(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161601
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】レンズ部、表示体および表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241112BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241112BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 313
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146098
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2022212217の分割
【原出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南原 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(57)【要約】
【課題】VRゴーグルの軽量化、視認性の向上を実現し得るレンズ部を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるレンズ部は、ユーザに対して画像を表示する表示システムに用いられるレンズ部であって、画像を表す表示素子の表示面から前方に向けて出射され、偏光部材および第1のλ/4部材を通過した光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記反射型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備え、前記第2のλ/4部材と少なくとも1層の粘着剤層とを含む第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値は100以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光部材、第1のλ/4部材、第2のλ/4部材と少なくとも1層の粘着剤層とを含む第一積層部および反射型偏光部材を有する光学部材セットであって、
前記光学部材セットに含まれる各部材は、表示素子から前方に向けて出射された光が、前記偏光部材、前記第1のλ/4部材、第一レンズ部および前記第一積層部をこの順に通過し、前記反射型偏光部材で反射し、さらに前記第一積層部を通過した後に前方側に反射して、前記第一積層部、前記反射型偏光部材および第二レンズ部をこの順に通過するように配置され、
前記第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値は100以下である、
光学部材セット。
【請求項2】
前記反射型偏光部材を含む第二積層部を有する、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項3】
前記第一積層部と前記第二積層部とは離間して配置される、請求項2に記載の光学部材セット。
【請求項4】
前記第二積層部は、前記反射型偏光部材と前記第二レンズ部との間に配置される吸収型偏光部材を含む、請求項2に記載の光学部材セット。
【請求項5】
前記第二積層部は、前記反射型偏光部材と前記第二レンズ部との間に配置される第3のλ/4部材を含む、請求項2に記載の光学部材セット。
【請求項6】
前記第一積層部は、前記第2のλ/4部材の前方に配置される第一保護部材を含む、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項7】
前記第一積層部に含まれる粘着剤層は、3層以下である、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項8】
前記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれの厚みは20μm以下ある、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項9】
前記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれの表面粗さRaは20nm以下ある、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項10】
前記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれは単層体である、請求項1に記載の光学部材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ部、表示体および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その軽量化、視認性の向上等が望まれている。軽量化は、例えば、VRゴーグルに用いられるレンズを薄型化することで達成され得る。一方で、薄型レンズを用いた表示システムに適した光学部材の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの軽量化、視認性の向上を実現し得るレンズ部の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の実施形態によるレンズ部は、ユーザに対して画像を表示する表示システムに用いられるレンズ部であって、画像を表す表示素子の表示面から前方に向けて出射され、偏光部材および第1のλ/4部材を通過した光を反射する反射型偏光部材と、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と、前記表示素子と前記第一レンズ部との間に配置され、前記表示素子から出射された光を透過させ、前記反射型偏光部材で反射された光を前記反射型偏光部材に向けて反射させるハーフミラーと、前記反射型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と、前記ハーフミラーと前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第2のλ/4部材と、を備え、前記第2のλ/4部材と少なくとも1層の粘着剤層とを含む第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値は100以下である。
2.上記1に記載のレンズ部は、上記反射型偏光部材を含む第二積層部を有してもよい。
3.上記2に記載のレンズ部において、上記第一積層部と上記第二積層部とは離間して配置されてもよい。
4.上記2または3に記載のレンズ部において、上記第二積層部は、上記反射型偏光部材と上記第二レンズ部との間に配置される吸収型偏光部材を含んでもよい。
5.上記2から4のいずれかに記載のレンズ部において、上記第二積層部は、上記反射型偏光部材と上記第二レンズ部との間に配置される第3のλ/4部材を含んでもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一積層部は、上記第2のλ/4部材の前方に配置される第一保護部材を含んでもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一積層部に含まれる粘着剤層は、3層以下であってもよい。
