(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161434
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20241112BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20241112BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20241112BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20241112BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20241112BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20241112BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N35/00 B
B01D61/00
B01D63/02
B01D71/26
B01D71/32
B01D63/00 500
C02F1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024132094
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2023538765の分割
【原出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021182447
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤生
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 洋平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】恒温水の脱気に長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制できる中空糸脱気モジュール、それを備える前記自動分析装置、及び、当該自動分析装置を用いる(生)化学分析方法、前記恒温水の脱気方法を提供する。
【解決手段】検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置、及び、当該自動分析装置を用いる(生)化学分析方法、前記恒温水の脱気方法であって、検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽と、恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気するための中空糸膜を有する中空糸脱気モジュールを備えた脱気部を有し、前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂またはフッ素樹脂であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置であって、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽と、恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気するための中空糸脱気モジュールを備えた脱気部を有し、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、自動分析装置。
【請求項2】
前記中空糸膜は、複数本の中空糸膜が縦糸で束ねられており、前記縦糸が前記縦糸の素材がポリオレフィン樹脂又は芳香族ポリエステル樹脂である、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
当該中空糸脱気モジュールは、さらに、少なくともハウジング、及び、中空糸膜束の端部を封止する封止部を有すること、
前記ハウジングの素材がポリオレフィン樹脂又は芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記封止部の少なくとも接液部が、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物の硬化物で封止されている、
請求項1または2記載の自動分析装置。
【請求項4】
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置に備えられ、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気するために専ら用いられる中空糸脱気モジュールであって、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、脱気モジュール。
【請求項5】
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置において、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気する方法であって、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、脱気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の化学分析ないし生化学分析(以下、「化学分析ないし生化学分析」を「(生)化学分析」と称する)を行う自動分析装置に関する。さらに詳しくは、中空糸膜を備えており、中空糸膜の外側または内側を負圧にすることで、液体が中空糸膜の内側または外側を通過する際に、液体中のガスのみ中空糸の壁面から分離する仕組みを有する脱気モジュール(以下、「中空糸脱気モジュール」と称する)を備えた、検体の化学分析ないし生化学分析装置、及び、その方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化学分析装置においては、反応槽の恒温水として脱気水が用いられている。これは恒温水中の溶存酸素などに起因する気泡発生が分析データの精度に悪影響を及ぼすためである。
【0003】
