(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161449
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ヤヌスキナーゼ阻害剤の結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 519/00 20060101AFI20241112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C07D519/00 311
C07D519/00 CSP
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/519
A61P37/06
A61P37/08
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/14
A61P17/06
A61P17/00
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024134769
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2022207814の分割
【原出願日】2017-12-20
(31)【優先権主張番号】62/437,262
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】下山 典昭
(72)【発明者】
【氏名】大倉 隆平
(72)【発明者】
【氏名】野路 悟
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形並びにその組成物、それらの調製方法、それらの使用方法及び定量方法に関する。
【解決手段】本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形並びにその組成物、それらの調製方法、それらの使用方法及び定量方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ(°)において約11.8に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、β晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの結晶形。
【請求項2】
2θ(°)において約10.5、約11.8、約19.3及び約22.0から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
2θ(°)において約7.8、約10.5、約11.8、約13.4、約13.9、約17.8、約19.3、約22.0、約23.6及び約28.0から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶形。
【請求項4】
約186℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを有する、請求項1から3のいずれかに記載の結晶形。
【請求項5】
少なくとも約50%の純度を有する、請求項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【請求項6】
少なくとも約75%の純度を有する、請求項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【請求項7】
少なくとも約85%の純度を有する、請求項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【請求項8】
少なくとも約90%の純度を有する、請求項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【請求項9】
少なくとも約95%の純度を有する、請求項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【請求項10】
2θ(°)において約16.5に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、γ晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの結晶形。
【請求項11】
2θ(°)において約16.5、約17.7、約21.4、約21.8及び約23.1から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項10に記載の結晶形。
【請求項12】
2θ(°)において約7.7、約10.6、約13.3、約13.9、約15.5、約16.5、約17.7、約17.9、約19.0、約21.4、約21.8、約23.1、約23.7及び約28.1から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、請求項10に記載の結晶形。
【請求項13】
約196℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを有する、請求項10から12のいずれかに記載の結晶形。
【請求項14】
少なくとも約50%の純度を有する、請求項10から13のいずれかに記載の結晶形。
【請求項15】
少なくとも約75%の純度を有する、請求項10から13のいずれかに記載の結晶形。
【請求項16】
少なくとも約85%の純度を有する、請求項10から13のいずれかに記載の結晶形。
【請求項17】
少なくとも約90%の純度を有する、請求項10から13のいずれかに記載の結晶形。
【請求項18】
少なくとも約95%の純度を有する、請求項10から13のいずれかに記載の結晶形。
【請求項19】
α晶及びβ晶を含む、結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの組成物。
【請求項20】
本質的にα晶及びβ晶からなる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
β晶がα晶に対して約1から約50%w/wの量で存在する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
β晶がα晶に対して約1から約20%w/wの量で存在する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項23】
β晶がα晶に対して約1から約10%w/wの量で存在する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項24】
β晶がα晶に対して約1から約5%w/wの量で存在する、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項25】
さらにγ晶を含む、請求項19から24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
β晶及びγ晶を含む、結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの組成物。
【請求項27】
本質的にβ晶及びγ晶からなる、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
γ晶がβ晶に対して約1から約50%w/wの量で存在する、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
γ晶がβ晶に対して約1から約20%w/wの量で存在する、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項30】
γ晶がβ晶に対して約1から約10%w/wの量で存在する、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項31】
γ晶がβ晶に対して約1から約5%w/wの量で存在する、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項32】
さらにα晶を含む、請求項26から31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
請求項1から32のいずれかに記載の結晶形又は組成物及び製薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項34】
さらに第二治療剤を含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形並びにその組成物、それらの調製方法、それらの使用方法及び定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤は、現在のところ、自己免疫疾患、炎症性疾患及び癌などの種々の疾患の治療において関心をもたれている。今日まで、米国食品医薬品局(FDA)により2つのJAK阻害剤が承認されている。ルキソリチニブは原発性骨髄線維症及び真性赤血球増加症(PV)の治療について承認されており、トファシチニブは関節リウマチの治療について承認されている。他のJAK阻害剤は文献中にみられる。化合物3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)(構造は以下参照)は、米国特許公開公報第2011/0136778号及び国際出願第PCT/JP2016/070046号に報告されたスピロ環JAK阻害剤の一例である。
【化1】
【0003】
例えば化合物Aのような薬物化合物は、典型的に、他の製薬上許容可能な成分と組み合わせて、患者への投与に適した組成物に形成される。固形製剤は、薬物化合物が、熱及び湿気に対する安定性、取り扱いやすさ、及び固形剤形の調製を促進する他の特性などの、実効性のある固体特性を有することが要求されることが多い。そのため既存の薬物分子の固体形態について継続したニーズがある。本明細書に記載の化合物Aの結晶形はこの目的に向けられている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、とりわけ、3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形β及びγに向けられる。
本発明はさらに、β晶若しくはγ晶又はその両方とともにα晶を含む組成物に向けられる。
本発明はさらに、本発明の1種以上の結晶形又は組成物を含む医薬組成物に向けられる。
本発明はさらに、本発明の結晶形を調製する方法に向けられる。
本発明はさらに、本発明の結晶形を定量する方法に向けられる。
本発明はさらに、本発明の結晶形をヤヌスキナーゼと接触させることを含む、ヤヌスキナーゼの阻害方法に向けられる。
本発明はさらに、治療的有効量の本発明の結晶形又は組成物を患者に投与することを含む、患者における疾患を治療又は予防する方法に向けられる。
本発明はさらに、予防又は治療に用いるための本発明の結晶形又は組成物に向けられる。
本発明はさらに、予防又は治療に用いるための医薬の製造における本発明の結晶形又は組成物の使用に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1はα晶と一致するXRPDパターンを示す。
【
図2】
図2はβ晶と一致するXRPDパターンを示す。
【
図3】
図3はγ晶と一致するXRPDパターンを示す。
【
図4】
図4はα晶と一致するDSCサーモグラムを示す。
【
図5】
図5はβ晶と一致するDSCサーモグラムを示す。
【
図6】
図6はγ晶と一致するDSCサーモグラムを示す。
【
図7】
図7はα晶と一致するTG-DTAデータを示す。
【
図8】
図8はβ晶と一致するTG-DTAデータを示す。
【
図9】
図9はγ晶と一致するTG-DTAデータを示す。
【
図10】
図10はα晶と一致する固体
13C NMRデータを示す。
【
図11】
図11はβ晶と一致する固体
13C NMRデータを示す。
【
図12】
図12はγ晶と一致する固体
13C NMRデータを示す。
【
図13】
図13は0、2、5及び10%のβ晶を含む化合物Aの標準サンプルから得られたXRPDパターンを重ね合わせたものを示す(実施例4を参照)。
【
図14】
図14は0、1、2、5及び10%のγ晶を含む化合物Aの標準サンプルから得られたXRPDパターンを重ね合わせたものを示す(実施例4を参照)。
【
図15】
図15は下から、実施例6において、使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのβ晶、化合物Aのα晶とβ晶の撹拌前の重量比1:1の混合物、及び撹拌後に得られた当該結晶のXRPDパターンを示す。
【
図16】
図16は下から、実施例7において、使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのγ晶、化合物Aのα晶とγ晶の撹拌前の重量比1:1の混合物、及び撹拌後に得られた当該結晶のXRPDパターンを示す。
【
図17】
図17は下から、実施例8において、使用した化合物Aのγ晶、使用した化合物Aのβ晶、化合物Aのβ晶とγ晶の撹拌前の重量比1:1の混合物、ホルムアミドから得られた結晶、N,N-ジメチルホルムアミドから得られた結晶、及びジメチルスルホキシドから得られた結晶のXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、とりわけ、ヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害剤であり、ヤヌスキナーゼ上方制御又は過剰発現と関連する種々の疾患の治療に有用である、3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの結晶形を提供する。いくつかの態様において、本発明の結晶形はJAK3を阻害する。いくつかの態様において、本発明の結晶形はJAK2を阻害する。
【0007】
本発明は、ある側面において以下のとおりである。
[項1] β晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの結晶形。
【0008】
[項2] 2θ(°)において約11.8に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項1に記載の結晶形。
【0009】
[項3] 2θ(°)において約10.5、約11.8、約19.3及び約22.0から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項1に記載の結晶形。
【0010】
[項4] 2θ(°)において約7.8、約10.5、約11.8、約13.4、約13.9、約17.8、約19.3、約22.0、約23.6及び約28.0から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項1に記載の結晶形。
【0011】
[項5] 約186℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを有する、項1から4のいずれかに記載の結晶形。
【0012】
[項6] 約165.1ppmにおける少なくとも1つのピークにより特徴づけられる固体13C NMRスペクトルを有する、項1から5のいずれかに記載の結晶形。
【0013】
