(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161525
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】生体吸収性眼球薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A61F9/007 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137655
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2021185479の分割
【原出願日】2017-04-20
(31)【優先権主張番号】62/325,378
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511280858
【氏名又は名称】ドーズ メディカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Dose Medical Corporation
【住所又は居所原語表記】229 Avenida Fabricante,San Clemente,CA 92672,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド アレクサンダー ハイツマン
(72)【発明者】
【氏名】ケニス マーティン カリー
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド スティーヴン ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダブリュー.バーンズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬物を所望の眼内標的組織に標的放出及び/又は制御放出するように構成された移植可能な眼内薬物送達デバイス、並びに眼疾患及び障害の処置のためのこうしたデバイスの移植方法及び使用方法を開示する。
【解決手段】デバイスの実施形態は薬物送達眼移植片に関する。眼移植片は、近位端及び遠位端を有する外殻を含み、外殻は内部管腔を画定する形状である。薬物は、内部チャンバ内に位置することができる。ある実施形態においては、眼移植片の一部、ほとんど、又は本質的に全体が生分解性材料でできている。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の眼に移植するように構成された眼移植片であって、
生侵食性材料を含み、内部管腔を画定する形状である、細長い外殻、
前記内部管腔内に位置し、ヒドロゲルを含む、内部プラグ、及び
前記内部管腔内に位置し、薬物を含む、薬物貯蔵器、
を含み、
前記薬物が、前記外殻を通る前記薬物の溶出を制御する前記内部プラグの少なくとも一部を通過するように構成された、眼移植片。
【請求項2】
前記薬物貯蔵器が前記内部プラグに隣接して位置する、請求項1に記載の眼移植片。
【請求項3】
前記内部プラグが前記内部管腔の最遠位端に隣接して位置する、請求項1又は2に記載の眼移植片。
【請求項4】
前記細長い外殻が、前記外殻の遠位端の近くに位置する1個以上のオリフィスを含み、前記オリフィスが、前記ヒドロゲルを通って前記移植片から出て行く前記薬物の溶出を制御するように構成された、請求項1~3の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項5】
前記外殻の少なくとも一部を包囲する被膜を更に含む、請求項1~4の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項6】
近位障害物を更に含む、請求項1~5の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項7】
前記近位障害物が前記外殻の近位端のエンドキャップを形成する、請求項6に記載の眼移植片。
【請求項8】
前記近位障害物が前記外殻内の前記薬物貯蔵器の近位側近くに位置する、請求項6に記載の眼移植片。
【請求項9】
前記外殻が、前記薬物のすべて又はほぼすべてが前記移植片の前記内部管腔から溶出した後に生侵食し始めるように構成された、請求項1~8の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項10】
前記外殻が、前記移植片の前記内部管腔から溶出する前記薬物の少なくとも一部が前記内部管腔に残留している間に生侵食し始めるように構成された、請求項1~8の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項11】
前記移植片が流体流路を更に含む、請求項1~10の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項12】
前記移植片が対象の眼内移植用に構成され、前記流体流路が眼液を生理学的流出空間に排出する、請求項1~11の何れか一項に記載の眼移植片。
【請求項13】
前記ヒドロゲルが前記内部管腔内の前記薬物の少なくとも一部を包囲する、請求項1に記載の眼移植片。
【請求項14】
前記移植片が、送達デバイスの23~25ゲージ針又はカニューレの管腔内に位置する、請求項1に記載の眼移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
【0002】
本願は、その全内容を参照により本明細書に援用する2016年4月20日に出願された米国特許仮出願第62/325378号の利益を主張するものである。
【0003】
本開示は、薬物を所望の眼内標的組織に標的放出及び/又は制御放出するように構成された移植可能な眼内薬物送達デバイス、並びに眼疾患及び障害の処置のためのこうしたデバイスの使用方法に関する。ある実施形態においては、本開示は、特に、眼内に移植された薬物送達デバイスを用いた眼疾患の処置にも関し、デバイスの一部又は本質的に全体が生分解性材料でできている。
【背景技術】
【0004】
哺乳動物の眼は、光を受容することができる専用感覚器であり、視像を受け取ることができる。眼の外傷、感染、変性、不規則な血管、及び炎症性問題を含む、多数の病態によって、視像を認知する個体の能力が損なわれ、完全に失われることがある。網膜の中心部は、斑として知られる。斑は、中心視、微細な可視化、及び色の弁別を担い、数ある病態の中でも、(滲出型又はドライ型)加齢黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫、特発性脈絡膜血管新生又は強度近視黄斑変性症に冒されることがある。
【0005】
眼内圧異常などの他の病態が視覚に影響することもある。米国人の約2パーセントは緑内障に罹っている。緑内障は、広範な臨床症状及び病因を包含するが、眼内圧上昇によって統一される眼疾患の一群である。緑内障は、視神経円板上に見られる視神経の病変を生じ、対応する視野欠損をもたらす。視野欠損は、処置しないと失明することがある。眼内圧上昇は、緑内障に付随する処置可能な唯一の危険因子であり、したがって眼内圧の低減は、すべての緑内障における主要な処置目標であり、薬物療法、外科療法又はそれらの組合せによって行うことができる。
【0006】
眼の多くの病態は、病態の症候を改善するのに必要な十分な量及び/又は期間に治療薬を眼に投与するのが困難であるために進行する。しばしば、薬物の吸収及び処理は、薬物が眼球標的部位に到達する前に起こる。この代謝のため、全身投与は、眼球標的部位において治療レベルに達するように望ましくないほど高い濃度の薬物を必要とすることがある。これは、非実用的で高価なだけでなく、副作用の発生率を高めるおそれもある。局所投与は、角膜を通した拡散が限定的であること、又は涙の作用による局所投与薬物の希釈によって、制約を受ける可能性がある。角膜を通過する薬物でも、眼液の流れ、及び全身循環への移行によって、許容できないほど眼から欠乏することがある。したがって、治療薬を制御された様式及び標的様式で眼に投与する手段は、他の送達経路の限界に立ち向かうものであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示した種々の実施形態は、薬物送達眼移植片に関する。眼移植片は、近位端及び遠位端を有する外殻を含み、外殻は内部管腔を画定する形状である。薬物は、内部チャンバ内に位置することができる。
【0008】
幾つかの実施形態においては、近位端、遠位端を有する細長い外殻であって、内部管腔を画定する形状である外殻と、内部管腔内に配置された少なくとも1種の第1の薬物とを含む、薬物送達眼移植片又はデバイスを提供する。外殻は生分解性ポリマーを含む。外殻は、好ましくは、管状又は円筒状である。
【0009】
本開示によれば、記載した移植片のいずれも生分解性ポリマー材料の殻を含むことができ、生分解性ポリマー材料としては、ホモポリマー、ポリマーブレンド、及びランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどのコポリマーが挙げられる。
【0010】
移植片及びその部品の製造に適切な生分解性材料としては、以下、すなわち、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルカルボナート)(PEC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(DL-乳酸)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸コ-グリコリド(PLGA)などのコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)(PHB)、3-ヒドロキシバレラートと共重合されたPHB(PHBV)、ポリ(プロピレンフマラート)(PPF)、ポリ(酸無水物)(PAA)、ポリ(ブチレンスクシナート)(PBS)、ポリ(エチレンスクシナート)(PES)、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)(PHA)、ポリ(シアノアクリラート)(PCA)、ポリアセタール、ポリオルトエステル(POE)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)を含めたポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、並びに上記のブレンド、コポリマー及び組合せ、並びに修飾多糖、例えば、デンプン、セルロース及びキトサンを含む、ただしそれらに限定されない天然ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0011】
幾つかの実施形態においては、デバイスの長さは2~5mmを含めた1~7mmとすることができる。一部の実施形態においては、デバイスは、移植片の遠位端の近くで細くなる先端部を有する。別の実施形態においては、デバイスの長さは、約15~約18mm、約18~約21mm、約21~約23mm、約23~約25mm、約25mm~約27mm、約27~約30mm及びそれらの重複範囲を含む、約15~30mmとすることができる。一部の実施形態においては、デバイスの外殻は、柔軟及び/又は湾曲状とすることができる。
【0012】
幾つかの実施形態においては、眼移植片を対象の眼に移植することができる。移植片は、生侵食性(bioerodible)材料を含み、内部管腔を画定する形状である細長い外殻、内部管腔内に位置し、ヒドロゲルを含む内部プラグ、及び内部管腔内に位置し、薬物を含む薬物貯蔵器を含むことができる。薬物は、外殻を通る薬物の溶出を制御する内部プラグの少なくとも一部を通過することができる。
【0013】
幾つかの実施形態においては、薬物貯蔵器は、内部プラグに隣接して位置する。幾つかの実施形態においては、内部プラグは内部管腔の最遠位端に隣接して位置する。幾つかの実施形態においては、細長い外殻は、外殻の遠位端の近くに位置する1個以上のオリフィスを含み、オリフィスは、ヒドロゲルを通って移植片から出て行く薬物の溶出を制御するように構成される。幾つかの実施形態においては、移植片は、外殻の少なくとも一部を包囲する被膜を含む。
【0014】
幾つかの実施形態においては、移植片は近位障害物を含む。近位障害物は、外殻の近位端のエンドキャップを形成することができる。幾つかの実施形態においては、近位障害物は、外殻内の薬物貯蔵器の近位側近くに位置する。
【0015】
幾つかの実施形態においては、外殻は、薬物のすべて又はほぼすべてが移植片の内部管腔から溶出した後に生侵食し始めるように構成される。幾つかの実施形態においては、外殻は、移植片の内部管腔から溶出する薬物の少なくとも一部が内部管腔に残留している間に生侵食し始めるように構成される。幾つかの実施形態においては、移植片は、更に流体流路を含む。幾つかの実施形態においては、移植片は対象の眼内移植用に構成され、流体流路は眼液を生理学的流出空間に排出する。幾つかの実施形態においては、ヒドロゲルは、内部管腔内の薬物の少なくとも一部を包囲する。
【0016】
眼移植片は、眼移植片を眼組織に固定又は固着するように構成された1個以上の保持機能部を含むことができる。こうした保持突出部(retention protrusion)は、場合によっては、1個以上の隆起部、リブ及び/又は逆とげ(barb)を含む。一部の実施形態においては、保持突出部は柔軟である。
【0017】
本明細書に記載の移植片は、毛様体筋、毛様体腱、毛様体線維帯、小柱網、虹彩、虹彩根部、水晶体皮質、水晶体上皮などの眼内組織に、水晶体嚢、強膜、強膜岬、脈絡膜に若しくはその中に、又はシュレム管に若しくはその中に、場合によっては固定される(例えば、移植片を持続的又は過渡的に固着、固定又は装着させる任意の機構又は要素)。
【0018】
眼移植片は、毛様体上腔(supraciliary space)、脈絡膜上腔、シュレム管、前房、硝子体液又は水晶体嚢内に位置するように構成することができる。眼移植片は、毛様体上腔、脈絡膜上腔、シュレム管、前房、硝子体液又は水晶体嚢内に位置することができる。
【0019】
幾つかの実施形態においては、外殻はほぼ均一な厚さを有する。幾つかの実施形態においては、外殻は中に含まれる薬物に対して透過性又は半透過性であり、それによって第1の薬物の全溶出の少なくとも約5%、10%、15%、20%又はそれ以上が第1の厚さを有する殻の部分を通して起こり得る。一部の実施形態においては、薬物の全溶出のすべて又はほぼすべてが外殻を通して起こる。別の実施形態においては、外殻は、デバイス内に含まれる薬物に対して不透過性又はほぼ不透過性であり、それによって2%未満、1%未満又はほぼゼロを含む5%未満の溶出が外殻を通して起こる。
【0020】
一部の実施形態においては、外殻は、外殻の大部分からの薬物放出速度が異なる1つ以上の領域を含む。こうした領域は、外殻の大部分に比べて薬物放出を増加又は減少させることができる。こうした領域は、例えば、薬物放出を遅延させる被膜の有無、又は薬物放出速度を変えるようにより薄い若しくはより厚いことを特徴とすることができる。殻厚さの減少した領域を有する実施形態においては、こうした領域を、アブレーション、延伸、エッチング、研磨及び成形の1つ以上を含む、任意の好適な手段によって形成することができる。この領域は、らせんパターン、パッチ、リング及び/又はバンドを含む、移植片の上又は周囲の任意のパターンとすることができる。
【0021】
一部の実施形態においては、外殻の壁は、少なくとも1個の開口部、オリフィス又は穴を含む。一部の実施形態においては、外殻の壁は、無作為に、又はパターン化された配列で、配置することができる複数の開口部、オリフィス又は穴を含む。外殻の壁の開口部、オリフィス又は穴は、開いていてもよく、又は1つ以上の被膜若しくは膜で覆うことができる。デバイスが外殻を通る複数の開口部、オリフィス又は穴を含む一部の実施形態においては、複数の少なくとも一部は、薬物に対して透過性の膜で閉鎖することができる。
【0022】
幾つかの実施形態においては、薬物(例えば、タンパク質治療用物質)の溶出は、管壁を通して設けられた(上述したように)オリフィス、別の開口部、穴、チャネル、孔若しくは好ましくは微小孔を通る、又は管の端部のキャップ、プラグ若しくは膜を通る、デバイスからの拡散によって調節される。こうした溶出調節機能部の直径は、タンパク質薬物分子の通過を可能にするように十分大きく構成される。幾つかの実施形態においては、これらの機能部は、直径が少なくとも約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3μm(以上)である。幾つかの実施形態においては、管壁、キャップ、プラグ又は膜の厚さは、約10μm~約2mm、例えば、約10μm~約50μm、約50~約100μm、約100~約150μm、約150~約200μmの範囲、及び上記の間の任意の範囲とすることができる。一部の好ましい実施形態においては、範囲は、約50~約200μmである。
【0023】
幾つかの実施形態においては、溶出機能部(開口部、穴、チャネル、孔、好ましくは微小孔など)を通る薬物の溶出又は拡散は、一般に、任意の時点においてフィックの式に従い、溶出速度は、デバイスの内部からデバイスの外部の濃度勾配に比例する。幾つかの実施形態においては、溶出機能部の合算開口面積及びタンパク質薬物の拡散係数が速度を規定し、同時に、溶出速度は溶出機能部の長さ及び湾曲に逆比例する。
【0024】
溶出機能部は、実施形態によっては、レーザー機械加工によって、又は生体吸収性マトリックスにブレンドされた適切な粒径の高溶解性材料の抽出によって、又は生体吸収性粉体を焼結することによって、形成することができる。
【0025】
溶出機能部は、眼からのクリアランス速度と合わせて、眼におけるタンパク質薬物の治療濃度をもたらす、タンパク質薬物の溶出速度を与えるように設計される。こうした溶出速度は、約0.1~約20μg、約0.5~約20μg、約1.0~約20μg、約5.0~約20μg、約10.0~約20μg、約10.0~約15μg、約7~約15μg、約2~約10μg、好ましくは2~6μg/週を含む、約0.1~約20μg/週の範囲とすることができる。上記範囲の間の別の量も幾つかの実施形態においては達成される。
【0026】
幾つかの実施形態においては、移植片の生体吸収性材料の表面侵食は自浄機能を与え、溶出機能部が遮断されないように、付着タンパク質、多糖、細胞又は他の生体材料をデバイスから落とすことができる。
【0027】
本明細書に開示した一部の実施形態においては、被膜、好ましくは生分解性であるポリマー被膜を形成する。一部の実施形態においては、2つ以上のポリマー被膜が外殻の表面に位置し、一部のこうした実施形態においては、各被膜は(実質的に非生分解性であることを含めて)眼液中で独特の生分解速度を有する。一部の実施形態においては、被膜は、薬物の放出速度を変え(増加又は減少)、及び/又は被膜で覆われた材料の生分解速度を変える(増加又は減少)。
【0028】
デバイスの実施形態は、1種以上の薬物を殻のみを通して、1個以上のキャップ(薬物放出エレメントを含む)のみを通して、殻及び/又はキャップ膜中の1個以上の開いた開口部若しくは打ち抜き穴を通して、又は上記の任意の組合せを通して、溶出することができる。
【0029】
幾つかの実施形態においては、内部管腔の少なくとも最遠位約5mm~約10mmに薬物を収容する。
【0030】
幾つかの実施形態においては、移植片からの第1の薬物の溶出は、少なくとも、2年、3年、4年、5年又はそれ以上を含む、少なくとも1年の期間続く。
【0031】
本明細書に記載の一部の実施形態では、ゼロ次又は擬ゼロ次動力学で移植片から薬物が溶出する。
【0032】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の移植片は、場合によっては、更に、眼の第1の場所から1つ以上の別の場所に眼液を輸送し、それによって眼内圧を低下させるように構成された管腔を含む。一部のこうした実施形態においては、外殻は2個の管腔を含み、それらは同軸又は並行していてもよく、一方の管腔は少なくとも1種の薬物を含むための内部管腔であり、他方の管腔は、前房から脈絡膜上腔、シュレム管などの眼中の別の場所への眼房水の送達を促進する導管として役立ち、眼内圧を低下させる。
【0033】
幾つかの実施形態においては、デバイスは、1種以上の薬物を放出又は溶出するためのキャップ構造体を含む。一部の実施形態においては、キャップは、本明細書では薬物放出エレメントと称する特別なタイプのキャップである。キャップは、デバイスの外殻の近位端又は遠位端の一方又は両方に配置することができる。幾つかの実施形態は、1個又は2個のキャップ又は薬物放出エレメントを含む。エレメントの配置に応じて、デバイスは薬物を前側、後側又は両方に送達することができる。したがって、デバイスは、前眼部及び/又は後眼部の症状を処置することができる。
【0034】
幾つかの実施形態においては、移植片は、外殻の近位端との可逆又は不可逆的相互作用のために構成されたキャップを含む。キャップは少なくとも1個の開口部を含み、一部の実施形態においては複数の開口部が設けられる。1個以上の開口部の総表面積は、特定の一実施形態においては、移植片からの第1の薬物の所望の溶出速度に基づいて選択することができる。
【0035】
幾つかの実施形態においては、外殻の近位端にキャップを配置すると、キャップと外殻の近位端の間に膜を保持することができる。一部の実施形態においては、キャップは、プレスばめ(press-fit)キャップであり、別の実施形態は圧着キャップ、ねじ込みキャップ又は別のタイプのキャップを採用する。幾つかの実施形態においては、膜は、少なくとも1種の第1の薬物及び眼液(及び/又は眼液の水成分)に対して透過性である。幾つかの実施形態においては、(キャップが配置されると)膜は少なくとも1個の開口部を閉鎖し、少なくとも1種の第1の薬物の溶出は膜を通してのみ起こる(例えば、キャップによる膜の圧縮は、意図しない薬物放出の他の経路への移植片を封じる働きをする)。幾つかの実施形態においては、遠位に配置されたシールは、管腔内に位置して、内部管腔と眼腔(ocular space)の間の流体連通を膜を介したものだけに制限する。幾つかの実施形態においては、膜と開口部の寸法(例えば、表面積)の選択された組合せは、第1の活性薬剤の特に望ましい溶出速度に合わせて調整される。幾つかの実施形態においては、膜の厚さが約50~約100ミクロンである。
【0036】
眼移植片は、本明細書では内側管腔又は内部管腔とも称する、内部チャンバから薬物を放出するように構成された、本明細書では薬物放出エレメントと称する特別なタイプのキャップを含むことができる。薬物放出エレメントは、少なくとも1個の開口部を含む遠位シール部材、少なくとも1個の開口部を含む近位シール部材、及び遠位シール部材と近位シール部材の間で圧縮された膜を含むことができる。保持部は、薬物放出エレメントを外殻に対して所定の位置に保持するように構成することができる。薬物放出エレメントは、薬物が遠位シール部材の少なくとも1個の開口部を通り、圧縮膜を通り、近位シール部材の少なくとも1個の開口部を通り、外殻の近位端から出るように構成することができる。
【0037】
保持部は、近位シール部材とかみ合うように折り曲げることができる1個以上のタブを含むことができる。一部の実施形態においては、1個以上のタブは、膜とかみ合うように折り曲げることができる。外殻は1個以上の溝を含むことができ、保持部は、1個以上の溝中に延在することができ、近位シール部材の近位に位置することができる。保持部は、横の長さが、保持部に隣接する内部チャンバの内径を超え、保持部に隣接する外殻の外径以下とすることができる。一部の実施形態においては、内部チャンバは棚を含むことができ、遠位シール部材を棚に設置することができる。
【0038】
キャップ又は薬物放出エレメントの膜はエチレン酢酸ビニルを含むことができ、エチレン酢酸ビニルは酢酸ビニル濃度を約10%~約30%とすることができるが、本明細書で述べるように、他の濃度を使用することもできる。生分解性である膜を含む、別の膜を使用することができる。膜は、生分解性又は非生分解性被膜を有することもできる。眼移植片は、圧縮状態の膜の厚さが約75ミクロン~約125ミクロンであるように、及び/又は膜が非圧縮状態から約20ミクロン~約40ミクロンの量だけ圧縮されるように、構成することができるが、本明細書で述べるように、別の厚さ及び圧縮量を使用することもできる。
【0039】
薬物放出エレメントは、溶出速度が約15ナノグラム/日~約35ナノグラム/日とすることができるが、別の溶出速度を使用することもできる。眼移植片は、約40ナノリットル~約150ナノリットルの体積の薬物を保持するように構成することができるが、別の体積を使用することもできる。
【0040】
幾つかの実施形態においては、外殻内に弁が存在し、弁は少なくとも1種の第1の薬物が内側管腔中に進むことができるように可逆的に開閉することができる。一部の実施形態においては、外殻の最遠位端に配置された弁が存在し、弁は、少なくとも1種の第1の薬物が内部管腔から移植片の外側の標的部位に通過できるように可逆的に開閉することができる。
【0041】
本明細書に開示した移植片の種々の実施形態は、薬物の前方(又は、一部の実施形態においては後方)溶出を制限する内部管腔内に配置された1個以上の障害物、及び/又は流体が移植片を近位から遠位方向に通過できるように配置された一方向弁を含む障害物を含むことができる。内部管腔内に配置された1個以上の障害物を有する一部の実施形態においては、1個以上の障害物は、目標の効果のために前房及び/又は後房への1種以上の薬物の同時(又は逐次)溶出を促進することができる。
【0042】
幾つかの実施形態においては、第1の薬物は、ベータアドレナリン受容体拮抗物質である。ベータアドレナリン受容体拮抗物質は、選択的ベータアドレナリン拮抗物質又は非選択的ベータアドレナリン受容体拮抗物質とすることができる。幾つかの実施形態においては、選択的ベータアドレナリン受容体拮抗物質は、ベタキソロール及びレボベタキソロール並びにそれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、非選択的ベータアドレナリン拮抗物質は、チモロール、レボブノロール、カルテオロール、メチプラノロール及びそれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、少なくとも1種の薬物が使用され、一部の実施形態においては、少なくとも1種の第1の薬物がチモロールである。
【0043】
一部の実施形態においては、薬物を油として処方することができる。
【0044】
一部の実施形態においては、薬物は、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、プロスタグランジン阻害剤、ベータアドレナリン受容体拮抗物質又はそれらの組合せを含むことができるが、本明細書で述べるように、別の薬物を使用することもできる。一部の実施形態においては、薬物として、トラボプロスト及び/又はそのプロドラッグを挙げることができる。別の実施形態においては、薬物として、アルプロスタジル及び/又はその改変体若しくはプロドラッグ体が挙げられる。
【0045】
さらに、幾つかの実施形態においては、第2の薬剤を場合によっては用意することができる。幾つかの実施形態においては、第2(又は第3など)の薬剤は、第1の薬剤と組み合わせると、相乗効果をもたらす。別の実施形態においては、第2の薬剤は、第1の薬剤に付随する1つ以上の副作用を軽減する。
【0046】
一部の実施形態においては、1種以上の薬物が、ミセル若しくは小胞構造内に含まれ、又は薬物を既知の速度で放出するように構成された生分解性ポリマーと調合される。
