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特開2024-161546鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置
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  • 特開-鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置 図1
  • 特開-鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置 図2
  • 特開-鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161546
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241112BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L21/304 648E
H01L21/304 643D
B08B3/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024139229
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2023550708の分割
【原出願日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】102020129469.7
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523168180
【氏名又は名称】ジーエスイーシー・ジャーマン・セミコンダクター・イクイップメント・カンパニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハース・グンター
(72)【発明者】
【氏名】グーテクンスト・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シーンレ・フランク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単で安価な手段により短い時間内で、鍋形状の中空体を洗浄する装置を提供する。
【解決手段】鍋形状の中空体12、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器30を洗浄する装置10であって、周縁面38により中空体12を上に設置できる基盤壁20と、中空体12を密閉して取り外し可能な形で基盤壁20と連結可能にするロック機器26と、基盤壁20により形成され、半径方向に対してロック機器26の内側に配置された少なくとも一つの貫通開口部24と、中空体12が基盤壁20と連結されている場合に、中空体の内面33を洗浄するための第一の洗浄流体を放出できる洗浄機器40と、第一の端部72を有する第一の排出流路70と、を備え、第一の排出流路70が、その第一の端部72により専ら貫通開口部24と流体を通す形で繋がっており、第一の排出流路70を用いて、洗浄機器40から放出された第一の洗浄流体を排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋形状の中空体(12)、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器(30)を洗浄する装置(10)であって、
この中空体(12)が、
中空体の内面(33)を形成する一つの底壁(32)及び一つ又は複数の側壁(34)と、
この底壁(32)に対向する、側壁(34)の周縁面(38)により取り囲まれた一つの開口部(36)と、
を有し、
本装置(10)が、
周縁面(38)により中空体(12)を上に設置できる基盤壁(20)と、
周縁面(38)により中空体(12)を密閉して取り外し可能な形で基盤壁(20)と連結可能にするロック機器(26)と
基盤壁(20)により形成され、半径方向に対してロック機器(26)の内側に配置された少なくとも一つの貫通開口部(24)と、
中空体(12)が基盤壁(20)と連結されている場合に、中空体の内面(33)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出できる洗浄機器(40)と、
第一の端部(72)を有する第一の排出流路(70)と、
を備え、
この第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)により専ら貫通開口部(24)と流体を通す形で繋がっており、この第一の排出流路を用いて、洗浄機器(40)から放出された第一の洗浄流体を排出することができる当該装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)により基盤壁(20)と連結されて、貫通開口部(24)を取り囲んでいることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部に向かって漏斗形状に拡がっていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)の所で貫通開口部(24)と面一に終止していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が、貫通開口部(24)を超えて突き出た第一の洗浄ヘッド(42)を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)が回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)が、一定数の第一の洗浄ノズル(78)を備え、これらのノズルを介して、第一の洗浄流体を噴射角度(α)で放出可能であり、この第一の洗浄ヘッド(42)が調節機器(85)を備え、この機器を用いて、噴射角度(α)が調節可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(10)において、
本装置(10)が、第一の洗浄流体に音波を入力結合させる少なくとも一つの入力結合ユニット(87)を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置(10)において、
前記の入力結合ユニット(87)の中の少なくとも幾つかが、第一の洗浄ノズル(78)の中の少なくとも幾つかと統合されているか、或いは第一の洗浄ノズルと協力して動作することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が、第一の洗浄流体を第一の洗浄ヘッド(42)に供給する供給流路(68)を備え、前記の排出流路(70)とこの供給流路(68)が、少なくとも部分的に一つの流体案内ユニット(66)に纏められていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の基盤壁(20)に、第一の流路(41)が配置されており、この流路を用いて、洗浄流体を周縁面(38)に案内できることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)に、第一の洗浄流体に含まれる粒子を計測する粒子測定機器(74)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記の中空体(12)が、蓋の内面(54)と蓋の外面(56)を有する蓋(52)を備え、この蓋を用いて、開口部(36)が閉鎖可能である請求項1~12のいずれか1項に記載の装置(10)において、
基盤壁(20)又は別の壁部分(44)に、少なくとも部分的に閉鎖体(48)を用いて閉鎖可能である洗浄開口部(46)が配置されており、この閉鎖体(48)が、中空体(12)の蓋(52)を収容する収容ユニット(50)を備え、
洗浄機器(40)が、別の第一の洗浄ヘッド(58)を備え、洗浄開口部(46)が閉鎖体(48)又は蓋(52)によって閉鎖されている場合に、この洗浄ヘッドを用いて、蓋の内面(54)に洗浄するための第一の洗浄流体を吹き掛け可能であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置(10)において、
前記の閉鎖体(48)は、閉鎖体(48)が洗浄開口部(46)を開けている開放位置と、閉鎖体(48)又は蓋(52)が洗浄開口部(46)を閉じている閉鎖位置との間を移動できるように基盤壁(20)又は別の壁部分(44)に固定されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の装置(10)において、
本装置(10)が第二の流路(57)を備え、この流路を用いて、洗浄流体を蓋(52)にまで案内できることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記の底壁(32)と側壁(34)が中空体の外面(35)を形成する請求項1~15のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が第二の洗浄ヘッド(64)を備え、この洗浄ヘッドを用いて、中空体の外面(35)を洗浄するための第二の洗浄流体を放出することができ、
