IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161494
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】面光源体
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20241112BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20241112BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20241112BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/372
C08K5/13
C08K5/49
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135605
(22)【出願日】2024-08-15
(62)【分割の表示】P 2020083714の分割
【原出願日】2020-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田辺 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 聡
(57)【要約】
【課題】導光性にすぐれ、成形時の黄変や湿熱環境下での劣化が少ないポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)下記式〔1〕または下記式〔2〕で表されるチオエーテル系化合物(B成分)を0.005~0.2重量部、リン系酸化防止剤を0~1重量部、フェノール系酸化防止剤を0~1重量部、離型剤を0~1重量部のみからなる導光性能を有するポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体であって、該成形品は厚み2mmの波長340nm~420nmの範囲の平均分光光線透過率が85.0%以上である面光源体。
(R-S-CH-CH-C(O)O-CH-C 〔1〕
[式(1)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数4~20のアルキル基である。]
(R-O-C(O)-CH-CH-)-S 〔2〕
[式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数6~22のアルキル基である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)下記式〔1〕または下記式〔2〕で表されるチオエーテル系化合物(B成分)を0.005~0.2重量部、リン系酸化防止剤を0~1重量部、フェノール系酸化防止剤を0~1重量部、離型剤を0~1重量部のみからなる導光性能を有するポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体であって、該成形品は厚み2mmの波長340nm~420nmの範囲の平均分光光線透過率が85.0%以上である面光源体。
(R-S-CH-CH-C(O)O-CH-C 〔1〕
[式(1)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数4~20のアルキル基である。]
(R-O-C(O)-CH-CH-)-S 〔2〕
[式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数6~22のアルキル基である。]
【請求項2】
チオエーテル系化合物は、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオエーテル化合物である請求項1記載の面光源体。
【請求項3】
厚み2mmの成形品のb*値が0.4以下である請求項1または2記載の面光源体。
【請求項4】
厚み2mmの成形品のHaze値が0.1以下である請求項1または2記載の面光源体。
【請求項5】
湿熱処理(温度120℃、24時間)前後の厚み2mmの成形品のΔHaze値が1.0以下である請求項1または2記載の面光源体。
【請求項6】
成形品は、ポリカーボネート樹脂組成物板状に成形して得られる成形板である請求項1または2記載の面光源体。
【請求項7】
面光源体は、成形板の少なくとも一方の側面に光源を設け、該成形板の片面に反射板を設置したものである請求項6記載の面光源体。
【請求項8】
面光源体の光源としては、蛍光ランプ、冷陰極管、LED、レーザーダイオードまたは有機ELである請求項7記載の面光源体。
【請求項9】
面光源体は、携帯電話、携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、ディスプレイ、照明、信号、自動車のランプ、家電・光学機器の表示部品である請求項1または2記載の面光源体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光性能を有するポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体に関する。さらに詳しくは、導光性に優れ、成形時にも黄変の少なく、湿熱環境下での劣化が少なく、導光板などの光学素子、あるいは表示パネルや照明用のカバーなどに好適に用いることができるポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源とする光源体は、省電力性・長寿命の観点から次世代光源体として注目を集めており、1990年代の青色発光ダイオード開発以降は、LEDによる白色光照明の実用可能性が高まり、局所照明を中心に急速に市販製品が登場してきた。またディスプレイをはじめとする面光源体についても、LED光源は、冷陰極管が発する白色光をカラーフィルタで透過して得られる色(赤・緑・青)に比べ、RGB3色LEDが放つ光の色純度が高く、色の再現範囲を大きく広げることができるというメリットがあるため、光源のLED化が進んできている。一方、LEDは点光源であるため広い面積を照射しようとすると光源体の背面に多くのLEDを設置する必要があり(バックライト方式)その一つ一つが点光源としてみえてしまう、すなわちムラを生じやすいといった欠点がある。最近では、このムラを解消し、かつ低コスト化、更なる省電力化、更には製品の薄型化を目指し、LEDを光源体の端面に配置するいわゆるエッジライト方式の光源体が増えてきている。エッジライト方式の光源体において、均一な面発光性を達成するために光を遠くまで伝える導光体が用いられる。しかしながらエッジライト方式での光源体では光源から遠くなるに従って、暗くなってしまう問題がある。従って、導光性を有する成形体用の材料としては、光源からの光の減衰が少ない特性すなわち導光性が求められ、これまで透明樹脂の中で、ポリメチルメタアクリレート(以下「PMMA」と称する事がある)が最も適した材料として用いられてきた。しかしながら、PMMAは、耐衝撃性、熱安定性などが必ずしも十分でなく、前述の用途においては使用環境が制限されるという問題点がある。また光源のLED化に伴い、導光体には上記特性に加えて耐熱性も求められはじめた。そのため、耐熱性、耐衝撃性の点で優れるポリカーボネート樹脂の導光性を改良する技術が注目を集めるようになってきた。
【0003】
