(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161641
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】染毛方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20241113BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20241113BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241113BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241113BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/10
A61K8/49
A61K8/64
A61K8/41
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076443
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】523167622
【氏名又は名称】町田 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【弁理士】
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 道子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB081
4C083AB281
4C083AB311
4C083AC471
4C083AC541
4C083AC551
4C083AC851
4C083AD441
4C083CC36
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、頭皮アレルギーを発症しない又は軽症であると共に、発色に優れた染毛方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る染毛方法は、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混ぜ合わせてペースト状の混合物を生成する工程、羽毛由来のケラチンを含む第1液とヘマチンを含む第2液を混合した混合液を、泡状にして前記混合物に混ぜ合わせてペースト状の染毛塗布物を作成する工程、前記染毛塗布物を毛髪に塗布する工程、前記染毛塗布物を塗布した前記毛髪をラップフィルムで包み所定時間放置する工程、前記ラップフィルムを取り除き、前記毛髪を空気中に所定時間晒す工程、前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混ぜ合わせてペースト状の混合物を作製する工程、
ヘマチンを含む第1液と羽毛由来のケラチンを含む第2液を混合した混合液を、泡状にして前記混合物に混ぜ合わせてペースト状の染毛塗布物を作製する工程、
前記染毛塗布物を毛髪に塗布する工程、
前記染毛塗布物を塗布した前記毛髪をラップフィルムで包み、所定時間放置する工程、
前記ラップフィルムを取り除き、前記毛髪を空気中に所定時間晒す工程、
前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程、
を含む
ことを特徴とする染毛方法。
【請求項2】
前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程の後、ヘマチンを含む第3液を毛髪になじませる行程を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載した染毛方法。
【請求項3】
前記第1液と前記第2液の混合比率は質量比において1対1である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載した染毛方法。
【請求項4】
前記混合液は、前記混合物に対し、質量比において5%の割合で混合する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載した染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混合して用いる染毛方法に関する。
詳しくは、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混合した混合剤を用いて染毛した場合であっても、頭皮におけるアレルギー性接触皮膚炎(以下「頭皮アレルギー」という。)が生じない染毛方法に関する。