8.上記1から7のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれの厚みは20μm以下あってもよい。
9.上記1から8のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれの表面粗さRaは20nm以下あってもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一積層部に含まれる粘着剤層のそれぞれは単層体であってもよい。
11.上記1から10のいずれかに記載のレンズ部において、上記第一レンズ部と上記ハーフミラーとは一体であってもよい。
12.本発明の実施形態による表示体は、上記1から11のいずれかに記載のレンズ部を有する。
【0007】
13.本発明の実施形態による表示方法は、偏光部材および第1のλ/4部材を介して出射された画像を表す光を、ハーフミラーおよび第一レンズ部を通過させるステップと、前記ハーフミラーおよび前記第一レンズ部を通過した光を、第2のλ/4部材を通過させるステップと、前記第2のλ/4部材を通過した光を、反射型偏光部材で前記ハーフミラーに向けて反射させるステップと、前記反射型偏光部材および前記ハーフミラーで反射させた光を、前記第2のλ/4部材により前記反射型偏光部材を透過可能にするステップと、前記反射型偏光部材を透過した光を、第二レンズ部を通過させるステップと、を有し、前記第2のλ/4部材と少なくとも1層の粘着剤層とを含む第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値は100以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によるレンズ部によれば、VRゴーグルの軽量化、視認性の向上を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す表示システムのレンズ部の詳細の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図4】ISC値の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0012】
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0013】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材14および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0014】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0015】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る第1のλ/4部材を含む。第一位相差部材が第1のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第一位相差部材は第1のλ/4部材に相当し得る。第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0016】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0017】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る第2のλ/4部材を含む。第二位相差部材が第2のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第二位相差部材は第2のλ/4部材に相当し得る。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0018】
第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0019】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0020】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0021】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20に含まれる第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22に含まれる第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0022】
第1のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0023】
第2のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0024】
レンズ部4において、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間には空間が形成され得る。この場合、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体に設けられることが好ましい。例えば、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される部材は、接着層を介して第一レンズ部16と第二レンズ部24のいずれかに一体化させることが好ましい。このような形態によれば、例えば、各部材の取扱い性に優れ得る。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。具体的には、接着層は、接着剤層であってもよいし、粘着剤層であってもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmである。
【0025】
図2は、
図1に示す表示システムのレンズ部の詳細の一例を示す模式的な断面図である。具体的には、
図2は、第一レンズ部と第二レンズ部とこれらの間に配置される部材を示している。レンズ部4は、第一レンズ部16と、第一レンズ部16に隣接して設けられる第一積層部100と、第二レンズ部24と、第二レンズ部24に隣接して設けられる第二積層部200を備えている。
図2に示す例では、第一積層部100と第二積層部200とは離間して配置されている。図示しないが、ハーフミラーは、第一レンズ部16に一体に設けられ得る。
【0026】
第一積層部100は、第二位相差部材22と、第一レンズ部16と第二位相差部材22との間に配置される粘着剤層41とを含み、粘着剤層41により第一レンズ部16に一体に設けられている。第一積層部100は、第二位相差部材22の前方に配置される第一保護部材31をさらに含んでいる。第一保護部材31は、第二位相差部材22に粘着剤層42を介して積層されている。第一保護部材31は、第一積層部100の最表面に位置し得る。
【0027】
図2に示す例では、第二位相差部材22は、第2のλ/4部材22aに加えて、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)22bを含んでいる。第二位相差部材22は、第2のλ/4部材22aとポジティブCプレート22bとの積層構造を有している。
