(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161383
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】複合材料のための(メタ)アクリルポリマー組成物、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
C08F 265/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
C08F265/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024115466
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021520560の分割
【原出願日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】1859537
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エスカーレ, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】スワン, ダナ
(72)【発明者】
【氏名】バルゾッティ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】バックマン, ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジン-ハン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鉄筋に適した(メタ)アクリル組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル組成物MC1であって、
a)a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、およびa2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルコモノマー(M2)と;
c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、を含む、(メタ)アクリル組成物MC1とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル組成物MC1であって、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルコモノマー(M2)と;c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、
を含む、(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項2】
(メタ)アクリルコモノマー(M2)が、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;1,6ヘキサンジオールジアクリレート;1,6ヘキサンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(2)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールジメタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール400ジアクリレート;プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化5ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;ポリプロピレングリコール400ジアクリレート;ポリプロピレングリコール700ジアクリレート;プロポキシル化(6)エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化エチレングリコールジアクリレート;プロポキシル化(5)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;およびプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;またはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項3】
(メタ)アクリルコモノマー(M2)が、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングルコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートまたはトリエチレングリコールジアクリレートから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項4】
(メタ)アクリルモノマー(M1)が、アルキルアクリルモノマーまたはアルキルメタクリルモノマーおよびそれらの混合物から選択され、そのアルキル基は、1~22個の直鎖状、分岐状または環状の炭素を含み:該アルキル基は、好ましくは、1~12個の直鎖状、分岐状または環状の炭素を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項5】
(メタ)アクリルモノマー(M1)が、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%のメチルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項6】
(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための、0.1phrと5phrとの間の開始剤(Ini)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項7】
開始剤(Ini)が、ペルオキシ基を含む化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項8】
ペルオキシ基を含む化合物が、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール、ヒドロペルオキシドまたはペルオキシケタールから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項9】
液体(メタ)アクリルシロップ剤が、
a1)10重量%と30重量%との間(メタ)アクリルポリマー(P1)と、
a2)1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む、70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1)と、
を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項10】
(メタ)アクリルコモノマー(M2)が、100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤に対して、0.1と9.5phrとの間で、より好ましくは0.1と9phrとの間で、より一層好ましくは0.1と8.5phrとの間で、有利には0.1と8phrとの間で存在することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項11】