更に詳しくは、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混合した混合剤を用いて染毛した場合において、頭皮アレルギーを発症した被染毛者であっても、頭皮アレルギーを発症すること無く、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を用いて染毛することができる染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛方法に関する第1の従来技術として、酸化染毛中間体である酸化染料を主成分とする第1剤と、過酸化水素などの酸化剤を含む第2剤とからなる酸化型染毛剤を用いた染毛方法が知られている(特許文献1参照)。
酸化染料の代表的成分はパラフェニレンジアミンであり、その他にパラアミノフェノールやトルエン-2,5-ジアミン等がある。
【0003】
第2の従来技術として、頭皮アレルギーの発症を防ぐため、パラフェニレンジアミンを用いない染毛剤を用いる染毛技術が知られている(特許文献2)。
第3の従来技術として、塩基性染料と共に、タンパク質、具体的には、羊毛由来の加水分解ケラチンを含む染毛剤を用いて染毛とトリートメントを同時に行う染毛技術が知られている(特許文献3)。
第4の従来技術として、羽毛由来のケラチンを毛髪に塗布して浸透させ、その後、毛髪に酸含有液剤を塗布して染毛やパーマネント処理をする技術が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-99512
【特許文献2】特許第6656786号
【特許文献3】特開2023-15916
【特許文献4】特許第4931010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術において、酸化染料を用いた染毛は、染色の鮮やかさや染色が長持ちする利点があるものの、パラフェニレンジアミン等の酸化染料、及び過酸化水素水等の酸化剤が用いられているため、条件によっては、頭皮アレルギーを発症することが知られている。
なお、酸化染料等を用いて染毛する場合、頭皮アレルギーの発症を防止するため、染毛前に、パッチテストといわれる皮膚アレルギー試験を行うことが推奨されている。
第2の従来技術において、草木染又は天然系染毛料を用いるので、ブラウン系や黒染の着色に制限され、鮮やかな色に染毛する要望には適さない場合がある。
第3の従来技術において、塩基性染料は毛髪の表面に付着して発色するので、着色が長持ちしない課題がある。また、羊毛由来の加水分解ケラチンは毛髪のトリートメント(毛髪の内部補修、毛髪の表面保護)作用、効果を生じるものである。
第4の従来技術において、羽毛由来のケラチンを毛髪に塗布して5~10分放置した後、酸含有液剤を塗布してトリートメントを行い、次いで、羽毛由来のケラチンと酸含有液剤を毛髪から洗い流した後、酸化染毛剤によって染毛する。よって、羽毛由来のケラチンは、染毛時には何らの効能を生じない。
【0006】
本発明の目的は、頭皮アレルギーを発症しないと共に、発色に優れた染毛方法を提供することである。詳しくは、過去に酸化染料及び酸化剤を用いて染毛を行った際に、頭皮アレルギーを発症した被染毛者(アナフィラキシー発症者を除く。)であっても、頭皮アレルギーの発症を防止又は大幅に軽減できる染毛方法を提供することである。
なお、頭皮アレルギーの発症を大幅に軽減できるとは、頭皮の痛みやかゆみを生じた場合であっても軽微であり、医師による診療を受けるまでもない程度の軽症状をいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、請求項1に係る第1の発明は以下のように構成されている。
アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混ぜ合わせてペースト状の混合物を作製する工程、
ヘマチンを含む第1液と羽毛由来のケラチンを含む第2液を混合した混合液を、泡状にして前記混合物に混ぜ合わせてペースト状の染毛塗布物を作製する工程、
前記染毛塗布物を毛髪に塗布する工程、
前記染毛塗布物を塗布した前記毛髪をラップフィルムで包み、所定時間放置する工程、
前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程、
を含むことを特徴とする染毛方法である。
【0008】
この目的を達成するため、請求項2に係る第2の発明は以下のように構成されている。
前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程の後、ヘマチンを含む第3液を毛髪になじませる行程を実行する
ことを特徴とする第1の発明の染毛方法である。
【0009】
この目的を達成するため、請求項3に係る第3の発明は以下のように構成されている。
前記第1液と前記第2液の混合比率は質量比において1対1である
ことを特徴とする第1の発明の染毛方法である。
【0010】
この目的を達成するため、請求項4に係る第4の発明は以下のように構成されている。
