(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161504
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ANGPTL3の阻害剤を投与することによるアテローム性動脈硬化症の処置又は予防のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241112BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241112BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241112BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241112BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241112BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P9/10 101
A61P43/00 111
A61P3/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P25/00
A61K39/395 N
A61K45/06
C07K16/22
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135829
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2022143390の分割
【原出願日】2017-02-13
(31)【優先権主張番号】62/296,110
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジェスパー・グロマーダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア・グサロヴァ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アテローム性動脈硬化症を予防又は軽減するための方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、アンジオポエチン様タンパク質-3(ANGPTL3)の阻害剤を、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある被験体に投与することを含む。特定の実施態様において、ANGPTL3阻害剤は、ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体においてアテローム性動脈硬化症を予防又は軽減するための方法であって、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある被験体を選択すること、及び該被験体に1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤を投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に、被験体はヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(HeFH)若しくはホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)、及び/又はリポタンパク質(a)(Lp[a])上昇と診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に、被験体は心血管疾患(CVD)と診断されている、請求項1に記載に方法。
【請求項4】
1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に、被験体は脳卒中又は心筋梗塞に罹患していた、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に、被験体は安定バックグラウンド脂質低下療法(LMT)の治療中である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
患者は、1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤の投与と同時に安定バックグラウンド脂質低下療法(LMT)の治療中である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
安定バックグラウンドLMTは、低用量、中等量、又は高用量のスタチン療法である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤の被験体への投与は、
(a) 血清総コレステロール(TC)レベルの減少、
(b) 血清トリグリセリド(TG)レベルの減少、
(c) 血清低密度リポタンパク質(LDL)レベルの減少、及び
(d) 超低密度リポタンパク質(VLDL)レベルの減少
からなる群より選択される1つ又はそれ以上の治療結果を生じ;
ここで、(a)、(b)、(c)及び/又は(d)の減少は、1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時の被験体の血清TCレベル、血清TGレベル、血清LDLレベル、及び/又は血清VLDLレベルと比較して決定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
被験体への1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤の投与が、動脈硬化巣形成の減少を生じる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ANGPTL3阻害剤は、ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2/3を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖CDRを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号4、5、6、7、8、及び9を有する重鎖及び軽鎖CDRアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVR及び配列番号3のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ANGPTL3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントはエビナクマブである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
1又はそれ以上の用量のプロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン-9(PCSK9)阻害剤を被験体に投与することを更に含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
PCSK9阻害剤は、PCSK9に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
PCSK9に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、及びラルパンシズマブからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1又はそれ以上の用量のANGPTL4阻害剤及び/又はANGPTL8阻害剤を被験体に投与することをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
被験体におけるアテローム性動脈硬化症の予防又は軽減におけるアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤の使用であって、ここで被験体は、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性があり、そして1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤が被験体に投与される、上記使用。
【請求項20】
被験体におけるアテローム性動脈硬化症の予防又は軽減のための薬剤の製造におけるアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤の使用であって、ここで被験体は、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性があり、そして1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤が被験体に投与される、上記使用。
【請求項21】
被験体におけるアテローム性動脈硬化症の予防又は軽減のための医薬組成物であって、ここで被験体は、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性があり、該組成物はアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤を含み、そして1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤が被験体に投与される、上記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列の記載
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、そして参照によりその全体として本明細書
に加入される配列表を含む。2017年2月8日に作成された上記ASCIIコピーは0431_23-PCT_SL.txtと名付けられ、サイズは14,141バイトである。
【0002】
発明の分野
本発明は、アテローム性動脈硬化疾患及び関連する障害の治療的処置の分野に関する。より詳細には、本発明は、アテローム性動脈硬化症を処置又は予防するためのANGPTL3阻
害剤の使用、さらには被験体においてアテローム性動脈硬化巣形成及び/又はアテローム性動脈硬化病変を除去又は減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アテローム性動脈硬化症は、動脈血管に影響を及ぼす症候群である。アテローム性動脈硬化症は、血管壁における慢性炎症性応答から生じ、そして死亡及び心血管罹患率の主な原因である。アテローム性動脈硬化症は血管壁の肥厚を含み、そして動脈プラークの発生、及び血流の最終的な制限又は遮断を特徴とする。現在のアテローム性動脈硬化症処置としては、食事及び生活習慣の改善(例えば、喫煙中止)、薬剤介入(例えば、スタチン、抗
凝固薬など)、及び手術(例えば、血管形成術、ステント、バイパス手術など)が挙げられ
る。ヒト被験体におけるアテローム性動脈硬化症発症に対する薬剤介入の有効性の直接的評価は、生存被験体におけるプラーク及び動脈病変の正確な検出及び測定の困難性に起因して問題がある。したがって、アテローム性動脈硬化症の動物モデルは、アテローム性動脈硬化症のための新規な治療処置の開発及び試験のために非常に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アテローム性動脈硬化症の処置、予防又は寛解のための新しい方法が当該分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、被験体においてアテローム性動脈硬化症を処置、予防又は軽減するための方法、使用及び組成物を提供する。本発明の方法は、1又はそれ以上の用量のアンジオポエ
チン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤を被験体に投与することを含む。本発明の治療方法は、それを必要とする被験体においてアテローム性動脈硬化巣及びアテローム性動脈硬化病変の減少を生じる。本発明の方法はまた、被験体において血清総コレステロール、LDLコ
レステロール、及びトリグリセリドを減少させるため、並びに総コレステロール、LDLコ
レステロール及び/又はトリグリセリドのうちの1つ又はそれ以上の減少により処置可能
である疾患及び障害を処置するために有用である。
【0006】
本発明の特定の実施態様によれば、1又はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処
置の開始前又は開始時に、被験体はヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(HeFH)若しくはホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)、及び/又はリポタンパク質(a) (Lp[a])上昇と診断されている。本発明はまた、天然では家族性ではない高コレステロール血
