(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161418
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ガスの電解発生用の電極
(51)【国際特許分類】
C25B 11/053 20210101AFI20241112BHJP
C25B 11/093 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
C25B11/053
C25B11/093
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024125711
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021531113の分割
【原出願日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】102018000010760
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガルジウロ, アリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】林田 俊統
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期間にわたって高い性能を維持することができる、電解プロセスにおいてガスを発生させるための電極を提供する。
【解決手段】バルブ金属の基材と2つの層を含む触媒コーティングとを含み、基材の上に形成された、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの混合物を含有する第1の触媒層と、前記第1の触媒層の上に形成された、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせを含有する第2の触媒層とを含み、前記第2の触媒層の前記スズが、前記第1の触媒層との接触面から減少する濃度で存在し、前記第1の触媒層の前記白金が、前記第2の触媒層との接触面から減少する濃度で存在する、電極とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解プロセスにおいてガスを発生させるための、バルブ金属基材とコーティングとを含む電極であって、前記コーティングが、前記基材の上に形成された、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの混合物を含有する第1の触媒層と、前記第1の触媒層の上に形成された、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせを含有する第2の触媒層とを含み、前記第2の触媒層の前記スズが、前記第1の触媒層との接触面から減少する濃度で存在し、前記第1の触媒層の前記白金が、前記第2の触媒層との接触面から減少する濃度で存在する、電極。
【請求項2】
電解プロセスにおいてガスを発生させるための、バルブ金属基材とコーティングとを含む電極であって、前記コーティングが、前記基材の上に形成された、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの混合物を含有する第1の触媒層と、前記第1の触媒層の上に形成された、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせを含有する第2の触媒層とを含み、前記第1の層が、前記基材に施され、熱処理に供される、イリジウム、ルテニウム、およびスズの混合物を含む白金不含の第1の前駆体溶液から得られ、前記第2の触媒層が、前記基材に施され、熱処理に供される、白金を含有するスズ不含の第2の触媒組成物から得られる、電極。
【請求項3】
前記第2の触媒層が、金属元素基準でのモル百分率でPt=48~96%を、金属またはその酸化物の形態で含有する、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記第2の触媒層が、金属元素基準でのモル百分率でPd=0~24%またはRh=0~24%を、金属もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの形態で、金属またはそれらの酸化物の形態で含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記第2の触媒層が、金属元素基準での平均モル百分率でSn=4~12%を、金属またはその酸化物の形態で含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記第1の触媒層の前記イリジウムの酸化物、ルテニウムの酸化物、およびスズの酸化物が、金属元素基準でのモル百分率で、Ru=24~34%、Ir=3~13%、Sn=30~70%で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記第1の触媒層が、金属元素基準でのモル百分率でTi=30~40%のチタンの酸化物も含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
前記第1の触媒層が、金属元素基準での平均モル百分率でPt=3~10%を、金属またはその酸化物の形態で含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極。
【請求項9】
バルブ金属基材が、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、アルミニウム、ケイ素、またはそれらの合金からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
- バルブ金属基材に、イリジウム、ルテニウム、およびスズの混合物を含む白金不含の第1の溶液を施し、続いて50~60℃で乾燥させ、400~650℃で5~30分間の熱処理によって前記第1の溶液を分解する工程;
- 所望の特定の貴金属担持量に達するまで段階a)を繰り返す工程;
