(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161648
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】箔転写装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20241113BHJP
B41F 16/00 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
B65H5/06 C
B65H5/06 E
B41F16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076464
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
【テーマコード(参考)】
3F049
【Fターム(参考)】
3F049CA16
3F049DA12
3F049LA16
3F049LB08
(57)【要約】
【課題】表面に凹部を有する媒体に対して箔転写を行う場合において、加熱ローラの弾性層を凹部に追従しやすくすることを目的とする。
【解決手段】箔転写装置は、箔フィルムの箔を媒体に転写させる装置であり、加熱ローラ61と、加圧ローラ51を備える。加熱ローラ61は、表面に第1弾性層G1を有する。加圧ローラ51は、表面に第2弾性層G2を有する。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間で箔フィルムと媒体を挟む。第1弾性層G1は、JIS-A硬度が30以上50以下、かつ、MD-1硬度が30以下である。加熱ローラ61と加圧ローラ51の間のニップNP部において、加圧ローラ51が凹んでいる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔フィルムの箔を媒体に転写させる箔転写装置であって、
表面に第1弾性層を有する加熱ローラと、
表面に第2弾性層を有し、前記加熱ローラとの間で箔フィルムと媒体を挟む加圧ローラと、を備え、
前記第1弾性層は、JIS-A硬度が30以上50以下、かつ、MD-1硬度が30以下であり、
前記加熱ローラと前記加圧ローラの間のニップ部において、前記加圧ローラが凹んでいることを特徴とする箔転写装置。
【請求項2】
前記第2弾性層のJIS-A硬度は、前記第1弾性層のJIS-A硬度以下であり、
前記第1弾性層の厚さは、前記第2弾性層の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項3】
前記第2弾性層は、JIS-A硬度が30以上40以下であることを特徴とする請求項2に記載の箔転写装置。
【請求項4】
前記第1弾性層の厚さは、1mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の箔転写装置。
【請求項5】
前記第1弾性層の厚さは、1.3mm以上1.7mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の箔転写装置。
【請求項6】
前記第2弾性層の厚さは、4mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の箔転写装置。
【請求項7】
前記第2弾性層の厚さは、5.3mm以上5.7mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の箔転写装置。
【請求項8】
前記第2弾性層は、JIS-A硬度が30未満であることを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項9】
前記第1弾性層のJIS-A硬度は、30以上35以下であることを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項10】
前記第1弾性層は、
ゴムからなるゴム層と、
前記ゴム層の表面を覆う、5μm以下のコーティング層と、を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の箔転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、箔フィルムの箔を媒体に転写させる箔転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箔転写装置として、箔フィルムと媒体を挟む加熱ローラおよび加圧ローラを備えたものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、加熱ローラおよび加圧ローラは、それぞれゴム層を有する。加熱ローラのゴム層は、JIS-A硬度が5~30である。加圧ローラのゴム層は、JIS-A硬度が20~60であり、加熱ローラの硬度よりも相対的に低い。加熱ローラのゴム層および加圧ローラのゴム層の厚みは、3~8mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表面に凹部を有する媒体に対して箔転写を行う場合には、加熱ローラのゴム層を凹部に追従させる必要があるため、凹部に追従しやすい加熱ローラのゴム層とすることが求められている。
