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  • 特開-アンジオテンシン変換酵素阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161617
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】アンジオテンシン変換酵素阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/12 20160101AFI20241112BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A23L33/12
A61K31/19
A61K31/194
A61P9/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147777
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2019181482の分割
【原出願日】2019-10-01
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】網谷 雄志
(72)【発明者】
【氏名】平光 正典
(72)【発明者】
【氏名】斎木 朝子
(57)【要約】
【課題】新規なアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供すること。
【解決手段】脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素阻害剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活、運動不足、精神的ストレス、喫煙、遺伝的要因等を原因とした、高血圧症をはじめとする生活習慣病の増加が問題となっている。
【0003】
高血圧症の治療に用いられる薬物としては、血管を拡張させることで血圧を下げるカルシウム(Ca)拮抗剤、血圧上昇作用を有するアンジオテンシンIIの産生を抑えることで血圧を下げるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンIIの受容体(例えば、アンジオテンシンIIType1受容体)への結合を阻害することで血圧を下げるアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)等が知られており、高血圧を治療する作用機序は様々である。
【0004】
アンジオテンシンIIの産生を抑える組成物として、例えば、特許文献1には、特定の理化学的性質を有し、フラン環およびヒドロキシ基を有する構造である物質を基本骨格とする化合物を有効成分として含有することを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2018-16618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、脂肪族カルボン酸がアンジオテンシン変換酵素阻害作用を有することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものであり、新規なアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素阻害剤に関する。
【0008】
上記アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するため、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を示す。
【0009】
一態様において、上記脂肪族カルボン酸は、脂肪族ヒドロキシ酸であってよい。これにより、アンジオテンシン変換酵素阻害作用がより優れたものとなる。
【0010】
一態様において、上記脂肪族ヒドロキシ酸は、乳酸、リンゴ酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。これにより、アンジオテンシン変換酵素阻害作用がより一層優れたものとなる。
【0011】
一態様において、上記アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、血圧上昇抑制剤であってよい。
【0012】
一態様において、上記アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、炎症反応抑制剤であってよい。
【0013】
一態様において、上記アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、臓器保護剤であってよい。
【0014】
本発明はまた、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アンジオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新規なアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】脂肪族カルボン酸としてリンゴ酸を用いた場合における蛍光代謝物の蛍光強度を測定した結果を示すグラフである。
図2】脂肪族カルボン酸としてクエン酸を用いた場合における蛍光代謝物の蛍光強度を測定した結果を示すグラフである。
図3】脂肪族カルボン酸としてリンゴ酸又はクエン酸を用いた場合におけるACE阻害活性率を算出した結果を示すグラフである。
図4】脂肪族カルボン酸として乳酸を用いた場合におけるACE阻害活性率を算出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0019】
(有効成分)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤の有効成分は、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0020】
脂肪族カルボン酸は、脂肪族基を有するカルボン酸である。脂肪族カルボン酸は、カルボキシ基を1個有する脂肪族カルボン酸(脂肪酸)又はカルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸であってよい。
【0021】
脂肪酸は、飽和脂肪酸であってよく、不飽和脂肪酸であってよい。不飽和脂肪酸は、不飽和結合を1つ有する脂肪酸(単価不飽和脂肪酸)であってよく、不飽和結合を2つ以上有する脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)であってよい。不飽和脂肪酸中の不飽和結合(二重結合)の数は、例えば、1~10、1~8、又は1~5であってよい。不飽和脂肪酸中の不飽和結合は、トランス型であってもシス型であってもよい。
【0022】
脂肪酸は、直鎖状であってよく、分岐状であってよい。脂肪酸の炭素数は、例えば1~15であってよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは3~6である。脂肪酸は、カルボキシ基以外に、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基等の官能基を有していてよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくはヒドロキシ基を有する。脂肪酸としては、具体的には乳酸等が挙げられる。
【0023】
カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸は、飽和の脂肪族カルボン酸であってよく、不飽和の脂肪族カルボン酸であってよい。不飽和の脂肪族カルボン酸は、不飽和結合を1つ有する脂肪族カルボン酸(単価不飽和の脂肪族カルボン酸)であってよく、不飽和結合を2つ以上有する脂肪酸(多価不飽和の脂肪族カルボン酸)であってよい。不飽和の脂肪族カルボン酸中の不飽和結合(二重結合)の数は、例えば、1~10、1~8、又は1~5であってよい。不飽和の脂肪族カルボン酸中の不飽和結合は、トランス型であってもシス型であってもよい。
【0024】
カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸は、例えば2~5個のカルボキシ基を有する脂肪族カルボン酸であってよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくはカルボキシ基を2個又は3個有する脂肪族カルボン酸である。カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸は、直鎖状であってよく、分岐状であってよい。カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸の炭素数は、例えば2~15であってよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは3~6である。カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸は、カルボキシ基以外に、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基等の官能基を有していてよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくはヒドロキシ基を有する。カルボキシ基を2個以上有する脂肪族カルボン酸としては、具体的にはリンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
【0025】
脂肪族カルボン酸は、上記のとおり、カルボキシ基以外に、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基等の官能基を有していてよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくはヒドロキシ基を有する。すなわち、脂肪族カルボン酸は、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくは脂肪族ヒドロキシ酸である。脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等であってよく、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点から、好ましくは乳酸、リンゴ酸及びクエン酸である。脂肪族カルボン酸は、1種単独であってよく、2種以上の混合物であってよい。
【0026】
脂肪族カルボン酸の塩としては、飲食品、医薬部外品又は医薬品として許容可能なものであれば特に制限されない。脂肪族カルボン酸の塩の具体例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。脂肪族カルボン酸の塩は、水和物であってもよい。
【0027】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、有効成分として、脂肪族カルボン酸又はその塩を1種単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0028】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する。アンジオテンシン変換酵素(ACE、ACEI又はACE1ともいう)は、アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する。アンジオテンシンIIは、アンジオテンシンIIType1受容体(AT1R)に結合することにより、AT1Rのシグナルを活性化する。AT1Rは、血管、肝、腎、副腎皮質等に存在するGタンパク質共役型受容体である。
【0029】
アンジオテンシンIIは、AT1Rに結合することにより、細胞質内にCa2+を流入させるため、血管が収縮し血圧が上昇する。そのため、アンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑制することで、血圧上昇を抑制することができる。この場合、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、血圧上昇抑制剤ということもできる。
【0030】
アンジオテンシンIIが血管内皮細胞においてAT1Rに受容されると、ROS(活性酸素種)の増加、ケモカインの発現誘導、及び炎症性サイトカインの放出促進を介して、炎症反応が惹起される。そのため、アンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑制することで、炎症反応を抑制することができる。この場合、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、炎症反応抑制剤ということもできる。
【0031】
アンジオテンシンIIは、腎臓組織のAT1Rに結合することにより、糸球体内圧を上昇させることで、蛋白尿の増加及び/又は糸球体濾過量の増加を引き起こす。そのためアンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑制することで、蛋白尿の増加及び/又は糸球体濾過量の増加を抑制することができる。また、アンジオテンシンIIは、副腎に作用し、アルドステロンの分泌を促進し、心肥大を引き起こす。そのためアンジオテンシン変換酵素を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑制することで、心肥大を抑制することができる。これらの場合、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、腎臓、心臓等の臓器を保護することから、臓器保護剤ということもできる。
【0032】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定することができる。
【0033】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤が経口投与(経口摂取)される場合、1日あたりの経口投与(経口摂取)量は、例えば、600mg以上、650mg以上、700mg以上、750mg以上、800mg以上、850mg以上、900mg以上、950mg以上、又は1000mg以上であってよい。また、アンジオテンシン変換酵素阻害作用の観点からは、上述の1日あたりの経口投与(経口摂取)量の上限に特に制限はないが、製造原価を下げるという観点から、例えば、20000mg以下、15000mg以下、10000mg以下、8000mg以下又は6000mg以下であってよい。また、上記の1日あたりの経口投与(経口摂取)量は、60kg-体重あたりの量とするのが好ましい。
【0034】
例えば、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤が、1日あたり3回経口投与(経口摂取)されるように用いられるものである場合、アンジオテンシン変換酵素阻害剤が200mg以上の有効成分を含有することで、1日あたりの経口投与(経口摂取)量が600mg以上となる。
【0035】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の具体的態様(例えば、形態、用法及び用量等)に応じて、適宜設定されるものであるが、一態様において、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤における有効成分の含有量は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤全量を基準として、例えば、600mg以上、650mg以上、700mg以上、750mg以上、800mg以上、850mg以上、900mg以上、950mg以上、又は1000mg以上であってよい。これにより、上述した1日あたりの経口投与(経口摂取)量を簡便に達成することができる。本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤における有効成分の含有量の上限は、例えば、20000mg以下、15000mg以下、10000mg以下、8000mg以下又は6000mg以下であってよい。
【0036】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、経口投与(経口摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与(経口摂取)されることが好ましい。アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、1日1回投与(摂取)されてもよく、1日複数回に分けて投与(摂取)されてもよい。