ポリカーボネートの導光性を改良した例として、特許文献1では、粘度平均分子量が13,000~15,000であるポリカーボネート樹脂に特定のリン系安定剤と離型剤を配合した導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が報告されている。しかしながら強度に問題があることに加え、リン系安定剤により耐湿熱性能が低下するという問題があり用途が限られてしまう。特許文献2、3では、特定のシロキサン化合物を少量配合してなる導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が報告されている。しかしながら、シリコーン系の化合物は、高温条件下で低分子シリコーンガスが発生する場合がある。特許文献4ではポリカーボネートとアクリル系樹脂からなる樹脂組成物を用いて成形した板状成形体の表面又は裏面に光散乱層を設けてなる導光板が報告されている。特許文献5では芳香族ポリカーボネート樹脂および芳香族ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が0.001以上である他の熱可塑性樹脂からなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が報告されている。しかしながら本来ポリカーボネート樹脂に対して非相溶であるとアクリル系樹脂を添加するため、添加量が限られており、導光性を充分に発現しない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-204737号公報
【特許文献2】特開2004-250557号公報
【特許文献3】特開2015-157901号公報
【特許文献4】特開平10-73725号公報
【特許文献5】特開2002-60609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、導光性に優れ、成形時の黄変や湿熱環境下での劣化が少ないポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂にチオエーテル系化合物を特定割合で配合したポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体が上記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、下記構成(1)~(9)が提供される。
(1)(A)2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体とを反応させて得られたポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)下記式〔1〕または下記式〔2〕で表されるチオエーテル系化合物(B成分)を0.005~0.2重量部、リン系酸化防止剤を0~1重量部、フェノール系酸化防止剤を0~1重量部、離型剤を0~1重量部のみからなる導光性能を有するポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体であって、該成形品は厚み2mmの波長340nm~420nmの範囲の平均分光光線透過率が85.0%以上である面光源体。
(R-S-CH-CH-C(O)O-CH-C 〔1〕
[式(1)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数4~20のアルキル基である。]
(R-O-C(O)-CH-CH-)-S 〔2〕
[式(2)中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状または分岐鎖状の炭素数6~22のアルキル基である。]
(2)チオエーテル系化合物は、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネートおよびペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオエーテル化合物である前項(1)記載の面光源体。
(3)厚み2mmの成形品のb*値が0.4以下である前項(1)または(2)記載の面光源体。
(4)厚み2mmの成形品のHaze値が0.1以下である前項(1)または(2)記載の面光源体。
(5)湿熱処理(温度120℃、24時間)前後の厚み2mmの成形品のΔHaze値が1.0以下である前項(1)または(2)記載の面光源体。
(6)成形品は、ポリカーボネート樹脂組成物板状に成形して得られる成形板である前項(1)または(2)記載の面光源体。
(7)面光源体は、成形板の少なくとも一方の側面に光源を設け、該成形板の片面に反射板を設置したものである前項(6)記載の面光源体。
(8)面光源体の光源としては、蛍光ランプ、冷陰極管、LED、レーザーダイオードまたは有機ELである前項(7)記載の面光源体。
(9)面光源体は、携帯電話、携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、ディスプレイ、照明、信号、自動車のランプ、家電・光学機器の表示部品である前項(1)または(2)記載の面光源体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体は、ポリカーボネート樹脂およびチオエーテル系化合物からなるポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体であり、優れた導光性、色相および耐湿熱性を示すものである。本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を用いた面光源体は、上記効果を有するため、LED照明を始めとする照明分野、OA機器分野、電気電子機器分野、自動車分野などの各種工業用途に極めて有用であり、その奏する工業的効果は極めて大である。具体的には、携帯電話、携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、ディスプレイ、照明、信号、自動車のランプ、家電・光学機器の表示部品の面光源体などが例示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分:ポリカーボネート樹脂>
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
ここで使用されるジヒドロキシ成分としては、通常ポリカーボネート樹脂のジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、ビスフェノール類でも脂肪族ジオール類でも良い。
【0010】
ビスフェノール類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタンおよび下記一般式〔3〕で表されるシロキサン構造を有するビスフェノール化合物等が挙げられる。
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R及びR10は、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、p及びqは夫々1~4の整数でありeは自然数であり、fは0又は自然数であり、e+fは100未満の自然数である。Xは炭素原子数2~8の二価脂肪族基である。]
【0013】
