抗体の重鎖および/または軽鎖の可変部分は、抗体重鎖および/または軽鎖の可変部分の代わりになり得る。
【0118】
あるいは、上記オリゴマーは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を含むか含まない、複数の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質である。適切なペプチドリンカーのうちに、米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号に記載されるものがある。
【0119】
オリゴマーの抗原結合タンパク質を調製するための別の方法は、ロイシンジッパーの使用を含む。ロイシンジッパードメインは、それが見出されるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは元々、いくつかのDNA結合タンパク質(Landschulzら、1988、Science 240:1759)で同定され、以来、種々の異なるタンパク質で見出されている。既知のロイシンジッパーのうちに、二量体化または三量体化する、天然に存在するペプチドおよびその誘導体がある。可溶性のオリゴマータンパク質を生成するのに適切なロイシンジッパードメインの例は、PCT特許出願第WO94/10308号に記載され、肺サーファクタントタンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーは、Hoppeら、1994、FEBS Letters
344:191(これは、参考として本明細書に援用される)に記載される。それに融合された異種タンパク質の安定な三量体化を可能にする改変ロイシンジッパーの使用は、Fanslowら、1994、Semin.Immunol.6:267-78に記載される。1つのアプローチにおいて、ロイシンジッパーペプチドに融合された抗TSLP抗体断片または誘導体を含む組換え融合タンパク質は、適切な宿主細胞で発現され、形成する可溶性のオリゴマーの抗TSLP抗体断片または誘導体が、培養上清から回収される。
【0120】
本明細書に記載されるように、抗体は、少なくとも1つのCDRを含む。例えば、1つ以上のCDRは、既知の抗体フレームワーク領域(IgG1、IgG2など)に組み込まれ得るか、またはその半減期を増大させる適切なビヒクルに結合体化され得る。適切なビヒクルとしては、Fc、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミンおよびトランスフェリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらおよび他の適切なビヒクルは、当該技術分野で公知である。このような結合体化されたCDRペプチドは、単量体形態、二量体形態、四量体形態または他の形態であり得る。一実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーが、結合因子の1つ以上の特定の位置(例えば、アミノ末端)に結合される。
【0121】
特定の好ましい実施形態において、抗体は、1つ以上の水溶性ポリマー付着物(attachment)を含み、これらとしては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号および同第4,179,337号を参照のこと。特定の実施形態において、誘導体の結合因子は、1つ以上のモノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール、ならびにこのようなポリマーの混合物を含む。特定の実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマーは、1つ以上の側鎖にランダムに付着される。特定の実施形態において、PEGは、結合因子(例えば、抗体)についての治療能力を改善するように作用し得る。特定のこのような方法は、例えば、米国特許第6,133,426号(これは、任意の目的のために、参考として本明細書に援用される)で議論される。
【0122】
本発明の抗体が少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または付加を含み得るが、ただし、その抗体は結合特異性を保持していることが条件となることが認識される。したがって、抗体構造への改変は、本発明の範囲に包含される。これらとしては、抗体のヒトTSLP結合能力を破壊しない、保存的であっても非保存的であってもよいアミノ酸置換が挙げられ得る。保存的アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得、これは、代表的に、生物学的システム(biological system)における合成によるのではなく化学的ペプチド合成によって組み込まれる。これらとしては、ペプチドミメティック(peptidomimetic)およびアミノ酸部分の他の逆向き(reversed)形態または逆方向(inverted)形態が挙げられる。保存的アミノ酸置換はまた、標準的な残基での天然のアミノ酸残基の置換を含み得、その結果、その位置におけるアミノ酸残基の極性または電荷に対してほとんど影響がないかまたは全く影響がない。
【0123】
非保存的な置換は、1つのクラスのアミノ酸またはアミノ酸模倣物のメンバーを、異なる物理的特性(例えば、サイズ、極性、疎水性、電荷)を有する別のクラス由来のメンバーと交換することを含み得る。このような置換された残基は、非ヒト抗体と相同なヒト抗体の領域に導入され得るか、またはその分子の非相同領域に導入され得る。
【0124】
さらに、当業者は、各所望のアミノ酸残基に単一のアミノ酸置換を含む試験改変体を生成し得る。次に、この改変体は、当業者に公知の活性アッセイを使用してスクリーニングされ得る。このような改変体は、適切な改変体についての情報を集めるために使用され得る。例えば、特定のアミノ酸残基への変更が、破壊されたか、望ましくなく低減されたか、または不適切な活性をもたらしたことを発見したとき、このような変更を有する改変体は回避され得る。言い換えると、このような慣例的な実験から集められた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換が単独でかまたは他の変異と組み合わせてかのいずれかで回避されるべきであるアミノ酸を容易に決定することができる。
【0125】
当業者は、周知の技術を使用して本明細書に示されるポリペプチドの適切な改変体を決定することができる。特定の実施形態において、当業者は、活性に重要であるとは考えられない領域を標的化することによって、活性を破壊することなく変更され得る、分子の適切な領域を同定することができる。特定の実施形態において、類似するポリペプチドの間で保存されている、分子の残基および部分を同定することができる。特定の実施形態において、生物学的活性または構造に重要であり得る領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、かつポリペプチド構造に有害に影響することなく、保存的アミノ酸置換に供され得る。
【0126】
さらに、当業者は、活性または構造に重要である、同様なポリペプチド中の残基を同定した構造-機能研究を再検討し得る。このような比較を鑑みて、同様なタンパク質において活性または構造に重要であるアミノ酸残基に対応する、タンパク質中のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、このように予測された重要なアミノ酸残基に化学的に類似するアミノ酸置換を選択し得る。
【0127】
当業者はまた、同様なポリペプチドにおけるその構造に関連して、三次元構造およびアミノ酸配列を分析し得る。このような情報を鑑みて、当業者は、その三次元構造に関して、抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測し得る。特定の実施形態において、当業者は、タンパク質の表面上にあると予測されるアミノ酸残基への劇的な変更はしないことを選択し得る。なぜなら、このような残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るからである。
【0128】
多くの科学刊行物が、二次構造の予測に向けられてきた。Moult J.、Curr.Op.in Biotech.、7(4):422-427(1996)、Chouら、Biochemistry、13(2):222-245(1974);Chouら、Biochemistry、113(2):211-222(1974);Chouら、Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.、47:45-148(1978);Chouら、Ann.Rev.Biochem.、47:251-276およびChouら、Biophys.J.、26:367-384(1979)を参照のこと。さらに、コンピュータプログラムは、二次構造の予測を補助することに現在利用可能である。二次構造を予測する一つの方法は、相同性モデリングに基づく。例えば、30%超の配列同一性または40%超の類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば同様な構造上のトポロジーを有する。タンパク質構造データベース(PDB)の最近の成長は、ポリペプチドの構造またはタンパク質の構造内の可能性のある数の折りたたみを含む、二次構造の増大した予測性を提供してきた。Holmら、Nucl.Acid.Res.、27(1):244-247(1999)を参照のこと。所定のポリペプチドまたはタンパク質内に限られた数の折りたたみが存在すること、ならびに一度、重要な数(critical number)の構造が解明されると、構造予測は、劇的により加速するようになることが示唆されている(Brennerら、Curr.Op.Struct.Biol.、7(3):369-376(1997))。
【0129】
二次構造を予測するさらなる方法としては、「スレッディング(threading)」(Jones,D.、Curr.Opin.Struct.Biol.、7(3):377-87(1997);Sipplら、Structure、4(1):15-19(1996))、「プロファイル分析」(Bowieら、Science、253:164-170(1991);Gribskovら、Meth.Enzym.、183:146-159(1990);Gribskovら、Proc.Nat.Acad.Sci.、84(13):4355-4358(1987))および「進化的連鎖(evolutionary linkage)」(Holm、上記(1999)およびBrenner、上記(1997)を参照のこと)が挙げられる。
【0130】
一部のタンパク質(例えば、抗体)が種々の翻訳後修飾を受け得ることを当業者は理解する。これらの修飾の型および程度は、しばしばタンパク質を発現するのに使用される宿主細胞株および培養条件に依存する。このような修飾としては、グリコシル化の変動、メチオニンの酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化およびアスパラギンアミド分解が挙げられる。頻発する修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用に起因するカルボキシ末端の塩基性残基(例えば、リジンまたはアルギニン)の喪失である(Harris,R.J.、Journal of Chromatography 705:129-134、1995に記載される)。
【0131】
特定の実施形態において、抗体の改変体としては、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、グリコシル化部位の数および/または型が変更されているグリコシル化改変体が挙げられる。特定の実施形態において、改変体は、天然のタンパク質よりも多いかまたは少ない数のN結合型グリコシル化部位を含む。あるいは、この配列を消失させる置換は、存在するN結合型炭水化物鎖を除去する。1つ以上のN結合型グリコシル化部位(代表的に、天然に存在するもの)が消失され、1つ以上の新規なN結合型部位が作製されるN結合型炭水化物鎖の再配列もまた提供される。さらなる好ましい抗体改変体としては、その親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が欠失させられるか、または別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換される、システイン改変体が挙げられる。例えば、不溶性の封入体の単離の後、抗体が生物学的に活性なコンフォメーションに再折りたたみされなければならない場合、システイン改変体が有用であり得る。一般的に、システイン改変体は、天然のタンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、代表的に、対形成していないシステインから生じる相互作用を最小にするために偶数のシステイン残基を有する。
【0132】
所望のアミノ酸置換(保存的であろうと非保存的であろうと)は、このような置換が所望される時に、当業者によって決定され得る。特定の実施形態において、アミノ酸置換は、ヒトTSLPに対する抗体の重要な残基を同定するか、または本明細書に記載されるヒトTSLPに対する抗体の親和性を増大もしくは低減させるのに使用され得る。
【0133】
特定の実施形態にしたがって、好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2)酸化に対する感受性を低減する、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を変更する、(4)結合親和性を変更する、および/あるいは(4)そのようなポリペプチドに対して他の物理化学的特性または機能特性を付与または改変するものである。特定の実施形態にしたがって、単一または複数のアミノ酸置換(特定の実施形態において、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(特定の実施形態において、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの一部)でなされ得る。特定の実施形態において、保存的アミノ酸置換は、代表的に、親配列の構造的特徴を実質的に変化させなくてよい(例えば、置換アミノ酸は、親配列に存在するヘリックスを破壊する傾向もなく、親配列を特徴付ける他の型の二次構造を破壊する傾向もないはずである)。当該技術分野で認識されるポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins,
Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));およびThorntonら、Nature 354:105(1991)(これらは、それぞれ参考として本明細書に援用される)に記載される。
【0134】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、ポリマー、脂質または他の部分に化学的に結合され得る。
【0135】
さらに、上記の抗原結合タンパク質は、生体適合性フレームワーク構造に組み込まれた、本明細書に記載されたCDRのうちの少なくとも1つを含み得る。一例において、この生体適合性フレームワーク構造は、コンフォメーション的に安定な構造支持体またはフレームワークまたは足場を形成するのに十分であるポリペプチドまたはその一部を含み、これは、局在化した表面領域において、抗原に結合するアミノ酸の1つ以上の配列(例えば、CDR、可変領域など)を提示することができる。このような構造は、天然に存在するポリペプチドもしくはポリペプチドの「折りたたみ」(構造モチーフ)であり得るか、または天然に存在するポリペプチドまたは折りたたみと比較して、アミノ酸の付加、欠失もしくは置換のような1つ以上の改変を有し得る。これらの足場は、ヒト、他の哺乳動物、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌またはウイルスのような任意の種(または1つより多い種)のポリペプチドに由来し得る。
【0136】
代表的に、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質足場または骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン(neocarzinostain)、シトクロムb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI-D1、Zドメインおよびテンダミスタット(tendamistat)ドメインに基づくものが使用され得る(例えば、NygrenおよびUhlen、1997、Current Opinion in Structural Biology、7、463-469を参照のこと)。
【0137】
さらに、別の実施形態において、当業者は、上記の抗原結合タンパク質が、1つ以上のアミノ酸置換を有する重鎖CDR1、CDR2、CDR3および/または軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3のうちの1つ以上を含み得るが、この抗体が、置換されていないCDRの結合特異性を保持することが条件となることを認識する。この抗体の非CDR部分が、非タンパク質分子であり得、この結合因子が、ヒトTSLPへの本明細書に開示された抗体の結合を交差ブロック(cross-block)するか、および/またはTSLP活性を阻害する。抗体の非CDR部分は、非タンパク質分子であり得、ここで、この抗体が、競合結合アッセイにおいて、抗体A1~A27のうちの少なくとも1つによって示されるものと同様なヒトTSLPタンパク質への結合パターンを示すか、および/またはTSLPの活性を中和する。この抗体の非CDR部分は、アミノ酸から構成され得、ここで、この抗体は、組換え結合タンパク質または合成ペプチドであり、この組換え結合タンパク質は、ヒトTSLPへの本明細書に開示された抗体の結合を交差ブロックするか、および/またはインビボもしくはインビトロでTSLPを中和する。この抗体の非CDR部分は、アミノ酸から構成され得、ここで、この抗体は組換え抗体であり、そしてこの組換え抗体は、競合結合アッセイにおいて、抗体A1~A27のうちの少なくとも1つによって示されるものと同様なヒトTSLPポリペプチドへの結合パターンを示すか、および/またはTSLPの活性を中和する。
【0138】
抗原結合タンパク質(特に抗体)を作成する方法。
【0139】
上記のように、一つ以上の重鎖CDR1、CDR2、CDR3、ならびに/または軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗体のような、抗原結合タンパク質は、これらの配列をコードするDNAを含む宿主細胞からの発現により取得され得る。それぞれのCDR配列をコードするDNAは、CDRのアミノ酸配列に基づいて決定され得、そして適切なオリゴヌクレオチド合成技術、部位特異的変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて任意の所望の抗体可変領域フレームワークおよび定常領域DNA配列と一緒に合成され得る。可変領域フレームワークおよび定常領域をコードするDNAは、GenBank(登録商標)のような遺伝子配列データベースから当業者には広く入手可能である。
【0140】
追加の実施形態は、キメラ抗体(例えば、非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体のヒト化型)を含む。そのようなヒト化抗体は、公知の技術により調製され得、そしてその抗体がヒトに投与される場合、免疫原性の減少の利点を提供する。一つの実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体の可変ドメイン(またはその抗原結合部位の全てもしくは部分)およびヒト抗体由来の定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位およびヒト抗体由来の可変ドメイン断片(抗原結合部位を欠く)を含み得る。キメラのそしてさらに操作されたモノクローナル抗体の生産のための手順は、Riechmannら、1988, Nature 332:323、 Liuら、1987, Proc. Nat. Acad. Sci.
