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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161670
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】錠機構
(51)【国際特許分類】
   E05B 3/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
E05B3/00 Z
E05B3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076522
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000138613
【氏名又は名称】株式会社ユニオン
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】田河 寿一
(57)【要約】
【課題】ドアノブ等の被操作部材を回動可能に支持するための座がドアの本体内部に設置される場合に、被操作部材の基部を通すための挿通孔が十分に高い精度で座と位置合わせされるようにドアに形成できなくても、被操作部材をドアに容易に取付けできる錠機構を提供する。
【解決手段】
錠機構は、被操作部材1を回動可能にドア2に取付ける錠機構であって、中空円筒状のガイド部材(10、20)と、板状のベース部材30とを具備する。ガイド部材(10、20)は、被操作部材1の基部1aと嵌合され、被操作部材1を回動可能にドア2に支持する。ベース部材30は、ドア2の本体内部に配設され、円形の遊嵌孔31を有し、遊嵌孔31の径方向における移動を拘束せずにガイド部材(10、20)と係合し、ガイド部材(10、20)をドア2に固定する。遊嵌孔31は、第2ガイド部材20が所定の第1クリアランスCL1を持って遊嵌される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアノブ(1A)、及びサムターン(1B)等の人によって操作される被操作部材(1)を回動可能にドア(2)に取付ける錠機構であって、
前記被操作部材(1)の基部(1a)と嵌合され、前記被操作部材(1)を回動可能に前記ドア(2)に支持する中空円筒状のガイド部材(10、20)と、
前記ドア(2)の本体内部に配設され、前記ガイド部材(10、20)が径方向の所定の第1クリアランス(CL1)を持って遊嵌される円形の遊嵌孔(31)を有し、前記遊嵌孔(31)の軸方向における前記ガイド部材(10、20)の移動を拘束し径方向における移動は拘束せずに前記ガイド部材(10、20)と係合し、前記ガイド部材(10、20)を前記ドア(2)に固定する板状のベース部材(30)
とを具備する、錠機構。
【請求項2】
前記ガイド部材(10、20)は、第1ネジ部(11)を有し、前記被操作部材(1)の前記基部(1a)と中空部において嵌合される第1筒部材(10)、及び前記第1ネジ部(11)と螺合する第2ネジ部(21)を有するとともに、外周部(20a)から径方向外方に前記第1クリアランス(CL1)より大きい突設高さ(H)で突設される少なくとも1つの係合突起(22)を有し、前記第1筒部材(10)と一体的に結合される第2筒部材(20)を含み、
前記ベース部材(30)は、前記遊嵌孔(31)の内周面に凹設され、径方向の所定の第2クリアランス(CL2)を持って前記少なくとも1つの係合突起(22)と遊嵌される少なくとも1つの被係合凹部(32)を有し、前記ガイド部材(10、20)のうちの前記第2筒部材20と係合する、請求項1に記載の錠機構。
【請求項3】
前記第2クリアランス(CL2)は、前記第1クリアランス(CL1)以上の大きさである、請求項2に記載の錠機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠機構に関し、特に、開き戸等のドアの表面に座を設置することなくドアノブ等の被操作部材をドアに取付ける錠機構に関する。
【背景技術】
【0002】
