(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161371
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】特徴をサンプリングするセンサを有する薬剤送達アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/172 20060101AFI20241112BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20241112BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61M5/172
A61M5/315 550N
A61M5/20 510
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024114111
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2021523724の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】18204662.3
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェスペルセン, ミッケル オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン, キム アイホルム
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, ローリッツ ヘイゴー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回転するように配設されたインジケータと組み合わせたセンサシステムを含む薬剤送達アセンブリであって、回転の量が排出される投与量のサイズを示すものである、薬剤送達アセンブリを提供する。
【解決手段】センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を測定するように適合されたセンサアセンブリを含み、センサアセンブリは、非定時サンプリング周波数で動作するように適合されたセンサ素子を含む。プロセッサは、センサ素子からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびにインジケータの回転速度を決定するように構成されている。エネルギー消費を最適化するために、プロセッサは、決定された回転速度に応答してサンプリング周波数を動的に制御するように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達アセンブリであって、
-ハウジング(101、601、801)と、
-薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤排出手段であって、
-ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、
-前記薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、
-薬剤の投与量の排出中に前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ(160、160M、660M)であって、前記回転の量が、前記排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータ(160、160M、660M)と、を含む、薬剤排出手段と、
-センサシステムであって、
-前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、前記センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子(766M)と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、
-前記少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、
(i)前記インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに
(ii)前記インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む、センサシステムと、を含み、
-前記センサシステムが、非動作状態と動作状態との間で作動可能であり、
-前記センサシステムが作動したときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第1のサンプリング周波数で動作し、
-回転速度の減少が検出されたときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第2のサンプリング周波数で動作する、薬剤送達アセンブリ。
【請求項2】
-前記センサアセンブリが、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ(766M)素子を含み、
-前記センサシステムが作動したときに、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子が、前記第1のサンプリング周波数で動作し、
-回転速度の減少が検出されたときに、前記サンプリング周波数が、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された前記少なくとも1つのセンサ素子の前記第2のサンプリング周波数まで低下し、初期段階で前記第1のサンプリング周波数で動作される、請求項1に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項3】
少なくとも1つのセンサ素子に対する前記サンプリング周波数が、前記回転速度に対する1つ以上の所定の閾値に従って制御される、請求項1または2に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項4】
-前記センサアセンブリが、複数のセンサ素子を含み、
-第1の数のセンサが、第1のサンプリング周波数で各サンプルに対して動作し、
-第2の大きい数のセンサが、回転速度の減少が検出されたときに、各サンプルでより低いサンプリング周波数で動作する、請求項1~3のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項5】
前記インジケータが、磁気構成要素(160M、660M)を含み、少なくとも1つのセンサ素子(766M)が、磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサである、請求項1~4のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項6】
少なくとも1つの磁気センサ(766M)が、回転速度の減少の検出に従って、非定時サンプリング周波数で動作する、請求項5に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項7】
弾性材料から形成される軸方向に移動可能なピストンを有する概して円筒形の薬剤貯蔵部(113)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項8】
薬剤送達装置(100、600、800)と、前記薬剤送達装置上に取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置(400、700、900)と、を含み、前記薬剤送達装置が、
-前記ハウジング(101、601、801)と、
-前記薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための前記手段と、
-前記薬剤解放手段と、を含み、
前記アドオン装置が、
-前記センサシステムを含む、請求項1~7のいずれかに記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項9】
前記薬剤排出手段が、
-ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、回転可能な用量設定部材(180、680、880)と、
-近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材(190、690、890)であって、前記近位位置が投与量を設定することを可能にし、前記遠位位置が前記薬剤放出手段が設定用量を放出することを可能にする、解放部材(190、690、890)と、
-用量設定中に変形されるように配設され、かつ前記解放部材によって解放され、これによって前記薬剤貯蔵部からのある量の薬剤を排出することを駆動する、駆動ばね(155、655)と、を含み、
前記アドオン装置が、
-前記薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジング(610、710、901)と、
-直接的または間接的に、前記用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材(411、680、780、911)と、
-
(i)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に取り付けられた状態で、前記アドオン用量設定部材(680、780)を動作して、前記用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、
(ii)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に取り付けられた状態で、前記解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量解放位置との間で、前記アドオン用量設定部材に対して軸方向に移動可能な作動可能なアドオン解放部材(490、690、790、998)と、をさらに含む、請求項8に記載の薬剤送達アセンブリ。
【請求項10】
薬剤送達装置(100、600、800)上に取り外し可能に取り付けられるよう適合されたアドオン装置(400、700、900)であって、前記薬剤送達装置が、
-ハウジング(101、601、801)と、
-薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤放出手段であって、
-ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、
-前記薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、
-薬剤の投与量の排出中に前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ(160、160M、660M)であって、前記回転の量が、前記排出される投与量の前記サイズを示すものである、インジケータ(160、160M、660M)と、を含む、薬剤排出手段と、を含み、
前記アドオン装置が、
-前記薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジング(610、710、901)と、
-前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に取り付けられた状態で、前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリ(965)であって、前記センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子(766M)と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリ(965)と、
-前記少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、
(i)前記インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに
(ii)前記インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含み、
-前記センサシステムが、非動作状態と動作状態との間で作動可能であり、
-前記センサシステムが作動したときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第1のサンプリング周波数で動作し、
-回転速度の減少が検出されたときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第2のサンプリング周波数で動作する、アドオン装置(400、700、900)。
【請求項11】
少なくとも1つのセンサ素子が、初期段階で前記第1のサンプリング周波数で、その後、回転速度の減少が検出されたときに、前記第2のより低いサンプリング周波数で動作する、請求項10に記載のアドオン装置。
【請求項12】
-前記インジケータが、磁気構成要素を含み、
-前記少なくとも1つのセンサ素子が、前記インジケータ磁気構成要素によって生成される磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサである、請求項11に記載のアドオン装置。
【請求項13】
少なくとも1つのセンサ素子の前記サンプリング周波数が、前記回転速度に対する1つ以上の所定の閾値に従って制御される、請求項10~12のいずれかに記載のアドオン装置。
【請求項14】
-前記センサアセンブリが、複数のセンサ素子を含み、
-第1の数のセンサが、第1のサンプリング周波数で各サンプルに対して動作し、
-第2の大きい数のセンサが、回転速度の減少が検出されたときに、各サンプルでより低いサンプリング周波数で動作する、請求項10~13のいずれかに記載のアドオン装置。
【請求項15】
-直接的または間接的に、前記用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材(411、680、780、911)と、
-
(i)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に取り付けられた状態で、前記アドオン用量設定部材を動作して、前記用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、
(ii)前記アドオン装置が前記薬剤送達装置に取り付けられた状態で、前記解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量解放位置との間で、前記アドオン用量設定部材に対して軸方向に移動可能な作動可能なアドオン解放部材(490、690、790、998)と、をさらに含む、請求項10~14のいずれかに記載のアドオン装置。
【請求項16】
薬剤送達アセンブリから用量関連データを捕捉するための方法であって、
(i)
-ハウジング(101、601、801)と、
-薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤放出手段であって、
-ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、
-前記薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、
-薬剤の投与量の排出中に前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ(160、160M、660M)であって、前記回転の量が、前記排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータ(160、160M、660M)と、を含む、薬剤排出手段と、
-センサシステムであって、
