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特開2024-161362活性剤の脂質ナノ粒子送達のための脂質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161362
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】活性剤の脂質ナノ粒子送達のための脂質
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/12 20060101AFI20241112BHJP
   C07D 207/06 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241112BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241112BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241112BHJP
【FI】
C07C237/12 CSP
C07D207/06
A61K45/00
A61K9/16
A61K31/7105
A61K47/18
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/10
A61K48/00
C12N15/88 Z
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113069
(22)【出願日】2024-07-16
(62)【分割の表示】P 2021540131の分割
【原出願日】2020-01-10
(31)【優先権主張番号】62/791,566
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/890,469
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516386834
【氏名又は名称】アクイタス セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Acuitas Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,シンヤオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中性脂質、コレステロールおよびポリマー結合脂質などの他の脂質成分と組み合わせて使用して、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成することができ、インビボ及びインビトロの両方において治療用核酸の細胞内送達を促進することができる、新規カチオン性脂質を提供する。
【解決手段】下記の構造で示される化合物である。

[Rは、置換/非置換のC-C24アルキル等;R及びRは、置換/非置換のC-C36アルキル;R及びRは、置換/非置換のC-Cアルキル等;L、L及びLは、置換/非置換のC-C18アルキレン;Gは、直接結合、-(CHO(C=O)-等;G及びGは、-(C=O)O-または-O(C=O)-。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造(I):
【化1】
(I)
[式中、
は、任意に置換されていてもよいC-C24アルキル、または任意に置換されていてもよいC-C24アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-C36アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-Cアルキルであるか、または、RおよびRは、それらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールを形成し;
、L、およびLは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-C18アルキレンであり;
は、直接結合、-(CHO(C=O)-、-(CH(C=O)O-、または、-(C=O)-であり;
およびGは、それぞれ独立して、-(C=O)O-、または-O(C=O)-であり;および、
nは、0より大きい整数である。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体。
【請求項2】
下記の構造(IA):
【化2】
(IA)
で示される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記の構造(IB):
【化3】
(IB)
で示される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、任意に置換されていてもよいC-C18アルキル、またはC14-C18アルケニルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
が、Cアルキル、Cアルキル、C10アルキル、C12アルキル、C14アルキル、またはC16アルキルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が、C16アルケニルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が分岐していない、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
が分岐している、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
が非置換である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
が、直接結合、-(CHO(C=O)-、または、-(CH(C=O)O-である、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
が直接結合である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が-(CH(C=O)O-であり、nが1より大きい、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
nが、5、6、7、8、9、または10である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
nが7である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
nが8である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
が、C-Cアルキレンである、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
が、Cアルキレン、Cアルキレン、またはCアルキレンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が分岐していない、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
が非置換である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
がC-C24アルキルである、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
がC-C24アルキルである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
およびRが、両方ともC-C24アルキルである、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
およびRが、それぞれ独立して、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキル、C16アルキル、C18アルキル、またはC20アルキルである、請求項1~22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
が分岐している、請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
が分岐している、請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
およびRが、それぞれ独立して、下記の構造:
【化4】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、C-C12アルキルである。]
のうちの1つで示される、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
およびRが、それぞれ独立して、下記の構造:
【化5】
のうちの1つで示される、請求項26に記載の化合物:
【請求項28】
およびLが、それぞれ独立して、C-C10アルキレンである、請求項1~27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
およびLが、両方ともCアルキレンである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
およびLが、両方ともCアルキレンである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
およびLが、両方ともCアルキレンである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
およびLが、両方ともCアルキレンである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
が分岐していない、請求項1~32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
が分岐していない、請求項1~33のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
が非置換である、請求項1~34のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
が非置換である、請求項1~35のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項37】
およびRが、それぞれ独立して、C-Cアルキルである、請求項1~36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項38】
およびRが、両方ともメチルである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
およびRが、両方ともエチルである、請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
がメチルであり、Rがn-ブチルである、請求項37に記載の化合物。
【請求項41】
およびRが、それらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリルを形成している、請求項1~36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
前記ヘテロシクリルが、5員のヘテロシクリルである、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
前記ヘテロシクリルが、下記の構造:
【化6】
で示される、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
表1に記載の化合物から選択される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物、および治療剤を含む、組成物。
【請求項46】
中性脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、およびSMから選択される1つ以上の中性脂質を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
中性脂質が、DSPCである、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
化合物と中性脂質とのモル比が、約2:1~約8:1の範囲である、請求項46~48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
ステロイドがコレステロールである、請求項46~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
化合物とコレステロールとのモル比が、5:1~1:1の範囲である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
ポリマー結合脂質が、ペグ化脂質である、請求項46~51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
化合物とペグ化脂質とのモル比が、約100:1~約20:1の範囲である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
ペグ化脂質が、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-cer、またはPEGジアルキルオキシプロピルカルバメートである、請求項52または53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
ペグ化脂質が、下記の構造(II):
【化7】
(II)
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和のアルキル鎖であり、ここで該アルキル鎖は、任意に、1つ以上のエステル結合が割り込まれていてもよく;および
wの平均値は、30~60の範囲である。]
で示されるペグ化脂質、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体である、請求項52または53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
およびRが、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
wの平均値が、約49である、請求項55または56のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
治療剤が、核酸を含む、請求項45~57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
核酸が、アンチセンスRNAおよびメッセンジャーRNAから選択される、請求項58記載の組成物。
【請求項60】
該組成物が、脂質ナノ粒子を含む、請求項45~59のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
治療剤を、それを必要とする患者に投与する方法であって、請求項45~60のいずれか1項に記載の組成物を調製または提供すること、および組成物を患者に投与することを含む、方法。
【請求項62】
請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項63】
治療剤をさらに含む、請求項62に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項64】
治療剤が核酸を含む、請求項63に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項65】
核酸が、アンチセンスRNAおよびメッセンジャーRNAから選択される、請求項64記載の脂質ナノ粒子。
【請求項66】
中性脂質、ステロイドおよびポリマー結合脂質から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項62~65のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項67】
中性脂質が、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、およびSMから選択される、請求項66に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項68】
中性脂質が、DSPCである、請求項67に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項69】
化合物と中性脂質とのモル比が、約2:1~約8:1の範囲である、請求項66~68のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項70】
ステロイドが、コレステロールである、請求項66~69のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項71】
化合物とコレステロールのモル比が、5:1~1:1の範囲である、請求項70に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項72】
ポリマー結合脂質が、ペグ化脂質である、請求項66~71のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項73】
化合物とペグ化脂質とのモル比が、約100:1~約20:1の範囲である、請求項72に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項74】
ペグ化脂質が、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-cer、またはPEGジアルキルオキシプロピルカルバメートである、請求項72または73に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項75】
ペグ化脂質が、下記の構造(II):
【化8】
(II)
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和のアルキル鎖であり、ここで該アルキル鎖は、任意に、1つ以上のエステル結合が割り込まれていてもよく;および
wの平均値は、30~60の範囲である。]
で示されるペグ化脂質、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体である、請求項72または73に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項76】
およびRが、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
wの平均値が、約49である、請求項75または76のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、中性脂質、コレステロールおよびポリマー結合脂質などの他の脂質成分と組み合わせて使用して、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成することができ、インビボおよびインビトロの両方において、治療用核酸(例えば、オリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA)の細胞内送達を促進することができる、新規カチオン性脂質に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的系において所望の応答に影響を与える核酸の送達に関連する多くの試みがなされている。核酸ベースの治療法には大きな可能性があるが、この可能性を実現するために、細胞または生物内の適切な部位に核酸をより効果的に送達する必要がある。治療用核酸としては、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、プラスミド、免疫刺激性核酸、アンタゴミル(antagomir)、アンチミル(antimir)、ミミック(mimic)、スーパーミル(supermir)、およびアプタマー(aptamer)、が挙げられる。mRNAまたはプラスミドなどのいくつかの核酸は、例えば、タンパク質または酵素の欠乏に関連する疾患の治療に有用であるように、特定の細胞産生物の発現をもたらすために用いることができる。系に固有であるかどうかにかかわらず、構成物を合成し、選択的なタンパク質配列を生成することができるため、翻訳可能なヌクレオチド送達の治療の用途は非常に広い。核酸の発現産生物は、既存のタンパク質のレベルを増強したり、タンパク質の欠落したものまたは機能していないものを置き換えたり、あるいは、細胞または生物に新しいタンパク質および関連する機能を導入したりすることができる。
【0003】
miRNA阻害剤などのいくつかの核酸は、例えば、タンパク質または酵素の欠乏に関連する疾患の治療に有用であるように、miRNAによって調節される特定の細胞産生物の発現をもたらすために用いることができる。構成物を合成し、mRNA産生物の発現を調節する1つまたは複数のmiRNAを阻害することができるため、miRNA阻害の治療の用途は非常に広い。内因性miRNAの阻害は、その下流の標的内因性タンパク質の発現を増強し、特定のmiRNAまたはmiRNAのグループに関連する疾患を治療する手段として、細胞または生物の適切な機能を回復させることができる。
【0004】
