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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161615
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】端子付きボタン型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/559 20210101AFI20241112BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20241112BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M50/559
H01M50/109
H01M50/566
H01M50/547 201
H01M50/543
H01M50/545
H01M50/56
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147604
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2023506954の分割
【原出願日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2021042785
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】平松 裕貴
(57)【要約】
【課題】本発明は、端子付きボタン型電池の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の端子付きボタン型電池は、扁平円筒状の正極缶および負極缶と、前記正極缶および前記負極缶を絶縁封止するガスケットと、前記正極缶および前記負極缶の底面にそれぞれ固定された正極端子および負極端子と、を有する端子付きボタン型電池であって、前記正極缶の底面が、前記負極缶に一体化された状態で厚さ方向外側に凸状に湾曲され、前記正極端子が平坦な正極接続部を有するとともに、前記正極端子が、前記正極缶の底面の径方向に沿って配置され、前記正極接続部の幅方向に沿って前記正極缶の底面の中心を通過する仮想線と、前記正極缶の底面の周縁との間の平面視の領域で、前記正極接続部が前記正極缶の底面に対し背面視傾斜し固定されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平円筒状の正極缶および負極缶と、前記正極缶および前記負極缶を絶縁封止するガスケットと、前記正極缶および前記負極缶の底面にそれぞれ固定された正極端子および負極端子と、を有する端子付きボタン型電池であって、
前記正極缶の底面が、前記負極缶に一体化された状態で厚さ方向外側に凸状に湾曲され、前記正極端子が平坦な正極接続部を有するとともに、
前記正極端子が、前記正極缶の底面の径方向に沿って配置され、
前記正極接続部の幅方向に沿って前記正極缶の底面の中心を通過する仮想線と、前記正極缶の底面の周縁との間の平面視の領域で、前記正極接続部がその中心線を前記正極缶の底面の径方向に対し傾斜させて固定されたことを特徴とする端子付きボタン型電池。
【請求項2】
前記正極端子が、前記領域で、前記正極缶に対し複数の溶接部で溶接されたことを特徴とする請求項1に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項3】
前記正極端子が、第1溶接部と第2溶接部により前記正極缶の底面に固定され、前記第1溶接部が前記領域において前記仮想線に近い側に1つ以上形成され、前記第2溶接部が前記領域において前記正極缶の底面の周縁に近い側に1つ以上形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項4】
前記正極端子が金属板材からなり、前記正極端子の厚さが、0.07~0.15mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項5】
前記正極端子は、前記正極缶と溶接により接続する正極接続部と、前記正極接続部から折れ曲がり負極缶の側に向かって延びる中間部と、前記中間部からさらに折れ曲がり前記正極缶から遠ざかる方向に延び、基板と接続可能な基板接続部を有していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項6】
前記正極端子は、前記正極缶と溶接により接続する正極接続部と、前記正極接続部から略直角に折れ曲がり負極缶の側に向かって延びる中間部と、前記中間部からさらに略直角に折れ曲がり前記正極缶から遠ざかる方向に延び、基板と接続可能な基板接続部を有していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項7】
