(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161366
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】急性疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024113787
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2020534422の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】62/608,420
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517155196
【氏名又は名称】ガルバニ バイオエレクトロニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドネガ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルヴォルデルドンク,マルグリート
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,イーシャ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外傷、出血、及びショック等の急性疾患を治療するために役立つ方法を提供する。
【解決手段】急性疾患を治療するために、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激するためのシステムであって、神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、システムは、神経と信号伝達的に接触するための少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極に電気的に接続されており、神経に電気信号を印加するために少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている少なくとも1つの制御部と、を備え、電気信号は、急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善をもたらす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性疾患を治療するために、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激するためのシステムであって、前記神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
前記システムは、前記神経と信号伝達的に接触するための少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されており、前記神経に電気信号を印加するために前記少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている少なくとも1つの制御部と、を備え、
前記電気信号は、前記急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善をもたらし、
前記生理学的パラメータの前記改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗がより低いレベルに回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである、システム。
【請求項2】
前記急性疾患は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の生命を脅かすものである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
神経インターフェースをさらに備え、前記神経インターフェースは、前記少なくとも1つの電極を備える請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経の周囲への配置に適している請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記神経インターフェースは、前記脾動脈の周囲への配置に適している請求項3乃至4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経上への配置に適している請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記神経インターフェースは、前記脾動脈上への配置に適している請求項3乃至6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経内への配置に適している請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記神経インターフェースは、前記脾動脈内への配置に適している請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
配置部位は、膵臓の表面から分離されている請求項3乃至9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
配置部位は、脾動脈ループにある請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電極は、第1電極及び第2電極を備える請求項1乃至11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記第1電極はアノードで、前記第2電極はカソードである請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2電極は前記神経と信号伝達的に接触するように構成され、前記第1電極は前記神経と信号伝達的に接触しないように構成され、任意選択で前記第1電極は接地され、任意選択で前記第1及び第2電極は単極構成を形成する請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの電極は、第3電極をさらに備え、前記第2電極は前記神経の長羽軸方向で前記第1電極と前記第3電極との間に位置付けられている請求項12又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第3電極はアノードである請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1電極及び前記第3電極の幅は、0.5乃至4mmの間であって、任意選択で0.5乃至2mmの間、任意選択で0.5乃至1.5mmの間、さらに任意選択で0.7乃至1mmの間、任意選択で1乃至4mmの間、任意選択で1乃至3mmの間、任意選択で2乃至4mmの間、任意選択で2乃至3mmの間である請求項12乃至16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記第1電極と前記第2電極との間の距離及び/又は前記第2電極と前記第3電極との間の距離は、請求項33、34、又は35に従属する場合、5mm乃至7mmであり、任意選択で5.5mm乃至6.5mm、さらに任意選択で6.2mm乃至6.4mmである請求項12乃至17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記システムは信号生成部を備え、前記信号生成部は、前記制御部からの制御操作に応じて、前記電気信号を前記少なくとも1つの電極に送達するように構成されている請求項1乃至18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記信号生成部は、少なくとも1つの電流又は電圧源を備える請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記電気信号は、300Hz以下の周波数を有し、周期的に印加される請求項1乃至20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記電気信号は、50Hz以下の周波数を有し、連続的に印加される請求項1乃至21のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記電気信号により前記神経に印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm2当たり5μC乃至1100μCの間であって、任意選択で相毎にcm2当たり5μC乃至450μC、任意選択で相毎にcm2当たり5μC乃至150μC、任意選択で相毎にcm2当たり50μC乃至450μC、さらに任意選択で相毎にcm2当たり50μC乃至160μCである請求項1乃至22のいずれかに記載のシステム。
【請求項24】
前記少なくとも1つの制御部は、プロセッサと、前記プロセッサでロードされて実行されると、前記プロセッサに前記少なくとも1つの電極の操作を少なくとも制御させるコード部分を備える実行可能なコンピュータプログラムを有する非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とを備える請求項1乃至23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
脾臓に分布する神経における神経活性を可逆的に刺激する方法であって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の前記システムを提供することと、
前記神経と信号伝達的に接触する少なくとも1つの電極を配置することと、
前記少なくとも1つの電極の操作を少なくとも1つの制御部で制御して、電気信号を前記少なくとも1つの脾動脈神経に印加して、神経活性を刺激することと、
を備える方法。
【請求項26】
前記方法は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するためのものである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法であって、前記方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することを備え、前記神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、前記電気信号は急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善し、前記生理学的パラメータの改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗がより低いレベルに回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである、方法。
【請求項28】
前記方法は、請求項1乃至24のいずれかに記載の前記システムによって実行される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
脾臓に分布する神経における神経活性を可逆的に刺激するコンピュータ実装される方法であって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
請求項1乃至24のいずれかに記載の前記システムの少なくとも1つの電極の操作を制御して、信号を前記神経に印加して、神経活性を刺激することを含む方法。
【請求項30】
前記方法は、外傷又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するためのものである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法において使用される神経刺激性電気信号であって、前記電気信号は、請求項1乃至30のいずれかに記載の前記電気信号である神経刺激性電気信号。
【請求項32】
請求項1乃至24のいずれかに記載の前記システムの前記神経インターフェースが信号伝達的に接触している改変された神経であって、前記神経は前記脾臓に分布し、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、前記少なくとも1つの電極は、前記神経と信号伝達的に接触し、それにより前記神経はその自然な状態の前記神経から区別でき、前記神経は外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患にり患した対象者に存在する、改変された神経。
【請求項33】
前記改変された神経は、脾動脈神経である請求項31に記載の改変された神経。
【請求項34】
前記少なくとも1つの電極は、脾動脈が膵臓と直接接触していない部位において前記神経と接触している請求項32に記載の改変された神経。
【請求項35】
前記部位は脾動脈ループである請求項34に記載の改変された神経。
【請求項36】
脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することにより取得可能な改変された神経であって、
請求項25乃至30のいずれか一項に記載の方法によって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携する、改変された神経。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性疾患の治療に関する。さらに具体的には、本発明は、急性疾患の治療のための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中に言及されている急性疾患とは、治療されずに放置された場合、生命を脅かす恐れのある対象者の生理学的状態の急速な悪化のことを言う。例として、外傷、敗血症、大量出血、深刻な血友病、ループスの深刻な発症、深刻なクローンの発症、同種移植片/自家移植片拒絶、アナフィラキシー、及び内毒素性ショックが挙げられる。そのため、これらの対象には、苦痛の緩和並びに罹患及び死亡リスクを最小限に抑えるための早急な医療ケアが必要である。急性疾患の治療は病気に応じて変わり、状態の深刻度によってはこれらの治療はしばしば成功しない。
【0003】
反対に、慢性疾患とは、その間に基礎的な病状にほとんど変化がない又はその進行が遅い長期的な臨床経過によって特徴付けられるものである。例えば、関節炎(関節リウマチ等)、慢性膵炎、慢性閉塞性肺疾患、又は慢性心不全が挙げられる。しかしながら、慢性症状を持つ対象者は基礎疾患の経過の急激な悪化に苦しめられることもあり、このことは一般的に慢性疾患の急性増悪(acute-on-chronic)の発症と呼ばれる。急性と慢性疾患との区別は当技術分野では周知である。
【0004】
脾臓は身体の単球の数の半数を有しており、これにより、この器官は、特に内毒素血症ショックに応じた炎症の主因となっている[1]。脾臓は異なる神経枝により支配され、脾臓の神経支配は98%が交感神経であると報告されている([2]で概説されている)。脾臓神経の電気刺激は脾臓の血管反応に関連する[3]。脾臓神経の電気刺激は、慢性免疫及び炎症反応に関連する症状の治療に役立つ可能性があると報告されている(例えば、参考文献[4、5、6、7]を参照のこと)。しかしながら、急性疾患の脾臓神経刺激の生存促進効果は研究されていない。
【0005】
急性疾患を治療するさらに改善された方法を特定することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、脾臓に分布する神経、特に脾動脈を囲む神経(本明細書中では脾動脈神経と呼ぶ)の神経調節が内毒素血症(LPS)ショックモデルの動物の生存性を高めたことを初めて説明する。特に、本発明者らは脾臓神経の電気刺激が、LPS治療される動物で劇的に下がる血圧を安定させ、血圧の最大低下を抑制することを見出した。従って、脾臓神経の神経活性の刺激は、急性疾患、特に、ショックに伴う生理学的変化を有するもののような生命を脅かす状態及び心血管性の機能障害(外傷、出血、及び敗血症性ショック等)を治療するための方法を提供する。これは、例えば、急性の臨床現場においての単発の治療として特に役立つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このように、本発明は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法を提供する。方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する(関連する)神経の神経活性を刺激することを備え、前記電気信号は急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善する。前記生理学的パラメータの前記改善は、セ氏36度(°C)乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化、及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれかである。
【0008】
本発明はまた、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法も提供する。方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する神経の神経活性を刺激することを備え、前記電気信号は、急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善する。前記生理学的パラメータの前記改善は、90/60mmHg乃至150/90mmHg間の全身性動脈血圧の生理学的数値を回復すること及び3乃至8mmHgの範囲の全身静脈圧を回復すること、約15mmHgまで肺血圧を回復すること、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗のより低いレベルを回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである。
【0009】
本発明はまた、急性疾患を治療するために、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する神経の神経活性を刺激するためのシステムも提供する。前記システムは、前記神経と信号伝達的に接触している少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されている少なくとも1つの制御部とを備える。前記少なくとも1つの制御部は前記神経に電気信号を印加するために前記少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている。前記電気信号は、前記急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善するように構成されている。前記生理学的パラメータの前記改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれかである。
【0010】
本発明はまた、対象者における急性疾患を治療するためのコンピュータ実装される方法も提供する。方法は、本発明の前記システムの少なくとも1つの電極の操作を制御して、信号を脾臓に分布する神経に印加して、前記神経の神経活性が可逆的に刺激されるように前記神経活性を刺激することを備える。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0011】
本発明はまた、プロセッサと、非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とを備えるコンピュータも提供する。前記非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は実行可能なコンピュータプログラムを有する。前記実行可能なコンピュータプログラムはコード部分を備える。前記コード部分は、前記プロセッサでロードされて実行されると、前記プロセッサに電気信号を印加するようにして、前記電気信号が急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善するように脾臓に分布する神経の神経活性を刺激する。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0012】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される神経刺激性電気信号も提供する。前記電気信号は、本明細書中に説明されている任意の電気信号である。
【0013】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される電気波形も提供する。前記電気波形は、脾臓に分布する神経の神経細胞膜の可逆の脱分極を引き起こし、活動電位が前記神経内でデノボ(de novo)に生成される。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0014】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される荷電粒子も提供する。前記荷電粒子は、脾臓に分布する神経の神経細胞膜の可逆の脱分極を引き起こし、活動電位が前記改変された神経内でデノボ(de novo)に生成される。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0015】
本発明はまた、本発明の前記システムの前記神経インターフェースが信号伝達的に接触している改変された神経も提供する。前記神経は前記脾臓に分布し、及び神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。前記少なくとも1つの電極が前記神経と信号伝達的に接触することで、前記神経はその自然な状態の前記神経から区別される。前記神経は急性疾患を持つ対象者に存在する。
【0016】
本発明はまた、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することにより取得可能な改変された神経も提供する。本発明の方法において、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携している。
【0017】
本発明はまた、脾臓に分布する神経と信号伝達的に接触している本発明のシステムを制御する方法も提供する。前記方法は、前記システムに制御指示を送信することを備え、それに応じて前記システムが前記神経に信号を印加する。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0018】
発明の詳細な説明
脾臓に分布する神経
脾臓の神経支配は、主に交感神経性又はノルアドレナリン作動性であり、ペプチドニューロンが残りのニューロンの大部分を示し得る。ヒトの脾臓は、脾動脈を囲う脾神経叢によって主に神経支配されている。脾動脈は、腹腔神経叢に由来し、脾神経叢として脾動脈から脾臓へと続く神経組織によって覆われている。脾神経叢は脾動脈が終末枝で分岐する門にて脾臓へと入り、脾神経叢はこれらの分岐へと続いて、脾臓の実質へと入る。
【0019】
脾神経叢は、腹腔動脈から脾臓まで主要な脾動脈を避ける、いくつかの神経束を含み、各神経束は神経線維の小束から構成されている。脾臓神経を避ける神経束(又は動脈周囲の神経束として公知)は本明細書中では脾動脈神経と呼ぶ。
