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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161572
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241112BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024140012
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2023552753の分割
【原出願日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2021165000
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇功
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インダクタンスを低減できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数の半導体モジュール(30)は、上アームモジュール(30H)と、上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュール(30L)を含む。冷却器(40)の熱交換部(41)は、積層方向において上アームモジュールおよび下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、半導体モジュールとともに積層体(45)をなしている。コンデンサモジュール(50)は、積層方向において積層体の一端側に配置されている。コンデンサモジュールと半導体モジュールとを電気的に接続する電源バスバー(61)は、熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように積層方向に延びている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下アーム回路(10)の上アーム(10H)を構成する上アームモジュール(30H)と、前記上下アーム回路の下アーム(10L)を構成し、前記上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュール(30L)と、を含む複数の半導体モジュール(30)と、
前記積層方向において前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、複数の前記半導体モジュールとともに積層体(45)をなす複数の熱交換部(41)を有する冷却器(40)と、
前記積層方向において前記積層体の一端側に配置されたコンデンサ(50)と、
前記コンデンサと前記半導体モジュールとを電気的に接続し、前記熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように前記積層方向に延びた電源バスバー(61)を含む複数のバスバー(60)と、を備え、
前記電源バスバーは、前記コンデンサの正極と前記上アームモジュールとを電気的に接続する正極バスバー(61P)と、前記コンデンサの負極と前記下アームモジュールとを電気的に接続する負極バスバー(61N)と、を含み、
複数の前記バスバーは、前記上アームモジュールと前記下アームモジュールとを電気的に接続し、前記積層方向において前記コンデンサから遠ざかる側に延びる出力バスバー(62)を含む、電力変換装置。
【請求項2】
前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールの一方である第1半導体モジュールは、他方である第2半導体モジュールよりも、前記積層方向において前記コンデンサから離れており、
前記第1半導体モジュールに接続された前記電源バスバーである第1電源バスバーと、前記第2半導体モジュールに接続された前記電源バスバーである第2電源バスバーおよび前記出力バスバーの少なくとも一方とは、互いに板面が対向して前記積層方向に延びている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
複数の前記半導体モジュールは、半導体素子(32)と、前記半導体素子を封止する封止体(31)と、前記半導体素子に電気的に接続され、前記封止体から外部に突出して対応する前記バスバーに接続された複数の主端子(35)と、をそれぞれ有し、
複数の前記主端子は、前記積層方向において前記半導体素子の表面に接続された第1主端子(35E)と、前記半導体素子の裏面に接続された第2主端子(35C)と、を含み、
共通の前記半導体モジュールにおいて、前記第1主端子の突出部分と前記第2主端子の突出部分とは、前記積層方向に直交する一方向に並んでいる、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
複数の前記半導体モジュールは、多相の前記上下アーム回路を構成する複数の前記上アームモジュールおよび複数の前記下アームモジュールを含み、
複数の前記上アームモジュールおよび複数の前記下アームモジュールのそれぞれは、前記一方向に並んで配置されている、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記下アームモジュールは、前記上アームモジュールに対して前記半導体素子の表裏面が反転するように配置され、前記第1主端子と前記第2主端子との並びが前記上アームモジュールとは逆である、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
複数の前記主端子の突出部分は、屈曲部(351)をそれぞれ有し、
前記屈曲部よりも突出先端側の部分の板面が、対応する前記バスバーの板面と対向している、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
各主端子の突出部分において、前記封止体側の端部から前記屈曲部までの長さが、前記屈曲部から突出先端までの長さよりも短い、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1電源バスバーは、前記コンデンサに接続された基部(66)と、前記基部に接続され、前記積層方向に延びる部分を含む延設部(67)と、を有し、
前記第1電源バスバーの延設部は、前記主端子の突出部分、前記第2電源バスバーにおける前記積層方向の延設部分の少なくとも一部、および前記出力バスバーにおける前記積層方向の延設部分の少なくとも一部を覆うように配置されている、請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1電源バスバーの延設部は、前記積層方向において前記上アームモジュールと前記下アームモジュールとの間に設けられたスリット(671)と、前記一方向において前記スリットに隣接し、前記出力バスバーにおける前記積層方向の延設部分と並走する並走部(672)と、前記積層方向において前記コンデンサ側で前記スリットに隣接し、前記並走部から前記一方向に延びて前記第2電源バスバーと対向する対向部(673)と、前記積層方向において前記対向部とは反対側で前記スリットに隣接し、前記並走部から前記一方向に延びて対応する前記主端子に接続された接続部(674)と、を有する、請求項8に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年10月6日に日本に出願された特許出願第2021-165000号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。この電力変換装置は、複数の半導体モジュールと、冷却器と、コンデンサと、複数のバスバーを備えている。冷却器は、半導体モジュールのそれぞれを両面側から挟むように多段に配置された複数の熱交換部を有している。複数のバスバーは、コンデンサと半導体モジュールとを電気的に接続する電源バスバーを含んでいる。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-295997号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1では、半導体モジュールのそれぞれが、一相分の上下アーム回路を構成している。このような半導体モジュールは、内部に上アームを構成する半導体素子と下アームを構成する半導体素子を有しており、これら半導体素子は積層方向に直交する一方向に並んで配置されている。このため、半導体モジュール内においてPN電流ループが大きくなる。また、コンデンサが、半導体モジュールと熱交換部との積層体に対して、積層方向に直交する一方向に配置されている。半導体モジュールとコンデンサとの間には、熱交換部に対して冷媒を導入または排出するパイプが配置されている。このため、冷却器のパイプを跨いで電源バスバーを配策しなければならず、電源バスバーが長くなる。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、電力変換装置にはさらなる改良が求められている。
【0006】
開示されるひとつの目的は、インダクタンスを低減できる電力変換装置を提供することにある。
【0007】
ここに開示された電力変換装置は、
上下アーム回路の上アームを構成する上アームモジュールと、上下アーム回路の下アームを構成し、上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュールと、を含む複数の半導体モジュールと、
積層方向において上アームモジュールおよび下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、複数の半導体モジュールとともに積層体をなす複数の熱交換部を有する冷却器と、
積層方向において積層体の一端側に配置されたコンデンサと、
コンデンサと半導体モジュールとを電気的に接続し、熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように積層方向に延びた電源バスバーを含む複数のバスバーと、を備え、
電源バスバーは、コンデンサの正極と上アームモジュールとを電気的に接続する正極バスバーと、コンデンサの負極と下アームモジュールとを電気的に接続する負極バスバーと、を含み、
複数のバスバーは、上アームモジュールと下アームモジュールとを電気的に接続し、積層方向においてコンデンサから遠ざかる側に延びる出力バスバーを含む。
