(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161657
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】車両の制動装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/847 20060101AFI20241113BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
F16D65/847
F16D65/12 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076484
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】杵島 史彦
(72)【発明者】
【氏名】湊 雅之
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA53
3J058BA37
3J058CB23
3J058DE02
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】ディスクロータの冷却効率の向上を図る上で実用性の高い構成を提供する。
【解決手段】キャリパ51を支持するキャリパブラケット6のブラケット本体部61に、ダストカバー7の切り欠き部分の開放方向に向かうに従ってディスクロータ3側に指向する導風面69を設ける。これにより、ブレーキダクト8によってキャリパブラケット6付近まで案内された空気の大部分をダストカバーの7の切り欠き部分を経てディスクロータ3に導くことができ、ディスクロータ3を効果的に冷却することが可能になる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と一体的に回転するディスクロータと、該ディスクロータに摩擦制動力を発生させるブレーキユニットとを備えた車両の制動装置において、
前記ディスクロータには、冷却用の空気が送り込まれる導風領域が規定されており、
前記ディスクロータに対する車幅方向の内側には導風部材が配設されており、該導風部材には、前記導風領域に向かうに従って前記ディスクロータ側に指向する導風面が設けられていることを特徴とする車両の制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制動装置に係る。特に、本発明は、ディスクロータを効果的に冷却するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の制動装置としてディスクブレーキ装置が知られている。この種の装置はディスクロータをブレーキパッドで挟持して制動力(摩擦制動力)を発生させることから、ディスクロータが高温になることに起因する制動力の不安定化が懸念される。このため、ディスクロータを冷却(空冷)するための構成が種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、ディスクロータの車幅方向内面側に配設されたダストカバー外周端を、ホイールのリム部の内周面に非接触状態で近接させ、これによって、ダストカバーの車幅方向内側を正圧領域にし、ディスクロータ外周端側を負圧領域にすることが開示されている。そして、これら正圧領域と負圧領域との圧力差により、ディスクロータの周辺を流れる空気流速の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディスクロータの周辺には、ダストカバー、キャリパ、ナックルといった種々の部材が存在しており、これら部材が空気流れの抵抗となりやすいため、前述した圧力差を利用した手法ではディスクロータを効果的に冷却することが期待できない。また、ダストカバーに大型の開口を設けたり、この開口の内縁部分をファンネル形状とすることも考えられるが、大型の開口を設けた場合には、異物(小石や泥)がディスクロータ内に入り込んでしまう可能性が高くなってしまい、開口の内縁部分をファンネル形状とするためには、ダストカバーとディスクロータとの間隔を大きく確保しておく必要がある。このため、これら構成は実用性に欠けるものである。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディスクロータを効果的に冷却する上で実用性の高い構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車輪と一体的に回転するディスクロータと、該ディスクロータに摩擦制動力を発生させるブレーキユニットとを備えた車両の制動装置を前提とする。