【0047】
幾つかの実施形態においては、第1の薬物は1個以上のミクロ錠剤として存在し、ミクロ錠剤は、密度が約0.7g/cc~約1.6g/cc、長さと直径のアスペクト比が約2.8~3.6、及び/又は短軸が約0.28~0.31mm、長軸が約0.8~1.1mmである。幾つかの実施形態においては、第1の薬物は、1個以上のミクロ錠剤の総重量の少なくとも70重量%の量で存在する。幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、表面積と体積の比が約13~17である。幾つかの実施形態においては、ミクロ錠剤は、内径約23~25ゲージの導管を通るミクロ錠剤の通過を可能にする寸法である。
【0048】
更なる実施形態においては、ミクロ錠剤は、場合によっては、ミクロ錠剤からの第1の薬物の放出を調節する被膜で覆われる。一部の実施形態においては、被膜はポリマー被膜である。
【0049】
本明細書では、眼内標的組織における眼の症状又は障害を処置する方法であって、側眼部の開口部を前眼房に接続すること、薬物送達眼移植片に結合した送達デバイスを開口部を通して前眼房を横切り前進させること、薬物送達眼移植片を眼組織に挿入すること、移植片を眼中の所望の場所に留置すること、及び送達デバイスを眼から引き抜くことを含む方法も提供する。薬物は、眼の症状又は障害を処置するのに十分な量で移植片から溶出する。一部の実施形態においては、治療効果は、少なくとも1年から5年までの期間得られる。
【0050】
一部の実施形態においては、デバイスは、1つ以上の薬物放出領域の少なくとも1つ又はキャップ構造体が眼内標的に近接するように配置される。幾つかの実施形態においては、眼内標的は後眼房内にある。幾つかの実施形態においては、眼内標的は、斑、網膜、視神経、毛様体及び眼内脈管構造からなる群から選択される。幾つかの別の実施形態においては、眼内標的は前眼房内にある。
【0051】
幾つかの実施形態においては、薬物送達眼移植片を眼組織に挿入することは、ぶどう膜強膜路、脈絡膜上腔、前房、水晶体嚢、硝子体液及びシュレム管からなる群から選択される眼の一部に移植片の少なくとも一部を配置することを含む。
【0052】
ここで、本開示のこれら及び他の特徴、態様及び効果を、実施形態の図面を参照して記述する。実施形態は、本開示を説明するものであって、本開示を限定するものではない。当業者は、説明のための実施形態に示した特徴を、明示的に示してはいないが予見される様式と本明細書に開示された様式の両方で組合せ可能であることを容易に理解するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2A】本明細書に開示した実施形態に係る分路を内蔵した更なる薬物送達移植片を示す図である。
【
図2B】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達移植片上の保持機能部の一実施形態の断面図である。
【
図3A】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達移植片を示す図である。
【
図3B】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達移植片を示す図である。
【
図3C】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達移植片を示す図である。
【
図3D】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達移植片を示す図である。
【
図4A】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達移植片の一実施形態の断面図である。
【
図4B】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達移植片の一実施形態の断面図である。
【
図4C】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達移植片の一実施形態の断面図である。
【
図5A】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達デバイスを示す図である。
【
図5B】本明細書に開示した実施形態に係る種々の薬物送達デバイスを示す図である。
【
図6A】本明細書に開示した幾つかの実施形態に係る細長い送達デバイスの種々の機能部を示す図である。
【
図6B】本明細書に開示した幾つかの実施形態に係る細長い送達デバイスの種々の機能部を示す図である。
【
図6C】本明細書に開示した実施形態に係る送達デバイスの一実施形態を示す図である。
【
図6D】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達デバイスの移植構造を示す図である。
【
図7】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達デバイスを移植する装置を示す図である。
【
図8】本明細書に開示した実施形態に係る薬物送達デバイスを移植する装置を示す図である。
【
図9】移植片を含む送達デバイスを前房を横切って前進させた、眼の模式的断面図である。移植片のサイズは、説明のために拡大されている。
【
図10】本明細書に開示した幾つかの実施形態に係る別の移植手順を示す図である。移植片のサイズは、説明のために拡大されている。
【
図11】送達デバイスを前房隅角に隣接して前進させた、眼の模式的断面図である。移植片のサイズは、説明のために拡大されている。
【
図12】前房から脈絡膜上腔を通って延在し、斑のすぐ近くで終わる移植片を送達デバイスが移植している、眼の模式的断面図である。
【
図13A】薬物放出エレメントの遠位分解斜視図である。
【
図14】薬物放出エレメントを含む移植片の断面図である。
【
図15】薬物放出エレメントを含む移植片の部分断面図である。
【
図16】薬物送達眼移植片と一緒に使用されるシールの一例示的実施形態の斜視図である。
【
図17】薬物送達眼移植片と一緒に使用される近位シール部材の一例示的実施形態の斜視図である。
【
図18】眼移植片の一例示的実施形態の斜視図である。
【
図19】
図18の眼移植片の一例示的実施形態の側面図である。
【
図20】
図18の眼移植片の一例示的実施形態の断面図である。
【
図21A】本明細書の幾つかの実施形態に係る薬物濃度及び溶出データを示す図である。薬物濃度の経時変化を示す。
【
図21B】本明細書の幾つかの実施形態に係る薬物濃度及び溶出データを示す図である。予測移植片(prophetic implant)からの薬物溶出速度の経時変化を示す。
【
図22A】本明細書の幾つかの実施形態に係る薬物溶出データを示す図である。移植片からの薬物溶出速度の経時変化を示す。
【
図22B】本明細書の幾つかの実施形態に係る薬物溶出データを示す図である。移植片からの薬物溶出速度の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、眼の解剖図であり、縁21において角膜12に結合する強膜11、虹彩13、及び虹彩13と角膜12の間の前房20を含む。眼は、虹彩13の後にある水晶体26、毛様体16及びシュレム管22も含む。眼はぶどう膜強膜路も含み、ぶどう膜強膜路は、液の一部を前房から除去する働きをし、脈絡膜28と強膜11の間に位置する脈絡膜上腔又は毛様体上腔を含む。眼は、斑32を含む後部領域30も含む。
【0055】
薬物の局所的眼投与を達成するには、直接の注入又は適用を必要とし得るだけでなく、薬物溶出移植片の使用を含む場合もあり、薬物溶出移植片の一部は、標的部位が位置する眼内又は眼房内(例えば、前房、後房又は両方同時に)の標的作用部位に近接して配置することができる。薬物溶出移植片を使用すると、特定の眼組織、例えば、斑、網膜、毛様体、視神経などに薬物を標的送達し、又は眼の特定の領域に血管供給することもできる。薬物溶出移植片を使用すると、病態に応じて、制御された量の薬物を所望の時間投与する機会を提供することもできる。例えば、一部の病態は、薬物を定速でほんの数日放出する必要があり得る。別の病態は、薬物を定速で最大数か月放出する必要があり得る。更に別の病態は、ある期間にわたって周期的又は異なる放出速度を必要とし得る。さらには、別の病態は、放出のない期間(例えば、「休薬期間」)を必要とし得る。
【0056】
ある場合には、移植片は、薬物の送達が完了した後に、眼窩内の流体流路の開存性を維持する、同じ若しくは異なる治療薬を将来投与するための貯蔵器として機能するなどの追加の機能を果たすことができ、又は第1の場所から第2の場所への流体通路若しくは流路の開存性を維持する機能を果たすこともでき、例えばステントとして機能することができる。逆に、移植片は、薬物のすべて又はほぼすべての送達後に眼から除去されるように、ある程度又は完全に生分解性であることが望ましい場合もある。
【0057】
数ある薬物の中でも、抗VEGFタンパク質及び/又はモノクローナル抗体若しくは抗体断片などのタンパク質薬物、例えば、PLA、PLGA、ポリビニルアルコール(PVA)、架橋ポリアクリル酸(Carbopol)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、他のポリエステル又はポリエーテルアミドなどの生体吸収性ポリマーとブレンドされたタンパク質分子の生体吸収性薬物送達の場合、種々の方法が存在する。棒、ゲル、ミセル、ナノ粒子及びこれらの材料の組合せを含む、種々の構造が以前に開示された。出願人らは、例えばこれらの製剤を製造するときのタンパク質不活性化及び凝集の可能性のために、これらの手法に不都合があることを発見した。凝集は、例えば、送達タンパク質薬物の寿命を短縮する所望の溶出プロファイルの阻害によって、不利になり得る。また、こうした手法は、眼中のタンパク質の滞留時間をタンパク質単独のクリアランス速度に比べてさほど延長しない可能性がある。
【0058】
しかし、本明細書に開示した幾つかの実施形態においては、生体吸収性(例えば、生分解性又は生侵食性)デバイスはこうした制約を解消する。幾つかの実施形態においては、デバイス全体(又はほぼ全体若しくはその一部)を構築するのに使用される生体吸収性材料は、PLA、PLGA、ポリカプロラクトン、他のポリエステル、ポリエーテルアミド又は他のポリアミドを含むことができる。組合せを幾つかの実施形態において使用することもできる。生体吸収性材料は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、ポリアクリルアミド、及びポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)の1種以上を含むヒドロゲルとすることができる。ヒドロゲルは、代わりに、又はそれに加えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどの1種以上のポリマーを含むことができる。こうしたポリマーは、例えば、相互貫通網目構造を形成することができる。一部の実施形態においては、ポリマーは、ヒドロゲルの機械的強度の増加に役立つことができる。一部の実施形態においては、特定のポリマーを選択して、ヒドロゲルの透過性を調節することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、有利には、無毒、水溶性、生侵食性、親水性、高吸収性及び/又は柔軟である。一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、光学的に透明であり、患者の視覚との干渉を抑制し、又は最小限にすることができる。
【0059】
ヒドロゲルは、種々の方法によって製造することができ、種々の形で実施することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、合成(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル))及び/又は天然ポリマー(例えば、コラーゲン、ヒアルロナン、ヘパリン)から形成することができる。構成材料の反応性に応じて、ゲル化は、数ある方法の中でも、pH、温度、クーロン相互作用、共有結合、非共有結合性相互作用及び/又は重合によって誘発することができる。例えば、共有結合及び/又は重合は、ビニル基のフリーラジカル重合、アミンとエステル基のアミド結合形成(n-ヒドロキシスクシンイミドを利用する活性エステルなど)、及び/又はフランとマレイミド部分のディールス-アルダー反応などの化学反応によって行うことができる。反応成分を型又は管の中に送ることができる。例えば、ヒドロゲルを型の形状(例えば、管の形状)で形成することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルを型から取り出すことができ、及び/又は管から押し出すことができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルを移植片の外殻中に移すことができる。一部の実施形態においては、反応成分を外殻中に直接送ることができる。例えば、ヒドロゲルを外殻内で形成することができる。
【0060】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、移植片(全体又は部分)及び/又は任意のオリフィス(全体又は部分)を覆う被膜材料を形成することができる。一部の実施形態においては、以下でより詳細に考察するように、移植片はヒドロゲルのプラグを含むことができる。例えば、薬物はヒドロゲルを通過することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルを生体外又は原位置で形成することができる。一部の実施形態においては、薬物はヒドロゲルに包埋される。例えば、ヒドロゲル・薬物混合物は、ポリマー及びタンパク質安定剤の個々の溶液を含むことができる。ヒドロゲル組成物は、架橋密度(例えば、架橋剤の質量と選択されたモノマーの質量の比)、空隙率、厚さ、湾曲、ヒドロゲル中のポリマーの体積分率、及び/又はタンパク質薬物の拡散透過率などの幾つかの因子に基づいて選択することができる。
【0061】
タンパク質安定剤の幾つかの例としては、とりわけ、ゼラチン、糖(例えば、とりわけ、トレハロース、スクロース)、アミノ酸、非イオン界面活性剤(例えば、ポロクサマー)及び/又は緩衝塩を挙げることができる。タンパク質安定剤は、有利なことに、タンパク質薬物の凝集及び分解を防止及び/又は制限することができる。これは、上述したように、タンパク質薬物の寿命を向上させることができる。ポリマー及びタンパク質安定剤の個々の溶液を混合することによって種々の製剤を製造することができる。例えば、抗VEGF薬物成分及び/又はタンパク質を製剤に添加することができ、タンパク質薬物分子をポリマーヒドロゲルマトリックス中に包埋することができる。
【0062】
包埋タンパク質薬物分子を含む例示的製剤を凍結乾燥させることができる。一部の実施形態においては、ヒトの眼の硝子体腔中に可溶性移植片として注入するのに適切なサイズの錠剤中に凍結乾燥材料を直接圧入することができる。例えば、錠剤は、一般に、1個以上の円筒形、及び/又は矩形ディスク及び/又はタイルの形状とすることができる。本明細書に記載の製剤を含む、凍結乾燥材料に適用される圧縮力を制御又は調節することができる。有利には、適用圧縮力を調節することによって錠剤の密度を調節することができる。例えば、錠剤の溶解速度はその密度と関連し得るので、圧縮力を調節することによって錠剤の溶解速度を制御することができる。例えば、圧縮力をタンパク質薬物分子の制御放出速度に変換することができる。
【0063】
幾つかの実施形態においては、特別に設計された挿入装置によって移植片を注入することができる。一部の実施形態においては、溶解及び拡散速度を制御する、及び/又は眼中に送達される材料を含む、溶出制御膜又はゲル材料を含む貯蔵器に1個以上の錠剤を入れることができる。有利なことに、これは、視野への影響を最小限にすることができる。移植片は、注入されると、例えば、ぶどう膜強膜路、脈絡膜上腔、前房、水晶体嚢、硝子体液及び/又はシュレム管に徐々に溶解する。移植片は、患者を治療することができる濃度でタンパク質薬物を徐々に放出する。一部の実施形態においては、タンパク質薬物の濃度は、場合によっては、約100~約150mg/mL、約150~約200mg/mL、約200~約250mg/mL、約250~約300mg/mL、約300~約350mg/mL、約350~約400mg/mL、約400~約450mg/mL、約450~約500mg/mLの範囲、及び/又は上記の間の濃度とすることができる。一部の好ましい実施形態においては、濃度は約200~約300mg/mLの範囲である。放出速度は、長期間、例えば、1~2時間、2~6時間、6~12時間、12~24時間、1~2日間、1~7日間、1~2か月、1~6か月、6~12か月及び/又は12~24か月又はそれ以上とすることができる。移植片を使用して、数ある疾患の中でも、加齢黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫及び/又は糖尿病性網膜症などの種々の後部眼疾患を処置することができる。
【0064】
幾つかの実施形態においては、生体吸収性材料と非生体吸収性材料の両方を含むハイブリッド構造を送達デバイスに採用する。幾つかの実施形態においては、可能な非生体吸収性成分としては、スチール、チタン又は非生体吸収性ポリマーのフリット材料が挙げられるが、それらに限定されない。幾つかの実施形態においては、非生体吸収性材料は、以下で構造的により詳細に考察するように、デバイスの管状部分、又はエンドキャップ、又は膜を形成することができる。こうした実施形態においては、生体吸収性材料は、場合によっては、デバイスの残りの部分を形成することができる。
【0065】
以下でより詳細に考察するように、本発明の幾つかの実施形態は、患者が多量の細片を眼中に蓄積せずに連続して複数回投与を受けることができるように生体吸収性殻を利用しながら、タンパク質薬物を長期間ほぼゼロ次で溶出する。
【0066】
本明細書に開示した実施形態に係る移植片は、好ましくは、薬物の放出に浸透圧勾配もイオン勾配も必要とせず、眼の健常組織に対する外傷を最小限に抑えることによって眼の罹病率を低下させるデバイスと一緒に移植され、及び/又は1種以上の薬物を標的及び制御放出様式で送達して、眼の複数の病態若しくは単一の病態及びその症候を処置するのに使用することができる。しかしながら、ある実施形態においては、浸透圧勾配又はイオン勾配を使用して、移植片からの薬物(又は複数の薬物)の放出を惹起し、(全体的又は部分的に)制御し、又は調節する。一部の実施形態においては、浸透圧は、移植片の内部と眼液の間で平衡化されており、(浸透圧でもイオンでも)認められるほどの勾配を生じない。こうした実施形態においては、圧力を平衡化させるために、可変量の溶質をデバイス内の薬物に添加する。
【0067】
本明細書では「薬物」とは、一般に、単独投与することができる1種以上の薬物、1種以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、潤滑剤、薬物放出制御ポリマー、他の薬剤など)、助剤、又は本明細書に記載の移植片内に収容することができる化合物と組み合わせて及び/又は混合して投与することができる1種以上の薬物を指す。「薬物」という用語は、「治療薬」及び「医薬品」又は「薬剤」と区別なく使用することができる広義の用語であり、こうした薬物が天然、合成又は組換えであろうとなかろうと、いわゆる小分子薬物だけでなく、巨大分子薬物、及びタンパク質、核酸、抗体などを含む、ただしそれらに限定されない生物学的製剤も含む。薬物とは、薬物単体、又は上記賦形剤と組み合わせた薬物を指し得る。「薬物」とは、活性医薬品又はそのプロドラッグ、塩若しくは誘導体も指し得る。
【0068】
本明細書では「患者」は、その通常の意味を有するものとし、哺乳動物全般も指すものとする。「哺乳動物」という用語は、とりわけ、ヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類、ブタ、ヒツジ及び霊長類を含むが、それらに限定されない。さらに、本明細書を通して、特定のパラメータの値のリストとともに値の範囲が示されている。これらの場合、こうした開示は、リストの値を含むだけでなく、リストの値のうち任意の2つの値の間の整数値及び小数値を含む値の範囲も含むことに留意されたい。
【0069】
本明細書では「生分解性」とは、一般に、ヒト又は動物の体内にそれらが移植された後、その中で起こる任意の天然プロセスによって、分解され、移植場所から一般に排除される材料の性質を指す。生分解性としては、生侵食性、生体再吸収性、生体吸収性が挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
幾つかの実施形態においては、眼腔に放出するために薬物を収容する少なくとも1つの内部管腔を画定する形状である外殻を含む、生体適合性薬物送達眼移植片を提供する。外殻は一部の実施形態においてはポリマーであり、ある実施形態においては厚さがほぼ均一である。外殻は、好ましくは、細長く、管状又は円筒状である。幾つかの実施形態においては、キャップは、外殻の一端又は両端に位置し、薬物送達を全体的又は部分的に調節するのに役立つ。外殻は、移植片からの薬物送達速度を変更又は調整するように、1個以上の穴又は開口部及び/又は厚さの増加若しくは減少した領域を含むことができる。
【0071】
一部の実施形態においては、単層又は複層の被膜材料を使用して、(全体的又は部分的に)移植片及び(全体的又は部分的に)任意のオリフィスを覆うことによって、移植片からの薬物放出速度を更に制御することができる。例えば、一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、上述したように、(全体的又は部分的に)移植片及び/又は(全体的又は部分的に)任意のオリフィスを覆う単層又は複層の被膜材料を形成して、移植片からの薬物放出速度を更に制御することができる。一部の例においては、ヒドロゲルは、単層の被膜材料を移植片の内壁に沿って形成する。一部の実施形態においては、ヒドロゲルは膜を形成し、薬物は溶出するのに膜を通過しなければならない。一部の実施形態においては、複数の層の被膜材料を使用して、移植片からの薬物放出速度を更に制御することができる。被膜材料の各層は、薬物が各層を異なる速度で拡散できるようにする。さらに、一部の実施形態においては、1個以上のオリフィスと、1個以上のオリフィスを覆う単層又は複層と、厚さの薄い領域との組合せを使用して、移植片からの薬物放出速度を調整する。
【0072】
一部の実施形態においては、外殻の壁は、少なくとも1個の開口部、オリフィス又は穴を含む。一部の実施形態においては、外殻の壁は、無作為に、又はパターン化された配列で、配置することができる複数の開口部、オリフィス又は穴を含む。外殻の壁の開口部、オリフィス又は穴は、開いていてもよく、又は1つ以上の被膜若しくは膜で覆うことができる。デバイスが外殻を通る複数の開口部、オリフィス又は穴を含む一部の実施形態においては、複数の少なくとも一部は、薬物に対して透過性の膜で閉鎖することができる。
【0073】
幾つかの実施形態においては、薬物(例えば、タンパク質治療用物質)の溶出は、管壁を通して設けられた(上述したように)オリフィス、別の開口部、穴、チャネル、孔若しくは好ましくは微小孔を通る、又は管の端部のキャップ、プラグ若しくは膜を通る、デバイスからの拡散によって調節される。こうした溶出調節機能部の直径は、タンパク質薬物分子の通過を可能にするように十分大きく構成される。幾つかの実施形態においては、これらの機能部は、直径が少なくとも約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3μm(以上)である。
【0074】
一部の実施形態においては、オリフィス及び/又は溶出穴を先細りにすることができる。したがって、オリフィスの直径は一定でなくてもよい。先細オリフィスは、オリフィスの先細りの程度によって薬物(例えば、タンパク質治療用物質)の溶出を調節及び/又は調整することができる。一部の実施形態においては、オリフィスの先細りは、錐状の形状を形成する。一部の例においては、オリフィスは、外殻の内壁から外殻の外壁に向かって外方に先細りにすることができる。例えば、先細オリフィスは、外殻の内壁に沿った内径、及び外殻の外壁に沿った外径を有することができる。オリフィスの内径は、直径約0.025、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3μm(以上)とすることができる。オリフィスの外径は、直径約0.025、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、約0.3μm(以上)とすることができる。
【0075】
内径は、オリフィスの外径より小さくすることができる。例えば、オリフィスの先細りは、半径方向に外向きに内径から外径に延在することができる。一部の実施形態においては、以下の式を使用して、先細オリフィスの先細り角度を求めることができる。
【0076】
【0077】
一部の実施形態においては、tanθの値を約0~1.73の範囲とすることができる。一部の実施形態においては、先細り角度としては、移植片の近位端から遠位端に延在する軸に対して、約0~5、約5~10、約10~15、約15~20、約20~25、約25~30、約30~35、約35~40、約40~45、約45~50、約50~55、約55~60、及び/又は約60~65度の角度を挙げることができる。この形状によって、移植片が眼に移植された後の薬物溶出速度を制御することができる。例えば、移植片から溶出する薬物の量は、オリフィスの内径及び/又は外径、及び/又は先細り角度を調節することによって、より効果的に制御することができる。一部の例においては、先細り角度がより大きい場合、薬物は、先細り角度がより小さい場合よりも速い速度で溶出する。オリフィスの内径及びオリフィスの外径のサイズは、薬物が先細オリフィスを通過する際の薬物の流速又は溶出速度に基づいて選択することができる。幾つかの実施形態においては、先細オリフィスを通る薬物の溶出又は拡散は、一般に、以下に示すように、先細オリフィスを通る流れの比が、直径一定のオリフィスを通る流れの比の倍数であるように、任意の時点において修正フィックの式に従う。
【0078】
【0079】
眼内の所望の部位に移植後、薬物は、移植片の様々な態様の設計に基づいて、標的及び制御様式で、好ましくは長期間、移植片から放出される。本明細書に開示した移植片及び関連する方法は、後眼房、前眼房、又は斑、毛様体、他の眼球標的組織などの眼内の特定の組織への薬物投与を必要とする病態の処置に使用することができる。幾つかの実施形態においては、移植片は、1種以上の治療薬を送達するために、対象の眼の涙点に配置されるように構成される。幾つかの実施形態においては、移植片を涙点に配置して、治療薬を涙液膜に送達して、角膜又は前房及び/又は他の眼球及び/又は眼窩領域を標的にする。
【0080】
<全般>
【0081】