図2に示すとおり、第二位相差部材22において、ポジティブCプレート22bより第2のλ/4部材22aの方が前方に位置していることが好ましい。第2のλ/4部材22aとポジティブCプレート22bとは、例えば、図示しない接着剤層を介して積層される。
【0028】
上記第2のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第2のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0029】
第2のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第2のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0030】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第2のλ/4部材が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0031】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第2のλ/4部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第2のλ/4部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0032】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0033】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第2のλ/4部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第2のλ/4部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0034】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0035】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0036】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0037】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0038】
液晶配向固化層で構成される第2のλ/4部材の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0039】
上記ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0040】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0041】
上記第一保護部材は、代表的には、基材を含む。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~40μmである。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。1つの実施形態においては、基材は、(メタ)アクリル系樹脂で構成されることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂を採用することにより、押出し成形により、平滑性に優れた基材を製膜し得る。そして、平滑性に優れた保護部材が得られ得る。
【0042】
第一保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。表面処理層を有する第一保護部材は、表面処理層が前方側に位置するように配置され得る。具体的には、表面処理層が第一積層部の最表面に位置し得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、視認性を向上させる観点から、反射防止機能を有することが好ましい。表面処理層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。
【0043】
第二積層部200は、反射型偏光部材14と、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置される粘着剤層とを含んでいる。第二積層部200は、例えば、視認性向上の観点から、反射型偏光部材14と第二レンズ部24との間に配置される吸収型偏光部材28をさらに含んでいる。吸収型偏光部材28は、反射型偏光部材14の前方に粘着剤層44を介して積層されている。反射型偏光部材14の反射軸と吸収型偏光部材28の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材14の透過軸と吸収型偏光部材28の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。粘着剤層を介して積層することにより、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28とが固定され、反射軸と吸収軸(透過軸と透過軸)との軸配置のズレを防止することができる。また、反射型偏光部材14と吸収型偏光部材28との間に形成され得る空気層による悪影響を抑制することができる。
【0044】
第二積層部200は、反射型偏光部材14の後方に配置される第二保護部材32をさらに含んでいる。第二保護部材32は、反射型偏光部材14に粘着剤層43を介して積層されている。第二保護部材32は、第二積層部200の最表面に位置し得る。第二保護部材は、上記第一保護部材と同様、基材を含み得る。また、第二保護部材は、好ましくは、基材と基材上に形成される表面処理層とを有する。この場合、表面処理層が第二積層部の最表面に位置し得る。基材および表面処理層の詳細については、上記第一保護部材と同様の説明を適用することができる。
【0045】
図2に示すように、第二積層部200は、吸収型偏光部材28と第二レンズ部24との間に配置される第三位相差部材30をさらに含んでいてもよい。第三位相差部材30は、吸収型偏光部材28に粘着剤層45を介して積層されている。また、第三位相差部材30は、第二レンズ部24に粘着剤層46を介して積層され、第二積層部200は、第二レンズ部24に一体に設けられている。第三位相差部材30は、例えば、第3のλ/4部材を含む。吸収型偏光部材28の吸収軸と第三位相差部材30に含まれる第3のλ/4部材の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。このような部材を設けることにより、例えば、第二レンズ部16側からの外光の反射を防止することができる。第三位相差部材が第3のλ/4部材以外の部材を含まない場合は、第三位相差部材は第3のλ/4部材に相当し得る。
【0046】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、反射型偏光部材の厚みは、例えば10μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。
【0047】