レバーハンドル等の被操作部材をドアに取付ける錠機構として、特許文献1には、ドアの本体内部に円形板状の座部材を設置し、ドアの本体内部に設置される座部材によって、ドアの両側において、ドアノブを回動可能に支持する錠機構が記載されている。また、特許文献2には、ドアの本体外側に座部材を設置し、座部材をカバー部材によって覆い、ドアの本体外側に設置される座部材によって、ドアの両側において、ドアノブを回動可能に支持する錠機構が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の錠機構によれば、ドアノブ等の被操作部材を回動可能に支持する座部材がドアの本体内部に設置されることによって、特許文献2に記載の錠機構のように、座部材を覆うためのカバー部材をドアの本体外側に設置する必要がなく、ドアノブの基部を通すだけの径の小さな挿通孔をドアに形成するだけでドアノブを取付けでき、デザインの自由度が大きくなり、デザイン性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-1952号公報
【特許文献2】特開2020-176469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の錠機構において、ドアノブは、座部材の中央に形成されている嵌合孔とドアノブの基部とを嵌合させることによって回動可能に支持される。従って、特許文献1に記載の錠機構においては、座部材の嵌合孔と正確に位置合わせするようにして、ドアノブの基部を通すための小さな挿通孔をドアの両面において形成する必要がある。しかしながら、ドアノブの基部を通すための挿通孔を非常に高い精度で全てのドアに形成することは現実的ではなく、また、ドアに挿通孔を形成するような作業は、ドアを設置する現場で行われることも多く、十分に高い精度で挿通孔を形成できないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアノブ等の被操作部材を回動可能に支持するための座がドアの本体内部に設置される場合に、被操作部材の基部を通すための挿通孔が十分に高い精度で座と位置合わせされるようにドアに形成できなくても、被操作部材をドアに容易に取付けできる錠機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示する錠機構は、人によって操作されるドアノブ(1A)、及びサムターン(1B)等の被操作部材(1)を回動可能にドア(2)に取付ける錠機構であって、中空円筒状のガイド部材(10、20)と、板状のベース部材(30)とを具備する。前記ガイド部材(10、20)は、前記被操作部材(1)の基部(1a)と嵌合され、前記被操作部材(1)を回動可能に前記ドア(2)に支持する。前記ベース部材(30)は、前記ドア(2)の本体内部に配設され、円形の遊嵌孔(31)を有し、前記遊嵌孔(31)の軸方向における前記ガイド部材(10、20)の移動を拘束し径方向における移動は拘束せずに前記ガイド部材(10、20)と係合し、前記ガイド部材(10、20)を前記ドア(2)に固定する。そして、前記遊嵌孔(31)は、前記第2ガイド部材(20)が径方向の所定の第1クリアランス(CL1)を持って遊嵌される。
【0008】
本願に開示する錠機構において、前記ガイド部材(10、20)は、第1筒部材(10)、及び第2筒部材(20)を含む。前記第1筒部材(10)は、第1ネジ部(11)を有し、前記被操作部材(1)の前記基部(1a)と中空部において嵌合される。前記第2筒部材(20)は、第2ネジ部(21)を有するとともに、少なくとも1つの係合突起(22)を有し、前記第1筒部材(10)と一体的に結合される。前記第2ネジ部(21)は、前記第1ネジ部(11)と螺合する。前記少なくとも1つの係合突起(22)は、前記第2筒部材(20)の外周部(20a)から径方向外方に前記第1クリアランス(CL1)より大きい突設高さ(H)で突設される。前記ベース部材(30)は、少なくとも1つの被係合凹部(32)を有し、前記ガイド部材(10、20)のうちの前記第2筒部材20と係合する。前記少なくとも1つの被係合凹部(32)は、前記遊嵌孔(31)の内周面に凹設され、径方向の所定の第2クリアランス(CL2)を持って前記少なくとも1つの係合突起(22)と遊嵌される。
【0009】