他の核酸は、特定のmRNAの細胞内レベルをダウンレギュレートし、その結果、RNA干渉(RNAi)またはアンチセンスRNAの相補的結合などのプロセスを通じて、対応するタンパク質の合成をダウンレギュレートすることができる。オリゴヌクレオチド構成物は、標的mRNAに対して指向されたヌクレオチド配列で合成され得るため、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNAiの治療用途も非常に広い。標的には、正常細胞のmRNA、癌などの疾患状態に関連するmRNA、およびウイルスなどの感染体のmRNAが含まれ得る。これまで、アンチセンスオリゴヌクレオチド構成物は、インビトロおよびインビボの両方のモデルにおいて、類似のmRNAの分解を介して標的タンパク質を特異的にダウンレギュレートする能力が示されている。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチド構成物は、現在、臨床研究において評価されている。
【0005】
しかしながら、現在、治療の適用において、オリゴヌクレオチドの使用には、2つの問題が直面している。第1に、遊離RNAは、血漿中のヌクレアーゼ消化を受けやすい。第2に、遊離RNAは、関連する翻訳機構が存在する細胞内部分にアクセスする能力が限られている。カチオン性脂質と、中性脂質、コレステロール、PEG、PEG化脂質、およびオリゴヌクレオチドなどの他の脂質成分とから形成された脂質ナノ粒子は、血漿中のRNAの分解を阻害し、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを促進するために用いられている。
【0006】
オリゴヌクレオチドの送達のために、カチオン性脂質および脂質ナノ粒子の改良が必要となっている。好ましくは、これらの脂質ナノ粒子は、最適な薬物脂質比を提供し、血清中で分解およびクリアランスから核酸を保護し、全身的または局所的送達に適しており、そして、核酸の細胞内送達を提供する。さらに、これらの脂質-核酸粒子は、耐性が高く、適切な治療指標を提供し、それにより、核酸の有効量での患者の治療が、患者に対する許容できない毒性および/またはリスクに関連することがなくなる。本開示は、これらおよび関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
簡単に言うと、本開示は、その立体異性体、薬学的に許容される塩または互変異性体を含む、脂質化合物を提供し、これらは、単独で、または、中性脂質、荷電脂質、ステロイド(例えば、すべてのステロールが含まれる)、および/またはそれらの類似体、および/または、治療剤の送達のための脂質ナノ粒子を形成するためのポリマー結合脂質などの、他の脂質と組み合わせて用いられる。いくつかの例において、脂質ナノ粒子は、アンチセンスRNAおよび/またはメッセンジャーRNAなどの核酸を送達するために用いられる。また、感染体および/またはタンパク質の不足によって引き起こされるものなど、様々な疾患または病気の治療のために脂質ナノ粒子を使用する方法が提供される。
【0008】
一実施形態において、下記の構造(I):
【化1】
(I)
[式中、R、R、R、R、R、L、L、L、G、G、およびGは、本明細書で定義された通りである。]
で示される化合物、または、その薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体、が提供される。
【0009】
また、前記構造(I)の化合物の1つ以上、および治療剤を含む、医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される1つまたは複数の成分をさらに含む。そのような組成物は、治療剤の送達のための脂質ナノ粒子の形成に有用である。
【0010】
他の実施形態において、本開示は、それを必要とする患者に、治療剤を投与する方法であって、構造(I)の化合物および治療剤を含む脂質ナノ粒子の組成物を調製または提供すること、および該組成物を患者に送達または投与することを含む方法、を提供する。
【0011】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照することにより、明確になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、本開示の様々な実施形態の全体的な理解を促すために、特定の具体的な詳細が示されている。しかしながら、当業者は、これらの詳細なしで開示が実施され得ることを理解するものである。
【0013】
本開示は、部分的に、哺乳動物の細胞への核酸などの活性剤または治療剤のインビボ送達のための脂質ナノ粒子において使用される場合に利点を提供する、新規なカチオン性(アミノ)脂質の発見に基づく。特に、本開示の実施形態は、インビボにおいて核酸の活性の増強および組成物の耐性の向上を提供する本明細書に記載の新規カチオン性脂質の1つまたは複数を含む、核酸-脂質ナノ粒子組成物を提供し、その結果、以前の核酸-脂質ナノ粒子組成物と比較して治療指標の有意な増加が得られる。他の実施形態において、開示された脂質およびそれを含む脂質ナノ粒子は、核酸などの活性剤の送達に使用される場合、安全性および/または耐性が向上する。
【0014】
特定の実施形態において、本開示は、mRNAおよび/または他のオリゴヌクレオチドのインビトロおよびインビボ送達のための改良された組成物の製剤化を可能にする、新規なカチオン性脂質を提供する。いくつかの実施形態において、これらの改良された脂質ナノ粒子組成物は、mRNAによってコードされるタンパク質の発現に有用である。他の実施形態において、これらの改良された脂質ナノ粒子組成物は、1つの特定のmiRNA、または1つの標的mRNAまたはいくつかのmRNAを調節するmiRNAの群を標的とするmiRNA阻害剤を送達することによって、内因性タンパク質発現をアップレギュレートするのに有用である。他の実施形態において、これらの改良された脂質ナノ粒子組成物は、標的遺伝子のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベルをダウンレギュレートする(例えば、サイレンシングする)のに有用である。他のいくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、導入遺伝子の発現のためのmRNAおよびプラスミドの送達にも有用である。さらに他の実施形態において、脂質ナノ粒子組成物は、タンパク質の発現から生じる薬理学的効果、例えば、適切なエリスロポエチンmRNAの送達による赤血球の産生向上、または、適切な抗原または抗体をコードするmRNAの送達による感染に対する保護、を誘導するのに有用である。
【0015】
本開示の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物は、インビトロおよびインビボの両方で、核酸などのカプセル化または結びついた(例えば、複合化)治療剤の細胞への送達を含む、様々な目的に使用することができる。したがって、本開示の実施形態は、適切な治療剤をカプセル化または結びついた脂質ナノ粒子に対象を接触させることによって、それを必要とする対象の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の新規なカチオン性脂質の1つ以上を含む。
【0016】
本明細書に記載されるように、本開示の脂質ナノ粒子の実施形態は、例えば、mRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミドDNA、マイクロRNA(miRNA)、miRNA阻害剤(アンタゴミル/アンチミル)、メッセンジャーRNA干渉相補的RNA(micRNA)、DNA、多価(multivalent)RNA、ダイサー基質RNA、相補的DNA(cDNA)などを含む、核酸の送達に特に有用である。したがって、本開示の特定の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物は、細胞を、本明細書に記載の1つ以上の新規カチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子と接触させることによって、インビトロおよびインビボの両方において、所望のタンパク質の発現を誘導するために使用することができ、ここで、脂質ナノ粒子は、所望のタンパク質(例えば、所望のタンパク質をコードするメッセンジャーRNAまたはプラスミド)を産生するために、またはmRNAの発現を停止させるプロセスを阻害する(例えば、miRNA阻害剤)ために発現される核酸を、カプセル化するか、または核酸と結びつく。あるいは、本開示の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物を使用して、本明細書に記載の1つ以上の新規カチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子に細胞を接触させることにより、インビトロおよびインビボの両方で標的遺伝子およびタンパク質の発現を減少させることができ、ここで、脂質ナノ粒子は、標的遺伝子の発現を低下させる核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは低分子干渉RNA(siRNA))をカプセル化するか、またはそれと結びつく。本開示の実施形態の脂質ナノ粒子および組成物はまた、異なる核酸(例えば、mRNAおよびプラスミドDNA)の別々での、または組み合わせての同時送達のために使用することができ、例えば、異なる核酸(例えば、適切な遺伝子修飾酵素をコードするmRNAと、宿主ゲノムに組み込むためのDNAセグメント)の共局在化が求められる効果を提供するのに有用である。
【0017】
本開示の実施形態で使用するための核酸は、任意の利用可能な技術に従って調製することができる。mRNAの場合、調製の主要な方法は、限定されるものではないが、酵素合成(インビトロ転写とも呼ばれる)であり、これは、現在、長い配列の特異的mRNAを生成するための最も効率的な方法である。インビトロ転写により、目的の遺伝子をコードする下流配列に連結した上流バクテリオファージプロモーター配列(例えば、T7、T3およびSP6コリファージからのものを含むがこれに限定されない)により構成される操作したDNAテンプレートからのRNA分子のテンプレート指向合成のプロセスが説明される。テンプレートDNAは、プラスミドDNAおよびポリメラーゼ連鎖反応の増幅を含むがこれに限定されない、当技術分野でよく知られた適切な技術を用いて、多くの供給源からインビトロ転写のために調製することができる(Linpinsel, J.L and Conn, G.L., General protocols for preparation of plasmid DNA template and Bowman, J.C., Azizi, B., Lenz, T.K., Ray, P., and Williams, L.D. in RNA in vitro transcription and RNA purification by denaturing PAGE in Recombinant and in vitro RNA syntheses Methods v. 941 Conn G.L. (ed), New York, N.Y. Humana Press, 2012、参照)。
【0018】
RNAの転写は、対応するRNAポリメラーゼと、アデノシン、グアノシン、ウリジン、およびシチジンのリボヌクレオシド三リン酸(rNTP)の存在下、直線化されたDNAテンプレートを使用して、得られるmRNA転写物の潜在的な分解を最小限に抑えながらポリメラーゼ活性をサポートする条件下において、インビトロで行われる。インビトロ転写は、RiboMax Large Scale RNA Production System(Promega)、MegaScript Transcription kits(Life Technologies)を含むがこれらに限定されない、さまざまな市販のキット、および、RNAポリメラーゼおよびrNTPなどの市販の試薬を使用して、実施することができる。mRNAのインビトロ転写のための方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、Losick, R., 1972, In vitro transcription, Ann Rev Biochem v.41 409-46; Kamakaka, R. T. and Kraus, W. L. 2001. In Vitro Transcription. Current Protocols in Cell Biology. 2:11.6:11.6.1-11.6.17; Beckert, B. And Masquida, B.,(2010) Synthesis of RNA by In Vitro Transcription in RNA in Methods in Molecular Biology v. 703 (Neilson, H. Ed), New York, N.Y. Humana Press, 2010; Brunelle, J.L. and Green, R., 2013, Chapter Five - In vitro transcription from plasmid or PCR-amplified DNA, Methods in Enzymology v. 530, 101-114、参照;これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)。
【0019】
そして、所望のインビトロ転写されたmRNAは、転写または関連する反応の望ましくない成分(組み込まれないrNTP、タンパク質酵素、塩、短いRNAオリゴなどを含む)から精製される。mRNA転写物を単離するための技術は、当技術分野でよく知られている。よく知られている方法としては、フェノール/クロロホルム抽出、または一価カチオンまたは塩化リチウムの存在下でのいずれかのアルコール(エタノール、イソプロパノール)による沈殿が挙げられる。使用可能な精製方法のさらなる例としては、これに限定されるものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー(Lukavsky, P.J. and Puglisi, J.D., 2004, Large-scale preparation and purification of polyacrylamide-free RNA oligonucleotides, RNA v.10, 889-893)、シリカベースのアフィニティークロマトグラフィーおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動(Bowman, J.C., Azizi, B., Lenz, T.K., Ray, P., and Williams, L.D. in RNA in vitro transcription and RNA purification by denaturing PAGE in Recombinant and in vitro RNA syntheses Methods v. 941 Conn G.L. (ed), New York, N.Y. Humana Press, 2012)、が挙げられる。精製は、SV Total Isolation System(Promega)、およびIn Vitro Transcription Cleanup and Concentration Kit(Norgen Biotek)を含むがこれに限定されない、さまざまな市販のキットを用いて実施することができる。
【0020】
さらに、逆転写は大量のmRNAを生成することができるが、生成物には、完全な長さのmRNA調製物から除去する必要があり得る、望ましくないポリメラーゼ活性に関連する多数の異常なRNA不純物が含まれる可能性がある。これらには、異常な転写開始から生じる短いRNA、ならびに、RNA依存性RNAポリメラーゼ活性によって生成される二本鎖RNA(dsRNA)、RNAテンプレートからのRNAプライム転写、および自己相補的な3’伸長、が含まれる。dsRNA構造を有するこれらの汚染物質は、特定の核酸構造を認識して強力な免疫応答を誘導する働きをする真核細胞のさまざまな先天性免疫センサーと相互作用をすることによって、望ましくない免疫刺激活性をもたらす可能性があることが実証されている。また、先天性細胞免疫応答中にタンパク質合成が低下するため、mRNAの翻訳が劇的に低下し得る。したがって、これらのdsRNA汚染物質を除去するための更なる技術が開発され、当技術分野で知られており、これには、スケーラブルHPLC精製(例えば、Kariko, K., Muramatsu, H., Ludwig, J. And Weissman, D., 2011, Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves translation of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA, Nucl Acid Res, v. 39 e142; Weissman, D., Pardi, N., Muramatsu, H., and Kariko, K., HPLC Purification of in vitro transcribed long RNA in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology v.969 (Rabinovich, P.H. Ed), 2013、参照)が挙げられるが、これに限定されるものではない。HPLCで精製されたmRNAは、特に初代細胞およびインビボにおいて、非常に高いレベルで翻訳されることが報告されている。
【0021】
インビトロで転写されたmRNAの特定の特性を変更し、その有用性を向上するために使用される、かなりの種類の修飾が当技術分野で説明されている。これらには、mRNAの5’および3’末端への修飾が含まれるが、これらに限定されるものではない。内因性の真核生物のmRNAは、通常、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)の結合を仲介するのに重要な役割を果たす、成熟分子の5’末端にキャップ構造を含み、これは、細胞内のmRNA安定性およびmRNA翻訳の効率の向上に関与する。したがって、最高レベルのタンパク質発現は、キャップされたmRNA転写物で達成される。5’キャップには、5’-のほとんどのヌクレオチドとグアニンヌクレオチドとの間の5’-5’-三リン酸リンケージが含まれる。共役グアニンヌクレオチドはN7の位置でメチル化されている。追加の修飾には、2’-ヒドロキシル基の最後と最後から2番目のほとんどの5’-ヌクレオチドのメチル化が含まれる。
【0022】
複数の異なるキャップ構造は、インビトロで転写された合成mRNAの5’キャップを生成するために使用され得る。合成mRNAの5’キャッピングは、化学的キャップ類似体と共転写的に行うことができる(すなわち、インビトロ転写中のキャッピング)。例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップには、5’-5’-三リン酸グアニン-グアニンリンケージが含まれ、1つのグアニンは、N7メチル基および3’-O-メチル基を含む。しかしながら、この同時転写プロセスの間、転写物の最大20%がキャップされないままであり、合成キャップアナログは実際の細胞mRNAの5’キャップ構造と同一ではなく、翻訳性と細胞安定性が低下する可能性がある。あるいは、合成mRNA分子はまた、転写後に酵素的にキャップされ得る。これらは、より実際に近い5’-キャップ構造を生成することができ、それは、キャップ結合タンパク質の結合を強化し、半減期を延長し、5’エンドヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、および/または5’デキャッピングを減少させる、内因性5’キャップを、構造的または機能的により近く模倣する。多数の合成5’キャップアナログが開発され、mRNAの安定性および翻訳性を増強することが当技術分野で知られている(例えば、Grudzien-Nogalska, E., Kowalska, J., Su, W., Kuhn, A.N., Slepenkov, S.V., Darynkiewicz, E., Sahin, U., Jemielity, J., and Rhoads, R.E., Synthetic mRNAs with superior translation and stability properties in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology v.969 (Rabinovich, P.H. Ed), 2013、参照)
【0023】
3’末端では、通常、RNAプロセッシング中にアデニンヌクレオチドの長鎖(ポリAテール)がmRNA分子に付加される。転写直後に、転写物の3’末端が切断されて3’ヒドロキシルが遊離し、ポリAポリメラーゼが、ポリアデニル化と呼ばれるプロセスでRNAにアデニンヌクレオチド鎖を付加する。ポリAテールは、mRNAの翻訳効率と安定性の両方を高めることが広く示されている(Bernstein, P. and Ross, J., 1989, Poly (A), poly (A) binding protein and the regulation of mRNA stability, Trends Bio Sci v. 14 373-377; Guhaniyogi, J. And Brewer, G., 2001, Regulation of mRNA stability in mammalian cells, Gene, v. 265, 11-23; Dreyfus, M. And Regnier, P., 2002, The poly (A) tail of mRNAs: Bodyguard in eukaryotes, scavenger in bacteria, Cell, v.111, 611-613、参照)。