【0020】
脾動脈のコースは変わりやすい。概して、膵臓の表面に沿って延びる傾向にあり、多くの場合、膵臓に直接接触している。起点部位と門における入り口点との間で、脾動脈が膵臓と直接接触しないように、脾動脈は特定の位置で膵臓の表面から離れることができる。
【0021】
本発明には、電気信号を印加することにより、脾臓に分布する神経の神経活性を調節することが含まれる。ここで神経は神経血管束と連携している。好適には、神経は脾動脈神経である。
【0022】
実施形態によっては、神経は交感神経である。
【0023】
実施形態によっては、本発明は、1つの脾動脈神経に電気信号を印加することを含んでもよい。他の実施形態では、本発明は、複数(すなわち束)の脾動脈神経を含んでもよい。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することを含んでもよい。他の実施形態では、本発明は、全ての脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することを含んでもよい。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、膵臓の表面から離れた脾動脈の一部と連携する、例えば、脾神経叢等の少なくとも1つの脾動脈神経に電気信号を印加することを含んでもよい。例えば、電気信号は、脾動脈ループに隣接する部位の少なくとも1つの神経に印加されてもよい。脾動脈ループは、例えば、0.5cm以上の距離で膵臓の表面から離れており、そこで介在する空間は、脂肪組織及び/又は結合組織によって満たされていることを特徴とする。この部位に電気信号を印加することは、脾動脈と連携している神経叢の分離をより直接的に可能にするという利点がある。この印加部位は、膵臓への外科的損傷を減少させる観点から、手術をより安全にすることも期待される。
【0026】
実施形態によっては、脾動脈ループは、1cm以上の距離で膵臓の表面から離れており、例えばこのループ頂部の内側曲面と膵臓の表面との距離が、約1乃至2cm、好適には約1.5cmである。この距離は、本明細書中で説明されているように、ループの高さと呼ばれてもよい。
【0027】
脾動脈ループは、約0.5cm以上のネック部を有していてもよく、この文脈では「ネック部」はループの第1脚部(脾動脈が脾臓の表面から離れる位置)の内側曲面とループの第2脚部(脾動脈が脾臓と直接接触に戻る位置)の内側曲面との間の直接的な距離のことを言う。実施形態によっては、ネック部は≧0.55cm、≧0.6cm、≧0.65cm、≧0.7cm、≧0.75cm、≧0.8cm、≧0.85cm、≧0.9cm、≧0.95cm、≧1cm、≧1.1cm、≧1.2cm、≧1.3cm、≧1.4cm、≧1.5cm、≧1.6cm、≧1.7cm、≧1.8cm、≧1.9cm、又は≧2.0cmである。実施形態によっては、脾動脈ループは、約1.1cm乃至約3.0cmの範囲内のネック部を有してもよい。
【0028】
脾動脈ループの数は、ヒト対象者間で異なることができるが、概して、脾動脈ループの数と対象者の年齢との間に正相関があるようである。典型的に、脾動脈ループは年齢が45歳を超えたヒト対象者でより多く観察される。
【0029】
実施形態によっては、信号印加部位は、1つの脾動脈ループに隣接する1以上の神経にあってもよい。
【0030】
実施形態によっては、信号印加部位は、複数の脾動脈ループに隣接する1以上の神経にあってもよい。実施形態によっては、複数の独立部位のそれぞれが、本発明の独立したシステム又は方法で刺激されてもよい。実施形態によっては、複数の上述の部位のそれぞれが、本発明の方法の単一のシステムや装置によって刺激されてもよい。
【0031】
実施形態によっては、信号は、複数の脾動脈ループのそれぞれの1以上の神経に同時に、順次に、又は別々に印加されてよい。
【0032】
同時にとは、実質的に同じ時に、複数の部位のそれぞれに信号を印加すること、すなわち、可能性のある遅れの誤差内で、ちょうど同じ時に複数の部位のそれぞれに信号を印加することを意図することを意味してもよい。別々にとは、互いに独立して複数の部位のそれぞれに信号を印加すること、すなわち、一致した順序で信号が印加されないことを意味してもよい。各信号は各部位に独立して伝達される。分離した信号の印加は、複数の部位のそれぞれ又はいくつかが、偶然に実質的に同じ時に信号を受信する結果になる可能性もあると理解される。順次にとは、定義された「順序」で、複数の部位のそれぞれに信号を印加することを意味してもよい。これには、実質的に同じ時に複数の独立部位のいくつかに信号を印加することが含まれてもよい。
【0033】
脾臓に分布する神経の刺激
本発明は脾臓に分布する神経に電気信号を印加し、神経内の神経活性を刺激することを含む。神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。刺激とは、神経の少なくとも一部における信号伝達活性が、神経のその部分におけるベースラインの神経活性と比較して増加している状態を意味し、ベースラインの神経活性とは、何か介入が起こる前の対象者の神経の信号伝達活性のことである。言い換えると、刺激は結果的に神経のその部分において総合的な神経活性を増加させる神経活性を作り出す。
【0034】
神経の「神経活性」とは、神経の信号伝達活性を意味し、例えば、神経内における活動電位の振幅、周波数、及び/又はパターンである。本明細書中で神経内における活動電位の文脈で使用される「パターン」という用語は、1以上の局所フィールド電位、複合活動電位、集合活動電位、及び神経又はその中のニューロンのサブグループ(例えば、線維束)における活動電位の大きさ、周波数、曲線下面積、及び他のパターンを含むことを意図している。
【0035】
刺激は、典型的に、神経活性を増加させること、例えば、神経の少なくとも一部において刺激点を超える活動電位を生成することを含む。軸索に沿う任意の点において、機能している神経は、神経細胞膜にわたってカリウム及びナトリウムイオンの分布を有する。軸索に沿う一点における分布は、軸索のその点の電気膜電位を決定し、それは次に隣接点におけるカリウム及びナトリウムイオンの分布に影響を与え、次にその点における軸索の電気膜電位を決定する等である。これはその正常な状態での神経の働きであり、ここで活動電位は軸索に沿って点から隣接する点へと伝播し、これは従来の実験により観察できる。
【0036】
神経活性の刺激を特徴付ける1つの方法は、軸索における1以上の点でのカリウム及びナトリウムイオンの分布であり、これは、伝播する活動電位の結果としての神経の1点又は複数の点に隣接した場所の電気膜電位によるものではなく、一時的な外部電界の印加により作り出される。一時的な外部電界は、神経の点の中のカリウム及びナトリウムイオンの分布を人工的に修飾し、このようしなければ発生することのない神経細胞膜の脱分極をもたらす。一時的な外部電界によって引き起こされた神経細胞膜の脱分極は、その点にわたってデノボ(de novo)の活動電位を生成する。これは破壊された状態での神経の働きであり、これは、隣接点の電気膜電位により影響を受けていない又は決定されていない電気膜電位を有する軸索の点(刺激を受けている点)におけるカリウム及びナトリウムイオンの分布により観察することができる。
【0037】
このようにして、神経活性の刺激は信号印加の点を通り越して続くことから、神経活性を増加させるものであると理解される。このように、デノボ(de novo)の活動電位が生成されて改変された神経に伝播していくように神経細胞膜が電界によって可逆的に脱分極されることから、信号印加の点における神経は修飾される。従って、デノボ(de novo)の活動電位が生成されることから、信号印加の点における神経は修飾される。
【0038】
信号が電気信号である場合、刺激は、神経細胞膜にわたるイオン分布への電流(例えば、神経と信号伝達的に接触している電極における1以上の電子又は神経外若しくは神経内の1以上のイオンであってもよい荷電粒子等)の影響に基づく。
【0039】
神経活性の刺激は、神経における神経活性の完全な刺激、すなわち、総合的な神経活性が神経全体において増加する実施形態を包含する。
【0040】
神経活性の刺激は部分的な刺激であってもよい。部分的な刺激は、神経の線維のそのサブセットのベースラインの神経活性と比較して、神経全体の総合的な信号伝達活性が部分的に増加する、又は神経の神経線維のサブセットの総合的な信号伝達活性が完全に増加する(すなわち、神経の線維のそのサブセットに神経活性がない)、又は神経の神経線維のサブセットの総合的な信号伝達が部分的に増加するようであってもよい。例えば、神経活性の増加が、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、若しくは≦95%である、又は神経の神経線維のサブセットでの神経活性が増加する。神経活性は当技術分野で周知の方法、例えば、軸索を通って伝搬する活動電位の数及び/又は活動電位の合計された活動を反映した局所フィールド電位の振幅により測定されてもよい。
【0041】
本発明の1つの利点は神経活性の刺激が可逆であることである。従って、神経活性の調節は恒久的ではない。例えば、信号の印加が中断すると、神経での神経活性は実質的に、1乃至60秒以内、又は1乃至60分以内、又は1乃至24時間以内(例えば、1乃至12時間、1乃至6時間、1乃至4時間、1乃至2時間以内)、又は1乃至7日間(例えば、1乃至4日間、1乃至2日間)以内にベースラインの神経活性へと戻る。可逆の刺激の例によっては、神経活性はベースラインの神経活性に実質的に完全に戻る。すなわち、信号の印加の中断に続く神経活性は、信号が印加される前の神経活性と実質的に同じである。従って、神経又は神経部位は、その正常な生理的能力を取り戻し、活動電位を伝播する。
【0042】
他の実施形態では、神経活性の刺激は実質的に持続的であってもよい。本明細書中で使用される「持続的」とは、神経活性が長期作用を持つという意味で使用される。例えば、信号の印加が中断しても、神経での神経活性は信号が印加されていた時と実質的に同じまま、すなわち、信号の印加中及び信号の印加後の神経活性が実質的に同じである。可逆の調節が好ましい。
【0043】
治療における用途
本発明は、急性疾患の治療に役立ち、特に本発明は、最終手段としての介入策として使用できる。本発明は、ショックに伴う生理学的変化を有する生命を脅かす状態及び心血管性の機能障害の治療に特に有用である。
【0044】
これらの症状の例として、外傷、出血、及びショックが挙げられる。
【0045】
外傷としては、鈍的外傷(自動車衝突、転倒、頭部損傷、裂傷を含む)、穿通性外傷(切断、刺創、杙創等)、爆傷、熱傷(熱、冷、電気、化学物質、摩擦、又は放射線に起因するもの)、及びそれらの組み合わせ等の、例えば、外因による肉体的な損傷が挙げられる。
【0046】
出血は、循環系からの血液の損失である。出血としては、例えば、吐血(新鮮血の嘔吐)、喀血(肺からの血液の喀出)、血尿、脳出血、肺出血、分娩後出血、及び胃腸出血が挙げられる。出血は、例えば、外傷性損傷又は基礎疾患に起因してもよい。出血には、術中出血及び術後出血も含まれる。
【0047】
ショックとしては、例えば、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、毒素性ショック症候群、心原性ショック、循環血液量減少性ショック、及び神経原性ショックが挙げられる。本発明は、敗血症性ショックの治療に特に役立つ。
【0048】
本発明は、外傷、敗血症性ショック、大量出血、深刻な血友病、ループスの深刻な発症、深刻なクローンの発症、同種移植片/グラフの拒絶、アナフィラキシー、及び内毒素性ショックに関して特に興味深いものである。
【0049】
症状の治療は、様々な方法で評価できるが、典型的には対象者の1以上の生理学的パラメータの改善を判断することを含む。本明細書中で使用される「所定の生理学的パラメータの改善」とは、あらゆる任意の生理学的パラメータに関して、改善は対象者のそのパラメータの数値の変化が正常値又はその数値の正常範囲に向かっている、すなわち、健康な対象者において期待される数値に向かっているという意味で使用される。
【0050】
本明細書中で使用される「所定の生理学的パラメータの悪化」とは、あらゆる任意の生理学的パラメータに関して、悪化は対象者のそのパラメータの数値の変化が正常値又はその数値の正常範囲から離れている、すなわち、健康な対象者において期待される数値から離れているという意味で使用される。
【0051】
例えば、急性疾患は血圧の低下、めまい又は浮遊感、発疹、吐き気、筋肉痛、息切れ、乏尿、筋肉痛、及び皮膚が冷たく湿っていて青ざめる又は斑状になることを伴い得る。
【0052】
身体のバイタルサインは、身体の生体(生命維持)機能の状況を示すサインであるため、急性疾患を評価するためには特に役立つ。バイタルサインは、全身動脈圧、体温、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、及び痛覚から成る1以上の群であってもよい。
【0053】
他の役立つ生理学的パラメータは、全身静脈圧、肺動脈圧(pulmonary artery pressure)(本明細書では肺血圧(pulmonary pressure)とも称する)、1時間毎の尿量、意識レベル、動脈血酸素分圧、及び動脈血二酸化炭素分圧であってもよい。
【0054】
生理学的パラメータの任意の1つ又は組み合わせは本発明に役立ち得る。
【0055】
急性疾患を有する対象者において、急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善は、(対象者がどの外れ値を示しているかによって)36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化、及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれか1以上でもよい。本発明は、必ずしもこれらの生理学的パラメータの全てにおいて変化をもたらすものではない。
【0056】
本発明は、血圧(例えば、全身動脈圧、全身静脈圧、中心静脈圧、及び肺血圧)を正常範囲に回復させることを目的としている。当業者には公知の通り、本技術分野内で血圧と言うと、特別な定めのない限り、一般的に体循環における動脈圧(すなわち、全身動脈圧)を意味する。正常な全身動脈圧は、90/60mmHg乃至120/80mmHg間であると考えられる。この範囲を下回る全身動脈圧値は、その人がショックにり患していることを示唆し得る。本発明は、全身動脈圧を正常範囲まで回復させることを目的としている。従って、対象者がショックにり患している場合、本発明は全身動脈圧を上昇させることを目的としている。
【0057】
全身静脈圧、中心静脈圧、及び肺血圧を判断することも本発明に役立ち得る。これらの圧力を判断するには通常、カテーテル等の侵襲ツールが必要である。しかしながら肺血圧は、例えば、下大静脈径の超音波測定と見かけの心臓充満圧とによって判断され得る。健康な成体における全身静脈圧の正常範囲は、通常、右心房で5mmHg及び左心房で8mmHgである。健康な成体における中心静脈圧の正常範囲は、約3乃至8mmHgの範囲内であると考えられる。健康な成体における肺血圧の正常範囲は、安静時で、通常、約15mmHgである。
【0058】
本発明は、体温を正常範囲、すなわち36°C乃至38°C間にまで回復させることも目的としている。
【0059】
心拍数は通常、60乃至100bpmであると考えられているが、急性疾患では、典型的に心拍数が上昇する。本発明は、心拍数を正常範囲にまで回復させることも目的としている、すなわち心拍数を減少させることを目的としている。
【0060】
正常な呼吸数は、毎分8乃至14呼吸であるが、本発明は呼吸数を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0061】
健康な人は海面位で通常、96%乃至99%間の酸素飽和(SO2)値を示し、通常は94%を上回る。レベルが90%を下回ると、低いと考えられ、低酸素血症となる。血中酸素濃度が80パーセントを下回ると、脳や心臓などの臓器機能が損なわれ得る。低酸素濃度が続くと、呼吸又は心停止を引き起こし得る。酸素飽和度は一般的に、パルスオキシメトリを使用して測定される。
【0062】
健康な人における動脈血酸素分圧の正常範囲は通常、12乃至15kPaである。動脈血二酸化炭素分圧の正常範囲は通常、4.4乃至6.1kPaである。本発明は、動脈血酸素分圧及び動脈血酸素分圧を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0063】
成体の正常な尿量は0.5乃至1ml/kg/時間である。これは平均的な体格の成体で1時間に30乃至60mlにほぼ一致する。本発明は、尿量を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0064】
本発明で役立つさらなる生理学的パラメータとして、乳酸塩、血糖、血液中の塩基欠乏、及び動脈pHのレベルが含まれてもよい。これらのパラメータは、生化学分析により判定できる。
【0065】
当業者であれば、任意のパラメータの数値を判定する適切な方法はいずれも理解しているであろう。
【0066】
当業者であれば、対象者のいずれの生理学的パラメータのベースラインも固定的又は特定の数値である必要はなく、むしろ正常範囲内で変動できる又は関連する誤差及び信頼区間の平均値であってもよいことを理解するであろう。例えば、人のバイタルサインの正常範囲は、年齢、体重、性別、及び全体的な健康状態によって変わる。ベースライン値を判定する適切な方法は、当業者には周知である。
【0067】
本明細書中で使用されるように、生理学的パラメータは、検出時に対象者によって示されるそのパラメータの数値が決定される際に対象者において決定される。検出器(例えば、生理学的センササブシステム、生理学的データ処理モジュール、及び生理学的センサ)は、このような判定ができる任意の要素である。本発明によると、生理学的パラメータのいずれかを検出することは、交感神経での神経活性の調節前、調節中、及び/又は調節後に行われてもよい。検出は、人間(例えば、臨床医又は介護人)によって本発明のシステムの一部ではない機器等の装置を使用して若しくは使用せずに又は本発明のシステムの一部である検出器を使用して若しくは使用せずに、手動で行うことができる。装置又は検出器が使用される場合、検出は自立的に行うことが可能である。
【0068】
このように、特定の実施形態では、本発明はさらに、対象者の1以上の生理学的パラメータを判定することを備え、信号は判定された生理学的パラメータが所定の閾値を満たす又は超える場合のみ印加される。対象者の1つよりも多い生理学的パラメータが判定される場合のこのような実施形態では、信号は、判定された生理学的パラメータの任意の1つがその閾値を満たす又は超える場合に印加されてもよく、あるいは、判定された生理学的パラメータの全てがそれらの閾値を満たす又は超える場合のみに印加されてもよい。本発明のシステムにより信号が印加される特定の実施形態では、システムは対象者の1以上の生理学的パラメータを判定するように構成された少なくとも1つの検出器をさらに備える。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、1以上の検出された生理学的パラメータは、血圧(例えば、全身動脈圧、全身静脈圧、及び肺血圧)、体温、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、痛覚、1時間当たりの尿量、意識レベル、又は乳酸塩、血糖、血液中の塩基欠乏、及び/若しくは動脈pHのレベルで構成される1以上の群である。任意の2つの生理学的パラメータが、並行的な実施形態で判定されてもよいことが理解され、対象者の活動電位許容範囲のパターンを検出するために制御部が接続される。
【0070】
例えば、ショックの深刻度及びショックに対する医療介入へのレスポンスを対処する際、重要な要因の1つは、ショックの発症中に増加した可能性がある組織内かん流である。組織内かん流は、血圧の低下、及び乳酸塩、比較的少ないが塩基欠乏や動脈pHのレベルをはじめとする生理学的パラメータのその他の変化の数に関連し得る。発明の実施形態によっては、前述したようにこれらの正常のレベルまで回復を目指す。
【0071】
生理学的パラメータの所定の閾値は、特定の治療介入が印加される前に対象者によって示されなくてはならないそのパラメータの最小(又は最大)の数値である。任意のパラメータに対しても、閾値が病理的状態又は病状を示す数値として定められてもよい。閾値は、病理的状態又は病状の発現を示す数値として定められてもよい。このように、所定の閾値によっては、本発明は治療として使用できる。あるいは、閾値は、対象者の生理学的状態(対象者が、例えば、就寝中、食後、又は運動中)を示す数値として定められてもよい。任意の生理学的パラメータの適正値は、当業者により造作なく決定されるはずである(例えば、医療実務基準を参照)。
【0072】
対象者によって示される数値が閾値を超えた場合、つまり、示された数値が所定の閾値よりもその生理学的パラメータの正常又は健康な数値から大きく逸脱する場合、任意の生理学的パラメータに対するこのような閾値を超える。
【0073】
本発明の対象者は、本発明による脾臓神経の神経調節を受けることに加えて、症状に対する治療及び/又は薬物治療を受けてもよい。例えば、対象者は、静脈への液体の投与、静脈への抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、マクロライド、又はフルオロキノロン)の投与、組織及び器官への血圧及び/又は血流を増加させる薬、感染症の原因(膿瘍等)及び感染症により激しく損傷した組織の除去手術、又は呼吸が著しく困難な場合、フェイスマスク、鼻カニューレ、若しくは咽喉を通されて気管へと入る人工呼吸器(酸素吸入器)に接続されたチューブを通した酸素の供給を受けてもよい。
【0074】
対象者は、抗炎症薬(多くの場合、本発明のシステムが加えられる前にも発生していた投薬治療を継続する)を受けてもよい。このような薬としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド、5ASAs、アザチオプリン、メトトレキサート、及びシクロスポリン等の疾患修飾性抗炎症薬(DMARDs)、インフリキシマブ及びアダリムマブのような生物学的製剤、及びJAK阻害薬のような新たな経口DMARDsが挙げられる。
【0075】
このように、本発明は、本発明のシステムと併用してこれらの治療及び/又は薬の使用を提供する。
【0076】
電気信号の適切な形態
本発明は、脾臓に分布する神経に信号伝達的に接触して配置される少なくとも1つの電極を介して印加される電気信号を使用し、神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。本明細書中で使用される「信号伝達的に接触」は、少なくとも1つの電極を介して印加される電気信号の少なくとも一部が神経で受信される場合である。
【0077】
電気信号は、例えば、急性の臨床現場においての単独の治療を提供することが好ましい。しかし、電気信号の印加が一度のみというわけではない。単独の治療中、電気信号は神経に連続的又は周期的に印加されてもよい。好適には、電気信号は、対象者の生理学的パラメータに改善があるまで神経に印加される。
【0078】
