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特開2024-161403グリチルリチンを含む組成物およびその化粧品および医薬品使用
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  • 特開-グリチルリチンを含む組成物およびその化粧品および医薬品使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161403
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】グリチルリチンを含む組成物およびその化粧品および医薬品使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20241112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241112BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K31/704
A61P1/04
A61P29/00
A61P1/16
A61P37/08
A61P27/02
A61P27/04
A61K9/08
A61K8/63
A61K8/73
A61K8/81
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024122520
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2021502517の分割
【原出願日】2019-07-15
(31)【優先権主張番号】102018000007291
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】521017457
【氏名又は名称】エーティージー 20 エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンゾ,マルコ アルド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に局所外用経路によって投与されるときに、グリチルリチンのバイオアベイラビリティを増大させる、グリチルリチンを含む組成物を提供する。
【解決手段】グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤とを含む組成物とする。本発明の組成物は、グリチルリチンが用いられる全ての化粧品および治療用途への有利な利用を見出す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤と、を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルリチンとヒアルロン酸と粘度調整剤とを含む組成物に関する。本発明に従う組成物はそのバイオアベイラビリティを有意に改善するので、よって、組成物はグリチルリチンが用いられる全ての化粧品および治療用途への有利な利用を見出す。
【背景技術】
【0002】
グリチルリチン(またはグリチルリチン酸(glycyrrhizic acid)もしくはグリチルリチン酸(glycyrrhizinic acid))は、甘草エキスの活性成分を構成するトリテルペノイドサポニングリコシドである:
【化1】
【0003】
グリチルリチンはグリチルリチン酸二カリウム(dipotassium glycyrrhizate)(またはグリチルリチン酸二カリウム(dipotassium glycyrrhizinate))およびグリチルリチン酸(glycyrrhizate)(モノ)アンモニウム(またはグリチルリチン酸(glycyrrhizinate)(モノ)アンモニウムもしくはGA)などの塩の形態でもまた利用可能である。酸形態では、それは特に水溶性ではないが、しかしながら、カリウム塩は水溶性であり:
【化2】

(モノ)アンモニウム塩は希釈された酸性または塩基性溶液に可溶である:
【化3】
【0004】
グリチルリチンが加水分解されるときには、もたらされるアグリコンは、エノキソロンとしてもまた公知の18β-グリチルレチン酸(glycyrrhetinic acid)(またはグリチルレチン酸(glycyrrhetic acid))である:
【化4】
【0005】
食品の分野では、グリチルリチンは甘味料として使用される。なぜなら、それはサッカロースよりも最高で50倍甘く、後者と比較して、甘いフレーバーはより遅く知覚されるが、口中でより長く続くからである。
【0006】
薬理学の分野においては、この化合物は去痰薬としておよび消化性潰瘍のケースにおける胃保護薬として用いられる。
【0007】
さらにその上、グリチルリチンは抗炎症および消炎作用を有する;実際に、グリチルレチン酸は11ベータヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼによるコルチゾールからコルチゾンへの変換を阻害し、TNF-αおよびIL-1βなどの炎症性サイトカインの産生を阻害するということが強調されている(非特許文献1)。
【0008】
最近、この薬物の消炎作用を担うさらなるメカニズム、つまり好中球による強力な炎症性物質のクラスであるフリーラジカルの産生を阻害するグリチルリチンの能力が同定された。しかしながら、分子はこれらの細胞の食作用および走化性に有意に影響することはできないように見える。
【0009】
白血球によって産生されるフリーラジカルはニキビおよび酒さの場合における濾胞上皮へのダメージの主な原因の1つであるということを指摘することは興味深い。
【0010】
さらにその上、この化合物は臨床的には慢性肝炎およびアレルギー性障害の処置のために用いられる。グリチルリチン注射が慢性C型肝炎の患者に投与され、その長期使用は肝細胞癌の発生を防止することに有効である。しかしながら、繰り返しの有痛性の静脈内注射は慢性肝炎の患者のクオリティ・オブ・ライフを縮減した。また、注射治療はヘルスケアワーカーにとって感染のリスクを伴う。よって、経口投与が採用されてきたが、グリチルリチンのバイオアベイラビリティは極めて低いことが判明している。
【0011】
文献はグリチルリチンのバイオアベイラビリティを改善するための種々の試みの報告を提供している;例えば、非特許文献2はグリチルリチンの種々の投与経路を比較し、経鼻経路および直腸経路がとりわけ局所透過促進剤などの脂肪酸塩の存在下において経口経路よりも良好であるということを結論づけている。
【0012】
それでも、これらの投与経路は患者にとっていくらかは不快であり、いずれにせよ、内用かまたは外用かにかかわらず局所的な処置が必要である場合には好適ではない。
【0013】