脂肪族ジオール類としては、例えば2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,14-テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16-ヘキサデカンジオール、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-1-フェニルエタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}プロパン、1,1-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ビフェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル}プロパン、2,2-ビス{3-t-ブチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-4-メチルペンタン、2,2-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2-ビス{3-ブロモ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3,5-ジメチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1-ビス{3-シクロヘキシル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル}フルオレン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ-テル、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、1,3-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビス{(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル}-5,7-ジメチルアダマンタン、3,9-ビス(2-ヒドロキシー1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。
【0014】
これらの中で芳香族ビスフェノール類が好ましく、なかでも1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、上記一般式〔3〕で表されるビスフェノール化合物が好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、および9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、上記一般式〔3〕で表されるビスフェノール化合物が好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、分岐化剤を上記のジヒドロキシ化合物と併用して分岐化ポリカーボネート樹脂としてもよい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、26-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0016】
これらのポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。その製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0017】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0018】
本発明において、重合反応においては末端停止剤を使用する。末端停止剤は分子量調節のために使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる末端停止剤としては、下記一般式〔4〕~〔6〕で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0019】
【化2】
【0020】
[式〔4〕中、Aは水素原子、炭素数1~9のアルキル基、アルキルフェニル基(アルキル部分の炭素数は1~9)、フェニル基、またはフェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数1~9)であり、rは1~5、好ましくは1~3の整数である]。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
[式〔5〕、〔6〕中、Yは-R-O-、-R-CO-O-または-R-O-CO-である、ここでRは単結合または炭素数1~10、好ましくは1~5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10~50の整数を示す。]
【0024】
上記一般式〔4〕で表される単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クレゾール、p-クミルフェノール、2-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、およびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。
【0025】
また、上記一般式〔5〕または〔6〕で表される単官能フェノール類は、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類であり、これらを用いてポリカーボネート樹脂の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、樹脂の吸水率を低くする効果があり好ましく使用される。
【0026】
上記一般式〔5〕の置換フェノール類としてはnが10~30、特に10~26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0027】
また、上記一般式〔6〕の置換フェノール類としてはYが-R-COO-であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10~30、特に10~26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0028】
これら単官能フェノール類の内、上記一般式〔4〕で表される単官能フェノール類が好ましく、より好ましくはアルキル置換もしくはフェニルアルキル置換のフェノール類であり、特に好ましくはp-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノールまたは2-フェニルフェノールである。
【0029】
これらの単官能フェノール類の末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0030】
本発明のA成分として用いられるポリカーボネート樹脂は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸あるいはその誘導体を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。
【0031】
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、11,500~50,000の範囲が好ましく、12,500~40,000がより好ましく、13,500~35,000の範囲がさらに好ましく、15,000~30,000の範囲が最も好ましい。分子量が50,000を越えると溶融粘度が高くなりすぎて成形性に劣る場合があり、分子量が11,500未満であると機械的強度に問題が生じる場合がある。なお、本発明でいう粘度平均分子量は、まず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度を次式に挿入して粘度平均分子量Mvを求める。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0032】
本発明のA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、樹脂中の全Cl(塩素)量が好ましくは0~500ppm、より好ましくは0~350ppmである。ポリカーボネート樹脂中の全Cl量が上記範囲であると、色相および熱安定性に優れ好ましい。
【0033】
<B成分:チオエーテル系化合物>
本発明のB成分として使用されるチオエーテル系化合物は、ポリカーボネート樹脂の製造時または成形加工時の熱安定性を向上させ、機械的特性、色相、および成形安定性を向上させる。本発明で使用されるチオエーテル系化合物は、特に下記式〔1〕および下記式〔2〕で示される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のチオエーテル系化合物が好ましい。