前記基板接続部が接続される基板の接続面に対し、前記基板接続部が傾斜されている請求項6に記載の端子付きボタン型電池。
【請求項8】
前記負極缶に接続し、前記正極端子の基板接続部とほぼ面一に延在する基板接続部を備えた平板状の負極端子を備えていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の端子付きボタン型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、端子付きボタン型電池に関する。本願は、2021年03月16日に、日本国に出願された特願2021-042785号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
小型電子機器用途に、コイン型またはボタン型である扁平形の酸化銀電池が用いられている。この酸化銀電池は、正極活物質に酸化銀を採用することにより、長期間電圧が安定する特徴を有している(特許文献1参照)。
コイン型の電池を小型電子機器用途に用いる場合、プリント基板への取り付けが求められる場合がある。例えば、リチウム二次電池やCR一次電池といったリチウム電池では、ニッケル板等からなるリード端子を電池に溶接し、半田付けにより基板に取り付ける技術が広く知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-44906号公報
【特許文献2】特開昭62-157060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の酸化銀電池においては、正極缶の底面内側に正極合剤(活物質と導電助剤と結着剤等の混合物)が配置される。さらに、正極缶にセパレータ、ガスケット、電解液、負極合剤を組み込み後、負極缶を被せて組立機に載置し、負極缶周縁側に正極缶をかしめることにより、酸化銀電池が作製される。
ここで正極缶は、かしめの形状や内容積に対する活物質や電解液の充填率、正極缶及び負極缶の材質等の組合せにより、かしめ時の応力が正極缶底面に発生し、正極缶の円周側に対し中心付近を最大として厚さ方向にわずかに膨張する。
【0005】
特に上述の酸化銀電池を含むアルカリ一次電池では、できるだけ大きな放電容量を得るために、活物質と電解液の充填率を上げつつ、電解液の漏液を防ぐために組立時に正極缶を強くかしめている。このとき、正極缶への応力が発生しやすく、正極缶中心付近の膨張が現れやすい傾向にある。また、非水系のボタン型一次電池やボタン型二次電池においても、活物質や電解液の充填率、正極缶及び負極缶の材質、かしめ時の応力といった各要因のバランスにより、アルカリ一次電池と同様に正極缶が膨張することがある。
【0006】
コイン型またはボタン型の電池に溶接する端子は、搭載機器の基板、その他に取り付けるための種々の形状を有しているが、通常、電池の平坦部(正極缶や負極缶の底面)と端子の平板状の部分とが溶接される。
ここで、上述のように中心付近が膨張した正極缶に端子を溶接する場合、正極缶の中心付近を跨いで端子を載置した状態では、正極缶の中心を境に端子の一方では正極缶と端子が接するが、端子のもう一方では正極缶と端子の間に隙間が生じてしまう。
すると、例えば複数の溶接部で端子を電池缶に溶接しようとすると、上述の隙間が影響し、溶接が不十分な箇所が発生し、溶接強度が低下する可能性がある。
【0007】
本願発明は、電池缶と端子を安定して接合した構成の端子付ボタン型電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る端子付ボタン型電池は、扁平円筒状の正極缶および負極缶と、前記正極缶および前記負極缶を絶縁封止するガスケットと、前記正極缶および前記負極缶の底面にそれぞれ固定された正極端子および負極端子と、を有する端子付きボタン型電池であって、前記正極缶の底面が、前記負極缶に一体化された状態で厚さ方向外側に凸状に湾曲され、前記正極端子が平坦な正極接続部を有するとともに、前記正極端子が、前記正極缶の底面の径方向に沿って配置され、前記正極接続部の幅方向に沿って前記正極缶の底面の中心を通過する仮想線と、前記正極缶の底面の周縁との間の平面視の領域で、前記正極接続部がその中心線を前記正極缶の底面の径方向に対し傾斜させて固定されたことを特徴とする。
【0009】
上述の端子付きボタン型電池によると、正極端子の正極接続部画素の中心線を正極缶底面の径方向に対し傾斜させて固定し、正極接続部を正極缶の底面に隙間無く接続することができる。正極接続部をこのように接続することで、正極缶の底面が膨らんでいたとしても、正極端子を正極缶の底面に密着させて固定できる。