- 白金を含有するスズ不含の第2の触媒溶液を施し、続いて50~60℃で乾燥させ、400~650℃で5~30分間の熱処理によって前記第2の溶液を分解する工程;
- 所望の特定の貴金属担持量に達するまで段階c)を繰り返す工程;
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の電極を生成するための方法。
【請求項11】
工程a)およびc)での前記熱分解の温度が480と550℃との間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の溶液が、前記イリジウム、ルテニウム、およびスズを有機金属錯体の形態で含有する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
陽極室と陰極室とを含むアルカリ塩化物の溶液の電解用セルであって、陽極室が、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極を備えた、電解用セル。
【請求項14】
前記陽極室および前記陰極室が、隔膜またはイオン交換膜によって隔てられた、請求項13に記載の電解用セル。
【請求項15】
アルカリ塩化物溶液から塩素およびアルカリを生成するための、セルのモジュール配置を含む電解槽であって、各セルが請求項13に記載のセルである、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ金属基材と2つの層を含む触媒コーティングとを含む、電解プロセスにおいてガスを発生させるための電極に関する。第1の層は、バルブ金属、ルテニウムの酸化物およびイリジウムの酸化物を含み、第2の層は、白金族の元素の中から選択される1種または複数の金属を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野は、ブライン電解プロセスに使用される電極のための触媒コーティングの調製に関する。このコーティングは、典型的にはチタンまたは他のバルブ金属である金属基材に施される。
【0003】
長年にわたって、ブライン電解の科学技術は、エネルギーの観点から、また資源の使用の費用/利益の観点から効率的な実装に向けて革新を遂げてきた。この今まで以上に困難な状況において、陽極の最適化が鍵となる役割を果たしている。特に、塩素が生じる際の陽極の過電圧を低減させるために、また生じた塩素ガス中の酸素の濃度を低減させ、それによって高純度の塩素ガスを生成するために多大な努力がなされてきた。
【0004】
長期間にわたって一層高い性能を維持することができる電極を得るには、さらなる困難が存在する。
【0005】
一般的に言えば、塩素および苛性ソーダを生成するための、ブライン、例えば、塩化ナトリウムなどのアルカリ塩化物のブラインを電解するためのプロセスは、例えば、EP0153586に記載されるものなどの、二酸化スズ(SnO2)および他の貴金属が任意選択により混合された二酸化ルテニウム(RuO2)の表面層で活性化された、チタンまたは他のバルブ金属で作製された陽極で実行される。それによって、塩素発生陽極反応の過電圧の減少、よって全体的なエネルギー使用量の減少を得ることが可能である。
【0006】
しかし、今説明した配合物は、スズを含有する他の配合物と共に、同時に生じる酸素発生反応の過電圧も低減させるために、過剰な分量の酸素で汚染された塩素ガスが生成するという問題を有している。
【0007】
性能における別の部分的な改善は、例えば、WO2016083319に記載されるものなどの、低減された分量のIrO2と組み合わせたRuO2およびSnO2をベースとする配合物を金属基材に施すことによって得られる。同様の配合物によって、セル電位の最適値および適度な分量の酸素を得ることができる。
【0008】
例えば、WO2012081635に記載される配合物などの、2つの触媒コーティング、すなわち、チタンおよび貴金属の酸化物を含有する第1の触媒コーティングと、白金およびパラジウム合金を含有する第2の触媒コーティングとを含む先行技術の他のコーティングによっても、セル電位の最適値および低減された分量の塩素ガス中酸素を得ることができるが、それは、適当な期間、触媒活性および選択性に関する一層高いレベルの性能を維持することができる最適な耐性を電極にもたらさない。
【0009】
US2013/0186750A1は、2種の別個の組成物の交互の層、すなわち、イリジウム、ルテニウム、およびバルブ金属を含む一つのタイプの層と、イリジウム、ルテニウム、およびスズの酸化物を含む別のタイプの層との交互の層を有する、塩素発生に適した電極について記載している。
【0010】
US2013/0334037A1は、導電性基材と、導電性基材の上に形成された、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、および酸化チタンから選択される少なくとも1種の酸化物を含有する第1の層と、第1の層の上に形成された、白金とパラジウムとの合金を含有する第2の層とを含む、電解用電極について記載している。
【0011】
US4,626,334は、ブライン電解用の(Ru-Sn)O2固溶体コーティングを備えた電気伝導性基材を含む陽極について記載している。
【0012】
JPS62243790は、白金と酸化イリジウムとの混合物を含む第1のコーティング層、および酸化ルテニウムと酸化スズとの混合物を含む第2のコーティング層を有する電極について記載している。
【0013】
よって、先行技術の配合物と比較して高いレベルの触媒活性および通常の動作条件下で高いレベルの性能を長期間持続することができる高い耐性によって特徴付けられる、ブライン電解プロセスにおいて電解セル内でガス状生成物を発生させるための新たな電極用触媒コーティングを特定する必要性は明らかである。
【発明の概要】
【0014】
本発明の様々な態様は、添付の特許請求の範囲に記載する。
【0015】