よって、本発明に従う課題は、特に局所外用経路によって投与されるときに、グリチルリチンのバイオアベイラビリティを増大させることである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】シャオイン・ファン(Xiaoying Huang)ら著,「核内因子カッパーBシグナル経路を制御することによるマウスのリポ多糖誘発性の急性肺損傷に対するグリチルリチン酸一アンモニウムの抗炎症効果(Anti-Inflammatory Effects of Monoammonium Glycyrrhizinate on Lipopolysaccharide-Induced Acute Lung Injury in Mice through Regulating Nuclear Factor-Kappa B Signaling Pathway)」エビデンス・ベース・コンプルメンタリー・アンド・オルターナティブ・メディシン(Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine),2015年;2015年号:ID272474
【非特許文献2】佐々木ら著,「ラットにおける種々の血管外投与経路による不良に吸収されるグリチルリチンのバイオアベイラビリティの改善(Improvement in the bioavailability of poorly absorbed glycyrrhizin via various non-vascular administration routes in rats)」,インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics),2003年10月20日;第265巻(1-2):p.95-102
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記されている通り、前記課題は、グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ムコ多糖、セルロースおよびそのエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤とを含む組成物によって達成された。
【0016】
本発明の目的のためには、用語「グリチルリチン」は、グリチルリチン酸、その塩、好ましくはカリウムおよびアンモニウム塩、その加水分解形態、好ましくはグリチルレチン酸、ならびにそれらの混合物を包含することが意味される。
【0017】
別の態様では、本発明は眼疾患の処置への前記組成物の使用に関する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は前記組成物を含む眼用製品に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は皮膚科、婦人科、耳鼻咽喉科、または歯科病理の局所処置への前記組成物の使用に関する。
【0020】
なおさらなる態様では、本発明は、特に局所外用使用のための製品のスージング剤としての、前記組成物の化粧品使用に関する。
【0021】
本発明の特徴および利点は、限定しない例として提供されかつ本明細書に添付の図面に例示される実施形態の次の詳細な記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、元のままの状態のGAのNMRスペクトルと比較して、0.1%GAを含む組成物のNMRスペクトル(a)および0.2%GAを含む組成物のNMRスペクトル(b)を示している。
図2図2は、0.1%GA(a)および0.2%GA(b)を水中に含む組成物の緩和時間T1およびT2NMRの間の比較を示している。
図3図3は、0.1%GA(a)および0.2%GA(b)をクエン酸緩衝液中に含む組成物の緩和時間T1およびT2NMRの間の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
よって、本発明は、グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤とを含む組成物に関する。
【0024】
好ましくは、前記グリチルリチンは前記組成物の重量に基づいて最高で5.0wt%の濃度である。
【0025】
より好ましくは、前記グリチルリチンは前記組成物の重量に基づいて0.05~3.0wt%の濃度である。
【0026】
用語「ヒアルロン酸塩」では、それはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸鉄、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルト、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム、またはそれらの混合物が意味される。
【0027】
用語「ヒアルロン酸誘導体」は:
- EP0216453B1にもまた記載されている通りの、一部または全てのカルボン酸基が脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、環式脂肪族、複素環系アルコールによってエステル化されるヒアルロン酸エステル、
- EP0341745B1にもまた記載されている通りの、カルボン酸基の一部または全てが同じ多糖鎖またはさらなる鎖からのアルコール基によってエステル化される自己架橋ヒアルロン酸エステル、
- EP0265116B1にもまた記載されている通りの、カルボン酸基の一部または全てが脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、環式脂肪族、または複素環系ポリアルコールによってエステル化され、スペーサー鎖の手段による架橋を生成する、架橋ヒアルロン酸化合物、
- WO96/357207にもまた記載されている通りの、ヒアルロン酸とのまたは部分的なもしくは完全なヒアルロン酸エステルとのコハク酸ヘミエステルまたはコハク酸重金属塩、
- WO95/25751にもまた記載されている通りのO-硫酸化誘導体またはWO/1998/045335にもまた記載されている通りのN-硫酸化誘導体、およびそれらの混合物、
を含むことが意味される。
【0028】
好ましくは、前記ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体の重量平均分子量は200~1500kDa、より好ましくは600~1000kDaである。
【0029】
好ましくは、前記ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体は前記組成物の重量に基づいて最高で5.0wt%の濃度である。
【0030】
より好ましくは、前記ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体は前記組成物の重量に基づいて0.01~3.0wt%の濃度である。
