IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-香味吸引器 図1A
  • 特開-香味吸引器 図1B
  • 特開-香味吸引器 図1C
  • 特開-香味吸引器 図2
  • 特開-香味吸引器 図3
  • 特開-香味吸引器 図4A
  • 特開-香味吸引器 図4B
  • 特開-香味吸引器 図5A
  • 特開-香味吸引器 図5B
  • 特開-香味吸引器 図6
  • 特開-香味吸引器 図7
  • 特開-香味吸引器 図8
  • 特開-香味吸引器 図9
  • 特開-香味吸引器 図10
  • 特開-香味吸引器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161589
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】香味吸引器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/40 20200101AFI20241112BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20241112BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20241112BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
A24F40/465
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144314
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2022568001の分割
【原出願日】2020-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】森田 啓介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工性の高い収容部を備えた香味吸引器を提供する。
【解決手段】香味吸引器は、香味発生物品の少なくとも一部を収容する収容部を備え、収容部は、香味発生物品の周囲を取り囲む筒状部と、筒状部とは異なる部材で形成され、収容部に収容された香味発生物品と当接する当接部と、を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する収容部を備え、
前記収容部は、
前記香味発生物品の周囲を取り囲む筒状部と、
前記筒状部内で前記収容部の他端に配置され、前記筒状部とは異なる部材で形成されて、前記収容部に収容された前記香味発生物品と当接する当接部と、を有する、
香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、樹脂で構成されている、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記当接部には、前記収容部に収容された前記香味発生物品に連通する第1空気流路が形成される、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部は、前記香味発生物品が前記収容部に収容されたときに前記香味発生物品と接触する接触部と、前記接触部と周方向において隣接し、前記香味発生物品から離間する離間部と、を有し、
前記香味発生物品が前記収容部に収容されたとき、前記離間部と前記香味発生物品との間に、前記第1空気流路と連通する第2空気流路が形成される、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部は、金属で構成されている、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部は、非円筒形状を有する、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部と前記当接部との間を封止する封止部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部の外周に配置され、前記収容部に収容された前記香味発生物品を加熱するように構成される加熱部をさらに備え、
前記当接部と前記加熱部とは、前記収容部の軸方向において重なり合わない、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、前記筒状部において前記収容部の他端側に形成される底部と係合する、
香味吸引器。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部を介して前記当接部と係合する支持部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項11】
請求項10に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部に対する前記支持部の、前記収容部の軸方向を回転軸とする相対回転を防止する回転防止機構をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、前記支持部と係合した状態で、前記収容部に収容された前記香味発生物品と当接する当接面の反対側に空気層を形成する、
香味吸引器。
【請求項13】
請求項10から請求項12までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部において前記収容部の他端側に形成される底部が、前記当接部と前記支持部とで挟み込まれて支持される、
香味吸引器。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部の開口と当接し、前記筒状部への前記香味発生物品の挿入を案内するガイド部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項15】
請求項14に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部と前記ガイド部との当接箇所の周囲を覆うように配置されたカバー部をさらに備えた、