(メタ)アクリルコモノマー(M2)が、(メタ)アクリル組成物MC1中に0.01と9phrとの間で存在し、2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項12】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、(メタ)アクリル組成物MC1中に0.01と9phとの間で存在し、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物の混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項13】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、(メタ)アクリル組成物MC1中に0.01と9phrとの間で存在し、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物の混合物から選択され、混合物の少なくとも1つの化合物は、2つの(メタ)アクリル官能基のみを含み、(メタ)アクリルモノマー(M2)の混合物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%を示すことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1を調製するための方法であって、以下の工程:
i)次の成分、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)および(メタ)アクリル官能基を1つのみ含む(メタ)アクリルモノマー(M1);
b)少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2);
c)任意選択的に、添加される、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための、0.1phrと5phrとの間の開始剤;
を提供することと、
ii)成分a)~bまたはa)~c)を混合することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル組成物MC1を調製するための方法であって、以下の工程:
i)
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1)
を含む、100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルコモノマー(M2)と、
を提供することと;
ii)任意選択的に、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するために、0.1phrと5phrとの間の開始剤を添加することと、
を含む、方法。
【請求項16】
成分a)が、以下の比率、
a1)10重量%と30重量%との間(メタ)アクリルポリマー(P1)と、
a2)70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマーと、
を有することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
(メタ)アクリルモノマー(M2)が、(メタ)アクリル組成物MC1の0.1と9.5phrとの間で存在することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
(メタ)アクリルポリマー組成物を調製するための、または(メタ)アクリルポリマー複合材料PC1を調製するための方法であって、以下の工程:
i)請求項1から13のいずれか一項に記載の、または請求項14から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1を提供することと;
ii)(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、方法。
【請求項19】
ポリマー複合材料PC1を調製するための方法であって、以下の工程:
i)繊維または繊維状基材に、請求項1から7のいずれか一項に記載の、または請求項8または9に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1を含浸させることと;
ii)繊維または繊維状基材に含浸された(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、方法。
【請求項20】
重合工程が、40℃と140℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
重合工程が、60℃と125℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
ポリマー複合材料PC1もしくはポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を変形する方法であって、以下の工程:
i)請求項1から13のいずれか一項に記載の、または請求項14から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1を重合することから作製されたポリマー複合材料PC1もしくは部品を提供することと;
ii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を加熱することと、
iii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を変形することと、
を含む、方法。
【請求項23】
加熱する工程の温度が、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
変形することが、ねじること、曲げること、湾曲させることまたは折り畳むことであることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ポリマー複合材料PC1が、鉄筋の形状であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
次の工程:
i)鉄筋の形状のポリマー複合材料PC1を提供することと、
ii)鉄筋を加熱することと、
ii)鉄筋を曲げることと、
を含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
鉄筋を調製するための方法であって、以下の工程:
i)請求項1から13のいずれか一項に記載の、または請求項14または17に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1を提供することと、
ii)繊維または繊維状基材に(メタ)アクリル組成物MC1を含浸させることと、
iii)繊維または繊維状基材に含浸された(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、方法。
【請求項28】
引抜成形によって行われることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、または請求項14から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1の、繊維または繊維状基材を含浸させるための使用。
【請求項30】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、または請求項14から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル組成物MC1の、鉄筋を調製するための使用。
【請求項31】
請求項27から28のいずれか一項に記載の方法によって作製された鉄筋の、コンクリートにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、(メタ)アクリルポリマー組成物および(メタ)アクリルポリマー複合材料に適した(メタ)アクリル組成物、その調製方法およびその使用に関する。
【0002】
[002]特に、本発明は、重合するとわずかに架橋され、(メタ)アクリル複合材料、より具体的には鉄筋に適した(メタ)アクリル組成物に関する。
【0003】
[003]より具体的には、本発明は、鉄筋に適した(メタ)アクリル組成物、そのような(メタ)アクリル組成物の調製、該組成物を含む複合鉄筋、およびそのような複合鉄筋を調製する方法に関する。
【0004】
[004]本発明はまた、そのような(メタ)アクリル組成物の使用および鉄筋の使用にも関する。
【背景技術】
【0005】
[005]複合材料は、2以上の非混和性の材料の巨視的な組み合わせである。複合材料は、少なくとも、構造の凝集のための連続相を形成するマトリックス材料と、機械的特性のためのさまざまなアーキテクチャを備えた補強材料とで構成される。
【0006】