【0024】
インビトロで転写されたmRNAのポリ(A)テーリングは、これに限定されるものではないが、ポリ(T)トラクトのDNAテンプレートへのクローニング、またはポリ(A)ポリメラーゼを用いた転写後付加など、さまざまな方法を用いて達成され得る。最初のケースでは、ポリ(T)トラクトのサイズに応じて、規定の長さのポリ(A)テールを有するmRNAのインビトロ転写が可能であるが、テンプレートの追加操作が必要である。後者のケースでは、RNAの3’末端へのアデニン残基の取り込みを触媒するポリ(A)ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写されたmRNAにポリ(A)テールを酵素的に付加するものであり、DNAテンプレートの追加操作が不要であるが、不均一な長さのポリ(A)テールを有するmRNAが得られる。5’-キャッピングおよび3’-ポリ(A)テーリングは、さまざまな市販のキット、例えば、これに限定されるものではないが、Poly(A)Polymerase Tailing kit(EpiCenter)、mMESSAGE mMACHINE T7 Ultra kit、およびPoly (A)Tailing kit(Life Technologies)、および、市販の試薬、各種ARCAキャップ、ポリ(A)ポリメラーゼなど、を用いて実施することができる。
【0025】
5’キャップおよび3’ポリアデニル化に加えて、インビトロ転写の他の修飾が、翻訳の効率と安定性に関する利点を提供することが報告されている。病原性のDNAおよびRNAが真核生物内の様々なセンサーによって認識され、強力な自然免疫応答を誘発することができることが、当技術分野でよく知られている。病原性と自己のDNAおよびRNAを区別する能力は、天然源からのほとんどの核酸が修飾ヌクレオシドを含むため、少なくとも部分的には、構造およびヌクレオシド修飾に基づいていることが示されている。対照的に、インビトロで合成されたRNAはこれらの修飾を欠如しているため、免疫刺激性になり、上記のように効果的なmRNA翻訳を阻害する可能性がある。インビトロ転写されたmRNAへの修飾ヌクレオシドの導入は、RNAセンサーの認識と活性化を防止するために使用でき、それにより、この望ましくない免疫刺激活性を軽減し、翻訳能力を向上させ得る(例えば、Kariko, K. And Weissman, D. 2007, Naturally occurring nucleoside modifications suppress the immunostimulatory activity of RNA: implication for therapeutic RNA development, Curr Opin Drug Discov Devel, v.10 523-532; Pardi, N., Muramatsu, H., Weissman, D., Kariko, K., In vitro transcription of long RNA containing modified nucleosides in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology v.969 (Rabinovich, P.H. Ed), 2013; Kariko, K., Muramatsu, H., Welsh, F.A., Ludwig, J., Kato, H., Akira, S., Weissman, D., 2008, Incorporation of Pseudouridine Into mRNA Yields Superior Nonimmunogenic Vector With Increased Translational Capacity and Biological Stability, Mol Ther v.16, 1833-1840、参照)。修飾RNAの合成に使用される修飾ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、当技術分野で知られている一般的な方法および手法を用いて、調製し、監視し、利用することができる。単独で、または他の修飾ヌクレオシドとある程度組み合わせて、インビトロで転写されたmRNAに組み込むことができる多種多様なヌクレオシド修飾が利用可能である(例えば、US2012/0251618、参照)。ヌクレオシド修飾mRNAのインビトロ合成では、翻訳能力の強化とともに免疫センサーを活性化する能力が低下していることが報告されている。
【0026】
翻訳性と安定性の観点から利益をもたらすように修飾され得るmRNAの他の成分として、5’および3’非翻訳領域(UTR)が挙げられる。UTR(好ましい5’および3’UTRは細胞またはウイルスRNAから得ることができる)の最適化は、両方または独立して、mRNAの安定性とインビトロで転写されたmRNAの翻訳効率を高めることが示されている(例えば、 Pardi, N., Muramatsu, H., Weissman, D., Kariko, K., In vitro transcription of long RNA containing modified nucleosides in Synthetic Messenger RNA and Cell Metabolism Modulation in Methods in Molecular Biology v.969 (Rabinovich, P.H. Ed), 2013、参照)。
【0027】
mRNAに加えて、他の核酸ペイロードを本開示のために用いることができる。オリゴヌクレオチドの場合、調製方法として、これに限定されるものではないが、化学的合成、および、より長い前駆体の酵素的および化学的な切断、上記のインビトロ転写などが挙げられる。DNAおよびRNAヌクレオチドの合成方法は、当技術分野において広く使用され、よく知られている(例えば、Gait, M. J. (ed.) Oligonucleotide synthesis: a practical approach, Oxford [Oxfordshire], Washington, D.C.: IRL Press, 1984; and Herdewijn, P. (ed.) Oligonucleotide synthesis: methods and applications, Methods in Molecular Biology, v. 288 (Clifton, N.J.) Totowa, N.J.: Humana Press, 2005; これらはともに参照により本明細書に組み込まれる)。
【0028】
プラスミドDNAでは、本開示の実施形態で用いる製剤は、これに限定されるものではないが、一般に、目的のプラスミドを含む細菌の液体培養におけるインビトロでのプラスミドDNAの増大および単離を利用する。特定の抗生物質(ペニシリン、カナマイシンなど)に対する耐性をコードする目的のプラスミド中の遺伝子の存在により、目的のプラスミドを含む細菌が、抗生物質を含む培養物で選択的に増殖することが可能である。プラスミドDNAを単離する方法は、当技術分野で広く使用され、よく知られている(例えば、Heilig, J., Elbing, K. L. and Brent, R., (2001), Large-Scale Preparation of Plasmid DNA, Current Protocols in Molecular Biology, 41:II:1.7:1.7.1-1.7.16; Rozkov, A., Larsson, B., Gillstroem, S., Bjoernestedt, R. and Schmidt, S. R., (2008), Large-scale production of endotoxin-free plasmids for transient expression in mammalian cell culture, Biotechnol. Bioeng., 99: 557-566; および US 6,197,553 B1、参照)。プラスミドの単離は、さまざまな市販のキット、例えば、これに限定されるものではないが、Plasmid Plus(Qiagen)、GenJET plasmid MaxiPrep(Thermo)、Pure Yield MaxiPrep(Promega)のキット、および、市販の試薬を用いて実施することができる。
【0029】
本開示のカチオン性脂質、およびそれを含む脂質ナノ粒子および組成物の様々な例示的な実施形態、ならびに、遺伝子およびタンパク質の発現を調節するための核酸などの活性物(例えば、治療剤)を送達するためのそれらの使用について、以下においてさらに詳細に説明する。
【0030】
本明細書において、以下の用語は、特に断りのない限り、そこで述べた意味を有する。
【0031】
文脈上特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、「含む」という文言およびその変形、例えば、「含み」および「含んで」は、オープンで包括的な意味で、すなわち「含むがこれに限定されない」と解釈されるものである。
【0032】
本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」の参照は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々なところでの「一実施形態において」または「実施形態において」という表現の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を意味するとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0033】
特に断りのない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。明細書および特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別のことを示さない限り、複数形の意味を含む。
【0034】
「所望のタンパク質の発現を誘導する」との表現は、所望のタンパク質の発現を増加させる核酸の能力を意味する。タンパク質発現の程度を調べるために、試験サンプル(例えば、所望のタンパク質を発現する培養中の細胞のサンプル)、または試験哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物などの哺乳動物)のモデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)または非ヒト霊長類(例えば、サル)のモデルを、核酸(例えば、本開示の脂質と組み合わせた核酸)と接触させる。試験サンプルまたは試験動物における所望のタンパク質の発現を、核酸と接触または投与されていない、対照のサンプル(例えば、所望のタンパク質を発現する培養中の細胞のサンプル)、または対照の哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物などの哺乳動物)のモデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)または非ヒト霊長類(例えば、サル)のモデル、における所望のタンパク質の発現と比較する。所望のタンパク質が対照サンプルまたは対照哺乳動物に存在する場合、対照サンプルまたは対照哺乳動物における所望のタンパク質の発現に、1.0の値を割り当てることができる。特定の実施形態において、所望のタンパク質の発現を誘導することは、試験サンプルまたは試験哺乳動物における所望のタンパク質の発現の、対照サンプルまたは対照哺乳動物における所望のタンパク質の発現のレベルに対する比が、1より大きい場合に、例えば、約1.1、1.5、2.0、5.0、または10.0の場合に、達成される。所望のタンパク質が対照サンプルまたは対照哺乳動物に存在しない場合、所望のタンパク質の発現を誘導することは、試験サンプルまたは試験哺乳動物において測定可能なレベルの所望のタンパク質が検出されたときに達成される。当業者は、サンプル中のタンパク質の発現レベルを決定するための適切なアッセイ、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、in・situハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、および表現型アッセイ、または、適切な条件下で蛍光または発光を生成できるレポータータンパク質に基づくアッセイ、を理解するものである。
【0035】
「標的遺伝子の発現を阻害する」との表現は、標的遺伝子の発現を、サイレンシング、低減、または阻害する核酸の能力を意味する。遺伝子サイレンシングの程度を調べるために、試験サンプル(例えば、標的遺伝子を発現する培養中の細胞のサンプル)、または試験哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物などの哺乳動物)のモデル、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)または非ヒト霊長類(例えば、サル)のモデルを、標的遺伝子の発現をサイレンシング、低減または阻害する核酸と接触させる。試験サンプルまたは試験動物における標的遺伝子の発現を、核酸と接触または投与されていない、対照のサンプル(例えば、標的遺伝子を発現する培養中の細胞のサンプル)、または対照の哺乳動物(例えば、ヒトまたは動物などの哺乳動物)、例えば、げっ歯類(例えば、マウス)または非ヒト霊長類(例えば、サル)のモデルにおける標的遺伝子の発現と比較する。対照サンプルまたは対照哺乳動物における標的遺伝子の発現は、100%の値を割り当てることができる。特定の実施形態において、標的遺伝子の発現のサイレンシング、阻害、または低減は、対照サンプルまたは対照哺乳動物における標的遺伝子発現のレベルに対する、試験サンプルまたは試験哺乳動物における標的遺伝子発現のレベルが、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%である場合に達成される。言い換えれば、核酸は、試験サンプルまたは試験哺乳類において、核酸と接触または投与されていない対照サンプルまたは対照哺乳動物における標的遺伝子発現レベルに対して、標的遺伝子の発現を少なくとも、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%で、サイレンシング、低減、または阻害することができる。標的遺伝子発現のレベルを決定するための適切なアッセイとしては、これに限定されるものではないが、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、in・situハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、および当業者に知られた表現型アッセイなどの、当業者に知られている技術を用いたタンパク質またはmRNAのレベルの試験が挙げられる。
【0036】
活性剤または治療用核酸などの治療剤の「有効量」または「治療有効量」は、所望の効果、例えば、核酸の非存在下で検出される通常の発現レベルとの比較における標的配列の発現の増加または阻害、をもたらすのに十分な量のことである。標的配列の発現の増加は、核酸の非存在下で存在しない発現産生物の場合には、測定可能なレベルが検出されたときに達成される。発現産生物が核酸と接触する前にあるレベルで存在する場合には、発現の増加は、対照と比較して、mRNAなどの核酸で得られる値の増加の倍数が、約1.05、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.75、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500、750、1000、5000、10000、またはそれ以上であるときに、達成される。標的遺伝子または標的配列の発現の阻害は、対照と比較して、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸で得られる値が、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%である場合に達成される。標的遺伝子または標的配列の発現を測定するための適切なアッセイとしては、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、in・situハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、適切なレポータータンパク質の蛍光または発光、および当業者に知られた表現型アッセイなどの、当業者に知られている技術を用いたタンパク質またはRNAのレベルの試験が挙げられる。
【0037】
本明細書において、「核酸」との用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含むポリマーを意味し、DNA、RNA、およびそれらのハイブリッドが含まれる。DNAは、アンチセンス分子、プラスミドDNA、cDNA、PCR産生物、またはベクターの形態をとることができる。RNAは、スモールヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA、miRNA、micRNA、多価RNA、ダイサー基質RNA、またはウイルスRNA(vRNA)、およびそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸には、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基または結合を含む核酸が含まれ、これらは、合成、天然および非天然に存在し、およびこれらは、参照の核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体としては、これに限定されるものではないが、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダイト、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-0-メチルリボヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる。特に限定されない限り、この用語は、参照の核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に断りのない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、一塩基多型、および相補的配列、ならびに明示的に示された配列を、暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res., 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem., 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes, 8:91-98 (1994))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含む。ヌクレオチドは、リン酸基を介して結合している。「塩基」には、プリンおよびピリミジンが含まれ、さらに、天然化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、および天然類似体、およびプリンおよびピリミジンの合成誘導体が含まれ、これには、例えば、これ限定されるものではないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、およびアルキルハライドなどの新たな反応性基を配置する修飾体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
「遺伝子」との用語は、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドの産生に必要な部分長または全長コード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を意味する。
【0039】
本明細書において、「遺伝子産生物」は、RNA転写物またはポリペプチドなどの遺伝子の産生物を意味する。
【0040】
「脂質」との用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれらに限定されない有機化合物のグループを意味し、一般に、水に溶けにくいが、多くの有機溶媒に溶ける特徴がある。それらは通常、少なくとも3つのクラス:(1)「単純脂質」(これには脂肪と油およびワックスが含まれる);(2)「複合脂質」(これにはリン脂質および糖脂質が含まれる);および、(3)「誘導脂質」(例えばステロイド)、に分類される。
【0041】
「ステロイド」は、以下の炭素骨格:
【化2】
を含む化合物である。ステロイドとしては、これに限定されるものではないが、例えば、コレステロールなどが挙げられる。
【0042】
「カチオン性脂質」は、正に帯電することができる脂質を意味する。カチオン性脂質には、例えば、正電荷を帯びる1つまたは複数のアミン基が含まれる。好ましいカチオン性脂質は、それらがpHに応じて正に帯電したまたは中性の形態で存在することができるようにイオン化可能である。カチオン性脂質のイオン化は、さまざまなpH条件下で脂質ナノ粒子の表面電荷に影響を与える。この電荷状態は、血漿タンパク質の吸収、血液クリアランス、および組織分布(Semple, S.C., et al., Adv. Drug Deliv Rev 32:3-17 (1998))、および、核酸の細胞内送達に重要なエンドソーム溶解性の非二層構造を形成する能力(Hafez, I.M., et al., Gene Ther 8:1188-1196 (2001))に、影響を与え得る。