本発明により印加される電気信号は理想的には非破壊的である。本明細書中で使用される「非破壊的な信号」とは、印加された際に、神経の基本的な神経系信号伝導能力を不可逆的に損傷しない信号である。つまり、非破壊的な信号の印加は、その神経若しくは線維又は信号が印加される他の神経組織の能力を維持して、その伝導が実際は非破壊的な信号の印加の結果として人工的に刺激された場合でも、信号の印加が停止すると活動電位を伝導させる。
【0079】
本発明により印加される電気信号は、電圧又は電流波形であってもよい。
【0080】
電気信号は1以上の電気信号パラメータにより特徴付けられてもよい。電気信号パラメータは、波形、周波数、及び振幅を含む。
【0081】
代替的に又は追加的に、電気信号は、電気信号の神経への印加のパターンによって特徴付けられてもよい。印加のパターンとは、電気信号の神経への印加のタイミングである。印加のパターンは、連続的な印加又は周期的な印加であってもよい。印加のパターンは、信号の印加に対し設定された期間を含んでもよい。
【0082】
連続的な印加とは、電気信号が神経に連続的な方法で印加される場合を言う。電気信号が一連のパルスである実施形態では、これらのパルス間(すなわち、パルス幅と相持続期間との間)のギャップは、信号が連続的に印加されないことを意味するわけではない。
【0083】
周期的な印加とは、電気信号が繰り返しのパターン(例えば、オンオフパターン)で神経に印加される場合のことを言う。
【0084】
波形
脾臓に分布する神経(ここで神経は神経血管束(例えば脾動脈神経)と連携している)の調整(例えば、刺激)は、神経の正常な神経活性を再現するよう働く電気信号を使用して実現できる。このように、電気信号の波形は、正方形、鋸歯状、正弦波、三角形、台形、疑似台形、又は複雑なパルスを持つ1以上のパルス列を備えてもよい。他の実施形態では、波形は、正方形、正弦波、三角形、台形、疑似台形、又は複雑な波形であってもよい。他の実施形態では、波形は一定の振幅の波形であってもよい。
【0085】
信号は二相性であってもよい。「二相性」という用語は、正及び負の電荷の両方を経時的に神経に印加する信号を言う。
【0086】
信号は対称又は非対称であってもよい。対称な信号とは、正の電荷を神経に印加した際の波形が、負の電荷を神経に印加した際の波形と対称である信号である。非対称信号とは、正の電荷を神経に印加した際の波形が、負の電荷を神経に印加した際の波形と対称でない信号である。
【0087】
信号は、荷電平衡であってもよい。荷電平衡信号は、信号期間にわたって、正及び負の電荷の同等量(又はおよそ)を神経に印加する信号を言う。
【0088】
振幅
本発明の目的のため、本明細書中では、相毎の電荷密度の観点から振幅が言及される。電気信号により神経に印加される相毎の電荷は、1相にわたる(例えば、電荷平衡された二相性パルスの場合、二相性パルスの1相にわたる)電流の積分として定義される。このように、電気信号により神経に印加される相毎の電荷密度は、少なくとも1つの電極と神経との間の接触域の単位当たりの相毎の電荷であり、信号波形の1相にわたる電流密度の積分でもある。言い換えると、電気信号により神経に印加される相毎の電荷密度は、電気信号により神経に印加される相毎の電荷を少なくとも1つの電極(一般的にカソード)と神経との間の接触域で分割したものである。
【0089】
本発明により必要な相毎の電荷密度は、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)内での神経活性を刺激するために必要なエネルギー量を表して、生理学的パラメータを改善する。
【0090】
本発明者らは、ブタの脾動脈神経内で神経活性を刺激するために必要な相毎の電荷密度が、相毎にcm2当たり5μC乃至150μCの間、又は場合によっては、血管外のカフを使用して(電極のデザインが数値にわずかな影響を与えることもある)、相毎にcm2当たり5μC乃至180μCであることを見出した。例えば、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm2当たり≦10μC、相毎にcm2当たり≦15μC、相毎にcm2当たり≦20μC、相毎にcm2当たり≦25μC、相毎にcm2当たり≦30μC、相毎にcm2当たり≦40μC、相毎にcm2当たり≦50μC、相毎にcm2当たり≦75μC、相毎にcm2当たり≦100μC、相毎にcm2当たり≦125μC、相毎にcm2当たり≦150μC、又は相毎にcm2当たり≦180μCであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm2当たり≧5μC、相毎にcm2当たり≧10μC、相毎にcm2当たり≧15μC、相毎にcm2当たり≧20μC、相毎にcm2当たり≧25μC、相毎にcm2当たり≧30μC、相毎にcm2当たり≧40μC、相毎にcm2当たり≧50μC、相毎にcm2当たり≧75μC、相毎にcm2当たり≧100μC、相毎にcm2当たり≧125μC、又は相毎にcm2当たり≧150μCであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0091】
本発明者らはさらに、ヒトの脾動脈神経内での神経活性を刺激するために必要な相毎の電荷密度の示された推定が約70乃至1300μC/cm2の間であることを見出した。例えば、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm2当たり≦80μC、相毎にcm2当たり≦140μC、相毎にcm2当たり≦170μC、相毎にcm2当たり≦230μC、相毎にcm2当たり≦250μC、相毎にcm2当たり≦300μC、相毎にcm2当たり≦350μC、相毎にcm2当たり≦400μC、相毎にcm2当たり≦450μC、相毎にcm2当たり≦500μC、相毎にcm2当たり≦1100μC、又は相毎にcm2当たり≦1300μCであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm2当たり≧70μC、相毎にcm2当たり≧140μC、相毎にcm2当たり≧170μC、相毎にcm2当たり≧230μC、相毎にcm2当たり≧250μC、相毎にcm2当たり≧300μC、相毎にcm2当たり≧350μC、相毎にcm2当たり≧400μC、相毎にcm2当たり≧450μC、相毎にcm2当たり≧500μC、相毎にcm2当たり≧1100μC、又は相毎にcm2当たり≧1300μCであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0092】
任意の期間における電気信号により神経に印加される合計の電荷は、信号の周波数、信号の印加のパターン、及び少なくとも1つの電極と神経との間で接触する領域に加えて、信号の相毎の電荷密度の結果である。信号の周波数、信号の印加のパターン、及び少なくとも1つの電極と神経との間で接触する領域は本明細書中でさらに説明されている。
【0093】
神経活性の意図する刺激を実現するために必要な印加電気信号の振幅は、電極の位置と関連する電気生理学的特性(例えば、インピーダンス)とによることは当業者であれば理解するであろう。任意の対象者での神経活性の意図する調節を実現するための適切な電流振幅を判定することは当業者が可能な範囲内にある。
【0094】
神経に印加される電気信号は、臨床的安全性の限度内である(例えば、神経信号機能の維持に適している、神経の整合性の維持に適し、及び対象者の安全の維持に適している)ことは、当然、当技術分野で理解される。臨床的安全性の限度内の電気的パラメータは、典型的に前臨床試験によって判定されるであろう。
【0095】
周期的印加
周期的印加は、電気信号が繰り返しパターンで神経に印加されることを言う。好適な繰り返しパターンは、オンオフパターンであり、ここで信号は、本明細書中では「オン」期間とされる第1期間の間印加され、本明細書中では「オフ」期間とされる第2期間の間停止し、その後、再度、第1期間の間印加され、続いて、第2期間の間停止する等である。
【0096】
周期的オンオフパターンは、0.1乃至10秒の間のオン期間及び0.5乃至30秒の間のオフ期間を有してもよい。例えば、オン期間(特定の周波数のパルス及び振幅が神経に送達される時間を言う)は、≦0.2秒、≦0.5秒、≦1秒、≦2秒、≦5秒、又は10秒であってもよい。代替的に又は追加的に、オン期間は、≧0.1秒、≧0.2秒、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、又は≧5秒であってもよい。オン期間の上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。例えば、オフ期間(パルスが神経に送達されないオン周期間の時間を言う)は、≦1秒、≦3秒、≦5秒、≦10秒、≦15秒、≦20秒、≦25≦、又は≦30秒であってもよい。代替的に又は追加的に、オフ期間は、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、≧5秒、≧10秒、≧15秒、≧20秒、又は≧25秒であってもよい。オフ期間の上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0097】
周期的印加は、デューティサイクル印加とも呼ばれてもよい。デューティサイクルは、周期パターンのサイクルに対して神経に信号が印加される時間の割合を表す。例えば、20%のデューティサイクルが、2秒のオン期間と10秒のオフ期間とを有する周期パターンを表してもよい。代替的に、20%のデューティサイクルが、1秒のオン期間と5秒のオフ期間とを有する周期パターンを表してもよい。換言すると、周期的印加はオンオフパターン刺激又はバースト刺激と呼ばれてもよい。
【0098】
本発明に適切なデューティサイクルは0.1%乃至100%の間である。
【0099】
期間
信号は、信号が周期的又は連続的に印加できる特定の期間印加される。臨床医が期間を決定してもよい又は期間はあらかじめ設定されていてもよい。
【0100】
臨床医は、対象者の生理学的パラメータに応じて、期間中に印加されている信号を止めさせてもよい。好適には、電気信号は、対象者の生理学的パラメータに改善があるまで神経に印加される。
【0101】
例によっては、期間は、≦1分間、≦5分間、≦10分間、≦30分間、又は≦1時間であってもよい。追加的に又は代替的に、期間は、≧1分間、≧5分間、≧10分間、又は≧30分間であってもよい。
【0102】
周波数
周波数は、電気波形の相持続期間の逆数(すなわち1/相)と定義される。
【0103】
本発明者らは、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)を刺激するための好適な周波数を見出した。特に、本発明者らは、電気信号が周期的に印加される実施形態及び電気信号が連続的に印加される実施形態に対する好適な周波数を見出した。
【0104】
先に述べたが、電気信号が周期的に印加される実施形態及び電気信号が連続的に印加される実施形態は、異なる刺激パラメータを使用して異なる機能を提供する。連続的な刺激は、検出されて、電極配置及び/又は振幅判定の成功の指標としてオンテーブル又は手術前後として使用できる脾臓の脈管構造内の血流の変化を引き起こすために使用してもよく、周期的刺激は、好適な治療パラダイムとして使用されてもよく、これにより、治療としての有効性を維持する間、このような血流の変化及び/又は他の潜在的な全身的作用が回避される。
【0105】
電気信号が周期的に印加される実施形態では、電気信号の周波数は≦300Hz、好適には≦50Hz、より好適には≦10Hzである。例えば、電気信号の周波数は≦50Hz、≦100Hz、≦150Hz、≦200Hz、≦250Hz又は≦300Hzであってもよい。他の例では、電気信号の周波数は≦10Hz、≦15Hz、≦20Hz、≦25Hz、≦30Hz、≦35Hz、≦40Hz、≦45Hz、又は≦50Hzであってもよい。さらなる例では、周波数は≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号の周波数は≧10Hz、≧15Hz、≧20Hz、≧25Hz、≧30Hz、≧35Hz、≧40Hz、≧45Hz、又は≧50Hzであってもよい。他の例では、電機信号の周波数は≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz又は≧5Hzであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0106】
電気信号が連続的に印加される実施形態では、電気信号の周波数は≦50Hz、好適には≦10Hz、より好適には≦2Hz、さらにいっそう好適には≦1Hzである。例えば、周波数は≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであってもよい。他の例では、周波数は≦0.1Hz、≦0.2Hz、≦0.3Hz、≦0.4Hz、≦0.5Hz、≦0.6Hz、≦0.7Hz、≦0.8Hz、又は≦0.9Hzであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号の周波数は≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz又は≧5Hzであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0107】
信号波形がパルス列から成る場合、パルスは上記の周波数に従って間隔を置いて神経に印加される。例えば、50Hzの周波数は、1秒間に50パルスを神経に印加することとなる。
【0108】
電極及び神経インターフェースの設計
神経と信号伝達的に接触している少なくとも1つの電極を介して、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)に電気信号が印加される。少なくとも1つの電極は神経インターフェースに位置付けられてもよい。
【0109】
実施形態によっては、電極及び/又は神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経の周囲及び/又は脾動脈の周囲に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはカフ型インターフェースであってもよいし、部分的に又は完全に神経を避けた他のインターフェースが使用されてもよい。
【0110】
他の実施形態では、神経インターフェース10は、少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈上に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェース10はパッチ又はクリップタイプのインターフェースであってもよい。
【0111】
他の実施形態では、神経インターフェース10は、脾動脈に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはカテーテル又はプローブタイプのインターフェースであってもよい。
【0112】
他の実施形態では、神経インターフェース10は少なくとも1つの脾動脈神経に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはピンタイプのインターフェースであってもよい。
【0113】
神経インターフェースは、少なくとも1つの電極を備える。電極は、白金黒、酸化イリジウム、窒化チタン、タンタル、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)及びそれらの適切な組合せ等の高電荷容量材料から製造されてもよく、あるいは高電荷容量材料で部分的に又は全体的にコーティングされていてもよい。
【0114】
実施形態によっては、神経インターフェースは、脾動脈が膵臓と直接接触しない部位の脾動脈神経への電気信号の印加に適している。脾動脈が膵臓と直接接触しない部位の脾動脈神経に電気信号を印加することは、脾動脈周囲で利用可能な追加スペースによる利点がある。これは神経インターフェース10の設計、特に少なくとも1つの電極の設計にさらなる自由度を与える。
【0115】
少なくとも1つの電極は、特に、神経インターフェースが少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈の上又は周囲に配置するために構成される実施形態では、神経インターフェース10が神経上に固定されている場合に神経及び/又は脾動脈を回避するように柔軟である平らなインターフェース電極であってもよい。しかしながら、他の電極タイプも本発明での使用に適切である。
【0116】
本発明に適切な他の電極タイプとしては、カフ電極(例えば、スパイラルカフ、ヘリカルカフ、又は平らなインターフェース)、ヘミカフ電極(hemi-cuff electrodes)、メッシュ、直線のロッド形リード、パドルリード又はディスク接点電極(マルチディスク接点電極を含む)、フック電極、スリング電極(sling electrodes)、束内電極、ガラス吸引電極、パドル電極、及び経皮的な円筒状電極が挙げられる。
【0117】
少なくとも1つの電極は、第1電極11及び第2電極12を備えてもよく、本明細書中ではバイポーラ電極構成と呼ばれる。
図1は、バイポーラ電極構成例の模式図を示し、電極は、少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈と信号伝達的に接触して配置される。本明細書の他の場所に説明されているように、適切な信号伝達的に接触は、神経及び/若しくは動脈の周囲(すなわち、部分的又は完全に避ける)、神経上及び/若しくは動脈上、又は脾臓神経内、又は動脈内に電極を配置することで実現されてもよい。
【0118】
図1に示されるように、第1電極11及び第2電極12は神経の縦軸に沿って位置付けられている。電気信号は第1電極11がアノードで、第2電極12がカソードとなるように電極に印加されてもよい。あるいは、第1電極11がカソードで、第2電極12がアノードであってもよい。
【0119】
他の実施形態では、少なくとも1つの電極は第1電極、第2電極、及び第3電極を備えてもよく、本明細書中では三極電極構成と呼ばれる。
【0120】
二極構成のように、第1、第2、及び第3電極は、神経の長軸に沿って位置付けられてもよく、一例では、第2電極は第1電極と第3電極との間に位置付けられてもよい。
【0121】
電極は、非導電性の生体適合性材料によって少なくとも部分的に互いから絶縁されていてもよい。この目標を達成するために神経インターフェースは、装置の使用時に、神経に沿って横方向に間隔をあけている非導電生体適合性材料を備えてもよい。
【0122】
本発明者らは、少なくとも1つの脾動脈神経に電気信号を印加するための好適な電極サイズを見出した。電極の総表面積は0.1乃至0.3mm2であってもよい。好適には、電極の総表面積は0.2cm2未満である。
【0123】
好適な電極構成では、第1電極11及び第2電極12のそれぞれの幅は1乃至4mmの間であってもよい。例えば、幅は1mm乃至3mmの間、又は2mm乃至4mmの間、又は2mm乃至3mmの間であってもよい。
【0124】
制御部
図7を参照し、神経インターフェースを備え得る本発明のシステム50は、神経インターフェース10の少なくとも1つの電極に電気的に接続され、少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成された、例えば、マイクロプロセッサ60である少なくとも1つの制御部も備えてもよい。少なくとも1つの制御部は、少なくとも1つの電極により神経に送達される信号の開始及び/又は終わりを引き起こすことを担ってもよい。任意で、少なくとも1つの制御部は、信号パラメータの生成及び/又は制御を担ってもよい。
【0125】
少なくとも1つの制御部は、開ループの方法で動作するように構成され、(前述したように)所定の信号は外部のトリガーによって神経に送達される。
【0126】
少なくとも1つの制御部は、システム50におけるいかなる入力からも独立した事前に設定された及び/又は操作者が選択可能な信号を使用時に生成するように構成されていることが好ましい。事前に設定された及び/又は操作者が選択可能な信号は、先に説明された電気信号のいずれか1つであってもよい。他の実施形態では、少なくとも1つの制御部は外部の信号、より好適には対象者の1以上の生理学的パラメータに関連する情報(例えば、データ)に反応するが、まだ先に説明された信号の範囲内にある。
【0127】
少なくとも1つの制御部は、対象者への挿入に適したシステム50におけるマイクロプロセッサ60であってもよい。
【0128】
代替的に又は追加的に、少なくとも1つの制御部は対象者の外部の制御部であってもよい。
【0129】
少なくとも1つの制御部は、医師又は装置106が挿入されている対象者等の操作者により生成された信号の受信に応じて始動してもよい。そのために、システム50は、制御部101を備える外部システム80を追加的に備えてもよい。このようなシステムの一例は
図8を参照して以下に説明されている。
【0130】
より広範なシステム100の外部システム80は、システム50の外部及び対象者の外部にあり、制御部101を備える。制御部101は、システム50を制御及び/又は外部から電力を供給するために使用されてもよい。この目標を達成するために、制御部101は電力装置102及び/又はプログラミングユニット103を備えてもよい。外部システム80は、さらに後述するように、電力伝達アンテナ104及びデータ伝達アンテナ105をさらに備えてもよい。
【0131】
マイクロプロセッサ60及び制御部101をはじめとする少なくとも1つの制御部は、プロセッサでロードされて実行されると、プロセッサに少なくとも1つの電極の操作を少なくとも制御させるコード部分を備える実行可能なコンピュータプログラムを有するメモリ(すなわち、非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体)に接続されたプロセッサであってもよい。操作を制御するとは、少なくとも1つの制御部が、先に説明された何れかの信号パラメータ及び印加パターンを使用して、少なくとも1つの電極に電気信号を神経に印加させるようにすることを意味する。
【0132】
神経性刺激システム
神経インターフェース10及び少なくとも1つの制御部に加えて、システム50は、少なくとも1つの制御部からの制御操作に応じて、少なくとも1つの電極に上述の電気信号を送達するように構成された信号生成部113を備えてもよい。信号生成部は、少なくとも1つの電流又は電圧源を備えてもよい。
【0133】
信号生成部113は、少なくとも1つの制御部及び少なくとも1つの電極に電気的に接続されていてもよい。実施形態によっては、少なくとも1つの電極は、電気リード107を介して信号生成部113に接続されてもよい。実施形態によっては、電気リードは、先に説明されたインターコネクタに接続されてもよい。あるいは、信号生成部113は、リードなしで少なくとも1つの電極と直接的に一体化してもよい。いずれにせよ、システム50は、対象者に挿入されてもよく、任意でキャパシタ及び/又はインダクタに基づく、直流電流遮断出力回路(又は交流電流遮断出力回路)を全ての出力チャネル(例えば、少なくとも1つの電極又は生理学的センサ111への出力)に備えてもよい装置106を備えてもよい。
【0134】
神経インターフェース10、少なくとも1つの電極、少なくとも1つの制御部、及び信号生成部113に加えて、システム50は1以上の次のコンポーネントを備えてもよい。挿入可能トランシーバ110、電源112、メモリ114(又は非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶装置とも呼ばれる)、生理学的センサ111、及び生理学的データ処理モジュール115。生理学的センサ111及び生理学的データ処理モジュール115は、本明細書中では検出部と呼ばれる。
