(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161629
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ビーム部材、車両ドア構造、及び車両
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125227
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】左 亦根
(72)【発明者】
【氏名】侍 建偉
(57)【要約】
【課題】本発明は、特定のブラケットを有することによって、大きな衝撃吸収ストロークを有し、車両に優れた衝突安全性を付与するビーム部材、該ビーム部材を有する車両ドア構造、該車両ドア構造を有する車両を提供する
【解決手段】構成部品としてインパクトバー、少なくとも1つの伸張性ブラケットを含むビーム部材であって、伸張性ブラケットは、略半筒形状のインパクトバー受部とフランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有し、そのインパクトバー受部においてインパクトバーの端部と接合されている、ビーム部材。
【選択図】
図9C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部品としてインパクトバーと、少なくとも1つの伸張性ブラケットを含むビーム部材であって、
伸張性ブラケットは、
略半筒形状のインパクトバー受部と、フランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有し、
そのインパクトバー受部においてインパクトバーの端部と接合されている、ビーム部材。
【請求項2】
インパクトバーの両方の端部にそれぞれブラケットが接合されており、それら2つブラケットの少なくとも1つが伸長性ブラケットである請求項1に記載のビーム部材。
【請求項3】
インパクトバーが、伸び率15%以下の低延性材料からなるものである請求項1または2に記載のビーム部材。
【請求項4】
伸長性ブラケットが伸び率15%超過の良延性材料からなる請求項1から3のいずれか1つに記載のビーム部材。
【請求項5】
少なくとも1つは伸長性ブラケットである2つのブラケットがいずれもフランジ部を有しており、それらのフランジ部の厚み方向が同じ方向になるように、それぞれインパクトバーの両端に接合されている請求項2から4のいずれか1つに記載のビーム部材。
【請求項6】
2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットである、請求項2から5のいずれか1つに記載のビーム部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のビーム部材と、インナーパネルとを有する車両ドア構造であって、
ビーム部材が、インナーパネルの面状部に配置され、ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部が、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されることにより、ビーム部材がインナーパネルと一体化されている車両ドア構造。
【請求項8】
インナーパネルが、伸び率15%以下の低延性材料からなるものである請求項7に記載の車両ドア構造。
【請求項9】
ビーム部材に2つのブラケットがあり、それらがいずれも伸長性ブラケットである請求項7または8に記載の車両ドア構造。
【請求項10】
ビーム部材の2つのブラケットが、いずれも、それぞれのフランジ部の厚み方向が、インナーパネルの厚み方向と略同一方向となる配置にて、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されている請求項9に記載の車両ドア構造。
【請求項11】
ビーム部材が、インナーパネルを厚み方向に見た状態で、インナーパネルの面状部のある端部Aから、インナーパネルの中央部を超え、インナーパネルの面状部の別の端部である端部Bに架橋し、ビーム部材の2つのブラケットのフランジ部が、それぞれ端部A、端部Bと接合されている請求項9または10に記載の車両ドア構造。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1つの車両ドア構造を有する車両であって、車両ドア構造のビーム部材が車両室外側に、インナーパネルが車両室内側になる配置にて車両ドア構造を有する車両。
【請求項13】
ビーム部材が車両の略前後方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する請求項12の車両。
【請求項14】
ビーム部材が車両の略上下方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する請求項12の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム部材、ビーム材を有する車両ドア構造、及び車両ドア構造を含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に代表される車両には、衝突事故時に乗員の被害を最小化できるように様々な安全基準を満たすことが求められている。特に、自動車同士の衝突事故としては、正面衝突よりも側面衝突が起きやすく、更に、側面衝突は正面衝突よりも車体と乗員に深刻な損傷を与えることが多いとされている。そのため、特許文献1のように、車両ドア構造を工夫して、側面衝突時の衝撃吸収能を高めることを図った技術が数多く報告されている。
