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特開2024-16144突発、自然災害および緊急事態後の摂取可能環境毒素への急性曝露を軽減するために使用される食用腸収着剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016144
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】突発、自然災害および緊急事態後の摂取可能環境毒素への急性曝露を軽減するために使用される食用腸収着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20240130BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20240130BHJP
B01J 47/016 20170101ALI20240130BHJP
B01J 39/09 20170101ALI20240130BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240130BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240130BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20240130BHJP
A23K 20/28 20160101ALI20240130BHJP
A23K 20/26 20160101ALI20240130BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20240130BHJP
A61K 35/02 20150101ALN20240130BHJP
【FI】
B01J20/12 C
B01J20/32
B01J47/016
B01J39/09
A61P39/02
A23L33/16
A23L33/12
A23K20/28
A23K20/26
A23K20/158
A61K35/02
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187738
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2021533381の分割
【原出願日】2019-08-20
(31)【優先権主張番号】62/719,924
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521074896
【氏名又は名称】テキサス・エイ・アンド・エム・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Texas A&M University
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ディ・フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】ワン・メイチェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】胃腸管における毒素の濃度の低減ならびにバイオアベイラビリティおよび毒性の減少をもたらす、食用腸収着剤を提供する。
【解決手段】処理された腸収着剤を含有する食用腸収着剤であって、処理された腸収着剤が、酸および/またはレシチン処理された親収着剤を含み、処理された収着剤が、1種または複数の毒素のバイオアベイラビリティおよびそれらに対する生体の曝露が減少するように、そこに導入されたときに生体の胃腸管から1種または複数の毒素を吸着するために動作可能である、食用腸収着剤。食用腸収着剤を作製および利用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境または生物の胃腸管から1種または複数の毒素を吸着するための食用腸収着剤組成物であって、前記食用腸収着剤組成物が、
(a)平均粒径が150um未満であるフィロケイ酸塩型鉱物、および
(b)食用腸収着物質組成物を形成するレシチン
を含み、食用腸収着物質組成物が、マイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができ、増加した吸着が、フィロケイ酸塩型鉱物単独よりも高い腸収着物質組成物の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)、またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)またはこれらの組合せとして決定される、食用腸収着剤組成物。
【請求項2】
フィロケイ酸塩型鉱物が、合成フィロケイ酸塩型鉱物、天然フィロケイ酸塩型鉱物、モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の腸収着剤。
【請求項3】
モンモリロナイト粘土が、粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシンおよび全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土を含み、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい、請求項2に記載の腸収着剤。
【請求項4】
強酸をさらに含み、フィロケイ酸塩型鉱物が強酸で処理されたことにより、1種または複数の毒素の吸着を増加させることができる腸収着剤組成物の増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物が形成されており、1種または複数の毒素の吸着の増加が、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に比して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として観察される、請求項2に記載の腸収着剤。
【請求項5】
強酸処理されたフィロケイ酸塩型鉱物が、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和の硫酸カルシウム、飽和硫酸カルシウム、過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオン、カルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液、またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択される強酸に曝露された、請求項4に記載の腸収着剤。
【請求項6】
組成物が30重量%~90重量%の範囲のモンモリロナイト、1重量%~75重量%の範囲のレシチン、および10重量%~50重量%の範囲の酸を含む、請求項5に記載の腸収着剤。
【請求項7】
1種または複数の毒素が、有機塩素誘導体化合物、ベンゾピレン誘導体化合物、多環式芳香族炭化水素誘導体化合物、有機リン酸塩化合物、ジニトロアニリン誘導体化合物、コリンエステラーゼ阻害剤誘導体化合物、フェニル尿素誘導体化合物、マイコトキシン、細菌、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せから選択される、請求項5に記載の腸収着剤。
【請求項8】
食用腸収着剤組成物を生成する方法であって、方法が、
(a)フィロケイ酸塩型鉱物とレシチンを組み合わせること、
(b)ある温度においてある期間にわたって混合すること、および
(c)食用腸収着物質組成物を形成すること
を含み、食用腸収着物質組成物が最大100%のカチオン交換容量が可能であり、かつマイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができ、増加した吸着が、フィロケイ酸塩型鉱物単独より大きい腸収着物質組成物の最大結合容量(Qmax)および/または分配係数(Kd)、ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として決定される、方法。
【請求項9】
フィロケイ酸塩型鉱物を、合成フィロケイ酸塩型鉱物、またはモンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然フィロケイ酸塩型鉱物、またはこれらの組合せを含む群から選択されるように選ぶ工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
モンモリロナイト粘土を、粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシン、および全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であるように選ぶ工程をさらに含み、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)フィロケイ酸塩型鉱物を強酸によって酸処理期間にわたって前処理し、腸収着剤組成物の増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物を形成する工程、
(ii)強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物を、酸乾燥温度において酸乾燥期間にわたって酸乾燥する工程、および
(iii)工程(a)のフィロケイ酸塩型鉱物を強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物によって置き換える工程
の追加の工程をさらに含み、酸処理期間、酸乾燥温度および酸乾燥期間が、強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物が、粉砕およびふるい分け可能な粉末稠度を有することを可能とするのに十分であり、1種または複数の毒素の吸着の増加が、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として観察される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
強酸を、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和、飽和硫酸カルシウム、または過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオンもしくはその変形および/またはカルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択する追加の工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸処理期間を1分~8時間の範囲であるように選択する工程、および
酸乾燥温度を15℃~120℃の範囲であるように選択する工程、
酸乾燥期間を0分~8時間の範囲であるように選択する工程
の追加の工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
(d)食用腸収着物質組成物を、腸収着物質乾燥温度において腸収着物質乾燥期間にわたって乾燥させる工程、および
(e)乾燥された食用腸収着物質組成物を、約150μm未満になるようにサイズ調整する工程
の追加の工程をさらに含み、腸収着物質乾燥温度および腸収着物質乾燥期間が、食用腸収着物質組成物が粉砕およびふるい分け可能な粉末稠度を有することを可能とするのに十分である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
腸収着物質乾燥期間を1秒~8時間の範囲であるように選択する工程、および
腸収着物質乾燥温度を15℃~120℃の範囲であるように選択する工程
の追加の工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
毒素曝露のリスクにある生体の毒素曝露を低減する方法であって、方法が、
(a)食用腸収着剤組成物を生体に導入すること、または食用腸収着剤を、生体が毒素に曝露される環境に導入すること、またはこれらの組合せ、
(b)ある期間待機すること、および
(c)毒素曝露が低減されるまで工程(a)を繰り返すこと
を含み、食用腸収着剤が、最大100%のカチオン交換容量が可能なフィロケイ酸塩型鉱物およびレシチンを含み、食用腸収着物質組成物が、マイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができ、増加した吸着が、フィロケイ酸塩型鉱物単独より大きい腸収着物質組成物の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)、ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として決定される、方法。
【請求項17】
フィロケイ酸塩型鉱物を、(a)合成フィロケイ酸塩型鉱物、(b)モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土またはカルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然フィロケイ酸塩型鉱物、(c)増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸前処理されたフィロケイ酸塩型鉱物、(d)粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシン、および全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であり、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土、またはこれらの組合せを含む群から選択されるように選ぶ工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
曝露リスクが低減されるべき1種または複数の毒素を、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、リニュロン、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せを含む毒素の群から選択する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
食用腸収着剤組成物と、食用腸収着剤組成物を生体の胃腸管に導入するための手段を組み合わせる工程をさらに含み、食用腸収着剤組成物が、水、粉、飼料、食料品、丸剤またはこれらの組合せから選択される群のうちの1種または複数と組み合わされる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
グラムあたりの1日食品摂取量のパーセンテージとして約0.0005%~約0.10%の範囲の包含レベルの食用腸収着剤組成物を導入する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年8月20日に出願された、同表題の米国仮出願第62-719924号に関する。
【0002】
連邦支援研究
本発明は、国立環境衛生科学研究所のスーパーファンド危険物質研究訓練プログラム(National Institute of Environmental Health Sciences Superfund hazardous Substance Research and Training Program)(NIEHS SRP)によって授与された、助成金No.P42 ES0277704号に基づく政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有しうる。
【0003】
共同研究契約
該当なし。
【0004】
配列表
該当なし。
【背景技術】
【0005】
人間および動物は、自然災害および人災後の汚染された水、食品および飼料供給源により、危険なマイコトキシン、環境化学物質および病原菌の混合物に意図せず曝露される場合がある。食品および飼料のマイコトキシンによる汚染は、農業および健康に大きな影響を与える。マイコトキシンの問題は世界中で、中でもカビの増殖およびマイコトキシンの産生が多い、45億の人間およびその動物を含む亜熱帯および熱帯域において懸念される。重要なことに、米国の大部分がこのゾーン内に入る。
【0006】
マイコトキシンは、特に長期間の猛暑および干ばつ時に蔓延し問題を引き起こす、種々の真菌によって産生される二次代謝産物である。これらのマイコトキシンの中でも、アフラトキシンおよびゼアラレノン(ZEN)は、トウモロコシ、オオムギ、エンバクおよびコムギを含む禾穀類などの動物の飼料およびヒトの食品において最も一般的に見出され、農業および健康に顕著な悪影響を生じる(Grant, P.G., & Phillips, T.D., 1998; Lemke, S.L., & Phillips, T.D., 1998)。アフラトキシンおよびZENによって引き起こされる症状として、成長阻害、体重減少、悪心、嘔吐、肝臓毒性、生殖不全およびがんが挙げられる。地球温暖化は干ばつおよびカビの繁殖に好都合であるため、突発および緊急事態時のマイコトキシンによる食料の汚染の脅威を増強させる。
【0007】
したがって、自然災害および人災(ハリケーンおよび洪水など)は、環境化学汚染物質を大きく移動させ、ヒトおよび動物を汚染された土壌/沈殿物に曝露させ、かつ都市の飲用水および食品源の安全性を脅かす可能性がある。これらの災害および緊急事態に関連する主な課題は、1)脆弱な地域および地区、2)ファーストレスポンダー、ならびに3)汚染現場の管理および清掃に関与した者の保護である。工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、駆除剤、ポリ塩化ビフェニル(PCB)および可塑剤などの有機化学物質の複数のクラスが、環境危険物質・特定疾病対策庁(ATSDR)によって重要な危険物質として優先されている。
【0008】
本発明の腸収着剤組成物は、環境または生物の胃腸管からの1種または複数の毒素の吸着に広範に作用し、有用である。本明細書で使用される例は、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、ペンタクロロフェノール(PCP)、2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)、リンデン、グリホサート、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、トリフルラリン、PCB、ビスフェノールA(BPA)が、それらの幅広い分布および重要性に基づいて各クラスにおける代表的な化学物質としてどのように研究されたかを示す。BaPは、一般的に汚染現場において見出され、地方の焼成方法のためにアフリカに広く分布する周知の環境汚濁物質であり、ヒトおよび動物の発がん性物質である(Johnson, N.M. et al., 2009)。PCPは、蔓延する残留性かつ高度に毒性の人為的有機塩素駆除剤である。PCPは、国際がん研究機関(IARC)によってヒトに対する潜在的な発がん性物質と分類されている。(Zheng, W. et al., 2012)。PCPは、一般公衆による購入および使用が禁止されているが、工業では依然として使用されている。2,4,6-TCPは、一般的に駆除剤および木材防腐剤として使用される(Hameed, 2007)。2,4,6-TCPへの曝露によって小児における行動障害のリスクが増加する可能性があると報告されており、ヒトの発がん性物質であることが合理的に予想されている。これらのクロロフェノール化合物は環境に残留性であり、一般的に河川、池および土壌で検出されうる(Gao, et al., 2008)。リンデンは、疥癬およびシラミ寄生症を処置するために幅広く使用されるヘキサクロロシクロヘキサンである。リンデンは残留性かつ非分解性であるため、食物連鎖において生体蓄積しやすい。グリホサートは、雑草を防除するために最も使用される有機リン駆除剤である。グリホサートは、広域の浸透性除草剤および作物乾燥剤として使用され、植物酵素5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素を阻害することによって作用する。遺伝子組換え作物のおよそ90%がグリホサート耐性であり、その量は着実に(at a steady peace)増加している。ダイアジノンは、農業および園芸における害虫を防除するための用途により、世界中で幅広く有効に使用される有機リン殺虫剤である。ダイアジノンの毒性は、酵素アセチルコリンエステラーゼの阻害によるものである。アルジカルブは、カルバメートのクラスに属する急性毒性殺虫剤である。カルバメート殺虫剤および有機リン化合物の毒性は、酵素アセチルコリンエステラーゼの阻害によるものである。リニュロンは、光合成を阻害することによって雑草および草を選択的に防除するために幅広く使用されるフェニル尿素除草剤である。リニュロンはまた、生殖異常をもたらす可能性があるアンドロゲン受容体とみなされる。トリフルラリンは、有糸分裂を妨害することによって多種多様な草および広葉雑草を防除し、したがって雑草が発芽する際に防除することができる、選択的な発生前ジニトロアニリン除草剤である。これは、最も幅広く使用される除草剤の1つである。トリフルラリンは、主に水生生物に対するその高い毒性のために、欧州連合では2008年から禁止されている。これらの駆除剤への曝露により、脂質過酸化が刺激され、呼吸器系が麻痺し、内分泌撹乱が引き起こされ、さらに神経および生殖器系などに影響が及ぶ可能性がある(Bertrand, D.B., 1991; Tiemann, U., 2008; Yarsan, E., Tanyuksel, M., Celik, S., & Aydin, A., 1999)。他の代表的な化学物質として、コプラナーおよび非コプラナーPCB同族体およびPCB混合物、ならびにビスフェノールA(BPA)が挙げられる。安定性、耐性および低蒸気圧などのそれらの物理的および化学的特性により、PCBは環境に残留性であり、電気絶縁体として有益であり、幅広く使用される。PCBに関する重要な環境上の懸念は、それらが食物連鎖に組み込まれることである。BPA系プラスチックは、水筒およびスポーツ機器などに幅広く使用される。BPAは、エストロゲン模倣およびホルモン様特性を示す場合がある環境エストロゲンであるため、BPAへの曝露によって成長、生殖および発達に影響が及ぶ可能性がある。
