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  • 特開-転移性膵臓腺癌の処置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161518
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】転移性膵臓腺癌の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 7/64 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K38/12 ZNA
A61K31/513
A61K31/4745
A61K31/519
A61P35/00
A61P1/18
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/7068
A61K45/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61P43/00 113
A61P29/00
C07K7/64
C07K16/28
A61K38/12
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137500
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2021519139の分割
【原出願日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】62/746,587
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515264805
【氏名又は名称】バイオラインアールエックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BioLineRx Ltd.
【住所又は居所原語表記】2 HaMaayan Street, 7177871 ModiIn, Israel
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインステイン-ハラス,アビ
(72)【発明者】
【氏名】ソラニ,エラ
(72)【発明者】
【氏名】グリコ-カビール,イリト
(72)【発明者】
【氏名】ボハナ-カシュタン,オスナット
(72)【発明者】
【氏名】ペレド,アムノン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転移性膵臓腺癌の処置のための方法および作用物質の使用を提供する。
【解決手段】必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置する方法が提供される。方法は、特定の配列に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量を対象に投与すること、それにより、転移性膵臓腺癌を処置することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置する方法であって、配列番号1に記載の
ペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量を前記対象に投与する
こと、それにより、前記転移性膵臓腺癌を処置することを含む、方法。
【請求項2】
必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置することにおける使用のための、配列番
号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量。
【請求項3】
転移性膵臓腺癌の処置における使用のための、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-
1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量を含む製造品。
【請求項4】
前記抗PD-1がペムブロリズマブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法
または治療的有効量または製造品。
【請求項5】
前記化学療法が複数の化学療法剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法ま
たは治療的有効量または製造品。
【請求項6】
前記化学療法が、イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、およびロイコボリン
(LV)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製
造品。
【請求項7】
前記イリノテカンがリポソームに封入されている、請求項1~6のいずれか一項に記載
の方法または治療的有効量または製造品。
【請求項8】
前記イリノテカンがOnivyde(登録商標)である、請求項1~7のいずれか一項
に記載の方法または治療的有効量または製造品。
【請求項9】
前記ペプチドが皮下に(SC)投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法
または治療的有効量または製造品。
【請求項10】
前記ペプチドが1.25mg/kgの用量で投与される、請求項1~9のいずれか一項
に記載の方法または治療的有効量。
【請求項11】
前記抗PD-1が静脈内に(IV)投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載
の方法または治療的有効量。
【請求項12】
前記抗PD-1が200mgの用量で投与される、請求項1~11のいずれか一項に記
載の方法または治療的有効量。
【請求項13】
前記化学療法が静脈内に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法また
は治療的有効量。
【請求項14】
前記処置が、前記ペプチドでの単剤療法期間、それに続く、前記ペプチド、前記抗PD
-1、および前記化学療法での併用療法を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の
方法または治療的有効量。
【請求項15】
前記化学療法および前記抗PD-1での前記併用療法が8日目に開始される、請求項1
~14のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
【請求項16】
前記併用療法が、前記化学療法を2週間ごとに繰り返し、前記抗PD-1を3週間ごと
に繰り返すものである、請求項14または15に記載の方法または治療的有効量。
【請求項17】
前記ペプチドでの前記併用療法が、10日目に開始され、48時間離れた連続していな
い日に週2回である、請求項15に記載の方法または治療的有効量。
【請求項18】
前記単剤療法が1~5日目に毎日実施される、請求項1~17のいずれか一項に記載の
方法または治療的有効量。
【請求項19】
前記処置がさらに、抗ヒスタミン剤、および任意で、鎮痛剤を含む、請求項18に記載
の方法または治療的有効量。
【請求項20】
前記併用療法が、35回の処置まで継続する、請求項1~19のいずれか一項に記載の
方法または治療的有効量。
【請求項21】
前記対象が、前記転移性膵臓腺癌に対する第一選択処置後である、請求項1~20のい
ずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
【請求項22】
前記第一選択処置が、ゲムシタビンに基づいた化学療法を含む、請求項21に記載の方
法または治療的有効量。
【請求項23】
前記転移性膵臓腺癌が切除不能である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法ま
たは治療的有効量。
【請求項24】
前記転移性膵臓腺癌が膵管腺癌である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法ま
たは治療的有効量。
【請求項25】
前記転移性膵管腺癌が膵管内乳頭粘液性新生物を含む、請求項24に記載の方法または
治療的有効量。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2018年10月17日に出願された米国仮特許出願第62/746,5
87号の優先権の恩恵を主張し、その米国仮特許出願の内容は、全体として参照により本
明細書に組み入れられている。
【0002】
配列表の言明
この出願の出願と同時に提出された、1018バイトを含む、2019年10月17日
に作成された、78928 Sequence Listing.txtという名前のA
SCIIファイルが参照により本明細書に組み入れられている。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、転移性膵臓腺癌の処置のための方法およ
び作用物質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
新規の急速に成長する研究分野である、癌免疫療法は、癌に対する闘いにおいて身体自
身の免疫系を利用する治療の使用を研究する。腫瘍は、宿主免疫検出を逃れるために様々
な機構を利用する。骨髄由来抑制細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、および
腫瘍関連マクロファージなどの腫瘍浸潤性免疫細胞が、腫瘍微小環境を能動的に調節して
、この応答のエフェクターアームを抑制するという山のような証拠がある。癌免疫療法ア
プローチの目的は、自分自身の宿主免疫系による検出および除去を抑制する腫瘍の能力を
阻止することである。一連の免疫シグナル伝達機構をターゲットするいくつかの生物学的
物質、例えば、プログラム死受容体1(PD-1)/プログラム死受容体リガンド1(P
D-L1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、およびキラー免疫グロブリン様受
容体(KIR)が、様々な癌の処置のために臨床開発中である。しかしながら、対象の一
部は、ストロマ細胞(主に、線維芽細胞)により媒介される局所的免疫抑制の結果として
これらの治療に応答しない。腫瘍ストロマにおける活性化線維芽細胞は、いくつかのマウ
スの癌モデルにおいて免疫抑制を媒介することが見出された。その免疫抑制の基盤につい
ての1つの示唆は、線維芽細胞ストロマ細胞によるケモカイン、CXCL12の産生を含
む。T細胞によるCXCL12の結合は、それらの癌細胞の近傍からの排除をもたらす。
T細胞排除は、癌特異的CD8+ T細胞の存在にもかかわらず、T細胞チェックポイン
トのアンタゴニストを無効にさせる。前臨床試験は、この免疫抑制が、CXCL12の受
容体であるCXCケモカイン受容体4(CXCR4)の阻害剤の投与により妨害され、そ
のことが、癌細胞の間でのT細胞の迅速な蓄積をもたらし、それにより、免疫チェックポ
イント阻害剤の効力の覆いを取り外すことを実証した。
【0005】
BL-8040
BL-8040(以前はBKT140と名づけられた、配列番号1)は、高選択性CX
CR4アンタゴニストである。その治験薬は、CXCR4と高親和性(IC50 0.5
4~4.5nM)で結合し、それの機能を阻害する、芳香環でキャッピングされた、14
残基の環状合成ペプチドである[1]。ケモカインCXCL12(SDF-1 ストロマ
由来因子1)およびそれの受容体、CXCR4は、造血細胞の骨髄(BM)への輸送にお
いて中心的役割を果たす[2]。マウスの様々な癌モデルにおいてBL-8040の活性
を探索する動物試験は、造血細胞の動員因子としてのそれの活性に加えて、BL-804
0が、CXCR4を過剰発現する悪性細胞に対してCXCR4依存性の優先的な抗腫瘍効
果を示すことを示している[3]。インビトロおよびインビボでCXCR4をブロックす
ることについてのBL-8040およびそれの類似体の有効性は、小細胞肺癌、乳癌、悪
性黒色腫、神経芽細胞腫、および膵癌についてのインビトロおよびインビボのモデルを含
む多数の前臨床試験において実証されている。CXCR4アンタゴニストとして、BL-
8040はまた、免疫細胞の腫瘍微小環境への輸送にも影響する。BL-8040の投与
が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、およびB細胞のBMおよびリンパ節からそ
の周辺への動員を誘導することが見出された。マウスにおける同系癌モデルを用いて、B
L-8040が、免疫学的バリアを除去し、腫瘍微小環境内の免疫細胞の蓄積を可能にし
得ることが示された。
【0006】
前臨床試験
BL-8040の非臨床開発は、多数の薬力学、薬物動態学(PK)、安全性薬理学、
ならびに単一および反復用量の毒性試験を包含している。
【0007】
BL-8040は、インビボとインビトロの両方で、悪性細胞へのCXCR4依存性選
択性細胞毒性を示し、癌細胞においてアポトーシス細胞死を誘導する[3~6]。BL-
8040は、白血病細胞および多発性骨髄腫細胞における、ホスファチジルセリン外在化
、ミトコンドリア膜電位の減少、カスパーゼ活性化、後のsub-G1期停止、およびD
NA二本鎖切断をもたらす[3]。これらの効果は特異的であることが示された;BL-
8040は、ヒトケラチノサイトおよび正常ヒト造血細胞の生存能に影響しなかった[3
]。動員能力に加えて、この直接的なアポトーシス効果の性質は、Mozobil/Pl
erixaforなどの他のCXCR4アンタゴニスト剤からBL-8040を区別して
いる[3]。加えて、BL-8040の投与は、NK細胞、T細胞、およびB細胞のBM
およびリンパ節からその周辺への動員を誘導する。
【0008】
BL-8040は、いくつかの第I相および第II相試験において安全性および最初の
臨床的有効性を示している[Hidalgo MM, Epelbaum R, Semenisty V, Geva R, Golan T,
Borazanci EH. Evaluation of pharmacodynamic (PD) biomarkers in patients with met
astatic pancreatic cancer treated with BL-8040, a novel CXCR4 antagonist. J Clin
Oncol. 2018; 36:88-88. Abstract]。
【0009】
ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、PD-1受容体との結合の高特異性を有する強力なヒト化免疫グ
ロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体(mAb)であり、それゆえに、PD-1
のPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害する。前臨床のインビトロデータに基
づいて、ペムブロリズマブは、PD-1に対する高親和性かつ強力な受容体ブロッキング
活性を有する。ペムブロリズマブは、許容できる前臨床の安全性プロファイルを有し、進
行悪性腫瘍についてのIV免疫療法として臨床開発中である。Keytruda(登録商
標)(ペムブロリズマブ)は、いくつかの適応症に渡って患者の処置に適応される。
【0010】
薬学的および治療的背景
腫瘍性形質転換の増殖を調節することにおける無傷の免疫監視機構の重要性は、何十年
もの間知られている[7]。証拠の蓄積により、癌組織における腫瘍浸潤リンパ球と様々
な悪性腫瘍における良好な予後との相関が示されている。特に、CD8+T細胞の存在お
よびCD8+エフェクターT細胞/FoxP3+制御性T細胞(Treg)の比率は、卵
巣、結腸直腸、および膵臓の癌;肝細胞癌;悪性黒色腫;ならびに腎細胞癌などの固形悪
性腫瘍における予後の向上および長期生存と相関する。腫瘍浸潤リンパ球は、エクスビボ
で増殖させて、再注入することができ、黒色腫などの癌において永続的な客観的腫瘍応答
を誘導する[8、9]。
【0011】
PD-1受容体-リガンド相互作用は、免疫調節を抑制するように腫瘍により乗っ取ら
れる主要な経路である。健康な条件下での活性化T細胞の細胞表面上に発現したPD-1
の正常な機能は、自己免疫反応を含む、望まれないまたは過剰な免疫応答を下方調節する
ことである。(遺伝子Pdcd1によりコードされる)PD-1は、それのリガンド(P
D-L1および/またはPD-L2)の結合により抗原受容体シグナル伝達を負に制御す
ることが示されている表面抗原分類28(CD28)および細胞傷害性Tリンパ球関連タ
ンパク質4(CTLA-4)に関係した免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーメン
バーである[10、11]。
【0012】
マウスPD-1の構造は、解明されている[12]。PD-1およびそれのファミリー
メンバーは、リガンド結合を担うIg可変型(IgV型)ドメインおよびシグナル伝達分
子の結合を担う細胞質側末端を含有するI型膜貫通糖タンパク質である。PD-1の細胞
質側末端は、2つのチロシン依存性シグナル伝達モチーフ、免疫受容体チロシン依存性抑
制モチーフおよび免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフを含有する。T細胞刺激後
、PD-1は、チロシンホスファターゼ、SHP-1およびSHP-2を、それの細胞質
側末端内の免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフに動員し、CD3 T細胞シグナ
ル伝達カスケードに関与する、CD3ゼータ(CD3ζ)、プロテインキナーゼC-シー
タ(PKCθ)、およびゼータ鎖関連プロテインキナーゼ(ZAP70)などのエフェク
ター分子の脱リン酸化をもたらす[11、13~15]。PD-1がT細胞応答を下方調
節する機構は、CTLA-4の機構と、どちらの分子も、重複するセットのシグナル伝達
タンパク質を制御するという理由から、類似はしているが、異なる[16、17]。結論
として、PD-1/PD-L1経路は、膵癌における治療介入のための魅力的な標的であ
る。
【0013】
前臨床試験および臨床試験
マウスモデルにおける治療研究により、単剤療法としてまたは他の処置モダリティーと
併用して、PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体の投与が、腫瘍特異的CD
8+ T細胞の浸潤を増強し、最終的に腫瘍拒絶をもたらすことが示されている[18~
23]。抗マウスPD-1抗体または抗マウスPD-L1抗体は、扁平上皮癌、膵癌、黒
色腫、AML、および結腸直腸癌のモデルにおいて抗腫瘍応答を示している[12、22
~25]。そのような試験において、CD8+ T細胞による腫瘍浸潤、ならびにIFN
-γ、グランザイムB、およびパーフォリン発現の増加が観察され、PD-1チェックポ
イント阻害の抗腫瘍活性の根底にある機構が、インビボでのエフェクターT細胞の局所的
浸潤およびその機能の活性化を含むことを示している[22]。実験は、同系マウス腫瘍
モデルにおける、単剤療法としておよび化学療法と併用しての、抗マウスPD-1抗体の
インビボ有効性を確認している(ペムブロリズマブIB参照)。
【0014】
化学療法:フルオロウラシルおよびロイコボリンと共のナノリポソーム型イリノテカン
(5-FU/LVと共のOnivyde(登録商標))
リポソーム型イリノテカンは、非リポソーム型イリノテカンの薬理学的および臨床的制
限を克服するために開発されたトポイソメラーゼ-1阻害剤イリノテカンのリポソームに
封入された製剤である[26、27]。5-FUは、膵臓腺癌を有する患者の処置に適応
されるヌクレオシド代謝阻害剤である[28]。LVは、葉酸の化学還元型誘導体である
。それは、5-FUの治療効果および毒性効果を増強することができる。LVの同時投与
は、5-FUの血漿薬物動態を変化させないように思われる。5-FUは、フルオロデオ
キシウリジル酸へ代謝され、そのフルオロデオキシウリジル酸は、酵素チミジル酸シンタ
ーゼ(DNA修復および複製において重要な酵素)と結合して阻害する。LVは、別の還
元型葉酸、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸へ容易に変換され、その5,10-メチ
レンテトラヒドロ葉酸は、フルオロデオキシウリジル酸のチミジル酸シンターゼとの結合
を安定化させて、それにより、この酵素の阻害を増強するように働く[29]。IV用リ
ポソーム型イリノテカン注射剤(Onivyde(登録商標))は、ゲムシタビンに基づ
いた治療後に進行している転移性膵臓腺癌を有する患者において、5-FUおよびLV(
5-FU/LV)との併用での使用を認可されている。ゲムシタビンに基づいた治療後に
進行している転移性膵臓腺癌を有する患者における中枢的な国際共同第III相NAPO
LI-1試験において、5-FU/LVと併用したリポソーム型イリノテカンは、5-F
U/LV対照治療と比較して、一次分析(313個のイベント後)および最終分析(38
2個のイベント後)の時点において、全生存期間(OS)中央値(プライマリーエンドポ
イント)および無増悪生存期間(PFS)中央値を有意に延ばした。奏効率(ORR)も
また、対照群においてよりリポソーム型イリノテカン+5-FU/LV群において有意に
高かった。リポソーム型イリノテカンに基づいた併用療法は、管理可能な安全性プロファ
イルを有した;最もよく見られるグレード3重症度のTEAEは、実際は、血液学的また
は胃腸管系であった[26、27]。
【0015】