-前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、前記センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子(766M)と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、
-前記少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、
(i)前記インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに
(ii)前記インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む、センサシステムと、を含む、薬剤送達アセンブリを提供するステップと、
(ii)非動作状態から動作状態へと前記センサシステムを作動させるステップと、
(iii)前記第1のサンプリング周波数で少なくとも1つのセンサ素子を動作させるステップと、
(iv)前記インジケータの回転速度を検出するステップと、
(v)回転速度の減少が検出されたときに、前記第2のより低いサンプリング周波数で少なくとも1つのセンサ素子を動作させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、データの生成、収集、および保存が関連した医療装置に関する。特定の実施形態では、本発明は、信頼性の高い、そして効果的なやり方で薬剤送達用量データを捕捉するための装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、回転駆動部材によって駆動されるねじピストンロッドを含む薬剤送達装置が主に参照され、このような装置は、例えば、インシュリン送達による糖尿病の治療において使用されるが、これはただ本発明の例示的使用である。
【0003】
薬剤注射装置は、薬剤および生物学的薬剤を自己投与する必要がある患者の生活を大幅に改善した。薬剤注射装置は、注射手段を有するアンプルに過ぎない単純な使い捨て装置を含む多くの形態を取る場合があり、または予め充填されたカートリッジと併用するように適合された耐久性のある装置であってもよい。それらの形態およびタイプに関わらず、注入可能な薬剤および生物学的薬剤を自己投与するための患者の補助においては大きな助けであることが証明されている。また、それらは、介護者が自己注入を実施することができない者に注入可能な医薬品を投与するのを大いに支援する。
【0004】
必要量のインスリン注入を適切な時点に適切なサイズで実施することは、糖尿病を管理するために必要不可欠であり、すなわち指定されたインスリンレジメンを遵守することが重要である。医療従事者が、処方された用量パターンの有効性を決定することを可能にするために、糖尿病患者は各注入のサイズおよび時間のログを保持することを推奨される。しかしながら、こうしたログは通常手書きのノートに記録され、そしてログされた情報はデータ処理のためにコンピュータに簡単にはアップロードされない場合がある。さらに、患者によって記載されるイベントのみがログされるため、ノートシステムは、ログされた情報が患者の糖尿病の治療において何らかの価値を持つとすれば、患者は各注入をログすることを覚えておく必要がある。ログ中の欠如した記録または誤った記録は、注射履歴の実態が誤ったものとなり、ひいては、将来の薬剤治療に関する医療従事者の意思決定の土台が誤ったものとなる。したがって、医薬送達システムからの注入情報のログを自動化することが望ましい場合がある。
【0005】
一部の注射装置は、例えば、US2009/0318865およびWO2010/052275に開示されているように、このモニタリング/取得機構を装置自体に統合するが、今日のほとんどの装置はそれがない。最も広く使用されている装置は、耐久性があるかまたは予め充填されたかのいずれかである、単なる機械的な装置である。後者の装置は、空になった後に廃棄されるため、安価であり、装置自体内に組み込まれた電子データ取得機能を構築することはコスト的に見合わない。この問題に対処するため、所与の医療用装置の使用を表すデータをユーザが生成、収集、および分散するのに役立つであろう多くの解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、WO2014/037331は、ペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置(「アドオンモジュール」または「アドオン装置」とも称される)を第1の実施形態で説明している。装置は、カメラを含み、薬剤送達装置の投薬ウィンドウを通して見える回転スケールドラムから捕捉された画像の光学文字認識(OCR)を実施し、薬剤送達装置にダイヤルされた薬剤の用量を決定するように構成されている。WO2014/037331はまた、設定用量に対応する装置から近位側に延びる打込みねじを含むペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置の第2の実施形態を記述している。補助装置は、打込みねじの軸方向延長を決定するためのセンサ手段、ならびに近位側送達ボタンの動作を検出するためのセンサ手段を含む。WO2014/020008は、ペンタイプの薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるように適合された電子補助装置を開示する。装置は、カメラを含み、OCRに基づいてスケールドラム値を決定するように構成されている。排出された用量のサイズを適正に決定するために、補助装置は、用量サイズが設定、修正、または送達されているかどうかを決定するための追加的な電気機械的センサ手段をさらに含む。ペン式装置用のさらなる外部装置が、国際特許公開公報第2014/161952号およびEP3 103 492に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に関して、本発明の目的は、排出された薬剤の量のサイズを決定するためのセンサ手段を含む薬剤送達アセンブリに対して、安全で、簡単で、かつ効率的なデータ捕捉を可能にする装置および方法を提供することである。センサ手段は、薬剤送達装置に組み込まれてもよく、またはユーザが取り付け可能なアドオン装置として提供されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する実施形態および態様が説明される。
【0009】
ばねによって駆動されるか、またはユーザによって手動で駆動される、従来のピストンベースの薬剤送達装置からの外部投薬を考慮すると、薬剤は、回転運動入力に基づく排出機構(すなわち、ドライバ構成要素の回転運動は、カートリッジピストンを遠位に移動させて、設定された用量を排出するピストンロッドの軸運動に変換される)が同様に、対応する定常状態で回転することを示す、定常状態で排出されると思われる。所与のインジケータ部材(すなわち、排出される用量のサイズに対応する回転する排出機構の構成要素)の回転量を決定するように設計された所与のセンサシステムに関して、これは、必要なサンプリング周波数を指定することが可能となる。可能な限り低い電力消費量、および可能な限り低いが、それでも十分であるような電力消費量を達成するために、サンプリング速度を指定する。
【0010】
本発明は、薬剤送達装置からの外部投薬が、定常線形状態で行われているように見えるが、ピストンドライバ(すなわち、典型的にはピストンロッド)の対応する軸移動、およびそれゆえに、排出機構における所与の構成要素の回転移動が、線形的ではないという認識に基づく。
【0011】
本質的に、薬剤送達システム用のすべての商業上公知の薬剤カートリッジは、ゴムなどの弾性材料から製造されたピストンが提供されており、外部投薬に影響を及ぼすことが見出されている弾性成分が導入される。より具体的には、最初に、ゴムピストンの軸方向圧縮が、外部投薬イベントの間に行われ、この初期圧縮が、中空の皮下針を通して薬剤を連続的に排出するよりも速い軸速度で行われることが見出された。対応するように、センサシステムが、所定のインジケータ構成要素の回転運動量を、外部投薬イベントの初期フェーズ中にも確実に検出することを可能にするためには、より高いサンプリング速度が必要であろう。
【0012】
この問題に取り組んだ上で、さらなる関連する問題がまた対処される。ピストンドライバの場合、すなわち、一般的にピストンロッドのであるピストンの軸駆動力を実際に印加する要素は、ピストンの近位表面からの距離に最初に、およびいくつかの理由のために位置付けられてもよく、それによって、ピストンの弾性圧縮に対応するいわゆるエアギャップを確立し、これは、同様に薬剤排出機構の構成要素の初期の高速軸移動および回転移動をもたらす。
【0013】
この問題に対処するために、第1の態様における本発明は、ハウジング、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段、薬剤排出手段、およびセンサシステムを含む、薬剤送達アセンブリを提供する。薬剤排出手段は、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、薬剤の投与量の排出中にハウジングに対して回転するように適合されたインジケータであって、回転の量が、排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータと、を含む。センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、(i)インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに(ii)インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む。センサシステムは、非動作状態と動作状態との間で作動可能である。センサシステムが作動したときに、少なくとも1つのセンサ素子は、第1のサンプリング周波数で動作し、回転速度の減少が検出されたときに、少なくとも1つのセンサ素子は、第2のサンプリング周波数で動作する。
【0014】
この配置により、薬剤送達装置からの流体薬剤の初期の外部投薬に関連する特別な状況、ならびに信頼性のある電力効率の高い用量サイズ決定の一般的な必要性が対処される。
【0015】
初期圧縮/エアギャップフェーズを離れ、より遅い主要な外部投薬状態に入る、薬剤送達装置の検出に応じて異なるサンプリング周波数でセンサを動作させる概念は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、低消費電力を有する専用のセンサ素子は、初期段階は高サンプリング速度で動作することができ、一方で、高電力消費量を有するセンサ素子は、その後、より低いサンプリング速度で動作することができる。前述のように、最初に使用されたセンサは、インジケータ素子の回転位置を適切に決定することができるべきである。あるいは、高サンプリング速度および低サンプリング速度の両方に適したセンサ素子を、多くの異なるセンサ素子を使用した混合セットアップを実施することができるのと同じように利用することができる。
【0016】
対応するように、例示的な実施形態では、センサアセンブリは、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子を含む。センサシステムが作動したときに、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子は、第1のサンプリング周波数で動作し、回転速度の減少が検出されたときに、サンプリング周波数は、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子の第2のサンプリング周波数まで低下し、初期段階で第1のサンプリング周波数で動作される。あるいは、より短い表現では、同じセンサ素子は、2つの異なるサンプリング周波数で動作する。
【0017】
少なくとも1つのセンサ素子のサンプリング周波数は、回転速度に対する1つ以上の所定の閾値に従って制御されてもよい。
【0018】
センサアセンブリは、複数のセンサ素子を含んでいてもよく、第1の数のセンサが、第1のサンプリング周波数で各サンプルに対して動作しており、第2の大きい数のセンサが、回転速度の減少が検出されたときに、各サンプルでより低いサンプリング周波数で動作している。
【0019】
特定の実施形態では、インジケータは、磁気構成要素を含み、少なくとも1つのセンサ素子は、磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサであり、ここで、少なくとも1つの磁気センサは、回転速度の減少の検出に従って、非定時サンプリング周波数で動作され得る。あるいは、光学センサは、例えば、インジケータ上に位置する視覚的マーカーと組み合わせて使用されてもよい。
【0020】
「センサ素子」という用語は、単一のセンサ構成要素、例えば、光センサを示してもよいが、センサ構成要素の機能的部分を示してもよい。例えば、「コンパスタイプ」の磁気センサは、3つの方向の磁界値を測定するように適合されており、所与の方向に対して、対応するセンサ構造をしばしば独立して動作することができ、したがって個々のセンサ素子を表す。
【0021】
特定の実施形態では、上述の薬剤送達アセンブリは、カートリッジホルダーに装填されるか、または使い捨て可能な予め充填された装置の一部として提供される、弾性材料から形成される軸方向に移動可能なピストンを有する概して円筒形の薬剤貯蔵部を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の特定の態様では、薬剤送達装置と、薬剤送達装置上に取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置と、を含む、上述のような薬剤送達アセンブリが提供されている。薬剤送達装置は、ハウジング、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段、および薬剤排出手段を含み、一方で、アドオン装置は、センサシステムを含む。
【0023】
例示的な実施形態では、薬剤排出手段は、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置が投与量の設定を可能にし、遠位位置が薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、を含む。アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジングと、直接的または間接的に、用量設定部材と係合するように適合されたアドオン用量設定部材と、(i)アドオン装置が薬剤送達装置に取り付けられた状態で、アドオン用量設定部材を動作して、用量設定部材を回転させて、用量を設定することができる、近位用量設定位置と、(ii)アドオン装置が薬剤送達装置に取り付けられた状態で、解放部材が、その遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、遠位用量解放位置との間で、アドオン用量設定部材に対して軸方向に移動可能な作動可能なアドオン解放部材と、をさらに含む。
【0024】
さらなる態様では、薬剤送達装置上に取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオン薬剤送達アセンブリが提供されている。薬剤送達装置は、ハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段、薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段、および薬剤の投与量の排出中にハウジングに対して回転するように適合されたインジケータであって、回転の量が、排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータを含む、薬剤排出手段と、を含む。アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオンハウジングと、アドオン装置が薬剤送達装置に取り付けられた状態で、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、(i)インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに(ii)インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む。センサシステムは、非動作状態と動作状態との間で作動可能である。センサシステムが作動したときに、少なくとも1つのセンサ素子は、第1のサンプリング周波数で動作し、回転速度の減少が検出されたときに、少なくとも1つのセンサ素子は、第2のより低いサンプリング周波数で動作する。