また、本願に開示する錠機構において、前記第2クリアランス(CL2)は、前記第1クリアランス(CL1)以上の大きさである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る錠機構によれば、ドアノブ等の被操作部材を回動可能に支持するための座がドアの本体内部に設置される場合に、被操作部材の基部を通すための挿通孔が十分に高い精度で座と位置合わせされるようにドアに形成できなくても、被操作部材をドアに容易に取付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る錠機構を示す全体斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る錠機構を示す分解斜視図である。
図3】(a)実施形態の第1筒部材を示す上面図である。(b)実施形態の第1筒部材を示す側面図である。(c)図3(a)のA-A矢視断面図である。
図4】(a)実施形態の第2筒部材を示す上面図である。(b)実施形態の第2筒部材を示す側面図である。(c)図4(a)のB-B矢視断面図である。
図5】(a)実施形態のベース部材を示す正面図である。(b)実施形態のベース部材を示す上面図である。(c)実施形態のベース部材を示す底面図である。(d)図5(b)のC-C矢視断面図である。(e)図5(b)のD-D矢視断面図である。(f)図5(b)のE-E矢視断面図である。
図6】(a)実施形態のスペーサ部材を示す正面図である。(b)図6(a)のF-F矢視断面図である。(c)実施形態のスペーサ部材を示す上面図である。
図7】(a)実施形態の錠前ケースを示す側面図である。(b)実施形態の錠前ケースを示す正面図である。
図8図7(a)のG-G矢視断面図である。
図9】実施形態装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る錠機構を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0013】
〈実施形態〉
以下に、図1から図9を参照して、本発明の実施形態に係る錠機構を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る錠機構を示す全体斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る錠機構を示す分解斜視図である。図3(a)は、実施形態の第1筒部材を示す上面図である。図3(b)は、実施形態の第1筒部材を示す側面図である。図3(c)は、図3(a)のA-A矢視断面図である。図4(a)は、実施形態の第2筒部材を示す上面図である。図4(b)は、実施形態の第2筒部材を示す側面図である。図4(c)は、図4(a)のB-B矢視断面図である。
【0014】
図5(a)は、実施形態のベース部材を示す正面図である。図5(b)は、実施形態のベース部材を示す上面図である。図5(c)は、実施形態のベース部材を示す底面図である。図5(d)は、図5(b)のC-C矢視断面図である。図5(e)は、図5(b)のD-D矢視断面図である。図5(f)は、図5(b)のE-E矢視断面図である。図6(a)は、実施形態のスペーサ部材を示す正面図である。図6(b)は、図6(a)のF-F矢視断面図である。図6(c)は、実施形態のスペーサ部材を示す上面図である。図7(a)は、実施形態の錠前ケースを示す側面図である。図7(b)は、実施形態の錠前ケースを示す正面図である。図8は、図7(a)のG-G矢視断面図である。図9は、実施形態装置の動作を説明する説明図である。
【0015】
図1図2に示すように、実施形態に係る錠機構は、人によって操作されるドアノブ1A、及びサムターン1B等の被操作部材1を回動可能にドア2に取付ける錠機構であって、ガイド部材(10、20)を形成する中空円筒状の第1筒部材10、及び中空円筒状の第2筒部材20と、板状のベース部材30と、スペーサ部材40とを具備する。実施形態においては、ガイド部材(10、20)とベース部材30とが、被操作部材1を回動可能にドア2に支持する「座」として機能する。
【0016】