[項7] 約16.5、約25.8、約26.5、約33.1、約34.8、約36.7、約38.8、約48.2、約53.4、約77.7、約79.5、約101.2、約102.6、約117.5、約120.6、約151.1、約154.3及び約165.1ppmから選択される少なくとも5つのピークにより特徴づけられる固体13C NMRスペクトルを有する、項1から5のいずれかに記載の結晶形。
【0014】
[項8] 単位格子パラメータ:
【表1】
で示される空間群P1を有する、項1から7のいずれかに記載の結晶形。
【0015】
[項9] 少なくとも約50%の純度を有する、項1から8のいずれかに記載の結晶形。
【0016】
[項10] 少なくとも約75%の純度を有する、項1から8のいずれかに記載の結晶形。
【0017】
[項11] 少なくとも約85%の純度を有する、項1から8のいずれかに記載の結晶形。
【0018】
[項12] 少なくとも約90%の純度を有する、項1から8のいずれかに記載の結晶形。
【0019】
[項13] 少なくとも約95%の純度を有する、項1から8のいずれかに記載の結晶形。
【0020】
[項14] γ晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの結晶形。
【0021】
[項15] 2θ(°)において約16.5に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項14に記載の結晶形。
【0022】
[項16] 2θ(°)において約16.5、約17.7、約21.4、約21.8及び約23.1から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項14に記載の結晶形。
【0023】
[項17] 2θ(°)において約7.7、約10.6、約13.3、約13.9、約15.5、約16.5、約17.7、約17.9、約19.0、約21.4、約21.8、約23.1、約23.7及び約28.1から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを有する、項14に記載の結晶形。
【0024】
[項18] 約196℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを有する、項14から17のいずれかに記載の結晶形。
【0025】
[項19] 約162.9ppmにおける少なくとも1つのピークにより特徴づけられる固体13C NMRスペクトルを有する、項14から18のいずれかに記載の結晶形。
【0026】
[項20] 約16.9、約26.5、約32.9、約36.4、約48.1、約53.7、約78.6、約102.6、約116.4、約117.9、約121.5、約151.8、約154.6及び約162.9ppmから選択される少なくとも5つのピークにより特徴づけられる固体13C NMRスペクトルを有する、項14から19のいずれかに記載の結晶形。
【0027】
[項21] 単位格子パラメータ:
【表2】
で示される空間群P2
1を有する、項14から20のいずれかに記載の結晶形。
【0028】
[項22] 少なくとも約50%の純度を有する、項14から21のいずれかに記載の結晶形。
【0029】
[項23] 少なくとも約75%の純度を有する、項14から21のいずれかに記載の結晶形。
【0030】
[項24] 少なくとも約85%の純度を有する、項14から21のいずれかに記載の結晶形。
【0031】
[項25] 少なくとも約90%の純度を有する、項14から21のいずれかに記載の結晶形。
【0032】
[項26] 少なくとも約95%の純度を有する、項14から21のいずれかに記載の結晶形。
【0033】
[項27] 3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルを溶媒から結晶化させることを含む、項1から13のいずれかに記載の結晶形を調製する方法。
【0034】
[項28] 溶媒が1-ブタノール及びアセトニトリルを含む、項27に記載の方法。
【0035】
[項29] 1-ブタノールとアセトニトリルの比が約1:3(v/v)である、項28に記載の方法。
【0036】
[項30] 項27から29のいずれかに記載の方法により調製される結晶形β。
【0037】
[項31] 3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶をγ晶に変換することを含む、項14から26のいずれかに記載の結晶形を調製する方法。
【0038】
[項32] 3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶をジメチルホルムアミド(DMF)中で撹拌することを含む、項31に記載の方法。
【0039】
[項33] 3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶をホルムアミド中で撹拌することを含む、項31に記載の方法。
【0040】
[項34] 項31から33のいずれかに記載の方法により調製される結晶形γ。
【0041】
[項35] α晶及びβ晶を含む、結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの組成物。
【0042】
[項36] 本質的にα晶及びβ晶からなる、項35に記載の組成物。
【0043】
[項37] β晶がα晶に対して約1から約50%w/wの量で存在する、項35又は36に記載の組成物。
【0044】
[項38] β晶がα晶に対して約1から約20%w/wの量で存在する、項35又は36に記載の組成物。
【0045】
[項39] β晶がα晶に対して約1から約10%w/wの量で存在する、項35又は36に記載の組成物。
【0046】
[項40] β晶がα晶に対して約1から約5%w/wの量で存在する、項35又は36に記載の組成物。
【0047】
[項41] さらにγ晶を含む、項35から40のいずれかに記載の組成物。
【0048】
[項42] β晶及びγ晶を含む、結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルの組成物。
【0049】
[項43] 本質的にβ晶及びγ晶からなる、項42に記載の組成物。
【0050】
[項44] γ晶がβ晶に対して約1から約50%w/wの量で存在する、項42又は43に記載の組成物。
【0051】
[項45] γ晶がβ晶に対して約1から約20%w/wの量で存在する、項42又は43に記載の組成物。
【0052】
[項46] γ晶がβ晶に対して約1から約10%w/wの量で存在する、項42又は43に記載の組成物。
【0053】
[項47] γ晶がβ晶に対して約1から約5%w/wの量で存在する、項42又は43に記載の組成物。
【0054】
[項48] さらにα晶を含む、項42から47のいずれかに記載の組成物。
【0055】
[項49] 項1から48のいずれかに記載の結晶形又は組成物及び製薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【0056】
[項50] さらに第二治療剤を含む、項49に記載の医薬組成物。
【0057】
[項51] 経口、非経口、経肺、部分又は局所投与に適した、項49又は50に記載の医薬組成物。
【0058】
[項52] 局所投与に適した、項49又は50に記載の医薬組成物。
【0059】
[項53] 錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤又は軟膏の形態である、項49又は50に記載の医薬組成物。
【0060】
[項54] IV、IM又はSC投与のための液剤への再構成に適した散剤の形態である、項49又は50に記載の医薬組成物。
【0061】
[項55] 白色ワセリン、固形パラフィン、スクアレン又はその混合物を含む、項49又は50に記載の医薬組成物。
【0062】
[項56] ヤヌスキナーゼを項1から55のいずれかに記載の結晶形又は組成物と接触させることを含む、ヤヌスキナーゼを阻害する方法。
【0063】
[項57] ヤヌスキナーゼがヤヌスキナーゼ3(JAK3)である、項56に記載の方法。
【0064】
[項58] ヤヌスキナーゼがヤヌスキナーゼ2(JAK2)である、項56に記載の方法。
【0065】
[項59] 治療的有効量の、項1から55のいずれかに記載の結晶形又は組成物を哺乳動物に投与することを含む、臓器移植時の拒絶、移植後の対宿主性移植片反応、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び慢性骨髄増殖性疾患から選択される疾患を治療又は予防する方法。
【0066】
[項60] 治療的有効量の、項1から55のいずれかに記載の結晶形又は組成物を哺乳動物に投与することを含む、関節リウマチ、乾癬、円形脱毛症、ドライアイ、アトピー性皮膚炎、湿疹又は手湿疹を治療又は予防する方法。
【0067】
[項61] 医薬品有効成分として用いるための項1から55のいずれかに記載の結晶形又は組成物。
【0068】
[項62] 臓器移植時の拒絶、移植後の対宿主性移植片反応、自己免疫疾患、アレルギー性疾患又は慢性骨髄増殖性疾患の治療又は予防に用いるための項1から55のいずれかに記載の結晶形又は組成物。
【0069】
[項63] 関節リウマチ、乾癬、円形脱毛症、ドライアイ、アトピー性皮膚炎、湿疹又は手湿疹の治療又は予防に用いるための項1から55のいずれかに記載の結晶形。
【0070】
[項64]β晶に特徴的なXRPDピークのピーク面積を測定し、該ピーク面積を標準と比較することを含む、3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶の調製物に存在するβ晶の量を測定する方法。
【0071】
[項65] β晶に特徴的なピークが約10.6°2θにみられる、項64に記載の方法。
【0072】
[項66] γ晶に特徴的なXRPDピークのピーク面積を測定し、該ピーク面積を標準と比較することを含む、3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶の調製物に存在するγ晶の量を測定する方法。
【0073】
[項67] γ晶に特徴的なピークが約16.6°2θにみられる、項66に記載の方法。
【0074】
本明細書において「結晶形」は、結晶性物質の特定の格子配置を意味する。同じ物質の異なる結晶形は典型的に、異なる結晶格子(例えば、単位格子)、及びその異なる結晶格子に起因する異なる物理的特性を有し、いくつかの場合には異なる含水量又は含溶媒量を有する。異なる結晶格子は粉末X線回折(XRPD)などの固体特性化法により特定することができる。示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着測定(DVS)、固体NMRなどの他の特性化法は、結晶形の特定並びに安定性及び含溶媒量/含水量の決定にさらに役立つ。
【0075】
特定の物質の異なる結晶形は、その物質の無水物形態及び溶媒和物/水和物形態の両方を含むことができ、該無水物形態及び溶媒和物/水和物形態はそれぞれ、互いに、異なるXRPDパターンによって区別され、そのため異なる結晶格子を示す。いくつかの場合において、単一の結晶形(例えば、特有のXRPDパターンにより特定される)は様々な含水量又は含溶媒量を有することができるが、水及び/又は溶媒について組成が変動するにもかかわらず、その格子は実質的に変化しないままである(XRPDパターンがそうであるように)。
【0076】
反射(ピーク)のXRPDパターンは典型的に、特定の結晶形の指紋とみなされる。XRPDピークの相対強度は、とりわけ、サンプル調製法、結晶サイズ分布、サンプルマウンティング手順及び用いる特定の装置により変化しうることはよく知られている。いくつかの場合において、機器又は設定の種類(例えば、Niフィルターを用いるか否か)に応じて、新たなピークが観測されてもよく、あるいは、既存のピークが消失してもよい。さらに、装置の変動及び他の要因が2θ値に影響しうる。したがって、本明細書に記載されているようなピークの同定は、±0.2°、±0.1°又は±0.04°(2θ)変化し得、本明細書のXRPDの文脈で用いられる用語「実質的に」は上記変動を包含することを意味する。
【0077】
同様に、DSC、TGA又は他の熱的実験に関する温度の読み取りは装置、特に設定、サンプル調製などに応じて約±3℃変動しうる。したがって、本明細書に記載されているような温度値は、±3℃変動し得、また、「実質的に」いずれかの図面にて示されるようなDSCサーモグラム又は他のサーモグラムを有する本明細書に記載の結晶形は、そのような変動に対応すると理解される。
【0078】
さらに、ケミカルシフトは13C NMRスペクトルにおいて±0.2ppm変動することができ、本明細書のNMRデータの文脈で用いられる用語「実質的に」はこの変動を包含することを意味する。
【0079】
β
晶
本発明は、β晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形を提供する。β晶に対応する結晶形は、例えばDSC及びTG-DTAにより明らかにされているとおり無水であると考えられる(実施例2参照)。いくつかの態様において、β晶は2θ(°)において約11.8に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、β晶は2θ(°)において約10.5、約11.8、約19.3及び約22.0から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、β晶は2θ(°)において約7.8、約10.5、約11.8、約13.4、約13.9、約17.8、約19.3、約22.0、約23.6及び約28.0から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、β晶は2θ(°)において表2-1に記載のいずれかのピークから選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す(実施例2参照)。さらなる態様において、β晶は実質的に
図2に示されるXRPDパターンを示す。
【0080】
いくつかの態様において、β晶は約186℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを示す。いくつかの態様において、β晶は約185℃における補外開始温度により特徴づけられるDSCサーモグラムを示す。さらなる態様において、β晶は実質的に
図5に示されるDSCサーモグラムを示す。
【0081】
いくつかの態様において、β晶は約165.1ppmにおける少なくとも1つのピークにより特徴づけられる固体
13C NMRスペクトルを示す。さらなる態様において、β晶は約16.5、約25.8、約26.5、約33.1、約34.8、約36.7、約38.8、約48.2、約53.4、約77.7、約79.5、約101.2、約102.6、約117.5、約120.6、約151.1、約154.3及び約165.1ppmから選択される少なくとも5つのピークにより特徴づけられる固体
13C NMRスペクトルを示す。さらなる態様において、β晶は実質的に
図11に示される
13C NMRスペクトルを示す。
【0082】
いくつかの態様において、β晶は単結晶X線回折により決定される単位格子パラメータ:
【表3】