香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味等を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器として、例えば、香味発生物品を収容する収容部を備え、収容部が香味発生物品の周囲を取り囲む筒状部と、収容部の底部から突出し、香味発生物品の端部と当接する土台部とを有し、筒状部と土台部とが同一の部材で一体成形されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/074612号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された香味吸引器では、筒状部と土台部とが同一の部材で一体成形されて収容部が形成されている。そのため、土台部の微細な加工が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、加工性が高く、安価で望まれる微細な形状を有する収容部を備えた香味吸引器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態によれば、香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、一端に開口が形成され、開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する収容部を備え、収容部は、香味発生物品の周囲を取り囲む筒状部と、筒状部内で収容部の他端に配置され、筒状部とは異なる部材で形成されて、収容部に収容された香味発生物品と当接する当接部と、を有する。
【0007】
本発明の第1形態によれば、収容部が、筒状部と、筒状部とは異なる部材で形成された当接部とから構成されているので、あらかじめ微細な加工が施された当接部を筒状部と組み合わせて、収容部を形成することができる。そのため、加工性が高く、安価で望まれる微細な形状を有する収容部を備えた香味吸引器を得ることができる。
【0008】
本発明の第2形態では、第1形態において、当接部は、樹脂で構成されている。
【0009】
本発明の第2形態によれば、当接部が樹脂で構成されているので、高い加工性を実現することができる。
【0010】
本発明の第3形態では、第2形態において、当接部には、収容部に収容された香味発生物品に連通する第1空気流路が形成される。
【0011】
本発明の第3形態によれば、当接部が樹脂で構成されているので、空気流路を精密に設計することができる。
【0012】
本発明の第4形態では、第3形態において、筒状部は、香味発生物品が収容部に収容されたときに香味発生物品と接触する接触部と、接触部と周方向において隣接し、香味発生物品から離間する離間部と、を有し、香味発生物品が収容部に収容されたとき、離間部と香味発生物品との間に、第1空気流路と連通する第2空気流路が形成される。
【0013】
本発明の第4形態によれば、収容部に導入された空気が、第2空気流路および第1空気流路を通って香味発生物品に供給され、ユーザの口内に到達することができるので、香味発生物品に供給される空気を導入するための流路を香味吸引器に別途設ける必要がない。そのため、香味吸引器の構造を簡素化するとともに、香味吸引器を小型化することができる。
【0014】
本発明の第5形態では、第1形態から第4形態までのいずれかにおいて、筒状部は、金属で構成されている。
【0015】
本発明の第5形態によれば、筒状部が金属で構成されているので、筒状部から香味発生物品へ効果的に熱を伝えることができる。
【0016】
本発明の第6形態では、第1形態から第5形態までのいずれかにおいて、筒状部は、非円筒形状を有する。
【0017】
本発明の第6形態によれば、収容部が、筒状部と、筒状部とは異なる部材で形成された当接部とから構成されているので、筒状部が例えば楕円形状や角筒形状といった異形である場合でも、筒状部の形状によらず当接部に微細な加工を施すことができ、収容部の加工性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第7形態では、第1形態から第6形態のいずれかにおいて、筒状部と当接部との間を封止する封止部をさらに備えている。
【0019】
本発明の第7形態によれば、筒状部と当接部との間が封止部により封止されているので、筒状部と当接部とが互いに強固に固定され、堅牢性を高めることができる。
【0020】
本発明の第8形態では、第1形態から第7形態のいずれかにおいて、筒状部の外周に配置され、収容部に収容された香味発生物品を加熱するように構成される加熱部をさらに備え、当接部と加熱部とは、収容部の軸方向において重なり合わない。
【0021】
本発明の第8形態によれば、当接部と加熱部とが収容部の軸方向において重なり合わないので、加熱部からの熱が当接部に伝わりにくくなり、熱による当接部の劣化を抑制することができる。
【0022】
本発明の第9形態では、第1形態から第8形態のいずれかにおいて、当接部は、筒状部において収容部の他端側に形成される底部と係合する。
【0023】
本発明の第9形態によれば、当接部が筒状部の底部と係合されるので、筒状部内に当接部を位置決めし、支持することができる。
【0024】
本発明の第10形態では、第1形態から第9形態のいずれかにおいて、筒状部を介して当接部と係合する支持部をさらに備える。
【0025】
本発明の第10形態によれば、支持部が当接部と係合するので、当接部と支持部とで筒状部を支持することができる。
【0026】
本発明の第11形態では、第10形態において、筒状部に対する支持部の、収容部の軸方向を回転軸とする相対回転を防止する回転防止機構をさらに備える。
【0027】
本発明の第11形態によれば、回転防止機構を設けたので、筒状部に対する支持部の相対回転を防止することができる。
【0028】
本発明の第12形態では、第10形態または第11形態において、当接部は、支持部と係合した状態で、収容部に収容された香味発生物品と当接する当接面の反対側に空気層を形成する。
【0029】
本発明の第12形態によれば、当接部における、香味発生物品と当接する当接面の反対側に空気層が形成されるので、当接部からの伝熱による熱損失を抑制することができる。
【0030】
本発明の第13形態では、第10形態から第12形態のいずれかにおいて、筒状部において収容部の他端側に形成される底部が、当接部と支持部とで挟み込まれて支持される。
【0031】
本発明の第13形態によれば、当接部と支持部とで筒状部の底部を挟み込んで支持するので、筒状部が強固に固定され、堅牢性を高めることができる。