【0010】
(2)本発明の一形態に係る端子付ボタン型電池は、前記正極端子が、前記領域で、前記正極缶に対し複数の溶接部で溶接されたことが好ましい。
【0011】
前記領域で複数の溶接部により正極端子が固定されることで、正極缶の底面が膨らんでいたとしても、正極端子を正極缶の底面に密着させて固定できる。
【0012】
(3)本発明の一形態に係る端子付ボタン電池においては、前記正極端子が、第1溶接部と第2溶接部により前記正極缶の底面に固定され、前記第1溶接部が前記領域において前記仮想線に近い側に1つ以上形成され、前記第2溶接部が前記領域において前記正極缶の底面の周縁に近い側に1つ以上形成された構成を採用できる。
【0013】
正極缶の底面が外側に凸状に湾曲し、湾曲した底面に沿うように正極端子が配置されているとして、第1溶接部が正極缶の底面中央側に、第2溶接部が正極缶の底面周縁側にあることで、正極端子を正極缶の底面に確実に固定できる。
【0014】
(4)本発明の一形態に係る端子付ボタン電池においては、前記正極端子が金属板材からなり、前記正極端子の厚さが、0.07~0.15mmである構成を採用できる。
【0015】
正極端子の厚さが、0.07~0.15mmであれば、端子としての強度を確保できる。これに加えて、溶接によって正極端子を正極缶に固定する場合に、溶接機が適正な熱量を付加することができる。正極端子の厚さが上述の範囲より薄い場合は、溶接時に正極端子が破れて部分的に損傷し、溶接強度が向上しないおそれを有する。
【0016】
(5)本発明の一形態に係る端子付きボタン型電池において、前記正極端子は、前記正極缶と溶接により接続する正極接続部と、前記正極接続部から折れ曲がり負極缶の側に向かって延びる中間部と、前記中間部からさらに折れ曲がり前記正極缶から遠ざかる方向に延び、基板と接続可能な基板接続部を有している構成を採用できる。
【0017】
正極接続部から折れ曲がる中間部と、該中間部から更に折れ曲がる基板接続部を有することで、基板の端子パッド等の接続面に電池を取り付ける場合、基板接続部を基板の接続面に望ましい角度で取り付け可能となる。正極缶底面の湾曲に沿って正極端子が傾斜し、基板接続部が接続面に対し、微小角度傾斜したとして、基板接続部と接続面との間に生じる微小間隙は、はんだ溜まりとして有効に利用できる。このため、はんだ付け時の接合性に優れた端子付きボタン型電池を提供できる。
【0018】
(6)本発明の一形態に係る端子付きボタン型電池において、前記正極端子は、前記正極缶と溶接により接続する正極接続部と、前記正極接続部から略直角に折れ曲がり負極缶の側に向かって延びる中間部と、前記中間部からさらに略直角に折れ曲がり前記正極缶から遠ざかる方向に延び、基板と接続可能な基板接続部を有していることが好ましい。
【0019】
この構成により、基板接続部を基板に接続する場合、基板の接合面に対し基板接続部を僅かに傾斜させた状態ではんだ付けできる。基板の接合面に対し基板接続部を僅かに傾斜させた場合、基板の接合面と基板接続部との間に微小な隙間を生成できる。この隙間を伴う部分にはんだ付けを行うと、前述の隙間にはんだを侵入させてはんだ溜まりを生成しつつはんだ付けができる。このため、はんだ付けによる信頼性の高い接合構造を提供できる端子付きボタン型電池を提供できる。
【0020】
(7)本発明の(6)に記載の端子付きボタン型電池において、前記基板接続部が接続される基板の接続面に対し、前記基板接続部が傾斜されていることが好ましい。
【0021】
基板接続部を基板に接続する場合、基板の接合面に対し基板接続部を僅かに傾斜させた状態ではんだ付けできる。基板の接合面に対し基板接続部を僅かに傾斜させた場合、基板の接合面と基板接続部との間に微小な隙間を生成できる。この隙間を伴う部分にはんだ付けを行うと、前述の隙間にはんだを侵入させてはんだ溜まりを生成しつつはんだ付けができる。このため、はんだ付けによる信頼性の高い接合構造を提供できる端子付きボタン型電池を提供できる。
【0022】
(8)本発明の(1)~(7)に記載の端子付きボタン型電池において、前記負極缶に接続し、前記正極端子の基板接続部とほぼ面一に延在する基板接続部を備えた平板状の負極端子を備えている構成を採用できる。
【0023】
正極端子に加え、負極端子を有することで、正極端子の基板接続部と負極端子の基板接続部を基板に接続して電池を取り付けることができる。また、正極端子の基板接続部とほぼ面一に延在する平板状の負極端子を備えることで、端子付きボタン型電池の厚さ方向の大きさを最小化できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る端子付きボタン型電池であるならば、正極端子の正極接続部を正極缶の底面の中心を通過する仮想線と前記正極缶の底面の周縁との平面視の領域で正極接続部を正極缶の底面に対し平面視で傾斜させて固定しているため、正極接続部を正極缶の底面に隙間無く接続することができる。正極接続部をこのように接続することで、正極缶の底面が仮に膨らんでいたとしても、正極端子を正極缶の底面に確実に沿わせて固定した構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る端子付きボタン型電池を示す斜視図である。