[006]複合材料を使用することの目的は、単独で使用する場合にその個々の構成要素からは得られない、複合材料からの性能を達成することである。
【0007】
[007]したがって、複合材料は、いくつかの産業分野、例えば建築、自動車、航空宇宙、運送、レジャー、エレクトロニクスおよびスポーツにおいて、特に、高均質性材料と比較して、複合材料のより両項な機械的性能(より高い引張強度、より高い引張弾性率、より高い破壊靱性)および低密度のために、広く使用されている。
【0008】
[008]熱硬化性ポリマーは、架橋結合された三次元構造体からなる。架橋結合は、いわゆるプレポリマーの内部で反応性基を硬化させることによって得られる。硬化は、例えば、材料を永久的に架橋結合し、硬化させるために、ポリマー鎖を加熱することにより達成される。
【0009】
[009]ポリマー複合材料を調製するために、プレポリマーを他の成分(例えば、粒子状複合材料の場合はガラスビーズまたは繊維状複合材料の場合は短繊維)と混合するか、または他の成分を湿潤させるかもしくは含浸させ(例えば織網)、その後硬化させる。
【0010】
[010]熱硬化性ポリマーマトリックスの欠点は、その非常に高い架橋度である。マトリックスは他の形状に成形することはできない。ポリマーが硬化すると、形状が固定される。
【0011】
[011]熱可塑性ポリマーは、直鎖状または分岐状のポリマー鎖からなるか、それらを含む。複合材料の製造に必要な2つの構成要素を混合し、硬化のために冷却するために、熱可塑性ポリマーは加熱される。複合材料の製造に熱可塑性ポリマーを使用する際の限界は、溶融状態における該ポリマーの粘度が高いことである。熱可塑性ポリマーによる繊維の湿潤または正確な含浸は、熱可塑性樹脂が十分に流動性である場合にのみ達成することができる。熱可塑性ポリマーの粘度を低下させるかまたは十分な流動性を備えさせるために、鎖長(分子量)を短くすることができる。しかしながら、分子量が低すぎると、複合材料の性能、特に機械的特性に悪影響を及ぼす。他方、重要な方法で粘度を低減するために、熱可塑性ポリマーの温度を上昇させることができ得る。その結果、連続作業温度は比較的高く、200℃を超え、高いエネルギーコストの影響により、複合材料の経済性(コスト)に直接影響を及ぼす。さらに、熱可塑性ポリマーは、温度が非常に高い場合に劣化する傾向があり、これは、例えば、ポリアミド(例えば、PA6.6)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリフェニレンスルフィド(PPS)などの、高い融点を有する半結晶性熱可塑性ポリマーに特に当てはまる。この熱によって誘発される分解は、複合材料の凝集に重要なポリマーマトリックスの分子量の減少をもたらす。
【0012】
[012]繊維状基材を含浸させる別の方法は、熱可塑性ポリマーを有機溶剤に溶解することである。しかしながら、この方法には、蒸発させる必要のある大量の溶剤が必要である。エネルギーおよび汚染の観点から、大量の溶剤を使用することには環境問題がある。
【0013】
[013]熱可塑性ポリマーに基づくポリマー複合材料を調製するために、一般に「シロップ剤」として知られる熱可塑性ポリマー樹脂を使用して、強化材料、例えば、充填剤または繊維状基材とブレンドするかまたは充填剤または繊維状基材に含浸させる。一旦、重合されると、熱可塑性ポリマーシロップ剤は、複合材料のマトリクスを構成する。ポリマー複合材料を調製するとき、含浸時における含浸シロップ剤の粘度は、流動性または粘性が高すぎないように、繊維状基材の各繊維を正しく含浸させるように、制御および適合されなければならない。シロップ剤が、流動性が高すぎるかまたは粘性が高すぎるかに応じて、湿潤が部分的である場合、「裸の」ゾーン、すなわち、それぞれが気泡の発生原因である、非含浸ゾーン、および繊維上にポリマーの液滴が形成されるゾーンが出現する。これらの「裸の」ゾーンおよびこれらの気泡は、最終的な複合材料に欠陥の出現を引き起こし、これは、とりわけ、最終的な複合材料の機械的強度の損失の原因である。しかしながら、含浸に有用な粘度範囲は、そのような材料を貯蔵するためには低い。
【0014】
[014]熱成形およびリサイクルを可能にするために、複合材料にも熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。
【0015】
[015]しかしながら、特に繊維性補強材を使用した熱可塑性複合材料の1つの欠点は、熱安定性である。熱可塑性複合材料が熱成形されるか、高温で長時間さらされる場合、いくつかの重要な特性が、繊維界面のポリマーでの曲げ強度保持の減少と層間剥離として、好ましくない方法で変化する。
【発明の概要】
【0016】
[016]熱成形が可能で、高い熱抵抗を提供する複合材料のための組成物が必要とされている。
【0017】
[017]本発明の目的は、上昇させた温度で高い熱抵抗を有する熱可塑性(メタ)アクリル組成物を調製するための組成物を有することである。
【0018】
[018]本発明の目的はまた、上昇させた温度で高い熱抵抗を有する熱可塑性複合材料組成物を調製するための組成物を有することである。
【0019】
[019]本発明における高い熱抵抗は、140℃を超える温度での機械的特性の変化を低減することを意味する。
【0020】
[020]本発明のさらなる目的は、高い熱抵抗を有する熱成形可能なポリマー複合材料を調製するための組成物を有することである。本発明における高い熱抵抗は、複合材料の層間剥離が少なくとも強く低減されることも意味する。
【0021】
[021]本発明の別の目的は、(メタ)アクリルポリマー組成物のための(メタ)アクリル組成物を調製するための、または高い熱抵抗を有する(メタ)アクリル複合組成物を調製するための方法を提供することである。
【0022】
[022]本発明のさらに別の目的は、高い熱抵抗を有する(メタ)アクリル複合組成物を調製するための方法を有することである。
【0023】
[発明の背景]先行技術
[023]文献国際公開第2013/056845号パンフレットは、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂の原位置での重合による複合材料を開示している。熱可塑性(メタ)アクリル樹脂と長繊維を含む繊維材料の原位置での重合によって得られるポリマー複合材料およびその使用、そのような複合材料を製造するための方法、および製造された、このポリマー複合材料を含む機械的または構造化された部品もしくは物品。重合は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタールまたはアゾ化合物から選択されるラジカル開始剤を使用する。該文献は、ポリマーの重合後の架橋、得られるポリマー複合組成物、および特に上昇した温度でのその熱抵抗については何も開示していない。
【0024】
[024]文献国際公開第2014/013028号パンフレットは、繊維状基材のための含浸方法、該含浸方法のための液体(メタ)アクリルシロップ剤、その重合方法、およびそれから得られる構造化された物品である。液体(メタ)アクリルシロップ剤は、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルモノマー、および(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための少なくとも1つの開始剤または開始系を含む。熱によって活性化される開始剤または開始系。該文献は、ポリマーの重合後の架橋、得られるポリマー複合組成物、および特に上昇した温度でのその熱抵抗については何も開示していない。
【0025】
[025]文献カナダ国特許第2839915号は、熱可塑性材料を含む曲げ可能なFRP鉄筋を開示している。熱可塑性材料には、PE、PS、PMMA、POM、PC、PSLU、PAI、PET、PEEK、PEK、PEI、PES PA6およびPA12が包含される。鉄筋は可撓性のポリエステルからなる。
【0026】
[026]すべての従来技術の文献は、改善された熱抵抗を有するポリマー組成物または複合材料の調製に適した(メタ)アクリル組成物を開示していない。
【0027】
[027]驚くべきことに、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
を含む(メタ)アクリル組成物MC1は、
