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特開2024-161600ボンディングワイヤーとワイヤーボンディング装置上のボンディング位置との間のボンディングを検出する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161600
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ボンディングワイヤーとワイヤーボンディング装置上のボンディング位置との間のボンディングを検出する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
H01L21/60 321Y
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024146057
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2021571646の分割
【原出願日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】62/857,027
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506395943
【氏名又は名称】クリック アンド ソッファ インダストリーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジロッティ、ゲイリー、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハースコウィッツ、レイチェリ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワイヤーのボンディング部の状態を検出するための改良方法を提供する。
【解決手段】ボンディング状態を決定する方法は、ワイヤーボンディング装置のボンディングツールによって被加工物のボンディング位置にワイヤーの一部分をボンディングする工程402と、ボンディングツールの運動プロファイルを決定する工程404a~404cと、ワイヤーの一部分がボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために、運動プロファイルに沿ってボンディングツールを移動する工程406と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーと被加工物の少なくとも1つのボンディング位置との間のボンディング状態を決定する方法であって、
(a)ワイヤーボンディング装置のボンディングツールによって被加工物のボンディング位置にワイヤーの一部分をボンディングする工程と、
(b)前記工程(a)の間に、(i)前記ワイヤーの一部分のボンディングに関連する変形特性、(ii)前記ワイヤーの一部分のボンディングに関連する接合力特性、および(iii)前記ワイヤーボンディング装置のトランスデューサにおけるトランスデューサ特性のうちの少なくとも2つを検出する工程と、
(c)前記工程(b)で検出された情報を使用して、前記工程(a)において前記ボンディング位置にボンディングされた前記ワイヤーの一部分のボンディング状態を決定する工程と
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記被加工物はメモリーベースの半導体装置である、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法おいて、前記ワイヤーは、前記メモリーベースの半導体装置の電力リードまたは接地リードの少なくとも1つとして構成されているものである、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記ワイヤーの複数の部分は前記被加工物の対応する複数のボンディング位置にボンディングされるものであり、前記ワイヤーの複数の部分の各部分が前記被加工物の対応するボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために、前記工程(b)および(c)が前記ワイヤーの複数の部分の各部分に対して反復されるものである、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために前記工程(c)において使用される情報は、前記変形特性と、前記接合力特性とを含むものである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために前記工程(c)において使用される情報は、前記変形特性と、前記トランスデューサ特性とを含むものである、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために前記工程(c)において使用される情報は、前記