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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161461
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】がんの治療または予防用医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/535 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
A61K38/12 ZNA
A61K31/5377
A61K31/517
A61K31/506
A61K31/497
A61K31/47
A61K31/519
A61K31/44
A61K31/535
A61K31/4184
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C07K16/28
C07K16/22
A61K38/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135111
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2023575297の分割
【原出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】22196417.4
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】P 2022008247
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 仁志
(72)【発明者】
【氏名】平野 沙貴
(57)【要約】
【課題】従来にも増して、がんの治療または予防に優れた効果を発揮する医薬を提供すること。
【解決手段】第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が下記式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、医薬:



【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、
前記第一の有効成分が下記式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、前記第二の有効成分が分子標的剤である、医薬:
【化1】

【請求項2】
第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、
前記第一の有効成分が分子標的剤であり、前記第二の有効成分が下記式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、医薬:
【化2】

【請求項3】
前記第一の有効成分と、前記第二の有効成分とがキットとして提供される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
前記第一の有効成分と、前記第二の有効成分との併用が同時または別々の投与である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
第一の有効成分と第二の有効成分とが配合剤として併用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記分子標的剤は、MAPK/ERK経路阻害剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
前記分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤またはMEK阻害剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記EGFR阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラパチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗EGFR抗体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7または8に記載の医薬。
【請求項10】
前記EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体である、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
前記抗EGFR抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、請求項9または10に記載の医薬。
【請求項12】
前記抗EGFR抗体は、セツキシマブである、請求項9~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
前記VEGF阻害剤は、抗VEGF抗体である、請求項7~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
前記抗VEGF抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記抗VEGF抗体は、ベバシズマブである、請求項13または14に記載の医薬。
【請求項16】
前記SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155、RLY1971、SHP099、NSC-87877およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7~15のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項17】
前記SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7~16のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項18】
前記KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブ、MRTX849およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
前記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブ、セルメチニブ、CH4987655およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項7~18のいずれか一項に記載の医薬:
【化3】

【請求項20】
前記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物である、請求項7~19のいずれか一項に記載の医薬:
【化4】

【請求項21】
前記式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物の溶媒和物である、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
前記溶媒和物は、水和物である、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
前記式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、前記式(1)で表される化合物である、請求項1~20のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
前記がんは、固形がんまたは血液がんである、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項25】
前記がんは、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項26】
前記がんは、RAS遺伝子またはMAPK/ERK経路の異常に関連するがんである、請求項1~25のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療または予防用医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、遺伝子に異常が生じることにより、細胞が無制御に増殖する疾患である。がんの内科的治療法としては化学療法があり、様々な抗がん剤が用いられている。近年では、抗がん剤として、あるがん細胞に特異的に発現している分子、または、がん細胞において発現が亢進している分子に特異的に作用する分子標的剤が多数開発されている。分子標的剤としては、例えば、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ等の抗体医薬(特許文献1)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ等の低分子医薬等が知られている(特許文献2)。さらに近年は中分子医薬も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2018-076369号公報
【特許文献2】特開第2021-063014号公報
【特許文献3】国際公開第2021/090855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の中、がんの治療または予防について、薬効の更に優れる医薬が求められているのが現状である。
【0005】
そこで、本発明の課題は、従来にも増して、がんの治療または予防に優れた効果を発揮する医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の[1]~[94]を包含する。
[1]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」ともいう。)もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、医薬。
【化1】

[2]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が分子標的剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、医薬。
[3]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤である、医薬。
[4]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、医薬。
[5]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種である、医薬。
[6]第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、医薬。
[7]上記第一の有効成分と、上記第二の有効成分とがキットとして提供される、[1]~[6]のいずれかに記載の医薬。
[8]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、方法。
[9]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分が分子標的剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、方法。
[10]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤である、方法。
[11]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、方法。
[12]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種である、方法。
[13]第一の有効成分と、第二の有効成分とを対象に投与する、がんの治療または予防方法であって、上記第一の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、方法。
[14]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、使用のための第一の有効成分。
[15]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分が分子標的剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用のための第一の有効成分。
[16]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤である、使用のための第一の有効成分。
[17]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用のための第一の有効成分。
[18]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種である、使用のための第一の有効成分。
[19]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防における使用のための第一の有効成分であって、上記第一の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用のための第一の有効成分。
[20]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、使用。
[21]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分が分子標的剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用。
[22]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤である、使用。
[23]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用。
[24]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種である、使用。
[25]第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬の製造のための、第一の有効成分の使用であって、上記第一の有効成分がEGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される一種であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、使用。
