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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161628
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】抗がん作用を有する化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/835 20060101AFI20241113BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241113BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C07C49/835
A61K31/121
A61K31/337
A61K31/7068
A61P35/00
C07C49/84 C CSP
C07C49/84 D
C07C49/84 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124439
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】アワレ スレス
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓哉
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206BA03
4C206BA05
4C206CA11
4C206CB14
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AB28
4H006AC21
4H006AC28
4H006BB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗がん作用を有する新たな化合物及び医薬組成物を提供する。
【解決手段】(trans-4'-メチル-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)メタノン等の下記化合物(I)。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある。
ただし、R1がメトキシ、R2、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が水素、R3およびR4がヒドロキシである化合物を除く。]
で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項2】
式(I):
【化2】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素およびヒドロキシを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]
で示される、請求項1記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項3】
式(I)において、R~Rがそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、請求項1または2記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項4】
式(I)において、Rが、水素または-O-(C1-6)アルキルである、請求項1から3のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項5】
式(I)において、Rが水素である、請求項1から4のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項6】
式(I)において、Rが、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、請求項1から5のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項7】
式(I)において、Rが、水素、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、請求項1から6のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項8】
式(I)において、Rが、水素である、請求項1から7のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項9】
式(I)において、R~R10がそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキルまたは-O-(C1-6)アルキルである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項10】
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、請求項9記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項11】
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、請求項9または10記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項12】
式(I)において、Rが、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキルまたは-O-(C1-6)アルキルである、請求項9から11のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項13】
式(I)において、R、RおよびRの1つまたはそれ以上がハロゲンである、請求項9から11のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項14】
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、請求項9から13のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項15】
式(I)において、R10が、水素またはハロゲンである、請求項9から14のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩を含有する医薬組成物。
【請求項17】
栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させる、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
腫瘍微小環境を標的とする、請求項16または17記載の医薬組成物。
【請求項19】
膵がんを処置または予防するための、請求項16から18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1から15のいずれかに記載の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩と、少なくとも1つの他の抗がん剤との組み合わせに基づく、医薬組成物。
【請求項21】
他の抗がん剤が、ジェムシタビン、アルブミン懸濁型パクリタキセル、ティーエスワン、ジェムシタビンおよびアルブミン懸濁型パクリタキセル、ジェムシタビンおよびティーエスワン、フォルフィリノックス療法、改変フォルフィリノックス療法、ならびにリポソーマルイリノテカンおよび5FU/LVからなる群の中から選択される、請求項20に記載の組み合わせに基づく医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から15のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させる抗癌剤としての使用。
【請求項23】
請求項1から15のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、腫瘍微小環境を標的とする抗癌剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな抗がん作用を有する式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できる塩に関する。本発明にはまた、そのような化合物を含む医薬組成物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膵がんは全固形がん中、5年生存率が最も低く、極めて予後不良ながんである。最も効果的な治療は外科手術であるが、術前および術後における化学療法剤の果たす役割は大きい。膵がんにおける化学療法剤として、以前は、ゲムシタビンが第一選択薬として使用されていたが、近年では、多剤併用が主流となっている。フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカン等を併用するフォルフィリノックス (FOLFIRINOX) 療法や、本邦のみに適用ではあるが、経口剤として TS-1 も用いられている。さらに、リポソーム製剤として、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル (nab-Paclitaxel) や オニバイド (イリノテカン・リポソーム注射剤) 等、副作用軽減を目指したドラッグデリバリーシステムも活用されている。
【0003】
上記の通り、膵がんにおける化学療法として、種々提案されている。しかし、現在、膵がん治療における効果的な化学療法剤は極めて少なく、またその効果も限定的である。新たな抗がん剤を探索するに当たり、そのような探索手法として、がん細胞の栄養飢餓条件下の生存力を抑える候補薬物に注目する探索である「抗緊縮戦略」という抗がん剤探索領域での新しい方法が提案されている。
【0004】
がん細胞は一般に、無秩序かつ急速に増殖できる特性を有するが、形成された腫瘍血管系は脆弱かつ不規則であるため、栄養や酸素の欠乏した環境に晒されることになる。しかし、がん細胞は低栄養・低酸素といった極限状態におかれると、エネルギー代謝を変えることで生存する特有の耐性機構を示す。特に、PANC-1のようなヒトすい臓がん細胞はこのような耐性を獲得しており、低栄養・低酸素といった厳しい環境下においても長期間の生存が可能となっている。
【0005】
このようながん細胞の栄養飢餓耐性を解除する化合物は、新たな抗がん剤探索の対象であり、そのような化合物の例として、イソパンデュラチンA1やニコライデシンCが挙げられる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nhan Trung Nguyen, et.al., Journal of Natural Producets 2017, 80, 141-148
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
殆どの膵がん患者は速やかに転移を起こし、短期間で死に至る。上記の通り、膵がんにおける化学療法として、種々提案されているが、現在膵がん治療における効果的な化学療法剤は極めて少なく、またその効果も限定的である。従って、さらなる膵がんに対する治療の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ニコライデシンCが、Akt/mTOR活性化阻害物質として、その抗がん作用を発揮し、また、オートファジー活性化阻害剤として、そのがん細胞死を促進する作用を有することを見出し、ニコライデシンC (Nicolaidesin C) に着目した。本発明者らは、新たに合成したニコライデシンC誘導体について、既存の抗がん剤の作用機序とは全く異なる、栄養の豊富な状態では毒性を一切示さず、栄養飢餓状態においてのみがん細胞に毒性を示す活性探索を試みた。
その結果、既存の膵がんに対する抗がん剤とは全く作用機序が異なる新規な抗がん作用を有する化合物を見出し、これらは、抗がん剤特有の深刻な副作用がほとんど無いことが確認された。さらに、本発明化合物単独、および本発明化合物と既存の抗がん剤との併用においても、抗がん効果を発揮する画期的な薬剤を提供することを確認し、本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明は、以下の態様を含む。
<化合物>
[1]
式(I):
【化1】
[式中、R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある。
ただし、R1がメトキシ、R2、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が水素、R3およびR4がヒドロキシである化合物を除く。]
で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【0010】
[2]
式(I):
【化2】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素およびヒドロキシを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]
で示される、[1]記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【0011】
[3]
式(I)において、R~Rがそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、[1]または[2]記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[4]