【0135】
システム50の様々なコンポーネントは、
図8に示されるように、共通のハウジングを共有している又は電気リードにより接続された相互接続されたコンポーネントの物理的に分離した集合体であるかのいずれかである単一の物理的デバイスの部分であることが好ましい。しかしながら、代替的に、本発明は、コンポーネントが物理的に分離し無線で通信するシステムを使用してもよい。このように、例えば、少なくとも1つの電極及び挿入可能装置(例えば、挿入可能装置106)は、単一装置の部分であることができ、又は共にシステム(例えばシステム50)を形成してもよい。両方の場合で、さらなるコンポーネントが存在して、より広範なシステム(例えば、システム100)を形成してもよい。
【0136】
例えば、実施形態によっては、1以上の次のコンポーネントが挿入可能装置106に含まれていてもよい。電源112、メモリ114、及び生理学的データ処理モジュール115。
【0137】
電源112は、信号生成部113のための電力を供給するための電流源及び/又は電圧源を備えてもよい。電源112は、マイクロプロセッサ60、メモリ114、及び挿入可能トランシーバ110等の挿入可能装置106及び/又はシステム50のその他のコンポーネントのための電力を供給してもよい。電源112は、バッテリを備えてもよく、バッテリは再充電可能であってもよい。
【0138】
挿入可能装置では電力の可用性が限られており、本発明はこの制約を考慮して考え出されたものであると理解されるであろう。挿入可能装置106及び/又はシステム50は、誘導電力供給又は再充電可能電源によって電力供給されてもよい。
【0139】
メモリ114は、電力データ及び1以上の生理学的パラメータに関連するデータを記憶してもよい。例えば、メモリ114は、検出部により検出された1以上の生理学的パラメータ(例えば、生理学的センサ111を介して及び/又は生理学的データ処理モジュール115を介して判定された1以上の対応する生理学的パラメータ)を示す1以上の信号に関するデータを記憶してもよい。これに加えて又は代替的に、メモリ114は、挿入可能トランシーバ110を介して外部システム80から電力データ及び1以上の生理学的パラメータに関連するデータを記憶してもよい。この目標を達成するため、挿入可能トランシーバ110は、以下にさらに説明されているように、より広範なシステム100の通信サブシステムの部分を形成してもよい。
【0140】
生理学的データ処理モジュール115は、1以上の対応する生理学的パラメータを判定するため、生理学的センサ111により検出された1以上の生理学的パラメータを示す1以上の信号を処理するように構成されている。生理学的データ処理モジュール115は、メモリ114内に記憶するため及び/又は挿入可能トランシーバ110を介して外部システムまで伝送するため、1以上の生理学的パラメータに関連するデータのサイズを減少させるように構成されていてもよい。挿入可能トランシーバ110は、1以上のアンテナを備えてもよい。挿入可能トランシーバ100は、身体、例えば、システム50が一部であるより広範なシステム100の外に信号を伝送するために、RF、無線、赤外線等の任意の適切な信号処理を使用してもよい。
【0141】
代替的に又は追加的に、生理学的データ処理モジュール115は、対象者における病気の進行を判定するために、1以上の生理学的パラメータを示す信号を処理し、及び/又は決定された1以上の生理学的パラメータを処理するように構成されていてもよい。
【0142】
生理学的データ処理モジュール115及び少なくとも1つの生理学的センサ111は、本明細書中では検出部としても既知の生理学的センササブシステムを、システム50の一部として、挿入可能装置106の一部として、又はシステムの外部としてのいずれかとして、形成してもよい。
【0143】
治療に関連する1以上の生理学的パラメータを検出するように構成されている少なくとも1つの検出部があってもよい。例えば、検出部は、電気的、RF又は光学的な(可視、赤外線)生化学的センサを使用して生体分子濃度を検出するために構成されてもよい。
【0144】
メモリ114は、1以上の生理学的パラメータの正常レベルに関連する生理学的データを記憶してもよい。データは、システム50が挿入された対象者に対して特有で、当技術分野で周知の様々な検査から収集されてもよい。生理学的センサ111から受信した生理学的パラメータを示す信号を受信すると、あるいは周期的に、又は生理学的センサ111からの要請に応じて、生理学的データ処理部115は、生理学的センサ111から受信された信号から判定された生理学的パラメータをメモリ114内に記憶された生理学的パラメータの正常レベルに関連するデータと比較して、受信信号が特定の生理学的パラメータの不足又は過剰を示しているか、それに従って対象者における病気の進化が示されているかどうかを判定してもよい。
【0145】
マイクロプロセッサ60は、操作者(例えば、医師又はシステム50が挿入されている対象者)により生成された信号の受信に応じて始動してもよい。そのために、システム50は、さらに後述するように、外部システム80及び制御部101を備えるより広範なシステム100の部分であってもよい。
【0146】
神経性刺激システムを超えて
神経性刺激システム50は、
図8に示すように、多数のサブシステム、例えば、外部システム80を含むより広範なシステム100の部分であってもよい。外部システム80は、人間の皮膚及び下層組織を通して、神経性刺激システム50に電力供給及びプログラミングするために使用されてもよい。
【0147】
外部サブシステム80は、制御部101に加えて、挿入可能装置106に電力を供給するために使用される電源112のバッテリを無線で再充電するための1以上の電力装置102及び挿入可能トランシーバ110と通信を行うように構成されている1以上のプログラミングユニット103を備えてもよい。プログラミングユニット103及び挿入可能トランシーバ110は通信サブシステムを形成してもよい。実施形態によっては、電力装置102がプログラミングユニット103と共に収容されている。他の実施形態では、それらは分離した装置内に収容可能である。
【0148】
外部サブシステム80はまた、電力伝達アンテナ104及びデータ伝達アンテナ105のうち1以上を備えてもよい。電力伝達アンテナ104は、低周波(例えば、30kHz乃至10MHz)で電磁界を伝送するために構成されていてもよい。データ伝達アンテナ105は、挿入可能装置106をプログラミング又は再プログラミングするためにデータを伝達するように構成されてもよく、高周波(例えば、1MHz乃至10GHz)で電磁界を伝送するために電力伝達アンテナ104に加えて使用されてもよい。挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナは、電源112の再充電可能バッテリを充電するために使用されてもよい、電力伝達アンテナ104によって生成された外部電磁界から電力を受信するように構成されていてもよい。
【0149】
電力伝達アンテナ104、データ伝達アンテナ105、及び挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナは、共鳴周波数及びQ値(Q)のような特定の特性を有する。アンテナの一実装は、所定のインダクタンスを有するインダクタを形成するフェライトコアを有する又は有しないワイヤのコイルである。このインダクタは、共振キャパシタ及び抵抗損失に接続されて、共振回路を形成してもよい。周波数は、電力伝達アンテナ105により生成された電磁界の周波数と一致するように設定される。挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナの第2アンテナは、外部システム80からのデータ受信及び外部システム80へのデータ送信のためにシステム50内で使用できる。複数のアンテナがシステム50で使用される場合、電力伝達アンテナ104とのわずかなずれの間において、より良好な電力伝達効率の度合いを実現するために、これらのアンテナを相互に30度回転させる。
【0150】
外部システム80は、1以上の外部装着式生理学的センサ121(不図示)を備えて、1以上の生理学的パラメータを示す信号を検出してもよい。信号は、挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナを介してシステム50に伝送されてもよい。代替的に又は追加的に、信号は外部システム50に伝送されて、その後、挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナを介してシステム50まで伝送されてもよい。
【0151】
例えば、特定の実施形態では、挿入可能装置の外部の検出部は、超音波流量計等の非侵襲的血流モニタ、及び/又は非侵襲的血圧モニタを含んでもよく、生理学的パラメータ、特に上記の生理学的パラメータの変化を判定する。
【0152】
システム100は、次の事象例においては神経の電気刺激を中断させる安全保護特性を有していてもよい;システム50の異常動作(例えば、過電圧)、挿入された生理学的センサ111からの異常な読み出し(例えば、セ氏2度を超える温度増加又は電極‐組織インターフェースにおける過度に高い若しくは低い電気インピーダンス)、外部装着式生理学的センサ121(不図示)からの異常な読み出し、又は操作者(例えば、医師又は対象者)による刺激に対する異常な応答の検出。安全対策特性は、制御部101を介して実装されて、システム50へと通信又はシステム50内で内部的に通信されてもよい。
【0153】
外部システム80は、操作者(例えば、医師又は対象者)によって押されると制御部101及び各通信サブシステムを介して信号を送達し、システム50のマイクロプロセッサ60を始動させて、少なくとも1つの電極によって神経に信号を送達する、アクチュエータ120(不図示)を備えてもよい。
【0154】
外部システム80は、マイクロコントローラ60又は制御部101のためのディスプレイ109を備えて、システム又は対象者の様子について操作者(例えば、医師又は対象者)に警告を発してもよい。ディスプレイ109は、LEDモニタ等のモニタであってもよいし、LED等の視覚的なインジケータであってもよい。
【0155】
本発明のシステム100は外部システム80を含んでいるが、特にシステム50は生体安定性及び生体適合性のある材料で作られ、又はコーティングされていることが好ましい。これは、システムが身体組織に対して暴露されることによる損傷から保護されること及びホストによる好ましくない反応(最終的に拒絶を引き起こす恐れがある)をシステムが引き起こす危険性を最小限に抑えることを意味する。システムを作成又はコーティングするために使用される材料は、バイオフィルムの形成に対し理想的には耐性があるべきである。適切な材料としては、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン):p‐トルエンスルホン酸塩(PEDOT:PTS又はPEDT)、ポリ(p‐キシリレン)ポリマー(パリレンとして既知)、及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられるが、これらに限らない。
【0156】
本発明の挿入可能装置50は一般的に50g未満の重量である。
【0157】
全般
本明細書中に説明されている方法は、コンピュータ上でプログラムが実行される際に、本明細書中に記載されるいずれかの方法の全てのことを実施するように適合したコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムの形態等の有形の記憶媒体上で機械読み取り可能な形態のソフトウェアによって実施されてもよく、ここで、コンピュータプログラムはコンピュータ読取可能な記録媒体上で具現化されてもよい。有形の(又は非一時的な)記憶媒体の例としては、ディスク、サムドライブ、メモリカード等が挙げられるが、伝播信号は含まれない。ソフトウェアは、方法が任意の適切な順序で又は同時に行われてもよいように、平行プロセッサ又は直列プロセッサでの実行に適することができる。これはファームウェア及びソフトウェアが貴重で別々に取引可能な物品であることができることを認めている。「ダム(dumb)」又は標準ハードウェア上で動作する又は「ダム」又は標準ハードウェアを制御するソフトウェアを含んで、所望の機能を行うことが意図されている。HDL(ハードウェア記述言語)ソフトウェア等のハードウェアの構成を「記述」又は定義するソフトウェアを含むことも意図しており、このソフトウェアは、所望の機能を実行するために、シリコンチップを設計するため又はユニバーサルプログラマブルチップを構成するために使用される。
【0158】
当業者は、プログラム命令を記憶するために利用される記憶装置が、ネットワークに分散可能であることを認識するであろう。例えば、リモートコンピュータは、ソフトウェアとして記述されたプロセスの例を記憶してもよい。ローカル又はターミナルコンピュータは、リモートコンピュータにアクセスし、プログラムを実行するソフトウェアの一部又は全てをダウンロードしてもよい。代替的には、ローカルコンピュータは、必要に応じてソフトウェアの一部をダウンロードしてもよい、又はいくつかのソフトウェア命令をローカルターミナルで、一部をリモートコンピュータ(又は、コンピュータネットワーク)で実行してもよい。当業者は、当業者に既知の従来の技術を利用することにより、ソフトウェア命令の全て又は一部が、DSP、プログラマブル論理アレイ等の専用回路によって実行されてもよいことも認識するであろう。
【0159】
特段、示されていない場合、本明細書中で説明されている各実施形態は、本明細書中で説明されている他の実施形態と組み合わされてもよい。「備える」と言う用語は、「含む」も「構成される」も含み、例えば、組成物はXを「備える」は、排他的にXから構成されてもよいし、例えば、X+Yのように追加的な何かを含んでもよい。
【0160】
上記の利益及び利点は、一実施形態に関連又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されるであろう。実施形態は、いくつかの若しくは全ての上述の問題を解決するもの又はいくつかの若しくは全ての上述の利益及び利点を有するものに限らない。
【0161】
上記の好適な実施形態はほんの一例として挙げられたもので、当業者により様々な変形例が可能なことが理解されるであろう。様々な実施形態が、一定の程度の特殊性を持って又は1以上の個別の実施形態を参照して上記で説明されたが、当業者であれば本発明の範囲から逸脱すること無く開示の実施形態に多数の変更を加えることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0162】
以下の図面を参照して、例として、本発明の実施形態が説明される。
【
図2】神経性刺激システムを含むより広範なシステムを示す。
【
図3】脾神経叢の解剖学的特徴(脾臓、神経、動脈、及び静脈)を強調したブタの左腹部の模式図である。動脈周囲の脾臓神経(SpN)刺激の実験中のカフの配置位置が示されている。神経は黒色で、動脈及び静脈は灰色で表されている。
【
図4A】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図4B】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図4C】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図4D】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図4E】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図4F】
図4は、主要なSpA(脾動脈)に沿ったSpN及び短胃大網動脈の解剖学的及び組織学的な解析を示す。
図4Aは、組織学的な解析が行われた領域を強調(破線)する脾臓神経構造の概略図である。
図4B乃至4Dは、H&E染色された主要脾動脈(
図4B)、短胃(SG)動脈(
図4C)、及び胃大網(GEP)動脈(
図4D)として、SpNの切片を異なるレベルで示す。
図4C及び
図4D内の神経は矢印により示される。
図4Dにおいて、挿入図は1つの神経束の高倍率のキャプションを示す。
図4Eは、異なる位置におけるSpN束の数(上パネル)及び異なる位置におけるその線維束の平均径の分布(下パネル)の定量化を報告するボックスプロットを示す。
図4Fは、異なる位置における線維束の数及びそれらの相対的な平均径を示す。
【
図5A】
図5は、豚の脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴付けを示す。
図5Aは、トルイジンブルーで染色したSpA/SpNの準超薄切片(0.5μm厚)の顕微鏡写真である。画像内で有髄軸索は観察できない。
図5Bは、動脈周囲のカフ(SpN神経叢全体周囲)又はSpN束の少しの線維束周囲の小さなカフを使用して1Hzで刺激を与えた際に、動脈から切開された動脈周囲の脾臓神経の線維束から記録された誘発複合活動電位(eCAP)のトレースを示している。トレースは、10回の応答の平均である。
図5Cは、eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲を示す。
図5D及び5Eは、神経叢全体(
図5D)又はいくつかの切開された線維束(
図5E)を刺激することによって得られたSpNの強度‐期間曲線を示す。グラフは、異なる刺激振幅におけるeCAP閾値を得るため、相対的な電荷密度も示す。全ての刺激は1Hzで実施され、刺激に誘発された活動電位の伝導が神経での減速を制限した。
【
図5B】
図5は、豚の脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴付けを示す。
図5Aは、トルイジンブルーで染色したSpA/SpNの準超薄切片(0.5μm厚)の顕微鏡写真である。画像内で有髄軸索は観察できない。
図5Bは、動脈周囲のカフ(SpN神経叢全体周囲)又はSpN束の少しの線維束周囲の小さなカフを使用して1Hzで刺激を与えた際に、動脈から切開された動脈周囲の脾臓神経の線維束から記録された誘発複合活動電位(eCAP)のトレースを示している。トレースは、10回の応答の平均である。
図5Cは、eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲を示す。
図5D及び5Eは、神経叢全体(
図5D)又はいくつかの切開された線維束(
図5E)を刺激することによって得られたSpNの強度‐期間曲線を示す。グラフは、異なる刺激振幅におけるeCAP閾値を得るため、相対的な電荷密度も示す。全ての刺激は1Hzで実施され、刺激に誘発された活動電位の伝導が神経での減速を制限した。
【
図5C】
図5は、豚の脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴付けを示す。
図5Aは、トルイジンブルーで染色したSpA/SpNの準超薄切片(0.5μm厚)の顕微鏡写真である。画像内で有髄軸索は観察できない。
図5Bは、動脈周囲のカフ(SpN神経叢全体周囲)又はSpN束の少しの線維束周囲の小さなカフを使用して1Hzで刺激を与えた際に、動脈から切開された動脈周囲の脾臓神経の線維束から記録された誘発複合活動電位(eCAP)のトレースを示している。トレースは、10回の応答の平均である。
図5Cは、eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲を示す。
図5D及び5Eは、神経叢全体(
図5D)又はいくつかの切開された線維束(
図5E)を刺激することによって得られたSpNの強度‐期間曲線を示す。グラフは、異なる刺激振幅におけるeCAP閾値を得るため、相対的な電荷密度も示す。全ての刺激は1Hzで実施され、刺激に誘発された活動電位の伝導が神経での減速を制限した。
【
図5D】
図5は、豚の脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴付けを示す。
図5Aは、トルイジンブルーで染色したSpA/SpNの準超薄切片(0.5μm厚)の顕微鏡写真である。画像内で有髄軸索は観察できない。
図5Bは、動脈周囲のカフ(SpN神経叢全体周囲)又はSpN束の少しの線維束周囲の小さなカフを使用して1Hzで刺激を与えた際に、動脈から切開された動脈周囲の脾臓神経の線維束から記録された誘発複合活動電位(eCAP)のトレースを示している。トレースは、10回の応答の平均である。
図5Cは、eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲を示す。
図5D及び5Eは、神経叢全体(
図5D)又はいくつかの切開された線維束(
図5E)を刺激することによって得られたSpNの強度‐期間曲線を示す。グラフは、異なる刺激振幅におけるeCAP閾値を得るため、相対的な電荷密度も示す。全ての刺激は1Hzで実施され、刺激に誘発された活動電位の伝導が神経での減速を制限した。
【
図5E】
図5は、豚の脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特徴付けを示す。
図5Aは、トルイジンブルーで染色したSpA/SpNの準超薄切片(0.5μm厚)の顕微鏡写真である。画像内で有髄軸索は観察できない。
図5Bは、動脈周囲のカフ(SpN神経叢全体周囲)又はSpN束の少しの線維束周囲の小さなカフを使用して1Hzで刺激を与えた際に、動脈から切開された動脈周囲の脾臓神経の線維束から記録された誘発複合活動電位(eCAP)のトレースを示している。トレースは、10回の応答の平均である。
図5Cは、eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲を示す。
図5D及び5Eは、神経叢全体(
図5D)又はいくつかの切開された線維束(
図5E)を刺激することによって得られたSpNの強度‐期間曲線を示す。グラフは、異なる刺激振幅におけるeCAP閾値を得るため、相対的な電荷密度も示す。全ての刺激は1Hzで実施され、刺激に誘発された活動電位の伝導が神経での減速を制限した。
【
図6A】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6B】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6C】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6D】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6E】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6F】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図6G】
図6は、SpN刺激に起因する刺激強度依存性であるmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHR内での過渡変化を示す。
図6Aは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間における、mSpA BFにおける平均(n=8)変化(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)を示す。