治療適応症
膵癌は、低い早期診断率および予後不良である、膵臓の悪性新生物である。それの発生
率は近年、上昇しており、それは、現在、一般的な腫瘍の1%~2%を占める。毎年、世
界中で約185,000人の人がこの状態と診断されている。それの症状は、通常、非特
異的であるため、膵癌は、それが進行期に達するまで診断されない場合が多い。膵癌の唯
一の治癒の可能性がある治療は、外科的切除である。残念なことに、たった20%の患者
における腫瘍だけが、診断の時点で切除可能である。膵癌の切除を受け、断端陰性を有す
るそれらの患者の中でさえも、5年生存率はたった10%~25%である[30、31]
。患者の中での5年全生存率は、5%未満であり、それは、固形悪性腫瘍の中で最も高い
死亡率に相当する。全体の生存期間中央値は、診断から1年未満であり、より新しい治療
選択肢の開発の必要性を浮き彫りにしている。
【0016】
膵臓の解剖学的構造は非常に複雑である。膵腫瘍の高い間質張力および不十分な血液灌
流が、それらをほとんどの化学療法薬に対して極度な抵抗性にさせている。結果として、
通常の全身性IV化学療法は、有効な濃度に達することができない場合が多い。高い投薬
量は、重篤な有害反応を引き起こす可能性があり、したがって、免疫系を損ない、潜在的
治療効果を低下させる。膵管腺癌を有する患者における臨床処置の失敗は、初期転移性増
殖、標準治療選択肢に対する高レベルの薬物抵抗性、および高率の局所的再発に起因する
場合が多い[32]。
【0017】
化学療法剤および膵癌の分子生物学の理解における最近の進歩にもかかわらず、転移性
疾患についての治療選択肢の進展は限られている。過去40年間に渡って、いくつかの併
用療法の研究は、ゲムシタビン単独と比較して、わずかな延命効果を示しているか、また
は全く延命効果を示していない。ゲムシタビン+エルロチニブの併用療法が生存期間中央
値を2週間、増加させることが示されるまで、ゲムシタビン単剤療法が数年間、転移性膵
癌を有する患者にとってのケアの標準であった。しかしながら、その中程度の延命効果は
、重大な副作用プロファイルおよび処置の高い費用によって鈍らされた。後になって、L
V、5-FU、イリノテカン、およびオキサリプラチン(FOLFIRINOX)の多剤
併用が、4.3カ月の生存期間中央値の増加を示した;しかしながら、それの副作用プロ
ファイルを考慮すれば、それは、進行膵癌を有する患者の選抜グループに対してのみ利用
可能である。最近、ゲムシタビン+Nab-パクリタキセル併用が、生存期間中央値を1
.8カ月、増加させることが示され、1年間および2年間におけるOSが増加した;AE
は妥当であった;それらは、血球減少および末梢神経障害を含んだ[33]。最新の全米
総合癌情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)の推奨は、良いパ
フォーマンスステータス(すなわち、0または1のECOGパフォーマンスステータス)
、良い疼痛管理、開存性胆管ステント、および十分な栄養摂取を有する患者について、許
容できる化学療法併用を示唆している;これらの併用には、FOLFIRINOX、ゲム
シタビン+nab-パクリタキセル、およびゲムシタビン+エルロチニブが挙げられる。
不良のパフォーマンスステータスを有する患者についての唯一の推奨される選択肢は、ゲ
ムシタビン単剤療法である。2015年、Onivyde(登録商標)が、ゲムシタビン
に基づいた治療後の疾患進行後の第二選択設定における膵臓の転移性腺癌を有する患者の
処置のための、5-FUおよびLVと併用する化学療法剤としてUSおよびEUで初めて
認可された[26,34]。
【0018】
追加の背景技術には以下が挙げられる:
国際公開第2017009843号パンフレット
国際公開第2017009842号パンフレット。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、必要とする対象において転移性膵臓腺癌
を処置する方法であって、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法の
それぞれの治療的有効量を対象に投与すること、それにより、転移性膵臓腺癌を処置する
ことを含む、方法が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、必要とする対象において転移性膵臓腺癌
を処置することにおける使用のための、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、およ
び化学療法のそれぞれの治療的有効量が提供される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、転移性膵臓腺癌の処置における使用のた
めの、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有
効量を含む製造品が提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗PD-1は、ペムブロリズマブである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法は複数の化学療法剤を含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法は、イリノテカン、フルオロウラシル
(5-FU)、およびロイコボリン(LV)を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、イリノテカンはリポソームに封入されている。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、イリノテカンはOnivyde(登録商標)で
ある。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドは、皮下に(SC)投与される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドは、1.25mg/kgの用量で投与
される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗PD-1は静脈内に(IV)投与される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗PD-1は、200mgの用量で投与される
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法は静脈内に投与される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、処置は、ペプチドでの単剤療法期間、それに続
く、ペプチド、抗PD-1、および化学療法での併用療法を含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、化学療法および抗PD-1での併用療法は8日
目に開始される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、併用療法は、化学療法を2週間ごとに繰り返し
、抗PD-1を3週間ごとに繰り返すものである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ペプチドでの併用療法は、10日目に開始され
、化学療法から少なくとも24時間後の、48時間離れた連続していない日に週2回であ
る。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、単剤療法は、1~5日目に毎日実施される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、処置はさらに、抗ヒスタミン剤、および任意で
、鎮痛剤を含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、併用療法は、35回の処置まで継続する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は、転移性膵臓腺癌に対する第一選択処置
後である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第一選択処置は、ゲムシタビンに基づいた化学
療法を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、転移性膵臓腺癌は切除不能である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、転移性膵臓腺癌は膵管腺癌である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、転移性膵管腺癌は、膵管内乳頭粘液性新生物を
含む。
【0044】
他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および/または科学的用語は
、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたもの
と類似したまたは等価の方法および材料が本発明の実施形態の実践または試験に用いるこ
とができるが、例示的な方法および/または材料が下に記載されている。矛盾する場合、
定義を含む本明細書が支配するものとする。加えて、その材料、方法、および実施例は、
例証となるのみであり、必ずしも限定しているわけではない。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ本明細書に記載
されている。今、図面を詳しく具体的に参照しているが、その示された詳細は、例として
であり、本発明の実施形態を例証的に論じるためであることを、強く主張する。この点に
おいて、図面に関してなされた説明によって、本発明の実施形態がどのように実践され得
るかが、当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】処置レジメンの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、膵臓腺癌の処置のための方法および作用
物質の使用に関する。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、それの適用にお
いて、以下の説明に示されまたは実施例に例示された詳細に、必ずしも限定されるわけで
はないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々
な様式で実践もしくは実行することができる。
【0049】
本発明者らは、必要としているヒト対象における転移性膵臓腺癌の処置のための新規な
臨床プロトコールを、骨の折れる実験およびスクリーニングを通して開発した。
【0050】
したがって、本発明の態様によれば、必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置す
る方法であって、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれ
の治療的有効量を対象に投与すること、それにより、転移性膵臓腺癌を処置することを含
む、方法が提供される。
【0051】
本発明の別の態様によれば、必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置することに
おける使用のための、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれ
ぞれの治療的有効量が提供される。
【0052】
本発明の別の態様によれば、転移性膵臓腺癌の処置における使用のための、配列番号1
に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量が提供される
【0053】
本明細書で用いられる場合、「転移性膵臓腺癌」は、腫瘍が、膵臓の外側に、すなわち
、リンパ節または他の遠位の場所に、存在する場合の、疾患のステージIIb~IVを指
す。
【0054】
【表1-1】
【表1-2】
【0055】
特定の実施形態によれば、転移性膵臓腺癌は膵管腺癌である。
【0056】
本明細書で用いられる場合、「膵管腺癌」(PDAC)は、一種の膵外分泌癌である。
それは、管と呼ばれる膵臓における小さいチューブを裏打ちする細胞(上記の表において
は管細胞)から発生する。これらは、酵素を含有する消化液を主要な膵管へ、その後、十
二指腸(小腸の最初の部分)の中へ運ぶ。PDACは、膵臓のどこでも増殖することがで
きるが、ほとんど膵頭に見出される。
【0057】
特定の実施形態によれば、PDACは、膵管内乳頭粘液性新生物を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、膵癌は再発性膵癌である。
【0059】
いくつかの実施形態において、膵癌は寛解後、再発している。
【0060】
いくつかの実施形態において、個体は、(例えば、RECIST基準により)測定可能
な疾患を有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、個体は、例えば、CTスキャン(またはMRI)により
、測定可能な1つまたは複数の転移性腫瘍を有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、膵癌は、切除不能の膵癌である。いくつかの実施形態に
おいて、膵癌は切除可能な膵癌である。
【0063】
いくつかの実施形態において、膵癌は切除可能境界である。
【0064】
いくつかの実施形態において、膵癌の主占居部位は膵頭である。いくつかの実施形態に
おいて、膵癌の主占居部位は膵臓の本体である。いくつかの実施形態において、膵癌の主
占居部位は膵尾である。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「対象」は、転移性膵臓腺癌と診断されたヒト対象を指す
【0066】
いくつかの実施形態において、対象は女性である。いくつかの実施形態において、個体
は男性である。いくつかの実施形態において、個体は、約65歳未満(例えば、約60歳
未満、約55歳未満、約50歳未満、約45歳未満、または約40歳未満のうちのいずれ
か)である。いくつかの実施形態において、対象は少なくとも約65歳(例えば、少なく
とも約70歳、少なくとも約75歳、または少なくとも約80歳のいずれか)である。
【0067】
特定の実施形態によれば、対象は少なくとも18歳である。
【0068】
特定の実施形態によれば、処置は、膵臓腺癌に対する第一選択処置後である。
【0069】
したがって、本明細書に記載された方法、物品、および組成物はまた、膵癌についての
前処置が失敗し、もしくは実質的に失敗した後に、またはその膵癌が第一選択治療に対し
て実質的に抵抗性である場合には、第二選択または第三選択治療として用いられ得る。い
くつかの実施形態において、個体は、本明細書に記載された処置を受ける前に、膵癌(例
えば、転移性膵癌)を処置するための少なくとも1ラインの治療(例えば、化学療法また
は免疫療法)を受けている。いくつかの実施形態において、患者は、1ラインの治療また
は2ラインの治療(例えば、1ラインの化学療法または免疫療法)を受けている。したが
って、本明細書に記載された処置は、第二選択治療として用いられ得る。本明細書に記載
された前ラインの治療は、前ラインの化学療法または免疫療法であり得る。第一選択治療
は、以下のいずれかを含み得る:ゲムシタビン、5-FU、マシチニブ(masitinib)、
パクリタキセル、トラメチニブ、および/またはエルロチニブ。
【0070】
特定の実施形態によれば、第一選択処置は、ゲムシタビンに基づいた化学療法、とりわ
け、例えば、ブランド名Gemzar(商標)のゲムシタビンである。
【0071】
特定の実施形態によれば、疾患は、第一選択の、例えば、ゲムシタビンに基づいた、化
学療法での処置を停止した後にX線検査での進行を示した。
【0072】
本明細書で用いられる場合、用語「処置すること」は、状態の進行を抑止すること、実
質的に阻害すること、遅くすること、または逆転させること、転移性膵臓腺癌の臨床症状
を実質的に寛解させることを含む。
【0073】
特定の実施形態によれば、対象は、転移性膵臓腺癌と診断されている。
【0074】
特定の実施形態によれば、転移性膵臓腺癌は、組織学的に確認されている(以前にかま
たは新たにかのいずれかで生検が行われている)。
【0075】
特定の実施形態によれば、対象は、固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluat
ion Criteria In Solid Tumors)(RECIST)v1.1に基づいた測定可能な疾患(
≧1の測定可能な病変)を有する。
【0076】
特定の実施形態によれば、以前に照射されたエリアに位置する腫瘍病変は、そのような
病変において進行が立証されているならば、測定可能とみなされる。
【0077】
特定の実施形態によれば、対象は、組織学的に確認された(以前にかまたは新たにかの
いずれかで生検が行われた)、膵管内乳頭粘液性新生物を含む、転移性切断不能膵臓腺癌
を有する。
【0078】
特定の実施形態によれば、膵癌は、腺房細胞癌でも、膵芽腫でも、悪性嚢胞腫瘍でも、
内分泌新生物でも、扁平上皮癌でも、ファーターおよび膨大部周囲の十二指腸悪性腫瘍で
も、総胆管悪性腫瘍でもない。
【0079】
特定の実施形態によれば、対象は腸閉塞をもたない。
【0080】
特定の実施形態によれば、対象は免疫不全ではない。
【0081】
特定の実施形態によれば、対象は、本処置に先立つ2年間において全身性処置(すなわ
ち、疾患修飾剤、コルチコステロイドまたは免疫抑制薬の使用での処置)を必要とした活
発な自己免疫疾患をもたない。
【0082】
特定の実施形態によれば、対象は、ステロイドを必要とした(非伝染性)肺臓炎の病歴
も現在の肺臓炎ももたない。
【0083】
特定の実施形態によれば、対象は間質性肺疾患の病歴をもたない。
【0084】
本明細書で用いられる場合、BL-8040(以前、「BKT140」と名づけられた
)とも呼ばれる「配列番号1に記載のペプチド」は、癌の処置のための新規な治療である
、高選択性CXCR4アンタゴニストである。そのペプチドは、CXCR4と高親和性(
IC50 0.54~4.5nM)で結合して、それの機能を阻害する、芳香環でキャッ
ピングされた、14残基の環状合成ペプチドである[Tamamura H, Hiramatsu K, Kusano
S, Terakubo S, Yamamoto N, Trent JO, et al. Synthesis of potent CXCR4 inhibitors
possessing low cytotoxicity and improved biostability based on T140 derivatives
. Org Biomol Chem 2003;1:3656-3662]。
【0085】
特定の実施形態によれば、BL-8040は、水中および0.45%塩化ナトリウム(
2分の1生理食塩水)中で溶解しやすい、ホワイト~オフホワイト色の粉末合成ポリペプ
チドとして製造される。それは、BioConnection B.V.(以前のMSD
)、Kloosterstraat 9、5349 AB Oss、Netherlan
dsにより最新のGood Manufacturing Practice(cGMP
)に従って製造されている。
【0086】
PD1(CD279としても公知の、プログラム死1)は、Ig遺伝子スーパーファミ
リーの一部である55kDaのI型膜貫通糖タンパク質であり、活性化T細胞、B細胞、
NK細胞、および骨髄系細胞などのいくつかの免疫細胞の表面上に発現している。PD-
1は、膜近位の免疫受容体チロシン抑制モチーフ(ITIM)および膜遠位のチロシン依
存性スイッチモチーフ(ITSM)を含有する。
【0087】
PD-1上のITIMの存在は、この分子が、細胞質型ホスファターゼの動員による抗
原受容体シグナル伝達を減弱するように機能することを示している。
【0088】
特定の実施形態によれば、PD1タンパク質は、GenBank番号NP_00500
9に提供されるものなどのヒトタンパク質を指す。PD-1に対する2つのリガンド、P
D-L1およびPD-L2(B7-DCとしても公知)が同定されている。
【0089】
PD1の発現および機能のパターンは、細胞型に依存する。PD1発現は、エフェクタ
ーT細胞活性化後に誘導される。リガンド結合により、PD1は、T細胞活性化に関与す
るキナーゼを、例えばホスファターゼSHP2を通して、阻害し、それにより、阻害シグ
ナルを伝達する。逆に、PD1は、制御性T細胞上に高度に発現しており、その制御性T
細胞において、それは、リガンド結合により、制御性T細胞の増殖を増強し得る。PD-
1はまた、他の活性化非Tリンパ球サブセット、例えばB細胞およびNK細胞において誘
導され、そこでは、それは、リガンド結合により、それらの抗体産生および溶解活性をそ
れぞれ、制限する阻害シグナルを伝達する[Pardoll (2012) Nature Reviews Cancer 12,
252-264]。
【0090】
本明細書で用いられる場合、「抗PD-1」は、PD-1を結合して、PD-1の生物
学的機能を防止および/または阻害する抗体を指す。
【0091】
特定の実施形態によれば、PD1アンタゴニストは、PD1による免疫細胞(例えば、
T細胞、B細胞、NK細胞)へのシグナル伝達を防止および/または阻害する;それによ
り、PD1免疫抑制活性を抑制する。
【0092】
この発明に用いられる場合の用語「抗体」は、無傷分子、加えて、(抗原のエピトープ