[26]上記第一の有効成分と、上記第二の有効成分との併用が同時または別々の投与である(すなわち、上記第一の有効成分と、上記第二の有効成分とが同時にまたは別々に併用される)、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[27]第一の有効成分と第二の有効成分とが配合剤として併用される、[1]~[26]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[28]上記分子標的剤は、MAPK/ERK経路阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]および[27]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[29]上記分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]および[28]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[30]上記分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤またはMEK阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]および[29]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[31]上記分子標的剤は、EGFR阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]、[29]および[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[32]上記分子標的剤は、VEGF阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]、[29]および[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[33]上記分子標的剤は、SHP2阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]、[29]および[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[34]上記分子標的剤は、KRAS-G12C阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]、[29]および[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[35]上記分子標的剤はMEK阻害剤である、[1]、[2]、[7]、[8]、[9]、[14]、[15]、[20]、[21]、[26]、[27]、[28]、[29]および[30]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[36]上記EGFR阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラパチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗EGFR抗体からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]、[29]、[30]および[31]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[37]上記EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]、[29]、[30]、[31]および[36]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[38]上記抗EGFR抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、[36]または[37]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[39]上記抗EGFR抗体は、セツキシマブである、[36]~[38]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[40]上記VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗VEGF抗体からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[39]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[41]上記VEGF阻害剤は、抗VEGF抗体である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[40]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[42]上記抗VEGF抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、[40]または[41]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[43]上記抗VEGF抗体は、ベバシズマブである、[40]~[42]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[44]上記SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155、RLY1971、SHP099、NSC-87877およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[43]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[45]上記SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[44]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[46]上記SHP2阻害剤は、RMC4550もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[45]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[46-1]上記SHP2阻害剤は、TNO155もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[45]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[47]上記KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブ、MRTX849およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[46]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[48]上記KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブである、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[47]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[48-1]上記KRAS-G12C阻害剤は、MRTX849である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[47]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[49]上記KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[47]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[49-1]上記KRAS-G12C阻害剤は、MRTX849もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[47]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[50]上記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブ、セルメチニブ、CH4987655およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[49]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
【化2】

[51]上記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[50]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
【化3】

[52]上記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[51]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[53]上記MEK阻害剤は、トラメチニブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]及び[29]~[51]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[54]上記MEK阻害剤は、トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物である、[5]、[6]、[7]、[12]、[13]、[18]、[19]、[24]、[25]、[26]、[27]、[29]~[51]および[53]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[55]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の溶媒和物である、[1]~[54]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[56]上記溶媒和物は、水和物である、[55]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[57]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1である、[1]~[54]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[58]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記EGFR阻害剤が、セツキシマブである、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[59]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記VEGF阻害剤が、抗VEGF抗体である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[60]上記抗VEGF抗体は、ベバシズマブである、[59]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[61]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、RMC4550もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[61-1]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、TNO155もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[62]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、RLY1971もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[63]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記KRAS-G12C阻害剤が、ソトラシブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[63-1]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記KRAS-G12C阻害剤が、MRTX849もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[64]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[65]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1の水和物であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記MEK阻害剤は、トラメチニブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[66]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記EGFR阻害剤が、セツキシマブである、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[67]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、M上記APK/ERK経路阻害剤または上記VEGF阻害剤が、抗VEGF抗体である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[68]上記抗VEGF抗体は、ベバシズマブである、[67]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[69]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、RMC4550もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[69-1]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、TNO155もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[70]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記SHP2阻害剤が、RLY1971もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[71]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記KRAS-G12C阻害剤が、ソトラシブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[71-1]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記KRAS-G12C阻害剤が、MRTX849もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[72]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記MEK阻害剤は、式(2)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[73]化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であり、上記分子標的剤、上記MAPK/ERK経路阻害剤または上記MEK阻害剤は、トラメチニブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、[1]~[25]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[74]上記がんは、固形がんまたは血液がんである、[1]~[73]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[75]上記がんは、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]~[74]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[76]上記がんは、RAS遺伝子またはMAPK/ERK経路の異常(MAPK/ERK経路上のたんぱく質または当該たんぱく質を産生する遺伝子の異常)に関連するがんである、[1]~[75]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[77]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の異常な活性化である、[1]~[76]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