【0003】
特許文献1の車両ドア構造は、鋳造材よりなるインナーパネルと、ドア閉にて車両の前後方向に延びて両端部をそれぞれインナーパネルに固定された上部ガードビームとを有している。上部ガードビームの両端部は、衝撃荷重緩和用の前部/後部ブラケットを介してインナーパネルに固定されている。当該特徴により、特許文献1の車両ドア構造では、他の車両が側面衝突してきた時、ガードビームに作用する衝撃荷重がブラケットにより緩和されてから、インナーパネルに伝達するため、インナーパネルにおける亀裂の進展を回避して衝撃荷重を十分に吸収し得る車両ドア構造となるとされている。
【0004】
この特許文献1で、前部/後部ブラケットが衝撃荷重を緩和する具体的な機構として示されているのは、以下1)~2)のみである。
1)車両ドア構造が衝撃を受けた場合に、「先ず衝撃荷重緩和用ブラケットが変形」する。
2)その請求項3のとおり、ガードビームとブラケットとのボルト継手による締結において、ボルト挿通孔が長孔状をしていて、車両ドア構造が衝撃を受けた場合には、ガードビーム(棒状部材)が、前部/後部ブラケットに対して、長孔状のボルト挿通孔を利用して摺動する。
【0005】
特許文献1の衝撃荷重緩和の機構について、特許文献1の記載からはどのようにブラケットへ優先的に衝撃エネルギーが掛かり変形を生じるのか不明である。何故ならば、ある車両の車両ドア構造が他の車両との衝突により衝撃を受けた場合、ドアの面状部に渡って配置されているビーム部材の棒状部材の近辺で衝突を受け、かなりの割合の衝撃エネルギーがまず棒状部材(ガードビーム)に掛かると思われるからである。
【0006】
ブラケットの変形の仕方によっては、その請求項3に示されている、長孔状のボルト挿通孔を利用した摺動による衝撃荷重緩和にも支障が出る可能性がある。特許文献1の記載では、ボルトの軸の端はブラケットの孔を通ってナット締めされており、ブラケットが変形してそのボルト締結孔も変形してナットが抜けるほど広がってしまったならば、衝撃を受けた際に摺動どころかガードビームの一端がブラケットから分離して周辺部位を損壊してしまう恐れがあるからである。
【0007】
更に、特許文献1の長孔状のボルト挿通孔を利用した摺動による衝撃荷重緩和については、確保できる衝撃吸収ストロークは極めて限定されたものになると思われる。長孔状のボルト挿通孔の長径の長さは、サイドビーム端部の薄板部分で、サイドビームとしての強度に支障をきたさない程度に限られる筈だからである。残念ながら制限速度を大幅に超過した速度で走行する違反車両による深刻な交通事故が後を絶たない現状では、できる限り大きい衝撃吸収ストロークを有する車両ドア構造が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特許出願公開第2004-224120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特定のブラケットを有することによって、大きな衝撃吸収ストロークを有し、車両に優れた衝突安全性を付与するビーム部材、該ビーム部材を有する車両ドア構造、該車両ドア構造を有する車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
<1>
構成部品としてインパクトバー、少なくとも1つの伸張性ブラケットを含むビーム部材であって、
伸張性ブラケットは、
略半筒形状のインパクトバー受部と、フランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有し、
そのインパクトバー受部においてインパクトバーの端部と接合されている、ビーム部材。
<2>
インパクトバーの両方の端部にそれぞれブラケットが接合されており、それら2つブラケットの少なくとも1つが伸長性ブラケットである上記<1>に記載のビーム部材。
<3>
インパクトバーが、伸び率15%以下の低延性材料からなるものである上記<1>または<2>に記載のビーム部材。
<4>
伸長性ブラケットが伸び率15%超過の良延性材料からなる上記<1>から<3>のいずれか1つに記載のビーム部材。
<5>
少なくとも1つは伸長性ブラケットである2つのブラケットがいずれもフランジ部を有しており、それらのフランジ部の厚み方向が同じ方向になるように、それぞれインパクトバーの両端に接合されている上記<2>から<4>のいずれか1つに記載のビーム部材。
<6>
2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットである、上記<2>から<5>のいずれか1つに記載のビーム部材。
<7>
上記<1>から<6>のいずれか1つに記載のビーム部材と、インナーパネルとを有する車両ドア構造であって、
ビーム部材が、インナーパネルの面状部に配置され、ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部が、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されることにより、ビーム部材がインナーパネルと一体化されている車両ドア構造。
<8>
インナーパネルが、伸び率15%以下の低延性材料からなるものである上記<7>に記載の車両ドア構造。