USA 84:3439、Larrickら、1989, Bio/Technology 7:934、およびWinterら、1993, TIPS 14:139に記載された手順を含む。一つの実施形態において、キメラ抗体は、CDRを接いだ抗体である。抗体をヒト化するための技術は、例えば、米国特許第5,869,619号、同第5,225,539号、同第5,821,337号、同第5,859,205号、同第6,881,557号、Padlanら、1995, FASEB J. 9:133~39,およびTamuraら、2000, J. Immunol. 164:1432~41において考察される。そのようなヒト化抗体を生産するための追加の技術は、Zhang, W.ら、Molecular Immunology. 42(12):1445~1451, 2005;Hwang W.ら、Methods. 36(1):35~42, 2005;Dall’Acqua WFら、Methods 36(1):43~60, 2005;およびClark, M., Immunology Today.
21(8):397~402, 2000)に記載される。
【0141】
非ヒト動物において、ヒト抗体または部分的ヒト抗体を生成するための手順が開発された。例えば、一つ以上の内在性免疫グロブリン遺伝子が種々の方法により不活化されたマウスが作られた。ヒト免疫グロブリン遺伝子が、不活化されたマウス遺伝子を置き換えるためにマウス中に導入された。その動物において産生された抗体は、その動物中に導入されたヒト遺伝子物質によりコードされるヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込む。一つの実施形態において、非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)が、TSLPタンパク質で免疫化され、その結果、種々のTSLPポリペプチドに対して指向する抗体が、その動物において生成される。適切な免疫原の例が、以下の例において提供される。
【0142】
ヒト抗体または部分的ヒト抗体の生産のためのトランスジェニック動物の生産および使用のための技術の例が、米国特許第5,814,318号、同第5,569,825号、および同第5,545,806号、Davisら、2003,Production of human antibodies from transgenic mice in Lo, ed. Antibody Engineering:Methods and Protocols, Humana Press,NJ:191~200、K
ellermannら、2002,Curr Opin Biotechnol. 13:593~97、Russelら、2000,Infect Immun. 68:1820~26、Galloら、2000,Eur J Immun. 30:534~40、Davisら、1999,Cancer Metastasis Rev. 18:421~25、Green,1999,J Immunol Methods. 231:11~23、Jakobovits,1998,Advanced Drug Delivery Reviews 31:33~42、Greenら、1998,J Exp Med. 188:483~95、Jakobovits A,1998,Exp. Opin. Invest. Drugs. 7:607~14、Tsudaら、1997,Genomics. 42:413~21、Mendezら、1997,Nat Genet. 15:146~56、Jakobovits,1994,Curr Biol. 4:761~63、Arbonesら、1994,Immunity. 1:247~60、Greenら、1994,Nat Genet. 7:13~21、Jakobovitsら、1993,Nature. 362:255~58、Jakobovitsら、1993,Proc Natl Acad Sci USA.90:2551~55、Chen,J.,M.Trounstine,F.W.Alt,F.Young,C.Kurahara,J.Loring,D. Huszar.“Immunoglobulin gene rearrangement in B-cell deficient mice generated by targeted deletion of the JH locus.” International Immunology 5 (1993): 647~656、Choiら、1993,Nature Genetics 4: 117~23、Fishwildら、1996,Nature Biotechnology 14: 845~51、Hardingら、1995,Annals of the New York Academy of Sciences、Lonbergら、1994,Nature 368:856~59、Lonberg,1994,Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49~101、Lonbergら、1995,Internal Review of Immunology 13:65~93、Neuberger,1996,Nature Biotechnology 14:826、Taylorら、1992,Nucleic Acids Research 20: 6287~95、Taylorら、1994,International Immunology 6: 579~91、Tomizukaら、1997,Nature Genetics 16:133~43、Tomizukaら、2000,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 97: 722~27、Tuaillonら、1993,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 90:3720~24、およびTuaillonら、1994,Journal of Immunology 152: 2912~20に記載される。
【0143】
別の局面において、本発明は、ヒトTSLPに結合するモノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体は、免疫化スケジュールの完了後、当該分野で公知の任意の技術を用いて(例えばトランスジェニック動物から採取した脾臓細胞を不死化することによって)生産され得る。脾臓細胞は、当該分野で公知の任意の技術(例えば、ハイブリドーマ細胞を生成するためにそれらを骨髄腫細胞と融合させることによる)を用いて不死化され得る。ハイブリドーマ生成融合手順における使用のための骨髄腫細胞は、好ましくは、抗体を産生せず、高い融合効率、および所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択培地においてその骨髄腫細胞が増殖することを不可能にする、酵素の欠損を有する。マウスの融合における使用のための適切な細胞株の例は、Sp-20、P3-
X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulを含み;ラットの融合において使用される細胞株の例は、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210を含む。細胞融合のために有用な他の細胞株は、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6である。
【0144】
一実施形態において、ハイブリドーマ細胞株は、TSLP免疫原で動物(例えば、ヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物)を免疫化すること;その免疫化された動物から脾臓細胞を採取すること;その採取された脾臓細胞を骨髄腫細胞株に融合させること、それによりハイブリドーマ細胞を生成すること;そのハイブリドーマ細胞からハイブリドーマ細胞株を樹立すること、そしてTSLPポリペプチドを結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定することにより生成される。そのようなハイブリドーマ細胞株、およびそれらにより産生されるTSLPモノクローナル抗体は、本発明により包含される。
【0145】
ハイブリドーマ細胞株により分泌されるモノクローナル抗体は、当該分野で公知の任意の技術を用いて精製され得る。ハイブリドーマまたはmAbsは、特定の特性(例えば、初代ヒト樹状細胞からのオステオプロテゲリン(OPG)産生のようなTSLP活性を妨げることのような)をもつmAbsを同定するためにさらにスクリーニングされ得る。そのようなアッセイの例が、以下の実施例で提供される。
【0146】
抗体結合部位の中心における相補性決定領域(CDR)の分子進化が、例えば、Schierら、, J. Mol. Biol. 263:551により記載されたように、親和性の増加した抗体を単離するために用いられた。したがって、そのような技術は、ヒトTSLPに対する抗体を調製するうえで有用である。
【0147】
ヒトTSLPに対して指向する抗原結合タンパク質が、例えば、TSLPの存在を検出するアッセイにおいてインビトロまたはインビボのどちらでも用いられ得る。
【0148】
ヒト抗体、部分的ヒト抗体、またはヒト化抗体が、多くの適用、特にヒト被験体へのその抗体の投与を含む適用に適切であるが、他の型の抗原結合タンパク質が、特定の適用に適切である。本発明の非ヒト抗体は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(サル(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)または類人猿(例えば、チンパンジー))のような任意の抗体産生動物由来であり得る。本発明の非ヒト抗体は、例えば、インビトロおよび細胞培養に基づく適用において、または本発明の抗体に対する免疫応答が、生じないか、取るに足らないか、防止され得るか、重要でないか、もしくは所望される、任意の他の適用において用いられ得る。一つの実施形態において、本発明の非ヒト抗体は、非ヒト被験体に投与される。別の実施形態において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体において、免疫応答を誘発しない。別の実施形態において、非ヒト抗体は、非ヒト被験体と同じ種に由来する(例えば、本発明のマウス抗体が、マウスに投与される)。特定の種からの抗体が、例えば、所望の免疫原をもつ種の動物を免疫化することにより、またはその種の抗体を生成するための人工的な系(例えば、特定の種の抗体を生成するための細菌またはファージディスプレイに基づく系)を用いることにより、または一つの種由来の抗体を別の種由来の抗体へと変換することにより(例えば、抗体の定常領域を他の種由来の定常領域で置き換えることにより)、または抗体を、他の種由来の抗体の配列により密接に似せるように、その抗体の一つ以上のアミノ酸残基を置き換えることにより作製され得る。一つの実施形態において、抗体は、二つ以上の異なる種からの抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
【0149】
抗原結合タンパク質は、多数の従来の技術のいずれによっても調製され得る。例えば、抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質を天然に発現する細胞から精製され得る(例えば、抗体は、抗体を産生するハイブリドーマから精製され得る)か、当該分野で公知の任意の技術を用いる組換え発現系において生成され得る。例えば、Monoclonal
Antibodies, Hybridomas: A New Dimension
in Biological Analyses, Kennetら、(eds.),
Plenum Press, New York (1980);およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Land (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory
Press, Cold Spring Harbor, NY, (1988)を参照のこと。
【0150】
当該分野で公知の任意の発現系が、本発明の組換えペプチドを作製するために用いられ得る。一般的に、宿主細胞は、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで形質転換される。宿主細胞の中で、用いられ得るものは、原核生物、酵母またはより高等な真核生物細胞である。原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、E.coliまたはバチルスを含む。より高等な真核生物細胞は、昆虫細胞および哺乳動物起源の樹立細胞株を含む。適切な哺乳動物宿主細胞株の例は、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651) (Gluzmanら、1981, Cell
23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL
163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、およびMcMahanら、1991, EMBO J. 10: 2821により記載されたようにアフリカミドリザル腎臓細胞株CVI (ATCC CCL 70)から得られたCVI/EBNA細胞株を含む。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物の細胞宿主での使用のための適切なクローニングおよび発現ベクターは、Pouwelsら、(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, 1985)により記載される。
【0151】
形質転換された細胞は、ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養され得、そして該ポリペプチドは、従来のタンパク質精製手順により回収される。一つのそのような精製手順は、以下の実施例において記載される。本明細書における使用のために企図されるポリペプチドは、汚染内在性物質が実質的に存在しない、実質的に同質の組換え哺乳動物抗TSLP抗体ポリペプチドを含む。
【0152】
多数の公知の技術のいずれかによって、抗原結合タンパク質が調製され得、そして所望の特性についてスクリーニングされ得る。その技術のいくつかは、目的の抗原結合タンパク質(例えば、TSLP抗体)のポリペプチド鎖(またはその部分)をコードする核酸を単離すること、そして組換えDNA技術を介してその核酸を操作することを含む。核酸は、別の目的の核酸に融合され得るか、または例えば、一つ以上のアミノ酸残基を加えるか、欠失させるか、もしくは置換させるために改変させられ得る(例えば変異誘発または他の従来の技術により)。
【0153】
単鎖抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片を、アミノ酸橋(amino acid brigde)(短いペプチドリンカー)を介して連結し、単一ポリペプチド鎖を生じることにより形成され得る。そのような単鎖Fvs(scFvs)は、二つの可変ドメインポリペプチド(VおよびV)をコードするDNAの間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることにより調製された。生じたポリペプチドは、抗原結合単量体を形成するために、それら自身の上に折り返し得るか、または二つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに依存して、多量体(例えば、二量体、三量体、または
四量体)を形成することができる(Korttら、1997, Prot. Eng. 10:423; Korttら、2001, Biomol. Eng. 18:95~108)。異なるVおよびV含有ポリペプチドを結合することにより、異なるエピトープに結合する多量体のscFvsを形成することができる(Kriangkumら、2001, Biomol. Eng. 18:31-40)。単鎖抗体の生成のために開発された技術は、米国特許第4,946,778号;Bird, 1988, Science 242:423; Hustonら、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879;Wardら、1989, Nature
334:544, de Graafら、2002, Methods Mol Biol. 178:379~87に記載された技術を含む。本明細書で提供された抗体から得られた単鎖抗体は、本発明により包含される可変ドメインの組合せL1H1, L2H2, L3H3, L4H4, L5H5, L6H6, L7H7, L8H8, L9H9, L10H10, L11H11, L12H12, L13H13, L14H14, L15H15, L16H16, L17H17, L18H18, L19H19, L20H20, L21H21, L22H22, L23H23, L24H24, L25H25, L26H26, およびL27H27を含むscFvsを含むが、それに限定されるものではない。
【0154】
ひとたび合成されると、本発明の抗体またはその断片をコードするDNAは、核酸の切り出し、ライゲーション、形質転換、および任意の数の公知の発現ベクターを用いるトランスフェクションのための多様な周知の方法のいずれかによって増やされ、そして発現させられ得る。したがって、特定の実施形態において、抗体断片の発現は、Escherichia.coliのような原核生物宿主において好ましくあり得る(例えば、Pluckthunら、1989 Methods Enzymol. 178:497~515を参照のこと)。特定の他の実施形態において、抗体またはその断片の発現は、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、およびPichia pastoris)、動物細胞(哺乳動物細胞を含む)または植物細胞を含む真核生物宿主細胞において好ましくあり得る。適切な動物細胞の例は、骨髄腫(例えば、マウスNSO株)、COS、CHO、またはハイブリドーマ細胞を含むが、それらに限定されない。植物細胞の例は、タバコ、トウモロコシ、大豆、およびイネの細胞を含む。抗体の可変および/または定常領域をコードするDNAを含む一つ以上の複製可能な発現ベクターが、調製され、そしてその抗体の産生が生じる適切な細胞株、例えばマウスNSO株のような非産生骨髄腫細胞株、またはE.coliのような細菌を形質転換するために使用され得る。有効な転写および翻訳を得るために、各ベクターにおけるDNA配列は、適切な制御配列、特に可変ドメイン配列に作動可能に連結されたプロモーターおよびリーダー配列を含む。この方法で抗体を生成するための特定の方法は、一般的に周知であり、日常的に用いられる。例えば、基礎的な分子生物学の手順は、Maniatisらにより記載される(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989;Maniatisら、3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (2001)もまた参照のこと)。DNA配列決定は、Sangerら、(PNAS 74:5463,(1977))およびAmersham International plc sequencing handbookに記載されたように実施され得、そして部位特異的変異誘発は、当該分野で公知の方法(Kramerら、Nucleic Acids Res. 12:9441, (1984); Kunkel Proc. Natl. Acad. Sci. USA
82:488~92 (1985); Kunkelら、Methods in Enzymol. 154:367~82 (1987); the Anglian Biotechnology Ltd. handbook)にしたがって実行され得る。さ
らに、多数の出版物が、DNAの操作による抗体の調製、発現ベクターの作製、ならびに適切な細胞の形質転換および培養のために適切な技術を記載する(Mountain A