【0031】
好ましい実施形態では、組成物はヒアルロン酸を含む。
【0032】
特に好ましい実施形態では、前記ヒアルロン酸は前記組成物の重量に基づいて0.1~2.0wt%の濃度である。
【0033】
用語「タマリンド種子多糖」はタマリンダス・インディカの種子から得られ得る多糖部分を意味し、以降では簡潔さのために「TSP」ともまた言われる(英語の用語「タマリンダス・インディカ種子多糖」から)。
【0034】
それが公知である通り、タマリンド樹はインド、アフリカ、および極東において一般的である。そこでは、それは本質的に食品目的で栽培される。元々は副産物であった種子は、その後、場合によっては粗挽き生成物(現在では「生タマリンドガム」または「タマリンドナッツ粉末」として公知)へと粉砕されて、とりわけ、それがそれぞれ糸のサイジング剤としておよび糊付け剤として用いられる繊維および製紙産業への、ならびにそれがアルギン酸、ペクチン、グアーガム、または粗挽きローカストビーンなどのさらなる多糖製品と同様に、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、および結合剤としてあらゆる種類の製品に用いられる食品産業への種々の使用を見出している。典型的には、生タマリンドガム(例えば、日本国大阪を拠点とする大日本製薬株式会社によって生産されるグリロイド(登録商標)として市販)は、65~73wt%の多糖に加えて、15~23%タンパク質材料、3~8%油脂、および2~4%灰分、ならびに微量の生の繊維、タンニン、およびさらなる不純物をもまた含有する。
【0035】
1つの有利な態様は、TSP溶液は(例えば、20分に渡る120℃での)オートクレーブの通過によって滅菌されることに好適であり、例えばヒアルロン酸で起こることとは違って熱分解を受けることがないということである。単純にオートクレーブの通過による滅菌の可能性は、TSPに基づく調製物を特に生産の観点から便利にする。
【0036】
さらにその上、TSPは有意なムコミメティック、粘膜付着、および生体接着特性を実証している。
【0037】
TSPは精製された中性の水溶性多糖画分であり、ガラクトキシログルカンのポリマー分子を含む。これは非常に親水性であり、グルコース繰り返し単位から形成された線状の主鎖に取り付けられた分岐構造を特徴とする。これはキシロースの小さい単糖単位およびキシロース-ガラクトースの二糖単位からなる。後者のケースでは、ガラクトースは側鎖の末端にある。3つのモノマーは3:1:2のモル比で存在し、種子の構成成分のおよそ65%を構成する:
【化5】
【0038】
観察され得る通り、「ムチン様の」分子構造は、前記ムチンとの種々の種類の結合の形成に由来する多糖の優良な粘膜付着特性を決定する。
【0039】
TSPは、化学的方法および酵素的方法の手段によって、プロテアーゼをまたはプロテアーゼおよび高強度超音波の組み合わせを用いて単離され得る。化学的方法では、20gのタマリンド種子粉末が200mlの冷蒸留水に追加されて懸濁液を調製し、これはそれから800mlの沸騰蒸留水に注加される。このようにして形成された溶液は20分に渡って沸騰するように放置され、連続的に撹拌される;一晩静置した後に、前記溶液は5000rpmで20分に渡って遠心を受ける。上清が分離され、前記上清の量の2倍に達する体積の純粋なアルコールに注加される。このようにして沈殿物が得られ、これはそれから純粋なエタノールによって洗浄され、風乾される。最終的に、乾燥されたポリマーは粉砕され、ふるい分けされ、使用まで乾燥器内で保存される。酵素的方法では、種子から得られた粉末はエタノールと混合され、それからプロテアーゼによって処置される;その後に、前記粉末が遠心され、沈殿のためにエタノールが上清に追加される。最終的に、ポリマーは分離および乾燥される。
【0040】
好ましくは、TSPの重量平均分子量は450~750kDaである。
【0041】
好ましくは、前記粘度調整剤は前記組成物の重量に基づいて最高で5.0wt%の濃度である。
【0042】
より好ましくは、前記粘度調整剤は前記組成物の重量に基づいて0.01~3.0wt%の濃度である。
【0043】
好ましい実施形態では、前記粘度調整剤は、前記組成物の重量に基づいてより好ましくは0.05~2.0wt%の濃度のTSP、CMC、またはそれらの混合物である。
【0044】
より好ましい実施形態では、前記粘度調整剤はTSPを前記組成物の重量に基づいて好ましくは0.05~2.0wt%の濃度で含む。代替的には、前記粘度調整剤は次の1つ以上とのTSPの混合物を含む:PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびそのエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、およびポリアクリレート。
【0045】
前記粘度調整剤が前記組成物の重量に基づいて好ましくは0.05~2.0wt%の濃度のTSPである組成物が特に好ましい。
【0046】
好ましくは、グリチルリチンおよびヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体は、1:1から1:20、より好ましくは1:1から1:10の重量比である。
【0047】
好ましい実施形態では、グリチルリチンおよびヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体は1:1から1:5の重量比である。
【0048】
好ましくは、グリチルリチンおよび粘度調整剤は、5:1から1:15、より好ましくは3:1から1:10の重量比である。
【0049】
好ましい実施形態では、グリチルリチンおよび粘度調整剤は2:1から1:5の重量比である。
【0050】
好ましくは、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体および粘度調整剤は1:2から10:1、より好ましくは1:1から5:1の重量比である。
【0051】
好ましい実施形態では、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体および粘度調整剤は1:1から3:1の重量比である。
【0052】
好ましくは、本発明の組成物は4~7のpHを有する。
【0053】
より好ましくは、本発明の組成物は5.5~6.5のpHを有する。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、選択されたpHを維持するための用をなす緩衝液を含む。
【0055】
好ましくは、緩衝液は組成物の重量に基づいて最高で5wt%の濃度である。
【0056】
より好ましくは、緩衝液は組成物の重量に基づいて2.0~4.0wt%の濃度である。
【0057】
