(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016165
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240130BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240130BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/129
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188502
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2021139294の分割
【原出願日】2017-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2016159935
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
(57)【要約】
【課題】高温環境下に長期間晒されても外装材のシール部の密封性を良好に維持できる蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】外側層としての耐熱性樹脂層2と、内側層としてのシーラント層3と、これら両層間に配置された金属箔層4と、を含み、シーラント層3の少なくとも最内層7が、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、該エラストマー変性オレフィン系樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびオレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体からなり、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のオレフィン系熱可塑性エラストマー変性体である構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材において、
前記シーラント層は、1層ないし複数層からなり、前記シーラント層の少なくとも最内層が、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ホモポリプロピレンを含有する蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記最内層を構成する前記エラストマー変性オレフィン系樹脂の融点が160℃より高い請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層を構成するシーラントフィルムは、80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaである請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記シーラント層は、複数層からなり、前記シーラント層における前記金属箔層に最も近い側に第2シーラント層が配置され、該第2シーラント層は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を50質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記金属箔層と前記シーラント層とが接着層を介して接着されている請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記接着層は、カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、を含む接着剤からなる請求項5に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
蓄電デバイス本体部と、
請求項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の外装材および蓄電デバイスに関する。
【0002】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「引張降伏強度」の語は、JIS K7127-1999(引張試験方法)に準拠して、試料幅15mm、標線間距離50mm、引張速度100mm/分の条件で測定して得られた引張降伏強度(引張降伏強さ)を意味する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン2次電池は、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の電源として広く用いられている。このリチウムイオン2次電池としては、電池本体部(正極、負極及び電解質を含む本体部)の周囲をケースで包囲した構成のものが用いられている。このケース用材料(外装材)としては、例えば、耐熱性樹脂フィルムからなる外層、アルミニウム箔層、熱可塑性樹脂フィルムからなる内層がこの順に接着一体化された構成のものが公知である(特許文献1参照)。
【0004】
そして、蓄電デバイスは、蓄電デバイス本体が一対の外装材で挟み込まれて前記一対の外装材の相互の周縁部同士が融着接合(ヒートシール)されることによって封止されて構成されている。このようなヒートシール接合で十分に封止されることで、電解液の漏出を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなリチウムイオン2次電池等の電池は、ノートパソコン、携帯電話等の常温環境下での使用を想定している。
【0007】
しかるに、近年、このようなリチウムイオン2次電池の使用用途の多様化に伴い、自動車用途への使用に代表されるような高温環境下に晒される外部で使用する新たな用途も増加してきている。
【0008】
例えば、自動車用途への使用においては、自動車が夏場の屋外で駐車されている状況では相当な高温になっており、従ってリチウムイオン2次電池等の電池としてもこのような高温環境下に長期間晒されても外装材のシール部の密封性を良好に維持できる外装材の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、高温環境下に長期間晒されても外装材のシール部の密封性を良好に維持できる蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む蓄電デバイス用外装材において、