【0025】
少なくとも1つのセンサ素子は、初期段階で第1のサンプリング周波数で、その後、回転速度の減少が検出されたときに、第2のより低いサンプリング周波数で動作し得る。
【0026】
例示的な実施形態では、インジケータは、磁気構成要素を含み、少なくとも1つのセンサ素子は、インジケータ磁気構成要素によって生成される磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサの形態である。
【0027】
少なくとも1つのセンサ素子のサンプリング周波数は、回転速度に対する1つ以上の所定の閾値に従って制御されてもよい。
【0028】
センサアセンブリは、複数のセンサ素子を含んでいてもよく、それによって、第1の数のセンサが、第1のサンプリング周波数で各サンプルに対して動作し、第2の大きい数のセンサ(例えば、同じセンサ(複数可)および/または追加のセンサ)が、回転速度の減少が検出されたときに、各サンプルでより低いサンプリング周波数で動作する。
【0029】
本発明のなおもさらなる態様では、薬剤送達アセンブリから用量関連データを捕捉するための薬剤送達アセンブリが、提供されている。方法は、(i)ハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、薬剤排出手段と、センサシステムと、を含む、薬剤送達アセンブリを提供するステップを含む。薬剤排出手段は、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、薬剤の投与量の排出中にハウジングに対して回転するように適合されたインジケータであって、回転の量が、排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータと、を含む。センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、(i)インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに(ii)インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む。方法は、(ii)非動作状態から動作状態へとセンサシステムを作動させるステップと、(iii)第1のサンプリング周波数で少なくとも1つのセンサ素子を動作させるステップと、(iv)インジケータの回転速度を検出するステップと、(v)回転速度の減少が検出されたときに、第2のより低いサンプリング周波数で少なくとも1つのセンサ素子を動作させるステップと、をさらに含む。
【0030】
提供される薬剤送達アセンブリならびにセンサ素子を動作させるモードは、対応する薬剤送達アセンブリの開示で上述したように変更されてもよい。
【0031】
本発明のさらにより一般的な態様では、インジケータと組み合わせて使用されるように適合された汎用センサシステムが提供されており、インジケータは、基準構成要素に対して回転するように配設されており、基準軸に対応する。センサシステムは、インジケータの回転位置および/または回転移動を示すインジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリを含み、センサアセンブリは、非定時サンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子を含む。センサシステムは、少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびにインジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサをさらに含む。こうしたシステムでは、プロセッサは、決定された回転速度に応答してサンプリング周波数を動的に制御するように構成されている。
【0032】
この配設によって、インジケータの回転移動および位置の信頼性の高い、かつ電力効率の良い決定を達成することができる。
【0033】
センサシステムは、非動作状態と動作状態との間で作動可能であってもよく、ここで、センサシステムは、作動されたときに、初期サンプリング周波数で動作し、回転速度の減少が検出されたときに、サンプリング周波数が低減される。サンプリング周波数は、回転速度に対する1つ以上の所定の閾値に従って制御されてもよい。あるいは、または追加的に、サンプリング周波数は、所定の範囲の回転速度に対して回転速度とともに連続的に変化し得る。
【0034】
例示的な実施形態では、インジケータは、磁気構成要素を含み、少なくとも1つのセンサ素子は、磁界の1つ以上の構成要素を測定するように適合された磁気センサである。
【0035】
特定の実施形態では、薬剤送達装置と、薬剤送達装置上に取り外し可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置と、を含む、薬剤送達システムが提供されている。薬剤送達装置は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を含む薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、上述のインジケータと、を含む。インジケータは、投与量の設定および/または排出の間に移動するように適合され、移動の量は、設定されたおよび/または排出された投与量を示すものである。アドオン装置は、上述のようなセンサシステムを含み、ここで、インジケータの検出された回転位置(複数可)および/または回転移動の量は、設定および/または排出された投与量に対応する。
【0036】
さらなる特定の実施形態では、上述のようなセンサシステムを含む薬剤送達装置が、提供されている。薬剤送達は、基準構成要素を形成するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容する手段と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材を備える薬剤排出手段と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材であって、近位位置は投与量の設定を可能にし、遠位位置は薬剤排出手段が設定用量を排出することを可能にする、解放部材と、用量設定中に変形されるように配設され、かつ解放部材によって解放され、これによって薬剤貯蔵部からのある量の薬剤の排出を駆動する駆動ばねと、インジケータと、をさらに含む。インジケータは、投与量の設定および/または排出中に移動するように適合されており、その移動量は、設定および/または排出される投与量のサイズを示すものであり、ここで、インジケータ要素の決定された回転位置(複数可)および/または回転移動の量は、設定および/または排出される投与量に対応する。
【0037】
上述で「部材」という用語が使用されるとき、この用語は多数の構成要素を含むアセンブリも包含する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「インシュリン」という用語は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液などの制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができ、血糖コントロール効果を有する任意の薬剤含有流動性医薬品を包含することを意味する。たとえば、ヒトインシュリンおよびその類似物、ならびにGLP-1およびその類似物のような非インシュリンである。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用に対して参照がなされるが、しかし説明されるモジュールは、その他のタイプの薬剤(例えば成長ホルモン)のログを作り出すためにも使用することが可能である。
【0039】
以下では、本発明の下記の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図5】
図5は、薬剤送達装置のハウジング上に設置されたアドオン装置を断面図で示す。
【
図6】
図6は、薬剤送達装置と組み合わせたアドオン装置の第2の実施形態を示す。
【
図8A-8D】
図8A~
図8Dは、薬剤送達装置上に設置された
図6のアドオン装置を含む組立品を、断面図で、かつ異なる動作状態で示す。
【
図9】
図9は、アドオン装置の第3の実施形態の構成要素の分解組立図を示す。
【
図14】
図14は、リング形態のトレーサー構成要素内に等距離で配設された個別の双極子磁石を示す。
【
図15A】
図15Aは、個別の磁石の間に組み合わせて配設された、磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
【
図15B】
図15Bは、多極電磁場内に配設された磁化可能な材料から製造されたトレーサー構成要素を示す。
【
図16】
図16は、トレーサー構成要素に対して配設された磁気計を含むセンサシステムの異なる実施形態を示す。
【
図17A】
図17Aは、第1のセンサセットアップと組み合わせた双極トレーサー磁石に対する角度測定値を示す。
【
図17B】
図17Bは、第2のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の角度測定値を示す。
【
図18】
図18は、磁石の完全な一回転にわたる四重極磁石からの信号を示す。
【
図20】
図20は、四重極磁石および7つの磁気計の組立品を示す。
【
図21】
図21は、薬剤送達装置上に取り付けられたアドオン装置のさらなる実施形態を示す。
【
図22】
図22は、薬剤送達装置上に取り付けられたアドオン装置のまたさらなる実施形態を示す。
【0041】
図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって識別される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の用語、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または類似の相対表現などが使用されているとき、これらは単に添付の図のみを参照し、そして必ずしも実際の使用状況を示すわけではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成だけでなくそれらの相対的寸法は、図示的な目的を果たすことのみが意図されている。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が単一の構成要素であることを表すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が単一の構成要素として提供される可能性があるように、例えば、単一の射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を含んでいてもよい。「組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に単一の、または機能組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとしてともにグループ化される構成要素を説明するために使用されるにすぎない。
【0043】
本発明それ自体の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達の一実施例が説明され、このような装置は本発明の例示的な実施形態の基盤を提供する。
図1~
図3に示されるペン型の薬剤送達装置100は、「一般的な」薬剤送達装置を表す場合があり、実際に示される装置は、Novo Nordisk A/S,Bagsvaerd,Denmarkによって製造および販売される、FlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンである。
【0044】
ペン式装置100は、キャップ部品107と、薬剤排出機構がその中に配設または統合されているハウジング101を持つ近位本体または駆動組立品部分を有する主要部分と、遠位の針貫通可能な隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部分に付着された取り外し不可能なカートリッジホルダーによって定位置に配設され保持される遠位カートリッジホルダー部分とを備え、カートリッジホルダーは、カートリッジの一部分が検査されるのを可能にする開口部、ならびに針組立品が取り外し可能に設置されるのを可能にする遠位連結手段115を有する。カートリッジには、排出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが提供されており、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含んでもよい。多数の軸方向に向けられた溝182を有する最も近位の回転可能な用量設定部材180は、表示ウィンドウ102に示される望ましい用量の薬剤を手動で設定し、その後、ボタン190が作動された時にこれを排出することができるように機能する。下記の説明から明らかとなるように、示される軸方向に向けられた溝182は、「駆動溝」と称されてもよい。用量設定部材180は、概して円筒状の外表面181を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面は、用量設定中の指のつかみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を含むことによって質感が与えられている。ウィンドウは、面取りされた縁部分109および用量ポインタ109Pによって囲まれたハウジング内の開口部の形態であり、ウィンドウは、螺旋状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達装置内に具体化される排出機構のタイプに応じて、排出機構は、実施形態に示されるように、用量設定中に変形され、その後、解放ボタンが作動したときに解放されてピストンロッドを駆動するばねを含んでいてもよい。別の方法として、排出機構は完全に手動であってもよく、その場合、例えば、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)のように、設定された用量サイズに対応する用量設定中に、用量部材および作動ボタンを近位に移動し、次に、設定用量を排出するためにユーザによって遠位に移動する。
【0045】
図1は、予め充填されたタイプの薬剤送達装置を示し、すなわち、これは予め設置されたカートリッジを有して供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されるが、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、充填されたカートリッジと交換することが可能であるように、例えば、カートリッジホルダーが装置主要部分から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態で、または別の方法として、カートリッジが遠位開口部を通して装置の主要部分に取り外し不可能に取り付けられたカートリッジホルダー内に挿入される、「前方充填式」装置の形態で設計されてもよい。
【0046】
本発明は、薬剤送達装置と相互作用するように適合された電子回路に関するため、このような装置の例示的な実施形態を、本発明をより良好に理解するために説明する。
【0047】
図2は、