特に好ましい実施形態では、緩衝液は組成物の重量に基づいて1.5~2.5wt%の濃度である。
【0058】
好ましくは、前記緩衝液は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、酢酸-酢酸ナトリウム、ホウ酸-ホウ酸ナトリウム、クエン酸-リン酸水素二ナトリウム(「マッキルベイン緩衝液」としてもまた公知)、クエン酸-リン酸一カリウム-ホウ酸-ジエチルバルビツール酸、TRIS-ホウ酸、およびそれらの混合物から選択される。
【0059】
好ましい実施形態では、前記緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0060】
特に好ましい実施形態では、pHはおよそ6であり、緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0061】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、25℃において測定されると、0.1~2.0mS/cm、好ましくは0.2~1.5mS/cmの導電率を特徴とする。次の例で分かるであろう通り、導電率がより高ければ、ヒアルロニダーゼの解重合作用はより高く、導電率がより低ければ、ヒアルロニダーゼの解重合作用はより低いということが観察された。これは、要件に応じて、製品の用量を限定することが必要である化粧品、生薬製品、医療用デバイス、もしくは医薬品などの利用については上に記されている範囲の下限に近い値へと、または化粧品もしくは医薬品調製物の頻用が必要である利用については上限に近い値へと、導電率が調節され得るということを意味する。
【0062】
本発明の組成物が緩衝液を含むときには、導電率は、その中に含有される酸化合物および塩化合物の間の重量比を変えることによって調節され得る。例えば、緩衝液がクエン酸-クエン酸ナトリウムであるときには、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの間の重量比が変えられる:クエン酸の数量を増大させることによって、導電率は縮減される;クエン酸ナトリウムの数量を増大させることによって、導電率は増大させられる。
【0063】
本発明の組成物のさらに好ましい実施形態では、水はその中に存在する唯一の溶媒である。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は保存料または着色料を含まない。
【0065】
好ましい組成物は4~7のpHを有し、組成物の重量に基づいて:
- 最高で5.0wt%のグリチルリチンと、
- 最高で5.0wt%のヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、
- 最高で5.0wt%の粘度調整剤と、
- 水と、
を含む。
【0066】
5.5~6.5のpHを有し、かつ組成物の重量に基づいて:
- 0.05~3.0wt%のグリチルリチンと、
- 0.01~3.0wt%のヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、
- 0.01~3.0wt%の粘度調整剤と、
- 最高で5wt%の緩衝液と、
- 水と、
を含む組成物がより好ましい。
【0067】
5.5~6.5のpHを有し、かつ組成物の重量に基づいて:
- 0.05~3.0wt%のグリチルリチンと、
- 0.01~3.0wt%のヒアルロン酸と、
- 0.01~3.0wt%のTSP、CMC、またはそれらの混合物と、
- 2.0~4.0wt%のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液と、
- 水と、
を含む組成物がなおより好ましい。
【0068】
pH5.5~6.5のpHを有し、かつ組成物の重量に基づいて:
- 0.05~3.0wt%のグリチルリチンと、
- 0.01~3.0wt%のヒアルロン酸と、
- 0.01~3.0wt%のTSPと、
- 2.0~4.0wt%のクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液と、
- 水と、
を含む組成物がさらにより好ましい。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤とから本質的になる。表現「から本質的になる」は、上で列記されている3つの構成成分が本発明の組成物中に存在する唯一の活性成分であるということを意味し、いずれかのさらなる構成成分または賦形剤はそれらの作用に干渉せず、水混和性および水溶性である。
【0070】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、グリチルリチンと、ヒアルロン酸またはその塩もしくは誘導体と、タマリンド種子多糖、PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびエステル、天然ガムおよびそれらのエステル、ペクチン、ポリアクリレート、ならびにそれらの混合物から選択される粘度調整剤とからなる。
【0071】
本発明の組成物は一般公知の方法によって調製され得る。実際に、構成成分は、例えば、撹拌下で次々に追加され、そのままで、または1つ以上の賦形剤と共に混合され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、一般公知の方法に従って、例えばガンマ線による処置によって使用前に滅菌される。
【0073】
別の態様では、本発明は眼疾患の処置への前記組成物の使用に関する。
【0074】
用語「眼疾患」は、眼の表面を冒す炎症状態、例えばドライアイ症候群、シェーグレン症候群、ぶどう膜炎、結膜炎、角膜炎、角結膜炎、春季カタル、角膜潰瘍、アトピー性角結膜炎、瘢痕性結膜炎、眼瞼炎、角膜炎、兎眼、眼内炎、上強膜炎、および強膜炎を意味する。
【0075】
なおさらなる態様では、本発明は前記組成物を含む眼用製品に関する。
【0076】
前記眼用製品は涙液代用物、洗眼液、懸濁液、アイスプレー、フォーム剤、ウェットワイプ、スプレーオンパッチ、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0077】
好ましい実施形態では、前記眼用製品は涙液代用物である。
【0078】
下で提供される例で分かるであろう通り、物理化学的およびレオロジー的観点からのみならず、全体として、その構成成分の相乗性に由来する有効性の観点から、本発明の組成物はいくつもの利点をオファーする。実際に、第1に、本発明の組成物はグリチルリチンのバイオアベイラビリティを増大させ、第2に、グリチルリチンおよび粘度調整剤の共存は、眼の表面に通常存在しかつヒアルロン酸を分解する酵素であるヒアルロニダーゼの効果を阻害し、このようにして後者の耐久性および有効性を増大させ、結果的に、製品の繰り返し投与を成す必要を縮減する。