<9>
ビーム部材に2つのブラケットがあり、それらいずれも伸長性ブラケットである上記<7>または<8>に記載の車両ドア構造。
<10>
ビーム部材の2つのブラケットが、いずれも、それぞれのフランジ部の厚み方向が、インナーパネルの厚み方向と略同一方向となる配置にて、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されている上記<9>に記載の車両ドア構造。
<11>
ビーム部材が、インナーパネルを厚み方向に見た状態で、インナーパネルの面状部のある端部Aから、インナーパネルの中央部を超え、インナーパネルの面状部の別の端部である端部Bに架橋し、ビーム部材の2つのブラケットのフランジ部が、それぞれ端部A、端部Bと接合されている上記<9>または<10>に記載の車両ドア構造。
<12>
上記<7>から<11>のいずれか1つの車両ドア構造を有する車両であって、車両ドア構造のビーム部材が車両室外側に、インナーパネルが車両室内側になる配置にて車両ドア構造を有する車両。
<13>
ビーム部材が車両の略前後方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する上記<12>の車両。
<14>
ビーム部材が車両の略上下方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する上記<12>の車両。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定のブラケットを有することにより大きな衝撃吸収ストロークを有するビーム部材を提供でき、その結果、そのビーム部材が供えられた車両ドア構造を有する車両が優れた衝突安全性を示すものとなる。本発明によれば、生産性に優れ、従来品よりも軽量な車両ドア構造を得ることができ、該車両ドア構造を車両に用いることにより、衝突安全性に優れた車両を得ることができる。
【0013】
更に、近年では、極限までの燃費向上や自動車の電動化を求める法規制・目標の達成のため、車両を構成する各種部材を複合材料、特に繊維強化樹脂製とすることが試みられている。本発明に関して、寸法も大きく車両重量に占める割合もそれなりにあるインパクトバーやインナーパネルを繊維強化樹脂製、特に繊維強化熱可塑性樹脂、更に好ましくは炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)製とすることにより、より優れた衝突安全性および従来技術では達成困難であった軽量化の両立が可能になる。一般的に、繊維強化樹脂は金属材料に比べて、軽量で衝撃吸収能に優れているからである。本発明は、そういったインパクトバーとインナーパネルの少なくとも一方が繊維強化樹脂製の車両ドア構造に関して特に好適である。前記のとおり、特許文献1の発明は、詳細な衝撃吸収機構が不明だが、ブラケットが優先的に衝撃を受け変形することを特徴としているので、これを基に、インパクトバーを繊維強化樹脂製として衝撃吸収に寄与させる技術思想を含む発明には至るとは考え難い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明の一実施形態である、インパクトバーの両端に伸長性ブラケットが供えられたビーム部材を、伸長性ブラケットの厚み方向に、但し、伸長性ブラケットのフランジ部の接合面の反対側から見た模式図である。
【
図1B】
図1Aのビーム部材を、伸長性ブラケットの厚み方向に対して垂直となる方向、但し、インパクトバーの長手方向が水平方向で、伸長性ブラケットのフランジ部の接合面が下向きとなる向きに見た模式図である。
【
図1C】本発明に用いられる伸長性ブラケットの一例を、インパクトバーと接合させる場合にインパクトバーが連なる側のやや斜め上方から、フランジ部の接合面が下向きとなる向きに見た場合の斜視図である。
【
図1D】本発明に用いられる伸長性ブラケットの一例で、
図1Cと類似の形状を有するが、開断面構造ではなく、インパクトバー受け部がポケット状になった閉断面構造を有するものを
図1Cと同様の向きに見た場合の斜視図である。
【
図2A】伸長性ブラケットの起伏形状の一例(Pattern 1)を
図1CのA-A部分の断面で示した模式図である。
【
図2B】他の伸長性ブラケットの起伏形状の一例(Pattern 2)を
図1CのA-A部分に相当する断面で示した模式図である。
【
図2C】他の伸長性ブラケットの起伏形状の一例(Pattern 3)を
図1CのA-A部分に相当する断面で示した模式図である。
【
図2D】他の伸長性ブラケットの起伏形状の一例(Pattern 4)を
図1CのA-A部分に相当する断面で示した模式図である。
【
図3A】本発明の一実施形態であるビーム部材が、伸長性ブラケットの厚み方向に、但し、伸長性ブラケットのフランジ部の接合面の反対側から衝撃を受け変形した状態を、
図1Aと同様の方向に見た模式図である。
【
図3C】
図3Aで示された変形したビーム部材の変形した伸長性ブラケットを、
図1Cの伸長性ブラケットと同様の方向からみた斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるビーム部材であって、2つの伸長性ブラケットのフランジ部の接合面が異なった方向を向くように、それぞれインパクトバーの両端に供えられたビーム部材の模式図である。
【
