(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161462
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】希薄運転ハイブリッドガソリンエンジン
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20241112BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241112BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241112BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241112BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20241112BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20241112BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241112BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20241112BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241112BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241112BHJP
B60L 53/10 20190101ALI20241112BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/02 900
F02D41/04
F02D45/00 364
F02D29/06 D
B60L50/16
B60L50/60
B60L53/10
B60K6/48
B60W20/15 ZHV
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135137
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2022560077の分割
【原出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】2004883.1
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
【住所又は居所原語表記】Abbey Road,Whitley,Coventry,Warwickshire CV3 4LF GB
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】リン・マックウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ゲデス
(72)【発明者】
【氏名】ブリン・リトルフェア
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジョンソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットを提供する。
【解決手段】フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン110及び電動モーター120を含む。内燃エンジンは、クラッチ130を介してドライブトレインに結合される。エンジン制御ユニットは、内燃エンジンを希薄燃焼モードで運転させ、フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較するように構成される。希薄燃焼負荷閾値は、それ以下では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する。フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っているである場合、内燃エンジンはドライブトレインから切り離され、フルハイブリッドエンジンは電気モードで運転される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットであって、前記フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、前記内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されており、前記エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-希薄燃焼モードで前記内燃エンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる。
【請求項2】
以下のように構成される、請求項1に記載のエンジン制御ユニット:
-電気モードで前記フルハイブリッドエンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを前記希薄燃焼負荷閾値と比較し、そして
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を超えている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインに接続し、前記内燃エンジンを前記希薄燃焼モードで運転させる。
【請求項3】
前記フルハイブリッドエンジンの現在のRPMを決定し、前記現在のRPMに応じて、前記希薄燃焼負荷閾値を決定するように構成される、請求項1又は2に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項4】
アクセルペダルの現在の位置を表す電子信号に基づいて、前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルを決定するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項5】
クルーズコントロールシステムの現在の速度制御設定を表す電子信号に基づいて、前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルを決定するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項6】