本装置(10)が、第二の排出流路(76)を備え、この流路を用いて、第二の洗浄ヘッド(64)から放出された第二の洗浄流体を排出できることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(10)において、
本装置(10)が、基盤壁(20)と共にプロセス空間(22)を取り囲む筐体(14)を備え、カバー(18)により閉鎖可能な筐体開口部(16)を介して、このプロセス空間(22)にアクセス可能であることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置(10)において、
前記の基盤壁(20)が、一定数の貫通孔(28)を有し、これらの貫通孔(28)が、半径方向に対してロック機器(26)の外側に配置されており、これらの貫通孔により、第二の排出流路(76)が、プロセス空間(22)と流体を通す形で接続されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第二の洗浄ヘッド(64)が、U字形状に形成されており、プロセス空間(22)内を回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項5、請求項13又は請求項16に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)、別の第一の洗浄ヘッド(58)及び/又は第二の洗浄ヘッド(64)が、少なくとも一つの乾燥ノズル(86,88,90)及び/又は赤外線ダイオード(92)を備えることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の装置を用いて鍋形状の中空体(12)、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器(30)を洗浄する方法であって、
周縁面(38)により中空体(12)を基盤壁(20)上に設置する工程と、
ロック機器(26)を用いて、中空体(12)を基盤壁(20)と密閉して取り外し可能な形で連結する工程であって、中空体(12)が、周縁面で基盤壁(20)に対して密閉される工程と、
洗浄機器(40)の第一の洗浄ヘッド(42)を用いて、中空体の内面(33)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出して、第一の排出流路(70)を用いて、第一の洗浄流体を排出するか、
洗浄機器(40)の第二の洗浄ヘッド(64)を用いて、中空体の外面(35)を洗浄するための第二の洗浄流体を放出して、第二の排出流路(76)を用いて、第二の洗浄流体を排出するか、或いは
その両方である工程とを有する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
閉鎖体(48)を開放位置に動かす工程と、
蓋の外面(56)により蓋(52)を閉鎖体(48)の収容ユニット(50)上に設置して、蓋(52)を閉鎖体(48)に取り外し可能な形で固定する工程と、
閉鎖体(48)を閉鎖位置に動かす工程と、
別の第一の洗浄ヘッド(58)を用いて、蓋の内面(54)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出する工程とを有する方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法において、
中空体の内面(33)によって画定される空間を第一の洗浄流体で完全に満たす工程と、
入力結合ユニット(87)を用いて第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程とを有する方法。
【請求項24】
請求項21又は22に記載の方法において、
入力結合ユニット(87)を用いて第一の洗浄ノズル(78)から放出された第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程であって、この入力結合ユニット(87)が第一の洗浄ノズル(78)に統合されているか、或いは第一の洗浄ノズルと協力して動作する工程とを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、高集積電子回路及びそれ以外の感応型半導体素子の製造は、所謂半導体ウェハが多数の処理工程を通過する工場で行われている。それらの処理工程の大部分は、大きな負担をかけて汚染物質の無い、特に、粒子の無いように保たれた清浄な空間内で行われている。特に、半導体ウェハの半導体材料と接触する粒子が、製造バッチ全体が欠陥となり、使えなくなって、廃棄しなければならないような影響を半導体ウェハの材料特性に及ぼす可能性があるので、そのような負担のかかる処理が必要である。
【0003】
半導体回路の集積度が高くなるにつれて、清浄に保つことが益々重要になるとともに、清浄な空間の大きさが増大するにつれて、清浄に保つ負担が指数関数的に大きくなるので、半導体ウェハは、一つの処理ステーションから次の処理ステーションに「開放された」形では運搬されない。これに代わって、特別な運搬容器(所謂FOUP、Front Open Unified Pod)が使用されている。それは、多数の半導体ウェハが入れられるローフパン形状の運搬容器であると理解される。FOUPは、通常取り去り可能な蓋によって閉鎖される。蓋が無い場合、FOUPは、底面が四角形である鍋形状の基本形を有する。FOUPが、その蓋によって閉鎖されている場合、入っている半導体ウェハを外界から保護した形で一つの清浄な空間から別の清浄な空間に運搬することができる。FOUPが処理ステーションに到達した場合、それは開放され、半導体ウェハが取り出されて、相応に処理される。処理の実行後に、半導体ウェハは、FOUPに戻されて運搬され、そして次の処理ステーションに移送される。
【0004】
半導体ウェハが汚染した場合に製造損失が大きくなるために、FOUPを時々洗浄する必要がある。FOUPは、特に、FOUPへの持ち込み時とFOUPからの取り出し時に半導体ウェハの埃によって汚染される。
【0005】
有意義なこととして、同じことが、EUV(Extreme Ultra-Violet Radiation)露光マスク用の運搬容器にも言える。EUV露光マスクは、非常に小さな集積回路を製造するために用いられる。EUV露光マスクも、半導体と同様に運搬しなければならず、その際に同様の状況が起こる。以下において、FOUPについて述べる場合、それに関する記述は、EUV露光マスク用の運搬容器に関しても同様に成り立つ。
【0006】
FOUPを洗浄する装置は、例えば、特許文献1~3により周知である。
【0007】
そのような装置では、FOUPは、その内面とその外面の両方を洗浄される。FOUPの外面は、通常その内面よりも明らかに強く洗浄される。その結果、洗浄流体が、洗浄プロセス中に、外面を起源とする粒子と内面を起源とする粒子の両方を取り込む。従って、それらの粒子は、外面から内面に運ばれる可能性がある。しかし、満足できる洗浄結果は、粒子の数が所定の値を下回った場合にのみ達成される。外面を起源とする粒子のために、十分な分量の粒子を排出できるようにするには、相応の長い時間に渡って洗浄プロセスを実施しなければならない。それは、一方において、所要の洗浄流体の量が比較的多くなり、他方において、FOUPが、洗浄プロセス中は半導体ウェハの運搬のために使用できなくなるとの点で不利である。それによって、半導体ウェハの製造コストが上昇する。それに加えて、外面の洗浄が条件付きでしか欠陥のある半導体ウェハの低減に寄与しないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公開第5238703号明細書
【特許文献2】国際特許公開第2005/001888号明細書
【特許文献3】欧州特許登録第1899084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施の形態の課題は、簡単で安価な手段により短い時間内で中空体を洗浄できる、鍋形状の中空体を洗浄する装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載された特徴によって解決される。有利な実施の形態は、従属請求項の対象である。
【0011】
本発明の一つの実施の形態は、鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置に関し、この中空体が、
中空の内面を形成する一つの底壁及び一つ又は複数の側壁と、
側壁の周縁面によって取り囲まれた、底壁に対向する一つの開口部と、
を有し、
この装置が、
周縁面により中空体を上に設置できる基盤壁と、
周縁面により中空体を密閉して取り外し可能な形で基盤壁と連結可能にするロック機器と、
