(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161372
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】PD-1軸結合アンタゴニスト、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤で肺がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241112BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20241112BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20241112BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20241112BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61P11/00
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K45/06
A61P3/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/519
A61K31/513
A61K31/52
A61K33/243
A61K31/17
A61K31/282
A61K39/395 D
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024114391
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2021500997の分割
【原出願日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】62/700,184
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/734,936
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャンカー, ギータ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラー, アラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ダニエル シンユー
(72)【発明者】
【氏名】リン, ウェイユー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】個体における肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がんなど)を治療するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(抗PD-L1抗体など、例えば、アテゾリズマブ)、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)、及びプラチナ製剤(例えば、シスプラチン又はカルボプラチン)を個体に投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、肺がんを有する個体を治療する方法であって、ここで、前記治療が前記個体の無増悪生存期間(progression free survival:PFS)を延長する、方法。
【請求項2】
前記治療が、前記個体の全生存期間(overall survival:OS)を延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を前記個体に投与することを含む、肺がんを有する個体を治療する方法であって、ここで、前記治療が、前記個体の全生存期間(OS)を延長する、方法。
【請求項4】
前記治療が、前記個体の前記PFSを少なくとも約6ヶ月延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療が、前記個体の前記OSを少なくとも約15ヶ月延長する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗PD-L1抗体が、以下:
(a)GFTFSDSWIHのアミノ酸配列(配列番号1)を含むHVR-H1、AWISPYGGSTYYADSVKGのアミノ酸配列(配列番号2)を含むHVR-2、及びアミノ酸RHWPGGFDY(配列番号3)を含むHVR-3を含む、重鎖可変領域(VH)と、
(b)RASQDVSTAVAのアミノ酸配列(配列番号4)を含むHVR-L1、SASFLYSのアミノ酸配列(配列番号5)を含むHVR-L2、及びQQYLYHPATのアミノ酸配列(配列番号6)を含むHVR-L3を含む、軽鎖可変領域(VL)と、を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗PD-L1抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記代謝拮抗剤が、ペメトレキセド、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、又はメトトレキサートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記代謝拮抗剤が、ペメトレキセドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プラチナ製剤が、カルボプラチンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラチナ製剤が、シスプラチンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗PD-L1抗体が1200mgの用量で投与され、ここで、前記プラチナ製剤がカルボプラチンであり、AUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
抗PD-L1抗体が1200mgの用量で投与され、ここで、前記プラチナ製剤がシスプラチンであり、75mg/m2の用量で投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で投与される、請求項1~10及び12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗PD-L1抗体、前記代謝拮抗剤、及び前記プラチナ製剤が、21日間のサイクルで4回投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、前記プラチナ製剤がカルボプラチンであり、サイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与される、請求項1~11及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗PD-L1抗体、前記代謝拮抗剤、及び前記プラチナ製剤が、21日間のサイクルで4回投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、前記プラチナ製剤がシスプラチンであり、サイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与される、請求項1~10、12、及び14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤が、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される、請求項15~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗PD-L1抗体が前記代謝拮抗剤に先んじて投与され、ここで、前記代謝拮抗剤が、サイクル1~4の第1日目に前記プラチナ製剤に先んじて投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗PD-L1抗体及び前記代謝拮抗剤が、サイクル4の後に更に投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、第1日目に1200mgの用量で投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、サイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗PD-L1抗体及び前記代謝拮抗剤が、サイクル4の後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗PD-L1抗体が、サイクル4後の第1日目に前記代謝拮抗剤に先んじて投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗PD-L1抗体、前記代謝拮抗剤、及び前記プラチナ製剤が、21日間のサイクルで4回投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、前記プラチナ製剤がカルボプラチンであり、サイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与される、請求項1~11及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗PD-L1抗体、前記代謝拮抗剤、及び前記プラチナ製剤が、21日間のサイクルで4回投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、前記プラチナ製剤がシスプラチンであり、サイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与される、請求項1~10、12、及び14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤が、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗PD-L1抗体が前記代謝拮抗剤に先んじて投与され、ここで、前記代謝拮抗剤が、サイクル1~6の第1日目に前記プラチナ製剤に先んじて投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗PD-L1抗体及び前記代謝拮抗剤が、サイクル6の後に更に投与され、ここで、前記抗PD-L1抗体がアテゾリズマブであり、第1日目に1200mgの用量で投与され、かつここで、前記代謝拮抗剤がペメトレキセドであり、サイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与される、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗PD-L1抗体及び前記代謝拮抗剤が、サイクル6の後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗PD-L1抗体が、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に前記代謝拮抗剤に先んじて投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗PD-L1抗体、前記プラチナ製剤、及び前記代謝拮抗阻害剤が、それぞれ静脈内投与される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記肺がんが、非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer:NSCLC)である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記NSCLCが、ステージIVの非扁平上皮NSCLCである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記個体が、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて未治療である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記個体が、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて化学療法未実施である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記個体が、アジア人である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記個体が、少なくとも65歳である、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記個体が、非喫煙者である、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記個体が、高PD-L1である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記個体が、PD-L1陰性である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する個体を治療する方法であって、ここで、前記アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、前記ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして前記カルボプラチンはAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、ここで、前記治療は無増悪生存期間(PFS)を延長する、方法。
【請求項40】
治療が、前記個体の全生存期間(OS)を延長する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンが、4回の21日間サイクルで投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてカルボプラチンはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンが、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
アテゾリズマブがペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~4の第1日目にカルボプラチンに先んじて投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
アテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
アテゾリズマブが、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンが、6回の21日間サイクルで投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてカルボプラチンはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項47】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンが、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
アテゾリズマブがペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~6の第1日目にカルボプラチンに先んじて投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
アテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
アテゾリズマブが、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記アテゾリズマブ、前記ペメトレキセド、及び前記カルボプラチンが、それぞれ静脈内投与される、請求項39~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
治療が、前記個体の前記PFSを少なくとも約6ヶ月延長する、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
治療が、前記個体の前記OSを少なくとも約15ヶ月延長する、請求項39~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを前記個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する個体を治療する方法であって、ここで、前記アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、前記ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして前記シスプラチンは75mg/m2の用量で投与され、ここで、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、方法。
【請求項55】
治療が、前記個体の前記全生存期間(OS)を延長する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンが、4回の21日間サイクルで投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてシスプラチンはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンが、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
アテゾリズマブがペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~4の第1日目にシスプラチンに先んじて投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
アテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項56~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
アテゾリズマブが、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンが、6回の21日間サイクルで投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてシスプラチンはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項62】
アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンが、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
アテゾリズマブがペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~6の第1日目にシスプラチンに先んじて投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
アテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される、請求項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
アテゾリズマブが、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記アテゾリズマブ、前記ペメトレキセド、及び前記シスプラチンが、それぞれ静脈内投与される、請求項54~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
治療が、前記個体の前記PFSを少なくとも約6ヶ月延長する、請求項54~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
治療が、前記個体の前記OSを少なくとも約15ヶ月延長する、請求項54~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記個体が、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて未治療である、請求項39~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記個体が、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて化学療法未実施である、請求項39~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記個体が、アジア人である、請求項39~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記個体が、少なくとも65歳である、請求項39~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記個体が、非喫煙者である、請求項39~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記個体が、高PD-L1である、請求項39~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記個体が、PD-L1陰性である、請求項39~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記個体が、ヒトである、請求項1~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
請求項1~38及び76のいずれか一項に記載の方法に従って、肺がんを有する個体を治療するための代謝拮抗剤とプラチナ製剤とを組み合わせて使用するための、抗PD-L1抗体を含むキット。
【請求項78】
請求項39~53及び69~76のいずれか一項に記載の方法に従って、肺がんを有する個体を治療するためにペメトレキセドとカルボプラチンとを組み合わせて使用するための、アテゾリズマブを含むキット。
【請求項79】
請求項54~76のいずれか一項に記載の方法に従って、肺がんを有する個体を治療するためにペメトレキセドとシスプラチンとを組み合わせて使用するための、アテゾリズマブを含むキット。
【請求項80】
有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、個体における肺がんを治療する方法で使用するための抗PD-L1抗体であって、ここで、前記治療が前記個体の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する、抗PD-L1抗体。
【請求項81】
請求項1~38及び76のいずれか一項に記載されている方法で使用するための、請求項80に記載の抗PD-L1抗体。
【請求項82】
有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法で使用するためのアテゾリズマブを含む組成物であって、ここで、前記アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、前記ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして前記カルボプラチンはAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、ここで、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する、組成物。
【請求項83】
請求項39~53及び69~76のいずれか一項に記載されている方法で使用するための、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法で使用するためのアテゾリズマブを含む組成物であって、ここで、前記アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、前記ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして前記シスプラチンは75mg/m2の用量で投与され、ここで、前記治療は、前記個体の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する、組成物。
【請求項85】
請求項54~76のいずれか一項に記載されている方法で使用するための、請求項84に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年7月18日出願の米国仮出願第62/700,184号、及び2018年9月21日出願の同第62/734,936号の利益を主張するものであり、これら各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(computer readable form:CRF)の配列表(ファイル名:146392045140SEQLIST.TXT、記録日:2019年7月12日、サイズ:37KB)。
【技術分野】
【0003】
本開示は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)とプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)とを組み合わせてPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)を投与することによる、がんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
肺がんは依然として世界中のがんによる死亡の主な原因である。男性では最も一般的ながんであり、2008年における新規がんのおよそ13%を占めた(Jemalら(2011年)「CA Cancer J.Clin」第61巻第69~90頁)。2012年、ヨーロッパでは肺がんの新規症例数が313,000例、肺がんによる死亡数が268,000例であったと推定された(「GLOBOCAN(2012).Estimated cancer incidence:mortality and prevalence Worldwide in 2012.」、閲覧:globocan(dot)iarc(dot)fr/Pages/fact_sheets_cancer.aspx.)。米国からの同様のデータにより、2015年に221,200例の肺がんの新規症例数、158,040例の肺がんによる死亡数があると推定された(Siegelら(2015年)「CA Cancer J Clin.」第65巻第5-29頁)。
【0005】
非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer:NSCLC)は肺がんの主要なサブタイプであり、全症例のおよそ85%を占める(Molinaら(2008年)「Mayo Clin Proc」第83巻第584号第94頁;Howladerら(2011年)「SEER cancer statistics review」、1975-2011年、National Cancer Institute)。NSCLCは、腺がん及び扁平上皮がんの2つの主要な組織型に分けることができる(Travisら(2011年)「J Thorac Oncol」第6巻第244-85頁)。腺がんの組織学は全NSCLCの半分以上を占め、扁平上皮細胞の組織学はおよそ25%を占める(Langerら(2010年)「J Clin Oncol」第28巻第5311-20頁)。NSCLCの残りの症例は、大細胞がん、神経内分泌腫瘍、肉腫様がん、及び低分化組織学に代表される。
【0006】
進行性疾患の全体的な5年生存率は、地理的位置応じて、2%-4%である(Cetinら(2011年)「Clin Epidemiol」第3巻第139-48頁)。NSCLC患者の生存に対する予後不良因子としては、初診時に進行期である疾患、一般状態不良、及び意図しない体重減少の病歴が挙げられる。NSCLCの患者の半数以上が遠隔性疾患(distant disease)であると診断されており、これは生存見込みの悪さに直接寄与している。
【0007】
プラチナ系レジメンは依然として、EGFR変異又はALK遺伝子再構成を抱えていない局所進行性又は転移性NSCLCの患者に対する、標準的な第1選択肢である。特に、新たに診断された進行期の非扁平上皮NSCLCの場合、標準治療は、ベバシズマブの有無に関わらず、シスプラチン又はカルボプラチンとタキサン又はペメトレキセドとのいずれかを伴うプラチナダブレットである。しかしながら、現在の治療レジメンは多くの毒性(発熱性好中球減少症、骨髄抑制、悪心、脱毛症、腎症、及び神経障害など)に関連しており、一般に、高齢者及び一般状態不良の患者では耐えることができない。その上、細胞毒性化学療法によってもたらされる延命効果は安定水準に達し、全奏効率はおよそ20%、1年生存率は31%~36%の範囲である(Schillerら(2002年)「N Engl J Med.」第346巻第92-98頁)。
【0008】
腺がんと扁平上皮NSCLCとの間には疾患の特徴に違いが認められる。まず、扁平上皮腫瘍は一般的には中央気道に存在し、典型的には気管支上皮に限局したままであるが(Hirschら(2008年)「J Thorac Oncol.」第3巻第1468-1481頁)、より一般的には、非扁平上皮腫瘍は中央気道より遠位の肺実質に位置する。NSCLC腫瘍組織を評価すると、典型的には、扁平上皮細胞の種類(角質化、細胞内ブリッジ、中心壊死)と腺がん(腺構造)との細胞学的差異が明らかとなる。腫瘍試料の分化が不充分な場合、又は利用できる組織が限られている場合、免疫組織化学的マーカにより組織学的診断を支援してもよい。甲状腺転写因子1は、扁平上皮細胞ではまれにしか発現せず、腺がんでは強く発現する。対照的に、p63、CK5/6、及び34βE12は扁平上皮がんで強く発現し、腺がんではそれほど頻繁には発現しない(Travisら(2011年)「J Thorac Oncol.」第6巻第244-85頁)。
【0009】
NSCLCにおいて予後的及び/又は予測的な有意性のある遺伝子変化には、上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)の突然変異、未分化リンパ腫キナーゼ(anaplastic lymphoma kinase:ALK)遺伝子の再配列、及びGTPアーゼKras(KRAS)遺伝子の突然変異が挙げられる。これらの突然変異の割合は扁平上皮がんと腺がんとの間で異なる。例えば、EGFRキナーゼドメインの変異は腺がんNSCLCの患者の10%-40%で報告されているが、扁平上皮NSCLCの患者ではめったに観察されない(Herbstら(2008年)「N Engl J Med.」第359巻第1367-80頁)。同様に、肺腫瘍発生のドライバとして認識されているALK融合発がん遺伝子は腺がん患者のおよそ7%で観察されるが、扁平上皮組織学では非常にまれである(Herbstら(2008年)「N Engl J Med.」第359巻第1367-80頁;Langerら(2010年)「J Clin Oncol」第28巻第5311~20頁)。加えて、KRAS変異は扁平上皮NSCLCで非常にまれであるが、腺がんNSCLC症例の最大30%では観察することができる(Travisら(2011年)「J Thorac Oncol.」第6巻第244-85頁)。
【0010】
遺伝子型指向療法は、EGFR変異の感作及びALK再配列を含むドライバ発がん遺伝子の変化を特徴とするNSCLC(主に、非扁平上皮組織学)の、選択された患者の利益と毒性とのバランスを劇的に改善する可能性がある。しかしながら、これらの変異は扁平上皮NSCLCでより一般的であり、腺がんNSCLCでは非常にまれである。ゲフィチニブ(IPASS)、エルロチニブ(EURTAC)、及びアファチニブ(LUX-Lung 3)のランダム化第III相試験では、プラチナダブレット化学療法と比較して、PFS及びORRの有意な改善が示された(福岡ら(2011年)「J Clin Oncol.」第29巻第2866-2874頁;Rosellら(2012年)「Lancet Oncol.」第13巻第239-246頁;Yangら(2012年)「Lancet Oncol.」第13巻第539~548頁)。同様に、ALK阻害剤であるクリゾチニブ及びセリチニブは、蛍光in situハイブリダイゼーションで定義されるように、ALK再配列についてNSCLC陽性である患者で有効性が示されている(Crinoら(2011年)「J Clin Oncol.」第29巻要約書7514;Camidgeら(2012年)「Lancet Oncol.」第13巻第1011-1019頁;Shawら(2012年)「European Society of Medical Oncology Meeting.」要約書LBA1 PR;Shawら(2014年)「N Engl J Med.」第370巻第2537~2539頁;XALKORI(登録商標)USPI;ZYKADIA(商標)USPI)。
【0011】
新規標的治療と新規化学療法との組合せの進歩にもかかわらず、進行性NSCLC疾患の生存率は低いままであり、標的薬剤に対する後天的耐性は主要な臨床的問題である。したがって、当該技術分野では、この疾患を有する患者の予後を改善する代替治療の選択肢、例えば、生存率を延長する治療方法が必要とされている。
【0012】
特許出願、特許公報、及びUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0013】
本明細書では、肺がん患者を治療するための方法及び抗PD-L1抗体の使用が提供される。特に、本方法及び使用は、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する未治療の個体(例えば、化学療法未実施である個体)における、ペメトレキセドとプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)とを組み合わせたアテゾリズマブ(TECETRIQ(登録商標))のランダム化第III相臨床試験のデータに基づく。この研究は、TECENTRIQ(登録商標)(アテゾリズマブ)と化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン又はペメトレキセド+シスプラチン)との組合せによる初期(一次)治療が、化学療法単独と比較して、疾患の悪化又は死亡(PFS)のリスクを低減することを示した。加えて、TECENTRIQ(登録商標)(アテゾリズマブ)と化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン又はペメトレキセド+シスプラチン)とを投与された患者は、化学療法単独と比較して、全生存期間の数値的改善を示した。TECENTRIQと化学療法との組合せの安全性は、個別の医薬品の既知の安全性プロファイルと一致しているようであり、新規の安全性シグナルはこの組合せで特定されなかった。
【0014】
一態様では、本明細書は、有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、肺がんを有する個体を治療する方法であって、ここで、該治療が該個体の無増悪生存期間(progression free survival:PFS)を延長する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、該治療は、該個体の全生存期間(overall survival:OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)による治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のPFSを増加させる。
【0015】
別の態様では、本明細書は、有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、肺がんを有する個体を治療する方法であって、ここで、該治療が該個体の全生存期間(OS)を延長する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)は、治療の開始から死亡までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)による治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のOSを増加させる。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、以下:(a)GFTFSDSWIHのアミノ酸配列からなるHVR-H1(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKGのアミノ酸配列からなるHVR-2(配列番号2)、及びアミノ酸RHWPGGFDYからなるHVR-3(配列番号3)を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)RASQDVSTAVAのアミノ酸配列からなるHVR-L1(配列番号4)、SASFLYSのアミノ酸配列からなるHVR-L2(配列番号5)、及びQQYLYHPATのアミノ酸配列からなるHVR-L3(配列番号6)を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0017】
いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤は、ペメトレキセド、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、又はメトトレキサートである。いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤は、ペメトレキセドである。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤は、カルボプラチンである。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤は、シスプラチンである。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は1200mgの用量で投与され、ここで、該プラチナ製剤はカルボプラチンであり、AUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は1200mgの用量で投与され、ここで、該プラチナ製剤はシスプラチンであり、75mg/m2の用量で投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、該代謝拮抗剤、及び該プラチナ製剤は、21日間サイクルで4回投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、該プラチナ製剤はカルボプラチンであり、サイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、該代謝拮抗剤、及び該プラチナ製剤は、21日間サイクルで4回投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、該プラチナ製剤はシスプラチンであり、サイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤は、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体は該代謝拮抗剤に先んじて投与され、ここで、該代謝拮抗剤は、サイクル1~4の第1日目に該プラチナ製剤に先んじて投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体及び該代謝拮抗剤は、サイクル4の後に更に投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、第1日目に1200mgの用量で投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、サイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体及び該代謝拮抗剤は、サイクル4の後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体は、サイクル4後の第1日目に該代謝拮抗剤に先んじて投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、該代謝拮抗剤、及び該プラチナ製剤は、21日間サイクルで4回投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、該プラチナ製剤はカルボプラチンであり、サイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、該代謝拮抗剤、及び該プラチナ製剤は、21日間サイクルで4回投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、1200mgの用量で第1日目に投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、500mg/m2の用量で第1日目に投与され、かつここで、該プラチナ製剤はシスプラチンであり、サイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤は、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体は該代謝拮抗剤に先んじて投与され、ここで、該代謝拮抗剤は、サイクル1~6の第1日目に該プラチナ製剤に先んじて投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体及び該代謝拮抗剤は、サイクル6の後に更に投与され、ここで、該抗PD-L1抗体はアテゾリズマブであり、第1日目に1200mgの用量で投与され、かつここで、該代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、サイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体及び該代謝拮抗剤は、サイクル6の後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体は、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に該代謝拮抗剤に先んじて投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、該抗PD-L1抗体、該プラチナ製剤、及び該代謝拮抗阻害剤は、それぞれ静脈内投与される。いくつかの実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、NSCLCは、ステージIVの非扁平上皮NSCLCである。いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて未治療である。いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて化学療法未実施である。いくつかの実施形態では、個体は、アジア人又はアジア系である。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも65歳である。いくつかの実施形態では、個体は、非喫煙者である。いくつかの実施形態では、個体は、高PD-L1である。いくつかの実施形態では、個体は、PD-L1陰性である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0021】
別の態様では、本明細書は、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する個体を治療する方法であって、ここで、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして該カルボプラチンはAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、ここで、該治療は無増悪生存期間(PFS)を延長する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、該治療は、該個体の全生存期間(overall survival:OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、ペメトレキセド及びカルボプラチンによる治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のPFSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)は、治療の開始から死亡までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、ペメトレキセド及びカルボプラチンによる治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のOSを増加させる。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンは、21日間サイクルで4回投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてカルボプラチンはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンは、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブはペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~4の第1日目にカルボプラチンに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ及びペメトレキセドは、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンは、21日間サイクルで6回投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてカルボプラチンはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンは、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブはペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~6の第1日目にカルボプラチンに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ及びペメトレキセドは、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、該アテゾリズマブ、該ペメトレキセド、及び該カルボプラチンは、それぞれ静脈内投与される。
【0022】