そして、この車両の制動装置は、前記ディスクロータに、冷却用の空気が送り込まれる導風領域が規定されており、前記ディスクロータに対する車幅方向の内側には導風部材が配設されており、該導風部材には、前記導風領域に向かうに従って前記ディスクロータ側に指向する導風面が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この特定事項により、例えばブレーキダクト等によって導風部材付近まで案内された空気(ディスクロータ冷却用の空気)は、導風部材の導風面に沿って流れることで、ディスクロータの導風領域に導かれる。導風面は、導風領域に向かうに従ってディスクロータ側に指向しているので、導風部材付近まで案内された空気の大部分が、この導風面に沿って流れることになり、ディスクロータに吹き付けられる空気量(ディスクロータの冷却に寄与する空気の単位時間当たりの流量)を十分に確保することができ、ディスクロータを効果的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ディスクロータに対する車幅方向の内側に配設した導風部材に、導風領域に向かうに従ってディスクロータ側に指向する導風面を設けている。これにより、導風部材付近まで案内された空気の大部分を導風領域に導くことができ、ディスクロータを効果的に冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るディスクブレーキ装置およびその周辺の一部を省略して示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に対応した断面を模式的に示す図である。
【
図3】各変形例に係るキャリパブラケットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、ディスクブレーキ装置のキャリパブラケットを本発明に係る導風部材として利用した場合について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るディスクブレーキ装置(制動装置)1およびその周辺の一部を省略して示す斜視図である。また、
図2は、
図1におけるII-II線に対応した断面を模式的に示す図である。これらの図は、車両の右前輪に適用されたディスクブレーキ装置1およびその周辺を示している。また、これらの図における矢印FRは車両前方を示し、矢印RRは車両後方を示し、矢印RHは車幅方向の外側(右側)を示している。また、
図1における矢印UPは上方向を示している。尚、本発明に係る制動装置は、右前輪だけでなく、左前輪、右後輪、左後輪に対しても適用が可能である。
【0013】
図1および
図2に示すように、ディスクブレーキ装置1は、ナックル(
図1では仮想線で示している)2に回転自在に支持されたディスクロータ3に制動力を発生させることにより、当該ディスクロータ3に回転一体に連結されている図示しない車輪を制動するためのものである。
【0014】
ナックル2は、ナックルボディ21および複数の連結部22,23,24を備えている。
図2に示すように、ナックルボディ21の中心部には、ハブユニット4が組み付けられている。ハブユニット4のアウタレース41がナックルボディ21に取り付けられている。また、ハブユニット4のインナレース42にディスクロータ3や図示しない車輪が取り付けられている。各連結部22,23,24は、図示しない車体側のアッパアームやロアアームに連結されている。
【0015】
ディスクブレーキ装置1は、主として、ディスクロータ3、ブレーキユニット5、キャリパブラケット6、ダストカバー7等を備えている。
【0016】
ディスクロータ3は、ハブユニット4のインナレース42に連続するハブフランジ43に締結される略円筒形状のドラム部32と、該ドラム部32における車幅方向の内側縁から外周側に延在するディスク部33とを備えている。本実施形態では、このディスク部33がベンチレーテッドタイプとなっている。このディスク部33が、後述するブレーキユニット5のキャリパ51の内部に備えられたブレーキパッド52,52からの押圧力を受けることにより制動力を発生し、前輪に制動力が付与されることになる。尚、ディスクロータ3としては、ソリッドタイプのものであってもよい。
【0017】
ブレーキユニット5は、例えば対向ピストン型とされている。このブレーキユニット5は、詳細には図示していないが、キャリパ51内に対向して組み込まれる一対のピストン(図示省略)を例えば油圧により作動させて一対のブレーキパッド52,52をディスクロータ3のディスク部33に圧接させることにより、ディスクロータ3に制動力を発生させる構成となっている。
【0018】