基盤壁により形成される、半径方向に対してロック機器の内側に配置された少なくとも一つの貫通孔と、
中空体が基盤壁と連結されている場合に、中空体の内面を洗浄するための第一の洗浄流体を放出できる洗浄機器と、
第一の端部を有する第一の排出流路とを備え、
この第一の排出流路が、その第一の端部の所で専ら貫通孔と流体を通すように繋がっており、この第一の排出流路を用いて、洗浄機器から放出された第一の洗浄流体を排水することができる。
【0012】
洗浄のために、中空体は、周縁面により基盤壁上に設置されて、その際、中空体の開口部と基盤壁の貫通孔が互いに直に接する。従って、第一の洗浄流体を中空体に投入することが、そのため中空体の内面を洗浄することが可能である。中空体が、周縁面により基盤壁に対して固定されるだけでなく、密閉もされるように、ロック機器が構成されているとの事実のために、第一の洗浄流体は、中空体の内部空間から出ることができない。従って、第一の洗浄流体が中空体の外に在る粒子によって汚染される可能性はない。従って、第一の洗浄流体は、冒頭で述べた通り、通常は中空体の外面よりも明らかに汚染が少ない中空体の内面だけを洗浄する役割を果たす。その結果、第一の洗浄流体は、中空体の外面を起源とする粒子により汚染されず、それによって、中空体の内面が効果的に洗浄される。この周縁面は、中空体が基盤壁上に設置されている場合に、中空体の内面と中空体の外面の間を隔離する部分となる。この周縁面により、基盤壁に対する中空体の密閉も行われる。中空体の内面の洗浄に必要な時間は、従来技術により周知の装置と比べて、明らかに短縮することができる。更に、中空体の内面の洗浄に必要な第一の洗浄流体の量が同様に低減される。
【0013】
一つの別の実施の形態では、第一の排出流路は、その第一の端部により基盤壁と連結されて、貫通孔を取り囲んでいる。この実施の形態では、本装置の準備に必要な構造的な負担を小さくすることができる。特に、第一の排出流路は、基盤壁と一体的に製作するか、或いは、例えば、溶接によって、基盤壁と連結することができる。
【0014】
一つの改善された実施の形態では、第一の排出流路は、その第一の端部に向かって漏斗形状に拡がることができる。第一の排出流路がその第一の端部に向かって漏斗形状に拡がっているために、貫通開口部と第一の排出流路の間の直径の違いを簡単に均すことができる。それによって、構造的な負担が小さくなる。更に、例えば、乱流の形でフローの乱れを引き起こす可能性がある急激な直径の変化が生じない。この乱れは、粒子の堆積を引き起こす可能性があり、それによって、粒子の排出が遅くなるか、或いは全く妨害されて、中空体の内面の洗浄が悪い影響を受ける可能性がある。
【0015】
一つの改善された実施の形態では、第一の排出流路は、その第一の端部の所で貫通開口部と面一に終止することができる。粒子が堆積する可能性があり、それによって、中空体の内面の洗浄が悪い影響を受ける可能性があるデッドスペースが生じない。
【0016】
一つの別の実施の形態では、この洗浄機器は、貫通開口部を超えて突き出た第一の洗浄ヘッドを備えることができる。この実施の形態では、第一の洗浄ヘッドを中空体の内部空間に差し込むことができる。その結果、第一の洗浄ヘッドと中空体の内面の間の間隔を短縮することができる。洗浄流体を第一の洗浄ヘッドから押し出すための圧力が、ほんの小さな損失で中空体の内面にも作用し、それによって、中空体の内面に在る粒子を特に効果的に除去することができる。
【0017】
一つの改善された実施の形態は、第一の洗浄ヘッドが回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする。この洗浄ヘッドの移動可能性のために、中空体の内面の幾何学的な特性に対応することができる。特に、第一の洗浄流体を中空体の内面に対して少なくともほぼ垂直に吹き掛けることが可能であり、それによって、第一の洗浄流体の運動エネルギーは、中空体の内面を洗浄するために特に効果的に利用することができる。
【0018】
一つの改善された実施の形態では、第一の洗浄ヘッドは、一定数の第一の洗浄ノズルを備え、このノズルを介して、第一の洗浄流体を噴射角度で放出可能であり、この場合、第一の洗浄ヘッドは、噴射角度を調節可能にする調節機器を備える。第一の洗浄流体が放出される噴射角度は、この洗浄流体が中空体の内面に当たる角度も決定する。90°又はほぼ90°の角度が理想的である。噴射角度が調節可能であるとの事実のために、第一の洗浄流体を90°又はほぼ90°の角度でほぼ中空体の内面全体に吹き掛けることができるとの趣旨で、中空体の内面の幾何学的な形状に追従することができる。中空体の内面は、通常歪な箇所を有し、その結果、調節可能でない洗浄ノズルでは、十分な運動エネルギーで中空体の内面に第一の洗浄流体を吹き掛けることができないか、或いは限られた量の第一の洗浄流体しか吹き掛けることができない陰が生じる可能性がある。この実施の形態では、そのような陰を防止することができ、その結果、洗浄結果が全体的に改善される。
【0019】
一つの改善された実施の形態は、第一の洗浄ノズルを互いに独立して開閉できると規定することができる。第一の洗浄ノズルの中の一つが開かれている場合、第一の洗浄流体を放出することができ、このことは、閉じられた状態では不可能である。そのため、先ずは期待通りのより綺麗な部分が洗浄され、その次に漸く、より大きく汚染された部分が洗浄されるように、中空体の内側表面を洗浄することが可能である。それによって、第一の洗浄流体が中空体の内側表面から剥がれた粒子を負わされることを出来る限り長く軽減することができる。特に、それによって、比較的綺麗な部分が、既に大きな負荷の第一の洗浄流体を用いて洗浄されることが防止される。多くの場合、第一の洗浄流体が粒子を受け入れる能力は、負荷の上昇と共に低下する。極端な場合、それどころか第一の洗浄流体からの粒子が中空体の内側表面の比較的綺麗な部分に堆積する可能性がある。これは、第一の洗浄ノズルの相応の駆動によって防止することができる。
【0020】
更に、中空体の内側表面の所定の部分だけを洗浄して、収集した粒子の数を計数することができる。この粒子の計数は、代表的な情報の提示が可能となるような頻度で繰り返すことができる。それによって、半導体ウェハの所定の製造プロセスにおいて、平均以上の多数の粒子が中空体の内側表面に付いていたのかを確認することができる。このことから、製造プロセスの所定の欠陥又は改善の可能性を推量することができる。
【0021】
一つの実施の形態は、本装置が音波を第一の洗浄流体に入力結合させる少なくとも一つの入力結合ユニットを備えることを特徴とする。この場合、音波は、特に、超音波又は極超音波として構成することができる。定義によると、超音波が、約20kHz~500kHzの周波数帯域を有する一方、極超音波は、約500kHz~3MHzの周波数帯域を有する。この場合、第一の洗浄流体で中空体の内側表面を完全に湿らせるか、或いは中空体の内面によって取り囲まれる空間全体を満たして、音波を第一の洗浄流体に入力結合させることが考えられる。そして、第一の洗浄流体が音波を伝達する役割を果たす。それにより所定の量のエネルギーが第一の洗浄流体に加えられるとの事実のために、それによって、中空体の内側表面に付着した粒子を特に良好に剥がすことができるので、洗浄効果が向上する。エネルギー投入量は、入力結合される音の周波数と共に上昇する。極超音波を使用した場合、非常に的確に目標を絞った形でエネルギーを洗浄すべき中空体の内側表面の近くに加えることができ、その結果、良好な洗浄結果を達成できるとの利点が得られる。
【0022】
一つの改善された実施の形態では、入力結合ユニットの中の少なくとも幾つかを第一の洗浄ノズルの中の少なくとも幾つかに統合するか、或いはそれと協力して動作させることができる。この場合、洗浄ノズルは、第一の洗浄ノズルから放出された第一の洗浄流体に音波を入力結合させることが可能な所謂「メガソニックノズル」として構成できる。そして、中空体の内側表面全体を第一の洗浄流体で湿らせる必要がなくなり、それによって、所要の第一の洗浄流体の量を少なくすることができる。
【0023】
一つの別の実施の形態では、この洗浄機器は、第一の洗浄流体を第一の洗浄ヘッドに供給する供給流路を備え、第一の排出流路と供給流路は、少なくとも部分的に一つの流体案内ユニットに纏められる。しかし、この場合、供給流路と排出流路は流体的に分離されたままである。この場合、供給流路と排出流路は、管路及び/又はチューブとして構成することができる。第一の排出流路と供給流路を一つの流体案内ユニットに纏めることにより、構造空間を節約して、そのため本装置をコンパクトに構成することができる。更に、本装置の構成要素の数を削減できるので、製造負担を小さくすることができる。
【0024】
一つの別の実施の形態では、第一の流路が基盤壁に配置され、この流路を用いて、洗浄流体を周縁面に案内することができる。洗浄流体としては、特に、窒素又は圧縮空気や、特に有利には、XCDAとも呼ばれる極めて清浄なドライエアが用いられる。それによって、第一の洗浄流体が周縁面を介して中空体の外面に到達できて、そこで、第二の洗浄流体と混合できることが防止される。更に、第二の洗浄流体が周縁面を介して中空体の内面に到達できて、そこで、第一の洗浄流体と混合できることが防止される。そのため、汚濁が防止される。