(メタ)アクリルポリマーまたは複合材料の調製のための、成分b)を含まない組成物と比較して改善された熱抵抗を有する組成物を提供することを可能にすることが見出された。
【0028】
[028]驚くべきことに、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
を含む(メタ)アクリル組成物MC1は、
成分b)を含まない組成物と比較して、上記の組成物から作製されるポリマーまたはポリマー複合材料の熱抵抗を増加させるために使用できることも見出された。
【0029】
[029]驚くべきことに、以下の工程、
i)(メタ)アクリル組成物MC1を提供することであって、(メタ)アクリル組成物MC1は、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
を含む、
提供することと;
ii)前記(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、(メタ)アクリルポリマー組成物を調製するための方法または(メタ)アクリル複合組成物を調製するための方法は、
成分b)を含まない組成物と比較して、より優れた熱抵抗を有する(メタ)アクリルポリマーの組成物または複合材料をたらすこともまた見出された。
【0030】
[030]驚くべきことに、以下の工程、
i)ポリマー(メタ)アクリル組成物MC1で作製されたポリマー複合材料PC1もしくは部品を提供することと、
ii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を加熱することと、
iii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を変形することと、
を含む方法は、
ポリマー複合材料PC1もしくはポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を変形する方法をもたらし、該方法は、一旦曲げられると、その機械的特性を重要な方法で変化させないこともまた見出された。
【0031】
[031]驚くべきことに、以下の工程、
i)繊維状基材に(メタ)アクリル組成物MC1を含浸させることであって、(メタ)アクリル組成物MC1は、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)0.01と10重さによるphrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と
を含む、含浸させることと;
ii)(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法は、
成分b)を含まない組成物から作製されたポリマー複合材料と比較して、より良好な熱抵抗を有するポリマー複合材料PC1をもたらすこともまた見出された。
【0032】
[発明の詳細な説明]
[032]第1の態様によれば、本発明は:
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
を含む(メタ)アクリル組成物MC1に関する。
【0033】
[033]第2の態様によれば、本発明は:
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、
を含む、(メタ)アクリル組成物MC1に関する。
【0034】
[034]第3の態様によれば、本発明は、以下の工程を含む:
i)次の成分、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)および(メタ)アクリル官能基を1つのみ含む(メタ)アクリルモノマー(M1);
b)少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2);
c)任意選択的に添加される、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための、0.1phrと5phrとの間の開始剤;
を提供することと、
ii)成分a)~bまたはa)からc)を混合することと、
を含む(メタ)アクリル組成物MC1を調製するための方法に関する。
【0035】
[035]第4の態様によれば、本発明は:
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、
を含む、(メタ)アクリル組成物MC1の、繊維または繊維状基材を含浸するための使用に関する。
【0036】
[036]第5の態様によれば、本発明は:
i)(メタ)アクリル組成物MC1を提供することであって、(メタ)アクリル組成物MC1は、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、
を含む、提供することと、
ii)任意選択的に、含浸された繊維または繊維状基材を有する(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、方法に関する。
【0037】
[037]第6の態様によれば、本発明は、以下の工程:
i)繊維状基材に(メタ)アクリル組成物MC1を含浸させることであって、(メタ)アクリル組成物MC1は、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)任意選択的に、0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と、
を含む、含浸させることと、
ii)(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む、(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合材料PC1を調製するための方法に関する。
【0038】
[038]第7の態様によれば、本発明は、以下の工程:
i)(メタ)アクリル組成物MC1を重合することから作製されたポリマー複合材料PC1または部品を提供することであって、該組成物は、
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)50重量%と90重量%との間の、1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む(メタ)アクリルモノマー(M1)、
を含む100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
を含む、提供することと;
ii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を加熱することと、
iii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を変形することと、
を含む、ポリマー複合PC1またはポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を変形する方法に関する。
【0039】
[039]使用される「(メタ)アクリル」という語は、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーの任意の種類を意味する。
【0040】
[040]使用される「PMMA」という語は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマーおよびコポリマーを意味し、MMAのコポリマーに関して、PMMA内のMMAの重量比は、少なくとも50重量%である。
【0041】
[041]使用される「モノマー」という語は、重合を受けることができる分子を意味する。
【0042】
[042]使用される「重合」という語は、モノマーまたはモノマーの混合物をポリマーに転換する方法を意味する。
【0043】
[043]使用される「熱可塑性ポリマー」という語は、加熱時に、液体に変化するか、またはより液状もしくはより低い粘度を有し、熱と圧力の適用により新しい形状を取ることができるポリマーを意味する。これは、その軟化温度以上に加熱すると熱成形できるわずかに架橋した熱可塑性ポリマーにも当てはまる。
【0044】
[044]使用される「熱硬化性ポリマー」という語は、硬化によって不可逆的に不融性の不溶性ポリマーネットワークに変化する、軟質、固体または粘性状態のプレポリマーを示す。