症(すなわち、非家族性高コレステロール血症)を有する被験体においてアテローム性動
脈硬化症を処置、予防又は軽減するための方法を含む。特定の実施態様において、本発明の方法により処置可能である被験体は、心血管疾患(例えば、アテローム動脈硬化性心血
管疾患)と診断されたか又は診断される被験体を含む。特定の実施態様において、本発明
の方法により処置可能である被験体は、脳卒中又は心筋梗塞に罹患している被験体である。
【0007】
本発明の特定の実施態様によれば、ANGPTL3阻害剤は、患者の既存の脂質低下療法に対
する追加療法(add-on therapy)として(例えば、患者のバックグラウンドスタチン療法
に加えて)患者に投与される。
【0008】
本発明の方法の状況において使用され得る例となるANGPTL3阻害剤としては、例えば、
抗ANGPTL3抗体、核酸ベースのANGPTL3阻害剤、小分子ANGPTL3阻害剤、及び足場ベースのANGPTL3結合分子が挙げられる。
【0009】
本発明の他の実施態様は、以下の詳細な説明の考察から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間に動物に対して行われる手技、投与及び測定を説明する研究フローチャートである。
【
図2】
図2A及び2Bは、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間の異なる時点での異なる処置群(対照処置、黒四角 [■]; 又はエビナクマブ(evinacumab)処置、黒丸[●])からの動物のコレステロールレベルを示す。
図2Aは平均コレステロールレベル(mM)を経時的に(週)示す。
図2Bは13週目の総コレステロール曝露(mM x 週)を示す。
【
図3】
図3は、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間の異なる時点での異なる処置群(対照処置、黒四角[■]; 又はエビナクマブ処置、黒丸[●])からの動物のトリグリセリドレベル(mM)を示す。
【
図4】
図4A、4B、及び4Cは、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間の異なる時点での異なる処置群(対照処置、黒四角[■]; 又はエビナクマブ処置、黒丸[●])からの動物のコレステロールリポタンパク質プロフィール(mM、リポタンパク質分離後)を示す。リポタンパク質をSuperoseカラムで分離し、そして示された値は示された様々な時点での群あたりのプールされた血漿中のコレステロール測定からの絶対値である。
図4Aは、研究の時間=0で採取された血漿の異なるフラクションからのコレステロールレベルを示す。
図4Bは、研究の時間=6週目に採取された血漿の異なるフラクションからのコレステロールレベルを示す。
図4Cは、研究の時間=13週目に採取された血漿の異なるフラクションからのコレステロールレベルを示す。
【
図5】
図5A、5B、及び5Cは、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間の異なる時点での異なる処置群(対照処置、黒四角[■]; 又はエビナクマブ処置、黒丸[●])からの動物のトリグリセリドリポタンパク質プロフィール(mM、リポタンパク質分離後)を示す。リポタンパク質をSuperoseカラムで分離し、そして示された値は示された様々な時点での群あたりのプールされた血漿中のトリグリセリド測定からの絶対値である。
図5Aは、研究の時間=0に採取された血漿の異なるフラクションからのトリグリセリドレベルを示す。
図5Bは、研究の時間=6に採取された血漿の異なるフラクションからのトリグリセリドレベルを示す。
図5Cは、研究の時間=13週目に採取された血漿の異なるフラクションからのトリグリセリドレベルを示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、本明細書の実施例2において記載される研究過程の間の13週目の異なる処置群(対照処置、白抜きバー若しくは円; 又はエビナクマブ処置、塗りつぶしバー若しくは円)からの動物のアテローム性動脈硬化病巣面積を示す。
図6Aは、異なる処置群についての断面あたりの平均アテローム性動脈硬化病変面積(x1000μm
2)を示す。
図6Bは、総病変面積の散布図であり、異なる処置群の個々の動物についての断面あたりのアテローム性動脈硬化病変面積(x1000μm
2)を示す。
【
図7】
図7A及び7Bは、本明細書の実施例2において記載される研究の13週目に異なる処置群(対照処置、白抜きバー; 又はエビナクマブ処置、塗りつぶしバー)からの動物において観察された、IV型又はV型と分類された、アテローム性動脈硬化病変からの断面の平均壊死含有量を示す。
図7Aは、断面あたりの壊死面積の絶対値(μm
2x1000)を示す。
図7Bは、病変の壊死含有量の相対値(病変面積の%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明を記載する前に、当然のことながら、記載される方法及び実験条件は変化し得るので、記載されるこのような特定の方法及び実験条件に本発明は限定されない。また当然のことながら、特定の実施態様を記載する目的のみのためのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されるので、本明細書において使用される用語は限定することを意図されない。
【0012】
別に定義されていなければ、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される用語「約」は、特定の挙げられた数値を参照して使用される場合、その数値が挙げられた値から1%以下だけ変動し得るということを意味する。例えば、本明細書で使用される表現「約100」は、99及び101とその間の全ての値(例えば、99.1、99.2
、99.3、99.4など)を含む。
【0013】
本明細書に記載されるものと類似した又は等価ないずれの方法及び材料も本発明の実施において使用され得るが、好ましい方法及び材料がここで記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、それら全体を記載するように参照により本明細書に加入される。
【0014】
アテローム性動脈硬化症の予防又は軽減のための方法
本発明は、概して被験体におけるアテローム性動脈硬化症を予防又は軽減するための方法及び組成物に関する。本発明の方法は、それを必要とする被験体に、1又はそれ以上の
用量のアンジオポエチン様タンパク質-3(ANGPTL3)阻害剤を投与することを含む。特定の
実施態様によれば、本発明は、被験体におけるアテローム性動脈硬化巣形成の減少を生じる。例えば、本発明の方法は、被験体におけるアテローム性動脈硬化病巣面積の減少及び/又はアテローム性動脈硬化病変の壊死面積の減少のうちの1つ又はそれ以上を生じ得る
。
【0015】
患者選択
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能な被験体としては、限定されないが、アテローム性動脈硬化症と診断されていたか若しくは診断される被験体、又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある被験体が挙げられる。したがって、本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある被験体を選択すること、及び1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン
様タンパク質-3(ANGPTL3)阻害剤を被験体に投与することを含む。本明細書で使用される
「アテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある」被験体は、アテローム性動脈硬化症の1つ又はそれ以上のリスク因子を有するか又は示す被験体を含む。アテローム性動脈硬
化症についてのリスク因子は、当該分野で周知であり、そしてこれらとしては、限定することなく、血清低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベル上昇、血清トリグリセ
リド(TG)レベル上昇、血清高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールレベル減少、高血
圧、真性糖尿病、家族歴、及び喫煙が挙げられる。所定の被験体についてのアテローム性動脈硬化症リスク因子を評価する方法もまた当該分野で周知である。
【0016】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、1又
はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に、ヘテロ接合性家
族性高コレステロール血症(HeFH)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)、リポタンパク質(a)(Lp[a])上昇、常染色体性優性高コレステロール血症(ADH、例えば、LDLR遺伝子、ApoB遺伝子、及び/又はPCSK9遺伝子における1つ又はそれ以上の機能獲得型変異に関連するADH)、常染色体性劣性高コレステロール血症(ARH、例えば、LDLRAP1における変異に関連するARH)、さらには家族性高コレステロール血症(nonFH)と異なる高コレステロ
ール血症の発生と診断される。家族性高コレステロール血症(例えば、heFH又はhoFH)の診断は、遺伝子型判定及び/又は臨床基準により行われ得る。遺伝子型判定されない患者については、臨床診断は、Simon Broome基準で明確なFHについての基準に基づいていても、又はWHO/Dutch Lipid Network基準でスコア>8ポイントのいずれに基づいてもよい。
【0017】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、1又
はそれ以上の用量のANGPTL3阻害剤を用いた処置の開始前又は開始時に心臓血管疾患(CVD)と診断される被験体である。被験体はまた、冠動脈心疾患(CHD)の病歴を有することに基
づいて選択され得る。本明細書で使用される「CHDの病歴」(又は「CHDの記録された病歴」)は:(i) 急性心筋梗塞(MI); (ii) 無症候性MI; (iii) 不安定アンギナ; (iv) 冠動脈
血管再生術(例えば、経皮的冠動脈形成術[PCI]又は冠動脈バイパス移植手術[CABG]); 及
び/又は(v) 侵襲性又は非侵襲性試験(例えば、冠動脈造影、トレッドミルを使用したス
トレス試験、負荷心エコー又は核イメージング)により診断された臨床的に重大なCHDのうちの1つ又はそれ以上を含む。
【0018】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、非冠動脈心疾患心臓血管疾患(「非CHD CVD」)を有することに基づいて選択され得る。本明細
書で使用される「非CHD CVD」は: (i) アテローム血栓起源であると考えられる24時間よ
り長く持続した局所虚血性神経障害を伴う記録された以前の虚血性発作; (ii) 末梢動脈
疾患; (iii) 腹部大動脈瘤; (iv) アテローム性腎動脈狭窄; 及び/又は(v) 頸動脈疾患(一過性虚血発作又は頸動脈の>50%閉塞)のうちの1つ又はそれ以上を含む。
【0019】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、例えば、(i) 3ヶ月若しくはそれ以上の間30≦eGFR<60 mL/分/1.73 m2により定義される記録
された中程度慢性腎疾患(CKD); (ii) 標的器官損傷(例えば、網膜症、腎症、微量アルブ
ミン尿)を伴うか又は伴わない1型若しくは2型糖尿病; 及び/又は(iii) 計算された10年
致死CVDリスクスコア≧5% (脂質異常症の管理のためのESC/EASガイドライン、Conroy et al., 2003, Eur. Heart J. 24:987-1003)のような1つ又はそれ以上のさらなるリスク因子を有することに基づいて選択され得る。
【0020】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、年齢(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80歳より上)、人種、国籍、性別(男性
又は女性)、運動習慣(例えば、日常的に運動する人、運動しない人)、他の既存の医学的
状態(例えば、II型糖尿病、高血圧など)、及び現在の医学的状態(例えば、現在受けてい
るベータ遮断薬、ナイアシン、エゼチミブ、フィブラート、オメガ-3脂肪酸、胆汁酸樹脂など)からなる群より選択される1つ又はそれ以上のさらなるリスク因子を有することに基づいて選択され得る。
【0021】
本発明の特定の実施態様において、本発明の方法により処置可能である被験体は、1つ