and Adair, J R in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (ed. Tombs, M P, 10, Chapter 1, 1992, Intercept, Andover, UK); “Current Protocols in Molecular Biology”, 1999, F.M. Ausubel (ed.), Wiley Interscience, New York)。
【0155】
一つ以上の上記のCDRを含む本発明による抗体の親和性を改善することが所望される場合、CDRの維持(Yangら、J. Mol. Biol., 254, 392~403, 1995)、鎖のシャッフリング(chain shuffling)(Marksら、Bio/Technology、10、779~783、1992)、E.coliの変異株の使用(Lowら、J. Mol. Biol., 250, 350~368, 1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724~733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J. Mol. Biol., 256, 7~88, 1996)およびPCR(Crameri,ら、Nature, 391, 288~291, 1998)を含む、多くの親和性成熟プロトコールにより取得され得る。親和性成熟のこれらの方法の全てが、Vaughanら、(Nature Biotechnology, 16, 535~539, 1998)によって考察される。
【0156】
本発明による他の抗体は、本明細書中に記載されそして当該分野で公知である従来の免疫化手順および細胞融合手順により取得され得る。本発明のモノクローナル抗体は、多様な公知の技術を用いて生成され得る。一般的に、特定の抗原に結合するモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により取得され得る(例えば、Kohlerら、Nature
256:495, 1975; Coliganら、(eds.),Current Protocols in Immunology, 1:2.5.12.6.7(John Wiley & Sons 1991)、米国特許第RE 32,011号、同第4,902,614号、同第4,543,439号および同第4,411,993号、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum
Press, Kennett, McKearn, and Bechtol (eds.)(1980)、ならびにAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)、Picksleyら、“Production of monoclonal antibodies
against proteins expressed in E. coli,”
in DNA Cloning 2: Expression Systems, 2nd Edition, Gloverら、(eds.), page 93 (Oxford University Press 1995)を参照のこと)。抗体断片は、任意の適切な標準的な技術(例えば、タンパク質分解性の消化)を用いて、または任意にジスルフィド結合の穏やかな還元およびアルキル化が続くタンパク質分解性の消化(例えば、パパインまたはペプシンを用いる)により、それらから取得され得る。あるいは、そのような断片はまた、本明細書中に記載されるような組換え遺伝子操作技術により生成され得る。
【0157】
モノクローナル抗体は、当該分野で公知の方法および本明細書中に記載された方法により、配列番号2のヒトTSLP、本明細書中に記載されるような他のTSLPポリペプチド配列、またはその断片を含む免疫原を動物(例えば、ラット、ハムスター、ウサギ、ま
たは好ましくはマウス(例えば、トランスジェニックまたはノックアウトを含む))に当該分野で公知のように注射することにより取得され得る。特定の抗体産生の存在は、最初の注射後および/またはブースター注射後、血清サンプルを採取し、ヒトTSLPに結合する抗体またはその断片の存在を、当該分野で公知および本明細書中に記載のいくつかの免疫検出法の任意の一つを用いて検出することによってモニタリングされ得る。所望の抗体を産生する動物から、脾臓またはリンパ節由来の最も一般的な細胞であるリンパ系細胞が、Bリンパ球を得るために採取される。Bリンパ球は、その後、不死の真核生物細胞株であるハイブリドーマを生成するために、薬剤感受性の骨髄腫細胞の融合の相手、好ましくは免疫化された動物と同系であり、そして任意に他の所望の特性を有する細胞(例えば、内因性Ig遺伝子産物を発現できない、例えば、P3X63-Ag 8.653(ATCC No.CRL 1580);NSO,SP20)と融合される。
【0158】
リンパ系(例えば、脾臓)細胞および骨髄腫細胞は、膜融合促進剤(例えば、ポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤)をもちいて数分で結合され得、そしてハイブリドーマ細胞の増殖を支持するが、非融合の骨髄腫細胞の増殖は支持しない選択培地上に低密度で播種され得る。好ましい選択培地は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な時間(通常、約1~2週間)の後、細胞のコロニーが観察される。単一コロニーが単離され、その細胞により産生される抗体が、当該分野で公知のおよび本明細書中に記載される多様な免疫アッセイの任意の一つを用いて、ヒトTSLPに対する結合活性について試験され得る。そのハイブリドーマは、クローニングされ(例えば、限界希釈クローニングにより、または軟寒天プラーク単離により)、そしてヒトTSLPに対して特異的な抗体を産生するクローンが選択され培養される。ハイブリドーマ培養物からのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物の上清から単離され得る。
【0159】
マウスモノクローナル抗体の生成についての、代替的な方法は、ハイブリドーマ細胞を同遺伝子型のマウス(例えば、モノクローナル抗体を含む腹水流体の形成を促進するために処置された(例えば、プリスタン感作された)マウス)の腹腔に注入することである。モノクロ-ナル抗体は、多様なよく確立された技術により単離および精製され得る。そのような単離技術は、プロテインAをもちいるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーを含む(例えば、Coligan 2.7.1~2.7.12 頁および2.9.1~2.9.3頁; Bainesら、“Purification of Immunoglobulin G (IgG),” Methods in Molecular Biology, Vol. 10, 79~104頁(The Humana Press, Inc. 1992)を参照のこと). モノクローナル抗体は、抗体の特定の性質(例えば、重鎖または軽鎖アイソタイプ、結合特性等)に基づいて選択された適切なリガンドを用いるアフィニティクロマトグラフィーにより精製され得る。固体支持体に固定された適切なリガンドの例は、プロテインA、プロテインG、抗定常領域(軽鎖または重鎖)抗体、抗イディオタイプ抗体、およびTSLP、またはその断片もしくは改変体を含む。
【0160】
本発明の抗体はまた、完全なヒトモノクローナル抗体である。完全なヒトモノクローナル抗体は、先に記載した方法のような、任意の数の技術により生成され得る。そのような方法はさらに、それに限定されるものではないが、ヒト末梢血球(例えば、Bリンパ球を含む)のエプスタイン-バーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のインビトロ免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保持する免疫化されたトランスジェニックマウスからの脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、または当該分野で公知および本明細書の開示に基づく他の手順を含む。例えば、完全なヒトモノクロ-ナル抗体は、抗原性の攻撃に応答して特定のヒト抗体を産生する、操作されたトランスジェニックマウスから取得され得る。完全なヒト抗体をトランスジェニックマウスから取得するための方法は、例えば、Greenら、Nature Genet.
7:13, 1994; Lonbergら、Nature 368:856, 1994; Taylorら、Int. Immun. 6:579, 1994;米国特許第5,877,397号; Bruggemannら、1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455~58; Jakobovitsら、1995
Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:525~35に記載される。この技術において、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内因性の重鎖および軽鎖遺伝子座の標的化された破壊を有する胚幹細胞株から得られたマウスの系統中に導入される(Bruggemannら、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455~58 (1997)をまた参照のこと)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、マウスリンパ系組織におけるB細胞特異的DNA再配列および過剰変異(hypermutation)を受ける、ミニ遺伝子構築物、または酵母人工染色体上のトランス遺伝子座(transloci)であり得る。完全なヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニックマウスを免疫化することにより取得され得、それはそしてヒトTSLPに対して特異的なヒト抗体を産生し得る。免疫化されたトランスジェニックマウスのリンパ球は、本明細書中に記載された方法により、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成するために用いられ得る。完全なヒト抗体を含むポリクローナル血清がまた、免疫化された動物の血液から取得され得る。
【0161】
本発明のヒト抗体を生成するための一つの例示的な方法は、例えば、米国特許第4,464,456号において記載されたように、EBV形質転換によりヒト末梢血細胞を不死化することを含む。ヒトTSLPに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するそのような不死化されたB細胞株(またはリンパ芽球様細胞株)は、本明細書中で提供されるような免疫検出方法(例えば、ELISA)により同定され、そしてそのあと標準的なクローニング技術により単離され得る。抗TSLP抗体を産生するリンパ芽球様細胞株の安定性は、形質転換された細胞株を当該分野で公知の方法(例えば、Glaskyら、Hybridoma 8:377~89(1989)を参照のこと)にしたがって、マウス骨髄腫と融合させ、マウス-ヒトハイブリッド細胞株を生成することにより改善され得る。ヒトモノクローナル抗体を生成するさらに別の方法は、インビトロ免疫化であり、インビトロ免疫化は、ヒト脾臓B細胞をヒトTSLPで初回免疫し、その後初回免疫したB細胞をヘテロハイブリッド融合の相手と融合させることを含む。例えば、Boernerら、1991 J. Immunol.147:86~95を参照のこと。
【0162】
特定の実施形態において、抗ヒトTSLP抗体を産生しているB細胞が選択され、その軽鎖および重鎖可変領域は、当該分野で公知の(国際公開第92/02551号パンフレット;米国特許第5,627,052号;Babcookら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843~48(1996))、および本明細書中に記載される分子生物学技術によって、そのB細胞からクローニングされる。免疫化された動物由来のB細胞は、TSLPに特異的に結合する抗体を産生する細胞を選択することにより、脾臓、リンパ節、または末梢血サンプルから単離され得る。B細胞はまた、ヒト(例えば、末梢血サンプル)から単離され得る。所望の特異性をともなう抗体を産生する単一のB細胞を検出するための方法(例えば、プラーク形成、蛍光活性化細胞選別、インビトロ刺激後の特異的抗体の検出等による)は、当該分野で周知である。特定の抗体を産生するB細胞の選択のための方法は、例えばヒトTSLPを含む軟寒天でのB細胞の単一懸濁物を調製することを含む。B細胞により産生される特定の抗体の抗原への結合は、免疫沈降物として見ることができ得る複合体の形成を引き起こす。所望の抗体を産生するB細胞が選択された後、特定の抗体遺伝子が、当該分野で公知および本明細書に記載の方法によりDNAまたはmRNAを単離および増幅することによりクローニングされ得る。
【0163】
本発明の抗体を取得するためのさらなる方法は、ファージディスプレイによる。例えば、Winterら、1994 Annu. Rev. Immunol. 12:433
~55;Burtonら、1994 Adv. Immunol. 57:191~280.を参照のこと。ヒトまたはマウス免疫グロブリン可変領域遺伝子のコンビナトリアルライブラリーを、ファージベクターで創出し得、このファージベクターは、TSLPまたはその改変体もしくは断片に特異的に結合するIg断片(Fab、Fv、sFv、またはそれらの多量体)を選択するためにスクリーニングされ得る。例えば、米国特許第5,223,409号;Huseら、1989 Science 246:1275~81; Sastryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728~32(1989);Alting-Meesら、Strategies in Molecular Biology 3:1~9(1990);Kangら、1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363~66;Hoogenboomら、1992 J. Molec. Biol. 227:381~388;Schlebuschら、1997 Hybridoma 16:47~52およびそれらにおいて引用された参考文献を参照のこと。例えば、Ig可変領域断片をコードする多数のポリヌクレオチド配列を含むライブラリーは、ファージ外殻タンパク質をコードする配列とインフレームである、M13またはその改変体のような糸状バクテリオファージのゲノム中に挿入され得る。融合タンパク質は、軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの外殻タンパク質の融合物であり得る。特定の実施形態にしたがって、免疫グロブリンFab断片はまた、ファージ粒子上に提示され得る(例えば、米国特許第5,698,426号を参照のこと)。
【0164】
重鎖または軽鎖免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーは、例えば、λlmmunoZapTM(H)およびλImmunoZapTM(L)ベクター(Stratagene,La Jolla, California)を用いて、λファージ中に調製され得る。手短に言えば、mRNAがB細胞集団から単離され、そしてλlmmunoZap(H)およびλImmunoZap(L)ベクターにおいて重鎖および軽鎖免疫グロブリンcDNA発現ライブラリーを生成するために用いられる。これらのベクターは、個々にスクリーニングされるか、Fab断片もしくは抗体を形成するために共発現されてもよい(Huseら、上述参照のこと;Sastryら、上述もまた参照のこと)。陽性プラークは、その後、非溶菌性プラスミドに変換され、E.coliからのモノクローナル抗体断片の高いレベルの発現を可能にする。
【0165】
一つの実施形態では、ハイブリドーマにおいて目的のモノクローナル抗体を発現させる遺伝子の可変領域が、ヌクレオチドプライマーを用いて増幅される。これらのプライマーは、当業者により合成され得るか、または市販の入手可能な供給源から購入され得る(例えば、他にくわえて、VHa、VHb、VHc、VHd、CH1、VおよびC領域に対するプライマーを含む、マウスおよびヒトの可変領域に対するプライマーを販売するStratagene(La Jolla, California)を参照のこと)。これらのプライマーは、重鎖または軽鎖可変領域を増幅するために用いられ得、次にそれらはそれぞれImmunoZAPTMHまたはImmunoZAPTML(Stratagene)のようなベクター中に挿入され得る。これらのベクターは、次に、E.coli、酵母、または哺乳動物に基づく系に発現のために導入され得る。VおよびVドメインの融合物を含む、大量の単鎖タンパク質が、これらの方法を用いて生成され得る(Birdら、Science 242:423~426,1988を参照のこと)。
【0166】
上に記載した免疫化および他の技術のいずれかを用いて、本発明による抗体を産生する細胞が、ひとたび取得されると、本明細書中に記載されるような標準的な方法にしたがい、DNAまたはmRNAを細胞から単離し増幅することにより、特定の抗体遺伝子がクローニングされ得る。細胞から生成された抗体は配列決定され、そして同定されたCDRおよびそのCDRのためのDNAコードは、先に記載されたように操作され本発明による他の抗体を生成し得る。
【0167】
本発明の抗原結合タンパク質は好ましくは、本明細書中に記載される細胞に基づくアッセイおよび/または本明細書中に記載されるインビボアッセイの一つにおいてTSLP活性を調節し、および/または本明細書に記載される抗体の一つの結合を交差ブロック(cross-block)し、および/または本明細書に記載される抗体の一つにより、TSLPへの結合を交差ブロックされる。特に有用であるのは、本願中に記載される例示的な抗体の一つと交差競合する(すなわち、本明細書に記載される例示的な抗体の一つの結合を交差ブロックし、そして例示的な抗体の一つによりTSLPへの結合を交差ブロックされる)抗原結合タンパク質である。したがって、そのような結合剤は、本明細書中に記載されるアッセイを用いて同定され得る。
【0168】
特定の実施形態において、抗体は、第一に、TSLPに結合し、および/または本明細書中に記載される細胞に基づくアッセイにおいて中和し、および/または本願において記載される抗体を交差ブロックし、および/または本願において記載される抗体の一つによりTSLPへの結合を交差ブロックされる抗体を同定することにより生成される。これらの抗体由来のCDR領域は、その後、抗原結合タンパク質を生成するために適切な生体適合性のフレームワーク中に挿入される。結合剤の非CDR部分は、アミノ酸から構成されてもよいし、または非タンパク質分子であってもよい。本明細書中に記載されるアッセイは、結合剤の特徴付けを可能にする。好ましくは、本発明の結合剤は、本明細書中に規定されるような抗体である。
【0169】
本発明の抗原結合タンパク質は、本明細書中に記載される例示的な抗体のように同じエピトープに結合するタンパク質を含む。実施例9において考察されるように、エピトープは、構造的であっても、あるいは機能的であってもよい。構造的なエピトープは、抗体によって網羅される標的のパッチとして考えられる。機能的なエピトープは、構造的なエピトープの一部であり、相互作用(例えば、水素結合、イオン性相互作用)の親和性に直接寄与する残基を含む。抗体のエピトープを決定する一つの方法は、標的分子中の変異をスキャンし、そして結合におけるその変異の影響を測定することによる。抗体結合領域の三次元構造を与えることで、エピトープにおける変異は、変異した標的に対する抗体の結合親和性を減少または増加させることができる。
【0170】