ドア2は、第1筒部材10が挿通される円形の挿通孔2a(図8参照)を有している。また、実施形態の錠機構は、錠前ケース3を具備する。錠前ケース3は、扁平な直方体形状であり、ラッチボルト4を進退移動する移動機構、及びデッドボルト5を進退移動する移動機構等を収容し、止めネジ等によってドア2に固定される
【0017】
実施形態のドアノブ1Aは、レバーハンドルであり、基部1a、及び把持部1bを有し、ドア2の両側においてドア2に取付けられ、駆動可能にラッチボルト4と連結される。ドアノブ1Aの基部1aは、例えば円柱形状又は円筒形状であり、ドアノブ1Aを回動可能にドア2に取付けるための連結部として機能する。また、実施形態のサムターン1Bも、ドアノブ1Aと同様に、例えば円柱形状又は円筒形状の基部と、把持部とを有しており、ドアノブ1Aと同様の方法によってドア2に取付けられる。以下、被操作部材1を代表してドアノブ1Aの取付けを主に説明し、サムターン1Bについては、必要に応じて説明を補足する。
【0018】
ガイド部材(10、20)の第1筒部材10は、第1ネジ部11を有し、ドアノブ1Aの基部1a、又はサムターン1Bの基部と中空部において嵌合され、ドアノブ1A、又はサムターン1Bを回動可能に支持する。実施形態においては、第1筒部材10は、金属製であり、中空円筒状の樹脂製のスペーサ部材40が中空部に挿入され、スペーサ部材40を介し、ドアノブ1Aの基部1aと嵌合される。
【0019】
実施形態の第1ネジ部11は、雄ネジであり、図3に示すように、第1筒部材10の軸方向の略中央から一端まで第1筒部材10の外周に形成される。
【0020】
また、図3に示すように、第1筒部材10は、他端にフランジ状の円環部12を有する。ドア2の挿通孔2a(図8参照)に第1筒部材10が挿通されている状態で、円環部12は、挿通孔2a周囲のドア2の表面と当接される。また、円環部12には、図3に示すように、一対の切欠12aが形成されている。一対の切欠12aは、第1筒部材10の第1ネジ部11を後述の第2ネジ部22に締め込む締込み作業を容易とするように、硬貨等と嵌合可能に形成される。
【0021】
図4に示すように、第2筒部材20は、第2ネジ部21、及び少なくとも1つの係合突起22を有する。実施形態の第2ネジ部21は、雌ネジであり、第2ガイド部材10の軸方向の全長に亘って第2筒部材20の内周に形成され、第1筒部材10の第1ネジ部11と螺合し、第2筒部材20と第1筒部材10とを同軸心に一体的に結合する。
【0022】
第2筒部材20の係合突起22は、径方向外方に外周部20aから突設される。実施形態においては、第2筒部材20は、周方向に等間隔で形成される4つの係合突起22を有する。従って、4つの係合突起22は、周方向の90°ごとに外周部20aに形成され、4つの係合突起22のうちの2つずつの係合突起22が、第2筒部材20の中心軸を間に挟んで対をなすように配設される。
【0023】
また、第2筒部材20は、一端に、ベース部材30と係合されるフランジ状の被係合部23を有する。被係合部23がベース部材30と係合されることによって、第2筒部材20は、錠前ケース3に固定され、錠前ケース3を介しドア2に固定される。
【0024】
ベース部材30は、図5図8に示すように、ドア2の本体内部に配設され、円形の遊嵌孔31、及び少なくとも1つの被係合凹部32を有し、ガイド部材(10、20)のうちの第2筒部材20と係合し、ガイド部材(10、20)をドア2に固定する。
【0025】
図8に示すように、実施形態において、ベース部材30は、止めネジ6と六角ナット7とによって錠前ケース3に固定される。そして、ベース部材30は、底面側に円環状の係合部33を有し、遊びを持って第2筒部材20を錠前ケース3に押え付けように係合部33が第2筒部材20の被係合部23と係合し、遊嵌孔31の軸方向におけるガイド部材(10、20)の移動を拘束し径方向における移動は拘束せずにガイド部材(10、20)と係合し、錠前ケース3を介し、ガイド部材(10、20)をドア2に固定する。
【0026】