別の態様では、本明細書は、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを該個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する個体を治療する方法であって、ここで、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして該シスプラチンは75mg/m2の用量で投与され、ここで、該治療は、該個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、該治療は、該個体の全生存期間(overall survival:OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、ペメトレキセド及びシスプラチンによる治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のPFSを増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)は、治療の開始から死亡までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、ペメトレキセド及びシスプラチンによる治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のOSを増加させる。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンは、21日間サイクルで4回投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル4後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてシスプラチンはサイクル1~4の各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル4後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンは、サイクル1~4の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブはペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~4の第1日目にシスプラチンに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ及びペメトレキセドは、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンは、21日間サイクルで6回投与され、かつアテゾリズマブ及びペメトレキセドが、サイクル6後の21日間サイクルで更に投与され、ここで、アテゾリズマブはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で投与され、ペメトレキセドはサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与され、そしてシスプラチンはサイクル1~6の各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与され、かつここで、アテゾリズマブはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に1200mgの用量で更に投与され、ペメトレキセドはサイクル6後の全サイクルについて各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で更に投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンは、サイクル1~6の第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブはペメトレキセドに先んじて投与され、ここで、ペメトレキセドがサイクル1~6の第1日目にシスプラチンに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブ及びペメトレキセドは、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目に連続して投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の全サイクルについて、各21日間サイクルの第1日目にペメトレキセドに先んじて投与される。いくつかの実施形態では、該アテゾリズマブ、該ペメトレキセド、及び該シスプラチンは、それぞれ静脈内投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて未治療である。いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて化学療法未実施である。いくつかの実施形態では、個体は、アジア人又はアジア系である。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも65歳である。いくつかの実施形態では、個体は、非喫煙者である。いくつかの実施形態では、個体は、高PD-L1である。いくつかの実施形態では、個体は、PD-L1陰性である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0024】
別の態様では、本明細書は、本明細書に開示される方法に従って肺がんを有する個体を治療するための代謝拮抗剤とプラチナ製剤とを組み合わせて使用するための、抗PD-L1抗体を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って肺がんを有する個体を治療するためのペメトレキセドとカルボプラチンとを組み合わせて使用するための、アテゾリズマブを含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って肺がんを有する個体を治療するためのペメトレキセドとシスプラチンとを組み合わせて使用するための、アテゾリズマブを含むキットを提供する。
【0025】
別の態様では、有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、個体における肺がんを治療する方法で使用するための抗PD-L1抗体を含む組成物であって、ここで、該治療が該個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に開示される方法に従って使用するための抗PD-L1抗体を含む。
【0026】
別の態様では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法で使用するためのアテゾリズマブを含む組成物であって、ここで、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして該カルボプラチンはAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、ここで、該治療は、該個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に開示される方法に従って使用するためのものである。
【0027】
別の態様では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを個体に投与することを含む、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法で使用するためのアテゾリズマブを含む組成物であって、ここで、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与され、そして該シスプラチンは75mg/m2の用量で投与され、ここで、該治療は、該個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に開示される方法に従って使用するためのものである。
【0028】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は、当業者に明らかであろう。本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、実施例1に記載された臨床試験の試験デザインの概略図を提供する。578人の患者を登録した。グループAには292人の患者が含まれ、グループBには286人の患者が含まれた。グループAの患者は疾患の進行(progressive disease:PD)又は臨床的有用性喪失まで治療を受け、グループBの患者はPDまで治療を受けた。
【0030】
【
図2】
図2は、グループA(アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)対グループB(ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)における、患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン・マイヤー・プロットを提供する。
【0031】
【
図3】
図3は、グループA(アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)対グループB(ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)における、患者の全生存期間(OS)のカプラン・マイヤー・プロットを提供する。
【0032】
【
図4】
図4は、グループA対グループBにおける、患者で確認された全奏効率(overall response rate:ORR)の比較を提供する。(CR=完全奏効;CR/PR=完全奏効/部分奏効;SD=安定している疾患;PD=疾患の進行。)ORRをRECIST第1.1版基準に従って評価した。
【0033】
【
図5A】
図5Aは、グループA(APP)対グループB(PP)における、種々のベースライン危険因子を有する患者のPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。(APP=アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン;PP=ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン。)
【0034】
【
図5B】
図5Bは、グループA(APP)対グループB(PP)における、種々のベースライン危険因子を有する患者のPFSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。(APP=アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン;PP=ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン。)
【0035】
【
図6】
図6は、グループA(APP)対グループB(PP)における、種々のベースライン危険因子を有する患者のOSのサブグループ分析を示すフォレストプロットを提供する。(APP=アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン;PP=ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン。)
【0036】
【
図7A】
図7Aは、グループA(アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)対グループB(ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)における、「高PD-L1」患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン・マイヤー・プロットを提供する。
【0037】
【
図7B】
図7Bは、グループA(アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)対グループB(ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)における、「低PD-L1」患者の無増悪生存期間(PFS)のカプラン・マイヤー・プロットを提供する。
【0038】
【
図7C】
図7Cは、グループA(アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)対グループB(ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)における、「PD-L1陰性」患者の無増悪生存期間(PFS)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物又は生物学的系に限定されず、それらが言うまでもなく多種多様であることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組合せを任意に含むといった具合である。
【0041】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0042】
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0043】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD-1軸結合パートナとその結合パートナのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)復元又は増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。
【0044】
用語「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1とその結合パートナのうちの1つ以上、例えば、PD-L1、PD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、並びにPD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。PD-1結合アンタゴニストの具体的な例を以下に提示する。
【0045】
用語「PD-L1結合アンタゴニスト」とは、PD-L1とその結合パートナのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナへの結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1とその結合パートナのうちの1つ以上、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。PD-L1結合アンタゴニストの具体的な例を以下に提示する。
【0046】
用語「PD-L2結合アンタゴニスト」とは、PD-L2とその結合パートナのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2アンタゴニストは、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0047】
「持続的応答」とは、治療の中止後の腫瘍成長の低減への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、又はより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、又は3.0倍の期間を有する。
【0048】
用語「薬学的製剤」とは、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な更なる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は滅菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「治療」とは、臨床病理の過程の間に治療される個体又は細胞の自然な経過を変えるように設計された、臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復又は緩和、及び予後の寛解又は改善が挙げられる。例えば、個体は、がん細胞の増殖の低減(若しくは破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、及び/又は個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の症状が軽減又は排除された場合、「治療」に成功する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「疾患の進行を遅延させる」とは、疾患(がん等)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/又は延ばすことを意味する。この遅延は、病歴及び/又は治療される個体に応じて様々な期間のものであり得る。当業者に明らかであるように、充分又は著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症等の末期がんを遅延させることができる。
【0051】
「有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善又は予防の達成に必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用又は有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益な又は所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は挙動的症状、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除又は低減、疾患の重症度の軽減、又は疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果としては、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長等の臨床結果が挙げられる。がん又は腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/又は障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は1回以上の投与で投与され得る。本発明では、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的治療又は治療的治療を直接又は間接的に達成するのに充分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療薬の投与との関連で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、又は達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「組み合わせて」とは、別の治療法に加えて1つの治療法を施行することを指す。したがって、「組み合わせて」とは、個体への1つの治療法の施行前、施行中、又は施行後の別の治療法の施行を指す。
【0053】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害又は疾患を含むが、これらに限定されない、治療から恩恵を受けることになる任意の状態である。
【0054】
用語「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」とは、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0055】
「腫瘍」とは、本明細書で使用される場合、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん細胞及び組織を指す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」とは、本明細書で言及されるとき、相互排他的ではない。
【0056】
用語「がん」及び「がん性」とは、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、又は説明する。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮扁平上皮がん)、肺がん、例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん及び肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)、例えば、胃腸がん及び胃腸間質がん、膵臓がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、尿路がん、肝がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma:NHL)、小リンパ球性(small lymphocytic:SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症等)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)、急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(post-transplant lymphoproliferative disorder:PTLD)、並びに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するもの等)、メーグス症候群、脳がん、並びに頭頸部がん、及び関連転移が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明の抗体での治療に適するがんとしては、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、非小細胞肺がん、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイドがん、頭頸部がん、卵巣がん、中皮腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、小細胞肺がん、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳がん、胃がん、結腸直腸がん(colorectal cancer:CRC)、及び肝細胞がんから選択される。
【0057】
用語「細胞毒性薬」とは、本明細書で使用される場合、(例えば、細胞死を引き起こすか、増殖を阻害するか、又はさもなければ細胞機能を妨害する)細胞に有害な任意の薬剤を指す。細胞毒性薬には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤;増殖阻害剤;核酸分解酵素等の酵素及びそれらの断片;並びに細菌、真菌、植物、又は動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素(それらの断片及び/又はバリアントを含む)等の毒素が含まれるが、これらに限定されない。例示的な細胞毒性薬は、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法薬、アポトーシス促進剤、LDH-A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、並びにがん代謝阻害剤から選択され得る。一実施形態では、細胞毒性薬は、タキサンである。一実施形態では、タキサンは、パクリタキセル又はドセタキセルである。一実施形態では、細胞毒性薬は、プラチナ製剤である。一実施形態では、細胞毒性薬は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態では、EGFRのアンタゴニストは、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ)である。一実施形態では、細胞毒性薬は、RAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、BRAF及び/又はCRAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、細胞毒性薬は、PI3K阻害剤である。
【0058】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化合物を含む。化学療法剤の例として、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(sunitib)(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)、シクロホスファミド;スルホン酸アルキル類、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレートアミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチロメラミンを含む、エチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン類(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトセシン(トポテカン及びイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;5α-レダクターゼ(フィナステリド及びデュタステリドを含む);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、ドラスタチン;アルデスロイキン、タルク、デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189、及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(「Angew Chem.Intl.Ed.Engl.」(1994年)第33巻第183~186頁);ジネマイシンAを含むジネマイシン;ビスホスホナート類、例えばクロドロナート;エスペラマイシン;並びに、ネオカルジノスタチン・クロモホア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモホア類)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾール-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝産物、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン類、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド類、例えばメイタンシン及びアンサミトシン類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特に、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara-C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えば、TAXOL(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology、ニュージャージー州プリンストン)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォール無含有)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子調製物(American Pharmaceutical Partners、イリノイ州シャンバーグ)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル;Sanofi-Aventis);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロナート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;並びに、上記のうちいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が挙げられる。
【0059】
化学療法剤としてはまた、(i)例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミフェン)を含む、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モ調節薬(SERM)などの腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する、抗ホルモン剤;と、(ii)例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン、Pfizer)、フォルメスタニ(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール、Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca)といった、副腎におけるエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害する、アロマターゼ阻害剤;と、(iii)例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン(tripterelin)、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全てのトランスレチオニン酸(transretionic acid)、フェンレチニド、並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)などの、抗アンドロゲン剤;と、(iv)タンパク質キナーゼ阻害剤;と、(v)脂質キナーゼ阻害剤;と、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばPKC-α、Ralf、及びH-Rasといった、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;と、(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤といった、リボザイム;と、(viii)例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;トポイソメラーゼ1阻害剤、例えばLURTOTECAN(登録商標);ABARELIX(登録商標)rmRHといった、遺伝子療法ワクチンなどのワクチン;と、(ix)上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体と、が挙げられる。
【0060】
化学療法剤としては、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体-薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組換え完全長IgG1λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0061】
化学療法剤には、EGFRに結合するか、又はさもなければそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止又は低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、「EGFRアンタゴニスト」とも称される。かかる薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL8508)、MAb528(ATCC CRL8509)(米国特許第4,943,533号(Mendelsohnら)を参照)、及びそのバリアント、例えばキメラ化225(C225又はCetuximab;ERBUTIX(登録商標))及び再形成ヒト225(H225)(国際公開第WO96/40210号(Imclone Systems Inc.)を参照);IMC-11F8、完全ヒト、EGFR標的抗体(Imclone);II型変異EGFR(米国特許第5,212,290号)を結合する抗体;米国特許第5,891,996号に記載の通りにEGFRを結合するヒト化及びキメラ抗体;並びに、EGFRを結合するヒト抗体、例えばABX-EGF又はパニツムマブ(国際公開第WO98/50433号(Abgenix/Amgen)を参照);EMD55900(Stragliottoら、「Eur.J.Cancer」第32A巻第636~640頁(1996年));EMD7200(マツズマブ)、EGFR結合についてEGF及びTGF-αの両方と競合するEGFRに対するヒト化EGFR抗体(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3として知られ、米国特許第US6,235,883号に記載される完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);並びに、mAb806又はヒト化mAb806(Johnsら、「J.Biol.Chem.」第279巻第29号第30375~30384頁(2004年))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性薬にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、欧州特許出願公開第EP659439A2号、Merck Patent GmbHを参照)。EGFRアンタゴニストとしては、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、並びに以下のPCT公報、WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載の化合物等の小分子を含む。特定の小分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271、Pfizer);二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016又はN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
【0062】
化学療法剤としてはまた、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(Pfizer及びOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);又は以下の特許公報:米国特許第5,804,396号;国際公開第WO1999/09016号(American Cyanamid);同第WO1998/43960号(American Cyanamid);同第WO1997/38983号(Warner Lambert);同第WO1999/06378号(Warner Lambert);同第WO1999/06396号(Warner Lambert);同第WO1996/30347号(Pfizer,Inc);同第WO1996/33978号(Zeneca);同第WO1996/3397号(Zeneca)、及び同第WO1996/33980号(Zeneca)が挙げられる。
【0063】
化学療法剤としては、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、並びにそれらの薬学的に許容される塩も挙げられる。
【0064】
化学療法剤としては、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバリン酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、プロピオン酸アクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾン-17-プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン及び酢酸フルプレドニデン;免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAIDs)、例えばフェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)及びそのD体形態(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);抗リウマチ薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノシクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断剤、例えばエタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セトリズマブペゴール(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)、インターロイキン1(IL-1)遮断剤、例えばアナキンラ(Kineret)、T細胞共刺激遮断剤、例えばアバタセプト(Orencia)、インターロイキン6(IL-6)遮断剤、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断剤、例えばレブリキズマブ;インターフェロンアルファ(IFN)遮断剤、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断剤、例えばrhuMAb Beta7;IgE経路遮断剤、例えば抗M1プライム;分泌ホモ三量体LTa3及び膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断剤、例えば抗リンホトキシンアルファ(LTa);放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びの放射性同位元素);種々の調査剤、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH3、又はファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルチシン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));並びに上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;チピファニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピクサントロン;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;並びに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体;並びに、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法の略称)などの2剤以上の併用療法;及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンをオキサリプラチン(ELOXATINTM)と組み合わせる治療レジメンの略称)といった、上記のうち2つ以上の組合せが挙げられる。
【0065】
化学療法剤としてはまた、鎮痛効果、解熱効果、及び抗炎症効果を有する非ステロイド抗炎症薬が挙げられ得る。NSAIDとしては、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤を含む。NSAIDの具体的な例としては、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、及びナプロキセン、酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸誘導体、例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、及びイソキシカム、フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、並びにCOX-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられる。NSAIDの適応は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛及び片頭痛、術後疼痛、炎症及び組織損傷に起因する軽度~中程度の疼痛、発熱、腸閉塞症、並びに腎疝痛等の状態の症状軽減であり得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「増殖阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指す。一実施形態では、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防又は低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、増殖阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく減少させるものであり得る。増殖阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断薬としては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが挙げられる。G1期を停止させる薬物、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤はまた、S期停止にも波及する。更なる情報は、Mendelsohn及びIsrael編、「The Molecular Basis of Cancer」第1章、タイトル「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」、村上ら(W.B.Saunders、Philadelphia(1995年))中、例えば第13頁で確認することができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗がん薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体由来の微小管の構築を促進し、脱重合を阻止することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
【0067】
「放射線療法」とは、正常に機能するか、又は細胞を完全に破壊する能力を制限するように細胞に充分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線又はベータ線の使用を意味する。多くの投与量及び治療期間を決定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な投与量は、1日10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0068】
治療目的のための「対象」又は「個体」とは、哺乳動物、例えば、ヒト、飼育動物及び家畜、並びに動物園、競技用、又は愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0069】
本明細書における用語「抗体」とは、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。
【0070】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から特定及び分離され、かつ/又は回収された抗体である。その自然環境の汚染物質成分は、抗体の試験的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超の抗体になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに充分な程度まで、又は(3)例えば、クマシーブルー又はシルバー染色を使用して、還元又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0071】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し;その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0072】
用語「定常ドメイン」とは、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、並びに軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含有する。
【0073】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖可変ドメインは「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0074】
用語「可変」とは、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(hypervariable region:HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(framework region:FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Immunological Interest」第5版、National Institute of Health(メリーランド州ベセスダ、1991年)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクタ機能を呈する。
【0075】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0076】
IgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0077】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へと更に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知であり、概して、例えば、Abbasら、「Cellular and Mol.Immunology」第4版(W.B.Saunders,Co.(2000年)に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0078】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」とは、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0079】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞毒性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0080】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0081】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、かつ依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片がもたらされる。
【0082】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。まとめると、6つのHVRは抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0083】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されているという点でFab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における指名である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0084】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に所望の構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」第113巻、Rosenburg及びMoore編(Springer-Verlag、ニューヨーク(1994年))第269~315頁を参照されたい。
【0085】
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第WO1993/01161号;Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年);及びHollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻6444~6448頁(1993年)でより詳細に記述されている。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年)においても説明されている。
【0086】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して向かう異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向かう。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていないという点で有利である。