【0025】
一つの別の実施の形態は、第一の洗浄流体に含まれる粒子を計測する粒子測定機器が第一の排出流路に配置されることを特徴とする。この粒子測定機器は、例えば、第一の洗浄流体の所与の体積流量において、第一の排出流路を通って粒子測定機器を通過する粒子の数を計測するように構成することができる。計数された粒子の数が或る値を下回った場合に、中空体の内面が十分に洗浄されていると見做すことができる。この粒子測定機器を用いて、一方において、中空体の内面が実際に十分な程度で洗浄されていることが保証され、他方において、この場合に洗浄プロセスを停止することができる。従来技術により周知の装置では、洗浄プロセスは、中空体が十分に洗浄されていると十分な確率で見做すことができるまで長く実施される。大抵の場合、安全性の理由から、洗浄プロセスは明らかに必要以上に長く実施される。この実施の形態に基づき、前述した通り洗浄プロセスを停止可能であることによって、時間と第一の洗浄流体の量の両方が削減され、その結果、従来技術よりも特に明らかに効率的に洗浄プロセスを実施することができる。更に、この粒子測定機器は、所定のFOUPが実際に十分な程度で洗浄されているのかに関するドキュメント化も可能にする。
【0026】
一つの改善された実施の形態では、この中空体は、蓋の内面と蓋の外面を有する蓋を備え、この蓋を用いて、開口部を閉鎖することが可能である。この場合、閉鎖体を用いて少なくとも部分的に閉鎖可能である洗浄開口部が、基盤壁又は別の壁部分に配置されており、この閉鎖体は、中空体の蓋を収容する収容ユニットを備え、この洗浄機器は、別の第一の洗浄ヘッドを備え、洗浄開口部が閉鎖体又は蓋により閉じられている場合に、この洗浄ヘッドを用いて、洗浄するための第一の洗浄流体を蓋の内面に吹き掛けることができる。
【0027】
本装置のこれまでに述べた実施の形態は、中空体の内面の洗浄に関する。前述した通り、FOUPは、取り去り可能な蓋を用いて閉鎖される。しかし、この蓋の内面には、正に中空体の内面と同様に、半導体ウェハの製造に不利な影響を及ぼす可能性のある粒子が堆積する可能性がある。しかし、この実施の形態では、本装置は、別の第一の洗浄ヘッドを備え、この洗浄ヘッドを用いて、蓋の内面を洗浄することができる。そのために、中空体の内面の洗浄にも用いられるものと同じ第一の洗浄流体が使用される。しかし、必要と思われる場合には、別の洗浄流体を使用することもできる。そのため、蓋の内面上の粒子を同様に除去することができる。洗浄開口部からの第一の洗浄流体の制御されない形での流出を防止するために、洗浄開口部は、洗浄プロセス中、密閉しなければならない。そのために、蓋と閉鎖体の何れかは、洗浄開口部が密閉されるように基盤壁又は別の壁部分と協力して動作する。この場合、洗浄開口部は、洗浄プロセス中に、中空体の周囲からの粒子が第一の洗浄流体に到達できないように配置することができる。この場合、第一の洗浄流体を第一の排出流路を介して排水することが考えられる。この場合、閉鎖体の収容ユニットが、蓋の外面と協力して動作し、その結果、蓋の内面は、特に第一の洗浄流体にとって、妨げられること無くアクセス可能である。
【0028】
一つの別の実施の形態は、閉鎖体が洗浄開口部を開けている開放位置と閉鎖体が洗浄開口部を閉じている閉鎖位置の間を移動可能であるように閉鎖体が基盤壁又は別の壁部分に固定されると規定する。この実施の形態では、閉鎖体を特に良好に蓋の操作部に嵌め込むことができる。開放位置では、把持ロボット又はそれと同等の物が蓋を閉鎖体の収容ユニットに嵌め込むことができる。この収容ユニットは、蓋を閉鎖体に取り外し可能な形で固定できる固定手段を備えている。把持ロボットが蓋を外して、蓋が閉鎖体に固定された後に、閉鎖体が閉鎖位置に動かされる。閉鎖位置では、洗浄開口部は密閉されており、その結果、蓋の内面に関する洗浄プロセスを開始することができる。洗浄プロセスの終了後に、閉鎖体が再び開放位置に動かされて、閉鎖体と蓋の間の連結が解除され、その結果、把持ロボットが、蓋を収容ユニットから取り出すことができる。この場合、閉鎖体を回転可能な形で基盤壁又は別の壁部分に固定することが考えられる。
【0029】
一つの別の実施の形態は、本装置が第二の流路を備えることができ、この流路を用いて、洗浄流体を蓋に案内できると規定する。通常、運搬容器の蓋は蓋パッキンを備え、このパッキンを用いて、それ以外の運搬容器に対して蓋を密閉することができる。洗浄流体として、特に、窒素又は圧縮空気や、特に有利には、XCDAとも呼ばれる極めて清浄なドライエアが用いられる。この洗浄流体を用いて、蓋の内面を洗浄するための第一の洗浄流体の作用領域を精確に限定することを実現できる。この場合、第一の洗浄流体が蓋パッキンに到達できないように、限定領域を選定することができる。それによって、第一の洗浄流体内に存在して、パッキンに付着する可能性のある粒子が運搬容器の動作時にパッキンから剥がれて半導体ウェハを損なう可能性のあることが防止される。気体を用いた場合、パッキンの能動的な吹き払い又は清掃を促進する乱流が発生される。
【0030】
底壁と側壁が中空体の外面を形成する別の実施の形態では、この洗浄機器は、第二の洗浄ヘッドを備え、この洗浄ヘッドを用いて、中空体の外面を洗浄するための第二の洗浄流体を放出することができる。この場合、本装置は、第二の排出流路を備え、この排出流路を用いて、第二の洗浄ヘッドから放出された第二の洗浄流体を排出することができる。また、冒頭で述べた通り、中空体の外面を洗浄することは必ずしも必要ではない。それにも関わらず、これは、例えば、清浄な空間内での粒子の堆積を少なくするためには望ましいとすることができる。この実施の形態では、中空体の外面を洗浄することが可能であり、第二の洗浄流体が、第一の洗浄流体と別個に排出される。第一の洗浄流体と第二の洗浄流体の混合及びその結果生じる中空体の外面を起源とする粒子による粒子の堆積の増大が防止され、このことは、従来技術による装置では不可能である。従って、中空体の内面と中空体の外面の両方を洗浄する場合でも、中空体の外面を起源とする粒子が中空体の内面に到達可能であることが防止される。従って、中空体の内面の洗浄プロセスが、中空体の外面を起源とする粒子によって不利な影響を受けない。
【0031】
通常、中空体の内面上での粒子の堆積は、中空体の外面よりも少ない。第一の洗浄流体と第二の洗浄流体の別個の排出は、中空体の外側表面を洗浄するために第一の洗浄流体を再利用することを可能にする。この場合、第一の洗浄流体の負荷が、中空体の外面を必要な程度で洗浄できるのに十分に低いのかを決定するために、先ずは第一の洗浄流体内の負荷(又は粒子の堆積)を計測することができる。これが可能である場合、洗浄流体の量を、従って、洗浄コストを小さくすることができる。
【0032】
一つの改善された実施の形態では、本装置は、基盤壁と共にプロセス空間を取り囲む筐体を備え、このプロセス空間は、カバーにより閉鎖可能な筐体開口部を介してアクセス可能である。この中空体は、筐体開口部を通してプロセス空間内に運び入れて、再び取り出すことができる。この実施の形態では、第二の洗浄流体を定義通り案内して、本装置内へのその制御されない形での分散を防止することが可能である。
【0033】
一つの改善された実施の形態では、この基盤壁は、一定数の貫通孔を有することができ、これらの貫通孔は、半径方向に対してロック機器の外側に配置されており、これらの貫通孔により、第二の排出流路が、プロセス空間と流体を通さない形で接続されている。中空体の実施形態に応じて、貫通孔を貫通スリットとして実現することもできる。第二の洗浄流体が第一の洗浄流体と混ざること無く、第二の排出流路を介して制御された形でプロセス空間から第二の洗浄流体を取り出すことができる。
【0034】
一つの改善された実施の形態は、第二の洗浄ヘッドが、U字形状に構成されて、プロセス空間内を回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする。第二の洗浄ヘッドのU字形状の構成のために、第二の洗浄流体を底壁と側壁の両方に案内することができる。第二の洗浄ヘッドの可動性のために、洗浄すべき中空体の外面の幾何学的な特性に柔軟に対応することができる。
【0035】
一つの別の実施の形態では、第一の洗浄ヘッド、別の第一の洗浄ヘッド及び/又は第二の洗浄ヘッドは、少なくとも一つの乾燥用ノズル及び/又は赤外線ダイオードを備える。この実施の形態では、ここで提案する装置が中空体の洗浄だけでなく、それに続く乾燥にも使用することができる。洗浄プロセスを終了するために、第一の洗浄流体又は第一と第二の洗浄流体の供給が停止されて、これに代わって、中空体を乾燥させるための乾燥用気体、例えば、空気又は窒素が流体案内ユニットを通して移送される。そのために、中空体は、それに対応して構成されたポート、特に負圧ポートを有し、このポートを介して、乾燥用気体を中空体内に吸い込んで、次に、そこから再び取り出すために、中空体内で負圧を発生させることができる。このポートには、例えば、真空ポンプと接続できる、シュノーケルとも呼ばれるパイプを繋げることができる。この場合、本装置における中空体の位置は変わらない。実施の形態に応じて、中空体の内面も、中空体の外面も乾燥させることができる。この場合、中空体の内面に使用される乾燥用気体と中空体の外面に使用される乾燥用気体との混合は起こらない。