(R-S-CH-CH-C(O)O-CH-C 〔1〕
[式中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数4~20のアルキル基である。]
(R-O-C(O)-CH-CH-)-S 〔2〕
[式中、Rは同一でも異なっていてもよく、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数6~22のアルキル基である。]
【0034】
前記式〔1〕で示されるチオエーテル系化合物において、Rは炭素数4~20のアルキル基であり、炭素数10~18のアルキル基が好ましい。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられ、なかでもペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)が好ましく、特にペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0035】
また、前記式〔2〕で示されるチオエーテル系化合物において、Rは炭素数6~22のアルキル基であり、炭素数10~18のアルキル基が好ましい。具体的には、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられ、なかでもジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネートが好ましく、特にジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネートが好ましい。
【0036】
チオエーテル系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005~0.2重量部の範囲であり、0.01~0.15重量部の範囲が好ましく、0.02~0.1重量部の範囲が最も好ましい。0.005重量部より少ないと優れた導光性が得られず、成形時の変色抑制効果が不十分であり好ましくない。また、0.2重量部を超える量を配合してもより高い効果の向上は見られず、かえって耐熱性が低下するため好ましくない。
チオエーテル系化合物は住友化学社からスミライザーTP-D(商品名)やBASF社からイルガノックスPS802FL(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
【0037】
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、透明性・導光性等を損なうことがない限り、他の樹脂や充填剤は配合しても差し支えないが、他の樹脂や充填剤の多くは透明性に支障を来すので、その種類や量の選択は、その点を考慮すべきである。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記点を考慮しつつ、その熱安定性、意匠性等の改良のために、これらの改良に使用されている添加剤が有利に使用される。以下これら添加剤について具体的に説明する。
【0038】
(I)熱安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には公知の各種熱安定剤を配合することができる。具体的には、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
かかるリン系酸化防止剤の具体例としては、亜リン酸(ホスファイト)、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィン、リン酸(ホスフェート)、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキサイドなどが例示され、中でもホスファイト、ホスホナイト、ホスフィン、ホスホネート、ホスフェートが好ましく用いられる。具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0039】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0040】
ホスフィン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましいホスフィン化合物は、トリフェニルホスフィンである。
【0041】
ホスホネート化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0042】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばビタミンE、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを挙げることができ、好ましく使用できる。
【0043】
なかでも、n-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましく、さらにn-オクタデシル-β-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェル)プロピオネートが好ましい。
【0044】
上記に挙げたリン系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤はそれぞれ単独または2種以上併用することができる。これらのリン系酸化防止剤またはフェノール系酸化防止剤の含有量は、それぞれA成分100重量部に対し、0.0001~1重量部であることが好ましい。より好ましくは0.0005~0.5重量部であり、さらに好ましくは0.001~0.2重量部である。
【0045】
なお、リン系酸化防止剤、殊にホスファイト系酸化防止剤は、配合量が多くなるとポリカーボネート樹脂の耐湿熱性が低下するため、その配合量は0.02重量部未満が好ましく、0.015重量部以下がより好ましく、0.01重量部以下がさらに好ましく、0.005重量部以下が特に好ましく、0.001重量部以下が最も好ましい。さらに、実質的に配合しないことが好ましい。
【0046】
(II)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて離型剤を配合することができる。かかる離型剤としてはそれ自体公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックスまたは1-アルケン重合体が挙げられる。これらは酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも飽和脂肪酸エステル類、直鎖状または環状のポリジメチルシロキサンオイル、ポリメチルフェニルシリコーンオイルおよびフッ素オイルが好ましい。特に好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステルが挙げられ、例えばステアリン酸モノグリセライドなどのモノグリセライド類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類が使用される。かかる離型剤の含有量はA成分100重量部に対して0.01~1重量部が好ましい。
【0047】
(III)紫外線吸収剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0048】
また紫外線吸収剤としては例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート-ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0049】