【0009】
図1は、(A)AfB1、(B)ZEN、(C)BaP、(D)PCP、(E)2,4,6-TCP、(F)リンデン、(G)グリホサート、(H)ダイアジノン、(I)アンチカルブ(anticarb)、(J)リニュロン、(K)トリフルラリン、(L)PCB77、(M)PCB126、(N)PCB153、(O)PCB157、(P)PCB154、(Q)PCB155および(R)ビスフェノールAを含む、本明細書に開示される腸収着剤が有効に結合する毒素のいくつかの化学構造を示す。各化学物質の分子モデルは、コンピュータによる量子力学的AM1法を使用して決定することができる。
【0010】
細菌による汚染は一般的に、特に発展途上国において人災および自然災害時の環境中に見られる。大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)は、温血生物の下部腸に一般的に見出されるグラム陰性菌である。大腸菌は一般的に、災害現場において水および食料を脅かし、食中毒および食品から生じる重度の疾患を引き起こす。病原性E.coli株は、腸管、泌尿器、肺および神経系の感染の原因である。災害時には、E.coliなどの細菌の軽減に対する戦略も必要とされる。本発明者らは、野生型E.coliに近く、かつ最小限の遺伝子操作を伴う実験室株として維持されてきた(Blattner, F.R. et al., 1997)ことから、E.coli株K-12を調査のために選んだ。
【0011】
酸活性化粘土は、油を脱色し、植物色素を除去し、さらに汚染除去および精製手順の際に種々の有機および無機汚染物質を水から捕捉するために開発され、広く使用されてきた。しかし、酸活性化粘土がヒトおよび動物における毒素曝露を低減させるための腸収着剤療法に使用されたという報告はない。上記で述べられたように、マイコトキシン中毒症の突発時には、高レベルのマイコトキシン混合物(例えば、アフラトキシンおよびゼアラレノン)が食品および飼料の汚染物質として頻繁に生じ、災害現場での人間および動物の疾患および死をもたらす可能性がある。
【0012】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の腸収着剤の保護の機序は、収着剤の多孔質かつ活性な表面への毒素の吸着を含み、胃腸管における毒素の濃度の低減ならびにバイオアベイラビリティおよび毒性の減少をもたらす。
【0013】
一部の腸収着剤は、アフラトキシンに対して高い効力を有するが、他の毒素を収着する能力が限られていた。ZENおよび環境化学物質の良好かつ広範な結合を示した唯一の従来の材料は、活性炭(および炭素混合物)である。しかし(汚染物質である多環式芳香族炭化水素の存在のために)、炭素の安全性は懸念される。したがって、突発および緊急事態時に環境化学物質混合物、病原菌およびマイコトキシンの効果(およびそれらへの曝露)を軽減させるための、安全で実用的かつ広範に作用する戦略に対する必要性が存在する。本発明の腸収着剤は、合成フィロケイ酸塩型鉱物、天然フィロケイ酸塩型鉱物、モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、またはこれらの組合せを含む、種々のフィロケイ酸塩型鉱物を使用する。特定の実施形態は、毒素に対して広範に作用するように開発された酸加工モンモリロナイト粘土(APM)およびレシチン改質モンモリロナイト(LAM)を使用する。種々のカルシウムモンモリロナイト(CM)およびナトリウムモンモリロナイト(SM)が親基材として利用された。本研究で開示されるCMは、動物およびヒトの摂食に安全であることが示されており、家畜飼料および食品へのその包含は、多数の動物種をアフラトキシンから保護し、かつヒトにおけるアフラトキシン曝露のバイオマーカーを低減させるのに有効であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書では、処理された収着剤を含む腸収着剤であって、処理された収着剤が、酸および/またはレシチン処理された親収着剤を含み、処理された収着剤が、1種または複数の毒素のバイオアベイラビリティおよびそれらへの生体の曝露が減少するように、そこに導入されたときに、生体の胃腸管から1種または複数の毒素を吸着するために動作可能である、腸収着剤が開示される。
【0015】
本明細書では、腸収着剤を生成する方法であって、方法が、親粘土を加工して加工粘土を生成することを含み、加工することが、約6N、12Nもしくは18N以上の、または約6N~約18Nもしくは約6N~約12Nの範囲の濃度(例えば、当量濃度または規定度(N))を有する試薬グレードの硫酸溶液への曝露によって酸処理し、酸処理粘土を生成することおよび/または100%のカチオン交換容量でのレシチンによる修飾によってレシチン処理し、レシチン処理粘土を生成することを含む、方法も開示される。本明細書では、生体の1種または複数の毒素への曝露を低減させる方法であって、生体に本明細書に開示される腸収着剤を導入することを含む方法がさらに開示される。
【0016】
同様の参照番号が同様の特色を指し示す添付の図面と併せて解釈される以下の説明を参照することにより、本発明の実施形態およびその利点のさらに完全かつ徹底的な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、(A)AfB1、(B)ZEN、(C)BaP、(D)PCP、(E)2,4,6-TCP、(F)リンデン、(G)グリホサート、(H)ダイアジノン、(I)アンチカルブ、(J)リニュロン、(K)トリフルラリン、(L)PCB77、(M)PCB126、(N)PCB153、(O)PCB157、(P)PCB154、(Q)PCB155および(R)ビスフェノールAを含む、本明細書に開示される腸収着剤が有効に結合する毒素のいくつかの化学構造を示す。
【
図2】
図2は、ヒドラ形態スケールの表示を示す。スケールは0~10で等級付けされ、10は正常な生存ヒドラを表し、0は分解されたヒドラを表す。ヒドラの生理学的状態は解剖顕微鏡によって評価した。
【
図3】
図3は、水中の収着剤の線膨張性係数(COLE)を示す。この値は、水中の材料の膨潤に関し、数字が大きいほど線膨張性および膨潤が大きいことを指し示す。
【
図4】
図4は、腸収着剤表面へのエチレングリコール(EG)の吸収度(absorbance)によって決定される、親カルシウムモンモリロナイト(CM)および酸加工モンモリロナイト(APM)のグラムあたりの平方メートル単位の表面積を示す。
【
図5】
図5は、親腸収着剤と比較した、酸加工モンモリロナイト(APM)における微量金属の相対値を示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、親カルシウムまたはナトリウムモンモリロナイト(CMまたはSM)に対する酸加工カルシウムモンモリロナイト(APCM)(
図6A)および酸加工ナトリウムモンモリロナイト(APSM)(
図6B)上のAfB1のラングミュアプロットを示す。これらのプロットは、pH6.5において観察および予測されたQmax値を示す。CM:Qmax=0.37、Kd=1E6、APCM-12N:Qmax=0.34、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.37、Kd=8E5。(
図6B)SM:Qmax=0.3、Kd=2E7、APSM-12N:Qmax=0.29、Kd=6E6、APSM-18N:Qmax=0.27、Kd=2E6。
【
図6】
図6Cは、アフラトキシンB1の分子構造、ならびにこの分子および他の分子がどのようにモンモリロナイト鉱物の基底層および層間空間と相互作用すると考えられるかを示し、ここでアフラトキシンB1はインターカレートしてカチオンと相互作用する可能性がある。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、親モンモリロナイトおよび炭素混合物に対する酸加工カルシウムモンモリロナイト(APCM)(
図7A)および酸加工ナトリウムモンモリロナイト(APSM)(
図7B)上のZENのラングミュアプロットを示し、pH6.5において観察および予測されたQmax値が示される。炭素混合物:Qmax=0.09、Kd=4E7、APCM-12N:Qmax=0.22、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.28、Kd=4E5。APSM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APSM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、24および37℃(HT)でのAPCM(
図8A)およびAPSM(
図8B)および炭素混合物上のZENのラングミュアプロットを示す。炭素混合物:Qmax=0.09、Kd=4E7、炭素混合物HT:Qmax=0.07、Kd=5E7、APCM-12N:Qmax=0.22、Kd=1E6、APCM-12N HT:Qmax=0.23、Kd=4E5、APCM-18N:Qmax=0.28、Kd=4E5、APCM-18N HT:Qmax=0.28、Kd=5E5。APSM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APSM-12N HT:Qmax=0.15、Kd=2E6、APSM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6、APSM-18N HT:Qmax=0.14、Kd=3E6。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、pH6.5における、崩壊した(Co)APCM-12NおよびAPCM-18N上のAfB1(
図9A)およびZEN(
図9B)のラングミュアプロットを示す。(
図9A)APCM-12N:Qmax=0.34、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.37、Kd=8E5、Co APCM-12N:Qmax=0.07、Kd=5E5、Co APCM-18N:Qmax=0.05、Kd=6E5。(FIG.9B)APCM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APCM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6、Co APCM-12N:Qmax=0.11、Kd=9E6、Co APCM-18N:Qmax=0.17、Kd=1E7。
【
図10】
図10A、
図10Bおよび
図10Cは、ヒドラ毒性と、0.005%の包含レベルの親CMおよびAPMによる20ppmのAfB1に対する(
図10A)、0.01%のレベルの親CMおよびAPMによる4ppmのZENに対する(
図10B)、ならびに0.1%のレベルの親CMおよびAPMによる、1ppmのAfB1と6ppmのZENの毒素混合物に対する(
図10C)保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために各図に含まれる。
【
図11】
図11は、親CMに対するAPCMおよびLAM上のBaPのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.04、Kd=7E4、APCM-12N:Qmax=0.16、Kd=9E5、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=2E6、LAM:Qmax=0.05、Kd=1E5。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、親カルシウムまたはナトリウムモンモリロナイト(CMまたはSM)と比較したAPCM(
図12A)およびレシチン改質モンモリロナイト(LAM)ならびにAPSM(
図12B)上のPCPのラングミュアプロットを示す。APCM-12N:Qmax=0.23、Kd=2E6、APCM-18N:Qmax=0.21、Kd=1E7、LAM:Qmax=0.11、Kd=2E6。APSM-12N:Qmax=0.1、Kd=3E6、APSM-18N:Qmax=0.14、Kd=5E7。
【
図12】
図12Cおよび
図12Dは、24℃での親モンモリロナイトに対するAPCM(
図12C)およびAPSM(
図12D)上の2,4,6-TCPのラングミュアプロットを示す。APCM-12N:Qmax=0.23、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.25、Kd=8E5、APSM-12N:Qmax=0.17、Kd=7E5、APSM-18N:Qmax=0.22、Kd=1E6。
【
図12】
図12Eおよび
図12Fは、親CM(
図12E)と比較したAPCMおよびLAM上のPCPのラングミュアプロットを示し、APCM-12N:Qmax=0.24、Kd=1.2E6、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=1.9E6、LAM:Qmax=0.11、Kd=2E6、LAAPCM:Qmax=0.35、Kd=6.5E6であり、
図12Fは、親CMに対するAPCMおよびLAM上のリンデンのラングミュアプロットを示し、APCM-12N:Qmax=0.5、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.53、Kd=1E5、LAM:Qmax=0.12、Kd=2E5、LAAPCM:Qmax=0.38、Kd=2E5である。
【
図13】
図13A、
図13B、
図13Cおよび
図13Dは、親CMに対するAPCMおよびLAM上のリンデン(
図13A)、ダイアジノン(
図13B)、アルジカルブ(
図13C)およびリニュロン(
図13D)のラングミュアプロットを示す。(
図13A)APCM-12N:Qmax=0.5、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.53、Kd=1E5、LAM:Qmax=0.12、Kd=2E5、(
図13B)CM:Qmax=0.19、Kd=4E6、APCM-12N:Qmax=0.47、Kd=2E6、APCM-18N:Qmax=0.5、Kd=4E5、LAM:Qmax=0.22、Kd=1E6、(
図13C)APCM-12N:Qmax=0.4、Kd=4E6、APCM-18N:Qmax=0.48、Kd=3E6、LAM:Qmax=0.47、Kd=2E7および(
図13D)CM:Qmax=0.09、Kd=5E4、APCM-12N:Qmax=0.15、Kd=5E4、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=4E4。
【
図13】
図13E~Fは、24℃およびpH6.5での親モンモリロナイトに対するAPCM(
図13E)およびAPSM(
図13F)上のグリホサートのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.32、Kd=2E5、APCM-12N:Qmax=0.42、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.58、Kd=1E5、SM:Qmax=0.3、Kd=3E5、APSM-12N:Qmax=0.52、Kd=2E5、APSM-18N:Qmax=0.57、Kd=2E5。
【
図13】
図13Gは、37℃(HT)およびpH6.5での、親SMに対するAPSM上のグリホサートのラングミュアプロットを示す。SM HT:Qmax=0.41、Kd=1E5、APSM-12N HT:Qmax=0.53、Kd=1E5、APSM-18N HT:Qmax=0.6、Kd=2E5。
【
図13】
図13Hは、24℃での親CMに対するAPCM上のトリフルラリンのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.06、Kd=7E4、APCM-12N:Qmax=0.09、Kd=7E4、APCM-18N:Qmax=0.15、Kd=3E4。
【
図14】
図14A、
図14B、
図14C、
図14D、
図14E、
図14Fは、ヒドラ毒性と、PCP(
図14A)、MAPを含むBaP(
図14B)およびアルジカルブ(
図14C)に対する、0.1%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPMによる保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために各図に含まれる。ヒドラ毒性と、グリホサートに対する0.1%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPCM(
図14D)ならびにAPSM(
図14E)による保護。
図14Fは、ヒドラ毒性と、トリフルラリンに対する0.2%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPMによる保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために含まれる。
【
図14】
図14Gおよび
図14Hは、ヒドラ毒性と、各駆除剤につき2ppmの等濃度を有する駆除剤の混合物(PCP、2,4,6PCP、リンデン、ダイアジノン、リニュロン、トリフルラリン、グリホサート、アルジカルブ)に対する、0.05%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPCM(
図14G)ならびにAPSM(
図14H)による保護を示す。
【
図15】
図15は、コロニー形成単位(CFU)として測定される、収着剤の表面上のE.coli菌の低減パーセンテージを示す。収着剤は、0.01%で包含された(*p<0.05、**p<0.01)。pは確率値であり、*0.05および*0.01未満のレベルが統計的に差があるとみなされる。
【
図16】
図16A、
図16Bおよび
図16Cは、24℃でのAPCM上のPCB77(
図16A)、126(
図16B)および153(
図16C)のラングミュアプロットを示す。(
図16A)CM:Qmax=0.13、Kd=5E5、APCM-12N:Qmax=0.35、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.27、Kd=2E5。(
図16B)CM:Qmax=0.19、Kd=8E5、APCM-12N:Qmax=0.36、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.34、Kd=5E5。(
図16C)APCM-12N:Qmax=0.17、Kd=1E5、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=1E5。
【
図17】
図17A、
図17B、
図17Cは、37℃(HT)でのAPCM上のPCB77(
図17A)、126(
図17B)および153(
図17C)のラングミュアプロットを示す。(
図17A)CM HT:Qmax=0.11、Kd=1E5、APCM-12N HT:Qmax=0.16、Kd=2E5、APCM-18N HT:Qmax=0.19、Kd=5E4。(
図17B)CM HT:Qmax=0.09、Kd=1E5、APCM-12N HT:Qmax=0.18、Kd=7E4、APCM-18N HT:Qmax=0.2、Kd=6E4。(
図17C)APCM-12N HT:Qmax=0.43、Kd=4E4、APCM-18N HT:Qmax=0.39、Kd=5E4。
【
図18】
図18A、
図18B、
図18Cは、24℃でのAPCM上のPCB157(
図18A)、154(
図18B)および155(
図18C)のラングミュアプロットを示す。(