【0036】
その他に、第一の洗浄ノズル及び第一の洗浄ヘッドと同じ特徴を第二の洗浄ノズル及び第二の洗浄ヘッドに付与すること、並びにその逆は、それが本発明の目的に適う限り可能である。
【0037】
これに代わって、或いはこれに加えて、赤外線ダイオードを使用することができ、この利点は、赤外線ダイオードから放出される光線が、使用する洗浄流体に関して最適な限定された狭い周波数帯域内に生じることである。中空体の内面又は中空体の外面に依然として残る洗浄流体の残りが、非常に効果的に加熱されて、そのようにして排除される。
【0038】
本発明の一つの構成は、半導体ウェハ用の運搬容器を洗浄する前記の実施の形態の中の一つに基づく本装置の使用に関する。ここで提案する使用により達成できる技術的な効果及び利点は、本装置に関して考察したものと同じである。纏めると、中空体の内面の洗浄に必要な時間が、従来技術により周知の装置と比べて、明らかに短縮できることを指摘したい。更に、中空体の内面の洗浄に必要な第一の洗浄流体の量が同様に低減される。これらの利点は、特に、半導体ウェハの製造時に言えることである。
【0039】
本発明の一つの構成は、前記の実施の形態の中の一つに基づく装置を用いて鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する方法に関し、この方法は、
周縁面により中空体を基盤壁上に設置する工程と、
ロック機器を用いて、中空体を基盤壁と密閉して取り外し可能な形で連結する工程であって、中空体が周縁面により基盤壁に対して密閉される工程と、
洗浄機器の第一の洗浄ヘッドを用いて、中空体の内面を洗浄するための第一の洗浄流体を放出して、第一の排出流路を用いて第一の洗浄流体を排出するか、
洗浄機器の第二の洗浄ヘッドを用いて、中空体の外面を洗浄するための第二の洗浄流体を放出して、第二の排出流路を用いて第二の洗浄流体を排出するか、或いは
その両方である工程と、
を有する。
【0040】
ここで提案する方法により達成できる技術的な効果及び利点は、本装置に関して考察したものと同じである。纏めると、中空体の内面と中空体の外面を互いに独立して清浄できることを指摘したい。中空体の内面の洗浄に用いられた第一の洗浄流体が、中空体の外面から剥がれた粒子により汚濁されることが排除される。更に、ここで提案する方法により、中空体の外面だけの洗浄と中空体の内面だけの洗浄のいずれかが、それが望ましい場合に可能である。更に、中空体の内面よりも短い時間で中空体の外面を洗浄することができる。これに加えて、中空体の外面と中空体の内面の両方を同時に洗浄することも可能である。
【0041】
一つの別の構成では、本方法は、
閉鎖体を開放位置に動かす工程と、
蓋の外面により蓋を閉鎖体の収容ユニット上に設置して、蓋を閉鎖体に取り外し可能な形で固定する工程と、
閉鎖体を閉鎖位置に動かす工程と、
別の第一の洗浄ヘッドを用いて蓋の内面を洗浄するための第一の洗浄流体を放出する工程と、
を有する。
【0042】
この蓋は、例えば、把持ロボットを用いて、収容ユニット上に設置することができる。開放位置では、収容ユニットに良好に到達可能であり、その結果、把持ロボットが複雑な動きを実施する必要無しに、蓋の収容と取出しを素早く簡単に行うことができる。閉鎖位置では、第一の洗浄流体の案内が保証され、その結果、上記の理由から第二の洗浄流体との混合が防止される。蓋だけが洗浄されて、中空体が洗浄されないように、ここで提案する装置を動作させることも可能であることを補足したい。この場合、閉鎖部品を用いて、貫通開口部を閉鎖することができる。
【0043】
一つの別の構成は、本方法が、
中空体の表面によって画定される空間を第一の洗浄流体で完全に満たす工程と、
入力結合ユニットを用いて、第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程と、
を有すると規定する。
【0044】
この音波は、例えば、超音波又は極超音波の形で入力結合させることができる。それによって、中空体の内面上の粒子を剥がす役割を果たすエネルギーが第一の洗浄流体に導入されるので、それによって、洗浄結果が改善される。これらの蓋の内面と中空体の外面は、相応に処理することができる。
【0045】
一つの改善された構成では、本方法が、
入力結合ユニットを用いて、第一の洗浄ノズルから放出された第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程であって、この入力結合ユニットが、第一の洗浄ノズルに統合されているか、或いはそのノズルと協力して動作する工程、
を有する。
【0046】
この構成でも、音波を超音波又は極超音波として入力結合させることができる。この構成においても、上記の理由から、洗浄結果が改善される。しかし、この構成では、中空体の内面により画定される空間を満たす必要が無いので、第一の洗浄流体の所要量をそれに応じて少なくすることができる。これらの蓋の内面と中空体の外面は、相応に処理することができる。
【0047】
以下において、添付図面を参照して、本発明の実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】鍋形状の中空体、特に、半導体ウェハ用又はEUV露光マスク用の運搬容器を洗浄する装置の実施例の主要な断面図
図2図1で定義された断面Aの縮尺通りでない拡大図
図3図1で定義された断面Bの縮尺通りでない拡大図
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、ここで提案する鍋形状の中空体12を洗浄する装置10の実施例が主要な断面図により図示されている。この装置10は、筐体14から取り去ることが可能なカバー18を用いて閉鎖可能な筐体開口部16を形成する筐体14を有する。これに加えて、基盤壁20が筐体14内に配置されており、その結果、閉じられたプロセス空間22が筐体14内に実現される。このプロセス空間22は、基盤壁20、筐体14自体及びカバー18によって画定される。この基盤壁20は、一つの貫通開口部24を形成されており、半径方向に対して貫通開口部24の外側にロック機器26が配置されている。図示された実施例では、半径方向に対してロック機器26の外側に、二つの貫通孔28が基盤壁20に設けられている。
【0050】
カバー18を取り去った場合、中空体12、特に、FOUPとも呼ばれる、半導体ウェハ用の運搬容器30又はEUV露光マスク用の運搬容器30をプロセス空間22内に持ち込むことができる。この中空体12は、一つの底壁32と、この場合には、四つの側壁34とを有し、その結果、この鍋形状の中空体12は、ほぼ直方体形状に形成されている。しかし、それ以外の、例えば、円筒形の幾何学的な形状の鍋形状の中空体12を規定することは十分可能である。これらの一つの底壁32と四つの側壁34が、中空体の内面33と中空体の外面35を形成する。
【0051】
この中空体12は、底壁32に対向する形に配置され、側壁によって形成される周縁面38により取り囲まれた開口部36を有する。図示された実施例では、この周縁面38の領域では、中空体12がフランジ形態で実現されている。この周縁面38を用いて、中空体12を基盤壁20上に設置することができる。図示された実施例では、基盤壁20の貫通開口部24と中空体12の開口部36は、少なくともほぼ同じ大きさと同じ幾何学的な形状である。
【0052】
更に、このロック機器26は、貫通開口部24と中空体の内面33の貫通開口部24に繋がる部分とが少なくともほぼ面一になるように構成されている。
【0053】
図2には、図1において特徴的な領域Aが縮尺通りでない形で拡大されて図示されており、精確に一致しない。図示するとの理由から、このロック機器26は図示されていない。図2から、基盤壁20が運搬容器30の周縁面38と接触する接触面39を形成する基盤壁部分37を有することが分かる。この場合、基盤壁部分37の接触面39は、周縁面38によって完全に覆われる。この基盤壁部分37には、接触面39に合流する第一の流路41が配置されており、この流路を用いて、洗浄流体、例えば、空気又は窒素を周縁面38に案内することができる。
【0054】
これに加えて、本装置10は、洗浄機器40を備え、この機器は、貫通開口部24を超えて突き出た、そのため、プロセス空間22内に配置された第一の洗浄ヘッド42を備えている。中空体12が基盤壁20と連結された場合、第一の洗浄ヘッド42が中空体12により取り囲まれる。
【0055】
この筐体14は、更に、洗浄開口部46が配置された壁部分44を有する。この壁部分44は、基盤壁20のロック機器26とは逆の側に在る。この洗浄開口部46は、図示されていない駆動ユニットを用いて、第一の回転軸D1の周りを回転可能な形で壁部分44に固定された閉鎖体48を用いて、少なくとも部分的に閉じることが可能である。この閉鎖体48は、閉鎖体48が洗浄開口部46を開けている開放位置と、閉鎖体48が洗浄開口部46を少なくとも部分的に閉じている閉鎖位置の間を動かすことができる。図1では、閉鎖体48は閉鎖位置に在る。