図3は、反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。多層構造14aは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとを交互に有する。多層構造を構成する層の総数は、50~1000であってもよい。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxはy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一であり、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となり得る。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。
【0048】
上記A層は、代表的には、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記B層は、代表的には、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。上記多層構造は、共押出と延伸とを組み合わせて形成され得る。例えば、A層を構成する材料とB層を構成する材料とを押し出した後、多層化する(例えば、マルチプライヤーを用いて)。次いで、得られた多層積層体を延伸する。図示例のx軸方向は、延伸方向に対応し得る。
【0049】
反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0050】
反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%であり、好ましくは45%~47%である。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。
【0051】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0052】
上記吸収型偏光部材は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0053】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0054】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0055】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0056】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0057】
吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0058】
上記第3のλ/4部材の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第3のλ/4部材のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。第3のλ/4部材は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。第3のλ/4部材のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0059】
第3のλ/4部材は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第3のλ/4部材は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第3のλ/4部材については、上記第2のλ/4部材と同様の説明を適用することができる。第2のλ/4部材と第3のλ/4部材とは、構成(例えば、形成材料、厚み、光学特性等)が同じ部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0060】
レンズ部4において、第一レンズ部16よりも前方に位置する部材から反射型偏光部材14よりも後方に位置する部材までの第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値は、100以下であり、好ましくは90以下であり、より好ましくは80以下であり、さらに好ましくは70以下である。このようなISC値を満足することにより、視認性に極めて優れた表示システムを実現することができる。具体的には、このようなISC値を満足することにより、レンズ部において拡散光の発生を抑制し、画像が不明瞭になることを抑制し得る。ISC値は、平滑性またはムラの指標となり得る。また、第一積層部を3枚並べた集合体のISC値は、表示システム全体としての視認性の指標となり得る。第一積層部は、表示システムにおいて、光が3回通り得ることから、第一積層部は、表示システムの視認性に大きく関与し得る。
図2に示す例では、例えば、評価の利便性の観点から、第一積層部100は、第一レンズ部16と反射型偏光部材14との間に形成される空間よりも後方に位置する部材を含んでいる。具体的には、第一積層部100は、粘着剤層41、第2のλ/4部材22aを含む第二位相差部材22、粘着剤層42および第一保護部材31を含んでいる。実質的には、第一積層部を3枚並べて構成される集合体のISC値の下限は、5程度である。
【0061】
図2に示す例では、第一レンズ部16と第二レンズ部24との間に配置される各部材を第一レンズ部16または第二レンズ部24に一体に設ける上で、6層の粘着剤層41~46が用いられている。
図2に示す例では、第一積層部100に含まれる粘着剤層は、2層である。例えば、第一レンズ部16と反射型偏光部材14との間に配置される部材の数により、第一積層部100に含まれる粘着剤層の数は異なる。第一積層部に含まれる粘着剤層は、好ましくは3層以下であり、より好ましくは2層以下である。このような形態によれば、上記第一積層部において、上記ISC値を良好に達成し得る。
【0062】
上記各部材の積層に用いられる粘着剤層の厚みは、それぞれ、任意の適切な厚みに設定され得る。上記各部材の積層に用いられる粘着剤層のそれぞれの厚みは、好ましくは20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、7μm以下であってもよい。このような厚みによれば、粘着剤層表面の凹凸の度合いは抑制され得、上記第一積層部において、上記ISC値を良好に達成し得る。一方、粘着剤層の厚みは、例えば3μm以上である。
【0063】
上記各部材の積層に用いられる粘着剤層のそれぞれの表面粗さRaは、好ましくは20nm以下あり、より好ましくは15nm以下である。このような厚みによれば、上記第一積層部において、上記ISC値を良好に達成し得る。
【0064】
粘着剤層は、任意の適切な粘着剤で構成され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。具体的には、粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される。
【0065】
例えば、粘着剤層は、ベース樹脂、架橋剤等の添加剤および溶剤を含む粘着剤組成物を塗工し、乾燥することにより形成することができる。粘着剤組成物は、被着体に直接塗工してもよいし、別に準備した基材フィルム等の基体に塗工してもよい。乾燥は、代表的には、加熱により行う。