【0043】
「ポリマー結合脂質」との用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を意味する。ポリマー結合脂質の一例は、ペグ化脂質である。「ペグ化脂質」との用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を意味する。ペグ化脂質は、当技術分野で知られており、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などが挙げられる。
【0044】
「中性脂質」との用語は、選択されたpHにおいて非荷電または中性の双性イオン形態のいずれかで存在するいくつかの脂質種のいずれかを意味する。生理学的pHにおいて、そのような脂質としては、これに限定されるものではないが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)などのホスホチジルコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)などのホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン(SM)、セラミド、ステロールなどのステロイド、およびそれらの誘導体が挙げられる。中性脂質は、合成または天然由来であり得る。
【0045】
「荷電脂質」との用語は、有用な生理学的範囲のpH、例えば、pH~3からpH~9内、とは無関係に、正に帯電した形態または負に帯電した形態のいずれかで存在するいくつかの脂質種のいずれかを意味する。荷電脂質は、合成または天然由来であり得る。荷電脂質としては、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジル酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ヘミコハク酸ステロール、ジアルキルトリメチルアンモニウム-プロパン(例えば、DOTAP、DOTMA)、ジアルキルジメチルアミノプロパン、エチルホスホコリン、ジメチルアミノエタンカルバモイルステロール(例えば、DC-Chol)が挙げられる。
【0046】
「脂質ナノ粒子」との用語は、構造(I)の化合物または他の特定のカチオン性脂質のうちの1つまたは複数を含む、ナノメートルのオーダー(例えば、1~1,000nm)の少なくとも1つの寸法を有する粒子を意味する。いくつかの実施形態において、開示されたカチオン性脂質(例えば、構造(I)の化合物)を含む脂質ナノ粒子は、核酸(例えば、mRNA)などの活性剤または治療剤を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官、腫瘍など)に送達するために用いられ得る製剤に含まれる。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、構造(I)の化合物および核酸を含む。このような脂質ナノ粒子は、通常、構造(I)の化合物、および、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、核酸などの活性剤または治療剤は、脂質ナノ粒子の脂質部分、または脂質ナノ粒子の脂質部分の一部または全部によって包まれた水性空間に、カプセル化することができ、それによって、酵素による分解、または宿主生物または細胞のメカニズムによって誘発される他の望ましくない影響、例えば、有害な免疫応答、からそれを保護する。
【0047】
様々な実施形態において、脂質ナノ粒子は、平均粒子径が、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または、約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、または150nmである。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、実質的に無毒である。特定の実施形態において、核酸は、脂質ナノ粒子に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に対して耐性がある。核酸を含む脂質ナノ粒子およびその製造方法は、例えば、米国特許公開2004/0142025、2007/0042031、およびPCT公開WO2013/016058、およびWO2013/086373(これらの開示は全て、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0048】
本明細書において、「脂質カプセル化」は、完全カプセル化、部分カプセル化、またはその両方を伴う、核酸(例えば、mRNA)などの活性剤または治療剤を提供する脂質ナノ粒子を意味する。一実施形態において、核酸(例えば、mRNA)は、脂質ナノ粒子に完全にカプセル化されている。
【0049】
本明細書において、「水溶液」との用語は、水を含む組成物を意味する。
【0050】
核酸-脂質ナノ粒子に関する「血清安定性」とは、遊離DNAまたはRNAを著しく分解する血清またはヌクレアーゼアッセイに曝露した後に、ヌクレオチドが有意に分解しないことを意味する。適切なアッセイとしては、例えば、標準的な血清アッセイ、DNAseアッセイ、またはRNAseアッセイが挙げられる。
【0051】
本明細書において、「全身送達」とは、生物内において活性剤を広範に曝露させることができる治療生成物の送達を意味する。投与のいくつかの技術は、特定の薬剤を全身送達させ、他の薬剤はそうさせないようにできる。全身送達は、有用な、好ましくは治療的な量の薬剤が体のほとんどの部分に曝露されることを意味する。脂質ナノ粒子の全身送達は、例えば、静脈内、動脈内、皮下、および腹腔内の送達を含む、当技術分野で知られている任意の手段によりなされ得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子の全身送達は、静脈内送達によるものである。
【0052】
本明細書において、「局所送達」とは、生物内の標的部位に直接的に活性剤を送達することを意味する。例えば、薬剤は、腫瘍などの疾患部位、炎症部位などの他の標的部位、または、肝臓、心臓、膵臓、腎臓などの標的器官への直接の注射によって、局所的に送達することができる。局所送達としてはまた、局所塗布、または、筋肉内、皮下または皮内注射などの局所注射技術を挙げることができる。局所送達は、全身の薬理学的効果を排除するものではない。
【0053】
「アルキル」は、飽和または不飽和(すなわち、1つまたは複数の二重結合(アルケニル)および/または三重結合(アルキニル)を含む)である、炭素および水素原子のみからなる直鎖または分岐の炭化水素鎖の基を意味し、例えば、1~24個の炭素原子(C-C24アルキル)、4~20個の炭素原子(C-C20アルキル)、6~16個の炭素原子(C-C16アルキル)、6~9個の炭素原子(C-Cアルキル)、1~15個の炭素原子(C-C15アルキル)、1~12個の炭素原子(C-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C-Cアルキル)、または1~6個の炭素原子(C-Cアルキル)を有しており、これは、単結合によって分子の残りの部分に結合し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどである。本明細書で特に断りのない限り、アルキル基は任意に置換されていてもよい。
【0054】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、飽和または不飽和(すなわち、1つまたは複数の二重結合(アルケニレン)および/または三重結合(アルキニレン))である、炭素および水素のみからなる、分子の残りを他の基に結合する直鎖または分岐の二価の炭化水素鎖を意味し、例えば、1~24個の炭素原子(C-C24アルキレン)、1~15個の炭素原子(C-C15アルキレン)、1~12個の炭素原子(C-C12アルキレン)、1~8個の炭素原子(C-Cアルキレン)、1~6個の炭素原子(C-Cアルキレン)、2~4個の炭素原子(C-Cアルキレン)、1~2個の炭素原子(C-Cアルキレン)を有しており、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどである。アルキレン鎖は、単結合または二重結合を介して分子の残りの部分に結合し、単結合または二重結合を介して他の基に結合する。分子の残りの部分および他の基へのアルキレン鎖の結合点は、鎖内の1つの炭素または任意の2つの炭素を介することができる。本明細書で特に断りのない限り、アルキレン鎖は任意に置換されていてもよい。
【0055】
「シクロアルキル」または「炭素環」は、炭素原子および水素原子のみからなる安定な非芳香族の単環式または多環式の炭化水素基を意味し、これには縮合または架橋環系が含まれ、3~15個の炭素原子を有し、好ましくは3~10個の炭素原子を有し、飽和または不飽和で、単結合によって分子の残りの部分に結合する。単環式基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。多環式基としては、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。本明細書で特に断りのない限り、シクロアルキル基は任意に置換されていてもよい。
【0056】
「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキル基である。本明細書で特に断りのない限り、シクロアルキレン基は、任意に置換されていてもよい。
【0057】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」は、1~12個の環炭素原子(例えば、2~12個)、および、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個の環ヘテロ原子を有する、安定な3~18員(例えば、5、6または7員)の非芳香族の環基を意味する。そのようなヘテロシクリル基としては、これに限定されるものではないが、例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロピリミジニルなどが挙げられる。本明細書において特に断りのない限り、ヘテロシクリル基は、任意に置換されていてもよい。
【0058】
「ヘテロアリール」は、水素原子、1~13個の環炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個の環ヘテロ原子、および少なくとも1個の芳香族環を含む、5~14員環系の基を意味する。例えば、これに限定されるものではないが、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルなどが挙げられる。本明細書において特に断りのない限り、ヘテロアリール基は、任意に置換されていてもよい。
【0059】
本明細書において、「置換」との用語は、少なくとも1つの水素原子が、非水素原子への結合によって置き換えられた上記の基(例えば、アルキル、アルキレン、シクロアルキル、またはシクロアルキレン)のいずれかを意味し、これに限定されるものではないが、例えば、F、Cl、Br、またはIなどのハロゲン原子;オキソ基(=O);ヒドロキシル基(-OH);C-C12アルキル基;シクロアルキル基;-(C=O)OR’;-O(C=O)R’;-C(=O)R’;-OR’;-S(O)R’;-S-SR’;-C(=O)SR’;-SC(=O)R’;-NR’R’;-NR’C(=O)R’;-C(=O)NR’R’;-NR’C(=O)NR’R’;-OC(=O)NR’R’;-NR’C(=O)OR’;-NR’S(O)NR’R’;-NR’S(O)R’;および、-S(O)NR’R’であり、ここで、R’は、出現するごとに、独立して、H、C-C15アルキルまたはシクロアルキルであり、および、xは、0、1または2である。いくつかの実施形態において、置換基はC-C12アルキル基である。他の実施形態において、置換基はシクロアルキル基である。他の実施形態において、置換基は、フルオロなどのハロ基である。他の実施形態において、置換基はオキソ基である。他の実施形態において、置換基はヒドロキシル基である。他の実施形態において、置換基はアルコキシ基(-OR)である。他の実施形態において、置換基はカルボキシル基である。他の実施形態において、置換基はアミン基(-NR’R’)である。
【0060】
「任意の」または「任意に」(例えば、任意に置換された)は、その後に説明される状況の事象が発生する場合も発生しない場合もあり、その説明には、前記事象または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。例えば、「任意に置換されていてもよいアルキル」は、アルキル基が置換されてもされなくてもよく、その説明は、置換されたアルキル基、および置換基を有さないアルキル基の両方を含むことを意味する。
【0061】
本明細書において開示される開示はまた、1つまたは複数の原子を、異なる原子質量または質量数の原子で置き換えることによって同位体標識される、構造(I)の化合物のすべての薬学的に許容される化合物を包含することを意味する。開示された化合物に組み込むことができる同位体としては、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体が挙げられ、例えば、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iである。これらの放射性標識化合物は、例えば、作用部位または作用機序、あるいは薬理学的に重要な作用部位への結合親和性を特徴づけることによって、化合物の有効性を決定または測定するのを助けるのに役立つ可能性がある。構造(I)、(IA)、または(IB)の特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位元素を組み込んだ化合物は、薬物および/または基質組織分布の研究に有用である。放射性同位体のトリチウム、すなわちH、および炭素-l4、すなわち14Cは、組み込みおよび検出準備手段の容易さの観点から、この目的のために特に有用である。
【0062】
重水素すなわちHなどのより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えば、インビボの半減期の増加または必要な投与量の減少によって生じる特定の治療上の利点をもたらす可能性があり、したがって、状況によって好ましくなり得る。
【0063】
11C、18F、15O、13Nなどの陽電子放出同位体での置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)の研究において有用であり得る。構造(I)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に知られている従来の技術によって、または以下の製造法および実施例に記載されるプロセスと類似のプロセスによって、適切な同位体標識試薬をそれまで使用された非標識試薬の代わりに使用することにより、製造することができる。
【0064】
本明細書に開示される実施形態はまた、開示の化合物のインビボ代謝生成物を包含することを意味する。そのような生成物は、例えば、主に酵素的プロセスに起因する、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などから生じ得る。したがって、本開示の実施形態には、本開示の化合物を、その代謝生成物を生成するのに十分な期間、哺乳動物に投与することを含むプロセスによって生成される化合物が含まれる。そのような生成物は、典型的には、ラット、マウス、モルモット、サル、またはヒトなどの動物に検出可能な用量で、本開示の放射性標識化合物を投与し、代謝が起こるのに十分な時間を経過させ、その変換生成物を、尿、血液、またはその他の生物学的サンプルから単離することによって、確認される。
【0065】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物からの有用な純度までの単離、および有効な治療剤への製剤化に耐えるのに十分に強固である化合物を示すことを意味する。
【0066】
「哺乳動物」には、ヒト、および、実験動物および家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)などの家畜動物、および野生生物などの非家畜動物の両方が含まれる。
【0067】
「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」には、これに限定されるものではないが、アジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれ、これらは、米国食品医薬品局によって、ヒトまたは家畜動物での使用が許容されるものとして承認されている。
【0068】
「薬学的に許容される塩」には、酸および塩基の付加塩の両方が含まれる。
【0069】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的またはその他の望ましくないものではなく、無機酸および有機酸で形成される塩を意味し、無機酸として、これに限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられ、および、有機酸として、これに限定されるものではないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、カンファー酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。
【0070】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的またはその他の望ましくないものではない、塩を意味する。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することによって調製される。無機塩基から誘導される塩としては、これに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが挙げられる。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩である。有機塩基から誘導される塩としては、これに限定されるものではないが、一級、二級および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられ、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、カフェインである。
【0071】
結晶化により、本開示の化合物(すなわち、構造(I)の化合物)の溶媒和物が生成されることが多い。本明細書において、「溶媒和物」との用語は、本開示の化合物の1つ以上の分子、および1つ以上の溶媒分子を含む集合体を意味する。溶媒は水であり得、その場合、溶媒和物は水和物であり得る。あるいは、溶媒は有機溶媒であり得る。したがって、本開示の化合物は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物として、およびそれに対応する溶媒和物の形態として存在し得る。本開示の化合物の溶媒和物は、真の溶媒和物であり得るが、一方、他の場合において、本開示の化合物は、単に不随的な水を保持するか、または水といくつかの付随的な溶媒との混合物であってもよい。
【0072】
「医薬組成物」は、本開示の化合物、および、生物活性化合物を哺乳動物(例えばヒト)に送達するために当技術分野で一般に許容される媒体の製剤を意味する。そのような媒体には、そのための薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤のすべてが含まれる。
【0073】
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与したときに、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて治療を行うのに十分である本開示の化合物の量を意味する。「治療有効量」となる本開示の脂質ナノ粒子の量は、化合物、病気およびその重症度、投与方法、および治療する哺乳動物の年齢に応じて変化するが、当業者は、その知識および本開示を考慮して、日常業務において、それを決定することができる。
【0074】
本明細書において、「治療する」または「治療」は、目的の疾患または病気を有する哺乳動物(好ましくはヒト)における目的の疾患または病気の治療を包含し、以下を含む:
(i)疾患または病気が哺乳動物に発生するのを防ぐこと(特に、その哺乳動物がその病気になりやすいが、まだそれを有していると診断されていない場合);
(ii)疾患または病気を抑制すること(すなわち、その発症を止めること);
(iii)疾患または病気を緩和すること(すなわち、疾患または病気の退行を引き起こすこと);または、
(iv)疾患または病気に起因する症状を緩和すること(すなわち、根本の疾患または病気を対処せずに痛みを緩和すること)。
本明細書において、「疾患」および「病気」との用語は、交換可能に使用され得るか、または、特定の病気または病態が既知の原因物質を有さない(したがって、病因はまだ解明されていない)かもしれないという点で異なる可能性があり、したがって、それは、まだ疾患として認識されないが、臨床医によって多少の特定の症状が確認された望ましくない病気または症候群としてのみ認識されるものである。