図5】車両の左側ドア用の車両ドア構造を車外から車室内の方向に見た場合に、ビーム部材が、車両の前後方向に渡って、
図1Aに示される向きとなるようにインナーパネルに取り付けられた車両ドア構造の模式図である(ただし、簡便の為、インナーパネルにおける開口部などの詳細の記載を省略した)。
【
図6】車両の前後方向に渡って
図4のビーム部材が配置されている車両ドア構造を、
図5と同様に示した模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態であるビーム部材と、棒状部材の両端をボルトで補強対象物に締結する形式の補助ビーム部材とを有する車両ドア構造に関して、それぞれのビーム部材が車両の前後方向に渡って配置されている形態を、
図5と同様にした模式図である。
【
図8】車両ドア構造を車外から車室内の方向に見た場合に、車両の上下方向に渡って、
図1Aに示された向きとなるようにビーム部材が取り付けられた車両ドア構造の模式図である。
【
図9A】
図1Cに示した伸長性ブラケットに類似した輪郭形状を有するが起伏形状を有しない非伸長性ブラケットの斜視図である。
【
図9B】
図1Cに示した伸長性ブラケットと、
図9Aに示した非伸長性ブラケットとがインパクトビームの両端に接合されたビーム部材の模式図である。
【
図9C】ビーム部材(
図9B)を有する車両ドア構造について、車両の前後方向に渡ってビーム部材が配置されている形態を、車両ドア形状を用いて例示した模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態であるビーム部材であって、インパクトバーの一端にのみ伸長性ブラケットが接合されており、もう一方のインパクトバー端部はブラケット無しで、インナーパネルに直接、ボルト締結されるために、ボルト締結用の孔にボルトが挿入されているビーム部材の模式図である。
【
図11】本発明に用いられる伸長性ブラケットの一例で、
図1Cと類似の形状を有するが、起伏形状がインパクトバー受け部にはあるがフランジ部にはないものを
図1Cと同様の向きに見た場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、適宜、図面も参照して説明する。
【0016】
<代表的な構成>
ここに開示されるビーム部材は、構成部品として少なくともインパクトバー、および少なくとも1つの伸長性ブラケットを含むビーム部材である。伸長性ブラケットはインパクトバーの端部に備えられており、略半筒形状のインパクトバー受部とフランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有する。伸長性プラケットはそのインパクトバー受部においてインパクトバーの端部と接合されている。
【0017】
図1Aは、本発明の一実施形態である、インパクトバー3の両端に伸長性ブラケット2が供えられたビーム部材1を示す。このビーム部材1では、2つの同形状の伸長性ブラケット2が同じ向きになるようにインパクトバー3に備えられている。
図1Cも併せて参照して更に説明すると、
図1Aビーム部材1では、2つの伸長性ブラケット2のフランジ部4の接合面6が同じ方向(
図1Aの図面の裏側向き)になるように、伸長性ブラケット2がインパクトバー3の両端に備えられている。
【0018】
インパクトバーとは棒状の部品である。一般的に、車両のドア構造おいて、インパクトバーは、他の車両などがドアに衝突した際に乗員の安全を確保するために、ドアの剛性を高め、衝撃を吸収する機能を有する。インパクトバーの形状は特に限定されない。インパクトバーは、その軸断面形状として、円形、楕円形、多角形、H形、U形、L形、星形、不規則形状、及びこれらを組み合わせた形状などを有すものが例示される。インパクトバーはその長手方向形状として、一方の端部から他方の端部まで同一の軸断面形状を有する直線形状、少なくとも一部が曲がっている曲線形状、部分的に軸断面の大きさや形状が異なっているが傾斜形状などを有するものが例示される。インパクトバーは、その内部に中空、中実、中空と中実の部分があるものであっても良い。インパクトバーは、その少なくとも一部の内部が中空で、その中空部分において、インパクトバーの長手方向または軸断面方向にリブ、隔壁、段差、傾斜を有するものであっても良い。
【0019】
インパクトバーは、伸び率15%以下の低延性材料からなるものであると好ましい。低延性材料としては、硬鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、または複合材料、特に、SMC(シートモールディングコンパウンド)材や米国特許10,006,677号に示される繊維強化樹脂のような樹脂系複合材料が例示される。繊維強化樹脂としては繊維強化熱可塑性樹脂であるとより衝撃吸収能が優れ好ましく、炭素繊維強化熱可塑性樹脂であると衝撃吸収能だけでなく剛性もより優れたものとなり更に好ましい。繊維強化樹脂に含まれる強化繊維としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、バサルト繊維からなる群より選ばれる1種類以上が例示される。強化繊維の形態としては、織物、編物、不織布、ランダムマット、ニット、組紐、または、複数条の強化繊維が一方向に配置されたもの例示される。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油ピッチ系炭素繊維、石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、または気相成長系炭素繊維などが例示される。