【0032】
本発明の第14形態では、第1形態から第13形態のいずれかにおいて、筒状部の開口と当接し、筒状部への香味発生物品の挿入を案内するガイド部をさらに備える。
【0033】
本発明の第14形態によれば、筒状部の開口にガイド部を設けたので、香味発生物品を筒状部に容易に挿入することができる。
【0034】
本発明の第15形態では、第14形態において、筒状部とガイド部との当接箇所の周囲を覆うように配置されたカバー部をさらに備える。
【0035】
本発明の第15形態によれば、筒状部とガイド部との当接箇所にカバー部を設けたので、収容部で発生したエアロゾルが筒状部とガイド部との当接箇所から香味吸引器の筐体内部に漏出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】本実施形態に係る香味吸引器の概略正面図である。
図1B】本実施形態に係る香味吸引器の概略上面図である。
図1C】本実施形態に係る香味吸引器の概略底面図である。
図2】香味発生物品の概略側断面図である。
図3図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器の断面図である。
図4A】チャンバの斜視図である。
図4B図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバの断面図である。
図5A図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバの断面図である。
図5B図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバの断面図である。
図6】チャンバおよび加熱部の斜視図である。
図7】チャンバ内の所望の位置に香味発生物品が配置された状態の図5Bに示す断面図である。
図8】本実施形態に係る香味吸引器の空気流路を示す斜視図である。
図9】第1保持部の拡大断面図である。
図10】第2保持部の拡大断面図である。
図11】第1保持部の別の形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一のまたは相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0038】
図1Aは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略正面図である。図1Bは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略上面図である。図1Cは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略底面図である。本明細書で説明する図面においては、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は香味吸引器100を水平方向に切断するように配置されており、Y軸は香味吸引器100の正面から裏面へ延出するように配置されている。Z軸は、後述する霧化部30のチャンバ50に収容される香味発生物品の挿入方向、またはチャンバ50の軸方向ということもできる。また、X軸は、Y軸およびZ軸に直交する方向であり、X軸およびY軸は、軸方向に直交する半径方向、またはチャンバ50の半径方向ということもできる。
【0039】
本実施形態に係る香味吸引器100は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有するスティック型の香味発生物品を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0040】
図1Aから図1Cに示されるように、香味吸引器100は、アウタハウジング101(筐体の一例に相当する)と、スライドカバー102と、スイッチ部103と、を有する。アウタハウジング101は、香味吸引器100の最外のハウジングを構成し、ユーザの手に収まるようなサイズを有する。ユーザが香味吸引器100を使用する際は、香味吸引器100を手で保持して、エアロゾルを吸引することができる。アウタハウジング101は、複数の部材を組み立てることによって構成されてもよい。アウタハウジング101は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。
【0041】
アウタハウジング101は、香味発生物品を受け入れるための図示しない開口を有し、スライドカバー102は、この開口を閉じるようにアウタハウジング101にスライド可能に取り付けられる。具体的には、スライドカバー102は、アウタハウジング101の上記開口を閉鎖する閉位置(図1Aおよび図1Bに示す位置)と、上記開口を開放する開位置との間を、アウタハウジング101の外表面に沿って移動可能に構成される。例えば、ユーザがスライドカバー102を手動で操作することにより、スライドカバー102を閉位置と開位置とに移動させることができる。これにより、スライドカバー102、香味吸引器100の内部への香味発生物品のアクセスを許可または制限することができる。
【0042】
スイッチ部103は、香味吸引器100の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、ユーザは、香味発生物品を香味吸引器100に挿入した状態でスイッチ部103を操作することで、図示しないヒータに図示しない電源から電力が供給され、香味発生物品を燃焼させずに加熱することができる。なお、スイッチ部103は、アウタハウジング101の外部に設けられるスイッチであってもよいし、アウタハウジング101の内部に位置するスイッチであってもよい。スイッチがアウタハウジング101の内部に位置する場合、アウタハウジング101の表面のスイッチ部103を押下することで、間接的にスイッチが押下される。本実施形態では、スイッチ部103のスイッチがアウタハウジング101の内部に位置する例を説明する。
【0043】
香味吸引器100はさらに、図示しない端子を有してもよい。端子は、香味吸引器100を例えば外部電源と接続するインターフェースであり得る。香味吸引器100が備える電源が充電式バッテリである場合は、端子に外部電源を接続することで、外部電源が電源に電流を流し、電源を充電することができる。また、端子にデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器100の作動に関連するデータを外部装置に送信できるようにしてもよい。