【0008】
開示された電力変換装置によれば、複数の半導体モジュールを上アームモジュールと下アームモジュールとに分けるとともに、上アームモジュールと下アームモジュールとを積層方向に並ぶ配置としている。これにより、PN電流ループを小さくすることができる。また、コンデンサを積層体に対して積層方向に配置し、電源バスバーを熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように積層方向に延設している。これにより、電源バスバー長、つまり電流経路を短くすることができる。この結果、インダクタンスを低減できる電力変換装置を提供することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成および駆動システムを示す図である。
図2】電力変換装置を示す斜視図である。
図3】反対側から見た斜視図である。
図4】分解斜視図である。
図5】ケース内の構造を示す斜視図である。
図6】半導体モジュールを示す斜視図である。
図7】半導体素子、基板の表面金属体、および主端子の配置を示す平面図である。
図8】積層体を示す平面図である。
図9】半導体モジュール、冷却器、およびコンデンサの配置を示す平面図である。
図10図9のX-X線に沿う断面図である。
図11】積層体とバスバーの配置を示す平面図である。
図12】負極バスバーの延設部を接続する前の状態を示す斜視図である。
図13】負極バスバーの延設部を接続した後の状態を示す斜視図である。
図14】PN電流ループを示す図である。
図15】電源バスバー長の短縮を示す図である。
図16】電流経路を示す図である。
図17】電流経路を示す図である。
図18】第2実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図19】半導体モジュールを示す斜視図である。
図20】第3実施形態に係る電力変換装置において、積層体とバスバーの配置を示す平面図である。
図21】負極バスバーの延設部を接続する前の状態を示す斜視図である。
図22】負極バスバーの延設部を接続した後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
本実施形態の電力変換装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、ドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0014】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0015】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0016】
<電力変換装置の回路構成>
図1は、電力変換装置4の回路構成を示している。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、電力変換回路であるインバータ6と、駆動回路7を備えている。
【0017】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電源ラインであるPライン8と低電位側の電源ラインであるNライン9とに接続されている。Pライン8は直流電源2の正極に接続され、Nライン9は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン8に接続されている。平滑コンデンサ5の負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン9に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。
【0018】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン8へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0019】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路10を備えて構成されている。上下アーム回路10は、レグと称されることがある。上下アーム回路10は、上アーム10Hと、下アーム10Lをそれぞれ有している。以下では、上アーム10H、下アーム10Lを単にアーム10H、10Lと示すことがある。上アーム10Hおよび下アーム10Lは、上アーム10HをPライン8側として、Pライン8とNライン9との間で直列接続されている。上アーム10Hと下アーム10Lとの接続点は、出力ライン11を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。インバータ6は、6つのアーム10H、10Lを有している。各アーム10H、10Lは、スイッチング素子を備えて構成されている。
【0020】
本実施形態では、各アーム10H、10Lを構成するスイッチング素子として、nチャネル型の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ12(以下、IGBT12と示す)を採用している。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBT12のそれぞれには、還流用のダイオード13(以下、FWD13と示す)が逆並列に接続されている。
【0021】
上アーム10Hにおいて、IGBT12のコレクタが、Pライン8に接続されている。下アーム10Lにおいて、IGBT12のエミッタが、Nライン9に接続されている。そして、上アーム10HにおけるIGBT12のエミッタと、下アーム10LにおけるIGBT12のコレクタが相互に接続されている。FWD13のアノードは対応するIGBT12のエミッタに接続され、カソードはコレクタに接続されている。
【0022】
なお、スイッチング素子は、IGBT12に限定されない。たとえばMOSFETを採用してもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。MOSFETの場合、還流用のダイオードとして寄生ダイオード(ボディダイオード)を用いてもよいし、外付けのダイオードを用いてもよい。
【0023】
駆動回路7は、インバータ6などの電力変換回路を構成するスイッチング素子を駆動する。駆動回路7は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアーム10H、10LのIGBT12のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するIGBT12を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0024】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、IGBT12を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路7に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。制御回路は、上位ECU内に設けてもよい。
【0025】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電力変換装置4は、センサの少なくともひとつを備えてもよい。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0026】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータを備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路10を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0027】
<電力変換装置の構造>
図2は、電力変換装置4を示している。図3は、図2に対して反転した図である。図4は、分解斜視図である。図5は、ケース20内の構造を示している。図5は、図2に対してケース20を省略している。図2図5では、内部を透過させて図示している。
【0028】
図2図5に示すように、電力変換装置4は、ケース20と、複数の半導体モジュール30と、冷却器40と、コンデンサモジュール50と、バスバー60と、回路基板70などを備えている。
【0029】
以下において、半導体モジュール30と冷却器40の熱交換部41との積層方向をZ方向とする。Z方向に直交し、同じアーム側の半導体モジュール30の並び方向をX方向とする。Z方向およびX方向の両方向に直交する方向をY方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する位置関係にある。
【0030】
<ケース>
ケース20は、電力変換装置4を構成する他の要素を収容する。ケース20は、たとえばアルミダイカストによる成形体である。図2図4に示すように、本実施形態のケース20は、一面が開口する箱状をなしている。ケース20は、Y方向において一面が開口している。ケース20は、底壁21と、側壁22を有している。底壁21は平面略矩形状をなしている。側壁22は、底壁21に連なり、底壁21からY方向に延びている。側壁22は、底壁21の外周端の四辺のそれぞれに連なっている。側壁22は、Y方向の平面視において略矩形環状をなしている。ケース20は、4つの側壁22を有している。
【0031】
ケース20は、側壁22のひとつに貫通孔23、24を有している。貫通孔23、24には、冷却器40のパイプ42、43が挿通される。貫通孔23、24は、側壁22において内外を貫通し、内面と外面とに開口している。ケース20は、コネクタ71、80を電力変換装置4の外部と電気的に接続可能とするために、図示しない開口部を有している。ケース20は、コネクタ71用の開口部と、コネクタ80用の開口部を有している。開口部は、たとえば側壁22に設けられた貫通孔または切り欠きである。
【0032】
電力変換装置4は、ケース20とともに、ケース20の一面側開口を閉塞するカバー(蓋)を備えてもよい。ケース20およびカバーは、筐体と称されることがある。カバーを備えない構成において、ケース20内にポッティング樹脂などの充填材を配置することで、ケース20内に収容した要素を液密に封止してもよい。カバーを備える構成において、ケース20とカバーとの対向部分、貫通孔23、24の壁面とパイプ42、43との対向部分、コネクタ71、80のハウジングと開口部の壁面との対向部分にシール材を配置することで、筐体の内部を液密に封止してもよい。