[78]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路のたんぱく質の増幅による異常な活性化である、[1]~[77]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[79]上記MAPK/ERK経路の異常が、MAPK/ERK経路の遺伝子変異による異常な活性化である、[1]~[78]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[80]上記がんは、RAS遺伝子の異常に関連するがんである、[1]~[79]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[81]RAS遺伝子の異常が、RAS遺伝子のコーディング領域における変異および/またはRAS遺伝子のコピー数の増幅である、[80]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[82]RAS遺伝子が、KRAS遺伝子、NRAS遺伝子およびHRAS遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのRAS遺伝子である、[76]~[81]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[83]RAS遺伝子が、KRAS遺伝子である、[76]~[82]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[84]がんが、変異RASタンパク質の生成、および/またはRASタンパク質の生成の増大に関連する、[1]~[83]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[85]がんが、変異RASタンパク質の生成に関連する、[1]~[84]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[86]変異RASタンパク質が、変異KRASタンパク質、変異NRASタンパク質、および変異HRASタンパク質からなる群より選択される1つ以上の変異RASタンパク質である、[84]または[85]に記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[87]変異RASタンパク質が、G12、G13およびQ61からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸位置に変異を有する、[84]~[86]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[88]変異RASタンパク質が、G12、G13およびQ61からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸位置に変異(ただし、G12Dの変異を除く)を有する、[84]~[87]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[89]変異RASタンパク質が、変異KRASタンパク質である、[84]~[88]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[90]変異RASタンパク質が、変異KRASタンパク質であり、G12A、G12C、G12D、G12S、G12V、G13D、Q61H、およびQ61Kからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する、[84]~[89]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[91]変異RASタンパク質が、変異KRASタンパク質であり、G12A、G12C、G12S、G12V、G13D、Q61H、およびQ61Kからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する、[84]~[90]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[92]変異RASタンパク質が、変異NRASタンパク質であり、G12C、G12D、G13D、G13V、Q61K、およびQ61Lからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する、[84]~[88]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[93]変異RASタンパク質が、変異NRASタンパク質であり、G12C、G13D、G13V、Q61K、およびQ61Lからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する、[84]~[88]及び[92]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
[94]変異RASタンパク質が、変異HRASタンパク質であり、G13Rのアミノ酸変異を有する、[84]~[88]のいずれかに記載の医薬、方法、使用のための第一の有効成分、または使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来にも増して、がんの治療または予防に優れた効果を発揮する医薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1における、NCI-H358を用いた、化合物1とソトラシブとの併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図1は、NCI-H358から抽出したたんぱく質(KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図2図2は、実施例1における、NCI-H1373を用いた、化合物1とソトラシブとの併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図2は、NCI-H1373から抽出したたんぱく質(KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図3図3は、実施例1における、NCI-H441を用いた、化合物1とRMC-4550(RMC)との併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図3は、NCI-H441から抽出したたんぱく質(KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図4図4は、実施例1における、NCI-H441を用いた、化合物1とトラメチニブ(trame)との併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図4は、NCI-H441から抽出したたんぱく質(KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図5図5は、実施例1における、NCI-H358を用いた、化合物1と化合物2との併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図5は、NCI-H358から抽出したたんぱく質(KRAS、KRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図6図6は、実施例1における、NCI-H441を用いた、化合物1と化合物2との併用による、RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図6は、NCI-H441から抽出したたんぱく質(KRAS、KRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKTおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図7図7は、実施例2における、NCI-H358を用いた、化合物1とRMC-4550との併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。図7aの横軸は、RMC-4550の濃度、縦軸は化合物1の濃度をそれぞれ表わす。図7aの各セルには、それぞれの濃度におけるGI(Growth Inhibition、増殖抑制率(%))が示されている。図7bの横軸は、RMC-4550の濃度を、RMC-4550単剤でGI155を与える濃度(0.55μM)で割った値、縦軸は、化合物1の濃度を、化合物1単剤でGI155を与える濃度(0.033μM)で割った値を表わす。RMC-4550と化合物1とを併用した場合にGI155を与える濃度を測定し、図7bのグラフにプロットした。
図8図8は、実施例2における、NCI-H441を用いた、化合物1とRMC-4550との併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。図8aの横軸は、RMC-4550の濃度、縦軸は化合物1の濃度をそれぞれ表わす。図8aの各セルには、それぞれの濃度におけるGI(%)が示されている。図8bの横軸は、RMC-4550の濃度を、RMC-4550単剤でGI100を与える濃度(0.35μM)で割った値、縦軸は、化合物1の濃度を、化合物1単剤でGI100を与える濃度(0.0055μM)で割った値を表わす。RMC-4550と化合物1とを併用した場合にGI100を与える濃度を測定し、図8bのグラフにプロットした。
図9図9は、実施例2における、NCI-H358を用いた、化合物1とトラメチニブ(Trametinib)との併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。図9aの横軸は、トラメチニブの濃度、縦軸は化合物1の濃度をそれぞれ表わす。図9aの各セルには、それぞれの濃度におけるGI(%)が示されている。図9bの横軸は、トラメチニブの濃度を、トラメチニブ単剤でGI50を与える濃度(0.00035μM)で割った値、縦軸は、化合物1の濃度を、化合物1単剤でGI50を与える濃度(0.0046μM)で割った値を表わす。トラメチニブと化合物1とを併用した場合にGI50を与える濃度を測定し、図9bのグラフにプロットした。
図10図10は、実施例3における、LoVoを用いた、化合物1とセツキシマブ(Cetuximab)との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は細胞移植後の経過日数を表す。
図11図11は、実施例4のIn vivo RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。図中の「Cetu」は、セツキシマブを意味する。より具体的には、図11は、実施例4の腫瘍細胞から抽出したたんぱく質(KRAS、KRAS-GTP、ERK、AKT、EGFR、pERK、pAKTおよびpEGFR)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図12図12は、実施例5における、AsPC-1(すい臓がん:KRAS G12D変異株)を用いた、化合物1とベバシズマブ(Bevacizumab)との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は細胞移植後の経過日数を表す。
図13図13は、実施例6における、SW837を用いた、化合物1とソトラシブとの併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。
図14図14は、実施例7における、HCC-1171およびNCI-H1373を用いた、化合物1とMRTX849との併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。
図15図15は、実施例7における、HCC-1171、NCI-H23、NCI-H1373およびUM-UC-3を用いた、化合物1とTNO155との併用による細胞増殖阻害活性評価の結果を示す図である。
図16図16は、実施例8における、CTG-2579(肺がん:KRAS G12C変異株)を用いた、化合物1とソトラシブとの併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は投与開始日を0日とし、投与開始からの経過日数を表す。
図17図17は、実施例9における、In vivo RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図17は、実施例9の腫瘍細胞から抽出したたんぱく質(KRAS、KRAS-GTP、ERK、pERK、AKTおよびpAKT)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
図18図18は、実施例10における、LU65(肺がん:KRAS G12C変異株)およびUM-UC-3(膀胱がん KRAS G12C変異株)を用いた、化合物1とMRTX849との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は細胞移植後の経過日数を表す。
図19図19は、実施例11における、NCI-H1373(肺がん:KRAS G12C変異株)を用いた、化合物1とTNO155との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は投与開始日を0日とし、投与開始からの経過日数を表す。
図20図20は、実施例12における、NCI-H441(肺がん:KRAS G12V変異株)を用いた、化合物1と化合物2との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は細胞移植後の経過日数を表す。
図21図21は、実施例12における、NCI-H1373(肺がん:KRAS G12C変異株)を用いた、化合物1と化合物2との併用によるin vivo抗腫瘍活性評価の結果を示す図である。縦軸は、腫瘍体積を表し、横軸は投与開始日を0日とし、投与開始からの経過日数を表す。
図22図22は、実施例13における、In vivo RASシグナル阻害活性評価の結果を示す図である。より具体的には、図22は、実施例13の腫瘍細胞から抽出したたんぱく質(KRAS、KRAS-GTP、ERK、pERK、AKT、pAKT、MEKおよびpMEK)のウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の治療または予防用医薬、および、治療または予防方法は、ヒトに対して投与または適用されるものであってよい。本明細書において、範囲を示す「~」とはその両端の値を含み、例えば、「A~B」は、A以上であり、かつB以下である範囲を意味する。本明細書において、「約」という用語は、数値と組み合わせて使用される場合、その数値の+10%および-10%の範囲を意味する。本発明において、「および/または」との用語の意義は、「および」と「または」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B、および/またはC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)AおよびB、(v)AおよびC、(vi)BおよびC、(vii)A、B、およびC。
【0010】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」ともいう。)もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、上記第二の有効成分が分子標的剤である、医薬である。
【化4】
【0011】
本発明の他の実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が分子標的剤であり、上記第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、医薬である。