【0045】
[045]使用される「ポリマー複合物」という語は、少なくとも1つの種類の相領域が連続相であり、少なくとも1つの成分がポリマーである、複数の異なる相領域を含む多成分材料を意味する。
【0046】
[046]使用される「鉄筋」という語は、鉄筋コンクリートおよび補強組積造構造物(reinforced masonry structures)のテンションデバイスとして使用され、張力下のコンクリートを補強および補助する鉄筋を意味する。鉄筋は、コンクリートまたは構造物の引張強度を大幅に向上させる。
【0047】
[047]使用される「開始剤」という語は、モノマーの重合を開始する化合物または中間化合物を形成し、他の多数のモノマーと連続的に結合してポリマー化合物になることのできる化学種を意味する。
【0048】
[048]「phr」という略語は、組成物100部あたりの重量部を意味する。例えば、組成物中の1phrの開始剤は、1kgの開始剤が100kgの組成物に添加されることを意味する。
【0049】
[049]「ppm」という略語は、組成物の100万部あたりの重量部を意味する。例えば、組成物中の1000ppmの化合物は、100kgの組成物中に0.1kgの化合物が存在することを意味する。
【0050】
本発明においてxからyの範囲とは、この範囲の上限及び下限が含まれることを意味し、少なくともxからyまでと等しい。
【0051】
[051]本発明において範囲がxとyとの間であると言うことは、この範囲の上限と下限が除外されることを意味し、xより大きくyより小さいことに相当する。
【0052】
[052]本発明による液体組成物a)または(メタ)アクリルシロップ剤は、(メタ)アクリルポリマー(P1)、(メタ)アクリルモノマー(M1)を含む。
【0053】
[053]本発明による液体(メタ)アクリルシロップ剤は、10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)および50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1)を含む。好ましくは、液体(メタ)アクリルシロップ剤は、10重量%と40重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)および60重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1);より好ましくは、10重量%と30重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)および70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1)を含む。
【0054】
[054]液体組成物a)または(メタ)アクリルシロップ剤の動粘度は、10mPa*s~10000mPa*s、好ましくは、20mPa*s~7000mPa*s、および有利には、20mPa*s~5000mPa*s、およびより有利には、20mPa*s~2000mPa*s、およびより一層有利には、20mPa*sと1000mPa*sとの間の範囲内である。シロップ剤の粘度は、レオメーターまたは粘度計で容易に測定できる。動粘度は25℃で測定される。液体(メタ)アクリルシロップ剤がニュートン挙動を有する場合、つまりずり減粘がない場合、動粘度は、レオメーターのせん断や粘度計の可動性の速度からは独立している。液体組成物LC1が非ニュートン挙動、つまりずり減粘を有する場合、1s-1のせん断速度において、25℃で動粘度が測定される。
【0055】
[055]本発明の液体組成物a)に関して、該組成物は、(メタ)アクリルモノマー(M1)および(メタ)アクリルポリマー(P1)を含む。一旦重合すると、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)のモノマー単位および他の可能なモノマーを含む(メタ)アクリルポリマー(P2)に変換される。
【0056】
[056]好ましくは、(メタ)アクリル組成物MC1の動粘度はまた、10mPa*s~10000mPa*s、好ましくは、20mPa*s~7000mPa*s、および有利には、20mPa*s~5000mPa*s、およびより有利には、20mPa*s~2000mPa*s、およびより一層有利には、20mPa*sと1000mPa*sとの間の範囲内である。
【0057】
[057](メタ)アクリルポリマーに関しては、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートが挙げられ得る。好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマー(P1)は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0058】
[058]使用される「PMMA]という語は、メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー、コポリマー、またはこれらの混合物を意味する。
【0059】
[059]一実施態様によれば、メチルメタクリレート(MMA)ホモポリマーまたはコポリマーは、重量で、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%のメチルメタクリレートを含む。
【0060】
[060]別の実施態様によれば、PMMAは、MMAの少なくとも1つのホモポリマーと少なくとも1つのコポリマーとの混合物、または異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも2つのホモポリマーもしくはコポリマーの混合物、または異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも2つのコポリマーの混合物である。
【0061】
[061]メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、70重量%~99.7重量%のメチルメタクリレート、および、メチルメタクリレートと共重合する可能性のある少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む、0.3重量%~30重量%の少なくとも1つのモノマーを含む。
【0062】
[062]これらのモノマーはよく知られており、特に、アクリル酸とメタクリル酸、およびアルキル基が1~12個の炭素原子を含有する(メタ)アクリル酸アルキルを挙げることができる。例として、アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレートもしくは2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1~4個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルである。
【0063】
[063]好ましい第1の実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)のコポリマーは、重量で、80%~99.9%、有利には90%~99.9%、およびより有利には90%~99.9重量%のメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートと共重合できる、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する、重量で、0.1%~20%、有利には0.1%~10%、およびより有利には0.1%から10重量%の少なくとも1つのモノマーを含む。好ましくは、コモノマーは、アクリル酸メチルとアクリル酸エチル、およびこれらの混合物である。
【0064】
[064](メタ)アクリルポリマー(P1)の重量平均分子量は高くなければならず、これは、50000g/mol超、好ましくは100000g/mol超を意味する。
【0065】
[065]重量平均分子量は、分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)で測定できる。
【0066】