【0075】
本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の立体中心を含んでいてもよく、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-または(S)-として、あるいは、アミノ酸の場合に(D)-または(L)-として定義され得る、エナンチオマー、ジアステレオマー、およびその他の立体異性体の形態を生じさせ得る。本開示は、そのようなすべての可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことを意図している。光学活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-の異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を用いて製造するか、または、従来の技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別結晶を用いて分離することができる。個々のエナンチオマーを製造/単離するための従来の技術としては、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたラセミ体(または塩または誘導体のラセミ体)の分離、が挙げられる。本明細書に記載の化合物が、オレフィン二重結合または他の幾何学的非対称中心を含む場合、特に断りのない限り、化合物は、EおよびZの両方の幾何異性体を含むことを意図する。同様に、すべての互変異性体の形態を含むことも意図する。
【0076】
「立体異性体」とは、同じ結合によって結合された同じ原子からなるが、互換性のない異なる三次元構造を有する化合物を意味する。本開示は、様々な立体異性体およびその混合物を企図し、「エナンチオマー」が含まれ、これは、分子が互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を意味する。
【0077】
「互変異性体」とは、分子のある原子から同じ分子の別の原子へのプロトンのシフトを意味する。本開示には、任意の前記化合物の互変異性体が含まれる。
【0078】
化合物
一態様において、本開示は、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、および/またはポリマー結合脂質などの他の脂質成分と組み合わせて、オリゴヌクレオチドを有する脂質ナノ粒子を形成することができる、新規な脂質化合物を提供する。理論によって拘束されるものではないが、これらの脂質ナノ粒子は、オリゴヌクレオチドを血清中での分解から保護し、インビトロおよびインビボにおいてオリゴヌクレオチドの効果的な細胞への送達を提供するものと考えられる。
【0079】
一実施形態において、化合物は、下記の構造(I):
【化3】
(I)
[式中、
は、任意に置換されていてもよいC-C24アルキル、または任意に置換されていてもよいC-C24アルケニルであり;
およびRは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-C36アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-Cアルキルであるか、または、RおよびRは、それらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールを形成し;
、L、およびLは、それぞれ独立して、任意に置換されていてもよいC-C18アルキレンであり;
は、直接結合、-(CHO(C=O)-、-(CH(C=O)O-、または、-(C=O)-であり;
およびGは、それぞれ独立して、-(C=O)O-、または-O(C=O)-であり;および、
nは、0より大きい整数である。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体である。
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物は、下記の構造(IA):
【化4】
(IA)
で示される化合物である。
【0081】
いくつかの実施形態において、化合物は、下記の構造(IB):
【化5】
(IB)
で示される化合物である。
【0082】
いくつかの実施形態において、Rは、任意に置換されていてもよいC-C18アルキル、またはC14-C18アルケニルである。ある実施形態において、Rは、Cアルキル、Cアルキル、C10アルキル、C12アルキル、C14アルキル、またはC16アルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、C16アルケニルである。ある実施形態において、Rは分岐していない。いくつかの実施形態において、Rは分岐している。ある実施形態において、Rは非置換である。
【0083】
いくつかの実施形態において、Gは、直接結合、-(CHO(C=O)-、または、-(CH(C=O)O-である。ある実施形態において、Gは直接結合である。いくつかの実施形態において、Gは-(CH(C=O)O-であり、nは1より大きい。いくつかの実施形態において、nは、1~20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10である。いくつかの実施形態において、nは、5~11である。いくつかの実施形態において、nは6~10である。より具体的な実施形態において、nは、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態において、nは5である。いくつかの実施形態において、nは6である。いくつかの実施形態において、nは7である。ある実施形態において、nは8である。いくつかの実施形態において、nは9である。いくつかの実施形態において、nは10である。
【0084】
いくつかの実施形態において、Lは、C-Cアルキレンである。ある実施形態において、Lは、Cアルキレン、Cアルキレン、またはCアルキレンである。いくつかのより具体的な実施形態において、Lは分岐していない。あるより具体的な実施形態において、Lは非置換である。
【0085】
いくつかの実施形態において、RはC-C24アルキルである。いくつかの実施形態において、RはC-C24アルキルである。いくつかのより具体的な実施形態において、RおよびRは、両方ともC-C24アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、C14アルキル、C15アルキル、C16アルキル、C18アルキル、またはC20アルキルである。ある実施形態において、Rは分岐している。より具体的な実施形態において、Rは分岐している。いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、下記の構造:
【化6】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、C-C12アルキルである。]
のうちの1つで示される。
【0086】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、下記の構造:
【化7】
のうちの1つで示される。
【0087】
いくつかの実施形態において、LおよびLは、それぞれ独立して、C-C10アルキレンである。ある実施形態において、LおよびLは、両方ともCアルキレンである。いくつかの実施形態において、LおよびLは、両方ともCアルキレンである。いくつかの実施形態において、LおよびLは、両方ともCアルキレンである。いくつかの実施形態において、LおよびLは、両方ともCアルキレンである。いくつかの実施形態において、Lは分岐していない。いくつかの実施形態において、Lは分岐していない。より具体的な実施形態において、Lは非置換である。いくつかの実施形態において、Lは非置換である。
【0088】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、C-Cアルキルである。より具体的な実施形態において、RおよびRは、両方ともメチルである。ある実施形態において、RおよびRは、両方ともエチルである。ある実施形態において、Rはメチルであり、Rはn-ブチルである。いくつかの実施形態において、RおよびRは、両方ともn-ブチルである。異なる実施形態において、Rはメチルであり、Rはn-ヘキシルである。
【0089】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、それらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリルを形成している。ある実施形態において、前記ヘテロシクリルは、5員のヘテロシクリルである。いくつかの実施形態において、前記ヘテロシクリルは、下記の構造:
【化8】
で示される。
【0090】
様々な異なる実施形態において、化合物は、下記の表1に記載される構造のうちの1つで示される化合物である。
【0091】
表1.構造(I)の化合物の実施形態に含まれる化合物
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0092】
上記の構造(I)の化合物の任意の実施形態、および上記の構造(I)の化合物中の任意の具体的な置換基および/または変数は、独立して、構造(I)の化合物の他の実施形態および/または置換基および/または変数と組み合わせて、上記に具体的に記載されていない本開示の実施形態を形成することができることが理解される。さらに、特定の実施形態および/または特許請求の範囲において、特定のR基、G基、L基、または変数nについて置換基および/または変数のリストが挙げられる場合、個々の置換基および/または変数は、それぞれ、特定の実施形態および/または特許請求の範囲から削除することができること、および、置換基および/または変数の残りのリストは、本開示の範囲内であるとみなされることが、理解される。
【0093】
本明細書において、記載された式の置換基および/または変数の組み合わせは、そのような寄与が安定な化合物をもたらす場合にのみ許容されることが理解される。
【0094】
いくつかの実施形態において、構造(I)の化合物を含む、脂質ナノ粒子が提供される。脂質ナノ粒子は、任意に、中性脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される賦形剤を含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、構造(I)の化合物のいずれか1つ以上、および治療剤を含む、組成物が提供される。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、構造(I)の化合物のいずれかと、治療剤、および中性脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される1つ以上の賦形剤、を含む。他の薬学的に許容される賦形剤および/または担体もまた、組成物の様々な実施形態に含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、およびSMから選択される。いくつかの実施形態において、中性脂質は、DSPCである。様々な実施形態において、該化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0097】
様々な実施形態において、組成物は、ステロイドまたはステロイド類似体をさらに含む。特定の実施形態において、ステロイドまたはステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態のいくつかにおいて、該化合物とコレステロールとのモル比は、約5:1~1:1の範囲である。
【0098】
様々な実施形態において、ポリマー結合脂質は、ペグ化脂質である。例えば、いくつかの実施形態には、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、または、PEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート、または、2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメート、が挙げられる。様々な実施形態において、該化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1~約20:1の範囲である。
【0099】
いくつかの実施形態において、組成物は、下記の構造(II):
【化9】
(II)
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和のアルキル鎖であり、ここで該アルキル鎖は、任意に、1つ以上のエステル結合が割り込まれていてもよく;および
wの平均値は、30~60の範囲である。]
で示されるペグ化脂質、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体、を含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である。他の実施形態において、wの平均値は、約42~55の範囲、例えば、約49である。
【0101】
上記の組成物のいくつかの実施形態において、治療剤は、核酸を含む。例えば、いくつかの実施形態において、核酸は、アンチセンスRNAおよびメッセンジャーRNAから選択される。上記の実施形態のいくつかにおいて、組成物は、脂質ナノ粒子を含む。
【0102】
いくつかの関連する実施形態において、上記の実施形態のいずれか1つの化合物(例えば、構造(I)の化合物)を含む、脂質ナノ粒子が提供される。ある実施形態において、脂質ナノ粒子は、治療剤(例えば、アンチセンスRNAおよびメッセンジャーRNAなどの核酸)をさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、中性脂質、ステロイド、およびポリマー結合脂質から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMから選択される。より具体的な実施形態において、中性脂質は、DSPCである。
【0104】
いくつかのより具体的な実施形態において、化合物と中性脂質とのモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。いくつかの実施形態において、ステロイドは、コレステロールである。いくつかの実施形態において、化合物とコレステロールとのモル比は、5:1~1:1の範囲である。
【0105】
特定の実施形態において、ポリマー結合脂質は、ペグ化脂質である。より具体的な実施形態において、化合物とペグ化脂質とのモル比は、約100:1~約20:1の範囲である。
【0106】
いくつかの実施形態において、ペグ化脂質は、PEG-DAG、PEG-PE、PEG-S-DAG、PEG-cer、またはPEGジアルキルオキシプロピルカルバメートである。他の実施形態において、ペグ化脂質は、下記の構造(II):
【化10】
(II)
[式中、
およびRは、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和のアルキル鎖であり、ここで該アルキル鎖は、任意に、1つ以上のエステル結合が割り込まれていてもよく;および
wの平均値は、30~60の範囲である。]
で示されるペグ化脂質、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体である。
【0107】
構造(II)のいくつかのより具体的な実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である。より具体的な実施形態において、wの平均値は、約49である。
【0108】
他の異なる実施形態において、本開示は、治療剤を、それを必要とする患者に投与する方法であって、前記の組成物のいずれかを調製または提供すること、および組成物を患者に投与することを含む方法、に関する。
【0109】
投与の目的では、本開示の化合物の実施形態(典型的には、治療剤と組み合わせた脂質ナノ粒子の形態のもの)は、未加工の化学物質として投与され得るか、または医薬組成物として製剤化され得る。本開示の実施形態の医薬組成物は、構造(I)の化合物、および1つ以上の、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、を含む。いくつかの実施形態において、構造(I)の化合物は、組成物中に、脂質ナノ粒子を形成し、例えば、目的とする特定の疾患または病気を治療するための治療剤を送達するのに有効な量で、存在する。適切な濃度および投与量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0110】
本開示の実施形態の組成物の投与は、同様の有用性を提供するための薬剤の許容される投与方法のいずれかを通して、実施することができる。本開示の実施形態の医薬組成物は、固体、半固体、液体、または気体の形態の製剤に製剤化することができ、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、懸濁液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフェア、およびエアロゾル、が挙げられる。そのような医薬組成物を投与する典型的な経路としては、これに限定されるものではないが、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔、直腸、膣、および鼻腔、が挙げられる。本明細書において、非経口との用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内の注射または注入技術を含む。本開示の実施形態の医薬組成物は、そこに含まれる有効成分が、組成物を患者に投与したときに生物学的に利用可能になるように製剤化される。いくつかの実施形態において被検体または患者に投与される組成物は、1つ以上の単位剤形の形態をとり、例えば、錠剤が1つの単位剤形であってよく、および、エアロゾル形態における本開示の実施形態の化合物の容器が、複数の単位剤形を保持していてもよい。そのような剤形を実際に製造する方法は、当業者に知られ、または明らかである。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)、を参照されたい。いくつかの実施形態において、投与される組成物は、いずれの場合も、本開示の教示に従った目的の疾患または病気の治療のために、治療有効量の本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0111】
本開示の実施形態の医薬組成物は、固体または液体の形態であり得る。一態様において、担体は、粒子状であって、組成物が、例えば、錠剤または粉末の形態である。また、担体は、液体であって、組成物が、例えば、経口シロップ、注射液、または、例えば吸入投与において有用なエアロゾル、であってよい。
【0112】
経口投与を目的とする場合、特定の実施形態の医薬組成物は、好ましくは、固体または液体のいずれかの形態であり、そこには、半固体、半液体、懸濁液、およびゲルの形態が、本明細書において固体または液体のいずれかとしてみなされる形態の範囲内として含まれる。
【0113】
経口投与用の固体組成物として、いくつかの実施形態の医薬組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、ピル、カプセル、チューインガム、ウエハーなどの形態に、製剤化され得る。そのような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤または可食性担体を含むものである。さらに、以下のものの1つ以上が存在してもよく:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース、またはデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチなど;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、またはステロテックス(Sterotex);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロース、またはサッカリン;香料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー;着色剤、が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態の医薬組成物は、カプセルの形態、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、それは、上記の種類の原料に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含み得る。
【0115】
いくつかの実施形態の医薬組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョン、または懸濁液の形態であり得る。液体は、2つの例として、経口投与用、または注射による送達用であり得る。経口投与を目的とする場合、好ましい組成物は、構造(I)の化合物に加えて、甘味料、保存剤、染料/着色剤、および香味剤のうちの1つまたは複数を含む。注射によって投与することを目的とした組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤、および等張剤のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0116】