図6Bは、異なる電流振幅でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間に達するmSpA BFにおける最大減少を示す。各ラインは検査された動物を表す。
図6Cは、異なる電流振幅及び2つの異なるPW:400(黒丸)及び200(黒四角)μsでのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs又は200μs)の間に達するmSpA BFにおける平均(n≧3)最大減少を示す。
図6Dは、異なる電流振幅(3.5乃至12mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のmSpV BF(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における変化を示す。
図6Eは、異なる電流振幅(3.5乃至20mAの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)の間のsMABP及びHR(刺激の開始に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図6F及び6Gは、異なる電流振幅におけるSpN神経叢(
図6F)又はいくつかの切開されたSpN線維束(
図6G)の1分間の刺激(対称二相性パルス、10HzでPW400μs)中のmSpA BF、sMABP、HR、及びRRにおける平均(n=3)最大変化を集約している。両方のグラフは、記録されたeCAP(最大反応に対して%で表される)の振幅(ピークからピークで測定)を示す。SpA BFの変化はベースラインからの最大減少として%で表され、HRの変化は1分当たりの心拍数(bpm)として表され、sMABPの変化はmmHgとして表され、RRの変化は1分当たりの呼吸数(bpm)として表される。2つのグラフは、使用される刺激振幅に関する相毎の電荷密度も報告している。
【
図7A】
図7は、SpN刺激中のmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHRにおける変化が周波数依存性だったことを示す。
図7Aは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpA BF(刺激に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図7Bは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間に観察されたmSpA BFにおける平均(n=3)最大減少を示す。
図7C乃至7Dでは、グラフは異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpV BF、sMABP、HR(予備刺激ベースラインに対して%で表される)における変化を示す。
図7Aのデータは平均値±標準偏差(s.d.)として表される。
図7A及び7C乃至7Dにおいて、ボックスは刺激の時間窓を示している。
【
図7B】
図7は、SpN刺激中のmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHRにおける変化が周波数依存性だったことを示す。
図7Aは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpA BF(刺激に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図7Bは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間に観察されたmSpA BFにおける平均(n=3)最大減少を示す。
図7C乃至7Dでは、グラフは異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpV BF、sMABP、HR(予備刺激ベースラインに対して%で表される)における変化を示す。
図7Aのデータは平均値±標準偏差(s.d.)として表される。
図7A及び7C乃至7Dにおいて、ボックスは刺激の時間窓を示している。
【
図7C】
図7は、SpN刺激中のmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHRにおける変化が周波数依存性だったことを示す。
図7Aは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpA BF(刺激に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図7Bは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間に観察されたmSpA BFにおける平均(n=3)最大減少を示す。
図7C乃至7Dでは、グラフは異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpV BF、sMABP、HR(予備刺激ベースラインに対して%で表される)における変化を示す。
図7Aのデータは平均値±標準偏差(s.d.)として表される。
図7A及び7C乃至7Dにおいて、ボックスは刺激の時間窓を示している。
【
図7D】
図7は、SpN刺激中のmSpA BF、mSpV BF、sMABP、及びHRにおける変化が周波数依存性だったことを示す。
図7Aは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpA BF(刺激に対して-30乃至+180秒)における平均(n=3)変化を示す。
図7Bは、異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間に観察されたmSpA BFにおける平均(n=3)最大減少を示す。
図7C乃至7Dでは、グラフは異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)でのSpN神経叢の1分間の刺激(対称二相性パルス、約36.9μC/cm
2/相でPW400μs)の間のmSpV BF、sMABP、HR(予備刺激ベースラインに対して%で表される)における変化を示す。
図7Aのデータは平均値±標準偏差(s.d.)として表される。
図7A及び7C乃至7Dにおいて、ボックスは刺激の時間窓を示している。
【
図8】異なる周波数におけるいくつかの切開されたSpN線維束の局所的及び全身的作用を示す。特に、
図8は異なる周波数における、動脈から切開して離されたいくつかのSpN線維束の刺激に関連する局所的及び全身的変化の代表的な実験的記録を示す。3乃至300Hzの周波数範囲における代表的な実験からHRデータ、sMABPデータ、刺激入力データ、eCAPデータ、SpA BFの生データ、及びmSpA BFデータが示されている。
【
図9】手術中の脾臓の超音波検査法を介してモニタリングされたSpA血流変化を示す。
図9の画像はSpN刺激中の異なる2匹の動物から得られた。刺激前及び刺激後(各上及び下パネル)に対して刺激中(中央パネル)の減少したドップラートレースに注目する。
【
図10A】
図10は、SpN刺激が生存を促進したことを示す。
図10Aは、生体内LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における差を示すカプランマイヤープロットである。
図10Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN‐Tとシャム群との間の有意差が示され、P=0.0296である。
図10C及び10Dは、生体内LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図10C)及びIL‐6(
図10D)の濃度を示すボックスプロットである。SpN‐T群とSpN‐P群との間の有意差が示され、P=0.0117である。SpN‐T群とシャム群との間の有意差も示され、P=0.0043である。
【
図10B】
図10は、SpN刺激が生存を促進したことを示す。
図10Aは、生体内LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における差を示すカプランマイヤープロットである。
図10Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN‐Tとシャム群との間の有意差が示され、P=0.0296である。
図10C及び10Dは、生体内LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図10C)及びIL‐6(
図10D)の濃度を示すボックスプロットである。SpN‐T群とSpN‐P群との間の有意差が示され、P=0.0117である。SpN‐T群とシャム群との間の有意差も示され、P=0.0043である。
【
図10C】
図10は、SpN刺激が生存を促進したことを示す。
図10Aは、生体内LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における差を示すカプランマイヤープロットである。
図10Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN‐Tとシャム群との間の有意差が示され、P=0.0296である。
図10C及び10Dは、生体内LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図10C)及びIL‐6(
図10D)の濃度を示すボックスプロットである。SpN‐T群とSpN‐P群との間の有意差が示され、P=0.0117である。SpN‐T群とシャム群との間の有意差も示され、P=0.0043である。
【
図10D】
図10は、SpN刺激が生存を促進したことを示す。
図10Aは、生体内LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における差を示すカプランマイヤープロットである。
図10Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN‐Tとシャム群との間の有意差が示され、P=0.0296である。
図10C及び10Dは、生体内LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図10C)及びIL‐6(
図10D)の濃度を示すボックスプロットである。SpN‐T群とSpN‐P群との間の有意差が示され、P=0.0117である。SpN‐T群とシャム群との間の有意差も示され、P=0.0043である。
【
図11A】
図11は、
図10と同様にSpN刺激が生存を促進したことを示すが、追加的なデータも付加されている。
図11Aは、LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における違いを示すカプランマイヤープロットである。
図11Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN2Sとシャム群との間の有意差が示されている。
図11C及び11Dは、LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図11C)及びIL‐6(
図11D)の濃度を示すボックスプロットである。
【
図11B】
図11は、
図10と同様にSpN刺激が生存を促進したことを示すが、追加的なデータも付加されている。
図11Aは、LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における違いを示すカプランマイヤープロットである。
図11Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN2Sとシャム群との間の有意差が示されている。
図11C及び11Dは、LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図11C)及びIL‐6(
図11D)の濃度を示すボックスプロットである。
【
図11C】
図11は、
図10と同様にSpN刺激が生存を促進したことを示すが、追加的なデータも付加されている。
図11Aは、LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における違いを示すカプランマイヤープロットである。
図11Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN2Sとシャム群との間の有意差が示されている。
図11C及び11Dは、LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図11C)及びIL‐6(
図11D)の濃度を示すボックスプロットである。
【
図11D】
図11は、
図10と同様にSpN刺激が生存を促進したことを示すが、追加的なデータも付加されている。
図11Aは、LPS注入後2時間における所定のエンドポイントまでの生存時間における違いを示すカプランマイヤープロットである。
図11Bは、LPS注入後30分の最低記録平均動脈血圧(MABP;ベースラインの%として算出)を示すボックスプロットである。SpN2Sとシャム群との間の有意差が示されている。
図11C及び11Dは、LPS注入後0.5時間におけるTNFα(
図11C)及びIL‐6(
図11D)の濃度を示すボックスプロットである。
【
図12A】
図12は、死体IIIからの脾動脈の解剖学的解析を示す。
図12Aは、腹腔動脈(起点SA)から仮想の矢状面までの解剖学的距離、及び起点SAから様々に分岐する膵臓動脈(PA)までの距離を示す。ボックスは切除した組織の部位を示す。脾動脈ループの長さも示されている。脾動脈に関する膵臓、脾臓、及び胃の部位も示されている。
図12Bは、各切除された組織サンプルから測定された脾動脈の直径を示す。
図12Cは、死体IVの脾臓、膵臓、脾動脈(SA)、並びに周囲の脂肪及び結合組織を示す概要を示す。SAは、ループの内側曲面から膵臓まで最小高さ1.0cmの3つのループを呈する。特性は表5で見ることができる。
【
図12B】
図12は、死体IIIからの脾動脈の解剖学的解析を示す。
図12Aは、腹腔動脈(起点SA)から仮想の矢状面までの解剖学的距離、及び起点SAから様々に分岐する膵臓動脈(PA)までの距離を示す。ボックスは切除した組織の部位を示す。脾動脈ループの長さも示されている。脾動脈に関する膵臓、脾臓、及び胃の部位も示されている。
図12Bは、各切除された組織サンプルから測定された脾動脈の直径を示す。
図12Cは、死体IVの脾臓、膵臓、脾動脈(SA)、並びに周囲の脂肪及び結合組織を示す概要を示す。SAは、ループの内側曲面から膵臓まで最小高さ1.0cmの3つのループを呈する。特性は表5で見ることができる。
【
図12C】
図12は、死体IIIからの脾動脈の解剖学的解析を示す。
図12Aは、腹腔動脈(起点SA)から仮想の矢状面までの解剖学的距離、及び起点SAから様々に分岐する膵臓動脈(PA)までの距離を示す。ボックスは切除した組織の部位を示す。脾動脈ループの長さも示されている。脾動脈に関する膵臓、脾臓、及び胃の部位も示されている。
図12Bは、各切除された組織サンプルから測定された脾動脈の直径を示す。
図12Cは、死体IVの脾臓、膵臓、脾動脈(SA)、並びに周囲の脂肪及び結合組織を示す概要を示す。SAは、ループの内側曲面から膵臓まで最小高さ1.0cmの3つのループを呈する。特性は表5で見ることができる。
【
図13A】
図13は、SpNの刺激がLPS誘導性心血管変化において安定を引き起こすことを示す。(A及びB)は、シャム(A)又は脾臓神経を刺激された(B)動物におけるベースライン(平均LPS注入10分前)からの経時的なMABP、dABP、sABP、HR、mCVP、ET CO2、SpA mBFの変化の代表的なトレースである。mCVP、HR、及びABPにおけるLPS誘導性変化は刺激された動物ではより小さい。MABP=平均動脈血圧、dABP=拡張期動脈血圧、sABP=収縮期動脈血圧、HR=心拍数、mCVP=平均中心静脈圧、ET CO2=呼気終末CO2量、SpA mBF=脾動脈平均血流。
【
図13B】
図13は、SpNの刺激がLPS誘導性心血管変化において安定を引き起こすことを示す。(A及びB)は、シャム(A)又は脾臓神経を刺激された(B)動物におけるベースライン(平均LPS注入10分前)からの経時的なMABP、dABP、sABP、HR、mCVP、ET CO2、SpA mBFの変化の代表的なトレースである。mCVP、HR、及びABPにおけるLPS誘導性変化は刺激された動物ではより小さい。MABP=平均動脈血圧、dABP=拡張期動脈血圧、sABP=収縮期動脈血圧、HR=心拍数、mCVP=平均中心静脈圧、ET CO2=呼気終末CO2量、SpA mBF=脾動脈平均血流。
【
図14A】
図14は、SpNの刺激がLPS誘導性心血管変化において安定を引き起こすことを示す。(A)刺激により、ベースライン(LPS注入前)と比べて肺血管抵抗が減少している。LPS注入を受けたシャム(無刺激)動物では、LPS注入後PVSが増加する。(B)LPS投与後、刺激がSVRをシャム動物に比べてより高く増加させている。(C)LPS注入後、刺激がPCWPのより強力な増加をシャム動物に比べて引き起こしている。PVS=肺血管抵抗、SVR=全身性血管抵抗、PCWP=肺毛細血管楔入圧。
【
図14B】
図14は、SpNの刺激がLPS誘導性心血管変化において安定を引き起こすことを示す。(A)刺激により、ベースライン(LPS注入前)と比べて肺血管抵抗が減少している。LPS注入を受けたシャム(無刺激)動物では、LPS注入後PVSが増加する。(B)LPS投与後、刺激がSVRをシャム動物に比べてより高く増加させている。(C)LPS注入後、刺激がPCWPのより強力な増加をシャム動物に比べて引き起こしている。PVS=肺血管抵抗、SVR=全身性血管抵抗、PCWP=肺毛細血管楔入圧。
【
図14C】
図14は、SpNの刺激がLPS誘導性心血管変化において安定を引き起こすことを示す。(A)刺激により、ベースライン(LPS注入前)と比べて肺血管抵抗が減少している。LPS注入を受けたシャム(無刺激)動物では、LPS注入後PVSが増加する。(B)LPS投与後、刺激がSVRをシャム動物に比べてより高く増加させている。(C)LPS注入後、刺激がPCWPのより強力な増加をシャム動物に比べて引き起こしている。PVS=肺血管抵抗、SVR=全身性血管抵抗、PCWP=肺毛細血管楔入圧。
【
図15】SpNの刺激が全身性リパーゼのLPS誘導性の増加をシャム(無刺激)動物に比べて抑制することを示す。
【
図16A】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16B】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16C】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16D】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16E】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16F】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16G】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図16H】
図16は、ヒト脾臓神経が、伝導速度の遅い軸索を含む動脈周囲線維束の神経叢であることを示す。
図16は、次の小区分を含む。A)ドナーから分離されたばかりのSpA、SpN、結合組織、膵臓及びリンパ節の切片を含むヒトの脾臓の脾臓神経血管束(NVB)。2つの小さなカフ電極(650μm径)が選択された少しの切開された線維束に配置される。作成された模式図は刺激及び記録カフの位置(a及びb)を示す。点線はB及びCで示される部分が切り取られる領域を示す。(B)ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたヒトNVBの切片である。SpN線維束は丸で囲まれている。(C)電気生理学的な研究のために分離された刺激される線維束の切片である。切片はH&Eで染色され、神経束(丸で囲まれている)及び脂肪/結合組織を示す。(D)刺激及び記録カフ間の神経を潰す前(上パネル)と後(下パネル)に1Hz及びPW400μsでヒトSpNの単極単相刺激を印加した際に記録されたeCAPである。左のボックスは、刺激アーティファクトを示す一方、右のより大きなボックスはeCAPが観察されるべき領域を示し、矢印がeCAPを示している。(E)刺激振幅に対するeCAP振幅(最大応答の%として表される)を定量化するヒトSpNの動員曲線である。各ポイントは、1Hz及びPW400μsで送達される8つの連続した単極単相パルスの平均振幅を表す。(F)ヒト、ブタ(豚)、及びラットのSpNから記録された全てのeCAP成分の伝導速度である。(G)切開された線維束を刺激することで得られるヒトSpNの強度‐期間関係(黒丸)である。データは、検査された異なるPWで検出可能なeCAPを始動させるために必要な最小電流を表す。グラフは、異なる刺激(右Y軸と呼ばれる)の対応する電荷密度(黒三角)も示す。強度‐期間及び電荷密度データに対し最小二乗回帰曲線がプロットされる。(H)異なるPWでの3つの異なる種のSpNを刺激するために必要な電荷密度である。データは、線形回帰でフィッティングされた。スケールバーは、B=2mm、C=100μmである。
【
図17A】
図17は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合糸を有するヒトの脾臓サンプル例、(B)組織構造のために組織をブロック状にスライスした概念図、(C)ブロックのうちの1つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色したスライド、及び(D)組織形態計測的推定の方法論を示す。
【
図17B】
図17は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合糸を有するヒトの脾臓サンプル例、(B)組織構造のために組織をブロック状にスライスした概念図、(C)ブロックのうちの1つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色したスライド、及び(D)組織形態計測的推定の方法論を示す。
【
図17C】
図17は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合糸を有するヒトの脾臓サンプル例、(B)組織構造のために組織をブロック状にスライスした概念図、(C)ブロックのうちの1つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色したスライド、及び(D)組織形態計測的推定の方法論を示す。
【
図17D】
図17は、A)腹腔に近い近位端を示す縫合糸を有するヒトの脾臓サンプル例、(B)組織構造のために組織をブロック状にスライスした概念図、(C)ブロックのうちの1つからのヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色したスライド、及び(D)組織形態計測的推定の方法論を示す。
【
図18】
図18は、(左)線維束の直径、(中央)脾臓神経血管束(NVB)の近位、中間、及び遠位の部位で外膜(外側脾動脈壁)に広がる線維束、並びに(右)外膜からの距離に対する線維束の割合を示す。
【
図19A】