【0012】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物と分子標的剤とが併用されるように、本発明の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本発明の分子標的薬は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして用いることができる。好ましくは、分子標的剤はMAPK/ERK経路阻害剤である。より好ましくは、分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群から選択される一つである。
【0013】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分が、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第2の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤である。
【0014】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分がMAPK/ERK経路阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0015】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とMAPK/ERK経路阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のMAPK/ERK経路阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。
【0016】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第二の有効成分がEGFR阻害剤である。
【0017】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、上記第一の有効成分がEGFR阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0018】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とEGFR阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のEGFR阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。EGFR阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラパチニブ、もしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物および抗EGFR抗体からなる群から選択される少なくとも一種であってよく、抗EGFR抗体であってもよい。好ましくは、EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体であってもよい。抗EGFR抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有していてもよく、セツキシマブであってもよい。より好ましくは、EGFR阻害剤はセツキシマブであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第二の有効成分がVEGF阻害剤である。
【0020】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分がVEGF阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0021】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とVEGF阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のVEGF阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブ、もしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗VEGF抗体からなる群から選択される少なくとも一種であってよく、抗VEGF抗体であってもよく、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有していてもよく、ベバシズマブ、ラムシルマブ又はアフリベルセプトであってもよい。VEGF阻害剤としては、抗VEGF抗体が好ましく、ベバシズマブがより好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第二の有効成分がSHP2阻害剤である。
【0023】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用されるがんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分がSHP2阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0024】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とSHP2阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第2の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のSHP2阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155、RLY1971、SHP099、NSC-87877およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種であってよく、好ましくは、SHP2阻害剤としては、RMC4550、RLY1971、TNO155もしくはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物を挙げることができる。より好ましくは、SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155もしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物である。
【0025】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第二の有効成分がKRAS-G12Cの阻害剤である。
【0026】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分がKRAS-G12C阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0027】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とKRAS-G12C阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のKRAS-G12C阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブ、MRTX849およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種であってよく、好ましくは、ソトラシブ、MRTX849もしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物である。
【0028】
本発明の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であり、第二の有効成分がMEK阻害剤である。
【0029】
本発明の別の一実施形態は、第一の有効成分を含み、第二の有効成分と併用される、がんの治療または予防用医薬であって、第一の有効成分がMEK阻害剤であり、第二の有効成分が化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0030】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物とMEK阻害剤とが併用されるように、本実施形態に記載の化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができ、本実施形態に記載のMEK阻害剤は、第一の有効成分または第二の有効成分のいずれかとして使用することができる。MEK阻害剤としては、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブ、セルメチニブ、CH4987655およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができ、好ましくは、式(2)で表される化合物、トラメチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物を挙げることができる。より好ましくは、MEK阻害剤として、式(2)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を挙げることができる。
【0031】
上記第一の有効成分と、上記第二の有効成分とはキットとして提供されてよい。本発明の更なる実施形態は、上記第一の有効成分と、上記第二の有効成分とを含むキットということもできる。本発明の医薬はキットとして提供されてよい。本発明の別の実施形態は、医薬を含むキットであってよい。
【0032】
「併用」とは、有効成分を組み合せて用いることを意味する。例えば、第一の有効成分および第二の有効成分の併用とは、「第一の有効成分および第二の有効成分を含む単一の製剤として投与する態様」(すなわち、第一の有効成分と第二の有効成分とが配合剤(複合薬)として併用される態様)と、「第一の有効成分および第二の有効成分がそれぞれ別個の製剤として同時にまたは別々に投与される態様」とを含む。後者の態様においては、第一の有効成分を含有する製剤を先に投与してもよいし、第二の有効成分を含有する製剤を先に投与してもよい。後者の態様は、「第一の有効成分および第二の有効成分を別々に製剤化して、同一投与経路で同時に投与する態様」、「第一の有効成分および第二の有効成分を別々に製剤化して、同一投与経路で時間差をつけて別々に投与する態様」、「第一の有効成分および第二の有効成分を別々に製剤化して、異なる投与経路(同一患者の異なる部位から投与する)で同時に投与する態様」および「第一の有効成分および第二の有効成分を別々に製剤化して、異なる投与経路で時間差をつけて別々に投与する態様」のいずれかとしてよい。「第一の有効成分および第二の有効成分を別々に製剤化して、同一投与経路で同時に投与する態様」の場合、投与直前に両薬剤(第一の有効成分を含む薬剤および第二の有効成分を含む薬剤)を混合してもよい。「別々に」とは、ある製剤を他の製剤の投与前または投与後に投与することを意味する。
【0033】
言い換えれば、「併用」とは、一方の有効成分が患者の体内に存在している状態で他の有効成分を患者の体内に存在させる使用方法ともいえる。すなわち、患者の体内、例えば血中において第一の有効成分および第二の有効成分が同時に存在するように投与される態様が好ましく、患者に対して、第一の有効成分及び第二の有効成分をそれぞれ含むある薬剤を同時に投与するか、第一の有効成分又は第二の有効成分を含むある薬剤を投与してから48時間以内にもう一方の有効成分を含む他の薬剤を投与する態様が好ましい。
【0034】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、化合物1であってよく、化合物1の溶媒和物であってよく、化合物1の水和物であってもよい。
【0035】
化合物1の塩としては、製剤学的に許容される塩が挙げられ、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;アルギニンなどのアミノ酸との塩等を挙げることができる。これらの塩は、例えば、化合物と酸または塩基との接触により製造される。なお、本明細書において、溶媒和物は、溶媒と共に単一の分子集団を形成していれば特に限定されないが、薬剤の投与に伴って服用(摂取)可能な溶媒により形成される溶媒和物である。例えば、水和物、アルコール水和物(エタノール水和物、メタノール水和物、1-プロパノール水和物、2-プロパノール水和物等)、ジメチルスルホキシド等の単一溶媒との溶媒和物だけでなく、1分子の化合物に対して複数分子の溶媒との溶媒和物を形成したものや、1分子の化合物に対して複数種の溶媒との溶媒和物を形成したものを挙げることができる。溶媒が水の場合は水和物という。溶媒和物は、例えば、化合物と溶媒との接触により製造され、塩の溶媒和物は、例えば、化合物塩と溶媒との接触により製造される。化合物の塩または化合物もしくは化合物の塩の溶媒和物は、化合物(フリー体)と同様にすべて活性体である。本明細書において、「(それらの)溶媒和物」には、化合物1の溶媒和物、分子標的剤の溶媒和物、化合物1の塩の溶媒和物、および分子標的剤の1つの塩の溶媒和物が含まれる。
【0036】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物には、結晶多形が存在することもあるが、いずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物には、非晶質体も含まれる。
【0037】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、1回につき0.001~100mg(0.001~100mg/kg/day)が好ましく、0.003~20mg/kg/dayがより好ましく、0.003~10mg/kg/dayが更に好ましい。化合物1の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療または予防効果がより高まる。化合物1の投与回数は、例えば、1日1回、1日2回、または1日3回とすることができるが、1日1回がより好ましい。分子標的薬剤にも同じ用量および/または用法を適用することができる。
【0038】
化合物1は、例えば、国際公開第2021/090855号公報に記載の方法、Fmoc法によるペプチド合成法、またはSolid phase peptide synthesis (Bachem社発行、[2021年12月24日検索]、インターネットURL:https://www.bachem.com/wp-admin/admin-ajax.php?juwpfisadmin=false&action=wpfd&task=file.download&wpfd_category_id=180&wpfd_file_id=213455&token=&preview=1、もしくはPeptide Guide, No: 2004505, published by Global Marketing Bachem AG,2020.)などに従って製造することができる。
【0039】