を有する空間群P1を有する(実施例5参照)。
【0083】
β晶は少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の純度を有しうる。いくつかの態様において、β晶は実質的に純粋である。
【0084】
β晶は3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)を溶媒から結晶化させることにより調製しうる。例えば、化合物A(例えばα晶として)を溶媒と混合して溶液又はスラリーを形成させ、これからβ晶の結晶を得ることができる。いくつかの態様において、該溶媒としては、アセトニトリルなどのニトリル又は1-ブタノール及びアセトニトリルの混合物が挙げられる。いくつかの態様において、該溶媒は1-ブタノール及びアセトニトリルをそれぞれ約1:3(v/v)含む。いくつかの態様において、化合物Aは溶媒と混合して、約30から約50℃の温度に加熱することができる。いくつかの態様において、該混合物は約35から約45℃に、又は約40℃に加熱することができる。加熱後、該混合物をおよそ室温(例えば約23℃)に冷却し、β晶の結晶性生成物を得ることができる。
【0085】
本発明はさらに、上記方法のいずれか1つにより調製されるβ晶を提供する。
【0086】
γ晶
本発明はまた、γ晶である3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の結晶形も提供する。γ晶に対応する結晶形は、例えばDSC及びTG-DTAにより明らかにされているとおり無水であると考えられる(実施例3参照)。いくつかの態様において、γ晶は2θ(°)において約16.5に特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、γ晶は2θ(°)において約16.5、約17.7、約21.4、約21.8及び約23.1から選択される2つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、γ晶は2θ(°)において約7.7、約10.6、約13.3、約13.9、約15.2、約16.5、約17.7、約17.9、約19.0、約21.4、約21.8、約23.1、約23.7及び約28.1から選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。さらなる態様において、γ晶は2θ(°)において表3-1に記載のいずれかのピークから選択される3つ以上の特徴的ピークを含む粉末X線回折パターンを示す(実施例3参照)。さらなる態様において、γ晶は実質的に
図3に示されるXRPDパターンを示す。
【0087】
いくつかの態様において、γ晶は約196℃における吸熱ピークにより特徴づけられるDSCサーモグラムを示す。いくつかの態様において、γ晶は約196℃における補外開始温度により特徴づけられるDSCサーモグラムを示す。さらなる態様において、γ晶は実質的に
図6に示されるDSCサーモグラムを示す。
【0088】
いくつかの態様において、γ晶は約162.9ppmにおける少なくとも1つのピークにより特徴づけられる固体
13C NMRスペクトルを示す。さらなる態様において、γ晶は約16.9、約26.5、約32.9、約36.4、約48.1、約53.7、約78.6、約102.6、約116.4、約117.9、約121.5、約151.8、約154.6及び約162.9ppmから選択される少なくとも5つのピークにより特徴づけられる固体
13C NMRスペクトルを示す。さらなる態様において、γ晶は実質的に
図11に示される
13C NMRスペクトルを示す。
【0089】
いくつかの態様において、γ晶は単結晶X線回折により決定される単位格子パラメータ:
【表4】
を有する空間群P2
1を有する(実施例5参照)。
【0090】
γ晶は少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の純度を有しうる。いくつかの態様において、γ晶は実質的に純粋である。
【0091】
γ晶は3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリルのα晶をγ晶に変換することにより調製することができる。変換は、例えばα晶をジメチルホルムアミド(DMF)中で撹拌することにより行うことができる。撹拌は、例えば室温にて行うことができる。あるいは、γ晶は化合物Aをホルムアミドと混合し、γ晶の種晶を加えることにより調製することができる。調製は室温にて、適宜、窒素などの不活性雰囲気下にて行うことができる。
【0092】
本発明はさらに、上記いずれかの方法により調製したγ晶を提供する。
【0093】
組成物
β晶及びγ晶に加え、化合物Aは無水α晶として調製し、得ることができ、実施例1に記載される。したがって、本発明は化合物Aのα晶、β晶及びγ晶の2つ以上の混合物を提供する。
【0094】
いくつかの態様において、本発明はα晶及びβ晶の両方を含む結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の組成物を提供する。いくつかの態様において、β晶はα晶に対し約1から約50%w/wの量で存在する。さらなる態様において、β晶はα晶に対し約1から約20%w/wの量で存在する。さらなる態様において、β晶はα晶に対し約1から約10%w/wの量で存在する。さらなる態様において、β晶はα晶に対し約1から約5%w/wの量で存在する。いくつかの態様において、組成物はα晶及びβ晶を含み、実質的に化合物Aの他の結晶形を含まない。さらなる態様において、α晶及びβ晶を含む組成物はさらにγ晶を含む。いくつかの態様において、組成物は本質的にα晶及びβ晶からなる。
【0095】
さらに、本発明はβ晶及びγ晶の両方を含む結晶性3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の組成物を提供する。いくつかの態様において、γ晶はβ晶に対し約1から約50%w/wの量で存在する。さらなる態様において、γ晶はβ晶に対し約1から約20%w/wの量で存在する。さらなる態様において、γ晶はβ晶に対し約1から約10%w/wの量で存在する。さらなる態様において、γ晶はβ晶に対し約1から約5%w/wの量で存在する。いくつかの態様において、組成物はβ晶及びγ晶を含み、実質的に化合物Aの他の結晶形を含まない。さらなる態様において、β晶及びγ晶を含む組成物はさらにα晶を含む。いくつかの態様において、組成物は本質的にβ晶及びγ晶からなる。
【0096】
本発明はさらに、β晶又はγ晶及び1つ以上の他の物質を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は少なくとも約50重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%又は少なくとも約99重量%のβ晶又はγ晶を含む。
【0097】
分析法
本発明は、β晶に特徴的なXRPDピークのピーク面積を測定し、該ピーク面積を標準と比較することを含む、α晶の調製物に存在するβ晶の量を測定する方法を提供する。いくつかの態様において、β晶に特徴的なピークは約10.6°2θにみられる。標準はα晶中の既知の量のβ晶のピーク面積から算出される検量線でありうる。同様に、本発明は、γ晶に特徴的なXRPDピークのピーク面積を測定し、該ピーク面積を標準と比較することを含む、α晶の調製物に存在するγ晶の量を測定する方法を提供する。いくつかの態様において、γ晶に特徴的なピークは約16.6°2θにみられる。標準はα晶中の既知の量のγ晶のピーク面積から算出される検量線でありうる。
【0098】
医薬組成物及び用途
本発明の結晶形は、本発明の結晶形又は本発明の組成物を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体(又は添加剤)とともに含む医薬組成物として調製しうる。ある態様において、医薬組成物は経口、非経口、経肺、部分又は局所投与に適している。いくつかの態様において、医薬組成物は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などの経口製剤、又は外用剤、坐剤、注射剤、点滴剤、経鼻剤、経肺剤などの非経口製剤の形態である。いくつかの態様において、医薬組成物は軟膏などの局所適用に適している。
【0099】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤分野で既知の方法に従い、本発明の1種以上の結晶形又は本発明の組成物と少なくとも1つ以上の製薬上許容可能な担体を適量で混合することにより調製してもよい。医薬組成物中の化合物Aの量は、その剤形、投与量などに応じて、例えば組成物の約0.1から100重量%であることができる。本発明の医薬組成物は例えば錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤又は軟膏の形態であることができる。いくつかの態様において、本発明の医薬組成物は、静脈内(IV)、筋肉内(IM)又は皮下(SC)投与のための液剤への再構成に適した散剤の形態であることができる。さらに、本発明の医薬組成物はさらに第二治療剤を含んでもよい。
【0100】
「製薬上許容可能な担体」としては、医薬材料のための種々の慣用の有機又は無機担体物質、例えば固形製剤について賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤及び滑沢剤、液体製剤について溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤、及び半固体製剤について基剤、乳化剤、保湿剤、安定剤、安定化剤、分散剤、可塑剤、pH調節剤、吸収促進剤、ゲル化剤、防腐剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤及び懸濁剤が挙げられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着色剤及び甘味剤などの添加剤を必要に応じて用いてもよい。
【0101】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、トウモロコシデンプン、デキストリン、微結晶セルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム等が挙げられる。
【0102】
崩壊剤の例としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース等が挙げられる。
【0103】
結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、結晶セルロース、白糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、アラビアゴム等が挙げられる。
【0104】
流動化剤の例としては、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0105】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0106】
溶剤の例としては、精製水、エタノール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
【0107】
溶解補助剤の例としては、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0108】
懸濁化剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
【0109】
等張化剤の例としては、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、D-マンニトール等が挙げられる。
【0110】
緩衝剤の例としては、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0111】
無痛化剤の例としては、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0112】
保存剤の例としては、パラオキシ安息香酸エチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸等が挙げられる。
【0113】
抗酸化剤の例としては、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0114】
着色剤の例としては、食用色素(例えば、食用赤色2号又は3号、食用黄色4号又は5号等)、β-カロテン等が挙げられる。
【0115】
甘味剤の例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム等が挙げられる。
【0116】
本発明の医薬組成物は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等)又はヒト等の患者に対し、疾患の治療又は予防のために治療的有効量にて経口的又は非経口的(例えば、部分、直腸、静脈内等)に投与してもよい。用語「哺乳動物」はヒト及び非ヒト哺乳動物対象の両方を含むことを意味する。医薬組成物の用量は対象、疾患、病態、剤形、投与経路に依存する。臓器移植時の拒絶、移植後の対宿主性移植片反応、自己免疫疾患又はアレルギー性疾患等に罹患している成人患者(体重:約60kg)に経口投与するための用量は、例えば約1mgから1g/日の範囲であることができる。該用量は1回で又は数回に分けて投与してもよい。
【0117】
局所医薬組成物について、担体(又は賦形剤)は白色ワセリン、固形パラフィン、スクアレン又はその組合せを含むことができる。白色ワセリン、固形パラフィン及びスクアレンは、それぞれ70から90重量%、5から10重量%及び5から20重量%の混合比にて混合してもよい。製剤の一例としては、化合物A、白色ワセリン、5±2重量%の固形パラフィン及び10±2重量%のスクアレンを含む。
【0118】
局所薬剤は、例えば剤形等に応じて塗布、塗擦又はスプレーにより適用することができる。局所薬剤の患部への適用量は、有効成分の含量等に応じて選択することができ、局所薬剤は、例えば1日あたり1回又は数回に分けて適用することができる。いくつかの態様において、適用は1日1回又は1日2回である。
【0119】
医薬組成物は、許容可能な製剤手順に従い製造することができ、例えばRemingtons Pharmaceutical Sciences, 17版. Alfonoso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA (1985)に記載された手順であり、これはそのまま本明細書に参照により組み込まれる。
【0120】
本発明の結晶形は、本発明の結晶形をヤヌスキナーゼ阻害剤と接触させることを含む、JAK3、JAK2又はその両者などのヤヌスキナーゼを阻害する方法に用いることができる。接触はインビトロ又はインビボで起こりうる。
【0121】
本発明の結晶形又は組成物は、患者における以下の1つ以上の疾患の治療又は予防方法における有効成分として用いてもよい:
(a)臓器移植時の拒絶、又は移植後の対宿主性移植片反応;