【0066】
例えば、粘着剤組成物の塗工膜の膜厚を調整することにより、上記表面粗さRaを満足させることができる。膜厚が厚すぎると、加熱により、塗工膜において温度差による液流動が生じ得、表面の凹凸の度合いが大きい粘着剤層が形成され得る。
【0067】
また例えば、粘着剤組成物の塗工膜の乾燥条件を制御することにより、上記表面粗さRaを満足させることができる。具体的には、乾燥に際し、塗工膜に当てる風の風量、風速を調整することにより、上記表面粗さRaを満足させることができる。塗工膜に当てる風の風量、風速が大きすぎると、塗工膜に波が生じ得、表面の凹凸の度合いが大きい粘着剤層が形成され得る。1つの実施形態においては、塗工膜を65℃~110℃の温度環境下で、風速2m/min~15m/minの範囲内に調整して乾燥することが好ましく、2m/min~8m/minに調整して乾燥することがより好ましい。例えば、塗工後、乾燥を行うオーブンの入口付近でこのような温度および風速に調整されることが好ましい。具体的には、オーブン入口からオーブン中央部にかけてこのような温度および風速に調整され得る。
【0068】
上記各部材の積層に用いられる粘着剤層は、それぞれ、単層体で構成されることが好ましい。例えば、各粘着剤層は、粘着剤組成物を2回以上塗工して形成された多層構造を有しないことが好ましい。粘着剤層が単層体で構成されることにより、例えば、上記表面粗さRaを満足させることができる。
【実施例0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、表面粗さRaおよび位相差値は下記の測定方法により測定した値である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<表面粗さRa>
JIS B 0601(1994年度版)に従って、算術平均表面粗さRa(μm)を測定した。
ガラス板(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm、45mm×50mm)に測定対象の粘着剤層を貼り合わせ、測用試料を作製した。粘着剤層の貼り合わせは、基材フィルムに形成された粘着剤層を基材フィルムからガラス板に転写することにより行った。得られた測定試料について、走査型白色干渉計(Zygo社製、製品名「Newview7300」)を用いて測定した。具体的には、防振台つき測定台に測定試料を載せ、単一白色LED照明を用いて干渉縞を発生させ、基準面を持った干渉対物レンズ(2.5倍)をZ方向(厚み方向)にスキャンすることで、2mm□の視野範囲における粘着剤層最表面の平滑性(表面平滑性)を選択的に取得した。この測定に基づき、算術平均表面粗さRaを算出した。
<位相差値>
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
【0070】
[実施例1]
(粘着剤層の形成)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート92重量部、アクリル酸2.9重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部およびN-アクリロイルモルフォリン5重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)178万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
アクリル系ポリマー溶液を基材フィルムに塗工して得られた基材フィルム上の塗工膜をオーブン内で乾燥し、厚みが5μm、表面粗さRaが12nmの粘着剤層を形成した。なお、オーブン入口からオーブン中央部におけるオーブン内の風速を15m/min以下の範囲内で調整し、乾燥を行った。なお、風速は、オーブン内に設けられた風速計により測定した。
【0071】
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0072】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み47μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.2であった。
【0073】
(ポジティブCプレートの形成)
下記化学式(1)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、厚みが4μm、Rth(550)が-100nmのポジティブCプレートを基材上に形成した。
【化1】
【0074】
(保護部材の作製)
ラクトン環構造を有するアクリルフィルム(厚み40μm)に、下記のハードコート層形成材料を塗布して90℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み4μmのハードコート層が形成されたアクリルフィルム(厚み44μm)を作製した。
次いで、上記ハードコート層上に、下記の反射防止層形成用塗工液Aをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み140nmの反射防止層Aを形成した。
続いて、反射防止層A上に、下記の反射防止層形成用塗工液Bをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み105nmの反射防止層Bを形成した。
こうして、保護部材(厚み44μm)を得た。
【0075】
(ハードコート層形成材料)
ウレタンアクリルオリゴマー(新中村化学社製、「NKオリゴ UA-53H」)50部、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)20部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)1部および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、「イルガキュア907」)3部を混合し、固形分濃度が50%になるようにメチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。
【0076】
(反射防止層形成用塗工液A)
多官能アクリレート(荒川化学工業株式会社製、商品名「オプスターKZ6728」、固形分20重量%)100重量部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)3重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒として酢酸ブチルを用いて固形分が12重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Aを調製した。
【0077】
(反射防止層形成用塗工液B)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)150重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)50重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Bを調製した。
【0078】
(第一積層部)