図18A)APCM-12N:Qmax=0.23、Kd=4E4、APCM-18N:Qmax=0.21、Kd=9E4。(
図18B)APCM-12N:Qmax=0.17、Kd=1E5、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=1E5。(
図18C)APCM-12N:Qmax=0.05、Kd=3E5、APCM-18N:Qmax=0.09、Kd=1E5。
【
図20】
図20A、
図20Bは、Aroclor1254(
図20A)および1260(
図20B)に対する0.2%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPMによる保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために含まれる。
【
図21】
図21A、
図21Bは、24℃(
図21A)および37℃(HT)での親CMに対するAPCM上のBPAのラングミュアプロットを示す。(
図21A)CM:Qmax=0.26、Kd=5E5、APCM-12N:Qmax=0.26、Kd=2E6、APCM-18N:Qmax=0.25、Kd=1E6。(
図21B)CM HT:Qmax=0.34、Kd=1E6、APCM-12N HT:Qmax=0.31、Kd=1E6、APCM-18N HT:Qmax=0.27、Kd=1E6。
【
図22】
図22は、種々の環境化学物質についての等温吸着データを示す。ヒドラを使用して、収着剤の結合能力を以下の通り分類した:(1)低度の保護(Qmax<0.1またはフロイントリッヒモデル)、(2)中等度の保護(0.1<Qmax<0.3)および(3)高度の保護(0.3<Qmax)。動物およびヒトの研究によって示されるように、等温データに示される高度の保護によってインビボ(in vivo)での効力を予測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義:
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明において種々の置換および修正がなされてもよいことが当業者には容易に明らかになる。ある特定の用語は、特定の特色または構成要素を指すように以下の記載および特許請求の範囲を通して使用される。当業者が理解するように、異なる人物が異なる名称で同じ特色または構成要素を指す場合がある。本文献は、名称が異なるが機能は異ならない構成要素または特色を区別することを意図しない。図面は必ずしも縮尺通りではない。本明細書のある特定の特色および構成要素は、縮尺が誇張されてまたは幾分概略的な形態で示される場合があり、かつ従来の要素の一部の詳細は、明確性および簡潔性のために示されない場合がある。
【0019】
文脈が逆のことを指示しない限り、本明細書に記載されるすべての範囲は、それらの端点を含むと解釈されるべきであり、非制限的な範囲は、商業的に実用的な値のみを含むと解釈されるべきである。同様に、値のすべての列挙は、文脈が逆のことを指し示さない限り、中間値を含むとみなされるべきである。
【0020】
初めに、1つまたは複数の模範的な実施形態の例示的な実装形態が以下に提供されるが、開示される組成物、方法および/または生成物は、現在公知であるまたは存在するかどうかにかかわらず、任意の数の技術を使用して実装されてもよいことが理解されるべきである。本開示は、いかなる態様でも、本明細書で例示および記載される模範的な設計および実装形態を含む、本明細書で以下に例示される例示的な実装形態、図面および技術に限定されるべきではなく、それらの均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲内で修正されてもよい。
【0021】
図面は必ずしも縮尺通りではない。本明細書のある特定の特色および構成要素は、縮尺が誇張されてまたは幾分概略的な形態で示される場合があり、かつ従来の要素の一部の詳細は、明確性および簡潔性のために示されない場合がある。
【0022】
以下の考察および特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「含む(comprising)」は非制限的な様式で使用され、したがって「含むがこれらに限定されない」を意味すると解釈されるべきである。
【0023】
本文献において本明細書で使用される用語「a」または「an」は、1つまたは複数を意味する場合がある。本文献において特許請求の範囲で使用される場合、単語「含む(comprising)」と併せて使用されるとき、単語「a」または「an」は、1つまたは1つより多くを意味する場合がある。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも2つ目以上を意味する場合がある。
【0024】
本明細書で使用される用語「腸収着剤」は、動物およびヒトの胃腸管における、または動物およびヒトが曝露されうる環境における、または動物およびヒトによって摂取されうる食品もしくは水における化学物質、病原菌およびマイコトキシンを含む、種々の環境毒素に結合する材料を指す。この結合作用は、本明細書で詳述されるように、バイオアベイラビリティならびに食品および水からの毒素曝露の減少をもたらす。
【0025】
用語「生体」は、無脊椎動物、脊椎動物、動物および/またはヒトを指す。
【0026】
用語「強酸」は、解離する酸である。強酸の例は、塩酸(HCl)、過塩素酸(HClO4)、硝酸(HNO3)および硫酸(H2SO4)である。対照的に、用語「弱酸」は、未解離の酸とその解離生成物の両方が溶液中に互いに平衡して存在する、部分的にのみ解離した酸である。約-2未満のpKa値を有する任意の酸が強酸と分類される。
【0027】
本明細書で使用される用語「レシチン」は、両親媒性の、動物および植物組織において生じる、任意の群の黄褐色の脂肪物質を表す包括的な用語である。レシチンは、水と脂肪物質の両方(および親水性と親油性物質の両方)を誘引し、食感を滑らかにするため、乳化するため、液体混合物を均質化するため、および粘着材料をはじくために使用される。レシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンおよびホスファチジン酸を含むグリセロリン脂質の混合物でありうる。
【0028】
本明細書で使用される用語「粘土」は、含水フィロケイ酸アルミニウムを有し、場合により様々な量の鉄、マグネシウム、アルカリ金属、アルカリ土類、および一部の惑星表面またはその付近に見出される他のカチオンを含む鉱物である。粘土鉱物は水の存在下で形成し、生活にとって重要であり、多くの自然発生説がこれらに関与する。粘土は、土壌の重要な構成成分であり、古代から農業および製造においてヒトにとって有用であった。
【0029】
本明細書で使用される用語「モンモリロナイト」は、粘土として公知の、微小結晶として水溶液から沈殿する際に形成する、非常に軟質のフィロケイ酸塩グループの鉱物である。モンモリロナイトは、フランスのモンモリヨンにちなんで名づけられた。スメクタイトグループのメンバーであるモンモリロナイトは2:1粘土であり、つまり中心のアルミナの八面体シートを挟む2枚のシリカの四面体シートを有する。粒子は、平均直径およそ1μmおよび厚さ0.96nmの板形状であり、電子顕微鏡を使用して個々の粘土粒子を「観察する」のに約25,000倍の倍率が必要である。このグループのメンバーには、サポナイトが含まれる。
【0030】
本明細書で使用される用語ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、人工の化学物質のグループである。これらは油性液体または固体であり、色は透明から黄色であり、無味無臭である。PCBは、極端な温度および圧力に耐性の非常に安定した混合物である。PCBは、コンデンサおよび変圧器などの電気機器において幅広く使用された。
【0031】
一般的にDDTとして公知である用語ジクロロジフェニルトリクロロエタンは、本明細書で使用される場合、本来殺虫剤として開発され、環境へのその影響のために最終的に不評となった、無色、無味、およびほぼ無臭の結晶性化学化合物である有機塩素である。DDTは、1874年にオーストリアの化学者オトマール・ツァイドラーによって最初に合成された。DDTの殺虫作用は、スイスの化学者パウル・ヘルマン・ミュラーによって1939年に発見された。DDTは、第二次世界大戦後半において、市民および軍隊の間のマラリアおよび発疹チフスを制御するために使用された。ミュラーは、1948年に「多数の節足動物に対するDDTの接触毒としての強力な作用の発見のために」ノーベル生理学・医学賞を授与された。
【0032】
本明細書で使用される用語1,2,3-トリクロロプロパンは、塗料またはニス除去剤、洗浄および脱脂剤として使用され、かつある特定の駆除剤において不純物であった化学物質である。これはまた、ヘキサフルオロプロピレンおよびポリスルフィドなどの化学物質を作製するプロセスにおける化学中間体として、ならびに工業溶媒として使用される。
【0033】
本明細書で使用される用語2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP、ブラディ試薬、ボーチ試薬)は、化学化合物C6H3(NO2)2NHNH2である。ジニトロフェニルヒドラジンは、赤から橙色の固体である。これは置換ヒドラジンであり、アルデヒドおよびケトンに関連するカルボニル基を定性的に試験するために使用されることが多い。
【0034】
本明細書で使用される用語AMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸)は、AMPA受容体に対する特定のアゴニストである化合物であり、神経伝達物質グルタミン酸の効果を模倣する。中枢神経系には、AMPA、カイニン酸およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)チャネルを含む複数の種類のグルタミン酸作動性イオンチャネルが存在する。シナプスでは、これらの受容体は非常に様々な目的を果たす。AMPAは、1つの受容体の活性を他の受容体の活性と区別し、それらの異なる機能を理解するために実験的に使用されうる。AMPAは、速い興奮性シナプス後電位(EPSP)を発生する。
【0035】
本明細書で使用される用語ビスフェノールA(BPA)は、2つのヒドロキシフェニル基を有する、ジフェニルメタン誘導体およびビスフェノールの群に属する化学式(CH3)2C(C6H4OH)2を有する有機合成化合物である。これは、有機溶媒に可溶性であるが、難水溶性の無色固体である。BPAは、プラスチック、主にある特定のポリカーボネートおよびエポキシ樹脂、ならびに一部のポリスルホンおよびある特定のニッチ材料の合成の出発物質である。BPA系プラスチックは透明かつ強靭であり、水筒を含むプラスチックボトル、スポーツ機器、CD、DVDなどの種々の一般的な消費者製品へと作製される。
【0036】
本明細書で使用される用語ビスフェノールS(BPS)は、式(HOC6H4)2SO2を有する有機化合物である。これは、スルホニル基の両側に2つのフェノール官能基を有する。一般的に、速乾エポキシ樹脂接着剤の硬化に使用される。BPSはビスフェノールであり、かつジメチルメチレン基(C(CH3)2)がスルホン基(SO2)によって置き換えられるビスフェノールA(BPA)の近い類似体である。
【0037】
本明細書で使用される用語フタル酸ジブチル(DBP)は、一般的に可塑剤として使用される有機化合物である。化学式C6H4(CO2C4H9)2を有し、市販の試料は黄色であることが多いが無色の油である。その低毒性および広い液体領域のために、可塑剤として使用される。
【0038】
本明細書で使用される用語フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、DEHP、フタル酸ジオクチル、DOP)は、式C6H4(CO2C8H17)2を有する有機化合物である。DEHPは、可塑剤として使用される最も一般的なフタレートのクラスのメンバーである。これは、フタル酸と分岐鎖2-エチルヘキサノールのジエステルである。この無色粘性液体は油に可溶性であるが、水溶性ではない。
【0039】
本明細書で使用される用語カチオン交換容量(CEC)は、交換可能なカチオンを保つ組成物の全容量である。CECは、固有の土壌の特徴であり、顕著に変更することは困難である。CECは、必須栄養素を維持する土壌の能力に影響を及ぼし、土壌の酸性化を緩衝する。粘土画分が比較的多い土壌は、比較的高いCECを有する傾向にある。有機物は非常に高いCECを有する。砂質土壌は、表土に栄養素を保持するために有機物の高いCECに大きく依存する。
【0040】
本明細書で使用される用語硫酸(sulfuric acid)(代替的に硫酸(sulphuric acid)と綴られる)は、硫酸塩(vitriol)としても公知であり、硫黄、酸素および水素元素から構成される鉱酸であり、分子式H2SO4有する。これは、水溶性の無色無臭かつシロップ状の液体であり、高度に発熱性の反応において合成される。本発明で使用されるH2SO4の質量分率は29%未満~100%の範囲であってもよく、多くの一般名を有する(すなわち、希硫酸、バッテリー酸、肥料酸、塔酸および濃硫酸)ことから、質量分率のパーセンテージは当業者によって同等とみなされる場合がある。酸として、硫酸はほとんどの塩基と反応し、本発明で修飾および使用されうる対応する硫酸塩を生じる。本発明の少なくとも1つの実施形態は、ほぼ飽和、飽和または過飽和硫酸カルシウムアニオンもしくはその変形ならびに/またはカルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩および/もしくはその変形を含む。
【0041】
本明細書で使用される用語酸または酸性混合物は、難溶性のIIA族錯体(「AGIIS」)の酸性溶液、AGIISを有する付加物であって、好ましくは有機酸がプロピオン酸、乳酸または両方でありうる有機酸付加物、硫酸カルシウムが溶解された硫酸であって、濃硫酸であってもよい硫酸、高度に酸性のメタル化有機酸(「HAMO」)、無機酸の高度に酸性のメタル化混合物(「HAMMIA」)、およびこれらの混合物を含む。AGIIS錯体の酸性または低pH溶液は、非常に微細な粒子の懸濁物を有しうる。AGIISは、ある特定の酸規定度を有するが、同じ規定度を有する硫酸中の飽和硫酸カルシウムと同じ脱水挙動を有さない。言い換えると、AGIISは、ある特定の酸規定度を有するが、同じ規定度を有する硫酸中の硫酸カルシウムの飽和溶液ほど容易にショ糖を炭化しない。さらに、AGIISは、室温および室圧での揮発性が低い。AGIISは、同じ酸規定度を有する硫酸カルシウムで飽和された硫酸によりもヒトの皮膚に対する腐食性が低い。理論に束縛されることを意図するものではないが、AGIISの一実施形態は、ほぼ飽和、飽和または過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオンもしくはその変形ならびに/またはカルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩および/もしくはその変形を含む。
【0042】
本明細書で使用される用語「グリホサート」は、広域の浸透性除草剤および作物乾燥剤である。これは、植物酵素5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素を阻害することによって作用する有機リン化合物、特にホスホン酸塩である。雑草、特に作物と競合する一年生広葉雑草および草を殺滅するために使用される。
【実施例0043】
以下の考察は、種々の模範的な実施形態を対象とする。しかし、当業者であれば、本明細書に開示される実施例は広範な用途を有すること、また任意の実施形態の考察は、その実施形態の模範であることのみを意図し、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がその実施形態に限定されることを示唆するものではないことを理解する。
【0044】
人間、動物および環境は、偶然または自然災害および/もしくは人災(すなわち、長期間の干ばつ、洪水、ハリケーン、不適切な場所の掘削、事故および他の可能性のある大惨事など)後に天然および人工化学物質、病原菌および/またはマイコトキシンを含む毒素混合物に曝露される場合がある。そのような災害後、食品、飼料、水供給源および環境それ自体は、毒素によって汚染される可能性がある。これらの緊急事態に関連する主な課題は、1)影響を受けた現場付近に位置する脆弱な集団および地域、2)ファーストレスポンダー、ならびに3)現場の管理および清掃に関与した者の保護である。食品および水は、これらの事象時に汚染される場合があり、危険物質への曝露のリスクが増加する。したがって、災害事象時にヒトおよび動物の毒素混合物への急性曝露を最小化できることは魅力的な選択肢である。
【0045】
本発明の記載は、有効な腸収着剤を作製および使用して、動物およびヒトにおける毒素混合物からの曝露を減少させる方法を詳述する。
【0046】
一般的に、カルシウムおよびナトリウムモンモリロナイト粘土は、規定度12および18の硫酸を使用して加工されうるが、レシチンによって改質されてもよい。粘土系腸収着剤戦略の安全性および効力は、モンモリロナイト粘土が食事に包含された、以前の動物およびヒトの臨床試験において確証されている。
【0047】
実施形態では、カルシウムモンモリロナイト粘土を硫酸(6Nずつ増加する0~18の規定度)と反応させることにより、両方のマイコトキシンを捕捉し解毒するのに有効な収着剤が提供される。得られる「酸加工」粘土は、高い多孔性および大きな表面積を実証し、これによりアフラトキシン(AfB1)とゼアラレノン(ZEN)の両方の有効な収着がもたらされる。一次等温分析(実施例には含まれない)は、最高レベルの酸(12Nおよび18N)によって加工された粘土でZENの吸着が最良である可能性があることを示す。インビボでのヒドラバイオアッセイでは、生物をAfB1およびZENの毒性から保護する加工粘土の能力がさらに確証される。ZENに対する飽和性の高い結合容量、およびAfB1とZENの両方に有効に結合し、インビボでそれらの毒性を防止する能力を有する粘土が開発されたのは、これが初めてである。酸性試験粘土の脱水、脱ヒドロキシル化および熱崩壊により、AfB1は、主に粘土の層間に吸着されたことが間接的に示唆される。これにより、カルシウムモンモリロナイトの層間表面に結合するAfB1についての熱力学的計算およびコンピュータモデルから以前の研究が確証される。ZENの主な結合部位は、活性化された多孔質粘土構造の親有機性多孔質表面であったことが仮定される。これらの結合部位の違いにより、酸加工粘土によるアフラトキシンおよびZENの非競合結合が増強される。動物家畜飼料における平均的なAfB1およびZENの濃度の比(1/6)から推定された、1ppmのAfB1と6ppmのZENの混合物からのヒドラの顕著な保護は、酸性粘土が大きな干渉を伴わずにアフラトキシンおよびZENに緊密に結合できたことを指し示した。さらに、予備等温研究により、これらの酸粘土は、ある特定の環境化学物質に結合できる可能性があることも示唆され、これは、これらが広範に作用する腸収着剤として食事に包含され、ヒトおよび動物における曝露および毒性を低減させることができることを示唆する。本開示に従い、他の材料も重要な毒素の腸収着剤として利用される場合がある。
【0048】
本明細書に開示される酸粘土は、強力なマイコトキシン(例えば、AfB1およびZEN)の混合物に緊密に結合することができる。突発および緊急事態時に、これらの粘土を汚染された食品および飼料に包含すると、胃腸(GI)管からの毒素のバイオアベイラビリティの減少、ならびにヒトおよび動物への曝露の低減がもたらされる可能性がある。本明細書に開示されるマイコトキシン腸収着技術は、安全性および効力を実現する。本開示の実施形態では、酸加工粘土は、水に送達され、料理用粉へと製粉され、種々のスナック、調味料、ビタミンなどに添加され、急性の毒素突発および緊急事態時に関連する疾患からヒトおよび動物を保護することができる。
【0049】
実施形態では、炭素様の多孔質モンモリロナイト粘土は、例えば災害および疾患の突発時に個々の環境汚染物質、病原菌およびマイコトキシンならびに/またはAfB1とZENの混合物に広範に作用する腸収着剤として利用される。そのようなモンモリロナイト粘土は、多数の介入および臨床試験に基づき、ヒトおよび動物の摂食に安全である。
【0050】
実施形態では、親収着剤は、ヒトおよび動物による摂食に安全であることが報告されたカルシウムに富むモンモリロナイト粘土、およびカルシウムモンモリロナイトと同様であるナトリウムに富むモンモリロナイトである。粘土を活性化させるために、試薬グレードの硫酸(規定度36)が利用され、0~18Nの勾配溶液が創出されてもよい。実施形態では、粘土は、酸性溶液中60℃で一晩撹拌されてもよい。スラリーは冷却され、2000gで20分間遠心分離され、蒸留水で徹底的に洗浄されてもよい。この遠心分離から洗浄のプロセスは繰り返され(例えば、3回)、各群に対するpHが確証されてもよい。試料は、オーブン中110℃で一晩乾燥され、その後使用前に粉砕およびふるい分け(例えば、125μmで)されてもよい。
【0051】