図2】同端子付きボタン型電池の平面図である。
図3A】同端子付きボタン型電池の側面図である。
図3B】同端子付きボタン型電池の部分拡大図である。
図4】同端子付きボタン型電池を構成する電池1の断面図である。
図5】同端子付きボタン型電池の電池缶に対する端子の望ましい溶接範囲を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る端子付きボタン型電池を示す平面図である。
図7】第3実施形態に係る端子付きボタン型電池を示す平面図である。
図8】第4実施形態に係る端子付きボタン型電池を示す平面図である。
図9】実施例において製造した端子付きボタン型電池に対して行う溶接強度試験の説明図である。
図10】実施例と比較例における溶接強度と熱量の関係を示すグラフである。
図11】実施例と比較例における溶接深さと溶接強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る端子付きボタン型電池の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し、表示している場合がある。
【0027】
<第1実施形態>
図1図4は本発明に係る第1実施形態の端子付きボタン型電池を示す図面である。
本実施形態の電池1は、後述する正極合剤と負極合剤および電解液などを扁平形の金属缶に収容した電池である。金属缶は正極缶2と負極缶3を有する。正極缶2と負極缶3には、それらを厚さ方向両側から挟むように正極端子10と負極端子11が取り付けられ、これらは溶接により正極缶2または負極缶3に取り付けられている。これにより、本実施形態の端子付きボタン電池100は、電池1に正極端子10と負極端子11とが取り付けられた構造を有している。
【0028】
電池1の内部構造の概要を図4に示す。正極缶2は、例えば、ステンレススチール(SUS)にニッケルメッキを施した材質からなり、偏平円筒状(浅底のカップ状)に成型されている。この正極缶2は、正極合剤5を収容するとともに、正極集電体として機能する。負極缶3は、例えば、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層とを有する3層構造のクラッド材からなり、偏平円筒状(浅底のカップ状)に成型されている。また、負極缶3は、その円形の開口部3aが折り返し形成されており、その開口部3aには、例えば、ナイロン製のリング状のガスケット4が装着されている。
【0029】
正極缶2の円形の開口部2fに、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、該正極缶2の開口部2fを該ガスケット4に向かってかしめて封口することによって、円盤状(ボタン形又はコイン形)のケース8が形成される。該ケース8の内部には、密閉空間8Sが形成されている。ガスケット4は正極缶2と負極缶3を絶縁封止する。
密閉空間8Sには、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5、負極缶3側に負極合剤7がそれぞれ配置されている。
【0030】
この電池1を組み立てる際には、ペレット状に成型された正極合剤5を正極缶2に充填する。また、正極合剤5の上に、セパレータ6を敷設し、正極缶2にガスケット4を圧入する。そして、セパレータ6の上に、ゲル状の負極合剤7を載置し、この上に負極缶3を被せる。さらに、正極缶2の開口縁部をかしめて、ケース8を封口する。
封口状態は、例えば、正極缶2の開口部の高さ位置(H1)と負極缶3の底部の高さ位置(H2)との差である(H2-H1)は、例えば、SR716SW(外径7.9mm、高さ1.6mm)型の酸化銀電池では0.10~0.15mmである。また、IEC(国際電気標準会議)規格において以下のように規定されている。H2≦1.65のとき、0.02mm以上、1.65<H2<2.5のとき0.06mm以上、H2≧2.5のとき0.08mm以上。
【0031】
正極合剤5は、正極活物質、導電剤、電解液、結着剤、添加剤等を含んでいる。正極活物質としては、亜鉛又は亜鉛合金を負極活物質とした場合に正極活物質として使用可能であるものであれば特に限定されない。例えば、正極活物質を、酸化銀又は二酸化マンガン粉末又はそれらの混合物にしてもよい。又は、正極活物質を、オキシ水酸化ニッケル単独、又はコバルト等を固溶したオキシ水酸化ニッケル等にしてもよい。導電助剤は、グラファイトなどを用いることができる。添加剤は、水素吸蔵合金(LaNi)などを用いることができる。