【0087】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler及びMilstein、「Nature」第256巻第495~97頁(1975年);Hongoら、「Hybridoma」第14巻第3号253~260頁(1995年)、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」第563~681頁(Elsevier、ニューヨーク、1981年))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ法(例えば、Clacksonら、「Nature」第352巻第624~628頁(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhuら「J.Mol.Biol.」第338巻第2号第299~310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」第340巻第5号1073~1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第101巻第34号第12467~12472頁(2004年);及び、Leeら、「J.Immunol.Methods」第284巻第1~2号第119~132頁(2004年)参照)、並びに、ヒト抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部若しくは全部を有する動物におけるヒト様抗体を産生する技術(例えば、国際公開第WO1998/24893号;同第WO1996/34096号;同第WO1996/33735号;同第WO1991/10741号;Jakobovitsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第2551頁(1993年);Jakobovitsら、「Nature」第362巻第255~258頁(1993年);Bruggemannら、「Year in Immunol.」第7巻第33頁(1993年);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号;Marksら、「Bio/Technology」第10巻第779~783頁(1992年);Lonbergら、「Nature」第368巻第856~859頁(1994年);Morrison、「Nature」第368巻第812~813頁(1994年);Fishwildら、「Nature Biotechnol.」第14巻第845~851頁(1996年);Neuberger、「Nature Biotechnol.」第14巻第826頁(1996年);並びにLonberg及びHuszar、「Intern.Rev.Immunol.」第13巻第65~93頁(1995年)参照)を含む、様々な技術によって作製され得る。
【0088】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、所望の生物活性を呈する限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は同種である「キメラ」抗体、並びにかかる抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851~6855頁(1984年)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0089】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾を加えて、抗体の性能を更に洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、Jonesら、「Nature」第321巻第522~525頁(1986年);Riechmannら、「Nature」第332巻第323~329頁(1988年);及びPresta、「Curr.Op.Struct.Biol.」第2巻第593~596頁(1992年)を参照されたい。また、例えば、Vaswani及びHamilton、「Ann.Allergy,Asthma&Immunol.」第1巻第105~115頁(1998年);Harris、「Biochem.Soc.Transactions」第23巻第1035~1038頁(1995年);Hurle及びGross、「Curr.Op.Biotech.」第5巻第428~433頁(1994年);及び米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0090】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、かつ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、詳細には非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ等の当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581頁(1991年)。Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R.Liss、第77頁(1985年);Boernerら、「J.Immunol.」第147巻第1号86~95頁(1991年)に記載されている方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk及びvan de Winkel、「Curr Opin Pharmacol.」第5巻第368~74頁(2001年)もまた参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体についても、Liら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第103巻第3557~3562頁(2006年)を参照されたい。
【0091】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0092】
用語「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」とは、本明細書で使用される場合、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xuら、「Immunity」第13巻第37~45頁(2000年)、Johnson及びWu、「Methods in Molecular Biology」第248巻第1~25頁(Lo編、Human Press、ニュージャージー州トトワ(2003年))を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、「Nature」第363巻第446~448頁(1993年);Sheriffら、「Nature Struct.Biol.」第3巻第733~736頁(1996年)を参照のこと。
【0093】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、リーランド州ベセスダ(1991年))。Chothiaは、そうではなく、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk、「J.Mol.Biol.」第196巻第901~917頁(1987年))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0094】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)、及び89-97又は89-96(L3)、並びにVHにおいて、26-35(H1)、50-65又は49-65(H2)、及び93-102、94-102、又は95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0095】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)、及び89-97又は89-96(L3)、並びにVHにおいて、26-35(H1)、50-65又は49-65(H2)、及び93-102、94-102、又は95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0096】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0097】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0098】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabatら、「Sequences of Immunological Interest.」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年))。「EU番号付けシステム」又は「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0099】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapataら((1995年)「Protein Eng.」第8巻第10号第1057~1062頁)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0100】
本明細書で使用されるとき、用語「結合する」、「に特異的に結合する」、又は「に特異的な」とは、生物学的分子等の異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、又はそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/又はより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0101】
用語「試料」とは、本明細書で使用される場合、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/又は生理学的特性に基づいて、特徴付けかつ/又は特定される細胞及び/又は他の分子の実体を含有する、目的とする対象及び/又は個体から得られるか、又はそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変化形は、特性評価される細胞及び/又は分子実体を含有することが予期されるか、又は含有することが既知である、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料としては、初代又は培養細胞又は細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物(均質化組織など)、腫瘍組織、細胞抽出物、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
「組織試料」又は「細胞試料」とは、対象又は個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織又は細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結した、及び/又は保存された器官、組織試料、生検、及び/又は吸引液からなどの固形組織;血漿などの血液又は任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、又は間質液などの体液;対象の妊娠又は発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織試料はまた、初代又は培養細胞又は細胞株であってもよい。任意で、組織又は細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、又は抗生物質などの天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
【0103】
「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、又は「対照組織」とは、本明細書で使用される場合、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、又はレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、同じ対象又は個体の身体の健常な及び/又は罹患していない部分(例えば、組織又は細胞)から得られる。例えば、罹患細胞又は組織に隣接する健常及び/又は非罹患の細胞又は組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞又は組織)。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象又は個体の身体の治療されていない組織及び/又は細胞から得られる。更に別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、対象又は個体ではない個体の身体の健常な及び/又は罹患していない部分(例えば、組織又は細胞)から得られる。また別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、対象又は個体ではない個体の身体の治療されていない組織及び/又は細胞から得られる。
【0104】
医薬品での治療に対する患者の「有効な応答」又は患者の「応答性」及び類似の単語は、がんなどの疾患若しくは障害の危険性があるか、又はそれに罹患している患者に付与される臨床的又は治療的有益性を指す。一実施形態では、そのような利益としては、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効若しくは部分奏効を含む)をもたらすこと、又はがんの徴候若しくは症状を改善することのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0105】
治療に「有効な応答を示さない」患者とは、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)が延長すること、客観的応答(完全応答若しくは部分的応答を含む)がもたらされること、又はがんの兆候又は症状が改善されることのうちのいずれも有しない患者を指す。
【0106】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクタ機能」を有する。例示的な「エフェクタ機能」としては、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーション等が挙げられる。そのようなエフェクタ機能は、概して、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされる必要があり、例えば、本明細書の定義で開示されるような種々のアッセイを用いて評価することができる。
【0107】
「ヒトエフェクタ細胞」とは、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクタ機能を行う白血球を指す。ある特定の実施形態では、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクタ機能(複数可)を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)、ナチュラルキラー(natural killer:NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が挙げられる。エフェクタ細胞は、天然源、例えば、血液から単離され得る。
【0108】
「ヒトエフェクタ細胞を有する」がん又は生物学的試料とは、診断試験において、試料中に存在するヒトエフェクタ細胞(例えば、浸潤ヒトエフェクタ細胞)を有するものである。
【0109】
「FcR発現細胞を有する」がん又は生物学的試料とは、診断試験において、試料中に存在するFcR発現(例えば、浸潤FcR発現細胞)を有するものである。いくつかの実施形態では、FcRは、FcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性化FcγRである。
【0110】
II.概要
本明細書は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)、及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)を個体に投与することを含む、個体における肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がんなど)を治療又は進行遅延させるための方法を提供する。本明細書はまた、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)、及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)を個体に投与することを含む、肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がんなど)を有する個体における免疫機能を向上させる方法も提供する。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)の投与を含む治療と比較して、個体の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)を延長する。
【0111】
いくつかの実施形態では、本方法は、アテゾリズマブをペメトレキセド及びカルボプラチンとを組み合わせて個体に投与することによって、ステージIVの肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮NSCLCを有する個体を治療することを含み、ここで、該投与は誘導期及び維持期を含み、該誘導期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、カルボプラチンをサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含み、該維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル4後に全サイクルについて各21日巻サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含み、該個体は未治療であり、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有し、そして該投与は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本方法は、アテゾリズマブをペメトレキセド及びシスプラチンとを組み合わせて個体に投与することによって、ステージIVの肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮NSCLCを有する個体を治療することを含み、ここで、該投与は誘導期及び維持期を含み、該誘導期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、シスプラチンをサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含み、該維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル4後に全サイクルについて各21日巻サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含み、該個体は未治療であり、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有し、そして該投与は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法は、アテゾリズマブをペメトレキセド及びカルボプラチンとを組み合わせて個体に投与することによって、ステージIVの肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮NSCLCを有する個体を治療することを含み、ここで、該投与は誘導期及び維持期を含み、該誘導期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、カルボプラチンをサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目にAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含み、該維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル6後に全サイクルについて各21日巻サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含み、該個体は未治療であり、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有し、そして該投与は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。
【0114】
いくつかの実施形態では、本方法は、アテゾリズマブをペメトレキセド及びシスプラチンとを組み合わせて個体に投与することによって、ステージIVの非小細胞肺がん(NSCLC)、例えばステージIVの非扁平上皮NSCLCを有する個体を治療することを含み、ここで、該投与は誘導期及び維持期を含み、該誘導期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、シスプラチンをサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含み、該維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル6後に全サイクルについて各21日巻サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含み、該個体は未治療であり、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有し、そして該投与は、個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。
【0115】
III.PD-1軸結合アンタゴニスト
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストとしては、PD-1結合アンタゴニスト、PDL1結合アンタゴニスト、及びPDL2結合アンタゴニストが挙げられる。「PD-1」の代替名としては、CD279及びSLEB2が挙げられる。「PDL1」の代替名としては、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hが挙げられる。「PDL2」の代替名としては、B7-DC、Btdc、及びCD273が挙げられる。いくつかの実施形態では、PD-1、PDL1、及びPDL2は、ヒトPD-1、PDL1、及びPDL2である。
【0116】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナ(複数可)への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PD-1のリガンド結合パートナは、PDL1及び/又はPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナ(複数可)への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PDL1の結合パートナ(複数可)は、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナ(複数可)への結合を阻害する分子である。具体的な一態様では、PDL2の結合パートナは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドであり得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号946414-94-4)である。ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb/Ono)、別名、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)は、国際公開第WO2006/121168号に記載の抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWY DGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号11)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRAT GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号11及び配列番号12からの6つのHVR配列(例えば、配列番号11からの3つの重鎖HVR及び配列番号12からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号11からの重鎖可変ドメイン及び配列番号12からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(CAS登録番号1374853-91-4)である。ペムブロリズマブ(Merck)、別名、MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475は、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQAPGQGLEWMGG INPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTAYMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYW GQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGV HTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCP APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTK PREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAK GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENN YKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号13)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:
EIVLTQSPAT LSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRLLIYLASYLES GVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVF IFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQ DSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号14)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号13及び配列番号14からの6つのHVR配列(例えば、配列番号13からの3つの重鎖HVR及び配列番号14からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号13からの重鎖可変ドメイン及び配列番号14からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MEDI-0680(AMP-514;AstraZeneca)である。MEDI-0680はヒト化IgG4抗PD-1抗体である。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、PDR001(CAS登録番号1859072-53-9;Novartis)である。PDR001は、PD-1へのPDL1及びPDL2の結合をブロックする、ヒト化IgG4抗PD1抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、REGN2810(Regeneron)である。REGN2810はヒト抗PD1抗体である。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、BGB-108(BeiGene)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、BGB-A317(BeiGene)である。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、JS-001(Shanghai Junshi)である。JS-001はヒト化抗PD1抗体である。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、STI-A1110(Sorrento)である。STI-A1110はヒト抗PD1抗体である。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、INCSHR-1210(Incyte)である。INCSHR-1210はヒトIgG4抗PD1抗体である。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、PF-06801591(Pfizer)である。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011;Tesaro/AnaptysBioとしても知られる)である。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、AM0001(ARMO Biosciences)である。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ENUM244C8(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM244C8は、PDL1のPD-1への結合をブロックすることなくPD-1機能を阻害する、抗PD1抗体である。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ENUM388D4(Enumeral Biomedical Holdings)である。ENUM388D4は、PDL1のPD-1への結合を競合的に阻害する、抗PD1抗体である。
【0134】
いくつかの実施形態では、PD-1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)、並びに/又は国際公開第WO2015/112800号(出願者:Regeneron)、同第WO2015/112805号(出願者:Regeneron)、同第WO2015/112900号(出願者:Novartis)、米国特許出願公開第US20150210769号(Novartisへ譲渡)、国際公開第WO2016/089873号(出願者:Celgene)、同第WO2015/035606号(出願者:Beigene)、同第WO2015/085847号(出願者:Shanghai Hengrui Pharmaceutical/Jiangsu Hengrui Medicine)、同第WO2014/206107号(出願者:Shanghai Junshi Biosciences/Junmeng Biosciences)、同第WO2012/145493号(出願者:Amplimmune)、米国特許第US9205148号(MedImmuneへ譲渡)、国際公開第WO2015/119930号(出願者:Pfizer/Merck)、同第WO2015/119923号(出願者:Pfizer/Merck)、同第WO2016/032927号(出願者:Pfizer/Merck)、同第WO2014/179664号(出願者:AnaptysBio)、同第WO2016/106160号(出願者:Enumeral)、及び同第WO2014/194302号(出願者:Sorrento)に記載されるPD-1抗体からの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域に融合したPDL1又はPDL2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。AMP-224(CAS登録番号1422184-00-6;GlaxoSmithKline/MedImmune)、別名、B7-DCIgは、国際公開第WO2010/027827号及び同第WO2011/066342号に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0136】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、ペプチド又は小分子化合物である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AUNP-12(PierreFabre/Aurigene)である。例えば、国際公開第WO2012/168944号、同第WO2015/036927号、同第WO2015/044900号、同第WO2015/033303号、同第WO2013/144704号、同第WO2013/132317号、及び同第WO2011/161699号を参照のこと。
【0137】
いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PD-1を阻害する小分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1を阻害する小分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1及びVISTAを阻害する小分子である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、CA-170(AUPM-170としても知られる)である。いくつかの実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1及びTIM3を阻害する小分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、国際公開第WO2015/033301号及び同第WO2015/033299号に記載されている化合物である。
【0138】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PDL1抗体である。本明細書では、様々な抗PDL1抗体が企図され、記載されている。本明細書における実施形態のうちのいずれかでは、単離された抗PDL1抗体は、ヒトPDL1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPDL1、又はそのバリアントに結合することができる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、PDL1とPD-1との間の結合及び/又はPDL1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、ヒト抗体である。本発明の方法に有用な抗PDL1抗体の例、及びそれらの作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634A1号及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域は、GFTFSDSWIH(配列番号1)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号2)、及びRHWPGGFDY(配列番号3)の、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列をそれぞれ含み、そして、
(b)軽鎖可変領域は、RASQDVSTAVA(配列番号4)、SASFLYS(配列番号5)、及びQQYLYHPAT(配列番号6)の、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列をそれぞれ含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体はMPDL3280Aであり、アテゾリズマブ及びTECENTRIQ(登録商標)(CAS登録番号1422185-06-5)としても知られる。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)を含み、かつ
(b)該軽鎖可変領域配列は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号8)を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号9)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、アベルマブ(CAS登録番号1537032-82-8)である。MSB0010718Cとしても知られるアベルマブは、ヒトモノクローナルIgG1抗PDL1抗体(Merck KGaA、Pfizer)である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQAPGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号15)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号16)を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号15及び配列番号16からの6つのHVR配列(例えば、配列番号15からの3つの重鎖HVR及び配列番号16からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号15からの重鎖可変ドメイン及び配列番号16からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、デュルバルマブ(CAS登録番号1428935-60-7)である。MEDI4736としても知られるデュルバルマブは、国際公開第WO2011/066389号及び米国特許出願公開第US2013/034559号に記載されている、Fc最適化ヒトモノクローナルIgG1カッパ抗PDL1抗体(MedImmune、AstraZeneca)である。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVRQAPGKGLEWVANIKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGWFGELAFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号17)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号17及び配列番号18からの6つのHVR配列(例えば、配列番号17からの3つの重鎖HVR及び配列番号18からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、配列番号17からの重鎖可変ドメイン及び配列番号18からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、MDX-1105(Bristol Myers Squibb)である。MDX-1105、別名、BMS-936559は、WO2007/005874に記載の抗PDL1抗体である。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、LY3300054(Eli Lilly)である。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、STI-A1014(Sorrento)である。STI-A1014はヒト抗PDL1抗体である。
【0149】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、KN035(Suzhou Alphamab)である。KN035は、ラクダ・ファージ・ディスプレイ・ライブラリから生成された単一ドメイン抗体(dAB)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、切断可能な部分又はリンカを含み、これは、切断された場合(例えば、腫瘍微小環境におけるプロテアーゼによって)、抗体抗原結合ドメインを活性化して、例えば非結合立体部分を除去することによって、その抗原に結合できるようにする。いくつかの実施形態では、抗PDL1抗体は、CX-072(CytomX Therapeutics)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、PDL1抗体は、6つのHVR配列(例えば、3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR)、並びに/又は米国特許出願公開第US20160108123号(Novartisへ譲渡)、国際公開第WO2016/000619号(出願者:Beigene)、同第WO2012/145493号(出願者:Amplimmune)、米国特許第US9205148号(MedImmuneへ譲渡)、国際公開第WO2013/181634号(出願者:Sorrento)、及び同第WO2016/061142号(出願者:Novartis)に記載されたPDL1抗体からの重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0152】
なお更に具体的な一態様では、本抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。なお更に具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。
【0153】
なお更に具体的な一態様では、本抗体は、低減された又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更に具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」又はアグリコシル化変異に起因する。なお更なる一実施形態では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。いくつかの実施形態では、単離された抗PDL1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、又はトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0154】
なお更なる一実施形態では、本開示は、上述の抗PDL1抗体のうちのいずれかと少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを組み合わせて含む組成物を提供する。
【0155】
なお更なる一実施形態では、本開示は、本明細書に提供される抗PDL1、抗PD-1、若しくは抗PDL2抗体、又はその抗原結合断片と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、個体に投与される抗PDL1、抗PD-1、若しくは抗PDL2抗体、又はその抗原結合断片は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物である。本明細書に記載の又は当該技術分野で既知の薬学的に許容される担体のうちのいずれかが使用され得る。
【0156】
IV.代謝拮抗剤及びプラチナ製剤
代謝拮抗剤
代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、及びメトトレキサートなど)は、DNA合成に必要な1つ以上の酵素を妨害する、広範に使用されている抗腫瘍薬である。代謝拮抗剤は、典型的には、例えば核酸への取込みによるアポトーシスの誘発、又は例えばヌクレオチド合成に関与する酵素の結合部位に対する競合を含む、種々の機構によって作用し、それによって、DNA及び/又はRNA複製並びに細胞増殖に必要な供給を枯渇させる。
【0157】
ペメトレキセドは、本明細書に記載の方法で使用される例示的な代謝拮抗剤である。ペメトレキセドは葉酸類似体である。原薬であるペメトレキセド二ナトリウム七水和物は、化学名L-グルタミン酸,N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5イル)エチル]ベンゾイル]-、二ナトリウム塩、C20H19N5Na2O6・7H2Oの分子式及び597.49の分子量の七水和物を有する。
【0158】
ペメトレキセド二ナトリウム七水和物は次の構造を有する:
【0159】
ペメトレキセドはチミン及びプリン合成に使用される複数の葉酸依存性酵素、すなわちチミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase:TS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase:DHFR)、及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(glycinamide ribonucleotide formyltransferase:GARFT)を阻害する(Shihら(1997年)「Cancer Res.」第57巻第1116~23頁を参照)。ペメトレキセドは、前駆体のプリン及びピリミジンヌクレオチドの形成を阻害することにより、正常細胞及びがん細胞の両方の増殖及び生存に必要であるDNA及びRNAの形成を防ぐ。ペメトレキセドは、ALIMTA(登録商標)、GIOPEM、PEXATE、PEMANAT、PEMEX、PEMMET、PEXATE、RELITREXED、及びTEMERAN、CIAMBRAなどとして市販されている。
【0160】
プラチナ製剤
プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びサトラプラチンなど)は、単一付加物、鎖間架橋、鎖内架橋、又はDNAタンパク質架橋としてDNAの架橋を引き起こす、広範に使用されている抗腫瘍薬である。プラチナ製剤は、典型的には、グアニンの隣接するN-7位置に作用し、1,2鎖内架橋を形成する(Poklarら(1996年)「Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.」第93巻第15号第7606~11頁;Ruddら(1995年)「Cancer Chemother.Pharmacol.」第35巻第4号323~6頁)。結果として生じる架橋は、がん細胞におけるDNA修復及び/又はDNA合成を阻害する。
【0161】
カルボプラチンは、本明細書に記載の方法で使用される例示的な白金配位化合物である。カルボプラチンの化学名は、白金,ジアミン[1,1-シクロブタンジカルボキシラト(2-)-O、O’]-、(SP-4-2)であり、カルボプラチンは次の構造式を有する:
【0162】
カルボプラチンは、C6H12N2O4Ptの分子式、及び371.25の分子量を有する結晶性粉末である。これはおよそ14mg/mLの速度で水に溶け、1%溶液のpHは5~7である。エタノール、アセトン、及びジメチルアセトアミドにはほとんど溶けない。カルボプラチンは主に鎖間DNA架橋を生成し、この効果は細胞周期に非特異的である。カルボプラチンは、PARAPLATIN(登録商標)、BIOCARN、BLASTOCARB、BLASTOPLATIN、CARBOKEM、CARBOMAX、CARBOPA、CARBOPLAN、CARBOTEEN、CARBOTINAL、CYTOCARB、DUCARB、KARPLAT、KEMOCARB、NAPROPLAT、NEOPLATIN、NISCARBO、ONCOCARBIN、TEVACARB、及びWOMASTINなどとして市販されている。
【0163】
シスプラチンは、本明細書に記載の方法で使用される別の例示的な白金配位化合物である。シスプラチンの化学名はジクロロ白金ジアンモニエート(dichloroplatinum diammoniate)であり、シスプラチンは次の構造式を有する:
【0164】
シスプラチンは、Pt(NH3)2Cl2の分子式、及び300.046の分子量を有する無機及び水溶性の白金錯体である。加水分解された後、これはDNAと反応して、鎖内架橋及び鎖間架橋の両方を形成する。これらの架橋はDNAの複製及び転写を阻害するようである。シスプラチンの細胞毒性は細胞周期のG2期における細胞停止と相関する。シスプラチンは、PLATINOL(登録商標)、PLATINOL(登録商標)-AQ、CDDP、CISPLAN、CISPLAT、PLATIKEM、PLATIONCO、PRACTICIS、PLATICIS、BLASTOLEM、CISMAX、CISPLAN、CISPLATINUM、CISTEEN、DUPLAT、KEMOPLAT、ONCOPLATIN-AQ、PLATINEX、PLATIN、及びTEVAPLATINなどとして市販されている。
【0165】
V.抗体調製
本明細書に記載の抗体は、抗体を生成するための当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節により詳細に記載される。
【0166】
抗体は、目的の抗原(例えば、ヒトPD-L1などのPD-L1)を対象とする。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