薬物送達デバイス単体として機能する一部の実施形態においては、移植片は、1種以上の薬物を眼の前方領域に制御された様式で送達するように構成され、一方、別の実施形態においては、移植片は、1種以上の薬物を眼の後方領域に制御された様式で送達するように構成される。更に別の実施形態においては、移植片は、薬物を眼の前方領域と後方領域の両方に制御された様式で同時に送達するように構成される。更に別の実施形態においては、移植片の構成は、薬物が特定の眼内組織、例えば、斑又は毛様体に標的様式で放出されるようなものである。ある実施形態においては、移植片は、薬物を毛様体突起及び/又は後房に送達する。ある別の実施形態においては、移植片は、薬物を毛様体筋及び/又は腱(又は線維帯)の1つ以上に送達する。一部の実施形態においては、移植片は、シュレム管、小柱網、強膜上静脈、水晶体皮質、水晶体上皮、水晶体嚢、強膜、強膜岬、硝子体液、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜動脈及び静脈、視神経乳頭、網膜中心静脈、視神経、斑、窩、及び/又は網膜の1つ以上に薬物を送達する。更に別の実施形態においては、移植片からの薬物の送達は、眼房全般を対象とする。幾つかの実施形態においては、移植片は、涙点に配置されて(前房及び/又は別の眼球領域を標的にすることができる)1種以上の治療薬を送達するように構成され、又は涙点に配置されて、涙液膜に送達して、角膜又は前房及び/又は別の眼球及び/又は眼窩領域を標的にするように構成される。本明細書に記載の実施形態の各々は、これらの領域の1つ以上を標的にすることができ、場合によっては分路機能部(後述)と組み合わせられることを理解されたい。
【0082】
幾つかの実施形態においては、移植片は外殻を含む。一部の実施形態においては、外殻は管状であり、及び/又は細長い。幾つかの実施形態においては、殻は、少なくとも第1の内部管腔を有するように形成される。ある実施形態においては、管腔は、外殻の全長にわたることができる。幾つかの実施形態においては、管腔は細分されている。更に分路として機能する実施形態においては、殻は、デバイスの部分内に1個以上の追加の管腔を有することができ、少なくとも1個のこうした管腔は分路として機能する。
【0083】
好ましい実施形態においては、外殻は生分解性である。更なる実施形態においては、キャップ、膜、クリップ及び封止部材を含む、ただしそれらに限定されない、デバイスの1個以上又はすべての追加の部品も生分解性である。
【0084】
移植片及びその部品の製造に適切な生分解性材料としては、以下、すなわち、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルカルボナート)(PEC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(DL-乳酸)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリドコ-ラクチド)(PGALA)、ポリ(グリコール酸-コ-乳酸);ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸コ-グリコリド(PLGA)などのコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)(PHB)、3-ヒドロキシバレラートと共重合したPHB(PHBV)、ポリ(プロピレンフマラート)(PPF)、ポリ(酸無水物)(PAA)、ポリ(ブチレンスクシナート)(PBS)、ポリ(エチレンスクシナート)(PES)、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)(PHA)、ポリ(アシアノアクリラート)(poly(acyanoacrylate))(PCA)、ポリアセタール、ポリオルトエステル(POE)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)を含めたポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、並びに上記のブレンド、コポリマー及び組合せ、並びに修飾多糖、例えば、デンプン、セルロース及びキトサンを含む、ただしそれらに限定されない天然ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
生分解性の程度、速度又はタイミングは、具体的適用例に合わせて、任意の方法又は方法の組合せによって、変更又は調整することができる。生分解時間の短縮は、例えば、殻の表面対体積比の増加、壁厚の減少、穴開け、溝切り又は粗化による表面形状の改変、殻に穴又は孔を含めること、より多孔質な殻の製造、及びより急速に生分解する材料の選択によって、達成することができる。生分解時間の延長は、例えば、殻の表面対体積比の減少、壁厚の増加、表面形状が平滑であるような外殻の製造、最小限の多孔性又は非多孔性である殻の製造、溶解が比較的遅い材料の内膜及び/又は外膜の追加、並びにより遅く生物分解する材料の選択によって、達成することができる。生分解性の程度、速度又はタイミングは、移植片の配置に基づいて調整することもできる。例えば、眼の涙点に配置される移植片、移植片のある生分解速度が望ましい可能性がある。その速度は、例えば眼内(例えば、脈絡膜上腔内)に位置するように構成された移植片の所望の生分解速度と異なっても、異ならなくてもよい。したがって、幾つかの実施形態においては、その治療負荷量のすべて又はほぼすべての送達時の涙点移植片の生分解が望ましいが、速度は、移植片/患者などに適合するように具体的に調整することができる。実施形態によっては、移植片の生侵食は、薬物負荷量のすべて又はほぼすべての送達後に始まるように調整される。一部の実施形態においては、移植片の生侵食は、薬物の溶出と少なくとも部分的に重なって始まるように調整される。
【0086】
幾つかの実施形態においては、薬物(又は複数の薬物)を移植片殻の内部管腔(又は複数の内部管腔)内に配置する。幾つかの実施形態においては、薬物を管腔のより遠位部内に優先的に配置する。幾つかの実施形態においては、移植片管腔(又は複数の移植片管腔)の最遠位15mmに、放出される薬物(又は複数の薬物)を収容する。一部の実施形態においては、内部管腔の1、2、3、4、5、6、7、8及び9mmを含む最遠位10mmに、放出される薬物を収容する。幾つかの実施形態においては、薬物を管腔のより近位部内に優先的に配置する。一部の実施形態においては、薬物を管腔全体にほぼ均等に配置する。
【0087】
幾つかの実施形態においては、薬物は、殻を通り眼内環境に拡散する。幾つかの実施形態においては、外殻材料は、内部管腔内に配置された薬物(又は複数の薬物)に対して透過性又は半透過性であり、したがって、薬物の全溶出の少なくともある部分は、透過性の増大した、厚さの薄い、オリフィスなどの任意の領域を通して起こる上に、殻自体を通しても起こる。一部の実施形態においては、薬物の溶出の約1%~約50%は、殻自体を通して起こる。一部の実施形態においては、薬物の溶出の約10%~約40%、又は約20%~約30%は、殻自体を通して起こる。一部の実施形態においては、薬物の溶出の約5%~約15%、約10%~約25%、約15%~約30%、約20%~約35%、約25%~約40%、約30%~約45%、又は約35%~約50%は、殻自体を通して起こる。ある実施形態においては、薬物(又は複数の薬物)の全溶出の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14%を含む、約1%~15%は、殻を通して起こる。「透過性」という用語及び関連用語(例えば、「不透過性」又は「半透過性」)は、本明細書では、1種以上の薬物又は治療薬及び/又は眼液に対してある程度透過性がある(又は透過性がない)材料を指すのに使用する。「不透過性」という用語は、材料を通した薬物の溶出も透過もないことを必ずしも意味せず、その代わりにかかる溶出又は他の透過が、無視し得る、又はごくわずかであり、例えば、全溶出の約2%未満及び約1%未満を含む、約3%未満である。
【0088】
幾つかの実施形態においては、移植片は、ポリマー被膜を殻の外面に含む。別の実施形態においては、移植片は、ポリマー被膜を殻の内面に含む。更に別の実施形態においては、ポリマー被膜は、内面と外面の両方にある。更に別の実施形態においては、ポリマー被膜は生分解性である。一部の実施形態は、ポリマー被膜の代わりに、又はそれに加えて、非ポリマー被膜(例えば、ヘパリン)を含む。さらに、一部の実施形態においては、1個以上のオリフィスと、1個以上のオリフィスを覆う単層又は複層と、厚さの薄い領域との組合せを使用して、移植片からの薬物放出速度を調整する。
【0089】
一部の実施形態においては、薬物を含む内部管腔は、眼の前部への薬物の溶出を防止する内部管腔内の近位障害物によって、移植片の近位部から分離される。一部の実施形態においては、薬物を含む内部管腔は、内部管腔内の一方弁によって移植片の近位部から分離される。一方弁は、眼の前部への薬物の溶出を防止するが、眼の前部からの眼液が薬物を含む内部管腔に到達できるようにする。
【0090】
一部の実施形態においては、移植片は、更に、同じ若しくは追加の治療薬、複数の薬物、又は1種若しくは複数のアジュバント化合物を移植片に再装填/再充填するように構成された近位部を含む。
【0091】
分路を含む一部の実施形態においては、分路部は、移植部位に移植後、液を眼房から生理的流出空間に排出して、眼内圧を低下させる。一部の実施形態においては、移植片は、移植片の近位端又は遠位端が薬物送達の標的組織近くの移植部位にあるときには、移植片の流出口が眼液を遠隔領域及び/又は生理的流出経路に排出するような寸法である。例えば、本明細書(及び参照によりその全体を本明細書に援用する、2014年9月24日に出願された米国特許仮出願第62/054833号)に開示された涙点移植片は、涙液を鼻涙管に排出する1個以上の排液腔を含むこともできる。本明細書に開示した別の移植片は、眼液を前房から例えば脈絡膜上腔に排出するように構成することができる。排液は、涙点移植片の一部の実施形態においては含まれず、眼内留置用移植片の一部の実施形態においては含まれない。
【0092】
例えば、一部の実施形態においては、移植片は、移植後、移植片の遠位端が斑に十分近く、移植片によって送達される薬物が斑に達するような寸法である。分路機能部が組み込まれた一部の実施形態においては、移植片は、移植片の遠位端が斑の十分近くに配置されるときには、移植片の近位端が前眼房中に延在するような寸法である。それらの実施形態においては、以下により詳細に記述する移植片の流出口は、眼房水がぶどう膜強膜路又は他の生理的流出経路に排出されるように配置される。
【0093】
更に別の実施形態においては、複合薬物送達・分路移植片は、薬物送達と、第1の生理的部位から(生理的部位又は患者の外部とすることができる)第2の部位までの流体輸送とを同時に必要とする任意の生理的位置に配置することができる。一部の実施形態においては、分路機能部は、薬物送達機能部と一緒に作用して、送達される薬剤の治療効果を増強する。別の実施形態においては、送達される薬剤の治療効果は、流体蓄積、膨潤などの望ましくない副作用を伴う可能性がある。一部の実施形態においては、分路機能部は、送達される薬剤の副作用を軽減する。本明細書に開示した移植片の寸法及び機能部は、生理的流出経路との連通を維持しながら、眼の様々な領域に標的送達及び/又は制御送達するように調整できることを理解されたい。
【0094】
例えば、一部の実施形態においては、移植片は、移植後、移植片の遠位端が脈絡膜上腔に位置し、移植片の近位端が前眼房に位置するような寸法である。幾つかの実施形態においては、移植片から溶出した薬物は、移植片の近位端から前房に溶出する。分路機能部が組み込まれた一部の実施形態においては、移植片の1個以上の流出口は、眼房水がぶどう膜強膜路中に流出するように配置される。幾つかの実施形態においては、眼房水は前房から脈絡膜上腔に流出する。
【0095】
以下により詳細に記述する送達器具を使用して、眼の所望の場所への薬物送達移植片の送達及び/又は移植を容易にすることができる。送達器具を使用して、連続的な移植力(implantation force)を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、送達器具における貯蔵エネルギー源の作動によって、又はこれらの方法の組合せによって、斑まで及び斑近くを含む任意の長さの脈絡膜上腔、前房から脈絡膜上腔までの位置、任意の他の眼内領域などの所望の位置に移植片を配置することができる。送達器具の設計には、例えば、切り込みに対する移植角度及び移植片の位置を考慮することができる。例えば、一部の実施形態においては、送達器具は、一定の形状を有することができ、形状を調節することができ、又は駆動させることができる。一部の実施形態においては、送達器具は、例えば、色素及び/又は粘弾性流体の注入、切開、ガイドワイヤとしての使用などの付属機能又は補助機能を有することができる。本明細書では「切り込み」という用語は、その通常の意味を有するものとし、切り口、開口部、スリット、切欠き、刺し穴なども指し得る。
【0096】
ある実施形態においては、薬物送達移植片は、生分解性ポリマー又は生分解性ポリマー及び少なくとも1種の追加の薬剤と混合してもしなくてもよい1種以上の薬物を含むことができる。
【0097】
<薬物送達移植片>
【0098】
本開示は、移植部位に移植後、1種以上の薬物を眼内の所望の標的領域に制御放出し、制御放出が長期間にわたる、眼の薬物送達移植片に関する。移植片の種々の実施形態を図示し、本明細書で言及するが、当業者によって理解されるように、本発明は、示した実施形態に限定されず、示した実施形態の機能部は相互に交換可能であり、及び/又はそれらは、本明細書に開示した機能部で置換することができ、又は該機能部を更に含むことができることを理解されたい。
【0099】
移植片の外殻は、押し出し、延伸、射出成形、微細加工、レーザー加工、又はそれらの任意の組合せによって製造することができる。当該技術分野で公知の他の適切な製造及び組立て方法を使用することもできる。幾つかの実施形態においては、外殻は、細長く、円筒状又は管状であり、少なくとも1個の内部管腔を含む。一部の実施形態においては、内部管腔は、外殻と仕切りによって画定される。一部の実施形態においては、仕切りは不透過性であり、別の実施形態においては、仕切りは透過性又は半透過性である。一部の実施形態においては、仕切りによって、移植片に新たな用量の薬物を再装填することができる。幾つかの実施形態においては、外殻の厚さはほぼ均一である。別の実施形態においては、厚さは、殻の特定の領域で異なる。眼内の所望の移植部位に応じて、外殻のより厚い領域は、移植片の構造的完全性を維持するのに必要な場所に位置する。一部の実施形態においては、移植片は柔軟な材料でできている。
【0100】
幾つかの実施形態においては、外殻は、1つ以上の特定の薬物放出領域、又は外殻の残りの部分に比べて薬物放出が促進された1つ以上の特定の領域も有する。一部の実施形態においては、薬物放出領域は、外殻の隣接及び周囲の厚さと比べると厚さが薄い。一部の実施形態においては、厚さの薄い領域は、アブレーション、延伸、エッチング、研磨、成形、及び外殻から材料を除去する他の類似技術のうちの1つ以上によって形成される。別の実施形態においては、薬物放出領域は、周囲の外殻と比べると厚さが異なるが(例えば、薄い実施形態もあれば、厚い実施形態もある)、薬物及び眼液の1つ以上に対する透過性を高くして形成される。更に別の実施形態においては、外殻は、厚さが均一又はほぼ均一であるが、管腔内の眼液及び薬物に対する透過性が異なる材料を用いて構築される。したがって、これらの実施形態は、移植片からの明確な薬物放出領域を有する。薬物放出領域は、眼の特定の標的組織に薬物を十分送達するのに必要な任意の形状とすることができる。
【0101】
一部の実施形態においては、移植片は自己穿孔性である。一部の実施形態においては、移植片の遠位端は、角膜、縁、又は眼の強膜岬近くなどの眼組織を貫通するのに十分鋭利である。別の実施形態においては、遠位端は、丸く、鈍く、又は鋭利でないが、それでも、好ましくは非侵襲的に、2つの組織面の鈍的切開を行うのに、又はある内部眼組織を穿通するのに適切である。どちらにしても、遠位部は、眼の強膜組織を実質的に穿通しないように、十分に鈍くすることができる。
【0102】
一部の実施形態においては、移植片は、柔軟な外向きに延在する延長部、例えば、移植片の外面から延在して、その移植位置からの移植片の移動を阻止する隆起部、リブ、逆とげ、隆起、ねじ山又は突起部などの固定又は保持機能部を内蔵する。一部の実施形態においては、溝などの内向きに延在する機能部は、移植片を保持するのに役立つ。こうした機能部は、移植片の全外周に、又は外周の一部のみに、延在する。延長部は、移植片に取り付けられた分離部分とすることができ、移植片と一体的に形成することができ、又は別の製造ステップで追加することができる。延長部は、移植片の近位端部若しくは遠位端部若しくは領域又はその両方に位置して、移植片が眼中のその意図された場所から押し出される、又は移動するのを防止することができる。幾つかの実施形態においては、延長部は、移植片に沿って長軸方向に配置される。延長部間の間隔は規則的でも不規則でもよい。保持機能部が柔軟であることで、角膜の切り込みを通した、また、毛様体筋付着組織又は別の組織を通した、進入が容易になり得る。一部の実施形態においては、不規則表面は、実施形態によっては、薬物溶出効率を低下させ得る移植片中又は移植片上への宿主組織の成長(例えば、線維成長)を防止する機能を果たす。
【0103】
一部の実施形態においては、移植片は、移植中に移植片が23ゲージ針内に取り付けられる外径を有する。移植片は、より大きい針を用いて挿入するように設計された直径を有することもできる。例えば、移植片は、18ゲージ針、19ゲージ針又は20ゲージ針を用いて送達することもできる。別の実施形態においては、23ゲージ以下などのより小さいゲージのアプリケータを使用する。一部の実施形態においては、移植片は、その長さの大部分を通してほぼ一定の断面形状を有する。あるいは、移植片は、その長さに沿って断面サイズ(例えば、直径)が減少又は増大する部分を有することができる。一部の実施形態においては、移植片の遠位端は、先細部、又は軸の長さに沿った管腔軸に対して半径方向寸法が連続して減少する部分を有する。先細部は、好ましくは、一部の実施形態においては、遠位端においてより小さい半径方向寸法で終結する。移植中、先細部は、組織中に形成された切り込み又は刺し穴を形成、拡張、及び/又はそのサイズを増大させるように操作することができる。先細部の直径は約30ゲージ~約23ゲージ、好ましくは約25ゲージとすることができる。本明細書で述べるように、幾つかの実施形態においては、デバイスは管状とすることができ、針を通して硝子体に注射することができる(ただし、別の形状が幾つかの実施形態において使用される)。こうした管状移植片の直径は、約0.1~約0.8mm、約0.2~約0.8mm、約0.3~約0.8mm、約0.4~約0.8mm、好ましくは約0.3~約0.6mmの範囲とすることができる。幾つかの実施形態においては、デバイスは、長さが約2~約15mm、約4~約15mm、約5~約15mm、約5~約14mm、約5~約13mm、約5~約12mm、約5~約11mm、約2~約11mm、約3~約11mm、好ましくは5~10mm長を含む、約1~約15mmの範囲とすることができる。上記の間の直径及び長さの範囲も企図される。
【0104】
一部の実施形態においては、薬物は、追加の化合物と一緒に処方又は調合される。一部の実施形態においては、薬物は薬物含有ペレットの形である。治療剤又は治療薬の一部の実施形態は、ポリマー製剤と混合された薬物を含む。ある実施形態においては、ポリマー製剤は、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、すなわちPLGAコポリマー、又は他の生分解性(例えば、生侵食性、生体吸収性)ポリマーを含む。
【0105】
薬物は、一般に、本明細書に記載の移植片の管腔内に配置されるが、移植片の他の機能部の図示を明確にするように、大部分の図では省略されている。しかしながら、本明細書のすべての実施形態は、場合によっては、1種以上の薬物を含むことを理解されたい。
【0106】
幾つかの実施形態においては、移植片は、更に、移植片の中又は上の様々な場所に配置することができる被膜を含む。一部の実施形態においては、被膜はポリマー被膜である。被膜は、場合によっては、生分解性である。一部の別の実施形態は、全体が生分解性材料でできた移植片を含むことができ、移植片全体が次第に分解する。一部の実施形態においては、被膜は移植片全体の上に配置され(例えば、移植片を包む)、別の実施形態においては、移植片の一部のみが覆われる。一部の実施形態においては、被膜は、移植片の外面にある。一部の実施形態においては、被膜は、移植片若しくは殻の外側の代わりとして、又は外側に加えて、移植片内の管腔壁に配置される。同様に、被膜が移植片の内側に配置される一部の実施形態においては、被膜は管腔の内面全体を覆い、別の実施形態においては、内面の一部のみが覆われる。
【0107】
移植片の幾つかの実施形態は、薬物送達デバイスとしての機能に加えて、分路を含むこともできる。本明細書では「分路」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通例の意味を有し(特別又は個別の意味に限定されるものではなく)、望ましくないことが多い第1の場所から1つ以上の別の場所に流体を輸送するための1つ以上の流路を画定する移植片の部分を指すが、それに限定されない。一部の実施形態においては、分路は、眼房水を前眼房から流出経路に排出して眼内圧を低下させる流体流路になるように構成することができる。
【0108】
移植片の分路部は、流入部及び流出部を有することができる。流入部又は入口は、移植片の近位端又はその近くに配置することができる。入口は、1個以上の開口部を含むことができる。分路流出部は、移植片の遠位端又はその近くに配置することができ、1個以上の開口部を含むことができる。一部の移植片、とりわけ斑又は眼の後部の別の構造に延在するように構成されたより長い移植片においては、流出部は、移植片の中間セクション、又は中間セクションと遠位セクションの両方に存在することができる。一部の実施形態においては、移植片を展開するときには、流入部を前眼房に存在するようなサイズ及び構成にすることができ、流出部を毛様体上腔又は脈絡膜上腔に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。一部の実施形態においては、流出部を、ぶどう膜強膜路の毛様体上領域、脈絡膜上腔、眼の別の部分、又は流体付着しやすい別の生理的空間内に存在するようなサイズ及び構成にすることができる。
【0109】
一部の実施形態においては、少なくとも1つの管腔は、移植片の分路部を通って延在する。一部の実施形態においては、移植片の分路部を通して流体を導くように働く少なくとも1個の管腔が存在する。ある実施形態においては、各管腔は、管腔軸に沿って流入端から流出端まで延在する。一部の実施形態においては、管腔は、薬物管腔と同軸であるように実質的に分路の長軸方向中央を通って延在する。別の実施形態においては、管腔は、それと薬物管腔が並行配置であるように分路の長軸方向中央からずれることができる。
【0110】
遠くの後眼部に延在する移植片を含む、移植片の一部の実施形態においては、移植片の分路部と移植片の薬物送達部が分離され、薬物送達部は遠位端に向かい、分路部は近位端に向かう。こうした実施形態においては、移植片上の最も近位の流出オリフィスは、移植片の近位端に、又は近位端から10mm以内に、位置する。流出オリフィスは、流入場所の遠位の任意の場所に位置することができる。一部の実施形態においては、分路部と薬物部はある程度重複し、上述したように同軸又は並行配置を有することができる。
【0111】
図2Aは、前房からぶどう膜強膜路(例えば、脈絡膜上腔)などの天然流出経路に流体を排出するように働くことができる同軸分路を含む薬物溶出移植片430の実施形態を示す。移植片430の内部管腔436は、流入部又は入口432及び流出部又は出口434と連通することができる。薬物は、内部管腔と外殻の間の空間に置くことができる。薬物と排液腔を分離する壁が存在し、又はそれらは固体薬物若しくは製剤と接触し、内部管腔の壁を形成することができる。移植すると、流入部432は、前眼房に置かれるようなサイズ及び構成であり、流出部434は、脈絡膜上腔に置かれるようなサイズ及び構成である。薬物は、流入部から直接、又はキャップ(図示せず)を通して、及び/又は移植片の壁を通して、溶出することができる。薬物が移植片から溶出する際には、流体を移植片の内部管腔436を通して導くことができる。
【0112】
移植片430は、移植中に移植片430を21ゲージ針若しくは23ゲージ針又は中空器具内に取り付けることができる外径を有するサイズとすることができるが、より大きい又はより小さいゲージ器具又は別の専用の送達デバイスを使用することもできる。移植片430は、より大きい針を用いて送達するように設計された直径を有することもできる。例えば、移植片430は、18ゲージ針、19ゲージ針又は20ゲージ針を用いて送達することもできる。移植片430は、その長さの大部分を通して一定の直径を有することができる。一部の実施形態においては、移植片430は、移植されたときに移植片430を適所に機械的にロック又は固定するように働く保持機能部446を含む。一部の実施形態においては、保持機能部446は、近位端438と遠位端440の間に直径の小さい部分、例えば、環状溝を含む。一部の実施形態においては、保持機能部446は、移植片430の外面から延在する逆とげ又は別の突起部を含み、上述したように、移植片430がその移植位置から移動するのを阻止する。
【0113】
図2Bに示すように、例えば、移植片430の一部の実施形態は、移植片430の外面に形成された複数の環状リブ448を有する。環状リブ448は、近位端438と遠位端440の間に移植片430に沿って長軸方向に配置することができる。環状リブ448の間隔は規則的でも不規則でもよい。
【0114】
移植片430の流出部434は、好ましくは、移植片430の遠位端440又はその近くに配置される。
図2Aに示す実施形態においては、流出部434は、先細遠位部444であるが、非先細又はより緩やかに先細りする形状を含む、別の形状を有することもできる。先細遠位部444は、流出端又は出口440においてより小さい半径方向寸法で終結する。移植中、先細部444は、単独で、あるいはガイドワイヤ、トロカール、又は移植片の端部と同一平面である、若しくはそれを越えて延在する、内部管腔436内に配置された別の送達器具の部分と協働して、組織中に作られた切り込み又は刺し穴を形成する、拡大する、及び/又はそのサイズを増大させるように働くことができる。例えば、遠位端440は、組織中に穴を開ける、又は切り込みを入れる、トロカールとして機能することができる。移植片430の遠位端440を前進させた後、先細部444を刺し穴又は切り込みを通して前進させることができる。先細部444は、組織を通って前進しながら、刺し穴又は切り込みの周囲の組織を広げ、又は拡大して、先細部444の漸増するサイズを同調させる働きをする。(眼内又は涙点内留置用)移植片の一部の実施形態は、排液を含まない。
【0115】
先細部444は、毛様体上腔又は脈絡膜上腔中に移植片430を適切に配置するのを容易にすることもできる。例えば、移植片430は、好ましくは、移植中に前房隅角内の組織を通って前進する。この組織は、一般に、線維質又は多孔質であり、移植片430の先端部などの外科デバイスを用いて比較的容易に穿孔又は切断される。移植片430は、この組織を通って前進し、ぶどう膜強膜路中に延在して強膜に接することができる。移植片430は強膜に接するので、先細部444は、好ましくは、強膜の内壁に沿って脈絡膜上腔内の移植片430の滑りを促進する略丸みのある縁部又は表面を与える。例えば、移植片430がぶどう膜強膜路中に前進して、強膜に接すると、移植片430は、強膜の内壁に対してある角度で配向する可能性がある。移植片430の先端部が強膜に入ると、先端部は、好ましくは、移植片430が強膜を穿孔又は実質的に穿通する代わりに強膜に沿って摺動できるようにする半径を有する。移植片430が強膜に沿って摺動すると、先細部444は、移植片430が強膜に接することができる縁部を与え、移植片430が強膜に穿孔する可能性を低下させる。