【0033】
<半導体モジュール>
図6は、半導体モジュール30を示している。図6では、一例として、上アームモジュール30Hを示している。図7は、半導体モジュール30において、半導体素子32、基板33、34の表面金属体332、342、主端子35の配置を示している。図7では、配置を分かりやすくするために、基板33に対して基板34を180反転させて図示し、基板33、34の表面金属体332、342を同一平面に示している。
【0034】
複数の半導体モジュール30は、上記した上下アーム回路10、つまりインバータ6(電力変換回路)を構成する。複数の半導体モジュール30は、上アーム10Hを構成する上アームモジュール30Hと、下アーム10Lを構成する下アームモジュール30Lを含んでいる。
【0035】
本実施形態では、ひとつの半導体モジュール30がひとつのアーム10H、10Lを構成する。図4などに示すように、複数の半導体モジュール30は、三相分の上アーム10Hを構成する3つの上アームモジュール30Hと、三相分の下アーム10Lを構成する3つの下アームモジュール30Lを含んでいる。また、すべての半導体モジュール30が、互いに共通の構造を有している。図6および図7に示すように、各半導体モジュール30は、封止体31と、半導体素子32と、基板33、34と、主端子35と、信号端子36を備えている。
【0036】
封止体31は、半導体モジュール30を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体31の外に露出している。封止体31は、たとえば樹脂を材料とする。封止体31は、たとえばエポキシ系樹脂を材料としてトランスファモールド法により成形されている。封止体31は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。ゲルは、たとえば一対の基板33、34の対向領域に充填(配置)される。
【0037】
半導体素子32は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。スイッチング素子は、半導体基板の板厚方向に主電流を流すように縦型構造をなしている。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子32は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0038】
本実施形態の半導体素子32は、Siを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のIGBT12およびFWD13、つまりRC(Reverse Conducting)-IGBTが形成されてなる。IGBT12は、半導体素子32(半導体基板)の板厚方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子32は、自身の板厚方向の両面に、スイッチング素子の主電極を有している。具体的には、主電極として、表面にエミッタ電極32Eを有し、裏面にコレクタ電極32Cを有している。エミッタ電極32Eは、表面の一部分に形成されている。コレクタ電極32Cは、裏面のほぼ全域に形成されている。図7では、コレクタ電極32Cおよびエミッタ電極32Eを破線で示している。
【0039】
主電流は、コレクタ電極32Cとエミッタ電極32Eとの間に流れる。半導体素子32は、エミッタ電極32Eの形成面に、信号用の電極である図示しないパッドを有している。半導体素子32は、その板厚方向がZ方向に略平行となるように配置されている。本実施形態の半導体モジュール30は、ひとつの半導体素子32を備えている。
【0040】
基板33、34は、半導体素子32の板厚方向、つまりZ方向において、半導体素子32を挟むように配置されている。基板33、34は、Z方向において互いに少なくとも一部が対向するように配置されている。基板33、34は、Z方向の平面視においてひとつのアーム10H、10Lを構成する半導体素子32のすべてを内包している。
【0041】
基板33、34は、半導体素子32に電気的に接続されている。基板33は、半導体素子32に対して、コレクタ電極32C側に配置されている。基板34は、半導体素子32に対して、エミッタ電極32E側に配置されている。基板33は、コレクタ電極32Cに電気的に接続され、配線機能を提供する。同様に、基板34は、エミッタ電極32Eに電気的に接続され、配線機能を提供する。基板33、34は、半導体素子32の生じた熱を放熱する放熱機能を提供する。
【0042】
基板33は、絶縁基材331と、表面金属体332と、裏面金属体333を有している。表面金属体332は、絶縁基材331において半導体素子32側の面である表面に配置されている。裏面金属体333は、絶縁基材331の裏面に配置されている。基板34は、絶縁基材341と、表面金属体342と、裏面金属体343を有している。表面金属体342は、絶縁基材341において半導体素子32側の面である表面に配置されている。裏面金属体343は、絶縁基材341の裏面に配置されている。基板33、34は、絶縁基材と金属体の積層基板である。以下では、表面金属体332、342、裏面金属体333、343を、単に金属体332、333、342、343と称することがある。
【0043】
絶縁基材331は、金属体332、333を電気的に分離している。同様に、絶縁基材341は、金属体342、343を電気的に分離している。絶縁基材331、341の主たる材料は、樹脂、または、無機材料のセラミックである。絶縁基材331、341の材料構成は、互いに共通(同一)でもよいし、互いに異なってもよい。
【0044】
金属体332、333、342、343は、たとえば金属板または金属箔として提供される。金属体332、333、342、343は、CuやAlなどの導電性、熱伝導性が良好な金属を材料として形成されている。表面金属体332、342は、配線、つまり回路を提供する。
【0045】
本実施形態の表面金属体332、342は、パターニングされている。図7に示すように、表面金属体332は、配線機能を提供する配線部334と、配線機能を提供しないダミー配線部335を有している。配線部334は、半導体素子32のコレクタ電極32Cと対応する主端子35(コレクタ端子35C)とを電気的に接続している。配線部334は、平面略L字状をなしており、平面略矩形状の基部334aと、基部の一辺からY方向に延びる凸部334bを有している。配線部334の基部334aにコレクタ電極32Cが接続され、凸部334bにコレクタ端子35Cが接続されている。
【0046】
ダミー配線部335は、配線部334に対して電気的に分離されている。ダミー配線部335は、X方向において配線部334の凸部334bと並ぶように設けられている。ダミー配線部335には、主端子35であるエミッタ端子35Eが接続されている。ダミー配線部335は、エミッタ端子35Eを支持している。
【0047】
表面金属体342は、表面金属体332と同様に、配線機能を提供する配線部344と、配線機能を提供しないダミー配線部345を有している。配線部344は、半導体素子32のエミッタ電極32Eと対応する主端子35(エミッタ端子35E)とを電気的に接続している。配線部344は、平面略L字状をなしており、平面略矩形状の基部344aと、基部の一辺からY方向に延びる凸部344bを有している。配線部344の基部334aにエミッタ電極32Eが接続され、凸部344bにエミッタ端子35Eが接続されている。
【0048】
ダミー配線部345は、配線部344に対して電気的に分離されている。ダミー配線部345は、X方向において配線部344の凸部344bと並ぶように設けられている。ダミー配線部345には、主端子35であるコレクタ端子35Cが接続されている。ダミー配線部335は、コレクタ端子35Cを支持している。
【0049】
表面金属体332と表面金属体342とは、Z方向からの平面視において左右反転した配置となっている。X方向において、凸部334bとダミー配線部335との並びが、凸部344bとダミー配線部345との並びとは逆の配置となっている。
【0050】
裏面金属体333、343は、絶縁基材331、341により、半導体素子32および表面金属体332、342を含む回路とは電気的に分離されている。半導体素子32の生じた熱は、表面金属体332、342および絶縁基材331、341を介して裏面金属体333、343に伝わる。裏面金属体333、343は、放熱機能を提供する。裏面金属体333、343は、平面視において対応する表面金属体332、342とほぼ一致するようにパターニングしてもよいし、表面金属体332、342とは異なるパターンとしてもよい。絶縁基材331、341にほぼ一致するいわゆるベタパターンとしてもよい。本実施形態では、裏面金属体333のパターンが表面金属体332とほぼ一致し、裏面金属体343のパターンが表面金属体342とほぼ一致している。
【0051】
放熱効果をさらに高めるために、裏面金属体333、343の少なくともひとつは、封止体31から露出してもよい。本実施形態では、裏面金属体333が封止体31の一面から露出し、裏面金属体343が封止体31の裏面から露出している。
【0052】
なお、半導体素子32の主電極と主端子35とを電気的に接続する配線部材は、上記した基板33、34に限定されない。たとえば金属板であるヒートシンクを採用してもよい。ヒートシンクは、上記した放熱機能も提供する。ヒートシンクは、たとえば主端子35や信号端子36などとともにリードフレームの一部として提供される。ヒートシンクを封止体31から露出させる場合、冷却器40の熱交換部41との間にセラミック板などの絶縁部材を配置することで、ヒートシンクと熱交換部41とを電気的に分離することができる。
【0053】
主端子35は、半導体素子32の主電極に電気的に接続された外部接続端子である。主端子35は、コレクタ電極32Cに電気的に接続されたコレクタ端子35Cと、エミッタ電極32Eに電気的に接続されたエミッタ端子35Eを含んでいる。コレクタ端子35Cは、表面金属体332の配線部334を介して、コレクタ電極32Cに接続されている。エミッタ端子35Eは、表面金属体342の配線部344を介して、エミッタ電極32Eに接続されている。エミッタ端子35Eが、半導体素子32の表面(エミッタ電極32E)に接続された第1主端子に相当する。コレクタ端子35Cが、半導体素子32の裏面(コレクタ電極32C)に接続された第2主端子に相当する。
【0054】