【0044】
次に、本実施形態に係る香味吸引器100で使用される香味発生物品について説明する。図2は、香味発生物品110の概略側断面図である。本実施形態において、香味吸引器100と香味発生物品110とにより喫煙システムが構成され得る。図2に示す例においては、香味発生物品110は、喫煙可能物111と、筒状部材114と、中空フィルタ部116と、フィルタ部115と、を有する。
【0045】
喫煙可能物111は、第1の巻紙112によって巻装される。筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115は、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって巻装される。第2の巻紙113は、喫煙可能物111を巻装する第1の巻紙112の一部も巻装する。これにより、筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結される。ただし、第2の巻紙113が省略され、第1の巻紙112を用いて筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結されてもよい。第2の巻紙113のフィルタ部115側の端部近傍の外面には、ユーザの唇を第2の巻紙113から離しやすくするためのリップリリース剤117が塗布される。香味発生物品110のリップリリース剤117が塗布される部分は、香味発生物品110の吸口として機能する。
【0046】
喫煙可能物111は、例えばたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物111を巻く第1の巻紙112は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材114は、紙管または中空フィルタであり得る。図示の例では、香味発生物品110は、喫煙可能物111、筒状部材114、中空フィルタ部116、およびフィルタ部115を備えているが、香味発生物品110の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部116が省略され、筒状部材114とフィルタ部115とが互いに隣接配置されてもよい。
【0047】
次に、香味吸引器100の内部構造について説明する。図3は、図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器100の断面図である。図3に示すように、香味吸引器100のアウタハウジング101の内側には、インナハウジング10(筐体の一例に相当する)が設けられる。インナハウジング10は、例えば、樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。なお、耐熱性や強度の観点から、インナハウジング10は、PEEKであることが好ましい。インナハウジング10の内部空間には、電源部20と、霧化部30と、が設けられる。
【0048】
電源部20は、電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリまたは非充電式のバッテリであり得る。電源21は、霧化部30と電気的に接続される。これにより、電源21は、香味発生物品110を適切に加熱するように、霧化部30に電力を供給することができる。
【0049】
霧化部30は、図示のように、香味発生物品110の挿入方向(Z軸方向)に延びる金属製のチャンバ50(筒状部の一例に相当する)と、チャンバ50の一部を覆うヒータ40と、断熱部32と、チャンバ50の開口52(図4A参照)と当接する略筒状の挿入ガイド部材34(ガイド部の一例に相当する)と、を有する。チャンバ50は、香味発生物品110の周囲を取り囲むように構成される。ヒータ40は、チャンバ50の外周面に接触し、チャンバ50に挿入された香味発生物品110を加熱する加熱部42(図6参照)を含むように構成される。
【0050】
また、図示のように、チャンバ50の底部には、底部材36(当接部の一例に相当する)が設けられる。底部材36は、チャンバ50に挿入された香味発生物品110と、香味発生物品110の挿入方向において当接し、香味発生物品110を位置決めするストッパとして機能し得る。ここで、チャンバ50と底部材36とにより、香味発生物品110の少なくとも一部を収容する収容部が構成される。底部材36は、例えば、樹脂材料により形成され得る。底部材36は、香味発生物品110が当接する面に凹凸を有し、香味発生物品110が当接する、香味発生物品110の空気取り込み口に空気を供給可能な、すなわち収容部に収容された香味発生物品110に連通する第1空気流路を画定し得る。底部材36は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属でから形成され得る。なお、底部材36は、断熱部32等に熱が伝わることを抑制するために、熱伝導率の小さい素材で形成されることが好ましい。
【0051】
収容部を、チャンバ50と、チャンバ50とは異なる部材で形成された底部材36とで構成することにより、あらかじめ微細な加工が施された底部材36をチャンバ50と組み合わせて、収容部を形成することができる。そのため、加工性が高く、安価で望まれる微細な形状を有する収容部を備えた香味吸引器100を得ることができる。また、底部材36を樹脂で構成することにより、高い加工性を実現することができるので、第1空気流路を精密に設計することができる。
【0052】
断熱部32は、全体として略筒状であり、チャンバ50を覆うように配置される。断熱部32は、例えばエアロゲルシートを含み得る。挿入ガイド部材34は、閉位置にあるスライドカバー102とチャンバ50との間に設けられる。挿入ガイド部材34は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、挿入ガイド部材34は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、挿入ガイド部材34は、PEEKであることが好ましい。挿入ガイド部材34は、スライドカバー102が開位置にあるときに、香味吸引器100の外部と連通し、香味発生物品110を挿入ガイド部材34に挿入することで、チャンバ50への香味発生物品110の挿入を案内する。挿入ガイド部材34を設けることで、チャンバ50に香味発生物品110を容易に挿入することができる。