式(I)において、Rが、水素または-O-(C1-6)アルキルである、[1]から[3]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[5]
式(I)において、Rが水素である、[1]から[4]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[6]
式(I)において、Rが、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、[1]から[5]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[7]
式(I)において、Rが、水素、ヒドロキシまたは-O-(C1-6)アルキルである、[1]から[6]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【0012】
[8]
式(I)において、Rが、水素である、[1]から[7]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[9]
式(I)において、R~R10がそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキルまたは-O-(C1-6)アルキルである、[1]から[8]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[10]
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、[9]記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[11]
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、[9]または[10]記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【0013】
[12]
式(I)において、Rが、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキルまたは-O-(C1-6)アルキルである、[9]から[11]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[13]
式(I)において、R、RおよびRの1つまたはそれ以上がハロゲンである、[9]から[11]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[14]
式(I)において、Rが、水素またはハロゲンである、[9]から[13]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
[15]
式(I)において、R10が、水素またはハロゲンである、[9]から[14]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩。
【0014】
<医薬組成物>
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩を含有する医薬組成物。
[17]
栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させる、[16]記載の医薬組成物。
[18]
腫瘍微小環境を標的とする、[16]または[17]記載の医薬組成物。
[19]
膵がんを処置または予防するための、[16]から[18]のいずれかに記載の医薬組成物。
[20]
[1]から[15]のいずれかに記載の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩と、少なくとも1つの他の抗がん剤との組み合わせに基づく、医薬組成物。
[21]
他の抗がん剤が、ジェムシタビン、アルブミン懸濁型パクリタキセル、ティーエスワン、ジェムシタビンおよびアルブミン懸濁型パクリタキセル、ジェムシタビンおよびティーエスワン、フォルフィリノックス療法、改変フォルフィリノックス療法、ならびにリポソーマルイリノテカンおよび5FU/LVからなる群の中から選択される、[20]記載の組み合わせに基づく医薬組成物。
【0015】
<使用>
[22]
[1]から[15]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させる抗癌剤としての使用。
[23]
[1]から[15]のいずれかに記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、腫瘍微小環境を標的とする抗癌剤としての使用。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、がん微小環境、すなわち栄養飢餓状態における細胞毒性に特に焦点を当てたアプローチであり、がん幹細胞にも効果を発揮する可能性が極めて高いことに加え、複数の作用機序によって、がん細胞を効果的に死滅させることができる画期的医薬化合物を提案するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、栄養飢餓培地(NDM)中の未処理細胞(すなわち、対照)、ニコライデシンC(NICO-C)によって処理されたPANC-1(A)およびMIA PaCa-2(B)細胞の形態学的変化を示す写真である。EB:エチジウムブロマイド、AO:アクリジンオレンジ、位相差は、光線の位相差をコントラストに変換した結果を表し、重ね合わせは、緑蛍光+赤蛍光+各列の白黒画像の重ね合わせを示している。
図2図2は、PANC-1細胞によるコロニー形成に対するニコライデシンC(NICO-C)の効果を示す。図2Aは、異なる濃度のニコライデシンCで処理されたPANC-1細胞コロニーを示す写真である。図2Bは、PANC-1細胞コロニーが占める面積の平均値を示すグラフ(3回の複製)である。 **** p <0.0001、* p <0.05(未処理の対照群と比較した場合)
【0018】
図3図3は、PANC-1(A)およびMIA PaCa-2(B)細胞株のAkt/mTORおよびオートファジーシグナル伝達経路に関与する主要タンパク質に対するニコライデシンC(NICO-C)の効果を示す電気泳動の結果である。
図4図4は、ニコライデシンCによるオートファジーマーカーLC3-IおよびLC3-IIの阻害効果を示す電気泳動の結果である。ニコライデシンC(20μM)の効果とクロロキン(CQ, 25μM)および3-メチルアデニン(3-MA, 5mM)の効果の比較を示す。
図5図5は、ニコライデシンCによるIGF-1によって誘導されるAktのリン酸化の阻害効果を示す電気泳動の結果である。ニコライデシンC(20μM)の効果とAkt阻害物質[(2R)-2-メトキシ-3-オクタデコキシプロピル] [2,3,4,6-テトラヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]カルボネート(10μM)およびの効果の比較を示す。
図6図6は、ヌードマウスにおけるMIA PaCa-2腫瘍の増殖に対するニコライデシンCの効果を示すグラフである。(A)体重、(B)平均腫瘍体積およびSEM(n = 8 /群、低用量= 50 μg / d;高用量= 250 μg / d、腹腔内投与、週5日)、および( C)実験最終日のマウスの腫瘍の湿重量。統計的有意性:二元配置分散分析とTukys検定、** P <0.01、**** P <0.0001
図7A図7Aは、栄養飢餓培地(NDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)におけるPANC-1ヒト膵がん細胞株に対するニコライデシンC(NICO-C)の選択的細胞毒性活性を示すグラフである。
図7B図7Bは、栄養飢餓培地(NDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)におけるPANC-1ヒト膵がん細胞株に対する本発明化合物(化合物NICO-1からNICO-12)の選択的細胞毒性活性を示すグラフである。
図7C図7Cは、栄養飢餓培地(NDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)におけるPANC-1ヒト膵がん細胞株に対する本発明化合物(化合物NICO-13からNICO-24)の選択的細胞毒性活性を示すグラフである。
図7D図7Dは、栄養飢餓培地(NDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)におけるPANC-1ヒト膵がん細胞株に対する本発明化合物(化合物NICO-25からNICO-31)およびニコライデシンC(NICO-C)の選択的細胞毒性活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲に用いられる以下の用語は、次に示す意味を有する。
【0020】
本明細書で用いられる用語「(C1-6)アルキル」とは、1から6個の炭素原子を含む分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素を意味する。(C1-6)アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、(C1-6)アルキルは、メチル、エチルまたはイソプロピルである。
【0021】
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシ」とは、-OH基であり、ヒドロキシル基、水酸基と称されることもある。
【0022】
本明細書で用いられる用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。好ましくは、ハロゲンは、フッ素、塩素または臭素である。
【0023】
本明細書で用いられる用語「ハロ(C1-6)アルキル」とは、同一または異なる炭素原子の一つまたはそれ以上の水素が同一または異なるハロゲンによって置換されている上記に定義される(C1-6)アルキルを意味する。ハロ(C1-6)アルキルの例としては、フルオロメチル、クロロメチル、フルオロエチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、ジフルオロエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で用いられる用語「-O-(C1-6)アルキル」とは、-O-(上記に定義される(C1-6)アルキル)の一価基であり、アルコキシ、アルキルオキシと称されることもある。「-O-(C1-6)アルキル」の例としては、-O-C1-6アルキル(即ち、C1-6アルコキシ)、-O-C1-4アルキル(即ち、C1-4アルコキシ)等が挙げられる。さらなる具体例としては、メトキシ(CH3O-)、エトキシ(CH3CH2O-)、n-プロポキシ(CH3(CH2)2O-)、イソプロポキシ((CH3)2CHO-)、n-ブトキシ(CH3(CH2)3O-)、イソブトキシ((CH3)2CHCH2O-)、tert-ブトキシ((CH3)3CO-)、sec-ブトキシ(CH3CH2CH(CH3)O-)、n-ペンチルオキシ(CH3(CH2)4O-)、イソペンチルオキシ((CH3)2CHCH2CH2O-)、ネオペンチルオキシ((CH3)3CCH2O-)、tert-ペンチルオキシ(CH3CH2C(CH3)2O-)、1,2-ジメチルプロポキシ(CH3CH(CH3)CH(CH3)O-)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で用いられる用語「-S-(C1-6)アルキル」とは、-S-(上記に定義される(C1-6)アルキル)の一価基であり、アルキルチオと称されることもある。「-S-(C1-6)アルキル」の例としては、「C1-4アルキルチオ」、「C1-3アルキルチオ」が挙げられる。「-S-(C1-6)アルキル」の具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、イソプロピルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオ、sec-ブチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、1,2-ジメチルプロピルチオ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で用いられる用語「(C3-6)シクロアルキル」とは、3から6個の炭素原子を含む飽和単環式炭化水素環を意味する。(C3-6)シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で用いられる用語「(C6-10)アリール」とは、6から10個の炭素原子を含む芳香族炭化水素環を意味する。(C6-10)アリール基の例としては、フェニルまたはナフチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で用いられる用語「(C5-10)ヘテロアリール」とは、5から10個の原子を含む芳香族の単環式または芳香族の二環式ヘテロ環系を意味する。(C5-10)ヘテロアリール基の例としては、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、フリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、チエニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゼピニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾオキサゾロニル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、およびそれらのN-オキシド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で用いられる用語「立体異性体」は、式(I)で示される化合物においてそれらの原子の空間的配置が異なっている異性体を意味する。本明細書に開示している化合物は、単一の立体異性体、ラセミ体、ならびに/またはエナンチオマー(鏡像異性体)および/もしくはジアステレオマーの混合物として存在することができる。このような単一の立体異性体、ラセミ体およびそれらの混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれている。