抗原結合タンパク質は、それらのエピトープにより規定され得る。表6において見られるように、その抗体は全てTSLPに結合し得るが、それらはTSLP中の特定の残基の変異によって異なって影響され、それぞれのエピトープが完全には重複しないことを示す。好ましい抗原結合タンパク質は、本明細書中に記載される参照抗体の構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質を含む。
【0171】
例えば、好ましい抗原結合タンパク質は、A2と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPが、K67E、K97E、K98E、R100E、K101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPが、K21E、T25R、S28R、S64R、K73Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。その抗原結合タンパク質およびA2は、いくつかの変異により同じように影響され、他の変異によっては影響され得ないが、TSLPの特定の残基における変異の影響においてその抗原結合タンパク質とA2の間により一層の同一性があればあるほど、より一層、その抗原結合タンパク質と参照抗体は、構造的エピトープを共有する。
【0172】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A4と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPが、K97E、K98E、R100E、K
101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPが、K10E、A14R、K21E、D22R、K73E、K75E、またはA76Rの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0173】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A5と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPが、K12E、D22R、S40R、R122E、N124E、R125E、またはK129Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0174】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A6と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPが、S40R、S42R、H46R、R122E、またはK129Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0175】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A7と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPが、K101Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPがD2R、T4R、D7R、S42R、H46R、T49R、E50R、Q112R、R122E、R125E、またはK129Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0176】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A10と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPがK97E、K98E、R100E、K101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPがN5R、S17R、T18R、K21E、D22R、T25R、T33R、H46R、A63R、S64R、A66R、E68R、K73E、K75E、A76R、A92R、T93R、Q94R、またはA95Rの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0177】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A21と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPがK97E、K98E、R100E、K101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPがK21E、K21R、D22R、T25R、T33R、S64R、K73E、K75E、E111R、またはS114Rの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0178】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A23と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPがK67E、K97E、K98E、R100E、K101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPがE9R、K10E、K12E、A13R、S17R、S20R、K21E、K21R、K73E、K75E、N124E、またはR125Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0179】
別の好ましい抗原結合タンパク質は、A26と同じ構造的エピトープの少なくとも一部を共有するタンパク質である。これは、TSLPがK97E、K98E、R100E、 K101E、またはK103Eの変異を有する場合、野生型TSLPと比べての結合親和性の増加により証明される。これはまた、TSLPがA14R、K21E、D22R、A63R、S64R、K67E、K73E、A76R、A92R、またはA95Rの変異を
有する場合、 野生型TSLPと比べての結合親和性の減少により証明され得る。
【0180】
抗体間で結合に影響する変異を比較することは、TSLPの特定の残基が、TSLPを結合し、そしてTSLP活性を妨げる抗体の能力の部分となる傾向があることを示唆する。そのような残基は、K21、D22、K73、およびK129を含む。従って、好ましい抗原結合タンパク質は、K21Eの変異を含むTSLPに対する親和性よりも野生型TSLPに対してより高い親和性を有するタンパク質、D21Rの変異を含むTSLPに対する親和性よりも野生型TSLPに対してより高い親和性を有するタンパク質、K73Eの変異を含むTSLPに対する親和性よりも野生型TSLPに対してより高い親和性を有するタンパク質、およびK129Eの変異を含むTSLPに対する親和性よりも野生型TSLPに対してより高い親和性を有するタンパク質を含む。
【0181】
さらに、本明細書中に記載される多くの例示的な抗原結合タンパク質は、97-103の位置のアミノ酸の塩基性のパッチが酸性アミノ酸に変えられた場合、TSLPに対する親和性が増大するという性質を共有する。
【0182】
核酸
一つの局面において、本発明は、単離された核酸分子を提供する。その核酸は、例えば、抗原結合タンパク質の全てまたは部分(例えば、本発明の抗体の一つもしくは両方の鎖、またはその断片、誘導体、ムテイン、または改変体)をコードするポリヌクレオチド、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用のために十分なポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定するか、アッセイするか、変異させるか、または増幅するためのPCRプライマーもしくは配列決定プライマー、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前記のものの相補配列を含む。その核酸は、どのような長さであってもよい。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000またはそれより多い長さのヌクレオチドであり得、および/または一つ以上の追加の配列(例えば、調節配列)を含み得、および/またはより大きな核酸(例えば、ベクター)の部分であり得る。その核酸は、単一鎖または二本鎖であり得、そしてRNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにその改変体(例えば、ペプチド核酸)を含み得る。
【0183】
抗体ポリペプチド(例えば、重鎖または軽鎖、可変ドメインのみ、または全長)をコードする核酸は、TSLP抗原で免疫化されたマウスのB細胞から単離され得る。その核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような従来の方法により単離され得る。
【0184】
重鎖および軽鎖可変領域の可変領域をコードする核酸配列は上に示される。遺伝コードの縮重により、本明細書中に開示される各ポリペプチド配列が、多くの数の他の核酸配列によりコードされていることを、当業者は正しく認識するだろう。本発明は、本発明の各抗原結合タンパク質をコードする各縮重ヌクレオチド配列を提供する。
【0185】
本発明はさらに、特定のハイブリダイゼーション条件下で他の核酸(例えば、A1~A27のいずれかヌクレオチド配列を含む核酸)にハイブリダイズする核酸を提供する。核酸をハイブリダイズするための方法は当該分野で周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y.(1989)6.3.1-6.3.6を参照のこと。本明細書中に規定されるように、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SCC)、0.5% SDS、1.0mM
EDTA(pH8.0)を含む予洗溶液、約50% ホルムアミドのハイブリダイゼー
ション緩衝液、6×SSC、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または他の類似のハイブリダイゼーション溶液、例えば、約50%のホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液を42℃のハイブリダイゼーション温度で)、および0.5×SSC、0.1% SDSにおいて60℃の洗浄条件を用いる。一つのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×SCC中、45℃でハイブリダイズさせ、その後、0.1×SSC、0.2% SDSにおいて68℃で一回以上洗浄する。さらに、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または減少させるために操作することができ、その結果、お互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸が、一般的にお互いにハイブリダイズされて残る。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本的なパラメータおよび適切な条件を考案するためのガイダンスは、例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., chapters 9 and 11; およびCurrent Protocols in Molecular Biology, 1995, Ausubelら、eds., John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4) により定められ、そして当業者により、例えばDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて容易に決定され得る。
【0186】
変異により変化が核酸中に導入され得、その結果それがコードするポリペプチド(例えば、抗原結合タンパク質)のアミノ酸配列における変化を生じる。変異は、当該分野で公知の任意の技術を用いて導入され得る。一つの実施形態において、一つ以上の特定のアミノ酸残基が、例えば、部位特異的変異誘発プロトコールを用いて変化させられる。別の実施形態において、一つ以上の無作為に選択された残基が、例えば、無作為変異誘発プロトコールを用いて変化させられる。どのような方法で作られても、変異ポリペプチドは、発現されそして所望の特性についてスクリーニングされ得る。
【0187】
変異は、核酸がコードするポリペプチドの生物学的活性を顕著に変化させることなく、核酸中に導入され得る。例えば、非必須アミノ酸残基でのアミノ酸置換を生じるヌクレオチドの置換を作製することができる。一つの実施形態において、二つまたはそれ以上の配列が異なる残基となるように、本明細書中でA1~A27に対して示されたアミノ酸残基の一つまたはそれ以上の欠失または置換を含むアミノ酸配列をコードするよう、A1~A27に対して本明細書中で与えられたヌクレオチド配列、またはその所望の断片、改変体、もしくは誘導体が変異させられる。別の実施形態において、二つまたはそれ以上の配列が異なる残基となるように、変異誘発は、本明細書中でA1~A27に対して示された一つ以上のアミノ酸残基に隣接して一つのアミノ酸残基を挿入する。あるいは、核酸がコードするポリペプチドの生物学的活性(例えば、TSLPへの結合)を選択的に変化させる一つ以上の変異が、核酸中に導入され得る。例えば、その変異は、生物学的活性を定量的または定性的に変化させ得る。定量的な変化の例は、その活性の増加、減少または除去を含む。定性的な変化の例は、抗原結合タンパク質の抗原特異性を変化させることを含む。
【0188】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸配列の検出のためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして用いるのに適切な核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部分のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして用いられ得る断片、または本発明のポリペプチドの活性部分(例えば、TSLP結合部分)をコードする断片を含み得る。
【0189】
本発明の核酸の配列に基づくプローブは、その核酸または類似の核酸(例えば、本発明
のポリペプチドをコードする転写物)を検出するために用いられ得る。そのプローブは、標識基(例えば、放射性同位体)、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子)を含み得る。そのようなプローブは、そのポリペプチドを発現する細胞を同定するために用いられ得る。
【0190】
別の局面において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例は、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターおよび発現ベクター(例えば、組換え発現ベクター)を含むが、それらに限定されない。
【0191】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を、宿主細胞におけるその核酸の発現に適した形態で含み得る。その組換え発現ベクターは、発現のために用いられる宿主細胞に基づいて選択される一つ以上の制御配列を含み、その制御配列は発現される核酸配列に作動可能に連結される。制御配列は、多くのタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を導く制御配列(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞においてのみそのヌクレオチド配列の発現を導く制御配列(例えば、組織特異的制御配列(その全体が本明細書中に参考として援用されるVossら、1986, Trends Biochem. Sci. 11:287, Maniatisら、1987, Science 236:1237を参照のこと))、および特定の処理または条件に応答するヌクレオチド配列の誘導発現を導く制御配列(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオネインプロモーターならびに原核生物および真核生物系の両方におけるtet応答および/またはストレプトマイシン応答プロモーター(同書参照))を含む。当業者は、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベル等のようなそのような因子に依存し得ることを理解する。本発明の発現ベクターが、宿主細胞中に導入され、それにより本明細書中に記載されるような核酸によりコードされる融合タンパク質またはペプチドを含む、タンパク質またはペプチドを産生することができる。
【0192】
別の局面において、本発明は、本発明の組換え発現ベクターが導入された、宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の真核生物細胞(例えば、E.coli)または真核生物細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞))であり得る。ベクターDNA、一般的な形質転換またはトランスフェクション技術を介して原核生物または真核生物細胞中に導入され得る。哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションに関して、用いる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、少数の細胞のみが、外来DNAをそのゲノム中に組み込むことができることが公知である。これらの組み込み物(integrant)を同定および選択するため、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する抵抗性についての)をコードする遺伝子が目的の遺伝子とともに宿主細胞中に一般的に導入される。好ましい選択マーカーは、薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサート)に対する抵抗性を与える遺伝子を含む。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、他の方法に加えて、薬剤選択により同定され得る(例えば、選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存するが、一方、他の細胞は死ぬ)。
【0193】
適応症
TSLPは、多様な炎症性障害、特にアレルギー性炎症性障害の促進に関与する。本明細書中で用いられる場合、用語「アレルギー性炎症」は、免疫グロブリンE(IgE)関連免疫性応答の発現に関連する(Manual of Allergy and Immunology, Chapter 2, Alvin M. Sanico, Bruce S. Bochner, and Sarbjit S. Saini, Adelmanら、ed., Lippincott, Williams, Wilkins, Philadelphia, PA,(2002))。本明細書中で用いられる場合
、アレルギー性炎症は、影響を受けた組織中への2型ヘルパーT細胞(T2細胞)の侵入により一般的に特徴付けられる(Kay, 上述)。アレルギー性炎症は、アトピー性皮膚炎のような炎症性の皮膚状態に加えて、アレルギー性の副鼻腔炎、喘息のような肺の炎症性疾患、アレルギー性結膜炎を含む(Manual of Allergy and
Immunology、上述)。本明細書中で用いられる場合、用語「TSLP関連アレルギー性炎症」は、TSLPがアップレギュレートされているか、または他に関与することが実証されているアレルギー性の炎症状態に関する。
【0194】
アレルギー性喘息は、気道の好酸球増加症、高レベルの血清IgEならびに気道の応答性亢進、上皮損傷および粘液分泌過多に関与するマスト細胞活性化により特徴付けられる気道の慢性の炎症性の疾患である(Wills-Karp, M, Ann. Rev.