図1に示すペン型の薬剤送達装置100の分解組立図を示す。より具体的には、ペンは、ウィンドウ開口部102を有する管状ハウジング101を備え、そしてその上にカートリッジホルダー110が固定的に取り付けられ、薬剤充填済みカートリッジ113がカートリッジホルダー内に配設される。カートリッジホルダーには、針組立品116が取り外し可能に設置されることを可能にする遠位連結手段115と、キャップ107が、カートリッジホルダーおよび取り付けられた針組立品を覆って、取り外し可能に設置されることを可能にする2つの対向する突出部111の形態の近位連結手段と、例えばテーブルの上面上でペンが転がるのを防止する突出部112と、が提供される。ハウジング遠位端には、ナット要素125が固定的に取り付けられ、ナット要素は中央ねじ穴126を備え、またハウジング近位端には中央の開口部を有するばね基部部材108が固定的に取り付けられる。駆動システムは、対向する2つの長軸方向の溝を有し、ナット要素のねじ穴内に受容されるねじピストンロッド120と、ハウジング内に回転可能に配設されたリング形態のピストンロッド駆動要素130と、駆動要素(下記参照)と回転係合し、その係合がクラッチ要素の軸方向移動を可能にするリング形態のクラッチ要素140とを含む。クラッチ要素には、ハウジング内表面上の対応するスプライン104(
図3Bを参照)と係合するように適合された外側スプライン要素141が提供され、これは、スプラインが係合している回転方向に係止された近位位置とスプラインが係合から外れている回転方向に自由な遠位位置との間でクラッチ要素が移動することを可能にする。今まさに述べたように、両方の位置では、クラッチ要素は駆動要素に対して回転方向に係止される。駆動要素は、ピストンロッドの溝と係合している2つの対向する突出部131を有する中央の穴を備え、それによって駆動要素の回転は、ピストンロッドとナット要素との間のねじ係合のために、ピストンロッドの回転をもたらし、それによって遠位の軸方向移動をもたらす。駆動要素は、ハウジング内表面上に配設された対応するラチェット歯105に係合するように適合された、一対の対向する円周方向に延びる可撓性のラチェットアーム135をさらに含む。駆動要素およびクラッチ要素は、それらを一緒に回転方向に係止するが、クラッチ要素が軸方向に移動することを可能にする協働する連結構造を備え、これはクラッチ要素が、回転することができるその遠位位置へと軸方向に移動することを可能にし、それによってダイヤルシステム(下記参照)から駆動システムへと回転移動を伝達する。クラッチ要素、駆動要素、およびハウジング間の相互作用は、
図3Aおよび
図3Bを参照しながらより詳細に示され、かつ説明される。
【0048】
ピストンロッド上には、内容量終了(EOC)部材128が螺着されており、また遠位端上にはワッシャー127が回転可能に取り付けられている。EOC部材は、リセットチューブと係合するための一対の対向する半径方向の突出部129を含む(下記参照)。
【0049】
ダイヤルシステムは、ラチェットチューブ150と、リセットチューブ160と、外側に螺旋状に配設された用量を示す列を形成するパターンを有するスケールドラム170と、排出される薬剤の用量を設定するためにユーザ操作されるダイヤル部材180と、解放ボタン190と、トルクばね155とを含む(
図3参照)。ダイヤル部材には、リセットチューブ上に配設された多数の対応する外側歯161に係合する円周の内側歯構造181が提供され、これは、リセットチューブが用量設定中に近位位置にあるときに係合状態にあり、リセットチューブが用量排出中に遠位側に移動するときに係脱状態にあるダイヤル連結を提供する。リセットチューブはラチェットチューブの内側に軸方向に係止されて取り付けられるが、数度回転することができる(下記参照)。リセットチューブは、その内表面上に、EOC部材の半径方向突出部129と係合するように適合された2つの対向する長軸方向の溝169を含み、それによってEOCはリセットチューブによって回転することができるが、軸方向に移動することが可能である。クラッチ要素は、ラチェットチューブ150の外側遠位端部分上に軸方向に係止されて設置されており、これにより、ラチェットチューブは、クラッチ要素を介してハウジングと回転係合に入り、かつ回転係合から外れるように、軸方向に移動することができる。ダイヤル部材180は軸方向に係止されて取り付けられるが、ハウジング近位端上で回転方向に自由であり、ダイヤルリングは,通常動作の下では、リセットチューブに回転方向に係止され(下記参照)、それによってダイヤルリングの回転はリセットチューブ160の、かつこれによってラチェットチューブの対応する回転をもたらす。解放ボタン190は、リセットチューブに対して軸方向に係止されているが、自由に回転することができる。戻りばね195は、ボタン上およびそこに取り付けられたリセットチューブに対して近位に方向付けられた力を提供する。スケールドラム170は、ラチェットチューブとハウジングとの間の円周方向の空間内に配設され、ドラムは協働する長軸方向スプライン151、171を介してラチェットチューブに回転方向に係止され、かつ協働するねじ構造103、173を介してハウジングの内表面と回転ねじ係合となっており、それによってドラムがラチェットチューブによってハウジングに対して回転するときに数字の列がハウジング内のウィンドウ開口部102を通る。トルクばねは、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の円周方向の空間内に配設され、その近位端において、ばね基部部材108に固定され、かつその遠位端において、ラチェットチューブに固定され、それによってラチェットチューブがダイヤル部材の回転によってハウジングに対して回転されたときにばねは変形される。ラチェットチューブとクラッチ要素との間に可撓性のラチェットアーム152を有するラチェット機構が提供され、クラッチ要素には円周方向の内側歯構造142が提供され、各歯は、用量が設定されたときにリセットチューブを介してユーザによって回転された位置にラチェットチューブが保持されるように、ラチェット停止部を提供する。設定用量の低減を可能にするため、ラチェット解放機構162がリセットチューブ上に提供され、かつラチェットチューブに作用し、これによって、ダイヤル部材を反対方向に回転することにより、1つ以上のラチェット増分だけ設定用量を低減することが可能になり、リセットチューブがラチェットチューブに対して上述の数度だけ回転されるとき、解放機構が作動される。
【0050】
排出機構の異なる構成要素およびそれらの機能的関係について説明してきたが、次に機構の動作について、主として
図3Aおよび
図3Bを参照しながら説明する。
【0051】
ペン式機構は、上述のとおり、用量システムおよびダイヤルシステムの2つの相互作用システムと見なすことができる。用量設定中、ダイヤル機構は回転し、ねじりばねに負荷がかけられる。用量機構はハウジングに係止され、移動することができない。押しボタンが押下されたとき、用量機構はハウジングから解放され、かつダイヤルシステムへの係合に起因して、ねじりばねはここでダイヤルシステムを開始点に戻すように回転させ、また用量システムをそれとともに回転させる。
【0052】
用量機構の中央部分はピストンロッド120であり、ピストンの実際の変位はピストンロッドによって行われる。用量送達中、ピストンロッドは、駆動要素130によって回転し、かつハウジングに固定されたナット要素125とのねじの相互作用によって、ピストンロッドが遠位方向で前方に移動する。ゴムピストンとピストンロッドとの間に、ピストンワッシャー127が定置され、これは回転ピストンロッドの軸方向軸受として機能し、かつゴムピストン上の圧力を均一にする。ピストンロッドは、ピストンロッド駆動要素がピストンロッドと係合する非円形断面を有するため、駆動要素はピストンロッドに対して回転方向に係止されているが、ピストンロッド軸に沿って自由に移動する。結果として、駆動要素の回転は、ピストンの直線的に前方に移動をもたらす。駆動要素には、駆動要素が(押しボタンの端から見て)時計回りに回転することを防止する小さいラチェットアーム134が提供される。したがって、駆動要素との係合に起因して、ピストンロッドは前方にのみ移動することができる。用量送達中、駆動要素は反時計回りに回転し、ラチェットアーム135は、ラチェット歯105と係合することによってユーザに小さなクリック音、例えば、排出されたインスリン一単位あたり1クリック音も与える。
【0053】
ダイヤルシステムに目を移すと、ダイヤル部材180を回転することによって用量が設定され、かつリセットされる。ダイヤルを回すとき、リセットチューブ160、EOC部材128、ラチェットチューブ150、およびスケールドラム170は、ダイヤル連結が係合状態にあることに起因して、すべてそれとともに回転する。ラチェットチューブはトルクばね155の遠位端に接続されているため、ばねに負荷がかかる。用量設定中に、ラチェットのアーム152は、クラッチ要素の内側歯構造142との相互作用に起因して、ダイヤルされる各単位に対してダイヤルクリックを実施する。示された実施形態では、クラッチ要素には、ハウジングに対して360度の完全な回転に対して24回のクリック(増分)を提供する24個のラチェット停止部が提供される。ばねは組立中に予め負荷がかけられており、これによって機構は小用量および大用量の両方を許容可能な速度間隔内で送達することが可能になる。スケールドラムはラチェットチューブと回転可能に係合しているが、軸方向に移動可能であり、かつスケールドラムはハウジングとねじ係合しているため、ダイヤルシステムが回転されたとき、スケールドラムは螺旋状パターンで移動し、設定用量に対応する数字がハウジングウィンドウ102に示される。
【0054】
ラチェットチューブとクラッチ要素140との間のラチェット152、142は、ばねが部品の回転を戻すことを防止する。リセット中、リセットチューブはラチェットアーム152を移動させ、これによってクリックごとにラチェットを解放し、1つのクリックは、説明した実施形態ではインスリンの1単位IUに対応する。より具体的には、ダイヤル部材が時計回りに回転されたとき、リセットチューブは単にラチェットチューブを回転させ、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造142と自由に相互作用することを可能にする。ダイヤル部材が反時計回りに回転されたとき、リセットチューブはラチェットクリックアームと直接相互作用し、クラッチ内の歯から離れてペンの中心に向かってクリックアームを押し、それゆえにラチェット上のクリックアームが、負荷がかけられたばねによって生じるトルクに起因して「1クリック」後方に移動することを可能にする。
【0055】
設定用量を送達するために、
図3Bに示すように、押しボタン190はユーザによって遠位方向に押される。ダイヤル連結161、181は係脱され、またリセットチューブ160はダイヤル部材から連結が外され、その後クラッチ要素140はハウジングスプライン104と係脱される。ここで、ダイヤル機構は、駆動要素130とともに「ゼロ」に戻り、これが排出される薬剤の用量につながる。薬剤送達中いつでも押しボタンを解放または押すことにより、いつでも用量を停止し開始することが可能である。ゴムピストンが非常に迅速に圧縮されるとゴムピストンの圧縮につながり、その後、ピストンが元の寸法に戻るときにインスリンの送達が行われるため、通常、5IU未満の用量は一時停止することができない。
【0056】
EOC機能は、ユーザがカートリッジ内に残されているより大きい用量を設定することを防止する。EOC部材128は、リセットチューブに対して回転方向に係止され、これは用量設定中、リセット中、および用量送達中にEOC部材を回転させ、その間、ピストンロッドのスレッドのねじに従い、軸方向に前後に移動することができる。ピストンロッドの近位端に達すると、停止が提供され、これはダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転するのを防止する。すなわち、ここで設定用量はカートリッジ内の残りの薬剤含有量に対応する。
【0057】
スケールドラム170には、ハウジング内表面上の対応する停止表面と係合するように適合された遠位停止表面174が提供され、これは、スケールドラムに対する最大用量での停止を提供し、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転されることを防止する。示された実施形態では、最大用量は80IUに設定される。これに応じて、スケールドラムには、ばね基部部材上の対応する停止表面と係合するように適合された近位停止表面が提供され、これは、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が、用量排出方向にさらに回転されることを防止し、これによって排出機構全体に「ゼロ」停止を提供する。
【0058】
ダイヤル機構に何か障害があり、スケールドラムがゼロ位置を越えて移動することを可能にする場合、偶発的な過剰投薬を防止するために、EOC部材はセキュリティシステムを提供するように機能する。より具体的には、満杯のカートリッジを有する初期状態では、EOC部材は、駆動要素と接触する軸方向で最遠位側の位置に位置付けられる。所与の用量が排出された後、EOC部材は再び駆動要素と接触するように位置付けられる。これに応じて、機構がゼロ位置を超えて用量を送達しようとする場合には、EOC部材は駆動要素に対して係止する。機構の様々な部品の許容誤差および可撓性に起因して、EOCは短距離を移動し、薬剤の少量の「過剰用量」(例えば、3~5IUのインスリン)が排出されることがある。
【0059】
排出機構は、排出用量の終了時に明確なフィードバックを提供して、薬剤の全量が排出されたことをユーザに知らせる用量終了(EOD)クリック機能をさらに含む。より具体的には、EOD機能は、ばね基部とスケールドラムとの間の相互作用によってなされる。スケールドラムがゼロに戻ると、ばね基部上の小さいクリックアーム106は、前進するスケールドラムによって後向きに強制される。「ゼロ」の直前に、アームが解放され、アームはスケールドラム上の皿穴面を打つ。
【0060】
示された機構には、ダイヤル部材を介してユーザによって加えられる過負荷から機構を保護するために、トルクリミッターがさらに提供される。この機能は、ダイヤル部材とリセットチューブとの間の境界面によって提供され、これは上述のように、相互に回転方向に係止される。より具体的には、ダイヤル部材にはいくつかの対応する外側歯161と係合する円周の内側歯構造181が提供され、この内側歯構造は、リセットチューブの可撓性の担体部分上に配設される。リセットチューブ歯は、所与の指定された最大サイズのトルク(例えば、150~300Nmm)を伝達し、それを上回ると、可撓性の担体部分および歯が内向きに曲がり、ダイヤル機構の残りの部分を回転させることなく、ダイヤル部材を回転させるように設計されている。したがって、ペンの内側の機構は、トルクリミッターが歯を介して伝達するよりも高い負荷でストレスを受けることはない。
【0061】
機械式薬剤送達装置の作動原理を説明したので、本発明の実施形態について説明する。
【0062】
図4Aおよび4Bは、予め充填されたペン形状の薬剤送達装置200の第1の組立品、およびそのために適合されたアドオン用量ログ装置300の概略図を示す。アドオン装置は、ペン式装置ハウジングの近位端部分上に設置されるように適合され、
図4Bに示す取り付けられた状態でのペン式装置上の対応する手段を覆う用量設定および用量解放手段380が提供される。示される実施形態で、アドオン装置は、薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ回転方向に係止されるように適合された連結部分385を含む。アドオン装置は、回転可能な用量設定部材380を備え、これは、用量設定中に、アドオン用量設定部材の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材280に直接的または間接的に連結される。用量排出中および用量サイズ決定中に外部からの影響を低減するために、外側アドオン用量設定部材380は、