本開示の実施形態の液体医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液またはその他の形態であるかどうかにかかわらず、以下のアジュバントのうちの1つ以上を含んでよく:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム;不揮発性油、例えば、溶媒または懸濁媒質として機能し得る合成のモノグリセリドまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール、またはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩、および、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調節剤;凍結防止剤として作用する剤、例えば、スクロース、またはトレハロース、が挙げられる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与バイアルに入れることができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用の医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0117】
非経口投与または経口投与のいずれかを目的とする本開示の実施形態の液体医薬組成物は、適切な投与量が得られるような量の本開示の化合物を含むものである。
【0118】
本開示の実施形態の医薬組成物は、局所投与を目的とすることができ、その場合、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏、またはゲルベースを、適宜、含むことができる。基剤は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定剤のうちの1つまたは複数を含み得る。増粘剤が、局所投与用の医薬組成物中に存在してもよい。経皮投与を目的とする場合、組成物は、経皮パッチまたはイオントフォレシス装置を含み得る。
【0119】
本開示の実施形態の医薬組成物は、例えば、直腸内で溶融して薬剤を放出する坐剤の形態において、直腸投与を目的とし得る。直腸投与用の組成物は、適切な非刺激性賦形剤として、油性基剤を含み得る。そのような基剤としては、これに限定されるものではないが、ラノリン、カカオバター、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0120】
本開示の実施形態の医薬組成物は、固体または液体の投薬単位の物理的形態を変更する、様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、有効成分の周りにコーティングシェルを形成する材料を含んでもよい。コーティングシェルを形成する材料は、通常、不活性であり、例えば、砂糖、シェラック、およびその他の腸溶コーティング剤から選択され得る。あるいは、有効成分をゼラチンカプセルに包むこともできる。
【0121】
固体または液体形態の本開示の実施形態の医薬組成物は、本開示の化合物に結合し、それにより化合物の送達を援助する、薬剤を含み得る。この能力で作用し得る適切な薬剤として、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、あるいはタンパク質が挙げられる。
【0122】
本開示の実施形態の医薬組成物は、エアロゾルとして投与することができる投薬単位からなり得る。エアロゾルとの用語は、コロイド性のものから加圧包装からなる系までの範囲の、さまざまな系を表すために用いられる。送達は、有効成分を分散する、液化または圧縮ガスによって、または適切なポンプ系によって行われ得る。本開示の実施形態の化合物のエアロゾルは、有効成分を送達するために、単相系、二相系、または三相系で送達され得る。エアロゾルの送達には、必要な容器、アクチベーター、バルブ、サブ容器などが含まれ、これらが一緒になってキットを形成してもよい。当業者は、過度の実験をすることなく、好ましいエアロゾルを得ることができる。
【0123】
本開示の実施形態の医薬組成物は、医薬分野でよく知られている方法によって製造することができる。例えば、注射によって投与されることを目的とした医薬組成物は、溶液を形成するために、本開示の液体の脂質ナノ粒子を、滅菌蒸留水または他の担体と組み合わせることによって、製造することができる。均一な溶液または懸濁液の形成を促進するために、界面活性剤が添加されてもよい。界面活性剤は、水性の送達系における化合物の溶解または均一な懸濁を促進するために、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0124】
本開示の実施形態の組成物、またはその薬学的に許容される塩は、治療有効量で投与され、これは、使用される特定の治療剤の活性を含む様々な要因に応じて変化するものであり:要因には、治療剤の代謝安定性および作用期間;患者の年齢、体重、普段の健康状態、性別、食事;投与の態様および時間;排泄率;薬剤の組み合わせ;特定の障害または病気の重症度;および、治療を受ける対象、が挙げられる。
【0125】
本開示の実施形態の組成物はまた、1つまたは複数の他の治療剤の、投与と同時に、投与前に、または投与後に、投与することができる。そのような併用療法には、本開示の実施形態の組成物および1つまたは複数の追加の活性剤の単一の医薬投与製剤の投与、ならびに、本開示の実施形態の組成物および各活性剤のそれぞれの別個の医薬投与製剤の投与、が含まれる。例えば、本開示の実施形態の組成物およびその他の活性剤は、錠剤またはカプセルなどの単一の経口投与組成物において一緒に患者に投与することができ、あるいは、各薬剤を別個の経口投与製剤において投与することができる。別々の投与製剤を用いる場合、本開示の実施形態の化合物、および1つまたは複数の追加の活性剤は、本質的に同時に、すなわち一緒に、または別々にずらされた時間に、すなわち連続して投与することができ、併用療法には、これらすべてのレジメンが含まれるものと理解される。
【0126】
上記の化合物および組成物の製造方法は、本明細書において以下に記載され、および/または当技術分野において知られている。
【0127】
本明細書に記載の方法において、中間体化合物の官能基は、適切な保護基によって保護される必要があり得ることが当業者によって理解されるものである。そのような官能基としては、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、およびカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシの適切な保護基としては、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられる。アミノ、アミジノおよびグアニジノの適切な保護基としては、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトの適切な保護基としては、-C(0)-R”(ここで、R”はアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸の適切な保護基としては、アルキル、アリールまたはアリールアルキルのエステルが挙げられる。保護基は、当業者に知られ、本明細書に記載されている標準的な技術に従って付加または除去することができる。保護基の使用については、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wiley、に詳細に説明されている。当業者が理解するように、保護基はまた、ワング(Wang)樹脂、リンク(Rink)樹脂、または2-クロロトリチルクロリド樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0128】
本開示の化合物のそのような保護された誘導体は、それ自体は薬理学的活性を有さないかもしれないが、それらは哺乳動物に投与され、その後、体内で代謝されて、薬理学的に活性な本開示の化合物を形成し得る。したがって、そのような誘導体は「プロドラッグ」として説明することができる。本開示の化合物のすべてのプロドラッグは、本開示の範囲内に含まれる。
【0129】
さらに、遊離の塩基または酸の形態で存在する本開示の実施形態の化合物は、当技術分野で知られている方法により、適切な無機または有機の塩基または酸で処理することによって、その薬学的に許容される塩に変換することができる。本開示の実施形態の化合物の塩は、標準的な技術によって、その遊離の塩基または酸の形態に変換することができる。
【0130】
以下の一般反応スキーム1は、本開示の化合物、すなわち構造(I):
【化11】
(I)
[式中、R、R、R、R、R、L、L、L、G、G、およびGは、本明細書で定義された通りである。]
で示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、または立体異性体、を製造するための例示的な方法を示している。当業者は、同様の方法によって、または当業者に知られている他の方法を組み合わせることによって、これらの化合物を製造することができることが理解される。また、当業者は、以下に記載されるのと同様の方法で、適切な出発成分を用い、必要に応じて合成のパラメータを変更することにより、以下に具体的に示されていない構造(I)の他の化合物を製造できることも理解される。一般に、出発成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、および、Fluorochem USAなどの供給元から入手するか、または当業者に知られている供給源に従って合成することができ(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)参照)、あるいは本開示に記載されたように製造することができる。
【0131】
一般反応スキーム1
【化12】
【0132】
一般反応スキーム1は、構造(I)の化合物を製造するための例示的な方法を提供する。一般反応スキーム1のR、R、R、R、R、L、L、L、G、G、およびGは、本明細書で定義されている通りである。XおよびXは、所望の反応を促進するために選択される反応性部分(例えば、ハロ)である。構造A1の化合物は、購入、または当技術分野で知られている方法に従って製造される。適切な還元条件下(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)でのA1の反応により、A1とA2の還元的アミノ化の生成物A3を生成する。次に、A3を適切な塩基性条件下(例えば、トリエチルアミンおよびDMAPを使用)でA4と反応させて、化合物A5を得る。その後、適切な条件(例えば、熱)を用いて、A5をアミンA6と反応させて、表記した構造(I)の化合物を生成する。
【0133】
構造(I)の化合物を製造するための様々な代替戦略が当業者に利用可能であることに留意されたい。例えば、他の構造(I)の化合物は、適切な出発物質を用いて類似の方法に従って製造することができる。必要に応じて保護基を用いること、および上記の一般反応スキームに対する他の修正は、当業者にとって容易に明らかであろう。
【実施例0134】
以下の実施例は、説明を目的として提供されるものであり、これに限定されるものではない。
【0135】
実施例1
脂質ナノ粒子組成物を用いたルシフェラーゼmRNAインビボ評価
脂質ナノ粒子は、PCT公開番号WO2015/199952およびWO2017/004143に記載された一般的な方法に従って、製造および試験され、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に説明すると、カチオン性脂質、DSPC、コレステロール、およびPEG脂質を、約50:10:38.5:1.5、または約47.5:10:40.8:1.7のモル比で、エタノールに可溶化した。脂質ナノ粒子(LNP)を、脂質合計とmRNAとの重量比が約10:1~30:1で製造した。mRNAを、10~50mMのクエン酸または酢酸緩衝液(pH4)で、0.2mg/mLに希釈する。シリンジポンプを用いて、総流量15mL/min以上で、エタノール性脂質溶液を、mRNA水溶液と、約1:5~1:3(vol/vol)の比率で混合する。次いで、エタノールを除去し、透析によって外部のバッファーをPBSに置き換えた。最後に、脂質ナノ粒子を、0.2μm細孔の滅菌フィルターでろ過した。脂質ナノ粒子の粒子サイズは、粒径約55~95nmであり、場合によっては、粒径約70~90nmであり、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、UK)を用いた準弾性光散乱によって決定した。
【0136】
試験は、施設内動物管理委員会(ACC)およびカナダ動物管理評議会(CCAC)によって定められたガイドラインに従って、6~8週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River)、または8~10週齢のCD-1(Harlan)マウス(Charles River)で実施した。様々な用量のmRNA脂質ナノ粒子を、尾静脈注射によって全身投与し、投与後の特定の時点(例えば、4時間)で動物を安楽死させた。肝臓と脾臓を、あらかじめ計量したチューブに収集し、重量を測定し、すぐに液体窒素で急速冷凍し、分析処理するまで-80℃で保存した。
【0137】
肝臓の場合、2mLのFastPrepチューブ(MP Biomedicals、Solon OH)において、約50mgが分析のために処理された。1/4インチセラミック球(MP Biomedicals)を各チューブに加え、室温に平衡化した500μLのGlo Lysis Buffer-GLB(Promega、Madison、WI)を肝臓組織に加えた。肝臓組織をFastPrep24装置(MP Biomedicals)で、2回、6.0m/sで、15秒間、ホモジナイズした。ホモジネート物を室温で5分間インキュベートした後、GLBで1:4に希釈し、SteadyGloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を用いて測定した。具体的には、50μLのホモジネート希釈組織を50μLのSteadyGlo基質と反応させ、10秒間振とうした後、5分間インキュベートし、その後、CentroXSLB960ルミノメーター(Berthold Technologies、ドイツ)を用いて定量した。アッセイされるタンパク質の量を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford IL)を用いて測定した。次に、相対発光単位(RLU)を、アッセイされた総タンパク質ugに対して正規化した。RLUをルシフェラーゼngに変換するために、QuantiL um Recombinant Luciferase(Promega)で標準曲線を作成した。
【0138】
Trilink BiotechnologiesのFLuc mRNA(L-6107またはL-7202)は、ホタル(photinus pyralis)から最初に単離されたルシフェラーゼタンパク質を発現する。FLucは、遺伝子発現および細胞生存率の両方を測定するために、哺乳類の細胞培養で一般的に使用される。基質であるルシフェリンの存在下で生物発光を発する。このキャップされ、ポリアデニル化されたmRNAを、ウリジンおよび/またはシチジンのヌクレオシドに関して完全に置換した。
【0139】
実施例2
製剤化した脂質のPKの測定
他の箇所で説明するように、製剤化されたカチオン性脂質のpKは、核酸送達のLNPの有効性と相関している(Jayaraman et al, Angewandte Chemie, International Edition (2012), 51(34), 8529-8533; Semple et al, Nature Biotechnology 28, 172-176 (2010)、参照)。pKの好ましい範囲は~5から~7である。各カチオン性脂質のpKは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを用いて脂質ナノ粒子で測定した。PBS中に、総脂質0.4mMの濃度で、カチオン性脂質/DSPC/コレステロール/PEG脂質(50/10/38.5/1.5mol%)を含む脂質ナノ粒子を、実施例1に記載のインラインプロセスを用いて調製した。TNSを、蒸留水中に100mMのストック溶液として調製した。ビヒクルを、10mMのHEPES、10mMのMES、10mMの酢酸アンモニウム、130mMのNaClを含む、緩衝液2mLで、脂質24mMに希釈し、ここで、pHは2.5~11の範囲とした。TNS溶液のアリコートを加えて、最終濃度1μMとし、次いで、ボルテックス混合を行い、蛍光強度を、SLM Aminco Series 2 Luminescence Spectrophotometerにより、励起および発光の波長として321nmおよび445nmを用いて、室温で測定した。シグモイドベストフィット分析を蛍光データに適用し、pKaを、最大蛍光強度の半分を生じさせるpHとして測定した。
【0140】
実施例3
インビボのルシフェラーゼmRNA発現げっ歯類モデルを用いた、様々なカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子製剤の有効性の測定
表2に示すカチオン性脂質は、以前に核酸で試験されている。比較の目的で、これらの脂質を使用して、実施例1およびPCT/US10/22614(これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているインライン混合法を用いて、FLuc mRNA(L-6107)を含む脂質ナノ粒子を製剤化した。脂質ナノ粒子は、次のモル比により製剤化された:50%カチオン性脂質/10%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%コレステロール/1.5%PEG脂質(「PEG-DMG」、すなわち、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール、平均PEG分子量2000)。代わりの実施形態において、カチオン性脂質、DSPC、コレステロール、およびPEG脂質は、約47.5:10:40.8:1.7のモル比で製剤化した。相対活性は、実施例1に記載のように、尾静脈注射による投与4時間後の肝臓におけるルシフェラーゼ発現を測定することにより求めた。活性は、0.3mgおよび1.0mgのmRNA/kgの用量で比較し、実施例1に記載のように、投与4時間後に測定したngルシフェラーゼ/g肝臓として、表した。
【0141】
表2.mRNAで活性を示す比較脂質
【表2】
【0142】
表3に示される代表的な本開示の化合物は、以下のモル比により製剤化した:50%カチオン性脂質/10%ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)/38.5%コレステロール/1.5%PEG脂質(「PEG-DMA」、2-[2-(ω-メトキシ(ポリエチレングリコール2000)エトキシ]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)、または、47.5%カチオン性脂質/10%DSPC/40.7%コレステロール/1.8%PEG脂質。相対活性は、実施例1に記載のように、尾静脈注射による投与4時間後の肝臓におけるルシフェラーゼ発現を測定することにより求めた。活性は、0.5mgのmRNA/kgの用量で比較し、実施例1に記載のように、投与4時間後に測定したngルシフェラーゼ/g肝臓として、表した。表3の化合物番号は、表1の化合物番号を表す。
【0143】
表3.新規カチオン性脂質およびその活性
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0144】
実施例4
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-5-(ジメチルアミノ)ペンタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-7)の合成
【化13】
【0145】
化合物4-2の合成
ケトン4-1(1.10g、1.62mmol)および1-デシルアミン(2.43mmol、382mg、0.486mL)のDCE(10mL)の溶液を室温で15分間撹拌し、続いてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.43mmol、515mg)および酢酸(2.43mmol、146mg;0.138mL)を加えた。混合物を室温で2日間撹拌した後、反応混合物を濃縮した。残渣をヘキサンの混合で希釈し、希NaOH、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した(無色の油、1.41g)。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc/EtN、95:5:0~80:20:1)で精製した。目的の生成物を無色の油として得た(863mgの無色の油、1.05mmol、収率65%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.98 (d, 5.8 Hz, 4H), 2.54 (t, 7.1 Hz, 2H), 2.43 (quintet, 5.5 Hz, 1H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.68-1.57 (m, 6H), 1.50-1.41 (m, 2H), 1.41-1.08 (70H), 0.92-0.86 (m, 15H), 0.86-0.77 (br. 1H).