(b)関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、重症筋無力症、キャッスルマン病、若年性特発性関節炎、ドライアイ等の自己免疫疾患;及び
(c)喘息、アトピー性皮膚炎、鼻炎等のアレルギー性疾患。
【0122】
いくつかの態様において、本発明の結晶形は、関節リウマチ、乾癬、円形脱毛症、ドライアイ、アトピー性皮膚炎、湿疹又は手湿疹の治療剤又は予防剤の有効成分として用いてもよい。
【0123】
本発明の結晶形は、真性赤血球増加症、原発性骨髄線維症、本態性血小板血症等の慢性骨髄増殖性疾患の治療剤又は予防剤の有効成分として用いてもよい。
【0124】
本明細書において化合物の「治療的有効量」は、所定の疾患及びその合併症の臨床症状を治癒し、緩和し、又は部分的に停止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに適切な量は「治療的有効量」として定義される。各目的のための有効量は、疾患又は傷害の重篤度並びに対象の体重及び全身状態に応じる。
【0125】
本明細書において用語「治療」は、症状の改善、悪化の予防、寛解の維持、増悪の予防及び再発の予防を含む。用語「治療」はまた、疾患、障害若しくは病態の進行の遅延、症状及び合併症の改善、緩和若しくは軽減、及び/又は疾患、障害若しくは病態の治癒若しくは除去も含んでもよい。
【0126】
用語「治療」はまた、疾患、病態又は障害と闘う目的のための患者の管理及び世話を意味してもよい。
【0127】
用語「予防」は、症状の発生を抑制することを意味する。
【0128】
併用療法
本発明の結晶形は、治療的有効量の1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて患者に投与することができる。本発明の結晶形は、追加の治療剤と同時に(例えば、一緒に)投与することができる(例えば、単一の固定剤形又は別々の剤形にて)。同様に、本発明の結晶形及び追加の治療剤は、患者に連続して投与することができる。例えば、本発明の結晶形がその治療効果を発揮している間に追加の治療剤を投与する、あるいは、その逆も同様である。
【0129】
本明細書に開示される発明をより効率的に理解するために、以下に実施例を挙げる。これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、いかなる方法によっても本発明が限定して解釈されるものではないと理解されるべきである。
【実施例0130】
実施例1
3-((3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル)-3-オキソプロパンニトリル(化合物A)の調製及びα晶の特性化
化合物Aの調製
化合物Aを、国際特許出願番号PCT/JP2016/070046(実施例1から15)に記載の以下の合成法により調製した。結晶化工程において、種晶を用いて結晶化を促進したが、種晶を用いずに、記載の方法に従い各化合物の結晶を調製することができる。
【0131】
本明細書において略語は以下の意味を有する:
S-BAPO:(S)-2-(ベンジルアミノ)プロパン-1-オール
S-BBMO:(S)-N-ベンジル-N-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)グリシン酸tert-ブチル
R-BCAB:(R)-N-ベンジル-N-(2-クロロプロピル)グリシン酸tert-ブチル
S-MABB:(3S)-1-ベンジル-3-メチルアゼチジン-2-カルボン酸tert-ブチル
S-MABB-HC:(3S)-1-ベンジル-3-メチルアゼチジン-2-カルボン酸tert-ブチル塩酸塩
S-MACB-HC:(3S)-3-メチルアゼチジン-2-カルボン酸tert-ブチル塩酸塩
S-ZMAB:(3S)-3-メチルアゼチジン-1,2-ジカルボン酸1-ベンジル2-(tert-ブチル)
RS-ZMBB:(2R,3S)-2-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-3-メチルアゼチジン-1,2-ジカルボン酸1-ベンジル2-(tert-ブチル)
RS-ZMAA:(2R,3S)-1-((ベンジルオキシ)カルボニル)-2-(カルボキシメチル)-3-メチルアゼチジン-2-カルボン酸
RS-ZMAA-DN・2H2O:(2R,3S)-1-((ベンジルオキシ)カルボニル)-2-(カルボキシメチル)-3-メチルアゼチジン-2-カルボン酸二ナトリウム塩二水和物
RS-ZMOO:(2R,3S)-2-(2-ヒドロキシエチル)-2-(ヒドロキシメチル)-3-メチルアゼチジン-1-カルボン酸ベンジル
RS-ZMSS:(2R,3S)-3-メチル-2-(2-((メチルスルホニル)オキシ)エチル)-2-(((メチルスルホニル)オキシ)メチル)アゼチジン-1-カルボン酸ベンジル
SR-ZMDB:(3S,4R)-6-ベンジル-3-メチル-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-カルボン酸ベンジル
SR-MDOZ:(3S,4R)-3-メチル-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-カルボン酸ベンジル
SR-MDOZ-OX:(3S,4R)-3-メチル-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-カルボン酸ベンジルシュウ酸塩
SR-MDPZ:(3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-カルボン酸ベンジル
SR-MDOP:4-[(3S,4R)-3-メチル-1,6-ジアザスピロ[3.4]-オクタン-6-イル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン
化合物A:3-[(3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル]-3-オキソプロパンニトリル
CPPY:4-クロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン
DPCN:1-シアノアセチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール
TBBA:ブロモ酢酸tert-ブチルエステル
THF:テトラヒドロフラン
【0132】
用いた測定装置及び測定条件は以下に示す。
1H-NMRスペクトルはCDCl3又はDMSO-d6中、テトラメチルシランを内部標準として測定し、全δ値をppmで示す。なお、特に記述のない限り、400MHzのNMR装置を用いた。
実施例中の記号は次のような意味である。
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
q:カルテット
dd:ダブルダブレット
ddd:ダブルダブルダブレット
brs:ブロードシングレット
m:マルチプレット
J:カップリング定数
試料中のイオン含量はその3回の測定値を平均化することにより測定した。
測定装置:イオンクロマトグラフLC-20システム(SHIMADZU)
測定条件:電気伝導度検出器SHIMADZU CDD-10A VP
アニオン分析用カラムSHIMADZU SHIM-PAC IC-A3
カチオン分析用カラムSHIMADZU SHIM-PAC IC-C1
試料中の含水量はカール・フィッシャー法により測定した。
測定装置:カール・フィッシャー水分計CA-06(MITSUBISHI CHEMICAL)
測定条件:
サンプル量:約20mg
試薬:陽極液アクアミクロンAX(API Corporation)
陰極液アクアミクロンCXU(API Corporation)
元素分析により、サンプル中の炭素、水素及び窒素の各重量%を測定した。
【0133】
工程A.S-MABB-HC(化合物[5])の調製
【化2】
工程1
【化3】
窒素雰囲気下、水(175mL)にS-BAPO[1](35.0g,212mmol)を室温で添加した。この懸濁液にトルエン(53mL)および炭酸カリウム(32.2g,233mmol)を室温にて添加した。この溶液にTBBA(434.4g,223mmol)を室温にて滴下し、使用した滴下ロートをトルエン(17mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を65℃にて21時間撹拌後、室温に冷却した。反応混合液にトルエン(105mL)を加え撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を水(175mL)で洗浄後、水層を排出し、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣にトルエン(105mL)を加えて濃縮した。この操作をあと2回繰り返した後、S-BBMO[2]のトルエン溶液(74.0g,212mmol相当)を得た。得られたS-BBMOのトルエン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したS-BBMO粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 7.36-7.13 (5H, m), 4.26 (1H, dd, J = 6.8, 3.9 Hz), 3.72 (2H, dd, J = 14.2, 6.8 Hz), 3.47-3.38 (1H, m), 3.30-3.08 (3H, m), 2.79 (1H, sext, J = 6.8 Hz), 1.35 (9H, s), 0.96 (3H, d, J = 6.8 Hz).
MS: m/z = 280 [M+H]
+
【0134】
工程2
【化4】
窒素雰囲気下、S-BBMO[2]のトルエン溶液(74.0g,212mmol)にトルエン(200mL)、テトラヒドロフラン(35mL)およびトリエチルアミン(25.7g,254mmol)を室温にて順次添加した。この混合液にメタンスルホニルクロリド(26.7g,233mmol)を0℃にて滴下し、使用した滴下ロートをトルエン(10mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を室温にて2時間撹拌し、更に65℃にて22時間撹拌した後に室温まで冷却した。反応混合液に重曹水(105mL)を加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を水(105mL)で洗浄後、水層を排出し、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣にトルエン(105mL)を加え濃縮した。この操作をあと2回繰り返した後、R-BCAB[3]のトルエン溶液(75.3g,212mmol相当)を得た。得られたR-BCABのトルエン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したR-BCAB粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 7.28-7.11 (5H, m), 4.24-4.11 (1H, m), 3.80 (2H, d, J = 3.6 Hz), 3.24 (2H, d, J = 3.6 Hz), 2.98-2.78 (2H, m), 1.46-1.37 (12H, m).
MS: m/z = 298 [M+H]
+
【0135】
工程3
【化5】
窒素雰囲気下、R-BCAB[3]のトルエン溶液(75.3g,212mmol)にテトラヒドロフラン(88.0mL)および1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(42.0mL)を室温にて添加した。この溶液にリチウムビス(トリメチルシリル)アミド/テトラヒドロフラン溶液(195mL,233mmol)を0℃にて滴下し、使用した滴下ロートをテトラヒドロフラン(17.0mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を0℃にて1時間撹拌した後、室温まで加温した。反応混合液に水(175mL)及びトルエン(175mL)を加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を塩化アンモニウム水溶液(175mL)および水(175mL)で順次洗浄後、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣に酢酸エチル(175mL)を加えて濃縮した。この操作をあと2回繰り返し、S-MABB[4]の酢酸エチル溶液(66.5g,212mmol相当)を得た。得られたS-MABBの酢酸エチル溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したS-MABB粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 7.28-7.25 (10H, m), 3.75 (1H, d, J = 12.7 Hz), 3.68 (1H, d, J = 1.4 Hz), 3.66 (1H, d, J = 6.7 Hz), 3.46 (2H, d, J = 12.7 Hz), 3.30-3.17 (2H, m), 2.95 (1H, dd, J = 6.2, 1.2 Hz), 2.77 (1H, dd, J = 6.1, 2.2 Hz), 2.65-2.55 (1H, m), 2.48-2.40 (2H, m), 1.35 (9H, s), 1.35 (9H, s), 1.12 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.09 (3H, d, J = 6.2 Hz).
MS: m/z = 262 [M+H]
+
【0136】
工程4
【化6】
窒素雰囲気下、S-MABB[4]の酢酸エチル溶液(66.5g,212mmol相当)に酢酸エチル(175mL)及び活性炭(3.5g)を加え、室温にて2時間撹拌した。活性炭を濾過にて除き、濾過残渣を酢酸エチル(175mL)で洗浄し、洗浄液を濾液に添加した。この溶液に本法に従い調製したS-MABB-HCの結晶(17.5mg)を0℃にて添加した後、0℃にて4M塩化水素/酢酸エチル溶液(53.0mL,212mmol)を滴下した。反応混合液を0℃にて17時間撹拌した後、析出した固体を濾取し、得られた固体を酢酸エチル(70mL)で洗浄した。得られた湿固体を減圧下にて乾燥することでS-MABB-HC[5](48.3g,162mmol)を収率76.4%で得た。
同じ方法で合成したS-MABB-HCのNMR、MS及びCl含量を測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 11.08 (1H, br s), 10.94 (1H, br s), 7.52-7.42 (10H, m), 5.34 (1H, t, J = 8.4 Hz), 4.90 (1H, br s), 4.45-4.10 (5H, m), 3.92-3.49 (3H, br m), 3.10-2.73 (2H, br m), 1.35 (9H, s), 1.29 (9H, s), 1.24 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.17 (3H, d, J = 7.4 Hz).
