(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161591
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】検出装置及び放射線特定装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/18 20060101AFI20241112BHJP
G01T 1/161 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
G01T1/18 D
G01T1/161 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144525
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2024519792の分割
【原出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022138723
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】本村 知久
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】谷森 達
(72)【発明者】
【氏名】高田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】田原 圭祐
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンプトン散乱された放射線及びコンプトン散乱によって発生した電子を検出する。
【解決手段】放射線を検出する検出装置10は、ガスが収容されている容器20と、容器の内部に位置し、コンプトン散乱によって発生した電子を検出してアナログ信号を生成する電子検出器30と、電子検出器に対向するドリフト電極40と、コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出してアナログ信号を生成する放射線検出器50と、放射線検出器によって生成されたアナログ信号をデジタル化して第1データを生成し、第1データを第1バッファに格納する第1読出回路と、電子検出器によって生成されたアナログ信号をデジタル化して第2データを生成する第2読出回路と、を備える。第1読出回路は、第1バッファに格納されている第1データを含む第1最終データを、第1トリガー信号に応じて外部のコンピュータへ送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出装置であって、
ガスが収容されている容器と、
前記容器の内部に位置し、コンプトン散乱によって発生した電子を検出してアナログ信号を生成する電子検出器と、
前記電子検出器に対向するドリフト電極と、
前記コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出してアナログ信号を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第1データを生成し、前記第1データを第1バッファに格納する第1読出回路と、
前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第2データを生成する第2読出回路と、を備え、
前記第1読出回路は、前記第1バッファに格納されている前記第1データを含む第1最終データを、第1トリガー信号に応じて外部のコンピュータへ送信する、検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、放射線を検出する検出装置及び放射線特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を検出する装置として、例えば特許文献1~3に開示されているように、コンプトン散乱された放射線及びコンプトン散乱によって発生した電子を検出する検出装置が知られている。検出装置は、ガスが収容されている容器と、コンプトン散乱によって発生した電子を検出する電子検出器と、コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出する放射線検出器と、を備える。
【0003】
電子検出器によって検出される電子に関するデータは、放射線の分析に役立つ。例えば特許文献1に記載されているように、放射線の散乱方向に関する情報が、放射線検出器によって検出された放射線の位置に関する情報と、電子の発生点に関する情報とから算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-148448号公報
【特許文献2】特開2016-161522号公報
【特許文献3】国際公開第2017/209059号
【発明の開示】
【0005】
コンプトン散乱によって散乱された放射線に加えて、その他の放射線が放射線検出器に到達することがある。その他の放射線は、容器の内部で散乱されずに放射線検出器に到達する放射線、容器を通過せずに放射線検出器に到達する放射線などである。その他の放射線は、容器の内部における電子の発生を伴わない。このため、その他の放射線に関する分析は、コンプトン散乱によって散乱された放射線の分析に比べて制限される。従って、その他の放射線に関するデータの有用性は、コンプトン散乱によって散乱された放射線のデータの有用性に比べて低い。
【0006】
放射線検出器によって取得された放射線のデータは、コンピュータへ送信される。放射線検出器によって取得された放射線に関する全てのデータがコンピュータに送信されると、コンピュータの負荷が重くなる。
【0007】
本開示の実施形態は、このような課題を効果的に解決し得る検出装置を提供することを目的とする。
【0008】
本開示の実施形態は、以下の[1]~[28]に関する。
[1] 放射線を検出する検出装置であって、
ガスが収容されている容器と、
前記容器の内部に位置し、コンプトン散乱によって発生した電子を検出してアナログ信号を生成する電子検出器と、
前記電子検出器に対向するドリフト電極と、
前記コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出してアナログ信号を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第1データを生成し、前記第1データを第1バッファに格納する第1読出回路と、
前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第2データを生成する第2読出回路と、を備え、
前記第1読出回路は、前記第1バッファに格納されている前記第1データを含む第1最終データを、第1トリガー信号に応じて外部のコンピュータへ送信する、検出装置。
【0009】
[2] [1]に記載の検出装置において、前記第1最終データは、前記第1データが前記第1バッファに格納された時刻に関する情報を含んでいてもよい。
【0010】
[3] [1]又は[2]に記載の検出装置において、前記放射線検出器は、複数の検出素子を含んでいてもよく、前記第1最終データは、前記放射線検出器上における放射線の到達位置に関する情報を含んでいてもよい。
【0011】
[4] [3]に記載の検出装置において、前記第1最終データは、前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に関する情報を含んでいてもよい。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1読出回路の前記第1バッファは、第1格納期間の間、前記第1データを格納し、前記第1格納期間は、最大移動時間以下であってもよい。前記最大移動時間は、電子が前記ドリフト電極から前記電子検出器まで移動することに要する時間であってもよい。
【0013】
[6] [5]に記載の検出装置において、前記最大移動時間は、10.24μs以下であってもよい。
【0014】
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1トリガー信号は、前記第2データの生成に応じて生成されてもよい。
【0015】
[8] [7]に記載の検出装置において、前記検出装置は、前記第1読出回路及び前記第2読出回路に接続された論理回路を備えてもよく、前記第2読出回路は、前記電子検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第2ヒット信号を生成してもよく、前記論理回路は、前記第2ヒット信号の生成に応じて前記第1トリガー信号を生成してもよい。
【0016】
[9] [8]に記載の検出装置において、前記第2読出回路は、前記第2データが格納される第2バッファを含んでいてもよく、前記論理回路は、前記第2ヒット信号の生成に応じて第2トリガー信号を生成してもよく、前記第2読出回路は、前記第2バッファに格納されている前記第2データを含む第2最終データを、第2トリガー信号に応じて前記コンピュータへ送信してもよい。
【0017】
[10] [9]に記載の検出装置において、前記論理回路は、前記第1トリガー信号と前記第2トリガー信号とを同時に生成してもよい。
【0018】
[11] [9]又は[10]に記載の検出装置において、前記論理回路は、前記電子検出器において前記第2ヒット信号が生成されてから第2遅延時間が経過した後、前記第2トリガー信号を生成してもよい。
【0019】
[12] [11]に記載の検出装置において、前記第2遅延時間は、最大移動時間以下であってもよい。前記最大移動時間は、電子が前記ドリフト電極から前記電子検出器まで移動することに要する時間であってもよい。
【0020】
[13] [11]又は[12]に記載の検出装置において、前記第2読出回路の前記第2バッファは、第2格納期間の間、前記第2データを格納し、前記第2格納期間は、第2遅延時間以上であってもよい。
【0021】
[14] [9]~[13]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記電子検出器は、複数のアノード電極及び複数のカソード電極を含んでいてもよく、前記電子検出器の前記アナログ信号は、前記複数のアノード電極によって生成されるアノードアナログ信号と、前記複数のカソード電極によって生成されるカソードアナログ信号と、を含んでいてもよく、前記第2読出回路は、前記アノードアナログ信号の強度が閾値を超えたときにアノードヒット信号を生成し、前記カソードアナログ信号の強度が閾値を超えたときにカソードヒット信号を生成してもよく、前記論理回路は、前記アノードヒット信号及び前記カソードヒット信号の両方の生成に応じて、前記第2トリガー信号を生成してもよい。
【0022】
[15] [9]~[14]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第2最終データは、前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に関する情報を含んでいてもよい。
【0023】
[16] [15]に記載の検出装置において、前記第2読出回路は、前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に関する情報を、50MHz以下のサンプリング周波数で取得してもよい。