実施形態では、本明細書に開示される酸加工粘土は、限定することなく、アフラトキシン、ZEN、PCP、BaP、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロンおよび/またはE.coliなどの毒素の飽和性の高い結合容量および緊密な結合をもたらす。特定の毒素の結合に関して記載されるが、他の環境毒素の結合が本開示の範囲内であることが理解されるべきである。
【0052】
理論に限定されることを望むことなく、本開示によるある特定の酸加工粘土は、種々の毒素に結合することができると仮定される。さらに理論に限定されることを望むことなく、この結合の機序は、疎水性(logP)、収着の容量、親和性、エンタルピー、毒素および粘土の電荷、サイズ、容量および/または表面積の差を含む可能性がある。LogPは、オクタノール-水分配係数の対数を指す。実施形態では、親有機性の改質材料(天然および合成)を利用して、環境化学物質、病原菌およびマイコトキシンに広範に作用する収着剤を開発することができる。作用の分子機序に含まれる重要な結合パラメータの間の相関を利用して、本開示に従い、ある特定の毒素またはその組合せのための酸粘土の包含を調節および調整することができる。
【0053】
本明細書に開示される腸収着剤。実施形態では、処理された収着剤を含む腸収着剤であって、処理された収着剤が、酸またはレシチン処理された親収着剤を含み、処理された収着剤が、1種または複数の毒素のバイオアベイラビリティおよびそれらへの生体の曝露が減少するように、そこに導入されたときに生体の胃腸管から1種または複数の毒素を吸着するために動作可能である腸収着剤が本明細書に開示される。
【0054】
親粘土。実施形態では、親収着剤は、合成フィロケイ酸塩型鉱物、天然フィロケイ酸塩型鉱物、モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、またはこれらの組合せを含む、フィロケイ酸塩型鉱物である。
【0055】
本発明の一態様は、食品および飼料の保存剤および添加剤としての種々の酸性化粘土および鉱物に関する。これらの酸性化粘土および鉱物は、有害微生物を殺滅するまたはその増殖を阻害すると同時に、ヒトの食品および動物の飼料中の汚染物質として存在するアフラトキシンなどのマイコトキシンを不活性化する食品または飼料添加剤として機能しうる。粘土は、アフラトキシンなどの種々のマイコトキシンに対する構造選択的親和性を有し、そのためヒトの食品および動物の飼料に存在するマイコトキシンを不活性化する吸着物質である。理論に束縛されることを望むものではないが、吸着または吸収された酸は酸性化粘土から入手可能であり、ヒトの食品および動物の飼料中の汚染物質として存在する有害微生物を殺滅すると考えられる。
【0056】
本発明に好適な鉱物として、モンモリロナイト粘土、フィロケイ酸塩、Florisil(登録商標)、バイヤライト、擬ベーマイト、アルミナ、シリカゲル、アルミニウム酸化物、ギブサイト、ベーマイトおよびボーキサイトが挙げられる。使用される好ましい粘土として、水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩(「HSCAS」)粘土が挙げられる。
【0057】
本発明の別の態様は、相対的に均一な分布の約150ミクロン未満の粒径を有する、HSCASの粘土に関する。そのような相対的に均一な小さい粒径を有する粘土は、均一または均質な混合に特に好適である。この均一な分布の粒径を有する粘土は、例えば水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩を325メッシュスクリーンを用いて選別し、約45ミクロンより大きいサイズを有する粒子を分離および排除することによって得られてもよい。
【0058】
HSCASの外観はオフホワイトから淡褐色であり、自由流動性粉末である。遊離水分含有量は約9%である。ゆるめ嵩密度は0.64g/cc、固め嵩密度は約0.80g/ccであり、粒径分布は+100メッシュが約5%、+200メッシュが18%、-325メッシュが60%である。化学分析により、%CaOは3.2~4.8、%MgOは4.0~5.4、%Fe2O3は5.4~6.5、%K2Oは0.50~0.90、%Na2Oは0.10~0.30、%MnOは0.01~0.03、%Al2O3は14.8~18.2、および%SiO2は62.4~73.5であることが示された。微量の重金属の含有量は以下の通りである:Pb、6.0~6.5ppm;As、0.5~0.7ppm;Cd、0.2~0.4ppm;Cr、5.5~6.0ppmおよびHg、0.1ppm未満。粘土は、HSCAS中1兆分の(「ppt」)0.33の検出制限を超えるダイオキシン(ここで使用されるダイオキシンは、食品原料におけるダイオキシンの存在の指標として使用される毒性汚染物質2,3,7,8-テトラクロロジベンゾダイオキシン(「TCDD」)を指す)を実質的に含まない。
【0059】
本発明の実施形態では、親収着剤はモンモリロナイト粘土を含み、処理された収着剤は処理されたモンモリロナイト粘土を含む。実施形態では、親粘土はナトリウムまたはカルシウムモンモリロナイト粘土を含む。粘土、特にモンモリロナイト粘土に関して記載されるが、他の収着剤(天然または人工)が本開示の実施形態による親収着剤として利用されてもよいことが理解されるべきである。
【0060】
本開示の実施形態によると、個々の毒素ならびに/またはマイコトキシン、環境汚染物質および病原菌の混合物に広範に作用する腸収着剤として利用することができる(例えば、緊急事態および突発時に)、酸加工された炭素様の多孔質モンモリロナイト粘土が本明細書に開示される。親モンモリロナイト粘土は、多数の介入および臨床試験に基づき、ヒトおよび動物の摂食に安全である。
【0061】
実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、CMまたはSMの親材料からのAPMを含む。代替的な実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、レシチンによって改質された親モンモリロナイト粘土(レシチン改質モンモリロナイト、LAM)を含む。レシチンは、両親媒性の一般的なリン脂質である。レシチンの主な商業供給源は、大豆、卵、牛乳などである。レシチンは、酸性条件において、カチオンが粘土の層間の無機カチオンと交換するのを可能にする正味の正電荷を有する(Merino, Ollier, Lanfranconi and Alvarez, 2016)。理論に束縛されるのを望むものではないが、低pHでのレシチンによる親粘土の修飾は、親油性脂肪酸テールを有するレシチンのためにより多くの疎水性環境化学物質を誘引する可能性がある。
【0062】
本開示の実施形態に従い、モンモリロナイトを硫酸によって活性化し、大きな表面積およびより少ない微量金属を有する高度に多孔質の収着剤を創出する、またはレシチンによって両親媒性表面を創出し、親有機性化学吸着を促進することにより、化学混合物の結合のための広範に作用する収着剤を生成することができる。
【0063】
平衡等温線によって決定される改質粘土の結合パラメータ、成体ヒドラのバイオアッセイによって予測される、本明細書に開示される改質粘土のマイコトキシンおよび環境毒素の悪影響を防止する能力、およびE.coliを用いた抗細菌活性が以下の実施例に提供される。実施形態では、災害時のマイコトキシン、化学汚染物質および病原菌の意図しない曝露およびバイオアベイラビリティを最小化するための保護手段として、機能化された広範に作用する腸収着剤の食事への包含が利用される場合がある。
【0064】
毒素。実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、マイコトキシン、環境化学物質および病原菌から選択される1種または複数の毒素の吸着に有効である。例えば、実施形態では、1種または複数の毒素は、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、駆除剤、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、可塑剤またはこれらの組合せから選択される。実施形態では、1種または複数の毒素は、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、ペンタクロロフェノール(PCP)、2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)、リンデン、グリホサート、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、トリフルラリン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、PCB、ビスフェノールA(BPA)、大腸菌(E.coli)またはこれらの組合せから選択される。
図1は、(A)AfB1、(B)ZEN、(C)BaP、(D)PCP、(E)2,4,6-TCP、(F)リンデン、(G)グリホサート、(H)ダイアジノン、(I)アンチカルブ、(J)リニュロン、(K)トリフルラリン、(L)PCB77、(M)PCB126、(N)PCB153、(O)PCB157、(P)PCB154、(Q)PCB155および(R)ビスフェノールAを含む、本明細書に開示される腸収着剤が有効でありうる毒素のいくつかの化学構造を示す。
【0065】
本明細書に開示される腸収着剤の特性。実施形態では、本開示の処理された粘土腸収着剤は、従来の炭素材料のもの以上である最大結合容量(Qmax)および/または分布係数(Kd)によって立証されるように、1種または複数の毒素に緊密に結合する。本明細書に開示される腸収着剤は、化学吸着によって1種または複数の毒素を吸着する。
【0066】
実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、処理された収着剤がAfB1およびZENを非競合的に吸着するように動作可能であるように、複数の種類の結合部位および/または結合機序を含む。複数の種類の結合部位は、主にAfB1を吸着する粘土の層間の結合部位、および主にZENを吸着する、処理された収着剤の親有機性基底表面および端部部位の結合部位を含みうる。腸収着剤は、減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)によって立証されるように、限定されないが、大腸菌(E.coli)などの細菌を吸着するためにさらに動作可能でありうる。実施形態では、腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)をもたらすように動作可能である。実施形態では、腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対する病原菌のコロニー形成単位(CFU)の少なくとも25、30、35、40、45、50または55%以上の低減をもたらすように動作可能である。
【0067】
実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土のZENに対するQmaxより大きなZENに対する最大結合容量(Qmax)を示す。実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤のQmaxは、キログラムあたり少なくとも約0.2モル(mol/kg)である。実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土のZENに対する絶対吸着エンタルピー(|ΔHads|)より大きなZENに対する|ΔHads|(以下に提供されるファントホッフの式によって決定して)を示す。実施形態では、処理されたモンモリロナイト粘土のZENに対する|ΔHads|は、モルあたり約20、30、40、50、60、70、80または90キロジュール(kJ/mol)以上である。
【0068】
実施形態では、本明細書に開示される腸収着剤は、レシチン処理されたモンモリロナイト粘土を含み、かつペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、アルジカルブ、ダイアジノン、リニュロンまたはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着に有効である。実施形態では、本開示のレシチン処理されたモンモリロナイト腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して増加した結合(増加した最大結合容量(Qmax)および/または増加した結合親和性(Kd)によって立証されるように)を示す。
【0069】
実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して減少した水中の線膨張性係数(COLE)を有する。実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して増加した全表面積および/または多孔性を有する。実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して少なくとも30、35または40%以上増加する全表面積を有する。
【0070】
実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して低減した量の微量金属を含む。そのような微量金属は、限定されないが、アルミニウム、カルシウム、ナトリウムを含む。実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、腸収着剤を生体の胃腸管に導入する際に、鉛が解離しないように鉛の緊密な結合を示す。実施形態では、本開示の処理されたモンモリロナイト粘土腸収着剤は、活性炭のものを模擬する構造を有する。
【0071】
本明細書に開示される腸収着剤を作製する方法。本開示の腸収着剤は、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって生成されてもよい。代替的に、実施形態では、収着剤を生成する方法は、親粘土を加工および改質して活性化された開発された粘土を生成することを含む。実施形態では、活性化することは、約6N、12Nもしくは18N以上の、または約6N~約18Nもしくは約6N~約12Nの範囲の濃度(例えば、当量濃度または規定度(N))を有する試薬グレードの硫酸溶液への曝露によって酸処理し、酸処理粘土を生成すること、および/または100%のカチオン交換容量でのレシチンによる修飾によってレシチン処理し、レシチン処理粘土を生成することを含む。
【0072】
実施形態では、酸処理することは、硫酸溶液中で撹拌することを含み、レシチン処理することは、カチオンおよび酸を含むレシチン溶液中で撹拌することを含む。撹拌することは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11または12時間、撹拌温度において撹拌することを含みうる。実施形態では、酸処理することは、室温を超える撹拌温度(例えば、約60℃)を含み、レシチン処理することは、およそ室温と同等の撹拌温度を含む。
【0073】
酸処理することは、冷却すること(例えば、室温まで)、酸性溶液から除去すること(例えば、遠心分離によって)、および水によって洗浄すること(例えば、蒸留水によって)をさらに含みうる。実施形態では、レシチン処理することは、レシチン溶液から除去すること(例えば、遠心分離によって)および水によって洗浄すること(例えば、蒸留水によって)をさらに含みうる。除去することおよび洗浄すること(例えば、遠心分離することおよび洗浄すること)は1回もしくは複数回で有効であってもよく、および/または洗浄水の所望のpHが得られるまでであってもよい。
【0074】
実施形態では、腸収着剤を生成する方法は、乾燥することおよび活性化粘土をサイズ調整することをさらに含みうる。サイズ調整することは、粉砕およびふるい分けし、均一および/または所望のサイズを有する活性化粘土を提供することを含みうる。実施形態では、所望のおよび/または均一なサイズは、約100、125または150μm未満またはそれと同等でありうる。乾燥することは、オーブン中で乾燥温度において乾燥時間にわたって乾燥することを含みうる。実施形態では、乾燥温度は約100、110、115または120℃以上であり、乾燥時間は少なくとも8、9、10、11もしくは12時間(例えば、一晩)である、またはこれらの組合せである。
【0075】
理論に制限されることを望むことなく、酸処理する際、層間のカチオンが酸からの水素プロトンと交換され、続いて酸処理(または「加工」)粘土が、高い反応性および触媒活性を有する非晶質シリカ構造になるように、粘土構造中の八面体および四面体シートの一部が解離する可能性がある。
【0076】
実施形態では、レシチン処理することは、酸処理することに続いてまたはそれと同時に実施される。実施形態では、レシチン処理することは、低pH(例えば、約1、2もしくは3未満またはそれと同等のpH)で実施される。ここでも理論に制限されることを望むことなく、レシチン処理することは、レシチン処理粘土に両親媒性表面を生成しうる。
【0077】
本明細書に開示される方法は、それらの化学的特性に基づいて、種々の毒素の吸着に有効な広範に作用する腸収着剤を提供するように調節可能であってもよい。例えば、腸収着剤を生成する方法は、疎水性(logP)、吸着の容量、親和性、エンタルピー(ΔHads)、1種または複数の毒素および/または利用可能な親粘土の電荷、サイズ、容量および表面積の差のうちの1つまたは複数に基づいて親粘土の処理を調節すること、利用可能な親粘土から親粘土を選択すること、またはこれらの組合せを含みうる。
【実施例0078】
実施形態を概して記載したが、以下の実施例は、本開示の特定の実施形態として、かつその実践および利点を実証するために与えられる。実施例は例示として与えられ、いかなる様態でも本明細書または特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。
【0079】
概要。広範に作用する収着剤を開発するために、カルシウムモンモリロナイト粘土とナトリウムモンモリロナイト粘土の両方を規定度12および18の硫酸によって処理し、活性炭材料と同様の大きな表面積および多孔性を生じた。本明細書に開示される結果および以前の文献に基づき、かつ理論に制限されることを望むことなく、粘土を酸によって処理する際、層間のカチオンがまず酸からの水素プロトンと交換され、続いて粘土構造中の一部の八面体および四面体シートが解離すると仮定される。酸処理粘土の最終反応生成物は、高い反応性および触媒活性を有する非晶質のシリカ構造でありうる(Tyagi, B., Chudasama, C.D., & Jasra, R.V., 2006)。ある特定の酸加工モンモリロナイトが開発され、油を脱色するため(De, B.K., Patel, J.D., Patel, J.B., Patel, V.K., & Patel, V.R., 2009)、油から植物色素を除去するため(Yip, A.C., Lam, F.L., & Hu, X., 2005)、ならびに汚染除去および精製手順の際に種々の有機および無機汚染物質を水から捕捉するため(Ake, C.L., Mayura, K., Huebner, H., Bratton, G.R., & Phillips, T.D., 2001; Resmi, G., Thampi, S.G., & Chandrakaran, S., 2012; Ugochukwu, U.C. & Fialips, C.I., 2017)に広く使用されてきた。しかし、マイコトキシンおよび病原菌を吸着するための酸処理粘土についても、毒素および病原菌曝露を減少させるための短期間処置のために、それらを腸収着剤として動物およびヒトの食事に包含することについても報告は存在しない。
【0080】
カチオン交換容量(CEC)は、正に荷電したイオンを保つ組成物の能力の尺度である。これは、土壌の構造安定性、栄養素のアベイラビリティ、土壌のpHならびに土壌の肥料および他の改善剤への反応に影響を及ぼす非常に需要な特性である。土壌の粘土鉱物および有機物成分は、それらの表面上に、正に荷電したイオン(カチオン)を静電気力によって吸着して保つ負に荷電した部位を有する。この電荷は、植物に栄養素を供給するために極めて重要であり、これは多くの栄養素がカチオン(例えば、マグネシウム、カリウムおよびカルシウム)として存在するためである。一般的に、多量の負電荷を有する土壌はより多くのカチオンを保持するため肥沃度がより高いが、生産作物および牧草は、低CEC土壌で成長することができる。
【0081】
土壌のCECに関連する主なイオンは、交換性カチオンであるカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、ナトリウム(Na+)およびカリウム(K+)であり、一般的に塩基カチオンと称される。ほとんどの場合、分析される塩基カチオンの合計は、CECの十分な尺度になる(「塩基によるCEC」)。しかし、土壌がより酸性になるにつれ、これらのカチオンはH+、Al3+およびMn2+によって置き換えられ、一般的な方法は田畑において生じるものよりはるかに高いCEC値を生じる。塩基カチオンを合計する場合、この「交換酸性」が含まれる必要があり、この測定値は有効CEC(ECEC)と称される。本発明の(if)親収着剤は、100%のカチオン交換容量(CEC)でレシチンによって修飾された。