ダストカバー7は、ディスクロータ3に対する車幅方向の内側に配設され、ディスクロータ3を覆うことによって該ディスクロータ3に小石が衝突したり泥が付着したりすることを防止する部材である。このダストカバー7は、ハブユニット4のアウタレース41と同様にナックルボディ21に取り付けられている。具体的には、
図2に示すように、アウタレース41とナックルボディ21との間にダストカバー7の内縁部分が挟み込まれ、これらが一体的にボルト締結されている。
図1に示すように、ダストカバー7における車両前側の一部には切り欠き部71が設けられている。この切り欠き部71に対応してブレーキユニット5のキャリパ51が配設されている。このため、ディスクロータ3における車幅方向の内側の面のうち、この切り欠き部71に対応する部分はダストカバー7に覆われておらず、車幅方向の内側に露出した領域となっている。このため、ディスクロータ3を効果的に冷却するためには、この切り欠き部71に対応する領域(特に、切り欠き部71によって露出されるディスク部33)に向けて冷却用の空気を吹き付けることが有効である。この切り欠き部71に対応する領域(切り欠き部71によって露出されるディスク部33)が、本発明でいう「冷却用の空気が送り込まれる導風領域」に相当する。
【0019】
図1に示すように、ブレーキユニット5は、キャリパブラケット6を介してナックル2に支持されている。具体的に、キャリパブラケット6は、その上下方向の中央部分を構成するブラケット本体部61と、該ブラケット本体部61の上下両端に設けられ且つ車両後方に延在する被支持部62,63と、ブラケット本体部61の上下両端に設けられ且つ車両前方に延在する締結ボス部64,65とを備えている。
【0020】
キャリパブラケット6の被支持部62,63はナックル2にボルト締結されている。具体的に、ナックル2における上下両端には車両前方に延在するキャリパブラケット支持部25,26が設けられており、このキャリパブラケット支持部25,26における車幅方向の外側面にキャリパブラケット6の被支持部62,63が重ね合わされ、これらキャリパブラケット支持部25,26および被支持部62,63に亘ってボルトが挿通されて、キャリパブラケット6が支持されている。
【0021】
また、キャリパ51における上下の2箇所には車体前後方向に延在する図示しないボス部53,54が設けられている。キャリパブラケット6における各締結ボス部64,65の位置は、キャリパ51の各ボス部53,54の位置に対応している。これにより、キャリパ51の各ボス部53,54が、キャリパブラケット6の締結ボス部64,65に位置合わせされ、これらに亘ってボルトが捩じ込まれることによってキャリパ51の上下両端部分がキャリパブラケット6に支持されている。このように、ナックル2にキャリパブラケット6がボルト締結され、キャリパブラケット6にキャリパ51がボルト締結されていることにより、ブレーキユニット5が、キャリパブラケット6を介してナックル2に支持されていることになる。
【0022】
また、本実施形態では、ディスクロータ3を冷却するための空気を車両前方から導入するためのブレーキダクト8が設けられている。このブレーキダクト8は、車体前後方向に沿って延在している。ブレーキダクト8の前端は、図示しないフロントバンパに形成された空気取入口に接続されている。また、ブレーキダクト8の後端は、キャリパブラケット6に対する車幅方向の内側で開口しており、その開口方向はキャリパブラケット6に向かうように車幅方向の外側(
図1に示す右前輪の場合には車幅方向の右側)となっている。これにより、フロントバンパに形成された空気取入口から取り込んだ空気がブレーキダクト8の内部を流れて、キャリパブラケット6の周辺において車幅方向の外側に向けて吹き出される構成となっている。
【0023】
本実施形態の特徴は、キャリパブラケット6のブラケット本体部61の断面形状(
図1におけるII-II線での断面形状)にある。このブラケット本体部61の断面形状としては、
図2に示すように、車幅方向の外側に位置して車体前後方向に沿って延在する内側面66、該内側面66の後端から車幅方向の内側に延在する後面67、内側面66の前端から車幅方向の内側に延在する前面68、後面67における車幅方向の内側端と前面68における車幅方向の内側端との間に亘る導風面69を備えている。
【0024】
後面67における車幅方向の長さ寸法は前面68における車幅方向の長さ寸法よりも長く設定されている。このため、導風面69は車体前方に向かうに従って車幅方向の外側に傾斜する傾斜面として構成されている。前述したように、キャリパブラケット6が本発明でいう「導風部材」に相当し、ダストカバー7の切り欠き部71に対応する部分(切り欠き部71によって露出されるディスク部33)が本発明でいう「導風領域」に相当していることから、前述した導風面69の構成が、本発明でいう「導風領域に向かうに従ってディスクロータ側に指向する導風面が設けられている」ことに相当する。