【0053】
香味吸引器100は、さらに、チャンバ50および断熱部32の両端を保持する、第1保持部37と、第2保持部38とを有する。第1保持部37は、チャンバ50および断熱部32のZ軸負方向側の端部を保持するように配置される。第2保持部38は、チャンバ50および断熱部32のスライドカバー102側(Z軸正方向側)の端部を保持するように配置される。第1保持部37および第2保持部38についての詳細は後述する。
【0054】
次に、チャンバ50の構造について説明する。図4Aは、チャンバ50の斜視図である。図4Bは、図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバ50の断面図である。図5Aは、図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバ50の断面図である。図5Bは、図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバ50の断面図である。図6は、チャンバ50およびヒータ40の斜視図である。
【0055】
図4Aおよび図4Bに示すように、チャンバ50は、香味発生物品110が挿入される開口52と、香味発生物品110を収容する筒状の側壁部60と、を含む筒状部材であり得る。チャンバ50の開口52を画定する端部には、フランジ部52aが形成される。チャンバ50は、耐熱性を有し、熱膨張率の小さい素材で形成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等で形成され得る。なお、チャンバ50は、金属の他、PEEK等の樹脂や、ガラス、セラミック等で形成されてもよい。これにより、チャンバ50から香味発生物品110へ効果的な加熱が可能になる。
【0056】
図4Bおよび図5Bに示すように、側壁部60は、接触部62と、離間部66と、を含む。香味発生物品110がチャンバ50内の所望の位置に配置されたとき、接触部62は、香味発生物品110の挿入方向に交差する面において、香味発生物品110の一部と接触または押圧し、離間部66は、香味発生物品110から離間する。なお、本明細書において、「チャンバ50内の所望の位置」とは、香味発生物品110が適切に加熱される位置、またはユーザが喫煙するときの香味発生物品110の位置をいう。
【0057】
側壁部60が接触部62と離間部66とを含むことから、側壁部60におけるチャンバ50の軸方向に直交する断面形状は、楕円形状、すなわち非円筒形状を有している。このとき、収容部が、チャンバ50と、チャンバ50とは異なる部材で形成された底部材36とから構成されているので、チャンバ50が例えば楕円形状や角筒形状といった異形である場合でも、チャンバ50の形状によらず底部材36に微細な加工を施すことができ、収容部の加工性を向上させることができる。
【0058】
接触部62は、内面62aと、外面62bとを有する。離間部66は、内面66aと、外面66bとを有する。図6に示すように、ヒータ40は、接触部62の外面62bに配置される。これにより、ヒータ40の加熱部42で発生した熱が、接触部62に接触する香味発生物品110に伝達される。ヒータ40は、接触部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。なお、ヒータ40は接着層を含んでもよい。その場合、接着層を含むヒータ40が、接触部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
【0059】
図4Aおよび図5Bに示すように、接触部62の外面62bは平面である。接触部62の外面62bが平面であることにより、図6に示すように接触部62の外面62bに配置されるヒータ40に帯状の電極48が接続されている場合に、帯状の電極48が撓むことを抑制することができる。図4Bおよび図5Bに示すように、接触部62の内面62aは平面である。また、図4Bおよび図5Bに示すように、接触部62の厚みは均一である。
【0060】
図4A図4Bおよび図5Bに示すように、チャンバ50は、接触部62をチャンバ50の周方向に2つ有し、2つの接触部62は、互いに平行になるように対向する。2つの接触部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入される香味発生物品110の接触部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。
【0061】
図5Bに示すように、離間部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向(Z軸方向)に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。また、離間部66は、接触部62と周方向において隣接するように配置される。
【0062】
図4Bに示すように、チャンバ50は図3に示した底部材36が貫通してチャンバ50内部に配置されるように、その底部56に孔56aを有し得る。底部材36は、チャンバ50の底部56の内部に接着剤等により固定され得る。接着剤は、チャンバ50と底部材36との間を封止する封止部として機能し得る。なお、底部材36と底部56との間に介在する接着剤は、エポキシ樹脂等の樹脂材料で構成され得る。また、これに代えて、セメントや溶接等、無機の接着剤も用いられ得る。これにより、チャンバ50と底部材36とが互いに強固に固定され、堅牢性を高めることができる。
【0063】
底部56に設けられる底部材36は、香味発生物品110の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入された香味発生物品110の一部を支持する。また、底部56は、露出した香味発生物品110の端面が後述する空隙67(図7参照)と連通するように、香味発生物品110の一部を支持し得る。
【0064】
図4Aおよび図4Bに示すように、チャンバ50は、開口52と側壁部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。香味発生物品110がチャンバ50の所望の位置に位置決めされた状態において、非保持部54と香味発生物品110との間に隙間が形成され得る。また、図4Aおよび図4Bに示すように、チャンバ50は、非保持部54の内面と接触部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