【0005】
そこで、本開示は、表面に凹部を有する媒体に対して箔転写を行う場合において、加熱ローラの弾性層を凹部に追従しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本開示の箔転写装置は、箔フィルムの箔を媒体に転写させる装置である。
箔転写装置は、加熱ローラと、加圧ローラと、を備える。
加熱ローラは、表面に第1弾性層を有する。
加圧ローラは、表面に第2弾性層を有する。加圧ローラは、加熱ローラとの間で箔フィルムと媒体を挟む。
第1弾性層は、JIS-A硬度が30以上50以下、かつ、MD-1硬度が30以下である。
加熱ローラと加圧ローラの間のニップ部において、加圧ローラが凹んでいる。
【0007】
第1弾性層が、JIS-A硬度30以上50以下の条件を満たすことで、第1弾性層の強度を大きくすることができる。第1弾性層が、MD-1硬度30以下の条件を満たすことで、第1弾性層の表層が柔らかくなるので、媒体の表面に凹部がある場合において第1弾性層の凹部への追従性が高くなる。また、ニップ部において加圧ローラが凹むことで、第1弾性層の凹部への追従性を高くすることができる。なお、第1弾性層の凹部への追従性が高くなることは、実験により確認されている。
【0008】
また、第2弾性層のJIS-A硬度は、第1弾性層のJIS-A硬度以下であり、第1弾性層の厚さは、第2弾性層の厚さよりも小さくてもよい。
【0009】
第2弾性層のJIS-A硬度が第1弾性層のJIS-A硬度以下で、かつ、第1弾性層の厚さが第2弾性層の厚さよりも小さいことで、ニップ部において、加圧ローラを凹ませることができる。
【0010】
また、第2弾性層は、JIS-A硬度が30以上40以下であってもよい。
【0011】
また、第1弾性層の厚さは、1mm以上2mm以下であってもよい。
【0012】
また、第1弾性層の厚さは、1.3mm以上1.7mm以下であってもよい。
【0013】
また、第2弾性層の厚さは、4mm以上6mm以下であってもよい。
【0014】
また、第2弾性層の厚さは、5.3mm以上5.7mm以下であってもよい。
【0015】
また、第2弾性層は、JIS-A硬度が30未満であってもよい。この場合、第1弾性層の厚さと第2弾性層の厚さは、任意に設定でき、例えば、第1弾性層の厚さと第2弾性層の厚さを同じ大きさにしてもよい。
【0016】
第2弾性層のJIS-A硬度が30未満となることで、ニップ部において、加圧ローラを凹ませることができる。
【0017】
また、第1弾性層のJIS-A硬度は、30以上35以下であってもよい。
【0018】
また、第1弾性層は、ゴム層と、コーティング層と、を有していてもよい。
ゴム層は、ゴムからなる。
コーティング層は、ゴム層の表面を覆う。コーティング層は、5μm以下の層である。
【0019】
第1弾性層を、ゴム層と、5μm以下のコーティング層とで構成することで、第1弾性層について、JIS-A硬度を30以上50以下、かつ、MD-1硬度を30以下とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、表面に凹部を有する媒体に対して箔転写を行う場合において、加熱ローラの第1弾性層が凹部に追従しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】箔転写装置を示す図(a)と、箔フィルムを示す図(b)である。
【
図2】加熱ローラおよび加圧ローラの構造を示す断面図である。
【
図6】シミュレーションの設定条件を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本開示の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、箔転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。シートSは、媒体の一例である。箔転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、箔転写部50とを備えている。
【0023】
筐体2は、樹脂などからなる。筐体2は、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口を有している。カバー22は、開口を開閉する。カバー22は、筐体本体21に回動可能に支持されている。
【0024】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