トルクモデルを使用して、前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベル及び/又は現在のRPMを決定するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項7】
前記内燃エンジンが前記希薄燃焼モードで運転している間に、前記内燃エンジンの排気流中の現在のNOx濃度を決定するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項8】
前記現在のNOx濃度をNOx閾値と比較し、前記現在のNOx濃度が前記NOx閾値を超えている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させるように構成される、請求項7に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項9】
前記現在の負荷レベル及び前記現在のNOx濃度に基づいて、前記希薄燃焼負荷閾値を較正するように構成される、請求項7又は8に記載のエンジン制御ユニット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のエンジン制御ユニットを含む内燃エンジン。
【請求項11】
車両のドライブトレイン用のフルハイブリッドエンジンであって、前記フルハイブリッドエンジンは、
-内燃エンジン、
-少なくとも1つの電気モーター、
-前記内燃エンジンを前記ドライブトレインに連結するためのクラッチ、及び
請求項1~9のいずれかに記載のエンジン制御ユニット
を含む、フルハイブリッドエンジン。
【請求項12】
前記フルハイブリッドエンジンは、前記車両の前記内燃エンジンに機械的に結合され、前記電気モーター及び/又はバッテリーパックに電気的に結合された発電機をさらに含む、請求項11に記載のフルハイブリッドエンジン。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のフルハイブリッドエンジンを含む車両用パワートレイン。
【請求項14】
請求項13に記載のフルハイブリッドエンジンを含む車両。
【請求項15】
車両のドライブトレイン用のフルハイブリッドエンジンを運転させる方法であって、前記フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、前記内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されており、前記方法は、
-希薄燃焼モードで前記内燃エンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる
ことを含む、方法。
【請求項16】
プロセッサによって実行されると、請求項15に記載の方法の実行をもたらすコンピュータ可読命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
バッテリー式電気自動車用のエンジン制御ユニットであって、前記バッテリー式電気自動車は、内燃エンジン、電気モーター、バッテリーパック、及び発電機を含み、前記発電機は、前記内燃エンジンに機械的に結合され、前記電気モーター及び/又は前記バッテリーパックに電気的に結合され、前記エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-前記内燃エンジンを運転し、
-前記内燃エンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-前記内燃エンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記バッテリーパックを充電するために、前記現在の負荷レベルを上げる。
【請求項18】
請求項17に記載のエンジン制御ユニットを含む内燃エンジン。
【請求項19】
バッテリー式電気自動車用のパワートレインであって、前記パワートレインは、
-内燃エンジン、
-電気モーター、
-バッテリーパック、
-前記車両の前記内燃エンジンに機械的に結合され、前記電気モーター及び/又は前記バッテリーパックに電気的に結合された発電機、及び
-請求項17に記載のエンジン制御ユニット
を含む、パワートレイン。
【請求項20】
請求項19に記載のパワートレインを含むバッテリー式電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、希薄運転ハイブリッドガソリンエンジンに関する。本発明の態様は、エンジン制御ユニット、内燃エンジンと、フルハイブリッドエンジン、パワートレイン、及びそのようなエンジンを備えた車両に関する。本開示はさらに、車両のドライブトレイン用のフルハイブリッドエンジンを運転させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃エンジンでは、ガソリンは空気と14.7:1(ラムダ=1)の割合で混合されたときに最もよく燃焼する。車両に使用されるほとんどの最新のガソリンエンジンは、ほとんどの場合、このいわゆる化学量論的ポイント又はその付近で運転する傾向がある。理想的には、エンジンで燃料を燃焼させると、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)のみが生成される。実際には、内燃エンジンの排気ガスはまた、かなりの量の一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)及び未燃焼の炭化水素を含んでいる。燃料効率を高め、望ましくない排出物を減らすことが望ましい。
【0003】
燃料効率を高める方法の1つは、過剰な空気で燃料を燃焼させることである。このような酸素が豊富な環境で燃料を燃焼させることは、通常、希薄燃焼(lean-burning)と呼ばれる。典型的な希薄燃焼では、空気と燃料を、例えば20:1(ラムダ>1.3)又は30:1(ラムダ>2)の比率で混合する場合がある。希薄燃焼エンジンの利点には、例えば、燃焼制御が向上し、エンジンシリンダー内で燃料がより完全に燃焼することにより、CO2と炭化水素の排出量が少ないことが挙げられる。希薄燃焼用に設計されたエンジンは、より高い圧縮比を採用できるため、従来のガソリンエンジンよりも燃料の使用効率が向上し、排気炭化水素の排出量が少なくなる。さらに、希薄燃焼モードは、部分的に閉じたスロットルを介して空気をポンピングするために必要な余分な作業に起因するスロットル損失を減らすのに役立つ。より多くの空気を使用して燃料を燃焼させると、エンジン出力の要求が減少したときにスロットルをより開いたままにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料の希薄燃焼には、酸素が豊富な環境で炭化水素を効率的に燃焼させるのに適し、適合かつ最適化されたエンジンを提供するために克服しなければならない技術的課題も伴う。例えば、混合気が希薄すぎると、エンジンが燃焼しなくなる可能性がある。低負荷でエンジン速度が低い場合、可燃性の低下は燃焼プロセスの安定性に影響を与え、エンジンの失火の問題を引き起こす可能性がある。燃料濃度が低いと、出力も低下する。このような欠点があるため、希薄燃焼は現在、エンジンマップの一部にしか使用されておらず、例えば、最新の希薄燃焼エンジンのほとんどは、化学量論点又はその近くで巡航及び惰性走行する傾向がある。