従来の自動化学分析装置は、検体の(生)化学分析を行う装置本体と、この装置本体の外部に配置された脱気装置、純水装置とを有し、純水装置で製造された純水を脱気装置に送出し、ここで脱気した後に装置本体に送出するようにしていた。脱気装置としては、純水を80℃以上に加熱するものが適用されている。しかしながら、装置本体で使用される純水(脱気水)の温度は約37℃である場合もあることから、80℃以上となっている加熱脱気水をそのまま装置本体に送出することができない。このことから、冷却手段を備え、冷却された脱気水を貯蓄する脱気水貯蓄槽とを脱気装置内に設け、この脱気水貯蓄槽内の脱気水を必要に応じて装置本体に送出するようにしていた。しかしながら、このような装置は必然的に大型となってしまうこと、また、この純水装置によって生成された脱気水は脱気水貯蓄槽内に放置されることになるため、脱気度の低下を生じ易いという問題点を有していた。
【0004】
そこで、システム全体の小型化、脱気水貯蔵槽内の脱気水の脱気度の低下を防止する目的で、外部より取り込まれた純水を、プレヒートタンクを中心に構成された脱気部で使用温度より若干高めに加熱保温することで該純水中の溶存気体の脱気を可能とした装置が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、システムの高速化に充分対応するには、多量の脱気水を貯蔵するための貯蔵槽が必要とならざるを得ず、システム全体の小型化に対応できなかった。
【0005】
このシステムの高速化に対応するため、シリコーン樹脂の中空糸膜でできており、中空糸膜の外側を負圧にすることで、液体が中空糸膜の内側を通過する際に、液体中のガスのみ中空糸の壁面から分離する仕組みを有する脱気モジュールを適用することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-165761 号公報
【特許文献2】WO2020/261659号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリコーン樹脂の中空糸膜でできた脱気モジュールは洗浄で使用する薬品、特に酸やアルカリで劣化しやすく、さらに、劣化した素材と考えられる異物が長期間の使用で混入する恐れがあった。このため、当該自動分析装置を長期間使用すると、恒温水中の異物が容器表面に堆積してゆき、分析データの精度に悪影響を及ぼす傾向があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、前記恒温水の脱気に長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制できる中空糸脱気モジュール、それを備える前記自動分析装置、及び、当該自動分析装置を用いる(生)化学分析方法を提供することにある。また、本発明が解決しようとする課題は、検体の(生)化学分析の高速化に対応でき、かつ、長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制することができる、前記恒温水の脱気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、中空糸脱気モジュールの接液部に、特定の素材を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置であって、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽と、恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気するための中空糸脱気モジュールを備えた脱気部を有し、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、自動分析装置に関する。
【0011】
また、本発明は、
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置に備えられ、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気するために専ら用いられる中空糸脱気モジュールであって、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、脱気モジュールに関する。
【0012】
さらに、本発明は、
検体の化学分析ないし生化学分析を行う自動分析装置において、
検体を含む試験管を一定の温度範囲にするための恒温槽中の恒温水に含まれる溶存気体を脱気する方法であって、
前記中空糸脱気モジュールが中空糸膜を有すること、
前記中空糸膜の素材がポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする、脱気方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、前記恒温水の脱気に長期間使用しても異物混入を抑制できる中空糸脱気モジュール、それを備える前記自動分析装置、及び、当該自動分析装置を用いる(生)化学分析方法を提供することができる。また、本発明により、検体の(生)化学分析の高速化に対応でき、かつ、長期間使用しても異物混入を抑制することができる、前記恒温水の脱気方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の自動分析装置の一実施例を示す概念図である。
【
図2】本発明に係る外部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図である。
【
図3】本発明に用いる中空糸膜束の外部支持体の概略図である。
【
図4】本発明に用いる中空糸脱気モジュールの封止部の一部を拡大した概略断面図である。
【
図5】本発明に用いる中空糸脱気モジュールの封止部の一部を拡大した概略断面図である。
【
図6】本発明に係る内部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図である。
【
図7】本発明に用いる中空糸脱気モジュールの封止部の一部を拡大した概略断面図である。
【
図8】本発明に係る外部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図である。
【
図9】本発明を適用した自動分析装置の温水循環式反応槽の一実施形態を示す概念図である。
【
図10】本発明を適用した自動分析装置の温水循環式反応槽の一実施形態を示す概念図である。
【