図5の実施形態を参照しながらより詳細に説明されるように、用量排出中、ペン式用量設定部材280から回転方向に連結を外されていてもよい。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによってペン式解放部材290を作動させることができる用量解放部材390をさらに含む。
図5を参照して以下でより詳細に説明されるように、ユーザによってつかまれ回転されるアドオン用量設定部材は、それと回転方向で係合するペン式ハウジングに直接取り付けられてもよい。
【0063】
別の方法として、示された構成は、主に薬剤の用量を設定および解放するための器用さが低下した人のための補助として機能するように適合されてもよく、それゆえに任意の用量感知および用量ロギング機能は省いてもよい。こうした構成では、用量の排出中に、外側アドオン用量設定部材がペン式用量設定部材280から回転方向で連結を外されていることはそれほど重要でない。これに応じて、外側アドオン用量設定部材は、ペン式用量設定部材280と永久的に回転係合していてもよい。
【0064】
図5に目を移すと、ペン型の薬剤送達装置100上に設置されるように適合されたアドオン用量ロギング装置400の第1の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、
図1~
図3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それゆえにハウジング101と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材180と、近位用量設定位置と遠位用量解放位置との間で作動可能な解放部材190と、スケールドラム170と、リセットチューブ160とを含む。アドオンロギング装置と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられているかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成されている概してリング形態のトレーサー磁石160Mを含むように修正され、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを示すものである。さらに、ハウジングには、用量設定部材のすぐ遠位に円周方向の溝101Gが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。
【0065】
アドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側組立品410だけでなく内側組立品480も含む。内側組立品および外側組立品は、用量設定中に相互に回転方向に係止されているが、用量排出中は相互から回転方向で連結を外される。示された実施形態は実験的なプロトタイプに基づき、そのため構造の一部は多数の組み立てられた部品から形成される。
【0066】
外側組立品410は、アドオン装置に対する一般軸を画定し、かつアドオン用量設定部材として機能する概して円筒状のハウジング部材411と、ペン式ハウジングの連結溝101Gと係合するように適合された遠位に配設された連結手段415と、ハウジング部材411に連結され、かつ初期の近位位置と作動した遠位位置との間で軸方向に移動可能な近位に配設された用量解放部材490とを含む。示された実施形態では、連結手段415は、アドオン装置が薬剤送達装置100の近位端の上にスライドしたときに、スナップ作用によってハウジング溝101G内に取り外し可能に受容されるように適合された多数のばね付勢連結部材の形態であり、これによって連結手段はアドオン装置をペン式装置へと軸方向に係止する。連結手段は、例えば、引く動作または解放機構の作動によって解放されてもよい。ハウジングは、近位部分に、内円周フランジ412および軸方向に向けられた多数の案内溝413を含む。用量解放部材490は、案内溝413内に受容された、軸方向に配向され周辺に配設された多数のフランジ493を備え、溝は近位停止部を提供し、これに対して用量解放部材は、ハウジングフランジ412と用量解放部材490との間に支持されている第1の戻りばね418によって付勢される。用量解放部材は、遠位内側フランジ部分494を有する内側の円筒状スカート部分492を備え、内側フランジ部分は遠位円周リップ495および軸方向に配向された係止スプライン496の近位アレイを含む。
【0067】
内側組立品480は、内側ハウジング481と、その中に配設されたセンサモジュール460の形態の軸方向に移動可能なセンサシステムとを含む。内側ハウジングは、そこから中空の伝達チューブ483が近位に延びる近位壁部分482と、第2の付勢ばね468のための支持として機能する内円周フランジ部分484と、ペン式用量設定部材の駆動溝182(
図1Aを参照)内に受容されるように適合された、軸方向に配向された多数の内側突出部が提供される遠位に延びる円周方向のスカート部分487とを備え、これによって2つの部材を相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを与える。別の方法として、スカート部分487には、下記に説明するタイプの半径方向内向きに付勢された駆動構造が提供されてもよい。中空のチューブ483は、近位端に、円周リップ495と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有するディスク型の部分と、用量解放部材490上の係止スプライン496と係合し、これによって内側組立品を用量解放部材に回転方向に係止し、それゆえに外側組立品を回転方向に係止するように適合された、軸方向に配向されたスプライン486の円周方向アレイとを含む。
【0068】
センサモジュール460は、センサ部分および近位に延びる作動ロッド部分462を含む。センサ部分は、概して円筒状のセンサハウジング461を備え、その中に電子回路465が配設される(
図5に概略的に示す)。センサハウジングは、ペン式作動部材190と係合するように適合された遠位作動表面を含む。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材490が初期近位位置にある)では、センサハウジングは、内側ハウジング近位壁部分482と係合するように第2の付勢ばね468によって近位に付勢され、かつ作動ロッド462は、伝達チューブ483から用量解放部材490の内部へと延び、作動ロッドの近位端463と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0069】
電子回路465は、プロセッサ手段と、1つ以上のセンサと、1つ以上のスイッチと、無線送信機/受信機手段と、エネルギー源と含む電子構成要素を含む。センサは、ペントレーサー磁石160Mによって生成される磁場を測定するように適合された1つ以上の磁力計を備え、これにより、ペンリセットチューブの回転運動が可能になり、したがって、解放用量サイズが決定される(例えば、WO2014/161952を参照)。装置のタイプを認識することを可能にするさらなるセンサ手段が提供されてもよく、例えば、発光体およびペン解放部材の色を判断するように適合された色センサなどであり、色は、予め充填されたペン式装置に含有される薬剤タイプの識別子の役割を果たす。プロセッサ手段は、一般的マイクロプロセッサまたはASIC、埋め込みプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0070】
図5に示すペン式薬剤送達装置100上に設置されたアドオン装置400とともに使用する状況では、ユーザは、ハウジング部材411(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれとともに用量解放部材490も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン486、496を介して内側組立品480に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング461へと、それゆえにペン式用量設定部材180へと伝達することを可能にする。
【0071】
用量が設定されると、ユーザは、第1の付勢ばね418の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材490を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン486、496は係脱され、これは内側組立品480が用量解放部材から、それゆえに、アドオン用量設定ハウジング部材411から回転方向に連結を外される。さらなる解放移動中に、用量解放部材490は作動ロッド近位端463と係合し、それによってさらなる解放移動中に、センサモジュール460はペン式用量解放部材190に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する。作動ロッド462およびアドオン用量解放部材490の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化される。最後に、アドオン解放部材490のさらなる遠位移動がペン式解放部材190の作動をもたらし、これによって設定用量が排出され、これによってセンサモジュール460はアクチュエータとして機能する。
【0072】
排出された用量サイズを決定するために、トレーサー磁石160M、それゆえにリセットチューブ160の回転の量が決定される。より具体的には、センサモジュールの初期移動はセンサスイッチ(図示せず)を起動させ、これが次にセンサ電子機器465を起動し、磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これによって解放機構の解放前にトレーサー磁石160Mの回転開始位置を決定することが可能になる。この間、ペン解放部材の色、したがってカートリッジに含有される薬剤のタイプも決定され得る。リセットチューブは、薬剤の用量の解放中に360度を超えて回転し得るので、解放中の回転運動が検出され、完全回転の数(ある場合)が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出されたとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュール460がその初期位置に戻ったことをセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0073】
示されるように、薬剤排出中に外側組立品480から内側組立品460の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ160の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0074】
決定された用量サイズ(または用量サイズを後で計算することができるデータ)は、タイムスタンプおよび薬剤タイプ識別子(検出された場合)とともにログメモリに保存される。次いで、ログメモリの内容は、NFC、Bluetooth(登録商標)またはその他の無線手段によって、アドオンロギング装置とペアリングされた外部装置(例えば、スマートフォン)に送信されてもよい。好適なペアリングプロセスの一例は、欧州特許出願第17178059.6号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
図6を参照すると、ペン型の薬剤送達装置600上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置700の第2の例示的な実施形態をより詳細に説明する。薬剤送達装置は、
図1~
図3を参照しながら説明した薬剤送達装置に本質的に対応し、それゆえにハウジング601と、ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする回転可能な用量設定部材680と、近位用量設定位置と遠位用量解放位置との間で作動可能な解放部材690と、スケールドラム670と、リセットチューブ660とを含む。アドオンロギング装置700と協働するために、薬剤送達装置は、リセットチューブ近位端に取り付けられているかまたはリセットチューブ近位端と一体的に形成された概してリング形態の磁石660Mを含むように修正されており、磁石は投与量の排出中に回転するインジケータとして機能し、回転移動の量は排出された投与量のサイズを示すものである。さらに、ハウジング近位部分602には、用量設定部材のすぐ遠位に多数の突起601Pが提供され、アドオン装置のための連結手段として機能する。示された実施形態では、3つの連結突出部がハウジング上に等距離で位置する。
【0076】
アドオン装置700は、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側アセンブリ710、および内側アセンブリを含む(下記参照)。外側アセンブリ710は、アドオン装置の一般軸を画定する概して円筒状の遠位連結部分719(
図4Aの実施形態にあるように)を備え、結合部分は、薬剤送達ペンの対応する概して円筒形の結合部分を受けるように適合された概して円筒形の穴7xxを有し、ペンハウジング上の対応する結合突起601Pと係合し、取り外し可能なようにスナップ止めして係合するように適合された多数のバヨネット結合構造715の手段によって、薬剤送達ハウジング上に軸方向および回転方向にロックして取り付けられるように適合されている。アドオン装置はさらに、結合部分上に回転自在に取り付けられた近位用量設定部材711を備え、これは
図5の実施形態にあるように、アドオン用量設定部材711の回転運動がいずれの方向でもペン用量設定部材に伝達されるように、ペン用量設定部材680に結合されている。アドオン装置は、用量設定中に用量設定部材とともに回転する用量解放部材790をさらに含む。用量設定部材上の内円周フランジ712上に支持された第1の付勢ばね718は、用量解放部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供する。
図5の実施形態にあるように、内側組立品および外側組立品は、用量設定中に相互に回転方向に係止されているが、用量排出中は相互に回転方向に連結を外される。
【0077】
内側組立品780は、概して、
図5の実施形態の内側組立品480に対応し、それゆえに概して、同一の機能を提供する同じ構造を含む。これに応じて、内側組立品は(
図7Aを参照)、内側ハウジング781およびその中に配設された軸方向に移動可能なセンサモジュール760を含む。内側ハウジングは、中空の伝達チューブ構造783がそこから近位に延びる近位壁部分782と、第2の付勢ばね768のための支持として機能する遠位内円周フランジ部分784と、ペン式用量設定部材の駆動溝682(
図6を参照)に係合するように適合された遠位に延びる周囲のスカート部分787とを備え、これによって2つの部材は相互に回転方向に係止し、係合はアドオン装置の設置および動作中にいくらかの軸方向の遊びを可能にする。示される実施形態では、用量設定部材の駆動溝682を係合する構造は、可撓性の指751の形態であり、以下でより詳細に説明するように設置を容易にすることができる。指は、示されるように、例えば、金属板部材の一部として形成された、スカート部分787に設置されてもよく、またはスカート部分と一体的に形成されてもよい。中空チューブ783は、近位端に、用量解放部材790の円周内側フランジ795と係合するように適合された遠位に面する停止表面を有する多数のフランジ部分788だけでなく、用量解放部材790上の係止スプライン796と係合し、これによって内側組立品を用量解放部材に、それゆえに外側組立品に回転方向で係止するように適合された、軸方向に配向された多数のスプラインも含む。
【0078】
センサモジュール760は、センサ部分および近位に延びる作動ロッド部分762を含む。センサ部分は、概して円筒状のセンサハウジング761を備え、その中に電子回路765(下記参照)が配設される。センサハウジングは、磁石センサを覆い、かつペン式作動部材690と係合するように適合された遠位スペーサーキャップ764を含む。初期用量設定モード(すなわち、用量解放部材790が初期近位位置にある)では、センサハウジングは、内側ハウジング近位壁部分782と係合するように第2の付勢ばね768によって近位に付勢され、作動ロッド762は、伝達チューブ783から用量解放部材790の内部へと延び、作動ロッドの近位端763と用量解放部材の内側作動表面との間に軸方向の間隙が形成される。