【0116】
理解しやすいように、種々の保持突起部(retention projection)の可能な実施形態のうち少数しか示していない。任意の移植片の実施形態は、本明細書に開示した保持突起部の何れかと容易に組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0117】
図3A~
図3Dは、移植片の例を示す。移植片は、本明細書に記載の別の移植片と同一又は類似の機能部を含むことができる。上述したように、移植片は外殻54を含むことができる。外殻54は、1個以上のオリフィスを含むことができる。例えば、幾つかの実施形態においては、外殻54の厚さを横切る1個以上のオリフィス56aが、移植片の外側の環境と移植片の内部管腔58の間の連通路となる(
図3A~
図3D)。1個以上のオリフィスは、個々の移植片の様々な殻に穴を開けることによって、又は当該技術分野で公知の任意の他の技術によって、移植片殻を貫いて形成される。オリフィスは、球状、立方体、楕円体などの任意の形状とすることができる。所与の移植片に形成されるオリフィスの数、位置、サイズ及び形状によって、オリフィスと移植片の表面積の比が決まる。この比は、以下に示すように、移植片の特定の実施形態によって送達される薬物の所望の放出プロファイルに応じて変わり得る。一部の実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:100よりも大きい。一部の実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:10~約1:50、約1:30~約1:90、約1:20~約1:70、約1:30~約1:60、約1:40~約1:50の範囲である。一部の実施形態においては、オリフィスと移植片の表面積比は、約1:70、1:80及び1:90を含む、約1:60~約1:100の範囲である。
【0118】
一部の実施形態においては、外殻は、例えば、
図3A~
図3Dに示すように、移植片の遠位先端部に、又は移植片の遠位端の近くに、1個以上のオリフィス56bを含むことができる。オリフィスの形状及びサイズは、所望の溶出プロファイルに基づいて選択することができる。更に別の実施形態は、遠位オリフィスと外殻のより近位に配置された複数のオリフィスとの組合せを含む。更に別の実施形態は、外殻の遠位オリフィス、近位オリフィス及び/又は上記薬物放出領域(及び場合によっては1つ以上の被膜)の組合せを含む。更に別の実施形態は、閉じた遠位端を有する。こうした実施形態においては、(殻の厚さ/透過性、オリフィス、被膜、薬物の配置などに基づく)薬物放出領域が移植片の長軸に沿って配列することができる。こうした構成は、本明細書に開示した移植手順の幾つかの実施形態中に生じる前進遠位端に起因する組織損傷の量を削減するのに有利である。
【0119】
一部の実施形態においては、遠位オリフィスは、挿入/移植中に1個以上のオリフィスが組織で塞がれた場合に、移植片からの薬物溶出を維持する複数のオリフィス56bを有する生分解性又は生侵食性プラグ61を含む。別の実施形態においては、オリフィスは、透過性又は半透過性膜、多孔質フィルム又はシートなどを含むことができる。一部のこうした実施形態においては、透過性膜又は半透過性膜、フィルム又はシートは、殻の外側にあってオリフィスを覆っても、殻の内側にあってオリフィスを覆っても、又はその両方であってもよい。材料の透過性によって、移植片からの薬物放出速度がある程度決まる。これについては、以下により詳細に記述する。こうした膜、シート又はフィルムは、外殻のオリフィスが細長い実施形態に有用である。
【0120】
幾つかの実施形態においては、管腔内部の追加構造又は複数の追加構造は、移植片からの薬物の溶出を少なくとも部分的に制御することができる。上記薬物を包むのに使用することができる単層又は複層の透過性又は半透過性材料に加えて、又はその代わりに、
図3A~
図3Dは移植片を示す。移植片は、外殻、内部プラグ210、及び少なくとも部分的に薬物62が充填された薬物貯蔵器を有することができる。一部の実施形態においては、内部プラグ210は、薬物62と外殻54の種々のオリフィス56a、56bとの間に位置する。例えば、内部プラグ210は、薬物を完全に取り囲む必要がない。しかし、以下で考察するように、一部の実施形態においては、内部プラグ210は、少なくとも部分的に、又は全体的に、薬物62を包囲する。一部の実施形態においては、内部プラグ210の材料は殻54とは異なり、幾つかの実施形態においては、内部プラグ210の材料は殻54と同じ材料である。内部プラグの適切な材料としては、とりわけ、アガロース又はヒドロゲルが挙げられるが、それらに限定されない。上述したように、ヒドロゲルは、とりわけ、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル、HEMA(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド、コ-ポリエチレンオキシドブロック又はランダムコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルピロリジノン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ゼラチン及び/又はポリビニルピロリドンを含むことができる。移植片の殻又は別の部分に使用される本明細書に開示した追加の材料が、ある実施形態においては内部プラグに適切であり得る。
【0121】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグ210のサイズ、密度、空隙率又は透過性は、殻54と異なってもよい。一部の実施形態においては、例えば、分注した液体、粉体、結晶又はゲルを原位置で重合、成形又は凝固することによって、ヒドロゲルを適所に(すなわち、移植片の内部管腔内に)形成する。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、殻の外部で前もって形成され、移植前に殻内に配置される。こうした実施形態においては、個別の仕様に合わせた移植片を構築することができ、前もって形成される内部プラグの選択を個々の薬物、患者、移植片、及び/又は処置する疾患に基づいて最適化することができる。
【0122】
一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、移植前に外殻54内に配置される前に、脱水することができる、又は部分的に収縮/脱水状態とすることができる。例えば、脱水状態では、ヒドロゲルプラグは、その完全に水和した体積のわずか約10%まで収縮することができ、別の実施形態においては、それは、移植片におけるその完全に水和した体積の95%、90%、85%、80%又は75%である。一部の実施形態においては、ヒドロゲルは、移植前に、及び/又は外殻54内に配置される前に、外殻54内で水和及び膨潤することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、数ある生体適合性であるものの中でも、可塑剤、グリセリンなどの「一過性(fugitive)」材料又は溶媒を含むことができる。一過性材料は、移植後、移植片から流出し、眼液で置換される。該材料は、したがって、移植片からの薬物の流出及び/又は溶出の引き金となり得る。例えば、該材料の流出は、プラグが薬物に対してより透過性になり、薬物がヒドロゲルプラグを通過できるようにすることができる。一部の実施形態においては、該材料は、溶出前及び/又は溶出中に、又は移植片が使用前に貯蔵及び輸送される間に、薬物の収縮又は崩壊を防止及び/又は最小限にすることができる。
【0123】
上述したように、幾つかの実施形態においては、ヒドロゲルプラグを生分解性又は生侵食性とすることができる。一部の別の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは耐久性である(例えば、生分解性でも生侵食性でもない)。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、有利には、無毒、水溶性、生侵食性、親水性、高吸収性及び/又は柔軟である。
【0124】
図3A~
図3Dに示すように、ヒドロゲルプラグ210は、外殻54内に位置することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、薬物62に隣接して位置することができる。ヒドロゲルプラグ210は、外殻54の最遠位端に隣接して位置することができる。例えば、薬物は、プラグ210に隣接して位置することができ、及び/又はプラグ210の近位に位置することができる。本明細書で述べるように、薬物62は、ヒドロゲルプラグで部分的に、又は完全に、包囲することができる。一部の実施形態においては、プラグ210は、ヒドロゲルと薬物の混合物を含むことができる。
【0125】
様々な量のヒドロゲル及び薬物を移植片のある実施形態において実施することができる。例えば、溶出用移植片内に位置する薬物とヒドロゲルの体積比は、約1:1を超える。一部の実施形態においては、溶出用移植片内に位置する薬物とヒドロゲルの体積比は、約1:1~約2:1、約2:1~約5:2、約5:2~約3:1、約3:1~約7:2、約7:2~約4:1、約4:1~約9:2の範囲、及び/又は別の範囲である。一部の実施形態においては、溶出用移植片内に位置する薬物とヒドロゲルの体積比は、数ある範囲の中でも、約1:1~約1:2、約1:2~約1:3、約1:3~約1:4の範囲である。上述したように、薬物は、ヒドロゲル内に分散させることができる。こうした構成においては、薬物のすべて又は一部をヒドロゲル内に分散させることができる。例えば、混合物の体積の少なくとも50%は、上述したように、薬物を含むことができる。
【0126】
幾つかの実施形態においては、内部プラグは、殻の内壁に近接して取り付け、又は結合させることができる。例えば、ヒドロゲルプラグは、好ましくは、薬物に対して透過性であり、それによって薬物をプラグを通し、オリフィスを通して標的組織に送ることができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、体液に対しても透過性であり、移植片の外側からの液が薬物に到達することができる。デバイスからの総薬物放出速度は、オリフィスの面積及び体積、任意の薬物放出領域の表面積、薬物とオリフィスの両方及び/又は薬物放出領域に対するヒドロゲルプラグの組成及び/又はサイズ又は位置、並びに薬物及び体液に対するヒドロゲルプラグの透過性を含む、ただしそれらに限定されない移植片部品の幾つかの側面の物理的特性によって制御することができる。さらに、幾つかの実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、薬物とオリフィス及び/又は薬物放出領域の間の経路長を長くし、それによって薬物放出速度の追加の制御点になる。例えば、薬物は、ヒドロゲルプラグ210の全部及び/又は一部を通過して標的組織に向かうように構成することができる。ヒドロゲルを通る薬物の溶出は、2週間~1年の期間起こり得る。一部の実施形態においては、ヒドロゲルを通る薬物の溶出は、2週間~3年、1日~1週間、1週間~2週間、2週間~4週間、1か月~2か月、2か月~4か月、4か月~8か月、4か月~6か月、6か月~1年、1年~2年、2年~3年、及び/又はそれ以上の期間起こり得る。
【0127】
幾つかの別の実施形態においては、ヒドロゲルプラグ210を殻の内部管腔により緩く取り付けることができ、それによってプラグの周りの薬物の流れ又は輸送を可能にすることができる(
図3B参照)。更に別の実施形態においては、ヒドロゲルプラグは、2つ以上の小片又は小部分を含むことができる。一部の実施形態においては、薬物は、ヒドロゲルプラグと殻の内壁との間隙を通過することによって移植片から溶出することができる。薬物は、ヒドロゲルプラグの部分又は小部分の間隙を通過することによって移植片から溶出することもできる。薬物は、透過性の内部プラグを通過することによって移植片から溶出することもできる。同様に、体液も、これら又は別の経路の何れかによって移植片の外部から移植片に入り、薬物に到達することができる。薬物の溶出は、これらの通路又は透過経路の何れかの組合せの結果として起こり得る。
【0128】
図3Aに示すように、移植片は、近位障害物64aを含むことができる。一部の実施形態においては、近位障害物64aは、薬物62の近位に位置する(
図3A~
図3D参照)。近位障害物64aは、薬物、ヒドロゲルプラグ及び/又はヒドロゲル・薬物混合物に隣接して位置することができる。一部の実施形態においては、近位障害物64aは、移植片の近位端を形成することができる。一部の実施形態においては、近位障害物64aは、移植片内に位置する。一部の実施形態においては、近位障害物64aは、任意選択の分路機能部を含むことができる。任意選択の分路機能部は、移植片の近位領域52に位置する近位流入管腔68と連通した流出開口部66を含むことができる。一部の実施形態においては、任意選択の分路機能部は、眼の一部と連通した流出開口部を含むことができる。例えば、一部の実施形態においては、開口部66は、移植片が眼内に移植されたときに、移植片が流体を排出できるようにすることができる。一部の実施形態においては、移植片からの薬物の溶出は、眼内圧の急上昇及び/又は増加を引き起こす可能性がある。開口部66を通る移植片の近位端からの流体の排出は、例えば、膨潤及び/又は眼内圧の減少に役立ち得る。一部の実施形態においては、開口部66を通る流体の排出は、薬物62の溶出を加速するのに役立ち得る。
【0129】
幾つかの実施形態においては、オリフィス56aは、移植片殻54の内部管腔58からの薬物62の放出の障害物となる1個以上の溶出膜100で(全体的又は部分的に)覆われる。幾つかの実施形態においては、溶出膜は、治療薬、体液又はその両方に対して透過性である。幾つかの実施形態においては、膜は弾性があり、シリコーンを含む。別の実施形態においては、膜は、生分解性又は生侵食性材料で全体的又は部分的に被覆されて、体液の流入又は移植片からの治療薬の放出の開始を制御することができる。ある実施形態においては、有益である追加の薬剤、例えば、抗線維化剤、血管拡張剤、抗血栓剤又は透過性制御剤を膜に含浸させる。さらに、ある実施形態においては、膜は、例えば、特異的透過性を発現することができる1つ以上の層100a、100b及び100cを含む。
【0130】
一部の実施形態においては、外殻54を被膜で被覆することができる。一部の実施形態においては、被膜はポリマー被膜である。被膜は、場合によっては、生分解性とすることができる。一部の別の実施形態は、全体が生分解性材料でできた移植片を含むことができ、移植片全体が次第に分解する。一部の実施形態においては、被膜は移植片全体の上に配置され(例えば、移植片を包む)、別の実施形態においては、移植片の一部のみが覆われる。一部の実施形態においては、被膜は、移植片の外面にある。一部の実施形態においては、被膜は、以下で考察するように、移植片若しくは殻の外側の代わりとして、又は外側に加えて、移植片内の管腔壁に配置される。被膜は、外殻を通る薬物の溶出の制御を支援することができる。一部の実施形態においては、被膜は、移植片(例えば、外殻)の寿命を延長するのに役立ち得る。例えば、一部の実施形態においては、被膜は次第に生侵食され得る。被膜は、薬物が外殻を通って溶出するのと同じ又は類似の速度で生侵食及び/又は溶解することができる。一部の実施形態においては、被膜は、薬物が外殻を通って溶出するよりも速い速度で生侵食される。一部の実施形態においては、被膜は、外殻が生侵食されるのを阻止及び/又は防止することができる。例えば、一部の実施形態においては、被膜は、(例えば、治療の全部又は一部が患者に提供された後)薬物のすべて又は一部が外殻を通って溶出するまで、外殻の一部又は全体の生分解を防止又は阻止するのに役立ち得る。例えば、一部の実施形態においては、被膜は、薬物が患者に投与されている間はより低速で、及び/又は治療が完了若しくはほぼ完了するとより高速で、外殻54が生侵食又は溶解されるようにすることができる。
【0131】
本明細書に記載のヒドロゲルプラグ及び薬物放出領域と同様に、溶出膜の特性によって、移植片からの治療薬の放出速度が少なくとも部分的に決まる。したがって、移植片からの総薬物放出速度は、オリフィスの面積及び体積、任意の薬物放出領域の表面積、薬物とオリフィスの両方及び/又は薬物放出領域に対する任意のヒドロゲルプラグのサイズ及び位置、並びに薬物及び体液に対する任意のオリフィスを覆う任意の層又は薬物放出領域の透過性を含む、ただしそれらに限定されない移植片の物理的特性によって制御することができる。
【0132】
一部の実施形態においては、本明細書に記載の移植片は、眼の様々な領域に移植される、又は該領域を通って移植される、サイズ及び形状とすることができる。例えば、移植片は、毛様体上腔、脈絡膜上腔、シュレム管、前房、硝子体液又は水晶体嚢内に位置することができる。一部の実施形態においては、移植片は、前房及び/又は後房内に全体が位置することができる。一部の実施形態においては、移植片は、前房及び/又は後房中に部分的に位置する。一部の実施形態においては、移植片は、移植片が光軸又は視軸内に位置しないように硝子体液又は腔内に配置される。
【0133】
本明細書に開示した一部の実施形態は、対象の眼内に全体が含まれるような寸法であり、その寸法は、標準的眼科技術によって対象ごとに得ることができる。移植手順の完了後、幾つかの実施形態においては、デバイスの近位端は、前眼房又はその近くに位置することができ、移植片の遠位端は、脈絡膜上腔内のどこにでも位置することができる。一部の実施形態においては、移植片の遠位端は、縁の近くに位置する。別の実施形態においては、移植片の遠位端は、眼の後方領域の斑の近くに位置する。別の実施形態においては、デバイスの近位端は、硝子体眼房、硝子体腔などの眼の別の領域又はその近くに位置することができる。一部のこうした実施形態においては、デバイスの遠位端も、眼の別の領域又はその近くに位置することができる。本明細書では「近く」という用語は、「において(at)」と同義で使用されることもたまにあるが、文脈によっては、薬物が移植片から標的組織に拡散するのに十分隣接した距離を示すこともある。更に別の実施形態においては、移植片は、第1の非眼球生理的空間と第2の非眼球生理的空間の間の距離に及ぶような寸法である。
【0134】
一実施形態においては、薬物送達移植片は、強膜岬の後方にある毛様体付着組織を通って前進させて、脈絡膜上腔中に配置される。毛様体付着組織は、一般に線維質又は多孔質であり、本明細書に開示した送達器具又は別の外科デバイスを用いて強膜岬から比較的容易に穿孔、切断又は分離される。こうした実施形態においては、移植片は、この組織を通って前進し、ぶどう膜強膜路に延在すると、強膜に隣接又は当接する。移植片は、ぶどう膜強膜路の後部内の所望の移植部位に達するまで、ぶどう膜強膜路内を強膜の内壁に沿って進められる。
【0135】
一部の実施形態においては、移植片の全長は、長さ1~30mmである。一部の実施形態においては、移植片の長さは、2~25mm、6~25mm、8~25mm、10~30mm、15~25mm又は15~18mmである。一部の実施形態においては、移植片の長さは、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25mmであり、移植片を含む送達デバイスは、挿入し、角膜を通って虹彩まで前進させ、角膜に自己封着の刺し穴のみを生じさせることができ、一部の実施形態においては、移植片の外径は、約100~600ミクロンである。一部の実施形態においては、移植片の直径は、約150~500ミクロン、約125~550ミクロン、又は約175~475ミクロンである。一部の実施形態においては、移植片の直径は、約100、125、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、460、470、475、480、490又は500ミクロンである。一部の実施形態においては、移植片の内径は、約50~500ミクロンである。一部の実施形態においては、内径は、約100~450ミクロン、150~500ミクロン、又は75~475ミクロンである。一部の実施形態においては、内径は、約80、90、100、110、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、410、420、425、430、440又は450ミクロンである。
【0136】
移植片は、移植中に移植片を23ゲージ~25ゲージ針又は中空器具内に取り付けることができる外径を有するサイズとすることができるが、より大きい又はより小さいゲージ器具又は別の専用の送達デバイスを使用することもできる。例えば、移植片は、移植片が18ゲージ針、19ゲージ針、20ゲージ針、21ゲージ針、22ゲージ針、23ゲージ針、24ゲージ針、25ゲージ針、26ゲージ針、27ゲージ針、28ゲージ針、29ゲージ針及び/又は30ゲージ針内に取り付けられる外径を有するサイズとすることができる。移植片は、その長さ全体又は一部を通して一定の直径を有することができる。一部の実施形態においては、移植片は、超薄壁針などの薄壁針内に取り付けられるサイズ及び形状とすることができる。移植片の実施形態は、最大外径が0.15~0.45mm、0.2~0.4mm、及び0.25~0.35mmを含む、約0.1~0.5mmとすることができる。
【0137】
更なる実施形態においては、移植片の内部管腔を親水性材料の層で被覆し、それによって眼液と管腔内に配置された治療薬又は複数の治療薬との接触速度を高めることができる。一実施形態においては、親水性材料は、眼液及び/又は薬物に対して透過性である。逆に、内部管腔を疎水性材料の層で被覆して、眼液と管腔内に配置された治療薬又は複数の治療薬との接触を協調的に抑制することができる。一実施形態においては、疎水性材料は、眼液及び/又は薬物に対して透過性である。
【0138】
図4A~
図4Cは、硝子体腔に直接配置するのに特に適切であり得る移植片50の追加の実施形態を示す。これらの実施形態は、材料、溶出速度、薬物、オリフィス、構成、送達、サイズ、被膜などを含む、ただしそれらに限定されない、多数の点で上記と同様又は同一であり、
図3A~
図3Dに関連する21段落前のものを含む、ただしそれに限定されない上記記述も
図4A~
図4Cに当てはまる。
図4Aは、移植片50の別の一実施形態の断面図である。
図4Aに示した移植片は、本明細書に記載の移植片の機能部の何れか1つ又は任意の組合せを含むことができる。上述したように、移植片は、生侵食性又は生体吸収性とすることができる。示したように、移植片は、カプセル形状とすることができる。例えば、移植片は、遠位端65b及び近位端65aを含むことができる。遠位端65b及び近位端65aは、丸めることができる。こうした構成は、移植片が患者の眼に入れられたときに、患者への傷害を防止又は阻止するのに役立ち得る。移植片の丸い端部は、毛様体上腔、脈絡膜上腔、シュレム管、前房、硝子体液、後房及び/又は水晶体嚢などの患者の眼の様々な領域に移植片をより容易に挿入するのに役立ち得る。
【0139】
図4Aに示すように、移植片は外殻54を含むことができる。外殻54は、1個以上のオリフィス56a、56bを含むことができる。オリフィス56a、56bは、移植片の遠位端65b又はその近くに位置することができる。上述したように、移植片は、内部又はヒドロゲルプラグ210及び薬物62を含むことができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲルプラグ210は、移植片の遠位端65b及び/又はオリフィス56a、56bの近くに位置する。薬物62は、ヒドロゲルプラグ210に隣接して位置することができる。例えば、薬物62は、移植片の近位端65a又はその近くに位置することができる。一部の実施形態においては、薬物62は薬物貯蔵器に含まれる。
【0140】
一部の実施形態においては、移植片の近位端65aは閉鎖端を形成する。一部の実施形態においては、移植片の近位端65aはキャップを含む。例えば、移植片の近位端65aは、移植片の近位端65aを通る薬物62の溶出を制限又は防止することができる。例えば、ヒドロゲルプラグ210及び薬物62は、薬物62が移植片の遠位領域の少なくとも一部を通過するように、外殻54内に位置することができる。幾つかの実施形態においては、薬物62は、外殻54を通過する前にヒドロゲルプラグ210の少なくとも一部を通過する。したがって、ヒドロゲルプラグ210は、薬物62の溶出を制御するのに役立ち得る。
【0141】
一部の実施形態においては、上述したように、オリフィス56a、56bは、ヒドロゲルプラグ210及び外殻54を通る薬物62の溶出を制御するのに役立ち得る。上述したように、薬物62は、薬物62が溶出前にヒドロゲルプラグ210を通過するように、外殻54内に位置することができる。一部の実施形態においては、オリフィス56a、56bは、薬物62がヒドロゲルプラグ210の少なくとも一部を通過した後に外殻54を通過できるようにすることができる。一部の実施形態においては、オリフィスは、本明細書で述べるように、移植片のヒドロゲルプラグ210及び/又は外殻54を通る薬物の溶出速度を調節するサイズ及び形状とすることができる。
【0142】
上述したように、移植片は、移植片のある実施形態においては、様々な体積のヒドロゲルプラグ及び薬物を含むことができる。例えば、溶出用移植片内に位置する薬物62とヒドロゲルの体積比を約1:1よりも大きくすることができる。例えば、一部の実施形態においては、薬物が移植片から溶出する前に、外殻54の内部体積の少なくとも50%が薬物62で満たされる。一部の実施形態においては、溶出用移植片内に位置する薬物とヒドロゲルプラグの体積比は、約1:1~約2:1、約2:1~約5:2、約5:2~約3:1、約3:1~約7:2、約7:2~約4:1、約4:1~約9:2の範囲、及び/又は別の範囲である。一部の実施形態においては、溶出用移植片内に位置する薬物とヒドロゲルの体積比は、数ある範囲の中でも、約1:1~約1:2、約1:2~約1:3、約1:3~約1:4の範囲である。
【0143】
図4Bは、移植片50の別の一実施形態の断面図である。
図4Bに示した移植片は、多数の点で本明細書で述べる移植片と類似又は同一である。
図4Bに示した移植片は、本明細書に記載の移植片の機能部の何れか1つ又は任意の組合せを含むことができる。
【0144】
図4Bに示すように、移植片は外殻54を含むことができる。外殻54は、1個以上のオリフィス56a、56bを含むことができる。オリフィス56a、56bは、移植片の遠位端65b又はその近くに位置することができる。一部の実施形態においては、外殻54は、場合によっては、移植片の近位端65a又はその近くに位置する1個以上のオリフィス56cを含むことができる。上述したように、移植片は、内部又はヒドロゲルプラグ210及び薬物62を含むことができる。示したように、薬物62のすべて又は一部は、ヒドロゲルプラグ210内に分散され、及び/又はヒドロゲルプラグ210と混合されて、ヒドロゲル・薬物混合物を形成することができる。ヒドロゲル・薬物混合物は、前もって形成することができる。例えば、ヒドロゲルと薬物は、外殻54の内部空間に挿入される前に混合することができる。一部の実施形態においては、ヒドロゲル・薬物混合物の体積の少なくとも50%は、上述したように、薬物を含むことができる。上述したように、オリフィス56a、56b及び/又はヒドロゲルは、外殻54を通る薬物の溶出速度を制御するのに役立ち得る。