【0146】
化合物4-3の合成
室温でCHCl(1mL)に5-ブロモ吉草酸(1.12mmol、204mg)を撹拌した溶液に、塩化チオニル(3.36mmol、400mg、0.25mL)のCHCl(5mL)の溶液を、1分間かけて加え、続いて、DMF(約16mg)を加えた。次いで、混合物を2時間加熱還流した。次に、反応混合物を真空で濃縮した。酸塩化物を次の工程にそのまま使用した。
上記の5-ブロモペンタノイルクロリドのベンゼン溶液(5mL)を、4-2(230mg、0.28mmol)およびトリエチルアミン(5.6mmol、565mg、0.780mL)、およびDMAP(5mg)のベンゼン(5mL)の溶液に、室温で2分間で滴下して加えた。添加後、反応物を室温で1時間撹拌した。メタノール(1mL)を加え、混合物を2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、98:2~85:15)で精製した。目的の生成物を無色の油として得た(250mg、0.25mmol、91%、無色の油)。
【0147】
化合物I-7の合成
4-2(250mg、0.25mmol)にジメチルアミン(THF中2M、10mL)を加えた。溶液を64℃で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮した。残渣をヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、茶色がかった油(約233mg)を得た。粗生成物(233mg)をシリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~6%のメタノール)によって精製した。目的の生成物を、(194mg、無色の油、0.20mmol、82%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.60-4.20 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97, 3.96 (2セットのダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.60 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.06-2.99 (m, 2H), 2.34-2.24 (m, 8H), 2.21 (シングレット, 6H), 1.72-1.56 (m, 8H), 1.56-1.37 (m, 8H), 1.37-1.10 (66H), 0.91-0.85 (m, 15H).
【0148】
実施例5
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-18)の合成
【化14】
【0149】
化合物I-18の合成(方法A)
室温でCHCl(10mL)に4-(ジメチルアミノ)酪酸塩酸塩(1.12mmol、188mg)およびDMF(10~20μL)を撹拌した溶液に、塩化オキサリル(5.6mmol、722mg、0.496mL)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物(濃い赤色)を減圧下で濃縮した。得られた酸塩化物(ブロック状の赤色の固体)を、次の工程にそのまま使用した。
上記のアシルクロライドのCHCl(10mL)溶液を、4-2(230mg、0.28mmol)、トリエチルアミン(5.6mmol、565mg、0.780μL)およびDMAP(5mg)のCHCl溶液(5mL)に、室温で滴下して加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc/EtN、80:20:0.1~75:25:1)で精製し、さらにシリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%のメタノール)で精製した。目的の生成物を、(92mg、無色の油、0.10mmol、35%)として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.57-4.29 (br. 0.4H), 3.97, 3.96 (2セットのダブレット, 5.8 Hz, 5.8 Hz, 4H), 3.63 (クインテット状, 6.8 Hz, 0.6H), 3.06-3.00 (m, 2H), 2.35-2.26 (m, 8H), 2.213, 2.211 (2セットのシングレット, 6H), 1.82 (セクステット状, 7.6 Hz, 2H), 1.65-1.56 (m, 6H), 1.54-1.48 (m, 2H), 1.47-1.37 (m, 4H), 1.36-1.06 (66H), 0.91-0.86 (m, 15H).
【0150】
化合物I-18の合成(方法B)
4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(2当量、3.04mmol、510mg)、および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、DMAP、4.56mmol、557mg)のアセトニトリル(30mL)の溶液に、DCC(2.2当量、3.34mmol、690mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。4-2(1.25g、1.52mmol)のCHCl(6mL)溶液を加え、得られた混合物を一晩撹拌した。次の日、さらにDCC(450mg)を加え、混合物をさらに1日撹拌した。その後、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、無色の油を得た。生成物を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%メタノール)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(1.14g、81%)。
【0151】
実施例6
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-5-(ジエチルアミノ)ペンタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-8)の合成
【化15】
【0152】
化合物I-8の合成
4-3(179mg、0.18mmol)、ジエチルアミン(0.90mmol、66mg、0.093mL)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.36mmol、46mg、0.063mL)のアセトニトリル(6mL)混合物を密封し、83℃で24時間加熱した。反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、茶色がかった油(153mg)を得た。粗生成物(233mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~6%のMeOH)によって精製した。目的の生成物を、(136mg、無色の油、0.14mmol、77%)として得た。
【0153】
実施例7
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-5-(ピロリジン-1-イル)ペンタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-9)の合成
【化16】
【0154】
化合物I-9の合成
4-3(200mg、0.20mmol)、ピロリジン(50当量、0.83mL、10mmol)のTHF(10mL)混合物を密封し、64℃で24時間加熱した。反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、茶色がかった油を得た。粗生成物(233mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~6%のMeOH)によって精製した。目的の生成物を、(158mg、無色の油、0.16mmol、80%)として得た。
【0155】
実施例8
ビス(2-ヘキシルデシル) 7-(N-デシル-4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)トリデカンジオエート(化合物I-16)の合成
【化17】
【0156】
8-2の合成
8-1(1当量、1.15g、1.62mmol)および1-デシルアミン(1.5当量、2.43mmol、382mg、0.486mL)のDCE(10mL)溶液を室温で約15分間撹拌した。溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.5当量、2.43mmol、515mg)およびAcOH(1.5当量、2.43mmol、146mg、0.14mL)を加えた。混合物を室温で3日間撹拌した。次に、反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン/EtOAc(99:1)で希釈し、希NaOH溶液、飽和NaHCO、および食塩水で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルのショートカラムに注いだ。カラムをヘキサン、EtOAcおよびEtNの混合物(95:5:0~80:20:1)で溶出した。純粋な生成物を含む画分を合わせて、濃縮した。目的の生成物を無色の油として得た(1.28g、1.51mmol、93%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 2.53 (t, 7.2 Hz, 2H), 2.43 (クインテット状, 5.5 Hz, 1H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.68-1.57 (m, 6H), 1.49-1.40 (m, 2H), 1.40-1.08 (74H), 0.91-0.85 (m, 15H), 0.83-0.74 (br. 1H).
【0157】
化合物I-16の合成
室温で4-(ジメチルアミノ)酪酸塩酸塩(2.1mmol、352mg)およびDMF(約13mg)を撹拌したCHCl(15mL)溶液に、Ar下、塩化オキサリル(3当量、6.3mmol、800mg、0.55mL)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物(薄オレンジ色の溶液)を真空で濃縮した。得られた酸塩化物(8-3、薄褐色の固体)を次の反応にそのまま使用した。
上記のアシルクロライドのCHCl(10mL)溶液を、室温で、8-2(300mg、0.35mmol)、トリエチルアミン(10.5mmol、1.06g、1.5mL)およびDMAP(5mg)のCHCl(5mL)溶液に加えた。添加後、反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を濃縮した後、生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、EtOAcおよびEtN、80:20:0.1~70:30:1)によって単離し、生成物をシリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%MeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を、淡黄色の油(110mg、0.11mmol、32%)として得た。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm) δ: 4.57-4.34 (br. 0.4H), 3.98-3.94 (m, 4H), 3.64 (クインテット状, 6.8 Hz, 0.6H), 3.06-3.00 (m, 2H), 2.35-2.25 (m, 8H), 2.213, 2.210 (2セットのシングレット, 6H), 1.82 (セクステット状, 7.4 Hz, 2H), 1.65-1.56 (m, 6H), 1.54-1.48 (m, 2H), 1.48-1.37 (m, 4H), 1.37-1.06 (70H), 0.91-0.86 (m, 15H).
【0158】
実施例9
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(4-(ジメチルアミノ)-N-(2-エチルヘキシル)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-20)の合成
【化18】
【0159】
9-2の合成
9-1(1当量、0.82g、1.21mmol)および2-エチル-1-ヘキシルアミン(1.5当量、1.81mmol、234mg)のDCE(8mL)溶液を室温で約15分間撹拌した。溶液にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.5当量、1.81mmol、384mg)およびAcOH(1.5当量、1.81mmol、109mg)を加えた。混合物を室温で2日間撹拌した。次に、反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサンおよびEtOAc(約99:5)で希釈し、希NaOH、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。抽出物をシリカゲルのショートカラムを通して濾過した。カラムをヘキサンとEtOAcの混合物(95:5)で洗浄し、次に、ヘキサン、EtOAcおよびEtNの混合物(80:20:0.5)で洗浄した。後者の洗浄で得た濾液を濃縮し乾燥させた。これにより、純粋な生成物を無色の油として得た(888mg、1.12mmol、93%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.98 (d, 5.8 Hz, 4H), 2.45 (d, 5.1 Hz, 2H), 2.39 (クインテット状, 5.5 Hz, 1H), 2.30 (t, 7.5 Hz, 4H), 1.68-1.57 (m, 6H), 1.41-1.08 (65H), 0.92-0.85 (m, 18H), 0.84-0.78 (br. 1H).
【0160】
9-4の合成
室温で5-ブロモ吉草酸(2.24mmol、405mg)を撹拌したCHCl(2mL)溶液に、塩化チオニル(3当量、6.72mmol、800mg、0.49mL)のCHCl(5mL)溶液を1分間でゆっくりと加えた。DMF(小さな2滴、約16mg)を反応混合物に加えた。次に、混合物を2時間加熱還流した。反応混合物を真空で濃縮した。得られた酸塩化物9-3を次の工程にそのまま使用した。
上記の5-ブロモペンタノイルクロリドのベンゼン(8mL)溶液を、9-2(444mg、0.56mmol)、トリエチルアミン(1.56mL)およびDMAP(5mg)のベンゼン(5mL)溶液に、室温で、2分で加えた。添加後、混合物を室温で一晩撹拌した。真空で溶媒をエバポレーションした後、生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、99:1~90:10)によって単離した。目的の生成物は、次の工程のために十分に純粋であった(無色の油、527mg、0.55mmol、98%)。
【0161】
化合物I-20の合成
9-4(260mg、0.27mmol)を含む圧力フラスコに、ジメチルアミン(THF中2M、10mL)を加えた。溶液を64℃(油浴温度)で一晩撹拌した。過剰のアミンと溶媒をエバポレーションした。残渣を、酢酸エチルとヘキサンの混合物(95:5)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過した。パッドをヘキサンとEtOAcの混合物(95:5)で洗浄し、次に、ヘキサン、EtOAcおよびEtNの混合物(80:20:1)で洗浄した。後者の洗浄からの濾液を濃縮して乾燥させた。これにより、粗生成物を褐色の油(233mg)として得た。粗生成物を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(204mg、0.22mmol、82%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.27 ppm) δ: 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.66-3.57 (m, ca 1H), 3.19-2.99 (2セットのピーク, 2H), 2.38-2.24 (m, 8H), 2.22 (シングレット, 6H), 1.72-1.37 (m, 15H), 1.37-1.10 (60H), 0.91-0.85 (m, 18H).
【0162】
実施例10
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(3-(ジメチルアミノ)-N-ノニルプロパンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-25)の合成
【化19】
【0163】
10-1の合成
3-ブロモプロピオン酸(2.02mmol、311mg)のCHCl(5mL)およびDMF(0.01mL)の溶液に、塩化オキサリル(5.05mmol、641mg、0.44mL)を室温で加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次に、混合物を真空で濃縮した。残留した液体/固体(黄色)を10mLのCHClに溶解し、4-2(833mg、1.02mmol)、トリエチルアミン(5.05mmol、0.7mL)およびDMAP(5mg)のCHCl(10mL)溶液に、室温で、4分で加えた。添加後、混合物を室温で2時間撹拌した。真空で溶媒をエバポレーションした後、生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、99:1~90:10)によって単離した。目的の生成物を無色の油として得た(794mg、0.83mmol、81%)。
【0164】
化合物I-25の合成
10-1(283mg、0.30mmol)およびジメチルアミン(THF中2M、12mL)の混合物を、圧力フラスコ中で、68℃(油浴温度)で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、茶色がかった油(302mg)を得た。粗生成物(302mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によって精製した。目的の生成物を無色の油として得た(169mg、0.18mmol、61%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26) δ: 4.50-4.31 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97 (ショルダーダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.60 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.07-3.00 (m, 2H), 2.65 (q状, 7.6 Hz, 2H), 2.48 (q状, 7.6 Hz, 2H), 2.29 (ショルダートリプレット, 7.6 Hz, 4H), 2.26, 2.25 (2セットのシングレット, 6H), 1.66-1.56 (m, 6H), 1.56-1.48 (m,2H), 1.48-1.37 (m, 4H), 1.37-1.10 (66H), 0.91-0.85 (m, 15H).
【0165】
実施例11
ビス(2-ヘキシルデシル) 7-(N-デシル-4-(ピロリジン-1-イル)ブタンアミド)トリデカンジオエート(化合物I-29)の合成
【化20】
【0166】
11-1の合成
4-ブロモ酪酸(0.97mmol、161mg)のCHCl(3mL)およびDMF(0.01mL)の溶液に、塩化オキサリル(3当量、2.91mmol、370mg、0.25mL)を室温で加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。次に、反応混合物を真空で濃縮した。残留した液体/固体(淡黄色)を5mLのCHClに溶解し、8-2(410mg、0.48mmol)、トリエチルアミン(0.4mL)、およびDMAP(2mg)のCHCl(20mL)溶液を、室温で、2分で加えた。添加後、得られた混合物を室温で2.5時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=9:1)は、2つの主要なスポットを示した。次に、反応混合物を減圧下、室温で濃縮した。残渣を精製せずに次の反応に使用した。
【0167】
化合物I-29の合成
11-1を含む上記の残渣を、ピロリジン(2.10mL、25mmol)およびTHF(15mL)の混合物に取った。混合物を圧力フラスコに移し、68℃で一晩加熱した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、黄色の油/固体を得た。粗生成物(300mg)をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(CHCl中、0%~10%のMeOHおよび0%~0.5%のEtN)によって精製した。目的の生成物を黄色の油(215mg)として得た。生成物(215mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(162mg、0.16mmol、34%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm) δ: 4.57-4.34 (br. 0.4H), 3.98-3.94 (m, 4H), 3.64 (クインテット状, 6.8 Hz, 0.6H), 3.06-3.00 (m, 2H), 2.51-2.44 (m, 6H), 2.37-2.21(m, 6H), 1.86 (セクステット状, 7.6 Hz, 2H), 1.80-1.71 (m, 4H), 1.65-1.48 (m, 8H), 1.48-1.37 (m, 4H), 1.37-1.06 (70H), 0.91-0.86 (m, 15H).