【0167】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0168】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的とする抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する(例えば、Chenら、「J.Mol.Biol.」、第293巻第865~881頁(1999年)を参照のこと)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)内で、100pM又は26pMの[125I]抗原を目的とするFabの連続希釈液と混合する。その後、目的とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを確実にすることができる。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0169】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基を遮断する。動態測定のため、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、およそ25μL/分の流量にて25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、会合センサグラム及び解離センサグラムを同時に適合することによって、単純1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chenら、「J.Mol.Biol.」、第293巻:第865~881頁(1999年)を参照されたい。上述の表面プラズモン共鳴アッセイによりオン速度が106M-1 s-1を超える場合、オン速度を、ストップフローを装備した分光測色計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光測色計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される抗原の増加した濃度の存在下でPBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光クエンチ技法を使用することによって決定することができる。
【0170】
(i)抗原調製
他の分子に任意でコンジュゲートされる可溶性抗原又はその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体などの膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)由来であり得るか、又は膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
【0171】
(ii)例示的な抗体ベースの方法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって、動物中で産生される。二官能性剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はR1N=C=NR(式中、R及びR1が異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤にコンジュゲートさせることが有用であり得る。
【0172】
例えば、100μg又は5μgのタンパク質又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギ又はマウスの場合)を、3体積のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、複数の部位で溶液を皮内注入することにより、動物は、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物を、複数の部位での皮下注入により、完全フロイントアジュバント中の最初の量の1/5~1/10のペプチド又はコンジュゲートで追加免疫する。7~14日後、動物を採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価が水平状態になるまで動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたもの及び/又は異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートを、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバン等の凝集剤も免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0173】
本開示のモノクローナル抗体は、Kohlerら、「Nature」第256巻第495頁(1975年)によって最初に記載され、例えば、Hongoら、「Hybridoma」第14巻第3号第253頁、-260(1995)、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbour Laboratory Press、第2版(1988年));Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」第563~681頁(Elsevier、ニューヨーク(1981年))、及びNi、「Xiandai Mianyixue」第26巻第4号第265~268頁(2006年)にヒト-ヒトハイブリドーマに関して更に記載されているハイブリドーマ法を使用して、作製することができる。更なる方法としては、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生について、例えば米国特許第7,189,826号記載される方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers及びBrandlein、「Histology and Histopathology」第20巻第3号第927~937頁(2005年)と、Vollmers及びBrandlein、「Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology」第27巻第3号第185~91頁(2005年)と、にも記載されている。
【0174】
様々な他のハイブリドーマ技法については、例えば、米国特許出願公開第US2006/258841号、同第US2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第US2006/059575号、同第US2005/287149号、同第US2005/100546号、同第US2005/026229号、並びに米国特許第7,078,492号及び同第7,153,507号も参照のこと。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルが以下に記載される。一実施形態では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、又はそれを産生することができるリンパ球を誘発するように免疫化される。抗体は、本開示のポリペプチド又はその断片、及びアジュバント、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)/ジクリノミコール酸トレハロース(TDM)(Ribi Immunochem Research,Inc.モンタナ州ハミルトン)の、複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物中で産生される。本開示のポリペプチド(例えば、抗原)又はその断片は、組換え方法等の当該技術分野で周知の方法を使用して調製することができ、これらのうちのいくつかは、本明細書に更に記載される。免疫化した動物由来の血清を抗抗原抗体についてアッセイし、追加免疫を任意に投与する。抗抗原抗体を産生する動物由来のリンパ球が単離される。代替として、リンパ球がインビトロで免疫化され得る。
【0175】
その後、リンパ球は、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」第59~103頁(Academic Press、1986年)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地等の培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。例示的な骨髄腫細胞としては、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、並びにAmerican Type Culture Collection(米国メリーランド州ロックビル)から入手可能なSP-2又はX63-Ag8-653細胞に由来のマウス骨髄腫株が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor、「J.Immunol.」第133巻第3001頁(1984年);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」第51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年))。
【0176】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含みむことになり、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。好ましくは、例えば、Evenら、「Trends in Biotechnology」第24巻第3号第105~108頁(2006年)に記載されるウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
【0177】
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドについては、Franek、「Trends in Monoclonal Antibody Research」第111~122頁(2005年)に記載されている。具体的には、標準の培養培地がある特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、又はタンパク質加水分解画分で富化され、アポトーシスが3~6つのアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって著しく抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモル濃度又はそれより高い濃度で存在する。
【0178】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、本開示の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定され得る。例えば、Munsonら、「Anal.Biochem.」第107巻第220頁(1980年)を参照のこと。
【0179】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る。例えば、上記のGodingを参照されたい。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM培地又はRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィ等によって、培養培地、腹水、又は血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からのタンパク質の単離の手順の1つが、米国特許出願公開第US2005/176122号及び米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスで離液性塩等の最小限の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスで少量の有機溶媒を使用することも含む。
【0180】
(iii)ライブラリ由来抗体
本開示の抗体は、コンビナトリアルライブラリを所望の活性(複数可)を有する抗体についてスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、実施例3に記載の方法等のファージディスプレイライブラリを生成し、かつ所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で既知である。更なる方法は、例えば、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」、第178巻:第1~37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2001年)で確認され、例えば、McCaffertyら、「Nature」、第348巻:第552~554頁;Clacksonら、「Nature」、第352巻:第624~628頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」、第222巻:第581~597頁(1992年);Marks and Bradbury、「Methods in Molecular Biology」、第248巻:第161~175頁(Lo編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2003年);Sidhuら、「J.Mol.Biol.」、第338巻、第2号:第299~310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」、第340巻、第5号:第1073~1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第101巻、第34号:第12467~12472頁(2004年);及びLeeら、「J.Immunol.Methods」、第284巻、第1~2号:第119~132頁(2004年)で更に説明されている。
【0181】
ある種のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に再結合され、次いでWinterら、「Ann.Rev.Immunol.」、第12巻:第433~455頁(1994年)に記載されているような、抗原結合ファージに対してスクリーニングすることが可能である。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片としてのいずれかで、抗体断片を呈する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を与える。あるいは、ナイーブレパートリーは、Griffithsら、「EMBO J」、第12巻:第725~734頁(1993年)によって記載されるように、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴うことなく、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する単一抗体源を提供することができる。最後に、天然ライブラリはまた、Hoogenboom及びWinter、「J.Mol.Biol.」、第227巻第381~388頁(1992年)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を遂行することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリを説明する特許公表物としては、例えば、以下のものが挙げられる:米国特許第5,750,373号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0182】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体断片と見なされる。
【0183】
(iv)キメラ、ヒト化、及びヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある種のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851~6855頁(1984年)に開示されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類に由来の可変領域)、及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のそれらから変更している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0184】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体をヒト化すると、ヒトに対する免疫原性は低下するが、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は維持される。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変ドメインを含み、FR(又はその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は所望により、ヒト定常領域の少なくとも一部もまた含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復するか、又は向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基に由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0185】
ヒト化抗体及びその作成方法は、例えば、Almagro及びFransson、「Front.Biosci.」第13巻第1619~1633頁(2008年)で確認され、更に例えば、Riechmannら、「Nature」第332巻第323~329頁(1988年);Queenら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」第86巻第10029~10033頁(1989年);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiriら、「Methods」第36巻第25~34頁(2005年)(SDR(a-CDR)グラフトに関する記述);Padlan、「Mol Immunol.」第28巻第489~498頁(1991年)(「表面再構成」の記述);Dall’Acquaら、「Methods」第36巻第43~60頁(2005年)(「FR再構成」の記述);並びにOsbournら、「Methods」第36巻第61~68頁(2005年)、及びKlimkaら、「Br.J.Cancer」第83巻第252~260頁(2000年)(FR構築のための「誘導選択」アプローチの記述)に詳しく記載されている。
【0186】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択したフレームワーク領域(例えば、Simsら、「J.Immunol.」第151巻第2296頁(1993年)を参照);重鎖又は軽鎖可変領域の特定の亜型のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第89巻第4285頁(1992年);及びPrestaら、「J.Immunol.」第151巻第2623頁(1993年)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson、「Front.Biosci.」第13巻第1619~1633頁(2008年)を参照);並びにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、「J.Biol.Chem.」第272巻第10678~10684頁(1997年)、及びRosokら、「J.Biol.Chem.」第271巻第22611~22618頁(1996年)を参照)。
【0187】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は通常、van Dijk及びvan de Winkel、「Curr.Opin.Pharmacol.」、第5巻:第368~74頁(2001年)及びLonberg、「Curr.Opin.Immunol.」、第20巻:第450~459頁(2008年)に記載されている。
【0188】
ヒト抗体は、免疫原を、インタクトなヒト抗体又は抗原性チャレンジに応答してヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。そのような動物は、典型的には、内在性免疫グロブリン遺伝子座を置き換える、又は染色体外に存在する、若しくは動物の染色体中に無作為に導入したヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は通常不活性である。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg、「Nat.Biotech.」第23巻第1117~1125頁(2005年)を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号;及び、VelociMouse(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に修飾され得る。
【0189】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が説明されている。(例えば、Kozbor、「J.Immunol.」、第133巻:第3001頁(1984年);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」、第51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年);及びBoernerら、「J.Immunol.」、第147巻:第86頁(1991年)を参照されたい。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Liら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第103巻第3557~3562頁(2006年)にも記載されている。更なる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、及びNi、「Xiandai Mianyixue」、第26巻第4号第265~268頁(2006年)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein、「Histology and Histopathology」、第20巻、第3号:第927~937頁(2005年)及びVollmers and Brandlein、「Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology」、第27巻、第3号:第185~91頁(2005年)にも記載されている。
【0190】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載されている。
【0191】
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段又は組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体断片の総説としては、Hudsonら(2003年)「Nat Med.」、第9巻:第129~134頁を参照のこと。
【0192】
抗体断片を産生するために様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimotoら、「Journal of Biochemical and Biophysical Methods」第24巻第107~117頁(1992年)、及びBrennanら、「Science」第229巻第81頁(1985年)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞から直接産生することができる。Fab、Fv、及びScFv抗体断片は全て、E.coliで発現され、E.coliから分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成し得る(Carterら、「Bio/Technology」第10巻第163~167頁(1992年))。別のアプローチに従って、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかである。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第WO93/16185号;米国特許第5,571,894号;及び同第5,587,458号を参照のこと。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、したがって、インビボでの使用中に非特異的結合を減少させるのに適している可能性がある。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれかでエフェクタタンパク質の融合をもたらすように構築することができる。前出の「Antibody Engineering」、Borrebaeck編を参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「直鎖抗体」であってもよい。かかる直鎖状抗体は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
【0193】
(vi)多特異性抗体
多特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子が通常2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合する一方で、三重特異性抗体等の更なる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製され得る(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)。
【0194】
二重特異性抗体の作製方法が、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millsteinら、「Nature」第305巻第537~539頁(1983年))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子を有する混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常親和性クロマトグラフィ工程によって行われるこの正しい分子の精製は、幾分厄介であり、生成物収率は低い。同様の手順が、国際公開第WO93/08829号、及びTrauneckerら、「EMBO J.」第10巻第3655~3659頁(1991年)に開示されている。
【0195】
当該技術分野で既知の二重特異性抗体を作製するための1つのアプローチは、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」又は「プロチュベランス・イントゥ・キャビティ(protuberance-into-cavity)」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)。このアプローチにおいて、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)が各々界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面が他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用し、それにより、2つの免疫グロブリンポリペプチドの会合を可能にする。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」又は「プロチュベランス」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)は、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」又は「キャビティ」(これらの用語は、本明細書で同義に使用され得る)に対応するように操作することができる。いくつかの実施形態では、ホールは、ノブと同一又は同様の大きさのものであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に位置付け可能であるように好適に位置付けられる。理論に拘束されることを望むことなく、これは、ヘテロ多量体を安定させ、かつ他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成を好むと考えられる。いくつかの実施形態では、このアプローチを使用して、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製することができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、ノブは、小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖で置き換えることによって構築され得る。いくつかの実施形態では、ホールは、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖で置き換えることによって構築され得る。ノブ又はホールは、元の界面に存在し得るか、又は合成的に導入され得る。例えば、ノブ又はホールは、界面をコードする核酸配列を改変させて、少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることによって合成的に導入され得る。核酸配列を改変させるための方法としては、当該技術分野で周知の標準の分子生物学技法が挙げられ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積は、以下の表1に示される。いくつかの実施形態では、元の残基は、小さい側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、又はバリン)を有し、ノブを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンを含み得る。いくつかの実施形態では、元の残基は、大きい側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)を有し、ホールを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、及びバリンを含み得る。
a アミノ酸の分子量は、水の分子量を差し引いたものである。値は「Handbook of Chemistry and Physics」第43版、Cleveland、Chemical Rubber Publishing Co.(1961年)より。
b 値は、A.A.Zamyatnin、「Prog.Biophys.Mol.Biol.」第24巻第107~123頁(1972年)より。
c 値は、C.Chothia、「J.Mol.Biol.」第105巻第1~14頁(1975年)より。アクセス可能な表面積は、この参考文献の
図6~
図20に定義されている。
【0197】
いくつかの実施形態では、ノブ又はホールを形成するための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づいて特定される。当該技術分野で既知の三次元構造を得るための技法としては、X線結晶学及びNMRが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態では、ヒトIgG
1のCH3/CH3界面は、4つの逆平行β鎖上に位置する各ドメイン上に16個の残基を含む。理論に拘束されることを望むことなく、変異残基は、好ましくは、ノブがパートナCH3ドメイン内の補償ホールではなく周囲の溶媒によって収容され得る危険性を最小限に抑えるように、これらの2つの中央逆平行β鎖上に位置する。いくつかの実施形態では、2つの免疫グロブリンポリペプチド内の対応するノブ及びホールを形成する変異は、以下の表2に提供される1つ以上の対に対応する。
* 変異は、元の残基、続いて、Kabat番号付けシステムを使用した位置、その後、移入残基で表示されている(残基は全て一文字のアミノ酸コードで示されている)。複数の変異は、コロンで区切られている。
【0198】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、表2の左側の欄に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右側の欄に列記される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0199】
上述のようにDNAを変異させた後、1つ以上の対応するノブ又はホール形成変異を有する修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の標準の組換え技法及び細胞系を使用して発現及び精製することができる。例えば、米国特許第5,731,168号;同第5,807,706号;同第5,821,333号;同第7,642,228号;同第7,695,936号;同第8,216,805号;米国特許出願公開第2013/0089553号;及びSpiessら、「Nature Biotechnology」第31巻第753~758頁(2013年)を参照のこと。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、E.coli等の原核宿主細胞又はCHO細胞等の真核宿主細胞を使用して産生することができる。対応するノブ及びホールを持つ免疫グロブリンポリペプチドは、共培養下で、宿主細胞で発現され、ヘテロ多量体として一緒に精製され得るか、又は単一培養下で発現され、別個に精製され、インビトロで構築され得る。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞の2つの株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)は、当該技術分野で既知の標準の細菌培養技法を使用して共培養される。いくつかの実施形態では、2つの株は、例えば、培養下で等しい発現レベルを達成するように、特定の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、2つの株は、50:50、60:40、又は70:30の比率で混合され得る。ポリペプチドが発現した後、これらの細胞が一緒に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする当該技術分野で既知の標準の技法としては、サイズ排除クロマトグラフィが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、標準の組換え技法を使用して別個に発現され、それらはインビトロで一緒に構築され得る。構築は、例えば、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で一緒に混合及びインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールで処理することにより)、濃縮し、かつポリペプチドを再酸化することによって達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィ等の標準の技法を使用して精製することができ、サイズ排除クロマトグラフィ等の標準の技法を使用して測定することができる。これらの方法の更なる詳細については、Speissら、「Nat Biotechnol」第31巻第753~8(2013年)を参照のこと。いくつかの実施形態では、修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、CHO細胞で別個に発現し、上述の方法を使用してインビトロで構築することができる。
【0200】
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。これらの融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが別個の発現ベクタに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これにより、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する際に優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらす場合に、又はそれらの比率が特に重要でない場合に、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクタに挿入することが可能である。
【0201】
このアプローチの一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から成る。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在により容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造が望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは国際公開第WO94/04690号に開示されている。二重特異性抗体の生成の更なる詳細については、例えば、Sureshら、「Methods in Enzymology」第121巻第210頁(1986年)を参照されたい。
【0202】
国際公開第WO96/27011号に記載の別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。1つの界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一又は同様の大きさの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)で置き換えることによって第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体等の他の望ましくない最終生成物と比べてヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
【0203】
二重特異性抗体には、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、望ましくない細胞を免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、かつHIV感染を治療するために(国際公開第WO91/00360号、同第WO92/200373号、及び欧州特許第EP03089号)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体は任意の便利な架橋方法を用いて作製してもよい。好適な架橋剤が当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0204】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も本文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennanら、「Science」第229巻第81頁(1985年)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されてF(ab’)2断片を生成する手技について記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在の存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。その後、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。その後、Fab’-TNB誘導体の一方がメルカプトエチルアミンでの還元によってFab’-チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0205】
近年の進歩により、化学的にカップリングして二重特異性抗体を形成することができるFab’-SH断片のE.coliからの直接回収が容易になった。Shalabyら、「J.Exp.Med.」第175巻第217~225頁(1992年)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生について記載している。各Fab’断片は、E.coliから別個に分泌され、インビトロでの指向性化学カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成する。
【0206】
二重特異性抗体断片を組換え細胞培養から直接作製及び単離するための様々な技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパを使用して二重特異性抗体が産生された。Kostelnyら、「J.Immunol.」第148巻第5号第1547~1553頁(1992年)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシン・ジッパ・ペプチドを遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444~6448頁(1993年)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。それらの断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、ある断片のVHドメイン及びVLドメインが別の断片の相補的VLドメイン及びVHドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体を使用することによって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。Gruberら、「J.Immunol」第152巻第5368頁(1994年)を参照されたい。
【0207】
2を超える結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuftら、「J.Immunol.」第147巻第60頁(1991年)。
【0208】
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
【0209】
(viii)抗体バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。本抗体のアミノ酸配列バリアントは、本抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入、及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
【0210】
(ix)置換、挿入、及び欠失バリアント
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による変異誘発に関して目的とする部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換を表3に示す。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される通りである。目的とする抗体中にアミノ酸置換を導入し、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0211】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされてもよい。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.影響する残基
鎖配向:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0212】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0213】
ある種類の置換型バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される、得られたバリアントは、親抗体と比較して、ある特定の生物学的性質における修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)を有し、及び/又は実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的性質を有することになる。例示的な置換バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用い、簡便に作成されてもよい。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0214】
改変(例えば、置換)は、HVR中で、例えば、抗体親和性を改善するために行われてもよい。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、「Methods Mol.Biol.」第207巻第179~196頁(2008年)を参照)、及び/又はSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られたバリアントVH又はVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」第178巻第1~37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ(2001年))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、このライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、具体的に特定されてもよい。特に、CDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的化される。
【0215】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変更(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中に作られてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」又はSDR外であり得る。上に提供されるバリアントVH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0216】
変異を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham及びWells(1989年)、「Science」第244巻:第1081~1085頁によって記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異生成」と呼ばれる。この方法では、一残基又は一群の標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかが決定される。更なる置換基が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、又は加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の性質を含有するかどうかを決定してもよい。
【0217】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基~100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲を融合するアミノ末端及び/又はカルボキシル末端、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、(例えば、ADEPTのために)抗体の血清半減期を増加させる酵素又はポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端の融合が挙げられる。
【0218】
(x)グリコシル化バリアント
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変化する。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0219】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、「TIBTECH」第15巻第26~32頁」(1997年)を参照のこと。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の特性が改善された抗体バリアントを作製するために、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0220】