【0005】
本発明の目的は、従来技術の希薄燃焼エンジンに関連する欠点の1つ又は複数に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載のエンジン制御ユニット、内燃エンジン、フルハイブリッドエンジン、パワートレイン、車両、及び方法を提供する。希薄燃焼エンジンは、本明細書に記載のガソリンでの使用に適合であり得る。代替的に、又はそれに加えて、希薄燃焼エンジンは、例えば水素などの他の燃料と共に使用するのに適している場合があることが理解される。本発明の態様及び実施形態は、希薄燃焼ガソリンの文脈で定義されるが、燃料の種類を代用できることを理解されたい。
【0007】
本発明の一態様によれば、フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットが提供される。フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合される。エンジン制御ユニットは以下のように構成される:
-希薄燃焼モードで内燃エンジンを運転し、
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる。
【0008】
希薄燃焼モードと電気モードとの間の移行は、希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルとして定義される希薄燃焼負荷閾値によって特徴付けられる。「不可能」とは、チャージの可燃性の低下が、希薄燃焼が技術的に完全に不可能になるか、あるいは、内燃エンジンの効果的な使用に適さないほど予測不可能で不安定すぎることを意味し得る。内燃エンジンの希薄燃焼運転は、例えば、燃料効率が比較的低いか、NOx又はCO排出量が多い場合、「望ましくない」可能性がある。同様に、排気ガスの温度が低すぎて後処理システムでそのような排出物を効果的に処理できない場合、希薄運転は「望ましくない」ものになる。希薄燃焼運転が望ましくない他の考えられる理由としては、例えば、その他の望ましくない、若しくは法律で定められた排出量、(一時的な)騒音制限の超過、燃料タンクの充填レベルの低下、又は電気モードでの運転に対する単純なユーザーの好みがあり得る。
【0009】
本発明によるエンジン制御ユニットにより、本発明者らは、内燃エンジンが運転しているときはいつでも、クリーンで効率的な低排出物の希薄燃焼モードで運転できるクリーンで効率的な内燃エンジンを提供した。希薄燃焼が不可能又は望ましくないエンジンマップの領域では、電気モーターが引き受ける。それに加えて、エンジンが希薄燃焼モードで運転しているときに、電力出力を向上させ、その効率を改善し、及び/又はその排出物を削減するために、電気モーターを使用することができる。
【0010】
一実施形態では、エンジン制御ユニットは、以下のように構成される:
-電気モードでフルハイブリッドエンジンを運転し、
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し、そして
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を超えている場合、内燃エンジンをドライブトレインに接続し、内燃エンジンを希薄燃焼モードで運転させる。
【0011】
これにより、エンジンをできるだけ早く希薄燃焼モードに切り替えることができるため、バッテリーが電気モーターに電力を供給し続け、充電をより長く維持できる。好ましくは、バッテリーは、エンジンが希薄燃焼モードで運転している間、例えば、車両が減速又は惰性走行しているときに、少なくとも部分的に再充電される。
【0012】
任意選択で、エンジン制御ユニットは、フルハイブリッドエンジンの現在のRPMを決定し、現在のRPMに応じて希薄燃焼負荷閾値を決定するように構成される。より高いエンジンRPMでは、希薄燃焼エンジンは、より低いエンジンRPMで運転する場合よりも低いエンジン負荷で低排出で効率的に運転できる傾向がある。希薄燃焼閾値をエンジンRPMに依存させることにより、エンジンは、エンジンマップのより大きな部分にわたって希薄燃焼モードで運転することができる。
【0013】
フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルは、例えば、アクセルペダルの現在の位置を表す電子信号に応じて、及び/又はクルーズコントロールシステムの現在の速度制御設定を表す電子信号に応じて決定され得る。トルクモデルを使用して、フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベル及び/又は現在のRPMを決定することができる。
【0014】
一実施形態では、エンジン制御ユニットは、内燃エンジンが希薄燃焼モードで運転している間に、内燃エンジンの排気流中の現在のNOx濃度を決定するように構成される。このようにして得られた現在のNOx濃度は、例えば、NOx閾値と比較することができる。現在のNOx濃度がNOx閾値を超えている場合、エンジン制御ユニットは、クラッチを操作して内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させることができる。これにより、例えば、何らかの理由でNOx排出量が現在のエンジン負荷とRPMで予想されるものよりも高い場合に、エンジンが過剰な量のNOxを排出し続けないようにすることができる。任意選択で、希薄燃焼負荷閾値は、現在の負荷レベルと現在のNOx濃度に基づいて再較正される。これは、例えば、エンジンの排出特性が時間の経過とともに、温度によって、又は燃焼している燃料の実際の組成に応じて変化する場合に役立つ。
【0015】
