(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161665
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電子装置、及び電磁妨害低減方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/26 20060101AFI20241113BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
G01R29/26 F
H05K9/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076504
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 健正
(72)【発明者】
【氏名】荻原 政男
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】電磁妨害を容易かつ効果的に低減する。
【解決手段】その所定部位から所定の放射方向5に発せられた電磁波を放射方向以外5の方向に反射させる反射面41を有する反射部材40を備える、電子装置(通信装置30)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その所定部位から所定の放射方向に発せられた電磁波を前記放射方向以外の方向に反射させる反射面を有する反射部材を備える、電子装置。
【請求項2】
前記反射部材は、前記反射面を前記電子装置の所定部位から所定距離離間させるための引出部を有する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記反射部材は、前記電子装置から前記放射方向に延伸する前記引出部と、前記反射面を有する反射部とを含んで構成され、前記反射部は、前記引出部の延伸方向に対して前記反射面が所定角度をなすように、前記引出部に対して所定部位で屈曲されている、請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記所定部位から前記屈曲されている部位までの距離は50mm以下に設定されている、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記電子装置は、所定の通信ケーブルを挿入可能な挿入口を備えており、
前記通信ケーブルが前記挿入口に挿入された場合に当該通信ケーブルが位置することになる、前記反射部材における部位が切削された切削部を備える、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記反射部は、前記引出部の延伸方向に対して前記反射面が20度超80度以下の角度をなすように前記引出部に対して屈曲されている、請求項3に記載の電子装置。
【請求項7】
前記反射部材における前記反射面は金属製の部材からなる、請求項1に記載の電子装置。
【請求項8】
前記反射部材を脱着可能な脱着構造を備える、請求項1に記載の電子装置。
【請求項9】
前記反射部材は、前記電子装置に接続され、前記所定部位から前記放射方向に発せられた電磁波を前記放射方向以外の方向に反射させる前記反射面を有する略平板状の部材である、請求項1に記載の電子装置。
【請求項10】
電子装置の所定部位から所定の放射方向に発せられた電磁波を前記放射方向以外の方向に反射させる反射面を有する反射部材を、前記電子装置に設ける、電磁妨害低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、及び電磁妨害低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品から発せられる電磁波は、他の製品の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、このような電磁妨害(EMI: Electro-Magnetic Interference)は低減されることが望ましい。そのため、EMIに関する規格が定められており、その規格を満たすための試験(EMI試験)が行われることがある。EMI試験は、例えば、対象の電子製品から所定距離離れた所定高さの位置(電磁波の影響を受けるおそれがある他の製品を想定した位置)において観測される所定周波数の電磁波が、対象の電子製品を中心とする全ての方向(回転角)において所定基準値以下であるかを試験する。
【0003】