上記λ/4部材(延伸フィルム)に紫外線硬化型接着剤(硬化後の厚み1μm)を介して下記の上記ポジティブCプレートを貼り合わせて、位相差部材を得た。
得られた位相差部材を、ガラス板(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm、180mm×250mm)に、上記厚み5μmの粘着剤層を介して貼り合わせた。ここで、位相差部材のポジティブCプレートがガラス板側に位置するように貼り合わせた。
次いで、位相差部材に上記厚み5μmの粘着剤層を介して上記保護部材を貼り合わせ、ガラス板上に第一積層部を得た。ここで、保護部材のアクリルフィルムが位相差部材側に位置するように貼り合わせた。
【0079】
(吸収型偏光膜の作製)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセネックスZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率(Ts)が42.0%以上となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜(吸収型偏光膜)を形成した。
【0080】
(第二積層部)
ガラス板(MATSUNAMI社製、MICRO SLIDE GLASS、品番S、厚み1.3mm、180mm×250mm)に、上記厚み5μmの粘着剤層を介して上記吸収型偏光膜を貼り合わせた。
次いで、吸収型偏光膜に上記厚み5μmの粘着剤層を介して反射型偏光フィルム(日東電工社製の「APCF」)を、反射型偏光フィルムの反射軸と吸収型偏光膜の吸収軸とが互いに平行に配置されるように、貼り合わせた。
次いで、反射型偏光フィルムに上記保護部材を貼り合わせ、ガラス板上に第二積層部を得た。ここで、保護部材のアクリルフィルムが反射型偏光フィルム側に位置するように貼り合わせた。
【0081】
[実施例2]
下記に示す粘着剤層を用いたこと以外は実施例1と同様にして、第一積層部および第二積層部を得た。
(粘着剤層の形成)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキシド0.3重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って7時間重合反応を行った。次いで、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%に調整し、重量平均分子量(Mw)220万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名:コロネートL、東ソー社製)0.6重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)0.075重量部を配合して、アクリル系粘着剤を調製した。
得られたアクリル系粘着剤を基材フィルムに塗工し、得られた基材フィルム上の塗工膜をオーブン内で乾燥し、厚みが15μm、表面粗さRaが16nmの粘着剤層を形成した。なお、オーブン入口からオーブン中央部におけるオーブン内の風速を15m/min以下の範囲内で調整し、乾燥を行った。
【0082】
[比較例1]
粘着剤層の形成において、オーブン内の風速を15m/min以下の範囲内で調整し、厚みが15μm、表面粗さRaが22nmの粘着剤層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、第一積層部および第二積層部を得た。
【0083】
[比較例2]
粘着剤層の形成において、アクリル系粘着剤の塗工厚みを変更し、そして、オーブン内の風速を15m/min以下の範囲内で調整し、厚みが23μm、表面粗さRaが29nmの粘着剤層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、第一積層部および第二積層部を得た。
【0084】
実施例および比較例の第一積層部について、株式会社アイ・システム製のEyeScale-4Wを用いてISC値を測定した。具体的には、測定装置の仕様に基づいて、3CCDイメージセンサーのISC測定モードにて、第一積層部および第二積層部の面内のムラをISC値として算出した。
図4は、ISC値の測定方法を説明するための図であり、光源、測定サンプル、スクリーン、CCDカメラの配置を上から見た概略図である。
図4に示すように、光源L、第一積層部100を3枚、および、スクリーンSをこの順に配置して、スクリーンSに投影された透過画像を、CCDカメラCにより測定した。
測定サンプルは、第一積層部100を3枚並べた集合体とした。3枚の第一積層部100は、互いに0.001~3mmの間隔をあけて並べた。
図4に示すように、光源Lに最も近くに位置する第一積層部100は、隣接するガラス板Gが光源L側に位置するように配置した。真ん中に位置する第一積層部100は、隣接するガラス板GがスクリーンS側に位置するように配置した。スクリーンSに最も近くに位置する第一積層部100は、隣接するガラス板Gが光源L側に位置するように配置した。
光源Lから測定サンプルまでのX軸方向における距離は10~60cmになるように配置した。光源LからスクリーンSまでのX軸方向における距離は70~130cmになるように配置した。CCDカメラCから測定サンプルまでのY軸方向における距離は3~30cmになるように配置した。CCDカメラCからスクリーンSまでのX軸方向における距離は70~130cmになるように配置した。
なお、図を見やすくするめ、
図4において第一積層部の詳細については省略している。測定結果を表1に示す。
【0085】
実施例および比較例について、光学レンズ(Thorabs社製、商品名「LA1145」)と、点光源(浜松ホトニクス社製、型番「L8425-01」)を用いて、見映え(レンズ透過光)を評価した。
具体的には、光学レンズの平坦側に、表面に異物や気泡、変形のスジが入り込まないように、45mmφの円形にカットした第一積層部および第二積層部をこの順にハンドローラーで軽く押圧しながらラミネートした。次いで、微小な気泡の影響を除去するため、加圧脱泡装置(オートクレーブ)による脱泡を行った。脱泡条件は、50℃、0.5MPa、30分とした。脱泡後、室温で30分以上放冷し、測定試料を得た。
点光源、光学レンズ(測定試料)およびスクリーンをこの順に設置し、光学レンズを介した点光源の光をスクリーンに映し、その見映えを評価した。ここで、光学レンズの凸側から点光源の光が入射する位置にレンズを保持具により保持した。点光源からスクリーンまでの距離は1050mmとし、光学レンズからスクリーンまでの距離は130mmとした。
スクリーンに映った光学レンズを介した光を目視により観察し、下記の評価基準により見映えを評価した。測定結果を表1に示す。
(評価基準)
・良好:しわ・うねりは視認されない
・不良:しわ・うねりが視認される
【0086】
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
2 表示システム、4 レンズ部、12 表示素子、14 反射型偏光部材、16 第一レンズ部、18 ハーフミラー、20 第一位相差部材、22 第二位相差部材、24 第二レンズ部、28 吸収型偏光部材、30 第三位相差部材、31 第一保護部材、32 第二保護部材、41 粘着剤層、42 粘着剤層、43 粘着剤層、44 粘着剤層、45 粘着剤層、46 粘着剤層、100 第一積層部、200 第二積層部。