本明細書において、「分子標的剤」とは、抗腫瘍効果を持つ薬剤であって特定のたんぱく質を特異的に阻害する薬剤を意味する。なお、本明細書において、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、分子標的剤に含まれない。分子標的剤としては、MAPK/ERK経路阻害剤等が挙げられ、がんの治療または予防用医薬として使用され得る。本明細書中で、「MAPK/ERK経路阻害剤」とは、MAPK/ERKシグナルに関与する標的の阻害剤を指し、増殖因子及びその受容体の阻害剤、並びにキナーゼ阻害剤が含まれる。例えば、MAPK/ERK経路阻害剤としては、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS阻害剤、NRAS阻害剤、HRAS阻害剤、KRAS-GTP阻害剤、NRAS-GTP阻害剤、HRAS-GTP阻害剤、KRAS-G12C阻害剤、ERK阻害剤、AKT阻害剤、MEK阻害剤を挙げることができる。分子標的剤は、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤およびMEK阻害剤からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、SHP2阻害剤、KRAS-G12C阻害剤またはMEK阻害剤であってもよい。好ましくは、分子標的剤はEGFR阻害剤である。EGFR阻害剤は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラパチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗EGFR抗体からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、抗EGFR抗体であってよい。好ましくは、EGFR阻害剤は抗EGFR抗体である。抗EGFR抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有していてよく、セツキシマブであってよい。より好ましくは、EGFR阻害剤はセツキシマブである。VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、アキシチニブ、レゴラフェニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物、および抗VEGF抗体からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、抗VEGF抗体であってよく、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有していてよく、ベバシズマブ、ラムシルマブ、またはアフリベルセプトであってよい。VEGF阻害剤としては、抗VEGF抗体が好ましく、ベバシズマブがより好ましい。SHP2阻害剤は、RMC4550、TNO155、RLY1971、SHP099、NSC-87877およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、RMC4550、TNO155およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物であってよい。好ましくは、SHP2阻害剤としては、RMC4550、TNO155、RLY1971およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される一種を挙げることができる。より好ましくは、SHP2阻害剤としては、RMC4550、TNO155もしくはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物を挙げることができる。KRAS-G12C阻害剤は、ソトラシブ、MRTX849およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、好ましくは、ソトラシブもしくはその塩またはそれらの溶媒和物、あるいは、MRTX849もしくはその塩またはそれらの溶媒和物であってよい。MEK阻害剤は、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブ、セルメチニブ、CH4987655およびそれらの塩ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、好ましくは、下記式(2)で表される化合物、トラメチニブもしくはそれらの塩またはそれらの溶媒和物であってよい。より好ましくは、MEK阻害剤として、下記式(2)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を挙げることができる。
【化5】
【0040】
分子標的剤は、商業的供給業者から手に入れることもできるし、公知の方法に従って製造することもできる。
【0041】
ゲフィチニブ(CAS番号:184475-35-2、N-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリン-4-イルプロポキシ)キナゾリン-4-アミン)は、下記式(3)で表される化合物である。ゲフィチニブは、イレッサとして用いられている。
【化6】
【0042】
エルロチニブ(CAS番号:183321-74-6、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン)は、下記式(4)で表される化合物である。エルロチニブは、エルロチニブ塩酸塩、またはタルセバとして用いられている。
【化7】
【0043】
アファチニブ(CAS番号:439081-18-2、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミドは、下記式(5)で表される化合物である。アファチニブは、アファチニブマレイン酸塩、またはジオトリフとして用いられている。
【化8】
【0044】
オシメルチニブ(CAS番号:1421373-65-0、N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エンアミドは、下記式(6)で表される化合物である。オシメルチニブは、オシメルチニブメシル酸塩、またはタグリッソとして用いられている。
【化9】
【0045】
ラパチニブ(CAS番号:231277-92-2、N-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6-[5-[(2-メチルスルホニルエチルアミノ)メチル]-2-フリル]キナゾリン-4-アミンは、下記式(7)で表される化合物である。ラパチニブは、ラパチニブトシル酸塩水和物、またはタイケルブとして用いられている。
【化10】
【0046】
RMC-4550(CAS番号:2172651-73-7、3-[(3S,4S)-4-アミノ-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカ-8-イル]-6-(2,3-ジクロロフェニル)-5-メチル-2-ピラジンメタノール)は、下記式(8)で表される化合物である。
【化11】
【0047】
TNO155(CAS番号:1801765-04-7、(3S,4S)-8-(6-アミノ-5-((2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イル)チオ)ピラジン-2-イル)-3-メチル-2-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカン-4-アミン)は、下記式(9)で表される化合物である。
【化12】
【0048】
RLY1971は、CAS番号:2668298-71-1で表される化合物である。
【0049】
SHP099(CAS番号:1801747-42-1、6-(4-アミノ-4-メチル-1-ピペリジニル)-3-(2,3-ジクロロフェニル)-2-ピラジンアミン)は、下記式(10)で表される化合物である。
【化13】
【0050】
NSC-87877(CAS番号:56990-57-9、8-ヒドロキシ-7-[2-(6-スルホ-2-ナフタレニル)ジアゼニル]-5-キノリンスルホン酸)は、下記式(11)で表される化合物である。
【化14】
【0051】
ソトラシブ(CAS番号:2296729-00-3、4-((S)-4-アクリロイル-2-メチルピペラジン-1-イル)-6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-メチルピリジン-3-イル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンは、は、下記式(12)で表される化合物である。ソトラシブは、AMG510、またはLumakrasとして用いられている。
【化15】
【0052】
MRTX849(CAS番号:2326521-71-3、2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-1-(2-フルオロアクリロイル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルは、下記式(13)で表される化合物である。MRTX849は、アダグラシブとして用いられている。
【化16】
【0053】
トラメチニブ(CAS番号:871700-17-3、N-[3-[3-シクロプロピル-5-(2-フルオロ-4-ヨード-フェニルアミノ)-6,8-ジメチル-2,4,7-トリオキソ-3,4,6,7-テトラヒドロ-2H-ピリド[4,3-d]ピリミジン-1-イル]フェニル]アセトアミドは、は、下記式(14)で表される化合物である。トラメチニブは、トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物、またはメキニストとして用いられている。
【化17】
【0054】
化合物2(CAS番号:2677856-11-8、2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド、2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド)は、下記式(2)で表される化合物である。化合物2は、例えばナトリウム塩として用いられている。
【化18】
【0055】
CH4987655(CAS番号:874101-00-5、3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-5-[(テトラヒドロ-3-オキソ-2H-1,2-オキサジン-2-イル)メチル]ベンズアミド、RO4987655)は、下記式(15)で表される化合物である。
【化19】
【0056】
セルメチニブ(CAS番号:606143-52-6、6-(4-ブロモ-2-クロロアニリノ)-7-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルベンゾイミダゾール-5-カルボキサミドは、下記式(16)で表される化合物である。セルメチニブは、セルメチニブ硫酸塩、またはKOSELUGOとして用いられている。
【化20】
【0057】
ソラフェニブ(CAS番号:284461-73-0、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミド、下記式(17)で表される化合物である。ソラフェニブは、ソラフェニブトシル酸塩、またはネクサバールとして用いられている。
【化21】
【0058】
パゾパニブ(CAS番号:444731-52-6、5-[[4-[(2,3-ジメチルインダゾール-6-イル)-メチル-アミノ]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-ベンゼンスルホンアミド、下記式(18)で表される化合物である。パゾパニブは、パゾパニブ塩酸塩、またはヴォトリエントとして用いられている。
【化22】
【0059】
スニチニブ(CAS番号:557795-19-4、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-5-[(Z)-(5-フルオロ-2-オキソ-インドリン-3-イリデン)メチル]-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドは、下記式(19)で表される化合物である。スニチニブは、スニチニブリンゴ酸塩、またはスーテントとして用いられている。
【化23】
【0060】
アキシチニブ(CAS番号:319460-85-0 、N-メチル-2-[[3-[(E)-2-(2-ピリジル)ビニル]-1H-インダゾール-6-イル]スルファニル]ベンズアミドは、下記式(20)で表される化合物である。アキシチニブは、インライタとして用いられている。
【化24】
【0061】
レゴラフェニブ(CAS番号:755037-03-7、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]-3-フルオロ-フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミド、下記式(21)で表される化合物である。レゴラフェニブは、レゴラフェニブ水和物、またはスチバーガとして用いられている。
【化25】
【0062】
分子標的剤の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、1日0.005~100mg(0.005~100mg/kg/day)が好ましく、0.01~75mg/kg/dayがより好ましく、0.02~50mg/kg/dayが更に好ましく、5~40mg/kg/dayが最も好ましい。分子標的剤の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療または予防効果がより高まる。分子標的剤の投与回数は、例えば、1週間に1回以上とすることができ、1週間に2回とすることができる。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物にも、同一の用量及び/又は用法を適用することができる。
【0063】
化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤の投与量は、投与される対象の体重1kg当たり、それぞれ、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が0.001~100mg/kg/dayおよび分子標的剤が0.005~100mg/kg/dayが好ましく、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が0.003~20mg/kg/dayおよび分子標的剤が0.01~75mg/kg/dayがより好ましく、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が0.003~10mg/kg/dayおよび分子標的剤が0.02~30mg/kg/dayが更に好ましい。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤の投与量がこれらの範囲にあると、がんの治療または予防効果がより高まる。AUC、Cmax等の血中薬物濃度及び患者の状態を観察しながら、適宜用量及び用法を調節することができる。適切な投与量及び投与回数(投与頻度)は、例えば、分子標的薬の添付文書を参照することもできる。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の用法は、例えば、1日1回以上であってもよく、1日2回であってもよい。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の用法は、1日1回が好ましい。
【0064】
本発明において、投与方法としては、経口的、直腸的、非経口的(静脈内的、筋肉内的、皮下的、経皮吸収的)、槽内的、膣内的、腹腔内的、膀胱内的、または局所的(注射、点滴、散剤、軟膏、ゲルまたはクリーム)投与および吸入(口腔内または鼻スプレー)などが挙げられる。その投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、水性および非水性の経口用溶液および懸濁液、および個々の投与量に小分けするのに適応した容器に充填した非経口用溶液が挙げられる。また投与形態は、皮下移植のような調節された放出処方物を包含する種々の投与方法に適応させることもできる。投与方法は、第一の有効成分と第二の有効成分とに等しく適用できる。第一の有効成分および第二の有効成分は薬剤として使用することができ、製剤または配合剤として投与することができる。
【0065】