【0024】
[17] [15]に記載の検出装置において、前記第2読出回路は、前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に関する情報を、10MHz以上20MHz以下のサンプリング周波数で取得してもよい。
【0025】
[18] [8]~[17]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成してもよく、前記論理回路は、前記第1ヒット信号が生成されてから第1維持期間以内に前記第2ヒット信号が生成された場合に、前記第1トリガー信号を生成してもよい。
【0026】
[19] [18]に記載の検出装置において、前記第1維持期間は、最大移動時間以下であってもよい。前記最大移動時間は、電子が前記ドリフト電極から前記電子検出器まで移動することに要する時間であってもよい。
【0027】
[20] [8]~[17]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成してもよく、前記論理回路は、前記第1ヒット信号が生成されてから第1維持期間以内に前記第2ヒット信号が生成された場合に、前記第1トリガー信号及び前記第2トリガー信号を生成してもよい。
【0028】
[21] [1]~[6]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成してもよく、前記第1トリガー信号は、前記第1ヒット信号が生成されてから第1遅延時間が経過した後に生成されてもよい。
【0029】
[22] [21]に記載の検出装置において、前記第1遅延時間は、最大移動時間の0.45倍以上1.00倍以下であってもよい。前記最大移動時間は、電子が前記ドリフト電極から前記電子検出器まで移動することに要する時間であってもよい。
【0030】
[23] [21]又は[22]に記載の検出装置において、前記第2読出回路は、前記電子検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第2ヒット信号を生成してもよく、前記第1トリガー信号は、前記第1遅延時間の間に前記第2ヒット信号が生成されている場合に、生成されてもよい。
【0031】
[24] [1]~[23]のいずれか1つに記載の検出装置において、前記第1読出回路は、前記放射線検出器における検出遅延時間に関する情報を前記コンピュータへ送信してもよい。
【0032】
[25] [24]に記載の検出装置において、前記検出遅延時間は、前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に基づいて算出されてもよい。
【0033】
[26] 放射線特定装置であって、
[1]~[25]のいずれか1つに記載の検出装置と、
前記検出装置が送信した前記第1最終データ及び前記第2最終データを受信するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、第1最終データ及び第2最終データに基づいて、放射線の前記検出装置への入射方向を算出する、放射線特定装置。
【0034】
[27] 放射線特定装置であって、
[1]~[25]のいずれか1つに記載の検出装置と、
前記検出装置が送信した前記第1最終データ及び前記第2最終データを受信するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、第1最終データ及び第2最終データに基づいて、放射線を放出する線源の位置を画像化する、放射線特定装置。
【0035】
[28] 放射線特定装置であって、
[24]又は[25]に記載の検出装置と、
前記検出装置が送信した前記第1最終データ、前記第2最終データ及び前記検出遅延時間に関する情報を受信するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータは、前記第1最終データ、前記第2最終データ及び前記検出遅延時間に関する情報に基づいて、コンプトン散乱によって発生した電子の座標を特定する、放射線特定装置。
【0036】
本開示の実施形態によれば、コンピュータに送信される、放射線に関するデータの量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図5】検出装置において生じるコンプトン散乱の一例を示す図である。
【
図6】電子検出器に電子が到達する様子を示す図である。
【
図7】放射線検出器によって生成されるアナログ信号及び電子検出器によって生成されるアナログ信号の一例を示す図である。
【
図8】データを生成するための回路の一例を示す図である。
【
図9】第2読出回路及び論理回路の一例を示す図である。
【
図13】コンピュータへ送信される第1最終データ及び第2最終データの一例を示す図である。
【
図15】第1の変形例における信号処理の一例を示す図である。
【
図16】第2の変形例における第2読出回路及び論理回路を示す図である。
【
図17】第2の変形例における信号処理を示す図である。
【
図18】第3の変形例における電子検出器を示す斜視図である。
【
図19】第3の変形例における第2読出回路及び論理回路の一例を示す図である。
【
図20】第4の変形例における第1読出回路、第2読出回路及び論理回路を示す図である。
【
図21】第4の変形例における信号処理を示す図である。
【
図22】最大移動時間を測定するための装置の構成を示す図である。
【
図23】
図22の装置によって検出された電子の数を示すグラフである。
【
図24】第5の変形例におけるアナログ信号を示す図である。
【
図25】第6の変形例における信号処理を示す図である。
【
図26】第6の変形例における信号処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基板」や「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0039】
本明細書で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0040】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよく、A3以上であってもよい。パラメータBは、例えばA4以下であり、A5以下であってもよく、A6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下であってもよく、A1以上A5以下であってもよく、A1以上A6以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよく、A2以上A5以下であってもよく、A2以上A6以下であってもよく、A3以上A4以下であってもよく、A3以上A5以下であってもよく、A3以上A6以下であってもよい。
【0041】
以下、本開示の実施形態に係る検出装置10の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、検出装置10の概要について説明する。
図1は、検出装置10の一例を示す断面図である。
【0042】
(検出装置)
検出装置10は、容器20と、容器20の内部に位置する電子検出器30及びドリフト電極40と、放射線検出器50と、を備える。容器20は、例えばチャンバーである。容器20の内部には、アルゴンやキセノンなどの希ガスが少なくとも収容されている。容器20の内部には、希ガスに加えて、二酸化炭素やメタンなどの消光作用を有するクエンチングガスが収容されていてもよい。
【0043】
容器20は、第1部21と、第1方向D1において第1部21に対向する第2部22と、第1部21から第2部22に向かって広がる側部23と、を含む。検出装置10は、第1部21を通って容器20の内部に入射する放射線を検出するために用いられ得る。
図1に示すように、容器20は、円筒形を有していてもよい。すなわち、側部23が円形の断面を有していてもよい。図示はしないが、容器20は、円筒形以外の形状、例えば立方体や直方体の形状を有していてもよい。第1部21は、容器20の外側に向かって凸となるよう湾曲していてもよい。容器20は、第1部21と側部23の間に位置するコーナー24を含んでいてもよい。第1部21は、平坦に広がっていてもよい。コーナー24は、第1部21及び側部23とは異なる方向に広がる面を含んでいてもよい。
【0044】
放射線を放出する対象物は、容器20の外部に位置する。第1部21は、容器20の面のうち対象物に最も近接する面を含んでいてもよい。
【0045】
容器20の材料が、放射線を透過させやすいことが好ましい。これにより、容器20を通る間に放射線が容器20によって吸収されたり散乱されたりすることを抑制できる。容器20は、例えば、プラスチック、金属を含んでいてもよい。プラスチックは、繊維強化プラスチックであってもよい。金属を用いる場合、容器20は、単一の金属元素で構成されていてもよく、合金で構成されていてもよい。金属としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金を用いることができる。容器20の軽量化のため、比重が4未満の金属を用いてもよい。
【0046】
容器20がプラスチックを含む場合、容器20の厚みは、例えば1mm以上であり、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。容器20の厚みは、例えば30mm以下であり、25mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0047】
容器20が金属を含む場合、容器20の厚みは、例えば2mm以上であり、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。容器20の厚みは、例えば20mm以下であり、15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0048】
ドリフト電極40、電子検出器30及び放射線検出器50は、この順で第1部21から第2部22に向かう側に並んでいる。すなわち、ドリフト電極40は、電子検出器30よりも第1部21の側に位置している。放射線検出器50は、電子検出器30よりも第2部22の側に位置している。「構成要素Aが構成要素Bよりも第1部21の側に位置している」とは、構成要素Aが、構成要素Bに対して
図1の矢印S1で示す側に位置していることを意味する。矢印S1は、第2部22から第1部21に向かう方向を表す。構成要素Bから第1部21までの距離は、構成要素Bから構成要素Aまでの距離よりも長くてもよく、短くてもよい。
【0049】
ドリフト電極40は、第2部22よりも第1部21に近接していてもよい。電子検出器30及び放射線検出器50は、第1部21よりも第2部22に近接していてもよい。
【0050】
放射線検出器50は、容器20の外部に位置していてもよい。例えば、放射線検出器50は、第2部22の外側に位置していてもよい。放射線検出器50は、第2部22を挟んでドリフト電極40と対向していてもよい。
【0051】
図示はしないが、放射線検出器50は、容器20の内部に位置していてもよい。例えば、放射線検出器50は、第2部22と電子検出器30との間に位置していてもよい。