【0037】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、ヒトに投与(摂取)されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。
【0038】
(その他成分)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、上記有効成分のみからなるものであってもよく、またアンジオテンシン変換酵素阻害剤の具体的態様に応じて、上記有効成分の他、飲食品、医薬部外品又は医薬品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。
【0039】
(アンジオテンシン変換酵素阻害剤の形状)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、固体、液体(溶液及び懸濁液を含む。)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠等)、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(シロップ剤、ゼリー剤等)、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0040】
(アンジオテンシン変換酵素阻害剤の具体的態様)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、例えば、飲食品組成物(飲料及び食品)、医薬部外品又は医薬品として調製することができる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。また、飲食品組成物には、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。
【0041】
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、日常的に手軽に摂取できることから、飲食品組成物(アンジオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物)であることが好ましい。本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物の形態としては、上述したものが挙げられ、日常的に手軽に摂取できるという観点から、飲料(アンジオテンシン変換酵素阻害用飲料)であることが好ましい。
【0042】
(アンジオテンシン変換酵素阻害剤の製法)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、その具体的態様に応じて、例えば上述の有効成分を配合することで得ることができる。このとき、有効成分である脂肪族カルボン酸及びその塩として、脂肪族カルボン酸又はその塩そのものを使用してもよいし、脂肪族カルボン酸又はその塩を含有する組成物(例えば、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、オレンジ果汁、みかん果汁、梅果汁、りんご果汁、いちご果汁、梨果汁等の果汁、又はヨーグルト、チーズ、日本酒等の加工品)を使用してもよい。
【0043】
(作用効果)
本実施形態に係るアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するものであることから、当該アンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与(摂取)することにより、血圧上昇を抑制し、炎症反応を抑制し、又は臓器を保護することができる。
【実施例0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0045】
<試験例1:アンジオテンシン変換酵素阻害作用の評価1>
リンゴ酸のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を評価した。試験例1及び後述する試験例2におけるACE阻害活性の測定は、非特許文献(Biomedical Research:2011年,6巻,p407-411)に記載の方法を参考にして行った。
【0046】
具体的には、最終用量が50uLとなるよう、100mM HEPES溶液(pH7.5)、300mM NaCl、60μM蛍光基質(Nma-Phe-His-Lys(Dnp))、2.5μM ZnCl、6mU/mL ウサギ肺由来ACE、0.02% Tween20、0.02%NaN、及び脂肪族カルボン酸溶液(リンゴ酸溶液)を加え、37℃で80分間インキュベートしながら、5分おきに反応生成物の蛍光強度を測定した。なお、リンゴ酸溶液の終濃度は、7.46,14.9,22.4,29.8,37.3mMとした。
【0047】
ACEによる蛍光基質分解で生成される蛍光代謝物の蛍光強度を、蛍光プレートリーダー(Ex:340nm、Em:440nm)で測定した。結果を図1に示す。なお、図1中、CNTは脂肪族カルボン酸溶液の代わりに等量の超純水を添加して測定した場合を示す。
【0048】
反応開始から5分経過後の蛍光強度と25分経過後の蛍光強度との差を、蛍光強度変化量として算出した。脂肪族カルボン酸溶液を添加せずに反応させた場合の蛍光強度変化量に対する、脂肪族カルボン酸溶液の各濃度における蛍光強度変化量を、相対活性[%]とした。ACE活性阻害率[%]は、100%から相対活性の値を差し引くことで求めた。結果を表1及び図3に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
60μM蛍光基質(Nma-Phe-His-Lys(Dnp))に代えて48μM蛍光基質(Nma-Phe-His-Lys(Dnp))を使用したこと、及び、6mU/mL ウサギ肺由来ACEに代えて5mU/mL ウサギ肺由来ACEを使用したこと以外は、上記のリンゴ酸の場合と同様にして、クエン酸のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を評価した。なお、クエン酸溶液の終濃度は、7.81,10.4,13.0,15.6,20.8,26.0,31.2mMとした。
【0051】
脂肪族カルボン酸としてクエン酸を用いた場合における蛍光代謝物の蛍光強度を測定した結果を図2に示す。なお、図2中、CNTは脂肪族カルボン酸溶液の代わりに等量の超純水を添加して測定した場合を示す。
【0052】
脂肪族カルボン酸としてクエン酸を用いた場合におけるACE阻害活性率を算出した結果を表2及び図3に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表1及び2、並びに図3に示すとおり、リンゴ酸及びクエン酸には、アンジオテンシン変換酵素阻害作用が認められた。
<試験例2:アンジオテンシン変換酵素阻害作用の評価2>
乳酸のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を評価した。最終用量が50uLとなるよう、100mM HEPES溶液(pH7.5)、300mM NaCl、20μM蛍光基質(Nma-Phe-His-Lys(Dnp))、2.5μM ZnCl、2mU/mL ウサギ肺由来ACE、0.02% Tween20、0.02%NaN、及び乳酸溶液を加え、37℃で60分間インキュベートした。反応開始から60分経過後、0.1M エタノールアミン溶液(pH9.5)100uLを添加して反応を停止させた。なお、乳酸溶液の終濃度は、10.0,20.0,50.0mMとした。
【0055】
ACEによる蛍光基質分解で生成される蛍光代謝物の蛍光強度を、蛍光プレートリーダー(Ex:340nm、Em:440nm)で測定した。
【0056】
反応60分後の蛍光強度を、反応による蛍光強度変化量として扱った。乳酸溶液の代わりに等量の超純水を添加して反応させた場合の蛍光強度変化量に対する、乳酸溶液の各濃度における蛍光強度を、相対活性[%]とした。ACE活性阻害率[%]は、100%から相対活性の値を差し引くことで求めた。結果を表3及び図4に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3及び図4に示すとおり、乳酸には、アンジオテンシン変換酵素阻害作用が認められた。
図1
図2
図3
図4