【0030】
本明細書で用いられる用語「製薬的に許容できる塩」とは、活性化合物、すなわち式(I)で示される化合物の塩を意味し、このような塩は、本明細書に記載されている化合物に見出される特定の置換基に応じて、適切な酸または酸誘導体との反応によって調製される。
【0031】
(実施の態様)
本発明は、式(I)の化合物として説明される全ての化合物を制限なしに包含するが、本発明の好ましい態様を、本明細書中、以下の実施の態様として説明しておく。
【0032】
一実施態様では、本発明は、式(I):
式(I):
【化3】
[式中、R~Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素およびヒドロキシを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]
で示される、請求項1記載の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩;
に関する。
【0033】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R~Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、またはハロ(C1-6)アルキルであり、これらはいずれも(水素およびヒドロキシを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、またはハロ(C1-6)アルキルであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその立体異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩に関する。
【0034】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R~Rはそれぞれ独立して、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその立体異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩に関する。
【0035】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R~Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、またはハロ(C1-6)アルキルであり、これらはいずれも(水素およびヒドロキシを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその立体異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩に関する。
【0036】
別の実施態様では、本発明は、式(I)[式中、R~Rはそれぞれ独立して、-(C6-10)アリールまたは-(C5-10)ヘテロアリールであり、これらはいずれも、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがあり;
R~R10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、またはハロ(C1-6)アルキルであり、これらはいずれも(水素、ヒドロキシおよびハロゲンを除く)、-(C1-6)アルキル、-O-(C1-6)アルキル、-S-(C1-6)アルキル、-(C3-6)シクロアルキル、ハロ(C1-6)アルキル、-N(CH3)2、ハロゲン、ヒドロキシ、-NH2および-CNから選択される一つまたはそれ以上の置換基によって置換されていることがある]で示される化合物;もしくはその立体異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩に関する。
【0037】
一実施態様では、本発明は、式(I):
【化4】
[式中、Rは、水素、-O-(C1-6)アルキル;
Rは、水素;
Rは、ヒドロキシ、-O-(C1-6)アルキル;
Rは、水素、ヒドロキシ、-O-(C1-6)アルキル;
Rは、水素;
Rは、水素、ハロゲン;
Rは、水素、ハロゲン;
Rは、水素、ハロゲン、-O-(C1-6)アルキル;
Rは、水素、ハロゲン;
R10は、水素、ハロゲン]
で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩;
に関する。
【0038】
(本発明化合物の有用性)
以下、本発明化合物の有用性を、栄養飢餓耐性を解除する化合物として知られているニコライデシンC(非特許文献1)との対比において、説明する。
ニコライデシンCは、式:
【化5】
で示される化合物である(Gu,J.-Q., et al., Nat.Prod. 2002, 65, 1616-1620)。
【0039】
選択的細胞毒性活性
本発明者らは、栄養飢餓培地(NDM)およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)におけるPANC-1ヒト膵がん細胞株に対する効果を確認し、ニコライデシンC(非特許文献1)と同様(図1A)、本発明化合物であるニコライデシンC誘導体は、選択的細胞毒性活性を示すことを証明した(図1B、CおよびD)。すなわち、腫瘍微小環境を標的とする抗がん性物質としての本発明化合物は、栄養飢餓条件下における腫瘍細胞に対して選択的に細胞毒性を示すことが、見出された。
【0040】
腫瘍塊のなかには線維芽細胞、免疫細胞および血管細胞などの非腫瘍細胞が多く存在し、腫瘍の成長をサポートしている。これらの細胞や環境を総称して「腫瘍微小環境」と称される。その特徴は、特異的に低酸素および低栄養環境となっており、酸素欠乏、糖欠乏シグナルなどにより誘導された未熟な腫瘍血管が多く形成されるため、循環不全に陥っている。また、腫瘍微小環境下では、がん細胞を供給し、腫瘍組織を再構築する能力を備えたがん幹細胞の発現上昇が認められており、このようながん幹細胞は悪性度が高くまた転移能も高いとされている。本発明化合物は、このような腫瘍微小環境を標的としているため、がん幹細胞に対する抗がん作用が期待される。
【0041】
選択的細胞毒性活性とは、富栄養状態では毒性を示さず、栄養飢餓条件下においてのみ、細胞毒性を示す活性を意味する。本発明化合物は、このような選択的細胞毒性を有しているため、正常細胞には細胞毒性を示さず、がん幹細胞特異的に細胞毒性を示すことが期待される。
【0042】
Akt/mTOR活性化阻害物質
本発明の化合物ニコライデシンC誘導体は、IGF-1によって誘発されるAkt活性化を阻害することから、がん処置の新たな候補化合物として期待される。Aktはヒトの腫瘍の大部分で活性化されているセリン/スレオニンキナーゼであり、細胞の生存、増殖、代謝、血管新生、遊走、浸潤などの腫瘍細胞の機能を制御している。Aktは栄養飢餓時に活性化され、栄養飢餓に対する耐性を付与する。したがって、Aktシグナル伝達経路を標的とすることは、がん処置における主要な治療戦略の1つである。図4はAkt/mTORの活性化に対するニコライデシンCのヒト膵がん細胞(PANC-1およびMIA-PaCa 2)に対する効果を示している。本発明化合物はニコライデシンC同様に、Akt/mTOR活性化を阻害する。
【0043】
オートファジー活性化阻害物質
本発明の化合物ニコライデシンC誘導体は、オートファジー活性化の阻害剤として、がん処置ための治療薬になる。オートファジーは、がん細胞の活発な成長による腫瘍微小環境内の栄養素の枯渇など、様々な要因によって活性化される。オートファジーの活性化によりがん細胞は、腫瘍微小環境内の細胞破片をリサイクルしてエネルギー生産を確保し、細胞増殖を促進する。したがって、オートファジーは、腫瘍微小環境内の栄養飢餓に対する耐性を付与することができる。本発明は、ニコライデシンC誘導体がオートファジーマーカー(LC3-IおよびLC3-II)を効果的に阻害し、がん細胞死を促進することを明らかにした。オートファジー阻害物質は、初期または後期阻害物質として分類できる。3-メチルアデニン(3-MA)などの初期段階の阻害物質は、膜のリクルートの際に干渉し、オートファゴソーム形成を阻害する。クロロキン(CQ)などの後期阻害物質は、リソソームの酸性化を妨げ、オートファゴソームの分解を阻害する。PANC-1細胞をCQで処理すると、栄養飢餓培地(NDM)においてLC3-IIの蓄積量が増加することが判明した。一方、3-MAはLC3-IIの発現を抑制した。本発明では、ニコライデシンCによる処理が、オートファジーマーカーであるLC3-IとLC3-IIの両方の発現を早い段階で抑制することが証明された(図5)。本発明化合物はニコライデシンC同様に、オートファジーの活性化を阻害する。
【0044】
さらに、本発明では、ニコライデシンCによるがんコロニー形成に対する効果を証明し、ニコライデシンCががんの処置に有用であることを別の側面でも証明した(図3)。がんの浸潤・転移の際には、侵入したがん細胞が外来組織の微小環境に適応して、がん細胞の小さなコロニーを形成し(微小転移)、それが大きな腫瘍に成長する。この現象が「コロニー形成」と呼ばれる。膵臓腫瘍患者の多くはは、診断時からすぐに肝転移を起こす。膵臓がんの細胞は、栄養の行き届く臓器に移動してコロニーを形成する傾向がある。本発明では、ニコライデシンCがPANC-1がん細胞のコロニー形成を濃度依存的に効果的に阻害することを示した。本発明化合物はニコライデシンC同様に、がん細胞のコロニー形成を阻害する。
【0045】
ニコライデシンCは、がん細胞を死滅させる形態変化を伴うアポトーシスを誘導することから(図2)、がん処置に有用であると期待される。本発明化合物はニコライデシンC同様に、アポトーシスを誘導し、がんの処置に有用であると期待される。
【0046】
本発明は、ニコライデシンCがMIA PaCa-2 がん細胞異種移植モデルマウスにおける腫瘍の成長を濃度依存的に阻害することを証明し(図7)、がん処置に有用である治療薬を提供するものである。本発明化合物はニコライデシンCと同様に、がん細胞異種移植モデルマウスにおける腫瘍の成長を阻害する。
【0047】
調製方法
本発明は、別の形態として、本明細書に記載されている式(I)で示される化合物の調製方法に関する。
【0048】
反応式1は、式(I)で示される化合物の一般的な調製方法[ここに、R1-R10は、上記で定義した通りである]を示している。
【化6】
【0049】
工程1:カルコン化合物の一般合成法
Arまたは窒素雰囲気下、アセトフェノン化合物1を、アルコール系溶媒などの極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、あるいはこれらの溶媒および水から成る混合溶液に対し、対応するベンズアルデヒド化合物2および水酸化バリウム八水和物を室温下、順次加えた後、約50-約80℃、具体的には60℃で、およそ終日反応させる。
【0050】
ロータリーエバポレーター等を用いて、メタノール等の溶媒を留去した後、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、好ましくはトルエンなどの極性溶媒で抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶媒を留去し、得られた残渣を、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、目的とするカルコン化合物を得る。
【0051】
工程2:式(I)で示される化合物の調製
Arまたは窒素雰囲気下、カルコン化合物の極性溶媒溶液、具体的にはトルエン、ベンゼン溶液に対して、室温にてミルセンを加え、封管中、例えば、160℃で7日間撹拌する。ロータリーエバポレーター等を用いて溶媒を留去した後、得られた残渣を、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、所望の化合物およびその位置異性体の混合物が得られる。
【0052】
次に、得られた混合物の、例えばメタノールおよびジクロロメタンから成る混合溶液に対して、p-トルエンスルホン酸一水和物 (133 mg, 0.07 mmol) を加え、40 ℃ で16時間撹拌する。反応終了後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー により精製することで、目的とする式(I)で示される化合物が得られる。
【0053】
式(I)で示される化合物の製薬的に許容できる塩の調製
式(I)で示される化合物は、適切な酸または酸誘導体との反応によって、製薬的に許容できる塩に変換することができる。適当な製薬的に許容できる塩は、当業者には明らかである。前記塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸、または有機酸、例えばシュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、安息香酸、p-トルイル酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸を用いて形成される。
【0054】
式(I)で示される化合物の立体異性体の調製
式(I)で示される化合物の立体異性体は、以下に示す一つまたはそれ以上の通常の方法によって調製することができる。
a. 一つまたはそれ以上の試薬を、それらの光学活性体で用いることができる。