図11】本発明の自動分析装置の一実施例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施例により具体的に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す概念図である。同図に示すように本実施例装置は、純水供給装置1と、自動分析装置2を有する。自動分析装置2内には、前記純水供給装置1より取り込まれた恒温水を脱気する脱気装置3、(生)化学分析部4内の反応槽5が配置されている。そして、純水供給装置1と、脱気装置3と、反応槽5は流路(1a、3a)により連通されている。脱気装置3は、真空ポンプと吸気管3bで接続されており、該純水供給装置1から脱気装置3に供給された純水は、真空ポンプの作動により、溶存酸素や気泡が脱気される。さらに脱気装置3で脱気された純水は反応槽(恒温槽)5に供給されるように構成されていてもよい。あるいは後述するように、脱気装置3と反応槽5とが循環経路を形成しており、脱気装置3にて脱気された純水が、当該循環経路に供給されるように構成されていてもよい。
【0016】
この脱気装置3は中空糸脱気モジュールを中心に構成されている。中空糸脱気モジュールは、複数本の中空糸膜が縦糸で簾状に束ねられた中空糸膜束と、中空糸膜束を収容するハウジングと、前記中空糸膜束の端部を封止する封止部を備えている。
【0017】
(中空糸脱気モジュールに係る第一実施形態)
図2は、本発明に係る外部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図である。外部灌流型の中空糸脱気モジュール6は、外部灌流型では中空糸膜7の外側に恒温水を供給するとともに中空糸膜7の内側を減圧することで、恒温水を脱気する。
【0018】
中空糸膜7は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜7の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。中空糸膜7の素材としては、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、例えば、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)などのポリオレフィン系樹脂や、PTFE、アモルファスフロロポリマー、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAとも称する)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPとも称する)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(以下、ETFEとも称する)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、PCTFEとも称する)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFとも称する)等のフッ素樹脂など挙げられる。なお、アモルファスフロロポリマー(以下、「テフロン(登録商標)AF」とも称する)は、より詳しくは、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールをコモノマーとする共重合体を含んでなる非晶質フッ素樹脂であってよい。中空糸膜7の膜形状(側壁の形状)としては、例えば、多孔質膜、微多孔膜、多孔質を有さない均質膜(非多孔膜)、が挙げられる。中空糸膜7の膜形態としては、例えば、膜全体の化学的あるいは物理的構造が均質な対称膜(均質膜)、膜の化学的あるいは物理的構造が膜の部分によって異なる非対称膜(不均質膜)、が挙げられる。非対称膜(不均質膜)は、非多孔質の緻密層と多孔質とを有する膜である。この場合、緻密層は、膜の表層部分又は多孔質膜内部等、膜中のどこに形成されていてもよい。不均質膜には、化学構造の異なる複合膜、3層構造のような多層構造膜も含まれる。
【0019】
特にポリ(4-メチルペンテン-1)樹脂を含む素材を用いた不均質膜は、液体を遮断する緻密層を有するため、恒温水の脱気に好ましい。また、外部灌流型に用いる中空糸の場合は、緻密層が中空糸外表面に形成されていることが好ましい。
【0020】
中空糸膜束8は、例えば、複数の中空糸膜7が縦糸で簾状に束ねられたシート状物に形成することができる。この場合、例えば、シート状物を円筒状に束ねて中空糸膜束とし、さらに円筒状に束ねられた中空糸膜束の両端部を封止材で固定する。これにより、中空糸脱気モジュール6を作成することができる。前記縦糸の素材としては、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂や、上記フッ素樹脂や、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0021】
さらに、円筒状に束ねられた中空糸膜束は、その円周の外周部を、外部支持体16(例えば、
図3)で包みこむことによって支持してもよい。
図3に示すように、該外部支持体16は、シートを円筒形状にした形で、シートには網目状、パンチ穴状などの通水孔17を有するものであってよい。外部支持体16の該シートの素材は、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂や、上記フッ素樹脂や、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。外部支持体16を用いる場合、中空糸膜束8を製造する際に、複数の中空糸膜7が縦糸で簾状に束ねられたシート状物を形成し、そのシート状物を円筒状に束ねて中空糸膜束とした後に、外部支持体16の内部に収めた上で、一体化した中空糸膜束と外部支持体16の両端部を封止材で固定すればよい。
【0022】
ハウジング9は、筒体10と、第一蓋部11と、第二蓋部12と、を備えている。筒体10は、中空糸膜束8が収容される部位である。筒体10は、軸線方向Lに延びる円筒状に形成されており、筒体10の両端部は、開口している。筒体10の一方側の開口端部である一方側開口端部10aに、第一蓋部11が取り付けられており、筒体10の他方側の開口端部である他方側開口端部10bに、第二蓋部12が取り付けられている。筒体10に対する第一蓋部11及び第二蓋部12の取り付けは、例えば、螺合、嵌合、接着、溶着等により行うことができる。図示しないが、筒体10に対する第一蓋部11及び第二蓋部12の取り付け部には、Oリングなどのシール部を設けてもよい。当該シール部がOリングで構成される場合、Oリングは筐体10の一方側開口端部10aまたは他方側開口端部10bに形成された環状の溝部等に配置されるのが好ましい。シール部の素材は、常時接液するわけではなく、例えば螺合、嵌合、接着、溶着等の取り付けに不具合が生じた際の液漏れの発生防止のためのものであることから、その素材はいずれの材料であってもよいが、万が一、不具合が生じたとしても、耐汚れ性の観点からポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂や、上記フッ素樹脂や、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0023】