前記混合液は、前記混合物に対し、質量比において5%の割合で混合する
ことを特徴とする第1又は第2の発明の染毛方法である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明の染毛方法において、アルカリ剤と酸化染毛剤を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混ぜ合わせてペースト状の混合物を作製する工程、ヘマチンを含む第1液と羽毛由来のケラチンを含む第2液を混合した混合液を、泡状にして前記混合物に混ぜ合わせてペースト状の染毛塗布物を作製する工程、前記染毛塗布物を毛髪に塗布する工程、前記染毛塗布物を塗布した前記毛髪をラップフィルムで包み、所定時間放置する工程、前記ラップフィルムを取り除き、前記毛髪を空気中に所定時間晒す工程、前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程、を含むことから、酸化染料を含む第1剤及び酸化剤を含む第2剤を用いても、頭皮アレルギーを生じない、又は軽症であり、本願発明の目的を達成できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明にかかる実施形態1の染毛方法の説明図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる実施形態1の染毛方法における作用説明図であり、(A)は処理前、(B)はアルカリ剤の作用、(C)は酸化染毛剤の作用、(D)は染毛状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施の形態を説明する。
第1の発明の実施の形態は、アルカリ剤と酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤を混ぜ合わせてペースト状の混合物を作製する工程、
ヘマチンを含む第1液と羽毛由来のケラチンを含む第2液を混合した混合液を、泡状にして前記混合物に混ぜ合わせてペースト状の染毛塗布物を作製する工程、
前記染毛塗布物を毛髪に塗布する工程、
前記染毛塗布物を塗布した前記毛髪をラップフィルムで包み、所定時間放置する工程、
前記ラップフィルムを取り除き、前記毛髪を空気中に所定時間晒す工程、
前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程、
を含む
ことを特徴とする染毛方法である。
好ましくは、前記空気中に所定時間晒した前記毛髪から前記染毛塗布物を洗い流す工程の後、ヘマチンを含む第3液を毛髪になじませる行程を実行する。
また、好ましくは、前記第1液と前記第2液の混合比率は質量比において1対1である。
さらに、好ましくは、前記混合液は、前記混合物に対し、質量比において5%の割合で混合する。
【0014】
次に第1剤を説明する。
第1剤は、少なくとも、アルカリ剤と酸化染料を含んでいる。
第1剤には、染毛の障害にならない他の成分、例えば、毛髪修復剤を含むことができる。
【0015】
次に第1剤に含まれるアルカリ剤を説明する。
アルカリ剤は、毛髪を保護しているキューティクルを開く機能を有する。
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩、リン酸ナトリウムなどの金属リン酸塩、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンなどが例示される。
【0016】
次に第1剤に含まれる酸化染料を説明する。
酸化染料は、酸化反応により単独で発色する機能をする染料である。
酸化染料としては、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体から選択した一種又は二種以上を採用することができる。染料中間体としては、例えば、硫酸トルエン-2,5-ジアミン、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体などが例示される。また、酸化染料として、染料中間体により酸化されて色調を呈する公知のカップラーから選択された一種又は二種以上を採用しても良い。カップラーとしては、塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、塩酸メタフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体、5-アミノオルトクレゾール、メタアミノフェノール等のアミノフェノール誘導体、レゾルシンなどが例示される。
【0017】
次に第2剤を説明する。
第2剤は、少なくとも、酸化剤を含んでいる。
第2剤には、染毛の障害にならない他の成分を含むことができる。
【0018】
次に第2剤に含まれる酸化剤を説明する。