第一の有効成分を、例えば上記の投与方法のいずれかとし、第二の有効成分を、例えば第一の有効成分の投与方法と同一または異なる投与方法とすることができる。第一の有効成分と第二の有効成分との投与の間隔は、例えば0日~14日の間隔、0日~10日の間隔、または0日~7日の間隔とすることができる。投与の間隔は、例えば、AUC、Cmax、Tmax、消失半減期、対象の健康状態を指標に決定できる。例えば、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が経口(錠剤、カプセル剤等)および分子標的剤が点滴でそれぞれ投与されることができる。例えば、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤がいずれも経口(錠剤、カプセル剤等)で投与されることもできる。例えば、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が点滴および分子標的剤が経口(錠剤、カプセル剤等)でそれぞれ投与されることもできる。例えば、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤がいずれも点滴で投与されることもできる。このような場合、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤は、1日2回、1日1回、1週1回、2週1回などの任意の間隔で投与されてよい。より具体的には、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物と分子標的剤とがいずれも1日1回投与されてよく、この場合、食前、食間、または食後に投与されてよい。食前、食間、または食後とは、朝食、昼食、夕食、夜食、または間食のいずれかの食前、食間、または食後であってよい。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物と分子標的剤との投与間隔が24時間以内であれば、両者が1日1回投与されたことになりうる。必要に応じて、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤がそれぞれ、1日2回および1日1回投与されること、1日1回および1日1回投与されること、1日1回および1日2回投与されること、1日1回および2日に1回投与されること、1日1回および3日に1回投与されること、1日1回および7日に1回投与されること、ならびに、1日2回および7日に1回投与されることもある。必要に応じて、化合物1及び/又は分子標的剤の、AUC、Cmax、Tmaxもしくは消失半減期、あるいは患者の健康状態に基づき、分子標的剤の投与間隔のみを増減することも、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の投与間隔のみを増減することもできる。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の投与開始日に分子標的剤を投与開始してもよく、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の投与開始日と分子標的剤の投与開始日とが別であってもよい。投与期間は7日間を1クールとし、総クール数は1クール以上とすることができ、2クール以上とすることもできる。また、各クールは連続して行っても、休薬期間を設けてもよい。クールの途中で休薬期間を設けてもよい。必要に応じて、クール中に化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物のみを継続投与して分子標的剤を休薬することも、化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物のみを休薬して分子標的剤を継続投与することもできる。化合物1もしくはその塩またはそれらの溶媒和物および分子標的剤を、同じ錠剤、カプセル剤等に含めることもできる。
【0066】
本発明にかかる医薬製剤は、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物や分子標的剤などの有効成分に加えて、医薬的に許容し得る担体を導入し、公知の方法で製剤化することができる。製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、着香料及び必要に応じて安定剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調製剤、保存剤、酸化防止剤などを使用することができ、一般に医薬製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化することができる。製剤においては、医薬品に使用される有効成分を、公知の方法により、その使用方法や使用目的に応じて、最適な形状や性状、すなわち剤形に加工することができる。一般的に使用される剤形には、注射剤、懸濁剤、乳剤、点眼剤等の液状の医薬品製剤(液剤)及び錠剤、散剤、細粒、顆粒、コーティング錠、カプセル剤、ドライシロップ、トローチ剤、坐剤等の固形の医薬品製剤(固形製剤)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、化合物1もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物や分子標的剤に例示される有効成分を含む製剤を本発明の医薬として使用することができる。
【0067】
本発明の治療または予防用医薬は、第一の有効成分および第二の有効成分のいずれかまたは両方を、医薬として許容される添加剤と混合して用いてもよい。医薬として許容される添加剤は、当業者であれば周知な添加剤を適宜選択し、必要に応じて複数の添加剤を適宜用いることができる。添加剤は、経口剤または注射剤によって、適宜選択され、例えば水、エタノール、生理食塩水、流動パラフィン、界面活性剤、ショ糖等と混合したものであってよく、得られた混合物をカプセルに封入したものであってよい。
【0068】
がんとしては、固形がんまたは血液がんが挙げられ、いずれのタイプも、制御不能に増殖する異常な細胞で構成される。固形がんは1つ又は多数の腫瘤を形成するが、血液がんは血流を介して全身を循環する。がんは、例えば、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、すい臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、皮膚がん、白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。がんは、RAS遺伝子の異常に関連するがんであってもよい。好ましくは、癌は肺がん、すい臓がん又は大腸がんである。
【0069】
本明細書において「異常」とは、細胞内のさまざまな染色体、遺伝子、タンパク質、シグナル伝達カスケードが正常な働きや制御から乖離している状態を指し、通常、これらの恒常的活性化が引き金となって起こる。
【0070】
本明細書において「異常な活性化」とは、細胞内のさまざまな染色体、遺伝子、タンパク質及びシグナルカスケードが正常細胞よりも活性化されている状態を指し、例えば、遺伝子の変異が原因の1つである場合があり(Cancer Metastasis Rev, 2013, 32, 147-162)、細胞における変異体の関与を直接定量的に測定するために、例えば、LC/MS-MSベースアッセイによって細胞活性化を測定することができる(Cancer Discov., 2016, 6, 316-329)。
【0071】
「タンパク質の増幅」とは、MAPK/ERK経路に関与するタンパク質(例:KRAS、NRAS、HRAS、KRAS-GTP、NRAS-GTP、HRAS-GTP、ERK、AKT、MEK、pERK、pAKT、pMEK)の増幅等、生細胞におけるタンパク質の合成及び増幅をいう。タンパク質が増幅していることは、ウェスタンブロット法や比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)等により測定し、正常細胞のタンパク質と比較することにより確認することができる(Nat.Rev.Drug Discov., 2020, 19,533-552, Molecular Cytogenetics, 2015, 8:103)。
【0072】
一局面において、がんは、RAS遺伝子の異常に関連するがんを含む。RAS遺伝子の異常に関連するがんとは、例えば、がん細胞がRAS遺伝子のコーディング領域における変異および/またはRAS遺伝子のコピー数の増幅を有しており、RAS活性の増大(RASタンパク質の生成の増大を含む)が見られるがんをいう。RAS遺伝子のコーディング領域における変異とは、例えば、RAS遺伝子コーディング領域における1又は複数の塩基欠失、付加または置換をいう。RAS遺伝子のコピー数の増幅とは、通常染色体上に存在するRAS遺伝子のコピー数よりも多くのコピー数のRAS遺伝子が存在することをいう。多くのコピー数とは、正常細胞と比較して多いことを意味し、4以上のコピー数であればコピー数が増幅しているということができる。
【0073】
がんがRAS遺伝子の異常に関連するがんかどうかは、がんを罹患する対象がRAS遺伝子の異常を有するかどうかを確認することにより判別することができる。例えば、がんを罹患する対象から得た生物試料においてRAS遺伝子のコーディング領域の塩基配列に変異があることを同定し、さらに変異したRASタンパク質が発現されていることを確認することにより、がんがRAS遺伝子の異常に関連するがんであることを判別することができる。
【0074】
がんがRAS遺伝子の異常に関連するがんかどうかは、がんを罹患する対象がRAS遺伝子のコピー数の増幅を有しているかどうかを確認することにより判別することができる。例えば、がんを罹患する対象から得た生物試料において、RAS遺伝子のコピー数が増幅、および/またはRASタンパク質の生成が増大していることを確認することにより、がんがRAS遺伝子の異常に関連するがんであることを判別することができる。RASタンパク質の生成の増大は、RASタンパク質の過剰発現ということもできる。RASタンパク質の生成が増大しているかどうかは、例えば一般的なRASタンパク質の発現量、当該がんを罹患していない対象におけるRASタンパク質の発現量、またはがんを罹患する前の対象におけるRASタンパク質の発現量と比較することにより、確認することができる。
【0075】
がんを罹患する対象のRAS遺伝子のコーディング領域の塩基配列に変異があり、かつ、RAS遺伝子のコピー数が増幅している場合も、RAS遺伝子の異常に関連するがんということができる。
【0076】
がんを罹患する対象の生物試料中のRAS遺伝子のコーディング領域における変異またはRAS遺伝子のコピー数の増幅を検出できる方法であれば、いずれの方法も用いることができ、当業者により慣用の方法で行うことができる。例えば、がんを罹患する対象から得た生物試料からRAS遺伝子を単離し、PCR等により増幅して、その塩基配列をシーケンサー等により直接決定してもよい。他には、例えば、RAS遺伝子の変異を検出できる市販の体外診断薬を用いてもよい。
【0077】
RASタンパク質のアイソフォームとして、KRASタンパク質、NRASタンパク質、HRASタンパク質の3種類が知られている。一局面において、RAS遺伝子は、KRAS遺伝子、NRAS遺伝子およびHRAS遺伝子からなる群より選択される1つ以上のRAS遺伝子である。好ましくは、RAS遺伝子はKRAS遺伝子である。
【0078】
一局面において、がんは、変異RASタンパク質の生成、および/またはRASタンパク質の生成の増大に関連するがんを含む。変異RASタンパク質の生成、および/またはRASタンパク質の生成の増大は、通常、上述したRAS遺伝子の異常に起因する。
【0079】
一局面において、変異RASタンパク質は、変異KRASタンパク質、変異NRASタンパク質、および変異HRASタンパク質からなる群より選択される少なくとも1つの変異RASタンパク質である。好ましくは、変異RASタンパク質は変異KRASタンパク質である。
【0080】
一局面において、変異RASタンパク質は、ヒトの野生型のKRASタンパク質のアミノ酸配列、ヒトの野生型のNRASタンパク質のアミノ酸配、またはヒトの野生型のHRASタンパク質のアミノ酸配列における、G12、G13およびQ61からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸位置に変異を有する。ヒトの野生型のKRASタンパク質、NRASタンパク質およびHRASタンパク質のいずれのアミノ酸配列においても、12番目および13番目のアミノ酸はグリシンであり、61番目のアミノ酸はグルタミンである。
【0081】
一局面において、変異RASタンパク質は、変異KRASタンパク質であり、かつ野生型のKRASのアミノ酸配列と比較して、G12A、G12C、G12D、G12S、G12V、G13D、Q61H、およびQ61Kからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する。
【0082】
一局面において、変異RASタンパク質は、変異NRASタンパク質であり、かつ野生型のNRASのアミノ酸配列と比較して、G12C、G12D、G13D、G13V、Q61K、およびQ61Lからなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸変異を有する。
【0083】
一局面において、変異RASタンパク質は、変異HRASタンパク質であり、かつ野生型のHRASのアミノ酸配列と比較して、G13Rのアミノ酸変異を有する。
【実施例0084】
本発明の内容を以下の実施例でさらに説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。全ての化合物および試薬は商業的供給業者から入手するか、公知の方法を用いて合成した。本実施例において、分子標的剤を併用化合物と呼称することがある。
【0085】
化合物1((5S,8S,11S,15S,18S,23aS,29S,35S,37aS)-8-((S)-sec-ブチル)-18-シクロペンチル-29-(3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェネチル)-36-エチル-11-イソブチル-N,N,5,6,12,16,19,33-オクタメチル-35-(4-メチルベンジル)-4,7,10,13,17,20,23,28,31,34,37-ウンデカオキソテトラトリアコンタヒドロ-2H,4H-スピロ[アゼト[2,1-u]ピロロ[2,1-i][1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31]ウンデカアザシクロテトラトリアコンチン-21,1’-シクロペンタン]-15-カルボキサミド)は、国際公開第2021/090855号公報に記載のFmoc法によるペプチド合成法に従って製造した。
すなわち、
1)(3S)-4-(ジメチルアミノ)-3-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(メチル)アミノ]-4-オキソ-ブタン酸のカルボキシル基を2-クロロトリチルレジンに担持させ、アミノ酸のN末から、化合物1の配列に応じたFmoc法によるペプチド伸長反応
2)2-クロロトリチルレジンからのペプチドの切り出し反応
3)切り出し反応によって2-クロロトリチルレジンから遊離した、カルボキシル基と、ペプチド鎖N末端(N-メチルロイシン)のアミノ基との縮合によるアミド環化反応 4)PreparativeHPLCによる化合物の精製の4段階の工程で製造した。
【0086】
化合物2(2-(4-シクロプロピル-2-フルオロ-アニリノ)-3,4-ジフルオロ-5-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチル]ベンズアミド)は、国際公開第2021/149776号公報に記載の方法に従って製造した。
すなわち、
1)商業的供給業者より入手可能な、2,3,4-トリフルオロ安息香酸をヨウ素と作用させて2,3,4-トリフルオロ-5ヨード-安息香酸を得た。
2)上記反応で得られた化合物を、パラジウム触媒存在下、ビニルトリフルオロホウ酸カリウムとカップリング反応を行うことで、2,3,4-トリフルオロ-5-ビニル-安息香酸を得た。
3)上記反応で得られた化合物を、2-フルオロ-4-ヨード-アニリンとカップリング反応を行うことで、3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨード-アニリノ)-5-ビニル-安息香酸を得た。
4)上記反応で得られた化合物を、過ヨウ素酸ナトリウムと4酸化オスミウムで処理することで、3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨード-アニリノ)-5-ホルミル-安息香酸を得た。
5)上記反応で得られた化合物を、ジアゾメチルトリメチルシランヘキサン溶液をメタノール中で作用させることで、3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)-5-ホルミル安息香酸メチルを得た。