と結合する能力がある)その機能性断片を含む。
【0093】
本明細書で用いられる場合、用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する、抗
原上の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖質側鎖な
どの分子の化学活性表面グルーピングからなり、通常、特定の3次元構造特性および特定
の電荷特性を有する。
【0094】
特定の実施形態によれば、抗体断片には、HLA拘束性様式で抗原のエピトープと結合
する能力がある、一本鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)断片、Fd、Fca
b、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、Fab発現ラ
イブラリ、またはVHおよびVLなどの単一ドメイン分子が挙げられるが、それらに限定
されない。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を実践するための適切な抗体断片には、免疫グロブリン軽
鎖(本明細書では「軽鎖」と呼ぶ)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(
本明細書では「重鎖」と呼ぶ)の相補性決定領域、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽
鎖、重鎖、Fd断片、Fv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド安定化Fv(dsF
v)、Fab、Fab’、およびF(ab’)2などの軽鎖と重鎖の両方の本質的に全部
の可変領域を含む抗体断片、または抗体のFc領域を含む抗体断片が挙げられる。
【0096】
本明細書で用いられる場合、用語「相補性決定領域」または「CDR」は、重鎖および
軽鎖ポリペプチドの可変領域内に見出される抗原結合領域を指すために交換可能に用いら
れる。一般的に、抗体は、VHのそれぞれにおいて3つのCDR(CDR H1またはH
1;CDR H2またはH2;およびCDR H3またはH3)およびVLのそれぞれに
おいて3つのCDR(CDR L1またはL1;CDR L2またはL2;およびCDR
L3またはL3)を含む。
【0097】
可変領域またはCDRを構成する特定の抗体におけるアミノ酸残基のアイデンティティ
は、当技術分野において周知の方法を用いて決定することができ、その方法には、Kab
atら(例えば、Kabat et al., 1992, Sequences of Proteins of Immunological Inter
est, 5th ed., Public Health Service, NIH, Washington D.C.参照)により定義されて
いるような配列多様性、Chothiaら(例えば、Chothia et al., Nature 342:877-8
83, 1989.参照)により定義されているような構造ループ領域の位置、Oxford M
olecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在、Accelrys(登録
商標)、Martin et al., 1989, Proc. Natl Acad Sci USA. 86:9268;およびワールドワ
イドウェブサイトwww(dot)bioinf-org(dot)uk/abs参照)
を用いたKabatとChothiaの折衷、接触定義により定義されているような利用
可能な複合体結晶構造(MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745, 1996参照)、
および「立体構造定義」(例えば、Makabe et al., Journal of Biological Chemistry,
283:1156-1166, 2008参照)などの方法が挙げられる。
【0098】
本明細書で用いられる場合、「可変領域」および「CDR」は、アプローチの組合せを
含む、当技術分野において公知の任意のアプローチにより定義される可変領域およびCD
Rを指し得る。
【0099】
軽鎖と重鎖の全部の、または本質的に全部の可変領域を含む機能性抗体断片は以下のよ
うに定義される:
(i)Fv、2つの鎖として発現した軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(V
H)からなる遺伝子操作された断片として定義される;
(ii)一本鎖Fv(「scFv」)、遺伝子融合された一本鎖分子として、適切なポリ
ペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む、遺伝
子操作された一本鎖分子;
(iii)ジスルフィド安定化Fv(「dsFv」)、遺伝子操作されたジスルフィド結
合により連結された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む、遺伝子操作された抗
体;
(iv)Fab、抗体全体を酵素パパインで処理して、無傷軽鎖、ならびに重鎖の可変ド
メインおよびCH1ドメインからなる重鎖のFd断片を生じることにより得ることができ
る、抗体分子の一価抗原結合部分を含有する、抗体分子の断片;
(v)Fab’、抗体全体を酵素ペプシンで処理し、続いて、還元することにより得るこ
とができる(2つのFab’が1つの抗体分子につき得られる)、抗体分子の一価抗原結
合部分を含有する、抗体分子の断片;
(vi)F(ab’)2、抗体全体を酵素ペプシンで処理することにより得ることができ
る、抗体分子の一価抗原結合部分を含有する、抗体分子の断片(すなわち、2つのジスル
フィド結合により一緒に保持されたFab’断片の二量体);
(vii)単一ドメイン抗体またはナノボディは、抗原に対する十分な親和性を示す、単
一のVHまたはVLドメインで構成される;ならびに
(viii)Fcab、抗体のFc領域へ抗原結合能力を導入することにより抗原結合ド
メインとして開発された、抗体のFc部分を含有する、抗体分子の断片。
【0100】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、加えてそれらの断片を作製する方法は
、当技術分野において周知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられた、Harl
ow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New
York, 1988参照)。
【0101】
抗体を作製するための例示的な方法は、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリ
ンライブラリのスクリーニング(Orlandi D.R. et al., 1989. Proc. Natl. Acad. Sci.
U. S. A. 86:3833-3837;Winter G. et al., 1991. Nature 349:293-299)、または培養
中の連続細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いる。これらには、ハイブリド
ーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン・バーウイルス(EBV
)ハイブリドーマ技術が挙げられるが、それらに限定されない(Kohler G. et al., 1975
. Nature 256:495-497;Kozbor D. et al., 1985. J. Immunol. Methods 81:31-42;Cote
RJ. et al., 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 80:2026-2030;Cole SP. et al.
, 1984. Mol. Cell. Biol. 62:109-120)。
【0102】
インビボで抗体を作製する時、標的抗原が、十分な免疫原性応答を誘発するのに小さす
ぎる場合、そのような抗原(ハプテン)は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH
)または血清アルブミン[例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)]担体などの抗原的に
中性の担体と連結することができる(例えば、米国特許第5,189,178号明細書お
よび第5,239,078号明細書参照)。ハプテンを担体に連結することは、当技術分
野において周知の方法を用いてもたらされ得る。例えば、アミノ基への直接的な連結がも
たらされ得、任意で、その後、形成されたイミノ結合を還元することができる。あるいは
、担体は、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド脱水剤などの縮合
剤を用いて連結することができる。連結をもたらすためにリンカー化合物もまた用いるこ
とができる;ホモ二官能性およびヘテロ二官能性リンカーは、Pierce Chemi
cal Company、Rockford、Illから入手できる。その後、生じた免
疫原性複合体は、マウス、ウサギなどの適切な哺乳動物対象へ注射することができる。適
切なプロトコールは、血清における抗体の産生をブーストするスケジュールに従う、アジ
ュバントの存在下での免疫原の反復注射を含む。免疫血清の力価は、当技術分野において
周知のイムノアッセイ手順を用いて容易に測定することができる。
【0103】
得られた抗血清は、直接用いることができ、またはモノクローナル抗体が、上文で記載
されているように獲得され得る。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態による抗体断片は、抗体のタンパク質加水分解により、ま
たはその断片をコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳動物細胞における発現(例えば、
チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現系)により、調製するこ
とができる。
【0105】
抗体断片は、通常の方法により、抗体全体のペプシンまたはパパイン消化により得るこ
とができる。例えば、抗体断片は、ペプシンでの抗体の酵素切断により生成することがで
き、F(ab’)2と表示される5S断片が提供される。この断片は、チオール還元剤、
および任意で、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフィドリル基に対するブロッキン
グ基を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab’一価断片を生じる。あるい
は、ペプシンを用いた酵素切断は、2つの一価Fab’断片およびFc断片を直接的に生
じる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945
号明細書および第4,331,647号明細書、ならびにそれらに含有される参考文献に
より記載されており、それらの特許は、全体として参照により本明細書に組み入れられて
いる。Porter,R.R.[Biochem. J. 73: 119-126 (1959)]もまた参照。一価軽
鎖-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化
学的、もしくは遺伝学的技術などの、抗体を切断する他の方法もまた、その断片が、無傷
抗体により認識される抗原と結合する限り、用いられ得る。
【0106】
上文で記載されているように、Fv断片は、VH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会
合は、Inbarら[Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659-62 (19720]に記載されてい
るように、非共有結合性であり得る。あるいは、それらの可変鎖は、分子間ジスルフィド
結合により連結され、またはグルタルアルデヒドなどの化学物質により架橋され得る。好
ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーにより接続されたVH鎖およびVL鎖を含む。
これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドにより接続された
VHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築するこ
とにより調製される。その構造遺伝子は、発現ベクターへ挿入され、続いて、その発現ベ
クターが、大腸菌などの宿主細胞へ導入される。その組換え宿主細胞は、2つのVドメイ
ンを架橋するリンカーペプチドを含む単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvを作製す
るための方法は、例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられている、Whitlo
w and Filpula, Methods 2: 97-105 (1991);Bird et al., Science 242:423-426 (1988)
;Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77 (1993);および米国特許第4,946,7
78号明細書により記載されている。
【0107】
抗体断片の別の型は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。
CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関心対象となる抗体のCDRをコードする遺伝
子を構築することにより得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ
連鎖反応を用いて、抗体産生細胞のRNAからその可変領域を合成することにより、調製
される。例えば、LarrickおよびFry[Methods, 2: 106-10 (1991)]参照。
【0108】
言及されているように、抗体断片は、「Fcab」と名づけられた抗体のFc領域を含
み得る。そのような抗体断片は、典型的には、抗体のCH2-CH3ドメインを含む。F
cabは、抗体の構造ループ領域において、すなわち、重鎖のCH3領域において、少な
くとも1つの改変を含むように操作される。そのような抗体断片は、例えば、以下のよう
に作製することができる:少なくとも1つの構造ループ領域(例えば、Fc領域)を含む
抗体をコードする核酸を供給し、少なくとも1つの構造ループ領域の少なくとも1個のヌ
クレオチド残基を改変し、改変型核酸を発現系に移入し、改変型抗体を発現し、発現した
改変型抗体をエピトープと接触させ、改変型抗体がエピトープと結合するかどうかを決定
する。例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられた、米国特許第9,045
,528号明細書および第9,133,274号明細書参照。
【0109】
非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来した最小配
列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、F
ab、Fab’、F(ab’).sub.2、または抗体の他の抗原結合性部分配列)の
キメラ分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基
が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの
非ヒト種のCDR(ドナー抗体)由来の残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロ
ブリン(レシピエント抗体)を含む。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレー
ムワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。ヒト化抗体はまた、
レシピエント抗体にもインポートされたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出され
ない残基を含み得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変
ドメインの実質的に全部を含み、可変ドメインにおいて、そのCDR領域の全部または実
質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、そのFR領域の全部または実質
的に全部が、ヒト免疫グロブリン共通配列のそれらである。ヒト化抗体はまた、最適には
、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリン
のそれを含む[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature
, 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]
【0110】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般的には、
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれへ導入された1個または複数のアミノ酸残基
を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、インポート残基と呼ばれることが多く、それ
は、典型的には、インポート可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的に、げっ歯類
の1つまたは複数のCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることによる
、Winterおよび共同研究者[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechm
ann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536
(1988)]の方法に従って実施することができる。したがって、そのようなヒト化抗体は、
無傷ヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって
置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号明細書)。実際には
、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基、および場合により一部のFR残基がげ
っ歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0111】
ヒト抗体もまた、ファージディスプレイライブラリを含む、当技術分野において公知の
様々な技術を用いて作製することができる[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 22
7:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]。ColeらおよびB
oernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる(Cole et al
., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) and Boer
ner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロ
ブリン座位のトランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的ま
たは完全に不活性化されているマウスへの導入により作製することができる。曝露により
、ヒト抗体産生が観察され、それは、遺伝子再編成、アセンブリ、および抗体レパートリ
ーを含む全ての点においてヒトに見られるものとよく似ている。このアプローチは、例え
ば、米国特許第5,545,807号明細書;第5,545,806号明細書;第5,5
69,825号明細書;第5,625,126号明細書;第5,633,425号明細書
;第5,661,016号明細書、ならびに以下の科学刊行物:Marks et al., Bio/Tech
nology 10,: 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994);Morrison
, Nature 368 812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (19
96);Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);およびLonberg and Huszar, I
ntern. Rev. Immunol. 13, 65-93 (1995)に記載されている。
【0112】
本発明における使用に適した抗PD1抗体は、当技術分野において周知の方法を用いて
、特に、上文での詳細な説明を踏まえて、作製することができる。あるいは、当技術分野