b. 光学的に純粋な触媒、または金属触媒とともに不斉配位子を、還元過程において、用いることができる。前記金属触媒は、ロジウム(rhodium)、ルテニウム(ruthenium)、インジウム(indium)等でよい。前記不斉配位子は、好ましくは不斉ホスフィン(chiral phosphine)である。
【0055】
c. 立体異性体の混合物は、キラル酸またはキラルアミンまたはキラルアミノアルコール、またはキラルアミノ酸でジアステレオマー塩を形成するような通常の方法によって、光学分割することができる。次いで、得られたジアステレオマーの混合物は、分別再結晶、クロマトグラフィー等の方法によって分離することができ、その後、分割した材料/塩から光学活性生成物を単離させる工程を追加的に行う。
d. 立体異性体の混合物は、キラル酸またはキラル塩基で形成されたジアステレオマー塩を光学分割する、微生物分解のような通常の方法によって分割することができる。用いることができるキラル酸は、酒石酸、マンデル酸、乳酸、カンファースルホン酸、アミノ酸等でよい。用いることができるキラル塩基は、キナアルカロイド、ブルシン(brucine)、またはリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸でよい。
【0056】
別の実施態様では、適切な製薬的に許容できる塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩を含む。
【0057】
<医薬組成物>
本発明は、別の形態として、本発明の式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩を含有する医薬組成物、特に、膵がんを処置または予防するための本発明医薬組成物に関する。
本発明によれば、抗がん剤特有の深刻な副作用を回避することができ、他方、がん細胞では、栄養飢餓状態であればある程、増殖能、転移能さらには悪性度が高いことが明らかになりつつある。これは、がん幹細胞に密接に関わっていると考えられ、事実、栄養飢餓状態においてはがん幹細胞の発現が著しく増大している。がん幹細胞を効果的に死滅させなければ、やがてがんの再発を招くことになり極めて深刻である。本発明は、がん微小環境、すなわち栄養飢餓状態における細胞毒性に特に焦点を当てたアプローチであり、このがん幹細胞にも効果を発揮する可能性が極めて高いことに加え、複数の作用機序によって、がん細胞を効果的に死滅させることができる画期的薬剤の提案である。
【0058】
本明細書において、「処置」とは、(1)膵がんの発症を遅延させる; (2)膵がんの症状の進行、増悪または悪化を減速または停止させる; (3)膵がんの症状の寛解をもたらす; あるいは(4)膵がんを治癒させることを目的とする方法またはプロセスを意味する。処置は、予防的措置として疾患または状態の発症前に施してもよいし、あるいはまた、処置は、疾患の開始後に施してもよい。
【0059】
本明細書において、「予防」とは、膵がんの発症を予防することを意味する。
【0060】
本発明において医薬組成物とは、通常、疾患の処置もしくは予防、あるいは検査・診断のための薬剤を意味する。
【0061】
本発明において、膵がんとは、膵臓の細胞にできるがんであり、膵臓の組織に悪性(がん)細胞が見られ、外分泌がんとも呼ばれる。
【0062】
さらに別の形態では、本発明は、膵がんの処置または予防に使用するための、式(I)で示される化合物に関する。
【0063】
さらに別の形態では、本発明は、膵がんを処置または予防するための医薬の製造における、式(I)で示される化合物の使用に関する。
【0064】
さらに別の形態では、本発明は、式(I)で示される化合物と、一つまたはそれ以上の他の抗がん剤との組み合わせに関する。本発明における化合物の組み合わせの例としては、ジェムシタビン、アルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-パクリタキセル)、ティーエスワン(TS-1)、ジェムシタビン+アルブミン懸濁型パクリタキセル、ジェムシタビン+ティーエスワン、フォルフィリノックス(FOLFIRINOX;5-FU、イリノテカン、オキサリプラチンの3種類の抗がん剤に5-FUの増強剤であるレボホリナートを加えた多剤併用の治療法)、改変フォルフィリノックス(mFOLFIRINOX)、リポソーマルイリノテカン+5FU/LVとの組み合わせを挙げることができる。
【0065】
さらに別の形態では、本発明は、式(I)で示される化合物の医薬組成物に関する。式(I)で示される化合物、もしくはその立体異性体および製薬的に許容できるそれらの塩を治療に使用するには、通常、それらは標準的な製薬プラクティスによって医薬組成物に製剤化される。
【0066】
本発明の医薬組成物は、一つまたはそれ以上の製薬的に許容できる賦形剤を用いて、通常の方法によって製剤化することができる。製薬的に許容できる賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、滑剤、ポリマー、コーティング剤、溶媒、共溶媒、保存剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、甘味剤、香料、抗酸化剤、着色剤、溶解剤、可塑剤、分散剤等である。賦形剤は、微結晶セルロース、マンニトール、ラクトース、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、トーモロコシデンプン(corn starch)またはその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸または水添植物油、アラビアガム、マグネシア、グルコース、脂肪、ワックス、天然油もしくは硬化油、水、生理食塩水またはアルコール、例えばエタノール、プロパノールもしくはグリセリン、グルコース溶液もしくはマンニトール溶液等のような糖液、または多数の賦形剤の混合物の中から選択される。
【0067】
本発明の化合物は、錠剤、コーティング錠、カプセル、粉末、顆粒、液剤、半固剤、ゲル、エアロゾル、乳剤、エリキシル剤等の形態に製剤化することができる。このような医薬組成物およびその製造方法は周知である。
【0068】
さらに別の態様では、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはその製薬的に許容できる塩を、1~90重量%、5~75重量%および10~60重量%含む。医薬組成物中の本発明化合物またはその製薬的に許容できる塩の量は、約1mg~約1000mg、または約5mg~約500mg、または約5mg~約250mgの範囲、またはそれよりも広い範囲の任意の範囲にあってよい。本発明化合物の具体的な用量は、患者の年齢および体重、処置される疾患の性質および重症度のような要素および他の要素によって異なってくる。
【0069】
本発明は別の態様として、本発明の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させる抗癌剤としての使用に関する。
また、さらに別の態様として、本発明は、本発明の化合物、もしくはその立体異性体、互変異性体、または製薬的に許容できるそれらの塩における、腫瘍微小環境を標的とする抗癌剤としての使用。
【実施例0070】
本発明の化合物を、適切な材料および条件を用いて、以下の実験手順によって調製した。以下の実施例は、単なる例示として示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
実施例1
(trans-4'-メチル-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)メタノン (Nico-1)
【化7】
工程1:(E)-3-(4-メチルフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3a)
Ar雰囲気下、アセトフェノン1 (1.25 mmol) のエタノール (7.5 mL) および水 (1.5 mL) から成る混合溶液に対して、対応するベンズアルデヒド2 (2.00 mmol) および水酸化バリウム八水和物 (631 mg, 2.00 mmol) を室温下、順次加えた後、60 ℃ で22時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、ジクロロメタン (1.5 mL × 3) で抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 30 : 1 ~ 3 : 1) により精製することで目的とするカルコン 3a を得た。
【0072】
収率: 94%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 2.36 (3H, s), 3.38 (6H, s), 3.82 (3H, s), 5.11 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.93 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.18 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.32 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.41 (2H, d, J = 8.0 Hz).
【0073】
工程2:実施例1の表題化合物 (Nico-1)
Ar雰囲気下、上記工程1にて調製したカルコン 3a (1.40 mmol) のベンゼン (15 mL) 溶液に対して、室温にてミルセン (3.17 mL, 75%, 14.0 mmol) を加え、封管中、160 ℃ で7日間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いてベンゼンを留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 50 : 1 ~ 3 : 1) により精製することで望む成績体およびその位置異性体の混合物 (約 4 : 1) を得た。次に得られた混合物のメタノール (2.5 mL) およびジクロロメタン (2.5 mL) から成る混合溶液に対して、p-トルエンスルホン酸一水和物 (133 mg, 0.07 mmol) を加え、40 ℃ で16時間撹拌した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : 酢酸エチル = 50 : 1 ~ 10 : 1) により精製することで目的とするNico-1を得た。
【0074】
調製例
実施例1の工程1に実質的に従い、以下のカルコン化合物を調製した。
(E)-3-(4-メトキシフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3b)
収率: 97%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.88 (6H, s), 3.82 (3H, s), 3.83 (3H, s), 5.12 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.86 (1H, d, J = 16.2 Hz), 6.89 (2H, d, J = 9.0 Hz), 7.30 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.47 (d, J = 9.0 Hz).
【0075】
(E)-3-(4-フルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3c)
収率: 94%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.37 (6H, s), 3.81 (3H, s), 5.10 (4H, s), 6.42 (2H, s), 6.88 (1H, d, J = 12.8 Hz), 7.03-7.06 (2H, m), 7.30 (1H, d, J = 12.8 Hz), 7.47-7.50 (2H, m).
【0076】
(E)-3-(4-クロロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3d)
収率: 84%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 3.82 (3H, s), 5.12 (4H, s), 6.43 (2H, s), 6.94 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.30 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.45 (2H, d, J = 8.6 Hz).
【0077】
(E)-1-(3-メトキシ-6-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オン (3e)
収率: 99%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.50 (3H, s), 3.87 (3H, s), 5.26 (2H, s), 6.63 (1H, dd, J = 8.4, 2.0 Hz), 6.73 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.36-7.41 (4H, m), 7.50 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.58-7.60 (2H, m) 7.67 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.72 (1H, d, J = 8.4 Hz).