【0079】
電子回路765は、プロセッサ手段、センサ、起動スイッチ(例えば、作動ロッド部分762上に加えられる軸方向力によって作動するドームスイッチ)、無線送信機/受信機手段およびエネルギー源を含む電子構成要素を含む。より具体的には、示された実施形態では、電子回路765は、遠位端から、その上に多数のセンサ構成要素(例えば、磁気計766M)が配設された第1のPCB 766A、一対のコインセルのための一対の電池コネクタディスク766B、その上に電子構成要素の大部分が取り付けられている第2のPCB 766C(例えば、プロセッサ、送信機/受信機およびメモリ)、および作動ロッド部分762がPCBに取り付けられた起動スイッチ766Sに接触して作動させることを可能にするスロットを有する上部ディスク766Dを含む、層状構造を備え、5つの部材は可撓性のリボンコネクタによって相互接続されている。
【0080】
センサは、ペン磁石660Mによって生成される磁場を測定するように適合された多数の磁気計を備え、これにより、ペンリセットチューブの回転運動が可能になり、したがって、解放用量サイズが決定される(例えば、WO2014/0161952を参照)。装置のタイプを認識することを可能にするさらなるセンサ手段が提供されてもよく、例えば、発光体およびペン解放部材の色を判断するように適合された色センサなどであり、色は、予め充填されたペン式装置に含有される薬剤タイプの識別子の役割を果たす。色センサおよび発光体は、(ヒトの目に対する)可視光または可視スペクトルの完全に外または部分的に外の光で作動し得る。プロセッサ手段は、一般的マイクロプロセッサまたはASIC、埋め込みプログラムコードのための記憶装置を提供するROMなどの不揮発性プログラムメモリ、データのためのフラッシュメモリおよび/またはRAMなどの書き込み可能メモリ、ならびに送信機/受信機用のコントローラの形態であってもよい。
【0081】
ペン式薬剤送達装置600上に設置されたアドオン装置700と使用する状況では、ユーザは、用量設定部材711(すなわち、アドオン用量設定部材)およびそれとともに用量解放部材790も回転させることによって望ましい用量の設定を開始する。用量設定中に、用量解放部材はその初期近位位置に向かって付勢され、それによって、係止スプライン786、796を介して内側組立品780に回転方向に係止され、これはアドオン用量設定部材の回転移動を内側ハウジング761へと、それゆえにペン式用量設定部材680へと伝達することを可能にする。
【0082】
用量が設定されると、ユーザは、第1の付勢ばね718の力に逆らって用量解放部材を遠位に移動することによって、用量解放部材790を作動させる。初期解放移動中に、係止スプライン786、796は係脱され、これは電子機器を有する内側組立品780を用量解放部材790から、それゆえにアドオン用量設定部材711から回転方向の連結を外される。さらなる解放移動の間、用量解放部材790は、作動ロッド近位端763と係合し(
図8Aを参照)、それによってさらなる解放移動中にセンサモジュール760がペン式解放部材690に向かって遠位に移動し、その後ペン式解放部材と接触する(
図8B参照)。作動ロッド762およびアドオン用量解放部材790の係合表面は、回転移動の最小限の伝達のために最適化されている。最後に、アドオン解放部材790のさらなる遠位の移動がペン式解放部材690の作動をもたらし(
図8C参照、ここではリセットチューブ外側歯661が遠位に移動されている)、これによって設定用量が排出され(
図8D参照)、これによってセンサモジュール760はアクチュエータとして機能する。
【0083】
排出された用量サイズを決定するために、磁石660M、それゆえにリセットチューブ660の回転の量が決定される。より具体的には、センサモジュールの初期移動は、センサスイッチ起動させ、これが次にセンサ電子機器765を起動させ、磁気計からのデータのサンプリングを開始し、これによって解放機構の解放前に、磁石計660Mの回転開始位置を決定することができる。この間、ペン解放部材の色、したがってカートリッジに含有される薬剤のタイプも決定され得る。リセットチューブ660は、薬剤の用量の解放中に360度を超えて回転するので、解放中の回転運動が検出され、(ある場合は)完全回転の数が決定される。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出されたとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュール760がその初期位置に戻ったことはセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0084】
示されるように、薬剤排出中に外側組立品780から内側組立品760の回転方向で連結が外れることに起因して、アドオン装置の外側部品の移動がリセットチューブ660の回転移動および回転位置の正確な決定に悪影響を与えることが高度に防止される。
【0085】
図9を参照すると、ペン型の薬剤送達装置800上に設置するように適合されたアドオン用量ロギング装置900の第3の例示的な実施形態をより詳細に説明する。わずかに修正された薬剤送達ペン式装置800を、
図10Aおよび
図10Bを参照しながら説明する。
【0086】
アドオン用量ロギング装置900は、
図6~
図8を参照しながら説明したアドオン用量ロギング装置600に本質的に対応し、それゆえに、薬剤送達装置ハウジングに取り外し可能に取り付け可能な外側組立品、センサモジュールを有する内側組立品だけでなく、解放部材組立品も含む。上述の実施形態とは対照的に、
図9の分解組立図は、組立品が形成される個別の構成要素を示す。
【0087】
外側組立品は、遠位ハウジング連結部分901と、そこに取り付け可能な近位ハウジング部分919と、近位ハウジング部分上に自由に回転可能に取り付けられるように適合されたアドオン用量設定部材911と、用量設定部材に設置されて解放部材組立品を封入するように適合された係止リング916とによって形成されている。係止組立品は、解放スライダー908、捕捉部材905、付勢ばね906だけでなく、スライダーのための一対の戻りコイルばね909を備え、係止組立品構成要素はハウジング連結部分901内に設置されるように適合されている。
【0088】
より具体的には、遠位ハウジング連結部分901は、薬剤送達ペン式装置の対応する円筒状連結部分を滑り嵌めで受容するように適合された円筒状の穴902を含む(下記参照)。穴には、アドオン装置がペン式装置上に軸方向に取り付けられたときに、ペン式ハウジング係止突起805を受容するように適合された、遠位に面しかつ軸方向に配向された溝が、提供されている。遠位ハウジング連結部分の近位部分は、より大きい直径へと外向きにテーパー状であり、かつ各々が近位に面する端面を有する複数の長軸方向のリブ907を備え、端面は内側組立品のための遠位停止部として機能する。連結部分901は、取り付けられたときにペン式装置表示ウィンドウを覆うように適合されており、それゆえに表示ウィンドウを観察することを可能にし、それゆえにスケールドラムを観察することを可能にするウィンドウ開口部904を含む。ウィンドウ開口部の反対側には、係止組立品構成要素を受容するように適合された第2の開口部903が提供されている。捕捉部材905は、第2の開口部内に旋回可能に設置され、かつ付勢ばね906によって内向きに付勢され、これはアドオン装置がペン式装置上に軸方向に設置されたときに、捕捉部材がペン式ハウジング係止突起805の遠位の定位置にスナップ止めできるようにする。係止手段はウィンドウ開口部904の反対側に配設されているので、ユーザが設置中にアドオン装置を簡単に回転方向に配向することができるように確実にする。解放スライダー908は、第2の開口部内に摺動可能に設置され、戻りばね909によって遠位方向に付勢される。ユーザが解放スライダーを近位に動かすと、これは捕捉部材905を持ち上げてハウジング係止突起805との係合が外れ、アドオン装置を近位方向に移動できるようにし、それゆえにペン式装置から取り外すことが可能になる。近位ハウジング部分919は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって連結部分901に固定的に取り付けられ、また用量設定部材911をスナップ作用によって自由に回転可能に設置することを可能にする円周の隆起部917を含む。用量設定部材は、組み立てられた状態では、内側組立品の近位停止部および解放部材戻りばね918の遠位停止部として機能する円周の内側フランジ912だけでなく、解放部材組立品のための多数のガイドトラック913を形成する多数の軸方向に延びる内側フランジとを含む。係止リング916は、示されるように例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって用量設定部材に軸方向に固定されて設置され、これによって用量設定部材911とキャップ部材998との間の間隙をシールするように適合される。
【0089】
内側組立品は、概して円筒状の内側ハウジング部材981と、内側ハウジング部材上に設置されるように適合された円筒状の係止部材950と、内側ハウジング部材に取り付けられてそこに設置されたセンサモジュールを封入するように適合された近位壁または蓋部材982とを含む。壁部材は、近位フランジ部材988を受容するように適合された近位に延びるチューブ部分983を含む。
【0090】
より具体的には、内側ハウジング部材981は、多数の開口部989を有するより大きい直径の遠位スカート部分987と、センサモジュールのための多数のガイドトラックを形成する多数の軸方向に延びる壁セクション985を有するより小さい直径の近位部分とを含む。2つの部分間の移行部は、センサばね968のための外円周遠位サポート984を形成する(下記参照)。示された実施形態では、円筒状の係止部材950は金属板の単一片から形成され、その中に、半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第1の複数の軸方向に延びる可撓性のダイヤル係止アーム951、および半径方向に内向きに延びる近位自由端部分を各々が有する、第2の複数の軸方向に延びる可撓性の設置アーム955が形成される。設置アームは、係止部材が内側ハウジング部材981上に設置されたときに、対応する設置開口部989との係合へとスナップ留めされるように機能し、これは2つの部材を軸方向および回転方向に係止する。ダイヤル係止アーム951の遠位端は、内向きに丸みが付けられ、かつペン式用量設定部材の駆動溝882と係合するように適合されている(下記参照)。近位壁部材982は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によって内側ハウジングフランジに固定的に取り付けられるように適合され、そして組み立てられた状態でセンサモジュールのための近位停止部として機能する。近位方向に延びるチューブ部分983は、近位端において、組み立てられた状態で解放部材上の対応するスプラインと係合するように適合された複数の軸方向に向けられた係止スプライン986を各々が含む、一対の対向する半径方向の延長部を含む。近位フランジ部材988は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってチューブ部分983に固定的に取り付けられるように適合される。フランジ部材は、作動ロッド962のより大きな直径の遠位端よりも小さい直径を有する中央の穴を備え(下図参照)、これは、作動ロッドの近位停止部を提供する。
【0091】
センサモジュール960は、遠位に面するセンサ構成要素を有する電子回路965が取り付けられた概して円筒形のセンサハウジング961と、センサモジュールハウジング遠位端に取り付けられて、センサ構成要素を覆って封入するように適合されたスペーサーキャップ964と、壁部材チューブ部分983内に配設されるように適合された作動ロッド962とを含む。センサモジュールの戻りばね968は、内側ハウジング部材981とセンサハウジング961との間に配設されて、センサモジュールに近位方向への付勢力を提供するように適合されている。
【0092】
より具体的には、スペーサーキャップ964は、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段によってセンサハウジングに固定的に取り付けられるように適合されており、組み立てられた状態ではセンサ構成要素を保護し、かつペン式装置解放部材890と係合するように適合された遠位に面する接触面として機能する(
図13Aを参照)。センサハウジングは、内側ハウジング部材ガイドトラック内に、回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された、多数の半径方向に突出する遠位および近位ガイドフランジ967を含む。遠位ガイドフランジはまた、センサばね968のための近位停止表面を提供する。センサモジュールのための遠位停止部は、ガイドトラックの遠位端および/または圧縮されたセンサばねに対応する内側ハウジングによって提供される。作動ロッド962は、ロッドがチューブ部分983内に自由に受容されるのを可能にするより大きい直径の遠位部分と、フランジ部材988の穴を通して突出するように適合されたより小さい直径の近位部分とを含む。作動ロッドは、丸みを付けられた近位端963を備え、作動ロッドおよびキャップ部材998の係合表面は回転移動の最小限の伝達のために最適化される。センサモジュールは、作動ロッドによって作動されるように適合された、近位に面する中央に配設された作動スイッチ966(例えば、ドームスイッチ)を含む。
【0093】
解放部材組立品は、本体部材990およびその上に設置可能なキャップ部材998を含む。解放部材の戻りばね918は、用量設定部材フランジ912と解放本体部材990との間に配設されて、解放本体部材上に近位に方向付けられた付勢力を提供するように適合される。
【0094】
より具体的には、解放本体部材990は、組み立てられた状態でチューブ部分983上の係止スプライン986と係合するように適合された軸方向に向けられたスプライン996の内円周方向アレイを有する遠位リング部分994だけでなく、用量設定部材ガイドトラック913内に回転可能ではないが軸方向に自由に受容されるように適合された多数の半径方向に突出するガイドフランジ993も含む。キャップ部材998は、示されるように、例えば、溶接、接着剤、またはスナップ手段995によって本体部材に軸方向に固定的に取り付けられるように適合される。組み立てられた状態で、フランジ部材988は、解放本体部材990のための近位停止部として機能し、かつ解放部材の戻りばね918はリング部分遠位表面上に作用する。
【0095】
図10Aおよび
図10Bに目を移すと、わずかに修正されたペン式薬剤送達装置800の近位部分が、アドオン装置とペン式用量設定部材との間に回転方向の係合を提供するアドオン装置の内側組立品の部品と組み合わせて示されている。
【0096】
より具体的には、ペン式ハウジング801は概して
図6の実施形態に対応するが、しかしわずかにテーパー状のハウジングの代わりに、ウィンドウ809を含むハウジングの近位連結部分802は、アドオン装置の円筒状の穴の中に受容されるように適合された「真の」円筒状の形態を有する。別の方法として、両方の構造は軽いテーパーを有してもよい。さらに、連結手段は、軸方向の簡単な設置のために、捕捉部材905と協働するように適合された単一の係止突起805の形態である。また、概して円筒状の外表面881を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面が、用量設定中の指のつかみを改善するために、複数の軸方向に向けられた微細溝を含むことによって質感が与えられている用量設定部材880だけでなく、
図6の実施形態に対応する多数の軸方向に向けられた駆動溝882も示される。
【0097】
図9Aおよび