で認められている抗PD1抗体を用いることができる。抗PD1抗体の例は、例えば、全
体として参照により本明細書に組み入れられている、Topalian, et al. NEJM 2012、米国
特許第7,488,802号明細書;第8,008,449号明細書;第8,609,0
89号明細書;第6,808,710号明細書;第7,521,051;および第816
8757号明細書、米国特許出願公開第20140227262号明細書;第20100
151492号明細書;第20060210567号明細書;および第20060034
826号明細書、ならびに国際公開第2008156712号パンフレット;第2010
089411号パンフレット;第2010036959号パンフレット;第201115
9877号パンフレット;第2013/019906号パンフレット;第2014159
562号パンフレット;第2011109789号パンフレット;第01/14557号
パンフレット;第2004/004771号パンフレット;および第2004/0568
75号パンフレットに開示されている。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態に従って用いることができる特定の抗PD1抗体は、以下
が挙げられるが、それらに限定されない:
ニボルマブ(MDX1106、BMS-936558、ONO-4538としても公知)
、OpdivoとしてBMYにより市販されており、PD-1と結合して、PD-1のリ
ガンドPD-LlおよびPD-L2による活性化をブロックする、WHO Drug Information
, Vol. 27, No. 1, pages 68-69 (2013)に記載された構造を有する完全ヒトIgG4抗体

ピディリズマブ(CT-011、hBAT、hBAT-1としても公知であり、Cure
Techにより製造されている)、PD-1に結合するヒト化モノクローナルIgG1抗
体;
AMP-514(MEDI-0680としても公知であり、AZYおよびMedImmu
neに製造されている)、PD-1に結合するヒト化モノクローナルIgG4抗体;
ヒト化抗体h409Al l、h409A16、およびh409A17、国際公開第20
08/156712号パンフレットに記載されている。
【0114】
特定の実施形態によれば、抗PD-1は、ペムブロリズマブ(MK-3475、Key
truda、SCH 900475としても公知であり、Merckにより製造されてい
る)である。それは、PD1と結合して、PD1のそれのリガンドによる活性化をブロッ
クする、WHO Drug Information, Vol. 27, No. 2, pages 161-162 (2013)に記載された構
造を有するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。
【0115】
言及されているように、本教示は、疾患の処置のために化学療法の使用を企図する。例
には、ゲムシタビン、FOLFIRINOX、エルロチニブ、5-フルオロウラシル、パ
クリタキセル、nab-パクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、オキサリプラチ
ン、シスプラチン、FOLFOXIRI、アブラキサン、抗CD40抗体、オレゴボマブ
、ネルフィナビル、セツキシマブ、テガフル、ロイコボリン、イリノテカン、およびそれ
らの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0116】
特定の実施形態によれば、化学療法は、トポイソメラーゼ阻害剤である、イリノテカン
である。
【0117】
イリノテカンは、エステラーゼ酵素によって、より活性の強い代謝産物SN-38へ変
換される。イリノテカンという化学名は、(S)-4,11-ジエチル-3,4,12,
14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ1H-ピラノ[4’,4’:
6,7]-インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル-[1,4’ビピペリジン]
-1’-カルボキシレートである。イリノテカン塩酸塩三水和物はまた、CPT-11と
いう名前、およびCAMPTOSAR(登録商標)という商品名で呼ばれている。
【0118】
トポイソメラーゼ阻害剤は、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン類似体(例
えば、スルホン化シクロデキストリン)などの生体適合性ポリマーとコンジュゲートされ
たカンプトテシンであり得る。例えば、トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプトテシン、イ
リノテカン、SN-38、または他のトポイソメラーゼ1阻害剤化合物と化学結合したシ
クロデキストリン含有ポリマーであり得る。シクロデキストリン-カンプトテシンコンジ
ュゲート型トポイソメラーゼ1阻害剤は、毎週6mg/m2、12mg/m2、もしくは
18mg/m2の投与、または隔週12mg/m2、15mg/m2、もしくは18mg
/m2の投与を含む薬学的に許容される用量で投与することができる。カンプトテシン-
シクロデキストリンコンジュゲートトポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、「CRLX10
1」と名づけられた、カンプトテシンとのシクロデキストリン含有ポリマーコンジュゲー
ト)およびそれを調製するための関連中間体は、例えば、Greenwald et al., Bioorg. Me
d. Chem., 1998, 6, 551-562、加えて、米国特許出願第2010/0247668号、米
国特許出願第2011/0160159号、および米国特許出願第2011/01890
92号に開示されている。
【0119】
トポイソメラーゼ阻害剤はまた、イリノテカン、カンプトテシン、またはトポテカンな
どのトポイソメラーゼ阻害剤のリポソーム製剤であり得る。リポソーム型イリノテカン(
例えば、MM-398、「nal-IRI」とも呼ばれる)は、腫瘍において、細胞周期
のより感受性が高いS期中の割合がより高い細胞へ、イリノテカンおよび活性代謝産物S
N-38の持続性曝露を与える、イリノテカンの高度に安定化されたリポソーム製剤であ
る。MM-398は、様々な癌型において有望な前臨床および臨床活性を示しているリポ
ソーム型イリノテカンであり、ゲムシタビンに基づいた治療後に疾患進行した後の膵臓の
転移性腺癌を有する患者について、5-FU/LVとの併用として、米国において最近、
認可された。遊離イリノテカンと比較して、nal-IRIは、延長されたPKプロファ
イルを有し、MM-398およびSN-38の長時間の局所的腫瘍曝露を生じる。SN-
38は、腫瘍からよりも正常組織からより速くクリアリングされるため、MM-398に
対してベリパリブの投薬を遅らせることは、最大イリノテカン誘導毒性の予想ウィンドウ
が、同時的ベリパリブ毒性の非存在下で通過することを可能にすることが仮定される。し
かしながら、SN-38の腫瘍レベルは、その後のベリパリブ投薬時点で持続しているこ
とが予測され、したがって、両方の薬物が、腫瘍組織へ同時に作用して、相乗作用を維持
することの能力を維持する。
【0120】
1つの適切なリポソーム型Top1阻害剤製剤は、以前にはFDA認可前に「MM-3
98」と名づけられた、ブランド名ONIVYDE(登録商標)(イリノテカンリポソー
ム注射剤)(Merrimack Pharmaceuticals,Inc. Cam
bridge、Mass.)で入手可能なリポソーム型イリノテカン、およびONIVY
DEと生物学的同等であるリポソーム型イリノテカン製品である。ONIVYDE/MM
-398(イリノテカンリポソーム注射剤)は、静脈内用にリポソーム内に封入されたイ
リノテカンスクロソファート塩としてイリノテカンを含む。薬物製品であるリポソームは
、スクロソファート塩としてゲル化または沈澱状態でイリノテカンを含有する水性空間を
被包する、直径がおよそ110nmの、小さい単層脂質二分子膜ベシクルである。リポソ
ーム担体は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)
、6.81mg/mL;コレステロール、2.22mg/mL;およびメトキシ終端ポリ
エチレングリコール(MW 2000)-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミ
ン(MPEG-2000-DSPE)、0.12mg/mLで構成される。1mL中、バ
ッファーとして2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスル
ホン酸(HEPES)、4.05mg/mL;等張性試薬として塩化ナトリウム、8.4
2mg/mLも含有し、ONIVYDE/MM-398は、直径約100nmのリポソー
ム内に封入されたスクロソファート塩としてゲル化または沈澱状態での約80,000個
の分子のイリノテカンを含むと考えられる。
【0121】
ゲムシタビン(例えば、Gemzar(商標))、あるいは、アルブミン結合パクリタ
キセル(Abraxane)、エルロチニブ(Tarceva)、もしくはカペシタビン
(Xeloda)などの他の薬物と併用された、または放射線照射と併用された(これは
化学放射線治療と呼ばれる)ゲムシタビンに基づいた化学療法。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「ロイコボリン」は、典型的にはOnivyde(登録商
標)および5-FUと併用して投与されるフォリン酸を指す。
【0123】
5-FUは、チミジル酸シンターゼ(TS)阻害剤である。この酵素の作用を妨害する
ことは、DNA複製に必要とされるヌクレオシドであるピリミジンのチミジンの合成をブ
ロックする。チミジル酸シンターゼは、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)をメチル
化して、チミジン一リン酸(dTMP)を形成する。5-FUの投与は、dTMPの欠乏
を引き起こし、そのため、急速に分裂する癌性細胞は、チミン飢餓死による細胞死を起こ
す。フォリン酸カルシウムは、還元型フォリン酸塩の外因性供給源を提供し、したがって
、5-FU-TS複合体を安定化し、それゆえに、5-FUの細胞毒性を増強する。5-
FUは、とりわけ、ブランド名Adrucilで販売されている。
【0124】
特定の実施形態によれば、化学療法は、複数の化学療法剤、例えば、少なくとも2つ、
または少なくとも3つ、例えば、2つ、3つ、4つ、5つの化学療法剤を含む。
【0125】
特定の実施形態によれば、化学療法は、イリノテカン(例えば、リポソームに封入され
た、例えば、Onivyde(登録商標))、5-FU、およびロイコボリンを含む。
【0126】
特定の実施形態によれば、処置はオキサリプラチンを含まない。
【0127】
上文に記載されたペプチド、抗体、および化学療法(「剤」)は、それ自体で、または
それが適切な担体もしくは賦形剤と混合されている医薬組成物において、対象に投与する
ことができる。その作用物質のそれぞれが別々の製剤中に製剤化することができ、または
それらの少なくとも一部が、単一の製剤へと組み合わせることができる。
【0128】
本明細書で用いられる場合、「医薬組成物」は、生理学的に適切な担体および賦形剤な
どの他の化学的コンポーネントと共の、本明細書に記載された活性成分の1つまたは複数
の調製物を指す。医薬組成物の目的は、化合物の生物体への投与を促進することである。
【0129】
本明細書では、用語「活性成分」は、生物学的効果の原因となる作用物質、例えば、配
列番号1、ペムブロリズマブ、イリノテカン(例えば、リポソームに封入された、例えば
、Onivyde(登録商標))、5-FU、およびロイコボリンを指す。
【0130】
以下、交換可能に用いられ得る句「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容
される担体」は、生物体に有意な刺激作用を引き起こさず、投与される化合物の生物学的
活性および性質を抑止しない、担体または希釈剤を指す。アジュバントはこれらの句の下
に含まれる。
【0131】
本明細書中、用語「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に
加えられる不活性物質を指す。賦形剤の例には、非限定的に、炭酸カルシウム、リン酸カ
ルシウム、様々な糖および様々な型のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、
ならびにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0132】
薬物の製剤および投与についての技術は、参照により本明細書に組み入れられている、
“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA, lates
t editionに見出され得る。
【0133】
適切な投与経路には、例えば、経口、直腸内、経粘膜、特に経鼻、腸管内、または非経
口送達、例えば、筋肉内、皮内、皮下、および髄内注射、加えて、髄腔内、直接的脳室内
、例えば右心室腔もしくは左心室腔への、総冠動脈への、心臓内、静脈内、腹腔内、鼻腔
内、または眼内の注射が挙げられ得る。
【0134】
あるいは、医薬組成物を全身的様式よりむしろ局所的様式で、例えば、患者の組織領域
への直接的な医薬組成物の注射により、投与し得る。
【0135】
特定の実施形態によれば、本発明のペプチドまたはそれを含む医薬組成物が皮下に投与
される。
【0136】
特定の実施形態によれば、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ)またはそれを
含む医薬組成物が静脈内に投与される。
【0137】
特定の実施形態によれば、化学療法またはそれを含む医薬組成物が静脈内に投与される
【0138】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野において周知の工程により、
例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、ゲル状化、乳化、カプセル化、捕捉、
または凍結乾燥の工程を用いて、製造され得る。
【0139】
このように、本発明のいくつかの実施形態に従う使用のための医薬組成物は、薬学的に
用いることができる調製物への活性成分の処理を促進する、賦形剤および補助剤を含む1
つまたは複数の生理学的に許容される担体を用いて、通常の様式で製剤化され得る。適切
な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態の関連における使用に適した医薬組成物には、活性成分が
、意図された目的を達成するのに有効な量で含有されている組成物が挙げられる。より具
体的には、特定の実施形態によれば、治療的有効量は、障害(すなわち、転移性膵臓腺癌
)の症状を防止し、軽減し、もしくは寛解させ、または処置されることになっている対象
の生存を延ばすのに有効な活性成分の量を意味する。
【0141】
特定の実施形態によれば、本発明のペプチドまたはそれを含む医薬組成物は、0.1~
10mg/kg体重の間、0.1~2mg/kg体重の間、0.1~1mg/kg体重の
間、0.3~10mg/kg体重の間、0.3~2の範囲の用量で投与される。
【0142】
特定の実施形態によれば、BL-8040は、1~2mg/kg体重の用量で投与され
る。
【0143】
特定の実施形態によれば、BL-8040は、1.25~1.5mg/kg体重の用量
で投与される。
【0144】
特定の実施形態によれば、BL-8040は、1.25mg/kg体重の用量で投与さ
れる。
【0145】
特定の実施形態によれば、BL-8040は皮下に(SC)投与される。
【0146】
特定の実施形態によれば、抗PD-1、例えば、ペムブロリズマブが、0.001~3
0mg/kg体重の間、0.001~20mg/kg体重の間、0.001~10mg/
kg体重の間、0.001~1mg/kg体重の間、0.01~30mg/kg体重の間
、0.01~20mg/kg体重の間、0.01~10mg/kg体重の間、0.01~
1mg/kg体重の間、0.1~30mg/kg体重の間、0.1~20mg/kg体重
の間、0.1~10mg/kg体重の間、0.1~5mg/kg体重の間、1~約30m
g/kgの間、1~約20mg/kgの間、または2~約10mg/kgの間、0.5~
約30mg/kgの間、0.5~約20mg/kgの間、0.5~約20mg/kg、1
~約5mg/kg、1~約5mg/kgの範囲の用量で投与される。
【0147】
特定の実施形態によれば、抗PD-1、例えば、ペムブロリズマブは、2.85mg/
kgの用量で投与される。
【0148】
特定の実施形態によれば、抗PD-1、例えば、ペムブロリズマブは、1~500mg
、1~400mg、1~300mg、1~200mg、10~500mg、50~500
mg、100~500mg、100~300mg、または150~450mgの用量で投
与される。
【0149】
特定の実施形態によれば、抗PD-1(例えば、ペムブロリズマブ)は、静脈内(IV
)で投与される。
【0150】
特定の実施形態によれば、抗PD-1は、200mgの一定用量で投与される。
【0151】
特定の実施形態によれば、化学療法は静脈内に投与される。
【0152】
特定の実施形態によれば、化学療法は、当分野において公知の耐量に従って投与される
【0153】
特定の実施形態によれば、用量は、Onivyde(登録商標) 70mg/m、ロ
イコボリン 400 mg/m、およびフルオロウラシル 2400mg/mである
【0154】
投与のレジメンは以下の通りであり得る:
90分間に渡るIV Onivyde(登録商標)、その後、30分間に渡るIV ロイ
コボリン 400mg/m、その後、46時間に渡るIV フルオロウラシル 240
0mg/m、2週間に1回。
【0155】
特定の実施形態によれば、処置は、前記ペプチドでの単剤療法期間、続いて、前記ペプ
チド、前記抗PD-1、および前記化学療法での併用療法を含む。
【0156】
本明細書で用いられる場合、「単剤療法」は、癌を処置するための単一薬物の使用を指
す。その用語は、その疾患それ自体に関連していない症状を処置するための他の薬物療法
を用いることを排除しない。例えば、鎮痛剤および/もしくは抗ヒスタミン剤、ならびに
/または嘔吐抑制薬物療法の使用は、単剤療法の期間中でも検討される。その用語は、単
剤療法の期間の間、抗癌薬(そのようなものとして定義される)の使用を排除する。
【0157】
特定の実施形態によれば、単剤療法の期間は、最長7日間である。
【0158】
特定の実施形態によれば、単剤療法の期間は5日間(例えば、毎日)である。
【0159】
本明細書で用いられる場合、「併用療法」は、本発明の実施形態においてのように、複
数の抗癌薬(ペプチド、化学療法、抗PD-1)の使用を指す。
【0160】
特定の実施形態によれば、前記化学療法および前記抗PD-1との併用療法は、6~1
0日目に開始される。
【0161】
特定の実施形態によれば、前記化学療法および前記PD-1との併用療法は、8日目に
開始される。
【0162】
特定の実施形態によれば、併用療法は、前記化学療法を2週間ごとに繰り返し、前記抗
PD-1を3週間ごとに繰り返すものである。
【0163】
特定の実施形態によれば、ペプチドは、単剤療法期間に投与され、その後、抗体および
化学療法が投与される。
【0164】
特定の実施形態によれば、ペプチドでの併用療法は、10日目に開始され、48時間離
れた(任意で、前記化学療法から少なくとも24時間後の)連続していない日に週2回で
ある。
【0165】
特定の実施形態によれば、単剤療法は、1~5日目に毎日実施される。
【0166】
理論によって縛られるつもりはないが、細胞毒性化学療法は、腫瘍死を誘導し、腫瘍量
を低減することが示唆される。細胞毒性化学療法は、免疫原性細胞死を誘導して、新しい
腫瘍反応性T細胞クローンの活性化および増殖をもたらし得る。BL-8040は、これ
らのT細胞の腫瘍コアへの浸潤を促進する。BL-8040は、T-regおよびMDS
C(骨髄由来抑制細胞)を低下させ、したがって、免疫抑制性微小環境を低下させる。ペ
ムブロリズマブは、腫瘍内のT細胞の活性を維持/回復する。
【0167】
したがって、以下が本発明の特定の実施形態である。
【0168】
注射用ペムブロリズマブ(MK-3475)溶液は、100mg/4mLのペムブロリ
ズマブ(MK-3475)を含有する、使い捨てのI型ガラスバイアルにおいて供給され
る無菌の非発熱性水溶液である。その製品は、本質的に外来性微粒子を含まない、保存剤
なしの溶液である。
【0169】
化学療法:Onivyde(登録商標)/5-FU/LV
Onivydeは注射剤:単一用量バイアル中の、白色~黄味がかった不透明なリポソ
ーム分散体としての43mg/10mL イリノテカン遊離塩基である。
【0170】
フルオロウラシル注射剤は、2.5g/50mL(50mg/mL)フルオロウラシル
を含有するバイアルとしての薬局バルクパッケージとして供給される。
【0171】
注射用ロイコボリンカルシウムは、無菌凍結乾燥粉末として供給される。350mgバ
イアルは、保存剤を含まない。不活性成分は、350mgバイアルについて塩化ナトリウ
ム140mg/バイアルである。水酸化ナトリウムおよび/または塩酸が、製造中、pH
をおよそ8.1に調整するために用いられる。1mgのロイコボリンカルシウムは、0.