[066](メタ)アクリルポリマー(P1)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)中に、または(メタ)アクリルモノマーの混合物中に完全に溶解する。これにより、(メタ)アクリルモノマー(M1)の、または(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘度を増加させることができる。得られる溶液は、一般に、「シロップ剤」または「プレポリマー」と呼ばれる液体組成物である。液体(メタ)アクリルシロップの動粘度値は、10mPa.sと10000mPa.sとの間である。シロップ剤の粘度は、レオメーターまたは粘度計で容易に測定できる。動粘度は25℃で測定される。
【0067】
[067]有利には、液体(メタ)アクリル組成物またはシロップ剤は、追加の自発的に添加される溶剤を含まない。
【0068】
[068](メタ)アクリルモノマー(M1)に関して、モノマーは、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー、ヒドロキシアルキルアクリルモノマーおよびヒドロキシアルキルメタクリルモノマー、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0069】
[069](メタ)アクリルモノマー(M1)は、ヒドロキシアルキルアクリルモノマー、ヒドロキシアルキルメタクリルモノマー、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマーおよびそれらの混合物から選択され、アルキル基は、1~22個の、直鎖状、分岐状または環状炭素を含み;好ましくは、アルキル基は、1~12個の、直鎖状、分岐状または環状炭素を含む。
【0070】
[070]より好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、アルキルアクリルモノマーまたはアルキルメタクリルモノマーおよびそれらの混合物から選択され、アルキル基は、1~22個の、直鎖状、分岐状または環状炭素を含み;好ましくは、アルキル基は、1~12個の、直鎖状、分岐状または環状炭素を含む。
【0071】
[071]有利には、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、およびそれらの混合物から選択される。
【0072】
[072]より有利には、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、およびそれらの混合物から選択される。
【0073】
[073]好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルモノマー(M1)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%がメチルメタクリレートである。
【0074】
[074]第1のより好ましい実施形態によれば、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、より一層有利には90重量%のモノマーのモノマー(M1)は、メチルメタクリレートと、メチルメタクリレートと、任意選択的に少なくとも1つの他のモノマーとの混合物である。
【0075】
[075](メタ)アクリルモノマー(M2)に関して、モノマーは多官能性である。好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物から選択される。(メタ)アクリルモノマー(M2)は、それぞれが少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む、少なくとも2つの化合物(M2a)と(M2b)との混合物から選択することもできる。
【0076】
[076](メタ)アクリルコモノマー(M2)は、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;1,6ヘキサンジオールジアクリレート;1,6ヘキサンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールジメタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール400ジアクリレート;プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化5ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート;プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;ポリプロピレングリコール400ジアクリレート;ポリプロピレングリコール700ジアクリレート;プロポキシル化(6)エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化エチレングリコールジアクリレート;プロポキシル化(5)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;およびプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートから選択することができる。
[077]好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングルコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびトリエチレングリコールジアクリレートまたはそれらの混合物から選択することができる。
【0077】
[078](メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリル組成物MC1中に、重量で、0.01と10phrとの間で存在させることができ、好ましくは、100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤に対して、0.1と9.5phr、より好ましくは0.1と9phrとの間で、さらにより好ましくは0.1と8.5phrとの間で、有利には0.1と8phrとの間で存在する。
【0078】
[079]第1のより好ましい実施形態において、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリル組成物MC1中に、0.01と9phrとの間で存在し、2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物から選択される。
【0079】
[080]第2のより好ましい実施形態において、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリル組成物MC1中に、0.01と9phrとの間で存在し、2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物の混合物から選択される。
【0080】
[081]第3のより好ましい実施形態において、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリル組成物MC1中に、0.01と9phrとの間で存在し、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物の混合物から選択される。
【0081】
[082]第4のより好ましい実施形態において、(メタ)アクリルモノマー(M2)は、(メタ)アクリル組成物MC1中に、0.01と9phrとの間で存在し、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む化合物の混合物から選択される。混合物の少なくとも1つの化合物は、2つの(メタ)アクリル官能基のみを含み、(メタ)アクリルモノマー(M2)の混合物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%存在する。混合物の他の化合物は、2つ以上の(メタ)アクリル官能基を含む。
【0082】
[083](メタ)アクリルモノマー(M1)と(M2)の重合を開始する開始剤(Ini)に関しては、ラジカル開始剤から選択される。
【0083】
[084]好ましくは、開始剤(Ini)は熱によって活性化される。