トランスデューサ特性と、前記接合力特性とを含むものである、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために前記工程(c)において使用される情報は、前記変形特性と、前記接合力特性と、前記トランスデューサ特性とを含むものである、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記変形特性は、前記工程(b)の間にz軸検出器によって測定された前記ワイヤーの一部分の高さ方向の変形に関連するものである、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記接合力特性は、(i)前記ワイヤーボンディング装置のボンドヘッド内の力センサー、および(ii)前記ワイヤーボンディング装置のz軸モータのz軸モータ特性のうちの少なくとも1つによって測定される接合力に関連するものである、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記トランスデューサ特性は、(i)前記トランスデューサのインピーダンス、および(ii)前記トランスデューサの電気特性のうちの少なくとも1つに関連するものである、方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、前記変形特性は、前記工程(b)の間に取得された単一値に関連するものである、方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、前記接合力特性は、前記工程(b)の間に取得された単一値に関連するものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、前記トランスデューサ特性は、前記工程(b)の間に取得された単一値に関連するものである、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記変形特性は、前記工程(b)の間に取得された一連の値に関連するものである、方法。
【請求項16】
請求項1記載の方法において、前記接合力特性は、前記工程(b)の間に取得された一連の値に関連するものである、方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法において、前記トランスデューサ特性は、前記工程(b)の間に取得された一連の値に関連するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月4日付で出願した米国特許仮出願第62/857,027号に対して利益を主張するものであり、その内容の全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワイヤーループおよびその他のワイヤーボンディング構造を形成することに関し、具体的には、ワイヤーのボンディング部の状態を検出するための改良方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体装置の処理およびパッケージングにおいて、ワイヤーボンディング(例えば、ボールボンディング、ウェッジボンディングなど)は、パッケージ内の複数の位置間(例えば、半導体ダイのダイパッドとリードフレームのリードとの間)の電気的相互接続を提供する方法として広く用いられてきている。具体的には、(ワイヤーボンディング装置としても公知である)ワイヤーボンダーを使用して、電気的に相互接続される位置間にワイヤーループが形成される。
【0004】
単純なワイヤーループをワイヤーボンディングする際の(ボールボンディング技術を使用した)例示的な従来技術の順序は、(1)ボンディングツールから延長するワイヤーの一端部にフリーエアボール(free air ball)を形成する工程と、(2)フリーエアボールを用いて半導体ダイのダイパッド上にワイヤーループの第1のボンディング部を形成する工程と、(3)前記ダイパッドとリードフレームのリードとの間に所望の形状で所定の長さのワイヤーを延長する工程と、(4)前記リードフレームのリードにワイヤーをステッチボンディングしてワイヤーループの第2のボンディング部を形成する工程と、(5)形成したワイヤーループから供給ワイヤーを切断する工程とを含む。(a)ワイヤーループの端部と(b)ボンディング領域(例えば、ダイパッド、リードなど)との間にボンディング部を形成する際は、例えば、特に超音波エネルギー、サーモソニックエネルギー、熱圧着エネルギーなどを含む、様々なタイプのボンディングエネルギーを使用することができる。
【0005】