酸化剤は、アルカリ剤によって分解され、活性酸素を発生する機能を有する。
酸化剤は、例えば、過酸化水素、過炭酸塩、過ホウ酸塩が例示される。活性酸素は、毛髪の天然メラニン色素を可溶化して脱色又は明るくする。また、酸化染毛剤が活性酸素によって酸化重合され、所定の色に発色される。
【0019】
第1剤と第2剤は、所定の割合で混合されて混合物を作製する。第1剤と第2剤の混合比率は、質量比において1対1であることが好ましい。
【0020】
次に第1液を説明する。
第1液は、ヘマチンを含んでいる。
ヘマチンは、毛髪の傷んでいる部分を補修する機能が知られている。ヘマチンは、血液、例えば、豚の血液中のヘモグロビンからグロビンを分離して製造され、毛髪のケラチンとの強い結合力により、毛髪補修、アルカリ除去、活性酸素除去等の効果が知られ、さらに、近時、過酸化水素の分解効果が指摘されている。
このヘマチンの分解効果によって染毛時の余分な過酸化水素を分解し、毛髪や頭皮への悪害を軽減すると推定される。また、毛髪や頭皮における表皮角質層の主成分は、ケラチンタンパク質である。ヘマチンは毛髪や頭皮角質細胞のケラチンタンパクとの結合性が高いことが知られている。よって、第1液に含まれるヘマチンが、頭皮角質細胞にすばやく吸着(結合)されることで、酸化染料と頭皮角質細胞の結合を抑制し、かぶれやアレルギーの発症を抑えると推定される。また、ヘマチンの特異的な構造から、酸化染料の構造の一部に何らかの影響を与えることで、アレルゲン性を低下させていることも考えられる。
ヘマチンの配合量は、質量比において0.01%~0.5%であることが好ましく、特に0.01%~0.2%が好ましい
【0021】
第1液には、水、多価アルコール、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)のうちの単数又は複数を含むことができる。多価アルコールは質量比において1.0%から20.0%、好ましくは1.0%~10.0%、両性界面活性剤は質量比において0.1%~5.0%、好ましくは1.0%~3.0%、非イオン系界面活性剤は質量比において0.1%~10.0%、好ましくは0.1%~5.0%、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)は質量比において0.1%~10.0%、好ましくは0.1%~5.0%、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)は質量比において0.1%~10.0%、好ましくは0.1%~5.0%、及び水が質量比における残りをしめるように配合することが好ましい。
【0022】
次に第2液を説明する。
第2液は、羽毛由来のケラチンを含んでいる。羽毛由来のケラチンの配合量は、質量比において0.01%~10.0%、特に0.1%~5.0%であることが好ましい。
羽毛由来のケラチンは、ケラチン原料を加水分解して製造する。
ケラチン原料は、鳥類の羽毛、特に、鴨、合鴨、家鴨等の水鳥の羽毛から得られる、ダウン、フェザー、又はスモールフェザーの羽毛を、単独で又は複数混合して採用することが好ましい。
加水分解処理は、アルカリ溶液中でケラチン原料を振とう又は攪拌することによって行われる。
加水分解した羽毛由来のケラチン(羽毛ケラチン)は、酸化染料とともに毛髪に浸透し、毛髪内ケラチンと速やかに結合し、それを足がかりに酸化染料が重合発色することで、染毛ムラを抑えて均一な染毛状態となり、退色も抑えられると推測される。
羽毛由来のケラチンはポリペプチド鎖間に水素結合をしたベーターシート(折り紙構造)とよばれる構造をもつ。分子構造は、結合又は水素結合を介して一緒に結合されている逆平行ポリペプチド鎖によって形成されたねじれたベータシート構造で構成されている。
羽毛由来のケラチンは、アミノ酸組成が羊毛ケラチンに比べて1.5倍の疎水性アミノ酸を多く含んでおり、防水・乾燥防止効果に優れている。防水効果は、水との接触ができる限り少なくなるように連結する疎水結合によってえられると推測される。
【0023】
第2液には、羽毛由来の加水分解ケラチン、羽毛由来の加水分解ケラチン誘導体、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)及び水を含むことができる。羽毛由来の加水分解ケラチンの配合量は質量比において0.01%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、羽毛由来の加水分解ケラチン誘導体の配合量は質量比において0.01%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)の配合量は質量比において0.1%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)の配合量は質量比において0.1%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、及び水が質量比における残りをしめるように配合することが好ましい。