各主端子35は、Y方向に延設され、封止体31の内外にわたって配置された部分を有している。各主端子35は、Y方向において封止体31の側面のひとつから外部に突出している。コレクタ端子35Cの突出部分とエミッタ端子35Eの突出部分は、X方向に並んでいる。主端子35の突出部分は、Y方向に延びる部分のみを有してもよいし、途中で屈曲してもよい。
【0055】
図6に示すように、本実施形態の突出部分は、屈曲部351と、根元部352と、先端部353をそれぞれ有している。根元部352は、突出部分において、封止体31から屈曲部351までの部分である。根元部352の板厚方向はZ方向に略平行であり、根元部352はY方向に延びている。先端部353は、屈曲部351から突出先端までの部分である。先端部353の板厚方向はY方向に略平行であり、先端部353はZ方向に延びている。主端子35の突出部分は、屈曲部351にて略90度の角度で折れ曲がり、YZ平面において略L字状をなしている。
【0056】
根元部352の延設長さL1は、先端部353の延設長さL2よりも短くてもよいし、長くてもよい。延設長さL1、L2が互いに等しくてもよい。本実施形態では、根元部352の延設長さL1が先端部353の延設長さL2よりも短い。つまり、主端子35の突出部分は、封止体31の近傍で屈曲している。
【0057】
先端部353は、Z方向においてコンデンサモジュール50に対して近づく方向に延びてもよいし、遠ざかる方向に延びてもよい。共通の半導体モジュール30において、コレクタ端子35Cの先端部353とエミッタ端子35Eの先端部353とが同じ方向に延びてもよいし、互いに反対向きに延びてもよい。本実施形態では、コレクタ端子35Cの先端部353とエミッタ端子35Eの先端部353とが、同じ方向に延びている。
【0058】
信号端子36は、半導体素子32のパッドに電気的に接続された外部接続端子である。信号端子36は、Y方向に延び、封止体31において主端子35が突出する側面とは反対の面から外部に突出している。
【0059】
信号端子36とパッドとの接続形態は特に限定されない。ボンディングワイヤを用いて接続してもよい。ボンディングワイヤを用いる場合、基板34と半導体素子32のエミッタ電極32Eとの間に導電スペーサを介在することで、ボンディングワイヤの高さを確保してもよい。ボンディングワイヤに代えて、他の配線部材を用いてもよい。はんだなどの接合材を介して接続してもよい。
【0060】
<冷却器>
図8は、半導体モジュール30と冷却器40の配置を示している。図8では、便宜上、主端子35の構造を簡素化して図示している。図9は、半導体モジュール30、冷却器40、およびコンデンサモジュール50の配置を示す平面図である。図9では、便宜上、ケース20を断面で示すとともに、バスバー60などの要素を省略して図示している。
【0061】
冷却器40は、熱伝導性に優れた金属材料、たとえばアルミニウム系の材料を用いて形成されている。図4図8図9などに示すように、冷却器40は、熱交換部41と、導入用のパイプ42と、排出用のパイプ43を備えている。
【0062】
熱交換部41は、全体として扁平形状の管状体となっている。熱交換部41は、たとえば一対のプレート(金属製薄板)を用いて内部に流路を有するように構成されている。一対のプレートの少なくとも一方を、プレス加工によってZ方向に膨らんだ形状に加工する。その後、一対のプレートの外周縁部同士を、かしめなどによって固定するとともに、ろう付けなどによって全周で互いに接合する。これにより、一対のプレート間に冷媒が流通可能な流路が形成され、熱交換部41として用いることが可能となる。
【0063】
熱交換部41は、半導体モジュール30のそれぞれを両面側から冷却するようにZ方向に多段に配置されている。熱交換部41は、Z方向において半導体モジュール30を挟んでいる。熱交換部41は、半導体モジュール30とともに積層体45を構成している。
【0064】
パイプ42、43のそれぞれは、ケース20の内外にわたって配置されている。パイプ42、43のそれぞれは、ひとつの部材により構成されてもよいし、複数の部材を連結してなる構成としてもよい。パイプ42、43は、熱交換部41のそれぞれに連結されている。図示しないポンプによって冷媒をパイプ42に供給することにより、多段に配置された熱交換部41それぞれの流路に冷媒が流れる。これにより、半導体モジュール30のそれぞれが冷却される。熱交換部41のそれぞれを流れた冷媒は、パイプ43を介して排出される。冷媒としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。
【0065】
<複数の半導体モジュールの配置>
図8などに示すように、積層体45において、半導体モジュール30と熱交換部41とは交互に配置されている。積層体45の両端には、熱交換部41が配置されている。積層体45において、熱交換部41は、Z方向に3段配置されている。ここで、コンデンサモジュール50にもっとも近い熱交換部41を1段目、真ん中の熱交換部41を2段目、コンデンサモジュール50からもっと離れた熱交換部41を3段目とする。
【0066】
積層体45において、1段目の熱交換部41と2段目の熱交換部41との間には、上アームモジュール30Hが配置されている。三相分の上アーム10Hを構成する3つの上アームモジュール30Hが、互いに向きを同じにしてX方向に並んでいる。3つの上アームモジュール30Hは、U相、V相、W相の順に並んでいる。上アームモジュール30Hそれぞれのコレクタ端子35Cは、コンデンサ素子52の正極に電気的に接続されるP端子として機能する。P端子は、正極端子、高電位電源端子などと称されることがある。上アームモジュール30Hそれぞれのエミッタ端子35Eは、モータジェネレータ3の対応する相の巻線3aに電気的に接続されるO端子として機能する。O端子は、出力端子、交流端子などと称されることがある。
【0067】
積層体45において、2段目の熱交換部41と3段目の熱交換部41との間には、下アームモジュール30Lが配置されている。三相分の下アーム10Lを構成する3つの下アームモジュール30Lが、互いに向きを同じにしてX方向に並んでいる。3つの下アームモジュール30Lは、上アームモジュール30Hと同じ順に並んでいる。下アームモジュール30Lそれぞれのコレクタ端子35Cは、O端子として機能する。下アームモジュール30Lそれぞれのエミッタ端子35Eは、コンデンサ素子52の負極に電気的に接続されるN端子として機能する。N端子は、負極端子、低電位電源端子などと称されることがある。
【0068】
上記したように、上アームモジュール30Hがコンデンサモジュール50に対して近い側、下アームモジュール30Lがコンデンサモジュール50に対して遠い側に配置されている。下アームモジュール30Lが第1半導体モジュールに相当し、上アームモジュール30Hが第2半導体モジュールに相当する。各半導体モジュール30は互いに共通の構造である。Z方向において、同じ相の上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lとが、熱交換部41を介して対向配置されている。同じ相の上アームモジュール30Hのコレクタ端子35Cと、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eとが対向配置されている。
【0069】
積層体45は、加圧部材46によってZ方向に押圧されている。加圧部材46により、半導体モジュール30と熱交換部41とが熱伝導良好に保持されている。上記したように、本実施形態では基板33、34を採用しているため、半導体モジュール30と熱交換部41とを電気的に分離するための絶縁部材を配置しなくてもよい。半導体モジュール30と熱交換部41とは直接的に接触してもよいし、半導体モジュール30と熱交換部41との間に熱伝導ゲルなどの熱伝導性部材が介在してもよい。
【0070】
一例として、本実施形態の加圧部材46は、加圧プレート461と、弾性部材462と、ボルト463を有している。加圧プレート461は、Z方向においてコンデンサモジュール50との間に積層体45が位置するように配置されている。弾性部材462は、たとえばゴムなどの弾性変形により加圧力を発生するものや金属製のばねである。弾性部材462は、加圧プレート461と3段目の熱交換部41との間に配置されている。加圧プレート461は、積層体45との間に弾性部材462を保持した状態で、ボルト463によってコンデンサモジュール50のケース51に固定されている。
【0071】
図4に示すように、加圧プレート461はZ方向の平面視において略矩形状をなしており、その四隅にボルト463用の貫通孔464を有している。加圧プレート461は、四隅に配置されたボルト463によってケース51に固定されている。加圧プレート461の固定により弾性部材462が弾性変形し、その反力により積層体45をケース51に押し付けている。積層体45は、加圧プレート461とケース51との間で、押圧状態で保持されている。
【0072】
<コンデンサモジュール>
図4図5図9に示すように、コンデンサモジュール50は、ケース51と、コンデンサ素子52を備えている。コンデンサモジュール50(コンデンサ素子52)が、コンデンサに相当する。ケース51は、樹脂材料や金属材料を用いて形成されており、一面が開口する箱状をなしている。ケース51は、Y方向において一面が開口している。ケース51は、ケース20の開口とは反対側に開口している。ケース51は、X方向を長手方向、Z方向を短手方向とする平面略矩形状をなしている。
【0073】
コンデンサ素子52は、ケース51内に収容(配置)されている。コンデンサ素子52は、上記した平滑コンデンサ5を構成する。コンデンサ素子52としては、たとえばフィルムコンデンサ素子を採用することができる。コンデンサ素子52の数は特に限定されない。ひとつのみでもよいし、複数でもよい。一例として、本実施形態のコンデンサモジュール50は、6つのコンデンサ素子52を備えている。6つのコンデンサ素子52は、Z方向に2行、X方向に3列で配置されている。6つのコンデンサ素子52は、その全体で略直方体状をなしている。各コンデンサ素子52は、Y方向の両端に図示しない金属電極を有している。各コンデンサ素子52において、正極側の金属電極はケース51の底壁側の端部である底面に設けられ、負極側の金属電極はケース51の開口側の端部である上面に設けられている。
【0074】
コンデンサモジュール50は、図示しない封止体を備えてもよい。封止体は、ケース51内に充填されてコンデンサ素子52を封止する。コンデンサモジュール50は、図示しない端子を備えてもよい。端子は、たとえば、コンデンサ素子52の金属電極に接続された板状の金属部材である。