Immunol. 17:255~281(1999), Manual of Allergy and Immunology、上述)。多様な程度の慢性の炎症が、全ての喘息の気道に、症状のない期間の間にさえ存在することを研究が示した。感受性の個体において、この炎症は、喘鳴、息切れ、胸苦しさ、および咳の再発性症状を引き起こす(Manual of Allergy and Immunology、上述)。
【0195】
アトピー性皮膚炎は、皮膚の障害により特徴付けられる慢性そう痒性皮膚疾患であり、血清総IgEの上昇、好酸球増加症、および好塩基球およびマスト細胞からのヒスタミンの放出の増加を特徴とする。アトピー性皮膚炎に罹患している個人は、際立ったT2応答を示し、そしてアトピー性皮膚炎障害の開始は、高レベルのIL-4、IL-5およびIL-13を放出するT2リンパ球の初期の皮膚浸潤により媒介されると考えられる(Leung, J. Allergy Clin Immunol 105:860~76(2000))。TSLPと他の炎症性サイトカインの間の関係は、米国特許出願第11/205,904号、公開第2006/0039910号に記載され、それは本明細書中に参考として援用される。
【0196】
インサイチュハイブリダイゼーションにより検出されたようにヒトTSLP発現は、疾患の重症度と相関して喘息性の気道において増加することが報告された(Yingら、J. Immunology 174:8183~8190(2005))。喘息患者の肺サンプルにおけるTSLP mRNAレベルのアッセイは、コントロールと比較して増加したTSLPの発現を示した。加えて、TSLPタンパク質レベルは、喘息患者、肺移植患者、および嚢胞性線維症患者の濃縮された気管支肺胞洗浄(BAL)流体において検出可能である。TSLPは、炎症と同様に、微生物および外傷に対する応答において放出され、そしてマスト細胞を活性化することが、最近見いだされた(Allakhverdiら、J Exp. Med 20492: 253~258(2007))。
【0197】
ヒトTSLPタンパク質は、中程度の/重症の喘息およびCOPDの患者の気管支粘液およびBAL流体において、疾患と関連することが示された(Yingら、J Immunol 181(4):2790~8(2008))。
【0198】
トランスジェニックマウスの肺におけるTSLPの過剰発現は、喘息様の気道炎症を生じる(Zhouら、Nat. Immunol 10:1047~1053(2005))。加えて、TSLPR欠損マウスが、OVA-喘息モデルにおいて喘息が進行しないことが報告され、気道炎症モデルにおける喘息の進行にTSLPが必要とされることを示した(Zhouら、上述、Carpinoら、Mol. Cell Biol. 24:2584~2592(2004))。
【0199】
喘息に加えて、アトピー性皮膚炎(AD)患者の障害性の皮膚および炎症を起こした扁桃腺の上皮細胞においてTSLPタンパク質およびmRNAの上昇したレベルが見いださ
れる(Soumelisら、Nature Immunol: 3 (7): 673~680(2002))。トランスジェニックマウスの皮膚におけるTSLPの過剰発現は、AD様表現型を生じる(Yooら、J Exp Med 202:541~549(2005))。
【0200】
したがって、TSLPアンタゴニスト、特に本出願のTSLP抗原結合タンパク質および抗体は、アレルギー性炎症、特に喘息およびアトピー性皮膚炎のための治療処置として有用である。
【0201】
加えて、TSLPアンタゴニスト、特に本開示のTSLP抗原結合タンパク質および抗体はまた、線維症障害を処置するために有用である。TSLPは、出願番号第11/344,379に記載されたように、線維症障害の促進に関係することが示された。TSLPが、動物における線維芽細胞の蓄積およびコラーゲンの沈着を誘導することが見いだされた。例えば、マウスTSLPのマウスへの皮内注入は、線維芽細胞の増殖とコラーゲンの沈着により特徴づけられる、マウスの皮下組織内での線維症を生じた。TSLP活性に拮抗することは、組織における線維芽細胞の増殖とコラーゲンの沈着を防止または減少させた。
【0202】
本明細書中で用いられる場合、用語「線維増殖疾患」または「線維症疾患または障害」は、一つ以上の組織において線維症に関係する状態に関する。本明細書中で用いられる場合、用語「線維症」は、器官または組織の正常な構成要素としてよりもむしろ、修復性または反応性のプロセスとしての線維組織の形成に関する。線維症は、任意の特定の組織における、線維芽細胞の蓄積および正常な沈着以上のコラーゲン沈着により特徴付けられる。本明細書中で用いられる場合、用語「線維症」は、「線維芽細胞蓄積およびコラーゲン沈着」と同じ意味で用いられる。線維芽細胞は結合組織細胞であり、体中の結合組織に分散する。線維芽細胞はI型および/またはIII型コラーゲンを含む堅くない細胞外マトリックスを分泌する。組織への傷害に応答して、近くの線維芽細胞が傷に移動し、増殖し、そして大量の膠原性マトリックスを産生する。コラーゲンは、グリシンとプロリンに富んだ線維状のタンパク質であり、細胞外マトリックスおよび結合組織、軟骨、ならびに骨の主要な成分である。コラーゲン分子は、α-鎖と呼ばれる三本鎖らせん構造であり、ロープ様らせんでお互いに巻きつけられる。コラーゲンは、いくつかの形態または型で存在し、これらのうち最も一般的なI型は、皮膚、腱、および骨に見出され;そしてIII型は皮膚、血管、および内部器官に見出される。
【0203】
線維症障害は、全身性強皮症および局所性強皮症、ケロイドおよび過形成性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺の炎症および線維症、特発性の肺の線維症、肝硬変、慢性のB型肝炎またはC型肝炎感染の結果としての線維症、腎臓病、瘢痕組織に起因する心臓病、ならびに黄斑変性症、網膜のおよび硝子体の(vitreal)網膜症のような眼疾患を含むが、それらに限定されるものではない。さらなる線維症疾患は、化学療法剤に起因する線維症、放射線誘発線維症、ならびに傷害および火傷を含む。
【0204】
強皮症は、皮膚および他の器官での線維芽細胞による新規コラーゲンの過剰産生に起因する皮膚の肥厚および硬化によって特徴付けられる線維症障害である。全身性強皮症は、多数の器官に影響し得る。全身性硬化症は、特に手および顔面の、皮膚の肥厚および下にある組織への接着をともなうヒアリン化および肥厚した膠原性線維組織により特徴付けられる。該疾患はまた、蠕動の消失および食道の粘膜下線維症による嚥下障害、肺の線維症による呼吸困難、心筋の線維症、および腎臓の血管変成により特徴付けられ得る(Stedman’s Medical Dictionary, 26th Edition,
Williams & Wilkins, 1995)。肺の線維症は、強皮症患者の30~70%に影響し、しばしば拘束性の肺疾患に帰結する(Atamasら、Cyto
kine and Growth Factor Rev 14: 537~550 (2003))。特発性 の肺線維症は、慢性、進行性および通常致死性の肺障害であり、慢性の炎症性プロセスの結果と考えられる(Kellyら、Curr Pharma Design 9: 39~49 (2003))。
【0205】
したがって、TSLPアンタゴニスト、特に本願のTSLP抗原結合タンパク質および抗体は、強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型肝炎または慢性C型肝炎に由来する線維症、放射線誘発線維症、および創傷治癒に由来する線維症を含むがそれらに限定されるものではない線維症疾患の治療処置として有用である。
【0206】
上記適応症が好ましいが、他の疾患、障害、または状態が、被験体への抗原結合物の投与により処置を受ける可能性があるか、または予防され得る。そのような疾患、障害、および状態は、炎症、自己免疫疾患、軟骨の炎症、線維症疾患および/または骨分解、関節炎、リューマチ性関節炎、少年関節炎、若年性関節リウマチ、少関節性(pauciarticular)若年性関節リウマチ、多関節性若年性関節リウマチ、全身性発症(systemic onset)若年性関節リウマチ、若年性強直性脊椎炎、若年性の腸疾患に基づく関節炎、若年性反応性関節炎、若年性Reter症候群、SEA症候群(血清反応陰性、腱付着部症、関節症症候群)、若年性皮膚筋炎、若年性乾癬性関節炎、若年性強皮症、 若年性全身紅斑性狼瘡、若年性血管炎、少関節性関節リウマチ、多関節性関節リウマチ、全身性発症(systemic onset)関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸疾患に基づく関節炎、反応性関節炎、Reter症候群、SEA症候群(血清反応陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、 全身紅斑性狼瘡、血管炎、筋炎(myolitis)、多発性筋炎( polymyolitis)、皮膚筋炎(dermatomyolitis)、骨関節炎、多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多筋痛、サルコイドーシス、強皮症、硬化症、原発性胆汁症 、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、反転(inverse)乾癬、膿疱性乾癬、紅皮症性乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム硬化症、狼瘡、スティル病、全身紅斑性狼瘡(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、多発性硬化症(MS)、喘息、COPD、ギランバレー病、I型糖尿病、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、自己免疫肝炎、GVHD等を含むが、それらに限定されるものではない。特定の実施形態において、治療有効量のTSLP抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物が提供される。
【0207】
用語「処置」は、少なくとも一つの症状もしくは障害の他の局面の緩和または予防、または疾患の重症度の減少等を含む。抗原結合タンパク質は、見込みのある治療剤を構成するために、完全な治療をもたらすこと、または疾患のあらゆる症候もしくは症状を根絶することを必要としない。関連する分野において認識されるように、治療剤として用いられる薬剤は、所定の疾患状態の重症度を減少させ得るが、有用な治療剤とみなされるために、疾患のあらゆる症状を消滅させる必要はない。同様に、予防的に投与される処置は、見込みのある薬剤を構成するために、状態の開始を防止するうえで完全に有効である必要はない。単純に疾患の影響を減少させること(例えば、その症状の数または重症度を減少させることにより、または別の処置の有効性を増大させることにより、または別の有益な効果を生成することにより)、または被験体において疾患が生じるか、もしくは悪化する可能性を減少させることが、十分である。本発明の一実施形態は、患者に抗原結合タンパク質を、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超える持続性の改善を誘導するために十分な量および時間、投与することを含む方法に関する。
【0208】
薬学的組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、治療有効量の一つまたは複数の本発明の抗原結合タンパク質を、薬学的に受容可能な希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料、およ
び/または補助薬とともに含む、薬学的組成物を提供する。加えて、本発明は、そのような薬学的組成物を投与することにより、患者を処置する方法を提供する。用語「患者」は、ヒトおよび動物の被験体を含む。
【0209】
一つ以上の抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物が、TSLP活性を低減するために使用され得る。一つ以上の抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物が、TSLP活性と関連する結果、症状、および/または病理の処置において用いられ得る。一つ以上の抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物が、本発明の抗原結合タンパク質をTSLPに提供することを含む、TSLPRへのTSLPの結合および/またはシグナル伝達を阻害する方法において用いられ得る。
【0210】
特定の実施形態において、許容される処方物質は、好ましくは用いられる用量および濃度で受容者に非毒性である。特定の実施形態において、その薬学的組成物は、例えば、pH、重量オスモル濃度、粘性、透明度、色、等張性、香り、無菌性、安定性、分解もしくは放出の速度、その組成物の吸収もしくは浸透を、改変、維持または保存するための処方物質を含み得る。そのような実施形態において、適切な処方物質は、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン);抗菌剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸);増量剤(bulking agent)(例えば、マンニトールまたはグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータシクロデキストリンまたはヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン);充填剤;単糖類;二糖類;および他の炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、マンノースまたはデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);着色料、香味料および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);保存料(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素);溶剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル);安定性増強剤(例えば、スクロースまたはソルビトール);張性増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的補助剤を含むが、それらに限定されるものではない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18’’ Edition, (A.R. Genrmo, ed.), 1990, Mack Publishing Companyを参照のこと。
【0211】
特定の実施形態において、最適な薬学的組成物は、例えば、投与の意図された経路、送達方式および所望の用量に依存して、当業者により決定される。例えば、上述のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照のこと。特定の実施形態において、そのような組成物は、本発明の抗原結合タンパク質の物理的状態、安定性、インビボでの放出の速度およびインビボでの除去の速度に影響し得る。特定の実施形態において、薬学的組成物中の第一のビヒクルまたは担体は、事実上、水性、非水性のいずれでもよい。例えば、適切なビヒクルまたは担体は、非経口的な投与のための組成物において一般的な他の物質で補充される可能性のある、注入のための水、生理的塩溶液または人工的な脳脊髄液であり得る。中性に緩衝された生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらに模範的なビヒクルである。特定の実施形態において、
薬学的組成物は、約pH7.0-8.5のTris緩衝液、または約pH4.0-5.5の酢酸緩衝液を含み、そしてソルビトールもしくはその適切な置換物をさらに含み得る。本発明の特定の実施形態において、TSLP抗原結合タンパク質組成物は、凍結乾燥された固まりまたは水性溶液の形態で、所望の程度の純度で最適の処方剤(REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、上述)を有す選択された組成物を混合することにより貯蔵のために調製され得る。さらに、特定の実施形態において、そのTSLP抗原結合タンパク質生成物は、スクロースのような適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として処方され得る。
【0212】
本発明の薬学的組成物は、非経口的送達のために選択され得る。あるいは、その組成物は、吸入のため、または消化管をとおしての送達(例えば経口的)のために選択され得る。処方物成分は、投与の部位に受け入れられる濃度で好ましくは存在する。特定の実施形態において、組成物を生理的pHまたはわずかにより低いpH、一般的には約5から約8の範囲のpH内に維持するために緩衝剤が用いられる。約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、および約8.0を含む。
【0213】