前記シーラント層は、1層ないし複数層からなり、前記シーラント層の少なくとも最内層が、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有し、
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびオレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体からなり、
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体のオレフィン系熱可塑性エラストマー変性体であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[2]前記最内層における前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有率が0.1質量%以上20質量%未満である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[3]前記最内層を構成する前記エラストマー変性オレフィン系樹脂の融点が160℃より高い前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[4]前記シーラント層を構成するシーラントフィルムは、80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaである前項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[5]前記シーラント層は、複数層からなり、前記シーラント層における前記金属箔層に最も近い側に第2シーラント層が配置され、該第2シーラント層は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を50質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しないことを特徴とする前項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[6]前記金属箔層と前記シーラント層とが接着層を介して接着されている前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[7]前記接着層は、カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、を含む接着剤からなる前項6に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0018】
[8]蓄電デバイス本体部と、
前項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材とを備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、外装材のシーラント層の少なくとも最内層が、上記特定のエラストマー変性オレフィン系樹脂を含有する構成であるので、高温環境下においても外装材同士の初期シール強度を十分に確保できると共に、高温環境下(例えば夏場の車内)に長期間置かれても十分なシール強度を維持できる。
【0020】
[2]の発明では、シーラント層の最内層におけるオレフィン系熱可塑性エラストマーの含有率が0.1質量%以上20質量%未満であることにより、シーラント層のフィルム強度が増大するので、該シーラント層からの破壊(破れ)が生じ難いものとなる。
【0021】
[3]の発明では、シーラント層の最内層を構成するエラストマー変性オレフィン系樹脂の融点が160℃より高いので、外装材をヒートシールする際にシーラント層の流出を十分に抑制できるし、前記高温環境下での耐熱性にも優れている。
【0022】
[4]の発明では、シーラント層に、80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaであるシーラントフィルムが用いられているので、蓄電デバイスが高温環境下(例えば夏場の車内)に長期間置かれて使用されても内圧上昇による外装材の破裂を防止できる。
【0023】
[5]の発明では、最も金属箔層に近い側にある第2シーラント層は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を50質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しない構成であるので、金属箔層側との接着性が向上して、変形が生じたとしても層間剥離が生じ難いものとなる。更に、最も金属箔層に近い側にある第2シーラント層がエラストマー成分を含有しないので、プロピレン-エチレンランダム共重合体とエラストマー成分との界面に発生する可能性のあるクレーズ(ひび割れ・隙間がない界面の乖離)による金属箔層の近傍への電解液の浸入がなく、十分な絶縁性を確保できる。
【0024】
[6]の発明では、金属箔層とシーラント層との層間接着力をより高めることができる。
【0025】
[7]の発明では、接着層は、カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、を含む接着剤からなるので、耐電解液性をさらに向上させることができる。
【0026】
[8]の発明では、高温環境下でも外装材同士の初期シール強度を十分に確保できると共に高温環境下(例えば夏場の車内)に長期間置かれても十分なシール強度を維持できる外装材で外装されてなる高温耐久性に優れた蓄電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図3の蓄電デバイスを構成する外装材(平面状のもの)、蓄電デバイス本体部及び外装ケース(立体形状に成形された成形体)をヒートシールする前の分離した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材1の一実施形態を
図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、例えば、リチウムイオン2次電池用外装材として用いられるものである。前記蓄電デバイス用外装材1は、成形を施されることなくそのまま外装材として使用されてもよいし、例えば、深絞り成形、張り出し成形等の成形に供されて外装ケース10として使用されてもよい(
図4参照)。
【0029】