【0168】
実施例12
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(4-(ジメチルアミノ)-N-(2-エチルヘキシル)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-30)の合成
【化21】
【0169】
化合物I-30の合成
4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.50mmol、85mg)および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、DMAP、0.75mmol、92mg)のアセトニトリル(5mL)溶液に、DCC(1.1mmol×2、226mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。9-2(160mg、0.20mmol)のCHCl(1mL)溶液を反応混合物に加え、得られた混合物を週末にわたって撹拌した。さらにDCC(135mg)を加え、さらに1日撹拌した。TLC分析に基づき進行が観察されなかった。反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサンとEtOAcの混合物(約99:5)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過した。カラムをヘキサンとEtOAcの混合物(95:5)で洗浄し、次に、ヘキサン、EtOAcおよびEtNの混合物(80:20:1)で洗浄した。後者の洗浄からの濾液を濃縮して乾燥させた(133mg)。粗生成物(133mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を、(48mg、無色の油、0.053mmol、27%)として得た。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.27 ppm) δ: 3.97 (d, 5.8 Hz, 4H), 3.70-3.60 (m, ca 1H), 3.19-2.99 (2セットのピーク, 2H), 2.39-2.25 (m, 8H), 2.22 (シングレット, 6H), 1.86-1.76 (m, 2H), 1.72-1.37 (m, ca 11H), 1.37-1.10 (60H), 0.91-0.85 (m, 18H).
【0170】
実施例13
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-5-(ジブチルアミノ)ペンタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-31)の合成
【化22】
【0171】
化合物I-31の合成
4-3(284mg、0.29mmol)、THF(10mL)、ヨウ化ナトリウム(5mg)およびジブチルアミン(10mmol、1.29g、1.68mL)の混合物を、圧力フラスコ中で、78℃で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのパッドを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、褐色がかった油(生成物およびジブチルアミン)を得た。油をヘキサンで希釈し、希HCl水溶液(0.5M)で2回洗浄し、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出物を減圧下で濃縮した。粗生成物(309mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によって精製した。目的の生成物を無色の油として得た(216mg、0.21mmol、72%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.50-4.35 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97, 3.96 (2セットのダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.61 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.07-2.99 (m, 2H), 2.45-2.36 (m, 6H), 2.34-2.27 (m, 6H), 1.70-1.56 (m, 8H), 1.56-1.36 (m, 12H), 1.37-1.10 (70 H), 0.97-0.85 (m, 21H).
【0172】
実施例14
10-(4-(ジメチルアミノ)-N-ノニルブタンアミド)ノナデカン-1,19-ジイル ビス(2-ブチルオクタノエート)(化合物I-32)の合成
【化23】
【0173】
化合物I-32の合成
4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(2当量、1.08mmol、181mg)、および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、DMAP、1.62mmol、198mg)のアセトニトリル(10mL)溶液に、DCC(2.2当量、1.18mmol、245mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。次に、14-1(442mg、0.54mmol)のCHCl(2mL)溶液を加えた。得られた混合物を一晩撹拌した。さらにDCC(140mg)を加え、混合物をさらに1日撹拌した。次に、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、黄色の油(381mg)を得た。粗生成物(381mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によって精製した。目的の生成物を無色の油として得た(345mg、0.38mmol、70%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm) δ: 5.30-4.34 (br., 0.3H), 4.061, 4.056 (2セットのトリプレット, 6.7 Hz, 4H), 3.64 (クインテット状, 6.8 Hz, 0.7H), 3.07-3.01 (m, 2H), 2.35-2.26 (m, 6H), 2.214, 2.211 (2セットのシングレット, 6H), 1.82 (セクステット状, 7.6 Hz, 2H), 1.65-1.48 (m, 10H), 1.48-1.37 (m, 8H), 1.37-1.02 (60H), 0.90-0.85 (m, 15H).
【0174】
実施例15
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-3-(ピロリジン-1-イル)プロパンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-33)の合成
【化24】
【0175】
化合物I-33の合成
10-1(283mg、0.30mmol)、ピロリジン(1.25mL、15mmol)およびTHF(10mL)の混合物を、圧力管内で、64℃で一晩加熱した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して黄色の油を得た。粗生成物(314mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(113mg、0.12mmol、40%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26) δ: 4.55-4.30 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97 (ショルダーダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.61 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.06-3.00 (t状, 2H), 2.81 (q状, 7.6 Hz, 2H), 2.58-2.51(m, 6H), 2.292, 2.285 (2セットのトリプレット, 7.5 Hz, 4H), 1.83-1.73 (m, 4H), 1.65-1.56 (m, 6H), 1.56-1.48 (m,2H), 1.48-1.37 (m, 4H), 1.37-1.10 (66H), 0.91-0.85 (m, 15H).
【0176】
実施例16
ビス(2-ブチルオクチル) 10-(N-デシル-5-(ヘキシル(メチル)アミノ)ペンタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-34)の合成
【化25】
【0177】
16-1の合成
4-3(200mg、0.20mmol)、ヘキシルアミン(20mmol、2g)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5当量、1.0mmol、0.17mL)、およびヨウ化ナトリウム(10mg)のアセトニトリル(6mL)の混合物を密封し、70℃で24時間加熱した。反応混合物を減圧下(約30mmHg)で75~85℃で濃縮した。TLCは、過剰のヘキシルアミンのほとんどが除去されたことを示した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して褐色の油(192mg)を得て、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0178】
化合物I-34の合成
16-1(192mg、0.19mmol)のTHF(5mL)溶液に、室温でホルムアルデヒドHCHO溶液(500mg、37重量%水溶液)を加えた。得られた混合物を30分間撹拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.2mmol、243mg)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサンの混合で取り、希NaOH溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液および食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶液を濃縮して乾燥させた(黄色の油)。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、黄色の油(220mg)を得た。粗生成物(220mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(113mg、0.13mmol、69%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm) δ: 4.50-4.35 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97, 3.96 (2セットのダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.60 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.06-2.98 (m, 2H), 2.36-2.26 (m, 10H), 2.191, 2.189 (2セットのシングレット, 3H), 1.70-1.56 (m, 8H), 1.56-1.36 (m, 10H), 1.37-1.10 (72 H), 0.91-0.85 (m, 18H).
【0179】
実施例17
ビス(2-ヘキシルデシル) 7-(N-デシル-3-(ジメチルアミノ)プロパンアミド)トリデカンジオエート(化合物I-35)の合成
【化26】
【0180】
化合物I-35の合成
3-ジメチルアミノプロピオン酸塩酸塩(2当量、0.62mmol、95mg)および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、DMAP、0.93mmol、114mg)のアセトニトリル(10mL)溶液に、DCC(2.2当量、0.68mmol、141mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。8-2(262mg、0.31mmol)のCHCl(2mL)溶液を加え、得られた混合物を週末にかけて撹拌した。TLC(クロロホルム/MeOH、9:1)は、溶媒前に主要なスポットを示し、これは、脱離生成物で、出発物質でなく、少しの目的の生成物であり得る。反応混合物を濃縮した。可能性のある脱離生成物(107mgの無色の油)をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc、95:5)によって単離し、ジメチルアミンのTHF溶液(2M、9mL)で、室温で4日間処理した。混合物を濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して黄色の油を得た。粗生成物を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%MeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(62mg)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26) δ: 4.50-4.36 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 3.97, 3.96 (2セットのダブレット, 5.8 Hz, 4H), 3.61 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.07-3.00 (m, 2H), 2.65 (q状, 7.2 Hz, 2H), 2.53-2.41 (m, 2H), 2.31-2.26 (m, 4H), 2.26, 2.25 (2セットのシングレット, 6H), 1.66-1.56 (m, 6H), 1.56-1.48 (m,2H), 1.48-1.37 (m, 4H), 1.37-1.10 (70H), 0.91-0.85 (m, 15H)
【0181】
実施例18
ビス(2-ヘキシルデシル) 7-(3-(ジメチルアミノ)-N-(6-((2-エチルヘキシル)オキシ)-6-オキソヘキシル)プロパンアミド)トリデカンジオエート(化合物I-36)の合成
【化27】
【0182】
18-2の合成
3-ブロモプロピオニル酸(0.34mmol、52mg)のCHCl(3mL)およびDMF(細い針から1滴)の溶液に、塩化オキサリル(0.86mmol、109mg、74μL)を室温で加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。次に、混合物を減圧下、室温で60分間濃縮した。残留した液体/固体(黄色)を5mLのCHClに溶解し、18-1(160mg、0.17mmol)、トリエチルアミン(0.86mmol、0.12mL)およびDMAP(1mg)のCHCl(5mL)溶液に、室温で、1分で加えた。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、次に濃縮した。生成物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン、EtOAc、およびEtN、95:5~85:15)によって単離した。目的の生成物を無色の油として得た(99mg、0.09mmol、53%)。
【0183】
化合物I-36の合成
18-2(99mg、0.09mmol)を含む圧力フラスコに、ジメチルアミン(THF中2M、5mL)を加えた。溶液を68℃(油浴温度)で2日間撹拌した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、褐色の油(94mg)を得た。生成物(94mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(71mg、0.069mmol、76%)。
1HNMR (400 MHz, CDCl3, 7.26) δ: 4.53-4.35 (br, 推定0.3H, アミド結合について異性化が遅いため), 4.02-3.93 (m, 6H), 3.62 (クインテット状, 7.0 Hz, 0.7H), 3.07-3.01 (m, 2H), 2.65 (q状, 7.6 Hz, 2H), 2.50-2.44 (m, 2H), 2.34-2.26 (m, 6H), 2.26, 2.25 (2セットのシングレット, 6H), 1.69-1.56-1.48 (m, 推定11H, 水のピークと重複), 1.49-1.37 (m, 4H), 1.37-1.10 (66H), 0.92-0.86 (m, 18H).
【0184】
実施例19
ジ(トリデカン-7-イル) 10-(N-デシル-4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-37)の合成
【化28】
【0185】
19-2の合成
19-1(1当量、0.493g、0.70mmol)および1-デシルアミン(1.5当量、1.05mmol、165mg、0.21mL)のDCE(10mL)溶液を、室温で約15分間撹拌した。この溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.5当量、1.05mmol、222mg)およびAcOH(1.5当量、1.05mmol、63mg、0.059mL)を加えた。混合物を室温で2日間撹拌した。次に、反応混合物を濃縮した。残渣をヘキサンで希釈し、希NaOH、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、目的の生成物を無色の油として得た(582mg、0.69mmol、98%)。生成物をさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0186】
化合物I-37の合成
4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(1.71mmol、287mg)および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、DMAP、2.07mmol、253mg)のアセトニトリル(15mL)溶液に、DCC(2.2当量、1.52mmol、313mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。19-2(582mg、0.69mmol)のCHCl(3mL)溶液を加え、得られた混合物を一晩撹拌した。次の日、さらにDCC(200mg)を加え、週末(4日間)撹拌を続けた。次に、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して黄色の油を得た。生成物を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%MeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た。
【0187】
実施例20
ビス(2-ヘキシルデシル) 10-(N-デシル-4-(ジメチルアミノ)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-38)の合成
【化29】
【0188】
20-2の合成
ケトン20-1(0.92g、1.16mmol)および1-デシルアミン(2.03mmol、319mg、0.40mL)のDCE(6mL)溶液を、室温で15分間撹拌し、続いて、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.03mmol、429mg)およびAcOH(2.03mmol、121mg、0.115mL)を加えた。混合物を室温で2日間撹拌した後、反応混合物を濃縮した。残渣をヘキサンで希釈し、希NaOH、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。抽出物をシリカゲルのショートカラムで濾過し、カラムをヘキサン/EtOAc/EtNの混合物(95:5:0~80:20:1)で洗浄した。目的の生成物を無色の油として得た(814mg、無色の油、0.87mmol、収率75%)。
【0189】
I-38の合成
4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(2当量、0.76mmol、127mg)、および4-ジメチルアミノピリジン(3当量、1.14mmol、139mg)のCHCN(5mL)溶液に、DCC(2.2当量、0.84mmol、172mg)を加え、混合物を室温で45分間撹拌した。20-2(350mg、0.38mmol)のDCM(1mL)溶液を加え、得られた混合物を一晩撹拌した。次の日、さらにDCC(50mg)を加え、さらに1日撹拌した。次に、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して無色の油を得た。生成物を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(微量のEtNを含むクロロホルム中0~5%MeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(260mg)。
【0190】
実施例21
ビス(2-ヘキシルデシル) 10-(N-デシル-4-(ピロリジン-1-イル)ブタンアミド)ノナデカンジオエート(化合物I-39)の合成
【化30】
【0191】
21-1の合成
4-ブロモ酪酸(1.00mmol、167mg)のDCM(3mL)およびDMF(小さな1滴)の溶液に、室温で塩化オキサリル(3当量、3.00mmol、381mg、0.26mL)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。次に、反応混合物を真空で濃縮した。残留した液体/固体(淡黄色)を5mLのDCMに溶解し、20-2(464mg、0.50mmol)、トリエチルアミン(0.42mL)およびDMAP(2mg)のDCM(5mL)溶液を、室温で、2分で加えた。添加後、得られた混合物を室温で2.5時間撹拌した。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=9:1)は、2つの主要なスポットを示した。次に、反応混合物を減圧下、室温で濃縮した。残渣を精製せずに次の反応に使用した。
【0192】
I-39の合成
上記の残渣を、ピロリジン(2.20mL、26mmol)およびTHF(15mL)の混合物に取った。混合物を圧力フラスコに移し、68℃で一晩加熱した。混合物を冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を、ヘキサン、酢酸エチルおよびEtNの混合物(80:20:1)に取り、シリカゲルのショートカラムを通して濾過し、同様の溶媒混合物で洗浄した。濾液を濃縮して、黄色の油/固体(359mg)を得た。粗生成物(359mg)を、シリカゲルのフラッシュドライカラムクロマトグラフィー(クロロホルム中0~5%のMeOH)によってさらに精製した。目的の生成物を無色の油として得た(165mg)。
【0193】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で参照され、および/または出願データシートにリストされた、すべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物(US62/791,566および62/890,469を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じ、様々な特許、出願、および刊行物の概念を使用して、さらに別の実施形態を提供するように修正することができる。これらおよび他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに、すべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【外国語明細書】