非経口的投与が企図される場合、本発明における使用のための治療用組成物は、発熱物質を含まない、薬学的に許容されるビヒクル中に所望のTSLP抗原結合タンパク質を含む非経口的に許容される水性溶液の形態で、提供され得る。非経口的注入のための特に適切なビヒクルは、TSLP抗原結合タンパク質が、無菌の、等浸透圧の、適切に保存されたものとして処方される、滅菌蒸留水である。特定の実施形態において、調製物は、所望の分子の処方物を、蓄積注射を介して送達され得る生成物の制御された放出または持続放出を提供し得る薬剤(例えば、注入可能なミクロスフェア、生物受食性(bio-erodible)粒子、高分子化合物(例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸)、ビーズもしくはリポソーム)とともに含み得る。特定の実施形態において、循環中での持続時間を増進する効果を有する、ヒアルロン酸がまた用いられ得る。特定の実施形態において、埋め込み可能な薬物送達装置が、所望の抗原結合タンパク質を導入するために用いられ得る。
【0214】
本発明の薬学的組成物は、吸入のために処方され得る。これらの実施形態において、TSLP抗原結合タンパク質は、乾燥した吸入可能な粉末として好都合に処方され得る。特定の実施形態において、TSLP抗原結合タンパク質吸入溶液はまた、エーロゾル送達のための噴射剤とともに処方され得る。特定の実施形態において、溶液は、霧状にされ得る。肺に関する投与およびしたがって処方方法は、国際特許出願第PCTUS94/001875号にさらに記載され、それは参考として援用され、そして化学的に修飾されたタンパク質の肺に関する送達を記載する。
【0215】
処方物は、経口的に投与され得ることがまた企図される。この様式で投与されるTSLP抗原結合タンパク質は、錠剤およびカプセルのような固体投与形態の配合において慣習的に用いられる担体とともに、またはなしで処方され得る。特定の実施形態において、カプセルは、生物学的利用能が最大化され、そして前全身性分解が最小化される、まぎわに、胃腸管において、処方物の活性部分を放出するように設計される。追加の薬剤が、TSLP抗原結合タンパク質の吸収を促進するために含まれ得る。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤分解剤、および結合剤がまた、用いられ得る。
【0216】
本発明の薬学的組成物は、錠剤の製造のために適切な非毒性賦形剤との混合物中に、有効量の一つまたは複数のTSLP抗原結合タンパク質を含むように、好ましくは提供され
る。その錠剤を滅菌水、または別の適切なビヒクル中に溶解することにより、溶液は、単位用量形態に調製され得る。
【0217】
適切な賦形剤は、不活性の希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウム);または結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア);または滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0218】
付加的な薬学的組成物は、当業者には明白であり、持続送達または制御送達処方物中のTSLP抗原結合タンパク質を含む処方物を含む。多様な他の持続または制御送達法(例えば、リポソーム担体、生物受食性微粒子または有孔ビーズおよび蓄積注射)を処方するための方法はまた、当業者には公知である。例えば、参考として援用され、そして薬学的組成物の送達のための有孔高分子微粒子の制御された放出を記載する国際特許出願第PCT/US93/00829号を参照のこと。
【0219】
持続性放出調製物は、半透性ポリマー物質を造形品の形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)で含み得る。持続性放出調製物は、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号および欧州特許出願公開第EP058481号に開示され、それぞれ参考として援用される)、L-グルタミン酸およびガンマエチル-L-グルタミン酸塩のコポリマー(Sidmanら、1983, Biopolymers 2:547~556)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-インエタクリレート(poly(2-hydroxyethyl-inethacrylate))(Langerら、1981, J. Biomed. Mater. Res. 15:167~277およびLanger, 1982, Chem. Tech. 12:98~105)、エチレンビニル酢酸(Langerら、1981、上述)、またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第EP 133,988号)を含み得る。
【0220】
持続放出組成物はまた、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれによっても調製され得るリポソームを含み得る。例えば、Eppsteinら、1985, Proc. Natl Acad. ScL U.S.A. 82.3688~3692; 参考として援用される欧州特許出願公開第EP 036,676号;同第 EP 088,046号および同第EP143,949号を参照のこと。
【0221】
インビボの投与のために用いられる薬学的組成物は、滅菌調製物として一般的に提供される。滅菌は、滅菌フィルター膜をとおしての濾過により達成され得る。その組成物が凍結乾燥される場合、この方法を用いる滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のどちらかに実施され得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態または溶液で貯蔵され得る。非経口組成物は一般的に、滅菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈注射溶液のバッグまたは皮下注射針によって貫くことが可能なストッパーを有するバイアル)中に置かれる。
【0222】
本発明の局面は、自己緩衝化TSLP抗原結合タンパク質処方物を含み、それは国際特許出願(国際公開第06138181A2号パンフレット(PCT/US2006/022599))に記載されたように薬学的組成物として用いられ得る。国際公開第0613818 1A2号パンフレット(PCT/US2006/022599)は、その全体が本明細書中に参考として援用される。一つの実施形態が、総塩濃度が150mMより低い、TSLP抗原結合タンパク質を含む自己緩衝化TSLP抗原結合タンパク質処方物を提供する。
【0223】
TSLP抗原結合タンパク質を含む薬学的な組成物の、用いられる治療有効量は、例え
ば、治療状況および目的に依存する。処置のための適切な用量レベルが、一部において、送達される分子、TSLP抗原結合タンパク質が使用される適応症、投与の経路、およびサイズ(体重、体表面または器官のサイズ)および/または患者の状態(年齢および一般的な健康の)に依存して変化することを、当業者は理解する。
【0224】
特定の実施形態において、臨床医は、最適の治療効果を得るために、用量を定め、投与の経路を変えることができる。一般的な用量は、上記の因子に依存して約0.1μg/kgから約30mg/kg以上まで変化し得る。特定の実施形態において、用量は、0.1μg/kgから約30mg/kgまで、随意に1μg/kgから約30mg/kgまで、または10μg/kgから約5mg/kgまで変化し得る。
【0225】
投与頻度は、用いられる処方物中の特定のTSLP抗原結合タンパク質の薬物動態学的パラメーターに依存する。一般的に、臨床医は、所望の効果を達成する用量に到達するまでその組成物を投与する。組成物は、したがって、単一の用量として、または期間中に2回以上の用量(それは所望の分子の同一量を含んでも含まなくてもよい)として、または埋め込み装置もしくはカテーテルを介して連続した注入として、投与され得る。適切な用量のさらなる改善は、当業者によって日常的になされ、それは当業者により実施される業務の範囲内にある。
【0226】
適切な用量は、適切な用量-応答データの使用を通して確かめられ得る。特定の実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、延長された期間をとおして患者に投与され得る。本発明の抗原結合タンパク質の長期投与は、完全にはヒトのものではない抗原結合タンパク質(例えば、非ヒト動物においてヒト抗原に対して生じた抗体、例えば、非ヒト種において産生された非完全ヒト抗体もしくは非ヒト抗体)に一般的に関連する有害な免疫またはアレルギー応答を最小化する。
【0227】
薬学的組成物の投与経路は、公知の方法(例えば、経口的に、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼球内、動脈内、門脈内、または病巣内経路による注入をとおす;持続放出システムによるまたは埋め込み装置による)に従う。特定の実施形態において、組成物は、大量瞬時投与によりまたは点滴により、または埋め込み装置により投与され得る。
【0228】
組成物はまた、所望の分子が吸収されるかまたはカプセル化された膜、スポンジ、または別の適切な材料の埋め込みを介して局所的に投与され得る。埋め込み装置が用いられる特定の実施形態において、その装置は、適切な組織または器官中に埋め込まれ得、そして所望の分子の送達は、拡散、時間放出ボーラス、または連続的な投与を介し得る。
【0229】
併用療法
さらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、患者が悩まされている状態を処置するために有用な他の薬剤と組み合わせて投与される。そのような薬剤の例は、タンパク様薬剤および非タンパク様薬剤の両方を含む。複数の治療が同時投与される場合、用量は、関連する技術分野で認識されるように、状況に応じて調整され得る。「同時投与」および併用療法は、同時投与に限定されないが、患者に少なくとも一つの他の治療剤を投与することを含む処置のコースの間に少なくとも一度、抗原結合タンパク質が投与される処置の管理をまた含む。
【実施例0230】
本発明が記載され、以下の実施例は、説明として提出されるものであり、制限するものではない。
【0231】
実施例1:抗原の調製
組換えTSLPのいくつかの形態を免疫原として用いた。ヒトTSLPをE.coliおよび哺乳動物細胞の両方において発現させた。E.coliが産生するヒトTSLPはタグのない全長タンパク質であった。アミノ酸128-132(RKRKV、配列番号371)に対応するヌクレオチド382-396(AGAAAAAGGAAAGTC、配列番号370)を欠失させることにより生成されたフューリン切断部位の欠失を有するTSLPタンパク質をCOS PKB細胞において生成した。このタンパク質は、C末端ポリHIS-Flagタグを含む(ヌクレオチド配列= ATGTTCCCTTTTGCCTTACTATATGTTCTGTCAGTTTCTTTCAGGAAAATCTTCATCTTACAACTTGTAGGGCTGGTGTTAACTTACGACTTCACTAACTGTGACTTTGAGAAGATTAAAGCAGCCTATCTCAGTACTATTTCTAAAGACCTGATTACATATATGAGTGGGACCAAAAGTACCGAGTTCAACAACACCGTCTCTTGTAGCAATCGGCCACATTGCCTTACTGAAATCCAGAGCCTAACCTTCAATCCCACCGCCGGCTGCGCGTCGCTCGCCAAAGAAATGTTCGCCATGAAAACTAAGGCTGCCTTAGCTATCTGGTGCCCAGGCTATTCGGAAACTCAGATAAATGCTACTCAGGCAATGAAGAAGAGGACAACCAATAAATGTCTGGAACAAGTGTCACAATTACAAGGATTGTGGCGTCGCTTCAATCGACCTTTACTGAAACAACAGCATCACCATCACCATCACGACTACAAAGACGATGACGACAAA (配列番号372);
タンパク質配列= MFPFALLYVLSVSFRKIFILQLVGLVLTYDFTNCDFEKIKAAYLSTISKDLITYMSGTKSTEFNNTVSCSNRPHCLTEIQSLTFNPTAGCASLAKEMFAMKTKAALAIWCPGYSETQINATQAMKKRTTNKCLEQVSQLQGLWRRFNRPLLKQQHHHHHHDYKDDDDK (配列番号373)。
【0232】
別のキャンペーンにおいて、C末端ポリHIS-Flagタグを付けた全長TSLPタンパク質をCOS PKB細胞において生成した(ヌクレオチド配列=
ATGTTCCCTTTTGCCTTACTATATGTTCTGTCAGTTTCTTTCAGGAAAATCTTCATCTTACAACTTGTAGGGCTGGTGTTAACTTACGACTTCACTAACTGTGACTTTGAGAAGATTAAAGCAGCCTATCTCAGTACTATTTCTAAAGACCTGATTACATATATGAGTGGGACCAAAAGTACCGAGTTCAACAACACCGTCTCTTGTAGCAATCGGCCACATTGCCTTACTGAAATCCAGAGCCTAACCTTCAATCCCACCGCCGGCTGCGCGTCGCTCGCCAAAGAAATGTTCGCCATGAAAACTAAGGCTGCCTTAGCTATCTGGTGCCCAGGCTATTCGGAAACTCAGATAAATGCTACTCAGGCAATGAAGAAGAGGAGAAAAAGGAAAGTCACAACCAATAAATGTCTGGAACAAGTGTCACAATTACAAGGATTGTGGCGTCGCTTCAATCGACCTTTACTGAAACAACAGCATCACCATCACCATCACGACTACAAAGACGATGACGACAAA (配列番号374); タンパク質配列= MFPFALLYVLSVSFRKIFILQLVGLVLTYDFTNCDFEKIKAAYLSTISKDLITYMSGTKSTEFNNTVSCSNRPHCLTEIQSLTFNPTAGCASLAKEMFAMKTKAALAIWCPGYSETQINATQAMKKRRKRKVTTNKCLEQVSQLQGLWRRFNRPLLKQQHHHHHHDYKDDDDK (配列番号375))。アミノ酸配列1-28 (MFPFALLYVLSVSFRKIFILQLVGLVLT、配列番号376)はこれらの両方のタンパク質の成熟産物から切断されたシグナルペプチドであることに注意。
【0233】
加えて、カニクイザルTSLPをクローニングし、そして、同じC末端ポリHIS-Flagに融合させた、フューリン切断部位(アミノ酸120-124(RKRKV、配列番号371)に対応するヌクレオチド358-372(AGAAAAAGGAAAGTC
、配列番号370)を欠失させてか(DNA =ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTACTGCTGCTCTGGGTTCCAGGTTCCACCGGTTACGACTTCACTAACTGTGACTTTCAGAAGATTGAAGCAGACTATCTCCGTACTATTTCTAAAGACCTGATTACATATATGAGTGGGACTAAAAGTACCGACTTCAACAACACCGTCTCCTGTAGCAATCGGCCACACTGCCTTACTGAAATCCAGAGCCTAACCTTCAATCCCACCCCCCGCTGCGCGTCGCTCGCCAAGGAAATGTTCGCCAGGAAAACTAAGGCTACCCTCGCTCTCTGGTGCCCAGGCTATTCGGAAACTCAGATAAATGCTACTCAGGCAATGAAGAAGAGGACAACCAATAAATGTCTGGAACAAGTGTCACAATTACTAGGATTGTGGCGTCGCTTCATTCGAACTTTACTGAAACAACAGCACCACCACCACCACCATGACTATAAAGACGATGACGACAAAT (配列番号377);タンパク質=
METDTLLLWVLLLWVPGSTGYDFTNCDFQKIEADYLRTISKDLITYMSGTKSTDFNNTVSCSNRPHCLTEIQSLTFNPTPRCASLAKEMFARKTKATLALWCPGYSETQINATQAMKKRTTNKCLEQVSQLLGLWRRFIRTLLKQQHHHHHHDYKDDDDK (配列番号378))または全長/天然産物として(ヌクレオチド配列=ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTACTGCTGCTCTGGGTTCCAGGTTCCACCGGTTACGACTTCACTAACTGTGACTTTCAGAAGATTGAAGCAGACTATCTCCGTACTATTTCTAAAGACCTGATTACATATATGAGTGGGACTAAAAGTACCGACTTCAACAACACCGTCTCCTGTAGCAATCGGCCACACTGCCTTACTGAAATCCAGAGCCTAACCTTCAATCCCACCCCCCGCTGCGCGTCGCTCGCCAAGGAAATGTTCGCCAGGAAAACTAAGGCTACCCTCGCTCTCTGGTGCCCAGGCTATTCGGAAACTCAGATAAATGCTACTCAGGCAATGAAGAAGAGGAGAAAAAGGAAAGTCACAACCAATAAATGTCTGGAACAAGTGTCACAATTACTAGGATTGTGGCGTCGCTTCATTCGAACTTTACTGAAACAACAGCACCACCACCACCACCATGACTATAAAGACGATGACGACAAA (配列番号379);タンパク質= METDTLLLWVLLLWVPGSTGYDFTNCDFQKIEADYLRTISKDLITYMSGTKSTDFNNTVSCSNRPHCLTEIQSLTFNPTPRCASLAKEMFARKTKATLALWCPGYSETQINATQAMKKRRKRKVTTNKCLEQVSQLLGLWRRFIRTLLKQQHHHHHHDYKDDDDK (配列番号380)のいずれかで、サブクローニングしCOS PKB細胞で発現させた。アミノ酸配列1-20(METDTLLLWVLLLWVPGSTG、配列番号381)は、これらの両方のカニクイザルタンパク質の成熟産物から切断されたシグナルペプチドであることに注意。