又はそれ以上の炎症マーカーの上昇したレベルを示す。全身性炎症のいずれかのマーカーは、本発明の目的のために利用され得る。適切な炎症マーカーとしては、限定することなく、C反応性タンパク質、サイトカイン(例えば、Il-6、IL-8、及び/又はIL-17)、及び細胞接着分子(例えば、ICAM-1、ICAM-3、BL-CAM、LFA-2、VCAM-1、NCAM、及びPECAM)が挙げ
られる。
【0022】
本発明の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、前述の選択基準又は治療特徴の1つ又はそれ以上の組み合わせに基づいて選択され得る。例えば、特
定の実施態様によれば、本発明の方法を用いた処置に適した被験体は: (i) 記録されたCHDの病歴、(ii) 非CHD CVD、及び/又は(iii) 標的器官損傷を伴う糖尿病と組み合わせてheFH又は非FHを有することに基づいてさらに選択され得; このような患者はまた、70 mg/dLに等しいか又はそれ以上の血清LDL-C濃度を有することに基づいて選択され得る。
【0023】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、毎日の中等量治療的スタチンレジメンにより適切に管理されない高コレステロール血症を有し、そしてCHDを伴わないheFH若しくは非FHを有するか、又は非CHD CVDを有するが、(i) 計算された10年致死CVDリスクスコア≧5%; 若しくは(ii)標的器官損傷を伴わない糖尿病を
有することのいずれかに基づいてさらに選択され得; このような被験体はまた、100 mg/dLと等しいか又はそれ以上の血清LDL-C濃度を有することに基づいて選択され得る。
【0024】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能である被験体は、家族性カイロミクロン血症症候群(FCS; リポタンパク質リパーゼ欠損としても知られる)を有
する被験体である。
【0025】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法により処置可能な被験体は、リポタンパク質アフェレーシスを受けているか、又は最近受けた(例えば、最近6ヶ月以内、最近12週以内、最近8週以内、最近6週以内、最近4週以内、最近2週以内など)被験体である。
【0026】
追加療法としてのANGPTL3阻害剤の投与
本発明は、被験体においてアテローム性動脈硬化症を予防又は軽減する方法を含み、ここで被験体は特定の投薬量及び頻度に従ってANGPTL3阻害剤を投与され、そしてANGPTL3阻害剤は、患者の既存の毎日の治療的スタチンレジメンに対する追加のような、患者の既存の脂質低下療法(LMT)に対する追加として投与される(ANGPTL3阻害剤が追加され得る具体
的な例となる毎日の治療的スタチンレジメンは本明細書の他所に記載され得る)。
【0027】
例えば、本発明の方法は、患者がANGPTL3阻害剤を投与される前に進行中であった同じ
安定な毎日の治療的スタチンレジメン(すなわち、同じ投薬量のスタチン)に対する追加療法としてANGPTL3阻害剤が投与される追加治療レジメンを含む。他の実施態様において、ANGPTL3阻害剤は、患者がANGPTL3阻害剤を投与される前に進行していたスタチンの用量よ
りも多いか又は少ない量でスタチンを含む治療的スタチンレジメンに対する追加療法として投与される。例えば、特定の投薬頻度及び量で投与されるANGPTL3阻害剤を含む治療レ
ジメンを開始した後、患者に投与又は処方されるスタチンの日用量は、患者の治療ニーズに依存して、患者がANGPTL3阻害剤治療レジメンを開始する前に受けていたスタチン日用
量と比較して(a) 同じままであっても、(b)増加しても、(c)減少してもよい(例えば、上
方用量設定(up-titrate)又は下方用量設定(down-titrate))。
【0028】
治療有効性
本発明の方法は、被験体の動脈におけるアテローム性動脈硬化巣形成の減少、及び/又は被験体におけるアテローム性動脈硬化進行の予防を生じる。例えば、本発明の方法は、被験体においてアテローム性動脈硬化病変面積及び/又はアテローム性動脈硬化病変中の壊死性コア面積を限定又は減少するために有用である。
【0029】
本発明の方法は、LDL-C、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセ
リド、Lp(a)及びレムナントコレステロールからなる群より選択される1つ又はそれ以上
の脂質成分の血清レベルの減少をさらに生じ得る。例えば、本発明の特定の実施態様によれば、適切な被験体へのANGPTL3阻害剤を含む医薬組成物の投与は、少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、若しくはそれ以上の血清低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)のベースラインからの平均パーセント減少; 少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、若しくはそれ以上のApoB100のベースラインからの平均パーセント減少; 少なくとも約25%、30%、40%、50%、60%、若しくはそれ以上の非HDL-Cのベースラインからの平均パーセント
減少; 少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、若しくはそれ以上の総コレステロールのベースラインからの平均パーセント減少; 少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、若しくはそれ以上のVLDL-Cのベースラインからの平均パーセント減少; 少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%若しくはそれ以上のトリグリセリドのベースラインか
らの平均パーセント減少; 及び/又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、若しくはそれ以上のLp(a)のベースラインからの平均パーセント減少を生じる。
【0030】
ANGPTL3阻害剤
本発明の方法は、ANGPTL3阻害剤を含む治療用組成物を患者に投与することを含む。本
明細書で使用される「ANGPTL3阻害剤」は、インビトロ又はインビボでヒトANGPTL3に結合するか又はヒトANGPTL3と相互作用して、ANGPTL3の正常生物学的機能を阻害するいずれかの物質である。ANGPTL3阻害剤の分類の非限定的な例としては、小分子ANGPTL3アンタゴニスト、ANGPTL3発現又は活性の核酸ベースの阻害剤(例えば、siRNA又はアンチセンス)、ANGPTL3と特異的に相互作用するペプチドベースの分子(例えば、ペプチボディ(peptibodies))、ANGPTL3と特異的に相互作用する受容体分子、ANGPTL3結合足場分子(例えば、DARPins、HEAT反復タンパク質、ARM反復タンパク質、テトラトリコペプチド反復タンパク質、
フィブロネクチンベースの足場構築物、及び天然に存在する反復タンパク質に基づく他の足場など[例えば、Boersma and Pluckthun、2011、Curr. Opin. Biotechnol. 22:849-857、及びそこで引用される参考文献を参照のこと])、並びに抗ANGPTL3アプタマー又はその
部分が挙げられる。特定の実施態様によれば、本発明の状況において使用され得るANGPTL3阻害剤は、抗ANGPTL3抗体又はヒトANGPTL3に特異的に結合する抗体の抗原結合フラグメ
ントである。
【0031】
本明細書で使用される用語「ヒトアンジオポエチン様タンパク質-3」又は「ヒトANGPTL3」又は「hANGPTL3」は、配列番号1のアミノ酸配列を有するANGPTL3(NCBI受け入れ番号NP_055310)、又はその生物学的に活性なフラグメントを指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、さらにはその多量体(例えば、IgM)を指すことを意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、よ
り保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端か
らカルボキシ末端に以下の順番で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される: FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施態様において、抗ANGPTL3抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、又は天然で若しくは人工的に改変されてもよい。アミノ酸配列は、2つ又はそれ以上のCDRの対照分析
(side-by-side analysis)に基づいて定義され得る。
【0033】
本明細書で使用される用語「抗体」は、完全抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。本明細書で使用される用語抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」及び同様のものは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在するか、酵素的
に得ることができるか、合成又は遺伝子的に操作されたポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質分解消化又は抗体可変ドメイン及び場合により定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む組み換え遺伝子操
作技術のようないずれかの適切な標準的技術を使用して完全抗体分子から誘導され得る。このようなDNAは公知であり、かつ/又は例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例え
ば、ファージ―抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、又は合成するこ
とができる。DNAは配列決定され得、そして化学的に又は分子生物学技術を使用して、例
えば、1つ若しくはそれ以上の可変ドメイン及び/若しくは定常ドメインを適切な構成に配置するため、又はコドンを導入するため、若しくはコドンを導入するため、システイン残基を作成するため、アミノ酸を修飾、付加若しくは削除するために操作され得る。
【0034】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては: (i) Fabフラグメント; (ii) F(ab')2
フラグメント; (iii) Fdフラグメント; (iv) Fvフラグメント; (v) 単鎖Fv(scFv)分子; (vi) dAbフラグメント; 及び(vii) 抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最
小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))、又は拘束
(constrained)FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイ
ン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、ミニボディ(minibodies)、ナノボディ(nanobodies)(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小
モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子も、本明細書で使用される表現「抗原結合フラグメント」内に包含される。
【0035】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的に少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、いずれのサイズ又はアミノ酸組成のものであってもよく、そして一般的に、1つ又はそれ以上のフレームワーク配列と隣接するか又はインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと関連するVHドメインを有する抗原結合フラグメントにお
いて、VH及びVLドメインは、いずれかの適切な配置で互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり得、VH-VH、VH-VL又はVL-VL二量体を含有し得る。あるいは、
抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VH又はVLドメインを含有し得る。