【0079】
本発明の組成物を含む眼用製品の好ましい実施形態では、粘度調整剤は、前記組成物の重量に基づいてより好ましくは0.05~2.0wt%の濃度のTSP、CMC、またはそれらの混合物である。
【0080】
より好ましい実施形態では、前記粘度調整剤は、前記組成物の重量に基づいて好ましくは0.05~2.0wt%の濃度のTSPを含む。
【0081】
代替的には、前記粘度調整剤は次の1つ以上とのTSPの混合物を含む:PVP、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ムコ多糖、セルロースおよびそれらのエステル、天然ガムおよびそのエステル、ペクチン、およびポリアクリレート。
【0082】
前記粘度調整剤が前記組成物の重量に基づいて好ましくは0.05~2.0wt%の濃度のTSPである組成物が特に好ましい。
【0083】
さらに、本発明に従う眼用製品は、ユニットドーズ形態でもまた、眼科的に受け入れられる賦形剤を含み得る。用語「眼科的に受け入れられる賦形剤」は、眼の外側表面への投与のための組成物への使用にとって好適な化合物または混合物を意味する。例えば、この種類の賦形剤は概して有害な反応をユーザに引き起こさず、眼の表面における活性成分の作用をも有意に阻害しない。
【0084】
好適な賦形剤は抗酸化剤、ゲル化剤、封鎖剤、結合剤、潤滑剤、増粘剤、張度調整剤、フィルム形成物質、およびそれらの混合物である。
【0085】
従って、好適な抗酸化剤はメタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、グルコース、システイン、およびそれらの混合物である。
【0086】
好適な封鎖剤は、EDTAならびにその一ナトリウム、二ナトリウム、およびカリウム塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ならびにそれらの混合物である。
【0087】
好ましくは、封鎖剤はEDTA、その一ナトリウム、二ナトリウム、およびカリウム塩、ならびにそれらの混合物である。
【0088】
好適な張度調整剤は、無機塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウム、またはポリオールもしくは糖、例えばグリセロール、プロピレングリコール、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、およびトレハロース、またはアミノ酸、例えばカルニチンおよびベタインである。
【0089】
さらなる態様では、本発明は、皮膚科、婦人科、耳鼻咽喉科、または歯科病理の局所処置への前記組成物の使用に関する。
【0090】
なおさらなる態様では、本発明は、特に局所外用使用のための製品のスージング剤としての、前記組成物の化粧品使用に関する。
【0091】
実際に、本発明の組成物に含有されるグリチルリチンは、敏感なおよびデリケートな皮膚の処置および保護が意図される製品に有用であり得る。なぜなら、それは、例えば小児のための調合物において、アフターシェーブにおいて、ならびにアフターサン製品において、炎症した、発赤した、またはアトピー性および脂漏性皮膚炎ならびに概して刺激に弱い皮膚のための製品において、スージング剤として有効であるからである。それは小さいドーズ(0.5および1%の間)においてさえもその活性を成し、そのレベルでは、それはいずれかの副作用を有さない。よって、それは、低いパーセンテージの18β-グリチルレチン酸を含有しかつ最終製品に見栄えのしない暗色を持たせ得る甘草エキスの使用を廃する。
【0092】
医薬品または化粧品組成物が局所外用または内用経路によって投与されるべきであるときには、前記組成物は好ましくは溶液、ローション、エマルション、懸濁液、ゲル、軟膏、クリーム、ペースト、溶液スプレー、経皮パッチ、スプレーオンパッチ、フォーム剤、またはウェットワイプの形態であり、組成物は好ましくは懸濁液であるかまたは1つ以上の好適な賦形剤中に溶解される。
【0093】
これらの投与形態にとって好適である賦形剤の例は、鉱油、液体パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、デンプン、カーボポール、カルボマー、メチルパラベン、ポロキサマー407、マクロゴール400、精製ベントナイト、プロピルパラベン、プロピオン酸ミリスチル、ジメチコン、二酸化チタン、アニオン性、カチオン性、および非イオン性界面活性剤、水、ならびにそれらの混合物である。
【0094】
好ましくは、本発明に従う医薬品または化粧品組成物は局所外用経路によって投与されるべきである。
【0095】
上で報告されている通りの組成物の構成成分の、ならびにそれを含有する製品、それらの調製および使用の好ましい態様の全ての組み合わせは、本明細書によって開示されておりかつ類似に好ましいと見なされるであろうということは理解されるはずである。
【0096】
上で開示されている本発明の組成物、調製プロセス、および使用の好ましい態様の全ての組み合わせは本明細書に記載される通り理解されるであろうということもまた理解されるはずである。
下は、例示目的のために提供される本発明の実施例である。
【実施例0097】
材料
【0098】
【表1】
【0099】
HAS、TSP、およびGAを含む組成物の調製
0.4%のHASおよび0.2%のTSPに達する最終含量(重量/体積パーセンテージとして与えられる)で、組成物をdHOおよびクエン酸緩衝液によって調製した;一方で、GAを異なる濃度で追加した(0.05%、0.1%、および0.2%重量/体積)。
ステップ1:およそ400mgのHASを100mlフラスコ内の30mlのdHO中に溶解し、それから、それの完全な溶解を保証するために室温で24hに渡って撹拌下に放置した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分(2.8gマンニトール、0.8gクエン酸ナトリウム、0.01gクエン酸)を秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した;これの後に、200mgのTSPを磁石撹拌下において追加し、同じ温度を維持した。完全な溶解後に、ステップ2において、ステップ1を追加した。HO中の組成物では、200mgのTSPをdHO中にのみ溶解した。
ステップ3:およそ400mgを50ml丸底フラスコに秤取し、これをその後に20mlのdHO中に温めて(油浴の手段によって50℃)溶解することによって、2%重量/体積のGAのストック溶液を調製した;一度溶液が冷却したら、次のサンプルを取り、これらをその後にステップ2に追加した:
- 0.2%GAの組成物では10ml;
- 0.1%GAの組成物では5ml;