MS: m/z = 262 [M+H-HCl]
+
Cl含量(イオンクロマトグラフィー): 11.9%(理論値:11.9%)
【0137】
工程B.S-MACB-HC(化合物[6])の調製
【化7】
窒素雰囲気下、S-MABB-HC[5](5.0g,16.8mmol)のメタノール(15.0mL)溶液に5%パラジウム炭素(川研ファインケミカル社製PHタイプ,54.1%含水,1.0g)を室温で添加した。反応容器を水素で置換し、水素ガス圧0.4MPaで室温にて12時間撹拌した後、反応容器を窒素で置換し、5%パラジウム炭素を濾過で除去した。反応容器と5%パラジウム炭素をメタノール(10mL)で洗浄した。洗浄液を濾液に添加し、S-MACB-HC[6]のメタノール溶液(24.8g,16.8mmol相当)を得た。得られたS-MACB-HCのメタノール溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したS-MACB-HC粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 9.60 (br s, 1H), 4.97 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 4.61 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.01 (dd, 1H, J = 10.0, 8.4 Hz), 3.78-3.74 (m, 1H), 3.54 (dd, 1H, J = 9.6, 8.4 Hz), 3.35 (dd, 1H, J = 10.0, 6.0 Hz), 3.15-3.03 (m, 1H), 3.00-2.88 (m, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.47 (s, 9H), 1.22 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.14 (d, 3H, J = 7.2 Hz).
MS: m/z = 172 [M+H]
+ (フリー体)
【0138】
工程C.S-ZMAB(化合物[7])の調製
【化8】
窒素雰囲気下、S-MACB-HC[6]のメタノール溶液(24.8g,16.8mmol相当)にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.8g,36.9mmol)を室温にて滴下し、使用した滴下ロートをテトラヒドロフラン(2.5mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。この反応混合液にクロロギ酸ベンジルエステル(3.0g,17.6mmol)を0℃にて滴下し、使用した滴下ロートをテトラヒドロフラン(2.5mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を0℃にて1時間撹拌した後、減圧下にて溶媒を留去した。得られた濃縮残渣にトルエン(25.0mL)及びクエン酸水(25.0mL)を加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を重曹水(25.0mL)及び水(25.0mL)で順次洗浄し、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣にトルエン(15.0mL)を加えて濃縮した。この操作をあと1回繰り返した。濃縮終了後、S-ZMAB[7]のトルエン溶液(6.9g,16.8mmol相当)を得た。得られたS-ZMABのトルエン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したS-ZMAB粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 7.38-7.28 (m, 10H), 5.16-5.04 (m, 4H), 4.60 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 4.18-4.12 (m, 2H), 4.04 (t, 1H, J = 8.6 Hz), 3.66 (dd, 1H, J = 7.6, 7.2 Hz), 3.50 (dd, 1H, J = 8.0, 5.2 Hz), 3.05-2.94 (m, 1H), 2.60-2.50 (m, 1H), 1.43 (br s, 18H), 1.33 (d, 3H, J = 6.5 Hz), 1.15 (d, 3H, J = 7.2 Hz).
MS: m/z = 328 [M+Na]
+.
【0139】
工程D.RS-ZMBB(化合物[8])の調製
【化9】
窒素雰囲気下、S-ZMAB[7]のトルエン溶液(6.9g,16.8mmol)にテトラヒドロフラン(15.0mL)を室温にて添加した。この溶液にリチウムビス(トリメチルシリル)アミド/テトラヒドロフラン溶液(14.7mL,17.6mmol)を-70℃にて滴下した。使用した滴下ロートをテトラヒドロフラン(2.5mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を-70℃にて6時間撹拌した後、テトラヒドロフラン(2.5mL)で希釈したTBBA(3.4g,17.6mmol)を-70℃にて滴下した。使用した滴下ロートをテトラヒドロフラン(2.5mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を-70℃にて1時間撹拌した後、室温に加温し、塩化アンモニウム水(25mL)及びトルエン(25mL)を添加して撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層をクエン酸水(25mL)で2回、重曹水(25mL)、水(25mL)で順次洗浄した後、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣にアセトニトリル(15mL)を加え、再度濃縮した。この操作をあと2回繰り返した。この濃縮残渣にアセトニトリル(15mL)及び活性炭(0.25g)を加え、室温にて2時間撹拌した。活性炭を濾過にて除き、反応容器と濾過残渣をアセトニトリル(10mL)で洗浄した。濾液と洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を留去し、RS-ZMBB[8]のアセトニトリル溶液(13.2g,16.8mmol相当)を得た。得られたRS-ZMBBのアセトニトリル溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したRS-ZMBB粗生成物を濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 7.38-7.29 (m, 5H), 5.09-4.96 (m, 2H), 3.91 (t, 0.4H, J = 8.0 Hz), 3.79 (t, 0.6H, J = 8.0 Hz), 3.55 (t, 0.4H, J = 7.2 Hz), 3.46 (t, 0.6H, J = 7.5 Hz), 3.14-3.04 (m, 1H), 2.83-2.72 (m, 2H), 1.38 (br s, 9H), 1.37 (br s, 3.6H), 1.34 (br s, 5.4H), 1.12-1.09 (m, 3H).
MS: m/z = 420 [M+H]
+.
【0140】
工程E.RS-ZMAA-DN・2H
2
O(化合物[9])の調製
【化10】
窒素雰囲気下、RS-ZMBB[8]のアセトニトリル溶液(13.2g,16.8mmol相当)にアセトニトリル(15mL)を室温にて添加した。この溶液にp-トルエンスルホン酸一水和物(6.4g,33.6mmol)を室温にて添加した。反応混合液を50℃にて12時間撹拌した後、室温まで冷却し、水(7.5mL)を滴下した。この反応混合液を0℃まで冷却した後、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液(17.6mL,70.5mmol)を滴下した。室温にて1時間撹拌した後、アセトニトリル(75mL)を室温にて滴下し、3時間撹拌した。析出した固体を濾取し、得られた固体をアセトニトリル:水=4:1混合溶液(10mL)及びアセトニトリル(10mL)で順次洗浄した。得られた湿固体を減圧下にて乾燥することでRS-ZMAA-DN・2H2O[9](5.2g,13.4mmol)を収率85.4%で得た。
同じ方法で合成したRS-ZMAA-DN・2H
2OのNMR、MS、Na含量及び水分含量を測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 7.32-7.22 (m, 5H), 4.97 (d, 1H, J = 12.7 Hz), 4.84 (d, 1H, J = 12.7 Hz), 3.79 (t, 1H, J = 8.0 Hz), 3.29 (d, 1H, J = 14.8 Hz), 3.16-3.12 (m, 1H), 2.17-2.09 (m, 2H), 1.07 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
MS: m/z = 352 [M+H]
+ (無水物)
Na含量(イオンクロマトグラフィー):13.3%(水分含量補正後)(理論値:13.1%)
水分含量(カール・フィッシャー法):9.8%(理論値:9.3%)
【0141】
工程F.RS-ZMAA(化合物[10])の調製
【化11】
1mol/L塩酸(180mL)にRS-ZMAA-DN・2H
2O[9](30g,77.5mmol)及びアセトニトリル(60mL)を加え、室温にて約15分撹拌した。この反応混合液に酢酸エチル(240mL)を添加し更に撹拌した後、有機層を分取した。有機層を10%食塩水(60mL)で2回洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム(6g)を添加し撹拌した後、硫酸マグネシウムを濾過し、濾過残渣を酢酸エチル(60mL)で洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせて、減圧下にて溶媒を留去した。この濃縮残渣にテトラヒドロフラン(240mL)を加え、減圧濃縮した。この操作をあと2回繰り返した。この濃縮残渣にテトラヒドロフラン(60mL)を加え、RS-ZMAA[10]のテトラヒドロフラン溶液を得た。得られたRS-ZMAAのテトラヒドロフラン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したRS-ZMAAのNMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-D
6) δ: 7.35-7.28 (m, 5H), 5.06-4.94 (m, 2H), 3.86 (dt, 1H, J = 48.4, 7.9 Hz), 3.50 (dt, 1H, J = 37.9, 7.4 Hz), 3.16-3.02 (br m, 1H), 2.91-2.77 (br m, 2H), 1.08 (d, 3H, J = 6.9 Hz)
MS: m/z = 308 [M+H]
+.
【0142】
工程G.RS-ZMOO(化合物[11])の調製
【化12】
窒素雰囲気下、RS-ZMAA[10]のテトラヒドロフラン溶液(25.8mmol相当)にテトラヒドロフラン(50mL)を加え、0℃から5℃でボロントリフルオリドジエチルエーテル錯体(4.40g)を滴下した。テトラヒドロフラン(5mL)で滴下ロートを洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液に、0℃から5℃で1.2mol/Lボラン-テトラヒドロフラン錯体(43.0mL)を滴下し、0℃から5℃で約30分間撹拌した後、室温にて更に終夜撹拌した。反応混合液に1.2mol/Lボラン-テトラヒドロフラン錯体(21.1mL)を0℃から5℃で滴下し、室温にて終夜撹拌した。撹拌後、反応混合液に0℃から15℃で水(40mL)を滴下した。反応混合液に0℃から15℃にて重曹(5.42g)を添加し、容器に付着した重曹を水(10mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を室温で2時間撹拌した後、トルエン(50mL)を加えて更に撹拌した。有機層を分取した。得られた有機層を10%食塩水20mLで1回、5%重曹水(20mL)と10%食塩水(20mL)の混合溶液で3回、5%硫酸水素カリウム水溶液(10mL)と10%食塩水(10mL)の混合溶液で1回、10%食塩水(20mL)で2回、順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム(8.9g)を添加し撹拌した後、硫酸マグネシウムを濾過し、濾過残渣をトルエン(20mL)で洗浄した。この洗浄液を濾液に添加した後、減圧下にて濾液の溶媒を留去した。濃縮残渣にトルエン(80mL)を加え、減圧濃縮し、トルエン(15mL)を加え、RS-ZMOO[11]のトルエン溶液を得た。得られたRS-ZMOOのトルエン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したRS-ZMOOのNMRとMSを測定した。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 7.39-7.30 (m, 5H), 5.10 (s, 2H), 4.15-4.01 (br m, 2H), 3.83-3.73 (br m, 3H), 3.48 (dd, 1H, J = 8.3, 6.4 Hz), 2.59-2.50 (br m, 1H), 2.46-2.40 (br m, 1H), 2.07-1.99 (m, 1H), 1.14 (d, 3H, J = 7.2 Hz)
MS: m/z = 280 [M+H]
+.
【0143】
工程H.RS-ZMSS(化合物[12])の調製
【化13】
窒素雰囲気下、RS-ZMOO[11]のトルエン溶液(23.7mmol相当)にトルエン(55mL)を加え、トリエチルアミン(5.27g)を-10℃から10℃で滴下し、滴下ロートをトルエン(1.8mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。この反応混合液に、メタンスルホニルクロリド(5.69g)を-10℃から10℃で滴下し、滴下ロートをトルエン(1.8mL)にて洗浄し、洗浄液を反応混合液に合わせた。反応混合液を0℃から10℃で約2時間撹拌後、0℃から20℃で水(28mL)を滴下した。反応混合液を0℃から20℃で約30分間撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を10%食塩水(18mL)で2回洗浄した。得られた有機層に硫酸マグネシウム(2.75g)を添加し撹拌した後、硫酸マグネシウムを濾過し、濾過残渣をトルエン(18mL)で洗浄した。洗浄液を濾液に添加した後、減圧下にて濾液の溶媒を留去した。この濃縮残渣に、約18mLになるようにトルエンを添加し、RS-ZMSS[12]のトルエン溶液を得た。得られたRS-ZMSSのトルエン溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したRS-ZMSSのNMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-D
6) δ: 7.37-7.27 (br m, 5H), 5.10-4.98 (m, 2H), 4.58-4.22 (br m, 4H), 3.84 (dt, 1H, J = 45.6, 8.1 Hz), 3.48-3.33 (br m, 1H), 3.17-3.10 (m, 6H), 2.81-2.74 (br m, 1H), 2.22-2.12 (m, 2H)
MS: m/z = 436 [M+H]
+.