【0024】
第1液と第2液は所定の比率で混合され、混合液とされる。所定の比率とは、本発明の効果を生じる比率で有り、第1液と第2液の好ましい混合比率は質量比において1対1である。混合液は、公知の泡ディスペンサーに収納され、泡状にして第1剤と第2剤の混合物に加えられて混ぜ合わされ、染毛塗布物が作製される。混合液を泡状にして混合物に混ぜることにより、染毛塗布物において、それらに含まれる成分が均等に分布されると推測される。
【0025】
次に第3液を説明する。
第3液には、ヘマチン、カタラーゼ、多価アルコール、両性界面活性剤、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)及び水を含むことができる。ヘマチンの配合量は質量比において0.001%~0.5%、特に0.03%~0.01%が好ましく、カタラーゼの配合量は質量比において0.001%~0.5%、特に0.01%~0.1%が好ましく、多価アルコールの配合量は質量比において1.0%~10.0%、特に1.0%~5.0%が好ましく、両性界面活性剤の配合量は質量比において0.1%~5.0%、特に1.0%~3.0%が好ましく、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)の配合量は質量比において0.1%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)の配合量は質量比において0.1%~10.0%、特に0.1%~5.0%が好ましく、及び水が質量比における残りをしめるように配合することが好ましい。
【0026】
次に本発明に係る染毛方法を
図1のフローチャートを参照しつつ説明する。
ステップS1において、第1剤100と第2剤102を所定量ずつ容器104に取出し、攪拌具106によって攪拌して混合し、ペースト状の混合物108を作製する。ここで、第1剤100と第2剤102の混合比率は、質量比において1対1が好ましい。例えば、第1剤100が20グラムである場合、第2剤102は20グラムである。
【0027】
次にステップS2において、第1液110と第2液112を所定量ずつ泡ディスペンサー114に収納した混合液116を、当該泡ディスペンサー114を用いて容器104に泡118にして供給した後攪拌して混合物108に対し均一に混合し、染毛塗布物120を作製する。
混合液116を泡118にすることにより、混合液116を混合物108に均一に混合した染毛塗布物120を容易に得ることができる。
第1液110と第2液112の混合比率は、質量比において1対1であることが好ましい。
混合物108に対する混合液116の混入量は、混合物108に対し混合液116が質量比において5%であることが好ましい。しかしながら、本発明の効果を発揮する比率であれば良い。
【0028】
次にステップS3において、櫛、ブラシ、又はへら等の塗布具によって、ステップS2において作製した染毛塗布物120を毛髪に塗布し、ステップS4へ進む。
この際、染毛塗布物120は毛髪の毛先から根元部まで均一に染毛されるように、毛髪全体にむら無く塗布する。これにより、染毛塗布物120は頭皮にも付着される。
染毛塗布物120が不足した場合、ステップS1~S2を再度実行し、新たな染毛塗布物120を作製して毛髪に塗布する。
【0029】
次にステップS4において、頭部をラップフィルムで包み込むことにより、染毛塗布物120を塗布した毛髪を包み込んだ後、所定時間(以下「第1所定時間」とう。)の間放置してステップS5へ進む。第1所定時間は、室温や染毛条件によって異なるので、予め定めた所定時間放置する。第1所定時間は、例えば、5分~10分である。ラップフィルムは、染毛専用のラップフィルムを用いることが好ましいが、食品用のラップフィルムを用いることもできる。なお、第1所定時間における「第1」は、後述するステップS5における「第2所定時間」と区別するために用いる用語であり、技術的範囲の解釈に当たっては考慮されない。
【0030】
ステップS5において、ステップS4において毛髪を包み込んだラップフィルムを取り外し、ステップS6へ進む。
【0031】
ステップS6において、所定時間(以下「第2所定時間」という。)の間、毛髪を空気に晒す。第2所定時間は、例えば、10分~15分である。
この第2所定時間の後に、スプレー122を用いて精製水、水道水等の水を毛髪に噴霧した後、当該毛髪を櫛でとかすことが好ましい。これによって、染毛塗布物を毛髪により一層均一に塗布することができ、毛髪の染毛むらを防止することが出来る。染毛塗布物をほぼ均一に付着させた状態を、なじませるという。
ステップS6において、毛髪が空気と触れることにより、酸化染料の酸化が進み、発色が促進される。
【0032】