- 0.05%GAの組成物では2.5ml。
追加後に、組成物をdHOによってメスアップし(100ml)、調製の最後に、pHを測定し、クエン酸緩衝液中の組成物ではおよそ6.5および水中のものではおよそ5を得た。
【0100】
例1:クエン酸緩衝液中のHAS、TSP、および0.1%GAの組成物
ステップ1:0.4003gのHASを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分を秤量し(2.8003gマンニトール、0.8002gクエン酸ナトリウム、0.0103gクエン酸)、室温において30mlのdHO中に溶解した;これの後に、0.2004gのTSPを追加し、完全な溶解後に、ステップ1を追加した。
ステップ3:0.4004gのGAを秤量し、油浴の手段による50℃の温度への加熱によって20mlのdHO中に溶解した。
完全な可溶化後に、ストック溶液を放置して冷却させた後に、5mlのステップ3をステップ2に追加した。
最終的に、溶液をdHOによってメスアップした(100ml)。最終pH:6.97。
【0101】
例2:水中のHAS、TSP、および0.1%GAの組成物
ステップ1:0.4005gのHASを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。
ステップ2:0.2002gのTSPを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。完全な溶解後に、ステップ1を追加した。
ステップ3:0.4002gのGAを秤量し、油浴の手段による50℃の温度への加熱によって20mlのHO中に溶解した。
完全な可溶化後に、ストック溶液を放置して冷却させた後に、5mlのステップ3をステップ2に追加した。最終的に、溶液をdHOによってメスアップした(100ml)。最終pH:5.70。
【0102】
HAS、CMC、およびGAを含む組成物の調製
0.4%のHASおよび0.2%のCMCに達する最終含量(重量/体積パーセンテージとして与えられる)で、組成物をdHOおよびクエン酸緩衝液によって調製した;一方で、GAを異なる濃度で追加した(0.05%、0.1%、および0.2%重量/体積)。
ステップ1:およそ400mgのHASを100mlフラスコ内の30mlのdHO中に溶解し、それから、それの完全な溶解を保証するために室温において24hに渡って撹拌下に放置した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分を秤量し(2.8gマンニトール、0.8gクエン酸ナトリウム、0.01gクエン酸)、dHO中に溶解した;これの後に、磁石撹拌下においてかつ室温で、200mgのCMCを追加した。完全な溶解後に、ステップ1をステップ2に追加した。HO中の組成物では、200mgのCMCをdHO中にのみ溶解した。
ステップ3:およそ400mgを50ml丸底フラスコに秤取し、これをその後に20mlのdHO中に温めて(油浴の手段によって50℃)溶解することによって、2%重量/体積のGAのストック溶液を調製した;一度溶液が冷却したら、次のサンプルを取り、これらをその後にステップ2に追加した:
- 0.2%のGAの組成物では10ml;
- 0.1%のGAの組成物では5ml;
- 0.05%のGAの組成物では2.5ml。
追加後に、組成物をdHOによってメスアップした(100ml)。調製の終わりに、pHを測定し、クエン酸緩衝液中の組成物ではおよそ6.5および水中のものではおよそ5を得た。
【0103】
例3:クエン酸緩衝液中の組成物HAS、CMC、および0.1%GA
ステップ1:0.4007gのHASを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分を秤量し(2.8001gマンニトール、0.8008gクエン酸ナトリウム、0.0107gクエン酸)、室温において30mlのdHO中に溶解した。これの後に、0.2004gのCMCを追加し、完全な溶解後に、ステップ1を追加した。
ステップ3:0.4004gのGAを秤量し、油浴の手段による50℃の温度への加熱によって20mlのdHO中に溶解した。
完全な可溶化後に、ストック溶液を放置して冷却させた後に、5mlのステップ3をステップ2に追加した。最終的に、溶液をdHOによってメスアップした(100ml)。最終pH:6.63。
【0104】
例4:水中のHAS、CMC、および0.1%GAの組成物
ステップ1:0.4006gのHASを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。
ステップ2:0.2009gのCMCを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。完全な溶解後に、ステップ1を追加した。
ステップ3:0.4004gのGAを秤量し、油浴の手段による50℃の温度への加熱によって20mlのdHO中に溶解した。
完全な可溶化後に、ストック溶液を放置して冷却させた後に、5mlのステップ2をステップ1に追加した。最終的に、溶液をdHOによってメスアップした(100ml)。最終pH:5.05。
【0105】
緩衝液改変評価
0.4%のHASおよび0.2%のTSPに達する最終含量(重量/体積パーセンテージとして与えられる)で、クエン酸ナトリウムの濃度が改変された組成物を調製した;一方で、GAを異なる濃度で追加した(0.05%、0.1%、および0.2%重量/体積)。
ステップ1:およそ400mgのHASを100mlフラスコ内の30mlのdHO中に溶解し、それから、それの完全な溶解を保証するために室温において24hに渡って撹拌下に放置した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分を秤量し(2.8gマンニトール、0.2gクエン酸ナトリウム、0.01gクエン酸)、dHO中に溶解した;これの後に、磁石撹拌下においてかつ室温で、200mgのTSPを追加した。完全な溶解後に、ステップ2にステップ1を追加した。HO中の組成物では、200mgのTSPをdHO中にのみ溶解した。
ステップ3:およそ400mgを50ml丸底フラスコに秤取し、これをその後に20mlのdHO中に温めて(油浴の手段によって50℃)溶解することによって、2%重量/体積のGAのストック溶液を調製した;一度溶液が冷却したら、次のサンプルを取り、これらをその後にステップ2に追加した:
- 0.2%のGAの組成物では10ml;
- 0.1%のGAの組成物では5ml;
- 0.05%のGAの組成物では2.5ml。
追加後に、組成物をdHOによってメスアップした(100ml)。調製の終わりに、pHを測定し、クエン酸緩衝液中の組成物ではおよそ6.5および水中のものではおよそ5を得た。
【0106】
例5:改変クエン酸緩衝液中のHAS、TSP、および0.1%GAの組成物