一実施形態では、エンジン制御ユニットは、内燃エンジンが希薄燃焼モードで運転している間に、内燃エンジンの排気流中の現在のNOx濃度を決定するように構成される。このようにして得られた現在のNOx濃度は、例えば、NOx閾値と比較することができる。現在のNOx濃度がNOx閾値を超える場合、エンジン制御ユニットは、内燃エンジンの運転ポイントを変更してNOx濃度を低下させるために、電気モーターを運転させて駆動力又は回生トルクを提供することができる。
【0016】
本発明の一態様によれば、上述のエンジン制御ユニットを含む内燃エンジンが提供される。内燃エンジンは、車両のドライブトレイン用のフルハイブリッドエンジンの一部であってもよく、フルハイブリッドエンジンは、少なくとも1つの電動モーターと、内燃エンジンをドライブトレインに連結するためのクラッチとをさらに備える。フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジンに機械的に結合され、車両の電気モーター及び/又はバッテリーパックに電気的に結合された発電機をさらに含むことができる。フルハイブリッドエンジンは、車両のパワートレインの一部であり得る。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、車両のドライブトレイン用のフルハイブリッドエンジンを運転させる方法が提供される。フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合される。この方法は、
-希薄燃焼モードで内燃エンジンを運転し、
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして
-フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、内燃エンジンをドライブトレインから切り離し、フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させる
ことを含む。
【0018】
この方法は、本発明によるエンジン制御ユニットについて上述したすべての利点を提供し、任意選択の特徴を用いることができる。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、バッテリー式電気自動車用のエンジン制御ユニットが提供され、バッテリー式電気自動車は、内燃エンジン、電気モーター、バッテリーパック、及び発電機を含み、発電機は、内燃エンジンに機械的に結合され、電気モーター及び/又はバッテリーパックに電気的に結合され、エンジン制御ユニットは、内燃エンジンを運転し、内燃エンジンの現在の負荷レベルを決定し、現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では希薄燃焼モードでの内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、そして、内燃エンジンの現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、バッテリーパックを充電するために、現在の負荷レベルを上げるように構成される。
【0020】
エンジン制御ユニットは、内燃エンジン又は内燃エンジンシステムの一部であってもよい。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、バッテリー式電気自動車用のパワートレインが提供され、パワートレインは、内燃エンジンと、電気モーターと、バッテリーパックと、内燃エンジンに機械的に結合され、電気モーター及び/又はバッテリーパックに電気的に結合された発電機と、本発明の前述の態様によるエンジン制御ユニットを含む。
【0022】
パワートレインは、ハイブリッド車、シリーズハイブリッド車、又はバッテリー式電気自動車などの車両の一部であり得る。
【0023】
本出願の範囲内で、前の段落、特許請求の範囲、及び/又は以下の説明と図面、特にそれらの個々の特徴に記載されているさまざまな態様、実施形態、例、及び代替案は、単独で、又は任意の組み合わせで用いられ得る。すなわち、すべての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴は、そのような特徴が両立しない場合を除き、任意の方法及び/又は組み合わせで、組み合わせることができる。出願人は、最初に提出された請求を変更する権利、又はそれに応じて新しい請求を提出する権利を留保する。これには、最初に提出された請求を、他の請求に依存するように修正する権利、及び/又は最初にそのような方法で請求されていないにもかかわらず、他の請求の特徴を組み込む権利が含まれる。
【0024】
ここで、本発明の1つ以上の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明を有利に使用することができる車両及び車両パワートレインの概略図である。
【
図2】
図1の車両パワートレインの変形を示す図である。
【
図3】本発明を有利に使用できる別の車両パワートレインの概略図である。
【
図4】
図3の車両パワートレインの変形を示す図である。
【
図5】希薄燃焼エンジンを備えた車両パワートレインの代替実施形態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態で使用するためのエンジンマップを概略的に示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に従って適合させることができるような制御システムの簡略化された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態によるパワートレインは、添付の
図1を参照して本明細書で説明される。パワートレインは、四輪駆動車両の前車軸160及び後車軸170の車輪180を駆動するのに必要な動力を提供するように構成される。しかしながら、本発明は、例えば前輪又は後輪駆動車両に適用される場合にも同様に有用であることに留意されたい。車両を駆動するために必要な機械的動力は、ハイブリッドエンジン100によって発生される。ハイブリッドエンジン100は、この四輪駆動車両では、トランスミッション140及び2つのディファレンシャル150を介して前車軸160及び後車軸170に結合されている。前輪駆動車又は後輪駆動車では、ディファレンシャル150が1つだけ必要となる。
【0027】