【0144】
工程I.SR-ZMDB(化合物[13])の調製
【化14】
窒素雰囲気下、RS-ZMSS[12]のトルエン溶液(23.7mmol相当)にトルエン(55mL)を加え、室温でベンジルアミン(17.8g)を滴下し、滴下ロートをトルエン(9.2mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。この反応混合液を、室温で約1時間、55℃から65℃で約3時間、次いで70℃から80℃で約6時間撹拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、10%NaCl(28mL)を滴下し、室温で約30分間撹拌した。反応混合液にトルエン(37mL)を添加した後撹拌し、有機層を分取した。得られた有機層を10%食塩水(18mL)と酢酸(2.84g)の溶液で2回、10%食塩水(11mL)で1回、順次洗浄した。減圧下にて残渣が半量になるまで有機層の溶媒を留去した後、濃縮残渣に室温で無水酢酸(1.45g)を加えて約3時間撹拌した。反応混合液に硫酸水素カリウム(3.87g)と水(92mL)の溶液を室温で滴下し、撹拌した後、水層を分取した。得られた水層をトルエン(18mL)で洗浄した後、室温にてトルエン(73mL)と重曹(6.56g)を順次添加し撹拌した。有機層を分取し、得られた有機層を10%食塩水(11mL)で洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム(2.75g)を添加して撹拌した後、硫酸マグネシウムを濾過した。濾過残渣をトルエン(18mL)にて洗浄し、濾液と洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を留去した。濃縮残渣にトルエン(44mL)を加え、SR-ZMDB[13]のトルエン溶液を得た。SR-ZMDBのトルエン溶液を収率100%として次工程へ用いた。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 7.35-7.20 (m, 10H), 5.08 (d, 2H, J = 23.6 Hz), 3.94 (q, 1H, J = 7.9 Hz), 3.73-3.42 (br m, 2H), 3.30-3.23 (m, 1H), 3.05 (dd, 1H, J = 19.7, 9.5 Hz), 2.79 (dt, 1H, J = 69.6, 6.1 Hz), 2.57-2.32 (br m, 4H), 1.96-1.89 (m, 1H), 1.09 (d, 3H, J = 6.9 Hz)
MS: m/z = 351 [M+H]
+.
【0145】
工程J.SR-MDOZ(化合物[14])の調製
【化15】
窒素雰囲気下、クロロギ酸1-クロロエチル(3.72g)とトルエン(28mL)の溶液に0℃から10℃でSR-ZMDB[13]のトルエン溶液(23.7mmol相当)を滴下し、滴下ロートをトルエン(4.6mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液に、0℃から10℃でトリエチルアミン(718mg)を添加し、15℃から25℃で約2時間撹拌した後、メチルアルコール(46mL)を加え、50℃から60℃で更に約2時間撹拌した。減圧下にて、残渣が約37mL以下になるまで、反応混合液の溶媒を留去した。濃縮残渣に15℃から20℃で2mol/L塩酸水(46mL)を滴下し撹拌した後、水層を分取した。得られた水層をトルエン(28mL)で2回洗浄した。水層に20%食塩水(46mL)とテトラヒドロフラン(92mL)を添加した後、8mol/L水酸化ナトリウム水溶液(18mL)を0℃から10℃で滴下した。反応混合液から有機層を分取し、得られた有機層を20%食塩水(18mL)で2回洗浄した後、減圧下にて有機層の溶媒を留去した。濃縮残渣にテトラヒドロフラン(92mL)を加えて減圧濃縮した。この操作をあと1回行った。濃縮残渣にテトラヒドロフラン(92mL)を添加し溶解し、硫酸マグネシウム(2.75g)を添加し撹拌した後、硫酸マグネシウムを濾過した。濾過残渣をテトラヒドロフラン(28mL)で洗浄し、濾液と洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を留去した。この濃縮残渣はテトラヒドロフランで約20mLになるように容量を調整し、SR-MDOZ[14]のテトラヒドロフラン溶液(正味量4.01g,15.4mol)を収率65.0%で得た。
同じ方法で合成したSR-MDOZを濃縮乾固し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 7.37-7.28 (m, 5H), 5.08 (dd, 2H, J = 16.8, 12.8 Hz), 4.00 (dd, 1H, J = 17.1, 8.3 Hz), 3.40-3.31 (m, 1H), 3.24 (d, 1H, J = 12.7 Hz), 3.00 (dd, 1H, J = 54.9, 12.4 Hz), 2.87-2.57 (m, 3H), 2.47-2.27 (m, 1H), 1.91-1.80 (m, 1H), 1.14 (d, 3H, J = 7.2 Hz)
MS: m/z = 261 [M+H]
+.
【0146】
工程K.SR-MDOZ-OX(化合物[15])の調製
【化16】
窒素雰囲気下、シュウ酸(761mg)をテトラヒドロフラン(40mL)で溶解し、室温でSR-MDOZ[14]のテトラヒドロフラン溶液(3.84mmol相当)を滴下した。この溶液に室温で本法に従い調製したSR-MDOZ-OXの結晶(1mg)を添加し、室温で約3.5時間撹拌し、結晶を析出させた。このスラリー液にSR-MDOZのテトラヒドロフラン溶液(3.84mmol)を室温で滴下し、室温で約1時間撹拌した。このスラリー液を加熱し、50℃から60℃で約2時間撹拌後、室温で終夜撹拌した。このスラリー液を濾過し、湿結晶をテトラヒドロフラン(10mL)にて洗浄し、減圧乾燥後、SR-MDOZ-OX[15](2.32g,6.62mol)を収率86.2%で得た。
同じ方法で合成したSR-MDOZ-OXのNMR、MS及び元素分析測定を行なった。
1H-NMR (DMSO-D
6) δ: 7.37-7.30 (m, 5H), 5.15-5.01 (m, 2H), 3.92 (dt, 1H, J = 43.5, 8.4 Hz), 3.48-3.12 (br m, 5H), 2.67-2.56 (m, 1H), 2.46-2.35 (m, 1H), 2.12-2.05 (m, 1H), 1.13 (d, 3H, J = 6.9 Hz)
MS: m/z = 261 [M+H]
+
元素分析: C 58.4wt% , H 6.4wt% , N 7.9wt%(理論値 C 58.3wt% , H 6.3wt% , N 8.0wt%)
【0147】
工程L.SR-MDPZ(化合物[16])の調製
【化17】
窒素雰囲気下、SR-MDOZ-OX[15](12.0g,34.2mmol)にエタノール(36mL)を添加し、次いで水(72mL)、CPPY[20](5.36g,34.9mmol)及びK
3PO
4(21.8g,103mmol)を順次添加した。反応混合液を80℃にて5時間撹拌した後、40℃まで冷却し、40℃にてトルエン(120mL)を添加し、有機層を分取した。得られた有機層を20%炭酸カリウム水溶液(48mL)で洗浄した後、さらに水(48mL)で2回洗浄した。次いで減圧下にて有機層の溶媒を留去した。この濃縮残渣にtert-ブタノール(60mL)を加えて濃縮した。この操作をあと2回繰り返した。濃縮残渣にtert-ブタノール(36mL)を加え、SR-MDPZ[16]のtert-ブタノール溶液(61.1g,34.2mmol相当)を得た。得られたSR-MDPZのtert-ブタノール溶液を収率100%として次工程に用いた。
同じ方法で合成したSR-MDPZを酢酸エチルとn-ヘプタン混合溶媒により固体として単離し、NMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 11.59 (br s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.41-7.26 (br m, 3H), 7.22-7.08 (br m, 3H), 6.64-6.51 (br m, 1H), 5.07-4.91 (br m, 2H), 4.09-3.67 (br m, 5H), 3.47-3.32 (br m, 1H), 2.67-2.55 (br m, 2H), 2.21-2.15 (br m, 1H), 1.11 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
MS: m/z = 378 [M+H]
+
【0148】
工程M.SR-MDOP(化合物[17])の調製
【化18】
窒素雰囲気下、SR-MDPZ[16]のtert-ブタノール溶液(34.2mmol相当)にギ酸アンモニウム(10.8g,171mmol)、水(60mL)及び10%パラジウム炭素(川研ファインケミカル社製 Mタイプ,52.6%含水,1.20g)を添加した。反応混合液を40℃にて13時間撹拌した後、室温まで冷却し、不溶物を濾過で除去した。反応容器と不溶物をtert-ブタノール(24mL)で洗浄し、洗浄液と濾液に8M水酸化ナトリウム水溶液(25.7mL,205mmol)と塩化ナトリウム(13.2g)を添加した。反応混合液を50℃にて2時間撹拌した後、トルエン(84mL)を室温にて加え、有機層を分取した。得られた有機層を20%食塩水(60mL)で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムを添加し撹拌した後、硫酸ナトリウムを濾過した。濾過残渣をトルエン:tert-ブタノール=1:1混合溶液(48mL)で洗浄し、濾液と洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を留去した。濃縮残渣にトルエン(60mL)を添加し、50℃にて2時間撹拌した後、減圧下にて溶媒を留去した。濃縮残渣に再度トルエン(60mL)を加えて濃縮した。濃縮残渣にトルエン(48mL)を加え、室温にて1時間、次いで氷冷下にて1時間撹拌した。析出した固体を濾取し、得られた固体をトルエン(24mL)で洗浄した。得られた湿固体を減圧下にて乾燥することで、SR-MDOP[17](7.07g,29.1mmol)を収率84.8%で得た。
同じ方法で合成したSR-MDOPのNMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 11.57 (br s, 1H), 8.07 (s, 1H), 7.10 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 6.58 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 3.92-3.59 (br m, 4H), 3.49 (dd, 1H, J = 8.3, 7.2 Hz), 2.93 (dd, 1H, J = 7.2, 6.1 Hz), 2.61-2.53 (m, 2H), 2.12-2.01 (br m, 2H), 1.10 (d, 3H, J = 6.9 Hz).
MS: m/z = 244 [M+H]
+.