002mmolのロイコボリンおよび0.002mmolのカルシウムを含有する。
【0172】
BL-8040は、1日目から始まって毎日、5日目までの5日間の単剤療法として1
日あたり1.25mg/kgのSC注射により投与される。対象は、1日1回、午前中に
BL-8040のSC注射を受ける。鎮痛剤と共のまたは鎮痛剤なしの全身性抗ヒスタミ
ン剤での前投薬は、BL-8040に関係した局所注射部位反応および/または全身性反
応の発生を最小限するために投与される。
【0173】
特定の実施形態によれば、BL-8040注射部位は、いかなる局所注射部位反応の重
症度も最小限にするためにローテーションされる。再構成後の用量体積が2mlより高い
場合には、注射は、1回の注射あたり2ml未満であるように分割される;処置する専門
家の裁量で、単一用量投与は、分割されて、1つより多い部位へ注射され得る。特定の実
施形態によれば、その同じ指示は、処置の併用期間に適用される。
【0174】
特定の実施形態によれば、BL-8040注射が、次のBL-8040注射の投与前に
測定されたWBCの有意な増加(例えば、WBC>60,000/μL)および/または
白血球停滞の証拠がある場合、スキップされることは認識されているであろう。白血球停
滞の徴候がなく、および/または≦60,000/μLの値へのWBC減少があるという
条件で、BL-8040処置が再開される。
【0175】
単剤療法後、BL-8040は、3週間の期間のサイクルでのペムブロリズマブ、およ
び2週間のサイクルでの化学療法との併用処置の一部として投与される。特定の実施形態
によれば、投薬は以下の通りである。
【0176】
併用期間中、BL-8040は、化学療法から少なくとも24時間後の、48時間離れ
た連続していない日に週2回、午前中にSC注射として投与される。
【0177】
ペムブロリズマブでの処置は、単剤療法期間後に、併用療法の一部として始まる。併用
期間中、ペムブロリズマブは、各3週間の処置の1日目に30分間のIV注入を用いて、
200mgの用量で投与される。特定の実施形態によれば、ペムブロリズマブは、管理上
の理由で、予定された各サイクルの1日目の前後3日以内に、投与され得る。
【0178】
特定の実施形態によれば、ペムブロリズマブは、30分間のIV注入を用いて、200
mgの用量で投与される。注入ポンプの変動性を考慮すれば、-5分間から+10分間の
間の枠が許容される(すなわち、注入時間は30分間-5分間/+10分間である)。
【0179】
特定の実施形態によれば、ペムブロリズマブがBL-8040と同じ日に供給される場
合、BL-8040は、ペムブロリズマブ注入の終了から1時間(±0.5時間)後、投
与されることは認識されているであろう。
【0180】
特定の実施形態によれば、ペムブロリズマブが化学療法と同じ日に供給される場合、ペ
ムブロリズマブは、最初に投与され、その後、化学療法が投与されるべきであることは認
識されているであろう。
【0181】
特定の実施形態によれば、Onivydeは、LVおよび5-FUの前に投与される。
2週間ごとに、90分間に渡るIV注入としてOnivyde 70mg/m、その後
、30分間に渡るLV 400mg/m IV、その後、46時間に渡る5-FU 2
400mg/m IV。UGT1A128アレルについてホモ接合性の患者は、50
mg/mでのOnivyde(登録商標)で開始し、その用量は、後の時点(例えば、
35サイクル目)で忍容性が認められる場合には、増加することができる。
【0182】
図1は、本発明の実施形態による、特定の処置レジメンを示す。
【0183】
有効性試験は、本明細書に記載されているようなレジメンの実行の任意の時点、例えば
、(例えば、図1に開示されているような)治療の少なくとも1サイクル、2サイクル、
3サイクル、5サイクル、10サイクル、またはそれより多いサイクルの後で、行うこと
ができる。明確にするために、サイクルは、例えば、ペムブロリズマブの3週間サイクル
の処置スケジュールによる、併用処置を指す。
【0184】
有効性試験
画像診断評価
画像診断は、応答の評価に用いられる。例えば、CTまたはMRIが用いられ得る。そ
の同じ画像診断法が、各対象について処置の間中、用いられるべきである。
【0185】
特定の実施形態によれば、画像診断評価は、以下の時点で行うことができる:
処置への対象選択の時点
単剤療法期間の終了時、5日目
併用処置のサイクル2の終了時、およびその後、処置の1年間(サイクル17)まで3サ
イクルごと、およびその後、処置の終了まで4サイクルごと。
【0186】
特定の実施形態によれば、RECIST 1.1は、免疫療法剤の処置に関して見られ
る固有の腫瘍応答特性を説明するのに適応している。ペムブロリズマブおよびBL-80
40などの作用物質は、内因性癌特異的免疫応答を増強することにより抗腫瘍効果を生じ
得る。そのようなアプローチで見られる応答パターンは、以下のように、細胞毒性剤で見
られる応答の典型的な時間経過を超えて延長し得、腫瘍量の初期増加後または新しい病変
の出現後さえも臨床応答を顕在化することができる:
・放射線学的画像診断が最初の進行性疾患を立証したならば、下記の通り処置を継続する
という選択肢に関して、進行性疾患を確認するために4週間以上後に、腫瘍評価が繰り返
されるべきである。
・繰り返し画像診断が、ナディア(nadir)、安定な、または改善された、以前の新しい
病変(最初の進行性疾患の原因として同定された場合)および安定な/改善された非標的
病変(最初の進行性疾患の原因として同定された場合)と比較して腫瘍量の20%未満の
増加を示すならば、処置は継続/再開され得る。
・繰り返し画像診断が、下記のシナリオのリストのいずれかによる進行性疾患を確認した
ならば、対象は治療を中止される。
・腫瘍量が増加または減少しているかどうかを決定することにおいて、全ての標的病変、
加えて非標的病変が考慮される。
【0187】
進行性疾患が繰り返し画像診断において確認される場合のシナリオ:
・腫瘍量が、依然として、ナディアと比較して、20%以上増加、および少なくとも5m
mの絶対的増加のままである
・最初の進行性疾患を生じた非標的病変が悪化している(定性的)
・最初の進行性疾患を生じた新しい病変が悪化している(定性的)
・最後の評価以降の追加の新しい病変
【0188】
放射線学的進行性疾患の最初の証拠を有する対象において、繰り返し画像診断が得られ
るまで、患者を処置し続けるかどうかは、処置する医師の裁量による。この臨床的判断決
定は、パフォーマンスステータス、臨床症状、および検査データを含む対象の全体的な臨
床状態に基づくべきである。対象は、彼らが以下の基準により定義されているように臨床
的に安定であるならば、進行性疾患の確認を待ちながら、処置を受け続け得る:
・疾患進行を示す徴候および症状がない
・ECOGパフォーマンスステータスの減少なし
・疾患の急速な進行がない
・緊急の代替医療介入を必要とする重要な解剖学的部位(例えば、脊髄圧迫)において進
行性腫瘍がない
【0189】
可能ならば、対象は、進行が確認されるまで中止されるべきではない。最初の放射線学
的進行にも関わらず、処置を継続することのこの許容は、いく人かの対象が、免疫療法の
開始後最初の数カ月間、一過性の腫瘍フレアを有するが、その後、疾患応答があり得ると
いう観察を考慮している。臨床的に不安定だとみなされる対象は、進行性疾患の確認のた
めに繰り返し画像診断を受けることを必要とされない。
【0190】
医師が疾患進行を評価し、対象が臨床的に安定である(上記)場合には、対象を処置し
続け、進行性疾患を示す1回目の腫瘍画像診断から少なくとも4週間後に画像診断するこ
とは、医師の裁量による。その時、追跡腫瘍画像診断が進行性疾患を確認しているかどう
かを決定するために医師はirRECISTに従う。疾患進行を確認されなかった対象は
、彼らが上記で詳述された条件を満たしているならば、進行が確認されるまで、処置を継
続し、定期的な画像診断スケジュール間隔に従い得る。
【0191】
疾患のirRECIST評価
上記で言及されているように、腫瘍画像診断が最初の疾患進行を示す場合には、その試
験サイトは、irRECISTにより、処置を継続することを選択し、4週間以上後に画
像診断を繰り返し、腫瘍応答または確認された進行を評価し得る。
【0192】
生検分析
特定の実施形態によれば、生検は、スクリーニング時点で実施することができ、遺伝子
変異量(tumor mutation burden)(TMB)、PD-L1、およびDNAミスマッチ修
復状態について評価される。
【0193】
血液サンプリングおよび処理
試料は、安全性および有効性分析、例えば、CBC、抗薬物抗体力価、およびBL-8
040血漿濃度の決定のために収集される。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、望ましい場合には、活性成分を含有する1つ
または複数の単位剤形を含有し得る、FDA認可キットなど、パックまたはディスペンサ
ーデバイス中で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔または
プラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与についての使
用説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、ま
たは販売を規制する政府機関により指示された形で容器に付随した通知も収容され得、そ
の通知は、組成物の形状またはヒトもしくは獣医学的投与の、機関による認可を反映して
いる。そのような通知は、例えば、処方薬についての米国食品医薬品局により認可された
ラベル付け、または認可された製品添付文書であり得る。適合性の薬学的担体中に製剤化
された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記でさらに詳述されているように、調製さ
れ、適切な容器内に入れられ、指示された状態の処置についてラベルを貼られ得る。
【0195】
本明細書で用いられる場合、用語「約」は、±10%を指す。
【0196】
用語「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、
「含むこと(including)」、「有すること(having)」、およびそれらの活用形は、「
含むが、限定されない」ことを意味する。
【0197】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0198】
用語「から本質的になる」は、組成物、方法、または構造が、追加の成分、ステップ、
および/またはパーツを含み得るが、ただし、追加の成分、ステップ、および/またはパ
ーツが、特許請求された組成物、方法、または構造の基本的および新規の特性を実質的に
変化させることはない場合のみである。
【0199】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「そ
の(the)」は、文脈が明らかに別なふうに指図しない限り、複数の指示物を含む。例え
ば、用語「1つの化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含む複数
の化合物を含み得る。
【0200】
この出願を通して、この発明の様々な実施形態が範囲形式で提示される場合がある。範
囲形式での記載が、単に便宜および簡潔さのためだけであり、本発明の範囲への融通の利
かない制限として解釈されるべきではないことは理解されるべきである。したがって、範
囲の記載は、全ての可能な部分的範囲、加えて、その範囲内の個々の数値を具体的に開示
しているとみなされるべきである。例えば、1から6までなどの範囲の記載は、1から3
まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までなどの
部分的範囲、加えて、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を
具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、その範囲の幅に関係なく適用さ
れる。
【0201】
数値範囲が本明細書で示されている場合はいつでも、その示された範囲内のいかなる引
用される数値(分数または整数)も含むことを意図される。1番目の示された数と2番目
の示された数の「間の範囲であること/間の範囲」という句、および1番目の示された数
「から」2番目の示された数「まで」の「範囲であること/範囲」という句は、本明細書
で交換可能に用いられ、1番目および2番目の示された数、ならびにその間の全ての分数
および整数を含むことを意図される。
【0202】
本明細書で用いられる場合、用語「方法」は、所定の課題を達成するための様式、手段
、技術、および手順を指し、それには、化学、薬理学、生物学、生化学、および医学分野
の実践者に公知の、またはその実践者により公知の様式、手段、技術、および手順から容
易に開発されたかのいずれかの、様式、手段、技術、および手順が挙げられるが、それら
に限定されない。
【0203】
明瞭さのために別々の実施形態という関係で記載されている、本発明のある特定の特徴
はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることは認識されている。逆に
、簡潔さのために単一の実施形態という関係で記載されている、本発明の様々な特徴はま
た、別々に、または任意の適切な部分的組合せで、または本発明の任意の他の記載された
実施形態において適するように、提供され得る。様々な実施形態という関係で記載された
ある特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは機能しないことがない限り、そ
れらの実施形態の必須の特徴であるとみなされるべきではない。
【0204】
上文で描かれているような、および下記の特許請求の範囲で主張されるような本発明の
様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出すことができる
【実施例0205】
以下の実施例が参照され、それは、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を
非限定的様式で例示している。
【0206】
[実施例1]
目的
本試験の目的は、転移性膵臓腺癌を有する患者において、リポソーム型イリノテカン(
Onivyde(登録商標))/5-フルオロウラシル/ロイコボリン(5-FU/LV
)と併用した、BL8040/ペムブロリズマブの有効性および安全性を評価することで
ある。単独での、および併用で与えられた時のBL-8040の作用機構は、血液試料お
よび腫瘍組織試料を用いてさらに研究される。
【0207】
試験エンドポイント
プライマリーエンドポイント
固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)(R
ECIST) v1.1基準に従って決定された奏効率(ORRRECIST1.1
セカンダリーエンドポイント
irRECIST基準に従って決定された奏効率(ORRirRECIST
OS
PFS
RECISIT 1.1による疾患管理(DCRECIST1.1)は、部分奏効(PR
)、CR、およびSDの合計として定義される。
安全性および忍容性
TEAE
臨床検査安全性データ
バイタルサイン
ECG
身体検査(PE)
全体の、およびAEによる、早期試験中止
探索性
ベースラインからの腫瘍マーカー(CA19-9)の変化
さらなる腫瘍組織分析
【0208】
[実施例2]
試験デザイン
これは、転移性膵臓腺癌を有する患者におけるオープンラベル、単群の第IIa相試験
である。本試験は、以下の2つの期間からなる:
・単剤療法期間:1~5日目におけるBL-8040を用いる処置で、1週間
・併用療法:
Onivyde(登録商標)/5-FU/LV 2週間ごと、ペムブロリズマブ 3週間
に1回、およびBL-8040 週2回。
【0209】
ゲムシタビンに基づいた化学療法での第一選択処置後に進行している転移性膵臓腺癌を
有する対象が、登録され、5日間のBL-8040単剤療法、その後、BL-8040、
ペムブロリズマブ、および化学療法の併用処置を受ける。単剤療法期間中、適格対象は、
1~5日目に毎日、BL-8040(1.25mg/kg)のSC注射を受ける。
【0210】
8日目から、対象は、以下からなる併用期間を開始する:
・90分間に渡るIV Onivyde(登録商標) 70mg/m、その後、30分
間に渡るIV ロイコボリン(LV) 400mg/m、その後、46時間に渡るIV
フルオロウラシル(5-FU) 2400mg/m、2週間ごと
・ペムブロリズマブ 200mg 3週間に1回
・10日目から開始し、BL-8040 週2回で、および化学療法投与から少なくとも
24時間後。
【0211】
併用療法は、最長35回の処置(およそ2年間)の間、または進行、臨床的悪化、もし
くは早期終了のいずれか早い方まで、継続する。
【0212】
独立データモニタリング委員会(DMC)が、対象に福祉を保証するためにDMC特権
により、蓄積された試験データを審査する。重篤AE(SAE)は、試験を通して絶えず
モニターされる。
【0213】
対象の蓄積データの安全性審査は、最初の6人の対象が、もしかすると、ずれて12人
の対象(安全性用量制限毒性(DLT)コホート)が、単剤療法および併用処置を含む2
8日間の処置を完了した時点で、独立DMCにより実施される。安全性DLTコホートの
審査のためにDMCにより用いられるガイドラインは下記に提示されている:
・6人の対象のうちの0人が、最初のサイクルの処置の間にDLTを経験する場合には、
その併用処置は、さらなる評価のために適格とみなされ、躊躇なく募集は継続する。
・6人の対象のうちの1人が、DLTを経験する場合には、安全性DLTコホートは、1
2人の対象まで拡大される。
・6人の対象のうちの2人以上がDLTを経験する場合には、DMCは、その併用処置の
リスク/便益比を評価し、以下のうちの1つまたは複数を勧告する:1)安全性DLTコ
ホートは、12人の対象まで拡大されるべきである、2)プロトコールを修正されるべき
である、3)処置スケジュールは変更されるべきである、または4)その試験は中止され
るべきである。
・拡大された安全性DLTコホートにおいて、12人の対象のうちの2人以下がDLTを
経験する場合には、募集はその提案された完全な試験サイズまで継続することができる。
・拡大された安全性DLTコホートにおいて、12人の対象のうちの2人より多くがDL
Tを経験する場合には、DMCは、募集を停止するか、またはプロトコール修正ありもし
くはなしで募集を継続することができるかを決定する。
【0214】
有効性データは、募集を停止することなく、試験を通して評価される。評価は、全ての
入手可能なデータ、すなわち、画像診断、生検、安全性評価などの審査を含み、治験併用
処置の臨床的有用性を評価する。
【0215】
[実施例3]
試験集団
転移性切除不能PDACを有する18歳以上の男性および女性の対象がこの治験に登録
される。組み入れ/除外基準は、その特定の基準内に他に指定がない限り、スクリーニン
グ期間中に評価される。
【0216】
エントリー基準は絶対である。1つもしくは複数の組み入れ基準を満たさず、または1
つもしくは複数の除外基準を満たすいかなる対象も、本治験にエントリーすることを許可
されない。基準に変数の制限が提示されている場合には、その制限は、超えることはでき
ない。
【0217】
組み入れ基準
この治験の参加に適格であるために、対象は以下を満たさなければならない:
1.18歳以上
2.患者は、本試験にエントリーする前に、書面のインフォームドコンセントに署名しな
ければならない。
3.組織学的に確認された(以前にかまたは新しくかのいずれかで生検が行われた)、膵
管内乳頭粘液性新生物を含む、転移性切除不能膵臓腺癌。
4.サイトのチームにより決定される場合、RECIST v1.1に基づいた測定可能
な疾患(1個以上の測定可能な病変)を有する。以前に照射されたエリアに位置する腫瘍
病変は、そのような病変において進行が立証されているならば、測定可能とみなされる。
5.以前の処置ライン
第一選択のゲムシタビンに基づいた化学療法での処置を停止した後の客観的なX線検査で
の進行が実証されている。原発性転移性患者だけが、参加することが許される。膵癌につ
いて以前手術を受けた患者は、参加することが許されない。
6.腫瘍がアクセスできないとみなされない限り、またはそうでなければ、生検が患者に
とって一番の利益にはならないとみなされない限り、好ましくは肝臓転移からの、評価可
能な腫瘍組織試料を提出する意思がある。
7.最も近い過去の化学療法の毒性効果のグレード1以下(脱毛症を除く)への完全な回
復。対象が大手術または>30Gyの放射線療法を受けた場合には、彼らは、その介入由
来の毒性および/または合併症から回復していなければならない。
8.ECOGステータス≦1
9.少なくとも3カ月間の平均余命
10.下記に定義されているようなベースラインにおける十分な器官機能。全ての臨床検
査評価は、処置開始の10日以内に実施されるべきである。
a.血液学的:
・白血球(WBC)≧2,500/mm
・好中球絶対数≧1500/mm
・血小板数≧100,000/mm
・ヘモグロビン≧9g/dLまたは≧5.6mmol/L
・ヘマトクリット≧30%
b.腎機能:
・クレアチニン≦1.5×正常の上限(ULN)、またはクレアチニンレベル>1.5×
施設ULNを有する患者について、測定もしくは計算されたクレアチニンクリアランス(
糸球体濾過量[GFR])もまた、クレアチニンの代わりに用いることができ、(CrC
l)≧60mL/分。
c.肝機能:
・総ビリルビン:施設標準範囲内
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスア
ミナーゼ(AST/SGOT)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ/血清グルタミ
ン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(ALT/SGPT):≦2.5×ULN、または肝
臓転移を有する対象について≦5×ULN
d.凝固:
・INRまたはPT:≦1.5×ULN、ただし、PTまたはPTTが抗凝固剤の意図さ
れた使用の治療的範囲内にある限り、対象が抗凝固剤治療を受けている最中である場合を
除く
・aPTT:≦1.5×ULN、ただし、PTまたはPTTが抗凝固剤の意図された使用
の治療的範囲内にある限り、対象が抗凝固剤治療を受けている最中である場合を除く
11.対象は有効な避妊を用いなければならない:
a.女性対象は、妊娠不可能でなければならず、または、妊娠可能であるならば、試験薬
物の摂取前の72時間以内に陰性の尿または血清妊娠検査結果を有しなければならない。
尿検査が陽性であり、または陰性と確認することができない場合には、血清妊娠検査が必
要とされる。血清妊娠検査は、対象が適格であるために陰性でなければならない。妊娠不
可能は、以下として定義される(医学的理由以外による):
・45歳以上、2年間を超える期間、月経を生じたことがない
・子宮摘出および卵巣摘出なしに2年間より長い間の無月経、ならびに治験前(スクリー
ニング)評価での閉経後範囲内の卵胞刺激ホルモン(FSH)値
・スクリーニング時より少なくとも6週間前の子宮摘出、両側の卵巣摘出、両側の卵管開
口術、または両側の卵管結紮後。文書化された子宮摘出または卵巣摘出は、実際の手順の
医療記録で確認され、または超音波により確認されなければならない。卵管結紮は、実際
の手順の医療記録で確認されなければならず、そうでなければ、対象は、スクリーニング
来院時から始まって、試験治療の最後の用量後120日目まで、本試験の間中、2つの十
分なバリア法を使用することを進んで受け入れなければならない。
男性対象は、試験治療の最初の用量から始まって、試験治療の最後の用量後120日目
まで、十分な避妊方法を使用することに同意しなければならない。
【0218】
除外基準
対象は、以下である場合には、治験の参加から除外されなければならない:
1.腺房細胞癌、膵芽腫(pancreaticoblastoma)、悪性嚢胞性新生物、内分泌新生物、
扁平上皮癌、ファーターおよび膨大部周囲の十二指腸または総胆管の悪性腫瘍を含む、腺
癌以外の膵臓腫瘍を有する。
2.腸閉塞を有する対象。
3.全身性治療を必要とする活動性感染症を有し、または制御されない感染症を有する。
4.進行中であり、または積極的処置を必要とする、公知の追加の悪性腫瘍を有する。例
外は、治癒の可能性がある治療を受けている十分に処置された基底細胞癌もしくは扁平上
皮癌、または子宮頚部上皮内癌である。
5.試験参加を妨げると予想される基礎疾患を有する。
6.治癒目的で投与される治療に適している疾患を有する。
7.治験薬の試験に現在、参加して、試験治療を受けている最中であり、または処置の最
初の用量の4週間以内に、参加して、試験治療を受け、もしくは治験デバイスを用いたこ
とがある。
8.免疫不全と診断され、または治験処置の最初の用量前の7日以内に全身性ステロイド
治療もしくは任意の他の型の免疫抑制治療を受けている。
9.試験1日目の前の4週間以内に先行の抗癌モノクローナル抗体(mAb)を受けたこ
とがあり、または4週間より前に投与された作用物質によるAEから回復(すなわち、≦
グレード1またはベースライン時)していない。
10.試験1日目の前の2週間以内に先行の化学療法、標的小分子治療、もしくは放射線
療法を受けたことがあり、または以前に投与された作用物質によるAEから回復(すなわ
ち、≦グレード1またはベースライン時)していない。
11.本試験に先立つ2年間における、全身性処置(すなわち、疾患修飾性剤、コルチコ
ステロイド、または免疫抑制薬を用いる)を必要とした活動性自己免疫疾患。
12.試験1日目の前の4週間以内に血液製剤(例えば、血小板または赤血球)の輸血ま
たはコロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF]、GM-CSF
、または組換えエリスロポエチン)の投与を受けたことがある。
13.ステロイドを必要とした(非伝染性)肺臓炎の病歴を有し、または現在の肺臓炎。
14.間質性肺疾患の病歴を有する。
15.O飽和<92%(室内空気において)。
16.不安定狭心症、過去3カ月以内の新規発症狭心症、過去6カ月以内の心筋梗塞、お
よび現在のうっ血性心不全 ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)クラ
スIIIまたはそれ以上。試験開始前の6カ月未満に心室性不整脈もしくはコントロール
不良の血圧、または重篤な動脈血栓塞栓症を有する。
17.本治験の結果を混乱させ、対象の本治験の全期間の参加を妨げ得る任意の状態、治
療、もしくは検査異常の過去もしくは現在の証拠を有し、または、処置する治験責任医師
の意見によれば、参加するのが対象にとって一番の利益とはならない。
18.本治験の要求との連携を妨げると予想される公知の精神医学的または物質乱用障害
を有する。
19.スクリーニング来院時から始まって、治験処置の最後の用量後120日目までの治
験の計画された期間内において、妊娠中であり、または授乳中であり、または子どもを身
ごもり、もしくは父親になることを期待している。ベースラインから72時間以内に陽性
妊娠検査結果を有する女性。
20.抗PD-1剤、抗PD-L1剤、もしくは抗PD-L2剤での前治療を受けたこと
があり、または対象が以前、Merck MK-3475臨床試験に参加したことがある
場合。
21.スクリーニング時点またはスクリーニング前の任意の時点において陽性HIV試験
結果を有する。過去の陽性HIV試験結果がない患者は、地方条例により許可されないこ
とがない限り、スクリーニング時にHIV試験を受ける。
22.活動的なB型肝炎(スクリーニング時における陽性B型肝炎表面抗原(HBsAg
)検査結果を有するとして定義される)またはC型肝炎(スクリーニング時における陽性
HCV抗体試験結果または陽性HCV RNA検査結果を有するとして定義される)をわ
かっている。
23.慢性B型またはC型肝炎の病歴をわかっている。
24.試験治療の計画された開始時点の30日以内に生ワクチンを受けたことがある。生
ウイルスを含有しない季節性インフルエンザワクチンは許可される。
25.活動的な中枢神経系(CNS)転移および/または癌性髄膜炎をわかっている。注
意:以前に処置された脳転移を有する対象は、それらが安定であり(治験処置の最初の用
量前の少なくとも4週間の間、各評価について同一の画像診断モダリティー、MRIかま
たはコンピュータ断層撮影(CT)スキャンのいずれかを用いる画像診断による進行の証
拠がなく、任意の神経学的症状がベースラインへ戻ってきている)、新しいまたは拡大し
た脳転移の証拠を生じておらず、および治験処置前の少なくとも14日間の間、ステロイ
ドを用いていないという条件で、参加し得る。この例外は、臨床安定性に関わらず、排除
される癌性髄膜炎を含まない。
26.ペムブロリズマブおよび/またはそれの賦形剤のいずれかに対して重度の過感受性
(≧グレード3)を有する。
27.処置を必要とする臨床的腹水を有する。
【0219】
対象同定
それぞれの同意した対象は、スクリーニング時点から試験の終わりまで、または対象が
本試験を終了するまでに生じる全ての手順について対象を識別するために用いられる固有
の対象番号を受け取る。各対象は、1つの対象番号だけを割り当てられる。対象番号は、
異なる対象に再使用されてはいけない。
【0220】
複数回、スクリーニングされる任意の対象は、最初のスクリーニング来院時に割り当て
られた最初の対象番号を保持する。単一の対象が、1つより多い対象番号を割り当てられ
ることはあり得ない。
【0221】
スクリーニング不適格
スクリーニング期間中の任意の段階でエントランス基準を満たすことができない対象は
、スクリーニング不適格と定義される。
【0222】
対象の治療または評価からの対象の除去、交替、または早期離脱
対象は、任意の時点において、およびさらなる処置の実施に影響を与えることなく、試
験薬および/または彼らの試験の参加を自由に中止することができる。治験責任医師は、
任意の対象を、もしその対象が離脱することを要求したならば、またはもし試験における
継続が結果として、その対象に有意な安全性リスクを生じると予想されることが決定され
たら、試験から離脱させなければならない。患者は、CRの場合、早期に(すなわち、2
年間経たぬうちに)試験処置を終了することができる。試験薬を中止した対象は、彼らが
試験の参加を同様に継続するという同意を撤回しない限り、最長5年間の間、試験の生存
追跡に参加し続ける。
【0223】
ベースライン来院の前または試験薬のいずれかの最初の注射の前に試験から離脱した対
象は、交替させられる。
【0224】
対象が、安全性以外の任意の理由でDLT評価期間中に治験を中止する場合には、交替
対象は、DLT評価のための目標数に達するために適切と判断されたならば、登録され得
る。進行という理由でDLT期間中に治験を中止した対象には、DLT評価について検討
されない;しかしながら、彼らは、有効性分析について、進行したとしてカウントされる
。交替対象は、固有の処置/番号を割り当てられる。
【0225】
試験薬の対象の使用は、以下の理由のいずれかにより中止され得る:
・毒性
・死亡
・規制機関の要求
・治験依頼者の要求
・プライマリーケアの医師または治験責任医師の要求:治験責任医師が、試験からの離脱
がその対象にとって一番の利益になると決定する
・対象による同意の撤回
・疾患進行
・妊娠となった女性対象
・追跡不能
・対象が、試験手順/試験プロトコールを順守しない
・その他
【0226】
離脱の取り扱い
対象が試験から離脱した場合には、その理由を決定するためにあらゆる努力がなされる
べきである。この情報は、対象の症例報告書(CRF)に記録される。時期尚早に試験か
ら離脱した全ての対象は、原因を問わず、全ての早期中止試験来院手順、安全性追跡来院
を行い、さらに、生存について長期追跡を継続するべきである。
【0227】
試験薬に関係し得ると治験責任医師が考えるAEにより離脱が引き起こされる場合には
、そのAEが、要求があれば、地元のガイドラインの通り、施設内治験審査委員会/独立
倫理委員会(IRB/IEC)に報告される。
【0228】
全てのAEは、治験責任医師の臨床的判断に従って、予後が決定され、または安定化す
るまで適切な医学的管理で追跡される。全ての追跡情報は、AEの回復まで対象のCRF
に記録される。
【0229】
CR後の試験治療の中止
試験薬の中止は、以下であるCRの確定を達成した対象について検討され得る:
・併用療法で少なくとも24週間、処置されている、および
・最初のCRが宣言された日付を越えて、少なくとも2処置サイクルの併用療法を受けた
【0230】
[実施例4]
処置期間
処置期間は、以下の2つの期間で構成される:
・単剤療法期間:BL-8040が1~5日目に毎日投与される。
・併用療法:
化学療法:Onivyde(登録商標)/5-FU/LV 2週間ごと、ペムブロリズ
マブ 3週間に1回、およびBL-8040 週2回。
【0231】
単剤療法
この期間は、ベースライン後すぐに、好ましくは、ベースライン評価の日に始まり、1
週間続く。この期間中、BL-8040は、1~5日目の毎日投与される。全身性抗ヒス
タミン剤での前投薬は、BL-8040に関係した局所注射部位反応および/または全身
性反応の発生を最小限にするために推奨される。
【0232】
1週間目(1~5日目)手順
1.各来院時のAEの審査
2.前投薬および同時投薬
3.1~5日目の毎日の投与前、ならびに1日目および5日目における投与から4時間(
±2時間)後の、鑑別を伴うCBC血液像
4.1日目および5日目における、投与前および投与から4時間(±2時間)後のFAC
Sによる免疫表現型検査のための血液
5.5日目(+最長3日、ただし、併用期間の開始前)における特定PE
6.バイタルサイン 5日目のBL-8040の投与前。投与後評価は、治験責任医師決
定により収集され得る。
7.12誘導ECG
8.5日目(+最長3日、ただし、併用期間の開始前)におけるCA 19-9およびC
EAについての血液
9.1日目および5日目における投与前および投与から4時間(±2時間)後のCXCR
4およびPD-1発現についての血液
10.5日目(+最長4日、ただし、併用期間の開始前)における評価のための、転移か
らの腫瘍組織収集(生検)
11.5日目(+最長4日、ただし、併用期間の開始前)における腫瘍画像診断評価
12.5日目(+最長3日、ただし、併用期間の開始前)におけるバイオマーカー相関性
試験のための細胞、DNA、およびRNAについての血液
13.5日目(+最長3日、ただし、併用期間の開始前)におけるバイオマーカー相関性
試験のための血清(免疫細胞)
【0233】
併用療法
サイクルは、ペムブロリズマブの処置の3週間サイクルスケジュールにより定義される
【0234】
8日目(+最長4日)から、対象は、以下での処置からなる併用期間を開始する:
・90分間に渡るIV Onivyde(登録商標) 70mg/m、その後、30分
間に渡るIV LV 400mg/m、その後、46時間に渡るIV 5-FU 24