【0078】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オン (3f)
収率: 84%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.98 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.30 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.31 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.36-7.40 (3H, m), 7.51-7.53 (2H, m).
【0079】
(E)-1-(2-メトキシ-6-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オン (3g)
収率: 94%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.38 (3H, s), 3.78 (3H, s), 3.14 (2H, s), 6.66 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.82 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.97 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.31 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.32 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.36-7.39 (3H, m), 7.50-7.53 (2H, m).
【0080】
(E)-1-(6-メトキシ-3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルプロパ-2-エン-1-オン (3h)
化合物3hは、G. Valdameri et al. J. Med. Chem., 2012, 55, 3193-3200.の記載に従って、調製した。
【0081】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3i)
収率: 95%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.38 (6H, s), 3.83 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.85 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.86 (1H, d, J = 16.4 Hz), 6.89 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.26 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.29 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.46 (2H, d, J = 8.4 Hz).
【0082】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3j)
収率: 84%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.37 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 9.2 Hz), 6.90 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.06 (1H, d, J = 9.2 Hz), 7.08 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.30 (2H, t, J = 8.4 Hz), 7.49-7.53 (2H, m).
【0083】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(4-クロロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3k)
収率: 85%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.38 (6H, s), 5.12 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.94 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.27 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.30 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.35 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.45 (2H, d, J = 8.4 Hz).
【0084】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2-フルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3l)
収率: 90%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.05 (1H, d, J = 16.6 Hz), 7.07 (1H, td, J = 8.0, 0.8 Hz), 7.17 (1H, td, J = 8.0, 0.8 Hz), 7.30 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.33-7.39 (1H, m), 7.49 (1H, d, J = 16.6 Hz), 7.58 (1H, td, J = 8.0, 2.0 Hz).
【0085】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(3-フルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3m)
収率: 88%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.95 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.06-7.10 (1H, m), 7.20-7.23 (1H, m), 7.27-7.35 (4H, m).
【0086】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3n)
収率: 55%; 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 5.16 (4H, s), 6.87 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.89 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.13-7.25 (2H, m), 7.23 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.30 (1H, t, J = 8.5 Hz), 7.34 (1H, ddd, J = 16.0, 8.5, 2.0 Hz).
【0087】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3o)
収率: 100%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.87 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.06 (1H, d, J = 16.6 Hz), 7.06-7.13 (1H, m), 7.15-7.22 (1H, m), 7.27-7.35 (2H, m), 7.46 (1H, d, J = 16.6 Hz).
【0088】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,4-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3p)
収率: 83%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.84 (1H, ddd, J = 11.2, 8.4, 2.4 Hz), 6.86 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.88-6.94 (1H, m), 6.99 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.30 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.42 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.56 (1H, m).
【0089】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,5-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3q)
収率: 78%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.00 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.04 (2H, td, J = 6.2, 2.1 Hz), 7.23-7.28 (1H, m), 7.30 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.43 (1H, d, J = 16.4 Hz).
【0090】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,6-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3r)
収率: 92%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.42 (6H, s), 5.15 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.92 (2H, t, J = 8.4 Hz), 7.26 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.29 (2H, t, J = 8.4 Hz), 7.48 (1H, d, J = 16.4 Hz).
【0091】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(3,5-ジフルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3s)
収率: 93%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.83 (1H, tt, J = 6.4, 2.2 Hz), 6.86 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.93 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.00-7.05 (2H, m), 7.22 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.31 (1H, t, J = 8.8 Hz).
【0092】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2-クロロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3t)
収率: 94%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 5.15 (4H, s), 6.87 (2H, d, J = 8.0 Hz), 6.94 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.28-7.33 (3H, m), 7.37-7.40 (1H, m), 7.67-7.70 (1H, m), 7.74 (1H, d, J = 16.4 Hz).
【0093】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(3-クロロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3u)
収率: 88%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.86 (2H, d, J = 7.6 Hz), 6.96 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.25 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.28-7.36 (4H, m), 7.40 (1H, dt, J = 7.6, 1.6 Hz), 7.49 (1H, t, J = 1.6 Hz).
【0094】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,3-diクロロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3v)
収率: 63%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 5.15 (4H, s), 6.87 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.91 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.24 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.31 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.48 (1H, dd, J = 8.4, 1.2 Hz), 7.58 (1H, dd, J = 8.0, 1.2 Hz), 7.73 (1H, d, J = 16.0 Hz).
【0095】
(E)-1-(2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(2,4-diクロロフェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3w)
収率: 82%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 5.14 (4H, s), 6.87 (2H, J = 8.4 Hz), 6.91 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.26-7.29 (1H, m), 7.30 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.41 (1H, d, J = 1.2 Hz), 7.62 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.66 (1H, d, J = 16.2 Hz)
【0096】
(E)-3-(2-フルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3x)
収率: 99%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 3.83 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.44 (2H, s), 7.05 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.02-7.10 (1H, m), 7.16 (1H, t, J = 7.4 Hz), 7.32-7.38 (1H, m), 7.52 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.57 (1H, td, J = 7.4, 2.0 Hz).
【0097】
(E)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3y)
収率: 96%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 3.83 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.45 (2H, s), 7.07 (1H, d, J = 16.2 Hz), 7.06-7.21 (2H, m), 7.30-7.34 (1H, m), 7.49 (1H, d, J = 16.2 Hz).
【0098】
(E)-3-(3-フルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3z)
収率: 91%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 3.82 (3H, s), 5.12 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.95 (1H, d, J = 16.4 Hz), 7.06 (1H, tdd, J = 8.4, 2.4, 1.2 Hz), 7.20-7.24 (1H, m), 7.27-7.37 (3H, m).
【0099】
(E)-3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3aa)
収率: 91%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.40 (6H, s), 3.82 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.84 (1H, ddd, J = 10.8, 8.4, 2.2 Hz), 6.91 (1H, td, J = 8.4, 2.2 Hz), 7.00 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.46 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.56 (1H, dd, J = 10.8, 8.4 Hz).
【0100】
(E)-3-(2,5-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3ab)
収率: 70%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.42 (6H, s), 3.83 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.45 (2H, s), 7.02 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.03-7.06 (2H, m), 7.34-7.27 (1H, m), 7.47 (1H, d, J = 16.0 Hz).
【0101】
(E)-3-(2,6-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3ac)
収率: 83%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.42 (6H, s), 3.82 (3H, s) 5.14 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.89-6.95 (2H, m), 7.25-7.32 (2H, m), 7.51 (1H, d, J = 16.8 Hz).
【0102】
(E)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3ad)
収率: 74%; 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 3.39 (6H, s), 3.81 (3H, s), 5.11 (4H, s), 6.42 (2H, s), 6.87 (1H, d, J = 16.0 Hz), 7.15 (1H, dd, J = 17.5, 8.0 Hz), 7.22-7.25 (2H, m), 7.33 (1H, ddd, J = 10.0, 8.0, 1.8 Hz)
【0103】
(E)-3-(3,5-ジフルオロフェニル)-1-(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン (3ae)
収率: 78%; 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 3.41 (6H, s), 3.83 (3H, s), 5.13 (4H, s), 6.44 (2H, s), 6.82 (1H, tt, J = 8.6, 2.3 Hz), 6.94 (1H, J = 16.2 Hz), 7.00-7.06 (2H, m), 7.27 (1H, d, J = 16.2 Hz).
【0104】
実施例2-31
調製例にて調製した化合物3b-3aeを用い、実施例1の工程2に実質的に従って、式(I)で示される化合物Nico-2-31を調製した。カルコン化合物とNico化合物との対応関係は次の通りである。
【表1】
【0105】
実施例2
(trans-4'-メトキシ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)メタノン (Nico-2)
収率: 38% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.99-2.22 (7H, m), 2.51-2.55 (1H, m), 3.25 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 3.73 (6H, s), 4.38 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 5.50 (1H, br), 5.85 (2H, s), 6.74 (2H, d, J = 9.0 Hz), 7.13 (2H, d, J = 9.0 Hz).
【0106】
実施例3
(trans-4'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)メタノン (Nico-3)
収率: 53% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.26 (7H, m), 2.52-2.57 (1H, m), 3.23 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 3.75 (3H, s), 4.34 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 5.09-5.11 (1H, m), 5.51 (1H, br), 5.85 (2H, s), 6.87 (2H, t, J = 8.6 Hz), 7.15-7.18 (2H, m).
【0107】
実施例4
(trans-4'-クロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(4-メトキシ-2,6-ビス(メトキシメトキシ)フェニル)メタノン (Nico-4)
収率: 24% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.25 (7H, m), 2.52-2.57 (1H, m), 3.28 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 3.75 (3H, s), 4.38 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 5.50 (1H, br), 5.86 (2H, s), 7.12-7.15 (4H, m).