【0056】
この閉鎖体48は収容ユニット50を備え、この収容ユニットを用いて、中空体12を閉鎖できる蓋52を取り外し可能な形で閉鎖体48に固定することができる。この蓋52は、蓋の内面54と蓋の外面56を形成している。この場合、蓋の内面54は、中空体12が蓋52を用いて閉じられている場合に中空体の内面33が直に繋がる、蓋52の側面である。言い換えると、この場合、蓋の内面54は、中空体12の底壁32の方を向いている。
【0057】
図示された実施例では、収容ユニット50は、蓋の外面56を用いてのみ蓋52と協力して動作するように実現されている。
【0058】
図3には、図1において特徴的な領域Bが縮尺通りでない形で拡大して図示されており、精確に一致しない。筐体パッキン51が洗浄開口部46と接して洗浄開口部を取り囲む形で筐体14内に配置されていることが分かる。閉鎖体48が閉鎖位置に在る場合、蓋52は、筐体パッキン51と協力して動作する。その限りにおいて、洗浄開口部46が蓋52を用いて閉鎖されて、密閉される。この背景に鑑みて、閉鎖体48が洗浄開口部46を少なくとも部分的に閉じるとの情報を提示すると理解されたい。しかし、閉鎖体48が筐体パッキン51と協力して動作して、洗浄開口部46を完全に密閉することも考えられる。
【0059】
これに加えて、図3からは、蓋52が蓋パッキン53を備え、蓋52が運搬容器30と連結されている場合に、この蓋パッキンを用いて、運搬容器30を密閉可能であることが分かる。更に、筐体14と共に第二の流路57を形成する流路部品55が筐体14に配置されており、この流路部品を用いて、洗浄流体、例えば、空気又は窒素を蓋52に案内することができる。この流路部品55は、蓋パッキン53に対して隙間60を形成するように構成されている。
【0060】
更に、この洗浄機器40は、閉鎖体が閉鎖位置に在る場合に閉鎖体48の近くに配置さる別の第一の洗浄ヘッド58を備えている。
【0061】
更に、この洗浄機器40は第二の洗浄ヘッド64を備え、この洗浄ヘッドは、ほぼU字形状に構成されて、少なくとも部分的にプロセス空間22内に配置されている。しかし、図1に図示されている通り中空体12が基盤壁20と連結されている場合、第二の洗浄ヘッド64は、第一の洗浄ヘッド42と異なり、中空体12の外に配置されている。この第二の洗浄ヘッド64は、第二の回転軸D2の周りを回転可能であり、そのために使用される駆動機器は図示されていない。更に、第二の洗浄ヘッド64が回転式にだけでなく、並進式でも、或いは並進式でのみ移動可能である実施例は図示されていない。図示された実施例では、第一の洗浄ヘッド42は、移動可能ではないが、この洗浄ヘッドは、回転移動可能及び/又は並進移動可能であるように実現することもできる。
【0062】
この装置10は、更に、流体案内ユニット66を備え、このユニットを用いて、第一の洗浄流体を第一の洗浄ヘッド42及び別の第一の洗浄ヘッド58に案内するとともに、第二の洗浄流体を第二の洗浄ヘッド64に案内することができる。この流体案内ユニット66は、第一の供給流路68を備え、この流路を用いて、第一の洗浄流体を第一の洗浄ヘッド42に案内することができる。
【0063】
図示するとの理由から、第二の洗浄流体を第二の洗浄ヘッド64に供給する第二の供給流路の詳細な図は省略されているが、この構成は、当業者に難なく推定される。
【0064】
更に、この流体案内ユニット66は、第一の排出流路70を備え、この流路を用いて、第一の洗浄ヘッド42及び別の第一の洗浄ヘッド58から放出された第一の洗浄流体を再びプロセス空間22から排出することができる。この第一の排出流路70は、貫通開口部24と流体を通す形で繋がった第一の端部72を有する。図1から明らかな通り、第一の排出流路70は、その第一の端部72に向かって漏斗形状に拡がって、この排出流路の第一の端部72が貫通開口部24と面一で終止するように、基盤壁20と接続されている。
【0065】
この第一の排出流路70には、第一の粒子測定機器741が配置されており、この機器を用いて、第一の洗浄流体内に在る、中空体の内面33を起源とする粒子を計測する、特に、計数することができる。更に、付随流路742には、第二の粒子測定機器742が配置されており、この機器を用いて、第一の洗浄流体内に在る、蓋の内面54を起源とする粒子を計測する、特に、計数することができる。
【0066】
これに加えて、流体案内ユニット66は、第一の排出流路70とほぼ同じに構成されているが、二つの貫通孔28と流体を通す形で繋がった第二の排出流路76を備えている。この場合、第一の排出流路70が、第二の排出流路76の半径方向に対して内側の壁を形成し、その結果、流体案内ユニット66を非常にコンパクトに構成することができる。別の粒子測定機器74が第二の排出流路76に配置された実施例は図示されていない。ここでは、図1には流体案内ユニット66が基本的な形でしか図示されていないことを指摘しておきたい。多数の入り組んだ、異なる平面内に配置された流路のために、図1による流体案内ユニット66の図面は精確性を求めていない。しかし、当業者は、図1から流体案内ユニット66の機能を果たす構成を問題無く導き出すことができる。
【0067】
本装置10を以下の通り動作させる。ここに図示されていない初期状態では、カバー18が開いて、第二の洗浄ヘッド64が図1に対して90°回転しており、その結果、第二の洗浄ヘッド64のU字形状の部分64sが図1の平面に対して垂直になっている。閉鎖体48は開放位置にあり、この位置では、閉鎖体48は、図1に対してほぼ水平の方向を向いている。
【0068】
図示されていない操作機器、例えば、把持ロボットを用いて、蓋52が、中空体12から分離されて、収容ユニット50上に設置される。この開放された中空体12は、図1に図示されている通り、中空体12がその周縁面38を基盤壁20上に設置するように、プロセス空間22内に運び込まれる。次に、中空体12がロック機器26によりロックされて、その結果、中空体が基盤壁20と連結され、そのため、プロセス空間22内に固定される。この場合、ロック機器26は、ここに図示されていない密閉手段を備えており、その結果、中空体12は、基盤壁20に対して密閉される。ここで、カバー18が閉じられる。更に、閉鎖体48の収容ユニット50が作動され、その結果、蓋52が閉鎖体48に固定される。閉鎖体48が、図1に図示されている通り閉鎖位置に90°回転される。この場合、蓋52が洗浄開口部46を密閉する。
【0069】
ここで、第一の洗浄流体が、第一の供給流路68を介して第一の洗浄ヘッド42に案内されて、中空体の内面33を第一の洗浄流体で洗浄するように、第一の洗浄ノズル78を通して放出される。別の第一の洗浄ヘッド58は、別の第一の洗浄ノズル80を備え、このノズルを用いて、第一の洗浄流体が蓋の内面54に吹き掛けられ、その結果、この内面が洗浄される。
【0070】
これと同時に、第一の洗浄流体と同じにすることができる第二の洗浄流体が、ここに図示されていない第二の供給流路を介して第二の洗浄ヘッド64に案内されて、そこで、第二の洗浄流体が、中空体の外面35を洗浄するために、第二の洗浄ノズル82を通して放出される。この場合、第二の洗浄ヘッド64は、第二の回転軸D2の周りを回転可能である。
【0071】
これらの第一の洗浄ノズル78、別の第一の洗浄ノズル80及び第二の洗浄ノズル82は、第一の洗浄流体と第二の洗浄流体を放出する噴射角度αが調節可能であるように構成することができる。そのために、これらの第一の洗浄ノズル78、別の第一の洗浄ノズル80及び第二の洗浄ノズル82は、球体の頭の形状で軸支することができる。これに代わって、或いはこれに加えて、特に、第一の洗浄ノズル78は、第三の回転軸D3の周りを回転可能な筒体83上に配置することができ、それにより、噴射角度αを調節することができる。如何なる場合でも、第一の洗浄ヘッド58は、調節機器85を備え、この機器を用いて、噴射角度αを調節することが可能である。これらの別の第一の洗浄ノズル80と第二の洗浄ノズル82は、相応に構成することができ、第一の洗浄流体を別の第一の洗浄ノズル80から放出する噴射角度αが、同じく調節機器85によって調節される。この調節機器85は、第二の洗浄ヘッド64に在る第二の洗浄ノズル80の噴射角度αを同様に調節できるように構成することができる。それによって、第一の洗浄流体と第二の洗浄流体が中空体の内側表面33と蓋の内面又は中空体の外面35に対して垂直又はほぼ垂直に当たることを達成できる。
【0072】
更に、本装置10は、第一の洗浄流体に音波を入力結合させる少なくとも一つの入力結合ユニット87を備える。この場合、入力結合ユニット87は、音波を第二の洗浄流体にも入力結合可能であるようにも構成することができる。図示された実施例では、入力結合ユニット87の中の幾つかが第一の洗浄ノズル78の中の少なくとも幾つかに統合されて、所謂「メガソニックノズル」として構成されている。第一の洗浄ノズル78から放出された第一の洗浄流体に極超音波を入力結合させることができる。同じことを別の第一の洗浄ノズル80と第二の洗浄ノズル82に対して規定することができる。