【0032】
負極合剤7は、例えば、負極活物質、伝導度安定剤、ゲル化剤、電解液及び粘弾性調整材、添加剤(増粘剤、樹脂粉末)などを含んでいる。
負極活物質として、例えば、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末を用いることができる。伝導度安定剤としては、酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。また、ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース、又はポリアクリル酸、又はカルボキシメチルセルロースとポリアクリル酸との混合物が好ましい。カルボキシメチルセルロース又はポリアクリル酸を用いることによって、負極合剤7の電解液に対する親液性及び保液性を向上することができる。
【0033】
電解液は、水酸化カリウム水溶液、又は水酸化ナトリウム水溶液、又はそれらの混合液を用いることができる。
粘弾性調整材は、負極合剤7の粘弾性を、良好なハンドリング性が得られる粘弾性とし、且つ生産性を向上するために配合される。この粘弾性調整材としては、強アルカリ性である電解液と反応しない樹脂粉末が用いられる。ここでは、電解液と化学的反応をせず、且つ電解液を吸収しない状態を、電解液と反応しない状態とする。
【0034】
セパレータ6は、正極合剤5と負極合剤7の間に介在され、大きなイオン透過度を有し、かつ、機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ6としては、従来から電池のセパレータに用いられるものを何ら制限無く適用でき、例えば、ポリエチレンフィルム、セロファン、グラフト重合膜等の微多孔膜、若しくは、セルロースからなる吸液紙等の不織布を用いることができる。また、これらの微多孔膜や不織布を組合せて用いてもよい。
【0035】
図1図4に示す電池1は、上述のように正極缶2の開口縁部をかしめて負極缶3と一体化しケース8を構成している。また、ケース8の内部にできるだけ多くの正極合剤5と負極合剤7、電解液を充填している関係から、正極缶2をかしめた後、かしめの応力により、正極缶2の底面中心2aを外側に凸状に膨出するように正極缶2の底面(外面)2Aが湾曲している場合がある。正極缶2の底面2Aが湾曲する場合、湾曲していない場合に比べ、底面中心(外面中心)2aにおける膨出量(湾曲高さ)は100μm以下である。
【0036】
本実施形態においては、この僅かに湾曲した底面2Aに対し、正極端子10がレーザー溶接により接合されている。正極端子10はステンレススチール(SUS)などの良導電性の金属材料の板材(金属板材)からなる。正極端子10を構成する板材の厚さは、0.07mm以上、0.15mm以下であることが望ましい。
正極端子10の厚さが、0.07~0.15mmであれば、端子としての強度を確保できる。これに加えて、溶接によって正極端子10を正極缶2に固定する場合、溶接機が適正な熱量を付加することができる。正極端子10の厚さが上述の範囲より薄い場合は、溶接時に正極端子が破れて部分的に損傷し、溶接強度が向上しないおそれを有する。
正極端子10は、正極缶2の底面2Aに沿って配置される短冊板状の正極接続部10Aと、正極接続部10Aに対し略直角に延出された中間部10Bと、該中間部10Bに対し略直角に延出された平坦な基板接続部10Cを有する。中間部10Bは先窄まり形状であり、中間部10Bには正極接続部10Aの1/4程度の幅を有する基板接続部10Cが延出されている。
基板接続部10Cは、本実施形態の電池1を実装する基板に形成されている端子パッドなどの接続面S(図3参照)にはんだ付けされる部分である。従って、基板接続部10Cは基板に接続可能な接続部となる。
【0037】
負極端子11は、負極缶3の表面に沿って配置される短冊板状の負極接続部11Aと負極接続部11Aの一端から延出された基板接続部11Cを有する。基板接続部11Cは板状の負極接続部11Aを面一に延長するように形成されている。基板接続部11Cは先の正極側の基板接続部10Cと同じように、本実施形態の電池1を実装する基板に形成されている端子パッドなどの接続面Sにはんだ付けされる部分である。負極端子11の基板接続部11Cは、本実施形態の電池1を実装する基板に形成されている端子パッドの大きさ等に合わせて、長さや幅が適宜設定される。一例として図1に示すように基板接続部11Cは、正極端子10の基板接続部10Cと略同一長さ、かつ、略同一幅に形成されている。基板接続部10Cは正極缶2から遠ざかる方向に延出されている。