【0082】
上記で述べられたように、動物およびヒトにおける毒素(例えば、環境化学物質、病原菌およびマイコトキシン)の混合物からの曝露を減少させるのに有効な腸収着剤を開発するために、カルシウムおよびナトリウムモンモリロナイト粘土が規定度12および18の硫酸を使用して加工され、(さらに)これらの粘土はレシチンによって改質された。本発明では、等温分析により、酸加工モンモリロナイト(APM)が多数の毒素のための有効な収着剤として機能することが示された。この報告では、本発明者らは、アフラトキシンおよびゼアラレノン(ZEN)などの重要なマイコトキシン、ならびにペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノンおよびアルジカルブを含む危険環境化学物質を包括する。社内で開発されたヒドラバイオアッセイにより、食事中への粘土の包含の安全性、および個々の毒素または毒素混合物に対する保護効果がさらに確証された。APM粘土の大きな表面積の他に、より少ない微量金属ならびに高い結合容量および親和性、エンタルピーの導出により、収着プロセスは、毒素の粘土表面への緊密な結合を伴う化学収着として最も良好に定義されることが示唆される。これは、これらの毒素に対する高い結合効力を有する収着剤(炭素以外)に関する初めての報告である。脱ヒドロキシル化および熱崩壊した粘土からの結果は、熱力学的計算およびコンピュータモデル化から予測して、AfB1は主に粘土の層間に吸着され、一方でZENの主な結合部位は親有機性基底表面および端部部位であると予測されたことを示唆した。この結合部位の違いは、アフラトキシンとZENが非競合的に相互作用する良好な機会をもたらす。1ppmのAfB1と6ppmのZEN(動物家畜飼料における平均的なAfB1とZENの濃度に基づく)の毒素混合物に対するヒドラの保護は、APMは、アフラトキシンおよびZENを同時に、限定された干渉を伴って吸着することができたことを指し示した。化学吸着の他に、APMは、E.coliなどの病原菌のコロニー形成単位を減少させることが示された。APM粘土は、危険なマイコトキシン、環境化学物質および病原菌の混合物への体内曝露を減少させる、広範に作用する腸収着剤として送達されうる(水、カプセル、食品、スナック、ビタミンなどへ)。
【0083】
レシチン改質モンモリロナイト粘土(LAM)はまた、それらが導出された親モンモリロナイト粘土に対して、PCP、BaP、リンデンおよびアルジカルブを含む環境化学物質への顕著に増加した結合を示した。LAMは、平衡等温線から高い結合容量および親和性を示し、これはレシチン粘土がそれらの化学的特性の差に基づいて種々の多様な毒素に広範に作用し、調節可能である可能性があることを示唆する。
【0084】
等温分析およびヒドラバイオアッセイを実行して、本明細書に開示される酸粘土を評価した。ラングミュアモデルを導出し、Table-Curve2Dによってプロットし、Microsoft Excelを使用するコンピュータプログラムを利用して毒素と粘土の表面との相互作用の値を導出した。結果は、競合および干渉を伴わない、アフラトキシンとZENの両方の緊密な結合を示した。
【0085】
カルシウムモンモリロナイトは、Texas Enterosorbants Inc.によって提供され、硫酸はSIGMA ALDRICH,Chemical Co.から購入した。ナトリウムモンモリロナイトは、ミズーリ大学コロンビア校のSource Clay Minerals Repositoryから得た。
【0086】
試薬。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのメタノール、アセトニトリル、試薬およびpH緩衝液(4.0、7.0および10.0)は、VWR(アトランタ、GA)から購入した。AfB1、ZEN、BaP、グリホサート、トリフルラリン、アルジカルブ、リニュロン、BPA、酢酸アンモニウム、五酸化リンおよび
図22に見出される他の毒素は、Sigma Aldrich(セントルイス、MO)および他の供給元から入手可能である。レシチン顆粒は、Now Foods(ブルーミングデイル、IL)から購入した。活性炭、PCP、2,4,6-TCPおよび硫酸(H
2SO
4、95~98%)は、Aldrich Chemical Co.(ミルウォーキー、WI)から購入した。エチレングリコールおよび塩化カルシウムは、Thermo Fisher(ウォルサム、MA)から購入した。PCB(純度>99%)は、テキサスA&M大学(カレッジステーション、TX)のStephen Safe博士から贈呈された。親粘土HSCAS(CM)は、TxESI Corp(バストロップ、テキサス)から得て、均一な粒径を有するように空気分級し、ここで高および低粒径範囲のカットオフは、指定サイズに調整された材料の90%超を含んだ。SMは、ミズーリ大学コロンビア校のSource Clay Minerals Repositoryから得た。超高純度脱イオン水(18.2MΩ)を、ElgaTM自動化濾過システム(ウッドリッジ、IL)を使用して実験室で発生させ、すべての実験において使用した。
【0087】
収着剤の合成。カルシウムおよびナトリウムモンモリロナイト粘土を代表する5グラムの親CMおよびSM(6%、w/v)をガラスビーカーに取り、規定度12および18を得るように計算された容量の硫酸を各群に添加した。補充容量の蒸留水を添加し、合計量を83mLにした。溶液を激しく撹拌し、オーブン中60℃で一晩保管した。スラリーを冷却し、2000gで20分間遠心分離して、蒸留水によって徹底的に洗浄した。この遠心分離から洗浄のプロセスを、各群のpHが一定になるまで複数回繰り返した。すべての試料をオーブン中110℃で一晩乾燥させ、その後使用前に粉砕および125μmでふるい分けした。これらの粉砕、ふるい分けまたは空気分級工程は、均一なサイズの粘土粒子を得るために必要であった。
【0088】
親CM収着剤を、100%のカチオン交換容量(CEC=97mmolkg-1)でレシチンによって修飾した。計算された量のカチオンおよび2gの親材料を、40mLの1mM HNO3に添加した。懸濁液を周囲温度において24時間混合および撹拌し、次いで2000gで20分間遠心分離して、100mLの蒸留水によって洗浄した。この遠心分離から洗浄のプロセスを3回繰り返した。すべての試料をオーブン中110℃で一晩乾燥させ、その後粉砕して125μmのふるいに通した。
【0089】
毒素の結合部位およびインタクトな層間の重要性を調査するために、熱崩壊した収着剤を用いた実験を実行した。崩壊した収着剤は、親収着剤および改質された収着剤を200℃で30分間および800℃で1時間加熱し、層間を完全に崩壊させることによって調製した(Grant, P.G., & Phillips, T.D., 1998)。
【0090】
水中の線膨張性係数。収着剤試料をメスシリンダーの2mLの印まで添加し、次いで15mLの水とともに撹拌した。完全な平衡水和および膨潤から24時間後、収着剤の最終容量を決定した。開始容量(2mL)および最終容量から計算された比は、試料の水和および膨張を指し示す。比が大きいほど、試料の水和および膨張が大きいことを指し示す(Wang, M. et al., 2017)。
【0091】
表面積の決定。親粘土および酸処理粘土の全表面積をエチレングリコール(EG)によって決定した。エチレングリコールを、およそ0.1mmHgの真空を印加しながら単層被覆で固体表面に保持する(Carter, D.L., Mortland, M.M., & Kemper, W.D., 1986)。表面積は、以下の式に基づいて計算した:
A=Wa/(Ws×EG換算係数)、
【0092】
式中、Aは全表面積(m2/g)であり、Wsは粘土のオーブン乾燥重量(g)であり、Waは粘土によって保持されるEGの重量(g)である。EGの換算係数は3.1×10-4g m-2である。
【0093】
インビトロ(in vitro)での等温吸着。純粋な結晶をアセトニトリルに溶解することにより、毒素のストック溶液を調製した。ストック溶液をpH7の蒸留水に注入し、8ppm(8μg/mL)のAfB1、4ppmのZEN、4ppmのPCP、6ppmの2,4,6-TCP、10ppmのグリホサート、10ppmのダイアジノンまたは5ppmのアルジカルブ溶液を得た。他の毒素溶液を、検出方法および親油性に基づき個々の移動相に溶解し、10ppmのBaP(アセトニトリル:水、90:10)、12.5ppmのリンデン(アセトニトリル:水、50:50)、20ppmのリニュロン(アセトニトリル:水、65:35)、20ppmのトリフルラリン(アセトニトリル:水、70:30)、15ppmの個々のPCB同族体(アセトニトリル)および15ppmのBPA(アセトニトリル)を得た。最大濃度は、沈殿が要因にならないようにオクタノール-水分配係数(Kow)に基づいて設定した。次いで、0.002%の収着剤を、増加する濃度勾配の毒素溶液に曝露させた。試験試料の他に、移動相、収着剤を伴わない毒素溶液および毒素を伴わない移動相中の収着剤からなる3つの対照が存在した。対照群および試験群に蓋をし、電気振盪機を使用して24℃または37℃のいずれかにおいて1000rpmで2時間かき混ぜた。次に、すべての試料を2000gで20分間遠心分離し、溶液から粘土/毒素複合体を分離した。紫外可視分光光度計を使用し、AfB1について362nm、ZENについて236nm、PCPについて210nm、2,4,6-TCPについて294nm、PCB77について260.9nm、PCB126について264.5nm、PCb153および154について207.2nm、PCB154について280nmならびにPCB157について254.9nmにおける吸着ピークをスキャンして読み取った。
【0094】
Phenomenex(登録商標)luna5u C18カラム(250×4.6mm)を備えたHPLCを使用して、上清のBaP、リンデンおよびリニュロンの吸収を測定した(Challa & Naidu, 2016; Rotenberg, et al., 2011; Sanchez-Martin, et al., 1996)。BaPでは、化学分離を達成するために、1.0mL/分の流速の90%アセトニトリルおよび10%水の移動相ならびに100μLの注入容量を設定した。蛍光検出器を励起264nmおよび発光412nmで設定した。BaPの検出限界は32pptであった。リンデンは、2.0mL/分の流速および10μLの注入容量で、移動相として50%アセトニトリルおよび50%水によって分離され、UV検出器によって254nm波長において検出された。Breezeソフトウェアを使用してHPLCシステムを制御し、データを収集した。リニュロンの分離は、65%メタノールおよび35%水の移動相、1.0mL/分の流速、20μLの注入容量および210nm波長におけるUV吸着によって達成した。SUPELCOSIL LC-18カラム(15×4.6mm、3μm)を備えたHPLCを使用して、上清のトリフルラリンを検出した。トリフルラリンは、1.5mL/分の流速で、移動相として70%アセトニトリルおよび30%水を使用して分析した。カラムは30℃に維持され、注入容量は10uLであった。トリフルラリンの検出は、UV検出器によって254nm波長でプログラムされた。Breeze(登録商標)ソフトウェアを使用してHPLCシステムを制御し、データを収集した。
【0095】
グリホサート、ダイアジノン、アルジカルブおよびBPA濃縮物を、Acquity(登録商標)BEH C18カラム(2.1×50mm)を備えたWaters LC/MS/MSを使用して分析した。グリホサートは、Acquity(登録商標)BEH C18カラム(2.1×50mm、5μm)を使用して分離し、20℃で維持した。水と0.1%ギ酸(溶離液A)およびアセトニトリルと0.1%ギ酸(溶離液B)を使用する勾配溶出を0.3mL/分の流速で実行した。溶出の勾配プログラムは5%溶離液B(初期)および5%~100%溶離液B(0~10分)であった。移動相のギ酸を使用し、アミノ基のプロトン化を促進した。注入容量は、各分析について10μLであった。質量分析計をエレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを用いて使用し、負イオンモードで操作した。スプレー電圧は4.5kVに維持した。ソース温度は225℃に維持した。モニタリングされた前駆体および生成物イオンは、m/z168~63および81であった。ダイアジノンおよびアルジカルブでは、カラム温度は35℃に維持した。10mMの水中NH4OAc(溶離液A)および10mMのメタノール中NH4OAc(溶離液B)を使用する勾配溶出を0.6mL/分の流速で実行した(溶離液B、8分間の10%~90%線形勾配)。5μLの試料容量を各分析に使用した。質量分析計をエレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェースを用いて実施し、負イオンモードで操作した。スプレー電圧は5kVに維持した。窒素ガスをコリジョンガスおよびカーテンガスとして使用し、アルゴンガスをネブライザーガスおよびヒーターガスとして使用した。ソース温度は500℃に維持した。質量分析計を多重反応モニタリング(MRM)モードで操作し、モニタリングされた前駆体および生成物イオンは、ダイアジノンについてm/z305.1~169.2およびアルジカルブについて208.2~116.1であった。BPAの検出では、10~100%の水中アセトニトリルの1.5分の線形勾配を使用し、続いて0.4mL/分の流速で100%アセトニトリルで0.4分間保持した。平衡化を含む合計実行時間は3.5分であった。カラムオーブン温度は45℃であり、注入容量は5μLであった。選択反応モニタリング(SRM)およびトランジションあたり50msの滞留時間を用いる負イオンエレクトロスプレー質量分析を使用して、各分析物を測定した。SRMトランジションはm/z227~212(定量)およびm/z227~133(確認)であった。イオン質量分析計には単位質量分解能を使用した。EPIスキャン速度は1000amu/sであり、スキャン範囲は106~396amuであった。Empower analystソフトウェアを使用してLC/MS/MSシステムを制御し、データを取得した。各毒素の検出限界(LOD)は、PCPおよび2,4,6-TCPについて500ppb、リンデンおよびリニュロンについて5ppb、ダイアジノンおよびアルジカルブについて12.5ppb、トリフルラリンについて0.1ppb、グリホサートについて0.5ppbおよびBPAについて10ppbであり、検出方法の再現性および感度は良好であった。標準毒素溶液を2時間のかき混ぜ前後にスパイクし、相対標準偏差(RSD)は<5%であり、高い回収パーセンテージおよび限定された非特異的結合が示された。検出方法は標準検量線を使用して検証した。各毒素の標準溶液を、25ppm~0.1ppmの濃度勾配において移動相中で個々に調製し、標準曲線をプロットした。すべての毒素の標準曲線は、シグナル強度と毒素濃度の間で線形(r2>0.99)であった。
【0096】
データ計算および曲線適合。試料を三重に調製し、標準検量線を使用して定量した。したがって、HPLCおよびLC/MS/MSによって検出される溶液の毒素濃度(x軸)を、毒素保持時間のピーク面積から計算した。その一方で、紫外可視分光光度計によって達成された吸収データを使用して、溶液に残された毒素の濃度(c)をベールの法則によって計算した。各データ点の吸着された量(y軸)を、試験群と対照群の間の濃度差から計算した。より詳細には、y軸は収着剤によって結合された毒素の量である(mol/kg単位)。これは、対照群に対する試験溶液中の遊離毒素のモルの差を、包含された粘土の質量で除すことによって計算される。
ベールの法則 吸光度=(ε)×(L)×(c)
【0097】
式中、eはモル吸光係数(AfB1のε=21,865cm-1mol-1、ZENのe=24,833cm-1mol-1、PCPのe=73,400cm-1mol-1)であり、Lはキュベットに応じたセルホルダーのパス長=1cmである。
【0098】
次いで、Table-Curve2DおよびMicrosoft Excelを用いて開発されたコンピュータプログラムを使用してこれらのデータをプロットし、可変パラメータの値を導出した。データに対する最良適合がラングミュアモデルであり、これを使用して三重の分析から平衡等温線をプロットした。等温式はユーザ定義関数として入力した:
ラングミュアモデル(LM) q=Qmax(KdCw1+KdCw)q=Qmax(KdCw1+KdCw)
【0099】
式中、q=吸着された毒素(mol/kg)、Qmax=最大容量(mol/kg)、Kd=分布定数、Cw=毒素の平衡濃度である。
【0100】
プロットは通常、曲線の途切れを示す。曲線が途切れるx軸上の値がKd-1の推定値である。曲線が途切れるy軸上の値がQmaxの推定値である。Qmaxは、吸着データに対するLMの適合から得る。Kdの定義は、以下を与えるラングミュアの式:
Kd=q(Qmax-q)Cw
から導出される。
【0101】
エンタルピー(ΔHads)は、以下の式:
ファントホッフの式 ΔHads=-Rln(Kd2Kd1)1T2-(1T1)ΔHads=-Rln(Kd2Kd1)1T2-(1T1
【0102】
R(理想気体定数)=8.314J/mol/K、T=絶対温度(K)
により、24および37℃でのKd値の差を比較することによって計算された。
【0103】
ヒドラアッセイ。ヒドラ・ブルガリス(Hydra vulgaris)をEnvironment Canada(モントリオール、Qc)から得て18℃で維持した。ヒドラ分類法(Wilby, O.K., Tesh, J.M., & Shore, P.R., 1990)を改変して使用し、溶液の毒性の指標として成体ヒドラの形態を評定した。この分類の例示を
図2に示す。このアッセイでは、ヒドラの形態のスコア付けは客観的であり、以前の文献の詳細な図を用いて再現可能である。アッセイは、最初の2日間は比較的短い間隔(0、4、20および28時間)、最後の3日間は24時間の間隔(44、68および92時間)でのモニタリング時間を含んだ。試験中、溶液は交換しなかった。収着剤処理を伴うおよび伴わない毒素の曝露後にヒドラの形態学的応答をスコア付けし、記録した。試料間の差異を最小限に抑えるために、同様のサイズの成体ヒドラおよび出芽していないヒドラを試験のために選んだ。この実験の対照は、ヒドラ媒体を含んだ。収着剤包含パーセンテージは、以前の試験(Brown, K.A. et al., 2014; Marroquin-Cardona, A. et al., 2011; Phillips, T.D. et al., 2008)に基づいて選んだ。毒素処理群は、92時間で100%の死亡率を生じた最低有効用量(Khalaf, S. et al., 2013)に基づく、ヒドラ媒体中の1%DMSO中の代謝活性化パッケージ(MAP)を含む3ppmのBaP、20ppmのAfB1、4ppmのZEN、2ppmのPCP、30ppmのグリホサート、1ppmのアルジカルブ、5ppmのトリフルラリンまたは駆除剤混合物(2ppmのPCP、2,4,6-TCP、リンデン、ダイアジノン、グリホサート、トリフルラリン、アルジカルブおよびリニュロン)、20ppmのPCB77、126および153、20ppmのAroclor1254および1260を含んだ。MAPは標準化され、2.4μg/mLのマウス肝ミクロソームシトクロムP450、225μMのNADPHおよび25μMのMgCl2からなった(Newman, Johnson, Giacobbe, & Fu, 1990; Ottinger et al., 1999)。毒素混合物処理群は、動物家畜飼料中のAfB1とZENの平均濃度の比に基づき1ppmのAfB1および6ppmのZENを含んだ(Murugesan, G.R. et al., 2015)。すべての試験溶液に蓋をし、パイレックス皿のヒドラの曝露前に1000rpmで2時間振盪し、2000gで20分間遠心分離することによって調製した(Brown, K.A. et al., 2014)。各試料について、3つのヒドラを4mLの試験媒体に包含し、18℃で保管した。特定の時点でのある特定の群の形態学的変化の平均スコアを計算することにより、スコアまたは平均毒性評点を決定した。
【0104】
統計分析。片側t検定を使用し、統計的有意性を計算した。各実験を独立に三重に行い、平均および標準偏差を導出した。t検定では、COLE実験からの平均COLE比、平衡等温分析からのQmax、およびヒドラアッセイからの毒性スコアが含まれ、D=対照-試験群およびD2を計算した。次いで、以下の式(N=3):
【0105】
【0106】
t値およびDF(自由度)をp値の表で比較し、統計的有意性を決定した。結果をP<0.05で有意とみなした。
【0107】
図2は、Wilby(1988)によるヒドラの形態スケールの表示である。スケールは0~10で等級付けされ、10は正常な生存ヒドラを表し、0は分解したヒドラを表す。ヒドラの生理学的状態は、解剖顕微鏡によって評価した。
【0108】