ベース部材30の遊嵌孔31は、ガイド部材(10、20)のうちの第2筒部材20が径方向の所定の第1クリアランスCL1(図9参照)を持って遊嵌される。第1クリアランスCL1は、遊嵌孔31の内径と第2筒部材20の外径との差異に相当し、実施形態に準拠した試作品においては、第1クリアランスCL1は1ミリメートルとしている。しかしながら、ベース部材30の遊嵌孔31と合致するようにドア2に挿通孔2aを形成する場合の現実的な精度を考慮すると、第1クリアランスCL1は、0.5ミリメートル以上、1.5ミリメートル以下であればよく、0.7ミリメートル以上、1.3ミリメートル以下であることが好ましく、0.8ミリメートル以上、1.2ミリメートル以下であることが更に好ましい。なお、第2筒部材20が遊嵌孔31と同軸心に配されるとき、第2筒部材20の外周部20aと遊嵌孔31の内周面との隙間は、第1クリアランスCL1の2分の1となる。
【0027】
ベース部材30の被係合凹部32は、遊嵌孔31の内周面に凹設され、径方向の所定の第2クリアランスCL2(図9参照)を持って少なくとも1つの係合突起22と遊嵌される。実施形態においては、第2クリアランスCL2は、第1クリアランスCL1以上であり、第2筒部材20が、周方向に等間隔で形成される4つの係合突起22を有することと対応し、ベース部材30は、遊嵌孔31の周方向に等間隔で形成される4つの被係合凹部32を有する。
【0028】
また、被係合凹部32は、遊嵌孔31の軸方向に延びる溝状であり、被係合凹部32の横断面形状は半円状となっている。第2筒部材20が遊嵌孔31と同軸心に配されるとき、被係合凹部32の底部と係合突起22の頂点との隙間は、第2クリアランスCL2の2分の1となる。実施形態に準拠した試作品において、第2クリアランスCL2は、1.0ミリメートルであり、第1クリアランスCL1と同等としている。第2クリアランスCL2の好ましい範囲は、上述した第1クリアランスCL1の好ましい範囲と同様である。
【0029】
また、図9に示すように、第2筒部材20が遊嵌孔31と同軸心に配されるとき、係合突起22は遊嵌孔31の周方向に第3クリアランスCL3を持って被係合凹部32と遊嵌される。実施形態においては、第3クリアランスCL3は、第2クリアランスCL2と同等である。第3クリアランスCL3の好ましい範囲も上述した第1クリアランスCL1の好ましい範囲と同様である。
【0030】
更に、実施形態において、係合突起21の突出高さHは、第1クリアランスCL1より大きくされる。突出高さHとは、少なくとも1つの係合突起21が径方向外方に外周部20aから突出する高さである。突出高さHが第1クリアランスCL1より大きいことによって、第1ネジ部11を第2ネジ部21に締め込むために第1筒部材10を回転するとき、少なくとも1つの係合突起22と少なくとも1つの係合凹部32との係合によって、第2筒部材20が第1筒部材10と連れ回りすることが防止される。実施形態に準拠した試作品において、突出高さHは、1.5ミリメートルであり、第1クリアランスCL1の1.5倍としている。突出高さHの好ましい範囲は、上限及び下限ともに上述した第1クリアランスCL1の好ましい範囲の1.5倍程度である。
【0031】
以下、被操作部材1をドア2に取付ける手順を説明する。
【0032】
(1)図8図9に示すように、初めに、ベース部材30の遊嵌孔31に第2筒部材20を挿通した状態で、錠前ケース3の両面に、取付ビス6と六角ナット7とによって、第2筒部材20とベース部材30とを固定する。
【0033】
(2)図1図7に示すように、錠前ケース3を止めネジ等によってドア2に取付ける。
【0034】
(3)図2図8に示すように、第1ネジ部11を第2ネジ部21に締め込み、ドア2の本体外側から第1筒部材10を第2筒部材20と一体的に結合し、ガイド部材(10、20)を形成する。第1ネジ部11を第2ネジ部21に締め込む際には、係合突起22と係合凹部32との係合によって、第2筒部材20の回転が阻止される。
【0035】
(4)図7図8に示すように、錠前ケース3に設けられている第1軸孔3aにラッチボルト4を駆動する駆動軸1Cを差込み、第1筒部材10の中空部にスペーサ部材40を挿嵌し、スペーサ部材40を介し、ドアノブ1Aの基部1aをガイド部材(10、20)の中空部に嵌合させ、ドアノブ1Aを六角穴付き止めネジ等の固定手段によって駆動軸1Cに固定する。また、サムターン1Bもドアノブ1Aと同様に、上記の手順によって、第2軸孔3bに差込まれるデッドボルト5の駆動軸に固定する。