ステップ1:0.4004gのHASを秤量し、室温において30mlのdHO中に溶解した。
ステップ2:クエン酸緩衝液の構成成分を秤量し(2.8009gマンニトール、0.2009g三塩基性クエン酸ナトリウム、0.0108gクエン酸)、室温において30mlのdHO中に溶解した。これの後に、0.2007gのTSPを追加し、完全な溶解後に、ステップ1を追加した。
ステップ3:0.4004gのGAを秤量し、油浴の手段による50℃の温度への加熱によって20mlのdHO中に溶解した。
完全な可溶化後に、ストック溶液を放置して冷却させた後に、5mlのステップ3をステップ2に追加した。最終的に、溶液をdHOによってメスアップした(100ml)。最終pH:6.02。
【0107】
キャラクタリゼーション:
サイズ排除クロマトグラフィー
マルチ検出器システムと併せたサイズ排除クロマトグラフィーの手段によって、次のクロマトグラフィー条件で、HAS、TSP、GA、CMC、組成物、および最後に酵素消化の産物の分子量の分布のキャラクタリゼーションが成された:
- 装置:OmniSECシステム(マルバーン・パナリティカル・インスツルメンツ、英国);
- 検出器:屈折率、光散乱(90°および7°)、および粘度計;
- カラム:直列の2つのカラムTSK-GMPWXL(7mmのID×30cmのL、13μmの粒子径);
- 移動相:NaNO0.1M+NaN0.05%;
- 温度:40℃;
- 流量:0.6ml/min;
- 注入体積:100μl;
- クロマトグラフィー通過の時間長:60min;
OmniSEC-v10.31ソフトウェアを用いて、次のdn/dc値を設定して、データを取得および処理した:HASについては0.155、TSPについては0.164、CMCについては0.16、および組成物については0.159。
装置は標準の分子量、既知の多分散性、および固有粘度(PolyCAL-Pul57k、マルバーン・パナリティカル・インスツルメンツ、英国)によってキャリブレーションした。
【0108】
サンプルの調製:
HAS、TSP、およびCMCサンプルを秤量し、移動相中にそれぞれおよそ4mg/ml、2mg/ml、および2mg/mlの濃度で溶解した;注入前に、およそ0.5mg/mlを移動相によって希釈した。組成物および酵素消化の産物は移動相によって0.8および0.6mg/mlの間の最終濃度に希釈された。
【0109】
導電率、動的光散乱(DLS)、およびゼータ電位
HAS、TSP、GA、CMC、および組成物のサイズ測定(Rh、nm)および表面電荷測定(ゼータ電位、Zp、mV)は、ゼータサイザー(マルバーン・パナリティカル)によって次の装置条件で取った:
【0110】
サイズ測定
- 基剤:マンニトール0.15(温度:25.0℃;RI1.334;粘度:0.9639mPA*s)およびマンニトール0.015(温度:25.0℃;RI1.330;粘度:0.8975mPA*s)
- 温度:25℃
- 1mlの最小体積の使い捨てポリスチレンキュベット
- 測定角:173℃後方散乱(NIBSデフォルト)
- 測定数:5
- ソフトウェア:ゼータサイザーソフトウェアv7.12
【0111】
ゼータ電位の測定
- 基剤:マンニトール0.15(温度:25.0℃;RI1.334;粘度:0.9639mPA*s;比誘電率:78.5)およびマンニトール0.015(温度:25.0℃;RI1.330;粘度:0.8975mPA*s;比誘電率:78.5)
- 測定モデル:スモルコフスキー(F(ka)値:1.50)
- 温度:25℃
- 拡散バリア法およびMPT-2オートタイトレータと適合するゼータ電位測定用使い捨てキュベット
- 測定数:5
- ソフトウェア:ゼータサイザーソフトウェア7.12
【0112】
調製サンプル:
組成物は元のままの状態で分析し、脱イオン水によって1:10に希釈した。HAS、TSP、およびCMCのサンプルを秤量し、クエン酸緩衝液中に溶解し、およそ4mg/ml、2mg/ml、および2mg/mlの濃度を得、元のままの状態の組成物の分析のために2時間に渡って撹拌下に放置し、それから、組成物をHOによって1:10に希釈した。
【0113】
核磁気共鳴(NMR)
H-NMR
500MHz(H)で作動しかつ5mmクライオプローブTCIを備えたAvanceスペクトロメータによって、次の条件で、溶液のH-NMRスペクトルを測定した:
- パルスシークエンス:zgcppr
- 温度:300°K
- スキャン数:16
- リサイクル時間(D1):12sec
- パルス角(P1):90℃
- 溶媒:D
- オートマティックAbs
- 装置参照:TSPを0ppmに対してキャリブレーション
- フーリエ変換のサイズ:132K
- 処理ソフトウェア:ブルカーTOPSPIN4.02
全てのスペクトルは、EM関数(指数関数)によって、かつバックグラウンドノイズの縮減のためにLB0.3Hzによって処理した。
【0114】
T1-NMR
500MHz(H)で作動するスペクトロメータによって、次の条件で、T1の計算のためのH-NMRスペクトルを取得した:
- パルスシークエンス:cpmg(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)
- 温度:300°K
- スキャン数:20
- リサイクル時間(D1):30sec
- エコー時間(D0):2msec
- パルス角(P1):90°および180°
- 溶媒:D
- 装置参照:TSPを0ppmに対してキャリブレーション
データの再処理のためには、ブルカーTOPSPIN4.02をソフトウェアとしてT1T2計算ルーチンまたはダイナミクス・センターと共に用いた。
【0115】
T2-NMR
5mmクライオプローブTCIを備えた500MHz(H)で作動するスペクトロメータおよび500MHz(H)で作動するスペクトロメータによって、次の条件で、T2の計算のためのH-NMRスペクトルを取得した:
- パルスシークエンス::T1IR
- 温度:300°K
- スキャン数:10
- リサイクル時間(D1):30sec
- パルス角(P1):180°
- 溶媒:D
- 装置参照:TSPを0ppmに対してキャリブレーション
データの再処理のためには、ブルカーTOPSPIN4.02をソフトウェアとしてT1T2計算ルーチンまたはダイナミクス・センターと共に用いた。
【0116】
H、T1、およびT2スペクトルのための調製サンプル:
4mg(HAS)および2mg(TSPおよびCMC)を秤量し、1mlのDOまたは1mlのクエン酸緩衝液中に溶解した;その後に、サンプルを凍結乾燥し、もう一度1mlのDO中に溶解した。それから、4mg/mlのGAストック溶液を調製し、DOおよび緩衝液両方によって希釈し、2mg/ml、1mg/ml、および0.5mg/mlの濃度を得た。組成物のサンプルの調製のためには、1mlを各サンプルから取り、その後に凍結乾燥し、1mlのDO中に溶解した。