【0108】
実施例5
(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)(trans-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)メタノン (Nico-5)
収率: 63% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.62 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.03-2.40 (8H, m), 3.30 (1H, td, J = 11.2, 5.9 Hz), 3.79 (3H, s), 3.83-3.89 (1H, m), 5.10-5.14 (1H, m), 5.51 (1H, br), 6.31 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.40 (1H, dd, J = 9.2, 2.4 Hz), 7.09 (1H, dd, J = 9.2, 4.4 Hz), 7.17-7.19 (4H, m), 7.73 (1H, d, J = 9.2 Hz), 12.90 (1H, s).
【0109】
実施例6
(trans-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-6)
収率: 56% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.67 (3H, s), 2.01-2.29 (7H, m), 2.56-2.62 (1H, m), 3.29 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 4.45 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 5.10-5.13 (1H, m), 5.52 (1H, br), 6.30 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.09-7.22 (6H, m), 9.12 (1H, br).
【0110】
実施例7
(2-ヒドロキシ-6-メトキシフェニル)(trans-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)メタノン (Nico-7)
収率: 55% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.62 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.01-2.53 (7H, m), 3.27 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 3.94 (3H, s), 4.28 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 5.10-5.14 (1H, m), 5.52 (1H, br), 6.36 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.42 (1H, J = 8.4 Hz), 7.07-7.11 (1H, m), 7.14-7.17 (4H, m), 7.22-7.25 (1H, m), 12.45 (1H, s).
【0111】
実施例8
(trans-2,6-ジメトキシフェニル)(trans-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)メタノン (Nico-8)
収率: 58% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.97-2.45 (8H, m), 3.21 (1H, td, J = 10.0, 6.0 Hz), 3.50 (1H, td, J = 10.0, 6.0 Hz), 3.62 (6H, s), 5.08-5.12 (1H, m), 5.48 (1H, br), 6.42 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.08-7.11 (1H, m), 7.13-7.21 (5H, m).
【0112】
実施例9
(trans-4'-メトキシ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-9)
収率: 43% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.02-2.27 (7H, m), 2.54-2.58 (1H, m), 3.25 (1H, td, J = 11.4, 5.6 Hz), 3.72 (3H, s), 4.40 (1H, td, J = 11.4, 5.6 Hz), 5.10-5.12 (1H, m), 5.51 (1H, br), 6.30 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.73 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.12 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.15 (1H, t, J = 8.8 Hz), 9.08 (1H, br).
【0113】
実施例10
(trans-4'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-10)
収率: 38% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 1.99-2.27 (7H, m), 2.54-2.60 (1H, m), 3.28 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 4.40 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 5.09-5.11 (1H, m), 6.31 (2H, J = 8.0 Hz), 6.83-6.92 (2H, m), 7.14-7.18 (3H, m), 9.06 (1H, br).
【0114】
実施例11
(trans-4'-クロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-11)
収率: 39% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.25 (7H, m), 2.55-2.60 (1H, m), 3.28 (1H, td, J = 11.2, 5.2 Hz), 4.41 (1H, td, J = 10.0, 5.2 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 5.51 (1H, br), 6.31 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.14-7.19 (5H, m), 9.25 (1H, br).
【0115】
実施例12
(trans-2'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-12)
収率: 64% (2工程後); 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.97-2.33 (7H, m), 2.62-2.65 (1H, m), 3.52 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 4.56 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 5.11 (1H, tt, J = 5.0, 1.3 Hz), 5.51 (1H, d, J = 5.0 Hz), 6.32 (2H, d, J = 8.0 Hz), 6.90-6.97 (1H, m), 6.95 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.05-7.10 (1H, m), 7.14-7.19 (2H, m), 7.44 (1H, br).
【0116】
実施例13
(trans-3'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-13)
収率: 49% (2工程後); 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.00-2.29 (7H, m), 2.58 (1H, dt, J = 17.0, 5.0 Hz), 3.31 (1H, td, J = 10.5, 5.0 Hz), 4.44 (1H, td, J = 10.5, 5.0 Hz), 5.11 (1H, tt, J = 7.0, 1.5 Hz), 5.51 (1H, d, J = 4.5 Hz), 6.32 (2H, d, J = 7.0 Hz), 6.78 (1H, tdd, J = 8.0, 2.0, 1.5 Hz), 6.93 (1H, dt, J = 10.0, 2.0 Hz), 6.99 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.12-7.18 (2H, m), 9.26 (1H, br).
【0117】
実施例14
(trans-3',4'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-14)
収率: 45% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.00-2.26 (7H, m), 2.58 (1H, dt, J = 16.5, 5.0 Hz), 3.31 (1H, td, J = 8.5, 5.0 Hz), 5.11 (1H, tt, J = 7.0, 1.0 Hz), 5.51 (1H, d, J = 4.0 Hz), 6.33 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.01-7.15 (3H, m), 7.28 (1H, t, J = 8.5 Hz), 9.46 (1H, br).
【0118】
実施例15
(trans-2',3'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-15)
収率: 20% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.02-2.33 (7H, m), 2.64 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.65 (1H, td, J = 11.2, 5.2 Hz), 4.55 (1H, td, J = 11.2, 5.2 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 6.34 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.83-6.94 (3H, m), 7.17 (1H, t, J = 8.4 Hz), 9.38 (1H, br).
【0119】
実施例16
(trans-2',4'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-16)
収率: 52% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.01-2.29 (7H, m), 2.58-2.64 (1H, m), 3.57 (1H, td, J = 11.2, 5.2 Hz), 4.50 (1H, td, J = 11.2, 5.2 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 5.50 (1H, br), 6.32 (2H, d, J = 8.0 Hz), 6.65-6.71 (2H, m), 7.09-7.13 (1H, m), 7.17 (1H, t, J = 8.0 Hz), 9.21 (1H, br).
【0120】
実施例17
(trans-2',5'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-17)
収率: 63% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.01-2.32 (7H, m), 2.59-2.65 (1H, m), 3.61 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 4.48 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 5.08-5.12 (1H, m), 5.51 (1H, br), 6.33 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.72-6.78 (1H, m), 6.85-6.93 (2H, m), 7.18 (1H, t, J = 8.4 Hz), 9.23 (1H, br).
【0121】
実施例18
(trans-2',6'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-18)
収率: 54% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.62 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.02-2.21(6H, m), 2.41-2.66 (2H, m), 3.74 (1H, td, J = 11.7, 4.9 Hz), 4.68-4.73 (1H, m), 5.09-5.13 (1H, m), 5.51 (1H, br), 6.31 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.73 (2H, t, J = 8.8 Hz), 7.00-7.08 (1H, m), 7.16 (1H, t, J = 8.8 Hz), 9.17 (1H, br).
【0122】
実施例19
(trans-3',5'-ジフルオロ5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-19)
収率: 35% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.01-2.23 (7H, m), 2.69 (1H, d, J = 13.6 Hz), 3.31 (1H, td, J = 8.4, 4.4 Hz), 4.23 (1H, br), 5.11 (1H, d, J = 6.0 Hz), 5.51 (1H, s), 6.35 (2H, d, J = 6.0 Hz), 6.54 (1H, t, J = 6.0 Hz), 6.76 (2H, d, J = 6.0 Hz), 7.18 (1H, t, J = 6.0 Hz), 9.48 (1H, br).
【0123】
実施例20
(trans-2'-クロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-20)
収率: 63% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 1.97-2.43 (7H, m), 2.65 (1H, dt, J = 16.4, 5.0 Hz), 3.87 (1H, td, J = 11.0, 5.0 Hz), 4.57 (1H, td, J =11.0, 5.0 Hz), 5.09-5.11 (1H, m), 5.51 (1H, br), 5.51 (1H, s), 6.35 (2H, d, J = 6.5 Hz), 6.54 (1H, t, J = 8.0 Hz), 6.34 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.00-7.10 (2H, m), 7.16-7.20 (2H, m), 7.31-7.33 (1H, m).
【0124】
実施例21
(trans-3'-クロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-21)
収率: 41% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.70 (3H, s), 2.00-2.28 (7H, m), 2.55-2.60 (1H, m), 3.28 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 4.44 (1H, td, J = 10.8, 5.2 Hz), 5.09-5.13 (1H, m), 5.51 (1H, d, J = 3.6 Hz), 6.32 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.05-7.11 (3H, m), 7.16 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.22 (1H, s), 9.33 (1H, br).
【0125】
実施例22
(trans-2',3'-ジクロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-22)
収率: 41% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.01-2.24 (6H, m), 2.38-2.67 (2H, m), 3.92 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 4.56 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 5.10 (1H, tt, J = 5.6, 1.6 Hz), 5.50 (1H, br), 6.36 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.96-7.02 (1H, m), 7.06-7.10 (1H, m), 7.20 (1H, t, J = 8.4 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 8.4, 1.6 Hz), 9.34 (1H, br).