【0025】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ箔転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、供給ローラ11Aと、リタードローラ11Bと、レジストレーションローラ11Cと、を備えている。
【0026】
供給ローラ11Aは、シートトレイ3上のシートSを箔転写部50に供給するためのローラである。リタードローラ11Bは、供給ローラ11Aによって搬送されるシートSを1枚に分離するためのローラである。レジストレーションローラ11Cは、供給ローラ11Aで送り出されるシートSを箔転写部50に搬送する。以下の説明では、シートSの搬送方向を、単に「搬送方向」ともいう。
【0027】
シート排出機構12は、箔転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、下流側搬送ローラ12Aおよび排出ローラ12Bを備えている。
【0028】
下流側搬送ローラ12Aは、箔転写部50から送り出されるシートSを排出ローラ12Bに搬送する。排出ローラ12Bは、下流側搬送ローラ12Aで送り出されるシートSを筐体2の外に排出する。
【0029】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように箔フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUを備えている。
【0030】
フィルムユニットFUは、開口を通して筐体本体21に着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内シャフト41と、剥離シャフト42と、第2案内シャフト43とを備えている。供給リール31には、箔フィルムFが巻回されている。
【0031】
図1(b)に示すように、箔フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、箔フィルムFは、支持層F1と、被支持層F2とを有する。支持層F1は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層F2を支持している。被支持層F2は、例えば、剥離層F21と、転写層F22と、接着層F23とを有する。剥離層F21は、支持層F1から転写層F22を剥離しやすくするための層である。剥離層F21は、支持層F1と転写層F22との間に配置されている。剥離層F21は、支持層F1から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0032】
転写層F22は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の薄い金属である。また、転写層F22は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層F22は、剥離層F21と接着層F23との間に配置されている。
【0033】
接着層F23は、転写層F22をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層F23は、後述する箔転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0034】
供給リール31は、樹脂などからなる。供給リール31は、箔フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。供給軸部31Aには、箔フィルムFの一端が固定されている。
【0035】
巻取リール35は、樹脂などからなる。巻取リール35は、箔フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。巻取軸部35Aには、箔フィルムFの他端が固定されている。
【0036】
第1案内シャフト41、剥離シャフト42および第2案内シャフト43は、箔フィルムFの進行方向を変更するためのシャフトである。第1案内シャフト41、剥離シャフト42および第2案内シャフト43は、SUS(ステンレス鋼)などからなっている。
【0037】
第1案内シャフト41は、搬送方向において、箔転写部50の上流に位置する。第1案内シャフト41は、供給リール31から引き出される箔フィルムFの進行方向を、シートSの搬送方向と略平行となるように変更する。
【0038】
このような第1案内シャフト41によって案内される箔フィルムFは、被支持層F2(
図1(b)参照)を上に向けた状態で、箔転写部50に向けて搬送される。また、シートSは、被支持層F2が上に向いた状態の箔フィルムFの上に重ねられて、箔フィルムFとともに箔転写部50に向けて搬送される。
【0039】
剥離シャフト42は、搬送方向において、箔転写部50の下流に位置する。剥離シャフト42は、箔転写部50を通過した箔フィルムFの進行方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、箔フィルムFをシートSから剥離させる。
【0040】