本発明は、電解セル内でガス状生成物を発生させるための、例えば、アルカリブライン電解セル内で塩素を発生させるための、金属基材に施された触媒コーティングを含む電極に関する。本発明の状況において、触媒コーティングという用語は、異なる触媒組成物を有する2つの異なる触媒層を示しており、それにおいて基材の上に形成された第1の触媒層は、少なくともイリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物または各々の組み合わせの混合物を含み、第1の触媒層の上に形成された第2の触媒層は、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの各々の組み合わせを含む。第2の触媒層のスズは、前記第1の触媒層との接触面から第2の触媒層の上面、すなわち第1の触媒層との接触面との反対側の表面に向かって減少する濃度で存在し、前記第1の触媒層の白金は、前記第2の触媒層との接触面から基材に向かって減少する濃度で存在する。
【0016】
本発明はまた、電解セル内でガス状生成物を発生させるための、例えばアルカリブライン電解セル内で塩素を発生させるための、バルブ金属基材とコーティングとを含む電極であって、該コーティングが、前記基材の上に形成された、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの混合物を含有する第1の触媒層と、前記第1の触媒層の上に形成された、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせを含有する第2の触媒層とを含み、前記第1の層が、前記基材に施され、熱処理に供される、イリジウム、ルテニウム、およびスズの混合物を含む白金不含の第1の前駆体溶液から得られ、前記第2の触媒層が、前記第1の触媒層に施され、熱処理に供される、白金を含有するスズ不含の第2の触媒溶液から得られる、電極に関する。本発明の意味での「白金不含」および「スズ不含」という用語は、第1の溶液中の白金濃度が、前記第1の溶液から得られる第1の層における平均白金濃度より少なくとも1桁低く、第2の溶液中のスズ濃度が、第2の溶液から得られる第2の層における平均スズ濃度より少なくとも1桁低いことを意味する。好ましくは、白金不含溶液は、白金を多くても不純物として含有し、スズ不含溶液は、スズを多くても不純物として含有する。
【0017】
金属基材、典型的にはチタン、チタン合金、または別のバルブ金属、に施されたこの二重層構造によって、触媒活性および選択性の点での最適な性能特性を長期間にわたって維持しながら、エネルギー使用量の節約を、生成される塩素ガスの優れた純度と組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
基材の上に形成された第1の触媒層は、好ましくは、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化スズ、および金属白金またはその酸化物を含む。RuO2は、その優れた触媒活性、およびIrO2の存在によって改善されるアルカリ媒体中でのその安定性で広く知られており、SnO2が存在すると、存在する貴金属の消費が遅くなることが保証される。
【0019】
第1の層の上に形成される第2の触媒層は、スズまたはその酸化物、および白金族の元素の中から選択される1種または複数の金属、とりわけ白金自体を含み、白金族の元素は、選択性を増大させ、エネルギー使用量を低減させることで知られている。
【0020】
本発明者らは、同様の触媒コーティングを有する電極であって、前記第2の触媒層が、白金を金属またはその酸化物の形態で、金属元素基準で48~96%(またはスズ成分を考慮に入れない場合は50~99.999%)の間の範囲内のモル百分率で含む電極が、塩素を発生させるための反応の過電圧を結果的に低減させるという利点をもたらすことができることを観察した。
【0021】
本発明の文脈において、「~から」または「~の間」のいずれかによって示される範囲は、指定された上限および下限をそれぞれ含む。
【0022】
別の実施形態では、白金およびスズの他に、前記第2の触媒層は、パラジウムもしくはロジウムを金属もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの形態で、金属元素基準で0~24%の間(または、スズ成分を考慮に入れない場合は0~25%の間)の範囲内のモル百分率で含み、この場合、これらの元素は金属またはその酸化物の形態である。これは、2種以上の貴金属が合わせて存在するために、高い触媒活性を保証することができる。
【0023】
第2の触媒層は、好ましくは、スズまたはその酸化物を、金属元素基準で4~12%の範囲内の平均モル百分率で含む。スズ成分の濃度は、第1の層と第2の層の間の接触面に対して垂直方向に変動するので、スズ濃度は、第2の触媒層を通した濃度プロファイルの平均である。
【0024】
したがって好ましい実施形態では、不可避の不純物を除いて、第2の触媒層は、白金およびスズ、ならびに任意選択によりパラジウムおよび/またはロジウムからなり、金属元素基準でのモル百分率は、白金48~96%、スズ4~12%、パラジウム0~24%、およびロジウム0~24%の範囲内である。
【0025】
上述の電極の好ましい実施形態によれば、第1の触媒層は、イリジウム、ルテニウム、スズの金属または金属酸化物を、金属元素基準でRu=24~34%、Ir=3~13%、Sn=30~70%のモル百分率で含む。
【0026】
第1の触媒層は、好ましくは、白金またはその酸化物を、金属元素基準で3~10%の範囲内の平均モル百分率で含む。白金成分の濃度は、第1の層と第2の層の間の接触面に対して垂直方向に変動するので、白金濃度は、第1の触媒層を通した濃度プロファイルの平均である。
【0027】
言うまでもないが、当業者であれば、成分のモル百分率の総計が100であるように個々の元素のモル百分率を選択するであろう。とりわけ、第1の触媒層に他の金属が何も存在しないならば、SnまたはSn酸化物は、好ましくは金属元素基準で55~70%の濃度で存在する。
【0028】
別の実施形態では、前記第1の触媒層は、チタン、タンタル、およびニオブの中から選択される別のバルブ金属を、金属元素基準で30~40%の間の範囲内のモル百分率で表される分量で含む。チタンなどの別のバルブ金属が存在すると、電流反転を必要とするプロセスにおいてなんと良好な触媒活性を電極の耐性の実質的な増大と組み合わせることができることが実際に観察された。