図9Bを参照しながら上述したように、内側組立品は、多数の開口部989を有する遠位スカート部分987を有するハウジング部材981だけでなく、その上に設置された円筒状の係止部材950も備え、係止部材は多数の可撓性のダイヤル係止アーム951および多数の可撓性の設置アームを含む(後者は
図10Aおよび
図10Bには示されていない)。
【0098】
図10Aでは、内側ハウジング981は、その軸方向に設置された位置で示されている(アドオン装置の図示されていない部分によって決定されるように)。外側アドオンハウジング901が回転方向で所定の位置に設置されている一方で、設置されていない状態で外側ハウジングに対して自由に回転できる内側ハウジング組立品の場合はそうではなく、これは、内側ハウジング、それゆえに係止アーム951が用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされていないように、「無作為な」回転位置に取り付けられているものと仮定する。さらに、用量設定部材880は、用量が設定されていないことに対応する初期の「駐車している」回転「ゼロ」位置を有するが、ランダム位置に設定されていてもよい。さらに、ゼロ位置に駐車している場合でも、用量設定機構のゆるみが、用量設定部材の駆動溝の回転位置のわずかな変動をもたらす場合がある。
【0099】
それゆえに、アドオン装置がペン式装置上に設置されたとき、可撓性のダイヤル係止アーム951は、用量設定部材の駆動溝882と回転方向に位置合わせされていない場合がある。しかしながら、ダイヤル係止アームは可撓性であることに起因して、用量設定部材によってこれらは外向きに移動され、かつ
図10Aに示すように、駆動溝と平行に用量設定部材の外周上で軸方向にスライドする。可撓性の係止アームによって提供される抵抗は小さいので、ユーザはほとんどの場合、アドオン装置の設置中に何が起こったかに気付かず、アドオン装置がまだペン式装置の用量設定部材と回転方向に係合していないという事実に気付かないであろう。示された実施形態では、係止アーム951の自由端は近位側に向けられているが、しかし別の方法として、それらは遠位に配向されてもよく、係止アームの自由端およびペン式装置の用量設定部材880の近位縁は、アドオン装置の設置中に係止アームを外向きに移動させるように構成されてもよい。
【0100】
その後、ユーザが用量を設定することを希望する場合、ユーザは、アドオン装置用量設定部材911を回転し始め、これによって内側ハウジングが係止アーム951とともに回転して次に用量設定部材の駆動溝882と位置合わせされ、それゆえに
図10Bに示すように、内向きに曲がって駆動溝と回転方向に係合することができる。係止アームが駆動溝と簡単に係合することを確実にするために、それらは駆動溝よりもわずかに狭く形成される。アドオン装置の用量設定部材911のさらなる移動は、次にペン式装置の用量設定部材をこれに応じて回転させ、これはユーザが通常どおり用量を設定および調整することを可能にする。実際、多くの事例では、係止アームは駆動溝の中へと直接移動される。
【0101】
係止アーム951の数および機械的特性は、アドオン装置の安全かつ堅牢な動作を可能にするように寸法形成されるべきである。これを確実にするため、組み合わせ組立品、すなわちペン式装置およびアドオン装置は、ユーザがゼロを下回る、または最大設定可能投与量を上回るようにダイヤルしようとした場合に備えて、オーバートルク機構を含んでいてもよい。アドオン装置については、内側ハウジング組立品とアドオン用量設定部材との間のスプライン係合にオーバートルク機構を組み込んでもよいが、しかしほとんどの場合、アドオン装置のためのこうした機構は、ペン式装置には一般的にはオーバートルク保護機構(例えば、FlexTouch(登録商標)薬剤送達ペンで知られているように)が提供されるので、省くことができる。実際、係止アーム951および用量設定部材の駆動溝882は、ペン式装置オーバートルク機構に対する制限を上回るトルクに耐えるように設計および寸法設定されるべきである。
【0102】
図11Aおよび
図11Bは、係止アーム951がそれぞれ、ペン式装置の用量設定部材880の外円周と係合したとき、ペン式装置の用量設定部材の駆動溝882と係合したときを断面図で示す。
【0103】
図12Aおよび
図12Bを参照すると、
図9Aの構成要素が、初期の非設置および非作動状態に対応する組み立てられた状態で示されている。
【0104】
より具体的には、
図12Aは、内側組立品の内側に配設され、かつ内側ハウジングばねサポート984とセンサハウジングの遠位ガイドフランジ967との間に作用するセンサばね968によってその最も近位の位置に向かって付勢されているセンサモジュール960を示す。ダイヤル係止アーム951は、内側ハウジングスカート部分987の内部へと突出しているのが分かる。解放本体部材990は、用量設定部材の内側フランジ912と解放本体部材のリング部分994との間に作用する解放部材の戻りばね918によって、その最も近位の位置に向かって付勢される。作動ロッド962は、内側ハウジングチューブ部分983の内側に配設され、フランジ部材988によって軸方向に定位置に保持され、軸方向のギャップが作動ロッド近位端963とキャップ部材998の遠位表面との間に形成される。内側ハウジングおよび解放部材組立品は、チューブ部分983と解放本体部材990との間のスプライン係合を介して相互に回転方向に係止される(
図12Aではわからない)。
【0105】
図13A~
図13Fを参照して、ペン型の薬剤送達装置800と組み合わせたアドオン用量ロギング装置900の第3の例示的な実施形態の異なる動作状態を説明する。示されるペン式装置は、Novo Nordisk A/S社製のFlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達装置の形態である。
【0106】
図13Aは、ペン型の薬剤送達装置800上に設置される前のアドオン用量ロギング装置900を示す。上述のように、薬剤送達装置は、アドオン装置の円筒状の穴に受容されるように適合された「真の」円筒状形態を有する近位連結部分802と、ウィンドウ809と、アドオン装置の捕捉部材905と協働するように適合された係止突起805と、軸方向に向けられた多数の駆動溝882を持つ概して円筒状の外表面881を有する用量設定部材880と、近位に配設された解放部材890とを含む。アドオン装置900は、ペン式装置の円筒状連結部分802を受容するように適合された円筒状の穴902と、係止突起805と係合するように適合された捕捉部材905と、ペン式装置のウィンドウ809と位置合わせして設置されるように配設されたウィンドウ開口部904と、用量設定部材911と、用量解放部材998とを含む。穴902の中へとダイヤル係止アーム951が突出しているのがわかる。
図12Aに対応して、アドオン装置は、その初期の非設置かつ非作動状態にある。
【0107】
図13Bでは、アドオン装置900はペン式装置800上に設置されており、捕捉部材905は、係止突起805の遠位側に位置し、また2つの窓904、809は整列している。
図10Aに示す状況に対応して、ダイヤル係止アーム951はまだ駆動溝882と係合していない。
【0108】
図13Cでは、アドオン用量設定部材911、およびこれによって内側組立品が回転されており、ダイヤル係止アーム951は駆動溝882と係合しており、用量が設定されている。
【0109】
図13Dでは、アドオン用量解放部材998が部分的に作動して、
作動ロッドの丸みを持つ近位端963と係合し、この状態では、解放本体部材990上の軸方向に配向されたスプライン996の内周アレイは、チューブ部分983のロッキングスプライン986と係脱されており、これによって用量設定部材911を内側組立品から回転方向に分離し、したがってセンサモジュール960から回転方向に分離する。アドオン用量解放部材998のさらなる遠位方向移動は、作動ロッド962を遠位方向に移動し始め、これによって最初は、近位に面して中央に配設された作動スイッチ966(
図9参照)が作動ロッドによって作動し、これによりセンサモジュールがその動作状態に変化する。
【0110】
図13Eでは、アドオン用量解放部材998がさらに作動されて、センサモジュールスペーサーキャップ964が移動してペン式装置解放部材890と係合している。
【0111】
図13Fでは、アドオン用量解放部材998は完全に作動されており、またセンサモジュールおよびこれによってペン式装置の解放部材890は最も遠位の動作位置へと移動しており、これが排出機構を解放し、それによって薬剤充填済みカートリッジ上に設置された中空針を通して設定用量の薬剤が排出される。
図8A~
図8Dを参照しながら上述したように、排出された用量のサイズの決定が行われてもよい。設定用量が解放されると、ユーザはアドオン用量解放部材998上の圧力を解放してもよく、戻りばね968、918によって構成要素がその初期の軸方向位置に戻る。
【0112】
図5、
図7Aおよび
図12Aのアドオン用量ログ装置の機械的概念および作動原理について説明してきたので、センサおよびトレーサーシステムそれ自体をより詳細に説明する。基本的に、センサおよびトレーサーシステムは移動する磁気トレーサー構成要素と、1つ以上の磁気計(例えば3Dコンパスセンサ)を含むセンサシステムとを含む。
【0113】
例示的な実施形態では、磁気トレーサー構成要素は、4つの極を有する多重極磁石(すなわち、四重極磁石)の形態である。
図14では、4つの双極子標準磁石661は、リング型のトレーサー構成要素660M内に等距離で配設され、4つの別個の双極子磁石は、90度ごとの四重極オフセットを有する組み合わされた四重極磁石を提供する。実際に、双極子磁石の各々は、同じ方向に向けられた非常に多くの個々の磁性粒子によって形成される。個々の磁石は、同じ平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされていてもよい。
【0114】
別の方法として、多重極磁石660Mは、
図15Aに示すように、個々の強力な磁石の使用、または
図15Bに示すように、電磁場の使用を通していずれかによって磁化可能な材料を磁化することによって作り出すことができる。
【0115】
所与のセンサシステムは、
図16に図示されるようにトレーサー構成要素660Mに対して配設された、例えば4、5、6、または8個の磁気計766Mを使用してもよい。センサは、例えば、
図7Bに示すように同一の平面内に配設されてもよく、または相互に軸方向にオフセットされてもよい。センサがより多く、センサ間の間隔がより小さいと、それゆえにより良好な信号対雑音比を有するより多くのデータを収集することができる。しかしながら、センサがより多いと、より多くのデータ処理が必要となり、そしてより多くの電力が消費される。
【0116】
一部の事例では、取り扱いが必要なのは外部場からの妨害だけではない。上述のような使い捨て装置内の用量排出モーターを駆動するためのトルク提供ばねは、外部磁場を受けたときに磁化される場合があり、それゆえに内部妨害磁場をもたらす。
【0117】
外部妨害はすべてのセンサに多かれ少なかれ等しくかつ同じ方向で影響するので、外部妨害が信号処理アルゴリズムによって大幅に相殺されうる場合、磁化されたトルクばねは、トレーサー磁石と同じようにセンサに影響を与え、したがって測定値をオフセットし、誤差を発生させる可能性がより高い。
【0118】
しかしながら、
図17Aおよび
図17Bから分かるように、双極子トレーサー磁石の代わりに四重極トレーサー磁石を使用すると、トレーサー磁石の位置を決定する上で誤差を著しく低減する。
【0119】
より具体的には、
図17Aおよび
図17Bは、磁化の4つの異なるレベル(TS1~TS4)における磁化されたトルクばねの、投与設定(DS)および外部投薬(D)の両方に対する影響のシミュレーションを示す。
図17Aは、4個のセンサセットアップと組み合わせた双極子トレーサー磁石の計算された角度測定誤差(すなわち、計算された角度と真の角度との差)を図示し、
図17Bは、8個のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石の計算された角度測定誤差を図示する。外部投薬中はセンサがトレーサー磁石により近いため(例えば、
図8Aおよび
図8Cを参照)、角度誤差は外部投薬中の方がわずかにより小さい。つまり、上述の実施形態では、センサ測定は外部投薬中にのみ行われる。四重極トレーサー磁石における個々の極間のより小さい円周方向の間隔は、センサシステムへのより高い入力率を提供し、これは4個センサの代わりに8個のセンサによってより正確に捕捉することができるので、四重極トレーサー磁石については8個のセンサが使用されたが、しかし4個のセンサセットアップと組み合わせた四重極トレーサー磁石に対しても同等の結果が予期されることになる。示されるように、四重極トレーサー磁石の使用は、角度誤差を約4~8度から約0.5~1度へと、およそ8倍低減した。
【0120】
示されたFlexTouch(登録商標)薬剤送達装置では、リセットチューブ660、そしてそれゆえにトレーサー磁石660Mは、排出されるインスリンの各単位に対して15度回転する。それゆえに、4~8度の範囲で起こる可能性がある角度誤差は、排出された投与量の誤った決定をもたらす場合がある。
【0121】
それゆえに、四重極トレーサー磁石は、外部場からだけでなく内部場からの妨害に対するシステムの感受性も低減する。これは多重極トレーサー磁石の使用の重要な側面であるが、その理由は、鉄含有金属シートを使用することによる外部ソースの従来の磁気遮蔽を、外部場の影響を減少するために使用する場合があるが、トレーサー磁石と内部妨害磁場との間に適合することはできない場合があるからである。さらに、磁気シールドを組み込むことは場所を取り、追加費用が発生することになる。
【0122】
別の方法として磁化可能でない材料のばねを使用することによって、これを軽減できる場合があるが、しかし今日市販されている現在のばね駆動ペンは、磁化可能なトルクばねを備えており、ばねの他の要件に起因して取り換えは実現可能ではない場合がある。
【0123】
回転する四重極トレーサー磁石を組み込んだセンサ組立品に対する構造セットアップについて説明してきたが、以下ではこうした組立品に対して実際の移動を決定する例示的な方法が説明される。
【0124】
四重極磁石からの信号は定期的であり、一周期に磁石の1回の完全回転にわたって2回の信号がある。これは、接線方向、半径方向、および軸方向の磁場レベルが描写されている
図18から見ることができる。
【0125】
信号の周波数成分をマッピングすると、磁石からのほとんどの信号が周波数の2つの信号に適合することが分かる(
図19参照)。
【0126】
四重極場で使用する用量サイズを決定するには、四重極磁石の静的開始角度および終了角を決定する必要がある。磁石は用量が送達される前および後は静的であるため、磁場は経時的にサンプリングされる代わりに、空間にわたってサンプリングされる。例示的な実施形態では、測定システムは、円形状のレイアウトおよび等間隔を用いたN=7個のセンサで構成され、
図20を参照すると、四重極磁石660Mに対するセンサ766Mの配置を示す。
【0127】
磁石の向きを決定するために、離散フーリエ変換(DFT)がセンサで測定された磁場について計算された。
【0128】
ここで
は、k番目のセンサのj番目のチャネルの磁場であり、j=1は接線方向磁場であり、j=2は半径方向であり、またj=3は軸方向であり、
は仮想単位であり、そして
は、j番目のチャネルの信号のn番目の周波数成分である。
【0129】
上述のように、四重極磁石からの信号は一周期n=2個の信号であり、したがって
の位相を見ることにより、センサボードに対する磁石の向きを決定することができる。
【0130】
異なる周波数でのサインおよびコサインのサンプルは直交するので、例えば、周期n=0、1、または3である信号に対するあらゆる妨害は、フーリエ変換によって除去される。
【0131】
これは、外部妨害および内部妨害の両方に関連する。自動用量ペン式注射器内の内部構成要素は、用量機構を駆動するための金属ねじりばねである。これが磁化されている場合、ばね磁場は主に、センサ位置で周期1信号のように見える。センサの付近にある双極子磁石のような外部妨害もまた、周期0または1の信号を有する傾向にある。DFTを使用して、その他の周波数からの妨害を除去し、かつ周波数2信号からのみ磁石の向きを決定することが可能である。