【0145】
図4Cは、移植片50の別の一実施形態の断面図である。
図4Cに示した移植片は、多数の点で本明細書で述べる移植片と類似又は同一である。
図4Cに示した移植片は、本明細書に記載の移植片の機能部の何れか1つ又は任意の組合せを含むことができる。
【0146】
図4Cに示すように、移植片は外殻54を含むことができる。外殻54は、1個以上のオリフィス56a、56bを含むことができる。オリフィス56a、56bは、移植片の遠位端65b又はその近くに位置することができる。一部の実施形態においては、外殻54は、場合によっては、移植片の近位端65a又はその近くに位置する1個以上のオリフィス56cを含むことができる。上述したように、移植片は、内部又はヒドロゲルプラグ210及び薬物62を含むことができる。示したように、ヒドロゲルプラグ210は、薬物62の少なくとも一部を包囲することができる。上述したように、オリフィス56a、56b及び/又はヒドロゲルは、外殻54を通る薬物の溶出速度を制御するのに役立ち得る。薬物62は、外殻54を通って溶出する前にヒドロゲルプラグ210の全体又は一部を通過することができる。
【0147】
図6A及び
図6Bに模式的に示すように、細長い移植片は、本明細書に開示した複数の機能部を含むことができる。例えば、
図6Aは、治療薬62の複数のペレットを含む、近位端52及び遠位端50を有する細長い移植片を示す。本明細書でより詳細に考察するように、治療薬は、実施形態によっては、ペレット、微小ペレット、小胞、ミセル、又は別の膜状結合構造、油、エマルジョン、ゲル、スラリーなどの様々な剤形にすることができる。移植片は、薬物放出領域56を含む。さらに、
図6A及び
図6Bに示す実施形態は、流体流入経路38k及び流出経路56kを含み、したがって治療薬の送達と眼液流出経路(例えば、脈絡膜上腔)への流体誘導を組み合わせることができる。
【0148】
図6Dは、細長い移植片の一実施形態が本明細書に開示した幾つかの実施形態に従って配置された眼を模式的に示す。示したように、移植片の近位端52は眼の前部近くにあり、移植片の遠位端50はより後方の位置にある。移植片は、一実施形態においては脈絡膜上腔に移植することができ、薬物放出領域56が眼の後方領域において治療薬58を移植片から溶出させるように配置することができる。ここでは明示されていないが、移植片は、場合によっては、本明細書に記載の流体流入経路及び流出経路を含むことができることを理解されたい。
【0149】
眼移植片の別の実施形態は、少なくとも部分的に毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔に配置されるように構成することができ、以下のセクションで考察するように1個以上のキャップ又は薬物放出エレメントを含むことができる。
図18は、薬物放出エレメントを有する眼移植片900の一例示的実施形態の斜視図である。
図19は、眼移植片900の一例示的実施形態の側面図である。
図20は、眼移植片900の一例示的実施形態の断面図である。眼移植片900の種々の機能部は、
図2A~
図2Bに示し、又は
図2A~
図2Bに関連して記述し、上述した、機能部と類似又は同じである。
【0150】
眼移植片900は、外殻906を含むことができる。移植片の外殻及び場合によっては他の部品は、好ましくは、生分解性材料でできている。外殻906は、内部チャンバ908を画定することができ、内部チャンバ908は、本明細書で述べるように1種以上の薬物を保持する薬物貯蔵器とすることができる。外殻906は、患者の眼の毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔に移植されるように構成することができる。外殻906は、略直線形状を有することができ、又は移植片は、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔にほぼ合致するような曲率にあらかじめ湾曲させることができる。外殻906は、一部の実施形態においては、例えば、眼移植片が送達装置中にあるときには略直線形状を有し、眼(例えば、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔)に移植されたときには湾曲形状を有することができるように、柔軟にすることができる。外殻906は、遠位端902を含むことができ、遠位端902は、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔への挿入を容易にするために先細りにすることができる。
【0151】
外殻906は、薬物放出エレメント930を含むことができる近位端部904を含むことができる。一部の実施形態においては、近位端部904は、段部又は隆起部905が近位端部904と外殻906の中心部の間に形成されるように、外径を大きくすることができる。一部の実施形態においては、眼移植片900は、段部又は隆起部905が挿入部位(例えば、毛様体組織)に隣接する眼組織に接するまで、眼(例えば、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔)に挿入することができる。段部又は隆起部905は、眼移植片900の挿入し過ぎを防止するのに役立ち得る。眼移植片900は、本明細書で述べるように、眼移植片900の近位端などから、例えば前房20に、薬物を放出する(例えば、溶出する)ように構成することができる。薬物放出場所(例えば、近位端)は、挿入部位に隣接する眼組織が眼移植片900の薬物放出場所を覆う、又はふさぐのを防止するために、段部又は隆起部905から距離907だけ離すことができる。例として、距離は、約25ミクロン、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約1250ミクロン、約1500ミクロン、又はこれらの距離の何れかによって限定される範囲を含む、それらの間の任意の値とすることができる。一部の実施形態においては、段部又は隆起部905は、横方向に外向きに、
図18~
図20に示したよりも遠くに延在することができる。段部又は隆起部905は、約25ミクロン、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、又はこれらの距離の何れかによって限定される範囲を含む、それらの間の任意の値とすることができる距離だけ横方向に外向きに延在することができる。
【0152】
眼移植片900は、眼に移植したときに移植片を所定の位置に固定するように構成された1個以上の保持機能部910を含むことができる。1個以上の保持機能部910は、1個以上の環状リブを外殻906の外面に含むことができる。リブは、斜めの遠位側面を有することができ、及び/又は眼移植片900が意図せずに眼組織から遊離するのを防止しながら眼移植片900の眼中への挿入を容易にするように逆とげを付けることができる。一部の実施形態においては、リブは、送達装置中の配置を容易にするために、近位端部904の外径とほぼ同じ外径を有することができる。一部の実施形態においては、1個以上の保持機能部910は、挿入部位に隣接する眼組織とかみ合うように構成することができる。例えば、1個以上の保持機能部910は、近位端部904若しくはその近く、又は段部若しくは隆起部905若しくはその近くに存在することができる。一部の実施形態においては、保持機能部910を省略することができ、外殻906を周囲の眼組織との摩擦によって所定の位置に保持することができる。
【0153】
眼移植片900は、薬物放出エレメント930を含むことができる。薬物放出エレメントについては、以下のセクションで更に考察する。
【0154】
幾つかの実施形態においては、移植片は涙点プラグを含む。一部のこうした実施形態においては、移植片内の薬物の物理的配置は、薬物の送達のタイミングに有利である。こうした手法は、幾つかの実施形態においては、ステロイドとシクロスポリンを併用してドライアイを処置するときなどに有用である。ドライアイの多くの現行療法が、第1の期間(例えば、2週間)にステロイド点眼剤を用いた初期処置を採用している。初期期間後にシクロスポリン点眼剤を処置計画に追加する。その後、ステロイドを次いで次第に減らし、60日目に終了して、シクロスポリン療法を必要な限り単独で継続する。しかし、本明細書に開示した一実施形態によれば、涙点移植片は、ステロイド及びシクロスポリンを適切なタイミングで送達して、ほぼ一定のゼロ次薬物投与を行うことができる。こうした投与プロファイルは、一般に、点眼剤などで行われるボーラス送達よりも効率的と考えられる。幾つかの実施形態においては、涙点プラグは、本明細書に開示するように、薬物負荷量が放出されると生侵食されるように構成され、一部の実施形態においては、薬物負荷量のすべて又はほぼすべてが放出されると完全に生侵食される。
【0155】
多剤を採用する幾つかの実施形態においては、第2(又は第3など)の薬剤は、第1の薬剤と組み合わせると、相乗効果をもたらす。別の実施形態においては、第2の薬剤は、第1の薬剤に付随する1つ以上の副作用を軽減する。
【0156】
したがって、幾つかの実施形態は、対象の眼の涙点に挿入するための移植片を提供し、この移植片は、近位端、遠位端を有する外殻であって、内部管腔を画定する形状であり、対象の眼の涙点に挿入するための寸法である外殻、内部管腔内に配置された少なくとも1種の第1の活性薬物、少なくとも1つの薬物放出領域の外殻の近位部、及び内部管腔内の遠位閉鎖部材であって、移植片の遠位端からの第1の活性薬物の溶出を防止する遠位閉鎖部材を含む。
【0157】
幾つかのこうした実施形態においては、第1の活性薬物は、少なくとも1つの薬物放出領域を通過することによって、管腔から対象の眼の涙液膜に溶出する。一部の実施形態においては、移植片は、外殻の遠位端が涙管中に位置する状態で移植される寸法である。一部の実施形態においては、移植片は、外殻の遠位端が涙嚢中に位置する状態で移植される寸法である。幾つかの実施形態においては、移植片は、外殻の遠位端が鼻涙管中に位置する状態で移植される寸法である。
【0158】
幾つかの実施形態においては、対象の眼の涙点に挿入され、2種以上の活性薬物を対象の眼に送達するように構成された涙点移植片であって、(i)少なくとも1つの薬物放出領域及びフランジを含む近位端と、(ii)閉鎖遠位端と、(iii)管腔内に位置する少なくとも2種の活性薬物を含む内部管腔とを含む外殻を含む、涙点移植片も提供される。
【0159】
幾つかの実施形態においては、対象の眼の涙点に挿入され、2種以上の活性薬物を対象の眼に送達するように構成された涙点移植片であって、移植片は、(i)少なくとも1つの薬物放出領域及びフランジを含む近位端と、(ii)閉鎖遠位端と、(iii)管腔内に位置する少なくとも2種の活性薬物を含む内部管腔とを含む外殻を含み、薬物放出領域は、内部管腔の最近位部に位置する環状リングを通る開口部を含み、前記開口部は、2種以上の活性薬物の溶出が閉鎖部材を通してのみ起こるようにし、開口部の寸法は、2種以上の活性薬物の溶出速度を少なくとも部分的に規定し、フランジは、移植片が涙点に挿入されると眼瞼の表面に静止するように構成され、第1及び第2の活性薬物は、少なくとも1つの薬物放出領域を通過することによって管腔から対象の眼の涙液膜に溶出する、涙点移植片も提供される。
【0160】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの薬物放出領域は、少なくとも1個の開口部を含む。さらに、一部の実施形態においては、移植片は、少なくとも1個の開口部を閉鎖する少なくとも1枚の膜を更に含み、膜は、少なくとも1種の第1の活性薬物に対して透過性であり、少なくとも1種の第1の活性薬物の溶出が少なくとも1枚の膜を通してのみ起こるようにする。
【0161】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの薬物放出領域は、外殻を通って移植片の近位部全体に無作為に、又はパターン化された配列で、配置された複数の開口部を含む。前述した通り、複数の開口部の少なくとも一部は、第1の活性薬物に対して透過性の膜で閉鎖される。
【0162】
本明細書に記載の一部の実施形態では、ゼロ次又は擬ゼロ次動力学で移植片から薬物(又は複数の薬物)が溶出する。
【0163】
一部の実施形態においては、眼内標的は、後眼房、前眼房、前眼房と後眼房の両方、又は斑、網膜、視神経、毛様体、及び眼内脈管構造である。
【0164】
幾つかの実施形態においては、薬物は、眼内標的組織に作用して、治療効果を長期間示す。一実施形態においては、薬物はステロイドを含む。こうした実施形態においては、移植片は、総ステロイド用量約10~約1000μgを含み、ステロイドは、移植片から約0.05~約10μg/日の速度で放出され、及び/又はステロイドは、患部標的組織又は損傷標的組織に濃度約1~約100ナノモルで作用する。一部の実施形態においては、ステロイドは、生理液の蓄積に付随する副作用を更に生じ、任意選択の分路は、蓄積した液を第1の場所から遠隔の第2の場所に(例えば、前房からシュレム管、鼻涙管などの既存の生理的流出経路に)輸送する。
【0165】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの薬物放出領域は、前記2種以上の活性薬物に対して透過性である閉鎖部材を含み、閉鎖部材は、2種以上の活性薬物の溶出が閉鎖部材を通してのみ起こるようにする。幾つかの実施形態においては、閉鎖部材の厚さは、活性薬物(又は複数の活性薬物)の溶出速度を少なくとも部分的に規定する。フランジを有する幾つかの実施形態においては、フランジは、移植片が涙点に挿入されると眼瞼の表面に静止するように構成される。幾つかの実施形態においては、活性薬物(又は複数の活性薬物)は、少なくとも1つの薬物放出領域を通過することによって、管腔から対象の眼の涙液膜に溶出する。
【0166】
幾つかの実施形態においては、閉塞性の膜は、前記第1の活性薬物(及び第2又はそれ以上)に対する前記閉鎖部材の透過性、所望の関連するタイミング、並びに前記第1の活性薬物及び第2の活性薬物の溶出の持続時間に基づいた寸法である。幾つかの実施形態においては、閉鎖部材は厚さが約0.0001~0.0005インチである。ある実施形態においては、閉鎖部材は、移植片の外殻と一体的に形成される。一部の実施形態においては、閉鎖部材は、更に、閉塞性の膜を通る無作為に又はパターン化された穴を含む。
【0167】
一部の実施形態においては、第1の活性薬物は、内部管腔内で第2の活性薬物の位置よりも近位に位置する。一部の実施形態においては、第3の活性薬物が含まれ、ある種のこうした実施形態においては、第1の活性薬物と第2の活性薬物は互いに隣接して位置し、第1の活性薬物と第2の活性薬物の両方は、内部管腔内で第3の活性薬物の位置よりも近位に位置する。
【0168】
幾つかの実施形態においては、活性薬物(又は複数の活性薬物)は、錠剤、ナノ分散物又はそれらの組合せとして処方される。一部の実施形態においては、第1の活性薬物は不連続第一相として形成され、第2の活性薬物は、第1の活性薬物が分散する液体粒子又は固体粒子の分散物として処方される。
【0169】
幾つかの実施形態においては、デバイスは、アモルファス固体、粉体若しくは結晶性固体の形で、又はこれらの懸濁液の形で、又は溶液の形で、タンパク質薬物を充填することができる。デバイスに懸濁液又は溶液を充填する場合、タンパク質薬物の初期濃度は、場合によっては、約100~約150mg/mL、約150~約200mg/mL、約200~約250mg/mL、約250~約300mg/mL、約300~約350mg/mL、約350~約400mg/mL、約400~約450mg/mL、約450~約500mg/mLを含む、約100~約500mg/mLの範囲、上記の間の濃度とすることができる。一部の好ましい実施形態においては、濃度は約200~約300mg/mLの範囲である。
【0170】
幾つかの実施形態においては、薬物は、前処理(凍結乾燥など)中又は眼におけるその使用中にタンパク質薬物を安定化するトレハロースなどの賦形剤を含むことができる。トレハロースの濃度によっては、デバイスの内部からデバイスの外部へ浸透勾配が生じる場合があり、硝子体からの水分がデバイスに浸入して、薬物の一部を追い出す傾向がある。この事象は、初期の突発的溶出が望ましい場合には意図して行うことができる。それ以外では、トレハロースの濃度を等張レベルまで低下させることができ、又は複数のヒドロキシル残基を有するポリマーを利用して、容量オスモル濃度を低下させ、溶出による損失を遅らせることができる。
【0171】
別の賦形剤は、生体吸収性材料が加水分解したときに中性pHを維持する緩衝剤を含むことができる。こうした緩衝剤は、溶出によるそれらの損失を遅らせるポリマーとすることもできる。
【0172】
幾つかの実施形態においては、移植片の外殻は、移植片を涙点に固定するために、膨張部を遠位領域に含む。
【0173】
幾つかの実施形態においては、第1の活性薬物は1~75日間移植片から溶出し、第2の活性薬物は、第1の活性薬物が溶出した後に約1~約24か月間溶出する。
【0174】
幾つかの実施形態においては、本明細書に開示した移植片は、長さが約0.5~約2.5mmである。移植片の一部の実施形態は、長さが約1.4~約1.6mmである。移植片の一部の実施形態は、直径が約0.2~約1.5mmである。移植片の一部の実施形態は、直径が約0.2~約0.6mmである。
【0175】
実施形態によっては、第1の活性薬物をステロイドとすることができる。一部のこうした実施形態においては、ステロイドは、エタボン酸ロテプレドノール、デキサメタゾン及びトリアムシノロンアセトニドからなる群から選択される。一部の実施形態においては、第2の活性薬物は、シクロスポリンであり、場合によってはナノ分散物として処方される。幾つかの実施形態においては、第1の活性薬物はシクロスポリンAである。幾つかの実施形態においては、第1の活性薬物は涙液産生を促進する。
【0176】
幾つかの実施形態は、場合によっては、移植片を移植部位(例えば、涙点)に固定するように構成された保持突出部を含む。こうした保持突出部は、場合によっては、膨張部、隆起部、鉤爪、ねじ山、柔軟なリブ、鋲のような形状物、柔軟な逆とげ、有刺先端部、(ヒドロゲルなどの)膨張性材料、及び生体適合性接着剤の1つ以上を含む。一部の実施形態においては、膨張性材料は、移植片の外殻の外面に配置され、溶媒、例えば眼内液、涙液膜などと接触後に膨張する。
【0177】
幾つかの実施形態においては、涙点プラグ移植片の外殻は生侵食性材料を含む。本開示の他の所でより詳細に考察するように、幾つかの実施形態においては、生侵食性材料は、移植片全体(涙点挿入及び別の移植片位置を含む)が完全に又は実質的に生侵食される速度で侵食されるように構成される。これは、場合によっては、移植片(涙点移植片を含む)からの薬物負荷量のすべて又はほぼすべての溶出と同時に移植片自体が完全に又は実質的に侵食されるように、薬物放出のタイミングを模倣するように構成することができる。しかし、一部の実施形態においては、移植片の生侵食は、薬物負荷量のすべて又はほぼすべてが送達された後にのみ始まるように調整される。
【0178】
図2A及び
図2B又は
図5A及び
図5Bのものを含む、本明細書に記載の任意のデバイスは、薬物放出エレメントを含めた任意のキャップ、又は以下で考察する、
図5A、
図5B及び
図12~
図17に示すキャップを取り付けることができ、
図18~
図20に示す薬物送達移植片は、
図5A及び
図5Bに示すキャップを取り付けることができ、又はキャップを含まないことを理解されたい。さらに、本明細書に開示し、図示する実施形態の何れかは、薬物放出エレメントを含めたキャップを近位端の代わりに遠位端に含むことができ、又はそれらはそれらを両端に含むことができる。移植片がキャップを両端に有する場合、各端部のキャップのタイプは同じでも異なってもよく、各々は、同じ薬物を同じ管腔から、同じ薬物を管腔が管腔内の障害物によって2つの区画に分離された同じ管腔から、同じ薬物を異なる管腔から、異なる薬物を2種の薬物を分離する障害物を含む管腔から、又は異なる薬物を異なる管腔から送達することができる。2個のキャップが存在する場合、薬物送達のタイミング及び/又は速度は同じでも異なってもよく、異なるタイミングの場合、それらは重複しても離れていてもよい。同様に、
図5A及び
図5B又は
図18~
図20と同様の移植片は、
図2A及び
図2Bのそれのような、又は本明細書の他に記載の、排液腔を含むことができる。
【0179】
生分解性材料、サイズ、長さ、直径、保持機能部、分路、孔、被膜、遠位端形状などを含む、ただしそれらに限定されない、
図2A及び
図2B、
図5A及び
図5B並びに
図18~
図20の移植片の可能な機能部及び材料は、このセクション及び前のセクションを含む、本明細書を通して考察されることが更に理解される。明細書における物理的分離は意図されず、当業者には理解されるように、各アイデアは別個のものであり、本明細書に記載の種々のデバイスの実施形態に適用することができないことを意味するとして解釈されるべきではない。
【0180】
<薬物放出エレメントを含めたキャップ>
【0181】
幾つかの実施形態においては、移植片は、1個以上のキャップを含むことができる。こうした実施形態においては、移植片の1つ以上の部分が、別々に製造され、次いで標的部位にそのまま挿入することができる最終移植片のために組み合わせられる(例えば、組み立てられたキャップ及び移植片殻)。例えば、
図5Aに示すように、移植片53は、幾つかの実施形態においては、移植片殻54、(見やすいように異なる陰影で示されているが、場合によっては移植片殻と同じ又は異なる材料で構築された)分離キャップ54aを含む。種々のキャップ構成の何れかを、移植片殻の何れかと一緒に使用することができる。部品間の相互作用を可能にする寸法に調節されることは当然である。
【0182】
図5Aに示すように、キャップ54aは、中心開口部を含み、それによって薬物放出領域56を形成する。幾つかの実施形態においては、ある種のこうした実施形態の組立ては、移植片内に収容された薬物(又は複数の薬物)がそれを通して溶出する膜60の弾性又は半弾性特性を利用する。有利なことに、幾つかの実施形態においては、膜60の弾性によって、移植片のキャップを移植片殻上にプレスばめすることができ、次いで膜の弾性反発によってキャップに付与される圧力によって保持することができる(例えば、「自動ロック」機能)。したがって、膜60は、幾つかの実施形態においては、薬物(又は複数の薬物)の放出速度を規定するのに役立つだけでなく、移植片の内部を外部環境から封鎖するガスケットとしても機能し、したがって内部と外部の流体連通を膜60を介して起こるものに限定する。膜60は、薬物の溶出に適切な任意の材料又は複数の材料で構築することができる。例えば、膜60は、一実施形態においては、エチレン酢酸ビニルを含み、別の一実施形態においては、膜は、シリコーン又は別の部分若しくは半透過性材料、ホモポリマー、ポリマーブレンド、及びランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどのコポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリ(カルボナートウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、シリコーンポリ(カルボナートウレタン)、シリコーンポリ(エーテルウレタン)、PurSil(商標)、Elasthane(商標)、CarboSil(商標)及び/又はBionate(商標)を含む。外殻に関して上述した生分解性材料を膜、キャップ及び別の部品に使用することもできる。膜材料の選択及びその寸法(例えば、その厚さ)は、少なくとも部分的に、最適な薬物、それが移植片内に配置される形態(遊離酸、プロドラッグ、油、固体、ミセルなど)、眼液がデバイスから排除されるかどうかなどによって導かれる。
【0183】
図5Bは、本明細書に開示した移植片の一実施形態の分解組立図である。移植片53は、治療薬(又は複数の治療薬)を収容する少なくとも1個の内部管腔58を含む。上述したように、移植片は、更に、一緒に組み立てたときに特定の目的の治療薬(又は複数の治療薬)に合わせた(膜に基づく)薬物放出領域56を形成する、キャップ54a及び膜60を含む。
【0184】
種々の実施形態においては、(最適な特定の治療薬又は複数の治療薬と併せた)膜60の厚さは、約30~約200μm、約50~約200μm、約70~約200μm、約90~約200μm、約30~約100μm、約30~約115μm、約50~約125μm、約63~約125μm、約84~約110μm、約57~約119μm、及びその重複範囲を含む、約30~約200μmの範囲である。幾つかの実施形態においては、膜60の厚さも、目的の薬物(又は複数の薬物)の溶出速度を少なくとも部分的に限定する。キャップの開口部のサイズも溶出速度に寄与する。
【0185】
多数の代替及び変形が可能である。例えば、ある場合には、
図5A及び
図5Bに示す実施形態の組立ては、外殻54を用意し、薬物貯蔵器に充填することを含むことができる。膜60を有するキャップ54aは、殻54の近位端に適用することができる。一部の実施形態においては、キャップ54aは、所望の量の膜圧縮(例えば、30ミクロン、又は本明細書で述べる任意の他の適切な量)が得られるまで遠位方向に前進させることができ、次いでキャップ54aを可逆的又は不可逆的に殻54に圧着又は固定することができる。一部の実施形態においては、マイクロメータを使用して、膜圧縮の量を測定することができる。
【0186】
1つの特定の種類のキャップを本明細書では薬物放出エレメントと称する。
図13Aは、薬物放出エレメント530の遠位分解斜視図である。
図13Bは、薬物放出エレメント530の近位分解斜視図である。薬物放出エレメント530は、本明細書に記載のように、薬物を徐々に溶出するように構成することができる。薬物放出エレメント530は、移植片500の近位端504又はその近くに位置することができる。別の実施形態においては、それは、移植片の遠位端若しくはその近く、又は両端に位置することができる。殻506は、棚548を含むことができる。棚548の近位である殻506内部の近位部は、棚548の遠位である部分よりも直径を大きくすることができる。一部の実施形態においては、棚548は、その外周に不変の環状サイズを含むことができる。一部の実施形態においては、棚548はその外周に不変の環を持たず、ある場合には、棚548は、本明細書で述べるように、遠位シール部材の止め具を形成する1個以上の突出部とすることができる。殻506は、本明細書に記載のように、保持部532を受けるように構成することができる1個以上の溝550を含むことができる。一部の実施形態においては、殻506は、ほぼ向かい合わせに位置する2つの溝550を含むことができる。
【0187】
薬物放出エレメント530は、遠位シール部材552、膜554及び近位シール部材556を含むことができる。遠位シール部材552は、殻506上で棚548に設置することができる。遠位シール部材552は、外径を(棚548の遠位の)殻内部の遠位部よりも大きく、(棚548の近位の)殻内部の近位部よりも小さくすることができる。遠位シール部材552は、略環状とすることができ、及び/又はそれを通して延在する開口部558を有することができる。近位シール部材556は、外径を(棚548の遠位の)殻内部の遠位部よりも大きく、(棚548の近位の)殻内部の近位部よりも小さくすることができる。近位シール部材556は、殻506の近位端504に挿入することができる。近位シール部材556は、略円盤状とすることができる。近位シール部材556は、それを通して延在する少なくとも1個の開口部560を含むことができる。図示の実施形態においては、近位シール部材556は、2個の開口部560を含む。膜554は、遠位シール部材552と近位シール部材556の間に位置することができ、一部の実施形態においては、膜554は、遠位シール部材552と近位シール部材556の間で圧縮することができる。保持部532は、本明細書で述べるように、薬物放出エレメント530を(例えば、膜554が圧縮された)圧縮状態で保持することができる。遠位シール部材552は、段部562を含むことができる。