第一蓋部11は、筒体10から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。第一蓋部11の先端部には、恒温水を第一蓋部11内に供給するための供給口11aが形成されている。そして、供給口11aは、円形の開口であって、筒体10の中心軸線上に形成されていてもよい。供給口11aからは、第一恒温水供給管1aを脱着可能に接続するための接続部11bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部11bは、円筒状に形成されており、接続部11bの内周面または外周部には、第一恒温水供給管1aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ11cが形成されている(
図2では雌ネジとして示した)。なお、接続部11bと第一恒温水供給管1aとの接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0024】
第二蓋部は、筒体から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。
図2に示す通り、第二蓋部12の先端部には、ハウジング9内から気体を吸引するための吸気口12aが形成されている。吸気口12aは、円形の開口であって、筒体10の中心軸線上に形成されていてもよい。吸気口12aからは、吸気管(図示せず)を脱着可能に接続するための接続部12bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部12bは、円筒状に形成されており、接続部12bの内周面または外周部には、吸気管3bがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ12cが形成されている(
図2では雌ネジとして示した)。なお、接続部12bと吸気管との接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0025】
筐体は、
図2に示す通り、筒体10の側壁10cには、ハウジング9内から恒温水を排出する排出口10dが形成されている。排出口10dは、円形の開口である。排出口10dは、筒体10の軸線方向Lにおける中央よりも他方側開口端部10b側に形成されていてもよい。排出口10dからは、第二恒温水供給管3aを脱着可能に接続するための接続部10eが、軸線方向Lと直交する方向に沿って延びている。接続部10eは、円筒状に形成されており、接続部10eの内周面または外周部には、第二恒温水供給管3aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ10fが形成されている(
図2では雌ネジとして示した)。なお、排出口10dと第二恒温水供給管3aとの連結は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0026】
ハウジング9、筒体10、第一蓋部11及び第二蓋部12の素材としては、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂や、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。この場合、筒体10、第一蓋部11及び第二蓋部12を、射出成型により製造することができる。
【0027】
そして、第一蓋部側にあって、中空糸膜束8の一方側膜束端部8aが、封止部13により筒体10の一方側開口端部10aに固定されており、さらに、第二蓋部側にあって、中空糸膜束8の他方側膜束端部8bが、封止部14により筒体10の他方側開口端部10bに固定されている。
【0028】
封止部13、14は、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、例えば、エポキシ樹脂や(メタ)アクリル樹脂を含む硬化性樹脂組成物の硬化物や、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂で形成されていることが好ましい。
【0029】
中空糸膜束8に膜束中空部8cを設け、かつ、封止部13、14を設けるには、例えば、複数の中空糸膜7が縦糸で簾状に束ねられたシート状物を筒状の仮芯に巻き付けて円筒状に束ねて中空糸膜束とし、さらに、筐体10と第一蓋部11で構成されたハウジング内に設置した上で、円筒状に束ねられた中空糸膜束の一方の端部を封止材で固定し、当該端部を封止部として固定された中空糸膜束から仮芯を抜く。さらに、第二蓋部12を勘合して、排出口10dから流し込んだ封止材で、もう一方の端部を固定することにより、中空糸膜束の両端部を封止部として固定することができる。これにより
図2に示すような、中空糸脱気モジュール6を作成することができる。
【0030】
封止部13は、筒体10の軸線方向Lと垂直な断面において、膜束中空部8c以外の全域に充填されている。つまり、封止部13は、中空糸膜7間と、中空糸膜7の内側と、中空糸膜束8と筒体10の内壁との間とに封止部13が充填されている(
図4)。そして、封止部13には、膜束中空部8cと筒体10外部とを連通する連通口13aが形成されている。
【0031】
封止部14は、筒体10の軸線方向Lと垂直な断面において、中空糸膜7の内側以外の全域に充填されている。つまり、封止部14は、中空糸膜7の内側には充填されておらず、中空糸膜7間、中空糸膜束8と筒体10の内壁との間、及び、膜束中空部8cに充填されている(
図5)。
【0032】
このため、供給口11aから第一蓋部11内に供給された恒温水は、連通口13aからのみ筒体10内に供給され、筒体10内において、中空糸膜7の外側に供給される。そして、筒体10に供給された恒温水は、封止部14を超えて第二蓋部12側に流れ込むのが阻止される。また、中空糸膜7の内側と第二蓋部12の内側とが連通されているため、吸引ポンプにより吸気口12aから吸気することで、中空糸膜7の内側が減圧される。そうすると、恒温水が中空糸膜7間を通過する際に、恒温水から溶存気体及び気泡が中空糸膜7の内側に引き込まれることとなり、これにより、恒温水の脱気が行われる。
【0033】