水中の線膨張性係数。COLE比は、水中の収着剤の膨張性を指し示す。COLE=粘土の膨張容量/粘土の元の容量である。比が大きいほど、試料の膨張および水和が大きい。この実験の精度は、それぞれカルシウムに富むモンモリロナイトおよびナトリウムに富むモンモリロナイトを予測するCMおよびSM粘土のCOLE値によって確証された(
図3)。
【0109】
SMは、そのCOLE比によって指し示されるように高い膨張性を有するナトリウムモンモリロナイトである。他方でCMは、限定された水中の膨張性を有するカルシウムモンモリロナイトである。酸処理プロセスは、酸からのH+イオンと置き換わることによって水分子を層間に誘引する高い水和エネルギーを有する、置換される層間カチオンの浸出をもたらす(Tyagi, B., Chudasama, C.D., & Jasra, R.V., 2006)。これは、親粘土と比べた酸加工粘土のCOLE値の減少を説明する可能性がある。この水中で膨張性および粘土の安定化の制限は、カチオンの交換および浸出、ならびにAPM構造の多孔質かつ大きい表面積の創出を指し示す。
【0110】
図3は、水中の収着剤の線膨張性係数(COLE)を示す。親SMのCOLE値は顕著な水和および膨張性を指し示した一方で、酸加工ナトリウムモンモリロナイトのCOLE値は、限定されたまたは親SMと比べて減少した水和エネルギーおよび膨張性を示した。親CMおよび酸加工カルシウムモンモリロナイトは、限定された水中の膨張性を導出した。
【0111】
表面積。酸加工モンモリロナイトは、1172.2m
-2g(APCM-12N)および1213.4m
-2g(APCM-18N)の比較的大きい全表面積を有することが見出され、これは
図4に示されるように、親CM粘土に比べて42.4%および47.4%の増加を指し示す。この大きい表面積および多孔性は、層間および2八面体シートでのカチオンの浸出およびそれらとプロトンとの置き換えによって達成されたものと思われ、これにより広範に作用する腸収着剤の開発の可能性が向上する。この方法の一貫性は、以前に決定された親CMでの同様の結果によって確証される。
図4は、エチレングリコール(EG)の粘土表面への吸収度によって決定される親モンモリロナイトおよびAPMの表面積を示す。
【0112】
微量金属。親および酸処理CM中の微量金属は、ALS Environmental(ケルソー、WA)によって分析された。カルシウムは主要な層間カチオンである一方、アルミニウムおよびナトリウムは主に層間だけでなく2八面体および四面体シートにも存在する。
図5の結果は、両方の酸処理によってアルミニウム、カルシウムおよびナトリウムの相対値が親粘土に比べて減少したことを示す。12Nによる処理は、アルミニウムおよびカルシウムをより顕著に減少させ、18Nはナトリウムをより顕著に減少させた。この結果は、より低い酸濃度(12N)により最初に層間および八面体シートのカチオンが浸出し、一方でより高い酸濃度(18N)により、反応性が低い四面体シートのカチオンが交換されることを指し示す。このことは、酸粘土についてのFTIRの報告と一致する(Tyagi, B. et al., 2006)。
【0113】
1つの親粘土の鉛レベルは、11.7ppm(相対値は1に調整された)と検出され、これは米国食品医薬品局(FDA)によって10ppmと設定された対策レベルよりわずかに高い。結果は、鉛の濃度は、高温での24時間の硫酸処理によっても、超音波処理およびクエン酸による洗浄を含む他の処理によっても変化しなかったことを示す(データは示さず)。鉛の安定かつ一貫した濃度は、鉛が粘土構造に緊密に結合され、長期間の加熱、強酸および超音波処理などの極端な条件においても容易に解離しないことを指し示す。したがって、鉛は、粘土の摂取の際に動物またはヒトの胃において利用可能であるべきではない。本発明者らによって実行された、以前の動物での介入試験およびヒトにおける臨床試験によってこの結論が支持される。
図5は、親粘土と比べたAPMにおける微量金属の相対値を示す。
【0114】
マイコトキシンに対する等温吸着およびヒドラアッセイ。Table-Curve2DおよびMicrosoft Excelを使用して実験室で開発されたコンピュータプログラムによって平衡等温線を作成し、毒素と表面の相互作用について収着の親和性(Kd)、容量(Qmax)およびエンタルピー(ΔH)を導出した。各点は、対応する11種の希釈液について、粘土に結合された毒素(mol/kg)および溶液に残された毒素(mol/L)について計算された値を表す。
【0115】
ダイオキシン。種々の粒径を含有する親CASAD粘土に存在するダイオキシンの量および80ミクロン未満の粒子のみを含有するようにサイズ調整された後のCASAD粘土に存在するダイオキシンの量を、以前に記載されたように測定した。サイズ調整前、CASAD粘土は下の表1に示されるダイオキシンの量を含有した。
【0116】
【0117】
表1に示されるように、サイズ調整前のCASAD粘土は、0.121pg/Lのヘプタクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(1,2,3,4,6,7,8-HpCDD)および1.243pg/Lのオクタクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(OCDD)を含有した。さらに、全テトラクロロジベンゾダイオキシンは1.284pg/Lと測定され、全ペンタクロロジベンゾダイオキシンは1.820と測定され、全ヘキサクロロジベンゾダイオキシンは1.994と測定された。試験された他のダイオキシンは存在しないか、または試験装置の検出限界未満のレベルのいずれかであった。次いで、80ミクロン未満のサイズの粒子のみを含有するようにCASAD粘土をサイズ調整した。ダイオキシン含有量の同じ分析を実施した。結果を下の表2に示す。
【0118】
【0119】
結果は、80ミクロン未満の粒径を有するCASAD粘土において、ダイオキシン含有量が大幅に低減したことを示す。検出された唯一の残存ダイオキシンは、0.362pg/Lの低減された量のオクタクロロジベンゾダイオキシン(OCDD)であった。
【0120】
図6Aおよび
図6Bは、酸加工カルシウムモンモリロナイト(APCM)(
図6A)および酸加工ナトリウムモンモリロナイト(APSM)(
図6B)上のAfB1の等温線プロットを示す。ラングミュアモデルのr
2値(>0.8)および曲線形状は、AfB1が粘土表面に緊密に結合し、容易に解離しないことを指し示す。導出されたQmaxは、酸加工CMおよびSMが、親粘土と比べて同様の結合曲線および容量でアフラトキシンの吸着を維持することができたことを指し示す。以前の研究に基づき、水中の膨張性が高い(COLE値が高い)収着剤は、APSM-12NおよびAPSM-18Nについてわずかに低下したKd値を示す。Kd値の減少は、酸処理されたナトリウムモンモリロナイトの膨張性の制限に関連した。
【0121】
図6Aおよび
図6Bは、pH6.5において観察および予測されたQmax値を示す、親モンモリロナイトに対するAPCM(
図6A)およびAPSM(
図6B)上のAfB1のラングミュアプロットを示す。Qmax値は、緊密な結合を指し示した。(
図6A)CM:Qmax=0.37、Kd=1E6、APCM-12N:Qmax=0.34、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.37、Kd=8E5。(
図6B)SM:Qmax=0.3、Kd=2E7、APSM-12N:Qmax=0.29、Kd=6E6、APSM-18N:Qmax=0.27、Kd=2E6。
【0122】
図7Aおよび
図7BにおけるZENの吸着では、親CMだけでなく複数の有機粘土もフロイントリッヒ型の傾向を示し、これは毒素が緊密に結合するのではなく、収着剤表面に分配することを指し示す。炭素を包含する混合物は、0.09mol/kgの結合容量で、ラングミュアモデルに適合した吸着の曲線形状を表示した。すべてのAPMが、ラングミュアモデルに適合する曲線形状でZEN結合を改善させ、飽和性の結合部位およびAPM表面への緊密な結合を指し示す。APMの結合容量(Qmax>0.2)は、炭素混合物のものより有意に高かった。ZENを有効かつ緊密に吸着する、炭素に関連する材料以外の収着剤材料が開発されたのは今回が初めてである。
【0123】
図7Aおよび
図7Bは、pH6.5において観察および予測されたQmax値を示す、親モンモリロナイトおよび炭素混合物に対するAPCM(
図7A)およびAPSM(
図7B)上のZENのラングミュアプロットを示す。Qmax値は、緊密な結合を指し示した。(
図7A)炭素混合物:Qmax=0.09、Kd=4E7、APCM-12N:Qmax=0.22、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.28、Kd=4E5。(
図7B)APSM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APSM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6。
【0124】
APMのエンタルピーを計算するために、
図8Aおよび
図8Bに示されるように、24および37℃でZENに対する等温線を実行した。異なる温度における個々のKd値をエンタルピーの式に当てはめると、計算されたエンタルピーは、ΔHAPCM-12N=-90kJ/mol、ΔHAPCM-18N=-75kJ/mol、ΔHAPSM-12N=-74kJ/mol、ΔHAPSM-18N=-78kJ/mol、ΔH炭素混合物=-20kJ/molであった。
【0125】
APMに対するすべての絶対エンタルピー値が20kJ/molを上回ったため、これは結合反応が緊密かつ相対的に不可逆的な結合に好都合な化学的収着機序(物理的収着機序ではなく)を含むことを指し示す。
【0126】
図8Aおよび
図8Bは、24および37℃(HT)での、親モンモリロナイトおよび炭素混合物に対するAPCM(
図8A)およびAPSM(
図8B)上のZENのラングミュアプロットを示す。(
図8A)炭素混合物:Qmax=0.09、Kd=4E7、炭素混合物HT:Qmax=0.07、Kd=5E7、APCM-12N:Qmax=0.22、Kd=1E6、APCM-12N HT:Qmax=0.23、Kd=4E5、APCM-18N:Qmax=0.28、Kd=4E5、APCM-18N HT:Qmax=0.28、Kd=5E5。(
図8B)APSM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APSM-12N HT:Qmax=0.15、Kd=2E6、APSM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6、APSM-18N HT:Qmax=0.14、Kd=3E6。
【0127】
800℃での加熱後、APMの層間は脱ヒドロキシル化され崩壊した。
図9Aおよび
図9Bは、崩壊したAPMのAfB1に対する結合容量が顕著に低減し、結合されたアフラトキシンの20%および14%がそれぞれ崩壊した(co)APCM-12NおよびAPCM-18Nに残存することを示す。このAfB1の大幅な減少は、AfB1のほとんどがこれらの粘土の層間内に結合し、ほんのわずかな量が端部および基底表面に結合することを示唆する(間接的に)。一方、結合された残存するZENのパーセンテージは、崩壊したAPCM-12NおよびAPCM-18Nに対してそれぞれ50%および63%と計算された。したがって、ZENの主な結合部位は、加熱中に影響されなかった比較的親有機性の基底表面および端部部位であることが示された。この結合部位および機序の違いは、APMがアフラトキシンとZENの毒素混合物に対して広範に作用する腸収着剤として機能する場合があるという良好な可能性をもたらした。
【0128】
図9Aおよび
図9Bは、pH6.5での崩壊したAPCM-12NおよびAPCM-18N上のAfB1(
図9A)およびZEN(
図9B)のラングミュアプロットを示す。(
図9A)APCM-12N:Qmax=0.34、Kd=1E6、APCM-18N:Qmax=0.37、Kd=8E5、Co APCM-12N:Qmax=0.07、Kd=5E5、Co APCM-18N:Qmax=0.05、Kd=6E5。(FIG.9B)APCM-12N:Qmax=0.21、Kd=6E6、APCM-18N:Qmax=0.24、Kd=2E6、Co APCM-12N:Qmax=0.11、Kd=9E6、Co APCM-18N:Qmax=0.17、Kd=1E7。
【0129】
成体ヒドラアッセイを使用して親および改質粘土の保護的役割を特定した。AfB1およびZENの最低有効濃度(MEC)は、92時間で100%のヒドラの死亡率を生じた20ppmおよび4ppmと確立された。親CMおよびAPCM粘土の包含が0.0005%の包含レベルのとき、成体ヒドラはアフラトキシン毒性から完全に保護された。同様に、
図10A、
図10Bおよび
図10Cでは、APCMは0.01%のレベルでヒドラをZENに対して顕著に保護し、ヒドラ媒体対照群と異ならない形態の評点をもたらしたのに対し、同じレベルの親CMはZENに対する保護を示さなかった。
【0130】
さらに、成体ヒドラを、動物家畜飼料における平均的なAfB1およびZENの濃度に基づく1ppmのAfB1および6ppmのZENの一般的な毒素混合物に曝露した。0.1%の包含レベルのAPCM-12NおよびAPCM-18Nの包含は、ヒドラの死亡率を明確に阻止したのに対し、同様のレベルの親粘土は、ヒドラをわずかに保護した。このわずかな保護は、親粘土がAfB1には結合できるがZENには結合できないというインビトロでの等温線の結果と一致する。APMの顕著な保護は、これらがアフラトキシンとZENの天然に存在する毒素混合物を、限られた干渉を伴って同時に吸着できたことを指し示す。本発明者らは、毒素混合物に対する保護的活性は、おそらくアフラトキシンとZENの結合部位および機序の違いによるものと仮定する。
【0131】
これは、アフラトキシンとZENの両方に対する広範に作用する腸収着剤の最初の発見である。インビボでの知見は、インビトロでの等温線の結果とも一致する。
【0132】
図10A、
図10Bおよび
図10Cは、ヒドラ毒性と、0.005%の包含レベルでの20ppmのAfB1に対する(
図10A)、0.01%のレベルでの4ppmのZENに対する(
図10B)、ならびに0.1%の包含レベルでの1ppmのAfB1と6ppmのZENの毒素混合物に対する(
図10C)親CMおよびAPMによる保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために各図に含まれる。
【0133】
環境化学物質を用いた等温吸着およびヒドラアッセイ。危険環境化学物質を軽減し、汚染現場付近で働き生活するヒトおよび地域を保護するために、代表的な環境化学物質を用いてAPMおよびレシチン改質モンモリロナイト(LAM)の結合効力を調査した。
図12Aおよび
図12Bは、親カルシウム(
図12A)およびナトリウム(
図12B)モンモリロナイトと比較したAPCM、APSMおよびLAM上のPCPのラングミュアプロットを示す。(
図12A)APCM-12N:Qmax=0.23、Kd=2E6、APCM-18N:Qmax=0.21、Kd=1E7、LAM:Qmax=0.11、Kd=2E6。(
図12B)APCM-12N:Qmax=0.1、Kd=3E6、APCM-18N:Qmax=0.14、Kd=5E7。
図12Cおよび
図12Dは、24℃での親モンモリロナイトに対するAPCM(
図12C)およびAPSM(
図12D)上の2,4,6-TCPのラングミュアプロットを示し、APCM-12N:Qmax=0.23、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.25、Kd=8E5、APSM-12N:Qmax=0.17、Kd=7E5、APSM-18N:Qmax=0.22、Kd=1E6である。
図12Eは、親CMに対するAPCMおよびLAM上のリンデンのラングミュアプロットを示し、APCM-12N:Qmax=0.5、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.53、Kd=1E5、LAM:Qmax=0.12、Kd=2E5である。
【0134】
図12Aおよび
図12Bは、親モンモリロナイト上のPCPの等温線プロットがフロイントリッヒ傾向を有したことを示し、PCP毒素の粘土表面への分配活性を指し示す。LAM、APCMおよびAPSMのr
2値(>0.8)はラングミュアモデルに適合し、曲線形状は、PCP結合がこれらの粘土表面に対して緊密であり、容易に解離されないことを指し示す。APCMが最も高いQmaxをもたらし、APSMのQmax値はLAMのものと同様であった。
【0135】
同様に、
図11のBaPの等温吸着は、酸処理およびレシチン改質を含む開発された腸収着剤すべてがBaPの結合容量を増加させることができたことを示す。特に、APMは親CMより顕著に高いQmaxおよびKdを示し、これはAPMがBaPの吸着のための効率的な収着剤として機能する可能性があることを示す。
図11は、親CMに対するAPMおよびLAM上のダイアジノンのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.04、Kd=7E4、APCM-12N:Qmax=0.16、Kd=9E5、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=2E6、LAM:Qmax=0.05、Kd=1E5。
【0136】
リンデン、ダイアジノン、アルジカルブおよびリニュロンは、有機塩素、有機リン酸塩、カルバメートおよびフェニル尿素駆除剤などの主要な駆除剤クラスの代表的な化学物質である。
図13A、
図13B、
図13Cおよび
図13Dは、親CMに対するAPMおよびLAM上のリンデン(
図13A)、ダイアジノン(
図13B)、アルジカルブ(
図13C)およびリニュロン(
図13D)のラングミュアプロットを示す。(
図13A)APCM-12N:Qmax=0.5、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.53、Kd=1E5、LAM:Qmax=0.12、Kd=2E5。(
図13B)CM:Qmax=0.19、Kd=4E6、APCM-12N:Qmax=0.47、Kd=2E6、APCM-18N:Qmax=0.5、Kd=4E5、LAM:Qmax=0.22、Kd=1E6。(
図13C)APCM-12N:Qmax=0.4、Kd=4E6、APCM-18N:Qmax=0.48、Kd=3E6、LAM:Qmax=0.47、Kd=2E7。(
図13D)CM:Qmax=0.09、Kd=5E4、APCM-12N:Qmax=0.15、Kd=5E4、APCM-18N:Qmax=0.22、Kd=4E4。
図13A、
図13B、
図13Cおよび
図13Dの等温線の結果は、AMPに対する顕著に増加した結合(QmaxおよびKd)を示唆する。レシチン改質モンモリロナイトは、親モンモリロナイトに対して増加したQmaxおよびKdで、リンデンおよびアルジカルブに緊密に結合することが示された。
【0137】
図13E~Fは、24℃およびpH6.5での親モンモリロナイトに対するAPCM(
図13E)およびAPSM(
図13F)上のグリホサートのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.32、Kd=2E5、APCM-12N:Qmax=0.42、Kd=2E5、APCM-18N:Qmax=0.58、Kd=1E5、SM:Qmax=0.3、Kd=3E5、APSM-12N:Qmax=0.52、Kd=2E5、APSM-18N:Qmax=0.57、Kd=2E5。
【0138】
図13Gは、37℃(HT)およびpH6.5での親SMに対するAPSM上のグリホサートのラングミュアプロットを示す。SM HT:Qmax=0.41、Kd=1E5、APSM-12N HT:Qmax=0.53、Kd=1E5、APSM-18N HT:Qmax=0.6、Kd=2E5。
【0139】
図13Hは、24℃での親CMに対するAPCM上のトリフルラリンのラングミュアプロットを示す。CM:Qmax=0.06、Kd=7E4、APCM-12N:Qmax=0.09、Kd=7E4、APCM-18N:Qmax=0.15、Kd=3E4。
【0140】
図14A、
図14B、および
図14Cは、ヒドラ毒性と、PCP(
図14A)、MAPを含むBaP(
図14B)およびアルジカルブ(
図14C)に対する0.1%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPMによる保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために各図に含まれる。
図14A、
図14B(BaPのMAPを含む)および
図14Cにおけるインビボでのヒドラアッセイにより、0.1%の低い包含レベルのAPMの保護が確証され、包含は安全であり、ヒドラにおいて有害作用は示されなかった。ヒドラ毒性と、0.1%の包含レベルの親モンモリロナイトならびにAPCM(
図14D)およびAPSM(