【0075】
図5および図9などに示すように、コンデンサモジュール50は、Z方向において積層体45の一端側に配置されている。Z方向の平面視において、コンデンサモジュール50は、積層体45と重なるように配置されている。
【0076】
<バスバー>
図10は、図9のX-X線に対応する断面図である。図10では、便宜上、積層体45、コンデンサ素子52、バスバー60、および回路基板70のみを図示している。図11は、各バスバー60の配置を示す平面図である。図11は、図8に対応している。図12は負極バスバー61Nの延設部67を配置する前の状態を示し、図13は延設部67を配置した状態を示している。図12および図13では、便宜上、正極バスバー61Pの延設部65および負極バスバー61Nの延設部68を省略している。
【0077】
バスバー60は、半導体モジュール30に電気的に接続された配線部材である。バスバー60は、板状の金属部材である。バスバー60は、はんだ接合、抵抗溶接、レーザ溶接などにより、対応する主端子35に接続されている。図4図10図11などに示すように、バスバー60は、電源バスバー61と、出力バスバー62を備えている。
【0078】
電源バスバー61は、半導体モジュール30とコンデンサ素子52とを電気的に接続している。電源バスバー61は、正極バスバー61Pと、負極バスバー61Nを含んでいる。正極バスバー61Pは、上アームモジュール30Hのコレクタ端子35C(P端子)のそれぞれと、コンデンサ素子52の正極とを電気的に接続している。正極バスバー61Pは、Pバスバー、高電位電源バスバーなどと称されることがある。正極バスバー61Pは、上記したPライン8の少なくとも一部を構成している。正極バスバー61Pが、第2電源バスバーに相当する。
【0079】
正極バスバー61Pは、基部63と、延設部64、65を有している。基部63は、コンデンサ素子52の正極に接続されている。基部63は、ケース51内に配置され、ケース51の底壁およびZ方向における2つの側壁と対向する部分を含んでいる。基部63は、略直方体状をなすコンデンサ素子52の全体に対して、3つの面と対向している。基部63は、底面対向部631と、側面対向部632、633と、折曲部634を有している。
【0080】
底面対向部631は、コンデンサ素子52の底面と対向している。側面対向部632は、積層体45側でコンデンサ素子52の側面と対向している。側面対向部633は、Z方向において側面対向部632とは反対側でコンデンサ素子52の側面と対向している。折曲部634は、側面対向部632に対して略90度の角度で折り曲げられている。折曲部634は、側面対向部632に連なり、側面対向部632からZ方向であって積層体45側に延びている。折曲部634は、ケース51の外に配置されている。
【0081】
延設部64は、基部63の折曲部634に連なり、Z方向に延びている。延設部64の幅は、基部63の幅よりも狭い。正極バスバー61Pは、各相に対応する3つの延設部64を有している。3つの延設部64は、共通の折曲部634から互いに同一方向に延びている。3つの延設部64は、X方向に並んでいる。延設部64の板厚方向は、Y方向に略平行である。延設部64の板面は、上アームモジュール30Hのコレクタ端子35Cの先端部353の板面と対向している。そして、板面同士が対向する箇所において、延設部64と上アームモジュール30Hのコレクタ端子35Cとが接続されている。延設部64のそれぞれは、1段目の熱交換部41をZ方向に跨いでいる(横切っている)。
【0082】
延設部65は、延設部64とは反対側で、基部63に連なっている。延設部65は、基部63から延設部64とは逆向きに延びている。延設部65の幅は、基部63の幅よりも狭い。延設部65は、直流電源2と接続するためのコネクタ80を構成している。延設部65は、コネクタ80の正極端子である。上記した構成の正極バスバー61Pは、たとえば一枚の金属板を加工することで形成されてもよいし、複数の部材を接続(接合)することで形成されてもよい。
【0083】
負極バスバー61Nは、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N端子)のそれぞれと、コンデンサ素子52の負極とを電気的に接続している。負極バスバー61Nは、Nバスバー、低電位電源バスバーなどと称されることがある。負極バスバー61Nは、Nライン9の少なくとも一部を構成している。負極バスバー61Nが、第1電源バスバーに相当する。
【0084】
負極バスバー61Nは、基部66と、延設部67、68を有している。基部66は、コンデンサ素子52の負極に接続されている。基部66の少なくとも一部は、ケース51の外に配置されている。基部66は、被覆部661と、対向部662を有している。被覆部661は、Y方向の平面視において、略直方体状をなすコンデンサ素子52の全体を覆うように配置されている。被覆部661は、コンデンサ素子52の上面と対向し、負極に接続されている。対向部662は、被覆部661に連なり、Z方向において積層体45側に延びている。対向部662は、Z方向の平面視において正極バスバー61Pの折曲部634とほぼ一致するように配置されている。対向部662の板厚方向は、Y方向に略平行である。X方向において、対向部662の幅は、被覆部661の幅よりも狭い。対向部662と正極バスバー61Pの折曲部634とは、板面同士が離間して対向している。
【0085】
延設部67は、基部66の対向部662に接続(接合)されている。延設部67は、基部66とは別に設けられ、接続により一体化されている。延設部67は、基部66に連なり、Z方向において積層体45側に延びる部分を含んでいる。延設部67の板厚方向は、Y方向に略平行である。延設部67の板面は、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eの先端部353の板面と対向している。そして、板面同士が対向する箇所において、延設部67と下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eとが接続されている。延設部67は、主端子35の突出部分、正極バスバー61Pの延設部64の少なくとも一部、および出力バスバー62の少なくとも一部を覆うように配置されている。延設部67は、1段目の熱交換部41および2段目の熱交換部41をZ方向に跨いでいる(横切っている)。
【0086】
図11および図13などに示すように、延設部67は、スリット671と、並走部672と、対向部673と、接続部674を有している。スリット671は、Y方向の平面視において上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lとの間に設けられている。スリット671は、上アームモジュール30Hのコレクタ端子35Cと下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eとの間に設けられている。スリット671は、切り欠きと称されることがある。延設部67は、三相分のスリット671を有している。3つのスリット671は、X方向に並んで設けられている。
【0087】
並走部672は、X方向においてスリット671に隣接する部分を有している。並走部672は、スリット671を規定している。並走部672の少なくとも一部は、出力バスバー62と並走している。並走部672と出力バスバー62とは、板面同士が離間して対向している。並走部672はZ方向に延び、その延設方向において出力バスバー62との対向関係を維持している。延設部67は、三相分の並走部672を有している。3つの並走部672は、X方向に並んで設けられている。
【0088】
対向部673は、Z方向においてコンデンサモジュール50側でスリットに隣接する部分を有している。対向部673は、スリット671を規定している。対向部673は、並走部672からX方向に延びている。対向部673と正極バスバー61Pの延設部64のそれぞれとは、板面同士が離間して対向している。対向部673は、たとえば延設部64の全長において延設部64との対向関係を維持している。
【0089】
接続部674は、Z方向において対向部673とは反対側でスリット671に隣接している。接続部674は、スリット671を規定している。接続部674は、並走部672からX方向に延びている。接続部674の板面は、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eの先端部353の板面と対向している。そして、板面同士が対向する箇所において、接続部674と下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eとが接続されている。
【0090】
図5などに示すように、延設部68は、延設部67とは反対側で、基部66に連なっている。延設部68は、基部66から延設部67とは逆向きに延びている。延設部68の幅は、基部66の幅よりも狭い。延設部68は、X方向において正極バスバー61Pの延設部65と並んでいる。延設部68は、コネクタ80を構成している。延設部68は、コネクタ80の負極端子である。コネクタ80は、延設部65、68およびケース51の一部分を備えて構成されている。コネクタ80は、入力端子台と称されることがある。
【0091】
出力バスバー62は、上アームモジュール30Hのエミッタ端子35Eと下アームモジュール30Lのコレクタ端子35Cとを電気的に接続している。出力バスバー62は、Z方向においてコンデンサモジュール50から遠ざかる側に延びる部分を有している。出力バスバー62の板面は、上アームモジュール30Hのエミッタ端子35Eの先端部353の板面、および、下アームモジュール30Lのコレクタ端子35Cの先端部353の板面と対向している。そして、板面同士が対向する箇所において、出力バスバー62と先端部353のそれぞれとが接続されている。
【0092】
バスバー60は、三相分の出力バスバー62を備えている。U相の出力バスバー62(U)と並走部672のひとつとの板面同士が対向している。V相の出力バスバー62(V)と並走部672の他のひとつとの板面同士が対向している。W相の出力バスバー62(W)と並走部672の他のひとつとの板面同士が対向している。出力バスバー62のそれぞれは、2段目の熱交換部41および3段目の熱交換部41をZ方向に跨いでいる(横切っている)。出力バスバー62それぞれの一端は、モータジェネレータ3との接続が可能なように、ケース20の開口から外部に突出している。
【0093】