ワイヤーボンディングに関連して通常、ワイヤーの一部分がボンディング位置に適切にボンディングされているか検証することが望ましい。クリック アンド ソッファ インダストリーズ、インク.によって販売されているワイヤーボンディング装置では通常、「BITS」(integrity test system:完全性試験システム)を利用して適切なワイヤーボンディング部が形成されていることを検証する。国際公開第2009/002345号には、このような工程および関連システムの詳細例が記載されている(当該国際公報は、その内容の全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0006】
したがって、ワイヤーループの一部分のボンディング状態を決定する(例えば、ワイヤーループの一部分がボンディング位置に適切にボンディングされているかを決定する)改良された方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な1実施形態によると、ワイヤーと被加工物の少なくとも1つのボンディング位置との間のボンディング状態を決定する方法が提供される。この方法は、(a)ワイヤーボンディング装置のボンディングツールによって被加工物のボンディング位置にワイヤーの一部分をボンディングする工程と、(b)前記ボンディングツールの運動プロファイルを決定する工程であって(これにより所定の運動プロファイルが提供される)、前記運動プロファイルは、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するためのものであり、前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされていない場合、当該運動プロファイル実行中に前記ワイヤーが破断するように構成されているものである、前記運動プロファイルを決定する工程と、(c)前記ワイヤーの一部分が前記ボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するために、前記運動プロファイルに沿って前記ボンディングツールを移動する工程とを含む。
【0008】
前記方法は、前記被加工物の複数のボンディング位置にボンディングされた前記ワイヤーの対応する複数の部分のボンディング状態を検証するために使用することができる。この場合、前段落で記載した前記工程(b)および(c)が前記ワイヤーの複数の部分の各部分に対して反復され、前記ワイヤーの複数の部分の各部分が前記被加工物の対応するボンディング位置にボンディングされているかについて決定される。
【0009】
本発明の別の例示的な1実施形態によると、ワイヤーと被加工物の少なくとも1つのボンディング位置との間のボンディング状態を決定する別の方法が提供される。この方法は、(a)ワイヤーボンディング装置のボンディングツールによって被加工物のボンディング位置にワイヤーの一部分をボンディングする工程と、(b)前記工程(a)の間に、(i)前記ワイヤーの一部分のボンディングに関連する変形特性、(ii)前記ワイヤーの一部分のボンディングに関連する接合力特性、および(iii)前記ワイヤーボンディング装置のトランスデューサにおけるトランスデューサ特性のうちの少なくとも2つを検出する工程と、(c)前記工程(b)で検出された情報を使用して、前記工程(a)において前記ボンディング位置にボンディングされた前記ワイヤーの一部分のボンディング状態を決定する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに一読することにより最も良く理解される。一般的な方法に従い、図面の種々の構成要素は原寸に比例したものではない。むしろ、種々の構成要素の寸法は、明確化のため、任意に拡張または縮小されている。本図面には以下の図面が含まれる。
図1A図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1B図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1C図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1D図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1E図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1F図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1G図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図1H図1A~1Hは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていることを決定する方法を示す。