【0149】
工程N.化合物Aの1-エタノール和物(化合物[18])の調製
【化19】
窒素雰囲気下、SR-MDOP[17](5.00g,20.5mmol)にアセトニトリル(60mL)及びトリエチルアミン(416mg,4.11mmol)を添加した後、DPCN[21](3.69g,22.6mmol)のアセトニトリル(35mL)溶液を45℃にて滴下し、使用した滴下ロートをアセトニトリル(5.0mL)で洗浄し、洗浄液を反応混合液に添加した。反応混合液を45℃にて3時間撹拌した後、室温まで冷却した。反応後混合液に5%重曹水(25mL)、10%食塩水(25mL)及び酢酸エチル(50mL)を加えて撹拌した後、有機層を分取した。減圧下にて有機層の溶媒を留去した。濃縮残渣にテトラヒドロフラン(50mL)を加えて濃縮した。この操作をあと3回繰り返した。濃縮残渣にテトラヒドロフラン(50mL)を加え、溶液の水分含量が5.5%になるように水を添加し、析出した不溶物を濾過で除去した。反応容器と濾過残渣をテトラヒドロフラン(15mL)で洗浄し、洗浄液を濾液に添加した後、減圧下にて濾液の溶媒を留去した。濃縮残渣にエタノール(50mL)及び下記実施例15の方法で調製した化合物Aの結晶(5.1mg)を添加し、室温にて1時間撹拌した後、減圧下にて溶媒を留去し、エタノール(50mL)を加え再度濃縮した。濃縮残渣にエタノール(15mL)を加え、室温にて1時間撹拌した。析出した固体を濾取し、得られた固体をエタノール(20mL)で洗浄した。得られた湿固体を減圧下にて乾燥することで、化合物Aの1-エタノール和物[18](6.26g,17.6mmol)を収率85.5%で得た。
同じ方法で合成した化合物Aの1-エタノール和物のNMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 11.59 (br s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.11 (dd, 1H, J = 3.5, 2.3 Hz), 6.58 (dd, 1H, J = 3.5, 1.8 Hz), 4.34 (t, 1H, J = 5.1 Hz), 4.16 (t, 1H, J = 8.3 Hz), 4.09-3.92 (m, 3H), 3.84-3.73 (m, 1H), 3.71 (d, 1H, J = 19.0 Hz), 3.65 (d, 1H, J = 19.0 Hz), 3.58 (dd, 1H, J = 8.2, 5.9 Hz), 3.44 (dq, 2H, J = 6.7, 5.1 Hz), 2.69-2.60 (m, 2H), 2.23-2.13 (br m, 1H), 1.12 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 1.06 (t, 3H, J = 6.7 Hz).
MS: m/z = 311 [M+H]
+
【0150】
工程O.化合物A(化合物[19])の精製
【化20】
窒素雰囲気下、化合物Aの1-エタノール和物[18](4.00g,11.2mmol)及びn-ブタノール(32mL)を混合し、110℃にて溶解させた。85℃に冷却後、本法に従い調製した化合物Aの結晶(4.0mg)を添加し、85℃にて2時間、75℃にて1時間、室温にて16時間撹拌した。析出した固体を濾取し、得られた固体をn-ブタノール(8.0mL)及び酢酸エチル(8.0mL)で順次洗浄した。得られた湿固体を減圧下にて乾燥することで、化合物A[19](3.18g,10.2mmol)を収率91.3%で得た。
同じ方法で合成した化合物AのNMRとMSを測定した。
1H-NMR (DMSO-d
6) δ: 11.59 (br s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.11 (dd, 1H, J = 3.5, 2.5 Hz), 6.58 (dd, 1H, J = 3.5, 1.8 Hz), 4.16 (t, 1H, J = 8.3 Hz), 4.09-3.93 (m, 3H), 3.84-3.73 (m, 1H), 3.71 (d, 1H, J = 19.0 Hz), 3.65 (d, 1H, J = 19.0 Hz), 3.58 (dd, 1H, J = 8.2, 5.9 Hz), 2.69-2.59 (m, 2H), 2.23-2.13 (m, 1H), 1.12 (d, 3H, J = 7.2 Hz).
MS: m/z = 311 [M+H]
+
【0151】
同じ方法で合成した化合物Aについて、単結晶X線構造解析を行った。
(1)単結晶作製方法
LaPhaロボバイアル(登録商標)2.0mL広口バイアルに、10mgの化合物Aを入れ、クロロホルム0.5mLを加えて蓋をし、化合物Aを完溶させた。溶媒をゆっくりと蒸発させるため、テルモ(登録商標)シリンジ針で、蓋に取り付けられたセプタムに穴を開け、バイアルを室温静置した。得られた単結晶を構造解析に使用した。
(2)測定装置
ビームライン:SPring-8 BL32B2
検出器:Rigaku R-AXIS V diffractometer
(3)測定方法
0.71068Åの放射光を単結晶に当て、X線回折データを測定した。
(4)分析方法
得られた化合物Aのクロロホルム和物が有する塩素原子のX線異常散乱効果を利用する方法により、化合物Aの絶対立体配置を(3S,4R)と決定した。化合物Aの絶対立体配置より化合物Aの各製造中間体の立体構造を特定した。
【0152】
α晶の特性化
粉末X線回折(XRPD)
α晶は、スペクトリス社のPANalytical装置型番:X’Pert Proを用いて以下のデータ収集パラメータにおけるXRPDにより特性化した。
【表5】
【0153】
α晶のXRPDパターンを
図1に示し、対応データを以下の表1-8に示す。
【表6-1】
【表6-2】
【0154】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、以下のパラメータを有するTA Instruments型番Q2000装置で収集した:
サンプルサイズ:約3 mg
パン:アルミニウム密封パン
範囲:25~230℃
加熱速度:窒素気流下、2℃/分
α晶のDSCサーモグラムは
図4に示されており、185℃で開始し、188℃にピークを有する単一吸熱事象を示す。
【0155】
熱重量示差熱分析(TG-DTA)
TG-DTAデータは、以下のパラメータを有するMettler Toledo型番:TGA/SDTA851e/SF装置で収集した:
サンプル:約5 mg
範囲:25~250℃
加熱速度:窒素気流下、2℃/分
補外開始温度は186.29℃であり、重量減少は25~220℃の範囲では観測されなかった。α晶のTG-DTAデータを
図7に示す。
【0156】
固体
13
C NMR
固体
13C NMRデータは、以下のパラメータを有するBruker BioSpin Corporation AVANCE III 400装置で収集した:
プローブ:4 mm CP/MASプローブ
測定温度:室温
標準物質:グリシン(外部標準:低磁場ピークを176.03 ppmに設定した)
測定核:
13C(100.6228303 MHz)
回転速度:14.3 kHz
パルス繰り返し時間:5秒
積算回数:3072回
パルスモード:CP/MAS測定
α晶の固体
13C NMRデータは
図10に示されており、14.8、17.0、24.5、27.2、35.0、35.9、38.6、48.8、49.5、53.6、78.3、101.4、103.0、116.2、118.0、122.0、122.7、151.2、154.8、162.4及び163.3 ppmにピークを有する。
【0157】
実施例2
化合物A β晶の調製及び特性化
調製
500μmの篩を通した化合物A(3992.3 g, α晶)を、以下の条件下、スパイラルジェットミル100AS(ホソカワミクロン株式会社製)で砕いて、ノズルリング部に付着した化合物A(361.0 g)とともに粉砕物(3473.6 g)を得た。
【0158】
粉砕条件
使用気体:窒素
粉砕ノズル:直径1.5 mm x 4
エジェクターノズル:直径1.3 mm
粉砕気圧:0.50~0.60 MPa
エジェクターエア圧:0.50~0.60 MPa
化合物Aの供給速度:8 g/分
【0159】
ノズルリング部に付着した化合物A(50.0 g, 161 mmol)を1-ブタノール/アセトニトリル(1:3 v/v)(250 mL)の混合溶液に添加し、混合物を40℃にて10日間撹拌した。得られた懸濁液を室温まで冷却し、室温にてさらに24時間撹拌した。析出した結晶性物質をろ取した。得られた結晶性生成物を酢酸エチル(50 mL)で2回洗浄し、40℃にて減圧乾燥し、化合物Aのβ晶(35.5 g, 収率71%)を得た。
【0160】
特性化
粉末X線回折
β晶のXRPDパターンを
図2に示し、対応データを以下の表2-1に示す。装置及びデータ収集パラメータはα晶の特性化において上記実施例1で記載したとおりである。
【表7】
【0161】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、以下のパラメータを有するTA Instruments型番Q2000装置で収集した:
サンプルサイズ:約3 mg
パン:アルミニウム密封パン
範囲:25~230℃
加熱速度:窒素気流下、2℃/分
β晶のDSCサーモグラムは
図5に示されており、185℃で開始し、187℃にピークを有する単一吸熱事象を示す。
【0162】
熱重量示差熱分析(TG-DTA)
TG-DTAデータは、β晶の測定範囲が25~230℃である点を除き、上記実施例1に記載したとおり収集した。吸熱ピークは188.59℃にて検出され、補外開始温度は186.68℃であり、重量減少は25~220℃の範囲では観測されなかった。β晶のデータを
図8に示す。
【0163】
固体
13
C NMR
固体
13C NMRデータは、上記実施例1で記載したとおりβ晶について収集した。
13C NMRスペクトルは
図11に示されており、16.5、25.8、26.5、33.1、34.8、36.7、38.8、48.2、53.4、77.7、79.5、101.2、102.6、117.5、120.6、151.1、154.3及び166.1 ppmにピークを有する。
【0164】
実施例3
化合物A γ晶の調製及び特性化
調製例1
500μmの篩を通した化合物A(2491.5 g, α晶)を、以下の条件下、スパイラルジェットミル100AS(ホソカワミクロン株式会社製)で砕いて、粉砕物(2106.5 g)及びノズルリング部に付着した化合物A(247.9 g)を得た。
【0165】
粉砕条件
使用気体:窒素
粉砕ノズル:直径1.5 mm x 4
エジェクターノズル:直径1.3 mm
粉砕気圧:0.50~0.60 MPa
エジェクターエア圧:0.50~0.60 MPa
化合物Aの供給速度:4 g/分
【0166】
ノズルリング部に付着した化合物A(100 g, 322 mmol)を窒素下、ホルムアミド(330 mL)に添加し、種晶(化合物Aのβ晶もいくらか含まれうるγ晶1.00 g)を混合物に添加した。混合物を室温にて30日間撹拌した。結晶性析出物をろ取し、酢酸エチル(150 mL)で2回洗浄した。得られた湿結晶を窒素下、酢酸エチル(300 mL)に添加し、混合物を室温にて30分間撹拌した。結晶性析出物をろ取し、酢酸エチル(150 mL)で2回洗浄し、40℃にて減圧乾燥して化合物Aのγ晶(74.1 g, 収率74%)を得た。
【0167】
調製例2
化合物Aのα晶(少量だが未定量のβ晶を含む)(100 mg, 0.322 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(0.2 mL)に添加し、混合物を室温にて6日間撹拌した。結晶性析出物をろ取した。得られた湿結晶性物質を室温にて18時間減圧乾燥し、化合物Aのγ晶(13.7 mg, 収率13.7%)を得た。
【0168】
特性化
粉末X線回折
γ晶のXRPDパターンを
図3に示し、対応データを以下の表3-1に示す。装置及びデータ収集パラメータはα晶の特性化において上記実施例1で記載したとおりである。
【表8-1】
【表8-2】