00mg/m、2週間ごと。
・IV ペムブロリズマブ 200mg、3週間に1回。
・10日目に始まる、SC BL-8040 1.25mg/kg、週2回で、化学療法
投与から少なくとも24時間後。
【0235】
併用療法は、進行、臨床的悪化、または早期終了まで継続する。
【0236】
全身性抗ヒスタミン剤での前投薬は、BL-8040に関係した局所注射部位反応およ
び/または全身性反応の発生を最小限にするために推奨される。
【0237】
以下の評価は、サイクルごと(時間枠は、他に指定がない限り、±3日である)に行わ
れるべきである:
1.全ての来院時における前投薬および同時投薬の審査。
2.全ての来院時におけるAEの審査。
3.サイクル2から始まる、1日目における投与前の特定PE。
4.バイタルサインは、各サイクルの1日目において試験薬投与前に評価され、投与後の
バイタルサイン評価は、治験責任医師決定により収集され得る。
5.体重は、併用処置期間中の各週の始まりにおいてその週の最初の注射の前に評価され
る。BL-8040用量は、それに応じて調整される。
6.各サイクルの1日目におけるECOGパフォーマンスステータス。
7.各サイクルの1日目における試験薬投与前の化学パネル。
8.処置投与:
i.BL-8040投与 週2回。
ii.各3週間サイクルの1日目におけるペムブロリズマブ投与。
iii.Onivyde(登録商標)/5-FU/LV 2週間ごと。
【0238】
以下の評価は、特定のサイクル(時間枠は、他に指定がない限り、±3日である)で行
われるべきである:
1.鑑別を伴うCBC血液像
a.サイクル1:
・WBCの評価に関して、BL-8040の最初の3回の用量について投与前(BL-8
040注射前のCBCに関して、枠は許容されない)。さらなる評価は、必要とみなされ
た場合に実施されるべきである。
・WBCの評価に関して、BL-8040の最初の3回の投与について注射から4時間(
±2時間)後
b.サイクル2およびそれ以降
・WBCの評価に関して、各処置サイクルにおける各BL-8040の投与前(BL-8
040注射前のCBCに関して、枠は許容されない)。さらなる評価は、必要とみなされ
た場合に実施されるべきである。
2.サイクル1の1日目における投与前、および併用処置から4時間(±2時間)後の1
2誘導ECG
3.サイクル1の1日目、およびその後、サイクル2から始まって2サイクルごとの1日
目における、投与前のT3(総量または遊離)、遊離T4、およびTSH
4.妊娠検査 - サイクル2に始まって2サイクルごとに血清または尿
5.サイクル2に始まって2サイクルごとの1日目におけるCA 19-9およびCEA
についての血液
6.FACSによる免疫表現型検査のための血液:サイクル1の15日目およびサイクル
2の21日目
7.サイクル1の15日目およびサイクル2の21日目におけるCXCR4およびPD-
1発現についての血液
8.バイオマーカー相関性試験のためのDNAおよびRNAについての血液:
a.細胞、DNA、およびRNA相関性試験のための血液は、サイクル1/2回目のサイ
クルの化学療法より前の15日目、およびサイクル3に始まって2サイクルごとの21日
目において、収集される。
9.腫瘍画像診断評価は、サイクル2の終わり、およびその後、処置の1年間(サイクル
17)まで3サイクルごと、およびその後、サイクル34の終わり/終了来院(2年間の
処置)まで4サイクルごとに行われる。
10.バイオマーカー相関性試験のための血清は、サイクル1/2回目のサイクルの化学
療法より前の15日目、およびサイクル3に始まって2サイクルごとの21日目において
、収集される(免疫細胞、受容体占有率、CA 19-9)。
【0239】
より具体的な実施形態は以下に概要を示されている:
BL-8040
BL-8040での治験処置は、1日目から始まって毎日5日目まで1週間、単剤療法
として1日あたり1.25mg/kgのSC注射により投与される。対象は、1日1回、
BL-8040のSC注射を午前中に受ける。鎮痛剤と共のまたは鎮痛剤なしでの、全身
性抗ヒスタミン剤での前投薬は、BL-8040に関係した局所注射部位反応および/ま
たは全身性反応の発生を最小限するために推奨される。
【0240】
BL-8040注射部位は、いかなる局所注射部位反応の重症度も最小限にするために
ローテーションされる。再構成後の用量体積が2mlより高い場合には、注射は、1回の
注射あたり2ml未満であるように分割されるべきである;治験責任医師の裁量で、単一
用量投与は、分割されて、1つより多い部位へ注射され得る。その同じ指示は、試験の併
用期間に適用される。
【0241】
BL-8040注射は、次のBL-8040注射の投与前に測定されたWBCの有意な
増加(WBC>60,000/μL)および/または白血球停滞の証拠の場合、スキップ
される。BL-8040処置は、白血球停滞の徴候がない、および/またはWBCの値≦
60,000/μLへの減少があるという条件で再開する。
【0242】
単剤療法後、BL-8040は、3週間のサイクルにおけるペムブロリズマブでの併用
処置の一部として投与される。投与は以下の通りである:
・併用期間中、BL-8040は、化学療法から少なくとも24時間後の、48時間離れ
た連続していない日に週2回、SC注射として午前中に投与される。
【0243】
採血および他の評価は、BL-8040投与前に完了されるべきである。BL-804
0での処置は、処置を再開した際に、そのプロトコール内で定義されているのと同じスケ
ジュールでそれが継続する、すなわち、欠けた用量の埋め合わせをしないという条件で、
遅らせることができる。2回より多い連続した用量が単剤療法期間中にスキップされ、ま
たは併用期間中に3回より多い連続した用量(1週間の処置)がスキップされる場合、治
験責任医師は、リスク便益を評価し、対象が試験参加を継続できるかどうかを決定する。
中断の理由は、対象の試験記録に記述されるべきである。
【0244】
ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブでの処置は、単剤療法期間後に、併用療法の一部として始まる。併用
期間中、ペムブロリズマブは、全ての手順および評価が完了した後に、各3週間の処置サ
イクルの1日目における30分間のIV注入を用いる200mgの用量として投与される
。ペムブロリズマブは、管理上の理由により、予定された各サイクルの1日目の前後3日
までに投与され得る。
【0245】
ペムブロリズマブは、30分間のIV注入を用いる200mgの用量として投与される
。注入タイミングをできる限り30分間近くであることを目標とするようにあらゆる努力
がなされるべきである。しかしながら、注入ポンプの変動性を考慮すれば、-5分間から
+10分間の間の枠は許される(すなわち、注入時間は、30分間-5分間/+10分間
である)。
【0246】
ペムブロリズマブがBL-8040の同じ日に供給される場合、BL-8040投与は
、ペムブロリズマブ注入の終わりから1時間後(±0.5時間)である。ペムブロリズマ
ブが化学療法の同じ日に供給される場合、ペムブロリズマブが最初に投与され、その後、
化学療法が投与されるべきである。
【0247】
投与中断は、試験治療に関係していない内科的/外科的事象または物流の理由(すなわ
ち、選択的手術、関係のない内科的事象、対象の休暇、休日)の場合、許される。対象は
、予定された中断から3週間以内に試験治療に戻らされるべきである。中断の理由は、対
象の試験記録に記述されるべきである。
【0248】
Onivyde/5-FU/LV
Onivydeは、LVおよび5-FUの前に投与されるべきである。2週間ごとに、
90分間に渡るIV注入としてOnivyde 70mg/m、その後、30分間に渡
るLV 400mg/m IV、その後、46時間に渡る5-FU 2400mg/m
IV。UGT1A128アレルについてホモ接合の患者は、Onivyde(登録
商標)を50mg/mで開始し、その用量は、その後のサイクルにおいて、忍容性が認
められる場合には、増加させることができる。
【0249】
[実施例5]
安全性追跡来院
終了/早期終了来院後、安全性追跡来院は、最後の試験薬の最後の用量からおよそ30
日後(または新しい抗癌処置の開始前の7日以内、いずれか早い方)に、実施される。対
象は、安全性追跡来院まで、またはグレード0~1への毒性の解消もしくはAE安定化ま
で、いずれか遅い方まで、AEについてモニターされる。SAEは、試験終了から90日
以内に発生した場合に、および妊娠は、試験終了から120日以内に発生した場合に、ま
たはどちらの場合においても、新しい抗癌治療が開始されたならば、停止後30日以内の
場合、報告されるべきである。
【0250】
以下の評価は、この来院中に実施される:
1.AEの審査
2.前および同時の薬物療法を審査する
3.試験後の受けた抗癌治療
4.鑑別を伴うCBC血液像
5.化学パネル
6.T3(総量または遊離)、遊離T4、TSH
7.12誘導ECG
【0251】
生存の長期追跡
全ての対象は、中止の理由(すなわち、早期終了[ET]または2年後)を問わず、彼
らの生存状態を評価するために12週間(±4週間)ごとに電話で連絡を受ける。この追
跡は、彼らが試験の参加を継続するという同意を撤回しない限り、最長5年間、継続する
。これらの通話の中で、対象は、とりわけ、疾患状態および試験後の受けた抗癌治療につ
いての最新情報を提供するように求められる。なお、全ての日付が収集され、CRF内に
入力される。
【0252】
予定外の来院
予定外の来院は、対象の要望で、または治験責任医師により必要とみなされた場合、試
験中いつでも実施され得る。予定外の来院についての日付および理由は記録される。AE
モニタリングおよび同時の薬物療法の記録は、治験責任医師により実施される。他の手順
および評価は、治験責任医師により必要とみなされた場合に、完了され、それには、臨床
安全性検査、バイタルサイン、および身体検査が挙げられる(しかし、それらに限定され
ない)。
【0253】
安全性評価
安全性評価は、対象により報告された、または治験責任医師により観察された臨床徴候
および症状のベースラインからの変化に基づき、それには、AE、同時の薬物使用、処置
コンプライアンス、忍容性(例えば、AEによるドロップアウト)、バイタルサイン、E
CG、身体検査、および臨床検査の安全性評価が挙げられる。
【0254】
有害事象(AE)
有害事象(AE)は、試験の間中、全ての試験来院時に評価される。
【0255】
予定された評価のための来院と来院の間に発生するいかなる新しいAEも、治験責任医
師に知らされて、対象の医療ファイルにおいて適切なCRFページに記録されるべきであ
る。
【0256】
AEは、最新の国立癌研究所の有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Co
mmon Terminology Criteria for Adverse Events)(NCI-CTCAE)バージョン(
現在のバージョン4.03)に従って報告およびグレード付けされ、最新バージョンの医
薬品規制用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA)を
用いるデータ管理によりコード化される。
【0257】
同時薬物療法
同時薬物療法の使用は、ベースラインから全ての試験来院時まで記録される。
【0258】
バイタルサイン、身長、および体重
バイタルサインは、スクリーニング時、ベースライン時、および単剤療法処置の5日目
における投与前に測定される。投与後の評価は、治験責任医師により必要とみなされた場
合に実施され得る。併用期間中、バイタルサインは、各サイクルの1日目において試験薬
投与前に評価される。さらなる評価は、治験責任医師の決定により実施され得る。
【0259】
バイタルサインには、標準実施の通り、最低5分間の休憩後の血圧、脈拍、口腔体温、
飽和、および呼吸数が挙げられる。AEの定義を満たす、試験薬の開始後に気付いた
重要な所見は、AE CRFモジュールに記録されなければならない。
【0260】
身長はスクリーニング時のみ記録される。
【0261】
体重は、ベースライン時、および各週(併用期間)の始まりにおいて、BL-8040
用量を計算するために投与前に、記録される。
【0262】
心電図
ECGは、スクリーニング来院およびベースライン来院(1日目の投与前)時に実施さ
れる。
【0263】
併用期間中、ECGは、サイクル1/1日目において投与前、および最後の試験薬が投
与されてから4時間(±2時間)後、実施される。ECGは、その上、終了来院時、およ
び任意の安全性追跡来院時に実施される。
【0264】
追加のECGは、治験責任医師の裁量で実施される。対象は、その測定が行われる前の
少なくとも10分間、休憩するべきである。
【0265】
ECGプリントアウトは、治験責任医師または被指名人により評価され、署名され、日
付を付けられ、ソースドキュメンテーションファイルにファイルされる。臨床的意義の可
能性がある所見が治験責任医師または被指名人により検出された場合、心臓専門医が最終
的な解釈、および必要ならば、適切な処置について助言を求められるべきである。全ての
連絡および診断は、ソースドキュメンテーションファイルにファイルされるべきである。
治験責任医師/治験責任医師の被指名人/地元の心臓専門医は、そのECG所見が、臨床
的意義があるかどうかを決定する責任がある。全ての異常は、安定化または解消されるま
で、密接にモニターされるべきである。臨床的意義がある所見は、AE CRFページ内
に報告されるべきである。
【0266】
身体検査および特定身体検査
完全PEは、スクリーニング時および中止の時点に行われる。PEには、以下の身体系
の評価が挙げられる:頭、首、甲状腺、呼吸器、心血管、眼科的、胃腸管、肝臓、内分泌
/代謝性、筋骨格系、皮膚科的、リンパ節、神経系、および適切な場合、試験スケジュー
ルに示されているような他の身体系。
【0267】
特定PEは、単剤療法期間の5日目(±3日、ただし、併用の最初の用量の前)、およ
びサイクル2から始まって各サイクルの1日目(±3日、ただし、サイクル2の併用の最
初の用量の前)に行われる(図1)。特定PEの間、薬物に関係している可能性があるA
Eを同定すること、およびこれらのAEを効果的に管理することに特に注意を集中させる
べきである。
【0268】
PEについての情報は存在しなければならない。試験薬の開始前に存在する重要な所見
は、関連病歴/現在の健康状態CRFに含まれなければならない。AEの定義を満たす試
験薬の開始後に生じた重要な所見は、AE CRFモジュールに記録されなければならな
い。
【0269】
臨床検査安全性評価
下記に列挙された全ての臨床検査安全性評価は、スクリーニング時、ならびに特定の評
価に依存して、単剤療法および併用処置の間の異なる時点において、地元の検査室により
実施される。投与前の臨床検査手順は、投与前の4時間以内に行われ得る。
【0270】
安全性臨床検査サンプリングは、以下に列挙されたパラメータを含む。
【0271】
血液学、化学、尿検査、およびその他についての臨床検査は、表2に特定化されている
【0272】
【表2】
【0273】
該当する場合、血清妊娠検査は、ベースライン時点で収集され、地元の検査室で実施さ
れる。
【0274】
試験薬投与後に生じる安全性臨床検査異常は、臨床的に必要であれば、その値が正常に
戻るまで、または病因が決定されて、その状態が安定とみなされるまで、繰り返される。
治験責任医師により臨床的に重要であると考えられる異常な臨床検査結果は、AE CR
FモジュールにおいてAEとして報告される。検査異常は、以下の場合を除き、AEとみ
なされない:
・介入が必要とされる
・用量の変化が必要とされる(減少される、中止される、中断される)
・他の処置/治療が必要とされる
・他の診断と関連している
【0275】
[実施例6]
有効性評価
画像診断評価
画像診断は、応答の評価のために用いられる。例えば、CTまたはMRIが用いられ得
る。同じ画像診断法が、各対象について処置を通して用いられるべきである。
【0276】
特定の実施形態によれば、画像診断評価は以下の時点に行うことができる:
・処置への対象選択の時点
・単剤療法期間の終わり、5日目
・併用処置期間のサイクル2の終わり、およびその後、処置の1年間(サイクル17)ま
で3サイクルごと、およびその後、処置の終わりまで4サイクルごと。
【0277】
特定の実施形態によれば、免疫療法剤の処置に関して見られる固有の腫瘍応答特性を説
明するためにRECIST 1.1が適用される。ペムブロリズマブおよびBL-804
0などの作用物質は、内因性癌特異的免疫応答を増強することにより抗腫瘍効果を生じ得
る。そのようなアプローチに関して見られる応答パターンは、細胞毒性剤に関して見られ
る典型的な応答の時間経過を超えて延長し得、腫瘍量の最初の増加後または新しい病変の
出現後さえも臨床応答を顕在化することができる:
・放射線学的画像診断が最初の進行性疾患を実証した場合には、腫瘍評価は、以下の通り
、処置を継続するという選択肢をもって、進行性疾患を確認するために、4週間以上後に
繰り返されるべきである。
・繰り返し画像診断が、ナディア、安定な、または改善した過去の新しい病変(最初の進
行性疾患の原因として同定された場合)および安定/改善した非標的病変(最初の進行性
疾患の原因として同定された場合)と比較して腫瘍量の20%未満の増加を示す場合には
、処置は継続/再開され得る。
・繰り返し画像診断が、下記に列挙されたシナリオのいずれかによる進行性疾患を確認し
た場合には、対象は治療を中止される。
・腫瘍量が増加または減少したかどうかを決定することにおいて、全ての標的病変、加え