一実施形態では、Fc領域を含む抗体バリアントが提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが減少しているか、又はフコースを欠き、これによりADCC機能が改善され得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞等の天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、又は5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であり得る。ある特定の実施形態では、本抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、本抗体は、フコースを全く有しないか、又はフコースを有しないか、又はアフコシル化されている。フコースの量は、例えば、国際公開第WO2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す。しかし、Asn297はまた、抗体におけるマイナーな配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流又は下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関する公報の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazakiら、「J.Mol.Biol.」、第336巻:第1239~1249頁(2004年);Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」、第87巻:第614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(Ripkaら、「Arch.Biochem.Biophys.」、第249巻第533~545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108A1号、Presta,L;及び国際公開第2004/056312A1号、Adamsら、特に実施例11において)、並びにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」、第87巻第614頁(2004年);Kanda,Y.ら、「Biotechnol.Bioeng.」、第94巻第4号第680~688頁(2006年);及び国際公開第2003/085107号を参照)が挙げられる。
【0221】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントが更に提供される。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第WO2003/011878号(Jean-Mairetら);米国特許第6,602,684号(Umanaら);米国特許出願公開第US2005/0123546号(Umanaら)、及びFerraraら、「Biotechnology and Bioengineering」第93巻第5号第851~861頁(2006年)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた提供する。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号(Patelら)、国際公開第WO1998/58964号(Raju,S.)、及び国際公開第WO1999/22764号(Raju,S.)に記載される。
【0222】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を有する抗体バリアントは、FcγRIIIに結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体バリアントは、ヒトエフェクタ細胞の存在下でADCC活性を有するか、又はヒトエフェクタ細胞の存在下でヒト野生型IgG1Fc領域を有するという点以外は同じ抗体と比較して増加したADCC活性を有する。
【0223】
(xi)Fc領域バリアント
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0224】
ある特定の実施形態では、本開示は、全てではないが一部のエフェクタ機能を有し、それによりインビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクタ機能(例えば、補体及びADCCなど)が不要又は有害である用途にとって望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。インビトロ及び/又はインビボ細胞毒性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/欠乏を確認してもよい。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、一方で単球は、Fc(RI、Fc(RII、及びFc(RIIIを発現する。造血細胞内でのFcR発現は、Ravetch及びKinet、「Annu.Rev.Immunol.」、第9巻:第457~492頁(1991年)の第464頁、表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第83巻:第7059~7063頁(1986年)を参照)、及びHellstrom,I.ら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第82巻:第1499~1502頁(1985年);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.ら、「J.Exp.Med.」、第166巻:第1351~1361頁(1987年)を参照)に記載される。又は、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリ(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクタ細胞としては、末梢血単核球細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は加えて、目的とする分子のADCC活性は、例えばClynesら、「Proc.Nat’l Acad.Sci.USA」、第95巻:第652~656頁(1998年)に開示されるような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、国際公開第WO2006/029879号及び国際公開第WO2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoroら、「J.Immunol.Methods」、第202巻第163頁(1996年);Cragg,M.S.ら、「Blood」、第101巻第1045~1052頁(2003年);及びCragg,M.S.及びM.J.Glennie、「Blood」、第103巻第2738~2743頁(2004年)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova,S.B.ら、「Int’l.Immunol.」、第18巻、第12号:第1759~1769頁(2006年)を参照のこと)。
【0225】
エフェクタ機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0226】
FcRへの結合が向上又は低下した特定の抗体バリアントについて記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,及びShieldsら、「J.Biol.Chem.」第9巻第2号第6591~6604頁(2001年)を参照のこと。)
【0227】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。例示的な一実施形態では、本抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換基:S298A、E333A、及びK334Aを含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogieら、「J.Immunol.」、第164巻第4178~4184頁(2000年)に記載されるように、変化した(すなわち、改善されたか又は減少したかのいずれか)C1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域において行われる。
【0229】
半減期が増大し、胎生Fc受容体(FcRn)への結合が向上した、母体IgGを胎児に移行する役割を果たす、抗体(Guyerら、「J.Immunol.」、第117巻第587頁(1976年)及びKimら、「J.Immunol.」、第24巻第249頁(1994年))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上する1つ以上の置換基を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうち1つ以上における置換、例えばFc領域残基434の置換を伴うものを含む(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントのその他の例に関係するDuncan及びWinter、「Nature」第322巻第738~40頁(1988年)米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0230】
VII.医薬組成物及び製剤
本明細書ではまた、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、プラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)、及び代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)を含む、例えば肺がん(非小細胞肺がんなどの、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)の治療のための、医薬組成物及び製剤も提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物及び製剤は、薬学的に許容される担体を更に含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体(アテゾリズマブなど)は、約60mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約120mMの濃度のスクロース、及び0.04%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中に存在し、この製剤は、約5.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体(アテゾリズマブなど)は、約125mg/mLの量の抗体、約20mMの濃度の酢酸ヒスチジン、約240mMの濃度であるスクロース、及び0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)を含む製剤中に存在し、この製剤は、約5.5のpHを有する。
【0232】
目的の抗体の調製後(例えば、本明細書に開示されているように処方することができる抗体を産生するための技術は、本明細書に詳述されており、当該技術分野において公知である)、これを含む薬学的製剤を調製する。ある特定の実施形態では、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的とする製剤は、水性製剤である。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一実施形態では、製剤中の抗体は、F(ab’)2などの抗体断片であり、この場合、完全長抗体では起こり得ない問題(抗体のFabへのクリッピングなど)に対処しなければならない場合がある。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積及び投与様式(複数可)を考慮することによって決定される。約25mg/mL~約150mg/mL、又は約30mg/mL~約140mg/mL、又は約35mg/mL~約130mg/mL、又は約40mg/mL~約120mg/mL、又は約50mg/mL~約130mg/mL、又は約50mg/mL~約125mg/mL、又は約50mg/mL~約120mg/mL、又は約50mg/mL~約110mg/mL、又は約50mg/mL~約100mg/mL、又は約50mg/mL~約90mg/mL、又は約50mg/mL~約80mg/mL、又は約54mg/mL~約66mg/mLは、例示的な製剤中の抗体濃度である。
【0233】
pH緩衝溶液中に抗体を含む水性製剤が調製される。いくつかの実施形態では、本開示の緩衝液は、約5.0~約7.0の範囲のpHを有する。ある特定の実施形態では、pHは約5.0~約6.5の範囲であり、pHは約5.0~約6.4、約5.0~約6.3の範囲であり、pHは約5.0~約6.2の範囲であり、pHは約5.0~約6.1の範囲であり、pHは約5.5~約6.1の範囲であり、pHは約5.0~約6.0の範囲であり、pHは約5.0~約5.9の範囲であり、pHは約5.0~約5.8の範囲であり、pHは約5.1~約6.0の範囲であり、pHは約5.2~約6.0の範囲であり、pHは約5.3~約6.0の範囲であり、pHは約5.4~約6.0の範囲であり、pHは約5.5~約6.0の範囲であり、pHは約5.6~約6.0の範囲であり、pHは約5.7~約6.0の範囲であり、又はpHは約5.8~約6.0の範囲である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH6.0又は約6.0である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.9又は約5.9である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.8又は約5.8である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.7又は約5.7である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.6又は約5.6である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.5又は約5.5である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.4又は約5.4である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.3又は約5.3である。いくつかの実施形態では、該製剤は、pH5.2又は約5.2である。この範囲内でpHを制御する緩衝液の例としては、ヒスチジン(L-ヒスチジンなど)又は酢酸ナトリウムが挙げられる。ある特定の実施形態では、緩衝液は、約15mM~約25mMの濃度で酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムを含有する。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約15mM~約25mM、約16mM~約25mM、約17mM~約25mM、約18mM~約25mM、約19mM~約25mM、約20mM~約25mM、約21mM~約25mM、約22mM~約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、又は約25mMの濃度で酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムを含有する。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.4の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.5の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.6の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.7の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.8の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH5.9の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約20mMの量でpH6.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.4の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.5の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.6の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.7の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.8の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH5.9の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.0の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.1の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.2の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。一実施形態では、該緩衝液は、約25mMの量でpH6.3の酢酸ヒスチジン又は酢酸ナトリウムである。
【0234】
いくつかの実施形態では、該製剤は、約60mM~約240mMの量のスクロースを更に含む。いくつかの実施形態では、該製剤中のスクロースは、約60mM~約230mM、約60mM~約220mM、約60mM~約210mM、約60mM~約200mM、約60mM~約190mM、約60mM~約180mM、約60mM~約170mM、約60mM~約160mM、約60mM~約150mM、約60mM~約140mM、約80mM~約240mM、約90mM~約240mM、約100mM~約240mM、約110mM~約240mM、約120mM~約240mM、約130mM~約240mM、約140mM~約240mM、約150mM~約240mM、約160mM~約240mM、約170mM~約240mM、約180mM~約240mM、約190mM~約240mM、約200mM~約240mM、約80mM~約160mM、約100mM~約140mM、又は約110mM~約130mMである。いくつかの実施形態では、該製剤中のスクロースは、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、又は約240mMである。
【0235】
いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約40mg/mL~約125mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約40mg/mL~約120mg/mL、約40mg/mL~約110mg/mL、約40mg/mL~約100mg/mL、約40mg/mL~約90mg/mL、約40mg/mL~約80mg/mL、約40mg/mL~約70mg/mL、約50mg/mL~約120mg/mL、約60mg/mL~約120mg/mL、約70mg/mL~約120mg/mL、約80mg/mL~約120mg/mL、約90mg/mL~約120mg/mL、又は約100mg/mL~約120mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約60mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約65mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約70mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約75mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約80mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約85mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約90mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約95mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約100mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約110mg/mLである。いくつかの実施形態では、該製剤中の抗体濃度は、約125mg/mLである。
【0236】
いくつかの実施形態では、界面活性剤が抗体製剤に添加される。例示の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80号)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188等)が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、該界面活性剤が製剤化された抗体の凝集を低減し、及び/又は製剤中の粒子の形成を最小化し、及び/又は吸着を低減する量である。例えば、界面活性剤は、約0.001~約0.5%(w/v)の量で製剤中に存在し得る。いくつかの実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.005%~約0.2%、約0.005%~約0.1%、約0.005%~約0.09%、約0.005%~約0.08%、約0.005%~約0.07%、約0.005%~約0.06%、約0.005%~約0.05%、約0.005%~約0.04%、約0.008%~約0.06%、約0.01%~約0.06%、約0.02%~約0.06%、約0.01%~約0.05%。又は約0.02%~約0.04%である。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.005%又は約0.005%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.006%又は約0.006%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.007%又は約0.007%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.008%又は約0.008%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.009%又は約0.009%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.01%又は約0.01%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%又は約0.02%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.03%又は約0.03%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.04%又は約0.04%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.05%又は約0.05%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.06%又は約0.06%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.07%又は約0.07%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.08%又は約0.08%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.1%又は約0.1%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.2%又は約0.2%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.3%又は約0.3%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.4%又は約0.4%の量で製剤中に存在する。ある特定の実施形態では、該界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.5%又は約0.5%の量で製剤中に存在する。
【0237】
一実施形態では、製剤は、上で定義された薬剤(例えば、抗体、緩衝液、スクロース、及び/又は界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムCl等の1つ以上の保存料を本質的に含まない。別の実施形態では、保存料が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投与量製剤である。保存料の濃度は、約0.1%~約2%、好ましくは、約0.5%~約1%の範囲であり得る。1つ以上の他の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版(Osol,A.編(1980年))に記載のものが製剤中に含まれ得るが、但し、それらが製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、更なる緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー;及び/又は塩形成対イオンを含む。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤を更に含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
【0238】
本明細書における製剤は、必要に応じて、治療される特定の適応症のための1つよりも多くのタンパク質、好ましくは、他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含み得る。例えば、抗体が抗PDL1(例えば、アテゾリズマブ)である場合、該抗体は、別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)と組み合わせられ得る。
【0239】
本明細書に記載の医薬組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えば、抗体又はポリペプチドなど)を1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版、Osol,A.編(1980年))と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容される担体は一般的に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性薬物分散剤を更に含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
【0240】
例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及び国際公開第WO2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジン緩衝液を含む。
【0241】
本明細書における組成物及び製剤は、治療される特定の適応症に必要な1つより多くの活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。このような有効成分は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。
【0242】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。そのような技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版(Osol,A.編(1980年))に開示されている。
【0243】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、これらのマトリクスは、成形物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は一般に、滅菌される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜によりフィルタにかけることによって、容易に達成され得る。
【0244】
カルボプラチン、シスプラチン、及び/又はペメトレキセドの薬学的製剤は、市販されている。例えば、カルボプラチンは、PARAPLATIN(登録商標)を含む様々な商品名(本明細書の他の箇所に記載)で知られている。シスプラチンは、PLATINOL(登録商標)を含む様々な商品名(本明細書の他の箇所に記載)で知られている。ペメトレキセドは、ALIMTA(登録商標)、GIOPEM、PEXATE、及びCIAMBRAを含む様々な商品名(本明細書の他の箇所に記載)で知られている。いくつかの実施形態では、カルボプラチン及び/又はペメトレキセドは、別々の容器で提供される。いくつかの実施形態では、シスプラチン及び/又はペメトレキセドは、別々の容器で提供される。いくつかの実施形態では、カルボプラチン及び/又はペメトレキセドは、それぞれ、市販の製品で入手可能な処方情報に記載されているように、個体に投与するために使用及び/又は調製される。いくつかの実施形態では、シスプラチン及び/又はペメトレキセドは、それぞれ、市販の製品で入手可能な処方情報に記載されているように、個体に投与するために使用及び/又は調製される。
【0245】
VIII.治療方法
本明細書は、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)、及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)を個体に投与することを含む、個体におけるがん(肺がんなど、例えば非小細胞肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を治療又は進行遅延させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、この治療は、治療の中止後に個体における持続的応答をもたらす。いくつかの実施形態では、治療は、該個体の無増悪生存期間(PFS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、投与は、該個体の全生存期間(OS)を延長する。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。
【0246】
本明細書に記載の方法は、がんの治療のための腫瘍免疫原性の増大等の免疫原性の増強が所望される状態の治療における使用を見出し得る。本明細書はまた、有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)、及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)を個体に投与することを含む、個体における(肺がん、例えば非小細胞肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がんなど)を有する個体における免疫機能を向上させる方法も提供する。
【0247】
いくつかの実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、NSCLCは、ステージIVのNSCLCである。いくつかの実施形態では、ステージIVのNSCLCは、非扁平上皮NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは、Union Internationale contre le Cancer/American Joint Committee on Cancer病期分類システム第7版に従って、又はこれにより定義される通りに、組織学的又は細胞学的にステージIVの非扁平上皮NSCLCであることが確認される(例えば、Detterbeckら、(2009年)「Chest」第136巻第260-71頁を参照)。いくつかの実施形態では、ステージIVのNSCLCは、混合非小細胞組織学(例えば、扁平上皮及び非扁平上皮)であり、主要な組織学的成分は、非扁平上皮であるか、又は非扁平上皮であるように見える。いくつかの実施形態では、腫瘍が付近の構造内に増殖している場合、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、腫瘍が近くの構造内に成長しているか、及び/又は近位リンパ節に到達している場合、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、がんが最初に罹患した肺から他の肺に拡がっている場合、NSCLCはステージIVに分類される。いくつかの実施形態では、がん細胞が肺周辺の体液中で見出される場合(すなわち、悪性胸水)、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、がん細胞が心臓周辺の体液中で見出される場合(すなわち、悪性心嚢液浸出(malignant pericardial infusion))、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、がんが、遠隔部リンパ節、肝臓、骨、及び/又は脳などの胸部外に単一の腫瘍として広がっている場合、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、がんが、遠隔部リンパ節、肝臓、骨、及び/又は脳などの胸部外に複数の腫瘍として広がっている場合、NSCLCはステージIVとして分類される。いくつかの実施形態では、ステージIVのNSCLCは、治療が困難である。NSCLCの病期分類に関する更なる詳細は、「American Joint Committee on Cancer.Lung.In:AJCC Cancer Staging Manual.」第8版、ニューヨーク州ニューヨーク、Springer(2017年)第431~456頁に記載されている。
【0248】
いくつかの実施形態では、個体は、予後が不良である。いくつかの実施形態では、個体は、未治療個体である。いくつかの実施形態では、未治療の個体は、例えば、がん、NSCLC、又はステージIVの非扁平上皮NSCLCについて、以前に治療を受けていない個体である。いくつかの実施形態では、該未治療の個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて、以前に治療を受けていない個体である。いくつかの実施形態では、個体は、例えば、化学療法未実施、例えばがん、NSCLC、及び/又はステージIVの非扁平上皮NSCLCの治療のために以前に化学療法を受けたことがない個体である。いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて治療を受けていない。いくつかの実施形態では、該個体は、ステージIVの非扁平上皮NSCLCについて以前に全身治療を受けていない。
【0249】
いくつかの実施形態では、個体は、アジア人である。いくつかの実施形態では、個体は、アジア系である。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも65歳である。いくつかの実施形態では、個体は、非喫煙者である。いくつかの実施形態では、非喫煙者は、全く喫煙したことがない、又は生涯に100本未満しかタバコを吸ったことがない成人である。いくつかの実施形態では、個体は、肝転移を有しない。
【0250】
いくつかの実施形態では、個体は、「高PD-L1」である。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、試料中の全腫瘍細胞の合計50%を超える場合、「高PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞の50%を超えるPD-L1発現は、「TC3」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、試料中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計10%を超える場合、「高PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の10%を超えるPD-L1発現は、「IC3」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、治療前試料は、新鮮な腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
【0251】
いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、試料中の全腫瘍細胞の合計1%~5%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞の1%~5%未満でのPD-L1発現は、「TC1」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、試料中の全腫瘍細胞の合計5%~50%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞の5%~50%未満でのPD-L1発現は、「TC2」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、試料中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計1%~5%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の1%~5%未満でのPD-L1発現は、「IC1」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、試料中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計5%~10%未満である場合、「低PD-L1」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の5%~10%未満でのPD-L1発現は、「IC2」として定義/スコアリングされる。いくつかの実施形態では、治療前試料は、新鮮な腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイである。
【0252】
いくつかの実施形態では、個体は、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍細胞が、試料中の全腫瘍細胞の合計1%未満である場合、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞の1%未満でのPD-L1発現は、「TC0」として定義される。いくつかの実施形態では、患者は、患者由来の治療前試料においてPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞が、試料中の全腫瘍濾過免疫細胞の合計1%未満である場合、「PD-L1陰性」である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満でのPD-L1発現は、「IC0」として定義される。いくつかの実施形態では、治療前試料は、新鮮な腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、治療前試料中の腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベルは、免疫組織化学的アッセイにより決定される。いくつかの実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、VENTANA SP142アッセイであり、これは、本明細書の他の場所で更に詳細に記載されている。
【0253】
いくつかの実施形態では、TC0、TC1、TC2、TC3、IC0、IC1、IC2、及びIC3は、以下の表に概説されるように定義/スコアリングされる:
例示的な腫瘍細胞(tumor cell:TC)及び腫瘍浸潤免疫細胞(immune cell:IC)のスコアリングの定義*
*TCを最初にスコアリングし、続いてICを段階的なアプローチでスコアリングする
*「the Assessment Guide for the VENTANA PD-L1(SP142)IHC Assay:Staining of Non-Small Cell Lung Cancer Universal Training.」を参照のこと。(www(dot)rocheplus(dot)es/content/dam/hcp-portals/spain/documents/formaci%C3%B3n/uropath/PD-L1%20SP142%20Assessment%20%20v2.5(dot)pdfを参照)
【0254】
いくつかの実施形態では、個体は、組織学的又は細胞学的にステージIVの非扁平上皮NSCLCであることが確認される(the Union Internationale contre le Cancer/American Joint Committee on Cancer病期分類システム第7版により概説される基準により、Detterbeckら(2009年)「The new lung cancer staging system.」、「Chest.」第136巻第260-71頁に記載の通り)。いくつかの実施形態では、個体は、混合非小細胞組織学(すなわち、扁平上皮性及び非扁平上皮性)のNSCLCを有し、主要な組織学的成分が非扁平上皮であるか、又は非扁平上皮であるように見える場合、非扁平上皮NSCLCを有すると考えられる。いくつかの実施形態では、個体は、EGFR遺伝子に感作性突然変異を有しない。いくつかの実施形態では、個体は、ALK融合発がん遺伝子を有しない。いくつかの実施形態では、個体のEGFR及びALK状態は、治療前にスクリーニングされる。
【0255】
いくつかの実施形態では、個体は、非転移性疾患の治癒目的で、以前にネオアジュバント化学療法、アジュバント化学療法、又は化学放射線療法を受けており、かつ治療開始前には、直近の用量化学療法及び/又は放射線療法から少なくとも6ヶ月の無治療期間を経ている。いくつかの実施形態では、個体は、活性又は未治療の中枢神経系(central nervous system:CNS)転移を有しない。いくつかの実施形態では、個体は、無症候性テント上又は小脳CNS転移を治療している。いくつかの実施形態では、個体は、中脳、脳橋、髄質、又は脊髄への転移を有しない。いくつかの実施形態では、個体はCNS疾患を有し、CNS疾患に対してコルチコステロイド治療を必要としない。いくつかの実施形態では、個体は、新規の無症候性転移を有し、CNS転移のための放射線療法及び/又は手術を受けている。いくつかの実施形態では、CNS転移を有する個体は、治療を開始してから7日以内に定位放射線を受けていない。いくつかの実施形態では、CNS転移を有する個体は、治療を開始してから14日以内に全脳放射線を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、軟膜疾患を有しない。いくつかの実施形態では、個体は、無制御な腫瘍の痛みを有しない。いくつかの実施形態では、個体は、無制御な胸水貯留を有しない。いくつかの実施形態では、個体は、無制御な心膜液貯留を有しない。いくつかの実施形態では、個体は、治療開始前5年以内に、NSCLC以外の悪性腫瘍を有しない。
【0256】
いくつかの実施形態では、個体は、RECIST第1.1版基準に従って/これによって定義される、測定可能なNSCLC(例えば、ステージIVの非扁平上皮NSCLC)を有する(例えば、Eisenhauerら(2009年)「New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(第1.1版).」、「Eur.J.Cancer.」第45巻第228~247頁を参照のこと)。いくつかの実施形態では、個体は、例えば抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を含むがこれらに限定されない、CD137アゴニスト又は免疫チェックポイント阻害療法による前治療を受けていない。いくつかの実施形態では、患者は、抗細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CLTA-4)による前治療を受けており、ここで、該治療は、本明細書に記載の治療の開始から少なくとも6週間前に行われた。
【0257】
当該技術分野で既知の又は本明細書に記載のPD-1軸結合アンタゴニスト、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤のうちのいずれかが、本方法で使用され得る。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストはアテゾリズマブであり、代謝拮抗剤はペメトレキセドであり、及び/又はプラチナ製剤はカルボプラチン若しくはシスプラチンである。
【0258】
いくつかの実施形態では、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該カルボプラチンはAUC=6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与され、そして該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与される。
【0259】
いくつかの実施形態では、該アテゾリズマブは1200mgの用量で投与され、該シスプラチンは75mg/m2の用量で投与され、そして該ペメトレキセドは500mg/m2の用量で投与される。
【0260】
いくつかの実施形態では、治療は、誘導期及び維持期(又は「維持療法」)を含む。いくつかの実施形態では、誘導期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)を第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチン)をサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に曲線下面積(area under the curve:AUC)の初期標的6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、維持期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)をサイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0261】
いくつかの実施形態では、誘導期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)を第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、プラチナ製剤(例えば、シスプラチン)をサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、維持期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)をサイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、誘導期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)を第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチン)をサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に曲線下面積(area under the curve:AUC)の初期標的6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、維持期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)をサイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、誘導期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)を第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、プラチナ製剤(例えば、シスプラチン)をサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、維持期は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)を第1日目に1200mgの用量で投与することと、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)をサイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0264】