【0065】
図6に示すように、ヒータ40は、加熱部42を有する。加熱部42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。加熱部42は、チャンバ50の離間部66に接触せず、接触部62を加熱するように配置されることが好ましい。言い換えれば、加熱部42は、接触部62の外面にのみ配置されることが好ましい。加熱部42は、チャンバ50の離間部66を加熱する部分と、接触部62を加熱する部分とで、加熱能力に差を有していてもよい。具体的には、加熱部42は、離間部66よりも接触部62を高い温度に加熱するように構成されていてもよい。例えば、接触部62と離間部66とにおける加熱部42のヒーティングトラックの配置密度が調整され得る。また、加熱部42は、チャンバ50の全周において略同一の加熱能力を有して、チャンバ50の外周に巻回されてもよい。
【0066】
図6に示すように、ヒータ40は、加熱部42に加えて、加熱部42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱部42の両面を覆うように配置される。ここで、底部材36は、チャンバ50の軸方向において、加熱部42と重なり合わないように配置され得る。これにより、加熱部42からの熱が底部材36に伝わりにくくなり、熱による底部材36の劣化を抑制することができる。
【0067】
図7は、チャンバ50内の所望の位置に香味発生物品110が配置された状態の図5Bに示す断面図である。図7に示すように、香味発生物品110がチャンバ50内の所望の位置に配置されると、香味発生物品110はチャンバ50の接触部62と接触して押圧され得る。他方、香味発生物品110と離間部66との間には、空隙67が形成される。空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられた香味発生物品110の端面と連通し得る。これにより、チャンバ50の開口52から流入した空気は、空隙67を通過して、香味発生物品110の内部に流入することができる。言い換えれば、香味発生物品110と離間部66との間に第2空気流路(空隙67)が形成される。
【0068】
次に、本実施形態に係る香味吸引器100の空気流路について説明する。図8は、本実施形態に係る香味吸引器の空気流路を示す斜視図である。図8では、香味発生物品110は、図示を省略している。図8に示すように、香味発生物品110と離間部66との間に形成された第2空気流路150は、底部材36に形成された第1空気流路160と連通し、第1空気流路160は、香味発生物品110の内部を通る第3空気流路170と連通する。
【0069】
このように、収容部に導入された空気が、第2空気流路150および第1空気流路160を通って香味発生物品110に供給され、ユーザの口内に到達することができるので、香味発生物品110に供給される空気を導入するための流路を香味吸引器100に別途設ける必要がない。そのため、香味吸引器100の構造を簡素化するとともに、香味吸引器100を小型化することができる。
【0070】
次に、チャンバ50および断熱部32を保持する第1保持部37および第2保持部38の構造について説明する。図9は、第1保持部37の拡大断面図である。図10は、第2保持部38の拡大断面図である。
【0071】
まず、チャンバ50を覆う断熱部32をインナハウジング10またはアウタハウジング101に対して完全に固定すると、香味吸引器100に外部からの衝撃が加えられたときに、この衝撃を緩衝することができずに断熱部32が破壊される恐れがある。また、断熱部32がチャンバ50(またはヒータ40)の熱によって膨張する場合には、固定された断熱部32が熱膨張によって座屈する恐れもある。
【0072】
そこで、本実施形態に係る第1保持部37および第2保持部38は、断熱部32を、チャンバ50の軸方向またはこの軸方向に直交するチャンバ50の半径方向(例えばX軸方向またはY軸方向)に移動可能に保持する。なお、第1保持部37および第2保持部38は、断熱部32をチャンバ50の軸方向のみに移動可能に保持してもよいし、軸方向に直交する半径方向のみに移動可能に保持してもよい。
【0073】
図9に示すように、底部材36は、チャンバ50の底部56と係合する。これにより、チャンバ50内に底部材36を位置決めし、支持することができる。また、チャンバ50の底部56の内部に設けられた底部材36は、チャンバ50の孔56aを通じてチャンバ50の外部に突出する軸部36aを有する。また、軸部36aは、端部に平坦面36b(回転防止機構の一例に相当する)を有する。第1保持部37は、支持部72と、ヒータクッション74(第1規制部、一端側規制部の一例に相当する)と、リング85(第2規制部の一例に相当する)と、を有する。
【0074】
支持部72は、底部材36の軸部36aを受けてチャンバ50を支持するように構成される。具体的には、チャンバ50の底部56が、底部材36と支持部72とによって挟み込まれて支持される。支持部72は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、支持部72は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、支持部72は、PEEKであることが好ましい。これにより、チャンバ50、具体的にはチャンバ50の底部56が、底部材36と、底部材36に係合する支持部72とによって挟み込まれて支持される。そのため、チャンバ50が強固に固定され、堅牢性を高めることができる。
【0075】
また、支持部72は、軸部36aの平坦面36bと対向するように、平坦面72a(回転防止機構の一例に相当する)を有する。軸部36aの平坦面36bと支持部72の平坦面72aとが係合することにより、チャンバ50に対する支持部72の相対回転を防止することができる。
【0076】
また、底部材36は、支持部72と係合した状態で、収容部に収容された香味発生物品110と当接する当接面36cの反対側に空気層36dを形成する。すなわち、底部材36は、ヒータクッション74と直接接触しない。そのため、底部材36からの伝熱による熱損失を抑制することができる。
【0077】