【0036】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見られ得る可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的な例となる構成としては: (i) VH-CH1; (ii) VH-CH2; (iii) VH-CH3; (iv) VH-CH1-CH2; (v) VH-CH1-CH2-CH3; (vi) VH-CH2-CH3; (vii) VH-CL; (viii) VL-CH1; (ix) VL-CH2; (x) VL-CH3; (xi) VL-CH1-CH2; (xii) VL-CH1-CH2-CH3; (xiii) VL-CH2-CH3; 及び(xiv) VL-CLが
挙げられる。上に列挙された例となる構成のいずれかを含む可変ドメイン及び定常ドメインのいずれかの構成において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結されても、完全もしくは部分的ヒンジ若しくはリンカー領域により連結されていてもいずれでもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメイン間に可動性又は半可動性の連結を生じる少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸からなるものであり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに、かつ/又は1つ若しくはそれ以上の単量体VH若しくはVLドメインと非共有結合した(例えば、ジスルフィド結合により)、上に列挙される可変ドメイン及び定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0037】
完全抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは単一特異性でも多重特異性(例えば二重特異性)でもよい。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には少なくとも
2つの異なる可変ドメインを含み、ここで各可変ドメインは別々の抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例となる二重特異性抗体形式を含めていずれの多重特異性抗体形式も、当該分野で利用可能な通常の技術を使用して本発明の抗体の抗原結合フラグメントの状況における使用のために適合され得る。
【0038】
抗体の定常領域は、補体を固定しそして細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力において重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択され得る。
【0039】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図される。それでもなお、本発明のヒト抗体は、例えばCDR及び特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコー
ドされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発又はインビボでの体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク
配列上にグラフト化されている抗体を含まない。
【0040】
用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段により製造、発現、作製又は単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞へトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下でさらに記載される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下でさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックな動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照のこと)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むいずれかの他の手段により製造、発現、
作製もしくは単離された抗体を含むことを意図される。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する。しかし、特定の実施態様において、このような組換えヒト抗体はインビトロ変異誘発(又は、ヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)を受け、それ故、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列から誘導されかつヒト生殖系列VH及びVL配列に関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内には天然に存在しないかもしれない。
【0041】
ヒト抗体は、ヒンジ異質性に関連する2つの形態で存在し得る。1つの形態において、免疫グロブリン分子は約150~160 kDaの安定な4つの鎖の構築物を含み、ここで二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合により結合される。第二の形態において、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、そして共有結合でカップリングされた軽鎖及び重鎖(半抗体)から構成される約75~80 kDaの分子が形成される。これらの形態は、アフィニティー精製後でさえ分離することが非常に困難であった。
【0042】
様々なインタクトなIgGアイソタイプにおける第二の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ
領域アイソタイプに関連する構造的差異に起因するがこれに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで、第二の形態の出現を有意に減少させ得る(Angal et al. (1993) Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2、又はCH3領域に1つ又はそれ上
の変異を有する抗体を包含し、これは例えば、所望の抗体形態の収量を改善するために製造において望ましいかもしれない。
【0043】
「単離された抗体」は、同定され、そしてその天然環境の少なくとも1つの構成要素から分離されかつ/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの構成
要素から、又は抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離又は除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製又は単離工程を受けた抗体である。特定の実施態様によれば、単離された抗体は他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0044】
用語「特異的に結合する」、又は同様のものは、抗体又はその抗原結合フラグメントが、生理条件下で比較的安定な複合体を抗原と形成するということを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するか否かを決定するための方法は、当該分野で周知であり、そして例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本発明の状況において使用されるANGPTL3に「特異的に結合する」抗体は、ANGPTL3又はその部分に、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、約1000 nM未満、約500 nM未満、約300 nM未満、約200 nM未満、約100 nM未満、約90 nM未満、約80 nM未満、約70 nM未満、約60 nM未満、約50 nM未満、約40
nM未満、約30 nM未満、約20 nM未満、約10 nM未満、約5 nM未満、約4 nM未満、約3 nM未満、約2 nM未満、約1 nM未満又は約0.5 nM未満のKDで結合する抗体を含む。しかし、ヒトANGPTL3に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のANGPTL3分子のような他の抗原に対して交差反応性を有し得る。
【0045】
本発明の方法のために有用な抗ANGPTL3抗体は、その抗体が由来する対応する生殖系列
配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域中に、
1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を含み得る。このような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することにより容易に確認され得る。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれか由来の抗体及びその抗原結合フラグメントの使用を含む方法を含み、ここで1つもしくはそれ以上のフレームワーク及び/又は1つもしくはそれ以上のCDR領域内の1つ又はそれ上のアミノ酸は、その抗体が由来した生殖系列配列の対応
する残基、又は別のヒト生殖系列配列の対応する残基、又は対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換へと変異される(このような配列変化は本明細書で集合的に「生殖系列変異」と呼ばれる)。当業者は、本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から始めて、1つ又はそれ以上の個々の生殖系列変異又はそれらの組み合わせを含む多数の抗体及び抗原結合フラグメントを容易に製造することができる。特定の実施態様において、VH及び/又はVLドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基は全て、その抗体が由来した
元の生殖系列配列において見られる残基へと逆変異される。他の実施態様において、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8つのアミノ酸内もしくはFR4の最後の8つの残基内に見られる変異した残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内に見られる変異した残基のみが元の生殖系列配列へと逆変異される。他の実施態様において、フレームワーク及び/又はCDR残基の1つ又はそれ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、その抗体が元々由来
する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基へと変異される。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内の2つ又はそれ以上の生殖系列変異
のいずれかの組み合わせを含有し得、例えばここで特定の個々の残基は特定の生殖系列配列の対応する残基へと変異されるが、元の生殖系列配列と異なる特定の他の残基は維持されるか、又は異なる生殖系列配列の対応する残基へと変異される。一旦得られれば、1つ又はそれ以上の生殖系列変異を含む抗体及び抗原結合フラグメントは、改善された結合特異性、増加した結合親和性、改善されたか又は増強されたアンタゴニスト又はアゴニスト生物学的特性(場合によって)、減少した免疫原性などのような1つ又はそれ上の所望の特性について容易に試験され得る。この一般的なやり方で得られる抗体及び抗原結合フラグメントの使用は、本発明内に包含される。
【0046】
本発明はまた、1つ又はそれ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異形を含む抗ANGPTL3抗体の使用を含む
方法を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミ
ノ酸配列のいずれかと比較して、例えば、10又はそれ以下、8又はそれ以下、6又はそれ以下、4又はそれ以下などの保存的アミノ酸置換を含むHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗ANGPTL3抗体の使用を含む。
【0047】