EMIの典型的な発信源である電子製品のIC(Integrated Circuit)又は基板に対しては、これまでに様々な対策が提案されている。代表的な対策としては、金属による電磁シールド、電磁波吸収シートの使用、及び、スペクトラム拡散クロックSSC(Spread Spectrum Clock)の使用等により周波数を変調させることでピーク周波数での妨害電磁波量を低減する手法がある。これらの対策は、妨害電磁波を閉じ込めたり外部に放射しないためのアプローチである。このようなアプローチの例としては、特許文献1に、電磁波ノイズ源から発生する電磁波ノイズを低減する低EMI構造体であって、電磁波ノイズ源から所定の位置に、電磁波ノイズ源と対向する面が平面である強誘電体を配置させ、電磁波ノイズ源から放射された電磁波ノイズを強誘電体の法線方向に導くような低EMI構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、妨害電磁波を閉じ込める手法の場合、電磁波の周波数が数GHz以上の高周波(短波長)になると、数cm程度の部品間の隙間又は微小なギャップから電磁波が漏れてしまうことがあり得る。これを防ぐために筐体の加工を行おうとすると、金属(板金)の形状が複雑となり、金型コストの増加又は電磁吸収シートのコストの増加につながってしまうおそれがある。一方、妨害電磁波を外部に放射しない手法の場合(SSC)でも、SSCの高速信号の伝送の性質からエラーレートが悪化してしまったり、最悪の場合は、一部のICで正常にデータ伝送ができず、リンクアップしなくなることがあり得る。
【0006】
特に、ストレージ装置又はサーバ装置の場合、保守性又は構成の自由度の観点から、CPU等が搭載されるメイン基板だけでなく、通信機能を有する外部のI/Oモジュールを有する構成となっていることが多い。このようなI/Oモジュールは一定の範囲に集中してメイン基板に取り付けられるため、これらのI/Oモジュールが原因となりEMIの規格値違反になり易い。特に、近年のI/Oモジュールはより高い伝送速度に対応するためにその基本周波数に対応する電磁波もより高周波数となる傾向があるため、EMI対策はその点でも難しくなっている。
【0007】
さらに、ストレージ装置及びサーバ装置は、規格上又は技術上の制約により複雑な部品構成を有しているため、EMIをシミュレーションして事前検証を行うことは難しく、開発の最終段階にならないと検証は難しい(装置全体でシミュレーションを行うことは複雑に過ぎる)。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁妨害を容易かつ効果的に低減することが可能な電子装置、及び電磁妨害低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一つは、その所定部位から所定の放射方向に発せられた電磁波を前記放射方向以外の方向に反射させる反射面を有する反射部材を備える、電子装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電磁妨害を容易かつ効果的に低減することができる。
上記した以外の構成及び効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る通信装置を備える基板システムの構造の概略を説明する斜視図である。
【
図2】主基板と通信装置の接続関係を説明する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る通信装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る通信装置の一例を示す側方図である。
【
図5】反射部に切削部を設けた通信装置の一例を示す斜視図である。
【
図6】反射部に切削部を設けた通信装置に対して通信ケーブルを接続する一例を示す斜視図である。
【
図7】引出部を省略した反射部材による通信装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図8】引出部を省略した反射部材による通信装置の構成の一例を示す側面図である。
【
図9】本実施形態に係る通信装置の構成において、放射される電磁波の周波数を8GHzとし、折曲角θを45度とし、引出長Lを0mm~80mmまで変化させた場合における観測される電界強度比の変化を示したグラフである。
【
図10】本実施形態に係る通信装置の構成において、放射される電磁波の周波数を16GHzとし、折曲角θを45度とし、引出長Lを0mm~80mmまで変化させた場合における観測される電界強度比の変化を示したグラフである。
【
図11】本実施形態に係る通信装置の構成において、放射される電磁波の周波数を8GHzとし、引出長Lを40mmとし、折曲角θを0度から90度まで変化させた場合における観測される電界強度比の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る電子装置である通信装置30を備える基板システム10の構造の概略を説明する斜視図である。同図に示すように、基板システム10は、主基板20と、主基板20に挿入される通信装置30とを含んで構成される。
【0013】
主基板20は、例えば回路基板(プリント基板)であり、略平板状の基材に各種の素子(回路)が搭載されている。主基板20は、例えば、基材としてエポキシ樹脂又はフェノール樹脂等の絶縁体の素材、通電材として銅箔等の伝導体等の素材により構成される。本実施形態では、主基板20は、情報処理装置(コンピュータ)の基板であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等の電子部品が搭載されている。基板システム10は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)の内部の所定高さに、略水平方向に配置される。
【0014】