ハイブリッドエンジン100は、内燃エンジン110と電気モーター120とを含む。内燃エンジン110は、ガソリンを燃焼させて熱を機械動力に変換する。本発明の利点を享受するために、内燃エンジン110は希薄条件下(すなわち、空気と燃料の混合物(チャージとも呼ばれる)において空気が過剰な状態でガソリンを燃焼させる)で運転するように構成されている。電気モーター120は、バッテリーパック121によって電力供給され、電力を機械的動力に変換する。内燃エンジン110の出力軸によって駆動されるとき、電気モーター120は、バッテリーパックを充電するための発電機として使用することができる。それに加えて、バッテリーパック121は、例えば、電力網に接続された外部充電器を介して、又は車両の車体に組み込まれた光電池を介して充電可能であり得る。
【0028】
本発明のこの実施形態で使用されるハイブリッドエンジン100は、P2タイプのものであり、これは、電気モーター120がクラッチ130を介して内燃エンジン110の出力軸に連結されることを意味する。クラッチ130が開かれると、内燃エンジン110はドライブトレインから切り離され、車両は電気モーター120のみによって推進される。クラッチ130が閉じられると、内燃エンジン110によって生成された動力が、車両を駆動するために使用され得る。その後、車両10は、内燃エンジン110のみによって駆動されてもよいし、電気モーター120によって補助されてもよい。あるいは、内燃エンジン110を使用して、車両を駆動する必要を超える出力を生成することができ、余剰な出力は、電気モーター120が機械的動力を、例えばバッテリーパック121を充電するために使用できる電気に変換するために使用することができる。車両は内燃エンジン110のみ、電気モーター120のみ、又は両方の組み合わせで走行できるため、このタイプのハイブリッドエンジン100はフルハイブリッドエンジン100とも呼ばれる。
【0029】
図2は、
図1の車両パワートレインの変形を示す。ここでは、独立した発電機530が内燃エンジン110に接続されている。発電機530は、電気モーター120に電力を供給し、及び/又はバッテリーパック121を充電するために使用することができる。電気モーター120とは異なり、発電機530は、エンジン110がドライブトレインから切り離されているときに使用することができる。図示されていないが、発電機530が電力を生成するために使用されないとき、発電機530をエンジン110から切り離すために、追加のクラッチを設けることができる。
【0030】
クラッチ130が開かれ、エンジン110が電気モーター120及びドライブトレインから切り離されると、希薄燃焼モードで運転し続けて発電機530を駆動し、それによってバッテリーパック121を充電するか、又は電気モーター120に電力を供給することができる。ドライブトレインに結合されると、車両の運転に必要なエンジン負荷を超える総エンジン負荷の制御された増加は、エンジン110を希薄運転させる運転モードに入らせるのに役立ち得る。次いで、この過剰なエンジン負荷は、発電機530を駆動するために使用され、それによってバッテリーパック121を充電する。
【0031】
図1及び2では、P2タイプのハイブリッドエンジン100が示されているが、本発明は、車両が電気モーターによって完全に動力を供給されているとき、内燃エンジンをドライブトレインから切り離すことができる、他のタイプのハイブリッドエンジン(例えば、P3又はP4)にも同様に有用であることを留意されたい。
【0032】
P4タイプのハイブリッドエンジン101の例を
図3に示す。ここで、内燃エンジン110はクラッチ130を介してトランスミッション140に連結され、前輪を駆動する。電気モーター120は、後車軸170に直接結合される。この図に示されるパワートレインは、後車軸170にトルクを提供するために電気モーター120によって補助され、内燃エンジン110によって四輪駆動モードで運転することができる。完全な電気モードでは、内燃エンジン110はドライブトレインから切り離され、車両は後車軸170のみの電気モーター120によって駆動される。このような構成では、内燃エンジン110と電気モーター120は、道路と車両の車輪180を介して互いに結合されるだけである。他の実施形態では、トランスミッション140と後車軸170との間の結合を設けることができ、トランスミッション140を後車軸170から選択的に切り離すためのクラッチを含むことができることに留意されたい。
【0033】
内燃エンジン110は、発電機(図示せず)にさらに結合されてもよく、発電機は、例えば、バッテリーパック121を充電し、及び/又は電気モーター120に電力を供給するために使用され得る。これは典型的には、車両10が後車軸170のみで駆動される場合に有用であるが、四輪駆動モード又は前輪駆動モードでも行うことができる。前輪駆動モードでは、発電機はバッテリーパック121を充電するためにのみ使用される。後輪又は四輪駆動モードでは、発電機530は、電気モーター120に電力を供給するため、及び/又はバッテリーパック121を充電するために使用することができる。
【0034】
図4は、
図3の車両パワートレインの変形例を示している。ここでは、クラッチ130とトランスミッション140との間に追加の電気モーター120が設けられている。したがって、前車軸160は、
図1に示されるものと同様のフルハイブリッドエンジンによって駆動され、一方、後車軸170は、独立した電気モーター120のみによって駆動される。前車軸160及び後車軸170は、道路及び車両の車輪180を介して互いに結合されるだけである。
【0035】
図5は、希薄燃焼エンジンを備えた車両パワートレインの別の実施形態を示している。この実施形態では、内燃エンジン110はドライブトレインに機械的に結合されていない。代わりに、エンジン110は、エンジン110によって駆動されると電力を生成する発電機530に接続される。発電機530によって生成された電力は、電気モーター120がトランスミッション140を駆動すること、又はバッテリーパック121を充電することを可能にするために直接使用することができる。これにより、バッテリーパック121によって蓄えられた電力は、後で電気モーター120を駆動するために使用することができる。この車両は常に電気モーター120によって駆動され、内燃エンジン110だけで駆動することはできないため、フルハイブリッドではなく電気自動車である。このような電気自動車の内燃エンジン110は、通常、「レンジエクステンダー」又は「補助動力装置(auxiliary power unit、APU)」と呼ばれる。
