(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161635
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】シンクの製造方法及びこれにより製造されるシンク
(51)【国際特許分類】
B21D 51/18 20060101AFI20241113BHJP
E03C 1/18 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B21D51/18 A
B21D51/18 B
E03C1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076428
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】597010400
【氏名又は名称】株式会社トヨウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良行
(72)【発明者】
【氏名】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】大木 優太
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061BA04
2D061BC02
2D061DA03
(57)【要約】
【課題】プレス成形の量産効果を活かしつつ、プレス成形の深絞り加工の難儀さを解消する、あるいは、シンクの形状の自由度を確保する。
【解決手段】第1、第2の成形体(16,18)を溶接することによりシンク(20)が作られる。第1の成形体(16)はシンク(20)の水槽部(4)の底面(6)を有し、そして、第1の成形体(16)はプレス成形によって作られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1、第2の成形体を溶接することにより作られるシンクの製造方法であって、
前記第1の成形体がシンクの水槽部の底面を有し、
該第1の成形体がプレス成形によって作られている、ことを特徴とするシンクの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシンクの製造方法において、
前記シンクの下部が前記第1成形体により形成され、
前記シンクの上部が前記第2成形体により形成されている、シンクの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシンクの製造方法において、
前記シンクの奥行き側の側面にデッキを有し
該デッキを前記第2成形体が含んでいる、シンクの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のシンクの製造方法において、
前記シンクは、前記デッキのデッキ面よりも低位に位置する載置面を備えた棚を有し、
前記第2成形体は、前記デッキ及び前記棚を含んでいる、シンクの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のシンクの製造方法において、
該シンクの基本的な形状を備えた母シンクをプレス成形によって作る工程と、
該母シンクの側壁の空所を形成して前記第1成形体を作る工程と、
該空所に嵌め込まれて前記母シンクの側壁に追加の機能を付与する追加の成形体をプレス成形または板金成形によって作る工程とを含み、
該追加の成形体が前記第2の成形体を構成する、シンクの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法によって作られたシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクの製造方法及びこれにより製造されるシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス製のシンクの製造は、大別すると、プレス技術を用いて製造するプレス方式シンクと、板金技術を用いて製造する板金方式シンクとに大別され、これらは設備が異なるため業界が別であり、プレス方式シンクと板金方式シンクとは個別的に発展している。
【0003】
。
特許文献1は、プレス方式シンクと板金方式シンクとの利点、欠点を記載している。プレス方式シンクは量産に適し、例えば水槽部の底面を排水口に向けて傾斜させるテーパ面の形成するのが容易であり、また、特許文献2に見られるように、水槽部の底面に排水口に連なる導水路を形成するのが容易であるという利点がある一方で、特許文献1で指摘しているように、シンク水槽部の深絞り加工で皺や割れが発生し易いという製造上の課題がある。また、シンクの形状の自由度が低いという欠点がある。