このステップS4~S6において、次に説明するように染毛が行われる。
図2(A)は、染毛前の毛髪1の縦断面図であり、中心部に柱状の毛髄質(メデュラ)2があり、そのメデュラ2の周囲を繊維状であって、メラニン色素3を含む毛被質(コルテックス)4が覆い、コルテックス4を囲うように、鱗状の毛表皮(キューティクル)5が最外側に配されている。
毛髪1に染毛塗布物120が塗布された場合、
図2(B)に図示するように、アルカリ剤6によって毛髪1が膨潤してキューティクル5が開き、酸化染料7と酸化剤8がコルテックス4に侵入する。これによって、アルカリ剤6が酸化剤8を分解して、水と活性酸素が発生する。活性酸素がメラニン色素3を脱色することから、毛髪1は脱色(明色化)される。
同時に、酸化染料7が活性酸素により酸化重合されて所定の色に発色する。これによって、明るくなった毛髪1の色調に染料の色調が加わった色に染毛される。
【0033】
次にステップS7において、ぬるま湯で毛髪1及び頭皮から色が出なくなるまで染毛塗布物120を入念に洗い流し、ステップS8へ進む。ステップS7は、所謂乳化処理である。
【0034】
次にステップS8において、シャンプー剤を用いて、さらに染毛塗布物120を毛髪1から取り除いた後、ステップS9へ進む。
【0035】
次にステップS9において、第3液を掌にとって毛髪1に大凡均一に付着させて第3液を毛髪1になじませた後、当該第3液を毛髪1から洗い流し、ステップS10へ進む。
【0036】
次にステップS10において、市販のトリートメント剤を毛髪1になじませた後、当該トリートメント剤を毛髪1から洗い流し、傷んだ毛髪1を補修し、ステップS11へ進む。
【0037】
次にステップS11において、毛髪1をドライヤー等を用いて乾燥させ、染毛処理を終了する。
【0038】
ステップS3~ステップS7は、第3所定時間T3以内に行うことが好ましい。第3所定時間T3は、2時間である。
【0039】
このように、本発明に係る染毛方法により染毛処理を行った場合、第2液112に含まれる羽毛由来のケラチンが酸化染料7とともに毛髪1に浸透し、毛髪1内ケラチンと速やかに結合し、それを足がかりに酸化染料7が重合発色することで、染毛ムラを抑え均一な染毛状態となり、退色も抑えられると推測される。
第1液110に含まれているヘマチンは、過酸化水素の分解効果が知られているため、染毛時の余分な過酸化水素を分解し、毛髪1や頭皮へのダメージを軽減することが期待できる。また、ヘマチンは毛髪1や頭皮のケラチンタンパクとの結合性が高いことが知られている。本発明に係る染毛方法により染毛処理を行った場合、ヘマチンが頭皮の角質細胞にすばやく吸着されることで酸化染料と角質細胞の結合を抑制し、かぶれやアレルギーの発症を抑えると推定される。また、ヘマチンの特異的な構造から、酸化染料の構造の一部に何らかの影響を与えることで、アレルゲン性を低下させていることも考えられる。このような効果を発揮させるには、ヘマチンを前述したように、所定量以上配合する必要がある。
【0040】
なお、ステップS1に先だって、次の手順でパッチテストを行うことはもちろんである。
【実施例0041】
次に実施例1を説明する。
本実施例1において、各成分における最小値の組合せ、及び最大値の組合せを実施し、その後、各成分における最大値と最小値の間の配合の組合せの一例を実施した。
(1)第1剤
第1剤100は、市販されている第1剤を用いた。
第1剤100には、レゾルシン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラフェニレンジアミン、セトステアリルアルコール、パラフィン、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ポリエチレングリコール1500、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ラウリン酸アミドプロピルベタイン液、亜硫酸ナトリウム(無水)、L-システイン塩酸塩、L-アスコルビン酸ナトリウム、エデト酸塩、高重合メチルポリシロキサン(1)、メチルポリシロキサン、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、フェノキシエタノ-ル、グリチルリチン酸ジカリウム、加水分解ケラチン液(羊毛)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、混合植物抽出液(13)(イラクサエキス(1)、フキタンポポエキス、スギナエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、セイヨウノコギリソウエキス、ミツガシワエキス、シラカバ樹皮エキス)、プロピレングリコール、1.3ーブチレングリコール、イソプロパノール、香料、粘度調整剤、pH調整剤、精製水を含んでいる。
(2)第2剤
第2剤102は、市販されている第2剤を用いた。