図2A図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図2B図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図2C図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図2D図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図2E図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図2F図2A~2Fは、ワイヤーボンディングシステムの一連のブロック図であり、本発明の例示的な1実施形態に従って、ワイヤーのボンディング部がボンディング位置にボンディングされていないことを決定する方法を示す。
図3図3は、本発明による特定の例示的な方法を示すのに有用な従来のワイヤーボンディング装置のブロック図である。
図4図4は、本発明の様々な実施形態に従って、ワイヤーボンディング装置上のボンディング位置にボンディングされた、ワイヤーの一部分のボンディング状態を決定する例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特定の実施形態によると、被加工物(例えば、メモリーベースの半導体装置、積層ダイを備える記憶装置など)のボンディング部の剥離についてリアルタイムの検出が提供される。このようなメモリーベースの半導体装置においては、ワイヤーの一部分を、当該半導体装置の電力リードまたは接地リードの少なくとも1つとして構成してもよい。
【0012】
本発明の態様は、複数のステッチボンディング工程(すなわち、2つのボンディング部より多くのボンディング部を含むワイヤーループ、例えば、3、4、5、またはそれ以上のボンディング部を含むワイヤーループ)に特に適用可能である。ダイからダイに対する複数のステッチボンディングでは、ダイからダイのインピーダンがは非常に低いため、ステッチボンディング部の剥離を検出することは困難である。
【0013】
本発明の態様では、ボンディング部がボンディング位置に適切に固着していない場合、ボンディングワイヤーが強制的に破断される。破断したワイヤーの検出は、電気的導通(若しくは電気的導通の欠如)を検出する従来の検出システム(例えば、BITSなど)を利用して達成することができる。このような検出は、破断したワイヤーが高インピーダンスを示す場合容易であり、それにより当該ワイヤーが適切なボンディング位置に固定されていないことが明らかになる。
【0014】
このように、ボンディング装置の検出システムを使用してワイヤーが破断しているかどうかの決定を行う。例えば、検出システムは、(a)ワイヤーと(b)ワイヤーボンディング装置の一部分との間に導電経路が確立されているかどうかを検出する。この導電経路は、(a)ワイヤーを挟持するワイヤークランプ、(b)ワイヤーをボンディングツールに供給するワイヤースプール、(c)ワイヤースプールとボンディングツールとの間のワイヤーの位置決めを支援する誘導要素(diverter element)、および(d)ワイヤースプールとボンディングツールとの間のワイヤーの位置決めを支援する空気システムのうちの少なくとも1つを含む。検出システムは、(a)導電経路における所定の電流、(b)導電経路とワイヤーボンディング装置の接地接続部との間の静電容量の所定の変化、および(c)導電経路に流れる電流の所定の位相シフトのうちの少なくとも1つを検出することにより、導電経路が確立されているかどうかを検出する。
【0015】
本発明の特定の例示的な実施形態によれば、被加工物上のワイヤーボンディング接続部のボンディング状態(例えば、ワイヤーの一部分が適切にボンディングされているか、ワイヤーの一部分が適切にボンディングされていないか、など)を決定/検出する方法が提供される。例えば、この方法は、ワイヤーボンディング製造システム(例えば、ワイヤーボンディング装置)においてリアルタイムで実行される。
【0016】
図1A~1Hを参照すると、本図ではワイヤーボンディングシステム100が提供されている。ワイヤーボンディングシステム100は、被加工物103を支持する支持構造102(例えば、加熱ブロック、アンビルなど)を含む。図1Aに示すように、被加工物103は、基板104と、積層された複数の半導体ダイ106a、106b、106cとを含む。
【0017】
図1A~1Hにおいて、ワイヤーボンディングシステム100はまた、ワイヤーボンディングツール108(例えば、キャピラリーを備えるワイヤーボンディングツールなど)と、ワイヤークランプ110と、検出システム114(例えば、BITSシステム)とを含む。ワイヤークランプ110によりワイヤーボンディングツール108に所定の長さのワイヤー112が提供される。図1Aでは、フリーエアボール112a(すなわち、ワイヤー112の一部分)がワイヤーボンディングツール108の先端部に着座している。図1Eを参照すると、電気接続113がワイヤークランプ110と検出システム114との間に提供されている。当業者に公知であるように、ワイヤークランプ110を図1Eに示す閉位置にして検出システム114を使用することにより、検出システム114と被加工物103にボンディングされたワイヤーの一部分との間の電気的導通状態を検出することができる。