【0052】
電子検出器30、ドリフト電極40及び放射線検出器50について詳細に説明する。
【0053】
容器20の内部に入射した放射線がガスに衝突すると、コンプトン散乱が生じることがある。コンプトン散乱が生じると、反跳電子が発生する。また、反跳電子の飛跡に沿って電離電子が発生する。電子検出器30は、電離電子を検出する。電離電子を検出することにより、反跳電子の飛跡及びエネルギーを算出できる。
【0054】
図2は、電子検出器30の一例を示す斜視図である。電子検出器30は、複数の電極を含む。コンプトン散乱によって発生した電子は、複数の電極のうちの一部の電極に到達する。一部の電極は、電子の到達に伴ってアナログ信号を生成する。アナログ信号を生成した一部の電極を特定することにより、電子検出器30上における電子の到達位置に関する情報が得られる。アナログ信号の強度に基づいて、電子検出器30に到達した電子のエネルギーに関する情報が得られる。アナログ信号の強度は、アナログ信号の電圧、振幅などに基づいて算出される。例えば、アナログ信号の電圧又は振幅が、アナログ信号の強度として用いられてもよい。
【0055】
電子検出器30の複数の電極は、複数のアノード電極31と、複数のカソード電極32と、基材35と、を含んでいてもよい。基材35は、第1方向D1に交差する方向に広がる第1面351及び第2面352を含む。第1面351は、ドリフト電極40に対向している。第2面352は、第1面351の反対側に位置している。
【0056】
複数のカソード電極32は、第1面351上に位置していてもよい。複数のカソード電極32は、第1方向D1に直交する第2方向D2に並んでいてもよい。各カソード電極32は、第1方向D1及び第2方向D2に直交する第3方向D3に延びていてもよい。
【0057】
複数のアノード電極31は、第2面352に位置し、第3方向D3に並ぶ複数のライン部311を含んでいてもよい。各ライン部311は、第2方向D2に延びていてもよい。
図3は、電子検出器30の一例を示す断面図である。各ライン部311には、第2方向D2に並び、基材35を貫通する複数の貫通部312が接続されていてもよい。貫通部312の表面は、カソード電極32に形成された開口33に位置していてもよい。
【0058】
コンプトン散乱によって発生した電子は、複数のアノード電極31のうちの一部のアノード電極31、及び、複数のカソード電極32のうちの一部のカソード電極32に到達する。一部のアノード電極31は、電子の到達に伴ってアノードアナログ信号を生成する。アノードアナログ信号を生成した一部のアノード電極31を特定することにより、電子検出器30に到達した電子の、第3方向D3における位置に関する情報が得られる。一部のカソード電極32は、電子の到達に伴ってカソードアナログ信号を生成する。カソードアナログ信号を生成した一部のカソード電極32を特定することにより、電子検出器30に到達した電子の、第2方向D2における位置に関する情報が得られる。このように、
図2及び
図3に示す電子検出器30は、電子検出器30に到達した電子の、第2方向D2における位置及び第3方向D3における位置に関する情報を、効率的に提供できる。
【0059】
電子検出器30には、アナログ信号を処理するための後述する第2読出回路130が設けられていてもよい。第2読出回路130は、電子検出器30とは別の部材に設けられていてもよい。この場合、電子検出器30には、アナログ信号を第2読出回路130に伝えるためのケーブル、ハーメチックコネクタ、配線基板が設けられていてもよい。
【0060】
ドリフト電極40は、電子検出器30に対向するよう配置されている。例えば、ドリフト電極40は、第1方向D1において電子検出器30に対向している。この場合、ドリフト電極40は、第1方向D1に直交する方向に広がる面を含む。電子検出器30とドリフト電極40との間には、電子検出器30からドリフト電極40に向かう電場が生じている。コンプトン散乱によって発生した反跳電子に伴う電離電子は、電場により電子検出器30側へ引き寄せられる。
【0061】
放射線検出器50は、散乱された放射線を検出する。本実施の形態においては、電子検出器30とドリフト電極40との間で散乱された放射線が、電子検出器30及び容器の第2部22を透過した後に放射線検出器50によって検出される。放射線検出器50は、放射線検出器50に到達した放射線の位置及びエネルギーを検出できる。
【0062】
図4は、放射線検出器50の一例を示す斜視図である。放射線検出器50は、複数の検出素子51と、検出素子51を支持する回路基板52と、を含んでいてもよい。複数の検出素子51は、第1方向D1に交差する方向に並んでいてもよい。例えば、複数の検出素子51は、第1方向D1に直交する第2方向D2及び第3方向D3に並んでいてもよい。
【0063】
放射線は、複数の検出素子51のうちの一部の検出素子51に到達する。一部の検出素子51は、放射線の到達に伴ってアナログ信号を生成する。アナログ信号を生成した一部の検出素子51を特定することにより、放射線検出器50上における放射線の到達位置に関する情報が得られる。アナログ信号の強度に基づいて、放射線検出器50に到達した放射線のエネルギーに関する情報が得られる。アナログ信号の強度は、アナログ信号の電圧、振幅などに基づいて算出される。
【0064】
放射線を検出できる限りにおいて、検出素子51の構成は任意である。
例えば、検出素子51は、散乱された放射線によって励起されて蛍光を発するシンチレータと、蛍光を検出する光検出器と、を含んでいてもよい。光検出器は、例えばアバランシェフォトダイオードを含んでいてもよい。
検出素子51は、前記散乱された放射線を検出する半導体検出素子を含んでいてもよい。半導体検出素子は、例えば、テルル化亜鉛カドミウムを含む半導体を備えていてもよい。
【0065】
放射線検出器50は、第1範囲内のエネルギーを有する放射線を検出できる第1の検出素子51と、第1範囲とは異なる第2範囲内のエネルギーを有する放射線を検出できる第2の検出素子51と、を含んでいてもよい。これにより、放射線検出器50が検出できる放射線のエネルギーの範囲を拡大できる。
【0066】
検出素子51によって検出された放射線は、回路基板52によって電気信号として処理される。回路基板52は、電気信号を処理するための回路、配線などを含んでいてもよい。電気信号は、例えば、回路基板52に接続された図示しないケーブル、ハーメチックコネクタ、配線基板などを介して容器20の外部に伝送されてもよい。
【0067】
検出装置10のその他の構成要素について説明する。
【0068】
図1に示すように、検出装置10は、電子検出器30とドリフト電極40との間に位置する補助ドリフト電極70を備えていてもよい。補助ドリフト電極70は、電子検出器30とドリフト電極40との間の電場の分布の均一性を高めるために設けられている。
【0069】
補助ドリフト電極70は、複数のリング電極72を含んでいてもよい。複数のリング電極72は、電子検出器30とドリフト電極40とが対向する方向に沿って並んでいる。リング電極72は、ドリフト電極40に向くリング第1面73と、リング第1面73の反対側に位置するリング第2面74と、を含む。
【0070】
リング電極72には開口721が形成されていてもよい。開口721は、対向方向において、電子検出器30に重なる。リング電極72は、対向方向において、電子検出器30に重なっていなくてもよい。リング電極72は、対向方向において、ドリフト電極40に重なっていてもよい。
【0071】
補助ドリフト電極70は、対向方向において隣接する2つのリング電極72の間に配置されているスペーサ75を含んでいてもよい。スペーサ75は、対向方向において隣接する2つのリング電極72の間の距離を定める。距離は、リング電極72の数、電子検出器30とドリフト電極40との間の電圧などに応じて定められる。
【0072】
ドリフト電極40は、補助ドリフト電極70に取り付けられていてもよい。例えば、補助ドリフト電極70は、ドリフト電極40とリング電極72との間に位置するスペーサ75を含んでいてもよい。ドリフト電極40及び複数のリング電極72を含む構造体のことを、ドリフトケージ45とも称する。
【0073】
補助ドリフト電極70は、対向方向において隣接する2つのリング電極72を電気的に接続する配線76を含んでいてもよい。補助ドリフト電極70は、対向方向において隣接するドリフト電極40とリング電極72とを電気的に接続する配線76を含んでいてもよい。補助ドリフト電極70は、配線76の経路に挿入された抵抗器77を含んでいてもよい。隣接する2つのリング電極72を電気的に接続することにより、2つのリング電極72の間の電圧を調整できる。これにより、対向方向に並ぶリング電極72の電位を段階的に変化させることができる。例えば、ドリフト電極40の電位が-4000Vであり、電子検出器30の電位が0Vであり、20枚のリング電極72がドリフト電極40と電子検出器30の間に配置されていると仮定する。この場合、ドリフト電極40から電子検出器30に向かって並ぶ複数のリング電極72の電位を、-3800V、-3600V、-3400V、・・・というように段階的に変化させることができる。これにより、ドリフト電極40と電子検出器30との間の空間に形成される電場の均一性を高めることができる。
【0074】
図1に示すように、補助ドリフト電極70は、中継基板90によって支持されていてもよい。中継基板90は、電子検出器30を支持していてもよい。例えば、中継基板90は、電子検出器30を支持する第1基板91と、補助ドリフト電極70を支持する第2基板92と、を含んでいてもよい。第2基板92は、第1基板91と補助ドリフト電極70との間に位置していてもよい。
【0075】
図1に示すように、検出装置10は、電子検出器30とドリフト電極40との間に位置する電子増幅器60を備えていてもよい。電子増幅器60は、例えば第1方向D1において電子検出器30及びドリフト電極40に対向するよう配置されている。
【0076】
電子増幅器60は、電子雪崩増幅を生じさせるよう構成されている。電子増幅器60は、ドリフト電極40の電位よりも高い電位を有する電極を含む。電子増幅器60は、電子増幅器60を貫通する複数の貫通孔61を含んでいてもよい。電子増幅器60は、ドリフト電極40に向かう電場を貫通孔61に生じさせるよう構成されていてもよい。
【0077】
次に、検出装置10において生じるコンプトン散乱について説明する。
図5は、コンプトン散乱の一例を示す図である。符号R1は、容器20の第1部21を通過して容器20の内部に入射した放射線を表す。放射線R1は、例えば荷電粒子線(例えば、α線、β線等)、非荷電粒子線(例えば、中性微子、中性子線等)、電磁波(例えば、ガンマ線、X線等)、または非電離放射線(例えば、紫外光等)等である。放射線R1は、ドリフト電極40を通過した後、電子検出器30とドリフト電極40との間の空間に到達する。
【0078】
放射線R1がガスに衝突すると、コンプトン散乱が生じることがある。符号Pは、散乱が生じた位置を表す。位置Pを散乱点とも称する。符号R2は、散乱された放射線を表す。放射線R2は、電子検出器30を通過した後、放射線検出器50に到達する。放射線検出器50が容器20の外部に位置する場合、放射線R2は、容器20の第2部22も通過する。放射線R2は、複数の検出素子51の中の一部の検出素子51によって検出される。例えば、放射線R2は、1つの検出素子51によって検出される。これにより、放射線R2の到達位置及びエネルギーを算出できる。