【0020】
繊維強化樹脂のマトリクスである樹脂としては、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、またはジシクロペンタジエン樹脂などを挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、通常、軟化点が180℃~350℃の範囲内のものが用いられ、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂 フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等を挙げることができる。
【0021】
上記の伸び率は、金属材料については、JIS Z 2241(ISO-6892に相当する)、樹脂系の材料についてはJIS K 7161(ISO-527に相当する)の引張試験で測定された値であると好ましい。ここでいう伸び率とは、引張試験において,試験片が破断するまでに,試験片上の標線間に生じた伸びと標線間距離との比を百分率で表したもので,破断時伸び,破断伸度または極限伸び率ともいい、これに準じた方法で測定される上記JISやISOの規格で定められた値であっても良い。本発明に関して、伸長性ブラケット、インパクトバー、またはインナーパネルの伸び率を測定する場合は、上記のJISやISOの規格で定められる寸法・形状の試験片をそれらから切り出して測定に用いることができる。インパクトバーが、アルミニウム合金、マグネシウム合金、および複合材料、特に、上記のような樹脂系複合材料である低延性材料からなるものであると、インパクトバーを含むビーム部材、ひいてはこれを有する車両ドア構造を軽量なものとすることができ好ましい。
【0022】
ここに開示されるビーム部材は、少なくとも1つの伸張性ブラケットがインパクトバーの端部に備えられたものであるが、伸張性ブラケットを少なくとも1つ含む2つのブラケットがインパクトバーの両方の端部に備えられたものであってもよい。ブラケットとは、部材の固定や、部材同士の接合に用いられる板状の部品である。ここで、板状とは、ある物体の形状が、その幅や奥行に対して厚み(高さ)が著しく小さい(例えば1/5以下)形状を指し、湾曲形状、屈曲形状、厚みが異なった部位がある偏肉形状を有するものであっても良い。
【0023】
ビーム部材としては、インパクトバーの両端部にブラケットが接合されており、2つブラケットの少なくとも1つが伸長性ブラケットであるものであってもよい。取り付けられる2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットであるビーム部材は、これを含む車両ドア構造がより衝撃吸収能が高いものとなり好ましい。
図1Cを例に説明すると、伸長性ブラケット2とは、略半筒形状のインパクトバー受部5とフランジ部4とを有する。ビーム部材においては、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有するブラケットであると好ましい。
図11にインパクトバー受部には起伏形状があるが、フランジ部には起伏形状が無い伸長性ブラケットを例示する。
図1Cに例示されるような、インパクトバー受部とフランジ部の両方に起伏形状があるものがより好ましく、インパクトバー受部とフランジ部の両方に連なる起伏形状であるとより好ましい。インパクトバー受部について、略半筒形状とは
図1Cの符号5で示される部位のとおり、棒状のインパクトバー端部と接合に適した空間部がある、厚み方向に凹んだ断面を有する形状である。断面形状は
図1Cに示されるU字形状(開口部が
図1Cの下部側向きで、向きが同様のV字やW字形状も含む)のほか、半円弧状、M字形状、不規則形状などが例示される。
図1Cの伸長性ブラケットは図面下部側が閉じていない、いわゆる開断面構造である。
図1Dに示されるように、図面下部側が閉じてインパクトバー受部がポケット状、断面形状が略O字状、になっている、いわゆる閉断面構造を有する伸長性ブラケットであってもビーム部材に好ましく用いることができる。
【0024】
伸長性ブラケットの起伏形状とは、
図1Cの伸長性ブラケットに例示されるとおり、インパクトバー受部やフランジ部の表面において、ブラケットの厚み方向に突き出た部位(凸部)と凹んだ部位(凹部)とがある形状のことである。起伏形状としては、複数の凹凸がある形状であるとビーム部材の衝撃吸収能をより高めることができ好ましく、複数の凹凸が連続してある形状であると好ましい。起伏形状にある複数の凹凸は、形状や高さ(深さ)が全て同じものでも、異なったものでもよい。
【0025】
更に、起伏形状としては、
図1Cに例示されるような、伸長性ブラケットの、インパクトバーに連なる側(
図1Cの左下側)からビーム部材として端部になる側(
図1Cの右上側)への断面(
図1CのA-A断面。伸長性ブラケットのフランジ部の接合面が下向き)が、複数の凹凸が連続してある形状、例えて言うなら波状形状であると、その伸長性ブラケットを有するビーム部材の衝撃吸収能が特に優れたものにできるので好ましい。
【0026】
伸長性ブラケットの起伏形状としての波状形状の例を、それらのインパクトバーに連なる側(図の左側)からビーム部材として端部になる側(図の右側)への断面の図である
図2A~
図2Dにて示す。波状形状についても、複数の凹凸は、形状や高さ(深さ)が全て同じものでも、異なったものでもよい。