図19は、ブタの脾臓神経血管束刺激からの生体内データを示し、(A)集団動員曲線及び(B)強度‐期間曲線である。
【
図19B】
図19は、ブタの脾臓神経血管束刺激からの生体内データを示し、(A)集団動員曲線及び(B)強度‐期間曲線である。
【
図20A】
図20は、(A)X軸が400usパルスでの電荷注入推定を表すブタにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する同回復曲線、(C)X軸が400us(青色)及び1msパルス(赤色)での電荷注入推定を表すヒトにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映する同回復曲線である。
【
図20B】
図20は、(A)X軸が400usパルスでの電荷注入推定を表すブタにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する同回復曲線、(C)X軸が400us(青色)及び1msパルス(赤色)での電荷注入推定を表すヒトにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映する同回復曲線である。
【
図20C】
図20は、(A)X軸が400usパルスでの電荷注入推定を表すブタにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する同回復曲線、(C)X軸が400us(青色)及び1msパルス(赤色)での電荷注入推定を表すヒトにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映する同回復曲線である。
【
図20D】
図20は、(A)X軸が400usパルスでの電荷注入推定を表すブタにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(B)X軸が刺激振幅を反映する同回復曲線、(C)X軸が400us(青色)及び1msパルス(赤色)での電荷注入推定を表すヒトにおけるインシリコモデリングからの動員曲線、(D)X軸が刺激振幅(mA)を反映する同回復曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0163】
試験1A:脾動脈神経の特徴づけ
材料及び方法
関連器官を併せた脾臓の肉眼的な解剖学的試験が、安楽死1時間以内の12匹の雌の豚の死体(身体サイズ22乃至120kg)で行われた。以下の測定が行われた;脾臓の長さ及び幅、腹腔動脈(大動脈から左胃動脈及び脾臓動脈への分岐まで)の長さ、脾動脈(SpA)(腹腔動脈の分岐から脾臓の実質に入るまで)の長さ、腹腔動脈に1cm遠位で脾門にて測定されるSpAの直径、膵臓から脾臓までの距離、膵臓から脾臓リンパ節までの距離。また、腹部迷走神経分岐、腹腔神経節、内臓神経、及び脾臓神経の数及びコースも記録される。脾臓神経と連携するSpAは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織構造のために処理された。
【0164】
脈管構造及び神経支配が無傷の脾臓が12匹の雌の豚の死体(身体重量22kg、n=6、身体重量45kg、n=6)から採取された。全ての組織は安楽死から1時間以内に採取され、ただちに10%の中性緩衝ホルマリン内に固定された。血管周囲のニューロンネットワークが無傷のSpAは、腹腔動脈の分岐点の起点から脾門まで5mm毎に切片にされた。これは結果的に5つの切片となり、分岐点、近位SpA、中間SpA、遠位SpA、及び門位置として定義された。近位SpA切片は、以下に説明されている以下の電気刺激研究においてカフを配置する位置に対応している。
【0165】
これらの5つの各位置にて、切片がルーチンのH&E染色で処理された。近位、中間、及び遠位SpA切片は、免疫組織染色並びに準超薄切片作製法及び染色のために四酸化オスミウム及びトルイジンブルーで処理された。
【0166】
H&E染色切片のデジタル画像は、2倍率で得られ、下記で詳細に説明される組織形態計測的解析のために適切なソフトウェア(Image J 1.50i)が使用された。ROIマネージャ機能を使用して、全ての1つ1つの神経束を手動で選択した後、動脈周囲の神経束の数が集計され、線維束サイズが最小フェレ径(μm)を測定することで評価された。
【0167】
総神経面積が(μm2で)算出され、360度の分布を100%と定義して、線維束が特定された動脈の円周の割合を評価することで動脈周囲の線維束の分布を定量化した。各線維束から外側動脈壁までの距離が、可能な限り最短の鉛直線を各線維束から動脈壁まで引くことで、測定された。脾動脈外径及び内径が近位、中間、及び遠位SpAの位置で測定された。
【0168】
ニューロン表現型を評価するためにチロシンヒドロキシラーゼ(TH)及びアセチルコリントランスフェラーゼ(ChAT)の二重染色が使用された。ニューロフィラメント200(NF200)及び核染色4’,6‐ジアミジノ‐2‐フェニルインドール(DAPI)で対比染色することで、NF200‐THの二重陽性の神経は交感神経であると考えられる一方、NF200‐ChATの二重陽性は副交感神経であると考えられた。遠心性対求心性の神経の割合を判定するために、同じ位置が遠心性マーカーTH及び求心性マーカーカルシトニン遺伝子関連ペプチド(GCRP)で二重に染色された。2つの異なるデジタル画像が、各神経から20倍率でランダムにキャプチャされ、適切なソフトウェア(AxioVision LE64)を使用して擬似カラー複合体が生成された。
【0169】
SpN軸索の髄鞘形成は、準超薄切片に加えて、免疫蛍光染色によっても評価された。SpA及びSpNの異なる部位が、ニューロフィラメント及びβ‐IIIチューブリン及びミエリン塩基性蛋白(MBP)に対する抗体で染色された。擬似カラー複合画像が上述のように適切なソフトウェアを使用して生成された。準超薄切片が、オスミウム及びトルイジンブルーで染色された。デジタル画像は、100倍率で得られ、有髄の及び無髄の軸索の数が100x100μmの面積内において手動で集計された。この手順は神経毎に3回繰り返され、これらの平均はさらなる解析に使用された。また、この手順は軸索密度(軸索の数/mm2)を導き出すために使用された。
【0170】
市販の統計ソフトウェア(JMP Pro 13.0.0)を使用して全ての統計分析を行った。非正規分布により、ウィルコクソン順位和検定を使用して全ての組織形態計測的な測定が異なる豚のサイズとSpAの位置とで比較された。推計的有意性は、P<0.05と定義された。
【0171】
結果
神経血管構造は、臓側面のみに沿って脾臓へと出入りする。具体的には、大動脈の第1の主要な腹部分岐、すなわち腹腔動脈が、肝動脈、SpA、及びLGAへと分かれる(
図3)。SpAは、脾臓基部から数センチメートル遠位に位置する門にて脾臓へと入る。門では、SpAは直ちに脾臓基部に向かって進む1つの背枝及び脾上極に向かう臓側面に沿って延びる1つの腹枝へと分岐する。左胃大網動脈は、脾臓の中間と遠位1/3との間の移行部の近傍で、この腹側のSpA分岐から発生している。
【0172】
脾臓基部にて、背側のSpA分岐は、胃のより大きな曲面に向かって進む短胃動脈として識別されるいくつかのより小さな動脈へと分かれる。これらの動脈はSpAの終末枝と考えられるが、これらはLGA及び左胃大網動脈の分岐と吻合することにより脾臓へと側副血液供給を提供することができる。脾静脈(SpV)は、上極(apex)から門まで脾臓の臓側面に沿ってSpAと平行に延びる。脾門を出た後、SpVは内側方向に進むまで短距離の間、SpAに密着して進み、肝門脈へと排出されるが、これは次に後大静脈へと排出される。これによって、動脈及び静脈が軟組織の数ミリメータほど離れて延びる狭いスペースが残される。SpA及びLGAへの腹腔動脈の分岐点のすぐ遠位であるこの領域は、以下の機能的研究の最適なインターフェースポイントとして特定されている。この位置でSpAの直径は、30kgの動物で1.5乃至3mm、60kgの動物で2乃至4mm、及び110kgの動物で5乃至8mmである。
【0173】
SpNは、脾門へと向かってSpAに沿って延びる線維の神経叢から構成される。線維はSpA及びLGAへの腹腔動脈の分岐点のすぐ尾側に位置するCGから発生していることを見ることができるが、これらの神経の起点を決定することは困難である。主に齧歯動物で行われた先の研究からのデータにより、多くのSpNは腹腔及び副腎神経節を起点とすることが決定された。このことは大型の動物種ではまだ証明されていない。
【0174】
齧歯類では、他の神経が、動脈周囲のSpNに加えて脾臓を神経支配することが説明されている。さらに具体的に言うと、根尖神経がラット及びマウスの胃脾間膜内で説明されている。これは、傍脊椎交感神経を起点としている可能性のある交感神経(TH+)であり、胃脾間膜内の脾臓の上極(apex)に向かって延びる。
【0175】
全ての組織学的測定は表1に提示されている。SpN乃至SpAの距離のみが、45kgの豚が22kgの豚よりも顕著に大きい測定結果であった(中間SpA及び遠位SpAの位置においてP<0.001)。そのため、他の全ての測定に関しては、統計分析のため、全ての豚からのデータが統合された。近位から遠位までSpAに沿う動脈周囲の神経束の数に減少があった。分岐点においては他の全ての位置よりも統計的に著しく多い線維束があった(P<0.0001)。脾門においては、神経束は他の位置においてよりも著しく多かった(P<0.0001)。SpA外径は、中間及び遠位SpAの位置よりも近位SpAで著しく大きかった(それぞれP=0.0162及びP=0.0158)。SpN/SpA距離も近位から遠位までで減少した。45kgの豚では、他の全ての位置よりも分岐点での距離が著しく大きかった(P<0.001)。また、45kgの豚では、近位、中間、及び遠位SpA位置よりも門でのSpN/SpA距離が著しく大きかった(P<0.008)。
【0176】
円周SpN分布は、中間及び遠位SpA位置よりも近位で著しく高かった(それぞれP=0.02及びP=0.15)。また、線維束は近位位置でSpA周囲により均一に円周方向に分布していた一方で、中間及び遠位SpAでは分布パターンは、動脈の反対側に線維束が集まり、より二峰性であった。
【0177】
豚において神経は胃脾間膜内の短胃及び胃大網動脈の両方に沿って見つけられる(
図4)。これらの神経は、主要な動脈周囲SpN神経叢の連続体のようであり、胃に向かって(又は胃から)延びている。この位置において、免疫組織化学的解析が行われ、どの位置のSpNもTH+及びChAT-であることがわかった。興味深いことに、主要なSpAに沿って、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に対して陽性の神経線維が特定されており、一般に求心性のニューロンのマーカーとして使用される。
【0178】
これら2つの領域で観察された神経束の数及び線維束サイズは、主要なSpAに沿って観察されたものと比較して非常に小さい。45乃至50Kgの家畜の豚における主要なSpAに沿った及び他の異なる解剖学的位置に沿った神経束の数及び相対的な径を定量化したものが
図4E及び4Fに示されている。
【0179】
【0180】
さらなる組織化学的及び免疫組織化学的解析により、SpNが>99.9%の無髄線維により構成されることが示された。準超薄切片のトルイジンブルー染色は、実際、有髄軸索を示さなかった。このことと一致して、ミエリン塩基性蛋白(MBP)の染色は、陽性軸索の数がごくわずかなこと(<0.01%)を明らかにした。髄鞘形成を評価する技術は両方とも、
図5に示されるようにSpNの研究された切片にミエリンがほぼ完全に欠如していることを明らかにした。
【0181】
考察
ここで行われた組織学的解析は、SpNが、短胃及び胃大網動脈に加えて、主要なSpAに沿う神経血管性神経叢を構成するということを示した。線維束の数は予想外に高い。SpN軸索の平均サイズ(直径約2μm)を考慮すると、SpN神経叢は主要なSpA(中間切片)のレベルにおいて、(最大で)合計約15万の軸索を含むであろうことが計算できる。これらの軸索の一部はSpA内皮を神経支配し、これらの軸索の一部は、代わりに、脾臓に入り、他の種[8、9、10、11、12]で先に説明されたように白脾髄内に加えて、白脾髄と赤脾髄との間の周辺帯のレベルで平滑筋又は免疫細胞のいずれかとシナプス結合を形成する。身体内の数々の器官を対象とするヒトの迷走神経(豚の迷走神経と同じサイズを持つ)が約10万の軸索を含むと推定されることを考えると、軸索の数は高いと予測される。SpNにおける軸索の数の高さは、ヒトの脾臓よりも約2乃至3倍大きな体積を持つ豚における脾臓のサイズ及びSpNが神経支配すると推定される動脈の長さに関連し得る。ヒトSpNの線維束及び軸索の数は異なり得る。
【0182】
豚(及び犬等の他の哺乳類)の脾臓も、ヒトの脾臓に比べて高い割合の平滑筋細胞を含んでいると考えられる[13]。しかしながら、ヒトの脾臓が無呼吸や肉体運動等のストレスのかかる状況において収縮可能なことを示す論文もある[14、15]。
【0183】
脾動脈及び静脈の血管組織化は豚とヒトとは若干異なる。豚においてSpA及びSpVは脾臓に向かって及び脾臓から近接して延びる。さらに、SpV及びSpAはヒトで観察できるようなループ又は回旋を呈さない。そのため、腹腔動脈の三分割した点の近くのSpAのほんの短い(約1乃至1.5cm)セグメントはSpVから分離されている(離れている)方がよい。動脈のこのセグメントは、後述の刺激試験において最良の介入ポイントとして選択された。この位置の神経血管束へのアクセスは、実際、より安全であるため、切開中に動脈及び静脈に加えて神経を損傷する可能性が減少する。
【0184】
試験1B:脾動脈ループの特徴づけ
材料及び方法
脾臓への異なる神経経路を調べるため、6体のホルムアルデヒドで保存されたヒト死体について試験を行った。脾臓、胃、膵臓、大網、胃脾間膜、及び存在する場合、横隔脾間膜(phrenic splenic ligament)の組織ブロックが取り出された。
【0185】
周辺組織との脾動脈の関係性に関するパラメータに加えて、全般的な脾動脈(例えば、長さ、断面直径等)、脾動脈ループ及び脾動脈の分岐の解体パラメータをはじめとする、神経叢に関連性のある多数の特性が解析された。
【0186】
脾動脈の組織サンプルも免疫組織化学染色(IHC)により解析された。IHCは、関連付けられている神経組織を検出及び定量するために使用された。全般的に、交感神経及び求心性の神経組織は、抗タンパク質遺伝子産物9.5(PGP9.5)、抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、及び抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体をそれぞれ使用して、組織切除において免疫組織化学的に検出された。免疫組織化学染色及び視覚化がルーチン作業によって行われた。全ての脾神経叢サンプルに関して、自動的に縫い合わされた概観画像(タイル走査)が複合明視野及び蛍光顕微鏡像から生成され、FIJI Image Jを(追加のプラグインと共に)使用したさらなる画像解析の対象とされた。
【0187】
結果
全ての場合において、脾動脈は腹腔動脈を起点としていた。コースは概ね膵臓上であったが、死体によっては脾動脈の一部が膵臓後、膵臓内、又は膵臓前であった。
【0188】
脾動脈の平均絶対長(脾動脈に沿ってコードを配置して測定)は、18.02cmで、腹腔動脈の起点から脾臓の仮想矢状面までの平均直線距離が11.67cmであった。仮想矢状面は、脾臓の上下極を結ぶ線を表す。脾動脈の平均径はその起点にて0.52cmであった。脾動脈の平均径はその終末枝前にて0.40cmであった。終末枝の平均数は5.5(2乃至9)で、終末枝の平均径は0.22cm(0.05乃至0.5)であった。表2は、パラメータ毎の平均値に加えて、解析された死体毎の脾動脈のパラメータを示す。
【0189】
図11は、死体IIIの脾動脈の概観及びその分岐を示す。各分岐からSAの起点まで距離と脾臓の仮想矢状面までの距離とが示されている。これに加えて、ループの位置及び寸法も見ることができる。ボックスは顕微鏡のために取り出されたサンプルの位置を示す。
図11において、脾動脈及びその分岐に沿った特定ポイントの径が示されている。
【0190】
【0191】
図11は、死体IIIの脾動脈の概観及びその分岐を示す。各分岐からSAの起点まで距離と脾臓の仮想矢状面までの距離とが示されている。これに加えて、ループの位置及び寸法も見ることができる。ボックスは顕微鏡のために除去されたサンプルの位置を示す。
図11において、脾動脈及びその分岐に沿った特定ポイントの径が示されている。
【0192】
脾動脈ループ
本例と関連して、脾動脈ループは、少なくとも1.0cmの距離で膵臓の表面から分離された脾動脈の切片として定義される。この距離は脾動脈の内側曲面から膵臓の表面までを計算した。
【0193】
解析されたサンプルプールにわたって観察された「ループ」の平均数は1.34であった。1体の死体にはループがなく、3体の死体には1つのループ、1体の死体には2つのループ、及び1体の死体には3つのループがあった。平均ループネック部(ループの両脚部の内側曲面間の距離)は、1.99cmであった。ループの第1脚部の外から脾動脈の起点までの平均距離は6.48cmであった。ループの第2脚部の外から脾臓の仮想矢状面までの平均距離は4.34cmであった。これらの距離は両方とも大きなばらつきがあった。平均ループ高さ(ループの上部の内側曲面と膵臓の表面との距離)は、1.29cmであった。ループの第1脚部に先行する脾動脈の平均径及びループの第2脚部に続く脾動脈の平均径は、それぞれ0.46cm及び0.41cmであった。各死体の個々の及び平均の脾動脈ループパラメータは表3に示されている。
【0194】
【0195】
免疫組織化学染色
脾動脈ループを囲う神経束の免疫組織化学的解析の結果が表4に示されている。脾動脈ループ周囲の神経束の平均数は25であった。神経束の平均径は119μmであった。交感(TH‐IR)神経組織の平均総面積は196986μm2(12645乃至815135)であり、これは総組織面積の平均0.54%(0.10乃至1.50)であった。神経血管束(脾動脈及び周囲の組織)の径は平均で8553μm(5177乃至12447)であった。カフ(組織の外層)の位置までの神経束の距離は平均で628μm(32乃至2678)であった。
【0196】
【0197】
概して、総PGP‐IR(一般的な神経組織)及びTH‐IR(交感神経組織)染色は脾動脈ループを囲う神経束で同等であった。CGRP‐IR(求心性神経組織)は最小限の染色があった。別々の死体から得られた3つのサンプルに対して計算されたPGP‐IR、TH‐IR、及びCGRP‐IR神経組織の総面積のサンプルが表5に示されている。
【0198】
【0199】
考察
ここで行われた解析は、脾動脈ループが脾動脈の一般的に観察される特徴であることを示している。ループは一般的に、約1cmの脾臓の表面から脾動脈の内側曲面までの分離距離を有することを特徴とする。この分離距離はこれらの部位を、脾動脈神経の神経調節のための神経性刺激システムの外科的移植のために有益な対象物にする。脾動脈ループは、よりアクセス可能であり、膵臓の表面から脾動脈を切除する必要性をなくすことにより、手術により引き起こされる外傷に関連する危険性がより少ない。
【0200】
試験2:脾動脈神経の電気刺激
材料及び方法
合計8匹の豚(体重40乃至50Kg)が、脾臓神経の組織学的及び電気生理学的特性化に使用された。
【0201】
実験日に、筋肉注射によりケタミン(1.5mg/kg)及びミダゾラム(0.5mg/kg)を投与して動物を鎮静化した。静脈内カテーテルが1つの耳介静脈に配置され、プロポフォール(2mg/Kg)の静脈内投与により麻酔をかけた。気管内チューブが配置され、フェンタニル(0.2μg/Kg/min)の持続定量点滴(CRI)と併せてセボフルラン吸入によって麻酔を維持した。
【0202】
全身麻酔を引き起こした後、超音波エコーの誘導の下、両側留置頸静脈カテーテル及び1つの大腿動脈カテーテルを配置するために、動物は背臥位に位置付けられた。SpNカフの移植を受ける動物は続いて右横臥位に再度位置付けられた。
【0203】
SpNカフ移植の外科的アプローチは以下の通りであった。胸腰椎移行部を支持し、砂袋を使用して若干高くした。適切な手術準備(クロルヘキシジングルコン酸塩及びアルコールでクリッピング及び無菌スクラブ)の後、最後から2番目の肋骨を中心にして20x25cmの領域を露出して左脇腹を無菌的に覆った。単極電気焼灼を使用して最後から2番目の肋間腔に15cmの皮膚切開が行われた。切り口は皮下組織及び肋間筋を通って腹膜が露出されるまで続けられた。肋骨に係合するように注意しながら、2つのフィノシェット開胸器を腹膜後方にかけた。次の数分間、開胸器は徐々に広げられた結果、計測して約10x8cmほど左横腹部を露出させた。開胸器のブレードは、カルボキシメチルセルロース(CMC)に浸されたガーゼスポンジで覆われた。腹膜は長手方向に切開されて、処置中に脾臓が裂けるリスクを最小限に抑えるために開胸器のブレードを覆う皮膚に縫合された(バイクリル2‐0;フォード連動縫合パターン)。慎重なデジタル操作により、脾臓が体外に出され、脾動脈(SpA)がその臓側面に沿って識別された。脾臓の中間部分でSpAが左胃大網動脈へと分岐する近位にて、1mmの超音波流量プローブ(Transonic)を配置するため、短いセグメントのSpAが周囲の軟組織を含まないように慎重に切開された。プローブ配置後、脾臓は腹部へと再度位置付けられた。
【0204】
作業者に向かって脾臓内臓基部をわずかに回転させ、脾臓上において穏やかに腹側を引っ張ることで、メッツェンバウム剪刀を使用して脾門の胃脾間膜が切開され、SpAが露出した。動脈がその起点(すなわち、左胃動脈(LGA)及びSpAへの腹腔動脈の分岐点)に対する背側方向に続いた。この分岐点のすぐ遠位に、無傷の動脈周囲SpNネットワークを有するSpAの約1cmのセグメントがメッツェンバウム剪刀を使用して鈍的切開により円周方向に分離された。まっすぐな顕微解剖鉗子を使用して手術野に導入される2.5mm径のCorTecカフを1片掴みながら、湾曲したミクスター動脈鉗子が尾側から頭蓋まで動脈下に挿入された。正しく配置されると2片のカフが並置されるように注意しながら、ミクスター鉗子の動きを逆転させることでカフをSpA及び無傷の動脈周囲SpNネットワークの周囲に配置した。脾臓及び動脈の張力が続いて解放された。SpA及びSpV(脾静脈)血流の測定値が検査され、最終的に肋骨の開胸器が部分的に閉じられ、露出された切り口は生理食塩水に浸したガーゼスポンジで覆われた。
【0205】
電気生理学的な実験も実施された。これらは一般的に、SpN神経叢全体又は少しの線維束の刺激中に誘発複合活動電位(eCAP)を記録することを可能にするため、刺激カフに対し数センチメートル遠位(脾臓により近い)の1つ又はいくつかの別々のSpN線維束を解剖してカフをつけること(500μm径の二極又は三極のCorTecカフを使用)を必然的に伴う(
図5参照)。また、刺激部位の上流側又は下流側のいずれかの神経信号の遮断(例えば、局所麻酔の局所投与又はSpN線維束の離断により)の異なる組み合わせも実施された。
【0206】
記録されたeCAPは、モデル1800 2‐チャネル微小電極交流増幅器(A‐Mシステムズ)を使用して増幅及びフィルタ処理が行われた(100乃至1000Hz)。神経活性は、オシロスコープを使用して継続的にモニタされ、20kHzのサンプリングレートを使って16チャネルPowerLab(ADインスツルメンツ)取得システム及びLabChart8ソフトウェアを使用してコンピュータに記録した。eCAPが概して平均化され(8パルス)、平均化したレスポンスのピークツーピーク又は曲線下面積(AUC)が定量化された。SpNのeCAP成分の伝導速度は刺激と記録部位との間の距離及びeCAP信号のレイテンシーから算出された。