【0126】
実施例23
(trans-2',4'-ジクロロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-23)
収率: 63% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.93-2.24 (6H, m), 2.33-2.38 (1H, m), 2.62-2.67 (1H, m), 3.82 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 4.52 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 5.09-5.12 (1H, m), 5.51(1H, br), 6.35 (2H, d, J = 8.0 Hz), 7.05 (1H, dd, J = 8.0, 2.4 Hz), 7.11 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.20 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.34 (1H, d, J = 2.4 Hz).
【0127】
実施例24
(trans-4'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-24)
収率: 47% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.32 (7H, m), 2.57-2.62 (1H, m), 3.52 (1H, td, J = 10.6, 5.6 Hz), 3.75 (3H, s), 4.48 (1H, td, J = 10.6, 5.6 Hz), 5.11 (1H, t, J = 7.0 Hz), 5.50 (1H, d, J = 4.4 Hz), 5.86 (2H, s), 6.92-6.97 (2H, m), 7.05-7.10 (1H, m), 7.17 (1H, td, J = 8.0, 2.0 Hz).
【0128】
実施例25
(trans-2',3'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-25)
収率: 51% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.32 (7H, m), 2.61 (1H, dt, J = 15.6, 5.0 Hz), 3.65 (1H, td, J = 11.0, 5.0 Hz), 3.75 (3H, s), 4.48 (1H, td, J = 11.0, 5.0 Hz), 5.10 (1H, tt, J = 7.0, 1.4 Hz), 5.51 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.87 (2H, s), 6.85-6.95 (3H, m).
【0129】
実施例26
(trans-3'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-26)
収率: 26% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.28 (7H, m), 2.56 (1H, dt, J = 16.8, 5.2 Hz), 3.32 (1H, td, J = 10.0, 5.2 Hz), 3.74 (3H, s), 4.42 (1H, td, J = 10.0, 5.2 Hz), 5.11 (1H, tt, J = 6.8, 2.0 Hz), 5.51 (1H, d, J = 3.6 Hz), 5.87 (2H, s), 6.79 (1H, td, J = 8.0, 2.0 Hz), 6.93 (1H, dt, J = 10.0, 2.0 Hz), 7.00 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.15 (1H, dd, J = 14.0, 8.0 Hz).
【0130】
実施例27
(trans-2',4'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-27)
収率: 50% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.68 (3H, s), 2.00-2.38 (7H, m), 2.57-2.62 (1H, m), 3.58 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 3.74 (3H, s), 4.66 (1H, td, J = 11.2, 5.0 Hz), 5.10 (1H, td, J = 6.4, 1.6 Hz), 5.50 (1H, d, J = 3.2 Hz), 5.88 (2H, s), 6.64-6.72 (2H, m), 7.13 (1H, dd, J = 14.8, 8.4 Hz).
【0131】
実施例28
(trans-2',5'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-28)
収率: 20% (2工程後); 1H-NMR (400 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.00-2.31 (7H, s), 2.60 (1H, d, J = 16.4 Hz), 3.62 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 3.75 (3H, s), 4.45 (1H, td, J = 11.0, 5.2 Hz), 5.10 (1H, t, J = 6.8 Hz), 5.50 (1H, br), 5.88 (2H, s), 6.72-6.78 (1H, m), 6.86-6.93 (2H, m).
【0132】
実施例29
(trans-2',6'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-29)
収率: 43% (2工程後); 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 2.43 (1H, t, J = 14.5 Hz), 2.61 (1H, dt, J = 12.0, 4.5 Hz), 3.73 (3H, s), 3.72-3.77 (1H, m), 4.67 (1H, tt, J = 12.0, 4.5 Hz), 5.11 (1H, t, J = 6.5 Hz), 5.51 (1H, d, J = 4.5 Hz), 5.86 (2H, s), 6.74 (2H, t, J = 8.0 Hz), 7.04 (1H, ddd, J = 15.0, 8.0, 6.5 Hz).
【0133】
実施例30
(trans-3',4'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-30)
収率: 41% (2工程後); 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 1.61 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.99-2.25 (7H, s), 2.55 (1H, dt, J = 17.0, 5.0 Hz), 3.27 (1H, td, J = 11.0, 5.0 Hz), 3.75 (3H, s), 4.35 (1H, td, J = 11.0, 5.0 Hz), 5.10 (1H, t, J = 7.0 Hz), 5.50 (1H, d, J = 4.0 Hz), 5.87 (2H, s), 6.91-6.99 (2H, m), 7.00-7.05 (1H, m).
【0134】
実施例31
(trans-3',5'-フルオロ-5-(4-メチルペンタ-3-エン-1-イル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)(2,6-ジヒドロキシフェニル)メタノン (Nico-31)
収率: 59% (2工程後); 1H-NMR (500 MHz CDCl3) δ: 1.60 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.98-2.26 (7H, s), 2.57 (1H, dt, J = 17.0, 5.0 Hz), 3.31 (1H, td, J = 10.8, 5.0 Hz), 3.75 (3H, s), 4.39 (1H, td, J = 10.8, 5.0 Hz), 5.10 (1H, t, J = 6.5 Hz), 5.50 (1H, d, J = 3.5 Hz), 5.89 (2H, s), 6.54 (1H, tt, J = 8.0, 2.0 Hz), 6.76 (2H, dd, J = 8.0, 2.0 Hz).
【0135】
試験例1
ニコライデシンC(NICO-C)におけるがん細胞に対する形態学的変化
NICO-Cについて、アクリジンオレンジ(AO)/エチジウムブロマイド(EB)二重染色蛍光法を用い、栄養不足の条件下で細胞死に至る膵臓癌細胞(PANC-1およびMIA PaCa-2)の形態変化に対する効果を調べた。詳細には、リケンBRC細胞バンクから購入したPANC-1(RBRC-RCB2095)およびMIA PaCa-2 (RBRC-RCB2094)細胞を、12ウェルプレートで栄養飢餓培地(NDM:265 mg/L CaCl2(2H2O)、0.1 mg/L Fe(NO3)(9H2O)、400 mg/L KCl、200 mg/L MgSO4(7H2O)、6,400 mg/L NaCl、700 mg/L NaHCO3、125 mg/L NaH2PO4、15 mg/L フェノールレッド、25 mmol/L HEPES 緩衝液 (pH 7.4)、MEM ビタミン溶液 (Life Technologies, Inc., Rockville, MD); 最終的なpHを10% NaHCO3で7.4に調整)中、1.25μM、2.5μMおよび5μM濃度のニコライデシンC、および未処理の対照で処理し、24時間インキュベートした。次いで、細胞を、DNAインターカレーション剤であるアクリジンオレンジ(AO)とエチジウムブロマイド(EB)で染色し、蛍光(赤と緑)および位相差モードで写真を撮影した。得られた結果を図1に示す。AOは細胞膜を透過する色素であり、生きている細胞では明るい緑色の蛍光を発する(図1において白色部分)。一方、EBは死んだ細胞や死にかけている細胞の膜を透過する能力しかなく、二本鎖DNAにインターカレーションされると赤く染色される(図1において主な染色部分を白矢印の矢印部分で示す)。細胞死の過程では、細胞膜の完全性が緩み、EBとAOの両試薬が細胞内に浸透し、オレンジ色または赤色の蛍光を発する(瀕死の細胞、死細胞)。未処理の対照PANC-1細胞は明るい緑色の蛍光を発するだけで、細胞の形態やクロマチンの構成は無傷であった。しかし、NICO-Cで処理すると、濃度依存的に赤色の蛍光を発するEB染色細胞が増加し、明らかに細胞形態が変化していることがわかった。PANC-1細胞を5μMのNICO-Cとインキュベートすると、専ら赤色のEB蛍光を発し、丸みを帯びた細胞形態、細胞膜のブレット、細胞膜の破裂、細胞内容物の培養液への漏出が見られた。図1において、「位相差」は、光線の位相差をコントラストに変換した結果を表し、「重ね合わせ」は、緑蛍光+赤蛍光+各列の白黒画像の重ね合わせを示している。位相差により、通常の光学顕微鏡では見ることが困難な細胞や細胞成分を可視化することができる。重ね合わせでは、細胞の生死状態(形態、細胞膜の破壊によるEBの細胞への集中の有無など)が詳細にわかる。生細胞は、AOだけが細胞内に浸透して明るい緑色の蛍光を発し、死細胞はEBによりピンク色の蛍光を発する。重ね合わせにおいて、もし細胞が核内でピンク色の蛍光を発し、同じ細胞が緑色の蛍光を発していれば、それは細胞の死滅プロセスが起こっていることを示す情報となる。