ヒータクッション74は、支持部72の一端を収容して支持するように構成される。ヒータクッション74は、例えばシリコーンゴム等の弾性部材で形成され得る。なお、シリコーンゴムを用いる場合、好適なショアA硬度の範囲は、40~60であり、ヒータクッション74の変形に応じて適宜選択可能である。また、ヒータクッション74は、図示しないインナハウジングに固定された固定部22に位置決め固定されるよう構成される。なお、固定部22は、インナハウジングそのものであってもよい。
【0078】
ここで、ヒータクッション74は、上述したように例えばシリコン等の弾性部材で形成され、支持部72を介してチャンバ50を挿入ガイド部材34に、すなわちZ軸正方向側に付勢するよう構成される。これにより、チャンバ50のフランジ部52aと挿入ガイド部材34との間でシールが形成されるので、香味発生物品110の加熱によってチャンバ50で発生するエアロゾルが、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間からインナハウジング内部に漏出することを抑制することができる。
【0079】
ヒータクッション74は、断熱部32と隙間を有して対向するように配置され、チャンバ50の軸方向において、断熱部32の移動を規制する。したがって、断熱部32がチャンバ50の軸方向に際限なく移動することが防止されるので、断熱部32が他の部材(例えば、インナハウジング10等)と衝突することが防止される。また、ヒータクッション74は、弾性部材で形成されるので、ヒータクッション74が断熱部32と接触した場合であっても、断熱部32にかかる応力を緩和することができるので、断熱部32が破壊されることを防止することができる。
【0080】
リング85は、支持部72が挿入される開口85aを有し、支持部72とヒータクッション74との間に挟み込まれて固定され得る。リング85は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、リング85は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、リング85は、PEEKであることが好ましい。リング85は、断熱部32の内周面に設けられた後述する支持材32aと隙間を有して対向するように配置され、チャンバ50の半径方向において、断熱部32の移動を規制する。したがって、断熱部32がチャンバ50の半径方向に際限なく移動することが防止されるので、断熱部32が他の部材(例えば、インナハウジング10等)と衝突することが防止される。また、チャンバ50の半径方向における断熱部32の移動を、断熱部32の内側から規制することができるので、香味吸引器100を小型化することができる。
【0081】
断熱部32は、支持材32aと、支持材32aの外周面上に設けられた断熱層32bと、を有する。支持材32aは、例えば略筒状であり、チャンバ50を取り囲むように配置される。支持材32aは、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。断熱層32bは、例えばエアロゲルシートであり得る。ここで、支持材32aは、断熱層32bよりも薄く形成され、1mm以下、好ましくは0.5mm以下の厚みを有する。これにより、断熱部32そのものの熱容量を小さくすることができるので、断熱部32における熱損失を抑制することができる。
【0082】
図10に示すように、チャンバ50のフランジ部52aは、全周にわたって挿入ガイド部材34と当接するよう構成される。また、第2保持部38は、ガスケット80(カバー部の一例に相当する)と、円環部材90(カバー部の一例に相当する)と、を有する。
【0083】
ガスケット80は、チャンバ50の非保持部54の周囲に配置され、チャンバ50を支持するように構成される。ガスケット80は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等から形成され得る。なお、ガスケット80は、金属やガラス、セラミック等で形成されてもよい。また、耐熱性の観点から、ガスケット80は、PEEKであることが好ましい。円環部材90は、挿入ガイド部材34およびガスケット80と係合してこれらを支持するように構成される。円環部材90は、例えばシリコーンゴム等の弾性部材で形成され得る。なお、シリコーンゴムを用いる場合、好適なショアA硬度の範囲は、40~60であり、円環部材90の変形に応じて適宜選択可能である。また、円環部材90は、図示しないインナハウジングに固定された固定部22に位置決め固定されるよう構成される。
【0084】
ガスケット80および円環部材90は、チャンバ50と挿入ガイド部材34との当接箇所の周囲を覆うように配置されている。これにより、チャンバ50で発生したエアロゾルがチャンバ50と挿入ガイド部材34との当接箇所から香味吸引器100のインナハウジング内部に漏出することを抑制することができる。
【0085】
また、ガスケット80および円環部材90は、断熱部32と隙間を有して対向するように配置され、チャンバ50の軸方向において、断熱部32の移動を規制する。したがって、断熱部32がチャンバ50の軸方向に際限なく移動することが防止されるので、断熱部32が他の部材(例えば、インナハウジング10等)と衝突することが防止される。また、円環部材90は、弾性部材で形成されるので、円環部材90が断熱部32と接触した場合であっても、断熱部32にかかる応力を緩和することができるので、断熱部32が破壊されることを防止することができる。
【0086】
また、ガスケット80は、断熱部32の内周面と隙間を有して対向するように配置され、チャンバ50の半径方向において、断熱部32の移動を規制する。したがって、断熱部32がチャンバ50の半径方向に際限なく移動することが防止されるので、断熱部32が他の部材(例えば、インナハウジング10等)と衝突することが防止される。また、チャンバ50の半径方向における断熱部32の移動を、断熱部32の内側から規制することができるので、香味吸引器100を小型化することができる。
【0087】