図14E)によるグリホサートに対する保護。
図14Fは、ヒドラ毒性と、0.2%の包含レベルの親モンモリロナイトおよびAPMによるトリフルラリンに対する保護を示す。ヒドラ媒体および毒素対照が比較のために含まれる。
【0141】
抗細菌活性。細菌は、浸水した地域および汚染現場で大きな問題であり、胃腸管疾患をもたらす。スーパーファンド化学物質のための収着剤の他に、本発明者らは、E.coliなどの細菌に緊密に結合して不活性化させる材料も開発している。0.01%で包含された親およびAPMに対するCFUパーセンテージの低減(*p≦0.05、**p≦0.01)を示す
図15は、細菌プレート計数の低減において親カルシウムおよびナトリウムモンモリロナイト粘土(CMおよびSM)、ならびにAPMの間の抗細菌活性を比較する研究の結果を示す。結果は、親モンモリロナイト粘土は溶液からの細菌コロニー形成単位(CFU/mL)の明白な低減を生じなかった一方で、APMは抗細菌活性を顕著に増加させ、CFUを55%(APCM)、40%および27%(APSM)低減させたことを示す。
【0142】
ZENおよび危険環境化学物質のための有効な収着剤に関する報告(活性炭以外)は存在しない。本発明者らは、APMによって大きな表面積および多孔性を有する活性炭の構造を模擬した。重要なことに、本研究に表される親モンモリロナイト粘土は、ヒトおよび動物の摂食に安全であることが示された唯一の粘土である。この腸収着剤療法の臨床的変換は、現地で実用的かつ費用対効果が高い環境化学物質のための収着剤となる。
【0143】
結果に基づき、酸処理は腸収着剤を改良し、水中のその膨張性を減少させ、さらにその表面積を増加させ、カチオンの浸出によって微量金属の含有量を減少させることが示された。12Nおよび18Nでの微量金属の差異は、より低い酸濃度(12N)が層間および八面体シートのカチオンを浸出させる一方、より高い酸濃度(18N)は反応性が低い四面体シートのカチオンを置き換え始めることを指し示す。結果は、酸粘土に対するFTIRの報告と一致する(Tyagi, B. et al., 2006)。米国食品医薬品局(FDA)によって設定される重金属としての鉛の規制レベルは10ppmである。親粘土の鉛レベルは、11.7ppm(相対値は1に調整された)と検出された。結果は、鉛濃度は、高温での24時間にわたる硫酸処理によっても、超音波処理および金属をキレート化するクエン酸による洗浄を含む他の処理によっても変化しなかったことを示す(データは示さず)。結果は、鉛は粘土構造内に非常に緊密に結合され、長期間の加熱、強酸および超音波処理などの極端な条件においても解離されないことを指し示す。これらの知見に基づき、胃酸は本明細書に記載される処理と比べて軽度であるおよそ2であるため、鉛は、粘土が食事に包含される場合は生物学的に利用可能であるべきではない。
【0144】
結果に指し示されるように、酸処理CM(カルシウムに富むモンモリロナイト)およびSM(ナトリウムに富むモンモリロナイト)粘土は、同様の結合曲線および容量によってアフラトキシンの吸着を維持でき、より重要なことに、ZENの結合を改善し(フロイントリッヒ傾向からラングミュアモデルへ)、これはZENの飽和性結合部位および緊密な結合を指し示す。高い結合容量(Qmax>0.2)は、有効なZEN腸収着剤として機能するAPMの能力を示唆し、これはおそらく親粘土より大きい表面積によるものである。緊密な結合は、高いエンタルピー(ΔH<-70kJ/mol)によっても反映され、これは相互作用エネルギーが弱い誘引のほぼ4倍であったことを指し示す。これは、高い結合容量およびエンタルピーを有する、ZENの非常に有効な結合剤として作用する収着剤の最初の発見である。収着剤はまた、清浄かつヒトおよび動物による摂食に安全でなければならない。アフラトキシンは主に粘土の層間に結合し、これは本発明者らによる以前の研究を支持する。一方で、より疎水性のZENの主な結合部位は、より親有機性の基底表面および端部部位であることが示された。この結合部位および機序の違いは、これらの粘土がアフラトキシンとZENの毒素混合物を同時に、限られた干渉を伴って吸着する能力に寄与する。インビボでのヒドラアッセイにより、これらのAPM粘土の安全性、ならびに個々のマイコトキシンおよび同様にアフラトキシンとZENの毒素混合物に対する効率がさらに確証される。
【0145】
危険環境化学物質を軽減させ、汚染現場付近で働き生活するヒトおよび地域を保護するために、本発明者らは代表的な環境化学物質を使用してこれらのAPMの結合効力を調査した。等温分析は、インビボでのヒドラアッセイとともに、APMが種々の溶媒、PAHおよび駆除剤からの優先化学物質のための安全かつ非常に有効な腸収着剤として機能できたことを示した。各クラスの代表的な化学物質は、PCP、BaP、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブおよびリニュロンを含む。これは、これらの環境化学物質に対して高い結合効力を有する収着剤材料(活性炭以外)の最初の報告である。病原菌は、多くの場合汚染現場において胃腸管疾患を引き起こし、公衆衛生上大いに懸念されるため、本発明者らは、E.coliなどの病原菌に対するAPMの吸着能力を調査した。0.01%の非常に低い収着剤の包含レベルで、親CMおよびSMは、溶液中の細菌コロニー形成単位に対して明白な効果を示さなかった。一方で、すべてのAPMは同じ包含レベルで細菌計数を顕著に減少させ、これは酸処理によって抗細菌活性が著しく増加することを指し示す。したがって、これらの粘土は、水および食事に送達および包含され、マイコトキシン、環境化学物質および同様に病原菌に対する動物およびヒトの曝露を低減させることができる。
【0146】
レシチンは、動物および植物組織に生じる天然の脂肪物質であり、通常大豆、卵、海洋源などに見出される。等温線の結果は、レシチン改質モンモリロナイト(LAM)が、PCP、BaP、リンデンおよびアルジカルブの結合を顕著に増加させることができたことを指し示した。この結果により、LAMが新規であり広範に作用し、かつ異なる化学的特性に基づいて、化学物質クラスの範囲内で潜在的に調節可能であることが指し示される。結合機序は、レシチンが両親媒性であること、およびアンモニア基からの永久正電荷によって負に荷電した粘土表面へのレシチンの挿入が可能になること、および疎水性の脂肪酸テールによって親有機性化合物の誘引が促進されることに起因すると思われる。レシチンは、ヒドラにおける刺胞細胞の放電およびシナプス信号の伝達に対する化学的感作性を増加させ、したがってエキソサイトーシスを誘発しうることが報告されており(Thurm U., et al., 2004)、このためレシチン改質粘土はヒドラアッセイには包含されなかった。
【0147】
これらの研究に基づき、APMは、マイコトキシン、環境化学物質および病原菌に対する曝露の軽減のための広範に作用する腸収着剤として機能する可能性がある。LAMは広範に作用し、かつ多様な化学的特性に基づいて環境化学物質に応じて調節可能である。これらの開発された収着剤は、災害時にカプセル剤、スナック、ビタミン、食品、調味料として動物およびヒトに送達され、風味付き飲料水に撹拌され、曝露を減少させることができる。これは、ヒトおよび動物の摂食に安全であり、かつ広域の化学物質への曝露を有効に減少させる新規の収着剤療法の開発に関する最初の報告である。
【0148】
種々の例示的な実施形態が示され記載されたが、本開示の精神および教示から逸脱することなく、当業者によってその修正がなされてもよい。本明細書に記載される実施形態はほんの例示であり、限定的であることを意図しない。本明細書に開示される主題の多くの変形および修正が可能であり、本開示の範囲内である。数値範囲または限界が明示的に述べられる場合、そのような明示的な範囲または限界は、明示的に述べられる範囲または限界に入る同様の規模の反復的範囲または限界を含む(例えば、約1~約10は2、3、4などを含む、0.10超は0.11、0.12、0.13などを含む)と理解されるべきである。例えば、下限、RLおよび上限、RUを伴う数値範囲が開示される場合は常に、その範囲に入る任意の数が詳細に開示される。特に、範囲に入る以下の数が詳細に開示される:R=RL+k*(RU-RL)、ここでkは、1パーセントずつ増加する1パーセント~100パーセントにわたる変数である、すなわちkは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセントまたは100パーセントである。さらに、上記で定義されたように2つのR数によって定義される任意の数値範囲もまた詳細に開示される。
【0149】
請求項の任意の要素に関する用語「してもよい」の使用は、対象の要素が必要とされる、または代替的に必要とされないことを意味することが意図される。いずれの代替案も請求項の範囲内に入ることが意図される。含む(comprises)、含む(includes)、有するなどのより広義の用語の使用は、からなる、から本質的になる、から実質的に構成されるなどのより狭義の用語を支援すると理解されるべきである。
【0150】
したがって、保護の範囲は、上記に記載された説明によって限定されず、以下に続く特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含む。それぞれの請求項は、本開示の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲はさらなる説明であり、本開示の実施形態に対する追加である。参考文献、特に発行日が本出願の優先日後でありうる任意の参考文献の考察は、それが本開示の先行技術であることを認めるものではない。本明細書で引用されたすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、それらが本明細書に記載されるものを補足する例示的な、手順の、または他の詳細を提示する程度まで、これにより参照により組み込まれる。
【0151】
追加の説明。本開示は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明白な、異なるが等価の態様で修正および実施されてもよいため、上記で開示された詳細な実施形態はほんの例示である。さらに、以下の特許請求の範囲に記載されるものを除き、本明細書に示される構造または設計の詳細に対する制限は意図されない。したがって、上記に開示された特定の例示的な実施形態は変更および修正されてもよく、すべてのそのような変形は、本開示の範囲および精神の範囲内とみなされることが明白である。実施形態の特色を組み合わせる、統合するおよび/または省略することによって生じる代替の実施形態もまた。本開示の範囲内である。組成物および方法は、種々の成分または工程を「有する」「含む(comprising)」、「含有する」または「含む(including)」というより広義の用語で記載されるが、組成物および方法はまた、種々の成分または工程「から本質的になる」または「からなる」場合もある。請求項の任意の要素に関する用語「してもよい」の使用は、要素が必要とされる、または代替的に要素が必要とされないことを意味し、いずれの代替案も請求項の範囲内に入る。
【0152】
上記に開示される数および範囲は、ある程度の量で変動してもよい。下限および上限を伴う数値範囲が開示される場合は常に、その範囲に入る任意の数および任意の含まれる範囲が詳細に開示される。特に、本明細書に開示されるあらゆる値の範囲(「約aから約b」または同等に「およそaからb」または同等に「およそa~b」の形態の)は、値のより広範な範囲内に含まれるあらゆる数および範囲を記載すると理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって別段明示的かつ明確に定義されない限り、それらの率直な通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」または「an」は、それが導入する要素のうちの1つまたは1つより多くを意味するように本明細書で定義される。本明細書および1つもしくは複数の特許または他の文献において、単語または用語の使用に矛盾が生じる場合、本明細書と整合する定義が採用されるべきである。
【0153】
本明細書に開示される実施形態は以下を含む:
処理された収着剤を含む腸収着剤であって、処理された収着剤が、酸および/またはレシチン処理された親収着剤を含み、処理された収着剤が、1種または複数の毒素のバイオアベイラビリティおよびそれらに対する生体の曝露が減少するように、そこに導入されたときに生体の胃腸管から1種または複数の毒素を吸着するために動作可能である、腸収着剤。
【0154】
腸収着剤を生成する方法であって、方法が、親粘土を加工して加工粘土を生成することを含み、加工することが、約6N、12Nもしくは18N以上の、または約6N~約18Nもしくは約6N~約12Nの範囲の濃度(例えば、当量濃度または規定度(N))を有する試薬グレードの硫酸溶液への曝露によって酸処理し、酸処理粘土を生成すること、および/または100%のカチオン交換容量でのレシチンによる修飾によってレシチン処理し、レシチン処理粘土を生成することを含む、方法。
【0155】
生体の1種または複数の毒素への曝露を低減させる方法であって、生体に本明細書に開示される腸収着剤を導入することを含む、方法。
【0156】
上記に列挙された実施形態のそれぞれは、以下の追加の要素のうちの1つまたは複数を有してもよい:要素1:1種または複数の毒素は、マイコトキシン、環境化学物質、除草剤および病原菌から選択される。要素2:1種または複数の毒素は、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される。要素3:1種または複数の毒素は、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)またはこれらの組合せから選択される。要素4:親収着剤は、天然または合成親有機性収着剤である。要素5:親収着剤はモンモリロナイト粘土を含み、処理された収着剤は、処理されたモンモリロナイト粘土を含む。要素6:親粘土は、ナトリウムまたはカルシウムモンモリロナイト粘土を含む。要素7:親粘土は、試薬グレードの硫酸への曝露によって酸処理された。要素8:親粘土は、約6N、12Nもしくは18N以上の、または約6N~約18Nもしくは約6N~約12Nの範囲の濃度(例えば、当量濃度または規定度(N))を有する試薬グレードの硫酸への曝露によって酸処理された。要素9:親粘土は、100%のカチオン交換容量でのレシチンによる親粘土の修飾によってさらに処理された。要素10:処理された粘土は、炭素材料のもの以上である最大結合容量(Qmax)および/または分布係数(Kd)によって立証されるように、1種または複数の毒素に緊密に結合する。要素11:吸着は、1種または複数の毒素の化学吸着を含む。要素12:1種または複数の毒素は、アフラトキシン(AfB1)およびゼアラレノン(ZEN)を含み、処理された収着剤は、処理された収着剤がAfB1およびZENを非競合的に吸着するように動作可能であるように、複数の種類の結合部位および/または結合機序を含む。要素13:複数の種類の結合部位は、主にAfB1を吸着する粘土層間における結合部位、および主にZENを吸着する、処理された収着剤の親有機性基底表面および端部部位の結合部位を含む。要素14:腸収着剤は、減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)によって立証されるように、大腸菌(E.coli)を吸着するためにさらに動作可能である。要素15:腸収着剤は、親モンモリロナイト粘土に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)をもたらすように動作可能である。要素16:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土のZENに対するQmaxより大きなZENに対する最大結合容量(Qmax)を示す。要素17:処理されたモンモリロナイト粘土のQmaxは、キログラムあたり少なくとも約0.2モル(mol/kg)である。要素18:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土のZENに対する|ΔHads|より大きなZENに対する絶対吸着エンタルピー(|ΔHads|)(ファントホッフの式によって決定して)を示す。要素19:処理されたモンモリロナイト粘土のZENに対する|ΔHads|は、モルあたり約20、30、40、50、60または70キロジュール(kJ/mol)以上である。要素20:処理された収着剤は、レシチン処理モンモリロナイト粘土であり、1種または複数の毒素は、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、アルジカルブまたはこれらの組合せを含む。要素21:レシチン処理モンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土に対して増加した結合(例えば、増加した最大結合容量(Qmax)によって立証されるように)を示す。要素22:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土に対して減少した水中の線膨張性係数(COLE)を有する。要素23:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土に対して増加した全表面積および/または多孔性を有する。要素24:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土に対して少なくとも40%増加する全表面積を有する。要素25:処理されたモンモリロナイト粘土は、親モンモリロナイト粘土に対して低減した量の微量金属を含む。要素26:微量金属は、アルミニウム、カルシウム、ナトリウムを含む。要素27:処理されたモンモリロナイト粘土は、腸収着剤を生体の胃腸管に導入する際に、鉛が解離しないように鉛の緊密な結合を示す。要素28:処理されたモンモリロナイト粘土は、活性炭のものを模擬する構造を有する。要素29:酸処理することは、硫酸溶液中で撹拌することを含み、レシチン処理することは、カチオンおよび酸を含むレシチン溶液中で撹拌することを含む。要素30:撹拌することは、少なくとも8時間、撹拌温度において撹拌することを含む。要素31:酸処理することは、室温を超える撹拌温度(例えば、約60℃)を含み、レシチン処理することは、およそ室温と同等の撹拌温度を含む。要素32:酸処理することは、冷却すること(例えば、室温まで)、酸性溶液から除去すること(例えば、遠心分離によって)、および水によって洗浄すること(例えば、蒸留水によって)をさらに含み、レシチン処理することは、レシチン溶液から除去すること(例えば、遠心分離によって)および水によって洗浄すること(例えば、蒸留水によって)、または両方をさらに含む。要素33:乾燥することおよび活性化粘土をサイズ調整することをさらに含む。要素34:サイズ調整することは、粉砕およびふるい分けし、均一および/または所望のサイズを有する活性化粘土を提供することを含む。要素35:所望のサイズは、約125μm未満またはそれと同等である。要素36:乾燥することは、オーブン中で乾燥温度において乾燥時間にわたって乾燥することを含む。要素37:乾燥温度は約110℃以上であり、乾燥時間は少なくとも8時間(例えば、一晩)である、またはこれらの組合せである。要素38:酸処理する際、層間のカチオンが酸からの水素プロトンと交換され、続いて酸処理された活性化粘土が、高い反応性および触媒活性を有する非晶質シリカ構造になるように、粘土構造中の八面体および四面体シートの一部が解離する。要素39:レシチン処理することは、酸処理することに続いてまたはそれと同時に実施される。要素40:レシチン処理することは、低pH(例えば、約1、2もしくは3未満またはそれと同等のpH)で実施される。要素41:レシチン処理することは、レシチン処理粘土に両親媒性表面を生成する。要素42:方法は、それらの化学的特性に基づいて、種々の毒素の吸着に有効な広範に作用する腸収着剤を提供するように調節可能である。要素43:疎水性(オクタノール-水分配係数の対数を指すlogP)、吸着の容量、親和性、エンタルピー(ΔHads)、1種または複数の毒素および/または利用可能な親粘土の電荷、サイズ、容量および表面積の差のうちの1つまたは複数に基づいて親粘土の処理を調節すること、利用可能な親粘土から親粘土を選択すること、またはこれらの組合せをさらに含む。要素44:腸収着剤は、本明細書に記載される任意の腸収着剤である。要素45:導入することは、生体の胃腸管に導入することを含む。要素46:生体の胃腸管に導入することは、水中に導入すること、料理用粉へと製粉すること、飼料、食料品および/もしくは丸剤に添加すること、またはこれらの組合せを含む。要素47:導入することは、約0.0005%~約0.01%の範囲、あるいは約0.0005%、0.005%、0.01%、0.05%もしくは0.1%未満またはそれと同等の収着剤の包含レベルで導入することを含む。要素48:本明細書に開示される方法によって腸収着剤を生成することをさらに含む。
【0157】
追加の実施形態:
本発明の一実施形態は、環境または生物の胃腸管からの1種または複数の毒素の吸着のための食用腸収着剤(enterosorbent)組成物を詳述する。食用腸収着剤組成物は、平均粒径が150um未満であるフィロケイ酸塩型鉱物および食用腸収着剤組成物を形成するレシチン組成物を含む。食用腸収着剤組成物は、マイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができる(
図11~13)。フィロケイ酸塩型鉱物単独よりも高い食用腸収着物質(entrosorbant)組成物の最大結合容量(Qmax)および/または分配係数(Kd)を決定することにより、増加した吸着を可視化することができる。細菌の毒性の減少を可視化する場合、食用腸収着剤を使用して、病原菌のコロニー形成単位(CFU)の数をフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少させることができる。
【0158】
本発明の腸収着剤の第2の実施形態は、合成フィロケイ酸塩型鉱物、天然フィロケイ酸塩型鉱物、モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、またはこれらの組合せから選択されるフィロケイ酸塩型鉱物を利用する。
【0159】
本発明の腸収着剤の特性は、強酸を利用することによってさらに増強されることが示された(
図4~22)。さらに詳細には、フィロケイ酸塩型鉱物が強酸で処理されたことにより、腸収着剤組成物の増加した表面積、増加した毒素結合部位の数および種類を有する、強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物が形成されている(
図4)。増加した表面積および増加した結合部位は、1種または複数の毒素の吸着を増加させることができる。さらに、増加は、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として可視化される。
【0160】
理論に束縛されることを望むものではないが、フィロケイ酸塩鉱物の表面積および/または結合部位を増加させることができる酸は、酸処理された腸収着剤の毒素に結合する能力も増加させる(
図4~22)。本発明の腸収着剤は、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和の硫酸カルシウム、飽和硫酸カルシウム、過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオン、カルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液、またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択される強酸に曝露された、強酸処理されたフィロケイ酸塩型鉱物を使用した。
【0161】
本発明の腸収着剤組成物は、最小限の強酸処理によって毒素に結合することができた。モンモリロナイト粘土などの天然フィロケイ酸塩型鉱物は、フィロケイ酸塩型鉱物単独と比べてより多くのZENに結合することができた。強酸を使用して、レシチンと混合されたフィロケイ酸塩型鉱物に対する毒素の親和性を増加させることは、当業者に明白でない。好ましい食用腸収着剤は、30重量%~90重量%の範囲のモンモリロナイト、1重量%~75重量%の範囲のレシチン、および10重量%~50重量%の範囲の酸およびこれらの組合せを含む。
【0162】
食用腸収着剤組成物の第3の実施形態は、有機塩素誘導体化合物、ベンゾピレン誘導体化合物、多環式芳香族炭化水素誘導体化合物、有機リン酸塩化合物、ジニトロアニリン誘導体化合物、コリンエステラーゼ阻害剤誘導体化合物、フェニル尿素誘導体化合物、マイコトキシン、細菌、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せから選択される、結合される1種または複数の毒素を選択する。
【0163】
本発明の第4の実施形態は、食用腸収着剤組成物を生成するための方法を含む。方法は以下の工程を含む:(a)フィロケイ酸塩型鉱物とレシチンを組み合わせる工程、(b)ある温度においてある期間にわたって混合する工程、および(c)食用腸収着剤組成物を形成する工程。このようにして生成される食用腸収着物質組成物は、最大100%のカチオン交換容量が可能である。さらに、食用腸収着剤組成物は、マイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができる。当業者であれば、フィロケイ酸塩型鉱物単独より大きい腸収着剤組成物の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)、ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として増加した吸着を可視化することができる。
【0164】
本方法に有用なフィロケイ酸塩型鉱物は、合成フィロケイ酸塩型鉱物、またはモンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然フィロケイ酸塩型鉱物、またはこれらの組合せを含む群から選択されてもよい。好ましいモンモリロナイト粘土は、粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラダイオキシン、全ペンタクロロジベンゾダイオキシン、および全ヘキサクロロジベンゾダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であり、ここで全テトラクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルは0.024pg/Lより大きく、全ペンタクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルは0.025pg/Lより大きく、全ヘキサクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルは0.039pg/Lより大きい。
【0165】
本発明の第5の実施形態は、フィロケイ酸塩型鉱物を強酸によって酸処理期間にわたって前処理し、腸収着剤組成物の増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物を形成することを含む。強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物を、酸乾燥温度において酸乾燥期間にわたって「酸乾燥する」として公知のプロセスを使用して吸着を増加させてもよく、ここで酸処理期間、酸乾燥温度および酸乾燥期間は、強酸処理されたフィロケイ酸塩鉱物が粉砕およびふるい分け可能な粉末稠度を有することを可能とするのに十分である。乾燥された強酸処理されたフィロケイ酸塩を使用して、上記に記載された方法のフィロケイ酸塩型鉱物を置き換え、1種または複数の毒素の吸着をさらに増加させてもよく、ここで観察される腸収着は、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として可視化される。
【0166】
好ましい実施形態では、強酸は、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和、飽和硫酸カルシウム、もしくは過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオンまたはこれらの組合せ、および/またはカルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択されてもよい。好ましくは、酸処理期間は1分~8時間の範囲であり、酸乾燥温度は15℃~120℃の範囲であり、酸乾燥期間は0分~8時間の範囲である。
【0167】
食用腸収着剤組成物は、腸収着剤乾燥温度において腸収着剤乾燥期間にわたって乾燥され、その後乾燥された食用腸収着剤組成物は、150μm未満の均一な粒径を有するようにサイズ調整される。一般的に、腸収着剤乾燥温度および腸収着剤乾燥期間は、食用腸収着剤組成物が粉砕、ふるい分けまたは空気分級可能な粉末稠度を有することを可能とするのに十分である。好ましくは、腸収着剤乾燥期間は1秒~8時間の範囲であり、腸収着剤乾燥温度は15℃~120℃の範囲である。
【0168】
第6(sixty)の実施形態は、毒素曝露のリスクにある生体の毒素曝露を低減する方法である。方法は、(工程A)食用腸収着剤組成物を生体に導入する、または食用腸収着剤を、生体が毒素に曝露される環境に導入する工程、またはこれらの組合せ、(工程B)ある期間待機し、毒素曝露が低減されるまで工程(a)を繰り返す工程を含む。食用腸収着剤は、最大100%のカチオン交換容量が可能なフィロケイ酸塩型鉱物およびレシチンを含み、ここで食用腸収着剤組成物は、マイコトキシン、環境化学物質、病原菌、駆除剤、除草剤またはこれらの組合せから選択される1種または複数の毒素の吸着を増加させることができ、増加した吸着は、フィロケイ酸塩型鉱物単独より大きい腸収着剤組成物の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)、ならびに/またはフィロケイ酸塩型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として決定される。
【0169】
好ましいフィロケイ酸塩型鉱物は、(a)合成フィロケイ酸塩型鉱物、(b)モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土またはカルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然フィロケイ酸塩型鉱物、(c)増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸前処理されたフィロケイ酸塩鉱物、(d)粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラクロロジベンゾダイオキシン、全ペンタクロロジベンゾダイオキシン、および全ヘキサクロロジベンゾダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であり、全テトラクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサクロロジベンゾダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土、またはこれらの組合せを含む群から選択される。
【0170】
第7の実施形態は、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、リニュロン、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せを含む毒素の群からの毒素曝露を低減させる食用腸収着剤組成物を含む。
【0171】
第8の実施形態は、食用腸収着剤組成物と、食用腸収着剤組成物を生体の胃腸管に導入するための手段を組み合わせることを含み、食用腸収着剤組成物は、水、粉、飼料、食料品、丸剤またはこれらの組合せから選択される群のうちの1種または複数と組み合わされる。食用腸収着剤組成物の好ましい包含レベルは、グラムあたりの1日食品摂取量のパーセンテージとして約0.0005%~約0.10%の範囲である。
【0172】
本発明の好ましい実施形態が示され記載されたが、本開示の教示から逸脱することなく、当業者によってその修正がなされてもよい。本明細書に記載された実施形態はほんの例示であり、限定的であることを意図しない。本明細書に開示される本発明の多くの変形および修正が可能であり、本発明の範囲内である。
【0173】
上記の開示を完全に理解すると、当業者には多数の他の修正、均等物および代替が明らかである。以下の特許請求の範囲は、適切な場合、そのような修正、均等物および代替すべてを含むと解釈されることが意図される。したがって、保護の範囲は、上記に記載された説明によって限定されず、以下に続く特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含む。それぞれの請求項は、本発明の実施形態として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲はさらなる説明であり、本発明の詳細な説明に対する追加である。本明細書で引用されたすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、これにより参照により組み込まれる。別段明示的に述べられない限り、方法クレームにおける工程は任意の順序で、かつ材料および加工条件の任意の好適な組合せを用いて実施されてもよい。
モンモリロナイト型鉱物が、合成モンモリロナイト型鉱物、天然モンモリロナイト型鉱物、モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土、またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の食用腸収着剤組成物。
モンモリロナイト粘土が、粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシンおよび全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土を含み、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい、請求項2に記載の食用腸収着剤組成物。
強酸をさらに含み、モンモリロナイト型鉱物が強酸で処理されたことにより、1種または複数の毒素の吸着を増加させることができる腸収着剤組成物の増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸処理されたモンモリロナイト鉱物が形成されており、1種または複数の毒素の吸着の増加が、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはモンモリロナイト型鉱物単独に比して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として観察される、請求項2に記載の食用腸収着剤組成物。
強酸処理されたモンモリロナイト型鉱物が、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和の硫酸カルシウム、飽和硫酸カルシウム、過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオン、カルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液、またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択される強酸に曝露された、請求項4に記載の食用腸収着剤組成物。
組成物が30重量%~90重量%の範囲のモンモリロナイト、1重量%~75重量%の範囲のレシチン、および10重量%~50重量%の範囲の酸を含む、請求項5に記載の食用腸収着剤組成物。
1種または複数の毒素が、有機塩素誘導体化合物、ベンゾピレン誘導体化合物、多環式芳香族炭化水素誘導体化合物、有機リン酸塩化合物、ジニトロアニリン誘導体化合物、コリンエステラーゼ阻害剤誘導体化合物、フェニル尿素誘導体化合物、マイコトキシン、細菌、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せから選択される、請求項5に記載の食用腸収着剤組成物。
モンモリロナイト型鉱物を、合成モンモリロナイト型鉱物、またはモンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土、カルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然モンモリロナイト型鉱物、またはこれらの組合せを含む群から選択されるように選ぶ工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
モンモリロナイト粘土を、粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシン、および全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であるように選ぶ工程をさらに含み、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい、請求項9に記載の方法。
(i)モンモリロナイト型鉱物を強酸によって酸処理期間にわたって前処理し、腸収着剤組成物の増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸処理されたモンモリロナイト鉱物を形成する工程、
(ii)強酸処理されたモンモリロナイト鉱物を、酸乾燥温度において酸乾燥期間にわたって酸乾燥する工程、および
(iii)工程(a)のモンモリロナイト型鉱物を強酸処理されたモンモリロナイト鉱物によって置き換える工程
の追加の工程をさらに含み、酸処理期間、酸乾燥温度および酸乾燥期間が、強酸処理されたモンモリロナイト鉱物が、粉砕およびふるい分け可能な粉末稠度を有することを可能とするのに十分であり、1種または複数の毒素の吸着の増加が、炭素材料のもの以上の最大結合容量(Qmax)および/もしくは分配係数(Kd)ならびに/またはモンモリロナイト型鉱物単独に対して減少した数の病原菌のコロニー形成単位(CFU)として観察される、請求項8に記載の方法。
強酸を、希硫酸、バッテリー酸、鉛室硫酸、塔酸、濃硫酸、ほぼ飽和、飽和硫酸カルシウム、または過飽和硫酸カルシウム、硫酸アニオンもしくはその変形および/またはカルシウムを含有する錯イオン、硫酸塩、難溶性のIIA族錯体を含む強酸性溶液またはこれらの組合せを含む強酸の群から選択する追加の工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
モンモリロナイト型鉱物を、(a)合成モンモリロナイト型鉱物、(b)モンモリロナイト粘土、ナトリウムモンモリロナイト粘土またはカルシウムモンモリロナイト粘土からさらに選択される天然モンモリロナイト型鉱物、(c)増加した数および種類の毒素結合部位を有する強酸前処理されたモンモリロナイト型鉱物、(d)粒径が80ミクロン未満であり、かつ検出可能なレベルの全テトラ-ダイオキシン、全ペンタ-ダイオキシン、および全ヘキサ-ダイオキシンを含有しない水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土であり、全テトラ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.024pg/Lより大きく、全ペンタ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.025pg/Lより大きく、全ヘキサ-ダイオキシンの検出可能なレベルが0.039pg/Lより大きい水和ナトリウムカルシウムアルミノケイ酸塩粘土、またはこれらの組合せを含む群から選択されるように選ぶ工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
曝露リスクが低減されるべき1種または複数の毒素を、ペンタクロロフェノール(PCP)、ベンゾ[a]ピレン(BaP)、リンデン、ダイアジノン、アルジカルブ、リニュロン、アフラトキシン(AfB1)、ゼアラレノン(ZEN)、大腸菌(E.coli)、工業溶媒、多環式芳香族炭化水素(PAH)、1,2,3-トリクロロプロパン(TCP)、フェノール、ベンゼン、トルエン、ピレン、BFF、ナフタレン、2,4D、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNP)、リニュロン、アトラジン、グリホサート、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、パラコート、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)、ビスフェノールA(BPA)、ビスフェノールS(BPS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、ディルドリン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PCB77、PCB126、PCB153、PCB157、PCB154、PCB155、トリフルラリンまたはこれらの組合せを含む毒素の群から選択する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
食用腸収着剤組成物と、食用腸収着剤組成物を生体の胃腸管に導入するための手段を組み合わせる工程をさらに含み、食用腸収着剤組成物が、水、粉、飼料、食料品、丸剤またはこれらの組合せから選択される群のうちの1種または複数と組み合わされる、請求項16に記載の方法。
グラムあたりの1日食品摂取量のパーセンテージとして約0.0005%~約0.10%の範囲の包含レベルの食用腸収着剤組成物を導入する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。