誘導サイクル及び維持サイクルを含む例示的な投薬及び投与スケジュールを、以下の表4A及び表4Bに提示する:
【0265】
いくつかの実施形態では、アテゾリズマブの1200mg用量は、15mg/kgの平均体重ベースの用量と同等である。いくつかの実施形態では、6mg/mL/分のAUCを達成するのに必要なカルボプラチンの用量は、カルバート式に従って計算される(例えば、Calvertら(1989年)「Carboplatin dosage:prospective evaluation of a simple formula based on renal function.」、「J.Clin Oncol.」第7巻第1748~56頁;van Warmerdamら(1995年)「J.Cancer Res.Clin.Oncol.」第121巻第8号第478~486頁を参照)。更なる詳細については、以下の実施例1を参照のこと。
【0266】
いくつかの実施形態では、個体の無増悪生存期間(PFS)は、RECIST第1.1版の基準に従って、Eisenhauerら(2009年)「New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(第1.1版).」、「Eur.J.Cancer.」第45巻第228~47頁に記載されている通りに測定可能である。いくつかの実施形態では、PFSは、治療の開始から、RECIST第1.1版の基準によって決定される疾患進行の初回発生までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、PFSは、治療の開始から死亡時までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)による治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のPFSを増加させる。
【0267】
いくつかの実施形態では、全生存期間(OS)は、治療の開始から死亡までの期間として測定される。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)及びプラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)による治療を受けた肺がん(非小細胞肺がん、例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)の少なくともいずれか1つの期間の分だけ、個体のOSを増加させる。
【0268】
いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【0269】
いくつかの実施形態では、個体は、1つ以上のPD-1軸アンタゴニストに耐性を示す(耐性を示すと実証された)がんを有する。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、がんの再発又は不応性がんを含む。再発とは、治療後の発症元の部位又は新たな部位におけるがんの再現を指し得る。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、PD-1軸アンタゴニストでの治療中のがんの進行を含む。いくつかの実施形態では、PD-1軸アンタゴニストへの耐性は、治療に応答しないがんを含む。がんは、治療開始時に耐性を示し得るか、又は治療中に耐性を示すようになり得る。いくつかの実施形態では、がんは、初期段階又は後期段階にある。
【0270】
別の態様では、個体は、PD-L1バイオマーカを発現する(例えば、診断試験において、発現することが示された)がんを有する。いくつかの実施形態では、患者のがんは、低PD-L1バイオマーカを発現する。いくつかの実施形態では、患者のがんは、高PD-L1バイオマーカを発現する。これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、試料の0%に含まれる場合、試料中に存在しない。
【0271】
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、試料の0%超に含まれる場合、試料中に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、試料の少なくとも1%に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、試料の少なくとも5%に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、試料の少なくとも10%に存在する。
【0272】
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、並びにそれらの組合せからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される。
【0273】
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、タンパク質発現によって試料中で検出される。いくつかの実施形態では、タンパク質発現は、免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)によって決定される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、抗PD-L1抗体を用いて検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、IHCによって弱い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、IHCによって中程度の染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、IHCによって強い染色強度として検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、及びそれらの任意の組合せ中で検出される。いくつかの実施形態では、染色は、膜染色、細胞質染色、又はそれらの組合せである。
【0274】
いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体を用いて検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1は、ホルマリン固定パラフィン包埋試料中で検出される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体は、検出可能な標識を含む二次抗体で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1を検出するために使用されるアッセイは、VENTANA PD-L1(SP142)アッセイ(VENTANA(登録商標)より市販)であり、これは、実施例でより詳細に記載されている。
【0275】
これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカの不在は、試料中の染色不在又は染色なしとして検出される。これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカの存在は、試料中の任意の染色として検出される。
【0276】
PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、任意の順番で投与することができる。例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、連続して(異なるときに)又は同時に(同じ時に)投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、別々の組成物中にある。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)の1つ以上(又は3つ全て)は、同一の組成物中にある。
【0277】
PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、同一の投与経路で投与してもよく、又は異なる投与経路で投与してもよい。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、プラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植、吸入、髄腔内、脳室内、又は鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、静脈内注入で投与される。有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)、及びプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)は、疾患を予防又は治療するために投与され得る。
【0278】
いくつかの実施形態では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与する工程を含む、個体(例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)が未治療である個体)における、肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法であって、ここで、該投与が誘導期及び維持期を含み、該誘導期が、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、カルボプラチンをサイクル1~4について各21日間サイクルの初期標的曲線下面積(AUC)6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを個体に投与する工程を含む、個体(例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)が未治療である個体)における、肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法であって、ここで、該投与が誘導期及び維持期を含み、該誘導期が、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、シスプラチンをサイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びカルボプラチンを個体に投与する工程を含む、個体(例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)が未治療である個体)における、肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法であって、ここで、該投与が誘導期及び維持期を含み、該誘導期が、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、カルボプラチンをサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に初期標的曲線下面積(AUC)6mg/mL/分を達成するのに充分な用量で投与することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、有効量のアテゾリズマブ、ペメトレキセド、及びシスプラチンを個体に投与する工程を含む、個体(例えば、ステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)が未治療である個体)における、肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する方法であって、ここで、該投与が誘導期及び維持期を含み、該誘導期が、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドを第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、シスプラチンをサイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に75mg/m2の用量で投与することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、維持期は、アテゾリズマブを第1日目に1200mgの用量で投与することと、ペメトレキセドをサイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に500mg/m2の用量で投与することと、を含む。
【0282】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体のPFS(例えば、約5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくともいずれか1つの期間の分だけ)及び/又は個体のOS(例えば、約14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、又は20ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくともいずれか1つの期間の分だけ)を、増加させる。いくつかの実施形態では、治療は、個体の無増悪生存期間(PFS)を少なくとも約7.6ヶ月増加させ、及び/又は個体のOSを少なくとも約18.1ヶ月増加させる。いくつかの実施形態では、本方法は、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)及び代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)で治療された肺がん(非小細胞肺がん、例えばステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん)を有する個体と比較して、個体のPFS(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、又は4ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくともいずれか1つの期間の分だけ)及び/又は個体のOS(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、又は7ヶ月(これらの値の間の任意の範囲を含む)のうちの少なくともいずれか1つの期間の分だけ)を増加させる。
【0283】
いくつかの実施形態では、例えば上記の表4Aに示されるように、サイクル1~4について各21日間サイクルの第1日目に、アテゾリズマブの投与の後にペメトレキセドが投与され、ペメトレキセドの投与の後にカルボプラチン又はシスプラチンが投与される。いくつかの実施形態では、例えば上記の表4Bに示されるように、サイクル1~6について各21日間サイクルの第1日目に、アテゾリズマブの投与の後にペメトレキセドが投与され、ペメトレキセドの投与の後にカルボプラチン又はシスプラチンが、投与される。
【0284】
いくつかの実施形態では、サイクル1~4における各21日間サイクルについて、アテゾリズマブは60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは、約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは、第1日目に約30~60分間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、サイクル1について、アテゾリズマブは60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは、第1日に約30~60分間にわたり静脈内投与され、そしてサイクル2~4の第1日目に、アテゾリズマブは30(±10分)にわたり静脈内に投与され、ペメトレキセドは約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは約30~60分間にわたり静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは、およそ10分にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に30(±10分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは、およそ10分にわたり静脈内投与される。
【0285】
いくつかの実施形態では、サイクル1~4における各21日間サイクルについて、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは、第1日目に約1~2時間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、サイクル1について、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは第1日に約1~2時間にわたり静脈内投与され、そしてサイクル2~4について、アテゾリズマブは第1日目に30(±10分)にわたり静脈内に投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは第1日目に約30~60分間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル4後の各21日間サイクルの第1日目に30(±10分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。
【0286】
いくつかの実施形態では、サイクル1~6における各21日間サイクルについて、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは、第1日目に約30~60分間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、サイクル1について、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは第1日に約30~60分間にわたり静脈内投与され、そしてサイクル2~6について、アテゾリズマブは第1日目に30(±10分)にわたり静脈内に投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、カルボプラチンは第1日目に約30~60分間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に30(±10分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。
【0287】
いくつかの実施形態では、サイクル1~6における各21日間サイクルについて、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは、第1日目に約1~2時間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、サイクル1について、アテゾリズマブは第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは第1日に約1~2時間にわたり静脈内投与され、そしてサイクル2~6について、アテゾリズマブは第1日目に30(±10分)にわたり静脈内に投与され、ペメトレキセドは第1日目に約10分間にわたり静脈内投与され、シスプラチンは第1日目に約30~60分間にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に60(±15分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、サイクル6後の各21日間サイクルの第1日目に30(±10分)にわたり静脈内投与され、ペメトレキセドは第1日目におよそ10分にわたり静脈内投与される。
【0288】
一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量の抗体は、1回以上の投与によるかにかかわらず、約0.01~約50mg/患者体重kgの範囲であろう。いくつかの実施形態では、使用される本抗体は、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、又は約0.01~約1mg/kgであり、例えば、毎日投与される。いくつかの実施形態では、本抗体は、15mg/kgで投与される。しかし、他の投薬レジメンが有用な場合がある。一実施形態では、本明細書に記載の抗PDL1抗体は、21日間サイクルの第1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの用量でヒトに投与される。用量は、注入物などの、単回用量で、又は複数回用量(例えば、2回用量又は3回用量)で投与されてもよい。併用治療において投与される本抗体の用量は、単剤治療と比較して減少し得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
【0289】
いくつかの実施形態では、これらの方法は、更なる療法を更に含み得る。更なる治療は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又はこれらの組合せであり得る。更なる療法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、更なる療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤等)の投与である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、手術である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、放射線療法と手術との組合せである。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、ガンマ線照射である。
【0290】
いくつかの実施形態では、更なる治療法は、CT-011(ピジリズマブ又はMDV9300としても知られている;CAS登録番号1036730-42-3;CureTech/Medivation)を含む。hBAT又はhBAT-1としても知られるCT-011は、国際公開第WO2009/101611号に記載の抗体である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、重鎖及び軽鎖配列を備える抗体を含み、ここで:
(a)該重鎖は、アミノ酸配列:QVQLVQSGSELKKPGASVKISCKASGYTFTNYGMNWVRQAPGQGLQWMGWINTDSGESTYAEEFKGRFVFSLDTSVNTAYLQITSLTAEDTGMYFCVRVGYDALDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号19)を含み、かつ
(b)該軽鎖は、アミノ酸配列:EIVLTQSPSSLSASVGDRVTITCSARSSVSYMHWFQQKPGKAPKLWIYRTSNLASGVPSRFSGSGSGTSYCLTINSLQPEDFATYYCQQRSSFPLTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号20)を含む。
【0291】
いくつかの実施形態では、更なる治療用抗体は、配列番号19及び配列番号20からの6つのHVR配列(例えば、配列番号19からの3つの重鎖HVR及び配列番号20からの3つの軽鎖HVR)を含む。いくつかの実施形態では、更なる治療用抗体は、配列番号19からの重鎖可変ドメイン及び配列番号20からの軽鎖可変ドメインを含む。
【0292】
本明細書で使用するために企図された他の更なる治療用抗体には、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、抗体薬物コンジュゲートであるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及び抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれるが、これらに限定されない。
【0293】
いくつかの実施形態では、更なる治療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする治療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤である。いくつかの実施形態では、更なる治療法は、CTLA-4(CD152としても知られる)、例えば、遮断抗体、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、又はYervoy(登録商標)としても知られる)、トレメリムマブ(チシリムマブ又はCP-675,206としても知られる)、B7-H3に対するアンタゴニスト(CD276としても知られる)、例えば、遮断抗体、MGA271、TGFβに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られる)、フレソリムマブ(fresolimumab)(GC1008としても知られる)、又はLY2157299、キメラ抗原受容(chimeric antigen receptor:CAR)を発現するT細胞の養子移入を含む治療(例えば、細胞毒性T細胞又はCTL)、ドミナントネガティブTGFβ受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療、例えば、ドミナントネガティブTGFβII型受容体、HERCREEMプロトコルを含む治療(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照)、CD137に対するアゴニスト(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)、例えば活性化抗体ウレルマブ(urelumab)(BMS-663513としても知られる)、CD40に対するアゴニスト、例えば活性化抗体CP-870893、OX40に対するアゴニスト(CD134としても知られる)、例えば活性化抗体、異なる抗OX40との組合せ投与(例えば、AgonOX)、CD27に対するアゴニスト、例えば活性化抗体CDX-1127、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)、抗体-薬物コンジュゲート(いくつかの実施形態では、メルタンシン(mertansine)又はモノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E:MMAE)を含む)、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600A又はRG7599としても知られる)、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1、アドトラスツズマブエムタンシン、又はKADCYLA(登録商標)(Genentech)としても知られる)、DMUC5754A、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的化する抗体-薬物コンジュゲート、例えばMMAEでコンジュゲートされたEDNBRに対する抗体、血管新生抑制剤、VEGFに対する抗体、例えばVEGF-A、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)(Genentech)としても知られる)、アンジオポエチン2に対する抗体(Ang2としても知られる)、MEDI3617、抗悪性腫瘍薬、抗体標的CSF-1R(M-CSFR又はCD115としても知られる)、抗CSF-1R(IMC-CS4としても知られる)、インターフェロン、例えばインターフェロンα又はインターフェロンγ、Roferon-A、GM-CSF(組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、又はLeukine(登録商標)としても知られる)、IL-2(アルデスロイキン又はProleukin(登録商標)としても知られる)、IL-12、抗体標的CD20(いくつかの実施形態では、抗体標的CD20はオビヌツズマブ(GA101又はGazyva(登録商標)としても知られる)又はリツキシマブである)、抗体標的GITR(いくつかの実施形態では、抗体標的GITRは、TRX518である)、がんワクチンとの組合せ(いくつかの実施形態では、がんワクチンはペプチドがんワクチンであり、いくつかの実施形態では、個別化されたペプチドワクチンである;いくつかの実施形態では、ペプチドがんワクチンは、多価長ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、又はペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、山田ら、「Cancer Sci」第104巻第14~21頁(2013年)を参照)、アジュバントとの組合せ、TLRアゴニスト、例えばポリICLC(Hiltonol(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、又はCpG ODN、腫瘍壊死因子(TNF)α、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、例えばICOS-L又はICOSに対するアゴニスト抗体の投与による、CX3CL1標的化治療、CXCL10標的化治療、CCL5標的化治療、LFA-1又はICAM1アゴニスト、セレクチンアゴニスト、標的治療、B-Rafの阻害剤、ベムラフェニブ(Zelboraf(登録商標)としても知られる)、ダブラフェニブ(Tafinlar(登録商標)としても知られる)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標)としても知られる)、MEKの阻害剤、例えばMEK1(MAP2K1としても知られる)又はMEK2(MAP2K2としても知られる)など、コビメチニブ(GDC-0973又はXL-518としても知られる)、トラメチニブ(Mekinist(登録商標)としても知られる)、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、オナルツズマブ(onartuzumab)(MetMAbとしても知られる)、Alkの阻害剤、AF802(CH5424802又はアレクチニブとしても知られる)、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、BKM120、イデラリシブ(GS-1101又はCAL-101としても知られる)、ペリフォシン(KRX-0401としても知られる)、Akt、MK2206、GSK690693、GDC-0941、mTORの阻害剤、シロリムス(ラパマイシンとしても知られる)、テムシロリムス(CCI-779又はTorisel(登録商標)としても知られる)、エベロリムス(RAD001としても知られる)、リダフォロリムス(AP-23573、MK-8669、又はデフォロリムスとしても知られる)、OSI-027、AZD8055、INK128、二重PI3K/mTOR阻害剤、XL765、GDC-0980、BEZ235(NVP-BEZ235としても知られる)、BGT226、GSK2126458、PF-04691502、PF-05212384(PKI-587としても知られる)である。更なる療法は、本明細書に記載の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0294】
IX.検出及び診断方法
いくつかの実施形態では、試料は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)、プラチナ製剤(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)、及び代謝拮抗剤(例えば、ペメトレキセド)での治療の前に得られる。いくつかの実施形態では、組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋試料、アーカイブ試料、新鮮な試料、又は凍結試料である。
【0295】
いくつかの実施形態では、試料は、全血である。いくつかの実施形態では、全血は、免疫細胞、循環腫瘍細胞、及びそれらの任意の組合せを含む。
【0296】
バイオマーカ(例えば、PD-L1)の存在及び/又は発現レベル/量は、個体における、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/又は遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の好適な基準に基づいて、定性的かつ/又は定量的に判定され得る。ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカの存在及び/又は発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在及び/又は発現レベル/量と比較して増加又は上昇する。ある特定の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカの存在/不在及び/又は発現レベル/量が、第2の試料中の存在及び/又は発現レベル/量と比較して減少又は低下する。ある特定の実施形態では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織である。遺伝子の存在/不在及び/又は発現レベル/量を決定するための更なる開示が本明細書に記載されている。
【0297】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質又は核酸(例えば、遺伝子又はmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を指す。ある特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、又は100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、又は内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、又は約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0298】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質又は核酸(例えば、遺伝子又はmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。ある特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、又は0.01倍のうちのいずれかである。
【0299】
試料中の様々なバイオマーカの存在及び/又は発現レベル/量は、いくつかの方法論によって分析され得、これらの多くは、当該技術分野で既知であり、当業者に理解されており、免疫組織化学(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイツハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、例えば、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、及び/又は遺伝子発現連続分析(「SAGE」)、並びにタンパク質、遺伝子、及び/又は組織アレイ分析によって行われ得る多種多様なアッセイのうちのいずれかを含むが、これらに限定されない。遺伝子及び遺伝子生成物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubelら編(1995年)「Current Protocols In Molecular Biology」第2部(ノーザンブロット法)、第4部(サザンブロット法)、第15部(免疫ブロット法)、及び第18部(PCR分析)において見出される。Rules Based Medicine又はMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイ等の多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、バイオマーカの存在及び/又は発現レベル/量は、(a)試料(対象がん試料等)において、遺伝子発現プロファイリング、PCR(rtPCR若しくはqRT-PCR等)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、又はFISHを行うことと、b)試料中のバイオマーカの存在及び/又は発現レベル/量を決定することとを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態では、マイクロアレイ方法は、ストリンジェントな条件下で上述の遺伝子をコードする核酸分子にハイブリダイズすることができる1つ以上の核酸分子を有するか、又は上述の遺伝子によってコードされるタンパク質のうちの1つ以上に結合することができる1つ以上のポリペプチド(ペプチド若しくは抗体等)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一実施形態では、PCR法は、qRT-PCRである。一実施形態では、PCR法は、多重PCRである。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。いくつかの実施形態では、発現は、多重PCRによって測定される。
【0301】
細胞中のmRNAの評価方法が周知であり、該方法として、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したインサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技法等)、並びに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用したRT-PCR、及び他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)が挙げられる。
【0302】
哺乳動物由来の試料は、ノーザンブロット、ドットブロット、又はPCR分析を使用してmRNAについて好都合にアッセイされ得る。加えて、かかる方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを決定する(例えば、アクチンファミリーメンバ等の「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)ことを可能にする1つ以上の工程を含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が決定され得る。
【0303】
任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織又は細胞試料中の標的mRNA等のmRNAを試験又は検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバの配列及び位置が分かるように構成する。例えば、発現が抗血管新生療法の臨床的有用性の増加又は低減と相関する様々な遺伝子の選択が固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバとの標識されたプローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0304】
いくつかの実施形態によれば、存在及び/又は発現レベル/量は、前述の遺伝子のタンパク質発現レベルを観察することによって測定される。ある特定の実施形態では、この方法は、バイオマーカの結合を許容する条件下で生物学的試料を本明細書に記載のバイオマーカに対する抗体(例えば、抗PD-L1抗体)と接触させることと、複合体が抗体とバイオマーカとの間に形成されるかを検出することとを含む。このような方法は、インビトロ法又はインビボ法であってもよい。一実施形態では、抗体を使用して、PD-L1軸結合アンタゴニストでの療法に適格な対象、例えば、個体の選択のためのバイオマーカを選択する。
【0305】
ある特定の実施形態では、試料中のバイオマーカタンパク質の存在及び/又は発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定又は検出する信頼できる方法であることが示されている。これらの方法、アッセイ、及び/又はキットのうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、PD-L1は、免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、個体由来の試料中のPD-L1バイオマーカの発現の増加は、タンパク質発現の増加であり、更なる実施形態では、IHCを使用して決定される。一実施形態では、バイオマーカの発現レベルは、(a)抗体を用いた試料(対象がん試料等)のIHC分析を行うことと、(b)試料中のバイオマーカの発現レベルを決定することとを含む方法を用いて決定される。いくつかの実施形態では、IHC染色強度は、基準と比較して決定される。いくつかの実施形態では、基準は、基準値である。いくつかの実施形態では、基準は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料又は非がん性患者由来の組織試料)である。
【0306】
IHCは、形態学的染色及び/又は蛍光インサイツハイブリダイゼーション等の更なる技法と組み合わせて行われ得る。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合は、直接決定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用なしで可視化され得る蛍光タグ又は酵素標識一次抗体等の標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、発色基質又は蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。シグナル増幅は、いくつかの二次抗体が一次抗体の異なるエピトープと反応し得るために発生する。
【0307】
IHCに使用される一次抗体及び/又は二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリに群分けされ得る:(a)35S、14C、125I、3H、及び131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン、フィコシアニン、若しくは市販のフルオロフォア(SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7など)、並びに/又は上記のいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない、蛍光標識に群分けされ得、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号がこれらのいくつかについての概説を提供する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0308】
酵素-基質の組合せの例としては、例えば基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの総説については、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0309】
これらの方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1は、抗PD-L1診断抗体(すなわち、一次抗体)を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、ラット、マウス、又はウサギ抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1診断抗体は、直接標識される。
【0310】
このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。その後、スライド評価が、例えば、顕微鏡を使用して決定され、当該技術分野によって常用されている染色強度判断基準が用いられ得る。一実施形態では、腫瘍由来の細胞及び/又は組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、一般に、(試料中に存在する間質又は周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞及び/又は組織において決定又は評価されることが理解される。いくつかの実施形態では、腫瘍由来の細胞及び/又は組織がIHCを使用して試験される場合、染色は、腫瘍内又は腫瘍周辺免疫細胞等の腫瘍浸潤免疫細胞における決定又は評価を含むことが理解される。
【0311】
いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍又は腫瘍試料で評価される。本明細書で使用される場合、腫瘍又は腫瘍試料は、腫瘍細胞によって占有される腫瘍面積の一部又は全てを包含し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍又は腫瘍試料は、腫瘍関連腫瘍内細胞及び/又は腫瘍関連間質(例えば、隣接腫瘍周辺線維形成性間質)によって占有される腫瘍面積を更に包含する。腫瘍関連腫瘍内細胞及び/又は腫瘍関連間質は、主要な腫瘍塊に直接隣接しており、かつ/又はそれと連続している免疫浸潤物(例えば、本明細書に記載の腫瘍浸潤免疫細胞)の面積を含み得る。いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍細胞で評価される。いくつかの実施形態では、PDL1発現は、腫瘍浸潤免疫細胞等の上述の腫瘍面積内の免疫細胞で評価される。
【0312】
代替の方法では、試料は、抗体-バイオマーカ複合体が形成されるのに充分な条件下で該バイオマーカに特異的な抗体と接触してもよく、その後、複合体を検出する。バイオマーカの存在は、血漿又は血清等の多種多様な組織及び試料をアッセイするためのいくつかの方法で、例えば、ウエスタンブロット法及びELISA手順によって検出され得る。そのようなアッセイ形式を使用する幅広い免疫学的測定技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照されたい。これらには、非競合型の1部位及び2部位の両方のアッセイ又は「サンドイッチ」アッセイ、並びに伝統的な競合的結合アッセイが含まれる。これらのアッセイは、標識された抗体の標的バイオマーカへの直接結合も含む。
【0313】
組織又は細胞試料中の選択されたバイオマーカの存在及び/又は発現レベル/量も、機能アッセイ又は活性ベースのアッセイによって試験され得る。例えば、バイオマーカが酵素である場合、当該技術分野で既知のアッセイを行って、組織又は細胞試料中の所与の酵素活性の存在を決定又は検出することができる。
【0314】
ある特定の実施形態では、試料は、アッセイされるバイオマーカの量の差及び使用される試料の質の変動の両方、並びにアッセイラン間の変動について正規化される。かかる正規化は、周知のハウスキーピング遺伝子等のある特定の正規化バイオマーカの発現を検出し、かつそれを組み込むことによって達成され得る。代替として、正規化は、アッセイされた遺伝子又はその大サブセットの全ての平均シグナル又はシグナル中央値に基づき得る(包括的正規化アプローチ)。遺伝子毎に、対象の腫瘍mRNA又はタンパク質の測定された正規化量が、基準セットで見られる量と比較される。対象毎の試験された腫瘍毎の各mRNA又はタンパク質の正規化発現レベルが、基準セットにおける測定された発現レベルの割合として表され得る。分析される特定の対象試料中の測定された存在及び/又は発現レベル/量がこの範囲内のある百分率で表されるが、これは、当該技術分野で周知の方法によって決定され得る。
【0315】