【0169】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、以下のパラメータを有するTA Instruments型番Q2000装置で収集した:
サンプルサイズ:約3 mg
パン:アルミニウム密封パン
範囲:25~230℃
加熱速度:窒素気流下、2℃/分
γ晶のDSCサーモグラムは
図6に示されており、196℃で開始し、196℃にピークを有する単一吸熱事象を示す。
【0170】
熱重量示差熱分析(TG-DTA)
TG-DTAデータは、上記実施例1に記載したとおり収集した。吸熱ピークは198.68℃にて検出され、補外開始温度は197.38℃であり、重量減少は25~220℃の範囲では観測されなかった。γ晶のデータを
図9に示す。
【0171】
固体
13
C NMR
固体
13C NMRデータは、上記実施例1で記載したとおりγ晶について収集した。
13C NMRスペクトルは
図12に示されており、16.9、26.5、32.9、36.4、48.1、53.7、78.6、102.6、116.4、117.9、121.5、151.8、154.6及び162.9 ppmにピークを有する。
【0172】
実施例4
α晶のサンプル中のβ晶及びγ晶の定量
化合物Aのα晶の製造バッチ並びに化合物Aのα晶を含む軟膏製剤についてβ晶及びγ晶の存在を分析した。XRPD法を用いると、β晶及びγ晶は1w/w%レベルまで検出される。
本分析に用いた化合物A α晶のバッチを表4-1に示す。
【表9】
【0173】
本分析に用いた化合物Aのα晶(3%)を含む軟膏のバッチを表4-2に示す。RHは相対湿度を示す。Mは月単位の期間を示す。
【表10】
【0174】
以下のパラメータで操作したPANalytical X’Pert PRO粉末X線回折装置を用いて、上記バッチ及び軟膏におけるβ晶及びγ晶を定量した:
【表11】
【0175】
β晶の分析
試験サンプル(化合物Aのα晶、原薬)の調製
化合物A試験サンプルの一部をメノウ乳鉢で微粉末に粉砕した。約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0176】
試験サンプル(軟膏)の調製
軟膏試験サンプル約1 gをn-ヘキサン80 mL中に懸濁させた。フラスコの栓をし、30秒間激しく振盪した。混合物を定量用ろ紙(5B)を用いて吸引濾過し、5 mLのn-ヘキサンで5回洗浄した。析出物約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0177】
標準サンプルの調製
化合物A、ロットU(α晶)にロットP-3273-58(β晶)を添加して2、5及び10 w/w%の最終濃度を得、これを乳鉢を用いて混合した。約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0178】
手順
上記の装置設定及びデータ収集パラメータに従い、粉末X線回折測定を試験サンプル及び標準サンプルについて行った(第十七改正日本薬局方(2016年4月1日、英文版79~83頁、粉末X線回折測定法、一般試験法、方法及び装置)参照)。標準サンプル及び試験サンプルから得られた回折ピーク(10.6°)のピーク面積を自動積分又は手動積分により測定した。試験サンプルのβ晶の量(%)は、標準サンプルのピーク面積から作成される検量線を用いて算出した。
0%、2%、5%及び10% w/wのβ晶を含む標準サンプルから得られた粉末X線回折パターンを
図13に示す。
【0179】
γ晶の分析
試験サンプル(化合物Aのα晶、原薬)の調製
化合物A試験サンプルの一部をメノウ乳鉢で微粉末に粉砕した。約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0180】
試験サンプル(軟膏)の調製
軟膏試験サンプル約1 gをn-ヘキサン80 mL中に懸濁させた。フラスコの栓をし、30秒間激しく振盪した。混合物を定量用ろ紙(5B)を用いて吸引濾過し、5 mLのn-ヘキサンで5回洗浄した。析出物約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0181】
標準サンプルの調製
ロットU(α晶)に化合物AロットYKF56-28G(γ晶)を添加して1、2及び5 w/w%の最終濃度を得、これを乳鉢を用いて混合した。約10 mgをサンプルホルダーに載せた。
【0182】
手順
上記の装置設定及びデータ収集パラメータに従い、粉末X線回折測定を試験サンプル及び標準サンプルについて行った(第十七改正日本薬局方(2016年4月1日、英文版79~83頁、粉末X線回折測定法、一般試験法、方法及び装置)参照)。標準サンプル及び試験サンプルから得られた回折ピーク(16.6°)のピーク面積を自動積分又は手動積分により測定した。試験サンプルのピーク面積が1%標準サンプルのもの以下であれば、「1%以下」と記録した。試験サンプルのピーク面積が1%標準サンプルのものよりも大きく、2%標準サンプルのもの以下であれば、「2%以下」と記録した。試験サンプルのピーク面積が2%標準サンプルのものよりも大きく、5%標準サンプルのもの以下であれば、「5%以下」と記録した。
0%、1%、2%及び5% w/wのγ晶を含む標準サンプルから得られた粉末X線回折パターンを
図14に示す。
【0183】
結果
定量結果を表4-3に要約する。化合物A原薬ロットP、及び原薬ロットPから製造したJTE-052軟膏ロット番号223-1A及びロット番号239-1Aはすべて、測定可能な量のβ晶を含んでいた。
【表12】
【0184】
実施例5
単結晶X線データ
単結晶X線構造を、以下のパラメータに従い、α晶、β晶及びγ晶について得た。結晶構造データを表5-1に示す。
α晶の単結晶データを、照射波長0.71068Åを用いたRayonix MX225HE検出器及びSPring-8 BL41XUビームラインで得た。
β晶及びγ晶の単結晶データを、照射波長0.71068Åを用いたDECTRIS PILATUS3 6M検出器及びSPring-8 BL41XUビームラインで得た。
【表13】
【0185】
実施例6
化合物Aのα晶とβ晶の競争実験
化合物Aのα晶とβ晶を重量比1:1で混合し、この混合物(80 mg)に1-ブタノール(800μL)を添加した。この懸濁液を室温にて12日間撹拌した。同温にて濾過後、室温にて19時間減圧乾燥した。使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのβ晶、撹拌前の化合物Aのα晶とβ晶の重量比1:1混合物、及び得られた結晶について、粉末X線回折法で回折角2θと回折強度を測定した。本法における装置及びデータ収集パラメータは上記実施例1におけるα晶の特性化で記載したものと同一である。得られたスペクトルを
図15に示す。図は、下から、使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのβ晶、撹拌前の化合物Aのα晶とβ晶の重量比1:1混合物、及び撹拌後に得られた結晶のスペクトルを示す。
α晶の回折角2θが10.2°のピークとβ晶の回折角2θが10.6°のピークの回折強度比を撹拌前と撹拌後で比較した。以下の表に示すように、撹拌前に比べて撹拌後ではα晶のピークに対するβ晶のピークの回折強度比が高くなった。
【表14】
【0186】
実施例7
化合物Aのα晶とγ晶の競争実験
化合物Aのα晶とγ晶を重量比1:1で混合し、この混合物(100 mg)に1-ブタノール(1 mL)を添加した。この懸濁液を室温にて11日間撹拌した。同温にて濾過した。使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのγ晶、撹拌前の化合物Aのα晶とγ晶の重量比1:1混合物、及び得られた結晶について、粉末X線回折法で回折角2θと回折強度を測定した。本法における装置及びデータ収集パラメータは上記実施例1におけるα晶の特性化で記載したものと同一である。得られたスペクトルを
図16に示す。図は、下から、使用した化合物Aのα晶、使用した化合物Aのγ晶、撹拌前の化合物Aのα晶とγ晶の重量比1:1混合物、及び撹拌後に得られた結晶のスペクトルを示す。
α晶の回折角2θが10.2°のピークとγ晶の回折角2θが10.7°のピークの回折強度比を撹拌前と撹拌後で比較した。以下の表に示すように、撹拌前に比べて撹拌後ではα晶のピークに対するγ晶のピークの回折強度比が高くなった。
【表15】
【0187】
実施例8
化合物Aのβ晶とγ晶の競争実験
(1)化合物Aのβ晶とγ晶を重量比1:1で混合し、この混合物(150 mg)にホルムアミド(1 mL)を添加した。この懸濁液を室温にて1日間撹拌した。同温にて濾過した。
(2)化合物Aのβ晶とγ晶を重量比1:1で混合し、この混合物(150 mg)にN,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)を添加した。この懸濁液を室温にて1日間撹拌した。同温にて濾過した。
(3)化合物Aのβ晶とγ晶を重量比1:1で混合し、この混合物(800 mg)にジメチルスルホキシド(1 mL)を添加した。この懸濁液を室温にて1日間撹拌した。同温にて濾過した。
使用した化合物Aのβ晶、使用した化合物Aのγ晶、撹拌前の化合物Aのβ晶とγ晶の重量比1:1混合物、並びに(1)、(2)及び(3)にて得られた結晶について、粉末X線回折法で回折角2θと回折強度を測定した。本法における装置及びデータ収集パラメータは上記実施例1におけるα晶の特性化で記載したものと同一である。得られたスペクトルを
図17に示す。図は、下から、使用した化合物Aのγ晶、使用した化合物Aのβ晶、撹拌前の化合物Aのβ晶とγ晶の重量比1:1混合物、ホルムアミドから得られた結晶、N,N-ジメチルホルムアミドからのもの、及びジメチルスルホキシドからのもののスペクトルを示す。
(1)、(2)及び(3)の結果によれば、混合晶はγ単一晶を形成した。
【0188】
実施例9
溶解度試験
各試料(すなわち、化合物Aのα晶、β晶及びγ晶)を4 mL容量のガラスバイアルに量りとった。試験液3 mLをバイアルに加えて懸濁させた。日本薬局方の溶解度試験第1液の試験液のために約150 mgの試料を量りとり、日本薬局方の溶解度試験第2液及び水の試験液のために約15 mgを量りとった。各混合物を20℃の恒温振とう槽(タイテック社製)で3時間振とうした。振とう後,上澄み液を0.2μm孔径-4 mm径ポリテトラフルオロエチレンディスクフィルター(Millex-LG;ミリポア社製)で濾過した。測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で実施した。結果を下表に示す。
【表16】
α晶は測定した各溶媒にて最も高い溶解度を示し、γ晶は測定した各溶媒にて最も低い溶解度を示した。
【0189】
実施例10
製剤例
化合物A(例えば、α晶、β晶、γ晶又は上記いずれかの混合物)を含む製剤の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0190】
製剤例1(カプセルの製造)
1)化合物A 30mg
2)微結晶セルロース 10mg
3)乳糖 19mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1mg
成分1)、2)、3)及び4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0191】
製剤例2(錠剤の製造)
1)化合物A 10g
2)乳糖 50g
3)トウモロコシデンプン 15g
4)カルメロースカルシウム 44g
5)ステアリン酸マグネシウム 1g
成分1)、2)、3)の全量及び30gの成分4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの成分4)及び1gの成分5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり化合物Aを10mg含有する錠剤1000錠を得る。
【0192】
本明細書に記載のものに加え、本発明の種々の改変は、前述の記載から当業者に明らかであろう。そのような改変もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。本願に引用されるすべての特許、特許出願及び雑誌文献などの各文献はそのまま本明細書に参照により組み込まれる。