出力バスバー62の途中には、電流センサ81が設けられている。電流センサ81は、出力バスバー62に対して個別に設けられている。電流センサ81は、相電流を検出する。電流センサ81は、ケース20内に配置されている。
【0094】
上記したように、負極バスバー61Nの延設部67は、基部66とは別に設けられている。このため、バスバー60の接続(接合)においては、まず図12に示すように、Z方向において下層側のバスバー60を対応する主端子35に接続する。具体的には、正極バスバー61Pの延設部64を上アームモジュール30Hのコレクタ端子35C(P)に接続し、出力バスバー62を上アームモジュール30Hのエミッタ端子35E(O)と下アームモジュール30Lのコレクタ端子35C(O)とに接続する。
【0095】
次いで、図13に示すように、Z方向において上層側のバスバー60を対応する主端子35に接続する。具体的には、負極バスバー61Nの延設部67を基部66に接続するとともに、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N)に接続する。これにより、負極バスバー61Nと正極バスバー61Pとの並走構造、および、負極バスバー61Nと出力バスバー62との並走構造を実現することができる。
【0096】
<回路基板>
回路基板70は、樹脂などの絶縁基材に配線が配置された配線基板と、配線基板に実装された図示しない電子部品を備えている。配線および電子部品は、回路を構成している。回路基板70には、上記した駆動回路7が構成されている。
【0097】
回路基板70は、外部機器との接続のためにコネクタ71を備えている。コネクタ71は、樹脂などを用いて成形されたハウジングと、ハウジングに保持され、配線基板に実装された端子を備えている。便宜上、各図において端子を簡素化または省略して図示している。制御回路を電力変換装置4の外に設ける場合、コネクタ71を介して制御回路の駆動指令が入力される。制御回路を回路基板70に設ける場合、コネクタ71を介して上位ECUからトルク要求が入力される。
【0098】
回路基板70は、Z方向においてケース20の開口側に配置されている。回路基板70は、ケース20の底壁21との間にコンデンサモジュール50および積層体45が位置するように配置されている。回路基板70は、Y方向の平面視において、コンデンサモジュール50および積層体45と重なるように配置されている。回路基板70には、積層体45が備える半導体モジュール30の信号端子36が挿入実装されている。なお、挿入実装に代えて表面実装構造を採用してもよい。回路基板70は、出力バスバー62をケース20の外に突出させるための図示しない貫通孔を有している。
【0099】
<第1実施形態のまとめ>
図14は、本実施形態におけるPN電流ループを示している。主回路のインダクタンスを検討する上では、P端子である上アームモジュール30Hのコレクタ端子35Cから、N端子である下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eまでの電流経路であるPN電流ループについて考慮する。電流経路のうち、上アームモジュール30Hのコレクタ端子35C(P)からエミッタ端子35E(O)までを破線で示し、上アームモジュール30Hのエミッタ端子35E(O)から下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N)までを実線で示している。実際は、上下アーム回路10を構成する上アームモジュール30Hの半導体素子32と下アームモジュール30Lの半導体素子32が同時にオンしないように、各半導体素子32が制御される。
【0100】
本実施形態によれば、図8図14などに示すように、複数の半導体モジュール30を上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lとに分けている。そして、上アームモジュール30Hと下アームモジュール30LとをZ方向(積層方向)に並ぶ配置としている。これにより、一相分の上下アーム回路をひとつのモジュールが提供する構成、上アームモジュールと下アームモジュールとがX方向に並ぶ構成に較べて、PN電流ループを小さくすることができる。PN電流ループがより小さいと、逆向きに電流が流れる部材が互いに近づき、磁束の打ち消し効果が高まるため、インダクタンスを低減することができる。
【0101】
図15は、本実施形態における半導体モジュール30、冷却器40、およびコンデンサモジュール50の配置を示している。本実施形態では、図15に示すように、コンデンサモジュール50を積層体45に対してZ方向に配置している。そして、電源バスバー61を、多段に配置された熱交換部41の少なくともひとつを跨ぐようにZ方向に延設している。熱交換部41の1段分の長さL3は、パイプの直径に等しい長さL4よりも十分短い。よって、コンデンサモジュールをX方向において積層体の横に配置し、パイプのひとつを跨ぐように電源バスバーをX方向に延設する構成に較べて、電源バスバー61の長さを短くすることができる。つまり、電流経路を短くすることができる。
【0102】
上記したPN電流ループの縮小と電源バスバー長の短縮により、本実施形態の電力変換装置4は、インダクタンスを低減することができる。
【0103】
電源バスバー61である正極バスバー61Pおよび負極バスバー61Nと、出力バスバー62の配置は特に限定されない。図16は、平滑コンデンサ5およびインバータ6を含む主回路の電流経路を示している。図9図10図16などに示すように、本実施形態では、下アームモジュール30Lが、上アームモジュール30Hよりもコンデンサモジュール50から離れて配置されている。図10図11図16などに示すように、負極バスバー61Nおよび正極バスバー61Pは、互いに板面が対向してZ方向に延びている。負極バスバー61Nおよび出力バスバー62は、互いに板面が対向してZ方向に延びている。
【0104】
このようにバスバー60同士を対向配置すると、磁束打消しの効果によりインダクタンスをさらに低減することができる。なお、本実施形態では、負極バスバー61Nが正極バスバー61Pおよび出力バスバー62と対向する例を示したが、これに限定されない。負極バスバー61Nが、正極バスバー61Pおよび出力バスバー62の少なくとも一方と対向するように配置してもよい。
【0105】
本実施形態では、三相の上下アーム回路10を構成する複数の上アームモジュール30Hが、Z方向に直交するX方向に並んで配置されている。同様に、下アームモジュール30Lが、X方向に並んで配置されている。これにより、積層体45において、半導体モジュール30を2段配置とし、熱交換部41を3段配置とすることができる。よって、積層体45のZ方向の体格を小型化することができる。また、すべての相において、PN電流ループの縮小と電源バスバー長の短縮により、インダクタンスを低減することができる。さらには、対向配置によってインダクタンスをさらに低減することができる。つまり、体格の小型化とインダクタンスの低減を両立することができる。
【0106】
上アームモジュール30Hおよび下アームモジュール30Lは、コレクタ端子35Cとエミッタ端子35Eの並びが互いに同じとなるように配置されてもよい。本実施形態では、上アームモジュール30Hに対して半導体素子32の表裏面が反転するように下アームモジュール30Lを配置している。これにより、コレクタ端子35Cとエミッタ端子35Eの並びが互いに逆になっており、上アームモジュール30Hのエミッタ端子35Eと下アームモジュール30Lのコレクタ端子35Cとを出力バスバー62にて接続しやすい。つまり、バスバー60の配策を簡素化することができる。
【0107】
主端子35の突出部分の形状は特に限定されない。たとえば、突出部分の全体がY方向に延びる形状としてもよい。本実施形態では、複数の主端子35の突出部分が、屈曲部351をそれぞれ有している。そして、屈曲部よりも突出先端側の部分である先端部353の板面が、対応するバスバー60の板面と対向している。このように、屈曲部351を有ることで、接合対象のバスバー60までの距離を短くし、インダクタンスをより低減することができる。また、溶接などの接続処理を行いやすい。特に本実施形態では、各主端子35の突出部分において、根元部352の長さL1が、先端部353の長さL2よりも短い。つまり、インダクタンスをより効果的に低減することができる。
【0108】
負極バスバー61Nの延設部67は、基部66に連続的に連なってもよい。本実施形態では、延設部67を基部66とは別に設け、接合により一体化している。これによれば、図12および図13に示したように、延設部67を接合する前に、下層である正極バスバー61Pおよび出力バスバー62を対応する主端子35に接合することができる。つまり、バスバー60と対応する主端子35との接合が容易となる。
【0109】
延設部67は、主端子35、負極バスバー61Nの延設部64、および出力バスバー62それぞれの一部を一体的に覆うように、Y方向の平面視においてたとえば略矩形状をなしてもよい。図17は、主回路の電流経路を示している。図17は、図11に対応している。図17では、一例としてU相の電流経路を示している。電流経路のうち、実線矢印は負極バスバー61Nの延設部67における経路を示し、破線矢印は正極バスバー61Pの延設部64から下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N)までの経路を示している。
【0110】
図11図13図17などに示すように、本実施形態の負極バスバー61Nの延設部67は、スリット671と、並走部672と、対向部673と、接続部674を有している。このようにスリット671を設けることで、負極バスバー61N(延設部67)における電流経路を制限している。具体的には、スリット671に沿って電流が流れる。このため、図17に示すように、電流経路における並走距離を長くすることができる。これにより、磁束打消しの効果を高め、インダクタンスをさらに低減することができる。また、スリット671が隣接するため、エミッタ端子35E(N)に接合すべく接続部674を延設部67の他の部分に対して曲げやすい。つまり、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35Eと延設部67との接合が容易となる。
【0111】
<変形例>
積層方向であるZ方向において、コンデンサモジュール50側に上アームモジュール30Hを配置する例を示したが、これに限定されない。コンデンサモジュール50側に下アームモジュール30Lを配置してもよい。この場合、上アームモジュール30Hが第1半導体モジュールに相当し、上アームモジュール30Hよりもコンデンサモジュール50に近い下アームモジュール30Lが第2半導体モジュールに相当する。また、正極バスバー61Pが第1電源バスバーに相当し、負極バスバー61Nが第2電源バスバーに相当する。