【0073】
これらの第一の洗浄ノズル78は、互いに独立して開閉することができる。従って、中空体の内面33の様々な部分を最初に洗浄して、その後、それ以外の部分を洗浄することが可能である。例えば、本発明により汚れが少ない部分を最初に洗浄して、その次に本発明により汚れが多い部分を洗浄することができる。これらの別の第一の洗浄ノズル80と第二の洗浄ノズル82を相応に構成することができ、その結果、第一の蓋の内面54と中空体の外面35を相応に洗浄することができる。
【0074】
これと同時に、洗浄流体が、第一の流路41を通して周縁面38に案内されるか、第二の流路57を通して蓋52に案内されるか、或いはその両方である。これらは同じ洗浄流体であるとすることができるが、第一の流路41を通して第一の洗浄流体を案内し、第二の流路57を通して第一の洗浄流体と異なる第二の洗浄流体を案内することも可能である。第一の流路41を通して周縁面38に案内される洗浄流体は、第一の洗浄流体も第二の洗浄流体も周縁面を横切ることができないようにする役割を果たす。従って、洗浄流体は、第一の洗浄流体と第二の洗浄流体の間における流体に関する密閉を実現する。従って、第一の洗浄流体と第二の洗浄流体が混合できないことが保証される。第二の洗浄流体による第一の洗浄流体の汚濁及びその逆が防止される。
【0075】
第一の洗浄ヘッド42から放出されて、中空体の内面33に吹き掛けられた第一の洗浄流体は、第一の排出流路70を介して排出される。同じことが、別の第一の洗浄ヘッド58から放出されて、蓋の内面54に掛けられる第一の洗浄流体にも言える。蓋の内面54の洗浄に使用された第一の洗浄流体を排出するために、第一の排出流路70は、第一の排出流路70に合流する付随流路84を備える。
【0076】
蓋52に案内された洗浄流体は、隙間60を通って付随流路84に戻るように流れる。筐体パッキン51は、洗浄流体が周囲に到達できることを防止する。この洗浄流体を用いて、別の第一の洗浄ヘッド58から放出されて、蓋の内面54に掛けられた第一の洗浄流体が、第一の洗浄流体内に存在する粒子が付着している可能性のある蓋パッキン53に到達可能であることが防止される。
【0077】
周縁面38及び/又は蓋52に案内される洗浄流体に十分に大きな圧力を加えることができる。
【0078】
第一の洗浄流体を用いて、中空体の内面33と蓋の内面54に存在する粒子が排出される。中空体の内面33を起源とする粒子は、第一の粒子測定機器741によって検出され、蓋の内面54を起源とする粒子は、第二の粒子測定機器によって検出される。この場合、第一の粒子測定機器741と第二の粒子測定機器742は、所与の体積流量において所定の時間内に粒子測定機器74を通過する粒子の数を計測するように構成することができる。そこで、中空体の内面33と蓋の内面54が所望の程度で洗浄されているのかを決定することができる。例えば、中空体の内面33が十分に清浄である場合、中空体12に関する洗浄プロセスを停止することができる一方、蓋の内面54に関する洗浄プロセスが継続される。その間に、把持ロボットによって、中空体12を本装置から取り出すことができ、それによって、時間を節約することができる。
【0079】
前述した通り、別の粒子測定機器74を第二の排出流路76に配置することができる。この別の粒子測定機器を用いて、中空体の外面35を起源とする粒子を検出することができる。この情報は、中空体12に関する洗浄プロセスを停止できるのか否かの決定に取り入れることもできる。中空体の内面33を起源とする粒子による第一の洗浄流体の負荷が所定の値を上回らない場合、この流体を中空体の外面35の洗浄にも使用することができる。
【0080】
付随流路84が第一の排出流路70に合流する地点の下流に粒子測定機器74が配置されている実施の形態は図示されていない。この場合、粒子が蓋の内面54を起源とするのか、或いは中空体の内面33を起源とするのかを区別することができない。それにも関わらず、粒子の数が所定の多さを下回った場合に、洗浄プロセスを停止することができる。
【0081】
第二の洗浄ヘッド64から放出されて、中空体の外面35に吹き掛けられた第二の洗浄流体は、第二の排出流路76を介して排出される。従って、第一の洗浄流体と第二の洗浄流体が互いに別個に排出され、その結果、中空体の外面35を起源とする粒子が第一の洗浄流体に、そのため中空体の内面33又は蓋の内面54に到達することができない。
【0082】
一般的に、中空体の内面33と蓋の内面54の洗浄は、中空体の外面35の洗浄よりも大きな意義を有する。中空体の内面33と蓋の内面54が所望の程度に洗浄されていることが確認された場合、中空体の外面35が既に洗浄されている程度に関係無く、洗浄プロセスを停止することができる。
【0083】
ここで、第一の乾燥用気体と第二の乾燥用気体、例えば、空気又は窒素は、第一及び第二の洗浄流体と全く同じ手法で第一の供給流路68又は第二の供給流路を介して第一の洗浄ヘッド42、別の第一の洗浄ヘッド58及び第二の洗浄ヘッド64に案内することができる。しかし、そのために、同じく図示されていない真空ポンプと接続することができる図示されていない配管を負圧ポート94に繋ぐことによって、中空体12内に負圧を発生させる。負圧のために、第一の乾燥用気体及び/又は第二の乾燥用気体が中空体12に吸入されて、その後再び中空体12から取り出される。第一の洗浄ヘッド42は、第一の乾燥ノズル86を備え、別の第一の洗浄ヘッド58は、別の第一の乾燥ノズル88を備え、第二の洗浄ヘッドは、第二の乾燥ノズル90を備え、これらを用いて、第一の乾燥用気体又は第二の乾燥用気体を放出して、中空体の内面33、蓋の内面54及び中空体の外面35に吹き掛けることができる。第一の乾燥用気体と第二の乾燥用気体は、本装置10から第一の洗浄流体と第二の洗浄流体を押し出す。更に、第一と第二の洗浄流体の残りは、吹き飛ばすことができる。
【0084】
これに加えて、第一の洗浄ヘッド42、別の第一の洗浄ヘッド58及び第二の洗浄ヘッドは、それぞれ赤外線ダイオード92を備え、これを用いて、第一と第二の洗浄流体の残りを加熱して蒸発させることができ、その結果、第一と第二の乾燥用気体によって、これらの流体を本装置10から排出することができる。
【0085】
乾燥プロセスの終了後、カバー18が開かれて、閉鎖体48が開放位置に動かされる。洗浄された中空体12は、プロセス空間22から取り出される。収容ユニット50が停止され、その結果、蓋52を閉鎖体48から取り出して、中空体を閉鎖するために中空体12に移送することができる。
【0086】
ここで、本装置10内において、洗浄すべき別の中空体12を前述した手法で取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0087】
10 本装置
12 中空体
14 筐体
16 筐体開口部
18 カバー
20 基盤壁
22 プロセス空間
24 貫通開口部
26 ロック機器
28 貫通孔
30 運搬容器
32 底壁
33 中空体の内面
34 側壁
35 開口部
36 周縁面
40 洗浄機器
42 第一の洗浄ヘッド
44 壁部分
46 洗浄開口部
48 閉鎖体
50 収容ユニット
52 蓋
54 蓋の内面
56 蓋の外面
58 別の第一の洗浄ヘッド
64 第二の洗浄ヘッド
66 流体案内ユニット
68 第一の供給流路
70 第一の排出流路
72 第一の端部
74 粒子測定機器
76 第二の排出流路
78 第一の洗浄ノズル
80 別の第一の洗浄ノズル
82 第二の洗浄ノズル
83 筒体
84 付随流路
85 調節機器
86 第一の乾燥ノズル
87 入力結合ユニット
88 別の第一の乾燥ノズル
90 第二の乾燥ノズル
92 赤外線ダイオード
94 負圧ポート
α 噴射角度
D1 第一の回転軸
D2 第二の回転軸
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋形状の中空体(12)、又は半導体ウェハ用若しくはEUV露光マスク用のこの中空体(12)としての運搬容器(30)を洗浄する装置(10)であって、
この中空体(12)が、
中空体の内面(33)を形成する一つの底壁(32)及び一つ又は複数の側壁(34)と、
この底壁(32)に対向する、側壁(34)の周縁面(38)により取り囲まれた一つの開口部(36)と、
を有し、
前記の中空体(12)が、蓋の内面(54)と蓋の外面(56)を有する蓋(52)を備え、この蓋(52)を用いて、開口部(36)が閉鎖可能であり、
本装置(10)が、
周縁面(38)により中空体(12)を上に設置できる基盤壁(20)と、
周縁面(38)により中空体(12)を密閉して取り外し可能な形で基盤壁(20)と連結可能にするロック機器(26)と
基盤壁(20)により形成され、半径方向に対してロック機器(26)の内側に配置された少なくとも一つの貫通開口部(24)と、
中空体(12)が基盤壁(20)と連結されている場合に、中空体の内面(33)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出できる洗浄機器(40)と、