【0004】
他方、板金方式シンクは、形状の自由度が高いという利点を有しているものの、シンク水槽部の底面にテーパ面の形成する、あるいは、水槽部の底面に排水口に連なる導水路を形成する等は不得意である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-228008号公報
【特許文献2】意匠登録第1521696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シンクの形状に関し、例えば、棚を用意して、洗剤や食器洗いスポンジが置けるようにして欲しいというニーズがあるが、プレス方式シンクでは、このような棚を形成するのが困難である。このことから、プレス方式シンクでは、別売でステンレス製の網籠や水切りトレーなどを用意し、ユーザは、網籠や水切りトレーを入手して洗剤や食器洗いスポンジの置き台として用いるやり方が採用されている。
【0007】
本発明の目的は、プレス成形の量産効果を活かしつつプレス成形の深絞り加工の難儀さを解消することのできるシンクの製造方法及びこれにより製造されるシンクを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、プレス成形の量産効果を活かしつつ形状の自由度を確保することのできるシンクの製造方法及びこれにより製造されるシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題は、本発明によれば、基本的には、
少なくとも第1、第2の成形体を溶接することにより作られるシンクの製造方法であって、
前記第1の成形体がシンクの水槽部の底面を有し、
該第1の成形体がプレス成形によって作られている、ことを特徴とするシンクの製造方法を提供することにより達成される。
【0010】
本発明の目的及び作用効果は、下記の本発明の好ましい実施の形態に記載した詳細説明から明らになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1実施例のシンクの製造方法を説明するための図。
【
図5】第2実施例のシンクの製造方法を説明するための図。
【
図7】第3実施例のシンクを製造する際に、その元となる母シンクの斜視図。
【
図8】母シンクの側壁の一部を切り欠いて形成した空所を備えた第5成形体の斜視図。
【
図9】第5成形体の空所に溶接されて母シンクの側壁に新しい機能を与えるための追加の成形体を空所に溶接する工程を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1実施例(
図1、
図2):
図1は、第1実施例の流し台用のシンク2の斜視図である。シンク2の説明において、シンク2の使用者側から見たときに、左右方向を符号Xで示し、左右方向Xと直交する奥行き方向を符号Yで示し、シンク2の高さ方向を符号Zで示す。
【0013】
シンク2は、左右方向Xに長い平面視長方形の形状を有する。そして、水槽部4は、左右方向Xの一端から他端に亘って延びる大きさを有し、水槽部4の底面6には、左右方向X及び奥行き方向Yの中央部に排水口8が形成されている。底面6は、排水口8に向けて傾斜したテーパ面で構成されている。底面6は、特許文献2に開示のような、排水口8に連なる導水路(図示せず)を有していてもよい。
【0014】
シンク2は、高さ方向Zの上端から若干低位に位置するデッキ10を有している。デッキ10は、奥行き方向Yの側面12に位置し、左右方向Xに一端から多端に亘って連続して延びるほぼ水平面で構成されている。好ましくは、デッキ面10aは水槽部4の側に僅かに傾斜した面で構成される。これにより、デッキ面10aに物を置いたときやデッキ面10aに付着した水分を水槽部4に誘導することができる。
【0015】
水槽部4は、水槽部4の高さ方向Zの中間部において、水槽部4の内方に向けて突出した段部14を有し、段部14は、水槽部4の全周に亘って連続的に延び、そして、共通の水平面上に位置している。段部14は、別途用意した既知の水切りプレート、補助プレートなどを水槽部4の中の任意の箇所に且つ例えば水切りプレートを底面6から間隔を隔てた状態で配置することができる。
【0016】
図1を参照して説明した流し台用シンク2は、第1成形体16と第2成形体18とを接合することによって作られている。
図2は、第1実施例の流し台用シンク2の分解斜視図であり、第1成形体16と第2成形体18の具体的な形態を説明するための図である。