【0018】
本発明の様々な方法を利用して、ワイヤーループの一部分(または導電性バンプなどのワイヤーのその他の部分)のボンディング状態に関するリアルタイムのフィードバックをワイヤーボンディングシステムに提供することができる。
【0019】
図1Aでは、ダイ106cのボンディング位置(例えば、ダイパッド)にフリーエアボール112aをボンディングする。図1Bでは、フリーエアボール112aをボンディングされたワイヤー部分112bに変形する。また図1Bでは、ワイヤー112の一部分をボンディングされたワイヤー部分112bおよびボンディングツール108から延長する。図1Cに示すように、ワイヤー112をさらに、屈曲部112cを含むように成形し、ワイヤー112とダイ106bのボンディング位置との間に別のワイヤーボンディング部を形成する。図1Dでは、このワイヤーボンディング部をボンディングされたワイヤー部分112dとして示し、屈曲部112eを含む別の長さのワイヤー112をボンディングされたワイヤー部分112dからボンディングツール108に延長する。
【0020】
この時点でボンディングされたワイヤー部分112dのボンディング状態(例えば、ボンディングされたワイヤー部分112dがダイ106bのボンディング位置に適切にボンディングされたか)について決定することが望ましい。このために、図1Eに示すようにワイヤークランプ110を閉位置にして、所定の運動プロファイル(ここで、運動プロファイルは所定の方向、距離、角度等を含む)に沿ってボンディングツール108を移動させる(点線を参照。ボンディングツール108を点線で示す運動プロファイルに沿って移動することでワイヤーが引き伸ばされるが、ボンディングされたワイヤー部分112dは破断していない)。検出システム114が検出したように、ボンディングされたワイヤー部分112dは依然として、ダイ106bのボンディング位置に適切にボンディングされている(図1Eに示す)。図1F~1Gでは、ボンディングされたワイヤー部分112fを含む、(図1Hにおいてワイヤーループ116として示す)ワイヤーループの残りの部分を形成する。
【0021】
図2A~2Fは、図1A~1Hと実質的に類似した要素を示すが、結果が異なる。図2Eに示すように、(図2Dに示す)ボンディングされたワイヤー部分112dはダイ106bのボンディング位置に固着しなかったか、若しくは所定の運動プロファイルによってボンディング位置から引き離された状態になっている(すなわち、図2Eの点線矢印)。ボンディングツール108が図2Fに示す運動プロファイルに沿ってさらに移動につれて、検出システム114が検出したように、ワイヤー破断112gが起こる。検出システム114によってワイヤー破断112gが検出されたため、ボンディングされたワイヤー部分112dのボンディング状態は、「許容不可」、「ボンディング未完了」、「剥離」として周知される。
【0022】
このように、図1A~1Hでは、ボンディング部112dはダイ106bのボンディング位置にボンディングされていると決定され、図2A~2Fでは、ボンディング部112dはダイ106bのボンディング位置にボンディングされていないと決定される。
【0023】
図1A~1Hおよび図2A~2Fでは、進歩性を有するボンディング状態の検証法を利用して1つのボンディング部(すなわち、ボンディング部112d)のみの検証を行ったが、本発明を利用して複数のボンディング部を検証できることを理解されたい。例えば、図1Hに示すワイヤーループ116の各ボンディング部(すなわち、ボンディングされたワイヤー部分112b、ボンディング部112d、およびボンディング部112f)を、図1Eに関連して説明しかつ図示した運動プロファイルなどの運動プロファイルを使用して検証することができる。
【0024】
特定の例においては、ボンディングされたワイヤー部分112bの形成後(図1Bを参照)、所定の運動プロファイルを使用して当該ワイヤー部分112bのボンディング状態を検証することができる。ボンディングされたワイヤー部分112bのボンディング状態の検証後、ボンディング部112dを形成する(図1Dを参照)。ボンディング部112dの形成後、図1Eの所定の運動プロファイルを使用してボンディング部112dのボンディング状態を検証することができる。ボンディング部112dのボンディング状態の検証後、ボンディング部112fを形成する(図1Gを参照)。ボンディング部112fの形成後(但し、ワイヤー供給源からワイヤーループ116を分離する前に)、所定の運動プロファイルを使用してボンディング部112fのボンディング状態を検証することができる。このように、図1A~1Hおよび図2A~2Fに関連して上記で説明した進歩性を有する技術を使用してワイヤーループの任意数のボンディング部を検証できることが明らかである。
【0025】