【0132】
したがって、四重極磁石とDFTとの組み合わせは、その周期1信号が共通妨害の周波数と類似している双極子磁石と比較して優れている。
【0133】
DFTベースのアルゴリズムを使用すると、ルックアップベースのアルゴリズムと比較して、任意の数のセンサを選ぶより大きい自由度が与えられる。選ばれるセンサの数は、ナイキストの標本化定理により、少なくとも5であることが好ましい。それ以外に、エイリアシング効果を防止することを目的として信号の特定の周波数を除去するために、センサの数を自由かつ積極的に使用することができる。
【0134】
上記の例示的な実施形態を参照して、センサモジュールの初期移動はセンサスイッチを起動し、これは次にセンサ電子機器を起動し、そして磁気計からのデータのサンプリングを開始させ、これは排出機構の解放前に磁石の回転方向の開始位置を決定することを可能にすることを説明してきた。リセットチューブの回転が停止したことが検出されたとき、例えば、設定用量を完全に排出されたとき、またはユーザによって外部投薬が一時停止されたとき、回転終了位置が決定され、これは排出された用量のサイズを決定することを可能にする。別の方法として、回転終了位置は、センサモジュールがその初期位置に戻ったことはセンサスイッチが検出したときに決定されてもよい。
【0135】
サンプリング周波数は、回転移動を確実に検出し、可能な限り電力効率が良いように選択されなければならない。しかしながら、ばね駆動装置における外部投薬中の回転速度の分析は、リセットチューブの回転速度が一定ではないことを示した。特に、排出イベントの開始において、リセットチューブの回転速度が非常に高い場合があることが見出された。高速回転速度の2つの理由が特定されている。第1の理由は、カートリッジゴムピストンが、外部投薬開始前に非圧縮状態であることである。駆動ばね内のエネルギーが突然解放されると、ゴムピストンは、カートリッジ内で遠位に動き始める前に圧縮され始める。カートリッジに十分な圧力が蓄積すると、ピストンが動き始め、カートリッジの内容物が針から流れ出始める。プランジャーの圧縮は、非常に速く起こるが、圧縮中に速度が低下する。
【0136】
さらなる理由は、ピストンロッドとカートリッジピストンとの間にエアギャップが存在する場合である。これは、例えば、ユーザが使用後に薬剤送達装置上に針を放置した場合、またはそれがサイクル温度に起因する場合などに発生する場合がある。ゴムピストンからの反力がないため、ピストンロッドがピストンに当たった後、上述のピストンの圧縮が開始されるまで、排出機構は非常に速く回転する。
【0137】
排出用量体積を推定するために構成要素の回転を検出する場合、すべての回転を正確に計数することが重要である。そうでない場合、これは、より少ない用量を推定することにつながる可能性があり、これにより、ユーザは、別の用量を摂取し、重度の過剰摂取を負うことを引き起こす可能性がある。
【0138】
アクティブセンサを使用して、例えば、磁界の変化を測定することによって、構成要素の位置をサンプリングする場合、高い回転速度は、すべての回転を見るために、高いサンプリング周波数を必要とする。しかしながら、高いサンプリング周波数を使用すると、非常に多くの電力が消費され得、保存する必要のある大量のデータを収集することができる。これにより、高電力使用およびメモリ不足の問題が発生する可能性がある。これは特に、代替不可能なエネルギー源が提供されているメモリデバイスにとって問題である。対照的に、周波数が低すぎる場合、1つ以上の信号サイクルが検出されない可能性がある。2つの状況が、それぞれ
図23Aおよび
図23Bに示されている。
【0139】
この問題に対処するために、動的サンプリングスキームは、(i)システム挙動に関する知識、および(ii)測定された構成要素の実際の回転速度の検知に基づいて使用され得る。システムは、以下のように動作することが予期され得る。排出機構の高速回転の期間で、その後、正常/中程度の回転速度の期間で開始し、設定された用量が完全に排出されたときに、または排出がユーザによって停止されたときに、回転のない状態で終了する。したがって、回転速度が変化して、高いサンプリング周波数で開始する際にモードを適合させる適応サンプリングスキームを実施することができる。
【0140】
上述の実施形態に対応する例示的な使用シナリオを、
図24に示す。より具体的には、排出される薬剤の投与量を設定した後、ユーザは、アドオン解放ボタンを押して、センサモジュールの連続的なの軸移動がセンサスイッチをトリガーし、サンプリング周波数を最初に「高」に設定した状態で、連続サンプリングおよび回転速度の評価を開始する。センサモジュールはその後、ペン解放ボタンと係合し、ペン排出機構を解放する。プランジャーの圧縮および/またはピストンとピストンロッドとの間のエアギャップのため、排出機構は、初期段階で、より短いまたはより長い期間にわたって高速で回転し得る。排出機構がその後減速すると、回転速度が第1の閾値(閾値
1)よりも低いことが検出され得、これにより、サンプル周波数を「低」に調整することができる。最終的に、回転が停止していること、すなわち、回転速度が第2の閾値(閾値
2)よりも低いことが検知されると、電力を節約するためにサンプリングは停止する。他の実施形態では、2つより多くの閾値を使用してもよい。
【0141】
例示的な実施形態では、センサ回路は、初期段階の「追跡モード」および後続の「投与モード」の2つのモードで動作する。スイッチ作動の直後に、すべての(ここでは、7個の)センサを使用して「スナップショット」が取得され、測定値、すなわち回転開始位置を表す測定値をメモリに読み戻し、次に、サンプリング周期0.9msで追跡モードに入る。
【0142】
「通常」の動作中に、以下が行われる。ユーザは、設定された用量で装置を作動し、解放ボタンを「通常」作動速度で動作させる。初期段階のスナップショット後、センサ回路は、6サンプル=5.1msにわたって5度回転が観察されるまで追跡を続け、これは、高速フェーズが始まったことを示している。5度の角度測定は、DFTフェーズ測定を利用して行われてもよい。センサ回路は、高速フェーズの間に追跡し続け、ここで、2つのスキーム、すなわち、(i)磁石が高速で回転するときに信頼性が低いが、7つの連続するサンプルにわたって非常に少ない回転を観察することによって、高速フェーズがいつ終わるかを確実に検出することができる、DFTフェーズ測定、および(ii)高速フェーズ中の半回転をカウントするのに適した「粗い」角度測定スキームが、角度測定に使用され得る。高速フェーズが終わると、センサ回路は、追跡状態から終了し、所定の投与イベントに対してより速い回転フェーズがないと仮定して、50msのサンプリング周波数で投与モードに入る。投与モード中、磁石センサ(ここでは、7個)は、サンプリング速度に従って、または同時にすべて連続的に動作してもよい。実際に、後者のサンプリングモードは、より高いエネルギー消費を(7倍)増加させるが、使用されるアルゴリズムに応じて、より高い精度が期待されてもよく、これは、サンプリング頻度の低い通常の投与モード中にこれをオフセットし得る。
【0143】
ユーザが無(ゼロ)設定用量で装置を起動した場合、回転が全く行われないため、検出する高速回転は存在しない。センサ回路は、タイムアウト状態(例えば、10秒)に達するまで、高速回転が開始するのを待っている追跡状態で追跡し続ける。タイムアウト後、センサ回路は、例えば、装置がハンドバッグの中にある間にボタンを押すなどの、エラーが発生したと仮定し、用量は、「未知の用量サイズ」で記録され得る。
【0144】
非常に小さな用量が設定される特定の稀な条件下では、例えば、1IU、排出機構の設計、および用量のダイヤル方法(例えば、ユーザが1IUよりも大きい用量を最初にダイヤルし、その後1IUまでダイヤルダウンする場合)下では、インジケータの回転は、高速フェーズのトリガーに失敗し得る。このような場合、センサ回路は、作動スイッチが停止されるか、またはタイムアウトに達するまで、高速サンプリングで追跡フェーズに留まる。タイムアウト前にスイッチが停止され、実際の使用を示す場合、センサ回路は、DFTフェーズ測定を見て、これが1IU用量であったか、またはゼロ用量(この場合、用量は記録されない。)であったかを決定する。
【0145】
「(かなり)速い」解放ボタンの作動の問題に対処するために、センサ回路が「未知の用量サイズ」を報告しないようにするために合格する必要がある、許容基準を実装することができる。例えば、第1のスナップショット(DFT)と、追跡フェーズからの第1のサンプルに基づくDFT角度との間の回転は、小さくなければならない。さもなければ、解放ボタン作動速度が速すぎて、ペンが投与を開始し、第1のスナップショットと追跡開始との間で180度を超えて回転した可能性があるという兆候として取られる。
【0146】
実際に、他の適応サンプリングスキームを利用してもよい。例えば、サンプリング周波数は、所定の範囲の回転速度に対して回転速度とともに連続的に変化し得る。
【0147】
上記の開示では、外部妨害磁場とペン式装置のトルクばねからの内部妨害磁場との両方の問題は、多数の磁気計を含むセンサアレイと組み合わせた四重極トレーサー磁石の使用によって対処された。以下において、この問題は異なるアプローチによって対処され、これは上述の四重極設計の代替として、または上述の四重極設計に加えて使用されてもよい。
【0148】
磁気システムを外側干渉から遮蔽するために磁気シールドを使用することは一般的に知られており、かつ使用されている。通常、シールドは磁場を封じ込め、磁場がその他のシステムに影響を与えることを防止するためのバリアとして、または外部の(遮蔽されていない)磁場によって影響を受けないようにシステムを封じ込め、かつシステムを遮蔽するバリアとして使用される。妨害磁場をもたらす場合があるシステムの内部構成要素は通常、システムの遮蔽された容積の外側に置かれる。実際に、磁化可能な材料から製造された駆動ばねを含む薬剤送達装置内にシールドを組み込むことが可能である場合があるが、しかしこれはペン式装置の主要な再設計が必要となる場合があり、これは費用効果の高いオプションではない場合がある。
【0149】
それゆえに、解決すべき技術的問題は、磁気計に基づいて捕捉装置または組立品の磁気センサの測定値を妨害する内部磁場を防止/低減する磁気シールドを提供することである。さらに、こうしたシールドは、「通常の」外部磁場からの妨害を防止/低減するためにも機能する場合がある。
【0150】
提示される解決策は、センサシステムを外部磁場から遮蔽するだけでなく、トルクばねによってもたらさせるあらゆる意図しない内部磁場もシールドに向かってそらし、かつトレーサー磁石の磁場の妨害を低減するために、ミューメタルのシールドを導入することである。トルクばねからの妨害磁場の強度を低減することによって、必要とされる精度および冗長性を得るためのより少ないセンサの使用、ひいてはより少ない信号処理要件が可能になる場合があり、これによってコストおよび電力消費量の両方を低減することが可能になる場合がある。
【0151】
ミューメタルは、非常に高い透磁率を有するニッケル鉄軟磁性合金である。これはいくつかの組成を有し、およそ80%のニッケル、15%数パーセントのモリブデンを含み、またいくつかの組成では少量の銅およびクロムを含む。ミューメタルは非常に延性があり、かつ加工可能であり、磁気シールドのために必要な薄いシートへと簡単に形成することができる。しかしながら、ミューメタル物品は、最終形態に加工された後に熱処理を必要とする。ミューメタルで作製された磁気シールドは、遮蔽された区域の周りに封鎖する代わりに磁力線のための経路を提供することによって機能する。ミューメタルは、ずっと低い比透磁性を有する空気を通るより「簡単な」経路のようなものを提供し、それゆえに磁場をわきにそらす。しかしながら、ミューメタルは非常に低い飽和レベルを有し、したがってより強力な磁場に対して遮蔽するのに適していない。
【0152】
図21は、薬剤送達装置トルクばね655が示されているが、
図8Aに示す組立品に本質的に対応する組立品を示しており、アドオン用量ロギング装置1000には、センサの軸方向長さおよびトレーサー磁石容積、ならびにトルクばね655の近位部分を覆う、ミューメタルで作製された円筒状のシールド1020が提供されている。円筒状のミューメタルシールドは本質的に、磁化されているトルクばねからの磁力線を吸収し、かつそれらを円周状のシールドに向かってガイドし、これによって軸方向、それゆえにセンサに向かうトルクばねの妨害磁場の程度を制限する。同時に、円筒状のシールドは、円筒容積の内部に配設されたセンサ電子機器上の外部磁場EMFの影響を低減させるのに役立つ。
【0153】
円筒状のミューメタルシールド1020は基本的にトレーサー磁石660Mからの磁力線も吸収するが、(i)トルクばね655はトレーサー磁石よりも磁気センサ1066Mから軸方向でより遠くに配設されている、また(ii)トルクばねはトレーサー磁石よりもシールドに半径方向でより近くに配設されているので、これが測定性能に与える影響の程度はより小さい。このようにして、センサシステムは、磁場の小さい部分のみがシールドによって吸収されるので、トレーサー磁石からの磁場を測定できる一方で、上述の幾何学的特性は、トルクばねからの磁場がシールドによって高度に吸収されることを可能にし、それゆえに、センサへの影響の程度がより小さくなる。
【0154】
図22は、飽和することなくより強力な磁場を取り扱うことができる鋼の外側シールド1121が適用されて、外部磁場に対する経路を提供する、アドオン用量ロギング装置1100の実施形態を示す。ミューメタルによる内側シールド1122は、強力な外部磁場によって飽和されることなく、トルクばねによってもたらされた比較的弱い内部磁場に経路を提供するように配設されている。
【0155】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について記載された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度に、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達アセンブリであって、
-ハウジング(101、601、801)と、
-薬剤貯蔵部(113)または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤排出手段であって、
-ユーザが排出される薬剤の投与量を設定することを可能にする、用量設定手段と、
-前記薬剤排出手段が設定された投与量を排出することを可能にするように作動可能である、解放手段と、
-薬剤の投与量の排出中に前記ハウジングに対して回転するように適合されたインジケータ(160、160M、660M)であって、前記回転の量が、前記排出される投与量のサイズを示すものである、インジケータ(160、160M、660M)と、を含む、薬剤排出手段と、
-センサシステムであって、
-前記インジケータの回転位置および/または回転移動を示す前記インジケータの特性を測定するように適合されたセンサアセンブリであって、前記センサアセンブリが、第1のサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子(766M)と、第2のより低いサンプリング周波数で動作するように適合された少なくとも1つのセンサ素子と、を含む、センサアセンブリと、
-前記少なくとも1つのセンサ素子からの測定値に基づいて、
(i)前記インジケータの回転位置(複数可)および/または回転移動の量、ならびに
(ii)前記インジケータの回転速度を決定するように構成されたプロセッサと、を含む、センサシステムと、を含み、
-前記センサシステムが、非動作状態と動作状態との間で作動可能であり、
-前記センサシステムが作動したときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第1のサンプリング周波数で動作し、
-回転速度の減少が検出されたときに、少なくとも1つのセンサ素子が、前記第2のサンプリング周波数で動作する、薬剤送達アセンブリ。
【外国語明細書】