【0234】
実施例2 マウス抗ヒトTSLP抗体
hTSLP-FcをBalb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, Maine)の免疫化のために用いた。数回の免疫化の後、リンパ球を脾臓から放し、そして50% PEG/DMSO(Sigma)を用いる化学的融合により、マウス骨髄腫細胞のNS1(ATCC)と融合させた。その融合細胞を、10% FBS、5% Origen Cloning Factor (BioVe
risTM)、1× ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)を補充した200μlのDMEM HAT(0.1mM ヒポキサンチン、0.16mM チミジン、4mM アミノプテリン、Sigma)培地中に2×10細胞/ウエルの密度で96穴プレート中に播種した。培地は、融合7日後に、10% FBS、5% Origen Cloning Factor(BioVerisTM)、1× ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)を補充したDMEM HT(0.1mM ヒポキサンチン、0.16mM チミジン)培地で交換した。馴化培地を、培地交換の二日後に集め、そして最初のスクリーニングに進めた(preceded)。
【0235】
実施例3:完全なヒト抗体の生成
TSLPに対して特異的な完全なヒトモノクローナル抗体を、例えば、U.S. 2005/0118643、米国特許第6114598号、同第6162963号、同第7049426号、同第7064244号、Greenら、Nature Genetics
7:13~21(1994)、Medezら、Nature Genetics 15:146~156(1997)、Green and Jakobovitis J. Ex. Med. 188:483~495(1998)(これらの全ては、参考として本明細書に援用される)に記載される方法に従ってXenoMouse(登録商標)技術を用いて、および以下に記載されるように、生成した。
【0236】
二つのキャンペーンを実施した。キャンペーン1において、XenoMouse(登録商標)のIgG2およびIgG4コホートを使用した。50%のマウスがE.coliの産生したヒトTSLPを受け、そして50%が哺乳動物の産生したヒトTSLPを受けた(上述)。血清の力価をELISAによりモニタリングし(後述)、そして最もよい力価を有すマウスを以下の方法を用いてハイブリドーマを生成するために融合した。
【0237】
選択したマウスを殺し、排出したリンパ節を各コホートから採取し、集めた。リンパ節細胞をB細胞について富化し、そしてハイブリドーマを作成するためにそのB細胞を骨髄腫細胞と融合させた。融合したハイブリドーマ株をその後ハイブリドーマ培地にまき、37℃で10~14日間培養した。そのハイブリドーマの上清を、TSLPに結合するIgG抗体について、以下に記載するようにELISAによりスクリーニングした。
【0238】
第二のキャンペーンを開始し、ここでは、2つのコホートのIgG2 XenoMouse(登録商標)を哺乳動物の産生したヒトTSLPで免疫化し、一方のコホートをカニクイザルのTSLPで追加免疫した。数回の免疫化の後、上記のように、リンパ節由来のリンパ球を融合させ、培養した。培養後、ハイブリドーマの上清を、以下に記載されるように、ELISAによってTSLPへの結合についてスクリーニングした。
【0239】
以下に示すアッセイに基づくさらなるサブクローニングのために、両方のキャンペーン由来のポリクローナルの上清を選択した。TSLP活性の可能性のあるインヒビターである抗体を含有するハイブリドーマを同定し、そしてカニクイザルTSLPとの交差反応性をさらに決定した。その結果を以下の実施例5に示す。期待のできるハイブリドーマの上清を、後述する初代DCアッセイにおける能力に基づいて選択した。それらのハイブリドーマを単一の細胞にクローニングし、そしてさらなる試験のために広げた。抗体をその後、以下に記載するように精製した。
【0240】
Mab Select(GE Healthcare)樹脂を用いてハイブリドーマの馴化培地から、抗体を精製した。PBS中で平衡化したMab Select樹脂の1:2スラリーの100μlを、7と10mlの間の馴化培地(CM)に加えた。試験管を4~8℃で一晩ロテーターに置いた。その試験管を1,000×gで5分間遠心分離し、非
結合画分の上澄みを移した。その樹脂を5mlのPBSで洗浄し、そして上記のように遠心分離し上澄みを移した。その樹脂をその後、SPIN-X、0.45μm、2ml試験管に移した。その樹脂を0.5mlのPBSでさらに二回洗浄し、そして遠心分離した。Mabは、0.2mlの0.1M酢酸を用いて、時々混合しながら室温で10分間インキュベートすることにより溶出した。その試験管を遠心分離し、そして30μlのPh 8.0の1M Tris緩衝液を溶出物に加えた。精製したMabは、4~8℃で貯蔵した。
【0241】
実施例4:抗体アッセイ
A. 抗TSLP抗体の存在を検出するELISA
ELISAは、Costar 3368培地結合96穴プレートを組換えにより産生されたwtHuTSLPまたはpHisFlagを1×PBS/0.05% アザイド中2μg/mlで、50μl/ウエルでコートし、4℃で一晩インキュベートすることにより実施した。そのプレートを洗浄し、そして250μlの1×PBS/1% ミルク(アッセイ希釈剤)でブロックし、そして室温で少なくとも30分間インキュベートした。
【0242】
約50μl/ウエルのハイブリドーマ上清、ポジティブコントロールのマウス抗体M385、またはネガティブコントロールを加え、そして室温で2時間インキュベートした。そのプレートを洗浄し、そして2次抗体のヤギ抗ヒトIgG Fc HPR (Pierce)、またはそれに代えヤギ抗マウスIgG HPR (Jackson Labs)をアッセイ希釈剤中400ng/mlで適用した。そのプレートを室温で1時間インキュベートし、洗浄し、そして450nmでODを読んだ。
【0243】
B 抗TSLPハイブリドーマ上清のスクリーニングを以下の機能アッセイの一つを用いて実施した。
【0244】
1. 96穴プレートを、レセプターとヒトFcの間に8アミノ酸リンカー(SGGAPMLS、配列番号382)を持つ可溶性のhuIL-7Ra-huTSLPR-Fcタンパク質でコートし、そして4℃で一晩インキュベートした。
【0245】
2. そのプレートを洗浄し、そしてPBS + 1% BSA + 5% スクロースを用いて室温で1時間ブロックした。
【0246】
3. そのプレートをビオチン化したhuTSLPHFdel (HFはポリHis Flagを意味し、ここでTSLPは、フューリン切断部位が欠失している)(del)でインキュベートした。そのプレートをその後、(+/-)ハイブリドーマ上清またはポジティブコントロールとしてのマウス抗ヒトTSLP (M385)で室温で2時間インキュベートした。
【0247】
4. SA-HRP検出(ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ)。SAは、ビオチン化したhuTSLPHFdelのビオチン部分に強く結合し、そしてHRPが、過酸化水素による色素原TMBの酸化(青色に変わる)を触媒する。
【0248】
B. 細胞に基づくアッセイ
1) ヒトTSLPR-IL7R複合体を発現する安定BAF細胞株のTSLPで誘導される増殖の、ハイブリドーマ上清または精製抗体による阻害は、以下のプロトコールにより決定した。
【0249】
1. 増殖培地(RPMI 1640 + 10% FBS + 1% L-グルタミン + 0.1% Pen/Strep + 0.1% 2-ME)中のBAF: Hu
TSLPR安定細胞株を洗浄して、維持培地(増殖培地と同じであるが、10 ng/mLのhuTSLPHFwtを添加)中で用いたTSLPを除去した。
【0250】
2. HuTSLPwtpHF (+/-)またはカニクイザルTSLPwtpHF (+/-)をハイブリドーマ上清/精製抗体/またはマウス抗ヒトTSLP (M385)と室温で30分間、ウエル中でインキュベートした。
【0251】
3. 5×10細胞/ウエルを加え、3日間インキュベートした。
【0252】
4. その細胞にトリチウム化したチミジン(1uCi/ウエル)で一晩パルス(pulse)した。そのBAF細胞の細胞増殖、またはその阻害を、細胞によるトリチウム化したチミジンの取り込みの量(CPM)により評価した。
【0253】
2) 初代細胞アッセイ。ハイブリドーマまたは精製抗体による、初代ヒト樹状細胞からのTSLP誘導オステオプロテゲリン(OPG)(米国特許第6,284,728号に記載された)産生の阻害を、以下のプロトコールにより決定した。
【0254】
1.末梢血CD11c+骨髄性DCを、CD1c(BDCA-1) DC単離キット(Miltenyi Biotec)を用いて正常な施設内(in house)ドナー白血球搬出パックから富化した。
【0255】
2.huTSLPwtpHF (+/-)またはカニクイザルTSLPwtpHFを、上清または精製抗体またはマウス抗ヒトTSLPと室温で30分間インキュベートした。
【0256】
3.1×105細胞/ウエルを加え、48時間インキュベートした。上清を採取し、ELISAによりヒトOPG産生についてアッセイし、そしてハイブリドーマ上清または精製抗体によるOPG産生の阻害を決定した。OPG ELISAは、R&D systems DuoSet(登録商標)developmentキットを用いて実行した。抗TSLP抗体は、用量依存性様式で細胞からのOPG産生を阻害した。
【0257】
3) カニクイザル末梢血単核細胞アッセイ。ハイブリドーマ上清または精製抗体によるCynoTSLP誘導CCL22/MDC産生の阻害を、以下のプロトコールにより決定した。
【0258】
1. カニクイザル(SNBL)より取得した末梢血から末梢血単細胞(PBMC)を、isolymph上に1:1の血液:PBS混合物をかぶせることにより取得した。
【0259】
2. カニクイザルTSLPwtpHF(+/-)上清/精製抗体または可溶性huIL-7Ra-huTSLPR-Fcを、室温で30分間インキュベートした。
【0260】
3. 4×10 細胞/ウエルを加え、5日間インキュベートした。その上清を採取し、そしてELISAによりカニクイザルCCL22/MDC産生についてアッセイした。
【0261】
実施例5:Kの決定
本特許出願において記載された表面プラズモン共鳴実験を、CM4センサーチップを装備したBiacore 3000装置(Biacore International AB, Uppsala, Sweden)を用いて、25℃で実施した。ランニングバッファーとしてHBS-EPを用いる標準的なアミンカップリング化学を用いてCM4チップ上の二つのフローセルに、抗Fcγ特異的捕捉抗体を共有結合的に固定した。手短に
言うと、各フローセルを0.1 M NHSと0.4 M EDCの1:1 (v/v)混合物で活性化した。AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、 Fcγ断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Inc. West Grove,
PA)を10mM酢酸ナトリウム、pH 5.0中30ug/mlで二つのフローセル上に3,000 RUの標的レベルで固定した。残存する反応性表面を1Mのエタノールアミンの注入で非活性化した。ランニングバッファーをその後、全ての残りのステップについてHBS-EP + 0.1mg/ml BSAに切替えた。
【0262】
以下の抗体を試験した。A5 IgG2は、精製したクローン抗体であり、A2 IgG1およびIgG2は、組換え精製抗体であり、そしてA3 IgG4およびA4 IgG4は、クローンの上清である。抗体をランニングバッファー中で適切に希釈し、その結果、試験フローセル上の10μl/minでの2分の注入が、試験フローセル表面上に捕捉された抗体の約110~175応答単位をもたらした。コントロールのフローセル表面上に、抗体は捕捉されなかった。その後、種々の濃度のヒト、カニクイザル、またはネズミTSLPが、バッファーブランクとともに二つのフローセルを上に流された。ヒトおよびカニクイザルTSLPの濃度範囲は、0.44~100nMであり、一方、ネズミTSLPの濃度範囲は、8.2~6000nMである。50μl/分の流速を用い、そして2分の結合段階後、10~30分の解離段階が続いた。各サイクル後、10 mMグリシンpH 1.5の30秒間の注入でその表面を再生した。次に、新しい抗体を試験フローセル上に捕捉し、次のサイクルを準備した。
【0263】
バルクの(bulk)屈折率の変化を除去するためにコントロールの表面応答を差し引き、そして実験フローセルから系統的なアーティファクトを除くために平均のバッファーブランク応答を差し引くことによって、データを、二重参照した。TSLPデータを加工し、そして全体的に、局所Rmaxをともなう1:1相互作用モデルに、BIA evaluation Software v 4.1. (Biacore International AB, Uppsala, Sweden)でフィットした。会合(k)および解離(k)速度定数を決定し、そして解離平衡定数(K)を計算するために用いた。解離速度定数および解離平衡定数を、実施例6において見い出される表中にまとめる。
【0264】
実施例6:抗体のインビトロ活性
以下の抗体をkdおよびKDについて上に記載したBiacoreアッセイを用いて特徴付けた。初代樹状細胞アッセイを、IC50 (pM)を決定するために用いた。A5についてのデータを精製したクローン抗体を用いて生成し、A2についてのデータを組換え精製抗体を用いて生成し、そしてA3およびA4についてのデータをクローンの上清を用いて生成した。TSLPの全ての変種を哺乳動物細胞から生成した。
【0265】
【表4-1】
実施例7:抗体の組換え発現および精製
抗体を発現する安定細胞株の開発
センスおよびアンチセンス鎖の両方の軽鎖および重鎖可変ドメインの一次配列に対応するように、重複するオリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチドプールを標準的なPCRにおいて用いた。この第一の反応からの生成物を、第二のPCR増幅における鋳型として用いた。増幅した可変重鎖断片および可変軽鎖断片を、中間的なベクター中にサブクローニングし、そして誤りのない生成物を同定するために配列決定した。可変重鎖断片を、シグナルペプチドおよびヒトIgG2定常領域を含む一過性発現ベクター中にクローニングした。可変軽鎖断片を、シグナルペプチドおよびヒトラムダ定常領域を含む一過性発現ベクター中にクローニングした。完全な重鎖遺伝子をベクターpDC324中に移した。完全な軽鎖遺伝子を発現ベクターpDC323中に移した。
【0266】
抗TSLP発現プラスミドのトランスフェクションのために用いたCS-9宿主細胞は、無血清培地への適応をとおしてDXB-11細胞から得られたCHO細胞株(Rasmussenら、Cytotechnology 28:31~42, 1998)である。抗TSLP細胞株は、標準的なエレクトロポレーションまたはリポフェクション手順を用いて発現プラスミドのpDC323-anti-TSLP-lambdaおよびpDC324-anti-TSLP-IgG2でCS-9宿主細胞をトランスフェクトすることにより作成した。発現プラスミドでの宿主細胞株のトランスフェクション後、その細胞を選択培地中で2~3週間増殖させ、プラスミドの選択および細胞の回復を可能にした。いくつかの事例において、培地は、3%の透析した牛胎仔血清(dsまたはdFBS)で補充した。血清を用いた場合、選択期間の後に、血清は培地から除去した。細胞は、85%より大きい生存度を達成するまで、選択培地中で増殖させた。トランスフェクトした細胞のこのプールを、その後、培養培地中で培養した。
【0267】
細胞株のクローニング
以下の手順により、選択したクローンの細胞バンクを作成した。クローニングステップは、商業的な製造における再現可能な実行を可能にするクローン集団および細胞バンクが生成されたことを確実にする。抗体発現細胞の増幅されたプールを、96穴プレートでの限界希釈下で播種し、そして候補クローンを小規模研究において増殖および生産性の能力について評価した。
【0268】
実施例8:抗体の交差競合
エピトープを規定するための一般的な方法は、競合実験を介する。互いに競合する抗体は、標的上の同じ部位に結合することが考えられ得る。この実施例は、TSLPへの結合についての競合を決定する方法、および本明細書に記載された多くの抗体に適用した場合のこの方法の結果を記載する。
【0269】