て非標的病変が考慮される。
【0278】
進行性疾患が繰り返し画像診断において確認される場合のシナリオ:
・腫瘍量が、ナディアと比較して、依然として、20%以上増加および少なくとも5mm
絶対的増加のままである。
・最初の進行性疾患を生じた非標的病変が悪化している(質的)
・最初の進行性疾患を生じた新しい病変が悪化している(質的)
・最後の評価以降の追加の新しい病変
【0279】
放射線学的進行性疾患の最初の証拠を有する対象において、繰り返し画像診断が得られ
るまで対象を処置し続けるかどうかは、処置する医師の裁量による。この臨床判断決定は
、パフォーマンスステータス、臨床症状、および臨床検査データを含む、対象の全体的な
臨床状態に基づくべきである。対象は、彼らが以下の基準により定義されているように臨
床的に安定である場合には、進行性疾患の確認を待ちながら、処置を受け続け得る:
・疾患進行を示す徴候および症状がない
・ECOGパフォーマンスステータスの低下がない
・疾患の急速な進行がない
・緊急の代わりの医療介入を必要とする臨界解剖学的部位(例えば、脊髄圧迫)において
進行性腫瘍がない
【0280】
可能ならば、対象は、進行が確認されるまで中止されるべきではない。最初の放射線学
的進行にも関わらず、処置を継続することのこの許容は、いく人かの対象が、免疫療法の
開始後最初の数カ月間、一過性の腫瘍フレアを有するが、その後、疾患応答を有し得ると
いう観察を考慮している。臨床的に不安定だとみなされる対象は、進行性疾患の確認のた
めに繰り返し画像診断を受けることを必要とされない。
【0281】
医師が疾患進行を評価し、対象が臨床的に安定である(上記)ならば、対象を処置し続
け、進行性疾患を示す1回目の腫瘍画像診断から少なくとも4週間後に画像診断すること
は、医師の裁量による。その時、追跡腫瘍画像診断が進行性疾患を確認しているかどうか
を決定するために医師はirRECISTに従う。疾患進行を確認されなかった対象は、
彼らが上記で詳述された条件を満たしているならば、進行が確認されるまで、処置を継続
し、定期的な画像診断スケジュール間隔に従い得る。
【0282】
疾患のirRECIST評価
上記で言及されているように、腫瘍画像診断が最初の疾患進行を示すならば、そのサイ
トは、処置を継続することを選択し、4週間以上後に画像診断を繰り返し、irRECI
STにより腫瘍応答または進行の確認を評価し得る。
【0283】
計画生検分析
特定の実施形態によれば、生検は、スクリーニング時に実施することができ、腫瘍変異
量(TMB)、PD-L1、およびDNAミスマッチ修復状態について評価される。
【0284】
血液サンプリングおよび処理
試料は、安全性および有効性分析、抗薬物抗体力価、ならびにBL-8040血漿濃度
の決定のために収集される。
【0285】
[実施例7]
治験製品のアイデンティティ
BL-8040
BL-8040は、癌の処置のための新規な治験治療としてBiokine Ther
apeutics,Ltd.およびBioLineRx Ltd.により共同開発された
高選択性CXCR4アンタゴニストである。
【0286】
ホワイト~オフホワイト色の粉末合成ポリペプチドであるBL-8040は、水中およ
び0.45%塩化ナトリウム(2分の1生理食塩水)中で溶解しやすい。それは、Bio
Connection B.V.(以前のMSD)、Kloosterstraat 9
、5349 AB Oss、Netherlandsにより、最新のGood Manu
facturing Practice(cGMP)に従って製造されている。
【0287】
ペムブロリズマブ
注入用ペムブロリズマブ(MK-3475)溶液は、100mg/4mLのペムブロリ
ズマブ(MK-3475)を含有する、使い捨てのI型ガラスバイアルにおいて供給され
る無菌の非発熱性水溶液である。その製品は、本質的に外来性微粒子を含まない、保存剤
なしの溶液である。
【0288】
化学療法:Onivyde(登録商標)/5-FU/LV
Onivydeは注射剤:単一用量バイアル中の、白色~黄味がかった不透明なリポソ
ーム分散体としての43mg/10mL イリノテカン遊離塩基である。
【0289】
フルオロウラシル注射剤は、2.5g/50mL(50mg/mL)フルオロウラシル
を含有するバイアルとしての薬局バルクパッケージとして供給される。
【0290】
注射用ロイコボリンカルシウムは、無菌凍結乾燥粉末として供給される。350mgバ
イアルは、保存剤を含まない。不活性成分は、350mgバイアルについて塩化ナトリウ
ム140mg/バイアルである。水酸化ナトリウムおよび/または塩酸が、製造中、pH
をおよそ8.1に調整するために用いられる。1mgのロイコボリンカルシウムは、0.
002mmolのロイコボリンおよび0.002mmolのカルシウムを含有する。
【0291】
[実施例8]
転移性膵臓腺癌(PDAC)を有する患者におけるペムブロリズマブおよび化学療法と
併用したBL-8040の安全性および有効性を評価するための第2a相治験
背景
PDACについての現在の処置選択肢は限られている。PD-1/PD-L1アンタゴ
ニストは他の癌型において有望な結果を示しているが、このアプローチは、PDACにお
いて無効であった。COMBAT試験のコホート1において、BL-8040(CXCR
4阻害剤)およびペムブロリズマブの二重併用は、安全であり、第二選択(2L)患者に
おいて有望な7.5カ月間の全生存(OS)中央値を示した(Hidalgo, A., et al., A P
hase 2a Trial to Assess the Safety and Efficacy of BL-8040 and Pembrolizumab in
Patients with Metastatic Pancreatic Adenocarcinoma (PDAC). Annals of Oncology, 2
018. 29: p. viii400-viii441)。BL-8040は、グランザイムBを発現するエフェ
クターCD8細胞のレベルを増加させることにより、加えて、骨髄由来抑制細胞(MDS
C)のレベルを減少させることにより、腫瘍微小環境(TME)を改変する。
【0292】
これらの励みとなる結果、加えて、BL-8040、ペムブロリズマブ、および化学療
法の併用を支持する前臨床データに基づいて、本試験は、BL-8040、ペムブロリズ
マブ、および化学療法(Onivyde/5-FU/LV)で構成される併用群(コホー
ト2)を含むように拡大された。この拡大コホートにおけるBL-8040の前臨床有効
性および安全性データは以下に提供されている。
【0293】
方法
第2a相試験、コホート2、処置レジメンは、5日間のBL-8040単剤療法、その
後、Onivyde/5-FU/LV 2週間ごと、ペムブロリズマブ 3週間ごと、お
よびBL-8040 週2回の併用処置からなる。適格基準は、ゲムシタビンに基づいた
化学療法での第一選択処置後、進行している、実施例3に記載されているような、測定可
能な疾患を有する転移性PDAC対象を含む。
【0294】
結果
2019年9月の時点で、22人の患者が登録され、そのうち15人が評価可能である
(すなわち、併用の少なくとも1回の用量を受け、ベースライン後のCTを有する)。年
齢中央値68歳、ECOG≦1、および60%男性。15個のSAEが10人の患者によ
り報告された。2人の対象は、SAEにより中止された。評価可能な集団についてのRE
CISTv1.1による最良の応答(実施例6)は、4人の部分奏効(PR)および8人
の安定な疾患(SD)の患者、15人のうち病勢コントロールを有する合計12人の対象
を示した。PFSおよびOSの中央値はまだ到達していなかった。特に、SDおよびPR
を有する全ての患者は、CA 19-9の最初の増加、その後、減少を生じた。腫瘍縮小
は、CA 19-9の一過性増加中に始まった。
【0295】
結論
BL-8040、ペムブロリズマブ、および化学療法の三重併用での進行中のCOMB
AT試験コホート2からの予備データは、有望な全奏効率(ORR)(4/15)および
病勢コントロール率(DCR)(12/15)を示している。
【0296】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されているが、多くの代替物、改変、および
バリエーションが当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求
の範囲の精神および広い範囲内にある全てのそのような代替物、改変、およびバリエーシ
ョンを包含することが意図される。
【0297】
この明細書に言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊
行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に示されて、参照により本明細書に組み入
れられているかのようにそれと同じ程度で、全体として参照により本明細書へ組み入れら
れている。加えて、この出願における任意の参考文献の引用または同定は、そのような参
考文献が本発明の先行技術として利用できるという承認として解釈されるべきではない。
セクション見出しが用いられる範囲内において、それらは、必ずしも限定として解釈され
るべきではない。
【0298】
加えて、この出願の任意の優先権文書は、全体として参照により本明細書に組み入れら
れている。
【0299】
【表3-1】
【0300】
【表3-2】
【0301】
【表3-3】
【0302】
【表3-4】
図1
【配列表】
2024161518000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載のペプチド、
抗PD-1抗体、および、
化学療法剤もしくは作用物質のそれぞれの治療的有効量を含み、
必要とする対象において、切除可能な膵癌もしくは切除可能境界である膵癌を処置することにおける使用のためのものである医薬組成物であって、
前記処置が第一選択処置である、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗PD-1抗体がペムブロリズマブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化学療法剤もしくは作用物質が、イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、およびロイコボリン(LV)を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記イリノテカンがリポソームに封入されており、および任意で、前記イリノテカンがOnivyde(登録商標)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ペプチドが皮下に(SC)投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ペプチドが1.25mg/kgの用量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗PD-1抗体が200mgの用量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記併用療法が、前記化学療法剤もしくは作用物質を2週間ごとに繰り返すものであるか、または、前記抗PD-1抗体を3週間ごとに繰り返すものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ペプチドでの前記併用療法が、10日目に開始され、48時間離れた連続していない日に週2回である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記単剤療法が1~5日目に毎日実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記併用療法が、35回の処置まで継続する、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記治療が前記ペプチドでの単剤療法期間、それに続く、前記ペプチド、前記抗PD-1抗体、および前記化学療法剤もしくは作用物質を用いる併用療法を含み、
前記化学療法剤もしくは作用物質および前記抗PD-1抗体での前記併用療法は、8日目に開始される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0298
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0298】
加えて、この出願の任意の優先権文書は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
本願は以下の態様にも関する。
(1)
必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置する方法であって、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量を前記対象に投与すること、それにより、前記転移性膵臓腺癌を処置することを含む、方法。
(2)
必要とする対象において転移性膵臓腺癌を処置することにおける使用のための、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量。
(3)
転移性膵臓腺癌の処置における使用のための、配列番号1に記載のペプチド、抗PD-1、および化学療法のそれぞれの治療的有効量を含む製造品。
(4)
前記抗PD-1がペムブロリズマブである、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(5)
前記化学療法が複数の化学療法剤を含む、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(6)
前記化学療法が、イリノテカン、フルオロウラシル(5-FU)、およびロイコボリン(LV)を含む、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(7)
前記イリノテカンがリポソームに封入されている、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(8)
前記イリノテカンがOnivyde(登録商標)である、前記(1)~(7)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(9)
前記ペプチドが皮下に(SC)投与される、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量または製造品。
(10)
前記ペプチドが1.25mg/kgの用量で投与される、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(11)
前記抗PD-1が静脈内に(IV)投与される、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(12)
前記抗PD-1が200mgの用量で投与される、前記(1)~(11)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(13)
前記化学療法が静脈内に投与される、前記(1)~(12)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(14)
前記処置が、前記ペプチドでの単剤療法期間、それに続く、前記ペプチド、前記抗PD-1、および前記化学療法での併用療法を含む、前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(15)
前記化学療法および前記抗PD-1での前記併用療法が8日目に開始される、前記(1)~(14)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(16)
前記併用療法が、前記化学療法を2週間ごとに繰り返し、前記抗PD-1を3週間ごとに繰り返すものである、前記(14)または(15)に記載の方法または治療的有効量。
(17)
前記ペプチドでの前記併用療法が、10日目に開始され、48時間離れた連続していない日に週2回である、前記(15)に記載の方法または治療的有効量。
(18)
前記単剤療法が1~5日目に毎日実施される、前記(1)~(17)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(19)
前記処置がさらに、抗ヒスタミン剤、および任意で、鎮痛剤を含む、前記(18)に記載の方法または治療的有効量。
(20)
前記併用療法が、35回の処置まで継続する、前記(1)~(19)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(21)
前記対象が、前記転移性膵臓腺癌に対する第一選択処置後である、前記(1)~(20)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(22)
前記第一選択処置が、ゲムシタビンに基づいた化学療法を含む、前記(21)に記載の方法または治療的有効量。
(23)
前記転移性膵臓腺癌が切除不能である、前記(1)~(21)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(24)
前記転移性膵臓腺癌が膵管腺癌である、前記(1)~(21)のいずれか一項に記載の方法または治療的有効量。
(25)
前記転移性膵管腺癌が膵管内乳頭粘液性新生物を含む、前記(24)に記載の方法または治療的有効量。