第2案内シャフト43は、シートSから箔フィルムFを剥離させるときの箔フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)を規定している。ここで、剥離角度は、箔フィルムFのうち、第1案内シャフト41と剥離シャフト42の間で張架される部分と、剥離シャフト42と第2案内シャフト43の間で張架される部分とのなす角である。第2案内シャフト43は、剥離シャフト42で案内された箔フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内している。
【0041】
箔転写部50は、シートSと箔フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層F22を転写するための部分である。箔転写部50は、加圧ローラ51と、加熱ローラ61と、圧接離間機構70とを備えている。箔転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部NPにおいて、シートSと箔フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0042】
加圧ローラ51は、箔フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟む。加圧ローラ51は、回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。このように加圧ローラ51と加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟んだ状態で、加圧ローラ51および加熱ローラ61が回転することで、シートSおよび箔フィルムFが搬送される。なお、加熱ローラ61が回転駆動されることで加圧ローラ51が従動回転される構成としてもよい。
【0043】
加熱ローラ61は、内部にヒータを配置したローラであり、箔フィルムFおよびシートSを加熱する。加熱ローラ61は、箔フィルムFの下側に配置され、箔フィルムFと接触している。
【0044】
圧接離間機構70は、加熱ローラ61および加圧ローラ51のうち一方のローラを、他方のローラに圧接した圧接位置と、他方のローラから離間した離間位置との間で移動させる機構である。本実施形態では、圧接離間機構70は、加熱ローラ61を、
図1に実線で示す圧接位置と、
図1に二点鎖線で示す離間位置との間で移動させることで、加熱ローラ61を箔フィルムFに対して圧接・離間させている。
【0045】
箔転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により箔転写部50に向けて搬送される。シートSは、箔転写部50の搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された箔フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と箔フィルムFが接触した状態で箔転写部50に搬送される。
【0046】
箔転写部50においては、シートSと箔フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部NPを通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に転写層F22、つまり、箔が転写される。
【0047】
箔転写が行われた後、シートSと箔フィルムFは密着した状態で剥離シャフト42まで搬送される。シートSと箔フィルムFが剥離シャフト42を通過すると、箔フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから箔フィルムFが剥離される。
【0048】
シートSから剥離された箔フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、箔フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0049】
図2に示すように、加熱ローラ61は、金属管61Aと、第1弾性層G1とを有する。
金属管61Aは、円筒状である。
第1弾性層G1は、加熱ローラ61の表面に位置する。第1弾性層G1は、金属管61Aの外周面を覆っている。
【0050】
第1弾性層G1は、ゴム層G11と、コーティング層G12とを有する。
ゴム層G11は、ゴムからなる。ゴムは、例えばシリコンゴムである。ゴム層G11は、金属管61Aの表面を覆う。
【0051】
コーティング層G12は、例えば樹脂からなる。コーティング層G12は、ゴム層G11の表面を覆う。コーティング層G12は、コーティングによりゴム層G11の表面に形成される。コーティング層G12を構成する樹脂は、例えば、フッ素系樹脂である。コーティング層G12は、層厚が5μm以下である。
【0052】
第1弾性層G1の厚さは、1mm以上2mm以下である。なお、第1弾性層G1の厚さは、1.3mm以上1.7mm以下であることが望ましい。