図1及び2の実施形態との別の重要な違いは、電気モーター120のRPMが内燃エンジン110のRPMとは完全に独立していることである。内燃エンジン110のRPMは電気モーター120から独立しているので、内燃エンジン110のRPMは車輪のRPMからも独立しており、したがって、内燃エンジン110を車両の速度に関係のないRPMで運転させることができる。
【0036】
発電機530によって生成される電力の量は、車両10を駆動するために必要とされる機械的動力の量に応じて制御される。しかし、エンジン110が常に希薄燃焼モードで運転できることを保証するように、エンジン110及び発電機530を制御することが有利であり得る。これは、エネルギー効率の高い希薄燃焼モードで実行するには電力需要が高くなりすぎたときに、エンジン負荷を減らし、より多くのバッテリー電力を使用することで達成できる。同様に、エンジン負荷が低く、エンジン110が希薄燃焼モードで電力を供給することが困難又は不可能になる場合、エンジン負荷を増加させることができ、余分な電力をバッテリーパック121に蓄えることができる。エンジン110が希薄燃焼モードのみで運転することを保証するそのような制御戦略は、バッテリーパック121と内燃エンジン又はレンジエクステンダー110との間で電力需要を分配するための一般的な制御戦略と組み合わされる。バッテリーパック121が既に満充電されている場合、内燃エンジン110の現在の負荷レベルが希薄燃焼閾値を下回り、希薄燃焼モードでエンジンを運転させることがもはや望ましくない、及び/又は不可能なとき、内燃エンジン110はオフにされ得る。
【0037】
エンジンの効率と性能は、出力軸の回転速度(通常は1分あたりの回転数で測定)と、出力する必要がある仕事の量に依存する。最大の効率と性能は通常、狭い範囲のエンジン速度とエンジン負荷の組み合わせで達成される。必要な速度と負荷に応じてエンジンの関連する運転パラメータを継続的に適応させることにより、この狭い範囲外で作業する場合にも、エンジンの性能と効率を最適化することができる。
図8を参照して以下でより詳細に説明するエンジン制御ユニットは、エンジン100、101に動作可能に結合され、少なくとも現在のエンジン負荷を含むが、好ましくは現在のエンジン速度及び他の関連するパラメータも含む異なる入力パラメータの関数として、その運転を制御する。
【0038】
図6は、本発明の一実施形態で使用するためのエンジンマップ200を概略的に示している。エンジンマップ200は、
図1及び2のハイブリッドエンジン100、101の異なる運転領域(I、II、III、IV)を示す。エンジン100、101によって送達される負荷及び出力速度に応じて、エンジン100、101は異なる運転領域で運転する。
【0039】
領域Iでは、クラッチ130が閉じられ、内燃エンジン110がドライブトレインに結合される。本発明によれば、内燃エンジン110は、領域Iの全空間において希薄燃焼モードで運転する。これは、ガソリンが、エンジンのシリンダ内の空気燃料混合物中の過剰な空気(すなわち、ラムダ>1)で燃焼されることを意味する。例えば、ラムダが少なくとも1.2又は1.3の負荷が使用される。空気と燃料の正確な混合、燃料噴射のタイミング、バルブの動作、火花点火は、状況やエンジン出力の要求によって異なる。領域Iで運転している間、電気モーター120は、以下の3つのモードのうちの1つで使用される:
-アイドリング。電気モーター120のローターは、中間ギアカップリングのギア比に応じて、内燃エンジン110の出力シャフトの速度(
図1)、後車軸170の速度(
図3)、又はそのような速度の倍数で回転する。電気モーター110の摩擦損失は、ゼロではないにしても、一般に非常に小さい。
-トルクアシスト。例えば、バッテリー121からの電力は、希薄燃焼内燃エンジン110によって提供されるトルクに追加するために使用される。
-発電。内燃エンジン110によって提供される電力の一部は、バッテリー121を充電するために使用される。
【0040】
これらの3つのモードを切り替えるための効率的かつ効果的な戦略は、当技術分野で一般的に知られており、多くの入力パラメータ(バッテリー121の充電状態、燃料タンクの充填レベル、車速、現在の燃費、要求総トルク、排気ガス組成など。)に依存し得る。
【0041】
エンジン負荷が低く、パワートレインのパワー需要を満たすために必要な燃料が少ない場合、希薄環境での安定した燃焼が問題になる。チャージの可燃性が低すぎて、すべての燃料を適切に燃焼させることができない。さらに、燃焼が一度に全気筒で行われるのではなく、より小さな孤立したポケットで行われると、これによりノッキングが発生し、騒音が発生し、内燃エンジン110に損傷を与える。このような問題を回避するために、
図1及び
図2のハイブリッドエンジン100、101は、領域IIで運転するとき、ドライブトレインから内燃エンジン110を分離する。したがって、運転領域2は、パワートレインが電気モーター120のみによって駆動される完全電気モードに対応する。
【0042】
領域Iと領域IIとの間の移行は、希薄燃焼モードでの内燃エンジン110の安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルとして定義される希薄燃焼負荷閾値210によって特徴付けられる。「不可能」とは、チャージの可燃性の低下が、希薄燃焼が技術的に完全に不可能になるか、あるいは、内燃エンジン110の効果的な使用に適さないほど予測不可能で不安定すぎることを意味し得る。内燃エンジン110の希薄燃焼運転は、例えば、燃料効率が比較的低いか、NOx又はCO排出量が多い場合、「望ましくない」可能性がある。同様に、排気ガスの温度が低すぎて後処理システムでそのような排出物を効果的に処理できない場合、希薄運転は「望ましくない」ものになる。希薄燃焼運転が望ましくない他の考えられる理由としては、例えば、その他の望ましくない、若しくは法律で定められた排出量、(一時的な)騒音制限の超過、燃料タンクの充填レベルの低下、又は電気モードでの運転に対する単純なユーザーの好みがあり得る。
【0043】
本発明の基本的な実施形態では、希薄燃焼負荷閾値は、固定エンジン負荷値によって定義されてもよい。この固定閾値は、例えば、最大エンジン負荷のパーセンテージ(例えば10%)として定義するか、BMEP(例えば3バール)で表すことができる。車両がその固定値未満のエンジン負荷を要求する場合、エンジン100、101は電気モードで運転する(領域II)。車両がその固定値未満のエンジン負荷を要求する場合、エンジン100、101は電気モードで運転する(領域II)。車両がより多くのエンジン負荷を要求する場合、エンジン100、101は希薄燃焼モード(領域I)で運転する。