負極端子11は、基板接続部11Cを正極端子10の基板接続部10Cに隣接させるように負極缶3の底面(外面)に溶接されている。また、負極端子11は、全体として平板状であり、負極缶3の底面に沿って延在されている。
【0038】
前述の正極端子10において、正極接続部10Aの長さは、底面2Aの直径より若干短く形成され、中間部10Bの長さは正極缶2と負極缶3からなるケース8の厚さに相当する長さに形成されている。このため、正極接続部10Aを正極缶2の底面(外面)2Aに沿わせた場合、中間部10Bはケース8の厚さ方向に沿ってケース8の底部から上部まで達し、基板接続部10Cは負極缶3の表面とほぼ面一な位置に配置される。
【0039】
本実施形態では、図1に示すように、正極缶2において底面2Aの直径に沿う位置(径方向)に正極接続部10Aを配置し、中間部10Bをケース8の側面の外側に若干離間させ、基板接続部10Cを負極缶3の表面とほぼ面一になるように配置している。
換言すると、正極端子10は、底面2Aの中心2aと、該中心2aから底面2Aの径方向に沿って該底面2Aの一側の周縁2bを通過するように配置されている。また、正極接続部10Aの長さは、底面2Aの半径より長く、直径より短く形成されている。このため、正極接続部10Aの先端部10aは、底面2Aの中心2aを超え、この中心2aと底面2Aの他側の周縁2dの中間位置まで延出されている。
なお、正極接続部10Aにおいて先端部10aの位置は、中心2aを超えない位置であっても良い。即ち、図3では先端部10aの位置が中心2aより左側に位置しているが、先端部10aの位置は中心2aより右側に位置していても良い。従って、正極接続部10Aの長さが底面2Aの半径より短く形成されていても良い。
【0040】
本実施形態では、正極端子10の正極接続部10Aにおいて、正極缶2の底面の中心2aに面する部分に円形状の第1溶接部15が形成されている。また、正極端子10の正極接続部10Aにおいて、正極缶2の底面の周縁2bに近い位置に、正極端子10の幅方向に離間して2つの円形状の第2溶接部16が正極接続部10Aの中心線を挟むように形成されている。
第1溶接部15と第2溶接部16は、いずれもレーザー溶接により形成された溶接部である。第1溶接部15と第2溶接部16の正極缶底壁に対する最深の溶接深さは、正極缶底壁の厚さに対し、5μm以上であることが望ましい。
第1溶接部15と第2溶接部16の直径は、0.3~0.7mmの範囲であることが望ましい。
【0041】
本実施形態において、第1溶接部15の形成位置は、正極缶2の底面2Aにおいて、中心2aの位置かその近傍であることが望ましい。中心2aの近傍とは、図5に示すように正極接続部10Aの幅方向に沿って中心2aを通過する仮想線Lを描いた場合、仮想線Lと底面2Aの周縁2bとの間に区画される斜線で示す領域Eにおいて、仮想線Lに近い側である。
本実施形態において、第2溶接部16の形成位置は、図5に示すように、仮想線Lと底面2Aの周縁2bとの間に斜線で区画される領域Eにおいて、周縁2bに近い側である。よって、第2溶接部16は、第1溶接部15より周縁2bに近い側に形成される。
従って、正極接続部10Aは、正極缶2の底面2Aのうち、中心以外の第2溶接部16の位置であって、この溶接位置における接線tの傾きで正極缶2の底面2Aに沿って溶接され固定されている。即ち、正極接続部10Aは、正極接続部10Aを配置した底面2Aの径方向を通り底面2Aに垂直な断面視で、底面2Aの中心以外の位置で底面2Aと接線tをなすように傾斜し底面2Aに固定されている。
底面2Aの中心2aと第2溶接部16との距離は、正極缶2の外径に応じて異なり、外径ψ4mm~ψ12mm程度の電池1であれば、1mm~5mm程度の範囲から選択することができる。
【0042】
正極端子10と負極端子11を備えた端子付きボタン型電池100は、電気回路を備えた基板などの端子パッドの接続面Sに、はんだ付けにより取り付けられる。図1に示す状態の正極端子10の基板接続部10Cと負極端子11の基板接続部11Cを備えた端子付きボタン型電池100を基板の端子パッド(接続面)に接触させてはんだ付けすることにより、端子付きボタン型電池100を基板に搭載することができる。
【0043】
本実施形態の端子付きボタン型電池100では、上述の位置に第1溶接部15と第2溶接部16が形成され、更に、底面2Aが100μm以下の範囲で凸状に膨出されている。このため、正極端子10は凸曲面を形成する底面2Aに沿って若干傾斜された状態で正極缶2に取り付けられている。底面2Aが凸状ではなく平面であった場合、ケース8の中心軸線に対し中間部10Bが平行となり、基板接続部10Cが負極缶3の表面とほぼ面一となる。
【0044】