【0079】
コンプトン散乱が生じると、反跳電子が発生する。符号R3は、反跳電子の飛跡に形成される電子雲を示す。符号e1は、電子雲R3の始点に位置する電子を表す。電子e1は、散乱点Pに位置していてもよい。符号e2は、電子雲R3の終点に位置する電子を表す。
【0080】
電子雲R3の各電子は、電場E1により電子検出器30に向かって移動する。このような移動は、ドリフトとも称される。電子検出器30に到達した電子雲R3の各電子は、電子検出器30のアノード電極31及びカソード電極32によって検出される。これにより、電子雲R3の各電子の位置及びエネルギーを算出できる。また、反跳電子の飛跡及びエネルギー並びに散乱点Pを算出できる。
【0081】
放射線R2は、散乱点Pから放射線検出器50までほぼ光速で移動する。反跳電子も、電子e1の位置から電子e2の位置までほぼ光速で移動する。一方、電子雲R3が電子検出器30に向かって移動する速度Vは、光速に比べて遅い。このため、電子雲R3の各電子は、放射線R2が放射線検出器50に到達した後に、電子検出器30に到達する。電子雲R3の各電子が電子検出器30に到達する時間は、各電子から電子検出器30までの距離に応じて異なる。
図6に示す例において、電子e2から電子検出器30までの距離は、電子e1から電子検出器30までの距離よりも短い。このため、電子e2は、電子e1よりも先に電子検出器30に到達する。
【0082】
図6において、四角い枠で囲まれたt0、t1、t2の符号は、放射線R2又は電子雲R3の電子が符号で示す位置に生じたときの時刻、又は到達したときの時刻を表す。放射線R2及び反跳電子の移動に要する時間を無視する場合、電子e1が生じる時刻、電子e2が生じる時刻、及び、放射線R2が放射線検出器50に到達する時刻は、いずれもt0である。電子e1は、時刻t0の後、時刻t1で電子検出器30に到達する。電子e2は、時刻t2で電子検出器30に到達する。時刻t2は時刻t0よりも後であり、時刻t1は時刻t2よりも後である。
【0083】
放射線検出器50は、放射線R2を検出するとアナログ信号を生成する。電子検出器30は、電子を検出するとアナログ信号を生成する。
図7は、放射線検出器50によって生成されるアナログ信号W_R2及び電子検出器によって生成されるアナログ信号W_R3の一例を示す図である。放射線検出器50のアナログ信号は、時刻t0に生成される。時間ΔT2は、時刻t0と時刻t2の差である。時間ΔT2は、電子e2が電子雲R3の終点から電子検出器30まで移動することに要する時間に相当する。時間ΔT1は、時刻t0と時刻t1の差である。時間ΔT1は、電子e1が電子雲R3の始点から電子検出器30まで移動することに要する時間に相当する。
【0084】
電子雲R3から電子検出器30までの距離が長いほど、電子が電子検出器30まで移動することに要する時間が長くなる。移動に要する時間は、電子がドリフト電極40上で生成された場合に最も長くなる。電子がドリフト電極40から電子検出器30まで移動することに要する時間のことを、最大移動時間TMAXとも称する。最大移動時間TMAXは、ドリフト電極40と電子検出器30との間の間隔(ドリフト長とも称する)、及び電子のドリフト速度Vに基づいて定まる。ドリフト速度Vは、電場の強度、容器20中のガスの種類、ガスの圧力などに基づいて定まる。例えば、下記の条件1及び条件2においては、最大移動時間TMAXが10.24μsになる。
(条件1)
ドリフト長:40cm、電場強度:400V/cm、
ガスの種類:アルゴン及びエタンを含む混合ガス、ガスの圧力:1気圧
(条件2)
ドリフト長:60cm、電場強度:600V/cm、
ガスの種類:四フッ化メタン、ガスの圧力:3気圧
【0085】
最大移動時間TMAXは、例えば3μs以上であり、5μs以上であってもよく、7μs以上であってもよい。最大移動時間TMAXは、例えば30μs以下であり、20μs以下であってもよく、15μs以下であってもよい。
【0086】
最大移動時間TMAXは、電子検出器30及びドリフト電極40を含む装置を用いて測定されてもよい。
図22は、最大移動時間TMAXを測定するための装置の構成を示す図である。装置は、容器20と、容器20の内部に位置する電子検出器30及びドリフト電極40と、容器20の第1部21の外面上に位置する線源80と、を備える。電子検出器30及びドリフト電極40は、間隔Hを空けて第1方向D1において対向している。線源80は、放射線の発生源である。線源80は、例えば、公共社団法人日本アイソトープ協会の放射線標準ガンマ線源(核種:Ba-1133、コード番号;BA402)である。線源80からの放射線に起因して容器20の内部でコンプトン散乱が生じると、反跳電子が発生し、電子雲R3が形成される。
【0087】
図23は、
図22の装置の電子検出器30によって検出された電子の数を示すグラフである。
図23のグラフの横軸は、時間を表す。
図23のグラフの縦軸は、電子の数を表す。
図23のグラフの複数の点はそれぞれ、所定のサンプリング周波数で検出された電子の数を示す。サンプリング周波数は、例えば50MHz以下である。サンプリング周波数は、10MHz以上20MHz以下であってもよい。
【0088】
図23に示すように、グラフは、電子の数が多く、且つ数がほぼ一定である期間を含む。この期間が、最大移動時間TMAXに相当する。電子の数が多く、且つ数がほぼ一定である期間を特定することにより、最大移動時間TMAXが算出される。電子のドリフト速度Vは、H/TMAXによって算出される。
【0089】
次に、放射線検出器50のアナログ信号及び電子検出器30のアナログ信号をデジタル化してデータを生成するための回路について説明する。
図8は、回路の一例を示す図である。
【0090】
検出装置10は、第1読出回路150及び第2読出回路130を少なくとも備える。第1読出回路150及び第2読出回路130は、コンピュータ110と通信可能である。コンピュータ110は、第1読出回路150及び第2読出回路130から送信されたデジタルデータを受信し、デジタルデータを処理する。例えば、コンピュータ110は、後述する第1最終データ及び第2最終データに基づいて、放射線の容器20への入射方向を算出する。天体のように、放射線を放出する線源から検出装置10までの距離に比べて、検出装置10の寸法が無視できる場合は、1つの線源に対して1つの入射方向が特定される。この場合、放射線の入射方向と対応する線源の位置関係を画像化する。一方、SPECT/PETやBNCTのように、放射線を放出する線源から検出装置10までの距離に比べて、検出装置10の寸法が無視できない場合は、1つの線源に対して複数の散乱点が検出され、各散乱点から入射方向が特定される。この場合、各散乱点で特定される入射方向が収束する位置が、線源の位置として特定され、画像化される。このように、検出装置10及びコンピュータ110の組合せは、放射線の入射方向を算出する、又は放射線の線源の位置などを画像化する放射線特定装置として機能できる。コンピュータ110は、容器20内で発生した電子雲などを画像化してもよい。この場合、検出装置10及びコンピュータ110の組合せは、電子を画像化する電子画像化装置として機能できる。コンピュータ110は、汎用のパーソナルコンピュータであってもよく、検出装置10に適した計算処理モジュールであってもよい。
SPECTとは、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(Single Photon Emission CT)である。BNCTとは、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy)である。PETとは、ポジトロン断層法(Positron Emission Tomography)である。
【0091】
第1読出回路150は、放射線検出器50によって生成されたアナログ信号をデジタル化して第1データD10を生成する。第1データD10は、後述する第1バッファに格納される。第1読出回路150は、第1トリガー信号TS1の入力に応じて、第1最終データFD10をコンピュータ110へ送信する。第1最終データFD10は、第1バッファに格納されている第1データD10を含む。
【0092】
第2読出回路130は、電子検出器30によって生成されたアナログ信号をデジタル化して第2データD20を生成する。第2データD20は、後述する第2バッファに格納される。第2読出回路130は、第2トリガー信号TS2の入力に応じて、第2最終データFD20をコンピュータ110へ送信する。第2最終データFD20は、第2バッファに格納されている第2データD20を含む。
【0093】
図8に示すように、検出装置10は、第2読出回路130に接続された論理回路120を備えていてもよい。論理回路120は、例えば、第2読出回路130によって生成された第2データD20に基づいて、第1トリガー信号TS1を生成する。例えば、第2データD20の後述する第2ヒット信号の生成に応じて、第1トリガー信号TS1が生成される。論理回路120は、第2データD20に基づいて第2トリガー信号TS2を生成してもよい。例えば、第2ヒット信号の生成に応じて、第2トリガー信号TS2が生成される。論理回路120は、第1読出回路150及び第2読出回路130の両方に接続されていてもよい。この場合、論理回路120は、第1データD10及び第2データD20の両方に基づいて、第1トリガー信号TS1、第2トリガー信号TS2などのトリガー信号を生成してもよい。
【0094】
図9は、第2読出回路130及び論理回路120の一例を示す図である。第2読出回路130は、アノード読出回路131及びカソード読出回路132を含んでいてもよい。
【0095】
アノード読出回路131は、複数のアノード電極31によって生成されるアノードアナログ信号をそれぞれデジタル化する。アノード読出回路131によって生成されたデジタルデータを、第21データD21とも称する。第21データD21は、第2データD20の一部である。第21データD21は、第21ヒット信号H21を含んでいてもよい。「ヒット信号」とは、アナログ信号を2値化することによって生成される信号である。アナログ信号の強度が閾値を超えているとき、ヒット信号がHigh状態を示す。アナログ信号の強度が閾値以下であるとき、ヒット信号がLow状態を示す。第21ヒット信号H21は、アノードアナログ信号を2値化することによって生成される信号である。アノード読出回路131は、第21ヒット信号H21を論理回路120へ送信してもよい。
【0096】
図9に示すように、第2読出回路130は、複数のアノード読出回路131を含んでいていてもよい。アノード読出回路131の数は、電子検出器30のアノード電極31の数に応じて定められる。例えば、アノード電極31の数が256本であり、1つのアノード読出回路131が処理できるアナログ信号の数が128個である場合、第2読出回路130は、2つのアノード読出回路131を含む。
【0097】
アノード読出回路131は、第2トリガー信号TS2の入力に応じて、第21最終データFD21をコンピュータ110へ送信してもよい。第21最終データFD21は、第21データD21を含む。第21最終データFD21は、第2最終データFD20の一部である。
【0098】