このように、第一実施形態では、中空糸脱気モジュールにおける恒温水との接液部が、主として、筐体10、第一蓋部11、封止部13、14、中空糸膜7となる事例が開示される。そして接液部に上記素材を用いることで、中空糸脱気モジュールを用いた前記恒温水の脱気に長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制できる。
【0034】
(中空糸脱気モジュールに係る第二実施形態)
図6は、本発明に係る内部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図である。内部灌流型の中空糸脱気モジュール6’は、中空糸膜7’の内側に恒温水を供給するとともに中空糸膜7’の外側を減圧することで、恒温水を脱気する。
【0035】
中空糸膜7’は、第一実施形態における中空糸膜7と同様である。
【0036】
中空糸膜束8’は、例えば、複数の中空糸膜7’が縦糸で簾状に束ねられたシート状物に形成することができる。この場合、例えば、シート状物を巻き円筒状に束ねて中空糸膜束とし、さらに円筒状に束ねられた中空糸膜束の両端部を封止材で固定する。これにより、中空糸脱気モジュール6’を作成することができる。前記縦糸の素材としては、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂や、上記フッ素樹脂や、ポリカーボネート樹脂やポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられる。
【0037】
さらに、円筒状に束ねられた中空糸膜束は、第一実施形態で例示したように、その円周の外周部を、外部支持体16(例えば、
図3)で包みこむことによって支持してもよい。
【0038】
ハウジング9’は、筒体10’と、第一蓋部11’と、第二蓋部12’と、を備えている。筒体10’は、中空糸膜束8’が収容される部位である。筒体10’は、軸線方向Lに延びる円筒状に形成されており、筒体10’の両端部は、開口している。筒体10’の一方側の開口端部である一方側開口端部10’aに、第一蓋部11’が取り付けられており、筒体10’の他方側の開口端部である他方側開口端部10’bに、第二蓋部12’が取り付けられている。筒体10’に対する第一蓋部11’及び第二蓋部12’の取り付けは、例えば、螺合、嵌合、接着、溶着等により行うことができる。
【0039】
第一蓋部11’は、筒体10’から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。第一蓋部11’の先端部には、恒温水を第一蓋部11’内に供給するための供給口11’aが形成されている。そして、供給口11’aは、円形の開口であって、筒体10’の中心軸線上に形成されていてもよい。供給口11’aからは、第一恒温水供給管1aを脱着可能に接続するための接続部11’bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部11’bは、円筒状に形成されており、接続部11’bの内周面または外周部には、第一恒温水供給管1aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ11’cが形成されている(
図6では雌ネジとして示した)。なお、接続部11’bと第一恒温水供給管1aとの接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0040】
第二蓋部は、筒体から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。
図6に示す通り、第二蓋部12’の先端部には、ハウジング9’内から恒温水を排出するための排出口12’dが形成されている。排出口12’dは、円形の開口であって、筒体10’の中心軸線上に形成されていてもよい。排出口12’dからは、第二恒温水供給管3aを脱着可能に接続するための接続部12’eが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部12’eは、円筒状に形成されており、接続部12’eの内周面または外周部には、第二恒温水供給管3aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ12’fが形成されている(
図6では雌ネジとして示した)。なお、接続部12’eと第二恒温水供給管3aとの接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0041】
図6に示す通り、筒体10’の側壁10’cには、ハウジング9’内から気体を吸引するための吸気口10’gが形成されている。吸気口10’gは、円形の開口である。吸気口10’gは、筒体10’の軸線方向Lにおける中央よりも他方側開口端部10’b側に形成されていてもよい。吸気口10’gからは、吸気管3bを脱着可能に接続するための接続部10’hが、軸線方向Lと直交する方向に沿って延びている。接続部10’hは、円筒状に形成されており、接続部10’hの内周面または外周部には、吸気管3bがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ10’iが形成されている(
図6では雌ネジとして示した)。なお、吸気口10’gと吸気管3bとの連結は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
また、図示しないが、吸気口10’gは筒体10’の側壁10’cに2以上設けることもできる。例えば、筒体10’の軸線方向Lにおける中央よりも一方側開口端部10’a側に2つ目以降を形成することができ、複数の吸気口から減圧してもよい。
【0042】
ハウジング9’、筒体10’、第一蓋部11’及び第二蓋部12’の素材としては、第一実施形態におけるハウジング9、筒体10、第一蓋部11及び第二蓋部12の素材とそれぞれと同様である。
【0043】
そして、第一蓋部側にあって、中空糸膜束8’の一方側膜束端部8’aが、封止部13’により筒体10’の一方側開口端部10’aに固定されており、さらに、第二蓋部側にあって、中空糸膜束8’の他方側膜束端部8’bが、封止部14’により筒体10’の他方側開口端部10’bに固定されている。
【0044】
封止部13’、14’は、製造容易性、耐薬品性、耐汚れ性の観点から、例えば、エポキシ樹脂や(メタ)アクリル樹脂を含む硬化性樹脂組成物の硬化物や、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂で形成されていることが好ましい。
【0045】
封止部13’は、筒体10’の軸線方向Lと垂直な断面において、中空糸膜7’の内側以外の全域に充填されている。つまり、