図14は、非変形状態の膜554を示す。圧縮されると、膜554は、変形して、段部562の空間を埋めることができる。
【0188】
遠位シール部材552及び/又は近位シール部材556は、本明細書で述べるように、セラミック、金属(例えば、チタン)などの種々の生体適合性材料で作製することができる。一部の実施形態においては、部材552及び/又は556をセラミック材料から形成すると、細部を部品上で作製するのに有利であり得る。一部の実施形態においては、シール部材552及び556の一方又は両方を、薬物に対して不透過性又はほぼ不透過性である弾性生体適合性材料(例えば、シリコーン)で作製することができる。膜554は、薬物を移植片500から溶出可能にする種々の適切な材料で作製することができる。一部の実施形態においては、膜をエチレン酢酸ビニル(EVA)で作製することができる。薬物の溶出速度は、EVA材料中の酢酸ビニルの%濃度に少なくとも部分的に依存し得る。酢酸ビニル濃度は、約40%以下、約30%以下、約25%以下、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%及び/又は少なくとも約30%とすることができ、これらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。酢酸ビニル濃度は、EVA材料の約10%~約30%、約20%~約30%、又は約25%~約30%とすることができる。一部の実施形態においては、酢酸ビニル濃度をEVA材料の約25%又は約28%とすることができる。
【0189】
本明細書で述べるように、膜554は、遠位シール部材552と近位シール部材556の間で圧縮することができる。近位シール部材556を遠位方向に加圧して膜554を圧縮することができ、保持部が近位シール部材556の近位に位置するように保持部532を溝550を通して挿入することができる。保持部532は、長さが殻内部の近位部の内径よりも大きく、溝550における殻506の外径以下とすることができる。挿入されると、保持部532は、2個の対向する溝550中に延在することができる。圧縮された膜554からの力によって、保持部532を近位方向に加圧することができ、溝550は、保持部を所定の位置に保持して、膜554を圧縮形状で維持することができる。保持部532は略砂時計形状を有することができるが、別の形状を一部の実施形態においては使用することもできる。保持部は、折り曲げて保持部532を固定することができる1個以上のタブ564を含むことができる。
図14は、タブ564を上向きにして挿入された保持部532を示す断面図である。
図15は、タブ564が近位シール部材556とかみ合うように折り曲げた状態で挿入された保持部532を示す部分断面図である。折り曲げると、タブ564は、1個以上の開口部560に入り、近位シール部材556とかみ合うことができ、それによって保持部532が動く(例えば、溝550から滑り出る)のを防止又は阻止することができる。一部の実施形態においては、膜554が圧縮されると、膜554の一部が近位方向に1個以上の開口部560中に押され、折り曲げられたタブ564が膜554とかみ合い、膜554を容易に固定することができる。
【0190】
薬物は、移植片500の近位端から溶出することができる。薬物は、内部チャンバ508から、遠位シール部材552中の少なくとも1個の開口部558を通り、膜554に進むことができる。膜554は、薬物が膜554を所望の溶出速度で通過できるように構成することができる。薬物は、近位シール部材556中の少なくとも1個の穴560を通過し、保持部532を通り、移植片500の近位端504から出ることができる。
図15では、薬物の溶出を2つの矢印で示す。一部の実施形態においては、膜554の厚さ及び/又は圧縮は、薬物の溶出速度に少なくとも部分的に影響し得る。一部の実施形態においては、膜554は、圧縮厚さを少なくとも約50ミクロン、少なくとも約75ミクロン、少なくとも約80ミクロン、少なくとも約90ミクロン、少なくとも約95ミクロン、少なくとも約100ミクロン、約200ミクロン以下、約150ミクロン以下、約125ミクロン以下、約110ミクロン以下、約105ミクロン以下、約100ミクロン以下、約95ミクロン以下、及び/又は約90ミクロン以下とすることができるが、これらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。膜554の圧縮厚さ566は、約75ミクロン~約125ミクロン、約85ミクロン~約105ミクロン、又は約90ミクロン~約100ミクロンとすることができる。一部の実施形態においては、膜554の圧縮厚さ566を約95ミクロンとすることができる。膜は、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約30ミクロン、少なくとも約40ミクロン、約50ミクロン未満、約40ミクロン未満、約30ミクロン未満、及び/又は約20ミクロン未満だけ圧縮することができるが、これらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。膜554は、約20ミクロン~約40ミクロン、又は約25ミクロン~約35ミクロンの量だけ圧縮することができる。膜554は、一部の実施形態においては、約30ミクロンだけ圧縮することができる。膜554の圧縮は、膜554の長期作用を数年間向上させることができる。
【0191】
膜554に適用される圧縮量は、組立て中に人によってなされる決定ではなく、移植片500部品の寸法によって設定されるので、人の決定に依存せずに確実に適用することができる。例として、棚548と溝550の近位端の間の長軸方向の距離568を約235ミクロンとすることができる。遠位シール部材558は、長軸方向の厚さ570を約65ミクロンとすることができる。近位シール部材556は、長軸方向の厚さ572を約50ミクロンとすることができる。保持部532は、長軸方向の厚さを約25ミクロンとすることができる。長軸方向の厚さ約125ミクロンの膜554を長軸方向の厚さ566約95ミクロン(以下)に圧縮し、長軸方向の厚さ574が約25ミクロンである保持部532を挿入して、膜554を圧縮形態で維持することができる。したがって、それぞれの部品の寸法の規定によれば、膜554は厚さ125ミクロンから厚さ95ミクロンに30ミクロンだけ圧縮される。
【0192】
多数の変形が可能である。例えば、
図16は、一部の実施形態においてシール528の代わりに使用することができる代替シール576の一例示的実施形態の斜視図である。シール576は、単一一体型部分とすることができ、薬物に対して不透過性又はほぼ不透過性である弾性材料(例えば、シリコーン)で形成することができる。シール576は、遠位膨張部578及び近位膨張部580を含むことができ、そのどちらも、内部チャンバ508の内壁を封止するように構成することができる。
図17は、本明細書で述べる上部シール部材556の代わりに使用することができる代替上部シール部材582の一例示的実施形態の斜視図である。上部シール部材582は、略環状又はリング状である。上部シール部材582は、本明細書で述べる上部シール部材556の2個の比較的小さい穴560の代わりに単一の比較的大きい穴584を含む。より大きい穴584は、2個のより小さい穴560よりも速い溶出速度を生じることができる。同様に、遠位シール部材552の穴のサイズ及び数は、薬物の溶出速度に少なくとも部分的に影響し得る。移植片500は、溶出速度が約100ナノグラム/日以下、約75ナノグラム/日以下、約50ナノグラム/日以下、約40ナノグラム/日以下、約30ナノグラム/日以下、約25ナノグラム/日以下、約20ナノグラム/日以下、少なくとも約10ナノグラム/日、少なくとも約15ナノグラム/日、少なくとも約20ナノグラム/日、少なくとも約25ナノグラム/日、少なくとも約30ナノグラム/日、及び/又は少なくとも約40ナノグラム/日であるように構成することができるが、これらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。溶出速度は、約15ナノグラム/日~約35ナノグラム/日、又は約20ナノグラム/日~約30ナノグラム/日とすることができる。回避速度(elusion rate)は、ある場合には、約25ナノグラム/日とすることができる。薬物の溶出速度及び体積は、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、少なくとも約6年、少なくとも約7年、少なくとも約8年、少なくとも約9年、少なくとも約10年、約15年以下、約12年以下、約10年以下、約8年以下、約6年以下、及び/又は約4年以下の期間の薬物送達を与えることができるが、それらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。
【0193】
薬物送達眼移植片は、種々の異なる薬物体積を保持するように製造することができる。移植片は、少なくとも約30ナノリットル、少なくとも約40ナノリットル、少なくとも約50ナノリットル、少なくとも約60ナノリットル、少なくとも約70ナノリットル、少なくとも約80ナノリットル、少なくとも約90ナノリットル、少なくとも約100ナノリットル、少なくとも約110ナノリットル、少なくとも約120ナノリットル、少なくとも約130ナノリットル、少なくとも約140ナノリットル、少なくとも約150ナノリットル、約200ナノリットル以下、約175ナノリットル以下、約150ナノリットル以下、約130ナノリットル以下、約120ナノリットル以下、約110ナノリットル以下、約100ナノリットル以下、約90ナノリットル以下、約80ナノリットル以下、約70ナノリットル以下、約60ナノリットル以下、及び/又は約50ナノリットル未満を保持することができるが、これらの範囲の外側の値を一部の実施形態においては使用することができる。移植片は、約40ナノリットル~約150ナノリットル、又は約50ナノリットル~約120ナノリットルの体積の薬物を保持することができる。
【0194】
本明細書に開示した様々な別の実施形態は、薬物放出エレメント530及び/又は730、又は図示し、本明細書で述べる他の薬物放出エレメントと類似又は同じにすることができる薬物放出エレメントを含むことができる。例えば、一部の実施形態においては、眼移植片は、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔に少なくとも部分的に位置するように構成することができ、本明細書に開示した薬物放出エレメント(例えば、薬物放出エレメント530及び/又は730)と類似又は同じ機能部を有する薬物放出エレメントを含むことができる。
図18は、眼移植片900の一例示的実施形態の斜視図である。
図19は、眼移植片900の一例示的実施形態の側面図である。
図20は、眼移植片900の一例示的実施形態の断面図である。眼移植片900の種々の機能部は、
図2A、
図2Bに示し、又は
図2A、
図2Bに関連して記述し、上述した、機能部と類似又は同じである。
【0195】
眼移植片900は、外殻906を含むことができる。移植片の外殻及び場合によっては他の部品は、好ましくは、生分解性材料でできている。外殻906は、内部チャンバ908を画定することができ、内部チャンバ908は、本明細書で述べるように1種以上の薬物を保持する薬物貯蔵器とすることができる。外殻906は、患者の眼の毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔に移植されるように構成することができる。外殻906は、略直線形状を有することができ、又は移植片は、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔にほぼ合致するような曲率にあらかじめ湾曲させることができる。外殻906は、一部の実施形態においては、例えば、眼移植片が送達装置中にあるときには略直線形状を有し、眼(例えば、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔)に移植されたときには湾曲形状を有することができるように、柔軟にすることができる。外殻906は、遠位端902を含むことができ、遠位端902は、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔への挿入を容易にするために先細りにすることができる。
【0196】
外殻906は、薬物放出エレメント930を含むことができる近位端部904を含むことができる。一部の実施形態においては、近位端部904は、段部又は隆起部905が近位端部904と外殻906の中心部の間に形成されるように、外径を大きくすることができる。一部の実施形態においては、眼移植片900は、段部又は隆起部905が挿入部位(例えば、毛様体組織)に隣接する眼組織に接するまで、眼(例えば、毛様体上腔及び/又は脈絡膜上腔)に挿入することができる。段部又は隆起部905は、眼移植片900の挿入し過ぎを防止するのに役立ち得る。眼移植片900は、本明細書で述べるように、眼移植片900の近位端などから、例えば前房20に、薬物を放出する(例えば、溶出する)ように構成することができる。薬物放出場所(例えば、近位端)は、挿入部位に隣接する眼組織が眼移植片900の薬物放出場所を覆う、又はふさぐのを防止するために、段部又は隆起部905から距離907だけ離すことができる。例として、距離は、約25ミクロン、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約1250ミクロン、約1500ミクロン、又はこれらの距離の何れかによって限定される範囲を含む、それらの間の任意の値とすることができる。一部の実施形態においては、段部又は隆起部905は、横方向に外向きに、
図18~
図20に示したよりも遠くに延在することができる。段部又は隆起部905は、約25ミクロン、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、又はこれらの距離の何れかによって限定される範囲を含む、それらの間の任意の値とすることができる距離だけ横方向に外向きに延在することができる。
【0197】
眼移植片900は、眼に移植したときに移植片を所定の位置に固定するように構成された1個以上の保持機能部910を含むことができる。1個以上の保持機能部910は、1個以上の環状リブを外殻906の外面に含むことができる。リブは、斜めの遠位側面を有することができ、及び/又は眼移植片900が意図せずに眼組織から遊離するのを防止しながら眼移植片900の眼中への挿入を容易にするように逆とげを付けることができる。一部の実施形態においては、リブは、送達装置中の配置を容易にするために、近位端部904の外径とほぼ同じ外径を有することができる。一部の実施形態においては、1個以上の保持機能部910は、挿入部位に隣接する眼組織とかみ合うように構成することができる。例えば、1個以上の保持機能部910は、近位端部904若しくはその近く、又は段部若しくは隆起部905若しくはその近くに存在することができる。一部の実施形態においては、保持機能部910を省略することができ、外殻906を周囲の眼組織との摩擦によって所定の位置に保持することができる。
【0198】
眼移植片900は、薬物放出エレメント930を含むことができる。薬物放出エレメントは、本明細書で考察及び図示した他の遠位シール部材、膜及び近位シール部材と同じ又は類似の遠位シール部材952、膜954及び近位シール部材956を含むことができる。薬物放出エレメントを含む別の実施形態で本明細書に開示したことは、眼移植片900にも当てはまり、ここでは繰り返さない。膜954は、本明細書で述べるように、遠位シール部材952と近位シール部材956の間で圧縮することができる。保持部932は、本明細書で述べるように、薬物放出エレメント930を所定の位置に保持することができる。外殻906は1個以上の溝950を含むことができ、保持部932は、近位シール部材956の近位の1個以上の溝950とかみ合うことができる。2つの溝950は、外殻906の両側に位置することができ、保持部930は、一方の溝950を通り、内部チャンバ908を横切り、他方の溝950に挿入することができる。遠位シール部材952は、内部チャンバ908内の棚に設置することができる。圧縮された膜954は、遠位シール部材952を棚に押し付け、近位シール部材956を保持部932に押し付ける力を加えることができる。
【0199】
上記要素が、記述した特定の組合せ又は実施形態に移植片を限定するものと解釈すべきではないことを理解されたい。むしろ、考察した機能部は、本開示に係る薬物送達移植片の構築を柔軟にするように自由に交換可能である。
【0200】
<送達器具>
【0201】
本明細書に記載の系及び方法の別の一態様は、薬物を眼に送達し、場合によっては流体を前房から生理的流出空間に排出するための移植片を移植するための送達器具に関する。一部の実施形態においては、移植片は、移植部位から眼球を横切った場所にある部位から眼に挿入される。送達器具は、挿入部位から前房を通り移植部位まで眼球を横切って移植片を前進させるのに十分な長さである。器具の少なくとも一部を柔軟にすることができる。器具は、互いに長軸方向に移動可能な複数の部材を含むことができる。一部の実施形態においては、複数の部材は、1個以上の摺動可能なガイドチューブを含む。一部の実施形態においては、送達器具の少なくとも一部は湾曲している。一部の実施形態においては、送達器具の一部は堅く、器具の別の部分は柔軟である。
【0202】
一部の実施形態においては、送達器具は、遠位湾曲を有する。送達器具の遠位湾曲は、一部の実施形態においては、約10~30mmの半径として特徴づけることができる。一部の実施形態においては、遠位湾曲の半径は約20mmである。
【0203】
一部の実施形態においては、送達器具は、(
図22のχで示される大きさを有する)遠位角部88を有する。角度χは、送達器具の近位セグメント94に対して約90~180度として特徴づけることができる。一部の実施形態においては、角度χは約145~約170度として特徴づけることができる。一部の実施形態においては、角度は、約150~約170度、又は約155~約165度である。角度は、送達器具の近位セグメントから遠位セグメントまで滑らかに移行するように、小さい曲率半径を「肘」に導入することができる。遠位セグメントの長さは、一部の実施形態においては、約0.5~7mmにすることができ、一部の別の実施形態においては、遠位セグメントの長さは約2~3mmである。
【0204】
別の実施形態においては、湾曲した遠位端が通常は好ましい。こうした実施形態においては、送達器具/分路組立品の高さ(
図8の寸法90)は、一部の実施形態においては約3mm未満であり、別の実施形態においては2mm未満である。
【0205】
一部の実施形態においては、器具は、切り込み、穴又は開口部を前もって形成せずに組織を通過するように、鋭利な機能部を前端に有し、自己穿孔性、すなわち自己穿通性である。一部の実施形態においては、自己穿孔性である器具は、角膜及び/又は縁の組織のみを穿通するように構成される。別の実施形態においては、自己穿孔性である器具は、移植片を送達するために、前房隅角におけるものなどの内部眼組織を穿通するように構成される。あるいは、別個のトロカール、メス、スパチュラ又は類似の器具を使用して、移植片を眼組織(角膜/強膜又はより内部の組織)に通す前にこうした組織に切り込みを前もって形成することができる。一部の実施形態においては、移植片は、眼組織の鈍的切開に役立つ(したがって、組織損傷のリスクを低下させる)ように遠位端が丸い。しかし、別の実施形態においては、移植片も鋭利であり、先細であり、又は眼組織を穿通して移植に役立つように構成される。
【0206】
薬物溶出眼移植片の一部の実施形態を送達するために、器具は、器具を眼から引き抜くと、挿入部位が縫合なしに自己封着するように十分小さい断面を有する。送達器具の外寸は、好ましくは、約18ゲージより大きくなく、約27又は30ゲージより小さくない。
【0207】
薬物溶出眼移植片の一部の実施形態を送達するために、移植片が通過する中空針を用いて角膜組織に切り込みを入れる。針は、切り込みが自己封着するように小さい直径サイズを有し(例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26又は27ゲージ)、移植は粘弾性を有する、又は持たない、閉じた房で行われる。自己封着する切り込みは、スパチュラ形状のメスを使用して、角膜を通る略逆V字状の切り込みを入れる、従来の「トンネリング」手順によって形成することもできる。好ましい一態様においては、角膜を通る切り込みの形成に使用する器具は、手順中は適所にとどまり(すなわち、角膜の切り込みを通して延在し)、移植後まで除去されない。こうした切り込み形成器具は、眼移植片を留置するのに使用することができ、又は切り込み形成器具を引き抜かずに同じ切り込みを通した移植を可能にする送達器具と一緒に機能することができる。言うまでもなく、別の態様においては、種々の外科用具を1個以上の角膜の切り込みに複数回通すことができる。
【0208】
一部の実施形態は、ばね負荷推進システムを含む。一部の実施形態においては、ばね負荷推進器は、蝶番式ロッドデバイスに作動可能に接続されたボタンを含む。蝶番式ロッドデバイスのロッドは、推進器表面のくぼみに係合し、推進器のばねを圧縮された形態に保つ。使用者がボタンを押すと、ロッドがくぼみから離れ、それによってばねが復元して、推進器を前進させる。
【0209】
一部の実施形態においては、オーバーザワイヤ(over-the wire)システムを使用して移植片を送達する。移植片は、ワイヤで送達することができる。一部の実施形態においては、ワイヤは自己穿孔性である。ワイヤはトロカールとして機能することもできる。ワイヤは超弾性、柔軟、又は移植片に対して相対的に堅くすることができる。ワイヤは、ある形状を有するように前もって形成することができる。ワイヤは、湾曲していてもよい。ワイヤは、形状記憶を有しても、又は弾性でもよい。一部の実施形態においては、ワイヤをプルワイヤとすることができる。ワイヤは、可動カテーテルとすることもできる。
【0210】
一部の実施形態においては、ワイヤを移植片の管腔内に配置する。ワイヤは、管腔内で軸方向に動くことができる。管腔は、弁又は他の流れ調節デバイスを含んでも、含まなくてもよい。
【0211】
一部の実施形態においては、送達器具はトロカールである。トロカールは、屈曲又は湾曲していてもよい。一部の実施形態においては、トロカールは柔軟である。別の実施形態においては、トロカールは比較的堅い。別の実施形態においては、トロカールは曲がりにくい。トロカールが曲がりにくい実施形態においては、移植片は比較的柔軟である。トロカールの直径は、約0.001インチ~約0.01インチである。一部の実施形態においては、トロカールの直径は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009又は0.01インチである。
【0212】
一部の実施形態においては、移植片の近位端又はその近くに推進力を印加することによって移植片を送達する。推進力は、移植片の端部に加えられる引く力でも、押す力でもよい。
【0213】
器具は、眼中にあるとき、房水が送達器具を通過するのを防止するために、及び/又は器具の部材間を通過するのを防止するために、シール又は被膜を含むことができる。シールは、逆流を防止するのに役立つ。一部の実施形態においては、器具は、被膜及び親水性又は疎水性薬剤で被覆される。一部の実施形態においては、器具の一領域を被膜と親水性薬剤で被覆し、器具の別の一領域を被膜と疎水性薬剤で被覆する。送達器具は、更に、器具を構成する種々の部材間にシールを含むことができる。シールは、器具の部材の滑りばめ(slip-fit)表面間に疎水性又は親水性被膜を含むことができる。シールは、送達器具により運ばれるときに、移植片の近位に配置することができる。一部の実施形態においては、シールは、互いに接近して取り付けられるように機械加工された2個のデバイスの各々の少なくとも一セクションに存在する。
【0214】
送達器具は、複数の移植片を送達するように構成することができる。一部のこうした実施形態においては、移植片をデバイス内に縦に(又は移植片の数が2を超える場合は連続的に)配列することができる。
【0215】
一部の実施形態においては、送達デバイスは、鋭利な先端部を有する、23~25ゲージを含めた約21~30ゲージである、及び/又は内径0.25~0.35mmを含めた約0.15~0.45mmである、ほぼまっすぐな針又はカニューレを有する。針又はカニューレは、作動すると移植片を送達デバイスの遠位端から排出する引き金、プランジャ又はアクチュエータを有するハンドピースに作用可能に接続されている。移植片は、好ましくは、製造者によって送達デバイスに前もって装填されている。
【0216】
<手順>
【0217】
眼移植片の一部の実施形態を送達するために、移植は粘弾性を有する、又は持たない、閉じた房で行われる。
【0218】
移植片は、推進器などのアプリケータを用いて配置することができ、又はその全体を参照により本明細書に援用し、本明細書及び本開示の一部とする、2008年2月19日に発行された米国特許第7,331,984号に開示されたものなど、エネルギーを器具中に貯蔵した送達器具を用いて配置することができる。一部の実施形態においては、流体をアプリケータを通して注入して、高い流体圧力を移植片の前端で生成して、移植を容易にすることができる。
【0219】
本発明の一実施形態においては、眼の小柱網を通して小柱ステントを留置するのに使用されるものと類似した送達装置(又は「アプリケータ」)を使用する。こうした送達装置のある実施形態は、その各々を参照によりその全体を援用し、本明細書及び本開示の一部とする、2008年2月19日に発行された米国特許第7,331,984号、緑内障治療のために小柱分路を配置するためのアプリケータ及び方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)と題する米国特許出願公開第2002/0133168号、並びに2001年3月16日に出願された、緑内障治療のために小柱分路を配置するためのアプリケータ及び方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)と題する米国特許仮出願第60/276,609号に開示されている。
【0220】
一実施形態においては、送達装置2000は、ハンドピース、細長い先端部、保持具及びアクチュエータを含み、
図6Cに模式的に示されている。ハンドピース1000は、遠位端1002と近位端1004を有する。細長い先端部1010は、ハンドピースの遠位端に接続される。細長い先端部は、遠位部を有し、角膜の切り込みを通り、前眼房に配置されるように構成される。保持具1020(例えば、挿入チューブ)は、細長い先端部の遠位部に装着される。保持具は、薬物送達移植片を保持及び放出するように構成される。アクチュエータ1040は、ハンドピース上にあり、保持具を作動させて、薬物送達移植片を保持具から放出する。一実施形態においては、送達装置内の展開機構は、プッシュプル型プランジャを含む。