図2は、主基板20と通信装置30の接続関係を説明する斜視図である。同図に示すように、主基板20の所定位置には、1又は複数のスロット21が設けられている。スロット21は、通信装置30を挿入するための内部空間を有する1又は複数の基板挿入口22が設けられている。各基板挿入口22は、略水平方向に開口している。
【0015】
通信装置30は、主基板20のスロット21に挿入されることで、主基板20と(電気的に)接続される追加の通信モジュール(I/Oモジュール)である。通信装置30は、主基板20と同様に、所定の基材に各種の電子部品を搭載した電子装置であり、主基板20と同様の素材からなる。
【0016】
通信装置30は、例えば、所定の規格に従った通信速度でファイバチャネル又はその他の通信網によるデータ通信を行うネットワークカード、又は、所定の規格に従った通信速度で所定の装置(記憶装置等)とデータ通信を行うインタフェースカードである。
【0017】
通信装置30の、スロット21に挿入される側の側面36は、スロット21の内部空間の形状に対応した形状の嵌合部を有している。通信装置30の他方の面である、スロット21に挿入された場合に外部に露出する側の部位の面(以下、スロット面31という)には、他の装置等と通信するための通信ケーブル(不図示)を挿入可能な、1又は複数のケーブル挿入口35が設けられている。
【0018】
通信装置30は、特にこのスロット面31から、所定の指向性を有する電磁波を外部に発する。具体的には、通信装置30は、その動作中、それぞれ固有の周波数(基本周波数)の電磁波を、その指向性に応じた方向(以下、放射方向という)に放射する。
【0019】
ここで、主基板20の各スロット21はその設計上、互いに近い距離に位置しているので、各通信装置30も互いに近い距離に配置される。その結果、各通信装置30が発する各電磁波によって所定の規格値を超える強度の周波数の電磁波が周囲に発せられる可能性がある。そして、これにより、上記放射方向に位置する他の製品に電磁妨害が発生するおそれがある。また、所定のEMI試験において、規格値以上の電磁波が検出され、規格を満足できなくなるおそれがある。
【0020】
そこで、
図2に示すように、本実施形態の通信装置30のスロット面31には、発せられた電磁波を反射してその指向性をずらすための部材である反射部材40が設けられる。以下、この反射部材40について詳細に説明する。
【0021】
図3は、本実施形態に係る通信装置30の一例を示す斜視図である。
また、
図4は、本実施形態に係る通信装置30の一例を示す側方図である。
【0022】
これらの図に示すように、通信装置30と反射部材40との間は、脱着構造70によって脱着可能に接続される。脱着構造70は、例えば、反射部材40の後述する引出部60の一端に設けられた挿入部62(例えば、突起部、面ファスナーのフック)と、通信装置30の底面32に設けられた被挿入部34(例えば、突起部と篏合される穴構造、面ファスナーのループ)とを含んで構成される。
【0023】
反射部材40は、その表面に反射面41を有する略平板状の反射部50と、略平板状の引出部60とを有する。
【0024】
引出部60は、反射部40の反射面41を通信装置30のスロット面31から所定距離離間させるために設けられている。反射面41は、スロット面31から電磁波の放射方向5に発せられた電磁波をその放射方向5以外の方向に反射させる。
【0025】
引出部60は、通信装置30から放射方向5に延伸している。具体的には、引出部60は、通信装置30のスロット面31と底面32との境界辺33(下方の角辺部)から略水平方向に、所定長さL(以下、引出長Lともいう)で延出している。なお、ここで引出長Lとは、引出部60の一端たる通信装置30の境界辺33と、引出部60の他端たる、反射部50及び引出部60の間の境界辺61との間の距離である。
【0026】
ここで、引出長Lは、0mm以上50mm以下であることが好ましい(0mmの場合の詳細は後述する)。
【0027】
次に、反射部50は、引出部60の延伸方向に対して所定角度で屈曲されている。具体的には、反射部50は、境界辺61にて、引出部60の面方向(略水平方向)から所定角度(以下、折曲角θという)で上方に屈曲されている。すなわち、反射部40(反射面41)は引出部60の面方向に対して折曲角θで折り曲げられている。
【0028】
ここで、折曲角θは、20度超80度以下であることが好ましい。
【0029】
反射部材40のうち少なくとも反射面41は、電磁波を反射する素材からなる。例えば、反射面41は、金属等の良導体からなる。また、引出部60における表面も、電磁波を反射する素材からなることが好ましい。
【0030】
次に、通信装置30の変形例を説明する。
【0031】
<変形例1>
図5は、反射部50に切削部80を設けた通信装置30の一例を示す斜視図である。また、
図6は、反射部50に切削部80を設けた通信装置30に対して通信ケーブル90を接続する一例を示す斜視図である。
【0032】
すなわち、これらの図に示すように、反射部50の所定範囲に、通信ケーブル90の脱着を容易にするための切削部80が設けられる。
【0033】