図7に示すように封止部13’は、中空糸膜7’の内側には充填されておらず、中空糸膜7’間、中空糸膜束8’と筒体10’の内壁との間にのみ充填されている。
【0046】
また、封止部14’も封止部13’と同様に、筒体10’の軸線方向Lと垂直な断面において、中空糸膜7’の内側以外の全域に充填されている。つまり、
図5と同様に、封止部14’は、中空糸膜7’の内側には充填されておらず、中空糸膜7’間、中空糸膜束8’と筒体10’の内壁との間、にのみ充填されている。
【0047】
このため、供給口11’aから第一蓋部11’内に供給された恒温水は、中空糸膜7’の内側のみに供給される。そして、筒体10’に供給された恒温水は、中空糸膜7’の外側に流れ込むのが阻止される。また、中空糸膜7’の外側が、吸引ポンプにより吸気口10’gから吸気されることで減圧される。そうすると、恒温水が中空糸膜7’の内側を通過する際に、恒温水から溶存気体及び気泡が中空糸膜7’の外側に引き込まれることとなり、これにより、恒温水の脱気が行われる。
【0048】
そして、脱気された恒温水は、排出口12’dから第二恒温水供給管3aに流れ込み、第二恒温水供給管3aから(生)化学分析部4の反応槽5内に供給される。
【0049】
このように第二実施形態では、中空糸脱気モジュールにおいて、恒温水との接液部が、主として、第一蓋部11’、第二蓋部12’、封止部13’、封止部14’、及び、中空糸膜7’となる事例が開示される。そして接液部に上記素材を用いることで、中空糸脱気モジュールを用いた前記恒温水の脱気に長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制できる。
【0050】
(中空糸脱気モジュールに係る第三実施形態)
図8は、本発明に係る外部灌流型の中空糸脱気モジュールの概略断面図で、第一実施例の改良型である。この外部灌流型の中空糸脱気モジュール6”は、外部灌流型では中空糸膜7”の外側に恒温水を供給するとともに中空糸膜7”の内側を減圧することで、恒温水を脱気する。
【0051】
中空糸膜7”、中空糸膜束8”は、第二実施形態における中空糸膜7’及び中空糸膜束8’とそれぞれ同様である。さらに、円筒状に束ねられた中空糸膜束8”は、第一実施形態で例示したように、その円周の外周部を、外部支持体16(例えば、
図3)で包みこむことによって支持してもよい。
【0052】
ハウジング9”は、筒体10”と、第一蓋部11”と、第二蓋部12”と、を備えている。筒体10”は、中空糸膜束8”が収容される部位である。筒体10”は、軸線方向Lに延びる円筒状に形成されており、筒体10”の両端部は、開口している。筒体10”の一方側の開口端部である一方側開口端部10”aに、第一蓋部11”が取り付けられており、筒体10”の他方側の開口端部である他方側開口端部10”bに、第二蓋部12”が取り付けられている。筒体10”に対する第一蓋部11”及び第二蓋部12”の取り付けは、例えば、螺合、嵌合、接着、溶着等により行うことができる。
【0053】
第一蓋部11”、第二蓋部12”は、それぞれ、筒体10”から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。第一蓋部11”、第二蓋部12”の先端部には、それぞれ、中空糸膜7”の内部から気体を吸引するための吸気口11”d、吸気口12”aが形成されている。吸気口11”d、吸気口12”aは、円形の開口であって、筒体10”の中心軸線上に形成されていてもよい。吸気口11”d、吸気口12”aからは、吸気管(図示せず)を脱着可能に接続するための接続部11”e、吸気口12”bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部11”e、接続部12”bは、円筒状に形成されており、接続部11”e、接続部12”bの内周面または外周部には、吸気管3bがねじ込まれる雌ネジ11”f、雌ネジ12”cまたは雄ネジ11”f、雄ネジ”12cが形成されている(
図8では雌ネジとして示した)。なお、接続部11”e、接続部12”bと吸気管との接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0054】
筐体10”には、恒温水をハウジング9”内に供給するための供給口10”jが形成されている。例えば、
図8に示す通り、筐体10”の側壁10”cには、ハウジング9”内に恒温水を供給するための供給口10”jが形成されている。供給口10”jは、円形の開口である。供給口10”jは、筒体10”の軸線方向Lにおける中央よりも一方側開口端部10”a側に形成されていてもよい。供給口10”jには、第一恒温水供給管1aを脱着可能に接続するための接続部10”kが、軸線方向Lと直交する方向に沿って延びている。接続部10”kは、円筒状に形成されており、接続部10”kの内周面または外周部には、第一恒温水供給管1aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ10”nが形成されている(
図8では雌ネジとして示した)。なお、供給口10”jと第一恒温水供給管1aとの連結は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0055】
図8に示す通り、筒体10”の側壁10”cには、ハウジング9”内から恒温水を排出する排出口10”dが形成されている。排出口10”dは、円形の開口である。排出口10”dは、筒体10”の軸線方向Lにおける中央よりも他方側開口端部10”b側に形成されていてもよい。排出口10”dからは、第二恒温水供給管3aを脱着可能に接続するための接続部10”eが、軸線方向Lと直交する方向に沿って延びている。接続部10”eは、円筒状に形成されており、接続部10”eの内周面または外周面には、第二恒温水供給管3aがねじ込まれる雌ネジまたは雄ネジ10”fが形成されている(
図8では雌ネジとして示した)。なお、排出口10”dと第二恒温水供給管3aとの連結は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0056】
また、
図8に示す通り、排出口10”dには、筐体10”の側壁10”cから延びる邪魔板10”mが設定されていてもよい。邪魔板10”mを設ける場合には、側壁10”cとの間に隙間を設け、かつ、供給口10”jからハウジング内に供給された恒温水が、他方側開口端部10”b側から排出口10”dへ回り込むよう、他方側開口端部10”b側にのみ当該隙間の開口部を設けることができる。このような邪魔板は筐体10”を製造する際に一体的に製造することが好ましい。
【0057】