6)上記反応で得られた化合物を、4-メチルベンゼンスルホニルヒドラジドを作用させることで、3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)-5-[(E)-[(4-メチルフェニル)スルホニルヒドラジニリデン]メチル]安息香酸メチルを得た。
7)上記反応で得られた化合物を、[2-[(2,4-ジメトキシフェニル)メチルアミノ]-3-フルオロピリジン-4-イル]ボロン酸を作用させることで、5-[[2-[(2,4-ジメトキシフェニル)メチルアミノ]-3-フルオロピリジン-4-イル]メチル]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)安息香酸メチルを得た。
8)上記反応で得られた化合物を、トリフルオロ酢酸を作用させることで、5-[(2-アミノ-3-フルオロピリジン-4-イル)メチル]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードアニリノ)安息香酸メチルを得た。
9)上記反応で得られた化合物を、水酸化リチウムでエステル基を加水分解した後に、塩酸で処理することで5-((2-アミノ-3-フルオロピリジン-4-イル)メチル)-3,4-ジフルオロ-2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)安息香酸塩酸塩を得た。
10)上記反応で得られた化合物を、EDC・HCl、HOOBt、およびアンモニアメタノール溶液を作用させることで、5-((2-アミノ-3-フルオロピリジン-4-イル)メチル)-3,4-ジフルオロ-2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)ベンズアミドを得た。次いで、シクロプロピル亜鉛ブロミドを作用させることで、5-((2-アミノ-3-フルオロピリジン-4-イル)メチル)-2-((4-シクロプロピル-2-フルオロフェニル)アミノ)-3,4-ジフルオロベンズアミドを得た。
11)上記反応で得られた化合物(2.47g、5.74mmol)を、無水DMF(28.7mL)に溶解させ、ピリジン(2.78mL、34.4mmol)及びメチルスルファミン酸4-ニトロフェニル(4.00g、17.2mmol)を加え、40℃で2.5時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水(24.7mL)を加えた。アセトニトリル(3mL)及び水(19.8mL)を加え、10分間攪拌した後、固体をろ取した。得られた固体を水/アセトニトリル(1/1、49.4mL)で洗浄して、化合物2(2.56g、85%)を無色固体として得た。化合物2以外の分子標的剤(ソトラシブ、RMC-4550、トラメチニブおよびセツキシマブ)は、商業的供給業者または製造元より供給された。
【0087】
<薬理学的試験例>
(実施例1 In vitro RASシグナル阻害活性評価)
化合物1、化合物2、RMC-4550、トラメチニブおよびソトラシブ、ならびこれらの化合物の併用がヒトがん細胞内で、ERK、AKTおよびMEKのリン酸化に与える影響と、KRAS、NRASおよびHRASのGTPとの結合に与える影響を以下のようなウェスタンブロット法により調べた。ヒトがん細胞株を3次元培養プレートPrimeSurface(住友ベークライト)に播種し、37℃で24時間培養した。その後、細胞に化合物1および併用化合物(分子標的剤)を添加した。37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで培養し、表1に示す処理時間が経過した時点で細胞を回収した。ヒトがん細胞株名、培地、細胞播種数、化合物1濃度、併用化合物、併用化合物濃度および処理時間を表1に示す。回収した細胞は、プロテアーゼ阻害剤(Sigma-Aldrich)とフォスファターゼ阻害剤(Sigma-Aldrich)とを含んだlysisバッファー(Cell Signaling Technology)で溶解した。BCAたんぱく質アッセイキット(ThermoFisher Scientific)を用いてタンパク濃度を測定し、1サンプルあたり10~20μgとなるようタンパク溶液1を調整した。
【0088】
得られたタンパク溶液1のうち300~1000μgから、Active Ras Pull-Down and Detection Kit (ThermoFisher Scientific)により、活性化フォームであるRAS-GTPを回収し、タンパク溶液2を調整した。上記タンパク溶液1、2とアクリルアミド濃度が5-20%のグラジエントゲルとを用いてSDS-PAGEを実施し、Trans-Blot Turbo Transfer System (Bio-Rad Laboratories)により、泳動されたタンパクをPVDF膜に転写した。ブロッキング後、PVDF膜を一次抗体および二次抗体にこの順で反応させた。Chemi-lumi One Super(ナカライテスク)により化学発光させ、ChemiDoc Touch Imaging System(Bio-Rad Laboratories)により、バンドを検出した。使用した一次抗体、二次抗体、各抗体の希釈濃度、反応温度および反応時間を表2、3に示す。RASシグナル阻害活性評価を行ったウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像の結果を図1図6に示す。「pERK」、「pAKT」および「pMEK」はそれぞれリン酸化されたERK、AKTおよびMEKを表わす。「KRAS-GTP」、「NRAS-GTP」および「HRAS-GTP」は、それぞれGTPと結合したKRAS、NRASおよびHRASを表わす。図1図6で、化合物1または併用化合物(分子標的剤)を単剤で用いた場合と比較し、化合物1および併用化合物(分子標的剤)を併用した場合は、RASシグナルの抑制効果が増強されたことが示された。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
(実施例2 化合物1および併用化合物(分子標的剤)による細胞増殖阻害活性評価)
超低接着表面Uボトム384プレートに、ヒトがん細胞株を1ウェルあたり750細胞の濃度で播種し、37℃、5%炭酸ガスインキュベーターで培養した。24時間後、ウェルの一部(3ウェル)にCellTitorGlo2.0(Promega)を添加し、Envision plate readers(Perkin Elmer)を用いてATP量(V)を測定した。Vを0時間時点のATP量とした。別の3ウェルずつに、DMSOのみ、あるいは、化合物1および/または併用化合物をそれぞれ添加した。化合物1は300nM、併用化合物は10または3000nMを最高濃度として、公比3で8段階に系列希釈したものを用いた。表4において、例えば「0.14~300」は、最高濃度が「300」nMである場合を意味し、「300、約100、約33、約11、約3.7、約1.2、約0.41または約0.14nM」の希釈液を用いたことを示す。DMSOのみ、あるいは、化合物1および/または併用化合物を添加してから144時間培養後、DMSOのみ添加した細胞(DMSO処理群)、あるいは、化合物1および/または併用化合物を添加した細胞(化合物1および/または併用化合物処理群)のATP量(TおよびV)をそれぞれ測定した。がん細胞株名、培地、化合物1濃度、併用化合物および併用化合物濃度を表4に示す。以下の式を用いて、増殖抑制率(GI%:Growth Inhibition%)を算出した。図7a、図8aおよび図9aに示したように、化合物1および併用化合物の濃度依存的な増殖抑制効果が示された。
(1-(T-V)/V)×100(T<Vの場合)
(1-(T-V)/(V-V))×100(T≧Vの場合)
T:化合物1および/または併用化合物処理群の144時間時点におけるATPシグナル値
V:DMSO処理群の144時間時点におけるATPシグナル値
:未処理群のATPシグナル値
【0093】
得られたGI値を用いて、以下の手順に従ってisobologram法に基づいた解析を実施した。併用効果を評価する上で使用したGI値は、以下の値を用いた。
(1)化合物1および併用化合物の併用効果を評価するためのGI%(設定GI%)、および、設定GI%を与える化合物濃度(設定GI濃度)の算出
・化合物1とRMC-4550との併用試験(NCI-H358):設定GI%としては、155%(「GI155%」または「GI155」と表記することもある。)を用いた(化合物1の設定GI濃度は0.033μM、RMC-4550の設定GI濃度は0.55μMであった。)。
・化合物1とRMC-4550との併用試験(NCI-H441):設定GI%としては、100%(「GI100%」または「GI100」と表記することもある。)を用いた(化合物1の設定GI濃度は0.0055μM、RMC-4550の設定GI濃度は0.35μMであった。)。
・化合物1とトラメチニブとの併用試験(NCI-H358):設定GI%としては、50%(「GI50%」または「GI50」と表記することもある。)を用いた(化合物1の設定GI濃度は0.0046μM、トラメチニブの設定GI濃度は0.00035μMであった。)。
(2)(1)での各設定GI%を与える、化合物1および併用化合物の濃度の組み合わせの検討と、併用効果のグラフによる可視化
・横軸は、併用化合物の濃度を、設定GI濃度で割った値を表わし、縦軸は、化合物1の濃度を、設定GI濃度で割った値を表わす。
・各種細胞株での設定GI%を与える化合物1および併用化合物の組み合わせの濃度を測定し、横軸および縦軸の値に応じてグラフにプロットした。
【0094】
化合物1および併用化合物による細胞増殖阻害活性評価の結果を図7図9に示した。図7b、図8bおよび図9bの各図は、isobologramと呼ばれるグラフである。Isobologramの縦軸の「1.0」と横軸の「1.0」とを結ぶ破線は、化合物1と併用化合物とを併用した場合の増殖抑制効果が、それぞれの化合物を単独で用いた場合の増殖抑制効果の単純な足し合わせであった場合(効果が相加的であった場合)を示す。当該破線を下回るプロットは、化合物1と併用化合物とを併用した場合、相乗的な増殖抑制効果を示したことを意味する。プロットが破線から離れていればいるほど、強い相乗効果を示す。図7b、図8bおよび図9bに示すように、各図でプロットが破線から離れていることから、化合物1と併用化合物との併用は、相乗的な増殖抑制効果を示すことが分かった。
【0095】
【表4】
【0096】
(実施例3 化合物1およびセツキシマブの併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
大腸がん細胞株LoVo(KRAS-G13D)を移植したゼノグラフトモデルを用いて、化合物1およびセツキシマブの併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10細胞を移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点で、ヌードマウスのランダマイズを行い、8匹ごと4群に群分けした。単剤投与群(1群につき8匹)には化合物1またはセツキシマブをそれぞれ投与し、2剤投与群(1群につき8匹)には化合物1およびセツキシマブを投与した。投与期間は10日間とし、化合物1は1日1回経口で、セツキシマブは週に2回のペースになるように静脈注射で投与した。化合物1は1回あたり10mg/kg投与され、セツキシマブは1回あたり40mg/kg投与された。化合物1は、10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに溶解させて投与した。セツキシマブは生理食塩水で希釈して投与した。以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%:Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図10に示した。Vehicle群と比較し、薬剤投与群(化合物1単剤投与群、セツキシマブ単剤投与群、および、化合物1とセツキシマブとの2剤投与群)は、腫瘍体積の増加が抑制された。さらに単剤投与群と2剤投与群(併用群)の比較では、2剤投与群で腫瘍体積が減少していることから化合物1とセツキシマブとを併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。
腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day32、36または39の腫瘍体積-Day29の腫瘍体積
TV:化合物1単剤投与群、セツキシマブ単剤投与群または併用群の腫瘍体積変化量の各平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0097】
(実施例4 In vivo RASシグナル阻害活性評価)
実施例3の終了後、化合物1(10mg/kg)とセツキシマブ(40mg/kg)とをそれぞれヌードマウス(n=3)に再投与し、4時間後に腫瘍を回収して液体窒素で凍結後、-80℃で保管した。その後、液体窒素での冷却下において、回収した腫瘍をマルチビーズショッカー(安井器械)で破砕し、実施例1(in vitro RASシグナル阻害活性評価)と同様のプロトコルに基づいて、ゼノグラフトモデルにおける化合物1およびセツキシマブによるRASシグナル阻害活性を評価した。使用した一次抗体、二次抗体、各抗体の希釈濃度、反応時間および反応温度を表5、6に示した。In vivo RASシグナル阻害活性評価を行ったウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像の結果を図11に示した。「KRAS-GTP」はGTPと結合した「KRAS」を表わし、「pERK」、「pAKT」および「pEGFR」はそれぞれ、リン酸化された「ERK」、「AKT」および「EGFR」を表わす。化合物1またはセツキシマブを単剤で用いた場合と比較し、化合物1およびセツキシマブを併用した場合は、KRAS-GTP、およびpERKが減少し、RASシグナルの抑制が増強されていることが示された。
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
(実施例5 化合物1およびベバシズマブの併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
すい臓がん株AsPC-1(KRAS-G12D)を移植したゼノグラフトモデルを用いて、化合物1およびベバシズマブの併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10の細胞数を移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点でヌードマウスのランダマイズを行い、8匹ごと4群に群分けした。単剤投与群(1群につき8匹)には化合物1またはベバシズマブをそれぞれ投与し、2剤投与群(1群につき8匹)には化合物1およびベバシズマブを投与した。投与期間は17日間とし、化合物1は1日1回経口で、ベバシズマブは週に2回のペースなるように腹腔内注射で投与した。化合物1は1回あたり10mg/kg投与され、ベバシズマブは1回あたり2.5mg/kg投与された。化合物1は、10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに溶解させて投与した。ベバシズマブは生理食塩水で希釈して投与した。以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%:Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図12に示した。Vehicle群と比較し、化合物1単剤投与群、および、化合物1とベバシズマブとの2剤投与群は、腫瘍体積の増加が抑制された。一方、ベバシズマブ単剤投与群では、顕著な腫瘍体積の増加の抑制は認められなかった。さらに単剤投与群と2剤投与群(併用群)の比較では、2剤投与群で腫瘍体積が減少していることから化合物1とベバシズマブとを併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。

腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day25、29、32、36、または39以降の腫瘍体積-Day22の腫瘍体積