【0207】
心電図(ECG)、心拍数(HR)、動脈血圧、呼吸数(RR)、パルスオキシメトリ、カプノグラフィ、肺活量測定が手術中モニタされた。鼻腔内のプローブにより体温は連続的に記録された。実験中、動脈血液ガスは解析され、pH、グルコース、pO2及びpCO2、K+レベルがモニタされた。使用したセボフルランのレベルに加えて、全ての生理学的パラメータが記録シートに記録された(5乃至10分毎)。生理学的データもPowerlab取得システム及びLabChartソフトウェアを使用してデジタル化された。全てのパラメータは概して、0.1乃至2kHzの間の周波数でサンプリングされた。
【0208】
麻酔の深さは眼瞼反射、角膜反射、中腹側眼球位置、及び顎の緊張により評価された。
【0209】
さらに、バイスペクトル指標モニタリングシステム(30乃至60の間のレベル)に加えて生理学的パラメータも麻酔レベルの調整に使用された。場合によっては、プロポフォールのボーラス投与も使用された。
【0210】
場合によっては、SpN刺激中のSpA血流変化のリアルタイムモニタリングのため、脾臓の手術中の超音波検査が使用された。この手順のため、術中プローブ(i12L‐RS線形術中変換器4乃至10MHz、フットプリント29x10mm、視野25mm;GE Vivid‐i)が使用された。
【0211】
SpA血流変化はカラードップラー及び連続波スペクトル追跡により評価された。脾門から2乃至3cm遠位の脾臓実質内でのSpAのカラードップラー識別後、SpA内腔の中心にウィンドウカーソルを向けることでSpA流の連続波スペクトル追跡が得られた。代表的な信号の取得後、超音波検査プローブ及びカーソルウィンドウはSpN刺激が始まる間その位置に置かれたままにされた。
【0212】
全ての統計分析は、市販の統計ソフトウェア(JMP Pro 13.0.0又はGraphPad Prism 5.0)で行われた。
【0213】
結果
SpN刺激中に生成されたeCAPの記録、動脈周囲のカフによるSpN神経叢全体又はより小さなカフによる少しの線維束の刺激のいずれかは、刺激と記録部位との間の距離に特定のレイテンシー依存を持つeCAPを生成した(
図5B)。eCAPの異なる成分の伝導速度の範囲が
図5Cに示されている。神経叢全体又は少しの線維束のいずれかの刺激は、平均速度1m/sを下回るeCAPを生成した(
図5C)。この伝導速度は、SpNが無髄神経であると説明する下記の特徴データにおける組織学的結果と一致する。神経叢全体又は少しの線維束のいずれかを刺激するeCAPを引き起こすために必要な電流振幅とパルス期間との間の関係が
図5D及び5Eに(それぞれ)示されている。動脈周囲のカフにより神経叢全体を刺激する場合、神経応答の閾値は7.692乃至15.58μC/cm
2/相の間で得られた。より小さなカフによりいくつかの切開された線維束を刺激する場合、閾値は5.796乃至11.594μC/cm
2/相の間で得られた。両方の場合において、eCAP記録のための電流密度の閾値は、短いパルス幅(PW)でより低かった。
【0214】
特定の電流閾値を上回る10Hz及びPW400μsで1分間のSpN二相性刺激は、血管周囲流プローブを介して測定すると絶え間なく遠位SpA内で一時的な血流減少を引き起こしていた。送達電流と流量減少との間の明確な用量反応関係があった。振幅が高ければ、血流において観察された減少が強かった(
図6A)。刺激前ベースラインと比較して、5%の平均SpA血流(mSpA BF)の変化と定義されている血流変化閾値は、(PW400μsで)4.5mA程度及び(パルス幅200μsで)12mA程度で観察された(
図6B及び6C)。血流変化を引き起こすために閾値の相毎の電荷密度を算出した際の数値は非常に似ており、400μsで約13.8μC/cm
2/相、200μsで18.46μC/cm
2/相であった。12mA及びPW400μs(36.9μC/cm
2/相)での刺激はSpAにおいてベースライン値から約40%の平均最大BF減少を引き起こした。
【0215】
並行して、SpV内における血流の記録は、静脈が脾門を離れる脾臓基部に配置されたドップラー流量プローブを使用して記録された。興味深いことに、刺激(対称二相性パルス、400、10Hzを1分間)は、電流振幅依存であった平均SpV血流(mSpV BF)における増加を引き起こした。12mA及びPW400μs(36.9μC/cm
2/相)での刺激は、ベースラインmSpV BFと比較した場合、約200%の最大増加を引き起こした。mSpA BFの一時的な減少は、全身平均動脈血圧(sMABP)における一時的な増加も伴った。ベースラインからのこの増加(平均して1乃至6mmHg)は再度刺激強度と相関された(
図6E)。刺激によって絶え間ないsMABPの変化が観察され、SpA流量において20乃至30%の低下を引き起こした。対照的に、HRへの影響は最小限のみ(<3bpmの変化、増加又は減少のいずれか)であったが、高い刺激振幅でのみ、より一貫していた(>45μC/cm
2/相は3乃至10bpmの変化を引き起こした)(
図12G)。SpN刺激は、検査された条件では呼吸数(RR)に影響を及ぼさなかった。
【0216】
異なる電流振幅(1乃至50mA、3.076乃至153.8μC/cm
2/相に相当)での1分間の刺激(対称二相性パルス、10Hz、PW400μs)中に、mSpA BF、sMABP、HR、及びRRで観察された変化は、
図6Fにまとめられている。
図6Fでは、これらの変化の大きさがSpNからのeCAP(黒線及び円)の記録といかに相関したかを観察することができる。動員した線維の数が高いほど(最大記録応答に対するeCAP%として測定)、mSpA BFにおける減少及び他の関連する変化が強かった。
【0217】
SpAから切開して離された個別のSpN束の直接的な刺激(
図4Aの位置「b」にて500μm径カフを使用)は、mSpA BF、sMABP、HRに同様の変化を誘発した。1分間(対称二相性パルス、1Hz、PW400μs)及び異なる電流振幅(0.1乃至2.5mA、3.86乃至96.61μC/cm
2/相に相当)の間発生するこれらの変化は
図12Gにまとめられている。この場合でさえも、関連する変化は、刺激により動員された線維の割合(黒色で示されるeCAP)に依存した。最大eCAP(及び従って最大変化)は、神経叢全体を刺激した場合は約153μC/cm
2/相で、及び約70μC/cm
2/相で得られた。少しの線維束を刺激した場合の変化の規模は、刺激された線維の総数がより低く、周波数がより低かったため、予想通りに、神経叢全体を刺激した場合に得られるよりも低かった。
【0218】
mSpAにおける血流変化は、刺激の異なる周波数によっても影響を受けていた。異なる周波数(0.25乃至100Hzの間)で刺激(対称二相性パルス、PW400μsを約36.9μC/cm
2/相で1分間)した場合、30乃至50HzでSpAにおいて最も強い血流減少を確実に引き起こした(
図7A)。50Hzを上回ると(70乃至100Hz間)、BFにおける減少は、実際、より小さく、10Hzの刺激で得られた減少の範囲にあった(
図7B)。mSpV BF、sMABP、及びHRにおける変化は、印加された刺激の周波数にも依存することも分かった。30乃至50Hz間で最も強い影響が再度観察された(
図7C乃至7D)。
【0219】
これは、動脈から切開して離された少しの線維束のみを最大限に(70μC/cm
2/相程度)刺激すると再度観察された。mSpA BFにおけるより強い減少は、より低い周波数(1Hz以下)ですでに発生していた。周波数解析中に神経叢全体に使用した刺激振幅と比べて、神経線維の動員がより多いからである。しかしながら、一貫して、最大限の減少は30乃至50Hz間で観察された(
図7D)。
【0220】
SpA BFにおける観察された変化が(平滑筋の刺激というよりも)直接的なニューロンの活性化によるものであったとさらに確認するために、リドカイン(2%のリドカイン塩酸塩溶液)が移植されたSpNカフ(動脈周囲のカフ又は切開された線維束のカフのいずれか)の周囲に局所的に適用された。リドカインは急速な電位依存性Na+チャネルの特定の遮断剤である。リドカインはSpA BFにおける変化を遮断することができた。さらに、SpAの機械的閉塞はBFを80%まで減少させることができ、sMABP又はHRには何の変化も引き起こさなかった。加えて、SpNの中央端部(カフから近位)の離断は、SpA血流、sMABP、及びHRへの刺激影響をなくすことがなかった。また、GEP及びSGセグメント内でのSpNの離断もこれらの変化を防止しなかった。興味深いことに、これらの全ての影響は、SpNの周辺端部(カフから遠位)が切断された場合にのみ、なくなった。これらの全てのデータは、SpA BF及びSpV BFにおける変化がニューロンにより駆動され、脾被膜の収縮に加えて、SpAの収縮にも関連していることを示唆している。その一方で、sMABP及びHRにおける変化は、おそらく脳へと向かうニューロン経路の活性によるものではなく、脾臓から心臓へと向かう血液の流出増加によるものであろう。
【0221】
動物によっては、脾門での術中超音波検査を使用して、刺激中のSpA血流変化もモニタされた。カラードップラーによりSpAを特定した後、BFにおける変化が
図8に示されるようにドップラー信号としてモニタされた。10Hzでの刺激中、BFにおける減少は、変化した振幅及び流量トレースの形状によって示されるように、容易に観察できた。
【0222】
考察
脾臓神経刺激は、脾臓の収縮に加えてmSpA BF及びmSpV BFにおける一時的な局所的変化を伴った。これらの変化は、SpAの平滑筋の直接的な刺激というよりも、SpNの直接的な活性化によるものであった。SpN刺激中の脾臓収縮は、他の種でも先に報告されている[16]。mSpA BFにおいて観察された変化は、動物間で非常に一貫していた。ばらつきは、おそらく、主に異なる動物のSpN神経叢周囲のカフの異なるフィッティングによるものであった。SpA BFにおける変化は、非侵襲性の超音波を介して容易にモニタできたため、臨床現場においてもSpNの効果的な刺激を評価するマーカーとして使用することもできた。
【0223】
SpN刺激中に観察された一過性の変化は、振幅及び周波数依存であると示された。異なる電流振幅での1分間の刺激中、記録されたeCAPのピークにも対応した検査された最も高い電流振幅で最も強いmSpA BFの減少が観察された。このことは、SpN神経叢全体を(動脈周囲のカフで)刺激する場合又はより小さなカフ内に配置された少しの線維束のみを刺激する場合において当てはまった。SpN神経叢から及びSpN線維束から最大eCAPを得るために必要な合計電荷密度における差は、2.5mmのカフ使用による神経叢の部分的なカバー範囲で説明可能であった。実際に殆どの豚で、このカフは270乃至300度の円周方向のカバー範囲しかなかった。動脈から切開して離されたSpNの少しの線維束のみをカフする場合、カバー範囲はほぼ全体であった。そのため、SpN線維束の最適な動員を得るために必要な電荷密度を制限するため、動脈の最適な円周カバー範囲が必要となる。
【0224】
30乃至50Hz間の周波数で(mSpA BF及びsMABPにおける)最も強い変化が観察された。伝えられたパルスの総数は、この変化の大きさを判定するあたり重要な要因となり得たが、異なる周波数で伝えられた同じパルス数で発生した変化と比較した場合、依然として30乃至50Hzの範囲が最も強い変化を引き起こしたことは事実である。このことは、ネコの脾臓からの最大のNAの放出が30Hzで観察されたことを示す先に報告されたデータにより説明できた[17、18]。NAのより高い放出は、この刺激範囲で観察される変化のより高い大きさを説明できた。
【0225】
試験3:生体内LPS動物モデルでの電気刺激の影響
材料及び方法
動物
試験のこのセクションでは、合計18匹の豚(当初は38匹を超えていた)(年齢/体重)が使用された。これらの18匹の豚のいずれも解析から除外されていない。
【0226】
一般的な設計
他の試験目的の一部として行われた初期刺激後3時間、18匹の動物はエンドトキシン(大腸菌O111:B4の細胞膜から精製されたリポ多糖類;シグマアルドリッチ)2.5μg/kgの静脈注射を受け、5分間にわたって投与された。この投与量は、利用可能な文献の徹底的な見直しと個人的な経験を通して選択された。この投与量は、モデルの敗血症性ショック型を引き起こすために選択された。LPS注入の3時間前にSpN刺激を受けた動物は2群に分けられた。SpNSはこれ以上の刺激を受けなかったが、SpN2SはLPS注入中に第2のSpN刺激を受けた。
【0227】
刺激パラメータは、10Hzの方形、二相性、電荷均衡対称パルス並びに400μsのパルス期間及び30乃至90μC/cm2/相の相毎の電荷密度に対応する電流振幅で1分間の期間を含む。刺激は1回印加されて、その後、3時間後に生体内にLPSが注入された時に2回目が繰り返された。
【0228】
LPS注入の直前に周辺の静脈血が採取され(ベースライン)、注入後2時間まで30分毎に採取された。この期間の最後に、豚は安楽死させられた又はさらなる最終電気生理学検査のために使用された。これらのすべての時点でサイトカイン解析(TNFα及びIL‐6)並びにルーチンの血液学及び生化学分析が行われた。血清はサイトカイン解析のために1:10に希釈された。
【0229】
LPS注入が全身血圧及び/又は心臓機能に臨床的変化を引き起こした動物では、バソプレシン(2.5IU静脈内大量瞬時投与及び必要に応じて繰り返し)及び抗不整脈薬(リドカイン;2mg/kg静脈内及び/又はアトロピン;40μg/kg静脈内)等の標準的臨床治療が麻酔医の裁量で与えられた。動物は平均全身動脈圧が>40mmHgに維持できなかった場合、又は動物が所定のエンドポイントを完了した場合、安楽死させられた。
【0230】
統計分析
全ての分析は市販の統計ソフトウェア(JMP Pro 13.0.0)で行われた。連続変数は正常値及び外れ値が目視で検査された。外れ値が特定された場合、結果セクションで記述されているようにこれらの動物を含んで及び除いて統計検査が行われた。
【0231】
サイトカイン及び白血球レベルの変化が、LPS注入の直前に採取されたベースラインサンプルの割合として算出された。続いて、サイトカイン及び白血球レベルは、刺激群、時間及び刺激群と時間の積を固定効果とし、動物を変量効果とする混合モデルを使用して分析された。対応ありスチューデントのt検定が事後分析に使用された。刺激群間での生存時間の差はログランク検定及びカプランマイヤープロットでのプロットを使用して分析された。サイトカインレベル、白血球、及び電解質が、事後全対スチューデントt検定分析で二元配置分散分析を使用してLPS注入後30分の時に異なる処置群間で比較された。この検査は群の間の平均動脈血圧の最大減少を比較するためにも使用された。統計的有意性はP<0.05として定義された。
【0232】
結果
生存
LPSの高用量の投与は、LPS投与後5乃至10分以内で全身動脈血圧に急激な変化を引き起こした。シャム(Sham)(無刺激)動物では、これらの変化がより強く、より急速であった。多くの動物が血圧の安全レベル(平均ABP>40mmHg)を維持するために治療介入(例えば、バソプレシン注入)を必要とした。しかしながら、殆どの動物において治療介入はABPの安全レベルを回復させるのに十分でなく、動物は安楽死させねばならなかった。加えて、数匹の動物が頻脈性不整脈及び深刻な頻脈を示した。刺激された動物(特に2回の脾臓神経刺激を受けたもの)は、より低い規模の変化とより安定した心血管応答を示した。刺激及びシャム動物においてLPS投与後に記録された事象は表2にまとめられている。
【0233】
表2はLPS投与後の心血管変化を説明している。表は、LPS投与後、動物において観察された平均動脈血圧(MABP)の変化及び個々の豚に投与された処置を示している。時間はLPS注入後の時間を表している。MASS=体外胸部(心臓)マッサージ、VAS=バソプレシン投与(2.5μg/kg静脈内)、ATR=アトロピン投与、LID=リドカイン投与、Euth時間=LPS投与から安楽死までの時間(分)、所定のエンドポイントは120分であった。
【0234】
【0235】
注入後2時間の生存率を
図10A及び
図11Aに示す。SpN‐T対シャム間の生存率に統計的に有意な差があった(P=0.0194)。要するに、LPS注入は、シャム動物の5/6に10乃至20分以内に深刻な心血管の副作用を引き起こし、所定のエンドポイントに達する前に安楽死を必要とした(処置にも拘わらずMAP<40mmHg)。一方、SpN‐T刺激動物の5/6及びSpN‐P刺激動物の4/6では平均動脈血圧をはじめとする生命を脅かすパラメータは実験期間中安定を保った。これらの群では、注入後2時間でのMAPは、それぞれベースライン値の95.3±13.5、85.9±7.5、及び86.8±9.7%であった。同様に、SpN‐T対シャム間のMAPにおける最大減少には統計的に有意な差があった(P=0.0296、
図10B及び
図11B)。安楽死の時間における平均MAPは、SpN‐T群のベースラインの87.1±23.5%(注入後平均生存時間1.8±0.5時間)、SpN‐P群のベースラインの62.7±33.0%(注入後平均生存時間1.4±0.8時間)、及びシャム群のベースラインの48.6±37.9%(注入後平均生存時間0.9±0.7時間)であった。
【0236】
サイトカイン定量:全ての群に関して、ピーク応答は注入後1時間で観察され、結果的に全ての注入後サンプルにおけるTNFαレベルがLPS注入により、ベースライン(P<0.001、
図10C乃至10D及び
図11C乃至11D)と比較して、大きく増加した。IL‐6は、全ての群にわたるベースライン(P<0.0001)と比較して、注入後2時間で極めて高かった。
【0237】
注入後0.5時間でサイトカインレベルを比較すると、IL‐6レベルに加えてTNFαレベルもシャムと刺激された群との間で大きな差は見つからなかった(
図10D、11C、及び11D)。
【0238】
考察
炎症反応に似た症状を呈する生体内へのLPSの投与はSpNの有効性を検査するよいモデルを提供した。45乃至50kgの豚へのLPSの投与(2.5μg/Kg体重)は、検査された動物の全ての血液中のサイトカイン(TNFα及びIL‐6)の発現上昇を招いた。特に、TNFαは注入後1時間で約12ng/mlのピーク値に達したが、IL‐6はLPS後2時間で15ng/ml程度となった。LPSは、循環性リンパ球及び好中球を減少させて(結果は不図示)、末梢血組成においても著しい変化を引き起こした。白血球は実際、LPSにより模倣された全身感染の間、おそらく組織及び器官を浸潤するために循環から離れる。経時的なCK及びALPの増加に加えて、血液尿素、クレアチニン、総ビリルビンの著しい増加もLPS後観察された(結果は不図示)。これらの全ての変化は動物間でモデルが有効で再現可能なことを示している。
【0239】
驚くことに、シャム動物は、LPS投与後約10乃至15分で全身MABPにおいて非常に急速で強力な減少を示した。全身MABPにおける減少が直ちに生命を脅かすレベルに達したので、バソプレシン投与が必要となった。しかしながら、これは殆どのシャムにおいて正常なsMABPに安定的に回復させるには十分ではなかった。バソプレシンのさらなる注入が行われても、シャム対照の4/6は、彼らのsMABPが40mmHgよりも高く維持できなかったため、LPS注入後30分で安楽死させなくてはならなかった。シャムの1つは同じ理由からLPS注入後110分で代わりに安楽死させられた。場合によっては、不整脈も観察された。
【0240】
反対に、(LPSに対して-3時間又は-3時間と0時間のいずれかに)刺激された殆どの動物はsMABPにおいてそのような強い変化を示さなかった。彼らの殆どはどの薬理学的介入(すなわちバソプレシン)も必要としなかった。しかしながら、このSpN刺激の生存促進効果は、LPS誘導性サイトカインの濃度の低下では説明できなかった。実際に、シャム動物と比較した場合、刺激された動物におけるLPS注入後30分で測定されたTNFα及びIL‐6は減少していなかった。そのため、SpN刺激が炎症性刺激への反応を調節できるという証拠をこのモデルが提供したとしても、このことは炎症反応における減少で単純に説明できなかった。しかしながら、殆どのシャムがLPS投与後30分以内に安楽死させられなくてはならなかったため、刺激動物とシャム動物との間での(LPS後1、1.5、及び2時間での)サイトカインレベルのさらなる比較は行うことができなかったことを考慮しなくてはならない。そのため、サイトカインレベルにおける差は、TNFα及びIL‐6がそのピーク値に達する、もっと後の時点で観察されていたということもあり得る。
【0241】
そのため、データは生存促進効果がいくつかの他のメカニズムの調節によるものだったことを示唆する。
【0242】
概要
要約すると、発明者らは、脾臓に分布する神経、特に脾動脈神経の神経性刺激が生体内LPS動物モデルにおいて生存促進効果を示したことを見出した。発明者らは、脾動脈神経の電気刺激が、LPS処置された動物で劇的に低下する血圧を安定させ、血圧の最大減少を抑えることも見出した。従って、脾臓神経の神経活性の刺激は、ショックに伴う生理学的変化を有する生命を脅かす状態のような急性疾患及び心血管性の機能障害(例えば、外傷、出血、及び敗血症性ショック)を治療するために役立たせることができる。
【0243】
試験4:生体内LPS亜致死動物モデルにおける電気刺激の影響
材料及び方法
動物
試験のこのセクションでは、合計8匹の雌の大型の白豚(体重60乃至70Kg)が使用された。
【0244】
一般設計
試験の日に、ケタミン/ミダゾラムで1匹の動物を鎮静させた。耳介(耳)静脈に配置されたカテーテルを介してプロポフォール(2mg/Kg)の投与によって静脈麻酔が誘発された。続いて、開放気道の確保及び維持を主要な目的とし、そして酸素/空気混合体内に含まれるセボフルラン使用して全身麻酔を維持するためにも気管内チューブが気管に挿入された。全身麻酔の誘発後、動物には、流体/医薬品を提供するのに加えて、血圧をモニタリングするために侵襲的な大腿動脈及び頸静脈カテーテルが装備された。続いて、動物は右横臥位に位置付けられた。眼瞼反射、角膜反射、中腹側眼球位置、及び顎の緊張を使用して麻酔の深さがモニタされた。軽水準の麻酔の考えられる兆候として、流涙に加えて眼振もモニタされた。心電図(ECG)、心拍数(HR)、呼吸数(RR)、全身動脈血圧(ABP)、中心静脈圧(CVP)、パルスオキシメトリ、カプノグラフィ、肺活量測定、及び体温が手術中モニタされた。動物には、心臓出力及び肺動脈楔入圧測定のために、カテーテルに加えて連続的心臓出力測定システム(PICCO)も肺動脈内に装備された。吸入されたセボフルランの割合に加えて全ての生理学的パラメータも、Powerlab取得システム及びLabchartソフトウェアを介して継続的に記録されるに加えて記録シートにも記録(5分毎)された。動物は、手順の期間中、正圧で機械的に換気された。脾動脈及び神経は続いて横開腹を介してアクセスされた。脾臓神経を刺激するために、近位脾動脈のレベルにカフが配置された。刺激は、振幅の範囲をもって10Hzで2分間印加された。シャム動物はいかなる刺激も受けなかった。刺激の終了後15分、動物は、エンドトキシン(大腸菌O111:B4の細胞膜から精製されたリポ多糖類;シグマアルドリッチ)2.5μg/kgの静脈注射を受け、5分間にわたって投与された。この投与量は、LPS投与後4乃至6時間のウィンドウにおいてショックを起こさずに顕著な心臓血管系作用を引き起こすように選択された。LPS注入から約30分、第2の刺激(又はシャム刺激)が送達された。