一実施形態では、試料は、臨床試料である。別の実施形態では、試料は、診断アッセイで使用される。いくつかの実施形態では、試料は、原発性腫瘍又は転移性腫瘍から得られる。組織生検は、多くの場合、腫瘍組織の代表的な小片を得るために使用される。代替として、腫瘍細胞は、目的とする腫瘍細胞を含有することで知られているか、又はそのように考えられている組織又は流体の形態で間接的に得られ得る。例えば、肺がん病変試料は、切除、気管支鏡法、微細針吸引、気管支擦過によって、又は痰、胸膜液、若しくは血液から得られ得る。遺伝子又は遺伝子産物は、がん若しくは腫瘍組織から、又は他の身体試料、例えば、尿、痰、血清、若しくは血漿から検出され得る。がん性試料中の標的遺伝子又は遺伝子産物の検出について上で考察された同じ技法が他の身体試料に適用され得る。がん細胞ががん病変から脱落し、かかる身体試料中に現れ得る。かかる身体試料をスクリーニングすることにより、これらのがんの簡単な早期診断が達成され得る。加えて、治療法の進展が、かかる身体試料を標的遺伝子又は遺伝子産物について試験することによってより容易に監視され得る。
【0316】
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象又は個体由来の単一の試料又は組み合わせられた複数の試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象又は個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、参照試料ががんの初診中に得られる場合、かつがんが転移性がんになったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0317】
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、対象又は個体ではない1以上の健常な個体由来の組み合わせられた複数の試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、対象又は個体ではない疾患又は障害(例えば、がん)を有する1以上の個体由来の組み合わせられた複数の試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、正常組織由来のプールされたRNA試料、又は対象若しくは個体ではない1以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、又は対照組織は、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、又は対象若しくは個体ではない疾患若しくは障害(例えば、がん)を有する1以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。
【0318】
いくつかの実施形態では、試料は、個体由来の組織試料である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腫瘍組織試料(例えば、生検組織)である。いくつかの実施形態では、組織試料は、肺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、腎組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、皮膚組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膵臓組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、胃組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、膀胱組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、食道組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、中皮組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、乳房組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、甲状腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、結腸直腸組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、頭頸部組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、骨肉腫組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、前立腺組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、卵巣組織、HCC(肝臓)、血球、リンパ節、及び/又は骨/骨髄組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、結腸組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、子宮内膜組織である。いくつかの実施形態では、組織試料は、脳組織(例えば、膠芽細胞腫、及び神経芽細胞腫など)である。
【0319】
いくつかの実施形態では、腫瘍組織試料(「腫瘍試料」という用語は、本明細書で同義に使用される)は、腫瘍細胞によって占有される腫瘍面積の一部又は全てを包含し得る。いくつかの実施形態では、腫瘍又は腫瘍試料は、腫瘍関連腫瘍内細胞及び/又は腫瘍関連間質(例えば、隣接腫瘍周辺線維形成性間質)によって占有される腫瘍面積を更に包含する。腫瘍関連腫瘍内細胞及び/又は腫瘍関連間質は、主要な腫瘍塊に直接隣接しており、かつ/又はそれと連続している免疫浸潤物(例えば、本明細書に記載の腫瘍浸潤免疫細胞)の面積を含み得る。
【0320】
いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、FACS、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光学、質量分光、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCR又はRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、及びFISH、並びにそれらの組合せからなる群から選択される方法を使用して試料中で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、FACS分析を用いて検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1バイオマーカは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中の循環免疫細胞で検出される。いくつかの実施形態では、循環免疫細胞は、CD3+/CD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、分析前に、免疫細胞が血液試料から単離される。細胞選別を含むが、これに限定されない、かかる細胞集団の任意の好適な単離/濃縮方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、抗PD-L1抗体等のPD-L1/PD-1軸経路阻害剤での処置に応答する個体由来の試料中で上昇する。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、血液試料中のCD3+/CD8+T細胞等の循環免疫細胞で上昇する。
【0321】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体は、検出可能な標識を含む二次抗体で検出される。いくつかの実施形態では、PD-L1を検出するために使用されるアッセイは、VENTANA PD-L1(SP142)アッセイ(VENTANA(登録商標)より市販)であり、これは、実施例でより詳細に記載されている。
【0322】
本開示のある特定の態様は、試料中の1つ以上の遺伝子又は1つ以上のタンパク質の発現レベルの測定に関する。いくつかの実施形態では、試料は、白血球を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、末梢血試料(例えば、腫瘍を有する患者由来)であり得る。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍試料である。腫瘍試料は、がん細胞、リンパ球、白血球、間質、血管、結合組織、基底膜、及び腫瘍に関連する任意の他の細胞型を含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍浸潤白血球を含有する腫瘍組織試料である。いくつかの実施形態では、試料は、1つ以上の細胞型(例えば、白血球)を分離又は単離するように処理され得る。いくつかの実施形態では、試料は、細胞型を分離又は単離することなく使用され得る。
【0323】
腫瘍試料は、生検、内視鏡検査、又は外科的手順を含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の任意の方法によって対象から得られ得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、凍結、固定(例えば、ホルマリン若しくは同様の固定剤を使用して)、及び/又はパラフィンワックスでの包理等の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、切片化され得る。いくつかの実施形態では、新鮮な腫瘍試料(すなわち、上述の方法によって調製されていない腫瘍試料)が使用され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、mRNA及び/又はタンパク質の完全性を保存するために溶液中でのインキュベーションによって調製することができる。
【0324】
いくつかの実施形態では、試料は、末梢血試料であり得る。末梢血試料は、白血球、PBMC等を含み得る。当該技術分野で既知の白血球を末梢血試料から単離するための任意の技法が使用され得る。例えば、血液試料が採取されてもよく、赤血球が溶解されてもよく、白血球ペレットが試料のために単離かつ使用されてもよい。別の例では、密度勾配分離を使用して、白血球(例えば、PBMC)を赤血球から分離することができる。いくつかの実施形態では、新鮮な末梢血試料(すなわち、上述の方法によって調製されていない末梢血試料)が使用され得る。いくつかの実施形態では、末梢血試料は、mRNA及び/又はタンパク質の完全性を保存するために溶液中でのインキュベーションによって調製することができる。
【0325】
いくつかの実施形態では、治療に対する応答性は、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効若しくは部分奏効を含む)をもたらすこと、又はがんの徴候若しくは症状を改善することのいずれか1つ以上を指し得る。いくつかの実施形態では、応答性とは、がん患者における腫瘍の状態、すなわち、応答、安定、又は進行を決定するための公開された一組のRECISTガイドラインに従う1つ以上の要因の改善を指し得る。これらのガイドラインのより詳細な考察については、Eisenhauerら、「Eur J Cancer」(2009年)第45巻第228~47頁;Topalianら、「N Engl J Med」(2012年)第366巻第2443~54頁;Wolchokら、「Clin Can Res」(2009年)第15巻第7412~20頁;及びTherasse,P.ら、「J.Natl.Cancer Inst.」第92巻第205~16頁(2000年)を参照のこと。応答性対象とは、がん(複数可)が、例えば、RECIST判断基準に基づく1つ以上の要因に従う改善を示す対象を指し得る。非応答性対象とは、がん(複数可)が、例えば、RECIST判断基準に基づく1つ以上の要因に従う改善を示さない対象を指し得る。
【0326】
従来の応答判断基準は、免疫療法薬の抗腫瘍活性を特徴付けるには適切でない場合があり、新たな病変の出現等の最初の明らかな放射線学的進行が先行し得る遅延応答をもたらし得る。したがって、新たな病変の出現の可能性を説明し、かつその後の評価で確認される放射線学的進行を可能にする修正された応答判断基準が開発されている。したがって、いくつかの実施形態では、応答性とは、免疫関連応答判断基準2(irRC)に従うより多くの要因のうちの1つの改善を指し得る。例えば、Wolchokら、「Clin Can Res」(2009年)第15巻第7412~20頁を参照されたい。いくつかの実施形態では、新たな病変は、定義された腫瘍負荷に追加され、例えば、その後の評価での放射線学的進行が続く。いくつかの実施形態では、非標的病変の存在は、完全応答の評価に含まれ、放射線学的進行の評価には含まれない。いくつかの実施形態では、放射線学的進行は、測定可能な疾患のみに基づいて決定され得、かつ/又は最初に記録された日から4週間以上の連続評価によって確認され得る。
【0327】
いくつかの実施形態では、応答性は、免疫活性化を含み得る。いくつかの実施形態では、応答性は、治療効力を含み得る。いくつかの実施形態では、応答性は、免疫活性化及び治療効力を含み得る。
【0328】
X.製品又はキット
本発明の別の態様では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)及び/又はプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)及び/又は代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)を含む、製品又はキットが提供される。いくつかの実施形態では、製品又はキットは、個体におけるがん(例えば、ステージIVの非扁平上皮NSCLCを含む非小細胞肺がん(NSCLC)などの肺がん)を治療する若しくは進行遅延させるために、又はがんを有する個体(例えば、ステージIVの非扁平上皮NSCLCを含むNSCLCなどの肺がん)の免疫機能を増強するために、PD-1軸結合アンタゴニストをプラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)及び代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)と組み合わせて用いるための指示を含む、パッケージ挿入物を更に含む。PD-1軸結合アンタゴニスト、当該技術分野で公知のプラチナ製剤のいずれかを、製品又はキットに含めることができる。いくつかの実施形態では、キットは、アテゾリズマブ、カルボプラチン又はシスプラチン、及びペメトレキセドを含む。
【0329】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト(アテゾリズマブなど)、プラチナ製剤(カルボプラチン又はシスプラチンなど)、及び代謝拮抗剤(ペメトレキセドなど)は、同一の容器中又は別々の容器中にある。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィン等)、又は金属合金(ステンレス鋼若しくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用上の指示を有する添付文書等の商業的視点及び使用者の視点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの実施形態では、製品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗新生物薬)のうちの1つ以上を更に含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。
【0330】
本明細書は、当業者が本発明を実践することを可能にするのに充分なものであるとみなされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。本明細書で引用される全ての公報、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例0331】
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されることになる。しかしながら、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修正又は変更が当業者に提案されており、本明細書の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
実施例1:化学療法未実施でありステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する患者における、カルボプラチン+ペメトレキセド又はシスプラチン+ペメトレキセドと比較した、カルボプラチン+ペメトレキセド又はシスプラチン+ペメトレキセドと組み合わせられるアテゾリズマブの第III相非盲検ランダム化試験。
【0332】
この試験は、化学療法未実施でありステージIVの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)を有する患者において、カルボプラチン+ペメトレキセド又はシスプラチン+ペメトレキセドと比較した、カルボプラチン+ペメトレキセド又はシスプラチン+ペメトレキセドと組み合わせられるアテゾリズマブの有効性、安全性、及び薬物動態を評価するためにデザインされた。本試験の具体的な目的及び対応するエンドポイントを以下に概説する。
試験の目的
【0333】
本試験における主な効果の目的は、以下の通りであった。
・ RECIST第1.1版((例えば、Eisenhauerら(2009年)「New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(第1.1版).」、「Eur J Cancer.」第45巻第228~47頁)を参照)に従って、無増悪生存期間(PFS)又は任意の原因による死亡のうち最初に発生した方を試験実施者が評価することによって測定した、治療意欲のある(intent-to-treat:ITT)集団における、カルボプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの有効性と、シスプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの有効性と、を評価すること。
・ 全生存期間(OS)によって測定し、ランダム化から任意の原因による死亡までの時間として定義した、カルボプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの有効性と、シスプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの有効性と、を評価すること。
【0334】
本試験における二次的な効果の目的は、以下の通りであった。
・ 奏効率(objective response rate:ORR)によって測定し、RECIST第1.1版に従って部分奏効(partial response:PR)又は完全奏効(complete response:CR)として定義した、カルボプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの有効性と、シスプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの有効性と、を評価すること。
・ RECIST第1.1版に従って奏効期間(duration of response:DOR)を研究実施者が評価することによって測定した、カルボプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドの有効性と、シスプラチン+ペメトレキセドと比較したアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの有効性と、を評価すること。
・ 1年及び2年でOS率を評価すること。
・ 患者が報告した、咳、呼吸困難、胸痛、又は腕/肩の痛みの肺がん症状のベースラインからの変化により測定したアテゾリズマブの影響を、欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer:EORTC)のQuality-of-Life Questionnaire-Core30(QLQ-C30)及び補足的肺がんモジュール(QLQ-LC13)を用いて評価すること。
・ EORTC QLQ-30及びEORTC QLQ-LC13の各々において、ランダム化から増悪(10ポイントの変更)までの期間と定義された、肺がん患者の症状におけるTTD(time to deterioration、劣化時間)。
・ 患者が報告した肺がん症状(胸痛、呼吸困難、及び咳)スコアのベースラインからの変化によって測定したアテゾリズマブの影響を、肺がん症状(Symptoms in Lung Cancer:SILC)スケールの症状重症度スコアを用いて決定すること。
【0335】
本試験の安全目標は以下の通りであった。
・ 米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events:NCI CTCAE)第4.0版に従って類別した有害事象の発生率、性質、及び重症度によって測定した、アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド又はアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの安全性及び忍容性を評価すること。
・ 試験治療投与中及び投与後の、バイタルサイン、身体所見、及び臨床検査値の変化を評価すること。カルボプラチン+ペメトレキセドとの併用した、又はシスプラチン+ペメトレキセドとの併用した、又はペメトレキセド単独との維持療法として用いた場合の、アテゾリズマブの安全性及び忍容性を評価すること。
・ アテゾリズマブに対する抗治療用抗体(anti-therapeutic antibody:ATA)の発生率及び力価を評価すること、並びに免疫原性反応と薬物動態、安全性、及び有効性との潜在的関係を検討すること。
【0336】
本試験の薬物動態学的目的は以下の通りである。
・ カルボプラチン+ペメトレキセドとの併用した、シスプラチン+ペメトレキセドとの併用した、又はペメトレキセド単独で用いた場合の、アテゾリズマブの薬物動態を性質決定すること。
・ アテゾリズマブ+ペメトレキセドと併用した場合の、カルボプラチンの薬物動態を性質決定すること。
・ アテゾリズマブ+ペメトレキセドと併用した場合の、シスプラチンの薬物動態を性質決定すること。
・ アテゾリズマブ+カルボプラチンと併用、又はアテゾリズマブ+シスプラチンと併用した場合の、ペメトレキセドの薬物動態を性質決定すること。
・ 注入後の最大観測血清アテゾリズマブ濃度(Cmax)を決定すること(グループA)。
・ 選択されたサイクルにおける、注入前、治療中断時、及びアテゾリズマブの最終投与から120日(±30日)後の、最小観測血清アテゾリズマブ濃度(Cmin)を決定すること(グループA)。
・ カルボプラチン又はシスプラチンの血漿中濃度を決定すること(グループA)。
・ ペメトレキセドの血漿中濃度を決定すること(グループA)。
【0337】
本試験の探索的目的は以下の通りである。
・ 6ヶ月及び1年のランドマーク時点における、無増悪生存期間(PFS)率を評価すること。
・ 各治療グループにおける3年での全生存期間(OS)率を評価すること。
・ 人口統計学的特性及びベースライン特性に基づくサブグループにおいて、RECIST第1.1版に従って研究実施者が評価したOS及びPFSにより測定された、アテゾリズマブの有効性を評価すること。
・ マイルストーン生存により測定した、アテゾリズマブの有効性を評価すること。
・ 免疫組織化学(IHC)、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)、次世代シーケンシング、並びに/又は他の方法及び有効性の測定によって定義した腫瘍中と血液中とのバイオマーカ(プログラム細胞死-リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死-1(PD-1)、及び体細胞変異などを含むが、これらに限定されない)の関係を評価すること。
・ 保存されている及び/又は新鮮な腫瘍組織及び血液における、予測的、予後的、及び薬力学的探索的バイオマーカ、並びに疾患状態、耐性機序、及び/又は試験治療に対する反応とのそれらの関連性を評価すること。
・ アテゾリズマブによる治療前、治療中、治療後、又は進行時に採取した、保存されている及び/又は新鮮な腫瘍組織及び血液(又は血液製剤)におけるPD-L1-、免疫関連バイオマーカ、及びNSCLC関連バイオマーカ、並びに他の探索的バイオマーカの状態と、化学療法と併用したアテゾリズマブに対する疾患状態及び/又は反応との関連と、を評価すること。
・ EuroQoL 5 Dimensions 5-Level(EQ-5D-5L)質問票により評価した患者の健康状態を評価及び比較して、償還のための経済モデルで使用するユーティリティスコアを生成すること。
・ 欧州がん研究・治療機構のQuality of Life Questionnaires EORTC QLQ-C30及びQLQ-LC13によって評価された、健康に関連した生活の質、肺がん関連症状、及び健康状態の患者報告アウトカム(patient-reported outcome:PRO)においてベースラインからの変化によって測定された、治療比較の各々におけるアテゾリズマブの影響を決定すること。
試験デザイン
【0338】
以下に、化学療法未経験かつステージIVの非扁平上皮NSCLCである患者において、(a)カルボプラチン+ペメトレキセドによる治療と比較したアテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド、及び(b)シスプラチン+ペメトレキセドによる治療と比較したアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセドの安全性及び有効性を評価するためにデザインされた、ランダム化第III相多施設非盲検試験の詳細を記載する。以下のスキーム1は、試験デザインを示す:
【0339】
上記のスキーム1では、ECOG PSとは「米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)のパフォーマンスステータス」を指し、NSCLCとは「非小細胞肺がん」を指し、RECIST第1.1版とは「Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(第1.1版)」を指す。
【0340】
本試験では、国際登録フェーズの全サイトでおよそ568人の患者が登録された。患者は、性別(男性対女性)、喫煙状況(喫煙歴なし対現在も喫煙及び/又は過去に喫煙)、ECOG(すなわち、米国東海岸がん臨床試験グループ)パフォーマンスステータス(0対1)、及び化学療法レジメン(カルボプラチン対シスプラチン)で層別化し、その後、以下の表5に示す通り、以下に記載の治療レジメンのうち1つを受けるように1:1の割合でランダム化された。ECOGパフォーマンスステータスに関する更なる詳細は、Okenら(1982年)「Am J Clin Oncol.」第5巻第649~655頁)に示す。
【0341】
誘導期は4又は6サイクルの21日間サイクルで投与した。誘導治療のサイクル数(すなわち、4回又は6回)は、研究実施者の裁量で決定され、ランダム化の前に決定されて文書化された。誘導治療は、以下のイベントが発生する(最初に生じたイベント)まで21日間サイクルで実施された:(1)4又は6サイクルの投与、(2)許容できない毒性、又は(3)疾患進行の確認。
【0342】
誘導期の後、増悪又は許容できない毒性が認められなかった患者には、アテゾリズマブ+ペメトレキセド(グループA)又はペメトレキセド単独(グループB)のいずれかによる維持療法を継続した。グループA又はグループBのいずれかへランダム化された患者は、疾患の進行、許容できない毒性、又は死亡まで、アテゾリズマブ+ペメトレキセド維持又はペメトレキセド維持による治療を継続した。誘導期又は維持期中に、グループAへランダム化された患者は、以下に記載のように研究実施者によって評価された臨床的有用性を経た場合、RECIST第1.1版による疾患の進行を超えて、アテゾリズマブによる治療を継続した。
【0343】
治療グループAの場合:治療中(誘導期又は維持期)、臨床的有用性の証拠を示した患者は、疾患進行についてRECIST第1.1版が満たされた後に以下の基準の全てを満たした場合、アテゾリズマブを継続することが許可された:
・ 研究実施者により評価された臨床的有用性の証拠。
・ 疾患の明らかな進行を示す症状及び徴候(臨床検査値の悪化(例えば、高カルシウム血症の発症又は悪化)を含む)がないこと。
・ 疾患進行によるECOGパフォーマンスステータスの低下は認められなかった。
・ プロトコルで許可された医療介入では管理できない重要な解剖学的部位(例えば、軟膜疾患)での腫瘍進行がないこと。
・ 患者は、初期進行時に試験治療を継続することを支持する他の治療選択肢の延期を認めることについて、書面による同意を得ていなければならない。
【0344】
化学療法(グループA及びグループBの両方)による治療は、RECIST第1.1版による疾患進行の証拠を示す全ての患者で中止された。
【0345】
表5のグループAにおける治療レジメンの投薬量及び投与スケジュールを、以下の表6A及び表6Bに示す。
【0346】
患者は、投与の遅延に関係なく、ベースライン時、及びサイクル1の第1日目から後の最初の48週の間、6週間(±7日)毎に腫瘍評価を受けた。第48週目の腫瘍評価の完了後、治療投薬の遅延に関係なく、それから9週間(±7日)毎に腫瘍評価が必要であった。RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患(radiographic disease)進行又は臨床的有用性喪失(RECIST第1.1版に従ってX線的疾患進行後に治療を継続した、アテゾリズマブ治療患者のみ対象)、同意の撤回、試験依頼者による試験の中止、又は死亡のいずれかが最初に起こるまで、患者は腫瘍評価を受けた。X線的疾患の進行以外の理由(例えば、毒性)で治療を中断した患者は、新たな抗がん剤治療を開始したかどうかにかかわらず、RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患進行又は臨床的有用性喪失(RECIST第1.1版に従ってX線的疾患進行後に治療を継続した、アテゾリズマブ治療患者のみ対象)、同意の撤回、試験依頼者による試験の中止、又は死亡のいずれかが最初に起こるまで、予定された腫瘍評価を継続した。
【0347】
臨床的に可能であれば、X線的疾患の進行時に、患者は腫瘍生検試料採取を行うことが推奨された。これらのデータを使用して、X線所見が腫瘍の存在と一致するかどうかを検討した。その上、これらのデータを分析して腫瘍組織の変化と臨床アウトカムとの関連性を評価し、化学療法単独による治療後のそのような機序と比較して、アテゾリズマブに対する進行及び耐性の潜在的な機序を更に理解した。この探索的バイオマーカ評価はいずれの治療に関連する決定にも使用されなかった。
【0348】
RECIST第1.1版に準拠するX線的疾患の進行後に治療を継続した患者は、6週間(±7日)毎、又は症状の悪化が生じた場合はそれより早く、腫瘍評価を受け続けた。これらの患者については、試験期間に関係なく、試験治療が中断されるまで、6週間(±7日)毎に腫瘍評価を継続した。
【0349】
RECIST第1.1版(例えば、毒性、症状の悪化)に準拠したX線的疾患の進行以外の理由で治療を中断した患者は、RECIST第1.1版によるX線的疾患の進行、同意の撤回、試験委託者による試験終了、又は死亡のいずれかが最初に起こるまで、試験治療(すなわち、治療投薬の遅延に関わらず、サイクル1の第1日目から48週間にわたり6週間(±7日)毎、続いて9週間(±7日)毎)を継続した場合と同じ頻度で予定された腫瘍評価を継続した。
【0350】
RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患の進行がない場合に新規の抗がん剤治療を開始した患者は、RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患進行(又はRECIST第1.1版に従ってX線的疾患進行後にアテゾリズマブ治療を継続した、アテゾリズマブ治療患者の臨床的有用性喪失)、同意の撤回、死亡、又は試験依頼者による試験の中止のいずれかが最初に起こるまで、予定された腫瘍評価を継続した。
【0351】
X線的進行の証拠があるにもかかわらず臨床的有用性を経験し続けたアテゾリズマブ治療患者に対する腫瘍評価は、上記のスケジュールに従って継続された。
患者
【0352】
患者が化学療法未経験でかつステージIVの非扁平上皮NSCLC患者である場合、この試験の参加に適格であった。
選択基準
【0353】
主な選択基準には以下が挙げられた:18歳以上;ECOGパフォーマンスステータス0又は1;組織学的又は細胞学的に確認されたステージIVの非扁平上皮NSCLC(the Union Internationale contre le Cancer/American Joint Committee on Cancer病期分類システム第7版、Detterbeckら(2009年)「The new lung cancer staging system.」、「Chest.」第136巻第260-71頁に準拠);混合型非小細胞がん(すなわち、扁平上皮性及び非扁平上皮性)の主要を有する患者は、主要な組織学的成分が非扁平上皮であると考えられる場合、適格とされた;ステージIVの非扁平上皮NSCLCに対する前治療なし;非転移性疾患に対する根治目的のネオアジュバント、アジュバント化学療法、放射線療法、又は化学放射線療法を以前に受けた患者は、化学療法及び/又は放射線療法の最後の投与以降、ランダム化から少なくとも6ヵ月の無治療期間を経験していなければならない;無症候性CNS転移の治療歴のある患者は、(a)転移がテント上及び/又は小脳性(すなわち、中脳、脳橋、髄質、又は脊髄への転移なし)に認められた場合;(b)患者がCNS疾患に対する治療としてコルチコステロイドを継続的に必要としなかった場合、(c)患者が、ランダム化前の7日間以内に定位放射線を、又は14日間以内に全脳放射線療法を受けなかった場合、(d)患者が、CNSに対する治療の完了とスクリーニングX線検査との間で中間的な進行の証拠を有しなかった場合にのみ、適格であった;スクリーニング検査で新たに無症候性CNS転移が検出された患者は、CNS転移に対する放射線療法及び/又は手術を受けていなければならない。スクリーニング検査で新たに無症候性CNS転移が検出された患者は、CNS転移に対する放射線療法及び/又は手術を受けていなければならない。治療後、これらの患者は、他の全ての基準を満たしている場合にはランダム化の前に更なる脳スキャンを必要とせず、適格であった可能性がある。適格患者は、RECIST第1.1版(以前に放射線照射を受けた病変は、放射線照射後の病変が唯一の病変部位ではなかったため、その部位での病勢進行が明確に証明されていた場合にのみ測定可能な病変とみなされた)によって定義される測定可能な疾患を示していた;ランダム化前の14日以内に得られた以下の臨床検査結果により定義される、適切な血液学的機能及び最終臓器機能:
o 顆粒球コロニー刺激因子を支持しない、ANC≧1500細胞/μL。
o リンパ球数≧500/μL。
o 輸血なしで、血小板数≧100,000/μL。
o ヘモグロビン≧9.0g/dL。(患者はこの基準を満たすために輸血することが許可された。)
o INR又はaPTT≦1.5×通常の上限(upper limit of normal:ULN)。(これは治療的抗凝固療法を受けていない患者にのみ適用された;治療的抗凝固療法を受けている患者は、安定した投与量である必要があった。)
o AST、ALT、及びアルカリホスファターゼ≦2.5×ULN、次の例外を伴う:
・ 記録された肝臓転移を有する患者:AST及び/又はALT≦5×ULN。
・ 記録された肝臓転移又は骨転移を有する患者:アルカリホスファターゼ≦5×ULN。
o 血清ビリルビン≦1.25×ULN。(血清ビリルビンレベル≦3×ULNであった既知のジルベール症候群患者が登録された。)
o 計算されたクレアチニンクリアランス(CRCL)≧45mL/分、又はシスプラチンを用いる場合、計算されたCRCLは≧60mL/分である必要がある。
【0354】
患者は、治療前の腫瘍組織試料を提出することが推奨された(可能な場合)。腫瘍組織が利用できなかった場合(例えば、以前の診断試験のために枯渇した場合)、患者は依然として適格であった。腫瘍組織が利用可能であれる場合、パラフィンブロックでの代表的なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍標本、又はFFPE腫瘍検体からの未染色で切ったばかりの連続した切片(好ましくは、少なくとも10個)が好ましかった。切片10個が入手できない場合、より少量の提出も可能であった。上記のFFPE検体が入手できない場合、どのような種類の検体(穿刺吸引、細胞ペレット検体(例えば、胸水由来)、灌流試料を含む)であってもよかった。検体には、関連する病理報告が付随した。利用可能な腫瘍組織試料は、登録前、又は登録後4週間以内に提出する必要があった。
除外基準
【0355】
主な除外基準には以下が挙げられた:EGFR遺伝子又はALK融合発がん遺伝子に感作性突然変異を有する患者;ランダム化前28日以内における治療目的での任意の他の治験薬による治療;スクリーニング及び事前X線的評価中におけるコンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)又は磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)による評価で決定された、活性又は未治療のCNS転移;ランダム化前の≧2週間にわたって臨床的に安定している証拠がない、手術及び/又は放射線による治療が確定的でない脊髄圧迫又は以前に診断及び治療された脊髄圧迫;軟膜疾患;制御されていない腫瘍関連疼痛(鎮痛薬を必要とする患者は、試験開始時に安定したレジメンを受けていなければならない);姑息的放射線治療が可能な症候性病変(例えば、骨転移又は神経インピンジメントを引き起こす転移)は、ランダム化前に治療する必要があった(患者は放射線の影響から回復すべきであり、必要最小限の回復期間はない)。更なる増殖が機能不全又は難治性疼痛を引き起こす可能性がある無症候性転移病変(例えば、脊髄圧迫に現在は関連付けられていない硬膜外転移)の患者は、適切である場合、ランダム化前に局所領域的療法について検討された。除外基準にはまた、以下も挙げられた:制御されていない胸水貯留、心膜液貯留、又は再発ドレナージ処置を必要とする腹水(月1回以上の頻度だが、患者は留置カテーテル(例えば、PleurX(登録商標))を使用)は、ドレナージ頻度に関係なく許可された;制御されていない又は症候性である高カルシウム血症(>1.5mmol/Lのイオン化カルシウム、又はカルシウム>12mg/dL、又は補正血清カルシウム>ULN;;ランダム化前にデノスマブを投与されていた患者は、適格であれば、試験期間中にデノスマブの使用を中止し、ビスホスホネート系薬剤に切り替える必要があった);ランダム化前5年以内のSCLC以外の悪性腫瘍であって、根治的アウトカムが期待され(例えば、5年OS>90%が期待される)、治療された、転移又は死亡のリスクが無視できる悪性腫瘍(適切に治療された子宮頸部の上皮内がん、基底細胞がん又は扁平上皮がん、根治目的で外科的に治療された限局性前立腺がん、根治目的で外科的に治療された非浸潤性乳管がんなど);IHCアッセイにより決定された既知の腫瘍PD-L1発現状況(例えば、PD-L1の発現状況が抗PD-1抗体又は抗PD-PD-L1抗体を用いた試験への組み入れのためのスクリーニング時に確認されたが適格ではなかった患者は、除外された);試験期間中に妊娠、授乳中、又は妊娠を予定していた女性;重症筋無力症、筋炎、自己免疫性肝炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、炎症性腸疾患、抗リン脂質抗体症候群に伴う血管血栓症、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、ギラン-バレー症候群、多発性硬化症、血管炎、又は糸球体腎炎(甲状腺ホルモン補充療法中の自己免疫関連甲状腺機能低下症の既往のある患者は適格であった;インスリン療法中の制御されたI型糖尿病患者は適格であった)を含むが、これらに限られない、自己免疫疾患の病歴;特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬剤性肺炎、特発性肺炎の病歴、又はスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺炎の所見。(放射線照射野における放射線肺臓炎(線維化)の病歴が認められた);陽性HIV検査結果;活性B型肝炎(慢性又は急性;スクリーニング時にB型肝炎表面抗原(HBs抗原)検査が陽性であると定義された)又はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)患者;活動性結核;ランダム化前4週間以内の重症感染症(感染症、菌血症、又は重症肺炎の合併症による入院を含むが、これに限定されない);ランダム化前2週間以内の抗生物質の経口又は静注による治療(予防的抗菌薬投与(例えば、尿路感染症の予防又は慢性閉塞性肺疾患の増悪の予防)を受けている患者は適格であった);ランダム化前3ヶ月以内のニューヨーク心臓協会による心疾患(クラスII以上)、心筋梗塞、又は脳血管発作などの重篤な心血管系疾患、不安定性不整脈、不安定性狭心症。(既知の冠動脈疾患、上記の基準を満たさないうっ血性心不全、又は左室駆出率<50%の患者は、適切である場合、心臓専門医に相談し、治療医師の意見で最適化された、安定した医学的レジメンを受ける必要があった);ランダム化前28日以内、又は試験期間中に主要な外科的処置が必要となると予想される、診断以外の主要な外科的処置;同種骨髄移植又は固形臓器移植の病歴;治験薬の使用を禁忌とする、又は結果の解釈に影響を与え得る若しくは患者の治療合併症リスクを高め得る疾患又は状態に合理的な疑念を伴う、その他の疾患、代謝機能障害、身体検査所見、又は臨床検査所見;試験手順の理解、遵守、及び/又は遵守を妨げる疾患又は状態の患者;ランダム化前28日以内に治療目的で任意の他の治験薬を用いた治療;ランダム化前前4週間以内又は試験期間中に弱毒生ワクチンが必要となると予想される、弱毒生ワクチンの投与;EGFR阻害薬又はALK阻害薬による前治療;試験治療開始前21日以内のホルモン療法を含む、任意の承認された抗がん剤治療;CD137アゴニスト又は免疫チェックポイント阻害療法、抗PD-1、及び抗PD-L1治療抗体による前治療。(以前に抗細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)治療を受けた患者は登録に適格であったが、但し、ランダム化の少なくとも6週間前に抗CTLA-4の最終投与を受けており、患者が抗CTLA-4(NCI CTCAEグレード3及び4)による重篤な免疫関連副作用の病歴が無いことを条件とする。)主な除外基準には以下も挙げられた:無作為化の前の、ランダム化前28日以内に治療目的で任意の他の治験薬を用いる治療、4週間又は5半減期以内に全身免疫賦活剤(インターフェロン及びインターロイキン2を含むが、これらに限定されない)を用いる治療、どちらか長い方(がんワクチンによる前治療は許可されていた);ランダム化前の2週間以内に全身性免疫抑制薬(コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、及び抗腫瘍壊死因子(抗TNF)剤を含むが、これらに限定されない)を用いる治療。急性低用量(≦10mg経口プレドニゾン又は同等物)の免疫抑制薬の全身投与を受けた患者は本試験に適格であった。更に、慢性閉塞性肺疾患に対するコルチコステロイド(≦10mg経口プレドニゾン又は同等物)、起立性低血圧患者に対するミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、及び副腎皮質機能不全に対する低用量コルチコステロイド補充の使用が許可された。キメラ若しくはヒト化抗体、又は融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応、アナフィラキシ反応、又はその他の過敏反応の病歴がある場合;チャイニーズハムスタ卵巣細胞又はアテゾリズマブ製剤の任意の成分で産生されるバイオ医薬品に対する、既知の過敏性又はアレルギー;及び、カルボプラチン、シスプラチン、又は他の白金含有化合物に対するアレルギー反応の病歴;聴覚障害患者(シスプラチン);NCI CTCAE第4.0版により定義されるGrade≧2の末梢神経障害(シスプラチン);シスプラチンついてクレアチニンのクリアランスレベル<60mL/分、又はカルボプラチンについて<45mL/分。
治療方法
【0356】
568人の患者を、アテゾリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド若しくはアテゾリズマブ+シスプラチン+ペメトレキセド(グループA)、又はカルボプラチン+ペメトレキセド若しくはシスプラチン+ペメトレキセド(グループB)による治療を受けるように、ランダム化(1:1)した。(治療グループA及びBの詳細を、上記の表5に示す。)
【0357】
誘導期中に、少なくとも1つの化学療法成分が21日間サイクルの間に少なくとも1回投与されていれば、化学療法サイクルは規定数の誘導化学療法サイクル(4回又は6回)に数えられた。化学療法成分が投与されないサイクルは、誘導化学療法サイクルの総数には計上しなかった。
【0358】
誘導期のいずれかの時点で、更なる臨床的有用性(グループAに登録された患者の場合)又は疾患の進行(グループBに登録された患者の場合)が認められなかった患者は、全ての試験治療を中断した。上記の基準がない場合、4サイクル又は6サイクルの誘導期の後、患者は維持療法を開始した(グループAにアテゾリズマブ+ペメトレキセド、又はグループBにペメトレキセド)。
【0359】
治療中(誘導期又は維持期)、臨床的有用性の証拠を示したグループAの患者は、疾患進行についてRECIST第1.1版が満たされた後に、アテゾリズマブを継続することが許可された。しかしながら、化学療法による治療は中断した。
【0360】
患者は、地域の標準治療及び製造業者の指示に従って、白金-ペメトレキセド治療のために制吐薬及び静注による水分補給を受けた。しかしながら、これらの免疫調節効果のために、ステロイドによる前投薬は臨床的に可能な場合に限られた。その上、ペメトレキセドに関連した発疹が認められた場合、臨床的に可能であれば、局所ステロイド外用薬の使用がフロントライン治療として推奨された。ペメトレキセドの前投薬を以下の表7に示す。以下の表8に、誘導期及び維持期におけるペメトレキセド+プラチナ製剤の治療投与のための注入時間を示す。
IM=筋肉内
PO=経口
Q9w= 9週間毎。
AUC=濃度時間曲線下面積
IV=静脈内
PD=疾患の進行
Q3w=3週間毎。
【0361】
578人の患者を、アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン若しくはシスプラチン(グループA)、又はペメトレキセド+カルボプラチン若しくはシスプラチン(グループB)による治療を受けるように、ランダム化(1:1)した。(治療グループA及びBの詳細を、上記の表5、表6A、及び表6Bに示す。)患者の人口統計学的特性及びベースライン特性を、以下の表9A及び表9Bに示す。
*有病率はバイオマーカ評価可能集団で算出する
【0362】
可能であれば、患者はランダム化当日に試験薬の初回投与を受けた。これが不可能な場合、初回投与はランダム化後5日以内に行われた。アテゾリズマブは治験依頼者より提供された。カルボプラチン、シスプラチン、及びペメトレキセドはバックグラウンド治療であり、非治験用医薬品(non-investigational medicinal product:NIMP)と見なした。カルボプラチン、シスプラチン、及びペメトレキセドは、市販の製剤で使用した。アテゾリズマブ製剤は、20mLガラスバイアル中の滅菌した液体として提供された。バイアルは20mL(1200mg)のアテゾリズマブ溶液を送達するように設計したが、全20mL容量の送達を可能にするために、記載された容量より多く含有していてもよい。
【0363】
試験の誘導期はアテゾリズマブ/プラセボ+化学療法を4又は6サイクル実施した。各サイクルの期間は21日間とした。誘導治療のサイクル数(4回又は6回)は研究実施者が決定し、ランダム化前に記録した。上記の模式図を参照されたい。各サイクルの第1日目に、全ての適格患者に以下の順序で試験薬注入が行われた。
グループA:アテゾリズマブ→ペメトレキセド→カルボプラチン又はシスプラチン
グループB:ペメトレキセド→カルボプラチン又はシスプラチン
【0364】
誘導期では、試験治療は以下の第1日目のような様式で投与した。
1.アテゾリズマブ(1200mg、平均体重に基づく投与量15mg/kgに相当)を、60(±15)分かけて静脈内投与し(初回投与時は、後続の注入に対して30(±10)分に短縮することができる)し、続いて、
2.ペメトレキセド(500mg/m2)をおよそ10分かけて静脈内投与し、続いて、
3.カルボプラチンを、濃度時間曲線下面積(AUC)6mg/mL/分(カルバート式投薬)下における初回目標面積に達するまで30-60分かけて静脈内投与した;
又は
シスプラチンを、75mg/m2の用量で1~2時間かけて静脈内投与した。
【0365】