図1A~1Hおよび図2A~2Fで示したような)本発明の態様によれば、ワイヤーの一部分がボンディング位置にボンディングされているかどうかを決定するためのボンディングツールの運動プロファイル決定する工程を含むことが考えられる。すなわち、ワイヤーループのボンディング部(図1Dのボンディング部112dなど)を形成する前に、運動プロファイルが決定される。言い換えれば、(図1Eなどの)運動プロファイルに従動する前に、運動プロファイルを決定する必要がある。このような運動プロファイルは、ワイヤーの一部分がボンディング位置にボンディングされていない場合、運動プロファイル実行中にワイヤーが破断する(例えば、図2Fを参照)結果となるように構成することができる。運動プロファイルは、特定の用途に関連する情報(例えば、ワイヤーループの様々なボンディング部のボンディング位置、ワイヤーループのパラメータなど)を利用した、試行錯誤の工程(または反復工程などのその他の工程)よって決定してもよい。
【0026】
図1A~1Hおよび図2A~2Fでは、被加工物にボンディングされたワイヤー(例えば、ワイヤーループ)のボンディング部のボンディング状態を決定する特定の例示的な方法を示したが、本発明では、ボンディングされたワイヤー部分のボンディング状態を決定する追加の方法が考えられる。以下に説明するように、本発明の別の例示的な実施形態では、ワイヤーボンディング工程中にワイヤーボンディング装置によって検出された情報(例えば、ワイヤーの一部分のボンディングに関連する変形特性、ワイヤーの一部分のボンディングに関連する接合力特性、ワイヤーボンディング装置のトランスデューサにおけるトランスデューサ特性など)を利用して、ワイヤーと被加工物の少なくとも1つのボンディング位置との間のボンディング状態を決定することができる。
【0027】
図3は、(図1A~1Hのワイヤーボンディング装置100と類似した、若しくは同一の)簡略化したワイヤーボンディング装置100aの側面図であり、当該ワイヤーボンディング装置は、直前の段落および本出願のその他の部分で説明した情報を検出するために使用される。ワイヤーボンディング装置100aは、ワイヤーボンディング作業中に半導体素子304を支持する支持構造102(例えば、加熱ブロック、アンビルなど)を含む。図1Aに示す例では、半導体素子304は、リードフレーム304b上に複数の半導体ダイ304aを含む。当然のことながら、その他のタイプの半導体素子(例えば特に、メモリーベースの半導体装置、積層ダイを備える装置など)も本発明の範囲内であると考えられる。
【0028】
ワイヤーボンディング装置100aはまた、ワイヤーの一部分を半導体素子304にボンディングするボンディングツール108(例えば、キャピラリーを備えるワイヤーボンディングツールなど)を含む。当業者であれば理解するように、(ボンドヘッドアセンブリ300よって保持される)ボンディングツール108は、ワイヤーボンディング作業を実行するために、ワイヤーボンディング装置100aの複数の軸に沿って移動自在である。例えばボンディングツール108は、ボンドヘッドアセンブリ300が移動することにより、x軸およびy軸に沿って移動する。リンク機構300aは、ボンディングツール108およびボンドヘッドアセンブリ300によって保持されている。このリンク機構110aは、ワイヤーボンディング装置100aのz軸に沿った移動のために構成されている。ボンドヘッドアセンブリ300(また特にリンク機構300aによって)保持される追加の要素は、リンク機構300aとともにz軸に沿って移動するz軸モータ300a1の可動部と、ボンディングツール108を保持し、ボンディングツール108の先端部108aに超音波スクラブをもたらすトランスデューサ300a2と、ボンディング作業中に加えられる接合力を感知する力センサー300a3と、z軸位置検出器300a4(例えば、z軸エンコーダ)とを含む。当業者に公知であるように、z軸位置検出器300a4は、リンク機構300aのz軸位置(したがって、ボンディングツール108の相対z軸位置)を検出し、当該z軸位置に対応するデータを(例えば、リアルタイムで)ワイヤーボンディング装置100aのコンピュータ302に提供する。したがって、コンピュータ302は、ボンディングツール108の運動を介して得られるボンディングツール108のz軸位置に関する情報を有する。(ボンドヘッドアセンブリ300およびコンピュータ302から延長する矢印で示すように)z軸モータ300a1、トランスデューサ300a2、力センサー300a3、およびz軸位置検出器300a4からの特定の情報がコンピュータ302に提供される。(コンピュータ302からボンドヘッドアセンブリ300に延長する矢印で示すように)コンピュータ302はまた、ボンドヘッドアセンブリ300の要素に対して情報(例えば、命令)を提供する。閉ループ構成の特定の例では、コンピュータ302は、1つのz軸モータ300a1および/またはトランスデューサ300a2に制御信号を提供する。
【0029】