【0017】
図2に示す第1、第2の成形体16、18は、共にプレス成形品である。第1成形体16と第2成形体18とを溶接により接合し、そして、接合箇所を研磨することで流し台用シンク2が製造される。
【0018】
第1成形体16は、流し台用のシンク2の下部を構成し、上述したようにプレス成形によって作られる。具体的には、第1成形体16は、水槽部4の下部の構成、つまり水槽部4の底面6、排水口8を有している。第1成形体16は底面6から段部14までの高さを有している。
【0019】
他方、第2成形体18は、シンク2の上部を構成し、段部14からシンク2の上端までの高さを有し、デッキ10を含んでいる。第2成形体18は、前述したように、第1成形体16と同様にプレス成形によって成形されている。
【0020】
第1成形体16と第2成形体18は、上述したように、溶接することにより一体化され、接合部分を水槽部4の内側から研磨することにより第1実施例の流し台用シンク2が製造される。第1実施例の流し台用のシンク2によれば、第1成形体16と第2成形体18は共にプレス成形品であるが、第1成形体16に含まれる水槽部4は、事実上、半分の高さしかないことから、深絞り加工の難しさが緩和される。
【0021】
第1実施例のシンク2は、上述したようにデッキ10を備えているが、変形例としてデッキ無しのシンクであってもよい。また、第1実施例の流し台用シンク2は、左右方向Xに長い平面視長方形の形状を有しているが、変形例として、平面視四角形のキューブ形シンクであってもよい。
【0022】
第2実施例(
図3ないし
図5):
図3ないし
図5は、第2実施例の流し台用のシンク20に関する図である。第2実施例の説明において、第1実施例(
図1、
図2)と機能的に同じ要素には同じ参照符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0023】
図3は、シンク20の斜視図である。
図4はシンク20の平面図である。第2実施例のシンク20は、第1実施例に含まれるデッキ10の部分が異なるだけで、その他は第1実施例のシンク2と同じである。
【0024】
図3、
図4を参照して、シンク20は、デッキ10が、左右方向Xに離間した2つのデッキ10A、10Bで構成されている点で第1実施例とは異なっている。2つのデッキ10A、10Bのデッキ面10aの高さレベルは第1実施例と同じである。
【0025】
第2実施例のシンク20において、第1デッキ10Aは左右方向Xの左端部に位置し、第2デッキ10Bは右端部に位置し、流し台用シンク20は、第1デッキ10Aと第2デッキ10Bとの間に形成された棚22を有している。棚22は、その上面つまり載置面22aが、第1デッキ10A、第2デッキ10Bのデッキ面10aよりも低位に位置し、より具体的には、段部14よりも若干高い位置に位置している。棚22の載置面22aは実質的に水平面で構成されている。好ましくは、載置面22aは水槽部4の側に僅かに傾斜した面で構成される。棚22は、左右方向Xの中央部分に形成されているが、例えば、棚22を右側に変位した位置に位置させる等、左右方向Xのどの部位に位置させるかは任意である。また、棚22の左右方向Xの長さ寸法も任意である。
【0026】
棚22は、食器用洗剤や食器洗いスポンジなどの置き場として用いられる。載置面22aを水槽部4の側に僅かに傾斜した面で構成することにより、棚22に載置した食器洗いスポンジから流出した水分を水槽部4に誘導することができる。
【0027】
図3などを参照して説明した第2実施例のシンク20は、第3成形体24と第4成形体26とを接合することによって作られている。
図5は、第2実施例のシンク20の分解斜視図であり、第3成形体24と第4成形体26の具体的な形態を説明するための図である。
【0028】
図5と
図2(第1実施例)とを対比すると分かるように、第3成形体24は、第1実施例に含まれる第1成形体16と同じであり、また、プレス成形品である。他方、第4成形体26は、段部14からシンク20の上端までの高さを有し、第1デッキ10A、第2デッキ10B、棚22を含んでいる。第4成形体26はプレス成形品である。
【0029】
シンク20の下半分を構成する第3成形体24と、シンク20の上半分を構成する第4成形体26は、これらを溶接することにより一体化され、接合部分を水槽部4の内側から研磨することにより流し台用シンク20が製造される。シンク20は、下半分を構成する第3成形体24が第1実施例のシンク2と同じであることから、これに組み付ける上半分の成形体として、第2の成形体18を採用することで、第1実施例のシンク2を作ることができる。また、第3成形体24を採用することで、第2実施例のシンク20を作ることができる。言い換えれば、シンク20の底面6を含む下半分の成形体を兼用して、形態の異なる複数種の上半分の成形体を用意することで、形態の異なるシンクを製造することができる。