ビニング(Binning)実験は、多くの方法で実行され得、使用される方法は、アッセイ結果に一定の効力を有し得る。これらの方法に共通していることは、代表的に、TSLPが、一方の参照抗体によって結合され、他方によってプローブ(probe)されることである。この参照抗体がこのプローブ抗体の結合を妨害する場合、これらの抗体は、同じビン(bin)にあると言われる。これらの抗体が使用される順序は重要である。抗体Aが参照抗体として使用され、それが抗体Bの結合をブロックするとき、その逆は常に真ではない:参照抗体として使用される抗体Bは、必ずしも抗体Aをブロックしない。そこで活動している多くの要因が存在する:抗体の結合は、標的内にコンフォメーション変化を引き起こし得、それは、第二の抗体の結合を妨害するか、重複しているが、完全には互いに閉塞しないエピトープは、第二の抗体が、結合を可能にするのに十分な、標的との高親和性の相互作用を依然として有することを可能にし得る。はるかにより高い親和性を有する抗体は、じゃまにならずにブロッキング抗体にぶつかる(bump)より高い能力を有し得る。一般的に、いずれかの順序で競合が観察される場合、抗体は、一緒のビンに入る(bin)と言われ、両方の抗体が互いにブロックし得る場合、そのエピトープはより完全に重複する可能性がある。
【0270】
この実施例のために、Jiaら(J.Immunological Methods、288(2004)91~98)によって記載される多重化ビニング法(Multiplexed Binning method)の改変を使用した。TSLP内のフューリン切断部位の存在がTSLPタンパク質調製物(preps)の不均質性をもたらし得るため、フューリン切断部位内のアルギニンをアラニンに変異させたTSLPを使用した。米国特許第7,288,633号を参照のこと。各ビーズコード(bead code)のストレプトアビジンコーティングされたLuminexビーズ(Luminex、#L100-L1XX-01、XXはビーズのコードを指定する)を、暗所、室温で1時間、100ulの6pg/ビーズ ビオチン化一価マウス抗ヒトIgG捕捉抗体(BD Pharmingen、#555785)中でインキュベートし、次に、PBSA(リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)+1%ウシ血清アルブミン(BSA))で3回洗浄した。各ビーズコードを、1時間、100ulの1:10希釈の抗TSLP抗体(Coating Antibody)で別々にインキュベートし、その後洗浄した。これらのビーズをプールし、その後96ウェルフィルタープレート(Millipore、#MSBVN1250)に分配した。100ulの2ug/mlの親TSLPを、ウェルの半分に加え、緩衝液を、他方の半分に加え、1時間インキュベートし、その後洗浄した。100ulの1:10希釈の抗TSLP抗体(検出Ab)を、TSLPを含む一つのウェルおよびTSLPを含まない一つのウェルに加え1時間インキュベートし、その後洗浄した。無関係なヒトIgG(Jackson、#009-000-003)および抗体の無い条件(ブランク)を、ネガティブコントロールとして試行(run)した。20ulのPE結合体化一価マウス抗ヒトIgG(BD Pharmingen、#555787)を、各ウェルに加え
、1時間インキュベートし、その後洗浄した。ビーズを、75ul PBSA中に再懸濁し、ビーズコードあたり、少なくとも100個の事象を、BioPlex装置(BioRad)上で収集した。
【0271】
TSLPなしでの抗体対のメジアン蛍光強度(MFI)を、TSLPを含む対応する反応のシグナルから差し引いた。同時に結合し、したがって異なるビンにあると考えられる抗体について、反応の値は、2つの基準を満たすはずであった:1)これらの値は、いずれか最も高い、それ自体で対形成したコーティング抗体、無関係な抗体またはブランクの二倍であるはずであり、2)これらの値は、無関係またはブランクのコーティングされたビーズとともに存在する検出抗体のシグナルよりも大きいはずであった。
【0272】
上記の抗体の間での競合の分析は、プローブとしての抗体の性能対ブロッカー(blocker)としてのそれらの性能の間の不一致が存在するという事実によって複雑になった。しかしながら、明確である抗体のビン(すなわち、各抗体が、参照として使用される場合に他方をブロックする)のみを考慮する場合に、8個のビンのうちの最小値が、以下の表4に示されるように見出された。
【0273】
【表4-2】
一部の抗体(A23およびA6など)が複数のビンにあることが見出されることが注記される。他のビニング関連性を決定することが可能であり、これらのビンからの抗体の包含または排除は、排除に偏っていた。
【0274】
このアッセイの結果は、どの他の抗体が、参照抗体との結合について交差競合するかを決定した。「結合について交差競合すること」によって、ブロッキング抗体として使用した場合に、参照抗体が、プローブとして使用した場合の他の抗体の結合をブロックすることができ、またその逆も成り立つことを意味する。言い換えると、参照抗体が他の抗体をブロックすることができたが、その他の抗体がその参照抗体をブロックすることができなかった場合、これらの抗体は交差競合するとは言わなかった。交差競合する抗体のリストは表5に提供される。
【0275】
【表5】
実施例9:エピトープマッピング
エピトープはしばしば線形配列であると考えられているが、抗体が、不連続なアミノ酸から構成される標的の表面を認識する場合がより多い。これらのアミノ酸は、線形配列からはかけ離れているが、標的の折りたたみを介して共に近接し得、このようなエピトープを認識する抗体は、コンフォメーション感受性抗体または単なるコンフォメーション性抗体(conformational antiboby)として知られている。この種類の結合は、変性ウェスタンブロットの使用によって規定され得、変性ウェスタンブロットにおいて、ゲル上で泳動する前に、標的を洗剤および還元剤の存在下で加熱し、標的を展開する(unfold)する。次に、このゲルからのブロットを、抗体によってプローブし得、この処理の後に標的を認識することができる抗体は、おそらく線形エピトープを認識する。線形配列を結合する抗体のエピトープはペプチドへの結合によって規定され得る(例えば、PepSpot)が、コンフォメーション性抗体は、高い親和性で標準的なペプチドを結合しないと予測される。
【0276】
還元、熱変性、精製された親TSLPタンパク質を、MES SDS泳動緩衝液中の10%ビストリスNupageゲルにロードした。タンパク質を、PBS+0.05% Tween(PBST)中5%脱脂乾燥ミルク(NFDM)でブロックしたPVDFメンブレンに移し、RTで1時間、TSLP抗体とともにインキュベートした。これらのブロットを、PBSTで3回洗浄し、次に、RTで1時間、ヤギ抗huIgG二次抗体とともにインキュベートした。これらのブロットを再度洗浄し、抗ヤギIgG:Alexa 680でインキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、これらのブロットを、バンドを可視化するために、LiCo上でスキャンした。
【0277】
抗体A2、A4、A5、A6、A7、A10、A21、A23およびA26を、この方法を使用して特徴づけた。抗体A2、A4およびA5は、ウェスタンブロットでの強力なバンドによって証明されるように線形エピトープに結合した。全ての他の抗体は、ウェスタンブロットでのバンドがないこと、または極めて弱いバンドに起因してコンフォメーション性であった。
【0278】
エピトープはさらに、構造的または機能的に規定され得る。機能的なエピトープは、一般的に、構造的なエピトープのサブセットであり、相互作用(例えば、水素結合、イオン性相互作用)の親和性に直接寄与する残基から構成される。構造的なエピトープは、抗体
によってカバーされる標的のパッチと考えられ得る。
【0279】
系統的変異導入法(scanning mutagenesis)を使用して、抗体によって結合されるエピトープをさらに規定する。しばしばアラニン系統的変異導入法を使用して、機能的なエピトープを規定し;アラニン(メチル側鎖)の置換は、本質的に野生型のアミノ酸側鎖の切断であり、極めてかすかなものである。タンパク質バックボーンとの相互作用(アミド連結への水素結合など)は、アラニンスキャニング(alanine
scanning)によって明らかにされない可能性がある。その代わり、アルギニンおよびグルタミン酸の系統的変異導入法を使用した。これらの2つの側鎖を、構造的なエピトープに生じ、抗体結合に対してより大きな影響を有する変異を可能にする、それらの大きな立体容積および電荷のために選択した。WT残基がアルギニンまたはリジンであった場合(これらの場合において、この残基を、電荷を切り替えるためにグルタミン酸に変異させた)以外は、一般的にアルギニンを使用した。少数の場合において、WTの残基を、アルギニンおよびグルタミン酸の両方に変異させた。
【0280】
TSLP全体にわたって分布した95個のアミノ酸を、アルギニンまたはグルタミン酸への変異のために選択した。疎水性残基は一般的にタンパク質の折りたたまれたコアの内部に見出されるので、誤って折りたたまれたタンパク質をもたらす変異の可能性を低減するために、選択は、荷電アミノ酸または極性アミノ酸に偏らせた。結晶構造が存在しないため、これらの残基を、本質的に無作為に選択し、かつこれらはTSLP全体にわたって分布した。実施例8に記載されるように、変異したフューリン切断部位を含むTSLPを使用した。
【0281】
BIOPLEXTM結合アッセイは、変異体TSLPへの抗TSLP抗体の結合を測定するために使用された。ビオチン化Penta-His Ab(Qiagen、ロット番号:130163339)を、100個のビーズコードのストレプトアビジンコーティングされたビーズ(Luminex、#L100-L1XX-01、XXはビーズコードを指定する)に結合させた。これらを、hisタグ付きタンパク質を捕捉するために使用した。100個のビーズコードは、85個全ての変異体、3個の親コントロール、無関係なタンパク質および12個のブランクの多重化を可能にした。変異体タンパク質への抗体の結合を、親への抗体の結合と比較した。
【0282】
上清中の100ulの1:5希釈のTSLP変異体および親、ならびに1ug/mL精製TSLP WT、1ug/mLの無関係なタンパク質またはタンパク質なしを、激しく振とうしながら、RTで1時間、コーティングされたビーズに結合させた。これらのビーズを洗浄し、96ウェルフィルタープレート(Millipore)に等分した。4倍希釈の100ulの抗TSLP抗体を、三連のウェルに添加し、RTで0.5時間インキュベートし、そして洗浄した。100ulの1:250希釈のPE結合体化抗ヒトIgG Fc(Jackson、#109-116-170)を各ウェルに添加し、RTで0.5時間インキュベートし、そして洗浄した。ビーズを、75uL中に再懸濁し、少なくとも3分間振とうし、BIOPLEXTM上で読み取った。
【0283】
残基をアルギニンまたはグルタミン酸へ変異させることが抗体の結合を破壊したとき、その残基を、構造的なエピトープの一部とみなした(「ヒット(hit)」)。このことは、親のTSLPへの抗体の結合と比較した、EC50のシフトまたは最大シグナルの低減として見られた。
【0284】
親および変異体への抗体の結合の曲線の統計分析を使用して、統計的に有意なEC50シフトを同定した。この分析は、アッセイおよびカーブフィッティングでの変動を考慮に入れた。
【0285】
変異体の結合曲線および親の結合曲線のEC50を比較した。統計的に有意な差を、さらなる考察のためにヒットとして同定した。「フィットしない(nofit)」のフラッグ(flag)または「フィット不良(badfit)」のフラッグを有する曲線は、この分析から排除した。
【0286】
変動の2つの源を、EC50推定値の比較において考慮した(カーブフィットからの変動およびビーズ-ビーズの変動)。親および変異体は、異なるビーズに連結されていたので、それらの差は、ビーズ-ビーズの差によって複雑にされた。カーブフィットの変動を、対数EC50推定値の標準誤差によって推定した。ビーズ-ビーズの変動を、親のコントロールを各々一つのビーズに連結させた実験を使用して実験的に決定した。親の結合曲線のEC50推定値におけるビーズの変動を使用して、ビーズ-ビーズの変動を推定した。
【0287】
2つのEC50(対数スケールで)の比較を、Studentのt検定を使用して実行した。t統計値(statistic)を、δ(EC50推定値間の絶対的な差)およびδの標準偏差の間の比として計算する。δの分散を、3つの成分(非線形回帰における変異体および親の曲線についてのEC50の分散推定値、ならびに別個の実験から推定したビーズ-ビーズの分散の二倍)の合計によって推定する。複数の、2つについてのビーズ-ビーズの分散は、変異体および親のビーズの両方が同じ分散を有するという前提に起因する。
【0288】
δの標準偏差の自由度を、Satterthwaite(1946)の近似を使用して計算した。個々のp値および信頼区間(95%および99%)を、各比較についてのStudentのt分布に基づいて取得した。複数の親コントロールの場合には、変異体に最も類似した親コントロールを選択する(すなわち、最大のp値を有するものを選択する)ことによって、控えめなアプローチを実行した。
【0289】
多数の試験を同時に実行する間、擬陽性を制御するために、多重度補正(multiplicity adjustment)が重要であった。2つの形態の多重度補正を、この分析のために実行した:family wise error(FWE)制御(control)およびfalse discovery rate(FDR)制御。FWEアプローチは、1つ以上のヒットが存在しない確率を制御し;FDRアプローチは、選択されたヒットの中での擬陽性の期待される割合を制御する。前者のアプローチはより控えめであり、後者のアプローチよりも強力ではない。この分析のために、両方のアプローチについて多くの方法が利用可能であり、Hochberg(1988)の方法をFWE分析に選択し、Benjamini-Hochberg(1995)のFDR法をFDR分析に選択した。両方のアプローチについて補正したp値を、各抗体またはアッセイ全体のいずれかについて計算した。
【0290】
そのEC50が親から有意に異なった(すなわち、0.01未満の、各抗体についてのFWE補正したp値、または親の50%未満の最大シグナルを有する)の変異を、構造的なエピトープの一部とみなした(表6)。EC50のシフト(shirt)または全ての抗体に対しての最大シグナルの低減のいずれかによって有意だった変異を、誤って折りたたまれたとみなした。これらの変異は、Y15R、T55R、T74RおよびA77Rであった。
【0291】
【表6】
複数の抗体の結合を破壊したいくつかの変異(特に、K73E、K21EおよびD22R)が存在した。変異誘発は、ビニングによって生成されたデータを検証し、エピトープの空間上でさらに絞り込むのに役立つ。TSLP内の変異は、一緒にビンに入る抗体のクラスターに影響を与えるようである。
【0292】
実施例10:毒物学
ヒトTSLPを依然として結合し、また他の種のTSLPと交差反応する抗体は、これらの種において毒物学試験を可能にする。この実施例において、カニクイザルTSLPと交差反応する抗体を、カニクイザルに投与した。その後、これらのサルを、毒性作用について観察した。
【0293】
カニクイザルでの単回用量の安全性薬理学試験は、抗体の単一の300mg/kgの静脈内用量が、心血管の影響も、呼吸の影響も、体温の影響も、神経行動学的な影響もなかったことを示した。
【0294】
カニクイザル(5/性別/群)に、30、100または300mg/kgの用量を、週に一回、4週間にわたって皮下に与えた。いかなる用量においても、何ら有害な毒物学も観察されなかった。上記の抗体は、臨床所見にも、体重にも、眼科学にも、ECGにも、臨床病理学にも、解剖病理学にも影響を与えなかった。
【0295】
別個の研究において、4頭の遠隔測定した(telemeterized)カニクイザルに、ビヒクル(1日目)および300mg/kgの抗体(3日目)の単一の静脈内用量を与えた。4日間の観察期間にわたって、心血管機能に対しても、呼吸機能に対しても、神経学的機能に対しても何ら影響も観察されなかった。
【0296】
上記の抗体をさらに試験して、FDAガイドライン「Points to Consi
der in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Prducts for Human Use」(FDA Center for Biologics Evaluation and
Research、1997年2月28日)に推奨されるように、正常なヒトおよびカニクイザルの組織との交差反応性を決定した。1ug/mLでも50ug/mLでも正常な組織の染色は観察されなかった。
【0297】
上記の結果は、この抗体がヒトにおいて毒性作用を生成しないと予測されることを示唆する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
【配列表】
2024161358000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願の明細書又は図面に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
【表1】
TSLP活性
TSLP活性は、PCT特許出願公報WO03/032898に記載されるように、ヒ
トTSLPRを発現するBAF細胞(BAF/HTR)の増殖を含む。BAF/HTRバ
イオアッセイは、ヒトTSLPレセプターでトランスフェクトされたマウスプロBリンパ
球(pro B lymphocyte)細胞株を利用する。BAF/HTR細胞は、成
長に関してhuTSLPに依存し、そして試験サンプルに添加された活性なhuTSLP
に応答して増殖する。インキュベーション期間後、細胞増殖は、アラマーブルー色素Iま
たはトリチウムチミジンを添加することによって測定される。増殖はまた、CYQUAN
T細胞増殖アッセイキット(Invitrogen)のような市販のキットを使用して測
定され得る。
【外国語明細書】