【0245】
刺激パラメータは、10Hzの方形、二相性、電荷均衡対称パルス並びに400μsのパルス期間(相毎)及び40乃至90μC/cm2の相毎の電荷密度に対応する電流振幅で1分間の期間を含む。
【0246】
LPS注入の直前に周辺の静脈血が採取され(ベースライン)、注入後4時間まで30分毎に採取された。この時間窓の最後に、豚は安楽死させられた。これらのすべての時点でサイトカイン解析(TNFα及びIL‐6)並びにルーチンの血液学及び生化学分析(リパーゼ及びアミラーゼを含む)が行われた。
【0247】
肺毛細血管楔入圧(PCWP)を取得するために、心臓出力はPICCOシステムで継続的に、及びLPS注入前及びLPS後30分に肺動脈カテーテルを使用して、測定された。
【0248】
結果
心血管パラメータへの刺激影響
LPSの投与はABP、CVP、HR、及びET CO2において著しい変化を引き起こした。興味深いことに、脾臓神経電気刺激を受けた動物は、ABP、CVP、及びHRにおいてより低い規模の変化を示した(
図13A及びB)。
【0249】
LPSの注入は、LPS注入後30分に肺血管抵抗(PVR)において顕著な増加も引き起こした。しかしながら、動物が刺激されると、PVRの安定及び減少が観察された(
図14A)。並行して、刺激は、全身血管抵抗(SVR)においてシャム動物と比較してわずかに強い増加(
図14B)及びPCWPにおいてより強い増加(
図14C)を引き起こした。
【0250】
最後に、LPS注入はリパーゼの循環レベルの顕著な発現上昇を引き起こした。この増加は脾臓神経刺激動物においてはより一層小さかった(
図15)。
【0251】
考察
内毒血症(亜致死用量の全身LPS投与)を受けた豚における脾臓神経の刺激は、LPSにより誘発された心血管変化の顕著な安定を引き起こした。特に、増加したSVR及び減少したPVRは、先に説明された敗血症性ショックモデルにおける肯定的な出力を説明するかもしれない。このことは、LPS誘導によるリパーゼの増加における抑制に加えて、LPS投与の後のCVP、ABP、及びHRにおけるより小さな大きさの変化にも匹敵するので、シャム動物と比較してより低いレベルの器官損傷とより強力な保護を示している。
【0252】
ヒトデータ
試験5:ヒトの脾臓神経の電気生理学的特性化
材料及び方法
ヒトSpN標本
脾臓神経血管束NVBを含むドナー患者から新たに採取された1つの組織が、輸送のために氷入りの臓器移植に適した溶液に保存された。到着すると、標本は解剖顕微鏡の下でよく冷えたクレブス液中に配置され、SpAから最小でサンプル毎に1つの個別のSpN線維束が慎重に分離され、続いて2つの二極円周カフ電極(0.65mm径、5.5mm長;CorTec株式会社)が約10mm離れて配置されて装着され、CAPを引き起こして記録した。線維束電極のカバー範囲は全ての移植において100%と推定された。
【0253】
記録
神経活性はオシロスコープを使用して継続的に観察され、サンプリングレートを20kHzに設定して、1401デジタル取得システム及びSpike2ソフトウェア(Cambridge Electronic Design Ltd)を介してデジタル的に記録された。引き起こされたCAPは平均化され(8パルス)、平均化したレスポンスのピークからピークの振幅が定量化された。eCAP成分の伝導速度は刺激部位と記録部位との間の測定された距離及びeCAP信号のレイテンシーから算出された(刺激アーティファクトのピークからeCAPのピークまで測定された)。
【0254】
結果
ブタのサンプルと比較して、ヒトSpAは先に説明されたもの(Michels 1942)よりもより複雑なコースを呈した。さらに、脾臓NVBは広範囲に及ぶ量の結合組織及び脂肪に埋め込まれており(
図16A)、構成物の円周全体からの記録を困難なものとした。しかしながら、解剖顕微鏡を使用すると、いくつかの神経束を見ることができ、後に標本の組織切片によりそうであると確認された(
図16B)。刺激及び記録カフ電極をこれらの線維束のいくつかに装着した後(
図16A、上下画像)、刺激は明確なeCAPを生成した(
図16D、上部出力記録)。実験の最後に記録の信頼性を確かめるため、線維束が刺激及び記録電極の間で潰され、再記録の試みが行われた(
図16D、下部出力記録)。特定のパルス期間(例えば、PW100、200、400、800、及び1000μs)及び増加する振幅で刺激を印加した場合、典型的な動員曲線が得られた(
図16E)。
【0255】
算出された伝導速度は無髄線維の典型的な数値を示し、伝導速度の範囲及び平均は、ブタ(0.7m/s)及びラット(0.72m/s)のSpNと比較して、0.49m/sであった(
図16F)。加えて、ヒトSpNのeCAP記録は神経動員のための電流振幅とパルス期間との間に典型的な強度‐期間関係を示した(
図16G)。eCAP閾値記録のための算出された電荷密度値の線形回帰は、13.44μC/cm
2を必要とする最低PW(100μs)及び14.7μC/cm
2を必要とする最長PW(2000μs)によって、ゼロとは著しく異なる傾斜を示した(P=0.0084)。重要なことに、ヒトSpN線維束のための電荷密度のスロープは、ブタの線維束のための電荷密度のスロープに類似することがわかった(
図16H)。加えて、切開されたヒト線維束の神経活性化の電荷密度要件は、どのPWでもブタSpN線維束の活性化に必要な電荷密度よりも約1.5乃至2倍高かった(
図16H)。
【0256】
考察
ヒトSpNは、他の哺乳類(ブタ及び齧歯動物)と類似した解剖学的、形態学的、及び電気生理学的特性を有する。ヒトSpNは、伝導速度により確認されるように無髄の軸索で構成される。そのため、豚で最適化された刺激パラメータ(周波数及び波形)がヒトの脾臓神経にも適切であると想定することが理解される。しかしながら、電荷の要件はNVB全体から算出される必要がある。
【0257】
試験6:ヒトの脾臓構造の組織形態計測的特徴づけ
この試験の目的は、ヒトの脾臓構造の理解を高め、組織学を使用して脾臓神経血管束(NVB)の近似値を推定することであった(表2参照)。研究は、臓器移植患者から受け取った脾臓組織で行われた。内腔径、動脈壁、線維束の直径(平均フェレ径)、及び外膜(外側脾動脈壁)からの各線維束の近似距離について組織形態計測的推定が算出された。
【0258】
材料及び方法
5つのヒトの脾臓のNVBが、イギリス、ケンブリッジ、アデンブルックス病院の臓器移植患者から提供された。組織は切除後可能な限り迅速に10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に浸漬された。肉眼的測定のため定規を提示して組織の写真が撮られた(
図17A参照)。サンプルは、組織構造のために0.5cm乃至1.5cmの連続ブロックに分けられた(
図17B参照)。動脈周囲の組織はブロックに含めるために保持された。各ブロックの同じ面(すなわち、脾臓の近位又は遠位)が毎回サンプリングされるように、切片は埋め込まれ薄片にされた。切片は、通常4乃至5μm厚であって、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E)で染色された(
図17C参照)。最後に、病理学者によって組織の品質チェックが行われ、x20でガラススライドが走査された。文献の通りに、10%の組織収縮が補償されていることに注意する。しかしながら、動脈の直径はゼロ圧力を表している。臓器移植患者から受け取った全てのサンプルにおいて高い量の脂肪組織が示され、線維束は脂肪組織の厚い層の中に埋まっていることがわかった。
【0259】
【0260】
定量化の目的で脾臓組織は、近位、中間、及び遠位の3部分に分けられた。これらの部分はそれぞれいくつかの切片で構成された。近位端は、
図17Aの縫合で示される腹腔に近く、遠位は脾臓に近い。これらの両方とも神経インターフェース配置の介入部位にふさわしくない。ループ付きの中間部分は介入部位にふさわしいであろう。
【0261】
概略すると、
図18に示されるように、線維束の直径は20乃至400umの範囲にある。線維束の広がりについては、神経線維の約半分が0乃至1mmの領域で見つかり、30%が1乃至2mm、15%が2乃至3mm、及び残りが約3乃至4mmの領域で見つかった。
【0262】
試験7:ブタからヒトの脾臓神経血管束への変換電荷要件
材料及び方法
ブタ及びヒトの脾臓の組織構造からの組織構造データを使用して3D有限要素法モデルコンピュータシミュレーションが作成された。これは基本的に脾動脈(内腔+動脈壁)と血管外組織とから成る。「血管外組織」は、神経が組織に埋め込まれた状態で「脂肪組織」及び「結合組織」で構成されている。ブタには、Cortecカフ(生体内カフを表す)にスプリットのあるモデルが使用された。ヒトモデルでは、3つのアームのある構造のカフが使用された。使用されたカフの直径は9mmであった。
【0263】
ブタとヒトの組織構造との間の違いを考慮すると、ブタの線維束は動脈周囲に均等に分布し、密接しているのに対し、ヒトの線維束はより分散しているようであり、b)ヒトでは相当な量であることに反して、ブタの組織構造はごく少量の脂肪組織を血管外に示す。
【0264】
刺激パラメータの推定をブタからヒトへと変換させるために、モデリングは以下の2段階で行われた。段階(a):Sim4Lifeシミュレーションツールで3D有限要素法モデル(FEM)を開発。Sim4Lifeを使用して、(組織学及び画像定量化に基づく)代表的な神経及び動脈モデル、カフ及び電極(CAD定義の仕様)、及び3D電圧場が構築された。段階(b):同ツールでFEM解法を解析。Sim4Lifeを使用して、Sundtの神経モデル[19]を使用して軸索に沿って電圧を内挿し、軸索シミュレーションが強度‐期間及び集団動員曲線を推定した。
【0265】
結果
図19Aは、5匹の動物からのブタの脾臓神経血管束からの生体内急性データを表している。電荷要件についての5匹の動物からの範囲は、<50mA、400us及び10Hzで約20乃至160μC/cm
2と推定される。灰色で表されている3番目の動物に対する電荷要件は、30mA、400μs及び10Hzで約100μC/cm
2であり、インシリコでシミュレートされたデータとよく相関している(
図20A参照)。インシリコ対生体内の相関関係をブタにおける計算モデルの検証として使用して、電荷要件は、2つのパルス幅に組織切片を使用して、ヒトの脾臓神経血管束に変換された。データは
図20C乃至D及び表3に提示されている。
【0266】
【0267】
100%の動員のためのヒト急性モデルにおける電荷要件は、可能性として約80乃至1300μC/cm2(400uSのパルス幅、12mm2の表面積を使用)及び70乃至1100μC/cm2(1msのパルス幅を使用)から変動し得ると推定される。350μC/cm2より低いと、約70%の動員が示される。さらなる30%の動員は、移植可能な装置による対応可能性を超えた電荷要件における指数関数的増加を必要とする。例えば、100%の動員は可能性として70乃至1300μC/cm2、80%の動員は70乃至450μC/cm2、50%の動員は70乃至250μC/cm2、及び30%の動員は70乃至170μC/cm2で変動し得ることがわかる。
【0268】
考察
ヒトにおける神経線維はブタに比べてより分散している。組織学的プロファイリングによって示される脾動脈周囲に拡散した線維束の範囲は、約1乃至3mmの範囲にあることができる。計算モデリングツールを使用して刺激パラメータを最適化し、ブタからの電荷要件をヒトに変換するために組織形態計測的データがさらに使用された。SundtのC線維モデルを使用して、ヒトに対する電荷要件が、100パーセントの動員には約70乃至1000μC/cm2の範囲であると示された。
【0269】
参考文献
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【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性疾患を治療するために、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激するためのシステムであって、前記神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
前記システムは、前記神経と信号伝達的に接触するための少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されており、前記神経に電気信号を印加するために前記少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている少なくとも1つの制御部と、を備え、
前記電気信号は、前記急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善をもたらし、
前記生理学的パラメータの前記改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗がより低いレベルに回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである、システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0268
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0268】
考察
ヒトにおける神経線維はブタに比べてより分散している。組織学的プロファイリングによって示される脾動脈周囲に拡散した線維束の範囲は、約1乃至3mmの範囲にあることができる。計算モデリングツールを使用して刺激パラメータを最適化し、ブタからの電荷要件をヒトに変換するために組織形態計測的データがさらに使用された。SundtのC線維モデルを使用して、ヒトに対する電荷要件が、100パーセントの動員には約70乃至1000μC/cm2の範囲であると示された。
本出願は以下の実施形態を包含する。
[1]急性疾患を治療するために、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激するためのシステムであって、前記神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
前記システムは、前記神経と信号伝達的に接触するための少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されており、前記神経に電気信号を印加するために前記少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている少なくとも1つの制御部と、を備え、
前記電気信号は、前記急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善をもたらし、
前記生理学的パラメータの前記改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗がより低いレベルに回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである、システム。
[2]前記急性疾患は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の生命を脅かすものである[1]に記載のシステム。
[3]神経インターフェースをさらに備え、前記神経インターフェースは、前記少なくとも1つの電極を備える[1]又は[2]に記載のシステム。
[4]前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経の周囲への配置に適している[3]に記載のシステム。
[5]前記神経インターフェースは、前記脾動脈の周囲への配置に適している[3]乃至[4]のいずれかに記載のシステム。
[6]前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経上への配置に適している[3]に記載のシステム。
[7]前記神経インターフェースは、前記脾動脈上への配置に適している[3]乃至[6]のいずれかに記載のシステム。
[8]前記神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経内への配置に適している[3]に記載のシステム。
[9]前記神経インターフェースは、前記脾動脈内への配置に適している[3]に記載のシステム。
[10]配置部位は、膵臓の表面から分離されている[3]乃至[9]のいずれかに記載のシステム。
[11]配置部位は、脾動脈ループにある[10]に記載のシステム。
[12]前記少なくとも1つの電極は、第1電極及び第2電極を備える[1]乃至[11]のいずれかに記載のシステム。
[13]前記第1電極はアノードで、前記第2電極はカソードである[12]に記載のシステム。
[14]
前記第2電極は前記神経と信号伝達的に接触するように構成され、前記第1電極は前記神経と信号伝達的に接触しないように構成され、任意選択で前記第1電極は接地され、任意選択で前記第1及び第2電極は単極構成を形成する[12]又は[13]に記載のシステム。
[15]前記少なくとも1つの電極は、第3電極をさらに備え、前記第2電極は前記神経の長羽軸方向で前記第1電極と前記第3電極との間に位置付けられている[12]又は[14]に記載のシステム。
[16]前記第3電極はアノードである[15]に記載のシステム。
[17]前記第1電極及び前記第3電極の幅は、0.5乃至4mmの間であって、任意選択で0.5乃至2mmの間、任意選択で0.5乃至1.5mmの間、さらに任意選択で0.7乃至1mmの間、任意選択で1乃至4mmの間、任意選択で1乃至3mmの間、任意選択で2乃至4mmの間、任意選択で2乃至3mmの間である[12]乃至[16]のいずれかに記載のシステム。
[18]前記第1電極と前記第2電極との間の距離及び/又は前記第2電極と前記第3電極との間の距離は、[33]、[34]、又は[35]に従属する場合、5mm乃至7mmであり、任意選択で5.5mm乃至6.5mm、さらに任意選択で6.2mm乃至6.4mmである[12]乃至[17]のいずれかに記載のシステム。
[19]前記システムは信号生成部を備え、前記信号生成部は、前記制御部からの制御操作に応じて、前記電気信号を前記少なくとも1つの電極に送達するように構成されている[1]乃至[18]のいずれかに記載のシステム。
[20]前記信号生成部は、少なくとも1つの電流又は電圧源を備える[19]に記載のシステム。
[21]前記電気信号は、300Hz以下の周波数を有し、周期的に印加される[1]乃至[20]のいずれかに記載のシステム。
[22]前記電気信号は、50Hz以下の周波数を有し、連続的に印加される[1]乃至[21]のいずれかに記載のシステム。
[23]前記電気信号により前記神経に印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm
2
当たり5μC乃至1100μCの間であって、任意選択で相毎にcm
2
当たり5μC乃至450μC、任意選択で相毎にcm
2
当たり5μC乃至150μC、任意選択で相毎にcm
2
当たり50μC乃至450μC、さらに任意選択で相毎にcm
2
当たり50μC乃至160μCである[1]乃至[22]のいずれかに記載のシステム。
[24]前記少なくとも1つの制御部は、プロセッサと、前記プロセッサでロードされて実行されると、前記プロセッサに前記少なくとも1つの電極の操作を少なくとも制御させるコード部分を備える実行可能なコンピュータプログラムを有する非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とを備える[1]乃至[23]のいずれかに記載のシステム。
[25]脾臓に分布する神経における神経活性を可逆的に刺激する方法であって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
[1]乃至[24]のいずれか一項に記載の前記システムを提供することと、
前記神経と信号伝達的に接触する少なくとも1つの電極を配置することと、
前記少なくとも1つの電極の操作を少なくとも1つの制御部で制御して、電気信号を前記少なくとも1つの脾動脈神経に印加して、神経活性を刺激することと、
を備える方法。
[26]前記方法は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するためのものである[25]に記載の方法。
[27]外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法であって、前記方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することを備え、前記神経は、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、前記電気信号は急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善し、前記生理学的パラメータの改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗がより低いレベルに回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである、方法。
[28]前記方法は、[1]乃至[24]のいずれかに記載の前記システムによって実行される[27]に記載の方法。
[29]脾臓に分布する神経における神経活性を可逆的に刺激するコンピュータ実装される方法であって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、
[1]乃至[24]のいずれかに記載の前記システムの少なくとも1つの電極の操作を制御して、信号を前記神経に印加して、神経活性を刺激することを含む方法。
[30]前記方法は、外傷又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するためのものである[29]に記載の方法。
[31]外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法において使用される神経刺激性電気信号であって、前記電気信号は、[1]乃至[30]のいずれかに記載の前記電気信号である神経刺激性電気信号。
[32][1]乃至[24]のいずれかに記載の前記システムの前記神経インターフェースが信号伝達的に接触している改変された神経であって、前記神経は前記脾臓に分布し、神経血管束、好適には脾動脈神経と連携し、前記少なくとも1つの電極は、前記神経と信号伝達的に接触し、それにより前記神経はその自然な状態の前記神経から区別でき、前記神経は外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患にり患した対象者に存在する、改変された神経。
[33]前記改変された神経は、脾動脈神経である[31]に記載の改変された神経。
[34]前記少なくとも1つの電極は、脾動脈が膵臓と直接接触していない部位において前記神経と接触している[32]に記載の改変された神経。
[35]前記部位は脾動脈ループである[34]に記載の改変された神経。
[36]脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することにより取得可能な改変された神経であって、[25]乃至[30]のいずれかに記載の方法によって、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携する、改変された神経。
【外国語明細書】