【0053】
第1弾性層G1は、JIS-A硬度が30以上50以下、かつ、MD-1硬度が30以下である。なお、第1弾性層のJIS-A硬度は、30以上35以下であることが望ましい。
【0054】
ここで、「JIS-A硬度」は、JIS-K6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。JIS-A硬度は、加熱ローラ61の表面(第1弾性層G1)に、Aタイプのデュロメータの押針を押し当てることで測定される。JIS-A硬度は、第1弾性層G1全体の硬さに相当する。
【0055】
また、MD-1硬度の測定には、MD-1硬度計(高分子計器株式会社製、「マイクロゴム硬度計MD-1硬度型」)を用いる。加熱ローラ61の表面(第1弾性層G1)にMD-1硬度計の押針を押し当て、ピークホールドモード、ホールド時間は1秒で読み取った値を、MD-1硬度とする。なお、MD-1硬度計は、原理的にはJISK6253に記載のタイプAデュロメータに準じたものである。MD-1硬度は、第1弾性層G1の表層の硬さに相当する。
【0056】
加圧ローラ51は、ニップ部NPにおいて凹んでいる。加圧ローラ51は、金属管51Aと、第2弾性層G2とを有する。
【0057】
金属管51Aは、円筒状である。
第2弾性層G2は、加圧ローラ51の表面に位置する。第2弾性層G2は、金属管51Aの外周面を覆っている。
【0058】
第2弾性層G2の厚さは、第1弾性層G1の厚さよりも大きい。具体的には、第2弾性層G2の厚さは、4mm以上6mm以下とすることができる。なお、第2弾性層G2の厚さは、5.3mm以上5.7mm以下であることが望ましい。
【0059】
第2弾性層G2のJIS-A硬度は、第1弾性層G1のJIS-A硬度以下である。具体的には、第2弾性層G2のJIS-A硬度は、30以上40以下とすることができる。
【0060】
なお、第2弾性層G2のJIS-A硬度の測定は、第1弾性層G1と同様の方法で行う。つまり、第2弾性層G2のJIS-A硬度は、加圧ローラ51の表面(第2弾性層G2)に、Aタイプのデュロメータの押針を押し当てることで測定される。
【0061】
次に、上述した加熱ローラ61および加圧ローラ51による効果を調べた実験の結果とシミュレーションの結果について説明する。
図3に示すグラフは、実験結果を示すグラフである。実験では、実施例Aと比較例Aの2種類の加熱ローラを用いて箔転写を行い、シートに転写された箔の転写率を測定した。転写率は、シート上のトナー像の面積に対する箔の割合である。転写率は、シート上のトナー像のうち箔が転写されていない部分の面積から算出した。
【0062】
実施例Aの加熱ローラは、コーティング層がコーティングされた加熱ローラである。比較例Aの加熱ローラは、コーティングの代わりにゴム層の表面にPFAチューブを巻いた加熱ローラである。ここで、PFAチューブは、パーフルオロアルコキシアルカンからなるチューブである。実施例Aと比較例Aは、加熱ローラの表層の条件が異なるだけで、その他の条件は同じである。以下に、実施例Aと比較例Aとで、共通する条件と、異なる条件を示す。なお、以下に示す実施例Aの加熱ローラのゴム層の厚さは、コーティング層の厚さが非常に小さいため、第1弾性層の厚さと略同じである。
【0063】
<共通の条件>
加熱ローラ
ゴム層の材料:シリコンゴム
ゴム層の厚さ:1.5mm
加圧ローラ
ゴム層の材料:シリコンゴム
ゴム層の厚さ:5.5mm
JIS-A硬度:35
【0064】
<実施例A>
加熱ローラ
表層(コーティング層)の材料:フッ素系樹脂
コーティング層の厚さ:1μm
JIS-A硬度:35
MD-1硬度:30
【0065】
<比較例A>
加熱ローラ
表層の材料:パーフルオロアルコキシアルカン
表層の厚さ:30μm
JIS-A硬度:35
MD-1硬度:70
【0066】
また、実験では、箔転写の媒体として、
図4に示すような、異なる種類のシートS1~S10に対する転写率を測定した。シートS1~S10は、表面に凹部を有している。
【0067】
この実験によれば、実施例Aのコーティングされた加熱ローラを用いた方が、転写率が高くなることが確認された。
【0068】
図5に示すグラフは、シミュレーションの結果を示すグラフである。詳しくは、
図5のグラフは、ニップ部NPにおける加熱ローラ61の凹凸の状態の違いによる接触率について調べたシミュレーションの結果を示す。ここで、接触率は、凹部を有するシートの表面積に対して、加熱ローラ61の第1弾性層G1がシートの表面に接触する面積の割合を示す。接触率は、ゴムとシートの非線形CAE解析という方法で測定した。
【0069】
シミュレーションでは、加熱ローラおよび加圧ローラについての設定条件が異なる設定例1、設定例2、設定例3および設定例4について、接触率を測定した。
図6は、設定例1、設定例2、設定例3および設定例4のそれぞれの設定条件を示す表である。以下に、設定例1、設定例2、設定例3および設定例4で、共通する条件と、異なる条件を示す。