【0025】
また、キャリパ51およびディスクロータ3それぞれは、ディスクロータ3のディスク部33の内周面に向けて空気を流すための構成を備えている。具体的に、キャリパ51における車幅方向の内側を向く内側面と車両後方を向く後面との間は滑らかな曲面55によって繋がっている。つまり、この曲面55によってキャリパ51はファンネル形状が構築されており、車幅方向の内側から外側に向けて(ディスクロータ3に向けて)空気が流れ込みやすい形状とされている(
図2における矢印Dを参照)。
【0026】
また、ディスクロータ3のディスク部33においてドラム部32と重ね合わされるフランジ部34の車幅方向内側を向く面には導風面35が形成されている。この導風面35は、車幅方向内側に向かって山型となる傾斜面で成り、車両前方に向かうに従って車幅方向外側に傾斜する面がディスク部33の内周面に向けて空気を案内することになる(
図2における矢印Cを参照)。
【0027】
次に、ディスクロータ3を冷却するための空気の流れについて説明する。車両の走行時にフロントバンパの空気取入口から取り込まれた空気はブレーキダクト8の内部を流れて、キャリパブラケット6の周辺において車幅方向の外側に向けて吹き出される(
図2における矢印Aを参照)。この空気は、キャリパブラケット6のブラケット本体部61の導風面69に沿って流れ(
図2における矢印Bを参照)、ディスクロータ3のフランジ部34の導風面35を経てディスク部33の内周面に向けて案内されることになる(
図2における矢印Cを参照)。また、このようにブラケット本体部61の周辺にはディスク部33の内周面に向かう気流が発生しているため、キャリパ51に対して車幅方向の内側に存在する空気もキャリパ51の曲面55に案内されて車幅方向の内側から外側に向けて流れ込み(
図2における矢印Dを参照)、ディスクロータ3のディスク部33の内周面に向けて案内されることになる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態では、ブレーキダクト8によってキャリパブラケット6のブラケット本体部61付近まで案内された空気の大部分を導風領域(切り欠き部71によって露出されるディスク部33)に導くことができ、ディスクロータ3を効果的に冷却することが可能である。その結果、制動力の安定化を図ることができる。
【0029】
次に、本発明の複数の変形例について説明する。以下の各変形例は、キャリパブラケット6による空気の案内形態が前述した実施形態のものと異なっている。その他の構成は前述した実施形態のものと同様であるので、ここではブラケット本体部61の構成および空気の案内形態についてのみ説明する。
【0030】
図3(a)は第1の変形例におけるブラケット本体部61の断面形状を示している。この
図3(a)に示すように第1の変形例に係るブラケット本体部61は、前述した実施形態のものと同様の内側面66、後面67、前面68を備えている。また、このブラケット本体部61は、後面67における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両前方に向けて傾斜する後側傾斜面91と、前面68における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両後方に向けて傾斜する前側傾斜面92とを備えている。そして、これら後側傾斜面91と前側傾斜面92との交点が、ブラケット本体部61における車体前後方向の中心(
図3(a)において一点鎖線で示す)に対して後側に位置している。この構成が、本発明でいう「導風領域に向かうに従ってディスクロータ側に指向する導風面が設けられている」ことに相当する。また、本変形例にあっては、内側面66と前面68との間が滑らかな曲面で繋がれており、この曲面の曲率半径が所定値(例えば4mm以下)に設定されている。この値は、案内される空気の剥離を考慮して実験またはシミュレーションによって決定される。
【0031】
尚、
図3(a)に示すものでは内側面66の延在方向と前面68の延在方向とが直交するものであった。これに対し、
図3(b)に示すように内側面66の延在方向と前面68の延在方向とが鈍角で成る場合には、相貫線から曲面の終端までの長さ(
図3(b)における寸法t)が所定値(例えば4mm以下)に設定される。この値も、案内される空気の剥離を考慮して実験またはシミュレーションによって決定される。
【0032】
図3(c)は第2の変形例におけるブラケット本体部61の断面形状を示している。この