【0030】
第3実施例(
図6ないし
図9):
図6ないし
図9は、第3実施例の流し台用のシンク30に関する図である。第3実施例の説明において、第1実施例(
図1)及び第2実施例(
図3)と機能的に同じ要素には同じ参照符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0031】
図6は、第3実施例のシンク30の斜視図である。シンク30は、第2実施例のシンク20(
図3)と実質的に同じ形状を有している。すなわち、第3実施例のシンク30は、水槽部4、排水口8を備えた底面6、段部14、第1、第2のデッキ10A、10B、棚22を有している。第3実施例のシンク30は、棚22が板金成形品で作られ、それ以外がプレス一体成形品で作られている点で第2実施例のシンク20(
図3)とは異なっている。
【0032】
図7ないし
図9は、第3実施例のシンク30の製造過程を説明するための図である。シンク30は、第5成形体32と第6成形体40とを溶接により接合することにより作られる(
図9)。
図7は、第5成形体32を作るための母シンク36を示し、母シンク36はプレス一体成形品である。そして、母シンク36は、実質的に、第1実施例のシンク2と同じである。上下2分割構成の第1実施例との違いは、母シンク36の全体がプレスで一体成形されている点である。
【0033】
すなわち、第3実施例のシンク30は、これを製造する前に母シンク36が用意される。次の工程として、母シンク36から棚22に相当する部位を切り欠くことにより作られる(
図8)。すなわち、第3実施例のシンク30を作る準備工程で、母シンク36から一部を切り欠いて空所38を形成することにより第5成形体32が作られる。第5成形体32の空所38は、
図6と
図8を対比するとよく分かるように、棚22に相当する部位に位置している。
【0034】
第3実施例のシンク30を作る追加の準備工程で、予め第6成形体40が用意される。この第6成形体40は母シンク36の側壁に、該側壁とは別の機能を加えるための追加の成形体であり、これを第5成形体32に組み込むことによってシンク30の棚22を作ることができる。
【0035】
第6成形体40は、この実施例では、プレス成形によって作られている。変形例として、板金加工によって第6成形体40を作ってもよい。第6成形体40は、
図9を参照して、棚22を構成する縦断面L字状の形状の本体34aを有し、また、左右方向Xの両端に、それぞれ、矩形の端壁34bを有している。左右の端壁34bは、棚22の左右方向Xの端壁を構成する。
【0036】
図9を参照して、第3実施例のシンク30は、前述したように、第5成形体32と第6成形体40とを溶接により接合することにより作られる。
【0037】
上記の説明から分かるように、母シンク36の一部を切り欠いて空所38を備えた第5成形体32が作られ、この第5成形体32は、底面6を含む水槽部4を備えたシンクの全ての構成を実質的に有している。そして、その側壁の一部に存在する空所38に任意の形態の成形体を嵌め込んで溶接することで、棚22という機能、つまり水槽部4の側壁に新たな機能を備えたシンク30を提供することができる。
【0038】
すなわち、第3実施例から理解できるように、シンクの基本的な機能を全て備えた母シンク36の側壁の一部に空所を作り、この空所に、水槽部4とは別の機能を付与する成形体を嵌め込んで、これを溶接することで、上述した第3実施例に含まれる棚22を備えたシンク20を製造することができる。したがって、空所の数は任意であり、空所に嵌め込まれる成形体の形状も任意である。
【符号の説明】
【0039】
2 第1実施例の流し台用シンク
X 左右方向
Y 奥行き方向
Z 高さ方向
4 水槽部
6 底面
8 排水口
10 デッキ
10a デッキ面
12 奥行き側の側面
14 段部
16 第1の成形体(シンクの下部を構成)
18 第2の成形体(シンクの上部を構成)
20 第2実施例の流し台用シンク
10A 第1のデッキ
10B 第2のデッキ
22 棚
22a 棚の載置面
24 第3成形体(シンクの下部を構成)
25 第4成形体(シンクの上部を構成)
30 第3実施例の流し台用シンク
32 第5成形体(空所を備えたシンク)
36 第5成形体の母シンク(空所を作るためのシンク)
38 空所
40 棚を作るための第6成形体(追加の成形体)