用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIAcoreTMシステム(Biacore Life Sciences division of GE Healthcare、Piscataway、NJ)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによる実時間相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「KD」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図される。
【0049】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が1つより多くのエピトープを有し得る。従って、異なる抗体は抗原の異なる領域に結合し得、そして異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは立体構造的(conformational)又は線状のいずれでもよい。立体構造的エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に近接したアミノ酸により生じる。線状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接したアミノ酸残基により生じるものである。特定の状況において、エピトープは抗原上に糖類、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含み得る。
【0050】
特定の実施形態によれば、本発明の方法において使用される抗ANGPTL3抗体は、pH依
存性の結合特性を有する抗体である。本明細書中で使用する場合、「pH依存性結合」という表現は、抗体又はその抗原結合フラグメントが「中性pHと比較して酸性pHではANGPTL3への結合性が減少する」を表すことを意味する(本開示の目的としては、両方の表記を
交換可能に使用しても良い)。例えば、「pH依存性結合特性を有する」抗体としては、酸性pHより中性pHで高い親和性でANGPTL3に結合する抗体及びその抗原結合フラグメント
が含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、中性pHでは酸性pHよりも、少なくとも3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100倍又はそれ以上の高い親和性でANGPTL3に結合する。
【0051】
本発明のこの局面によれば、pH依存性結合特性を有する抗ANGPTL3抗体は、親抗ANGPTL3抗体と比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸変異を有し得る。例えば、pH依存性結
合特性を有する抗ANGPTL3抗体は、例えば親抗ANGPTL3抗体の1つ又はそれ以上のCDR中に
1つ又はそれ以上のヒスチジン置換又は挿入を含み得る。従って、本発明の特定の実施形態によれば、親の抗体の1つ又はそれ以上のCDRの1つ又はそれ以上のアミノ酸がヒスチ
ジン残基で置換されていることを除いて、親抗ANGPTL3抗体のCDRアミノ酸配列と同一であるCDRアミノ酸配列(例、重鎖および軽鎖のCDR)を含む抗ANGPTL3抗体を投与することを
含む方法を提供する。pH依存性結合を有する抗ANGPTL3抗体は、親抗体の単一のCDR内に、又は親の抗ANGPTL3抗体の複数の(例えば、2、3、4、5、又は6つの)CDR全体にわたっ
て分布している、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、又はそれ以上のヒスチジン置
換を有し得る。例えば、本発明は、pH依存性結合を有し、親抗ANGPTL3抗体のHCDR1における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、HCDR2における1つ又はそれ以上のヒスチジン
置換、HCDR3における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、LCDR1における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、LCDR2における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換、及び/又はLCDR3における1つ又はそれ以上のヒスチジン置換を含む抗ANGPTL3抗体の使用を含む。
【0052】
本明細書で使用する「酸性pH」という表記は、pH6.0又はそれ以下(例、約6.0未満、約5.5未満、約5.0未満等)を意味する。「酸性pH」という表記は、約6.0、5.95、5.90、5.8
5、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0又は、それ以下のpH値を含む。本明細書中で使用する「中性pH」という表記は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表記は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpH値を含む。
【0053】
本発明の状況において使用され得る抗ANGPTL3抗体の非限定的な例としては、例えば、
エビナクマブ(evinacumab)、さらには米国特許第9,018,356号(Regeneron Pharmaceuticals、Inc.)(その開示はその全体として参照により本明細書に加入される)に示される例となる抗ANGPTL3抗体のいずれか、又は米国特許第8,742,075号(Lexicon Pharmaceuticals、Inc.)(その開示はその全体として参照により本明細書に加入される)に示される例と
なる抗ANGPTL3抗体のいずれかが挙げられる。
【0054】
ヒト抗体の製造
抗ANGPTL3抗体は、当該分野で公知のいずれかの抗体製造/単離方法に従って製造され
得る。例えば、本発明の方法における使用のための抗体は、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイなどにより製造され得る。本発明の方法における使用のための抗体は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であり得る。
【0055】
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法は当該分野で公知である。いずれかのこのような公知の方法は、ANGPTL3に特異的に結合するヒト抗体を作製
するために本発明の状況において使用され得る。
【0056】
例えば、VELOCIMMUNETM技術(例えば、US 6,596,541、Regeneron Pharmaceuticalsを参
照のこと)又はモノクローナル抗体を生成するためのいずれかの他の公知の方法を使用し
て、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有するANGPTL3に対する高親和性キメラ抗体が最
初に単離される。VELOCIMMUNE(R)技術は、マウスが抗原刺激に応じてヒト可変領域及
びマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含む。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、そしてヒ
ト重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次いで、DNAは完全ヒト抗体を発現することができる細胞において発現される。
【0057】
一般に、VELOCIMMUNE(R)マウスは目的の抗原を負荷され、そして抗体を発現するマ
ウスからリンパ細胞(例えばB細胞)が回収される。リンパ細胞は、節ハイブリドーマ細胞
株を製造するために骨髄腫細胞株と融合され得、そしてこのようなハイブリドーマ細胞株はスクリーニングされ、そして目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するために選択される。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAは単離され得
、そして重鎖及び軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結され得る。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において産生され得る。あるいは、抗原特異的キ
メラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から
直接単離され得る。
【0058】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。抗体を特徴づけ、そして親和性、選択性、エピトープなどを含む所望の特徴について当該分野で公知の標準的な手順を使用して選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換えて、本発明の完全ヒト抗体、例えば野生型又は改変されたIgG1又はIgG4を生成する。選択される定常領域は、特定の用途、可変領域に属する高親和性抗原結合特性及び標的特異性特性によって変わり得る。
【0059】
一般に、本発明の方法において使用され得る抗体は、固相上に固定されるか又は溶液相
中のいずれかで抗原への結合により測定した場合、上記のように、高親和性を有する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換えて本発明の完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は、特定の用途、可変領域に属する高親和性抗原結合特性及び標的特異性特性によって変わり得る。
【0060】
本発明の方法の状況において使用され得るANGPTL3に特異的に結合するヒト抗体又は抗
体の抗原結合フラグメントの具体例としては、配列番号2/3を含む重鎖及び軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む抗体又は抗原結合タンパク質が挙げられる。
【0061】
本発明の特定の実施態様において、本発明の方法において使用され得る抗ANGPTL3抗体
又はその抗原結合フラグメントは、配列番号4、5、6、7、8及び9のアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖相補性決定領域(HCDR1-HCDR2-HCDR3/LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む。
【0062】
本発明の特定の実施態様において、本発明の方法において使用され得る抗ANGPTL3抗体
又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVR及び配列番号3のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0063】
医薬組成物及び投与方法
本発明は、ANGPTL3阻害剤を患者に投与することを含む方法を含み、ここでANGPTL3阻害剤は、医薬組成物内に含有される。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、及び適切な輸送、送達、忍容性などをもたらす他の薬剤とともに製剤化される。多数の適切な製剤が全ての薬剤師に知られる処方集に見られ得る: Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤としては、例えば、散剤、ペースト剤、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(例えばLIPOFECTINTM)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油及び油中水
乳剤、carbowax乳剤(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、及びcarbowaxを含有する半固形混合物が挙げられる。Powell et al. 「Compendium of excipients for parenteral formulations」 PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0064】
様々な送達系が公知であり、そして本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る。例えば、リポソーム中の封入、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu et
al.、1987、J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照のこと)。投与方法としては、限定さ
れないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、いずれかの都合の良い経路により、例えば注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜裏層(mucocutaneous linings)(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通る吸収により投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る
。
【0065】
本発明の医薬組成物は、標準的な針及びシリンジを用いて皮下又は静脈内に送達され得る。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達において容易に適用性を有する。このようなペン型送達デバイスは再使用可能でも使い捨てでもよい。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般的に医薬組成物を入れた交換式カートリッジを利用する。カートリッジ内の全ての医薬組成物が投与されてカートリッジが空になると、空のカートリッジを容易に廃棄することができ、そして医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。次いでペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには交換式カートリッジはない。むしろ使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に保持された医薬組成物を充填済みにし
た状態で売られる。リザーバから医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0066】
多数の再使用可能なペン型及び自動注射器送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達において適用性を有する。例としては、限定されないが、2~3の例だけ挙げると、AUTOPENTM (Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONICTMペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25TMペン、HUMALOGTMペン、HUMALIN 70/30TMペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPENTM I、II及びIII (Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIORTM (Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BDTMペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPENTM、OPTIPEN PROTM、OPTIPEN STARLETTM、並びにOPTICLIKTM (Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用性を有する使い捨てペン型送達デバイスの例としては、限定されないが、2~3の例だけ挙げると、SOLOSTARTMペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPENTM (Novo Nordisk)、及びKWIKPENTM(Eli Lilly)、SURECLICKTM自動注
射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLETTM (Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN (Dey、L.P.)、並びにHUMIRATMペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられる。
【0067】
特定の状況において、医薬組成物は徐放系で送達され得る。一実施態様において、ポンプが使用され得る(Langer、前出; Sefton、1987、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201
を参照のこと)。別の実施態様において、ポリマー材料が使用され得る;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise (eds.)、1974、CRC Pres.、Boca Raton
、Floridaを参照のこと。さらに別の実施態様において、徐放系は組成物の標的の近傍に
設置することができ、したがって全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson、1984、in Medical Applications of Controlled Release、前出、vol. 2、pp. 115-138を参照のこと)。他の徐放系はLanger、1990、Science 249:1527-1533による総説において考察されている。
【0068】
注射可能製剤は、静脈内、皮下、皮内及び筋内注射、点滴注入などのための投薬形態を含み得る。これらの注射可能製剤は公知の方法により製造され得る。例えば、注射可能性剤は、例えば、上記の抗体又はその塩を、注射用に従来使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に溶解、懸濁又は入荷させることにより製造され得る。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール
、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50
(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50 mol)付加物)]などのような適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが使用され、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような可溶化剤と組み合わせて使用され得る。このようにして製造される注射剤は好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0069】
有利には、上記の経口又は非経口用途のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合するために適した単位用量で製造されて投薬形態となる。このような単位用量の投薬形態としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0070】
投薬量
本発明の方法に従って被験体に投与されるANGPTL3阻害剤(例えば、抗ANGPTL3抗体)の量は、一般に、治療有効量である。本明細書で使用される句「治療有効量」は、LDL-C、ApoB100、非HDL-C、総コレステロール、VLDL-C、トリグリセリド、Lp(a)及びレムナントコレステロールからなる群より選択される1つ若しくはそれ以上のパラメーター、又は(本明細書の他所において記載される)被験体におけるアテローム性動脈硬化を予防若しくは軽減する量の検出可能な減少(ベースラインから少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%
、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又はそれ以上)を生じるANGPTL3阻害
剤の用量を意味する。
【0071】
抗ANGPTL3抗体の場合、治療有効量は、抗ANGPTL3抗体約0.05 mg~約600 mg、例えば、
約0.05 mg、約0.1 mg、約1.0 mg、約1.5 mg、約2.0 mg、約10 mg、約20 mg、約30 mg、約40 mg、約50 mg、約60 mg、約70 mg、約80 mg、約90 mg、約100 mg、約110 mg、約120 mg、約130 mg、約140 mg、約160 mg、約170 mg、約180 mg、約190 mg、約200 mg、約210 mg、約220 mg、約230 mg、約240 mg、約250 mg、約260 mg、約270 mg、約280 mg、約290 mg、約300 mg、約310 mg、約320 mg、約330 mg、約340 mg、約350 mg、約360 mg、約370 mg、約380 mg、約390 mg、約400 mg、約410 mg、約420 mg、約430 mg、約440 mg、約450 mg、約460 mg、約470 mg、約480 mg、約490 mg、約500 mg、約510 mg、約520 mg、約530 mg、約540 mg、約550 mg、約560 mg、約570 mg、約580 mg、約590 mg、又は約600 mgであり得る。ANGPTL3阻害剤の他の投薬量は、当業者に明らかであり、そして本発明の範囲内で
検討される。
【0072】
個々の用量内に含有される抗ANGPTL3抗体の量は、患者の体重1キログラムあたりの抗
体のミリグラムで表される(すなわち、mg/kg)。例えば、抗ANGPTL3抗体は、約0.0001~約10 mg/患者の体重kgの用量で患者に投与され得る。
【0073】
組み合わせ療法
本明細書の他所に記載されるように、本発明の方法は、患者が以前に処方されていた脂質低下療法と組み合わせて(「に加えて」)患者にANGPTL3阻害剤を投与することを含み
得る。例えば、アテローム性動脈硬化を予防又は軽減する状況において、ANGPTL3阻害剤
は、安定な毎日の治療的スタチンレジメンと組み合わせて患者に投与され得る。本発明の状況においてANGPTL3阻害剤が組み合わせて投与され得る例となる毎日の治療的スタチン
レジメンとしては、例えば、アトルバスタチン(毎日10、20、40又は80 mg)、(毎日アトルバスタチン/エゼチミブ 10/10又は40/10 mg)、ロスバスタチン(毎日5、10又は20 mg)、セリバスタチン(毎日0.4又は0.8 mg)、ピタバスタチン(毎日1、2又は4 mg)、フルバスタチ
ン(毎日20、40又は80 mg)、シンバスタチン(毎日5、10、20、40又は80 mg)、シンバスタ
チン/エゼチミブ(毎日10/10、20/10、40/10又は80/10 mg)、ロバスタチン(毎日10、20、40又は80 mg)、プラバスタチン(毎日10、20、40又は80 mg)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の状況においてANGPTL3阻害剤が組み合わせて投与され得る他の脂質低
下療法としては、例えば、(1) コレステロール取り込み及び若しくは胆汁酸再吸収を阻害する薬物(例えば、エゼチミブ); (2) リポタンパク質異化作用を増加させる薬剤(例えばナイアシン); 並びに/又は(3) コレステロール排出において役割を果たすLXR転写因子の活性化因子、例えば、22-ヒドロキシコレステロールが挙げられる。
【0074】
特定の実施態様によれば、本発明は、ANGPTL4の阻害剤(例えば、抗ANGPTL4抗体又はそ
の抗原結合フラグメント)、ANGPTL8の阻害剤(例えば、抗ANGPTL8抗体又はその抗原結合フラグメント)、及び/又はPCSK9の阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメント)と組み合わせて、被験体にANGPTL3阻害剤を投与することにより、被験体においてアテローム性動脈硬化を予防又は軽減するための方法を含む。本発明の状況において使用され得る抗PCSK9抗体の非限定的な例としては、例えば、アリロクマブ、エボロクマブ、ボ
コシズマブ、ロデルシズマブ(lodelcizumab)、ラルパンシズマブ(ralpancizumab)、
又は前述の抗体のいずれかの抗原結合部分が挙げられる。
【0075】
投与レジメン
本発明の特定の実施態様によれば、複数回用量のANGPTL3阻害剤(すなわち、ANGPTL3阻
害剤を含む医薬組成物)は、規定された時間経過にわたって被験体に投与され得る(例えば、毎日の治療的スタチンレジメン又は他のバックグラウンド脂質低下療法に加えて)。本
発明のこの局面に従う方法は、複数回用量のANGPTL3阻害剤を被験体に連続して投与する
ことを含む。本明細書において使用される「連続的に投与すること」は、各用量のANGPTL3阻害剤が、異なる時点に、例えば所定の間隔(例えば、時間、日、週、又は月)だけ離
れた異なる日に被験体に投与されることを意味する。本発明は、単回初期用量のANGPTL3
阻害剤、続いて1又はそれ以上の二次用量のANGPTL3阻害剤、そして場合により続いて1
又はそれ以上の三次用量のANGPTL3阻害剤を患者に連続的に投与することを含む方法を含
む。
【0076】
用語「初期用量」、「二次用量」、及び「三次用量」は、ANGPTL3阻害剤を含む個々の