図3(c)に示すように第2の変形例に係るブラケット本体部61は、後面67における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両前方に向けて湾曲する後側湾曲面93と、前面68における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両後方に向けて湾曲する前側湾曲面94とを備えている。そして、後側湾曲面93は凸型に湾曲しているのに対し、前側湾曲面94は凹型に湾曲している。また、これら後側湾曲面93と前側湾曲面94との交点は、ブラケット本体部61における車体前後方向の中心(
図3(c)において一点鎖線で示す)に対して後側に位置している。この構成によれば、ブレーキダクト8等から来る流れが車両後方向きの場合に、より多くの空気をディスクロータ3のディスク部33に向けて案内することが可能となる。
【0033】
図3(d)は第3の変形例におけるブラケット本体部61の断面形状を示している。この
図3(d)に示すように第3の変形例に係るブラケット本体部61は、第2の変形例のものと同様に、後面67における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両前方に向けて湾曲する後側湾曲面93と、前面68における車幅方向の内側端から車幅方向の内側に向かうに従って車両後方に向けて湾曲する前側湾曲面94とを備えている。そして、後側湾曲面93および前側湾曲面94が共に凸型に湾曲している。また、これら後側湾曲面と前側湾曲面との交点が、ブラケット本体部61における車体前後方向の中心(
図3(d)において一点鎖線で示す)に対して後側に位置している。この構成によれば、特にブレーキダクト8等から来る流れが車両前方向きの場合に、空気流れの圧力損失を小さくしながら、より多くの空気をディスクロータ3のディスク部33に向けて案内することが可能となる。
【0034】
図3(e)は第4の変形例におけるブラケット本体部61の断面形状を示している。この
図3(e)に示すように第4の変形例に係るブラケット本体部61は、断面が略矩形状となっている。また、このブラケット本体部61には、金属製板材で成るガイドプレート100が装着されている。このガイドプレート100は、ブラケット本体部61の後面67に重なり両端部がブラケット本体部61の外面に沿うように湾曲された後側プレート部101、ブラケット本体部61の前面68に重なり両端部がブラケット本体部61の外面に沿うように湾曲された前側プレート部102を備えている。また、ガイドプレート100は、後側プレート部101に接合されると共に車幅方向の内側に向かうに従って車両前方に向けて傾斜する後側傾斜プレート部103と、前側プレート部102に接合されると共に車幅方向の内側に向かうに従って車両後方に向けて傾斜する前側傾斜プレート部104とを備えている。そして、これら後側傾斜プレート部103と前側傾斜プレート部104との交点が、ブラケット本体部61における車体前後方向の中心(
図3(e)において一点鎖線で示す)に対して後側に位置している。これにより、ディスクロータ3のディスク部33に向けて空気を案内する部材をキャリパブラケット6とは異なる部材によって構築することができる。
【0035】
図3(f)は第5の変形例におけるブラケット本体部61の断面形状を示している。この第5の変形例は、前述した第3の変形例に係るブラケット本体部61の断面形状を改良したものである。具体的に、前側湾曲面94を階段形状に構成している。このため、この前側湾曲面94は車体前後方向に沿って延在する複数の鉛直面95,95,95を有することになり、車幅方向の内側からブラケット本体部61に飛散してきた小石等をこの鉛直面95によって車幅方向の内側に跳ね返すことが可能となっている(
図3(f)に二点鎖線で示す矢印を参照)。また、前側湾曲面94に沿って流れる空気は各鉛直面95,95,95の周囲において渦流となる。小さな渦流がベアリングのような働きをし、ディスクロータ3に向かう空気をスムースに流すことができる。
【0036】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、ディスクブレーキ装置1のキャリパブラケット6を本発明に係る導風部材として利用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ディスクロータ3に対する車幅方向の内側に配設されている他の部材を導風部材として利用してもよい。また、専用の導風部材を新たに配設する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ディスクロータを効果的に冷却することができる車両の制動装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ディスクブレーキ装置(制動装置) 3…ディスクロータ 5…ブレーキユニット
6…キャリパブラケット(導風部材) 69…導風面 71…切り欠き部(導風領域)