前記蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層4の一方の面に第1接着剤層5を介して基材層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面に第2接着剤層6を介して内側シーラント層(内側層)3が積層一体化された構成からなる(
図1、2参照)。
【0030】
図1の外装材1では、前記内側シーラント層(内側層)3は、第1シーラント層7からなる単層(1層)で構成されている。従って、前記第1シーラント層7が最内側に配置されている(前記第1シーラント層7が最内層である)。
【0031】
また、
図2の外装材1では、前記内側シーラント層(内側層)3は、最内層の第1シーラント層7と、前記金属箔層4に最も近い側に配置された第2シーラント層8と、からなる2層積層構成であり、前記第1シーラント層7が最内側に配置されている。
【0032】
本発明において、前記内側シーラント層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液等に対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。前記シーラント層(内側層)3は、無延伸シーラントフィルムからなる。
【0033】
本発明では、前記シーラント層(内側層)3は、1層で形成されていてもよいし、2層以上の複数層で形成されていてもよいが、前記シーラント層(内側層)3の少なくとも最内層(第1シーラント層)7は、エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有する構成とする。
【0034】
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂(ポリプロピレンブロックコポリマー)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ホモポリプロピレンまたは/およびオレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体からなるのが好ましく、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体は、共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体のオレフィン系熱可塑性エラストマー変性体であり、前記「プロピレンを除く他の共重合成分」としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4メチル-1-ペンテン等のオレフィン成分の他、ブタジエン等が挙げられる。上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、EPR(エチレンプロピレンラバー)、プロピレン-ブテンエラストマー、プロピレン-ブテン-エチレンエラストマー、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)等が挙げられ、中でも、EPR(エチレンプロピレンラバー)を用いるのが好ましい。
【0035】
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂に関して、「オレフィン系熱可塑性エラストマー変性」の態様としては、グラフト重合であってもよいし、その他の変性態様であってもよい。
【0036】
前記エラストマー変性オレフィン系樹脂は、例えば、次のようなリアクターメイド法により製造できる。これは、1例を示したものに過ぎず、このような製法で製造されたものに特に限定されるものではない。
【0037】
まず、第1リアクターにチーグラーナッタ触媒、助触媒、プロピレン及び水素を供給してホモポリプロピレンを重合する。得られたホモポリプロピレンは、未反応のプロピレンとチーグラーナッタ触媒を含んだ状態で、第2リアクターに移動させる。第2リアクターにおいてさらにプロピレンと水素を加えてホモポリプロピレンを重合する。得られたホモポリプロピレンを未反応のプロピレンとチーグラーナッタ触媒を含んだ状態で第3リアクターに移動させる。第3リアクターにおいてさらにエチレン、プロピレン及び水素を加えて、エチレンとプロピレンを共重合させたエチレン-プロピレンラバー(EPR)を重合させることによって、前記エラストマー変性オレフィン系樹脂を製造することができる。例えば、溶媒を添加して液相で製造することで前記エラストマー変性オレフィン系樹脂を製造できるし、溶媒を使用せず気相で反応を行わせることで前記エラストマー変性オレフィン系樹脂を製造することができる。
【0038】
前記シーラント層3の最内層(第1シーラント層)7における前記オレフィン系熱可塑性エラストマーの含有率は0.1質量%以上20質量%未満であるのが好ましい。また、前記シーラント層3の最内層(第1シーラント層)7におけるホモポリプロピレン(オレフィン系熱可塑性エラストマーで変性されていない部位)または/および前記ランダム共重合体(オレフィン系熱可塑性エラストマーで変性されていない部位)の含有率は80質量%以上99質量%以下であるのが好ましい。
【0039】
前記シーラント層3の最内層(第1シーラント層)7を構成する前記エラストマー変性オレフィン系樹脂の融点は160℃~180℃の範囲であるのが望ましい。外装材をヒートシールする際にシーラント層3の流出を十分に抑制できるし、高温環境下での耐熱性にも優れている。中でも、シーラント層3の最内層(第1シーラント層)7を構成するエラストマー変性オレフィン系樹脂の融点は、163℃以上であるのが好ましく、163℃~169℃の範囲が特に好ましい。前記融点は、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法にて測定した融点である。
【0040】
前記最内層(第1シーラント層)7内に存在するオレフィン系熱可塑性エラストマー成分(この成分単独)は、複数の結晶化温度を有するものであるのが好ましい。このように複数の結晶化温度を有するものである場合には接着時において樹脂(最内層のオレフィン系樹脂)が溶出しにくいものとなるという効果が得られる。また、複数の結晶化温度を有するものである場合において、その複数の結晶化温度のうち最も低い結晶化温度が40℃~80℃の範囲であるのが望ましく、さらに40℃~75℃の範囲であるのがより望ましい。最も低い結晶化温度が40℃~80℃であることで常温での接着時間(ヒートシール時の接着時間)を短縮できるという効果が得られる。前記結晶化温度は、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法にて測定される結晶化温度(結晶化ピーク)である。