図6に示すように、本発明のより高度な実施形態では、希薄燃焼負荷閾値210は、例えば、現在のエンジンRPMに依存する。ここでRPMは、内燃エンジン110の出力軸の回転速度(毎分回転数)を指す。
図1の実施形態では、この回転速度は電気モーター120の回転子の回転速度に対応する。
図3の実施形態では、内燃エンジン110の回転速度は、電気モーター120の回転速度の所定の倍数である。したがって、電気モードでは、内燃エンジンが運転しなくてもよいとき、エンジンRPMは、電気モーター120のローターの回転速度に基づいて決定することができる。したがって、内燃エンジン110が(まだ)運転していないときにも、RPM依存の希薄燃焼負荷閾値210を決定することができる。
【0044】
領域I及びIIに加えて、エンジンマップは、領域III及び領域IVも含む。領域IIIでは、ハイブリッドエンジン100、101は、電気モーター120の周知の特性を利用して、利用可能なRPMの全範囲にわたって高トルクを提供することができる。対照的に、内燃エンジン110は通常、特定のRPMで又はその付近で最大トルクを生成し、その最適範囲外で出力を低下させる。トランスミッション140は、変化する車速で最適RPM範囲近くを維持するために使用される(ギアを切り替える)。領域III(低RPM)及び領域IV(高RPM)におけるエンジン100、101のハイブリッド運転によって、希薄燃焼内燃エンジン110ではそのようなトルクを利用できないエンジン速度でも、高トルクを送達することができる。領域II、III、及びIVは、希薄燃焼トルクと電気駆動を組み合わせたハイブリッドモードで運転でき、例えば、領域IIで運転することは、電気モーターを発電機として運転させて、内燃エンジンの運転ポイントを希薄領域に移動させることを含むことができる。
【0045】
図7は、本発明による可能な方法の流れ図を示す。ハイブリッドエンジン100、101の運転の制御は循環プロセスである。ハイブリッドエンジン100、101の運転がそれに応じて適合される間、エンジン負荷及び他のパラメータが継続的に監視される。制御プロセスの説明は、電気補助なしで希薄燃焼モード310で運転するエンジン100、101から始める。
図6のエンジンマップ200を見ると、これは、エンジン100、101が領域Iで運転していることを意味する。
【0046】
フルハイブリッドエンジン100、101が運転している間、その現在の負荷レベルが監視ステップ330で監視される。現在の負荷レベルは、通常、現在のエンジン負荷を決定又は推定するために1つ又は複数の入力パラメータを使用するトルクモデルに基づいて決定される。トルクモデルの入力として使用する有用なパラメータは、例えば、アクセルペダル位置センサーによって測定されたアクセルペダルの位置、又はクルーズコントロールシステムの現在の速度制御設定である。現在の負荷レベルを推定するのに役立ち得るその他のパラメータは、車両の速度、道路の傾斜、及び車両の重量情報(車両によって輸送されている乗客及び/又は商品の重量を含み得る)である。
【0047】
上で説明したように、エンジン管理は、監視又は推定された現在のエンジン負荷レベルのみに完全に基づくことができるが、エンジンRPM、NOx、及びその他の排出物などの追加のパラメータを考慮に入れることができる。このような追加のパラメータも、適切なセンサーの助けを借りて監視ステップ330で取得される。
【0048】
モード選択ステップ340では、監視ステップ330で得られた監視パラメータを使用して、エンジン100、101の適切な運転モードを選択する。最も適切なモードを選択するために、
図6のエンジンマップ200を使用することができる。これは、現在の負荷レベルを、エンジンマップ200に示される希薄燃焼負荷閾値210と比較することによって行うことができる。次に、現在のエンジン負荷及び現在のエンジンRPMに応じて、エンジン制御ユニットは、エンジン100、101を領域I、II、III、又はIVのいずれで運転させるかを決定する。例えば、フルハイブリッドエンジン100、101の現在の負荷レベルが希薄燃焼負荷閾値210を下回る場合、エンジン制御ユニットは、パワートレインから内燃エンジンを切り離し、フルハイブリッドエンジン100、101を電気モード320で運転させることを決定することができる。
【0049】
エンジン制御ユニットがエンジン100、101を領域IIで運転させることを選択した場合、内燃エンジン110はドライブトレインから切り離され、ハイブリッドエンジン100、101は完全電気モード320に切り替えられる。エンジン制御ユニットがエンジン100、101を領域I、III又はIVで運転することを選択した場合、内燃エンジン110はドライブトレイン及びハイブリッドエンジン100、101に結合されたままであり、ハイブリッドエンジンは完全希薄燃焼モード310にとどまるか、補助希薄燃焼モード315(ここで、内燃エンジン110と電気モーター120は共に、要求されたトルクを提供する。)に切り替わる。前述したように、内燃エンジン110を電気的補助あり又はなしでの運転の決定は、例えば、バッテリー121の充電状態、燃料タンクの充填レベル、現在の燃料効率、車速、必要な合計トルク、排気ガス組成などに依存する。完全希薄燃焼モード310で運転するとき、内燃エンジンからの余剰出力(例えば、エンジンマップ200内のより燃料効率の高い場所で運転するために生成される)は、バッテリー121を充電するために使用され得る。しかしながら、バッテリー121の充電は、惰性走行中又は回生ブレーキの使用中に、よりエネルギー効率のよい方法で可能であり得る。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、適切な運転モードを選択するために現在のNOx排出量も考慮される。これは、例えば、所定のNOx閾値を超えた都度、エンジンマップ200を一時的に無効にし、完全電気モード320に即座に切り替えることによって行うことができる。あるいは、監視されたNOx排出値は、希薄燃焼負荷閾値210を較正するための入力として使用されてもよい。例えば、希薄燃焼閾値210のすぐ上のエンジンマップ200の領域で運転して、NOx排出量を比較的低く保つことができることが判明した場合、閾値210を下げることができる。逆に、予想外に高いNOx排出量が発生した場合は、閾値を引き上げることができる。そのような較正はまた、あるRPMに対しては閾値を上げることができるが、他のRPMに対しては下げる必要がある場合、希薄燃焼閾値210の形状を変更することができる。
【0051】
図8を参照すると、上述の