第一の端部(72)を有する第一の排出流路(70)と、
を備え、
この第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)により専ら貫通開口部(24)と流体を通す形で繋がっており、この第一の排出流路を用いて、洗浄機器(40)から放出された第一の洗浄流体を排出することができる当該装置において、
別の壁部分(44)に、少なくとも部分的に閉鎖体(48)を用いて閉鎖可能である洗浄開口部(46)が配置されており、この閉鎖体(48)が、中空体(12)の蓋(52)を収容する収容ユニット(50)を備え、
洗浄機器(40)が、別の第一の洗浄ヘッド(58)を備え、洗浄開口部(46)が閉鎖体(48)又は蓋(52)によって閉鎖されている場合に、この別の第一の洗浄ヘッド(58)を用いて、蓋の内面(54)に洗浄するための第一の洗浄流体を吹き掛け可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)により基盤壁(20)と連結されて、貫通開口部(24)を取り囲んでいることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部に向かって漏斗形状に拡がっていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)が、その第一の端部(72)の所で貫通開口部(24)と面一に終止していることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が、貫通開口部(24)を超えて突き出た第一の洗浄ヘッド(42)を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)が回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)が、一定数の第一の洗浄ノズル(78)を備え、これらのノズルを介して、第一の洗浄流体を噴射角度(α)で放出可能であり、この第一の洗浄ヘッド(42)が調節機器(85)を備え、この機器を用いて、噴射角度(α)が調節可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(10)において、
本装置(10)が、第一の洗浄流体に音波を入力結合させる少なくとも一つの入力結合ユニット(87)を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置(10)において、
前記の入力結合ユニット(87)の中の少なくとも幾つかが、第一の洗浄ノズル(78)の中の少なくとも幾つかと統合されているか、或いは第一の洗浄ノズルと協力して動作することを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が、第一の洗浄流体を第一の洗浄ヘッド(42)に供給する供給流路(68)を備え、前記の排出流路(70)とこの供給流路(68)が、少なくとも部分的に一つの流体案内ユニット(66)に纏められていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の基盤壁(20)に、第一の流路(41)が配置されており、この流路を用いて、洗浄流体を周縁面(38)に案内できることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第一の排出流路(70)に、第一の洗浄流体に含まれる粒子を計測する粒子測定機器(74)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の閉鎖体(48)は、閉鎖体(48)が洗浄開口部(46)を開けている開放位置と、閉鎖体(48)又は蓋(52)が洗浄開口部(46)を閉じている閉鎖位置との間を移動できるように別の壁部分(44)に固定されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の装置(10)において、
本装置(10)が第二の流路(57)を備え、この流路を用いて、洗浄流体を蓋(52)にまで案内できることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記の底壁(32)と側壁(34)が中空体の外面(35)を形成する請求項1~14のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の洗浄機器(40)が第二の洗浄ヘッド(64)を備え、この洗浄ヘッドを用いて、中空体の外面(35)を洗浄するための第二の洗浄流体を放出することができ、
本装置(10)が、第二の排出流路(76)を備え、この流路を用いて、第二の洗浄ヘッド(64)から放出された第二の洗浄流体を排出できることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置(10)において、
本装置(10)が、基盤壁(20)と共にプロセス空間(22)を取り囲む筐体(14)を備え、カバー(18)により閉鎖可能な筐体開口部(16)を介して、このプロセス空間(22)にアクセス可能であることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置(10)において、
前記の基盤壁(20)が、一定数の貫通孔(28)を有し、これらの貫通孔(28)が、半径方向に対してロック機器(26)の外側に配置されており、これらの貫通孔により、第二の排出流路(76)が、プロセス空間(22)と流体を通す形で接続されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1517のいずれか1項に記載の装置(10)において、
前記の第二の洗浄ヘッド(64)が、U字形状に形成されており、プロセス空間(22)内を回転移動可能及び/又は並進移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1又は請求項15に記載の装置(10)において、
前記の第一の洗浄ヘッド(42)、別の第一の洗浄ヘッド(58)及び/又は第二の洗浄ヘッド(64)が、少なくとも一つの乾燥ノズル(86,88,90)及び/又は赤外線ダイオード(92)を備えることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の装置を用いて鍋形状の中空体(12)、又は半導体ウェハ用若しくはEUV露光マスク用のこの中空体(12)としての運搬容器(30)を洗浄する方法であって、
周縁面(38)により中空体(12)を基盤壁(20)上に設置する工程と、
ロック機器(26)を用いて、中空体(12)を基盤壁(20)と密閉して取り外し可能な形で連結する工程であって、中空体(12)が、周縁面で基盤壁(20)に対して密閉される工程と、
洗浄機器(40)の第一の洗浄ヘッド(42)を用いて、中空体の内面(33)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出して、第一の排出流路(70)を用いて、第一の洗浄流体を排出するか、
洗浄機器(40)の第二の洗浄ヘッド(64)を用いて、中空体の外面(35)を洗浄するための第二の洗浄流体を放出して、第二の排出流路(76)を用いて、第二の洗浄流体を排出するか、或いは
その両方である工程とを有する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
閉鎖体(48)を開放位置に動かす工程と、
蓋の外面(56)により蓋(52)を閉鎖体(48)の収容ユニット(50)上に設置して、蓋(52)を閉鎖体(48)に取り外し可能な形で固定する工程と、
閉鎖体(48)を閉鎖位置に動かす工程と、
別の第一の洗浄ヘッド(58)を用いて、蓋の内面(54)を洗浄するための第一の洗浄流体を放出する工程とを有する方法。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の方法において、
中空体の内面(33)によって画定される空間を第一の洗浄流体で完全に満たす工程と、
入力結合ユニット(87)を用いて第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程とを有する方法。
【請求項23】
請求項20又は21に記載の方法において、
入力結合ユニット(87)を用いて第一の洗浄ノズル(78)から放出された第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程であって、この入力結合ユニット(87)が第一の洗浄ノズル(78)に統合されているか、或いは第一の洗浄ノズルと協力して動作する工程とを有する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
一つの別の構成は、本方法が、
中空体の内面によって画定される空間を第一の洗浄流体で完全に満たす工程と、
入力結合ユニットを用いて、第一の洗浄流体に音波を入力結合させる工程と、
を有すると規定する。
【外国語明細書】