【0041】
前記最内層(第1シーラント層)7内に存在するオレフィン系熱可塑性エラストマー成分(この成分単独)のMFRは、0.1g/10分~1.4g/10分であるのが好ましく、この場合にはヒートシール時に樹脂(最内層のオレフィン系樹脂)が溶出しにくいものとなるので、より大きい接着強度を確保できる。中でも、前記最内層(第1シーラント層)7内に存在するオレフィン系熱可塑性エラストマー成分(この成分単独)のMFRは、0.1g/10分~1.0g/10分であるのがより好ましく、0.1g/10分~0.6g/10分であるのが特に好ましい。なお、前記MFR(メルトフローレート)は、JIS K7210-1-2014に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定したMFRである。
【0042】
前記シーラント層3を構成するシーラントフィルムは、80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaであるのが好ましい。例えば、前記シーラント層3が、第1シーラント層7のみで構成されている場合には該第1シーラントフィルムの80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaであるのが好ましく、前記シーラント層3が、第1シーラント層7と第2シーラント層8の積層体で構成されている場合には該積層シーラントフィルムの80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaであるのが好ましい。前記シーラント層3が、3層以上の多層である場合にもこれに準ずるものとする。このようにシーラント層3を構成するシーラントフィルムの80℃における引張降伏強度が3.5MPa~15.0MPaであることにより、蓄電デバイスが高温環境下(例えば夏場の車内)に長期間置かれて使用されても内圧上昇による外装材の破裂を防止できる。中でも、前記シーラント層3を構成するシーラントフィルムは、80℃における引張降伏強度が4MPa~12MPaであるのが特に好ましい。
【0043】
前記最内層(第1シーラント層)7の厚さは、30μm以上であるのが好ましく、この場合には第1シーラント層7の強靱性を向上できる利点がある。中でも、前記最内層(第1シーラント層)7の厚さは、30μm~100μmであるのがより好ましい。
【0044】
前記第2シーラント層8を設ける場合には、該第2シーラント層8の厚さは、3μm~60μmであるのが好ましく、5μm~20μmであるのがより好ましい。また、前記第2シーラント層8を設ける場合には、該第2シーラント層8を形成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレン、ポリエチレンの他、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ホモポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー変性ランダム共重合体(共重合成分として「プロピレン」及び「プロピレンを除く他の共重合成分」を含有するランダム共重合体のオレフィン系熱可塑性エラストマー変性体)等が挙げられる。
【0045】
また、前記シーラント層3の厚さは、30μm~200μmに設定されるのが好ましい。
【0046】
本発明では、前記シーラント層3は、複数層からなり、前記エラストマー変性オレフィン系樹脂を含有する最内層(第1シーラント層)7と、前記金属箔層4に最も近い側に配置された第2シーラント層8とを備え(
図2参照)、前記第2シーラント層は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を50質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しない構成であるのが好ましい。このような構成を採用した場合、金属箔層4に最も近い側にある第2シーラント層8は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を50質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しない構成であるので、金属箔層側との接着性が向上して、変形が生じたとしても層間剥離が生じ難いものとなる。更に、金属箔層4に最も近い側にある第2シーラント層8がエラストマー成分を含有しないので、プロピレン-エチレンランダム共重合体とエラストマー成分との界面に発生する可能性のあるクレーズ(ひび割れ・隙間がない界面の乖離)による金属箔層の近傍への電解液の浸入がなく、十分な絶縁性を確保できる。中でも、前記第2シーラント層は、プロピレン-エチレンランダム共重合体を70質量%以上含有し、エラストマー成分を含有しない構成であるのがより好ましい。ここで、エラストマー成分を含有しない構成とは、エラストマー成分が混合(ブレンド)されていないことを意味すると共に、エラストマー変性樹脂も混合されていないことを意味するものである。
【0047】
前記シーラント層(内側層)3を構成するシーラントフィルムは、多層押出成形、インフレーション成形、Tダイキャストフィルム成形等の成形法により製造されるのが好ましい。
【0048】
前記シーラント層(内側層)3を構成するシーラントフィルムを金属箔層4に積層する手法としては、特に限定されるものではないが、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法(酸変性ポリプロピレン等の接着フィルムを押出し、これを金属箔と前記シーラントフィルムの間にサンドラミネートした後、熱ロールでヒートラミネートする方法)等が挙げられる。
【0049】
本発明において、前記基材層(外側層)2は、耐熱性樹脂層で形成されているのが好ましい。前記耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、シーラント層3の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、シーラント層3の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0050】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。なお、前記複層の場合、ポリエステルフィルム側を最外側に配置するのが良い。
【0051】