切削部80は、反射部50における、通信ケーブル90がケーブル挿入口35に挿入された場合に当該通信ケーブルが位置することになる部位で切削することで形成される。例えば、反射部50の、ケーブル挿入口35と略同じ高さの位置に、切り欠け又は貫通孔が設けられる。同図の例では、切削部80は、反射部50の上端の中央部に、通信ケーブル90の断面形状に対応する形状の切り欠けが設けられている。
【0034】
これにより、ケーブル挿入口35に通信ケーブル90を容易に挿入し及び離脱させることができる。
【0035】
なお、切削部80を広くすると通信ケーブル90の着脱がより容易となるが、電磁波の反射効率は低下する。そこで、例えば、切削部80の広さは、反射部材50の50%以下とする。
【0036】
<変形例2>
図7は、引出部60を省略した(引出長Lを0mmとした)反射部材40による通信装置30の構成の一例を示す斜視図である。また、
図8は、引出部60を省略した反射部材40による通信装置30の構成の一例を示す側面図である。
【0037】
これらの図に示すように、この反射部材40は略平板状の部材として構成され、通信装置30のスロット面31(具体的には、スロット面31と底面32との境界辺33(下部の角辺))と直接接続している。この反射部材40は、先に説明した通信装置30の反射部50と同様に、通信装置30の底面32の方向に対して折曲角θ上方に傾斜している。
【0038】
このように引出部60を省いた構成によっても、スロット面31と反射面41との間の距離を確保できるので、より簡易な工程で、放射される電磁波を放射方向以外の他の方向に反射させることができる。なお、この反射部材40と通信装置30は前記した脱着構造によって脱着可能に接続されてもよい。また、反射部材40には前記した切削部を設けてもよい。
【0039】
<シミュレーションによる確認>
本発明者らは、以上のような構成を有する通信装置30により電磁妨害を低減できることを、以下のシミュレーションにより確認した。なお、このシミュレーションには、CST Studio Suite 2022(ダッソー・システムズ株式会社製)を用いた。
【0040】
図9は、本実施形態に係る通信装置30の構成において、放射される電磁波の周波数を8GHzとし、折曲角θを45度とし、引出長Lを0mm~80mmまで変化させた場合における観測される電界強度比(放射角0~22度の範囲の放射電力の最大値を全方位の最大値で割った値)の変化を示したグラフである。なお、この電界強度比は、EMI試験を想定した位置(すなわち、通信装置30から10mの位置)における観測値とし、電磁波の影響を受けるおそれがある他の製品の存在を想定したものとした(以下でも同様)。
【0041】
同図に示すように、引出長Lが0mm以上50mmの範囲で、特に電磁妨害が抑えられていることが確認できた。
【0042】
次に、
図10は、本実施形態に係る通信装置30の構成において、放射される電磁波の周波数を16GHzとし、折曲角θを45度とし、引出長Lを0mm~80mmまで変化させた場合における観測される電界強度比の変化を示したグラフである。
【0043】
同図に示すように、引出長Lが0mm以上80mmの範囲で電磁妨害が効果的に抑えられていることが確認できた。特に、引出長Lが0mm以上50mmの範囲で、電磁妨害が効果的に抑えられていることが確認できた。
【0044】
次に、
図11は、本実施形態に係る通信装置30の構成において、放射される電磁波の周波数を8GHzとし、引出長Lを40mmとし、折曲角θを0度から90度まで変化させた場合における観測される電界強度比の変化を示したグラフである。
【0045】
同図に示すように、折曲角θが20度を超え80度以下の範囲で、電磁妨害が抑えられていることが確認できた。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の電子装置(通信装置30)は、スロット面31から所定の放射方向5に発せられた電磁波をその放射方向5以外の方向に反射させる反射面41を有する反射部材40を備える。
【0047】
これにより、通信装置30から発せられる電磁波を放射方向5以外の方向に放射させる(指向性をずらす)ことができる。さらに、反射面41で反射した電磁波(反射波)と、(反射面41で反射せず)通信装置30から直接発せられる電磁波(直接波)とが干渉しあうことで電磁波の強度を低減させることも期待できる。これにより、通信装置30から発せられる電磁波が他の装置等に悪影響を及ぼすことを効果的に防ぐことができる。また、このような反射部材40の加工及び取り付けは非常に簡易な工程で実現できる。
【0048】
すなわち、従来のEMI対策は、電磁波の放射源(電磁波放射体)から不要な電磁波を漏出させないことに主眼を置いていたが、不要な電磁波の放射源からの漏出を完全に防ぐことが極めて難しく、かつ、漏出した電磁波はあらゆる方向に伝搬し、他の装置等に悪影響を与えてしまうおそれが高かった。そこで、本実施形態の通信装置30は、上記のような反射部材40を設けることで、他の装置等への電磁波妨害の影響を防ぐことができる。また、EMI試験においても、試験の対象となる観測位置から逸れた位置(例えば、より高い位置)に電磁波が反射するように反射部材40を構成することで、所定の規格を満たすことができる。
【0049】
このように、本実施形態の電子装置(通信装置30)によれば、他の装置等への電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0050】