【0084】
[085]ラジカル開始剤(Ini)は、ペルオキシ基を含む化合物またはアゾ基を含む化合物、好ましくはペルオキシ基を含む化合物から選択することができる。
【0085】
[086]好ましくは、ペルオキシ基を含む化合物は、2~30個の炭素原子を含む。
【0086】
[087]好ましくは、ペルオキシ基を含む化合物は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール、ヒドロペルオキシドまたはペルオキシケタールから選択される。
【0087】
[088]開始剤(Ini)は、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)吉草酸ブチル、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペロキソナン、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾジ-(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチラミド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾジ(ヘキサヒドロベンゾニトリル)、または4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択される。
【0088】
[089]好ましくは、開始剤(Ini)は、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサンまたは1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートから選択される。
【0089】
[091]繊維状基材に関して、いくつかの繊維、一方向ロービングまたはストリップ、ラップ、ブレード、ロックもしくはピースの形状であり得る連続フィラメントマット、布、フェルトもしくは不織布について言及することができる。繊維状材料は、一次元、二次元、または三次元のいずれかの様々な形状および寸法を有し得る。繊維状基材は、1つまたは複数の繊維の集合体を含む。繊維が連続的である場合、これらの集合体は、布を形成する。
【0090】
[091]一次元の形状は、線形の長繊維に相当する。繊維は、不連続または連続であり得る。繊維は、連続フィラメントの形状で、ランダムにまたは互いに平行に配置することができる。繊維は、繊維の長さと直径の比率であるアスペクト比によって定義される。本発明で使用される繊維は、長繊維または連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、かつより有利には少なくとも5000、その上さらに有利なことには少なくとも6000、より一層有利には少なくとも7500、かつ最も有利には少なくとも10000のアスペクト比を有する。
【0091】
[091]二次元の形状は、不織布または織られた繊維マットまたは補強材もしくは繊維の束に相当し、これらはまた、編むこともできる。二次元の形状が一定の厚さを有し、その結果、原則として三次元であっても、本発明によれば、それは二次元と見なされる。
【0092】
[093]三次元の形状は、例えば、不織布繊維マットまたは補強材、あるいは繊維またはそれらの混合物の積み重ねまたは折り畳まれた束、三次元における二次の元形状の集合体に相当する。
【0093】
[094]繊維状材料の起源は、天然または合成であり得る。天然素材として、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維を挙げることができる。
【0094】
[095]天然繊維は、例えば、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、およびバナナ繊維である。動物繊維は例えば、羊毛または毛髪である。
【0095】
[096]合成の材料として、熱硬化性ポリマーの繊維、熱可塑性ポリマーの繊維、またはこれらの混合物から選ばれるポリマーの繊維を挙げることができる。
【0096】
[097]ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族または芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、およびビニルエステルからなることができる。
【0097】
[098]鉱物繊維はまた、特にE、RまたはS2タイプのガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維またはシリカ繊維から選択され得る。
【0098】
[099]本発明の繊維状基材は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成高分子繊維、ガラス繊維および炭素繊維、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0099】
[0100]好ましくは、繊維状質基材は、鉱物繊維から選択される。より好ましくは、繊維状基材は、ガラス繊維または炭素繊維から選択される。
【0100】
[0101]繊維状基材の繊維は、0.005μmと100μmとの間、好ましくは1μmと50μmとの間、より好ましくは5μmと30μmとの間、そして有利には10μmと25μmとの間の直径を有する。
【0101】
[0102]好ましくは、本発明の繊維状基材の繊維は、一次元の形状の連続繊維(アスペクト比は必ずしも長繊維の場合には適用されないことを意味する。)、または二次元の長繊維または連続繊維、または三次元の形状の繊維状基材から選択される。
【0102】
[0103]本発明はさらに、(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合材料PC1を調製するための方法に関し、該方法は以下の工程:
i)(メタ)アクリル組成物MC1を繊維または繊維基材に含浸させることであって、(メタ)アクリル組成物MC1は:
a)
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリルポリマー(P1)、および
a2)1つの(メタ)アクリル官能基のみを含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリルモノマー(M1)
を含む、100部の液体(メタ)アクリルシロップ剤と、
b)重量で0.01と10phrとの間の、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能基を含む(メタ)アクリルモノマー(M2)と;
c)0.1phrと5phrとの間の、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルコモノマー(M2)の重合を開始するための開始剤(Ini)と
を含む、含浸させることと;
ii)繊維または繊維状基材に含浸された(メタ)アクリル組成物MC1を重合することと、
を含む。
【0103】
[0104]ポリマー複合材料を調製するための方法における成分a)~c)は、前に定義され、それらのそれぞれの重量比と同じものである。
【0104】
[0105]重合工程は、典型的に、140℃未満、好ましくは130℃未満、より一層好ましくは125℃未満の温度で行われる。
【0105】
[0106]好ましくは、重合工程は、40℃と140℃との間、好ましくは50℃と130℃との間、より一層好ましくは60℃と125℃と間の温度で行われる。
【0106】
[0107]ポリマー複合材料PC1は、好ましくは、(メタ)アクリルポリマー複合材料である。
【0107】
[0108]ポリマー複合材料PC1は、好ましくは繊維強化ポリマー複合材料である。
【0108】
[0109]本発明はさらに、(メタ)アクリル組成物MC1から、ポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を製造するための方法にも関する。ポリマー複合部品を製造するための方法は、(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合材料PC1を調製するための方法を含む。
【0109】