前記外側層(基材層)2の厚さは、2μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは5μm~40μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0052】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材において、前記金属箔層4は、外装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔等が挙げられ、中でも、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)を用いるのが好ましい。前記金属箔層4の厚さは、10μm~120μmであるのが好ましい。10μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、120μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0053】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面(第2接着剤層6側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0054】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0055】
前記第1接着剤層(外側接着剤層)5としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンポリオレフィン接着剤層、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記第1接着剤層5の厚さは、1μm~6μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材1の薄膜化、軽量化の観点から、前記第1接着剤層5の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0056】
前記第2接着剤層(内側接着剤層)6としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記第1接着剤層5として例示したものも使用できるが、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。中でも、前記第2接着剤層(内側接着剤層)6としては、カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂と、多官能イソシアネート化合物と、を含む接着剤で形成されているのが特に好ましい。前記接着剤のドライラミネートにより第2接着剤層を形成できる。或いは、前記第2接着剤層(内側接着剤層)6としては、カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂で形成されているのが特に好ましい。この場合にはカルボキシル基を有するオレフィン系樹脂の溶融押出による押出ラミネートにより第2接着剤層を形成できる。前記カルボキシル基を有するオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリエチレン、メタクリル酸変性ポリプロピレン、メタクリル酸変性ポリエチレン、フマル酸変性ポリプロピレン、フマル酸変性ポリエチレン等のカルボン酸変性オレフィン系樹脂等が挙げられる。前記第2接着剤層6の厚さは、1μm~4μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記第2接着剤層6の厚さは、1μm~3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0057】
本発明の外装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、外装ケース(電池ケース等)10を得ることができる(
図4)。なお、本発明の外装材1は、成形に供されずにそのまま使用することもできる(
図4)。
【0058】
本発明の外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を
図3に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、
図3、4に示すように、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1とにより外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくそのシーラント層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1のシーラント層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29のシーラント層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(
図3、4参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、シーラント層3になっており、収容凹部の外面が基材層(外側層)2になっている(
図4参照)。
【0059】
図3において、39は、前記外装材1の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29とが接合(溶着)されたヒートシール部である。なお、前記蓄電デバイス30において、蓄電デバイス本体部31に接続されたタブリードの先端部が、外装部材15の外部に導出されているが、図示は省略している。
【0060】
前記蓄電デバイス本体部31としては、特に限定されるものではないが、例えば、電池本体部、キャパシタ本体部、コンデンサ本体部等が挙げられる。
【0061】
前記ヒートシール部39の幅は、0.5mm以上に設定するのが好ましい。0.5mm以上とすることで封止を確実に行うことができる。中でも、前記ヒートシール部39の幅は、3mm~15mmに設定するのが好ましい。
【0062】
なお、上記実施形態では、外装部材15が、外装材1を成形して得られた外装ケース10と、平面状の外装材1と、からなる構成であったが(
図3、4参照)、特にこのような組み合わせに限定されるものではなく、例えば、外装部材15が、一対の平面状の外装材1からなる構成であってもよいし、或いは、一対の外装ケース10からなる構成であってもよい。