【0027】
図2A~
図2Dで示した伸長性ブラケットの起伏形状である波状形状の凹凸は、凸部の頂上部分や凹部の最深部が曲形や平坦な形状であるが、本発明に関してはこれらに限定されず、凸部の頂上部分や凹部の最深部が鋭く尖った形状であってもよい。
【0028】
伸長性ブラケットが有する起伏形状は、伸長性ブラケットを構成する板状素材の肉厚の増減のみにより生じたものでも良いが、
図2A~
図2Dで例示されるとおり板状素材自体が起伏している形状であると、衝撃吸収能への寄与や製造のし易さの点で好ましい。
【0029】
伸長性ブラケットは伸び率15%超過の良延性材料からなるものであると好ましい。そのような良延性材料としては、樹脂材料、軟鋼、ステンレス鋼、またはチタンが例示される。この良延性材料の伸び率の値の好ましい測定方法については、インパクトバーの低延性材料について前述したとおりである。ビーム部材は、伸び率15%以下の低延性材料からなるインパクトバーと、2つのブラケットのうち少なくとも1つとして、伸び率15%超過の良延性材料からなる伸長性ブラケットを有するものであると衝撃吸収能に優れたものとなり好ましい。
【0030】
ビーム部材に関して、伸長性ブラケットも含めブラケットとインパクトバーとは接合されていることが肝要であり、接合の手段としてはボルト・ナット締めのような機械的締結、嵌合、接着、溶着、またはインサートモールディング等の一体成形が例示される。伸長性ブラケットかインパクトバーのいずれかが熱可塑性樹脂系など可溶融性材料からなる場合は、接合手段である溶着として、振動溶着、超音波溶着、赤外線溶着、またはレーザー溶着を用いることもできる。
【0031】
「構成部品としてインパクトバー、少なくとも1つの伸長性ブラケットを含むビーム部材であって、伸長性ブラケットは、略半筒形状のインパクトバー受部とフランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有し、そのインパクトバー受部においてインパクトバーの端部と接合されている、ビーム部材」としては
図10に例示されるような、インパクトバーの一端にのみ伸長性ブラケットが接合されており、もう一方のインパクトバー端部はブラケット無しで、インナーパネルと接合されるものであってもよい。
図10はインパクトバーの一端をブラケット無しでボルト締結によりインナーパネルに接合させるビーム部材を示しているが、ボルト締結以外の接着などの前記接合方法でブラケット無し端部を接合するものであってもよい。
【0032】
上記から明らかなとおり、本発明には、略半筒形状のインパクトバー受部とフランジ部とを有し、インパクトバー受部とフランジ部の少なくとも一方は起伏形状を有する、好ましくは伸び率15%超過の良延性材料からなる伸長性ブラケットの発明も包含されている。
【0033】
<衝撃吸収の仕組み>
ここに開示されるビーム部材の衝撃吸収の仕組みについて、
図5、
図1A~
図1C、および
図3A~
図3Cを参照の上、以下説明する。
【0034】
図5は、ビーム部材と、インナーパネルとを有する車両ドア構造の一例であって、車両ドア構造を車両左側の車外から車室内の方向に見た場合に、車両の前後方向に渡って、
図1Aに示される向きとなるようにビーム部材が取り付けられた車両ドア構造の模式図である。インナーパネルは機能部品の取り付けや軽量化、車両ドアとしての意匠性などのため、開口部や段差を有していることが一般的である。
図5など車両ドア構造に関する模式図では、ビーム部材の配置を明瞭かつ簡便に示す為、インナーパネルについては外周形状や窓部分の開口部のみを示し、他の詳細形状については表記を省略した。
【0035】
図5で示される車両ドア構造を有する車両があり、
図5で示されるとおりX方向が車両の前後方向、Y方向が車両の左右方向、Z方向が車両の上下方向となるよう車両ドア構造が存在しているとする。そこへ、他の車両が、当該車両の左側から、つまり、
図5で車両ドア構造を見る方向で、車両ドア構造のビーム部材の中央付近に側面衝突した場合を想定する。なお、本発明において車両の前後方向とは、地平面に対して完全に水平な方向だけではなく、
図5の車両ドア構造のビーム部材のように地平面に対してやや傾いた方向も含む。よって前後方向とは略前後方向と称されても良い。同様に車両の上下方向は、略上下方向と称されても良い。
【0036】
上記に想定される側面衝突が起こると、その衝撃力はまず、ビーム部材のインパクトバーに掛かり、次に、伸長性ブラケットとインナーパネルに伝わる。衝撃力を受け、インパクトバーが変形していくに連れ、伸長性ブラケットとインナーパネルは
図5の示されるXのプラスマイナス方向の中央、つまり他の車両が側面衝突したビーム部材中央付近に向けて引きつられていく。ここで、伸長性ブラケットの起伏形状が伸長することにより、充分に大きな衝撃吸収ストロークとして作用し、衝撃のエネルギーを吸収する。その結果、衝突によって車両ドア構造が大破し、勢いよく離脱したビーム部材が、更に、車室内などに危害を及ぼすリスクを著しく低減できる。
【0037】
図5で示される車両ドア構造を有する車両に関し、上記の側面衝突によるような衝撃力を受ける前のビーム部材を
図1Aおよび
図1B、伸長性ブラケットを
図1Cに、衝撃力を受けた後のビーム部材を
図3Aおよび
図3B、伸長性ブラケットを
図3Cに例示する。
【0038】
もし、車両ドア構造が有するビーム部材が、そのインパクトバー両端に備えられたブラケットがいずれも起伏形状が無いブラケット(