【0112】
正極バスバー61Pを第1電源バスバーとする場合、正極バスバー61Pの延設部が、主端子35の突出部分、負極バスバー61Nの延設部分の少なくとも一部、および出力バスバー62の延設部分の少なくとも一部を覆う配置としてもよい。正極バスバー61Pの延設部を、基部に対して別に設けてもよい。正極バスバー61Pの延設部に、スリットなどを設けて並走距離を長くしてもよい。
【0113】
上アームモジュール30Hおよび下アームモジュール30Lのそれぞれを複数備える例を示したが、これに限定されない。たとえば三相分の半導体素子32を一体的に封止するように封止体31を共通化することで、三相分の上アーム10Hをひとつの上アームモジュール30Hにより提供してもよい。同様に、三相分の下アーム10Lをひとつの下アームモジュール30Lにより提供してもよい。
【0114】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ひとつの半導体素子32がひとつのアーム10H、10Lを構成していた。これに代えて、複数の半導体素子32が互いに並列接続されてひとつのアーム10H、10Lを構成してもよい。
【0115】
図18は、本実施形態に係る電力変換装置4の回路構成を示す図である。図19は、半導体モジュール30を示す斜視図である。図19は、図6に対応しており、一例として上アームモジュール30Hを示している。
【0116】
図18に示すように、本実施形態の電力変換装置4において、インバータ6を構成する上下アーム回路10の各アーム10H、10Lは、2つのIGBT12が並列接続されて構成されている。並列接続された2つのIGBT12は、ハイレベル、ローレベルが同じタイミングで切り替わるゲート駆動信号によって制御される。FWD13は、IGBT12のそれぞれに逆並列に接続されている。
【0117】
図19に示すように、半導体モジュール30は、2つの半導体素子32を備えている。各半導体素子32には、先行実施形態同様、RC-IGBTが形成されている。2つの半導体素子32は、X方向に並んで配置されている。2つの半導体素子32のコレクタ電極32Cは、表面金属体332(配線部334)を介して、共通のコレクタ端子35Cに電気的に接続されている。2つの半導体素子32のエミッタ電極32Eは、表面金属体342(配線部344)を介して、共通のエミッタ端子35Eに電気的に接続されている。
【0118】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4は、半導体モジュール30が複数の半導体素子32を備える点を除けば、先行実施形態に示した電力変換装置4の構成と同様である。3段配置の熱交換部と2段配置の半導体モジュール30により積層体45が構成されている。上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lとは、Z方向に並んで配置されている。本実施形態の電力変換装置4には、先行実施形態およびその変形例に示した構成をいずれも適用できる。よって、本実施形態の電力変換装置4は、先行実施形態の電力変換装置4と同等の効果を奏することができる。
【0119】
<変形例>
ひとつのアーム10H、10Lを構成するスイッチング素子の数は2つに限定されない。3つ以上でもよい。半導体モジュール30が備える半導体素子32の数も2つに限定されない。3つ以上でもよい。
【0120】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。第2実施形態では、ひとつのアーム10H、10Lの並列回路を、ひとつの半導体モジュール30により提供した。これに代えて、複数の半導体モジュール30により並列回路を提供してもよい。
【0121】
図20は、本実施形態に係る電力変換装置4において、積層体45とバスバー60の配置を示している。図20は、図11に対応している。図21は負極バスバー61Nの延設部67を配置する前の状態を示し、図22は延設部67を配置した状態を示している。図21図22は、図12図13に対応している。図21および図22では、便宜上、正極バスバー61Pの延設部65および負極バスバー61Nの延設部68を省略している。
【0122】
本実施形態において、各半導体モジュール30は、第1実施形態(図6および図7参照)と同様の構成を有している。つまり、ひとつの半導体モジュール30が、ひとつの半導体素子32を備えている。図示を省略するが、上下アーム回路10の各アーム10H、10Lは、3つのIGBT12が並列接続されて構成されている。
【0123】
図20図22に示すように、積層体45は、6段配置の半導体モジュール30と、7段配置の熱交換部41を備えている。Z方向においてコンデンサモジュール50に近い側の3つの半導体モジュール30が上アームモジュール30Hであり、遠い側の3つの半導体モジュール30が下アームモジュール30Lである。上アームモジュール30Hは、各段においてU相、V相、W相の順にX方向に並んでいる。正極バスバー61Pの延設部64は、Z方向に延びて、対応する相の3つのコレクタ端子35C(P)に電気的に接続されている。
【0124】
下アームモジュール30Lも、各段においてU相、V相、W相の順にX方向に並んでいる。出力バスバー62は、Z方向に延びて対応する相の主端子35、具体的には上アームモジュール30Hのエミッタ端子35E(O)および下アームモジュール30Lのコレクタ端子35C(O)に電気的に接続されている。
【0125】
負極バスバー61Nの延設部67は、先行実施形態同様、スリット671、並走部672、対向部673、および接続部674を有している。スリット671は、各相において上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lの間に設けられている。スリット671は、コレクタ端子35C(P)とエミッタ端子35E(N)の間に設けられている。並走部672は、出力バスバー62と板面同士が対向するように、Z方向の平面視において出力バスバー62における主端子35の接続部分と重なるように設けられている。対向部673は、並走部672からX方向に延び、正極バスバー61Pの延設部64と重なるように設けられている。接続部674は、並走部672からX方向に延び、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N)に電気的に接続されている。
【0126】
このように、本実施形態では、バスバー61P、62によって同一相の3つの上アームモジュール30Hが並列接続されている。バスバー61N、62によって同一相の3つの下アームモジュール30Lが並列接続されている。
【0127】
図21および図22に示すように、本実施形態の延設部67も、基部66とは別に設けられている。バスバー60の接続(接合)においては、まず図21に示すように、Z方向において下層側のバスバー60を対応する主端子35に接続する。具体的には、正極バスバー61Pの延設部64を上アームモジュール30Hのコレクタ端子35C(P)に接続し、出力バスバー62を上アームモジュール30Hのエミッタ端子35E(O)と下アームモジュール30Lのコレクタ端子35C(O)とに接続する。
【0128】
次いで、図22に示すように、Z方向において上層側のバスバー60を対応する主端子35に接続する。具体的には、負極バスバー61Nの延設部67を基部66に接続するとともに、下アームモジュール30Lのエミッタ端子35E(N)に接続する。これにより、負極バスバー61Nと正極バスバー61Pとの並走構造、および、負極バスバー61Nと出力バスバー62との並走構造を実現することができる。
【0129】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4は、複数の半導体モジュール30がバスバー60により並列接続される点を除けば、第1実施形態に示した電力変換装置4の構成と同様である。たとえば本実施形態においても、複数の半導体モジュール30を上アームモジュール30Hと下アームモジュール30Lとに分け、上アームモジュール30Hと下アームモジュール30LとをZ方向に並ぶ配置としている。これにより、PN電流ループを小さくすることができる。また、コンデンサモジュール50を積層体45に対してZ方向に配置している。そして、電源バスバー61を、多段に配置された熱交換部41の少なくともひとつを跨ぐようにZ方向に延設している。これにより、電源バスバー61の長さを短くすることができる。よって、インダクタンスを低減することができる。
【0130】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態およびその変形例のいずれの構成とも組み合わせが可能である。
【0131】
<変形例>
ひとつのアーム10H、10Lを構成するスイッチング素子の数は3つに限定されない。2つでもよいし、4つ以上でもよい。半導体モジュール30の数は3つに限定されない。2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0132】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0133】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0134】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0135】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0136】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。
【0137】
電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下アーム回路(10)の上アーム(10H)を構成する上アームモジュール(30H)と、前記上下アーム回路の下アーム(10L)を構成し、前記上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュール(30L)と、を含む複数の半導体モジュール(30)と、