ハウジング9”、筒体10”、第一蓋部11”及び第二蓋部12”の素材としては、第一実施形態において記載したハウジング9、筒体10、第一蓋部11及び第二蓋部12の素材と、それぞれ同様である。
【0058】
そして、第一蓋部側にあって、中空糸膜束8”の一方側膜束端部8”aが、封止部13”により筒体10”の一方側開口端部10”aに固定されており、さらに、第二蓋部側にあって、中空糸膜束8”の他方側膜束端部8”bが、封止部14”により筒体10”の他方側開口端部10”bに固定されている。
【0059】
封止部13”、14”の素材は、第一実施形態において記載した封止部13、14と、それぞれ同様である。
【0060】
封止部13”は、筒体10”の軸線方向Lと垂直な断面において、中空糸膜7”の内側以外の全域に充填されている。つまり、
図7と同様に、封止部13”は、中空糸膜7”の内側には充填されておらず、中空糸膜7”間、中空糸膜束8”と筒体10”の内壁との間にのみ充填されている。
【0061】
また、封止部14”も封止部13”と同様に、筒体10”の軸線方向Lと垂直な断面において、中空糸膜7”の内側以外の全域に充填されている。つまり、
図5と同様に、封止部14”は、中空糸膜7”の内側には充填されておらず、中空糸膜7”間、中空糸膜束8”と筒体10”の内壁との間、にのみ充填されている。
【0062】
このため、供給口10”jからハウジング9”内に供給された恒温水は、中空糸膜7”の外側のみに供給される。そして、筒体10”に供給された恒温水は、中空糸膜7”の内側、第一蓋部11”、第二蓋部12”に流れ込むのが阻止される。また、中空糸膜7”の内側が、吸引ポンプにより吸気口11”d、吸気口12”aから吸気されることで減圧される。そうすると、恒温水が中空糸膜7”の外側を通過する際に、恒温水から溶存気体及び気泡が中空糸膜7”の内側に引き込まれることとなり、これにより、恒温水の脱気が行われる。
【0063】
そして、脱気された恒温水は、排出口10”dから第二恒温水供給管3aに流れ込み、第二恒温水供給管3aから(生)化学分析部4の反応槽5内に供給される。
【0064】
このように第三実施形態では、中空糸脱気モジュールにおいて、恒温水との接液部が、主として、筐体10”、封止部13”、封止部14”及び中空糸膜7”となる事例が開示される。そして接液部に上記素材を用いることで、中空糸脱気モジュールを用いた前記恒温水の脱気に長期間使用しても耐薬品性に優れ、異物混入を抑制できる。
【0065】
次に、本発明を適用した自動分析装置の実施形態について説明する。
図9に本発明を適用した自動分析装置の温水循環式反応槽の一実施形態を示すブロック図である。円形の反応ディスク101の円周上に取り付けられた反応容器102は、同じく円形の反応槽103に保持された液体に浸漬されている。反応槽内の液体は、排出配管104と供給配管105との間に設置された循環用ポンプ106により常時循環されており、ヒータ107のオン/オフ制御により温度制御されている。これにより、反応容器102の内部に保持された反応液を反応に最適な温度(例えば37℃)に保っている。また、反応槽内の恒温水の温度が高くなりすぎた場合に恒温水を冷却するための冷却ユニット108を設けてもよい。温水循環流路には、給水タンク109からの純水の供給が、給水用ポンプ110と給水用弁111によって制御されている。温水循環流路は廃液用弁112も備え、反応槽を循環する高温水の交換する際に恒温水を流路の外に廃液として排出する。 そして、反応槽内の恒温水を循環させる流路上に、脱気装置113が設けられており、脱気装置内に供給された恒温水中の溶存気体は真空ポンプ114の作動により脱気される。
【0066】
反応容器102に保持した試料と試薬を混合した反応液を、光源ランプ115から照射された光の束が通過し、透過してきた光を多波長光度計116で測定することにより、試料中の特定成分の定性・定量分析を行う。
【0067】
次に、
図10に本発明を適用した自動分析装置の温水循環式反応槽の一実施形態を示すブロック図を示す。円形の反応ディスク201の円周上に取り付けられた反応容器202は、同じく円形の反応槽203に保持された恒温水に浸漬されている。反応槽203には、給水タンク204から恒温水が供給される。給水タンク204と反応槽203の間の流路上に脱気装置205が設けられており、給水用ポンプ206と給水用弁207によって恒温水の供給が制御されている。脱気装置205内に供給された恒温水中の溶存気体は真空ポンプ208の作動により脱気されて、供給配管217から反応槽203に供給される。
【0068】
一方、反応槽内の恒温水は、排出配管209と供給配管210との間に設置された循環用ポンプ211により常時循環されており、ヒータ212のオン/オフ制御により温度制御されている。これにより、反応容器202の内部に保持された反応液を反応に最適な温度(例えば37℃)に保っている。また、反応槽内の恒温水の温度が高くなりすぎた場合に恒温水を冷却するための冷却ユニット213を設けてもよい。温水循環流路は廃液用弁214も備え、反応槽を循環する恒温水の交換する際に恒温水を流路の外に廃液として排出する。
【0069】
反応容器202に保持した試料と試薬を混合した反応液を、光源ランプ215から照射された光の束が通過し、透過してきた光を多波長光度計216で測定することにより、試料中の特定成分の定性・定量分析を行う。
【0070】
本発明の自動分析装置は、その他、
図11に示すように、検体容器301、検体分注機構302、反応容器303、試薬容器304、試薬分注機構305を有していてもよく、例えば、検体容器301から検体分注機構302を介して反応容器303に送られた検体と、試薬容器304から試薬分注機構305を介して反応容器303に送られた試薬を、混合・攪拌することができる。反応容器303は、反応槽306に貯められた恒温水により、一定の温度に保たれる。さらに、本発明の自動分析装置は、CPU・メモリ・I/O、マイコン、ラッチ等を有する情報処理装置等で構成された制御部(図示せず)、メモリに格納された自動分析及び診断のプログラムおよびデータを有していてもよく、これらを利用して、自動分析装置の動作及び分析動作に必要な情報をCPUで処理又は統括制御することができる。
【実施例0071】
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各測定方法は以下のとおりである。
【0072】
(実施例)
図2に記載の外部還流型脱気モジュールと同様の構造を有する「SEPAREL EF-040」(DIC株式会社製)を用いて各種試験を実施した。