図4は、本発明による例示的な方法を示すフロー図である。当業者であれば理解するように、フロー図に含まれる特定の工程は省略されており、また特定の追加工程が追加されている。さらに、工程の順序は図示する順序と異なる順序に変更することが可能であり、これらはすべて本発明の範囲内にある。
【0030】
図4は、図1A~1Hおよび図2A~2Fのワイヤーボンディング装置100などの(または図3のワイヤーボンディング装置100a、または本発明の範囲内のその他のワイヤーボンディング装置などの)ワイヤーボンディング装置上のボンディング位置にボンディングされたワイヤーの一部分のボンディング状態を決定する例示的な方法を示すフロー図である。
【0031】
工程400において、(i)ワイヤーボンディング工程中に検出される特性と、(ii)被加工物にボンディングされるワイヤーの一部分との間の関係を決定する。前記特性は例えば、ワイヤーの一部分のボンディングに関連する変形特性、ワイヤーの一部分のボンディングに関連する接合力特性、およびワイヤーボンディング装置のトランスデューサにおけるトランスデューサ特性のうちの2若しくはそれ以上の任意の特性を含むことができる。前記ボンディング状態は、簡略的な状態(例えば、「ボンディング完了」、「ボンディング未完了」)、またはより具体的な状態(例えば、利用者が決定するラベルのうち特に「ボンディング良好」、「ボンディング許容可能」、「ボンディング許容不可」、「剥離状態」など)を含むことができる。このボンディング状態に応じて、作業の継続(例えば、ボンディング良好またはボンディング許容可能の場合)、作業の停止(例えば、「許容不可」、「剥離状態」が生じた場合、ワイヤーボンディング作業は停止される)、警告またはその他の通知の提供(例えば、ボンディング許容可能、ボンディング許容不可、剥離状態などの場合)が実行される。適用する特定のラベル(ボンディング状態)および実行する動作(例えば、ボンディング作業の継続、ワイヤーボンディング作業の停止、警告またはその他の通知の提供など)は、用途および/または利用者に合わせてカスタマイズすることができる。
【0032】
より具体的な例では、1若しくはそれ以上のワイヤーボンディング用途に対して(例えば、特定のダイ、特定のワイヤー、閉ループ工程により最適化された特定のワイヤーボンディングパラメータ、閉ループ工程により最適化された特定のワイヤーループパラメータなどを使用して)試験/実験が行われる。このような試験/実験を通じて上述した特性(例えば、変形特性、接合力特性、トランスデューサ特性など)の値が検出および記録される。また、各特性の様々な範囲、および複数の特性の複合範囲が決定される。
【0033】
例えば、試験/実験を行うことにより、各ボンディング状態の範囲(例えば、ボンディング良好、ボンディング許容可能、ボンディング許容不可、剥離状態など)が提供される。同様に、各ボンディング状態を複数の特性の複合範囲に割り当てることができる。
【0034】
具体的な例において、変形特性、接合力特性、トランスデューサ特性の各々が監視されていると仮定すると、「ボンディング良好」というボンディング状態は、3つの特性の各々が当該特性の所定の範囲内にある場合に適用することができる。また、「ボンディング許容可能」というボンディング状態は、3つの特性のうち1若しくはそれ以上が、当該特性における「良好」の範囲ではないが「許容可能」の範囲内である所定の範囲内にある場合に適用することができる。「許容不可」というボンディング状態は、3つの特性のうち1若しくはそれ以上が、当該特性における「良好」の範囲または「許容可能」の範囲内ではなく、「許容不可」の範囲内である所定の範囲内にある場合に適用することができる。
【0035】
工程402において、ワイヤーボンディング装置のボンディングツールにより被加工物上のボンディング位置にワイヤーの一部分をボンディングする。例えば、図1Fは、ダイ106bのボンディング位置にボンディングされたワイヤー部分112dを示す(図1Hに示すように、当該ワイヤー部分112dからワイヤーループ116が形成される)。
【0036】
工程404aにおいて、工程402中にワイヤーのボンディング部分に関連する変形特性を検出する。この変形特性は、工程402において例えば、z軸位置検出器(例えば、図3のz軸位置検出器300a4を参照)により測定された、当該ワイヤー部分の高さ方向の変形(vertical deformation)に関連する。当該変形は、(i)当該ワイヤー部分のボンディング位置に対する接触時と、(ii)工程402のボンディング工程の完了時との間に測定された変形であると考えられる。当該変形特性は、工程402の間に測定された単一値(すなわち、単一のz軸測定値)、または、工程402の間に測定された一連の値(すなわち、変形プロファイルなどの時間に対する一連の測定値)に関連する。
【0037】