【0221】
一部の実施形態においては、保持具はクランプを含む。一部の実施形態においては、装置は、更に、薬物送達移植片が保持具によって保持されているときに負荷がかけられるように構成されたばねをハンドピース内に含み、ばねは、アクチュエータを作動させると少なくとも部分的に負荷が軽減され、薬物送達移植片を保持具から放出することができる。種々の実施形態においては、クランプは、薬物送達移植片の少なくとも近位部に締め付け力をかけるように構成された複数の爪を含む。保持具は、複数のフランジを含むこともできる。
【0222】
一部の実施形態においては、細長い先端部の遠位部は、柔軟な材料でできている。これは、柔軟なワイヤとすることができる。遠位部は、好ましくはハンドピースの長軸から約45度の、偏向範囲を有することができる。送達装置は、更に、細長い先端部に洗浄口を含むことができる。
【0223】
一部の実施形態においては、方法は、遠位端及び近位端を有するハンドピースと、ハンドピースの遠位端に接続された細長い先端部とを含む送達装置を使用することを含む。細長い先端部は、遠位部を有し、角膜の切り込みを通って前眼房中に配置されるように構成される。装置は、更に、細長い先端部の遠位部に装着された保持具と、保持具を作動させて薬物送達移植片を保持具から放出するハンドピース上のアクチュエータとを有し、保持具は、薬物送達移植片を保持及び放出するように構成される。
【0224】
送達器具は、角膜の挿入部位を通って前進し、眼球を横切って、又は後側を進んで、前房隅角に入り、前房隅角の基部に位置することができる。前房隅角を基準点として使用して、送達器具を更に略後方に進めて、移植片を前房隅角の内側の虹彩に進めることができる。
【0225】
場合によっては、移植片構造に基づいて、移植片は、前房隅角内に位置し、前房隅角の環状形状に一致した湾曲形状をとることができる。
【0226】
一部の実施形態においては、移植片を前房隅角の組織又は虹彩組織に隣接して配置することができ、推進チューブを送達器具の遠位端に向かって軸方向に前進させることができる。推進チューブが前進すると、移植片も前進する。移植片が組織を通り、もはや送達器具の管腔中にないように前進させてから、送達器具を引っ込めて、移植片を眼組織中に留置する。
【0227】
移植片の配置及び移植は、ゴニオスコープ又は他の従来の撮像機器を使用して行うことができる。一部の実施形態においては、送達器具を使用して、連続的に移植力を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、又はこれらの方法の組合せによって、移植片を所望の位置に移動させる。移植片が所望の位置に来たら、送達器具の遠位部を用いて軽くたたいて移植片を更に据え付けることができる。
【0228】
図9は、本明細書の実施形態に記載のように、薬物送達移植片を眼に移植する外科的方法の一実施形態を示す。第1の切り込み又はスリットは、縁21の後方、すなわち、乳白色の強膜11が透明な角膜12になり始める強膜11の領域の後方の場所の結膜及び強膜11に入れられる。一部の実施形態においては、第1の切り込みは、縁の約3mm後方を含む、縁21の後方である。一部の実施形態においては、
図9に示すように、手術用具が前房に(前後軸に対して)浅い角度で挿入されるように切り込みを入れる。別の実施形態においては、第1の切り込みは、器具の挿入角度を大きくすることができるように入れることができる(例えば、
図10~
図12参照)。さらに、第1の切り込みを薬物送達移植片の幅よりもわずかに大きくする。一実施形態においては、従来の毛様体解離術用スパチュラを第1の切り込みから毛様体上腔に挿入して、正確な解剖学的位置を確認することができる。
【0229】
薬物送達移植片の上面及び下面の一部は、移植片の前端が適切に配向するように、手術用具、例えば鉗子でしっかりと把持することができる。移植片は、粘弾性によって、又は推進チューブ若しくは移植片送達デバイスの壁との機械的インターロックによって、固定することもできる。一実施形態においては、移植片は、移植片の長軸が手術用具の把持端の長軸とほぼ同軸になるように配向される。薬物送達移植片は、第1の切り込みを通して配置される。
【0230】
送達器具は、挿入部位から眼球を横切り前房隅角に進み、強膜岬近くの場所に位置することができる。強膜岬を基準点として使用して、送達器具を更に略後方に進めて、移植片を虹彩方向に強膜岬のちょうど内側の場所の眼組織に進めることができる。
【0231】
場合によっては、移植片構造に基づいて、移植片の挿入頭部のせん断縁は、強膜岬と小柱網の後方の毛様体16との間を通ることができる。
【0232】
薬物送達移植片は、その挿入頭部の一部及び導管の第1の端部が前眼房20内に位置するまで、連続して後方に進めることができる。したがって、導管の第1の端部は前眼房20と流体連通することになる。薬物送達移植片の細長い本体の遠位端は、導管の第2の端部が脈絡膜上腔と流体連通するように、眼の脈絡膜上腔中に配置することができる。あるいは、移植片を前房隅角の組織に隣接して配置することができ、推進チューブを送達器具の遠位端に向かって軸方向に前進させることができる。推進チューブが前進すると、移植片も前進する。移植片が組織を通り、もはや送達器具の管腔中にないように前進させてから、送達器具を引っ込めて、移植片を眼組織中に留置する。
【0233】
移植片の配置及び移植は、ゴニオスコープ又は他の従来の撮像機器を使用して行うことができる。一部の実施形態においては、送達器具を使用して、連続的に移植力を加えることによって、送達器具の遠位部を用いて所定の位置まで移植片を軽くたたくことによって、又はこれらの方法の組合せによって、移植片を所望の位置に移動させる。移植片が所望の位置に来たら、送達器具の遠位部を用いて軽くたたいて移植片を更に据え付けることができる。
【0234】
一実施形態においては、薬物送達移植片を強膜11の一部に縫合して、移植片の固定を助ける。一実施形態においては、続いて、第1の切り込みを縫合して閉じる。薬物送達移植片を固定するのに使用される縫合材を、第1の切り込みを閉じるのに使用することもできることを理解されたい。別の一実施形態においては、薬物送達移植片は、移植片本体の外面と強膜11及び毛様体16及び/又は脈絡膜12の組織との相互作用により、移植片を強膜11に縫合せずにほぼ所定の位置に保持される。さらに、一実施形態においては、第1の切り込みは十分小さいので、切り込みは、薬物送達移植片の移植後に手術用具を引き抜くと切り込みを縫合せずに自己封着する。
【0235】
本明細書で考察するように、一部の実施形態においては、薬物送達移植片は、更に、前房20と脈絡膜上腔の間に排液デバイスを設けるように構成された管腔を含む分路を含む。移植すると、排液デバイスは毛様体解離を形成することができ、移植片は、分路をその長さに沿って通る房水の持続的な開存性の連通をもたらす。したがって、房水は、脈絡膜上腔に送達されて、そこで吸収され、眼内圧を更に低下させることができる。
【0236】
一部の実施形態においては、薬物送達移植片を縁又はその近くの小さい切り込みを通して、眼球を横切ってアブインテルノに送達することが望ましい(
図10)。システム全体の形状によれば、送達器具が(
図8のような)遠位湾曲部又は(
図7のような)遠位角部を含むことが有利である。前者の場合、薬物送達移植片は、湾曲部に沿った送達を容易にするために柔軟にすることができ、又は正確な経路に沿って動きやすいようにより緩く保持することができる。後者の場合、移植片を相対的に堅くすることができる。送達器具は、遠位角部を通過するのに十分柔軟である移植片前進要素(例えば、推進器)を内蔵することができる。
【0237】
一部の実施形態においては、移植片と送達器具は一緒に、縁21又はその近くの切り込みから前房20を通り、虹彩13を越え、毛様体筋付着部を通り、薬物送達移植片出口部がぶどう膜強膜路に位置する(例えば、強膜11と脈絡膜12の間に画定された脈絡膜上腔に接する)まで進む。
図10は、送達器具を縁21のかなり上方に挿入して使用することができる経眼移植手法(transocular implantation approach)を示す。別の実施形態においては(例えば、
図11参照)、切り込みをより後方、より縁21の近くに入れることができる。一実施形態においては、切り込みを眼の鼻側に入れ、薬物送達移植片40の移植場所を眼の耳側にする。別の一実施形態においては、薬物送達移植片の移植場所が眼の鼻側になるように切り込みを耳側に入れることができる。一部の実施形態においては、操作者は、送達器具を引き戻しながら、同時に推進デバイスを押して、
図12に示すように、薬物送達移植片出口部がその場所を斑34近くの脈絡膜上腔の後方領域に維持するようにする。移植片が送達器具から放出され、送達器具が近位に引っ込められる。送達器具は、前房から切り込みを通して引き抜かれる。
【0238】
一部の実施形態においては、緑内障患者の眼内圧を低下させるために、房水が線維性付着帯(fibrous attachment zone)を通って連続的に流出する薬物送達移植片を移植し、前房20をぶどう膜強膜路に接続することが望ましい。一部の実施形態においては、縁21の小さな切り込みを通して眼球を内部から(アブインテルノに)横切るデバイスを用いて、薬物送達移植片を送達することが望ましい。
【0239】
幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片を移植する微小侵襲(microinvasive)法を提供する。幾つかのこうした実施形態においては、眼外(ab externo)技術を利用する。一部の実施形態においては、技術は非穿通性であり、それによって移植方法の侵襲性を制限する。本明細書で考察するように、一部の実施形態においては、移植された薬物送達デバイスは分路を含む。一部の実施形態においては、こうした移植片は、薬物を同時に送達しながら、第1の場所からの流体の除去を容易にする。一部の実施形態においては、移植片は、流体を前房から脈絡膜上腔に通して、流体(例えば、眼房水)を前房から除去し、前房の圧力上昇を抑制するのを助ける。
【0240】
図8は、ヒトの眼の前部セグメントの縦割を示し、本明細書に記載の薬物送達移植片の実施形態と一緒に使用することができる送達器具38の別の一実施形態を模式的に示す。
図8においては、矢印82は、毛様体筋84と強膜11の線維性付着帯を示す。毛様体筋84は、脈絡膜28と同一の広がりを有する。脈絡膜上腔は、脈絡膜28と強膜11の界面である。眼の他の構造体としては、水晶体26、角膜12、前房20、虹彩13及びシュレム管22が挙げられる。
【0241】
送達器具/移植片組立品は、虹彩13と角膜12の間を通って虹彩角膜角に到達することができる。したがって、送達器具/分路組立品の高さ(
図8の寸法90)は、一部の実施形態においては約3mm未満であり、別の実施形態においては2mm未満である。
【0242】
脈絡膜28と強膜11の間の脈絡膜上腔は、一般に、眼の光軸98と約55度の角度96を成す。この角度は、前段落に記載した高さ条件に加えて、送達器具/移植片組立品の幾何学的設計において考慮すべき特徴である。
【0243】
薬物送達移植片システム全体の形状によれば、送達器具38が、
図8に示すような遠位湾曲部86、遠位角部、又はその組合せを内蔵することが有利である。遠位湾曲部(
図9)は、縁における角膜又は強膜の切り込みを通ってより滑らかに通過すると予想される。この実施形態においては、薬物送達移植片は、湾曲していても、又は柔軟であってもよい。あるいは、薬物送達移植片を送達器具の直線セグメント上、「肘」又は角部の遠位に搭載することができる。この場合、薬物送達移植片は、直線状で比較的堅くすることができ、送達器具は、角部を通って前進するのに十分柔軟である送達機構を内蔵することができる。一部の実施形態においては、薬物送達移植片は、硬質チューブとすることができる。ただし、移植片は、遠位セグメントの長さより長くない。
【0244】
送達器具38の遠位湾曲部86は、一部の実施形態においては約10~30mm、ある実施形態においては約20mmの半径として特徴づけることができる。直線セクション及び遠位端近くの単一角部を有する一実施形態における送達器具の遠位角度は、送達器具の近位セグメント94の軸に対して約90~170度として特徴づけることができる。別の実施形態においては、角度を約145~約170度とすることができる。角部は、送達器具の近位セグメント94から遠位セグメント92まで滑らかに移行するように、小さい曲率半径を「肘」に含む。遠位セグメント92の長さは、一部の実施形態においては約0.5~7mm、ある実施形態においては約2~3mmにすることができる。
【0245】
一部の実施形態においては、粘弾性又は他の流体を脈絡膜上腔に注入して、脈絡膜と強膜の間に薬物送達移植片がアクセスできる房又はポケットを形成する。薬物送達移植片が分路を含み、眼内圧(IOP)を低下させる実施形態においては、こうしたポケットは、脈絡膜及び強膜組織領域のより多くを露出させ、移植中に潤滑及び組織保護をもたらし、ぶどう膜強膜流を増加させる。一部の実施形態においては、25G又は27Gカニューレを用いて、例えば、毛様体筋付着部の切り込みを通して、又は強膜を通して(例えば、眼の外側から)、粘弾性材料を注入する。粘弾性材料は、移植前、移植中又は移植終了後に、移植片自体を通して注入することもできる。
【0246】
一部の実施形態においては、高浸透圧剤を脈絡膜上腔に注入する。こうした注入は、IOPの低下を遅らせることができる。したがって、脈絡膜吸収を一時的に低下させることによって、術後急性期における低眼圧を回避することができる。高浸透圧剤は、例えば、グルコース、アルブミン、HYPAQUE(商標)媒体、グリセロール又はポリ(エチレングリコール)とすることができる。高浸透圧剤は、患者が回復するにつれて分解又は流出して、安定で許容し得る低IOPになり、一過性の低眼圧を回避することができる。
【0247】
一部の実施形態においては、送達デバイスの遠位部は、針のように鋭利にされ、眼の強膜に開口部を形成することができ、ハンドピース上のプランジャ又はアクチュエータを押して、又は押し付けて、移植片をデバイスの遠位端から吐出させた後、眼の硝子体腔中への移植片、例えば
図4A~
図4Cの移植片の直接配置を可能にする。こうした実施形態においては、まっすぐな針又はカニューレが移植片を送達するのに好ましい可能性がある。
【0248】
<制御された薬物放出>
【0249】
本明細書に記載する薬物送達移植片は、薬物を収容し、移植片の種々の部品の設計に基づいて、長期間、制御された様式で移植片から薬物を溶出する機能を果たす。移植組成物の種々の要素、移植片の物理的特性、眼中の移植場所、及び薬物の組成は、一緒に働いて所望の薬物放出プロファイルを形成する。
【0250】
上述したように、幾つかの実施形態においては、薬物送達移植片は、眼に移植し、薬物のすべて又はほぼすべてを送達した後、生侵食、生体再吸収、生体吸収などによって分解する1種以上の生分解性材料でできている。こうした材料は、デバイスから送達される薬物に対して透過性、半透過性又は不透過性とすることができる。材料は、多孔質又は実質的に非多孔質であるように処方又は製造することができる。適切な生分解性材料は、場合によっては、柔軟性、親水性、疎水性、弾性などの1つ以上の別の物理的特性を有することができる。
【0251】
一部の実施形態においては、移植片は、デバイスからの薬物放出速度を制御するように操作される。一部のこうした実施形態においては、デバイスの外殻は、薬物送達速度をほぼ全面的に制御する。別のこうした実施形態においては、外殻は、薬物送達速度の一部を制御し、残りは、上述したように薬物放出エレメントなどの1つ以上の膜キャップシステムの一部であり得る薬物透過性膜によって制御される。別の実施形態においては、1つ以上の膜キャップシステムが薬物送達速度を実質的又は全面的に制御する。
【0252】
移植片及びその部品の製造に適切な生分解性材料としては、以下、すなわち、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルカルボナート)(PEC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D-ラクチド)(PDLA)、ポリ(DL-乳酸)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸コ-グリコリド(PLGA)などのコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(3-ヒドロキシブチラート)(PHB)、3-ヒドロキシバレラートと共重合されたPHB(PHBV)、ポリ(プロピレンフマラート)(PPF)、ポリ(酸無水物)(PAA)、ポリ(ブチレンスクシナート)(PBS)、ポリ(エチレンスクシナート)(PES)、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)(PHA)、ポリ(シアノアクリラート)(PCA)、ポリアセタール、ポリオルトエステル(POE)、ポリ(炭酸トリメチレン)(PTMC)を含めたポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、並びに上記のブレンド、コポリマー及び組合せ、並びに修飾多糖、例えば、デンプン、セルロース及びキトサンを含む、ただしそれらに限定されない天然ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0253】
材料は、内側及び/又は外側、片側又は両側のすべて又は一部を被覆することができる。被膜は、材料を通る薬物の溶出速度の変更(溶出速度の加速又は減速)、材料の分解速度の変更(分解速度の加速又は減速)、耐水性若しくは透過性の変更(耐性又は透過性の増加又は減少)、又は他の性質を含む、ただしそれらに限定されない様々な目的の何れかに役立ち得る。被膜は、好ましくは生分解性である。
【0254】
被膜は、ポリ(乳酸)、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-炭酸トリメチレン)、コラーゲン、ヘパリン化コラーゲン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、及び/又は他のポリマー若しくはコポリマーを含む、ただしそれらに限定されない任意の適切な材料とすることができる。適切な原子又は無機材料を使用することもできる。上述したように、デバイスからの薬物の溶出プロファイルを調整する種々の材料、コースティング(coasting)及び機構を、眼内留置用移植片及び涙点内留置用移植片を含む、本明細書に開示した任意のタイプの移植片に適用することができる。同様に、移植片の本体の生侵食性材料の使用は、眼内留置用移植片及び涙点内留置用移植片に使用することができる。眼内留置であろうと、涙点内留置であろうと、移植片の実質的又は完全に侵食する能力は、幾つかの実施形態において有利である。一部の実施形態においては、移植片の侵食は、すべて又はほぼすべての薬物が移植片から放出された後に起こる。一部の実施形態においては、移植片の侵食は、薬物放出の少なくとも一部と重複する。一部の実施形態においては、移植片の侵食は薬物放出と同時に起こり、すべて又はほぼすべての薬物が移植片から放出されたときには、移植片はかなり侵食されている。
【0255】
一部の眼疾患においては、治療は、ゼロ次放出、擬ゼロ次放出など、薬物を眼に投与する明確な動力学的プロファイルを必要とし得る。種々の実施形態の上記考察から、同様に、移植片からの薬物放出速度を調整する能力を用いて、所望の動力学的プロファイルを得ることができることを理解されたい。例えば、外殻及び任意のポリマー被膜の組成を操作して、薬物放出の特定の動力学的プロファイルを与えることができる。さらに、殻材料の厚さを含めた移植片自体の設計、並びに薬物放出エレメントを含めた任意のキャップの存在及び組成は、特定の薬物放出プロファイルを作成する手段を提供する方法に含まれる。同様に、PLGAコポリマー及び/又は他の制御放出材料及び賦形剤を使用して、調合薬物の放出の特定の動力学的プロファイルを与えることができる。ある実施形態においては、薬物のゼロ次放出は、上記機能部及び/又は変数の何れかを単独で又は組み合わせて操作することによって行うことができる。
【0256】
標的組織への薬物の制御放出に関連して、ある用量の薬物(又は複数の薬物)がある実施形態においてはある期間にわたることが望ましい。すなわち、一部の実施形態においては、移植片の寿命にわたって標的組織に送達される総薬物負荷量は、約10~約1000μgの範囲である。ある実施形態においては、総薬物負荷量は、約100~約900μg、約200~約800μg、約300~約700μg、又は約400~約600μgの範囲である。一部の実施形態においては、総薬物負荷量は、約10~約300μg、約10~約500μg、又は約10~約700μgの範囲である。別の実施形態においては、総薬物負荷量は、約200~約500μg、約400~約700μg、又は約600~約1000μgの範囲である。更に別の実施形態においては、総薬物負荷量は、約200~約1000μg、約400~約1000μg、又は約700~約1000μgの範囲である。一部の実施形態においては、総薬物負荷量は、575、590、600、610及び625μgを含む、約500~約700μg、約550~約700μg、又は約550~約650μgの範囲である。上記範囲が接する、重なる、又は含まれる別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
【0257】
同様に、別の実施形態においては、制御薬物送達量は、移植片からの薬物溶出速度に基づいて計算される。ある種のこうした実施形態においては、薬物の溶出速度は、約0.05μg/日~約10μg/日である。別の実施形態においては、約0.05μg/日~約5μg/日、約0.05μg/日~約3μg/日、又は約0.05μg/日~約2μg/日の溶出速度が得られる。別の実施形態においては、約2μg/日~約5μg/日、約4μg/日~約7μg/日、又は約6μg/日~約10μg/日の溶出速度が得られる。別の実施形態においては、約1μg/日~約4μg/日、約3μg/日~約6μg/日、又は約7μg/日~約10μg/日の溶出速度が得られる。更に別の実施形態においては、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8μg/日を含む約0.05μg/日~約1μg/日の溶出速度が得られる。上記範囲が接する、重なる、又は含まれる別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
【0258】
上記パラメータの1個以上の代わりに、又はそれに加えて、移植片からの薬物の放出は、標的組織における薬物の所望の濃度に基づいて制御することができる。一部の実施形態においては、標的組織における薬物の所望の濃度は、約1nM~約100nMの範囲である。別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約10nM~約90nM、約20nM~約80nM、約30nM~約70nM、又は約40nM~約60nMの範囲である。更に別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約1nM~約40nM、約20nM~約60nM、約50nM~約70nM、又は約60nM~約90nMの範囲である。更に別の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、約1nM~約30nM、約10nM~約50nM、約30nM~約70nM、又は約60nM~約100nMの範囲である。一部の実施形態においては、作用部位における薬物の所望の濃度は、46、47、48、49、50、51、52、53及び54nMを含む、約45nM~約55nMの範囲である。上記範囲が接する、重なる、又は含まれる別の薬物範囲も、ある実施形態においては使用されることを理解されたい。
【0259】
<薬物>
【0260】
薬物送達移植片と一緒に利用する治療薬としては、単独又は組み合わせた以下の1種以上の薬物が挙げられ得る。利用する薬物は、以下の薬物の1種以上のプロドラッグ、等価物、誘導体又は類似体とすることもできる。薬物としては、緑内障治療薬、眼剤、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、駆虫薬、抗真菌剤)、抗炎症剤(ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬を含む)を含めた医薬品、ホルモン、酵素又は酵素関連成分、抗体又は抗体関連成分、オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどを含む)、DNA/RNAベクター、ウイルス(野生型又は遺伝子改変)又はウイルスベクター、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分、及び1種以上の生物学的成分を産生するように構成された生細胞を含めた生物学的製剤が挙げられ得るが、それらに限定されない。任意の特定の薬物の使用は、その主要効果、又は規制行政機関によって認可された治療適応症若しくは使用法に限定されない。薬物としては、別の薬物又は治療薬の1つ以上の副作用を軽減又は処置する化合物又は別の材料も挙げられる。多くの薬物は複数の作用様式を有するので、下記の任意の一薬効分類内の任意の特定の薬物の記載は、薬物の可能な一用途の単なる代表にすぎず、眼移植システムを用いたその使用の範囲を限定することを意図したものではない。
【0261】
上述したように、治療薬は、当該技術分野で公知の任意の数の賦形剤と組み合わせることができる。上記生分解性ポリマー賦形剤に加えて、ベンジルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セチルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ゼラチン、グリセリン、モノグリセリド、ジグリセリド、カオリン、塩化カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マルトデキストリン、ポリソルベート、アルファ化デンプン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コーンスターチ、タルクなどを含む、ただしそれだけに限定されない他の賦形剤を使用することができる。1種以上の賦形剤を総量約1%、5%、又は10%しか含まなくてもよく、別の実施形態においては、総量50%、70%又は90%も含むことができる。
【0262】