最終的に、0.6mlを各サンプルから取り、それから5mmのNMR管に移した。
【0117】
結果:
【0118】
【表2】
【0119】
上で示されているクロマトグラフィーデータから分かる通り、GAの存在は、実験作業に用いられた濃度では、HAS+TSP複合物またはHAS+CMC複合物どちらかの物理化学的特性、例えば分子量および粘度を変化させない。
【0120】
【表3】
【0121】
上で示されているデータから、HASおよびTSPだけを有する組成物に対して、GAの存在はポリマーマトリックスのコンフォメーションを有意に変化させるということが分かる:GAの濃度が増大すると、流体力学的半径および表面電荷は両方とも減少する。
【0122】
核磁気共鳴(NMR)
NMRの結果:
0.05%よりも上の濃度では、GAは溶液よりもゲルと適合するスペクトルを有するということが観察された。
HAS(0.4%)およびTSP(0.2%)の存在下では、GAのNMRプロファイルは変化する。これは、とりわけ水中で、かつ好ましくは0.05%よりも上の濃度において、2つの多糖がそれの分散をより容易にするということを示唆する。
また、NMRは調合物のキャラクタリゼーションおよび定量にとって良好な分析アプローチであることが判明している。実際に、図1で分かる通り、0.1%濃度(a)から0.2%濃度(b)への変更によって、GAシグナルの幅広化が観察され得る。これは、HASおよびTSPの存在下における溶液中の分子のより多大な可溶性および溶解に帰せられた。
【0123】
T1およびT2の結果:
図2および3の参照によると、HAS(0.4%)およびTSP(0.2%)の存在下では次のことが観察された:
1)GAシグナルの平均T2は、水およびクエン酸緩衝液両方において、HASだけまたはTSPだけの追加によって増大し、HAS+TSP混合物ではより多大な値を得た。この増大は、HAS+TSPの存在下におけるGA分子のより多大な運動性および水溶液中のより良好な分散に帰せられた。
2)水中では(図2)、T1値よりも多大なT2値は液体よりもゲルの挙動と適合するスピードを意味する。
3)水中では(図2)、調合物HAS+TSP+GAのGAシグナルの平均T1値は元のままの状態のGAよりも少しである。この結果は溶液よりもむしろ固体/ゲルの運動のスピードと適合する挙動を裏付けている。
4)クエン酸緩衝液中では(図3)、GAシグナルの平均のT1およびT2値は異なる調合物において元のままの状態のGAに似通っている。
5)緩衝液中のT2の値(図3)は水中のT2の値(図2)よりも多大であり、イオン強度の変化によるGA分子のより良好な分散を意味する。
6)緩衝液中では(図3)、水中で見出される違い(図2)はより有意ではない。
【0124】
酵素消化
先に記載された方法を踏襲して調製されたdHO中およびクエン酸緩衝液中の両方の組成物に対して、酵素消化試験を成した。
20mgのHyaを秤量し、室温において2mlの水中に溶解した;それから、0.1mlを取り、組成物の50mlサンプルに追加した(10/0.1に達するHAS/Hya重量比)。24時間の過程に渡って38℃において消化を行い、1mlサンプルを15および30分に、それから最初の6hに渡って毎時間、および24時間後に一度取ることによって分子量の縮減をモニタリングした)。各サンプリング後に、サンプリングされた溶液を100℃において撹拌下で5分に渡って放置して酵素を変性し、それから濾過して酵素沈殿物を除去した(フィルター:LLGシリンジフィルター、CAポアサイズ0.20μm、直径13mm)。
【0125】
パーセンテージとしての経時的な分子量の減少の計算:
(Mwt0-Mwtn)/Mwt0×100
【0126】
結果:
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
【表7】
【0131】
上で示されている結果に基づいて、異なる組成物について観察されたパーセンテージの減少を下で比較している:
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
【表11】
【0136】
上で示されている結果に基づいて、異なる組成物について観察されたパーセンテージの減少を下で比較している:
【0137】
【表12】
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
【表15】
【0141】
【表16】
【0142】
上で示されているデータからは、クエン酸緩衝液の濃度の改変がHASの解重合に対する有意な減速効果を有するということが観察された;特にHAS+TSP+GA0.1%調合物では、22h後に、分子量の減少は57%だけである。
【0143】
それから、本発明に従う組成物に対するインパクトを評価するために、異なる緩衝液によって試験を実施した。
【0144】
次の緩衝液を調製し、用いた:
緩衝液1:2.8%マンニトール、0.8%クエン酸ナトリウム、0.01%クエン酸
緩衝液2:2.8%マンニトール、0.2%クエン酸ナトリウム、0.01%クエン酸
緩衝液3:2.8%マンニトール、0.2%クエン酸ナトリウム、0.0025%クエン酸
緩衝液4:2.8%マンニトール、0.4%クエン酸ナトリウム、0.005%クエン酸
緩衝液5:2.8%マンニトール、0.266%クエン酸ナトリウム、0.0033%クエン酸
【0145】
【表17】
【0146】
それから、HAS、TSP、GAを含む組成物を調製し、それらは上に記されている異なる緩衝液によって調合した。
これらの試験の結果を下の表に示している:
【0147】
【表18】
【0148】
概して、一方では減少するように見えたそれが0.2%で存在するときを除いて、導電率は多糖およびGAの存在下では増大するということが観察された。酢酸ナトリウムを減少させると、導電率は減少したが、クエン酸は効果が観察されなかった。
【0149】
HAS+TSP+GA0.2%を含む組成物をさらに調べて、異なる緩衝液の存在下における経時的な平均分子量傾向を評価した:
【0150】
【表19】
【0151】
上に記されているデータからは、クエン酸緩衝液中における消化の最初の6時間に、GAおよびTSPの存在はヒアルロニダーゼによるHASの解重合を減速させるということが観察された;それでも、22時間後に、解重合は完全であった。
【0152】
一方で、水中の調合物中のGAおよびTSPの組み合わせ効果はヒアルロニダーゼの作用をほぼ全く遮断した。これの結果として、HASの分子量の減少は観察されなかった。
【0153】
よって、必要に応じて、pHおよびイオン強度両方ならびに緩衝液の存在および非存在を調節し、結果的に、ヒアルロニダーゼがHASに対して有する効果に加えて、GAのバイオアベイラビリティを調節することが可能である。
図1
図2
図3
【外国語明細書】