カソード読出回路132は、複数のカソード電極32によって生成されるカソードアナログ信号をそれぞれデジタル化する。カソード読出回路132によって生成されたデジタルデータを、第22データD22とも称する。第22データD22は、第2データD20の一部である。第22データD22は、第22ヒット信号H22を含んでいてもよい。第22ヒット信号H22は、カソードアナログ信号を2値化することによって生成される信号である。カソード電極32は、第22ヒット信号H22を論理回路120へ送信してもよい。
【0099】
図9に示すように、第2読出回路130は、複数のカソード読出回路132を含んでいていてもよい。カソード読出回路132の数は、電子検出器30のカソード電極32の数に応じて定められる。例えば、カソード電極32の数が256本であり、1つのカソード読出回路132が処理できるアナログ信号の数が128個である場合、第2読出回路130は、2つのカソード読出回路132を含む。
【0100】
カソード読出回路132は、第2トリガー信号TS2の入力に応じて、第22最終データFD22をコンピュータ110へ送信してもよい。第22最終データFD22は、第22データD22を含む。第22最終データFD22は、第2最終データFD20の一部である。
【0101】
アノード読出回路131について詳細に説明する。
図10は、アノード読出回路131の構成の一例を示す図である。
【0102】
アノード読出回路131は、複数のアンプ1361を含んでいてもよい。各アンプ1361は、対応するアノードアナログ信号ASを増幅する。アノード読出回路131は、複数のコンパレータ1362を含んでいてもよい。各コンパレータ1362は、対応するアンプ1361によって増幅されたアノードアナログ信号ASを2値化して第21ヒット信号h21を生成してもよい。アノード読出回路131は、アンプ1363を含んでいてもよい。アンプ1363は、複数のアンプ1361によって増幅された複数のアノードアナログ信号ASを加算する。アンプ1363から出力されるアナログ信号の強度は、アノード電極31によって検出される電子の強度を表す。例えば、アンプ1363から出力されるアナログ信号の波形は、アノード電極31によって検出される電子の波形を表す。複数のアンプ1361、複数のコンパレータ1362及びアンプ1363は、第1集積回路136によって構成されていてもよい。第1集積回路136は、例えばASICである。
【0103】
アノード読出回路131は、ADコンバータ137を含んでいてもよい。ADコンバータ137は、アンプ1363から出力されるアナログ信号をデジタル化する。ADコンバータ137によってデジタル化されたデータを、第21強度データW21とも称する。第21強度データW21は、第21データD21の一部である。ADコンバータ137は、フラッシュ型のADコンバータであってもよい。この場合、アナログ信号が高速でデジタル化される。ADコンバータ137のサンプリングレートは、例えば1MHz以上であり、5MHz以上であってもよく、10MHz以上であってもよい。ADコンバータ137のサンプリングレートは、例えば50MHz以下であり、30MHz以下であってもよく、20MHz以下であってもよい。サンプリングレートを低く設定することにより、ADコンバータ137で生成されるデータの量を低減できる。これにより、コンピュータ110の負荷を低減できる。
【0104】
アノード読出回路131は、第21バッファ1381及び第22バッファ1382を含んでいてもよい。第21バッファ1381、第22バッファ1382などの、第2読出回路130に含まれるバッファのことを、第2バッファとも称する。
【0105】
第21バッファ1381及び第22バッファ1382は、例えばリングバッファである。第21バッファ1381及び第22バッファ1382は、第2格納期間の間、第21データD21を自身に格納する。第21バッファ1381は、第21ヒット信号h21を一時的に保持してもよい。第21バッファ1381は、複数の第21ヒット信号h21をOR回路によって処理することによって得られる第21ヒット信号H21を一時的に保持してもよい。第21ヒット信号H21は、アノード読出回路131に入力される複数のアノードアナログ信号の少なくとも1つがHigh状態である場合、High状態を示す。第22バッファ1382は、第21強度データW21を一時的に保持してもよい。第2格納期間は、上述の最大移動時間TMAX以下であってもよい。
【0106】
アノード読出回路131は、第21ヒット信号H21を論理回路120へ出力してもよい。アノード読出回路131は、第21バッファ1381に格納される前の第21ヒット信号H21を論理回路120へ出力してもよい。
【0107】
アノード読出回路131に第2トリガー信号TS2が入力されると、その時に第21バッファ1381及び第22バッファ1382に格納されている第21データD21が、第21バッファ1381及び第22バッファ1382から出力される。アノード読出回路131は、出力された第21データD21を処理する第2データ処理部1383を含んでいてもよい。第2データ処理部1383は、コンピュータ110へ送信される第21最終データFD21を生成する。
【0108】
第21最終データは、第21データD21の情報を少なくとも部分的に含む。例えば、第21最終データFD21は、第21ヒット信号H21の情報を含んでいてもよい。例えば、第21最終データD21は、第21強度データW21を含んでいてもよい。第21最終データFD21に含まれる第21データD21の情報の形式は、第21データD21の形式と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0109】
第21最終データFD21は、第21データD21が第21バッファ1381及び第22バッファ1382に格納された時刻に関する情報を含んでいてもよい。第21最終データFD21は、電子を検出したアノード電極31の位置に関する情報を含んでいてもよい。言い換えると、第21最終データFD21は、電子検出器30上における電子の到達位置に関する情報を含んでいてもよい。
【0110】
第21バッファ1381、第22バッファ1382、及び第2データ処理部1383は、第2集積回路138によって構成されていてもよい。第2集積回路138は、例えばFPGAである。
【0111】
アノード読出回路131は、データ収集信号DA21を論理回路120へ出力してもよい。データ収集信号DA21は、第21バッファ1381及び第22バッファ1382の書き込みが行われている場合にHigh状態になる信号である。
【0112】
カソード読出回路132の構成は、アノード読出回路131の構成と同一であってもよい。
【0113】
次に、
図9を再び参照して、論理回路120について説明する。
【0114】
第2読出回路130が複数のアノード読出回路131を含む場合、
図9に示すように、論理回路120は、OR回路121を含んでいてもよい。各アノード読出回路131からの第21ヒット信号H21が、OR回路121に入力される。OR回路121は、複数の第21ヒット信号H21を処理して第23ヒット信号H23を出力する。第23ヒット信号H23は、複数の第21ヒット信号H21の少なくとも1つがHigh状態である場合、High状態を示す。すなわち、第23ヒット信号H23は、複数のアノード電極31によって生成される複数のアノードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第23ヒット信号H23は、複数の第21ヒット信号H21の全てがLow状態である場合、Low状態を示す。すなわち、第23ヒット信号H23は、複数のアノード電極31によって生成される複数のアノードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。このような第23ヒット信号H23のことを、アノードヒット信号とも称する。
【0115】
第2読出回路130が複数のカソード読出回路132を含む場合、
図9に示すように、論理回路120は、OR回路122を含んでいてもよい。各カソード読出回路132からの第22ヒット信号H22が、OR回路121に入力される。第22ヒット信号H22は、第21ヒット信号H21と同様に、カソード読出回路132に入力される複数のカソードアナログ信号の少なくとも1つがHigh状態である場合、High状態を示す。OR回路122は、複数の第22ヒット信号H22を処理して第24ヒット信号H24を出力する。第24ヒット信号H24は、複数の第22ヒット信号H22の少なくとも1つがHigh状態である場合、High状態を示す。すなわち、第24ヒット信号H24は、複数のカソード電極32によって生成される複数のカソードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第24ヒット信号H24は、複数の第22ヒット信号H22の全てがLow状態である場合、Low状態を示す。すなわち、第24ヒット信号H24は、複数のカソード電極32によって生成される複数のカソードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。このような第24ヒット信号H24のことを、カソードヒット信号とも称する。
【0116】
第2読出回路130がアノード読出回路131及びカソード読出回路132を含む場合、
図9に示すように、論理回路120は、AND回路123を含んでいてもよい。第23ヒット信号H23及び第24ヒット信号H24が、AND回路123に入力される。AND回路123は、第23ヒット信号H23及び第24ヒット信号H24を処理して第2ヒット信号H20を生成する。第2ヒット信号H20は、電子検出器30からの複数のアノードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えており、且つ、電子検出器30からの複数のカソードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第2ヒット信号H20は、複数のアノードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、又は、複数のカソードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。
【0117】
図9に示すように、論理回路120は、第2ヒット信号H20が入力される処理回路124を含んでいてもよい。処理回路124は、第2ヒット信号H20が入力されると、第1トリガー信号TS1を生成する。処理回路124は、第2ヒット信号H20が入力されると即時に第1トリガー信号TS1を生成してもよい。若しくは、処理回路124は、第2ヒット信号H20が入力されてから第1遅延時間DT1が経過した後、第1トリガー信号TS1を生成してもよい。第1遅延時間DT1は、上述の最大移動時間TMAX以下であってもよい。
【0118】
処理回路124は、第2ヒット信号H20が入力されてから第2遅延時間DT2が経過した後、第2トリガー信号TS2を生成してもよい。第2遅延時間DT2は、上述の最大移動時間TMAX以下であってもよい。これにより、電子検出器30から遠い位置で生じた電子が電子検出器30に到達する前に第2トリガー信号TS2が生成されることを抑制できる。
【0119】
次に、第1読出回路150について詳細に説明する。