薬物の例としては、種々の分泌抑制薬、有糸分裂阻害薬及び他の抗増殖剤、例えば、とりわけ、血管新生抑制剤、例えば、アンジオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤及び抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)薬、例えば、ラニビズマブ(例えば、LUCENTIS(登録商標))及びベバシズマブ(例えば、AVASTIN(登録商標))、ペガプタニブ(例えば、MACUGEN(登録商標))、アフリベルセプト(例えば、EYELEA(登録商標))、抗PDGF(例えば、FOVISTA(登録商標))、ラタノプロステンブノド(例えば、VESNEO(登録商標))、ネタルスジルAR-11324(例えば、RHOPRESSA(登録商標))、オロパタジン、スニチニブ及びソラフェニブ、並びに血管新生抑制作用を有する種々の公知の小分子及び転写阻害剤の何れか;種々のクラスの公知の眼用薬剤、例えば、緑内障薬、例えば、アドレナリン拮抗薬、例えば、ベータ遮断薬、例えば、アテノロール プロプラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール、レボブノロール及びチモロール;アドレナリン作動薬又は交感神経作動薬、例えばエピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジン及びブリモニジン;副交感神経作動薬又はコリン作動性作動物質、例えば、ピロカルピン、カルバコール、ホスホリンヨウ素及びフィゾスチグミン、サリチラート、塩化アセチルコリン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、臭化デメカリウム);ムスカリン作用薬;炭酸脱水酵素阻害薬、例えば、局所薬及び/又は全身薬、例えば、アセタゾラミド(acetozolamide)、ブリンゾラミド、ドルゾラミド及びメタゾラミド、エトキシゾラミド、ダイアモックス並びにジクロフェナミド;散瞳薬-毛様体筋麻痺薬、例えば、アトロピン、シクロペントレート、サクシニルコリン、ホマトロピン、フェニレフリン、スコポラミン及びトロピカミド;プロスタグランジン、例えば、プロスタグランジンF2アルファ、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、又はプロスタグランジン類似薬、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト及びウノプロストンが挙げられ得る。
【0263】
薬物の他の例としては、抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド及びコルチコステロイド、例えば、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21-ホスファート、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスファート、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ロテプレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、リメキソロン、並びに非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナク、及びケトロラック、サリチラート、インドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン(naxopren)、ピロキシカム及びナブメトン;感染症治療薬又は抗菌剤、例えば、抗生物質、例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノ配糖体、例えば、ゲンタマイシン及びトブラマイシン;フルオロキノロン、例えば、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン;バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、トリメトプリム及びスルファセタミド;抗真菌薬、例えば、アムホテリシンB及びミコナゾール;抗ウイルス剤、例えば、イドクスウリジン トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン;抗真菌剤;免疫調節剤、例えば、抗アレルギー薬、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、セチリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン;抗ヒスタミン剤、例えばアゼラスチン、エメダスチン及びレボカバスチン;免疫薬(ワクチン、免疫刺激薬及び/又は免疫抑制薬など);肥満細胞安定剤、例えば、クロモリンナトリウム、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル、オロパタジン及びペミロラスト毛様体切除剤、例えば、ゲンタマイシン及びシドフォビル;並びに他の眼用薬剤、例えばベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロスポリン及びピロカルピン;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;うっ血除去薬、例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン;脂質又は降圧脂質;ドパミン作動性作動物質及び/又は拮抗物質、例えば、キンピロール、フェノルドパム、及びイボパミン;血管れん縮阻害剤;血管拡張剤;降圧剤;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン-1受容体拮抗物質、例えばオルメサルタン;微小管阻害剤;分子モーター(ダイニン及び/又はキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨格制御因子、例えば、サイトカラシン、ラトランクリン、スウィンホリドA、エタクリン酸、H-7及びRho-キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害剤;細胞外基質の調節物質、例えば、tert-ブチルヒドロ-キノロン及びAL-3037A;アデノシン受容体作動物質及び/又は拮抗物質、例えばN-6-シクロヘキシルアデノシン及び(R)-フェニルイソプロピルアデノシン;セロトニン作動薬;ホルモン薬、例えば、エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド及びバソプレシン視床下部放出因子;成長因子拮抗物質又は成長因子、例えば、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子又はその拮抗物質(例えば、その各々のその全体を参照により本明細書に援用する米国特許第7,759,472号又は米国特許出願第12/465,051号、同12/564,863号若しくは同12/641,270号に開示されたもの)、トランスフォーミング増殖因子ベータ、ソマトトロピン、フィブロネクチン、結合組織成長因子、骨形成タンパク質(BMP);サイトカイン、例えば、インターロイキン、CD44、コクリン、及び血清アミロイド、例えば血清アミロイドAも挙げられ得る。
【0264】
他の治療薬としては、神経保護薬、例えば、ルベルゾール(lubezole)、ニモジピン及び関連化合物、例えば、血流改善剤、例えば、ドルゾラミド又はベタキソロール;血液酸素化を促進する化合物、例えば、エリスロポイエチン;ナトリウムチャネル遮断薬;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニルバジピン又はロメリジン;グルタミン酸阻害剤、例えばメマンチン ニトロメマンチン、リルゾール、デキストロメトルファン又はアグマチン;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、ガランタミン;ヒドロキシルアミン又はその誘導体、例えば、水溶性ヒドロキシルアミン誘導体OT-440;シナプス調節物質、例えば、フラボノイド配糖体及び/又はテルペノイドを含む硫化水素化合物、例えば、イチョウ;神経栄養因子、例えば、グリア細胞系由来の神経栄養因子、脳由来の神経栄養因子;タンパク質のIL-6ファミリーのサイトカイン、例えば、毛様体神経栄養因子又は白血病抑制因子;一酸化窒素レベルに影響する化合物又は因子、例えば、一酸化窒素、ニトログリセリン又は一酸化窒素シンターゼ阻害剤;カンナビノイド受容体作動薬、例えば、WIN55-212-2;遊離基捕捉剤、例えば、メトキシポリエチレングリコールチオエステル(MPDTE)、又はEDTAメチルトリエステルと結合したメトキシポリエチレングリコールチオール(MPSEDE);抗酸化剤、例えば、アスタキサンチン、ジチオールチオン、ビタミンE、又はメタロコロール(例えば、鉄、マンガン又はガリウムコロール);酸素ホメオスタシスに関与する化合物又は因子、例えば、ニューログロビン又はサイトグロビン;ミトコンドリア分割又は分裂に影響する阻害剤又は因子、例えば、Mdivi-1(ダイナミン関連タンパク質1(Drp1)の選択的阻害剤);キナーゼ阻害剤又は調節物質、例えば、Rhoキナーゼ阻害剤H-1152又はチロシンキナーゼ阻害剤AG1478;インテグリン機能に影響する化合物又は因子、例えば、ベータ1-インテグリン活性化抗体HUTS-21;N-アシル-エタノールアミン及びその前駆体、N-アシル-エタノールアミンリン脂質;グルカゴン様ペプチド1受容体の刺激物質(例えば、グルカゴン様ペプチド1);ポリフェノール含有化合物、例えば、レスベラトロール;キレート化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;新たなタンパク質合成を抑制する化合物;放射線治療薬;光線力学的治療薬;遺伝子治療薬;遺伝子調節因子;神経又は神経の一部の損傷(例えば、脱髄)を防止する自己免疫調節物質、例えば、グラチミル(glatimir);ミエリン阻害剤、例えば、抗NgR遮断タンパク質、NgR(310)エクトFc;他の免疫調節物質、例えば、FK506結合タンパク質(例えば、FKBP51);並びにドライアイ薬、例えば、シクロスポリン、シクロスポリンA、粘滑剤、及びヒアルロン酸ナトリウムを挙げることができる。
【0265】
使用することができる他の治療薬としては、他のベータ遮断薬、例えば、アセブトロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、エスモロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール及びピンドロール;他のコルチコステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬、例えば、アスピリン、ベタメタゾン、コルチゾン、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルドロコルチゾン、フルルビプロフェン、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、プレドニゾロン、ピロキシカム、サルサラート、スリンダク及びトルメチン;COX-2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ及びバルデコキシブ;他の免疫調節薬、例えば、アルデスロイキン、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アザチオプリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、及びスルファサラジン;他の抗ヒスタミン剤、例えば、ロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン及びプロメタジン;他の抗感染薬、例えば、アミノ配糖体、例えば、アミカシン及びストレプトマイシン;抗真菌薬、例えば、アムホテリシンB、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン及びナイスタチン;抗マラリア薬、例えば、クロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジン及びキニーネ;抗マイコバクテリウム薬、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピン及びリファブチン;抗寄生虫剤、例えば、アルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール(thiobendazole)、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール、イベルメクチン、ピュロマイシン(paromycin)、プラジカンテル及びトリメトレキサート;他の抗ウイルス薬、例えば、抗CMV又は抗ヘルペス薬、例えば、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、トリフルリジン及びホスカルネット;プロテアーゼ阻害剤、例えば、リトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビル及びネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、アバカビル、ddI、3TC、d4T、ddC、テノホビル及びエムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンツ及びネビラピン;他の抗ウイルス薬、例えば、インターフェロン、リバビリン及びトリフルリジン(trifluridiene);他の抗菌薬、例えば、カルバペネム、例えば、エルタペネム、イミペネム及びメロペネム;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム及びロラカルベフ;他のマクロライド及びケトライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン及びテリスロマイシン;(クラブラン酸を含む、及び含まない)ペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、及びチカルシリン;テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン及びテトラサイクリン;他の抗菌剤、例えば、アズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リネゾリド、ニトロフラントイン及びバンコマイシン;アルファ遮断薬、例えば、ドキサゾシン、プラゾシン及びテラゾシン;カルシウム-チャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン及びベラパミル;他の降圧薬、例えば、クロニジン、ジアゾキシド、フェノルドパム、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベンザミン、エポプロステノール、トラゾリン、トレプロスチニル及びニトラート系薬剤;抗凝固薬、例えば、ヘパリン及びヘパリノイド、例えば、ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリン及びフォンダパリヌクス;他の抗凝固薬、例えば、ヒルジン、アプロチニン、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、ワルファリン及びキシメラガトラン;抗血小板薬、例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、チクロピジン及びチロフィバン;プロスタグランジンPDE-5阻害剤及び他のプロスタグランジン剤、例えば、アルプロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィル及びバルデナフィル;トロンビン阻害剤;抗血栓薬;抗血小板凝集剤;血栓溶解剤及び/又は線維素溶解剤、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ及びウロキナーゼ;抗増殖剤、例えば、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセル及びミコフェノール酸;ホルモン関連薬、例えば、レボチロキシン、フルオキシメストロン、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステロン、ラロキシフェン及びタモキシフェン;抗腫瘍薬、例えば、アルキル化剤、例えば、カルムスチン ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル3、及びプロカルバジン抗生物質様薬剤、例えば、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシン及びプリカマイシン;抗増殖薬(例えば、1,3-シスレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンC及びシスプラチンなど);代謝拮抗薬、例えば、シタラビン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン及び5-フルオロウラシル(5-FU);免疫調節薬、例えば、アルデスロイキン、イマチニブ、リツキシマブ及びトシツモマブ;有糸分裂阻害剤ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチン及びビンクリスチン;放射性薬剤、例えば、ストロンチウム89;並びに他の抗腫瘍薬、例えば、イリノテカン、トポテカン及びミトタンが挙げられる。
【0266】
薬物送達移植片によって運ばれる薬物は、デバイス内に適度に保持することができる任意の形態とすることができ、最長で数年まで持続するある期間にわたって単数又は複数の常在薬物の制御溶出をもたらす。ある実施形態は、眼液に溶解しやすい薬物を利用し、別の実施形態は、眼液に部分的又はわずかに溶解する薬物を利用する。本明細書では「薬物」とは、活性薬物、そのプロドラッグ及び塩、並びに貯蔵、膜透過性、安定性などの目的で他の状態に改変された薬物を含むことを再度強調しなくてはならない。デバイスに貯蔵される薬物は、賦形剤、安定剤、溶出又は溶解速度を変更する薬剤、並びに薬物の安定性及び所望の溶出をある期間にわたって支援する任意の他の材料又は薬剤を含むことができる。
【0267】
例えば、治療薬は、圧縮ペレット、固体、カプセル、複数の粒子、液体、油、ゲル、懸濁液、スラリー、エマルジョンなどを含む、ただしそれらに限定されない任意の形態とすることができる。ある実施形態においては、薬物粒子は、微小ペレット(例えば、ミクロ錠剤)、微粉又はスラリーの形態であり、その各々が流体のような性質を有し、液体又は油と同様に内側管腔への注入による再装填が可能である。一部の実施形態においては、デバイスの充填及び/又は再装填は、治療薬を送達するシリンジ/針を用いて実施される。一部の実施形態においては、それらは、23~25ゲージ、25~27ゲージ、27~29ゲージ、29~30ゲージ、30~32ゲージ及びその重複範囲を含む、約23ゲージ~約32ゲージの針を通して送達される。一部の実施形態においては、針は23、24、25、26、27、28、29、30、31又は32ゲージである。
【0268】
1種を超える薬物が特定の病態の処置のために望ましいとき、又は第2の薬物が第1の薬物の副作用を相殺するためなどに投与されるときには、一部の実施形態は、同じ形態の2種の薬剤を利用することができる。別の実施形態においては、異なる形態の薬剤を使用することができる。同様に、1種以上の薬物が、例えば、安定性を高めるために、又は溶出プロファイルを調整するために、アジュバント、賦形剤又は補助化合物を利用する場合、単数又は複数の該化合物も、薬物と適合し、移植片によって適度に保持することができる任意の形態とすることができる。
【0269】
一部の実施形態においては、移植片から放出された薬物による特定の病態の処置は、病態を処置し得るだけでなく、ある望ましくない副作用を誘発するおそれがある。ある場合には、ある種の薬物の送達は、病的症状を処置することができるが、眼内圧を間接的に上昇させるおそれがある。例えば、ステロイドは、こうした作用を有することがある。ある実施形態においては、ステロイドを眼球標的組織に送達する薬物送達移植片は、望ましくない眼内圧上昇を誘発するおそれがある。こうした実施形態においては、薬物送達移植片は、過剰の眼房水を前房から輸送することによって望ましくない高い眼内圧を低下させる分路機能部を含むことができる。したがって、一部の実施形態においては、薬物送達デバイスと分路の両方として機能する移植片は、治療薬を送達するのに役立ち、同時に蓄積流体を排出し、それによって薬物の副作用を軽減するのに役立つこともできる。
【0270】
本明細書に記載する実施形態は、生分解性材料、賦形剤、又は薬物の放出特性を変える他の薬剤と混合又は調合された薬物を含むことができることを理解されたい。好ましい生分解性材料としては、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、すなわちPLGAとしても知られる乳酸とグリコール酸のコポリマーを含む、上記のものが挙げられる。本明細書の一部の開示はPLGAの使用を明確に記載しているが、こうした実施形態においては、別の適切な生分解性材料をPLGAの代わりに使用することができ、又はPLGAと併用できることを当業者は理解されたい。本明細書に記載するある実施形態においては、移植片の管腔内に配置された薬物は、任意の他の化合物又は材料と調合も混合もされず、それによって管腔内に配置された薬物の体積が最大になることも理解されたい。
【0271】
一部の実施形態においては、PLGAコポリマー又は他のポリマー材料からの特定の薬物放出速度を規定することが望ましい場合もある。ポリマーからの薬物放出速度は、そのポリマーの分解速度と相関するので、分解速度の制御は、薬物送達速度を制御するための手段になる。PLGAコポリマー又は他のポリマーを構成するポリマー鎖又はコポリマー鎖の平均分子量の変化を用いて、コポリマーの分解速度を制御し、それによって眼への治療薬送達の所望の期間又は別の放出プロファイルを得ることができる。コポリマーを採用するある別の実施形態においては、コポリマーの生分解速度は、コポリマー中のモノマー又はオリゴマーの比を変えることによって制御することができる。更に別の実施形態は、コポリマーの構成要素の平均分子量の変更とコポリマーの構成の変更の組合せを用いて、所望の生分解速度を得ることができる。
【実施例0272】
本明細書に開示した生体吸収性移植片の多くの構成においては、デバイス内のタンパク質薬物濃度は、使用中に次第に減少する。溶出速度はデバイスの内部と外部の濃度勾配に比例するので、溶出速度も次第に減少する。こうした事象を考慮して、幾つかの実施形態においては、溶出機能部及び初期タンパク質薬物濃度を、治療溶出速度がそれでも長期間(例えば、3、6、9か月又はそれ以上)送達されるように選択する。
【0273】
図21A及び
図21Bは、幾つかの実施形態に係る移植片からの溶出に関連した予想溶出データを示し、デバイス内の初期タンパク質濃度は300mg/mLであり、タンパク質の初期負荷量は300μgであり、全溶出機能部面積及び壁厚は、溶出機能部を通る初期溶出速度が14μg/週であるような寸法であり、溶出機能部の寸法は固定されている。この仮定においては、デバイス内の薬物タンパク質の濃度は、薬物が溶出機能部を通って溶出するにつれて6か月で約1/9に減少し(
図21A)、速度も次第に減少する(
図21B)。
【0274】
侵食の速度は、生体吸収性材料の化学構造を選択することによって決定することができる。生体吸収性材料は、数日、数週間又は数か月にわたって吸収性であるように決定することができる。生体吸収性材料内の化学結合は、水分解性(グリコリド、dl-ラクチド、l-ラクチド、ジオキサノン、エステル、カルボナート及び炭酸トリメチレンのポリマー、コポリマー及びオリゴマー);若しくは酵素分解性(ペプチド、アミド、ポリエーテルアミドなど);若しくはポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(無水物)(poly(anydride))、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カルボナート)及びポリ(ホスホナート)、又は上記の何れかの組合せとすることができる。
【0275】
図22A、
図22Bは、本明細書の幾つかの実施形態に係る薬物溶出データを示す。
図21Aは、移植片からの薬物溶出速度の経時変化を示し、管はLDPEの約1インチ長のセグメント、0.040インチ(1mm)IDであり、ヒドロゲルプラグは5%アクリルアミド及び0.14%メチレンビスアクリルアミドから重合し、ヒドロゲルプラグは約1~3mmの長さに切り、タンパク質溶液は初期に150mg/mlのウシ血清アルブミン(例えば、ラニビズマブの代用物)であり、各管約1cmは、負荷量約1200μgのBSA溶液で充填した。
【0276】
図22Bは、移植片からの薬物溶出速度の経時変化を示し、管は350×500ミクロンPLG8523の約1インチ長のセグメントであり、ヒドロゲルプラグは7.5%アクリルアミド及び0.21%メチレンビスアクリルアミドから重合し、ヒドロゲルプラグは約1~3mmの長さに切り、タンパク質溶液は初期に200mg/mlの40kD FITC-デキストラン(例えば、ラニビズマブの代用物)であり、各管約1.5cmは、負荷量約300μgのFITC-デキストラン溶液で充填した。
【0277】
本開示のある実施形態を記述したが、これらの実施形態は、単なる例として示したものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書に記載した新規な方法、システム及びデバイスを様々な別の形態で具現化することができる。例えば、図示又は記述した一移植片の実施形態を、別の図示又は記述した分路の実施形態と組み合わせることができる。さらに、上記移植片を別の目的で利用することができる。例えば、移植片を使用して、流体を前房から眼又は眼の外側の他の場所に排出することができる。さらに、本明細書に記載の方法、システム及びデバイスの形態に様々な省略、置換及び変更を本開示の精神から逸脱することなく行うことができる。
【0278】
図面に示された及び/又は本明細書に記述された機能部の1つ以上を単一の構成要素に再編成及び/又は組み合わせることができ、又は幾つかの構成要素として具現化することができる。追加の構成要素を付加することもできる。ある例示的実施形態を記述し、添付図面に示したが、こうした実施形態は単に説明のためのものであって、限定的なものではないことを理解されたい。したがって、様々な他の改変が本開示に基づいて当業者に想起され得るので、本発明は、示し、記述した特定の構成及び配置に限定されない。
【0279】
上記方法の様々な操作は、種々のハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネント、回路、及び/又はモジュールなど、操作を行うことができる任意の適切な手段によって実施することができる。一般に、図面に示した任意の操作は、操作を行うことができる対応する機能的手段によって実施することができる。
【0280】
本明細書に開示した方法は、記述した方法を実行するための1つ以上のステップ又は動作を含む。方法ステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく相互に交換することができる。換言すれば、ステップ又は動作の特定の順序を指定しない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更することができる。本明細書に開示した方法ステップ及び/又は動作は互いに関連して実施することができ、ステップ及び/又は動作は追加のステップ及び/又は動作に更に分割することができる。
【0281】
特許請求の範囲は、上記の正確な構成及び構成要素に限定されないことを理解されたい。上記方法及び装置の配列、操作及び詳細に種々の改変、変更及び変化を加えることができる。