ここで、ヒータクッション74とガスケット80および円環部材90との距離、具体的には、断熱部32と対向する位置におけるヒータクッション74とガスケット80および円環部材90との距離をL1とし、断熱部32の軸方向長さをL2としたとき、L1>L2の関係が成り立つことが好ましい。これによれば、ヒータクッション74並びにガスケット80および円環部材90に対して、断熱部32を非接触位置に配置することができる。そのため、断熱部32にヒータクッション74並びにガスケット80および円環部材90からの応力がかかることを抑制することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、ヒータクッション74が固定部22に位置決め固定されると説明したが、これに限定されない。図11は、第1保持部の別の形態を示す拡大断面図である。図12に示すように、第1保持部137は、リング172(支持部の一例に相当する)と、ヒータクッション174と、を有する。また、チャンバ50の底部56に設けられた底部材36は、チャンバ50の孔56aを通じてチャンバ50の外部に突出する軸部36aを有する。
【0089】
リング172は、チャンバ50の底部56と当接してチャンバ50を支持するように構成される。また、リング172は、中央部分に底部材36の軸部36aが貫通する孔172aを有する。リング172は、例えば樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等からPEEK等の樹脂で形成され得る。
【0090】
ヒータクッション174は、リング172の一端を収容して支持するように構成される。また、ヒータクッション174は、中央部分に底部材36の軸部36aが貫通する孔174aを有する。ヒータクッション174は、例えばシリコン等の弾性部材で形成され得る。
【0091】
底部材36は、軸部36aが図示しないインナハウジングに固定された固定部22に位置決め固定されるよう構成される。なお、固定部22は、インナハウジングそのものであってもよい。
【0092】
このような構造の第1保持部137であっても、ヒータクッション174がチャンバ50を挿入ガイド部材34に付勢することにより、チャンバ50のフランジ部52aと挿入ガイド部材34との間でシールが形成されるので、香味発生物品110の加熱によってチャンバ50で発生するエアロゾルが、チャンバ50と挿入ガイド部材34との間からインナハウジング内部に漏出することを抑制することができる。
【0093】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書および図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0094】
例えば、本実施形態の香味吸引器100は、チャンバ50の開口52から流入した空気が香味発生物品110の端面に供給される、いわゆるカウンターフロー式の空気流路を有するが、これに限らず、チャンバ50の底部56からチャンバ50内に空気が供給する、いわゆるボトムフロー式の空気流路を有してもよい。また、加熱部42は、抵抗加熱型に限らず、誘導加熱型であってもよい。その場合、加熱部42は、誘導加熱によってチャンバ50を加熱することができる。また、香味発生物品110がサセプタを有する場合には、加熱部42が誘導加熱によって香味発生物品110のサセプタを加熱することができる。
【符号の説明】
【0095】
32…断熱部
34…挿入ガイド部材
36…底部材
36b…平坦面
36d…空気層
37…第1保持部
38…第2保持部
42…加熱部
50…チャンバ
52…開口
62…接触部
66…離間部
72…支持部
72a…平坦面
74…ヒータクッション
80…ガスケット
85…リング
90…円環部材
100…香味吸引器
110…香味発生物品
150…第2空気流路
160…第1空気流路
137…第1保持部
172…リング
174…ヒータクッション
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口が形成され、前記開口を介して香味発生物品の少なくとも一部を収容する収容部を備え、
前記収容部は、
前記香味発生物品の周囲を取り囲む筒状部と、
前記収容部の他端に配置され、前記筒状部とは異なる部材で形成されて、前記収容部に収容された前記香味発生物品と当接する当接部と、を有し、
前記当接部は、前記香味発生物品と当接する当接面を有する、
香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、樹脂で構成されている、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記当接部には、前記収容部に収容された前記香味発生物品に連通する第1空気流路が形成される、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部は、金属で構成されている、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部と前記当接部との間を封止する封止部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記当接部は、前記収容部の他端側で前記筒状部と係合する、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部の外周に配置され、前記収容部に収容された前記香味発生物品を加熱するように構成される加熱部をさらに備え、
前記当接部と前記加熱部とは、前記収容部の軸方向において重なり合わない、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項7に記載の香味吸引器であって、
前記加熱部は、誘導加熱によって前記筒状部を加熱する、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部の開口と当接し、前記筒状部への前記香味発生物品の挿入を案内するガイド部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項10】
請求項9に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部は、前記開口を画定する端部に形成されたフランジ部を有する、
香味吸引器。
【請求項11】
請求項10に記載の香味吸引器であって、
前記フランジ部は、全周にわたって前記ガイド部と当接する、
香味吸引器。
【請求項12】
請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記筒状部と前記ガイド部との当接箇所の周囲を覆うように配置されたカバー部をさらに備えた、
香味吸引器。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の香味吸引器と、
香味発生物品と、を備えた、
喫煙システム。