図11は、第1読出回路150の構成の一例を示す図である。第1読出回路150には、放射線検出器50の複数の検出素子51によって生成された複数のアナログ信号ESが入力される。第1読出回路150は、複数のアナログ信号ESをデジタル化して第1データD10を生成する。
【0120】
第1読出回路150は、アノード読出回路131と同様に、複数のアナログ信号ESを増幅する複数のアンプを含んでいてもよい。第1読出回路150は、アノード読出回路131と同様に、複数のアナログ信号ESを2値化して複数のヒット信号を生成する複数のコンパレータを含んでいてもよい。第1読出回路150は、複数のヒット信号をOR回路で処理して第1ヒット信号H10を生成してもよい。第1読出回路150は、第1ヒット信号H10を論理回路120へ出力してもよい。第1ヒット信号H10は、第1データD10の一部である。第1ヒット信号H10は、複数の検出素子51によって生成される複数のアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第1ヒット信号H10は、複数の検出素子51によって生成される複数のアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。
【0121】
第1読出回路150は、アノード読出回路131と同様に、ADコンバータを含んでいてもよい。ADコンバータは、複数のアナログ信号ESが加算されたアナログ信号をデジタル化してもよい。ADコンバータによってデジタル化されたデータを、第1強度データとも称する。
【0122】
第1読出回路150は、第1バッファ1561を含んでいてもよい。第1バッファ1561は、例えばリングバッファである。第1バッファ1561は、第1格納期間の間、第1データD10を自身に格納する。第1格納期間は、上述の最大移動時間TMAX以下であってもよい。第2ヒット信号H20が入力されてから第1遅延時間DT1が経過した後、第1トリガー信号TS1が生成される場合、第1格納期間は、最大移動時間TMAXよりも長くてもよい。第1格納期間は、第1遅延時間DT1と最大移動時間TMAXの和よりも短くてもよい。
【0123】
第1読出回路150に第1トリガー信号TS1が入力されると、その時に第1バッファ1561に格納されている第1データD10が、第1バッファ1561から出力される。第1読出回路150は、出力された第1データD10を処理する第1データ処理部1562を含んでいてもよい。第1データ処理部1562は、コンピュータ110へ送信される第1最終データFD1を生成する。
【0124】
第1最終データFD1は、第1データD10の情報を少なくとも部分的に含む。例えば、第1最終データFD10は、第1ヒット信号H10の情報を含んでいてもよい。例えば、第1最終データD10は、第1強度データを含んでいてもよい。第1最終データFD10に含まれる第1データD10の情報の形式は、第1データD10の形式と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0125】
第1最終データFD10は、第1データD10が第1バッファ1561に格納された時刻に関する情報を含んでいてもよい。第1最終データFD10は、放射線を検出した検出素子51の位置に関する情報を含んでいてもよい。言い換えると、第1最終データFD10は、放射線検出器50上における放射線の到達位置に関する情報を含んでいてもよい。
【0126】
第1バッファ1561、第1データ処理部1562などは、集積回路156によって構成されていてもよい。集積回路156は、例えばFPGAである。
【0127】
第1読出回路150は、データ収集信号DA10を論理回路120へ出力してもよい。データ収集信号DA10は第1バッファ1561の書き込みが行われている場合にHigh状態になる信号である。
【0128】
次に、
図9を再び参照して、論理回路120について説明する。
図9に示すように、VETO信号VSが処理回路124に入力されてもよい。VETO信号VSは、アノード読出回路131、カソード読出回路132又は第1読出回路150においてバッファの書き込みが行われている場合にHigh状態になる信号である。処理回路124は、VETO信号VSが入力されると、トリガー信号TS1,TS2の出力を停止してもよい。すなわち、処理回路124は、VETO信号VSがHigh状態になると、トリガー信号TS1,TS2をLow状態にしてもよい。これにより、バッファの書き込みが行われている間にアノード読出回路131、カソード読出回路132及び第1読出回路150にトリガー信号が入力されることを抑制できる。
【0129】
次に、検出装置10の動作の一例を説明する。
図12は、検出装置10における信号処理の一例を示す図である。
【0130】
容器20の内部で放射線のコンプトン散乱が生じると、反跳電子及び電子雲R3が生成される。散乱された放射線R2が放射線検出器50によって検出されると、第1読出回路150が第1データD10を生成する。
図12は、第1データD10の第1ヒット信号H10を示している。第1データD10は、第1格納期間BT1の間、第1バッファに格納される。
【0131】
放射線R2が放射線検出器50によって検出された後、電子雲R3の電子が電子検出器30に到達する。電子がアノード電極31及びカソード電極32によって検出されると、第21データD21及び第22データD22が生成される。
図12は、第21データD21のアノードヒット信号及び第22データD22のカソードヒット信号を示している。第21データD21及び第22データD22は、第2格納期間BT2の間、第2バッファに格納される。
【0132】
アノードヒット信号及びカソードヒット信号の両方がHigh状態になると、第2ヒット信号が生成される。第2ヒット信号が生成されると、第1トリガー信号TS1が生成される。第1トリガー信号TS1が第1読出回路150に入力されると、第1読出回路150は、第1データD10を含む第1最終データFD10をコンピュータ110へ送信する。
【0133】
図12に示すように、第2ヒット信号が生成されてから第2遅延時間DT2が経過した後、第2トリガー信号TS2が生成される。第2トリガー信号TS2が第2読出回路130に入力されると、第2読出回路130は、第2データD20を含む第2最終データFD20をコンピュータ110へ送信する。第2最終データFD20は、第21データD21を含む第2最終データFD21と、第22データD22を含む第22最終データFD22と、を含む。
【0134】
図12において左から1番目及び5番目の第1データD10に関しては、第1データD10が第1バッファに格納されている間に第1トリガー信号TS1が生成される。このため、左から1番目及び5番目の第1データD10は、コンピュータ110へ送信される。
図13は、コンピュータ110へ送信される第1最終データFD10及び第2最終データFD20の一例を示す図である。
【0135】
一方、
図12において左から2番目~4番目の第1データD10に関しては、第1データD10が第1バッファに格納されている間に第1トリガー信号TS1が生成されない。このような状況は、容器20の内部で散乱されていない放射線が放射線検出器50に到達する場合に生じ得る。このような状況は、容器20を通過していない放射線が放射線検出器50に到達する場合にも生じ得る。左から2番目~4番目の第1データD10は、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。
【0136】
図14は、信号処理のその他の例を示す図である。
図14に示す例において、左から1番目の第1データD10は、第21データD21の発生は伴うが、第22データD22の発生は伴わない。このため、第1データD10が第1バッファに格納されている間に第1トリガー信号TS1が生成されない。このような状況は、電子雲R3の電子のエネルギーが低い場合に生じ得る。電子のエネルギーが低い場合、反跳電子の飛跡などを正確に算出することは困難である。従って、電子のエネルギーが低い場合の第1データD10及び第2データD20の有用性は低い。左から1番目の第1データD10は、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。
【0137】
コンピュータ110は、第1最終データFD10及び第2最終データFD20に基づいて、放射線及び電子に関する情報を算出する。例えば、コンピュータ110は、放射線R2の到達位置、放射線R2のエネルギー、反跳電子の飛跡、反跳電子のエネルギー、散乱点Pの位置などを算出してもよい。コンピュータ110は、これらの情報に基づいて、容器20に入射した放射線の入射方向を算出してもよい。コンピュータ110は、容器20に入射した放射線の線源の位置を画像化してもよい。
【0138】
本実施の形態によれば、容器20の内部における電子の適切な発生を伴わない放射線に関する第1データD10が、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。このため、コンピュータ110へ送信される第1データD10の量を低減できる。これにより、コンピュータ110の負荷を低減できる。例えば、第1データD10の計算処理、画像処理などに要する負荷が低減される。例えば、第1データD10の通信に要する負荷が低減される。これにより、コンピュータ110は、有用性の高いデータを優先的に処理できる。このため、例えば、従来のコンピュータ110に比べて、容器20に入射した放射線の入射方向をより速く算出できる。これにより、例えば、検出装置10が、患者の体内の放射線薬剤から放射される放射線を検出する場合、患者の被爆の程度を低減できる。
【0139】
上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述の実施の形態と同様に構成され得る部分について、第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述の実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0140】
(第1変形例)
図15は、第1の変形例における信号処理の一例を示す図である。
図15に示すように、第1トリガー信号TS1及び第2トリガー信号TS2は、第2ヒット信号に応じて同時に生成されてもよい。例えば、上述の第1遅延時間DT1が、上述の第2遅延時間DT2と同一であってもよい。
【0141】
図15に示す例においても、第1データD10が第1バッファに格納されている間に第1トリガー信号TS1が生成されると、第1最終データFD10がコンピュータ110へ送信される。
【0142】
(第2変形例)
図16は、第2の変形例における第2読出回路130及び論理回路120を示す図である。
図16に示すように、アノードヒット信号H23及びカソードヒット信号H24は、OR回路125に入力されてもよい。OR回路125は、第23ヒット信号H23及び第24ヒット信号H24を処理して第2ヒット信号H20を生成する。第2ヒット信号H20は、電子検出器30からの複数のアノードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているか、又は、電子検出器30からの複数のカソードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第2ヒット信号H20は、複数のアノードアナログ信号の全てが閾値以下であり、且つ、複数のカソードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。処理回路124は、第2ヒット信号H20が入力されると、第1トリガー信号TS1を生成する。