工程404bにおいて、ワイヤーの一部分のボンディングに関連する接合力特性を検出する。接合力特性は、(i)ワイヤーボンディング装置のボンドヘッド内の力センサー(例えば、図3の力センサー300a3を参照)、および(ii)ワイヤーボンディング装置のz軸モータ(例えば、図3のz軸モータ300a1を参照)のz軸モータ特性のうちの少なくとも1により測定される接合力に関連する。当該接合力特性は、工程402の間に測定された単一値(すなわち、単一の接合力測定値)、または、工程402の間に測定された一連の値(すなわち、接合力プロファイルなどの時間に対する一連の測定値)に関連する。
【0038】
工程404cにおいて、ワイヤーボンディング装置のトランスデューサにおけるトランスデューサ特性を検出する。当業者であれば理解するように、典型的なワイヤーボンディング装置は、ボンドヘッドアセンブリによって保持された超音波トランスデューサを含む。超音波トランスデューサは通常、ワイヤーボンディングツール(図1A~1Hのワイヤーボンディングツール108を参照)を保持し、ワイヤーの一部分をボンディング位置にボンディングするためにワイヤーボンディングツールの先端部に超音波スクラブをもたらす。本発明によれば、トランスデューサ特性は、例えば(i)トランスデューサのインピーダンス、および(ii)(例えば、電圧測定値、電流測定値などの)トランスデューサの電気特性など、多くの特性のうち任意の特性に関連する。当該トランスデューサ特性は、工程402の間に測定された単一値(すなわち、単一のトランスデューサ測定値)、または、工程402の間に測定された一連の値(すなわち、トランスデューサプロファイルなどの時間に対する一連の測定値)に関連する。
【0039】
工程406において、工程404a、404b、および404cのうちの少なくとも2つの工程において(例えば、変形特性および接合力特性、変形特性およびトランスデューサ特性、接合力特性およびトランスデューサ特性、または変形特性、接合力特性およびトランスデューサ特性の3つの全特性を使用して)検出した情報を利用して、工程402においてボンディング位置にボンディングされたワイヤーの一部分のボンディング状態を決定する。上記で説明したように、ボンディング状態は、「ボンディング良好」、「ボンディング許容可能」、「ボンディング許容不可」、「剥離状態」、または任意のその他のボンディング状態であってよい。
【0040】
工程408において、ワイヤーの複数の部分を被加工物の対応する複数のボンディング位置にボンディングする。そしてこの際、ワイヤーの複数の部分の各部分に対して(工程404a、404b、および404cのうちの少なくとも2つを含む)工程404、および工程406を反復し、ワイヤーの複数の部分の各部分が被加工物の対応するボンディング位置にボンディングされているかについて決定する。例えば、図1A~1Hを参照すると、各ワイヤーボンディング部(すなわち、ワイヤーボンディング部112b、112d、112f)は、特定のワイヤーボンディング部の形成後および次のワイヤーボンディング部の形成前に工程程404および工程406を使用して検証される。
【0041】
本発明を特定の被加工物に関連して示したが、本発明はそのような被加工物に限定されるものではない。すなわち、図1A~1Hおよび図2A~2Fの積層ダイの用途、および図3における単純な半導体ダイ/リードフレームの用途は、単に例示的な被加工物を示すものであり、ワイヤーボンディングが実装される任意のタイプの被加工物を利用することができる。
【0042】
本発明を特定のワイヤーループの形状に関連して示したが、本発明はそのようなワイヤーループの形状に限定されるものではない。本発明の態様は、例えば、スタッドバンプ、第1のボンディング部および第2のボンディング部のみを含む単純なワイヤーループ、複数の層および装置を含む複雑なワイヤーループなどの任意のワイヤー部分のボンディング(またはボンディング未完了、若しくは別のボンディング状態)を検出するために使用可能である。
【0043】
さらに、ワイヤーループが複数のボンディング部を含む場合、本発明の態様を利用して、任意またはすべてのボンディング部に対して適切なボンディングがなされているか検証することができることを理解されたい。例えば、特定のボンディング部が適切にボンディングされているか検証する上では従来技術で十分であるが、本発明の態様は別のボンディングに対して利用することができる。
【0044】
1若しくはそれ以上の特性に関するデータは、(例えば、ワイヤーボンディング作業が完了した特定の被加工物の分析時に各ボンディング状態の範囲が正確であるか検証するなど)後程の分析のために記憶装置(例えば、ワイヤーボンディング装置の記憶装置、または遠隔地の記憶装置)に保存することができることを理解されたい。
【0045】
本発明を特定の実施形態と関連して図示および説明したが、本発明は説明の詳細に限定
されることを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、詳細に亘って種々の変更が可能である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
【外国語明細書】