【0036】
(5)上記(3)及び(4)の手順を行う際に、ドア2に形成されている挿通孔2aと錠前ケース3に固定されているベース部材30との間に位置ずれがあれば、第1クリアランスCL1の範囲内で、遊嵌孔31の径方向にガイド部材(10、20)のうちの第2筒部材20を移動し、挿通孔2aとベース部材30との間の位置ずれを無効化する。
【0037】
以上、図1から図9を参照して説明したように、実施形態の錠機構によれば、ドアノブ1A、及びサムターン1B等の被操作部材1を回動可能に支持する中空円筒状のガイド部材(10、20)が、径方向の第1クリアランスCL1を持ってベース部材30の遊嵌孔31に遊嵌されている状態で、ベース部材30との係合によって、遊嵌孔31の径方向の移動は拘束されず軸方向の移動だけが拘束されるようにしてドア2に固定される。
【0038】
従って、例えばドアノブ1Aの基部1aが挿通される挿通孔2aがベース部材30と厳密に位置合せされるような十分に高い精度でドア2に形成されていない場合にも、第1クリアランスCL1の範囲内で、遊嵌孔31の径方向にガイド部材(10、20)を移動でき、ドアノブ1A等の被操作部材1を回動可能に支持するための座がドア2の本体内部に設置される場合に、挿通孔2aが十分に高い精度で座と位置合わせされるようにドア2に形成できなくても、被操作部材1をドアに容易に取付けできる。
【0039】
また、図1から図9を参照して説明したように、実施形態の錠機構によれば、第1筒部材10と第2筒部材20とが第1ネジ部11と第2ネジ部21との螺合によって一体的に結合され、ガイド部材(10、20)が形成され、少なくとも1つの係合突起22が、第2筒部材20の外周部20aから径方向外方に第1クリアランスCL1より大きい突設高さHで突設され、少なくとも1つの係合突起22と遊嵌される少なくとも1つの係合凹部32がベース部材30の遊嵌孔31の内周面に凹設される。
【0040】
従って、ガイド部材(10、20)のうちの第2筒部材20を先にドア2の本体内部に設置し、ドア2の本体外側から第1筒部材10を挿通孔2aに差し込み、第1ネジ部11を第2ネジ部21に締め込む際に、第2筒部材20が第1筒部材10と連れ回りすることを防止でき、第1筒部材10と第2筒部材20とを一体的に結合するための作業を容易とすることができる。
【0041】
また、図1から図9を参照して説明したように、実施形態の錠機構によれば、第2クリアランスCL2が第1クリアランスCL1以上の大きさであることによって、係合突起22が、挿通孔2aとベース部材30との間の位置ずれを解消するように第1クリアランスCL1の範囲内で第2筒部材20を径方向に移動する際の障害となることを防止できる。
【0042】
また、図1から図9を参照して説明したように、実施形態の錠機構によれば、係合突起22、及び係合凹部32が周方向の90°ごとの4カ所に設けられていることによって、遊嵌孔31の径方向における様々な方向の位置ずれを解消でき、より効果的に被操作部材1の取付作業を容易化できる。
【0043】
また、図1から図9を参照して説明したように、実施形態の錠機構によれば、錠前ケース3に対しドア2の室内側と室外側の両方に設置されるベース部材30において、止めネジ6が挿通されるネジ挿通孔30aと同軸心に六角ナット7を収納する収納凹部34が設けられており、止めネジ6の頭も収納凹部34に収容される。従って、錠前ケース3に対しドア2の室内側と室外側の両方に設置されるベース部材30を同一の部品とすることができ、錠機構の製造を容易とすることができる。
【0044】
以上、図面(図1図9)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
CL1…第1クリアランス
CL2…第2クリアランス
H…突設高さ
1…被操作部材
1A…ドアノブ
1B…サムターン
1a…基部
2…ドア
10…第1筒部材(ガイド部材)
11…第1ネジ部
20…第2筒部材(ガイド部材)
20a…外周部
21…第2ネジ部
22…係合突起
30…ベース部材
31…遊嵌孔
32…被係合凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9