図9Aに例示され、伸長性ブラケットとの区別のため、非伸長性ブラケットと称することがある)である場合、上記のように衝撃力が伝わると、ブラケットとインナーパネルとの締結部位に急速に破断が生じ、インナーパネルから勢いよく離脱したビーム部材が更に車室内を破損するリスクが、伸長性ブラケットを含むビーム部材を有する車両ドア構造を用いた場合よりも高くなる。
【0039】
<様々な実施態様>
図4に示される、インパクトバー3の両端に、2つの伸長性ブラケットが別方向に供えられたビーム部材7も本発明の一実施形態である。このビーム部材7では、ビーム部材をその一端から長手方向(軸方向)に見た場合に、2つの伸長性ブラケット2のフランジ部の接合面6同士が、直角をなすように、2つの伸長性ブラケット2がインパクトバー3の両端に備えられている。この実施態様のように、ビーム部材が取り付けられるインナーパネルの形状に応じて、2つの伸長性ブラケットが、それぞれのフランジ部の接合面が別の方向を向くように、インパクトバーの各端部に取り付けられたビーム部材であっても良い。
【0040】
図9Bに例示されるとおり、インパクトバー3の一端に伸長性ブラケットが、もう一方の端部に伸長性ブラケットではないブラケット(ここでは
図9Aの非伸長性ブラケット10)が、供えられたビーム部材7も本発明の一実施形態である。これを別の言い方をすると、少なくとも1つは伸長性ブラケットである2つのブラケットがいずれもフランジ部を有しており、それらのフランジ部の厚み方向が同じ方向になるように、より好ましくはそれらフランジ部の接合面も同じ方向になるように、それぞれインパクトバーの両端に接合されているビーム部材であり、2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットであるとより衝撃吸収能が高くなり好ましい。
【0041】
<<車両ドア構造>>
図9Cに例示されるとおり、前記の伸長性ブラケットを含むビーム部材と、インナーパネルとを有する車両ドア構造であって、ビーム部材が、インナーパネルの面状部に配置され、ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部が、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されることにより、ビーム部材がインナーパネルと一体化されている車両ドア構造も本発明の一実施形態である。「ビーム部材が、インナーパネルの面状部に配置され」とは、
図5などに例示されるとおり、ビーム部材が、インナーパネルの広い面を渡るように配置されるという意味である。
【0042】
上記車両ドア構造に関して、ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部が、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されている。伸長性ブラケットのフランジ部の全面がインナーパネルと接合されていてもよい。インパクトバーの両端に伸長性ブラケットが供えられたビーム部材や、インパクトバーの一端に伸長性ブラケット、もう一方の端部に非伸長性ブラケットが供えられたビーム部材の場合、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されているのが、両端のブラケットの両方のフランジ部の全面であっても、一方のブラケットのフランジ部は全面が、もう一方のブラケットのフランジ部は一部の面であってもよい。ブラケットのフランジ部で、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されている部位を、ここでは接合面と称する。
【0043】
ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部は、インナーパネルに直接、面接触した状態で接合されていても良いが、他の機能部品を介して間接的にインナーパネルに面接触した状態で接合されていても良く、一端のブラケットは、インナーパネルに直接、もう一方の端部のブラケットはインナーパネルに間接的に面接触した状態で接合されていても良い。
【0044】
ビーム部材の伸長性ブラケットのフランジ部の少なくとも一部と、インナーパネルとの接合は、前記の伸長性ブラケットとインパクトバーとの接合と同様に、ボルト・ナット締めのような機械的締結、嵌合、接着、または溶着が例示される。伸長性ブラケットのフランジ部かインナーパネルのいずれかが熱可塑性樹脂系材料など可溶融性材料からなる場合は、接合手段である溶着として、振動溶着、超音波溶着、赤外線溶着、またはレーザー溶着を用いることもできる。
【0045】
車両ドア構造のインナーパネルは、伸び率15%以下の低延性材料からなるものであると、ビーム部材の衝撃吸収能力が発揮されやすくなり好ましい。この低延性材料の種類の例や伸び率についてはビーム部材のインパクトバーについて前述したとおりである。インナーパネルが、アルミニウム合金、マグネシウム合金、および複合材料、特に、上記のような樹脂系複合材料である低延性材料からなるものであると、インナーパネルを有する車両ドア構造を軽量なものとすることができ好ましく、インナーパネルおよびインパクトバーのいずれもが、上に例示される低延性材料の群から選ばれる1つ以上のものからなるものであると、より著しい車両軽量化を達成することができ更に好ましい。その低延性材料としては、繊維強化樹脂であるとより好ましく、繊維強化熱可塑性樹脂であるとより一層好ましく、炭素繊維強化熱可塑性樹脂であると特に好ましい。