TV:化合物1群またはベバシズマブ群または併用群の腫瘍体積変化量の平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0101】
(実施例6 化合物1とソトラシブの併用による細胞増殖阻害活性評価)
96ウェル2次元培養プレート(Corning)に、ヒト大腸がん細胞株SW837を1ウェルあたり10000で播種し(n=3)、37℃,5%炭酸ガスインキュベーターで培養した。培地は、Leibovitz’s L-15+10%血清を使用した。播種してから24時間後、DMSO/化合物1 30nM/ソトラシブ 300nM/化合物1 30nM+ソトラシブ 300nMを含む培地に培地交換し、Icucyte ZOOMによって24時間ごとの細胞密度の計測を開始した。週に2回程度、化合物を含む培地に培地交換し、52日間計測を実施した。化合物1とソトラシブの併用による細胞増殖阻害活性を図13に示した。図13において、縦軸は培養容器接着面を培養細胞が覆った割合(細胞密度、細胞占有面積率、confluency)を表し、横軸は細胞密度を計測し始めてからの経過日数を表す。図13に示したように、化合物1とソトラシブの併用により、ヒト大腸がん細胞株SW837における増殖抑制効果が増強した。
【0102】
(実施例7 化合物1と併用化合物による細胞増殖阻害活性評価)
低吸着表面Uボトム384プレート(住友ベークライト)に、ヒトがん細胞株を1ウェルあたり1000細胞(HCC-1171)、500細胞(NCI-H1373)、625細胞(NCI-H23)、250細胞(UM-UC-3)でそれぞれ播種し(n=1)、37℃,5%炭酸ガスインキュベーターで培養した。化合物1および/または併用化合物を含む培地は、化合物1とMRTX849を併用した際は、化合物1は公比3倍で9段階、MRTX849は公比5倍で5段階の系列希釈となるように、化合物1とTNO155を併用した際は、化合物1は公比3倍で9段階、TNO155は公比5倍で5段階の系列希釈となるようにそれぞれ調製され、2つの薬剤の設定濃度をすべて組み合わせて混合することで、併用効果を検証した(DMSO群を含め、10個の濃度と6つの濃度の組み合わせ)。化合物1および/または併用化合物を添加してから144時間培養後、CellTitorGlo2.0を用いて化合物処理群のATP量を測定した。がん細胞株名、培地、化合物名、化合物の最終試験濃度を表7に示す。CellTitorGlo2.0によって得られたシグナル値より、以下の式を用いて、細胞増殖抑制率(CGI%:Cell Growth Inhibition%)を算出した。

細胞増殖抑制率(CGI%)=(1-(TV-V0)/(CV-V0))×100
TV:化合物処理群の144時間時点におけるATPシグナル値
CV:DMSO処理群の144時間時点におけるATPシグナル値
V0:培地のみ(細胞播種なし)の144時間時点におけるATPシグナル値
【0103】
得られたCGI値を用いて、以下の手順に従ってisobologram法に基づいた解析を実施した。
化合物1および併用化合物による細胞増殖阻害活性評価の結果を図14および図15に示した。X軸(横軸)とY軸(縦軸)はそれぞれ化合物1および併用化合物の濃度とし、初めに、CGI50%値(HCC-1171,NCI-H1373,NCI-H23)またはCGI70%値(UM-UC-3)を発揮するのに必要な化合物1単剤の濃度および併用化合物単剤の濃度を、X軸上またはY軸上にプロットした。X軸上のプロットとY軸上のプロットを結ぶ直線は、化合物1と併用化合物とを併用した場合の増殖抑制効果が、それぞれの化合物を単独で用いた場合の増殖抑制効果の単純な足し合わせであった場合(効果が相加的であった場合)を示す。次に、薬剤を併用した際に、そのCGI値を発揮するのに必要とされる化合物1と併用化合物の濃度をプロットした。X軸上のプロットとY軸上のプロットを結んだ直線と比較して、併用時のプロットが下部に位置した場合、その薬剤の組み合わせは、相乗的な増殖抑制効果を示したことを意味し、プロットが直線から離れていればいるほど、強い相乗効果を示す。図14および図15で示すように、各図でプロットが直線から離れていることから、化合物1と併用化合物との併用は、相乗的な増殖抑制効果を示すことが分かった。
【0104】
【表7】
【0105】
(実施例8 化合物1とソトラシブの併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
肺がんPDX(patient-derived xenograft)モデルであるCTG-2579(KRAS-G12C)を移植したヌードマウスを用いて、化合物1とソトラシブの併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に腫瘍片を移植し、腫瘍体積がおよそ150~300mmに到達した時点でランダマイズを行い、化合物1および/または併用化合物の投与を開始した(n=8)。化合物1とソトラシブは1日1回経口で投与し、投与期間は21日間とした。薬剤投与量は、化合物1 7.5mg/kg,ソトラシブ 100mg/kgとした。化合物1は10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに、ソトラシブは10%DMSO/10% Cremphor EL/15% PEG400/2.64% HPBCD/62.36% distilled waterにそれぞれ溶解させて投与した。最終計測日の腫瘍体積データより、以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%:Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図16に示した。Vehicle群と比較し、化合物1単剤投与群、ソトラシブ単剤投与群、および、化合物1とソトラシブとの2剤投与群は、腫瘍体積の増加が抑制された。さらに単剤投与群と2剤投与群(併用群)の比較では、2剤投与群で腫瘍体積が減少していることから化合物1とソトラシブとを併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。

腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=0.52×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day0以降の腫瘍体積-Day0の腫瘍体積
TV:化合物1群またはソトラシブ群または併用群の腫瘍体積変化量の平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0106】
(実施例9 化合物1とソトラシブの併用によるin vivo RASシグナル阻害活性評価)
実施例8の終了後、化合物1とソトラシブをそれぞれ7.5mg/kgと100mg/kgでヌードマウス(n=3)に再投与し、4時間後に腫瘍を回収して液体窒素で凍結後、-80℃で保管した。その後、液体窒素で冷却下において、回収した腫瘍(PDXサンプル)をマルチビーズショッカー(安井器械)で破砕し、実施例1のin vitro RASシグナル阻害活性評価と同様のプロトコルに基づいて、PDXにおける化合物1とソトラシブによるRASシグナル阻害活性を評価した。使用した一次抗体、二次抗体、希釈濃度、反応時間、反応温度について表8、9に示した。In vivo RASシグナル阻害活性評価を行ったウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像の結果を図17に示した。「KRAS-GTP」はGTPと結合した「KRAS」を表わし、「pERK」および「pAKT」はそれぞれ、リン酸化された「ERK」および「AKT」を表わす。化合物1またはソトラシブを単剤で用いた場合と比較し、化合物1およびソトラシブを併用した場合は、pERKが減少し、MAPKシグナルの抑制が増強されていることが示された。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
(実施例10 化合物1とMRTX849の併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
肺がん株LU65(KRAS-G12C)または膀胱がん株UM-UC-3(KRAS-G12C)を移植したゼノグラフトモデルを用いて、化合物1とMRTX849の併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10細胞を移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点で、ヌードマウスのランダマイズを行い、化合物1および/または併用化合物の投与を開始した(n=6)。化合物1とMRTX849は1日1回経口で投与し、投与期間は45日間とした。薬剤投与量は、化合物1は3mg/kg、MRTX849は100mg/kgとした。化合物1は10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに、MRTX849は50mM Citrate buffer(pH5.0)/10% HPBCDに溶解させて投与した。最終計測日の腫瘍体積データより、以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%:Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図18に示した。肺がんモデル(LU65)および膀胱がん株モデル(UM-UC-3)においては、Vehicle群と比較し、MRTX849単剤投与群、および、化合物1とMRTX849との2剤投与群は、腫瘍体積の増加が抑制された。化合物1単剤投与群では、腫瘍体積の増加の抑制は認められなかった。MRTX849単剤投与群については、投与開始直後は腫瘍体積の増加が抑制されたものの、投与を続けると腫瘍の再増殖が複数のマウスで認められた。2剤投与群(併用群)は、MRTX849単剤群で認められた腫瘍の再増殖を長期にわたって抑制したことから、化合物1とMRTX849を併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。

腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day0以降の腫瘍体積-Day0の腫瘍体積
TV:化合物1群またはMRTX849群または併用群の腫瘍体積変化量の平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0110】
(実施例11 化合物1とTNO155の併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
肺がん株NCI-H1373(KRAS-G12C)を移植したゼノグラフトモデルを用いて、化合物1とTNO155の併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10の細胞を移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点でヌードマウスのランダマイズを行い、化合物1および/または併用化合物の投与を開始した(n=8)。化合物1は1日1回経口で、TNO155は1日2回経口で投与し、投与期間は35日間とした。薬剤投与量は、化合物1は5mg/kg,TNO155は5mg/kgとした。化合物1は10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに、TNO155は0.5% Tween 80/0.5% Methylcellulose/99% Distilled waterに溶解させて投与した。最終計測日の腫瘍体積データより、以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%:Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図19に示した。Vehicle群と比較し、化合物1単剤投与群、TNO155単剤投与群、および、化合物1とTNO155との2剤投与群は、腫瘍体積の増加が抑制された。さらに単剤投与群と2剤投与群(併用群)の比較では、2剤投与群で腫瘍体積がより減少していることから化合物1とTNO155とを併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。

腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day0以降の腫瘍体積-Day0の腫瘍体積
TV:化合物1群またはTNO155群または併用群の腫瘍体積変化量の平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0111】
(実施例12 化合物1と化合物2の併用によるin vivo抗腫瘍活性評価)
肺がん株NCI-H441(KRAS-G12C)またはNCI-H1373(KRAS-G12C)を移植したゼノグラフトモデルを用いて、化合物1と化合物2の併用によるin vivo抗腫瘍活性を評価した。ヌードマウスの皮下に1匹あたり5×10の細胞を移植し、腫瘍体積が200~300mmに到達した時点でランダマイズを行い、化合物1および/または併用化合物の投与を開始した(n=5)。化合物1と化合物2は1日1回経口で投与し、投与期間は14日間とした。薬剤投与量は、化合物1は3mg/kgまたは5mg/kg、化合物2は0.25mg/kgとした。化合物1は10% DMSO/5% Cremphor EL/85% Distilled waterに、化合物2は10%DMSO/10% Cermphor EL/15% PEG400/15% HPBCD/50% distilled waterに溶解させて投与した。最終計測日の腫瘍体積データより、以下の式を用いて、腫瘍増殖抑制率(TGI%: Tumor Growth Inhibition%)を算出した。In vivo抗腫瘍活性評価の結果を図20、21に示した。Vehicle群と比較し、化合物1単剤投与群、化合物2単剤投与群、および、化合物1と化合物2との2剤投与群は、腫瘍体積の増加が抑制された。さらに単剤投与群と2剤投与群(併用群)の比較では、2剤投与群で腫瘍体積がより減少していることから化合物1と化合物2とを併用することによるin vivo抗腫瘍活性の増強効果が示された。

腫瘍増殖抑制率(TGI%)=(1-TV/CV)×100
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)
腫瘍体積変化量(mm)=Day0以降の腫瘍体積-Day0の腫瘍体積
TV:化合物1群または化合物2群または併用群の腫瘍体積変化量の平均値
CV:Vehicle群の腫瘍体積変化量の平均値
【0112】
(実施例13 化合物1と化合物2の併用によるin vivo RASシグナル阻害活性評価)
実施例12のNCI-H441におけるin vivo抗腫瘍活性評価終了後、化合物1と化合物2をそれぞれ5mg/kgと0.25mg/kgでヌードマウス(n=3)に再投与し、4時間後に腫瘍を回収して液体窒素で凍結後、-80℃で保管した。その後、液体窒素で冷却下において、回収したゼノグラフトサンプルはマルチビーズショッカー(安井器械)にて破砕し、実施例1(in vitro RASシグナル阻害活性評価)と同様のプロトコルに基づいて、ゼノグラフトにおける化合物1および化合物2によるRASシグナル阻害活性を評価した。使用した一次抗体、二次抗体、希釈濃度、反応時間、反応温度を表10、11に示した。In vivo RASシグナル阻害活性評価を行ったウェスタンブロッティングの結果を示す電気泳動像の結果を図22に示した。「KRAS-GTP」はGTPと結合した「KRAS」を表わし、「pERK」、「pAKT」および「pMEK」はそれぞれ、リン酸化された「ERK」、「AKT」および「MEK」を表わす。化合物1または化合物2を単剤で用いた場合と比較し、化合物1および化合物2を併用した場合は、pERKおよびpMEKが減少し、MAPKシグナルの抑制が増強されていることが示された。
【0113】
【表10】
【0114】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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