また、本実施形態の通信装置30は、反射面41をスロット面31から所定距離(引出長L)離間させるための引出部60を有する。
【0051】
これにより、反射波と直接波をより確実に干渉させ、電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0052】
また、本実施形態の通信装置30の反射部材40は、通信装置30から放射方向5に延伸する引出部60と、反射面41を有する反射部50とを含んで構成され、反射部50は、引出部60の延伸方向に対して反射面41が所定角度(折曲角θ)をなすように、引出部60に対して所定部位(境界辺33)で屈曲されている。
【0053】
これにより、通信装置30からの電磁波を反射面41で所望の方向に反射させ、電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0054】
また、本実施形態の通信装置30において、引出長Lは50mm以下に設定されている。
【0055】
これにより、通信装置30からの電磁波を効果的に他の方向に反射させ、電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0056】
また、本実施形態の通信装置30は、通信ケーブル90を挿入可能なケーブル挿入口35を備えており、通信ケーブル90が挿入口に挿入された場合にその通信ケーブル90が位置することになる、反射部材40における部位が切削された切削部80を備える。
【0057】
これにより、ケーブル挿入口35に通信ケーブル90を容易に挿入し及び離脱させることができる。また、ケーブル挿入口35に挿入された通信ケーブル90が反射部50の近傍の空間で折り曲がらないように(略水平方向に通信ケーブル90が延伸するように)することができる。
【0058】
また、本実施形態の通信装置30の反射部50は、引出部60の延伸方向に対して反射面41が20度を超え80度以下の角度をなすように引出部60に対して屈曲されている。
【0059】
これにより、通信装置30からの電磁波を反射面41で効果的に他の方向に反射させ、電磁妨害を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態の通信装置30の反射部材40における反射面41は金属製の部材からなる。
【0061】
これにより、通信装置30からの電磁波を反射面41で確実に反射させ、電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0062】
また、本実施形態の通信装置30は、反射部材40を脱着可能な脱着構造70を備える。
【0063】
これにより、通信装置30及び反射部材40を柔軟に設計することができる。
【0064】
また、本実施形態の通信装置の反射部材40は、通信装置30に接続され、スロット面31から放射方向5に発せられた電磁波を放射方向5以外の方向に反射させる反射面41を有する略平板状の部材である。
【0065】
これにより、簡易な工程で、通信装置30からの電磁波を反射面41で放射方向5以外の他の方向に反射させ、電磁妨害を効果的に低減することができる。
【0066】
本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。以上説明した実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0067】
例えば、本実施形態では、反射部50と引出部60の間は折り曲げられるものとしたが、反射部50と引出部60の境界部を曲面加工することを妨げない。
【0068】
また、本実施形態では、反射部材40は、脱着構造70により通信装置30と脱着可能なものとしたが、通信装置30及び反射部材40は一体的に構成されてもよい。また、反射部材40における反射部50と引出部60は別部材として構成されてもよいし、一体的な部材として構成されてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、反射部50(反射面41)を上方に屈曲させることで、電磁波を上方に反射させる構成としたが、電磁波を下方に反射させる構成としてもよい。この場合は、例えば、通信装置30におけるスロット面31及び頂面の境界辺33(上方の角部)から略水平方向に延伸する引出部60と、引出部60との境界辺61にて、引出部60の面方向(略水平方向)から所定角度で下方に屈曲させた反射部50とを設ける。
【0070】
また、本実施形態は、通信装置30への適用例として説明したが、本発明はこれに限定されず、電磁波を放出する電子装置全般に対し実施可能である。例えばサーバ装置等においてPCI(Peripheral Component Interconnect)スロットを介しメイン基板に接続される拡張カード基板についても、より高速のデータ伝送速度への対応に伴い高周波の電磁波が発生するため、当該PCIスロットから放出される電磁波に対し本発明の反射部材を設けた場合も本実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0071】
30 通信装置、40 反射部材、41 反射面、60 引出部、70 脱着構造