これに対し、上述のように底面2Aが傾斜していると、前述の接線tをなすように傾斜されている正極接続部10Aは底面2Aの中心2a側よりも周縁2bに近い側が負極缶3に近づくように傾斜される。
図3で示すと、正極接続部10Aは、左端側より右端側が下方になるように接線tに沿って傾斜されている。この傾斜により、図3に拡大して示すように、基板接続部10Cも右下がり状態に傾斜する。基板接続部10Cが右下がり状態に傾斜していると、基板上の端子パッドなどの接続面Sに基板接続部10Cを当接させると、基板接続部10Cの基端部(中間部側)が若干接続面Sから浮き上がって微小な隙間Gを生成する。この隙間Gは、はんだ付けの際にはんだが流入し、はんだ溜まりとなる。このため、上述の基板接続部10Cを備えた構造は、はんだ付けに際し、有利な構造となる。
【0045】
上述の構成の端子付きボタン型電池100では、湾曲した底面2Aに沿って正極接続部10Aが配置され、領域Eにおいて、中心2aに近い側に第1溶接部15が形成され、領域Eにおいて第1溶接部15よりも周縁2bに近い側に第2溶接部16が設けられている。このため、底面2Aに沿って正極接続部10Aが配置されている部分またはその近傍に第1溶接部15と第2溶接部16を配置できる。従って、レーザー溶接による確実な溶接部とした第1溶接部15と第2溶接部16を得ることができる。
【0046】
また、上述の構成の端子付きボタン型電池100では、平板状の負極端子11を設けているので、端子付きボタン型電池100として電池厚さを最小化できる。加えて、端子付きボタン型電池100は、上述の正極端子10を有し、前述のように基板の接続面Sに対し隙間Gを介するように傾斜し、はんだ溜まりを利用したはんだ付けが可能であり、その場合に基板接続部11Cは接続するべき基板の接続面Sに隙間無く密着配置させてはんだ付けができる。従って、負極端子11の基板接続部11Cを正極缶2側に曲げるような負荷をかけることなくはんだ付けができる。
また、負極端子11に負荷をかけることなくはんだ付けができるので、負極端子11の変形による正極缶2とのショートを防止できる。
【0047】
図6は、本発明に係る第2実施形態の端子付きボタン型電池を示すものである。この第2実施形態の端子付きボタン型電池20は、第1実施形態の端子付きボタン型電池100に対し、正極端子10の正極接続部10Aに設けた第2溶接部16の位置と個数が異なる。
正極端子10の正極接続部10Aにおいて、正極缶2の底面2Aの周縁2bに近い位置であって、正極端子10の幅方向中央に1つの円形状の第2溶接部16が形成されている点が異なる。
【0048】
第1実施形態の構造では、底面2Aにおいて周縁2bに近い位置に、2つの第2溶接部16を設けていたが、第2実施形態では周縁2bに近い位置に、1つの第2溶接部16を設けている。
図6に示す第2実施形態のように第2溶接部16は1つであっても差し支えない。
第2実施形態の端子付きボタン型電池20であっても、第1実施形態の端子付きボタン型電池1と同等の作用効果を得ることができる。
【0049】
図7は、本発明に係る第3実施形態の端子付きボタン型電池を示すもので、この第3実施形態の端子付きボタン型電池25は、第2実施形態の端子付きボタン型電池20に対し、第3溶接部26を設けた点に特徴を有する。
【0050】
第3実施形態の端子付きボタン型電池25においては、先の第2実施形態において設けた第1溶接部15と第2溶接部16との間に、第3溶接部26を設けた点が異なる。
第3実施形態の端子付きボタン型電池25であっても、第1実施形態の端子付きボタン型電池100と同等の作用効果を得ることができる。
【0051】
図8は、本発明に係る第4実施形態の端子付きボタン型電池を示すもので、この第4実施形態の端子付きボタン型電池30は、第1実施形態の端子付きボタン型電池100に対し、第1溶接部15を2つ設け、更に第2溶接部16を2つ設けた点に特徴を有する。
第4実施形態の構造において、図8に示すように正極接続部10Aの幅方向に沿って中心2aを通過する仮想線Lを描いた場合、仮想線Lに沿う位置に離間して2つの第1溶接部15が形成されている。2つの第2溶接部16も2つの第1溶接部15と平行に並ぶように周縁2bに近い位置に形成されている。
第4実施形態では、2つの第1溶接部15と2つの第2溶接部16を設けているが、各溶接部の設置個数に特に制限はない。
第4実施形態の端子付きボタン型電池30であっても、第1実施形態の端子付きボタン型電池100と同等の作用効果を得ることができる。
【実施例0052】
外径7.9mm、厚さ1.65mmの図4に示す内部構造のボタン型酸化銀電池を試作し、試験に供した。このボタン型電池の正極缶と負極缶はいずれもステンレススチール製であり、正極缶と負極缶の内壁と底壁を構成するステンレススチールの厚さはそれぞれ0.15mm及び0.23mmである。