【0046】
車両ドア構造は、伸び率15%以下の低延性材料からなるインナーパネル、及び、伸び率15%以下の低延性材料からなるインパクトバーと、2つのブラケットのうち少なくとも1つとして、伸び率15%超過の良延性材料からなる伸長性ブラケットを有するビーム部材とを含むものであると特に衝撃吸収能が優れたものとなり好ましい。
【0047】
車両ドア構造は、
図5~8に例示されるような、その有するビーム部材に2つのブラケットがあり、それらがいずれも伸長性ブラケットであるものであると、より衝撃に強い構造となり好ましい。
【0048】
車両ドア構造は、
図5、
図7、
図8、および
図9Cに例示されるような、ビーム部材の2つのブラケットが、いずれも、それぞれのフランジ部の厚み方向が、インナーパネルの厚み方向と略同一方向となる配置にて、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されているものであると、製造がより容易で、耐衝撃性が優れた車両ドア構造となり好ましい。この車両ドア構造は、2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットであるとより好ましい。
【0049】
図6は、車両の左側ドア用の車両ドア構造を車外から車室内の方向に見た場合に、車両の前後方向に渡って、
図4に示されるビーム部材が取り付けられた車両ドア構造の模式図である(ただし、簡便の為、インナーパネルにおける開口部などの詳細の記載を省略した)。車両ドアのデザインや取り付ける必要がある機能部品との関係上、ビーム部材のブラケットを、そのフランジ部の厚み方向が、インナーパネルの厚み方向と略同一方向となる配置にて、インナーパネルに接合するのが困難な場合がある。そのような場合、
図4のビーム部材を
図6に例示されるように車両ドア構造に用いることができる。
【0050】
車両ドア構造は、
図5、
図7、
図8、および
図9Cに例示されるような、ビーム部材が、インナーパネルを厚み方向に見た状態で、インナーパネルの面状部の、ある端部Aから、インナーパネルの中央部を超え、インナーパネルの面状部の別の端部である端部Bに架橋していて、且つ、ビーム部材の2つのブラケットのフランジ部が、それぞれ端部A、端部Bと接合されているものであると、耐衝撃性が優れた車両ドア構造となり好ましい。この車両ドア構造は、そのビーム部材の2つのブラケットがいずれも伸長性ブラケットであるとより好ましく、2つのブラケットが、いずれも、それぞれのフランジ部の厚み方向が、インナーパネルの厚み方向と略同一方向となる配置にて、インナーパネルに直接または間接的に面接触した状態で接合されているものであるとより好ましく、これらのより好ましい態様の両方を満たすものであるとより一層好ましく、2つのブラケットのそれぞれの接合面も同じ方向となる配置であると更に好ましい。
【0051】
車両ドア構造は、
図7に例示されるように伸長性ブラケットを有するビーム部材とともに、伸長性ブラケットを有しない補助ビーム部材を有するものであってもよい。
図7中の補助ビーム部材は、インパクトバーに相当する棒状部材の両端をボルトで補強対象物に締結する形式のものであるが、補助ビーム部材としてはこれに限定されず、例えば、棒状部材の端部に一つ、またはその両方に前記の箱状ブラケットを有するものであってもよい。
【0052】
<<車両>>
上記の車両ドア構造を有する車両であって、車両ドア構造のビーム部材が車両室外側に、インナーパネルが車両室内側になる配置にて車両ドア構造を有する車両も本発明の一実施形態である。
図5~7及び
図9Cに例示されるとおり、ビーム部材が車両の前後方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する車両であってもよく、
図8に例示されるとおり、ビーム部材が車両の上下方向に延びる配置となる車両ドア構造を有する車両であっても良い。ここでいう車両とは、自動車に代表されるが、勿論、いわゆる空飛ぶ自動車や小型モビリティー、線路上を走行する車両などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
ここに開示されるビーム部材、車両ドア構造、及び車両は、自動車に代表される車両に関する産業での利用に好適である。
【符号の説明】
【0054】
1 本発明の一実施形態であるビーム部材(2つの伸長性ブラケットが同方向)
2 伸長性ブラケット
3 インパクトバー
4 伸長性ブラケットのフランジ部
5 伸長性ブラケットのインパクトバー受部
6 伸長性ブラケットのフランジ部の接合面
7 本発明の一実施形態であるビーム部材(2つの伸長性ブラケットが別方向)
8 インナーパネル(ビーム部材を見やすくするために、一部記載を省略)
9 補助ビーム部材
10 非伸長性ブラケット
11 本発明の一実施形態であるビーム部材(伸長性ブラケットと非伸長性ブラケットとを有する。)
12 本発明の一実施形態であるビーム部材(インパクトバーの一端には伸長性ブラケットが供えられ、もう一端はブラケット無しでインナーパネルにボルト締結される。)
13 ボルト
21 衝撃を受けて変形した、本発明の一実施形態であるビーム部材(2つの伸長性ブラケットが同方向)
22 衝撃を受けて変形した、伸長性ブラケット