AUC6のカルボプラチン用量は、カルバート式を用い算出した(Calvertら(1989年)「J Clin Oncol」第7巻第1748-56頁)。
カルバート式:
総投与量(mg)=(目標AUC)×(糸球体濾過率[GFR]+25)
【0366】
AUCに基づく投与量を算出するためにカルバートの式で使用したGFRは、125mL/分を超えないものとした。このプロトコルの目的のため、GFRはクレアチニンクリアランス(creatinine clearance:CRCL)と同等であると考えられた。CRCLは、機関のガイドライン、又はCockcroft及びGault(1976年)「Nephron」第16巻第31-41頁に記載の方法により、以下の式を用いて算出する:
【0367】
式中:CRCL=クレアチニンクリアランス(mL/分)
年齢=患者の年齢(歳)
wt=患者の体重(kg)
Scr=血清クレアチニン(mg/dL)
【0368】
血清クレアチニンレベルが異常に低い患者では、最小クレアチニンレベル0.8mg/dLを用いてGFRを推定するか、又は推定GFRを125mL/分に制限した。過剰投与による潜在的な毒性を避けるために、医師は、所望の曝露(AUC)に対してカルボプラチンの用量に上限を設けることが推奨された。カルボプラチンのラベルに記載されたカルバート式に基づき、最大用量は、以下のように算出した:
カルボプラチンの最大投与量(mg)=目標AUC(mg×分/mL)×(GFR+25mL/分)
【0369】
最大用量は、腎機能が正常な患者では125mL/分を上限とするGFR推定値に基づいた。より高い推定GFR値は使用されなかった。目標AUC=6の場合、最大用量は6×150=900mgであった。目標AUC=5の場合、最大用量は5×150=750mgであった。目標AUC=4の場合、最大用量は4×150=600mgであった。カルボプラチン投与に関する更なる詳細は、www(dot)fda(dot)gov/aboutfda/centersoffices/officeofmedicalproductsandtobacco/cder/ucm228974.htmに記載されている。
【0370】
誘導期中に、少なくとも1つの化学療法成分が21日間サイクルの間に少なくとも1回投与されていれば、化学療法サイクルは規定数の誘導化学療法サイクル(4回又は6回)に数えられた。化学療法が実施されないサイクルは、誘導化学療法サイクルの総数には計上しなかった。誘導期の後、患者は、アテゾリズマブ(すなわち、1200mg、点滴静注、上述の通り)及びペメトレキセド(すなわち、500mg/m
2、上記の通り静注)による維持療法を、誘導期の後から21日間サイクル毎に第1日目に開始した。
図1及び上記の試験概略図を参照のこと。アテゾリズマブの用量修正は許されなかった。
許可された治療
【0371】
サイクル1後の任意のアテゾリズマブ注入には、抗ヒスタミン剤の前投薬を行ってもよい。患者が試験に参加している間は、以下の療法を継続する必要がある。
・ 経口避妊薬
・ ホルモン補充療法
・ 予防的又は治療的抗凝固療法(安定した投与量の低分子ヘパリン又はワルファリンなど)
・ 症状緩和目的の放射線療法(例えば、既知の骨転移の治療)は、腫瘍標的病変(例えば、RECIST第1.1版に従った腫瘍評価による反応について患者が評価できなくなるようになるため、照射される病変は、唯一の疾患部位ではない)の評価を妨害しないことを条件とした。
・ 姑息的放射線療法中にアテゾリズマブを控える必要はない。
・ 不活性なインフルエンザワクチン接種
・ 食欲促進剤として投与されたメゲストロール
・ 慢性閉塞性肺疾患のための吸入コルチコステロイド
・ ミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)
・ 起立性低血圧又は副腎皮質機能不全の患者のための低用量コルチコステロイド
【0372】
概して、患者のケアは、地域の基準に従って、臨床的に示されているように、支持療法で管理された。輸液関連症状を経験した患者は、標準的な治療法に従って、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ジフェンヒドラミン、及び/若しくはファモチジン、又は他のH2受容体アンタゴニストにより症候的に治療されていてもよい。呼吸困難、低血圧、喘鳴、気管支痙攣、頻脈、酸素飽和度低下、又は呼吸窮迫によって明らかとなる、重篤な輸液関連イベントは、臨床的に示される支持療法(例えば、酸素補給及びβ2-アドレナリンアゴニスト)により管理された。
アテゾリズマブで治療した患者に対する注意療法
【0373】
全身性コルチコステロイド及びTNF阻害剤は、アテゾリズマブによる治療の潜在的に有益な免疫学的効果を弱めることが知られている。したがって、全身性コルチコステロイド又はTNF阻害剤が日常的に投与される状況では、抗ヒスタミン薬を含む代替薬が、治療を行う医師によって最初に検討された。代替案が実行可能でない場合、造影剤を用いたCTスキャンが禁忌である患者(すなわち、造影剤アレルギー又は腎クリアランス障害のある患者)の場合を除いて、全身性コルチコステロイド及びTNF阻害剤が、治療を行う医師の裁量で投与された。アテゾリズマブ療法に関連する場合、特定の有害事象の治療には、治療を行う医師の裁量に注意しつつ、全身性コルチコステロイドが推奨される。
禁止されている療法
【0374】
がんの治療を目的とした任意の併用療法は、保健当局が承認したものであれ又は実験的なものであれ、抗がん剤に応じて、試験治療開始前の様々な期間、及び試験治療中は病勢進行が確認され患者が試験治療を中断するまで、禁止された。禁止されている併用療法には、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、放射線療法、治験薬、又はハーブ療法が含まれるが、これらに限定されない(特に明記されていない限り)。
【0375】
特に断りのない限り、患者が試験に参加している間、以下の投薬は禁止された:
・ デノスマブ;登録前にデノスマブを投与されていた患者は、ビスホスホネート系薬剤の投与を受ける意思があり、適格であったはずである。
・ 任意の弱毒生ワクチン(例えば、FluMist(登録商標))、ランダム化前4週間以内、又は治療中、又は最後のアテゾリズマブ投与から5ヶ月以内(アテゾリズマブにランダム化された患者の場合)。
・ 造影剤を用いたCTスキャンが禁忌であった患者の前投薬でのステロイドの使用する(すなわち、造影剤アレルギー又は腎クリアランス障害のある患者);このような患者では、胸部の非造影CTスキャンと、腹部及び骨盤の非造影CTスキャン又はMRIと、を行った。
【0376】
ハーブ療法の併用は、それらの薬物動態、安全性プロファイル、及び潜在的薬物-薬物相互作用が一般的に不明であるため、推奨されなかった。しかしながら、試験における患者へのハーブの使用は研究実施者の裁量で許可されたが、但し、任意の試験治療との既知の相互作用がなかった。上記のように、がんの治療を目的としたハーブ療法は禁止された。
腫瘍及び反応の評価
【0377】
患者は、試験全体を通して安全性及び忍容性について綿密に監視され、各投与の前に毒性について評価された。
【0378】
各患者の病歴には、臨床的に重要な疾患、手術、がん歴(これまでのがん治療や処置を含む)、生殖状態、喫煙歴、及びスクリーニング受診前7日以内に患者が使用した全ての薬物(例えば、処方薬、市販薬、ハーブ、又はホメオパシの治療薬、栄養補助食品)が含まれた。
【0379】
NSCLCのがん歴には、以前のがん治療、手順、及び腫瘍の突然変異状態の評価(例えば、EGFR突然変異の感作性、ALK融合状態)が含まれた。以前に腫瘍の突然変異状態について検査されていない患者については、スクリーニング時に検査を必要とした。これらの患者については、検査は局所的に実施されるか、又はスクリーニング期間中に中央評価に供されるかのいずれかであった。EGFR突然変異又はALK状態検査が局所的に実施されなかった場合、これらの遺伝子の突然変異状態の中心的評価のために、更なる腫瘍切片が必要であった。人口統計データには、年齢、性別、及び自己申告による人種/民族が含まれた。
【0380】
完全な身体試験には、頭、目、耳、鼻、及び喉、並びに心臓血管系、皮膚科、筋骨格系、呼吸器系、胃腸系、泌尿生殖器系、及び神経系の評価が含まれた。ベースラインで特定された任意の異常を記録した。
【0381】
その後の訪問で(又は臨床的に示されるように)、限定的な症状指向性の身体検査が行われた。ベースライン異常からの変化は患者の備考に記録した。新規又は悪化した臨床的に有意な異常は、有害事象として記録された。
【0382】
バイタルサインには、患者が座った状態での体温、脈拍数、呼吸数、並びに収縮期及び拡張期血圧の測定が含まれた。
腫瘍及び反応の評価
【0383】
スクリーニング評価には、胸部及び腹部のコンピュータ断層撮影(CT)スキャン(禁忌でない限り経口/IV造影剤を使用)又は磁気共鳴画像(MRI)が含まれた。骨盤のCT又はMRIスキャンは、スクリーニング時に、臨床的に示されるように、又はその後の反応評価における地域の標準治療に準拠して、必要であった。可能であれば胸部のスパイラルCTスキャンが取得されたが、必須ではなかった。
【0384】
全ての患者のCNS転移を評価するため、スクリーニング時に頭部のCT(禁忌でない場合は造影剤を使用)又はMRIスキャンが必要であった。スキャンが不明確な場合には、ベースライン時にCNS転移の診断を確定又は否定するために、脳のMRIスキャンが必要であった。活性又は未治療のCNS転移を有する患者は、この研究に適格ではなかった(除外基準を参照)。
【0385】
腫瘍評価のためのCTスキャンが陽電子放射断層撮影(PET)/CTスキャナで行われる場合、CT取得は、完全造影診断CTスキャンの標準と一致する必要がある。
【0386】
臨床的に必要な場合、骨スキャン及び首のCTスキャンもまた実施した。研究実施者の裁量で、RECIST第1.1版に従う測定可能な疾患の評価の他の方法を使用してもよい。
【0387】
インフォームドコンセントを得る前に標準治療として実施された腫瘍評価を、検査を繰り返すのではなく、サイクル1の第1日目から28日以内に実施することが許容された。スクリーニング時に既知の疾患部位を全て記録する必要があり、その後の腫瘍評価のたびに記録を再評価した。スクリーニング時に放射線照射を受けた脳転移の既往がある患者は、スキャンが臨床的に適応とされない限り、その後の腫瘍評価時に画像脳スキャンを受ける必要はなかった。スクリーニング時に疾患部位を評価するために使用されたものと同じ放射線学的手順が、研究を通して使用された(例えば、CTスキャンの同じ造影プロトコル)。奏効は、RECIST第1.1版(Eisenhauerら(2009年)「New response evaluation criteria in solid tumors:Revised RECIST guideline(第1.1版).」、「Eur J Cancer.」第45巻第228~47頁を参照)及び修正RECIST基準を用いて、研究実施者により評価された。改訂RECIST基準は、RECIST第1.1版(Eisenhauerら;Topalianら(2012年)「N Engl J Med.」第366巻第2443~54頁;及び、Wolchokら(2009年)「Clin Can Res」第15巻第7412~20頁)、及び免疫関連反応基準(Wolchokら;Nishinoら(2014年)「J Immunother Can.」第2巻第17頁;及びNishinoら(2013年)「Clin Can Res.」第19巻第3936~43頁)に由来した。評価は、訪問間の内部一貫性を保証するために、可能であれば同じ評価者によって行われた。結果は次のサイクルでの投与の前に研究実施者によってレビューされた。
【0388】
患者は、サイクル1の第1日目以降は6週間(±7日)毎に48週間、その後は9週間(±7日)毎に、第48週目の腫瘍の評価終了後、治療の遅れにかかわらず、RECIST第1.1版(RECIST第1.1版のみに従って、疾患進行を超えて治療を継続しているアテゾリズマブ治療患者に対する、臨床的有用性の喪失)に準拠したX線的疾患の進行、同意の撤回、死亡、又は試験依頼者による試験終了のいずれかが最初に起こるまで腫瘍評価を受けた。
【0389】
RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患の進行が以外の理由(例えば、毒性、症状の悪化)で治療を中断した患者は、RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患進行(又はRECIST第1.1版に従ってX線的疾患進行後にアテゾリズマブ治療を継続した、アテゾリズマブ治療患者の臨床的有用性喪失)、同意の撤回、死亡、又は試験依頼者による試験の中止のいずれかが最初に起こるまで、予定された腫瘍評価を継続した。
【0390】
RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患の進行がない場合に新規の抗がん剤治療を開始した患者は、RECIST第1.1版に準拠したX線的疾患進行(又はRECIST第1.1版に従ってX線的疾患進行後にアテゾリズマブ治療を継続した、アテゾリズマブ治療患者の臨床的有用性喪失)、同意の撤回、死亡、又は試験依頼者による試験の中止のいずれかが最初に起こるまで、予定された腫瘍評価を継続した。
【0391】
X線的進行の証拠があるにもかかわらず臨床的有用性を経験し続けたアテゾリズマブ治療患者に対する腫瘍評価は、上記のスケジュールに従って継続された。
無増悪生存期間の探索的分析
【0392】
ランドマーク時点での無増悪生存期間:ランダム化後に疾患が進行することなく患者が生存する確率(例えば、6ヶ月時及び1年時)として定義されるPFS率は、Greenwoodの式を用いて算出された95%CIと共に、各治療グループについてKaplan-Meier法を用いて推定された。治療グループ間のPFS率の差に対する95%CIは、通常近似法を用いて推定され、標準誤差は、Greenwood法を使用して算出された。
【0393】
非プロトコル指定の抗がん剤治療:プロトコルに規定されていない抗がん剤治療のPFSへの影響は、PFSイベント前にプロトコルに規定されていない抗がん剤治療を受けた患者数に応じて評価された。>5%の患者がいずれかの治療グループでPFSイベントの前にプロトコルに規定されていない抗がん剤治療を受けた場合、PFSイベントの前にプロトコルに規定されていない抗がん剤治療を受けた患者が、プロトコルに規定されていない抗がん剤治療を受ける前の最後の腫瘍評価時に打ち切られた、治療グループ間の比較について感度分析が実施された。
【0394】
サブグループ分析:人口統計学的特性(例えば、年齢、性別、及び人種/民族)、ベースラインの予後特性(例えば、ECOGパフォーマンスステータス、喫煙状況、及び化学療法の種類)により定義されたサブグループにおける試験結果の一貫性を評価するため、これらのサブグループにおけるPFSの期間を検討した。Cox比例ハザードモデルから推定された非層別化HRと、PFS中央値のKaplan-Meier推定値と、を含むPFSの概要が、治療グループ間の比較におけるカテゴリ変数の各レベルについて別々に作成された。
【0395】
感度分析:PFSのイベント補完ルールを用いて研究実施者により決定された、PFSの主要分析に対する予定された腫瘍評価欠落の潜在的な影響を評価するために、感度解析を実施した。次の2つの補完ルールを考慮した:(1)RECIST第1.1版に従って、PFSイベントの直前に予定されていた2つ以上の腫瘍評価を患者が欠席した場合、患者はこれらの欠席した来院の前の最後の腫瘍評価で患者は打ち切られた。(2)RECIST第1.1版に従ってPFSイベントの直前に予定されていた2回以上の腫瘍評価を患者が欠席した場合、患者はこれらの欠席した評価の最初の日に進行したものとして計上された。補完ルールは両治療グループの患者にも適用された。
【0396】
追跡不能がOSに及ぼす影響は、追跡不能となった患者数に応じて評価される。いずれかの治療グループでOSの追跡ができなくなった患者が>5%であった場合、感度分析を実施して、追跡不能になった患者を生存が確認された最後の日に死亡したとみなすことで、治療グループ間の比較を行う。
全生存期間の探索的分析
【0397】
追跡調査の失敗:OSに対する追跡不能の影響は、追跡不能となった患者数に応じて評価された。いずれかの治療グループでOSの追跡ができなくなった患者が>5%であった場合、追跡不能になった患者を生存が確認された最後の日に死亡したとみなすことで、治療グループ間の比較について感度分析を実施した。
【0398】
サブグループ分析:人口統計学的特性(例えば、年齢、性別、及び人種/民族)、ベースラインの予後特性(例えば、ECOGパフォーマンスステータス、喫煙状況、化学療法の種類、ベースラインにおける肝転移の存在)により定義されたサブグループにおける試験結果の一貫性を評価するため、これらのサブグループにおけるOSの期間を検討する。Cox比例ハザードモデルから推定された非層別化HRと、生存帰還中央値のKaplan-Meier推定値と、を含む生存の概要が、治療グループ間の比較におけるカテゴリ変数の各レベルについて別々に作成された。
【0399】
3年後のランドマークでの全生存期間:3年でのOS率は、Greenwoodの式に由来する95%CIと共に、各治療グループについてKaplan-Meier法を用いて推定された 2つの治療グループ間のOS率の差に対する95% CIは、正規近似法を用いて推定された。
【0400】
マイルストーン全生存期間分析:長期生存及び遅発性臨床効果の影響を評価するため、マイルストーンOS分析を実施した(Chen(2015年)「J Natl Cancer Inst.」第107巻第djv156)。マイルストーンOSは、所定の時点で横断的評価が行われるOSエンドポイントであった。マイルストーンOS分析は一次OS分析に規定された方法と同じ方法を用いて実行された。
【0401】
非プロトコル指定の抗がん剤治療:プロトコルに規定されていない抗がん剤治療のOSへの影響は、そのような治療法を受けた患者数に応じて評価された。例えば、プロトコルに規定されていない抗がん剤治療の開始から死亡又は打切り日までの期間は、その後のプロトコルに規定されていない抗がん剤治療のOSに対する考えられる作用の範囲に応じて割り引いてもよい(例えば、10%、20%、30%)。
【0402】
探索的バイオマーカ分析:探索的バイオマーカ分析は、有効性及び/又は有害事象を含む、これらのマーカと試験薬剤反応との関係を理解するために実施した。腫瘍バイオマーカには、IHC、qRT-PCR、又はその他の方法で定義されているPD-L1及びCD8が含まれるが、これらに限定されない。必要に応じて、更なる薬力学的分析を実施した。
【0403】
ベンタナ抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体免疫組織化学(IHC)アッセイを使用して、プログラム細胞死-リガンド1(PD-L1)IHC状態を決定した。
【0404】
装置説明:ベンタナ抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体は、Ventana BenchMark ULTRA自動スライド染色機で染色したホルマリン固定パラフィン包埋非小細胞肺がん(NSCLC)組織での、PD-L1タンパク質の半定量的免疫組織化学的評価における使用を意図している。アテゾリズマブによる治療が有益となり得る局所進行性又は転移性疾患を有するNSCLC患者の選択の一助として適応される。
【0405】
ベンタナ抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体は、Ventana Medical Systems OptiView DAB IHC検出キット、及びVentana Medical Systemsの自動化BenchMark ULTRAプラットフォーム上のOptiView増幅キットとの使用に最適化された、希釈済みのすぐに使える抗体製品である。抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体の5mLディスペンサには、PD-L1タンパク質に対するウサギモノクローナル抗体およそ36μgが含まれており、50回の検査に充分な試薬が含まれている。試薬及びIHC手順は、Ventana System Software(VSS)を利用したBenchMark ULTRA自動スライド染色機での使用に最適化されている。
【0406】
スコアリングシステム:NSCLCにおける抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体によるPD-L1染色は、ベンタナ抗PD-L1(SP142)ウサギモノクローナル一次抗体を用いて腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞のどちらにおいても観察可能である。
結果
【0407】
【0408】
表10の通り、ITT集団において、研究実施者が評価した無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意なかつ臨床的に意味のある改善が試験により認められたことが示される。加えて、本試験は、全生存期間(OS)の数値的改善を実証した。
【0409】
アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者は、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者と比較して、延長した無増悪生存期間を実証した。
図2を参照のこと。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者の6ヶ月PFSが59.14%であったのに対し、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者では40.93%であった。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者の12ヶ月PFSが33.71%であったのに対し、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者では16.97%であった。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者は、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者と比較して、数値的に改善した全生存期間を実証した。
図3を参照されたい(NE=評価せず)。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者の6ヶ月OSが59.61%であったのに対し、プラセボ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者では55.39%であった。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者の12ヶ月OSが59.6%であったのに対し、プラセボ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者では55.4%であった。
【0410】
その上、アテゾリズマブ+ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者で確認された全奏効率(ORR)が47%であったのに対し、ペメキシトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者で確認されたORRは32%あった(CR:グループAで1.7%対グループBで0.7;CR/PR:グループAで46.9%対グループB32.2%)。
図4を参照のこと。(CR=完全奏効;CR/PR=完全奏効/部分奏効;SD=安定している疾患;PD=疾患の進行。)未確認のORRもまたグループAで改善された。下記の表11に示すように、アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者で確認された奏効期間(DOR)の中央値(すなわち、グループA)が10.1ヵ月であったのに対し、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された患者で確認されたDORの中央値(すなわち、グループB)は7.2ヵ月であった。DORをRECIST第1.1版基準に従って評価した。確認されていないDORもまたグループAで改善した。グループAの患者の42%が継続的な反応を示したのに対し、グループBの患者では30%であった。
【0411】
PFSの利点は、分析された全てのサブグループで観察されました。
図5Aを参照されたい。数値的なOSの改善もまた観察された。
図6を参照されたい。一貫した結果が臨床サブグループ全体で示された。
【0412】
アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンの安全性プロファイルは、個別の治療成分の既知のリスクと一致していた。新規の安全性シグナルは確認されなかった。主要な安全性パラメータは、アテゾリズマブとプラチナ系化学療法との併用を検討する他の一次NSCLC研究の知見と一致している。
【0413】
この試験は、アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンの組合せによる初期(一次)治療が、化学療法(すなわち、ペメトレキセド+カルボプラチン+又はシスプラチン)単独と比較して、疾患の悪化又は死亡(PFS)のリスクを低減することを示した。アテゾリズマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチンで治療された患者においてもまた、化学療法(すなわち、ペメトレキセド+カルボプラチン又はシスプラチン)単独で治療された患者と比較して、全生存期間の数値的改善がみられた。
実施例2:ステージIV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者の重要なサブグループにおける一次治療としての、アテゾリズマブと、カルボプラチン+ペメトレキセド又はシスプラチン+ペメトレキセドと、の併用の有効性
【0414】
実施例1に記載された結果に基づいて、臨床的に関連する患者サブグループ(例えば、人種、年齢、喫煙歴、及びベースラインでの肝転移)におけるPFS及び暫定OSを調べる、探索的有効性分析を実施した。
【0415】
578人の患者を登録した。追跡期間中央値は14.8ヶ月であった。ベースライン特性は、治療グループ間でほぼバランスが取れていた。重要なサブグループにおけるPFS及び暫定OSデータについては、表12及び
図5Bを参照のこと。
【0416】
カルボプラチン又はシスプラチン+ペメトレキセドへのアテゾリズマブの追加は、ほとんどの主要な臨床サブグループにおいて、PFS及びOSの数値的改善をもたらした。延命効果は、アジア人患者、高齢患者、及び非喫煙者患者でより顕著であるようであった。
実施例3:探索的分析:実施例1のバイオマーカ評価可能な患者におけるPD-L1状態による無増悪生存期間
【0417】
バイオマーカ評価可能患者(すなわち、実施例1由来)から得たベースライン組織試料における腫瘍浸潤免疫細胞(IC)及び腫瘍細胞(TC)のPD-L1発現レベルを分析した。腫瘍細胞をTC0、TC1、TC2、又はTC3としてスコアリングし、腫瘍浸潤免疫細胞をIC0、IC1、IC2、及びIC3としてスコアリングした。
【0418】
TC3又はIC3の患者(すなわち、「高PD-L1」);TC1、TC2、IC1、又はIC2(又は「低PD-L1」);及び、TC0又はIC0(すなわち、「PD-L1陰性」)としてスコアリングされた患者に関する全奏効率(ORR)及び無増悪生存率(PFS)を、各治療グループについて分析した。これらの分析の結果を
図7A、
図7B、及び
図7Cに示す。
【0419】
図7Aに示されるように、アテゾリズマブ+ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された「高PD-L1」患者は、72%のORRを示した。対照的に、ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチンで治療された「高PD-L1」患者のORRは、55%であった。アテゾリズマブ+ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された「高PD-L1」患者のPFS中央値が10.8ヶ月であったのに対し、対照群の「高PD-L1」患者のPFS中央値は6.5ヶ月であった。治療グループにおける「高PD-L1」患者間の12ヶ月PFSは46%であったが、一方で対照グループにおける「高PD-L1」患者間の12ヶ月PFSは25%であった。
【0420】
対照グループと比較して、治療グループの「低PD-L1」患者におけるORR又はPFS中央値に有意差は認められなかった。治療グループにおける「低PD-L1」患者間の12ヶ月PFSは27%であり、対照グループにおける「低PD-L1」患者間の12ヶ月PFSは20%であった。
図7Bを参照されたい。
【0421】
図7Cは、アテゾリズマブ+ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された「PD-L1陰性」患者が、44%のORRを呈することを示す。対照的に、ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチンで治療された「PD-L1陰性」患者のORRは、27%であった。アテゾリズマブ+ペメキシトレキセド(pemextrexed)+カルボプラチン又はシスプラチンを投与された「PD-L1陰性」患者のPFS中央値が8.5ヶ月であったのに対し、対照群の「PD-L1陰性」患者のPFS中央値は4.9ヶ月であった。治療グループにおける「PD-L1陰性」患者間の12ヶ月PFSは35%であったが、一方で対照グループにおける「PD-L1陰性」患者間の12ヶ月PFSは8%であった。治療グループの「PD-L1陰性」患者間における奏効期間中央値(DOR)が10.1ヶ月であったのに対し、対照群の「PD-L1陰性」患者間における奏効期間中央値(DOR)は4.2ヶ月であった。本開示を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によってある程度詳細に記載してきたが、その記載及び実施例は、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参考として明示的に組み込まれる。
SEQUENCE LISTING
<110> Genentech, Inc.
<120> METHODS OF TREATING LUNG CANCER WITH A PD-1 AXIS BINDING
ANTAGONIST, AN ANTIMETABOLITE, AND A PLATINUM AGENT
<130> 14639-20451.40
<140> Not Yet Assigned
<141> Concurrently Herewith
<150> US 62/734,936
<151> 2018-09-21
<150> US 62/700,184
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<170> FastSEQ for Windows Version 4.0
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145 150 155 160
Gly Asn Ser Gln Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr
165 170 175
Tyr Ser Leu Ser Ser Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys
180 185 190
His Lys Val Tyr Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro
195 200 205
Val Thr Lys Ser Phe Asn Arg Gly Glu Cys
210 215
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Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
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Leu Val Thr Val Ser Ser
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Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Asp Val Ser Thr Ala
20 25 30
Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Ser Ala Ser Phe Leu Tyr Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Leu Tyr His Pro Ala
85 90 95
Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg
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Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr
100 105 110
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Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu Gly
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Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser Ser
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Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg
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325 330 335
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Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
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Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly
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Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Asp Val Ser Thr Ala
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Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Ser Ala Ser Phe Leu Tyr Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Leu Tyr His Pro Ala
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Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg Thr Val Ala Ala
100 105 110
Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu Lys Ser Gly
115 120 125
Thr Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro Arg Glu Ala
130 135 140
Lys Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly Asn Ser Gln
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Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr Ser Leu Ser
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Ser Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His Lys Val Tyr
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Phe Asn Arg Gly Glu Cys
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Glu Val Gln Leu Leu Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Ser Tyr
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Ile Met Met Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Ser Ser Ile Tyr Pro Ser Gly Gly Ile Thr Phe Tyr Ala Asp Thr Val
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Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
65 70 75 80
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Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val
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Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro
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Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile
245 250 255
Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu
260 265 270
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275 280 285
Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg
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Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys
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Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu
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Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr
340 345 350
Thr Leu Pro Pro Ser Arg Asp Glu Leu Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu
355 360 365
Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp
370 375 380
Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val
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Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp
405 410 415
Lys Ser Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His
420 425 430
Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro
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Gly
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Ser Ile Thr Ile Ser Cys Thr Gly Thr Ser Ser Asp Val Gly Gly Tyr
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Ser Gly Ser Lys Ser Gly Asn Thr Ala Ser Leu Thr Ile Ser Gly Leu
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Gln Ala Glu Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Ser Ser Tyr Thr Ser Ser
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Pro Gly Ala Val Thr Val Ala Trp Lys Ala Asp Gly Ser Pro Val Lys
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Ala Gly Val Glu Thr Thr Lys Pro Ser Lys Gln Ser Asn Asn Lys Tyr
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Ala Ala Ser Ser Tyr Leu Ser Leu Thr Pro Glu Gln Trp Lys Ser His
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Arg Ser Tyr Ser Cys Gln Val Thr His Glu Gly Ser Thr Val Glu Lys
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Thr Val Ala Pro Thr Glu Cys Ser
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Arg Tyr
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Trp Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ala Lys Asn Ser Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Glu Gly Gly Trp Phe Gly Glu Leu Ala Phe Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser
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Val Phe Pro Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala
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Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val
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Ser Trp Asn Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala
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Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val
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Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met
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Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val
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His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser
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<223> Synthetic Construct
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Glu Ile Val Leu Thr Gln Ser Pro Gly Thr Leu Ser Leu Ser Pro Gly
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Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Arg Val Ser Ser Ser
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Tyr Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val Thr Lys
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Ser Phe Asn Arg Gly Glu Cys
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<220>
<223> Synthetic Construct
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Ser Val Lys Ile Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Asn Tyr
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Gly Met Asn Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly Leu Gln Trp Met
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Gly Trp Ile Asn Thr Asp Ser Gly Glu Ser Thr Tyr Ala Glu Glu Phe
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Leu Gln Ile Thr Ser Leu Thr Ala Glu Asp Thr Gly Met Tyr Phe Cys
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Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr Ser Leu Ser Ser
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Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His Lys Val Tyr Ala
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Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val Thr Lys Ser Phe
195 200 205
Asn Arg Gly Glu Cys
210
有効量の抗PD-L1抗体、代謝拮抗剤、及びプラチナ製剤を個体に投与することを含む、肺がんを有する個体を治療する方法であって、ここで、前記治療が前記個体の無増悪生存期間(progression free survival:PFS)を延長する、方法。