【0070】
<共通の条件>
シート
ICHIMATSU(登録商標) 175kg
加熱ローラ
ゴム層の材料:シリコンゴム
表層の材料:フッ素系樹脂
表層の厚さ:30μm
MD-1硬度:70
加圧ローラ
ゴム層の材料:シリコンゴム
【0071】
<設定例1>
加熱ローラ
ゴム層の厚さ:1.5mm
JIS-A硬度:50
加圧ローラ
ゴム層の厚さ:5.5mm
JIS-A硬度:40
【0072】
<設定例2>
加熱ローラ
ゴム層の厚さ:1.5mm
JIS-A硬度:30
加圧ローラ
ゴム層の厚さ:5.5mm
JIS-A硬度:40
【0073】
<設定例3>
加熱ローラ
ゴム層の厚さ:2.5mm
JIS-A硬度:30
加圧ローラ
ゴム層の厚さ:3.5mm
JIS-A硬度:40
【0074】
<設定例4>
加熱ローラ
ゴム層の厚さ:2.5mm
JIS-A硬度:13
加圧ローラ
ゴム層の厚さ:3.5mm
JIS-A硬度:60
【0075】
設定例1の加熱ローラは、他の設定例の加熱ローラと比べ、JIS-A硬度が最も大きい。設定例1の加熱ローラは、ニップ部において凸となり、加圧ローラへの食い込み量が最大となる。
【0076】
設定例2の加熱ローラは、設定例1の加熱ローラよりもJIS-A硬度が小さい。設定例2のその他の条件は、設定例1と同じである。設定例2の加熱ローラは、ニップ部において凸となり、加圧ローラへの食い込み量が最大値より小さい。
【0077】
設定例3の加熱ローラは、設定例2の加熱ローラよりもゴム層の厚さが大きい。また、設定例3の加圧ローラは、設定例2の加圧ローラよりもゴム層の厚さが小さい。設定例3のその他の条件は、設定例2と同じである。設定例3の加熱ローラは、ニップ部において凹となる。設定例3では、加圧ローラの加熱ローラへの食い込み量は、最大値より小さい。
【0078】
設定例4の加熱ローラは、設定例3の加熱ローラよりもJIS-A硬度が小さい。また、設定例4の加圧ローラは、設定例3の加圧ローラよりもJIS-A硬度が大きい。設定例4のその他の条件は、設定例3と同じである。設定例4の加熱ローラは、ニップ部において凹となる。設定例4では、加圧ローラの加熱ローラへの食い込み量は、最大となる。
【0079】
なお、
図5のグラフの横軸は、加熱ローラのゴム層の変形量であり、右に行くほど変形量が大きい。ゴム層の変形量は、ニップ部にかかる荷重が大きくなるほど大きくなるため、グラフの横軸は、荷重と見ることもできる。
【0080】
シミュレーションによれば、設定例1,2のように、ニップ部において加熱ローラが凸となる場合には、ニップ部にかかる荷重が小さくても、接触率が高くなることが確認された。また、設定例1が設定例2よりも小さな荷重で接触率が高くなっていることから、加熱ローラの加圧ローラへの食い込み量が大きいほど、小さな荷重で、接触率が高くなることが確認された。また、設定例3,4のように、ニップ部において加熱ローラが凹となる場合には、荷重を大きくしても、接触率が高くならないことが確認された。
【0081】
以上、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
第1弾性層G1が、JIS-A硬度30以上50以下の条件を満たすことで、第1弾性層G1の強度を大きくすることができる。第1弾性層G1が、MD-1硬度30以下の条件を満たすことで、第1弾性層G1の表層が柔らかくなるので、箔転写の対象となる媒体の表面に凹部がある場合において第1弾性層G1の凹部への追従性が高くなる。また、ニップ部NPにおいて加圧ローラ51が凹むことで、第1弾性層G1の凹部への追従性を高くすることができる。
【0082】
第2弾性層G2のJIS-A硬度を第1弾性層G1のJIS-A硬度以下とし、かつ、第1弾性層G1の厚さを第2弾性層G2の厚さよりも小さくすることで、ニップ部NPにおいて、加圧ローラ51を凹ませることができる。
【0083】
第1弾性層G1を、ゴム層G11と、5μm以下のコーティング層G12とで構成することで、第1弾性層G1について、JIS-A硬度を30以上50以下、かつ、MD-1硬度を30以下とすることができる。
【0084】
なお、本開示は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0085】
第2弾性層は、JIS-A硬度が30未満であってもよい。この場合、第1弾性層の厚さと第2弾性層の厚さは、任意に設定でき、例えば、第1弾性層の厚さと第2弾性層の厚さを同じ大きさにしてもよい。
【0086】
この場合であっても、第2弾性層のJIS-A硬度が30未満となることで、ニップ部において、加圧ローラを凹ませることができる。
【0087】
媒体は、シートに限らず、どのような媒体であってもよい。
【0088】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 箔転写装置
51 加圧ローラ
61 加熱ローラ
F 箔フィルム
G1 第1弾性層
G2 第2弾性層
NP ニップ部
S シート