【実施例0063】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0064】
<使用材料>
(エラストマー変性オレフィン系樹脂A)
エラストマー変性オレフィン系樹脂Aは、EPR変性ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンランダム共重合体のEPR変性体からなる。前記EPRは、エチレン-プロピレンラバーを意味する。エラストマー変性オレフィン系樹脂Aにおけるエラストマー成分の含有率は15質量%である。エラストマー変性オレフィン系樹脂Aの融点は166℃である。
(エラストマー変性オレフィン系樹脂B)
エラストマー変性オレフィン系樹脂Bは、プロピレン-ブテンエラストマー変性ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンランダム共重合体のプロピレン-ブテンエラストマー変性体からなる。エラストマー変性オレフィン系樹脂Bにおけるエラストマー成分の含有率は18質量%である。エラストマー変性オレフィン系樹脂Bの融点は164℃である。
(エラストマー変性オレフィン系樹脂C)
エラストマー変性オレフィン系樹脂Cは、プロピレン-ブテン-エチレンエラストマー変性ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンランダム共重合体のプロピレン-ブテン-エチレンエラストマー変性体からなる。エラストマー変性オレフィン系樹脂Cにおけるエラストマー成分の含有率は16質量%である。エラストマー変性オレフィン系樹脂Cの融点は164℃である。
【0065】
<実施例1>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0066】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤(外側接着剤)5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0067】
次に、エラストマー変性オレフィン系樹脂Aからなる厚さ80μmのシーラントフィルム(第1シーラント層)7を押出した後、該シーラントフィルム7(3)の一方の面に2液硬化型のウレタン系接着剤(内側接着剤層)6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0068】
<実施例2>
内側接着剤6として、2液硬化型のウレタン系接着剤に代えて、2液硬化型のアクリル系接着剤6を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0069】
<実施例3>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0070】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0071】
次に、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に、厚さ4μmの無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(内側接着剤層)6、厚さ8μmのプロピレン-エチレンランダム共重合体フィルム(第2シーラント層)8および厚さ72μmのエラストマー変性オレフィン系樹脂Aフィルム(第1シーラント層)7を共押出したものをこの順に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0072】
<実施例4>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0073】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0074】
次に、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に、厚さ4μmの無水マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(内側接着剤層)6および厚さ80μmのエラストマー変性オレフィン系樹脂Aフィルム3を共押出したものをこの順に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0075】
<実施例5>
エラストマー変性オレフィン系樹脂Aに代えて、エラストマー変性オレフィン系樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0076】
<実施例6>
エラストマー変性オレフィン系樹脂Aに代えて、エラストマー変性オレフィン系樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0077】
<実施例7>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0078】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0079】
次に、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に2液硬化型のウレタン系接着剤(内側接着剤層)6を塗布した後、該塗布面に、厚さ8μmのホモポリプロピレンフィルム(第2シーラント層)8および厚さ72μmのエラストマー変性オレフィン系樹脂Aフィルム(第1シーラント層)7を共押出したものをこの順に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0080】
<実施例8>
第2シーラント層8として、厚さ8μmのホモポリプロピレンフィルムに代えて、厚さ8μmのプロピレン-エチレンランダム共重合体フィルム8を用いた以外は、実施例7と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0081】
<実施例9>
内側接着剤6として、2液硬化型のウレタン系接着剤に代えて、2液硬化型のアクリル系接着剤6を用いた以外は、実施例8と同様にして、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0082】
<比較例1>
エラストマー変性オレフィン系樹脂Aに代えて、プロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0083】
<比較例2>
厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2であった。