図7の方法を実施するように適合され得るような制御システム又はエンジン制御ユニット400の簡略化された例が示されている。制御システム400は、1つ又は複数のコントローラ410を含み、希薄燃焼モード310、315又は電気モード320で内燃エンジン110を運転させ、フルハイブリッドエンジン100、101の現在の負荷レベルを決定し、現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値210と比較し、それに応じて、フルハイブリッドエンジン100、101を適切なモードで運転させるために、内燃エンジン110をドライブトレインに結合又はドライブトレインから切り離すように構成される。
【0052】
コントローラ410又は各コントローラ410は、1つ又は複数の電子プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)など)を有する制御ユニット又は計算デバイスを含むことができることを理解されたい。本明細書で使用される「コントローラ」、「制御ユニット」、又は「計算装置」という用語は、単一のコントローラ、制御ユニット、又は計算デバイス、及び必要な制御機能を提供するために集合的に動作する複数のコントローラ、制御ユニット、又は計算デバイスを含むものと理解される。実行されると、コントローラ410に本明細書に記載の制御技術(本明細書に記載の方法に必要な機能の一部又は全部を含む)を実施させる一連の命令を提供することができる。命令のセットは、コントローラ410の前記1つ又は複数の電子プロセッサに内蔵させることができる。あるいは、命令のセットは、コントローラ410で実行されるソフトウェアとして提供され得る。第1のコントローラ又は制御ユニットは、1つ又は複数のプロセッサ上で実行されるソフトウェアを実装され得る。1つ又は複数の他のコントローラ又は制御ユニットは、1つ又は複数のプロセッサ、任意選択で第1のコントローラ又は制御ユニットと同じ1つ又は複数のプロセッサ上で実行されるソフトウェアを実装され得る。他の変形も使用できる。
【0053】
図8に示す例では、コントローラ410又は各コントローラ410は、上述のような1つ又は複数の入力信号401を受信するための1つ又は複数の電気入力422、及びクラッチ130を開閉するための、又は内燃エンジン110及び電気モーター120を運転させるための制御信号などの、1つ又は複数の出力信号402を出力するための1つ又は複数の電気出力424を有する少なくとも1つの電子プロセッサ420を含む。コントローラ410又は各コントローラ410は、少なくとも1つの電子プロセッサ420に電気的に結合され、そこに記憶された命令440を有する少なくとも1つのメモリデバイス430をさらに含む。
【0054】
電子プロセッサ420又は各電子プロセッサ420は、電子命令を実行するように構成された任意の適切な電子プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ASICなど)を含むことができる。電子メモリデバイス430又は各電子メモリデバイス430は、任意の適切なメモリデバイスを含み得、様々なデータ、情報、閾値、ルックアップテーブル又は他のデータ構造、及び/又はその中又は上に命令を格納し得る。一実施形態では、メモリデバイス430は、本明細書に記載の方法論の全部又は一部を司ることのできる、その中又は上に格納されたソフトウェア、ファームウェア、プログラム、アルゴリズム、スクリプト、アプリケーションなどのための情報及び命令を有する。プロセッサ、又は各電子プロセッサ420は、メモリデバイス430にアクセスし、その又はそれらの命令及び情報を実行及び/又は使用して、本明細書に記載の機能及び方法論の一部又は全部を実行することができる。
【0055】
少なくとも1つのメモリデバイス430は、機械又は電子プロセッサ/計算デバイスによって読み取り可能な形式で情報を記憶するための任意の機構を備え得るコンピュータ可読記憶媒体(例えば、非一時的又は非一時的記憶媒体)を備え得る。これらには、以下が含まれるが、これらに限定されない:磁気記憶媒体(例:フロッピーディスク);光学記憶媒体(例:CD-ROM);光磁気記憶媒体;読み取り専用メモリ(ROM);ランダムアクセスメモリ(RAM);消去可能なプログラム可能なメモリ(例:EPROM及びEEPROM);フラッシュメモリー;又は、そのような情報/指示を保存するための電気的又はその他の種類の媒体。
【0056】
少なくとも1つのメモリデバイス430内に格納された電子命令を実行するように構成された少なくとも1つの電子プロセッサ420を含む例示的なコントローラ410が説明された。これは、実行されると、電子プロセッサ420に前述の方法を実行させる。しかし、本発明は、プログラム可能な処理装置によって実施されることに限定されず、本発明の機能及び/又は方法ステップのその少なくともいくつか、そして、いくつかの実施形態では、それらのすべてが、プログラム不可能なハードウェアによって(例えば、プログラム不可能なASIC、ブール論理回路などを介して)等しく実装されてもよいことが想定される。
【0057】
本出願の範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び修正を加えることができることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルハイブリッドエンジン用のエンジン制御ユニットであって、前記フルハイブリッドエンジンは、内燃エンジン及び電気モーターを含み、前記内燃エンジンはクラッチを介してドライブトレインに結合されており、前記エンジン制御ユニットは、以下のように構成される、エンジン制御ユニット:
-希薄燃焼モードで前記内燃エンジンを運転し、
-前記フルハイブリッドエンジンの現在の負荷レベルを決定し、
-前記現在の負荷レベルを希薄燃焼負荷閾値と比較し(前記希薄燃焼負荷閾値は、それ未満では前記希薄燃焼モードでの前記内燃エンジンの安定運転が不可能及び/又は望ましくない負荷レベルを定義する)、
-前記フルハイブリッドエンジンの前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値を下回っている場合、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインから切り離し、前記フルハイブリッドエンジンを電気モードで運転させ、そして
-前記現在の負荷レベルが前記希薄燃焼負荷閾値とエンジンマップの最大負荷との間にある間、前記内燃エンジンを前記ドライブトレインに結合させる。
【外国語明細書】