第2剤102は、セトステアリルアルコール、デカメチルシクロペンタシロキサン、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、テトラデセンスルホン酸ナトリウム液、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液、フェノキシエタノール、ヒドロキシエタンジホスホン酸液、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、粘度調整剤、pH調整剤、及び精製水を含んでいる。
(3)第1液
第1液110は、ヘマチンが0.01~0.2質量%、多価アルコールが1.0~10.0質量%、両性界面活性剤が0.1~5.0質量%、非イオン系界面活性剤が0.1~5.0質量%、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)が0.1~5.0質量%、及びその他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)が0.1~5.0質量%、及び水が残りの質量%である。
(4)第2液
第2液112は、羽毛由来の加水分解ケラチンが0.1~5.0質量%、羽毛由来の加水分解ケラチン誘導体が0.1~5.0質量%、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)が0.1~5.0質量%、その他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)が0.1~5.0質量%、及び水が残りの質量%である。
上記第1液110と第2液112を、染毛処理の都度、質量比において1対1の割合で混合して混合液116を作成し、泡ディスペンサー114に入れて用いた。
(5)第3液
第3液は、ヘマチンが0.001~0.1質量%、カタラーゼが0.001~0.1質量%、多価アルコールが1.0~10.0質量%、両性界面活性剤が0.1~5.0質量%、各種保湿成分(コンディショニング成分も含む)が0.1~5.0質量%、及びその他添加成分(pH調整剤、防腐剤等)が0.1~5.0質量%、及び水が残りの質量%である。
(6)染毛方法
前述した
図1に示す染毛方法によって染毛した。
具体的には、ステップS1において、第1剤100と第2剤102を、それぞれ20gずつ容器104に取出して攪拌具106を用いて攪拌して混合物108を作成した。
ステップS2において、第1液110と第2液112を質量比1対1によって混合した混合液116を泡ディスペンサー114から泡118にして混合物108に加えた後、入念に攪拌し、染毛塗布物120を作成した。混合液116の混合物108に対する混入量は、質量比において5%である。
ステップS3において、染毛塗布物120を塗布具を用いて毛髪1に均等に塗布した。
この塗布中にステップS2において作製した染毛塗布物120が無くなったので、再度、ステップS1とS2を実行し、染毛塗布物120を同量作製し、毛髪1に塗布した。
ステップS4において、ラップフィルムによって頭部を包み、第1所定時間として10分間放置した。
ステップS5において、ラップフィルムを取り除いた。
ステップS6において、染毛塗布物120を塗布した毛髪1を空気に、第2所定時間として10分間晒した。この10分間の後、スプレー122によって水を毛髪1に噴霧した後、毛髪1を櫛によって梳くことにより、染毛塗布物120をより一層均一に塗布した。
ステップS7において、ぬるま湯にて毛髪1及び頭皮から染毛塗布物120を目視で色が見えなくなるまで洗い流した。
ステップS8において、毛髪1を市販のシャンプーを用いて毛髪1から染毛塗布物120を更に洗い流した。
ステップS9において、第3液を掌にとって毛髪1に付着させることによって毛髪1になじませた。
ステップS10において、市販のトリートメント剤を用いて毛髪保護処理をした。
ステップS11において、ドライヤーを用いて毛髪1を乾燥させて染毛処理を終了した。
(3)染色評価
染色した毛髪1の染まり具合を、目視により評価した結果、従来の酸化染毛剤を用いた染色と同等であった。
(4)頭皮アレルギー評価
発明者は、頭皮アレルギーに関し、酸化染料及び酸化剤を用いて染毛を行った場合、軽微の頭皮アレルギーを発すると共に、口内に苦み又は舌に熱を感じる特異体質を有している。発明者が、実施例1の染毛塗布物120をそれぞれ用いて
図1の手順によって染毛を行ったが、軽微の頭皮アレルギーを生じることはなく、及び、苦み又は舌に熱を感じることはなかった。また、酸化染料及び酸化剤を用いた染毛処理によって頭皮アレルギーを生じた被染毛者100人に対し、実施例1に係る各染毛塗布物120を用いてパッチテストを行ったが、皮膚アレルギーを生じることはなかった。
【0042】
本発明は、実施例1に限定されず、本発明の範囲において、種々の変更が可能である。