【0029】
好ましい実施形態では、不可避の不純物を除いて、第1の触媒層は、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、ならびに任意選択によりチタンからなり、金属元素基準でのモル百分率は、イリジウム3~13%、ルテニウム24~34%、スズ30~70%、白金3~10%、およびチタン30~40%の範囲内である。
【0030】
本発明者らは、驚くべきことに、上記の触媒コーティングにおいて、層間の拡散の現象が生じることを観察した。すなわち、第1の触媒層のスズは第2の層の中に拡散し、一方、第2の触媒層の白金は第1の層の中に拡散する。第2の触媒層の中へのスズの拡散は、端から端への濃度勾配で生じ、第2の触媒層中のスズの分量が2つの触媒層の間の接触面で最大であり、第2の触媒層の外面に向かって減少するように生じる。
【0031】
第2の触媒層の中に拡散したスズが存在すると、第2の触媒層に存在する貴金属の消費を有利に遅くすることができ、触媒性能を損なうことなく触媒活性および選択性に関する最適な性能特性をより長い期間にわたって維持することが可能になる。
【0032】
同様に、第2の触媒層から第1の触媒層の中への白金の拡散は、第1の触媒層中の白金の分量が2つの触媒層の間の接触面で最大であり、第1の触媒層の内面に向かって徐々に減少するようなものである。
【0033】
第1の触媒層の中に白金が拡散すると、触媒活性を強化することが可能となる。これによって、電極の寿命を通して、また電極の長期の使用が経時的に第2の層の消耗を引き起こす場合にも、より良い触媒性能特性を維持することがさらに可能になる。触媒コーティングの存在元素および特定の構造によって、電極の動作寿命が増加するというさらなる利点と共に、先行技術と比較してより良い性能特性を保証することが可能になる。
【0034】
本発明による電極によって、さらに驚くべきことに、活性および選択性に関するより良い性能特性を経時的に維持することが可能になる。
【0035】
スズの存在は選択性に大きな影響を与えるが、スズが白金と一緒に触媒コーティングの外面に大量に存在するなら、それは白金自体の触媒活性の増大を減弱させる。
【0036】
スズが第1の触媒層から第2の触媒層へと拡散すると、層間に元素の濃度のプロファイルが生成され、それによって最適な選択性と共に高い触媒活性を維持することが可能になり、さらに第2の触媒層に存在する貴金属の消費を遅くすることが可能になる。2つの触媒層間のスズの濃度のプロファイルは、第1の層とは反対の方向に第2の層中の元素の濃度が単調減少することによって特徴付けられる。
【0037】
別の実施形態では、第1の触媒層は、3~8g/m2の間の範囲内の特定の貴金属担持量を有し、第2の触媒層は、0.8~4g/m2の間の範囲内の特定の貴金属担持量を有する。本発明者らは、このように低減された貴金属担持量が、最適な触媒活性を付与するのに十分過ぎるほどであることを見出した。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、
a.バルブ金属基材に、イリジウム、ルテニウム、およびスズの混合物を含む白金不含の第1の溶液を施し、続いて50~60℃で乾燥させ、400~650℃で5~30分間の熱処理によって前記第1の溶液を分解する段階;
b.所望の特定の貴金属担持量を有する前記第1の触媒組成物が得られるまで、段階a)を繰り返す段階;
c.白金を含有するスズ不含の第2の触媒溶液を施し、続いて50~60℃で乾燥させ、400~650℃で5~30分間の熱処理によって前記第1の溶液を分解する段階;
d.所望の特定の貴金属担持量を有する前記第1の触媒組成物が得られるまで、段階c)を繰り返す段階
を含む、電解セル内でガス状生成物を発生させるための、例えば、アルカリブライン電解セル内で塩素を発生させるための電極を得るための方法に関する。
【0039】
一実施形態では、工程a)およびc)での前記熱分解の温度は、480~550℃の間である。
【0040】
一実施形態では、前記第1の溶液は、チタンをさらに含む。
【0041】
別の実施形態では、前記第2の溶液は、パラジウムおよびロジウムを単独でまたは互いに組み合わせて含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、該2層の電極は、最終熱処理に供される。一実施形態では、最終熱処理は、400~650℃の間の温度、好ましくはおよそ500℃の温度で、少なくとも60分間、好ましくは60~180分間の間、より好ましくは80~120分間の間で行われる。
【0043】
好ましくは、第1の溶液は、イリジウム、ルテニウム、およびスズ化合物、ならびに任意選択によりチタン化合物を有機金属錯体の形態で含む。一実施形態では、有機金属錯体はそれぞれ、スズ、ルテニウム、イリジウム、および任意選択によりチタンのアセト-ヒドロキシクロリド錯体である。
【0044】
特定の科学理論に制限されることを望むものではないが、前記第1および前記第2の溶液中に存在する元素の拡散係数が温度にも依存するために、上記の方法の熱処理または分解の段階aおよびcが、それらの存在元素およびその濃度と共に、存在するスズおよび白金の第1の触媒層から第2の触媒層への、およびその逆の、それぞれの相互拡散に貢献し得る。
【0045】
別の態様によれば、本発明は、陽極室(anodic compartment)と陰極室(cathodic compartment)とを含むアルカリ塩化物溶液の電解用セルであって、該陽極室が、上記のような形態のうちの1つの電極を備えており、該電極が塩素を発生させるための陽極として使用される、電解用セルに関する。
【0046】
別の態様によれば、本発明は、バイアス保護デバイスを含まず、イオン交換膜または隔膜によって隔てられた陽極室および陰極室を有する電解セルのモジュール配置を含む場合でも、塩素およびアルカリをアルカリ塩化物溶液から生成するための工業用電解槽であって、陽極室が、陽極として使用される上記のような形態のうちの1つの電極を含む、に関する。