さらに紫外線吸収剤としては例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、2-(4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノールなどに代表されるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物や2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類のクラリアントジャパン社製 Hostavin PR-25やクラリアントジャパン社製 Hostavin B-CAPなどに代表されるマロン酸エステル系化合物を挙げることができる。
紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部当たり0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.02~1重量部である。
【0050】
(IV)光安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を配合することができる。かかる光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2n-ブチルマロネート、1,2,3,4-ブタンカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンジカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリ{[6-モルフォリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)イミノ]}、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンと2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-クロロ-1,3,5-トリアジンとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、ポリメチルプロピル3-オキシ-[4-(2,2,6,6-テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンに代表されるヒンダードアミンが挙げられる。光安定剤の含有量は、A成分100重量部当たり0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.02~1重量部である。
【0051】
(V)ブルーイング剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には紫外線吸収剤などに基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては通常ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学社製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業社製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No68210;商標名 三菱化学社製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No60725;商標名 三菱化学社製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No61500;商標名 三菱化学社製「ダイアレジンブルーN」]、一般名Solvent Violet36[CA.No68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名 バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No61110;商標名 サンド社製「テラゾールブルーRLS」]等が挙げられ、特に、マクロレックスブルーRR、マクロレックスバイオレットBやテラゾールブルーRLSが好ましい。ブルーイング剤の含有量はA成分100重量部当たり0.000005~0.001重量部が好ましく、より好ましくは0.00001~0.0001重量部である。
【0052】
(VI)蛍光増白剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において蛍光増白剤は、樹脂等の色調を白色あるいは青白色に改善するために用いられるものであれば特に制限はなく、例えばスチルベン系、ベンズイミダゾール系、ベンズオキサゾール系、ナフタルイミド系、ローダミン系、クマリン系、オキサジン系化合物等が挙げられる。具体的には例えばCI Fluorescent Brightener 219:1や、イーストマンケミカル社製EASTOBRITE OB-1やハッコールケミカル社製「ハッコールPSR」、などを挙げることができる。ここで蛍光増白剤は、光線の紫外部のエネルギーを吸収し、このエネルギーを可視部に放射する作用を有するものである。蛍光増白剤の含有量はA成分100重量部に対して、0.001~0.1重量部が好ましく、より好ましくは0.001~0.05重量部である。
【0053】
(VII)エポキシ化合物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じてエポキシ化合物を配合することができる。かかるエポキシ化合物は、金型腐食を抑制するという目的で配合されるものであり、基本的にエポキシ官能基を有するもの全てが適用できる。好ましいエポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’ーエポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロセキサン付加物、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体等が挙げられる。かかるエポキシ化合物の添加量としては、A成分100重量部に対して0.003~0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.004~0.15重量部であり、さらに好ましくは0.005~0.1重量部である。
【0054】
(VIII)有機金属塩
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、有機金属塩化合物を配合することができる。かかる有機金属塩は、難燃性を付与するという目的で配合されているものであり、炭素原子数1~50、好ましくは1~40の有機酸のアルカリ(土類)金属塩であることが好ましく、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩であることがより好ましい。この有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩には、炭素原子数1~10、好ましくは2~8のパーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属塩の如きフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩、並びに炭素原子数7~50、好ましくは7~40の芳香族スルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属塩が含まれる。金属塩を構成するアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。かかるアルカリ金属の中でも、透明性の要求がより高い場合にはイオン半径のより大きいルビジウムおよびセシウムが好適である一方、これらは汎用的でなくまた精製もし難いことから、結果的にコストの点で不利となる場合がある。一方、リチウムおよびナトリウムなどのより小さいイオン半径の金属は逆に難燃性の点で不利な場合がある。これらを勘案してスルホン酸アルカリ金属塩中のアルカリ金属を使い分けることができるが、いずれの点においても特性のバランスに優れたスルホン酸カリウム塩が最も好適である。かかるカリウム塩と他のアルカリ金属からなるスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