正極缶と負極缶の内部に図4に示すように正極合剤、セパレータ、負極合剤、電解液を収容し、ガスケットを装着し、正極缶をかしめて封口することで、電池を試作した。
なお、正極缶と負極缶の密閉空間に正極合剤と負極合剤を充填したことから、正極缶のカシメにより、正極缶の底面には、底面中央において100μm以下の凸状の湾曲が生じていた。
以上の構造の電池を複数試作した。正極缶の底面の凸状の湾曲は作成した電池によって異なるが、いずれの電池においても5μm~70μmの範囲内に収まっていた。
【0053】
これらの試作電池に、図1に示す形状の正極端子を溶接により取り付けた。正極端子はステンレススチール(SUS304)製であり、正極端子として以下の表1に示す厚さ0.07mm、0.10mm、0.15mm、0.20mmの4種類の正極端子を使い分けた。正極端子の正極接続部の長さは6mm、幅は2mmである。
溶接位置は、図1に示すように正極缶の底面中心に1ヶ所、底面周縁から底面中心に2mm離間した位置で正極接合部の板幅方向に1mm距離をあけた2ヶ所の合計3ヶ所とした。レーザー溶接機により付加できる熱量を調整できるので、前述の4種類の板厚の正極端子に対し、以下の表2に示すようにレーザー溶接機により付加する熱量を2.6J~6.0Jの範囲、パルス幅2~4msecの範囲で種々設定し、溶接を行った。また、レーザー溶接した正極端子に対し以下の方法に従い溶接強度の測定を行った。
【0054】
「溶接強度試験」
溶接強度試験は、図9に示すように電池1に対し基板接続部10Cの先端を溶接面(底面2A)に対し垂直方向に折り曲げる。次に、この折り曲げた基板接続部10Cの先端を治具に挟み、端子部分を避けるように電池1を押さえ、図9の矢印F方向に基板接続部10Cを引っ張ることで行った。その後、第2溶接部16が底面2Aから剥離した時の力をフォースゲージで記録し、溶接強度とした。
以下の表2に端子厚さ(端子厚さ)とレーザー溶接時の熱量と得られた第2溶接部の溶接強度を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表2の測定結果に示す溶接時の熱量と端子厚さの関係について、図10に示すように横軸に熱量(J)を縦軸に溶接強度(N)をそれぞれ表記したグラフにまとめて示す。
図10のグラフと表2に示すように、溶接強度の下限を10Nとすると、厚さ0.07mm、0.10mm、0.15mmの3種類の正極端子であれば、2.6J~4.5J程度の熱量をかけて溶接することにより、充分に高い溶接強度が得られることがわかる。
厚さ0.20mmの正極端子は、溶接時の熱量を6.0Jと高くしなければ、満足な溶接強度を得ることができない。溶接時の熱量として、6.0Jをかけることは、電池の内部を不要に加熱することとなり、電池活物質や電解液への熱的な悪影響が懸念される。特に、酸化銀電池の場合に、酸化銀の劣化を防止しつつ良好な溶接部を得ることができる。
図10に示す結果から、熱量をかけすぎずに溶接強度を確保するためには、板厚:0.07~0.15mmの範囲の端子が望ましいと考えられる。
【0058】
なお、板厚:0.07mmの正極端子の場合、端子としての溶接と溶接強度は得られるものの、溶接強度測定時に溶接点(第2溶接部)を起点として正極端子が破れてしまうことから、これより正極端子を薄くすることは難しいと考えられる。板厚:0.07mmの正極端子の場合、溶接時の熱量を増加させても溶接強度がほとんど向上しないのは、溶接強度試験の際に、正極端子が破断するためである。
正極端子が薄すぎる場合は、溶接部としての充分な剥離強度を得難くなり、正極端子が0.2mm以上などのように厚くなりすぎると、端子そのものの弾性が高くなりすぎ、正極端子が正極缶の底面に沿うことができなくなる。
【0059】
図11は、正極缶の底壁の厚さ(0.15mm)に対する溶接部の深さと溶接強度の関係を示すグラフである。溶接部の深さが4μmの場合に溶接強度が13.4Nとなり、少なくとも5μm以上の溶接深さのとき、10N以上の必要な溶接強度が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
1…電池、2…正極缶、2A…底面(外面)、2a…中心、2b…一側の周縁、2d…他側の周縁、3…負極缶、4…ガスケット、5…正極合剤、6…セパレータ、7…負極合剤、8…ケース、8S…密閉空間、10…正極端子、10A…正極接続部、10B…中間部、10C…基板接続部、11…負極端子、11C…基板接続部、15…第1溶接部、16…第2溶接部、L…仮想線、G…隙間、S…接続面、100、20、25、30…端子付きボタン型電池。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11