【0047】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実例で示すために含まれており、その実行可能性は、特許請求する値の範囲内で十分に検証されている。以下の実施例に記載する組成物および技法が、本発明者らが実際に本発明の良好な動作を見出した組成物および技法を表すことは、当業者には明白であろう。しかし、当業者であれば、記載の様々な実施形態に様々な変更を加えても、本発明の範囲から逸脱することなく同じまたは同様な結果が生じることを、本発明の説明に照らしてさらに理解するであろう。
【実施例0048】
実施例1
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0049】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびイリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で25%のRu、11%のIr、および64%のSnに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0050】
160mlの氷酢酸に溶解させた40gのPtに相当する分量のPtジアミノジニトレート、Pt(NH3)2(NO3)2を含有し、次いで10重量%の酢酸で1リットルの体積に調合した第2の溶液も調製した。
【0051】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施し、次のコートを施す前にメッシュを毎回空気中で冷却した。
【0052】
IrとRuの合計として表される金属基準での担持量が7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0053】
続いて、第2の溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0054】
Ptの総担持量が2.5g/m2になるまで、この手順を繰り返した。
【0055】
500℃で100分間の最終熱処理を最後に実施した。
【0056】
このように得られた電極を、標本番号1と指定した。
【0057】
実施例2
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0058】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびイリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で26%のRu、10%のIr、および64%のSnに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0059】
白金の有機金属錯体およびパラジウムの有機金属錯体を含有し、金属基準で87%のPtおよび13%のPdに等しいモル組成を有する、第2の酢酸溶液100mlも調製した。
【0060】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0061】
IrとRuの合計として表される金属基準での担持量が6.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0062】
続いて、第2の酢酸溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0063】
PtとPdとの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が2.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0064】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0065】
このように得られた電極を、標本番号2と指定した。
【0066】
実施例3
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0067】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびイリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で26%のRu、10%のIr、および64%のSnに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0068】
次いで、白金の有機金属錯体、パラジウムの有機金属錯体、およびRhCl3を含有し、金属基準で86%のPt、10%のPd、および4%のRhに等しいモル組成を有する、第2の酢酸溶液100mlを調製した。
【0069】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0070】
IrとRuの合計として表される金属基準での担持量が6.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0071】
続いて、第2の酢酸溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0072】
Pt、Pd、およびRhの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が2.8g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0073】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0074】
このように得られた電極を、標本番号3と指定した。
【0075】
実施例4
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0076】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、イリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびチタンのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で25%のRu、10%のIr、35%のSn、および30%のTiに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0077】