前記積層方向において前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、複数の前記半導体モジュールとともに積層体(45)をなす複数の熱交換部(41)を有する冷却器(40)と、
前記積層方向において前記積層体の一端側に配置されたコンデンサ(50)と、
前記コンデンサと前記半導体モジュールとを電気的に接続し、前記熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように前記積層方向に延びた電源バスバー(61)を含む複数のバスバー(60)と、を備え、
前記電源バスバーは、前記コンデンサの正極と前記上アームモジュールとを電気的に接続する正極バスバー(61P)と、前記コンデンサの負極と前記下アームモジュールとを電気的に接続する負極バスバー(61N)と、を含み、
複数の前記バスバーは、前記上アームモジュールと前記下アームモジュールとを電気的に接続し、前記積層方向において前記コンデンサから遠ざかる側に延びる出力バスバー(62)を含み、
前記冷却器は、前記熱交換部のそれぞれに連結され、前記熱交換部に冷媒を導入する導入用パイプ(42)と、前記熱交換部のそれぞれに連結され、前記熱交換部を流れた冷媒を排出する排出用パイプ(43)と、を有し、
前記積層方向に直交する一方向において、複数の前記熱交換部の一端側に前記導入用パイプが連結され、複数の前記熱交換部の他端側に前記排出用パイプが連結されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記導入用パイプおよび前記排出用パイプは、前記冷却器から前記積層方向であって前記コンデンサに対して遠ざかる方向に延びている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
直流電源に接続するための電源コネクタ(80)を備え、
前記電源コネクタは、前記積層方向において前記積層体との間に前記コンデンサが位置するように配置されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
外部機器に接続され、複数の前記半導体モジュールを駆動するための信号が入力される信号コネクタ(71)を備え、
前記信号コネクタは、前記一方向において前記積層体と並んでいる、請求項1に記載の電力変換装置
【請求項5】
前記積層体、前記コンデンサ、および前記バスバーを収容するケース(20)を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記コンデンサは、複数のコンデンサ素子(52)を有している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記出力バスバーに対して設けられた電流センサ(81)を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記半導体モジュールを駆動するための回路が構成され、前記ケースに収容された回路基板(70)を備え、
一面が開口する前記ケースの底壁(21)との間に前記積層体および前記コンデンサが位置するように、前記回路基板は前記ケースの開口側に配置されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記半導体モジュールは、RC-IGBTが形成された半導体素子(32)を有している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記半導体モジュールは、MOSFETが形成された半導体素子(32)を有している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記出力バスバーは、一面が開口する前記ケースの前記開口から外部に突出している、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記コンデンサとの間に前記積層体を押圧状態で保持する加圧プレート(461)を有する加圧部材(46)を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
ここに開示された電力変換装置は、
上下アーム回路の上アームを構成する上アームモジュールと、上下アーム回路の下アームを構成し、上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュールと、を含む複数の半導体モジュールと、
積層方向において上アームモジュールおよび下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、複数の半導体モジュールとともに積層体をなす複数の熱交換部を有する冷却器と、
積層方向において積層体の一端側に配置されたコンデンサと、
コンデンサと半導体モジュールとを電気的に接続し、熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように積層方向に延びた電源バスバーを含む複数のバスバーと、を備え、
電源バスバーは、コンデンサの正極と上アームモジュールとを電気的に接続する正極バスバーと、コンデンサの負極と下アームモジュールとを電気的に接続する負極バスバーと、を含み、
複数のバスバーは、上アームモジュールと下アームモジュールとを電気的に接続し、積層方向においてコンデンサから遠ざかる側に延びる出力バスバーを含み、
冷却器は、熱交換部のそれぞれに連結され、熱交換部に冷媒を導入する導入用パイプ(42)と、熱交換部のそれぞれに連結され、熱交換部を流れた冷媒を排出する排出用パイプ(43)と、を有し、
積層方向に直交する一方向において、複数の熱交換部の一端側に導入用パイプが連結され、複数の熱交換部の他端側に排出用パイプが連結されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
ここまで説明した実施形態及び変形例から把握される技術的思想を、付記として以下に記載する。
<付記1>
上下アーム回路(10)の上アーム(10H)を構成する上アームモジュール(30H)と、前記上下アーム回路の下アーム(10L)を構成し、前記上アームモジュールと積層方向に並んで配置された下アームモジュール(30L)と、を含む複数の半導体モジュール(30)と、
前記積層方向において前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールのそれぞれを両面側から冷却するように多段に配置され、複数の前記半導体モジュールとともに積層体(45)をなす複数の熱交換部(41)を有する冷却器(40)と、
前記積層方向において前記積層体の一端側に配置されたコンデンサ(50)と、
前記コンデンサと前記半導体モジュールとを電気的に接続し、前記熱交換部の少なくともひとつを跨ぐように前記積層方向に延びた電源バスバー(61)を含む複数のバスバー(60)と、を備え、
前記電源バスバーは、前記コンデンサの正極と前記上アームモジュールとを電気的に接続する正極バスバー(61P)と、前記コンデンサの負極と前記下アームモジュールとを電気的に接続する負極バスバー(61N)と、を含み、
複数の前記バスバーは、前記上アームモジュールと前記下アームモジュールとを電気的に接続し、前記積層方向において前記コンデンサから遠ざかる側に延びる出力バスバー(62)を含む、電力変換装置。
<付記2>
前記上アームモジュールおよび前記下アームモジュールの一方である第1半導体モジュールは、他方である第2半導体モジュールよりも、前記積層方向において前記コンデンサから離れており、
前記第1半導体モジュールに接続された前記電源バスバーである第1電源バスバーと、前記第2半導体モジュールに接続された前記電源バスバーである第2電源バスバーおよび前記出力バスバーの少なくとも一方とは、互いに板面が対向して前記積層方向に延びている、付記1に記載の電力変換装置。
<付記3>
複数の前記半導体モジュールは、半導体素子(32)と、前記半導体素子を封止する封止体(31)と、前記半導体素子に電気的に接続され、前記封止体から外部に突出して対応する前記バスバーに接続された複数の主端子(35)と、をそれぞれ有し、
複数の前記主端子は、前記積層方向において前記半導体素子の表面に接続された第1主端子(35E)と、前記半導体素子の裏面に接続された第2主端子(35C)と、を含み、
共通の前記半導体モジュールにおいて、前記第1主端子の突出部分と前記第2主端子の突出部分とは、前記積層方向に直交する一方向に並んでいる、付記2に記載の電力変換装置。
<付記4>
複数の前記半導体モジュールは、多相の前記上下アーム回路を構成する複数の前記上アームモジュールおよび複数の前記下アームモジュールを含み、
複数の前記上アームモジュールおよび複数の前記下アームモジュールのそれぞれは、前記一方向に並んで配置されている、付記3に記載の電力変換装置。
<付記5>
前記下アームモジュールは、前記上アームモジュールに対して前記半導体素子の表裏面が反転するように配置され、前記第1主端子と前記第2主端子との並びが前記上アームモジュールとは逆である、付記3または付記4に記載の電力変換装置。
<付記6>
複数の前記主端子の突出部分は、屈曲部(351)をそれぞれ有し、
前記屈曲部よりも突出先端側の部分の板面が、対応する前記バスバーの板面と対向している、付記3または付記4に記載の電力変換装置。
<付記7>
各主端子の突出部分において、前記封止体側の端部から前記屈曲部までの長さが、前記屈曲部から突出先端までの長さよりも短い、付記6に記載の電力変換装置。
<付記8>
前記第1電源バスバーは、前記コンデンサに接続された基部(66)と、前記基部に接続され、前記積層方向に延びる部分を含む延設部(67)と、を有し、
前記第1電源バスバーの延設部は、前記主端子の突出部分、前記第2電源バスバーにおける前記積層方向の延設部分の少なくとも一部、および前記出力バスバーにおける前記積層方向の延設部分の少なくとも一部を覆うように配置されている、付記3または付記4に記載の電力変換装置。
<付記9>
前記第1電源バスバーの延設部は、前記積層方向において前記上アームモジュールと前記下アームモジュールとの間に設けられたスリット(671)と、前記一方向において前記スリットに隣接し、前記出力バスバーにおける前記積層方向の延設部分と並走する並走部(672)と、前記積層方向において前記コンデンサ側で前記スリットに隣接し、前記並走部から前記一方向に延びて前記第2電源バスバーと対向する対向部(673)と、前記積層方向において前記対向部とは反対側で前記スリットに隣接し、前記並走部から前記一方向に延びて対応する前記主端子に接続された接続部(674)と、を有する、付記8に記載の電力変換装置。