【0055】
パーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロヘプタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム、パーフルオロオクタンスルホン酸セシウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸セシウム、パーフルオロブタンスルホン酸ルビジウム、およびパーフルオロヘキサンスルホン酸ルビジウム等が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。ここでパーフルオロアルキル基の炭素数は、1~18の範囲が好ましく、1~10の範囲がより好ましく、更に好ましくは1~8の範囲である。これらの中で特にパーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。アルカリ金属からなるパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩中には、通常少なからず弗化物イオンが混入する。かかる弗化物イオンの存在は難燃性を低下させる要因となり得るので、できる限り低減されることが好ましい。かかる弗化物イオンの割合はイオンクロマトグラフィー法により測定できる。弗化物イオンの含有量は、100ppm以下が好ましく、40ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。また製造効率的に0.2ppm以上であることが好適である。かかる弗化物イオン量の低減されたパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、製造方法は公知の製造方法を用い、かつ含フッ素有機金属塩を製造する際の原料中に含有される弗化物イオンの量を低減する方法、反応により得られた弗化水素などを反応時に発生するガスや加熱によって除去する方法、並びに含フッ素有機金属塩を製造に再結晶および再沈殿等の精製方法を用いて弗化物イオンの量を低減する方法などによって製造することができる。特に有機金属塩系難燃剤は比較的水に溶けやすいこことから、イオン交換水、特に電気抵抗値が18MΩ・cm以上、すなわち電気伝導度が約0.55μS/cm以下を満足する水を用い、かつ常温よりも高い温度で溶解させて洗浄を行い、その後冷却させて再結晶化させる工程により製造することが好ましい。芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の具体例としては、例えばジフェニルサルファイド-4,4’-ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド-4,4’-ジスルホン酸ジカリウム、5-スルホイソフタル酸カリウム、5-スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1-メトキシナフタレン-4-スルホン酸カルシウム、4-ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3-フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4-フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6-ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2-フルオロ-6-ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p-ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸カルシウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン-3,4’-ジスルホン酸ジカリウム、α,α,α-トリフルオロアセトフェノン-4-スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン-2,5-ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド-4-スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、およびアントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。これら芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩では、特にカリウム塩が好適である。これらの芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の中でも、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸カリウム、およびジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸ジカリウムが好適であり、特にこれらの混合物(前者と後者の重量比が15/85~30/70)が好適である。
【0056】
スルホン酸アルカリ(土類)金属塩以外の有機金属塩としては、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩および芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩などが好適に例示される。硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩としては、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、およびステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩が挙げられる。芳香族スルホンアミドのアルカリ(土類)金属塩としては、例えばサッカリン、N-(p-トリルスルホニル)-p-トルエンスルホイミド、N-(N’-ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN-(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ(土類)金属塩などが挙げられる。有機金属塩の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.001~1重量部、より好ましくは0.005~0.5重量部、さらに好ましくは0.01~0.3重量部、特に好ましくは0.03~0.15重量部である。
【0057】
(IX)その他
上記以外にも本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、成形品の種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、強化充填剤、摺動剤(例えばPTFE粒子)、着色剤、蛍光染料、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)、光拡散剤、流動改質剤、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、並びにフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0058】