すなわち、中空糸脱気モジュール6が、少なくとも筒体10、第一蓋部11、第二蓋部12、複数本の中空糸膜7が縦糸で束ねられた中空糸膜束8、及び、中空糸膜束の端部を封止する封止部13、14を有すること、前記筐体10の素材がポリプロピレン樹脂であり、前記蓋部11、12の素材がポリプロピレン樹脂であり、前記中空糸膜7の素材がポリ(4-メチルペンテンー1)樹脂であること、前記縦糸の素材がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、前記封止部13、14が、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0073】
(比較例)
図2に記載の外部還流型脱気モジュールと同様の構造を有する「NAGASEP M60-4500X100C」(栄隆工業株式会社性)を用いて各種試験を実施した。気モジュール6が、少なくとも筒体10、第一蓋部11、第二蓋部12、複数本の中空糸膜7が縦糸で束ねられた中空糸膜束8、及び、中空糸膜束の端部を封止する封止部13、14を有すること、前記筐体10の素材がポリカーボネート樹脂であり、前記蓋部11、12の素材がポリカーボネート樹脂であり、前記中空糸膜7の素材がシリコーン樹脂であること、前記縦糸の素材がPET樹脂であり、前記封止部13、14がシリコーン樹脂である。
【0074】
(耐薬品性試験)
実施例、比較例の中空糸脱気モジュールを用いて、前記モジュールの気相側に薬液が侵入しないよう接続部12bにポリプロピレン樹脂製キャップをし、さらに、接続部10eにポリプロピレン樹脂製キャップをして、表1記載の薬液を供給口11aから注ぎ込み、前記モジュールの液相側を前記薬液で満たした。室温で一定期間経過させた後、薬液を取り除き、さらに、前記モジュールを分解して中空糸膜7の封止部13、14よりも内側部分を(封止部と封止部間の中心部が、切り出した試料の中心となるよう)50mm切り出した。切り出した中空糸膜7の1本あたりの引張強度(株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン「RTG-1225シリーズ」を用い、チャック間距離30mm、試験速度50mm/minで最大点荷重=引張強度として)測定し、サンプル数20の数平均値を算出した。別途、浸漬前の前記モジュールを用いて、前記同様に切り出した中空糸膜7を浸漬前の引張強度として測定し、算出した。浸漬前の引張強度(初期荷重)に対する、一定期間浸漬後の引張強度(荷重)の割合(%)として算出し、表1に示した。
【0075】
(耐汚れ性試験)
実施例、比較例の中空糸脱気モジュールを用いて、前記モジュールの気相側に薬液が侵入しないよう接続部12bにポリプロピレン樹脂製キャップをし、さらに、接続部10eにポリプロピレン樹脂製キャップをして、5%次亜塩素酸水溶液を薬液として供給口11aから注ぎ込み、前記モジュールの液相側を満たした。室温で2週間経過後に薬液を取り出し、CODパックテスト(共立理化学研究所製)を行った。結果を表1に示した。
【0076】
【0077】
以上の結果から、実施例の外部還流型脱気モジュールは耐薬品性に優れ、次亜塩素酸水溶液、過酸化水素水、水酸化ナトリウムを用いた洗浄に強いこと、また、耐汚れ性に優れ、長期の薬液使用に耐えて汚れにくいことが明らかとなった。これに対して、比較例の外部還流型脱気モジュールは耐薬品性に劣り、次亜塩素酸水溶液、過酸化水素水、水酸化ナトリウムを用いた洗浄に弱いこと、また、耐汚れ性に劣り、長期の薬液使用に耐えられず汚れやすいことが明らかとなった。
1・・・純水供給装置、1a・・・流路(第一恒温水供給管)、2・・・自動分析装置、3・・・脱気装置、3a・・・流路(第二恒温水供給管)、4・・・(生)化学分析部、5・・・反応槽(恒温槽)、P・・・真空ポンプ(吸引ポンプ)、3b・・・吸気管、6・・・中空糸脱気モジュール、7・・・中空糸膜、8・・・中空糸膜束、8a・・・一方側膜束端部、8b・・・他方側膜束端部、8c・・・膜束中空部、9・・・ハウジング、10・・・筒体、10a・・・一方側開口端部、10b・・・他方側開口端部、10c・・・側壁、10d・・・排出口、10e・・・接続部、10f・・・雌ネジ、11・・・第一蓋部、11a・・・供給口、11b・・・接続部、11c・・・雌ネジ、12・・・第二蓋部、12a・・吸気口、12b・・・接続部、12c・・・雌ネジ、13・・・封止部、13a・・・連通口、14・・・封止部、16・・・外部支持体、17・・・通水孔、6’・・・中空糸脱気モジュール、7’・・・中空糸膜、8’・・・中空糸膜束、8’a・・・一方側膜束端部、8’b・・・他方側膜束端部、9’・・・ハウジング、10’・・・筒体、10’a・・・一方側開口端部、10’b・・・他方側開口端部、10’c・・・側壁、10’g・・・吸気口、10’h・・・接続部、10’i・・・雌ネジ、11’・・・第一蓋部、11’a・・・供給口、11’b・・・接続部、11’c・・・雌ネジ、12’・・・第二蓋部、12’d・・・排出口、12’e・・・接続部、12’f・・・雌ネジ、13’・・・封止部、14’・・・封止部、6”・・・中空糸脱気モジュール、7”・・・中空糸膜、8”・・・中空糸膜束、8”a・・・一方側膜束端部、8”b・・・他方側膜束端部、9”・・・ハウジング、10”・・・筒体、10”a・・・一方側開口端部、10”b・・・他方側開口端部、10”c・・・側壁、10”d・・・排出口、10”e・・・接続部、10”f・・・雌ネジ、10”j・・・供給口、10”k・・・接続部、10”n・・・雌ネジ、11”・・・第一蓋部、11”d・・・吸気口、11”b・・・接続部、11”c・・・雌ネジ、12”・・・第二蓋部、12”a・・・吸気口、12”b・・・接続部、12”c・・・雌ネジ、13”・・・封止部、14”・・・封止部、
101・・・反応ディスク、102・・・反応容器、103・・・反応槽、104・・・排出配管、105・・・供給配管、106・・・循環用ポンプ、107・・・ヒータ、108・・・冷却ユニット、109・・・給水タンク、110・・・給水用ポンプ、111・・・給水用弁、112・・・廃液用弁、113・・・光源ランプ、114・・・多波長光度計、115・・・脱気装置、116・・・真空ポンプ、201・・・反応ディスク、202・・・反応容器、203・・・反応槽、204・・・給水タンク、205・・・脱気装置、206・・・給水用ポンプ、207・・・給水用弁、208・・・真空ポンプ、209・・・排出配管、210・・・供給配管、211・・・循環用ポンプ、212・・・ヒータ、213・・・冷却ユニット、214・・・廃液用弁、215・・・光源ランプ、216・・・多波長光度計、301・・・検体容器、302・・・検体分注機構、303・・・反応容器、304・・・試薬容器、305・・・試薬分注機構、306・・・反応槽