【0143】
図17は、第2の変形例における信号処理の一例を示す図である。電子がアノード電極31又はカソード電極32によって検出されると、第20データD20が生成される。
図17は、第20データD20の第2ヒット信号を示している。
【0144】
第2ヒット信号が生成されると、第1トリガー信号TS1が生成される。第1トリガー信号TS1が第1読出回路150に入力されると、第1読出回路150は、第1データD10を含む第1最終データFD10をコンピュータ110へ送信する。
【0145】
第2ヒット信号が生成されてから第2遅延時間DT2が経過した後、第2トリガー信号TS2が生成される。第2トリガー信号TS2が第2読出回路130に入力されると、第2読出回路130は、第2データD20を含む第2最終データFD20をコンピュータ110へ送信する。
【0146】
本変形例においても、容器20の内部における電子の発生を伴わない放射線に関する第1データD10が、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。このため、コンピュータ110へ送信される第1データD10の量を低減できる。これにより、コンピュータ110の負荷を低減できる。例えば、第1データD10の計算処理、画像処理などに要する負荷が低減される。
【0147】
(第3変形例)
図18は、第3の変形例における電子検出器30を示す斜視図である。
図18に示すように、電子検出器30は、第2方向D2及び第3方向D3に並ぶ複数のアノード電極31を含む。電子検出器30は、複数のアノード電極31に対向する1つのカソード電極を含んでいてもよい。
【0148】
図19は、第3の変形例における第2読出回路130及び論理回路120の一例を示す図である。第2読出回路130は、アノード読出回路131を含むが、カソード読出回路を含まない。この場合、OR回路121が第2ヒット信号H20を生成してもよい。第2ヒット信号H20は、電子検出器30からの複数のアノードアナログ信号の少なくとも1つが閾値を超えているとき、High状態を示す。第2ヒット信号H20は、複数のアノードアナログ信号の全てが閾値以下であるとき、Low状態を示す。
【0149】
第3の変形例における信号処理の一例は、
図17に示す第2の変形例における信号処理の一例と同一である。本変形例においても、容器20の内部における電子の発生を伴わない放射線に関する第1データD10が、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。このため、コンピュータ110へ送信される第1データD10の量を低減できる。これにより、コンピュータ110の負荷を低減できる。例えば、第1データD10の計算処理、画像処理などに要する負荷が低減される。
【0150】
(第4変形例)
本変形例においては、第1ヒット信号及び第2ヒット信号の両方に基づいて第1トリガー信号TS1及び第2トリガー信号TS2が生成される。
図20は、第4の変形例における第1読出回路150、第2読出回路130及び論理回路120を示す図である。
【0151】
図20に示すように、検出装置10は、複数の第1読出回路150を備えていてもよい。第1読出回路150の数は、放射線検出器50の検出素子51の数に応じて定められる。例えば、検出素子51の数が64個であり、1つの第1読出回路150が処理できるアナログ信号の数が32個である場合、検出装置10は、2つの第1読出回路150を含む。
【0152】
第1読出回路150は、第1トリガー信号TS1の入力に応じて、第11最終データFD11をコンピュータ110へ送信してもよい。第11最終データFD11は、第1最終データFD10の一部である。第11最終データFD11は、第11ヒット信号H11を含んでいてもよい。第11ヒット信号H11は、第1読出回路150に入力される複数のアナログ信号の少なくとも1つがHigh状態である場合、High状態を示す。
【0153】
図20に示すように、複数の第11ヒット信号H11は、OR回路126に入力されてもよい。OR回路126は、第1ヒット信号H10を出力する。
【0154】
論理回路120は、第1ヒット信号H10が入力される処理回路127を含んでいてもよい。処理回路127は、維持信号H12を出力する。維持信号H12は、第1ヒット信号H10が生成されてから第1維持期間の間、High状態を示す。第1維持期間は、電子検出器30から遠い位置で生じた電子が電子検出器30に到達することを待つための期間である。第1維持期間は、上述の最大移動時間TMAX以下であってもよい。
【0155】
論理回路120は、第23ヒット信号H23、第24ヒット信号H24及び維持信号H12が入力される処理回路128を含んでいてもよい。処理回路128は、第23ヒット信号H23及び第24ヒット信号H24に基づいて、第2ヒット信号を生成する。例えば、処理回路128は、上述のAND回路123と同様に、アノードヒット信号H23及びカソードヒット信号H24の両方がHigh状態である場合に、第2ヒット信号を生成してもよい。若しくは、処理回路128は、上述の第2の変形例のOR回路125と同様に、アノードヒット信号H23又はカソードヒット信号H24のいずれか一方がHigh状態である場合に、第2ヒット信号を生成してもよい。処理回路128は、第2ヒット信号が生成されたときに維持信号H12がHigh状態である場合、ヒット信号Hを生成する。
【0156】
処理回路127及び処理回路128の組合せによれば、第1ヒット信号H10が生成されてから第1維持期間以内に第2ヒット信号が生成された場合に、ヒット信号Hを生成できる。ヒット信号Hは、処理回路124に入力される。
【0157】
処理回路124は、ヒット信号Hが入力されると、第1トリガー信号TS1を生成する。処理回路124は、ヒット信号Hが入力されると即時に第1トリガー信号TS1を生成してもよい。若しくは、処理回路124は、ヒット信号Hが入力されてから第1遅延時間DT1が経過した後、第1トリガー信号TS1を生成してもよい。処理回路124は、ヒット信号Hが入力されてから第2遅延時間DT2が経過した後、第2トリガー信号TS2を生成してもよい。
【0158】
図21は、第4の変形例における信号処理の一例を示す図である。散乱された放射線R2が放射線検出器50によって検出されると、第1読出回路150が第1データD10を生成する。
図21は、第1データD10の第1ヒット信号H10を示している。第1ヒット信号H10が生成されてから第1維持期間KT1の間、維持信号H12がHigh状態を示す。
【0159】
第1維持期間KT1の間に第2ヒット信号が生成されると、第1トリガー信号TS1及び第2トリガー信号TS2が生成される。
図21に示す例においては、左から4番目の第1データD10に関しては、第1維持期間KT1の間に第21データD21及び第22データD22が生成されて第2ヒット信号が生成される。このため、左から4番目の第1データD10は、コンピュータ110へ送信される。また、左から4番目の第1データD10に伴って発生する、左から2番目の第21データD21及び第22データD22も、コンピュータ110へ送信される。
【0160】
一方、左から1番目の第21データD21及び第22データD22に関しては、対応する第1データD10が生成されていない。このため、第2トリガー信号TS2が生成されない。このような状況は、コンプトン散乱に起因しない電子が電子検出器30によって検出される場合に生じ得る。左から1番目の第21データD21及び第22データD22は、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。
【0161】
本変形例によれば、コンプトン散乱に起因しない電子に関する第21データD21、第22データD22などの第2データD20が、コンピュータ110へ送信されることなく消去される。このため、コンピュータ110へ送信される第2データD20の量を低減できる。これにより、コンピュータ110の負荷を低減できる。例えば、第2データD20の計算処理、画像処理などに要する負荷が低減される。例えば、第2データD20の通信に要する負荷が低減される。これにより、コンピュータ110は、有用性の高いデータを優先的に処理できる。このため、例えば、従来のコンピュータ110に比べて、容器20に入射した放射線の入射方向をより速く算出できる。これにより、例えば、検出装置10が、患者の体内の放射線薬剤から放射される放射線を検出する場合、患者の被爆の程度を低減できる。
【0162】
(第5変形例)
上述の実施の形態においては、
図7に示されるように、放射線検出器50のアナログ信号が、時刻t0に生成されると仮定した場合の計算方法を説明した。本変形例においては、
図24に示すように、時刻t0から時間ΔT3の後、放射線検出器50のアナログ信号が生成される例を説明する。時間ΔT3は、第1ヒット信号H10が立ち上がる時刻と、時刻t0との差であってもよい。第1ヒット信号H10は、放射線検出器50のアナログ信号をデジタル化することによって得られる。時間ΔT3は、検出遅延時間とも称される。
【0163】
図24のΔT4は、放射線検出器50によって放射線が検出されてから、電子検出器30によって電子が検出されるまでの時間を表す。時間ΔT4は、第1ヒット信号H10が立ち上がる時刻と、第2ヒット信号H20が立ち上がる時刻との差であってもよい。
【0164】
時間ΔT2は、時間ΔT4に時間ΔT3を加えることによって算出される。時間ΔT2は、電子e2が電子雲R3の終点から電子検出器30まで移動することに要する時間に相当する。時間ΔT1も、時間ΔT3を考慮して算出される。時間ΔT1は、電子e1が電子雲R3の始点から電子検出器30まで移動することに要する時間に相当する。コンピュータ110は、時間ΔT2及び時間ΔT1を考慮して、電子雲の位置を特定してもよい。例えば、コンピュータ110は、時間ΔT2及び時間ΔT1を考慮して、第1方向D1における電子e1及び電子e2の座標を特定してもよい。例えば、コンピュータ110は、時間ΔT2及び時間ΔT1を考慮して、電子雲を画像化してもよい。
【0165】
時間ΔT3は、放射線検出器50に依存して生じる。例えば、半導体検出素子を含む放射線検出器50における時間ΔT3は、シンチレータを含む放射線検出器50における時間ΔT3に比べて、大きくなり得る。
【0166】
コンピュータ110は、時間ΔT3に関する情報を、放射線検出器50から取得してもよい。例えば、放射線検出器50は、時間ΔT3を含む情報がデジタル化された信号をコンピュータ110に送信してもよい。コンピュータ110は、時間ΔT3に関する情報を、放射線検出器50のアナログ信号に基づいて算出してもよい。
【0167】