【0084】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、2液硬化型のウレタン系接着剤5を介して厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルム2をドライラミネートした(貼り合わせた)。
【0085】
次に、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に2液硬化型のアクリル系接着剤6を塗布した後、該塗布面に、厚さ68μmのエラストマー変性オレフィン系樹脂Aフィルム(第2シーラント層)8および厚さ12μmのプロピレン-エチレンランダム共重合体フィルム(第1シーラント層)7を共押出したものをこの順に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、50℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、
図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0086】
なお、実施例1~9および比較例1~2の外装材を作成するのに使用したシーラントフィルム(厚さ80μm)3の引張降伏強度(表1参照)は、次のようにして測定した引張降伏強度(引張降伏強さ)である。
【0087】
<シーラントフィルムの引張降伏強度の測定法>
別途測定用に同様にして作成した無延伸シーラントフィルム3(厚さ80μm)について、JIS K7127-1999(プラスチックフィルムの引張試験方法)に準拠して、タイプ2の試験片(長さ150mm以上)を作成し、80℃の条件下で、試料幅15mm、つかみ具間距離100mm、標線間距離50mm、引張速度100mm/分の条件で引張試験を行って、引張降伏強度(引張降伏強さ)を求めた。S-S曲線での降伏点の荷重を引張降伏強度とする。なお、80℃に設定された恒温槽内の引張試験装置に試験片をセットした後、この80℃の環境下に1分間静置してから80℃の環境下で引張試験を実施するようにした。これら80℃での引張降伏強度の測定結果を表1に示す。
【0088】
なお、試験片の厚さを80μmに設定して測定しているが、例えば、使用した厚さ64μmのシーラントフィルム3が、厚さ6μmの第2シーラント層と厚さ58μmの第1シーラント層の2層積層構成である場合には、前記2層の厚さ比率が変わらないように厚さ80μmの試験片を作成して測定するものとする。即ち、厚さ7.5μmの第2シーラント層と厚さ72.5μmの第1シーラント層の2層積層構成の試験片を作成して測定するものとする。3層以上の積層構成である場合にも同様にして厚さ80μmの試験片を作成して測定するものとする。
【0089】
【0090】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材について、下記測定法に基づいて評価を行った。
【0091】
<高温での初期シール強度の測定法>
得られた外装材から幅15mm×長さ150mmの試験体を2枚切り出した後、これら2枚の試験体を互いの内側シーラント層同士で接触するように重ね合わせた状態で、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件にて片面加熱によりヒートシールを行った。
【0092】
次に、上記のようにして内側シーラント層同士がヒートシール接合された一対の外装材について、JIS Z0238-1998に準拠して、恒温槽内に配置された島津アクセス社製ストログラフ(引張試験装置)(AGS-5kNX)を使用して該外装材(試験体)をシール部分の内側シーラント層同士で引張速度100mm/分で90度剥離させた時の剥離強度を測定し、これをシール強度(N/15mm幅)とした。なお、100℃でのシール強度および120℃でのシール強度を測定した。
【0093】
100℃でのシール強度の測定では、100℃に設定された恒温槽内の引張試験装置に試験体をセットした後、この100℃の環境下に1分間静置してから100℃の環境下で測定を実施するようにした。120℃でのシール強度の測定も、120℃に設定された恒温槽内の引張試験装置に試験体をセットした後、この120℃の環境下に1分間静置してから120℃の環境下で測定を実施するようにした。
【0094】
100℃でのシール強度および120℃でのシール強度の両方が、27N/15mm幅以上であるものを合格とする。
【0095】
<高温環境下で90日経過後のシール強度測定法>
縦200mm×横150mmの大きさにカットした2枚の外装材を互いのシーラント層が内側になって対向するように重ね合わせて配置し、その3辺の縁部を180℃、0.2MPaで2秒間ヒートシールした。シールされていない残りの1辺の開口部から電解液を10mL注入した後、この残りの1辺も前記同様のシール条件で中の空気を抜きながらヒ
ートシールして模擬電池(試験体)を作成した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)が等量体積比で配合された混合溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を用いた。
【0096】
得られた模擬電池をESPEC社製の恒温恒湿器内に入れて80℃×90%Rhの条件で90日間静置させた(90日間高温高湿環境下に晒した)。
【0097】
前記90日間経過後に模擬電池を取り出し、1辺を開口して電解液を除去し、内部を水で数回洗浄した後、2枚の外装材のシール部分を含むように2枚の外装材を重ね合わせ状態で幅15mm×長さ150mmの大きさにカットして得たこの一対の外装材について、JIS Z0238-1998に準拠して、島津アクセス社製ストログラフ(引張試験装置)(AGS-5kNX)を使用して一対の外装材をシール部分のシーラント層同士で引張速度100mm/分で90度剥離させた時の剥離強度を測定し、これをシール強度(N/15mm幅)とした。なお、25℃でのシール強度を測定した。シール強度が、27N/15mm幅以上であるものを合格とする。
【0098】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1~9の蓄電デバイス用外装材は、高温環境下においても初期シール強度を十分に確保できると共に、高温環境下に長期間置かれても十分なシール強度を維持できる。
【0099】
これに対し、比較例1、2では、高温環境下において初期シール強度が不十分であったし、高温環境下に長期間置かれた後のシール強度は大幅に低下していた。