【0136】
試験例2
ニコライデシンC(NICO-C)におけるPANC-1細胞によるコロニー形成に対する効果
PANC-1細胞(5000個/ウェル)をDMEM(1mL/ウェル)中で12ウェルプレートディッシュに播種し、24時間インキュベートして細胞を付着させた。その後、DMEM中に0μM(対照)または、10、20、40μMのNICO-Cを含むDMEMに培地を変更した。PANC-1腫瘍細胞を24時間曝露させ、各群で3反復した。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、試験化合物を含まない新鮮なDMEM(2mL)で培地を交換した。その後、細胞を12日間培養した。最終日、細胞をPBSで洗浄した後、4%ホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで10分間染色した。結果を図2Aに示す。図2Bは、PANC-1細胞コロニーが占める面積の平均値を示すグラフ(3回の複製)である。
【0137】
試験例3
ニコライデシンC(NICO-C)におけるオートファジーシグナル伝達経路に対する効果
タンパク質は、0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含むポリアクリルアミドゲル上でゲル電気泳動により分離し、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。この膜をBlock Ace(登録商標)(DSファーマメディカル,吹田市)でブロッキングし,0.1%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和光純薬)を含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、Can Get Signal(登録商標)(東洋紡,大阪)で希釈した一次抗体と一晩インキュベートした。洗浄後、二次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギまたは抗ヤギ免疫グロブリンを用いて、膜を室温で45分間インキュベートした。バンドは強化化学発光溶液(パーキンエルマー社)で検出した。得られた結果を図3図4および図5に示す。
【0138】
図3は、Akt/mTORおよびオートファジー経路の活性化に関与する主要なタンパク質に対するNICO-Cの効果を示したものである。NICO-Cは、濃度依存的に、飢餓状態においてp-Aktおよびp-mTORを選択的に阻害した。一方、DMEMでは、Akt/mTORタンパク質に明らかな変化は見られなかった。これらのデータは、Akt/mTORシグナル経路の阻害が、NDM中の被検膵臓がん細胞に対するNICO-Cの選択的な細胞毒性に大きく寄与していることを強く示唆している。さらに,図3に示すように、NICO-Cは、濃度依存的にオートファジーマーカーであるLC3-IおよびLC3-IIの発現を抑制している。これらの結果は、NICO-Cが強力なオートファジーの阻害物質であることを示唆している。
【0139】
図4は、NICO-Cを、初期段階のオートファジーの阻害物質3-MA(3-メチルアデニン)または後期段階のオートファジーの阻害物質CQ(クロロキン)と共処理することで、オートファジーの主要マーカーであるLC3の発現を抑制した結果である。PANC-1を20μMのNICO-Cで処理すると、LC3-IとLC3-IIの両方の発現が有意に抑制されることがわかった。また、NICO-CとCQを併用すると、CQ単独の場合に比べてLC3-IIの発現が抑制された。また、図4において、LC3-IIのウエスタンブロットでは、左から2番目(後期段階阻害物質のCQのみで処理)ではバンドが太く、3番目(初期段階阻害物質の3-MAのみで処理)ではバンドが薄くなっており、同様に4番目(NICO-Cのみで処理)でも薄くなっている。これらのデータから、NICO-Cは初期段階でオートファジーを阻害することが示唆された。
【0140】
図5は、インスリン様成長因子-I(IGF)によって誘導されるAktリン酸化に対するNICO-Cの共投与の効果を、化合物のAkt阻害物質[(2R)-2-メトキシ-3-オクタデコキシプロピル] [2,3,4,6-テトラヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]カルボネートと比較して示したものである。NICO-C(20μM)は、飢餓状態でのAktリン酸化を完全に抑制した。さらに、NICO-Cは、IGF-I刺激によるAktの活性化も抑制することがわかった。NICO-CによるAktリン酸化の抑制効果は、Akt阻害物質の化合物と同等のものである。
【0141】
試験例4
ヌードマウスにおけるMIA PaCa-2腫瘍の増殖に対するニコライデシンC(NICO-C)の効果
5週齢の雄BALB/cヌードマウス(CAnN, Cg-Fixbk<nu>/CrlCrlJ 5W♂)を1週間、動物舎で馴化させた。MIA PaCa-2腫瘍細胞(10,000,000 細胞s/200 mL PBS)を全マウスの左右の脇腹に皮下注射した。腫瘍細胞接種後6日目に、マウス(n=8/群)を(i)対照、(ii)低用量NICO-C(50μg/日)、(iii)高用量NICO-C(250μg/日)の3群に無作為に分けた。NICO-C(処理群)またはPBS(対照群)を1週間に5回、マウスの腹腔内に注射した。すべてのマウスは、固形の食物と水を自由に摂取できる状態とした。体重と腫瘍の大きさを週に2回、以下の計算式を用いて測定した。結果を図6Bに示す。
【0142】
推定腫瘍体積(週2回の測定)=(π×長さ×幅2)/6
【0143】
図6Aは週2回測定した動物の体重を示しており、実験期間中の処理群とNICO-C投与群の体重に有意差はなかった。図6Bに示す週2回測定した腫瘍サイズの腫瘍増殖曲線から明らかなように、腫瘍体積は対照群において着実に増加し、一方、NICO-C投与群の腫瘍体積の増加は用量依存的に抑制された。
【0144】
薬物処理を5週間続け、34日目にCO2ナルコーシスによりマウスを犠牲にし、腫瘍を採取し、その湿重量を測定した。結果を図6Cに示す。対照群では腫瘍の平均湿重量がNICO-C投与群よりも有意に高かった(図6C)。図6BおよびCの結果は、NICO-Cおよびその誘導体が生体内で抗腫瘍活性を発揮することを示している。
統計解析のすべての結果は、平均値±SDで表した。統計的比較は、ANOVAの後にスチューデントt検定を用いて行った。P<0.05のとき、結果は有意であると見做した。
【0145】
試験例5
PANC-1細胞に対する選択的細胞毒性活性アッセイ
PANC-1(RBRC-RCB2095、筑波、日本)のヒト膵臓癌細胞株は、リケンBRC細胞バンクから購入した。このヒト膵臓癌細胞を、37℃で5%CO2および95%空気を使用する加湿インキュベーター中、10%の胎児ウシ血清(FBS)を補った標準的なダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)で維持した。簡単に言えば、ヒト膵臓癌細胞を96ウェルプレート(15000/well)に播種し、DMEMで37℃、5%CO2および95%空気インキュベーターで24時間培養した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した後、培地を、各試験毎に、対照とブランクを有する栄養豊富培地(DMEM)および栄養飢餓培地(NDM:265 mg/L CaCl2(2H2O)、0.1 mg/L Fe(NO3)(9H2O)、400 mg/L KCl、200 mg/L MgSO4(7H2O)、6,400 mg/L NaCl、700 mg/L NaHCO3、125 mg/L NaH2PO4、15 mg/L フェノールレッド、25 mmol/L HEPES 緩衝液 (pH 7.4)、MEM ビタミン溶液 (Life Technologies, Inc., Rockville, MD)の両方で連続希釈した試験化合物試料(NICO-C、NICO-1~NICO-31)に変更した。ここに、「対照」とは、がん細胞のみを含む培養ウェルであり、すなわち試験化合物を投与していない状態でのがん細胞に対する細胞毒性を反映し、「ブランク」とは、がん細胞が入っていない培養ウェルであり、すなわち培養液のみによる値を反映する。DMEMおよびNDMにおける各試験化合物とのインキュベーションを24時間行った後、各ウェル中の培地を100μL 10%WST-8細胞計数キット溶液を含有するDMEM置き換えた。さらにインキュベーションを3時間行った後、450nmでの吸光度をEnSpireマルチモードプレートリーダー(PerkinElmer, Inc.、ウォルサム社、米国)で測定した。細胞生存率は、次の式を使用し、3つのウェルからの平均値から計算した。
【0146】
細胞生存率 (%) =
「Abs(試験試料) - Abs(ブランク) / Abs(対照) - Abs(ブランク) 」× 100%
ここに、「ブランク」とは、がん細胞が入っていない培養ウェルであり、「対照」とは、がん細胞のみを含む培養ウェルである。
【0147】
試料中の試験化合物濃度と細胞生存率(%)をプロットして得られるグラフを図7A~7Dに示す。これらの図は、試験化合物NICO-1~NICO-31はいずれも、がん細胞に対する形態学的変化を起こし、がん細胞のコロニー形成を阻害し、オートファジーシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍増殖を阻害することが証明されたNICO-Cと同様、栄養状態と対比して栄養飢餓状態の腫瘍細胞を選択的に死滅させることを示している。
【0148】
本発明における実施例化合物およびNICO-Cを、その構造およびPC50値ととも、以下にまとめる。
栄養飢餓状態のがん細胞に対して選択的に細胞毒性を示す化合物は、抗緊縮剤に分類され、その活性はPC50値で表される。ここに、「PC50値」とは、栄養飢餓(NDM)培地でがん細胞の50%が選択的に死滅し、栄養豊富な通常の培地(DMEM)では明らかな毒性を示さない濃度を意味する。
【0149】
【化8】
【0150】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D