放射線検出器50が半導体検出素子を含む場合、時間ΔT3とアナログ信号の強度との間に何らかの関係性が存在し得る。半導体検出素子は、カソード電極及びアノード電極を含む。放射線R2がカソード電極を透過した後、カソード電極とアノード電極の間の位置で電子が発生する。放射線R2のエネルギーが小さい場合、アノード電極から遠い位置で電子が発生する。この場合、アノード電極に到達するまでの電子の移動距離が長いので、時間ΔT3が大きくなる。また、放射線R2のエネルギーが小さいので、アナログ信号の強度も小さくなる。一方、放射線R2のエネルギーが大きい場合、アノード電極から近い位置で電子が発生する。この場合、アノード電極に到達するまでの電子の移動距離が短いので、時間ΔT3が小さくなる。また、放射線R2のエネルギーが大きいので、アナログ信号の強度も大きくなる。時間ΔT3は、アナログ信号の強度に基づいて算出され得る。
【0168】
(第6変形例)
上述の実施の形態においては、電子検出器30からの信号を起点として第1トリガー信号TS1が生成される例を示した。例えば
図12、14、17、21においては、第2ヒット信号が生成されたときに第1トリガー信号TS1が生成される例を示した。例えば
図15においては、第2ヒット信号が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後に第1トリガー信号TS1が生成される例を示した。本変形例においては、放射線検出器40からの信号を起点として第1トリガー信号TS1が生成される例を説明する。
【0169】
図25は、第6の変形例における信号処理を示す図である。第1トリガー信号TS1は、第1データの第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後に、生成されてもよい。
【0170】
第1遅延時間DT1は、上述の最大移動時間TMAXと同一であってもよい。第1遅延時間DT1は、上述の最大移動時間TMAXと略同一であってもよい。「略同一」は、第1遅延時間DT1が、最大移動時間TMAXの0.90倍以上1.00倍以下であることを意味する。第1遅延時間DT1は、最大移動時間TMAXの0.45倍以上1.00倍以下であってもよい。
【0171】
第1トリガー信号TS1は、第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後であって、第1遅延時間DT1の間に第2ヒットH20が生成されていることが確認された場合にのみ、生成されてもよい。言い換えると、第1遅延時間DT1の間に第2ヒットH20が生成されていない場合は、第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後に、第1トリガー信号TS1が生成されなくてもよい。
【0172】
図25に示すように、第2トリガー信号TS2も、第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後に、生成されてもよい。第2トリガー信号TS2は、第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後であって、第1遅延時間DT1の間に第2ヒットH20が生成されていることが確認された場合にのみ、生成されてもよい。言い換えると、第1遅延時間DT1の間に第2ヒットH20が生成されていない場合は、第1ヒット信号H10が生成されてから第1遅延時間DT1が経過した後に、第2トリガー信号TS2が生成されなくてもよい。
【0173】
図26は、時間ΔT2の算出方法の一例を示す図である。第1トリガー信号TS1が生成された後、時間ΔT5が算出される。時間ΔT5は、第2ヒットH20が立ち上がる時刻と、第1トリガー信号TSが立ち上がる時刻との差である。時間ΔT2は、時間ΔT3と第1遅延時間DT1の和から時間ΔT5を引くことによって算出される。
【0174】
(補足)
上述の実施の形態及び各変形例のように、「ヒット信号を生成する」とは、「ヒット信号をHigh状態にする」ことを意味していてもよい。同様に、「トリガー信号を生成する」とは、「トリガー信号をHigh状態にする」ことを意味していてもよい。なお、検出装置10の回路が、Low状態の信号を入力されることによって何らかの動作を行う場合、「ヒット信号を生成する信号を生成する」とは、「ヒット信号をLow状態にする」ことを意味していてもよい。同様に、「トリガー信号を生成する信号を生成する」とは、「トリガー信号をLow状態にする」ことを意味していてもよい。
【0175】
上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて上述した実施の形態に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0176】
5 対象物
10 検出装置
20 容器
30 電子検出器
31 アノード電極
32 カソード電極
35 基材
40 ドリフト電極
45 ドリフトケージ
50 放射線検出器
51 検出素子
52 回路基板
60 電子増幅器
70 補助ドリフト電極
110 コンピュータ
120 論理回路
130 第2読出回路
131 アノード読出回路
132 カソード読出回路
136 第1集積回路
137 ADコンバータ
138 第2集積回路
1381 第21バッファ
1382 第22バッファ
1383 第2データ処理部
150 第1読出回路
156 集積回路
1561 第1バッファ
1562 第1データ処理部
【手続補正書】
【提出日】2024-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出装置であって、
ガスが収容されている容器と、
前記容器の内部に位置し、コンプトン散乱によって発生した電子を検出してアナログ信号を生成する電子検出器と、
前記電子検出器に対向するドリフト電極と、
前記コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出してアナログ信号を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第1データを生成し、前記第1データを第1バッファに格納する第1読出回路と、
前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第2データを生成する第2読出回路と、を備え、
前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号を起点として第1トリガー信号を生成し、
前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成し、
前記第1トリガー信号は、前記第1ヒット信号が生成されてから第1遅延時間が経過した後に生成され、
前記第1読出回路は、前記第1バッファに格納されている前記第1データを含む第1最終データを、前記第1トリガー信号に応じて外部のコンピュータへ送信し、
前記第2読出回路は、前記電子検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第2ヒット信号を生成し、
前記第1トリガー信号は、前記第1遅延時間の間に前記第2ヒット信号が生成されている場合に、生成される、検出装置。
【請求項2】
放射線を検出する検出装置であって、
ガスが収容されている容器と、
前記容器の内部に位置し、コンプトン散乱によって発生した電子を検出してアナログ信号を生成する電子検出器と、
前記電子検出器に対向するドリフト電極と、
前記コンプトン散乱によって散乱された放射線を検出してアナログ信号を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第1データを生成し、前記第1データを第1バッファに格納する第1読出回路と、
前記電子検出器によって生成された前記アナログ信号をデジタル化して第2データを生成する第2読出回路と、を備え、
前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号を起点として第1トリガー信号を生成し、
前記第1読出回路は、前記第1バッファに格納されている前記第1データを含む第1最終データを、前記第1トリガー信号に応じて外部のコンピュータへ送信し、
前記放射線検出器は、検出遅延時間(ΔT3)を有し、
前記検出遅延時間(ΔT3)に基づいて、コンプトン散乱によって発生した電子が前記電子検出器まで移動することに要する時間(ΔT2)が算出される、検出装置。
【請求項3】
前記放射線検出器によって放射線が検出されてから前記電子検出器によって電子が検出されるまでの時間(ΔT4)に、前記検出遅延時間(ΔT3)を加えることによって、コンプトン散乱によって発生した電子が前記電子検出器まで移動することに要する時間(ΔT2)が算出される、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成し、
前記第2読出回路は、前記電子検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第2ヒット信号を生成し、
前記放射線検出器によって放射線が検出されてから前記電子検出器によって電子が検出されるまでの前記時間(ΔT4)は、前記第1ヒット信号が立ち上がる時刻と、前記第2ヒット信号が立ち上がる時刻との差である、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第1読出回路は、前記放射線検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第1ヒット信号を生成し、
前記第1トリガー信号は、前記第1ヒット信号が生成されてから第1遅延時間が経過した後に生成され、
前記第2読出回路は、前記電子検出器の前記アナログ信号の強度が閾値を超えたときに第2ヒット信号を生成し、
前記検出遅延時間(ΔT3)と前記第1遅延時間の和から時間(ΔT5)を引くことによって、コンプトン散乱によって発生した電子が前記電子検出器まで移動することに要する時間(ΔT2)が算出され、
前記時間(ΔT5)は、前記第2ヒット信号が立ち上がる時刻と、前記第1トリガー信号が立ち上がる時刻との差である、請求項2に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1遅延時間は、最大移動時間の0.45倍以上1.00倍以下であり、
前記最大移動時間は、電子が前記ドリフト電極から前記電子検出器まで移動することに要する時間である、請求項1又は5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1読出回路は、前記放射線検出器における検出遅延時間に関する情報を前記コンピュータへ送信し、
前記時間(ΔT2)に関する情報が前記コンピュータへ送信される、請求項2~5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出遅延時間は、前記放射線検出器によって生成された前記アナログ信号の強度に基づいて算出される、請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の検出装置と、
前記検出装置が送信した前記第1最終データ、第2最終データ、前記検出遅延時間及び前記時間(ΔT2)に関する情報を受信するコンピュータと、を備え、
前記第2最終データは、第2バッファに格納されている前記第2データを含み、
前記第2読出回路は、前記第2最終データを、第2トリガー信号に応じて前記コンピュータへ送信し、
前記コンピュータは、前記第1最終データ、前記第2最終データ、前記検出遅延時間及び前記時間(ΔT2)に関する情報に基づいて、コンプトン散乱によって発生した電子の座標を特定する、放射線特定装置。