白金の有機金属錯体およびパラジウムの有機金属錯体を含有し、金属基準で87%のPtおよび13%のPdに等しいモル組成を有する、第2の酢酸溶液100mlも調製した。
【0078】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0079】
IrとRuとの合計として表される金属基準での担持量が6.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0080】
続いて、第2の酢酸溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0081】
PtとPdとの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が2.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0082】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0083】
このように得られた電極を、標本番号4と指定した。
【0084】
実施例5
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0085】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、イリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびチタンのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で25%のRu、10%のIr、35%のSn、および30%のTiに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0086】
白金の有機金属錯体、パラジウムの有機金属錯体、およびRhCl3を含有し、金属基準で86%のPt、10%のPd、および4%のRhに等しいモル組成を有する、第2の酢酸溶液100mlも調製した。
【0087】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0088】
IrとRuの合計として表される金属基準での担持量が6.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0089】
続いて、第2の溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0090】
Pt、Pd、およびRhの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が2.7g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0091】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0092】
このように得られた電極を、標本番号5と指定した。
【0093】
反例1
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0094】
次いで、RuCl3
*3H2O、H2IrCl6
*6H2O、TiCl3のイソプロパノール中溶液を含有し、23%のRu、22%のIr、55%のTiに等しいモル組成を有する、水性アルコール溶液100mlを調製した。
【0095】
この溶液を、14回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にこの加工物を空気中で冷却した。
【0096】
IrとRuとの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が11g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。次いで、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0097】
このように得られた電極を、標本番号1Cと指定した。
【0098】
反例2
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0099】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、およびイリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で26%のRu、10%のIr、および64%のSnに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0100】
白金の有機金属錯体およびスズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体を含有し、金属基準で87%のPtおよび13%のSnに等しいモル組成を有する、第2の酢酸溶液100mlも調製した。
【0101】
第1の酢酸溶液を、6回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0102】
IrとRuとの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が6g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0103】
続いて、第2の酢酸溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0104】
Ptとして表される貴金属の金属基準での総担持量が2.5g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0105】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0106】