[0110]ポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を製造するための方法、または(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合材料PC1を調製するための方法に関して;これらの部品を調製するために、さまざまな方法が使用できる。真空支援樹脂注入(VARI)、引抜成形、真空バッグ成形、圧力バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)およびそのバリエーション(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)およびその変形、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM)またはシート成形コンパウンド(SMC)またはバルク成形コンパウンド(BMC)が挙げられる。
【0110】
[0111]第1の好ましい複合部品を製造するための製造方法、または(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合PC1を調製するための方法は:それにより、鋳型内での繊維状基材の含浸によって液体組成物が繊維状基材に転換される方法である。上記の鋳型を必要とする方法は、成形という表現(wording molding)を含む。
【0111】
[0112]第2の好ましい複合部品を製造するための製造方法、または(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合PC1を調製するための方法は:それにより、液体組成物が引抜成形方法で使用される方法である。繊維は、本発明による組成物を含む樹脂バッチを通って導かれる。繊維状基材としての繊維は、例えば、一方向ロービングまたは連続フィラメントマットの形状である。樹脂浴に含浸させた後、湿った繊維を加熱したダイに通し、そこで重合を行う。
【0112】
[0113]第3の好ましい、(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための製造方法または方法は、真空支援樹脂注入(VARI)である。
【0113】
[0114]複合部品を製造するための方法だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品、あるいは(メタ)アクリル組成物MC1からポリマー複合材料PC1を調製するための方法は:後成形するもしくは変形する工程をさらに含むことができる。後成形は、複合部品の形状を変更する際の曲げを含む。
【0114】
[0115]複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を製造するための方法は、溶接する、接着する、または積層する工程をさらに含むことができる。
【0115】
[0116]本発明による方法または方法から得られた熱可塑性複合部品は、本発明の液体組成物の重合後に後成形することができる。成形は、複合材料の形状を変更する際の曲げを含む。
【0116】
[0117]本発明の液体組成物の重合後に、および/または本発明による方法から得られる熱可塑性部品または製造された複合部品は、溶接、接着、または積層することができる。
【0117】
[0118]本発明はさらに、ポリマー複合材料PC1もしくはポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を変形するための方法に関し、該方法は以下の工程:
i)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を提供することと、
ii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を加熱することと、
iii)ポリマー複合材料PC1もしくは部品を変形することと、
を含む。
【0118】
[0119]変形とは、ポリマー複合材料PC1は、変形する工程中にその形状を変化されることであると理解される。変形工程後、ポリマー複合材料PC1の形状は、加熱する工程前に提供されるポリマー複合材料PC1とは異なる。
【0119】
[0120]変形は、例えば、ねじり、曲げ、湾曲、または折り畳みであり得る。
【0120】
[0121]加熱する工程の温度は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃である。
【0121】
[0122]ポリマー複合材料PC1もしくはポリマー複合部品だけでなく、機械部品もしくは製品または構造化された部品もしくは製品を変形するための方法の例示される実施形態では、該方法は以下の工程:
i)鉄筋の形状でポリマー複合PC1を提供することと、
ii)鉄筋を加熱することと、
iii)鉄筋を曲げることと、
を含む。
【0122】
[0123]このように製造された複合材料で作製された機械部品の使用に関して、自動車用途、バスもしくはトラックなどの輸送用途、航海用途、鉄道用途、スポーツ、航空および航空宇宙用途、光起電用途、コンピューター関連用途、建設および建築用途、通信用途、および風力エネルギー用途が挙げられる。
【0123】
[0124]複合材料で作られた機械部品は、特に自動車部品、ボート部品、バス部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機もしくはヘリコプター部品、宇宙船もしくはロケット部品、光起電性モジュール部品、例えば、複合鉄筋、土木および高層建設用のダボおよびあぶみなどの建設または建築用材料、風力タービン部品、例えば、風力タービンブレードの桁の桁キャップ、家具部品、建設もしくは建築部品、電話または携帯電話部品、コンピューターまたはテレビ部品、またはプリンターもしくは複写機部品である。
【0124】
[0125]第1の好ましい実施形態では、複合材料で作製された機械部品は、特に、建設もしくは建築用材料、例えば、土木工学および高層建設用の複合鉄筋、ダボおよびあぶみである。
【0125】
[0126]第2の好ましい実施形態では、複合材料で作製された機械部品は、特に風力タービン部品、例えば、風力タービンブレードの桁の桁キャップである。
【0126】
[0127]1つの特定の実施形態では、製造された複合部品は曲げ可能な鉄筋である。鉄筋はコンクリート中に使用される。
【実施例0127】
[0128]比較例1:25重量部のPMMA(BS520、コモノマーとしてエチルアクリレートを含むMMAのコポリマー)を、MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化した、75重量部のメチルメタクリレート中に溶解することによってシロップ剤S1を調製する。追加の化合物を加えることによって本発明の実施例の組成物を調製するためにシロップ剤S1が使用される。
【0128】
[0129]実施例1.100重量部のシロップ剤S1に、2部の1,4-ブタンジオールジメタクリレートを加えることにより、シロップ剤S1からシロップ剤S2を調製する。
【0129】
[0130]実施例2:100重量部のシロップ剤S1に、2部のエチレングリコールジメタクリレートを加えることにより、シロップ剤S1からシロップ剤S3を調製する。
【0130】
[0131]各シロップ剤S1~シロップ剤S3のそれぞれは、重合開始剤として添加される、シロップ部分に対して2phrの開始剤ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(P16-Akzo Nobel社からのPerkadox(登録商標)16)とブレンドされる。均質な組成物を得るために、それぞれの組成物を混合する。21℃で脱気するために、それぞれの組成物を真空下に置く。
【0131】
[0132]ガラス布に各シロップ剤を真空下で注入する。
【0132】
[0133]重合は80℃の対流炉中で行う。各シロップ剤に基づいて、3つの複合材料が得られる。
【0133】
[0134]3つの成形コンパウンドのそれぞれで熱抵抗を評価する。したがって、試料を200℃の換気炉に15分間入れ、各試料の曲げ強度を測定し、未処理の試料と比較する。
【0134】
【0135】
[0136]本発明による試料の熱抵抗ははるかに優れており、曲げ強度の損失はほとんどないか、はるかに少ない。