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分および任意に他の成分をそれぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行い、その後ベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。別法として、A成分、B成分および任意に他の成分をそれぞれ独立にベント式二軸ルーダーに代表される溶融混練機に供給する方法、A成分および他の成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法、B成分を水または有機溶剤で希釈混合した後、溶融混練機に供給、またはかかる希釈混合物を他の成分と予備混合した後、溶融混練機に供給する方法なども挙げられる。なお、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0059】
<成形品の製造>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を製造するには、任意の方法が採用される。例えば該ポリカーボネート樹脂組成物を押出機、バンバリーミキサーまたはロール等で混練した後、射出成形、押出成形または圧縮成形等従来公知の方法で成形して、成形品を得ることができる。また板状に成形して得られる成形板の少なくとも一方の側面に光源を設け、該成形板の片面に反射板を設置することにより面光源体とすることもできる。かかる成形板および面光源体の光源としては、蛍光ランプの他、冷陰極管、LED、レーザーダイオード、有機EL等の自己発光体を使用できる。本発明で得られる成形品の成形板や面光源体などは、携帯電話、携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、ディスプレイ、照明、信号、自動車のランプ、家電・光学機器の表示部品などに使用される。
【0060】
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例0061】
以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、使用した各成分と評価の詳細は以下の通りである。
【0062】
(A成分)
A-1:ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人社製:CM-1000、粘度平均分子量15,400)
A-2:ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人社製:L-1225WX、粘度平均分子量19,900)
(B成分)
B-1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製:スミライザーTP-D)
B-2:ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート(BASF社製:イルガノックスPS802FL)
(その他成分)
(酸化防止剤)
C:ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製:アデカスタブPEP-36)
D:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製:イルガフォス168)
E:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製:イルガノックス1076)
(離型剤)
F:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン社製:リケマールS-100A)
【0063】
(評価方法)
(1)分光光線透過率
実施例の各組成から得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[日本製鋼所社製J85-ELIII]を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃にて、幅50mm、長さ90mm、厚み2mmの成形板を成形した。この2mm厚の成形板の分光光線透過率を分光光度計[アジレント社製Cary5000]を用いて、波長200nm~800nm範囲を1nm間隔で測定した。得られた分光光線透過率から波長340nm~420nmの範囲の平均分光光線透過率を算出した。
この分光光線透過率の値が高いほど光の減衰が少なく導光性能に優れることを示す。分光光線透過率が85.0%以上は〇とし、85.0%未満は×とした。
【0064】
(2)成形板色相
実施例の各組成から得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[日本製鋼所社製J85-ELIII]を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃にて、幅50mm、長さ90mm、厚み2mmの成形板を成形した。この厚み2mmの成形板をJIS-K7105に準拠し積分球分光光度計[X-Rite社製CE-7000A]を用いて光源D65、視野角10度、透過法の条件で色相(L*、a*、b*)を測定した。
この成形板のb*値が高いほど成形板が黄色く変色しやすいことを示す。b*値が0.4以下は〇とし、0.4を超えるものは×とした。
【0065】
(3)耐湿熱性
実施例の各組成から得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[日本製鋼所社製J85-ELIII]を用いて、成形温度270℃、金型温度80℃にて、幅50mm、長さ90mm、厚み2mmの成形板を成形した。この成形板を蒸気滅菌器[ヤマト科学社製SN-510]を用いて湿熱処理(温度120℃、24時間)し、湿熱処理前と湿熱処理後のHazeと粘度平均分子量(Mv)を測定した。成形板のHazeはJIS-K7361-1に従い測定し、粘度平均分子量(Mv)は下記方法にて測定した。
【0066】
粘度平均分子量(Mv)の測定
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂を溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0067】
湿熱処理後のHazeが高くなるほど成形板の透明性が低下し、湿熱処理後の粘度平均分子量の低下が大きいものほど樹脂が加水分解しやすいことを示す。湿熱処理前と湿熱処理後のHazeの上昇をΔHazeで表し、ΔHazeが1.0以下のものは〇、1.0を超えるものは×とした。また、湿熱処理前と湿熱処理後のMvの低下をΔMvで表し、ΔMvが1,000以下のものは〇、1,000を超えるものは×とした。
【0068】
[実施例1~10、および比較例1~7]
A成分、B成分およびその他成分を表1記載の各配合量で、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は日本製鋼所社製TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。押出条件は吐出量30kg/h、スクリュー回転数270rpm、ベントの真空度1kPaであり、また押出温度は260℃(A-1成分使用時)、290℃(A-2成分使用時)とした。評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、導光性に優れ、成形時の黄変や湿熱環境下での劣化が少なく、該ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、LED照明を始めとする照明分野、OA機器分野、電気電子機器分野、自動車分野などの各種工業用途に極めて有用である。