このように得られた電極を、標本番号2Cと指定した。
【0107】
反例3
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0108】
次いで、スズのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、ルテニウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、イリジウムのアセタト-ヒドロキシクロリド錯体、および白金の有機金属錯体を含有し、金属基準で25%のRu、10%のIr、35%のSn、および30%のPtに等しいモル組成を有する、第1の酢酸溶液100mlを調製した。
【0109】
この酢酸溶液を、10回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0110】
Ir、Ru、およびPtの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が8g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0111】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0112】
このように得られた電極を、標本番号3Cと指定した。
【0113】
反例4
10cm×10cmの寸法のチタンのメッシュを60℃の脱イオン水中で3回洗浄し、毎回この液体を交換した。洗浄後に、350℃で2時間熱処理した。次いでメッシュに20%のHClの溶液中で30分間沸騰させる処理を行った。
【0114】
次いで、HClで酸性化された水と1-ブタノールとの混合物中のRuCl3
*3H2O、H2IrCl6
*6H2O、TiOCl2を含有し、金属基準で26%のRu、23%のIr、51%のTiに等しいモル組成を有する、水性アルコール溶液100mlを調製した。
【0115】
H2PtCl6およびPdCl2を含有する、第2の水性アルコール溶液100mlも調製した。
【0116】
第1の酢酸溶液を、8回コートで塗装することによってチタンのメッシュに施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0117】
IrとRuとの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が6g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0118】
続いて、第2の酢酸溶液を、4回コートで塗装することによって施した。各コートの後に、乾燥工程を50~60℃でおよそ10分間、次いで熱処理を500℃で10分間実施した。毎回、次のコートを施す前にメッシュを空気中で冷却した。
【0119】
Pt+Pdの合計として表される貴金属の金属基準での総担持量が3g/m2に等しくなるまで、この手順を繰り返した。
【0120】
最後に、500℃で100分間の最終熱処理を実施した。
【0121】
このように得られた電極を、標本番号4Cと指定した。
【0122】
実施例および反例の標本を、200g/lの濃度の塩化ナトリウムのブライン溶液で満たされた実験室用セル内で塩素を発生させるための陽極として特性分析した。
【0123】
表1に、4kA/m
2の電流密度で測定した塩素の過電圧および生成された塩素中の酸素の体積百分率を報告する。
【0124】
先の実施例の標本に対して、ビーカー内での動作の試験も行った。表2に、80℃の温度の200g/lの濃度の塩化ナトリウム溶液中で測定し、3kA/m
2の電流密度での抵抗降下を補正した陽極電位(CISEP)を報告する。さらに、塩素反応に対する選択性を評価するために、試験を硫酸中、3kA/m
2の電流密度で行った。報告する陽極電位(CISEP)は、抵抗降下について補正した。硫酸中で測定された陽極電位の値が高いほど、塩素反応に対する選択性が大きくなる。
【0125】
最後に、幾つかの標本を耐用寿命試験に供した。本耐用寿命試験は、工業電解の条件によって分けられたセルでのシミュレーションである。表3に、試験開始時および1年をシミュレートした期間後の標本の、塩素発生のためのそれらの触媒活性の指標としての8kA/m
2の電流密度で測定したセル電圧(Cl O.V.)、および1年をシミュレートした期間後の第2の触媒層の残留担持量の百分率を報告する。
【0126】
先の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明はその目的から逸脱することなく様々な実施形態によって使用することができ、その範囲は添付の特許請求の範囲によって一意に定義される。
【0127】
本出願の説明および特許請求の範囲において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「含有する」という用語は、他の追加要素、成分、またはプロセス工程の存在を除外することを意図するものではない。
【0128】
文献、項目、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明の状況を示すという目的で本説明に含まれるに過ぎない。これらのトピックのいずれかまたはすべてが、本出願の各特許請求の範囲の優先日以前に先行技術の一部を形成していたことまたは本発明が関連する分野の技術常識を形成していたことを示唆または表すものではない。
電解プロセスにおいてガスを発生させるための、バルブ金属基材とコーティングとを含む電極であって、前記コーティングが、前記基材の上に形成された、イリジウム、ルテニウム、スズ、および白金、もしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせの混合物を含有する第1の触媒層と、前記第1の触媒層の上に形成された、白金およびスズもしくはそれらの酸化物またはそれらの組み合わせを含有する第2の触媒層とを含み、前記第2の触媒層の前記スズが、前記第1の触媒層との接触面から減少する濃度で存在し、前記第1の触媒層の前記白金が、前記第2の触媒層との接触面から減少する濃度で存在する、電極。