用量の医薬組成物の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」は処置レジメンの初めに投与される用量であり(「ベースライン用量」とも呼ばれる); 「二次用量」は初期用量の後に投与される用量である; そして「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期、二次、及び三次用量は、全て同じ量のANGPTL3阻害剤を含有していてもよい
が、一般に投与頻度に関して互いに異なり得る。しかし、特定の実施態様において、初期、二次及び/又は三次用量中に含有されるANGPTL3阻害剤の量は、処置の間互いに異なる(例えば、必要に応じて上下に調整される)。特定の実施態様において、2又はそれ以上(例えば、2、3、4、又は5)の用量が、「ローディング用量」として処置レジメンの初めに投
与され、続いてその後の用量がより少ない頻度で投与される(例えば、「維持量」)。
【0077】
本発明の例となる実施態様によれば、各二次及び/又は三次用量は、直前の投薬の1~26(例えば、1、1 1/2、2、2 1/2、3、3 1/2、4、4 1/2、5、5 1/2、6、6 1/2、7、7 1/2、8、8 1/2、9、9 1/2、10、10 1/2、11、11 1/2、12
、12 1/2、13、13 1/2、14、14 1/2、15、15 1/2、16、16 1/2、17、17 1/2、18、18 1/2、19、19 1/2、20、20 1/2、21、21 1/2、22、22 1/
2、23、23 1/2、24、24 1/2、25、25 1/2、26、26 1/2、又はそれ以上)週
間後に投与される。本明細書で使用される句「直前の用量」は、複数回投与の順序で、介在する投与がなくその順序ですぐ次の用量の投与の前に患者に投与される抗原結合分子の用量を意味する。
【0078】
本発明のこの局面に従う方法は、いずれかの数の二次及び/又は三次用量のANGPTL3阻
害剤を患者に投与することを含み得る。例えば、特定の実施態様において、単回のみの二次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2又はそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施態様に
おいて、単回のみの三次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2又はそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0079】
複数回の二次用量を含む実施態様において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2、4、6、8週又はそれ以上後に
患者に投与され得る。同様に、複数回の三次用量を含む実施態様において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の1~2、4、6、8週間又はそれ以上後に患者に投与され得る。あるいは、二次及び/又は三次用量
が患者に投与される頻度は、処置レジメンの間に変わり得る。投与頻度はまた、臨床検査後に個々の患者の必要によって医師により処置の間に調整され得る。
【実施例0080】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を製造及び使用する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されるものであり、発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図されない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするための努力がなされてきたが、いくらかの実験誤差及び偏差が占めるはずである。別の指示がなければ、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温
度は摂氏度であり、そして圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0081】
実施例1. ヒトANGPTL3に対するヒト抗体の生成
ヒト抗ANGPTL3抗体を米国特許第9,018,356号に示されるように生成した。以下の実施例において使用される例となるANGPTL3阻害剤は、「エビナクマブ」としても知られる「H4H1276S」と名付けられたヒト抗ANGPTL3抗体である。エビナクマブは以下のアミノ酸配列特徴を有する: 配列番号10を含む重鎖及び配列番号11を含む軽鎖; 配列番号2を含む重鎖可
変領域(HCVR)及び配列番号3を含む軽鎖可変ドメイン(LCVR); 配列番号4を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号5を含むHCDR2、配列番号6を含むHCDR3、配列番号7を含む軽
鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号8を含むLCDR2及び配列番号9を含むLCDR3。
【0082】
実施例2. 抗ANGPTL3抗体はマウスモデルにおいてアテローム性動脈硬化症発症を防ぐ
導入
この研究の目的は、混合型又は家族性異常βリポ蛋白血症の全ての特徴を伴う高脂血症、及びアテローム性動脈硬化の十分確立されたモデルであるAPOE*3Leiden.CETPマウス(例えば、APOE*3Leiden.CETPマウスモデル(あるいは、本明細書では「E3L.CETPマウス」と呼ばれる)の一般的な記載及びアテローム性動脈硬化発症に対する薬剤の効果を評価する際
のその使用についてはKuehnast et al.、2014、J Lipid Res 55: 2103-2112を参照のこと)におけるアテローム性動脈硬化の発症に対するANGPTL3阻害の効果を評価することであった。
【0083】
ANGPTL3阻害は抗ANGPTL3抗体を使用して達成された。これらの研究において使用された特定の抗ANGPTL3抗体は、上記のエビナクマブと呼ばれる抗体であった。これらの研究に
おいて使用された対照抗体は、無関係な標的に対するアイソタイプ適合抗体であった。
【0084】
研究設計
研究設計の説明を
図1に示す。エビナクマブは完全ヒトIgG4抗体である。したがって、異なるマウス系統で評価される場合、いくらかのマウスは、治療剤の有効性を排除する抗薬物抗体を生じる。この抗薬物応答を生じるマウスのパーセンテージは、各マウスモデル/遺伝的バックグラウンドについて異なり得る。この理由のため、どのくらいのマウスが
この特定のモデルにおいて抗ヒト免疫応答を生じるかを決定するために、群あたりより多くのマウスがAPOE*3Leiden.CETPマウスにおけるこの最初の研究に含められた。抗ヒト免
疫応答を生じるマウスを除去した後、残りのマウスをアテローム性動脈硬化に対するエビナクマブの効果を評価するために使用することができた。
【0085】
63匹の雌性APOE*3Leiden.CETPマウスに0.15%コレステロール及び15%カカオ脂を添加し
た食餌T(diet T)(Nishina et al. 1990、J Lipid Res 31:859により記載される半合成
改変食餌)を与えた。4週の導入期(run-in period)の後、13匹の低応答マウスを研究から除き、そして残りの50匹のマウスを、4時間の絶食後に(t=0)体重、血漿コレステロー
ル及びトリグリセリドを合わせた20匹のマウスの対照群及び30匹のマウスのエビナクマブ処置群に細分した。
【0086】
エビナクマブ又は対照抗体での処置を、週1回25 mg/kg/週の用量で皮下注射により行った。処置期間の間の注射体積は、ビヒクルとして0.9%NaClを使用して10 mL/kgであり、そして最後に測定された体重値に対して調整された。体重及び食餌摂取(ケージごと)を0、3、6、8、11及び13週目に測定した。
【0087】
処置の0、2、4、6、8、11及び13週後に、血液サンプルを4時間の絶食後に採取した。血漿コレステロール及びトリグリセリドを個々に測定し、そしてさらにEDTA血漿をhFc及び
マウス抗ヒト抗体評価のために集めた。処置の6週後に、第一の抗薬物応答を評価し、そ
して高レベルの抗薬物抗体を有する対照群の3匹のマウス及び処置群の5匹のマウスを研究から除外した。
【0088】
リポタンパク質プロフィールを0、6及び13週目に群ごとにプールした血漿サンプルにおいて測定した。12週の間ケージごとに糞を集めた(48時間に2回)。t=13にマウスを非絶食
で屠殺した。EDTA-血漿を心臓穿刺により得て、いくつかの組織を集めた。大動脈根にお
けるアテローム性動脈硬化発生を、群あたり15匹のマウスにおいて(抗薬物応答を発生し
たマウスの除外後)病変数、病変面積及び病変重症度を測定することにより測定した。さ
らに、病変組成を決定した。
【0089】
(1) パラメーター測定のスケジュールは以下のとおりである:
(2) 体重 (0、3、6、8、11及び13週);
(3) 食餌摂取(ケージごと、0、3、6、8、11及び13週);
(4) 血漿総コレステロール及びトリグリセリド(0、2、4、6、8、11及び13週目に4時間
絶食後);
(5) hFc及びマウス抗ヒト抗体評価のための20μl EDTA血漿の収集(0、2、4、6、8、11
及び13週に4時間絶食後);
(6) リポタンパク質プロフィール(コレステロール及びトリグリセリド、群あたりプー
ルされた; 0、6及び13週);
(7) 大動脈根におけるアテローム性動脈硬化発生(群あたり15匹のマウス): (a) 病変数、(b) 総病変面積、(c) 病変重症度、(d) 病変組成(例えば、マクロファージ、キャップ(cap)における平滑筋細胞、壊死及びコラーゲン含有量)、及び(e) 単球接着([13週]の屠
殺時、大動脈を全てのマウスから収集したが、アテローム性動脈硬化分析を群あたり15匹のマウスで行った; 抗薬物抗体を発生しなかったマウスが選択された)。
【0090】
方法
体重及び食事摂取測定を標準的手順に従って行った。
【0091】
血漿血液サンプルを標準的手順に従って得た。総血漿コレステロール及びトリグリセリドは市販のキットを使用して決定された。
【0092】
Amersham BiosciencesからのAKTA装置を使用したFPLC分析によるリポタンパク質プロフィールの測定。分析は群ごとにプールされたサンプルにおいて行われた。コレステロール及びトリグリセリドは市販のキットを使用してフラクションで測定された。
【0093】
アテローム性動脈硬化病変面積及び重症度は以前に報告されるように大動脈根領域において評価された(例えば、Kuehnast et al.、2012、J Hypertens 30:107-116を参照のこと)。大動脈根を大動脈弁尖の出現により同定し、そして大動脈根領域全体の連続断面(間隔50μmで厚さ5μm)を3-アミノプロピルトリエトキシシラン被覆スライド上に載せてヘマトキシリン-フロキシン-サフラン(HPS)で染色した。各マウスについて、病変面積を4つの
連続した断面で測定した。各断面は3つの部分からなる(弁により分離されている)。アテローム性動脈硬化病変サイズ及び重症度の決定のために、病変をアメリカ心臓協会(AHA)
に従って5つのカテゴリーに分類した(Stary et al.、1995、Arterioscler Thromb Vasc Biol 15:1512-1531を参照のこと): 1型: 初期脂肪線条(他の変化を伴わない内膜における10までの泡沫細胞); 2型: 通常脂肪線条(他の変化を伴わない内膜における10又はそれ以
上の泡沫細胞); 3型: 軽度プラーク(繊維性キャップを有する泡沫細胞); 4型: 中程度プ
ラーク(中膜患部(affected media)を有するが、中膜の構造は喪失していないより進行
した病変); 5型: 重症プラーク(中膜が重度に罹患している; 破損した弾性線維、コレス
テリン裂、石灰化及び壊死が頻繁に観察される)。
【0094】
画像をOlympus BX51顕微鏡で撮影し、そして画像処理ソフトウェアで面積を測定した。総病変面積及び病変数を断面あたり計算した。非罹患断面を総断面のパーセンテージとして計算した。総病変パーセンテージとしての病変重症度も決定した。I~III型病変を軽度病変と分類し、そしてIV~V型病変を重症病変と分類した。
【0095】
活性化内皮への単球接着の数を、sAIA 31240抗血清(1:1000; Accurate Chemical and Scientific、New York、New York、USA)を用いた免疫染色後に病変定量のために使用され
た各セグメントにおいてカウントし、そして断面ごとに計算した。
【0096】
病変のマクロファージ面積を、抗マウスMac-3(1:50; BD Pharmingen、the Netherlands)を用いた免疫染色後に測定した。コラーゲンを染色するためにシリウスレッド染色を行
った。繊維性キャップの平滑筋細胞面積を、マウスアルファアクチンと交差反応する抗アルファ平滑筋アクチン(1:400; PROGEN Biotechnik GmbH、Heidelberg、Germany)を用いて面積染色した後に測定した。病変の写真/画像をOlympus BX51顕微鏡で撮影した。病変のマクロファージ、コラーゲン、壊死性コア及び平滑筋細胞面積をイメージングソフトウェアを使用して定量した。病変のマクロファージ、平滑筋細胞(SMC)、壊死性コア及びコラ
ーゲン含有量を病変面積のパーセンテージとして計算した。プラーク脆弱性/安定性指標
を、安定化因子SMC及びコラーゲンの合計を、不安定化因子、マクロファージ及び壊死性
コアの合計で割ることにより計算した。
【0097】
13週目にマウスを絶食なしにCO2により屠殺した。13週目の間屠殺前に最後の抗体注射
は行われなかった。屠殺後、可能な限り多くのEDTA-血漿を集め(心臓穿刺により)、そし
てさらなる使用まで-70℃で貯蔵した。大動脈根を含む心臓を10%ホルマリンで固定した。胸部大動脈を集め、そして10%ホルマリンで固定した。
【0098】
統計
正規性によって、コンピュータープログラムSPSS及びマン・ホイットニーのU検定を使
用して独立したサンプルについて群間の差異の優位性をノンパラメトリックに計算した。P値<0.05を統計的に有意とみなした。対照群と比較して処置群の統計的な差異を、図に
おいて測定点でアスタリスクを用いて示した。
【0099】
結果
体重
体重結果を表1にまとめる。値は絶対値(グラム)であり、群あたり14~15匹のマウスからの平均±S.D.である。
【0100】
【0101】
対照群と比較してエビナクマブ処置群との間に体重の差異はなかった。
【0102】
食物摂取
食物摂取結果を表2にまとめる。値は絶対値であり(グラム/マウス/日)、そして17ケージ(全マウス; マッチング前)又は4~6ケージ(マッチング及び処置開始後)の平均±S.D.である。
【0103】
【0104】
対照群と比較してエビナクマブ処置群との間に食物摂取の差異はなかった。
【0105】
血漿コレステロール
血漿コレステロール結果を表3及び4、並びに
図2A及び2Bにまとめる。値は絶対値(mM)であり、群あたり14~15匹のマウスからの平均±S.D.である。
【0106】
【0107】
【0108】
エビナクマブを用いた処置は、全ての時点で対照群と比較して血漿コレステロールの有意な減少をもたらした(52%の平均減少)。実験の終わりに、実験の間のコレステロール曝
露(0~13週 + 導入期)は、対照群と比較してエビナクマブを用いた処置で有意に減少した(41%、p<0.001)。
【0109】
血漿トリグリセリド
血漿トリグリセリド結果を表5、及び
図3にまとめる。値は絶対値(mM)であり、群あたり14~15匹のマウスの平均 ± S.D.である。
【0110】
【0111】
エビナクマブを用いた処置は、全ての時点で対照群と比較して血漿トログリセリドの有意な減少をもたらした(84%の平均減少)。
【0112】
リポタンパク質プロフィール
リポタンパク質をSuperoseカラムで分離した。t=0、t=6週、及びt=13週でのコレステロール及びトリグリセリドフラクションを
図4A、4B、及び4C [コレステロール]並びに5A、5B、及び5C [トリグリセリド]に示す。値は、t=0、6及び13週に群ごとにプールされた血漿におけるコレステロール及びトリグリセリド測定からの絶対値である。この分析の目的のために、フラクション3~7をVLDL; 8~16をIDL/LDL、そして17~24をHDLとみなした。
【0113】
t=0において、処置が開始する前に、リポタンパク質プロフィールにおける差異は観察
されなかったが、エビナクマブでの6週及び13週の処置後に、群ごとにプールされたサン
プルにおいて測定された血漿コレステロールレベルは、対照群と比較してVLDL-LDLピークが減少し、そしてHDLピークが増加したように思われた(
図4B及び4Cを参照のこと)。トリ
グリセリドプロフィールは同様のパターンを示した(
図5A、5B、及び5C)。
【0114】
これらのデータは、研究の間に観察された個々の動物の総コレステロール及びトリグリセリドレベルの減少と一致している。
【0115】
アテローム性動脈硬化病変面積
アテローム性動脈硬化病変面積を表6、並びに
図6A及び6Bにまとめる。値は断面ごとの大動脈根における絶対病変面積であり、そして群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0116】
【0117】
対照群の大動脈根における総病変面積はt=13週目の屠殺時に断面あたり216082μm2であった。エビナクマブを用いた処置は、屠殺時に対照群と比較して総病変面積を39%有意に
減少させた(p<0.001)。
【0118】
アテローム性動脈硬化: 病変の数
断面あたりのアテローム性動脈硬化病変の数を表7にまとめる。値は絶対値(病変の数)であり、そして群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0119】
【0120】
対照群と比較してエビナクマブ処置群との間に病変の数の差異はなかった。
【0121】
アテローム性動脈硬化: 病変重症度
アテローム性動脈硬化病変重症度結果を表8にまとめる。値は総病変のパーセンテージ
であり、群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0122】
【0123】
対照群と比較してエビナクマブ処置群との間に病変重症度の差異はなかった。
【0124】
アテローム性動脈硬化: 未罹患セグメント
未罹患アテローム性動脈硬化部位の数を表9にまとめる。値は非アテローム性動脈硬化(「未罹患」すなわち健常)部分のパーセンテージを表す。値は群あたり14~15匹のマウス
の平均±S.D.である。
【0125】
【0126】
対照群と比較してエビナクマブ処置群との間に未罹患部分の量の差異はなかった。
【0127】
アテローム性動脈硬化: マクロファージ含有量
病変のマクロファージ含有量を表10及び
図7Aにまとめる。値は絶対値(μm
2*1000)又は
相対値(病変の%)であり、群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0128】
【0129】
エビナクマブを用いた処置は、対照群と比較してアテローム性動脈硬化病変IV-V型における断面あたりのマクロファージ含有量を減少させる傾向があった。しかし、この差異は総病変面積について補正してIV-V型病変におけるマクロファージのパーセンテージとして表した後は後は観察されなかった。
【0130】
アテローム性動脈硬化: 壊死含有量
病変の壊死含有量を表11及び
図7Aにまとめる。値は絶対値(μm
2*1000)又は相対値(病変の%)であり、群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0131】
【0132】
エビナクマブを用いた処置は、対照群と比較してアテローム性動脈硬化病変IV-V型における断面あたりの壊死含有量を有意に減少させた(69%、p<0.001)。総病変面積についての補正後、IV-V型病変における壊死面積のパーセンテージもまた、対照群と比較して有意に減少した(45%、p=0.001) (
図7A)。
【0133】
アテローム性動脈硬化: 繊維性キャップにおける平滑筋細胞
病変の繊維性キャップにおける平滑筋細胞(SMC)の定量を表12及び
図7Bにまとめる。値は絶対値(μm
2*1000)又は相対値(病変の%)であり、群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0134】
【0135】
エビナクマブを用いた処置は、対照群と比較してアテローム性動脈硬化病変IV-V型における断面積あたりの平滑筋細胞(SMC)面積を有意に減少させた(39%、p=0.009)。しかし、
総病変についての補正後、IV-V型病変における繊維性キャップにおけるSMCのパーセンテ
ージは、対照群と比較して有意に減少しなかった(
図7B)。
【0136】
アテローム性動脈硬化: コラーゲン含有量
病変のコラーゲン含有量を表13及び
図7Bにまとめる。値は絶対値(μm
2*1000)又は相対
値(病変の%)であり、群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0137】
【0138】
エビナクマブを用いた処置は、対照群と比較してアテローム性動脈硬化病変IV-V型において断面あたりのコラーゲン含有量を有意に減少させた(40%、p=0.009)。しかし、総病変面積の補正後に、IV-V型病変におけるコラーゲンのパーセンテージは、対照群と比較して有意に減少しなかった(
図7B)。
【0139】
アテローム性動脈硬化: 単球接着
断面あたりの単球のパーセントを表14にまとめる。値は絶対値(断面あたりの接着単
球の数)であり、そして群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0140】
【0141】
大動脈根の血管壁における活性化内皮への単球接着は、対照群と比較してエビナクマブを用いた処置により影響を受けなかった。
【0142】
アテローム性動脈硬化: 安定性指標
病変のプラーク安定性(安定性指標で表される)を表15にまとめる。安定性指標は安定化マーカーのSMC及びコラーゲン含有量の合計を不安定性マーカーのマクロファージ及び壊
死含有量の合計で割ったものとして定義される。この値はプラーク安定性の尺度を提供する。値は群あたり14~15匹のマウスの平均±S.D.として表される。
【0143】
【0144】
エビナクマブを用いた処置は対照群と比較して安定性指標に対する効果を有していなかった。
【0145】
要旨
安全性面
体重(増加)及び食物摂取に対する効果は対照と比較してエビナクマブ処置で観察されなかった。
【0146】
VLDL及びLDLレベルの減少
APOE*3Leiden.CETPマウスは、レムナントリポタンパク質の蓄積及び増加したVLDL-C対LDL-C比の蓄積を特徴とする、ヒトにおける家族性異常βリポタンパク血症(FD)のための十分に確立されたモデルである。APOE*3Leiden.CETPマウスにおけるリポタンパク質プロフ
ィールは、脂質低下療法に対する同様の応答を有するFD患者のプロフィールを反映する。これは、スタチン処置25及びフェノフィブラート及びナイアシンを用いて全てのapoB含有リポタンパク質サブフラクションにおけるコレステロールの同程度の減少により説明される。
【0147】
本研究において、エビナクマブを用いた処置は、対照と比較して平均総コレステロール(TC)(-52%、p<0.001)及びトリグリセリド(TG)(-84%、p<0.001)を有意に減少し、これは非HDLフラクションに限定された。
【0148】
病変サイズ及び壊死面積の減少
現在の研究において、エビナクマブは対照群と比較して病変サイズを有意に減少させた(-39%、p<0.001)。病変数、未罹患部分、又は病変重症度において有意な際は見られなか
った。
【0149】
エビナクマブを用いた処置は、重症IV-V型病変における総病変サイズのパーセンテージとしての壊死含有量を有意に減少した(with 45%、p=0.001)が、マクロファージ含有量、
コラーゲン含有量又はSMC面積には影響を及ぼさず、対照群と同様の病変安定性指標を生
じた。エビナクマブは活性化内皮への単球動員に影響を及ぼさなかった。
【0150】
壊死含有量は、絶対面積と総病変面積のパーセンテージとしての両方に関して変化したプラーク組成のマーカーでしかなかった。可能性のある説明は、プラーク中のマクロファージ集団におけるより炎症促進性のM1「キラー」マクロファージから、プラークからコレステロールを除去し得るより治癒性の「修復」M2マクロファージへのシフトであるかもしれずない。
【0151】
結論
集合的に、この実施例において示されたこれらの結果は、抗ANGPTL3モノクローナル抗
体エビナクマブが、APOE*3Leiden.CETPマウスにおいて血漿脂質を減少させ、そしてアテ
ローム性動脈硬化の進行を防止するということを示す。エビナクマブは、病変数、病変重症度又はプラーク安定性には影響を有していなかったが、病変面積及び壊死性コア面積を有意に減少した。
【0152】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様に限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な改変が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。このような改変は添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
被験体においてアテローム性動脈硬化症を予防又は軽減するための方法であって、アテローム性動脈硬化症を有するか又はアテローム性動脈硬化症を発症する危険性がある被験体を選択すること、及び該被験体に1又はそれ以上の用量のアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)阻害剤を投与することを含む、上記方法。