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特開2024-161675オブジェクト表示プログラム、オブジェクト表示システム、およびオブジェクト表示方法
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  • 特開-オブジェクト表示プログラム、オブジェクト表示システム、およびオブジェクト表示方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161675
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】オブジェクト表示プログラム、オブジェクト表示システム、およびオブジェクト表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20241113BHJP
【FI】
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076543
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】308033283
【氏名又は名称】株式会社スクウェア・エニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100155402
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 真
(72)【発明者】
【氏名】シケンブリ リチャード
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA12
5B050BA13
5B050CA07
5B050CA08
5B050DA01
5B050EA04
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
(57)【要約】
【課題】オクルージョン機能に由来するチラツキを、簡易な方法で抑制する。
【解決手段】オブジェクト表示プログラムが、コンピュータに、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット機能と、前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示機能と、を実現させる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット機能と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示機能と、
を実現させる、オブジェクト表示プログラム。
【請求項2】
前記オフセット機能では、前記座標の絶対値が小さいほどオフセット量が小さい、
請求項1に記載のオブジェクト表示プログラム。
【請求項3】
前記オフセット機能では、前記絶対値が所定の値より小さい場合、オフセット量をゼロにする、
請求項2に記載のオブジェクト表示プログラム。
【請求項4】
前記所定の軸方向は、所定の空間の上方向である、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のオブジェクト表示プログラム。
【請求項5】
少なくともユーザ端末を備えたオブジェクト表示システムであって、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット手段と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示手段と、を含む、
オブジェクト表示システム。
【請求項6】
コンピュータによるオブジェクト表示方法であって、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット処理と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示処理と、を含む、
オブジェクト表示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の少なくとも一つは、オブジェクト表示プログラム、オブジェクト表示システム、およびオブジェクト表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現実空間にコンテンツを重畳表示するAR表示システムが存在する。例えば特許文献1には、AR付加情報コンテンツ表示システムが記載されている。AR付加情報コンテンツ表示システムは、ARマーカが表示された端末装置の表示画面上に3次元空間の所定の座標点を示すオブジェクトである空間ポイントが表示される。AR付加情報コンテンツ表示システムは、前記表示画面上において、前記ARマーカを基準とした空間ポイント群を生成する空間ポイント生成部と、指定された空間ポイントと前記表示画面上に2次元で表示される2次元情報とをリンクし、2次元情報とリンクされた空間ポイントを2次元情報とリンクされていない空間ポイントとは異なる外観とする空間ポイント及び2次元情報リンク部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-144407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AR表示を行う際のオクルージョン機能がある。オクルージョンとは、手前にある物体が後ろにある物体を隠す状態のことを言う。オクルージョン機能が働くことにより、物体の前後関係を表示システムが把握し、後ろにあるものを前にあるものが隠すような状態でのAR表示が可能となり、よりリアルなAR表示が可能となる。
【0005】
しかし、AR表示システムが現実空間から検出した検出面などの表面に接するように仮想オブジェクトを配置する場合に、オクルージョン機能に由来するチラツキが発生することがあった。これは、現実空間から検出した物体の座標と、仮想オブジェクトの座標とが一致するため、計測に微妙な誤差や揺れが生じた場合に、現実空間から検出した検出面などの表面と仮想オブジェクトとの間の前後関係が頻繁に入れ替わることに起因している。このようなオクルージョン機能に由来するチラツキを、なるべく簡易な方法で抑制したいという潜在的なニーズがあった。
【0006】
本発明の少なくとも一つの実施形態の目的は、上記課題を解決し、オクルージョン機能に由来するチラツキを、簡易な方法で抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るオブジェクト表示プログラムは、コンピュータに、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット機能と、前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示機能と、を実現させるものである。
【0008】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るオブジェクト表示システムは、少なくともユーザ端末を備えたオブジェクト表示システムであって、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット手段と、前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示手段と、を含むものである。
【0009】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るオブジェクト表示方法は、コンピュータによるオブジェクト表示方法であって、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット処理と、前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示処理と、を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するオブジェクト表示システムの構成の例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するサーバの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するオブジェクト表示プログラムの処理例を示すフローチャートである。
図4】表示装置による表示例を示す図である。
図5】オフセット部によるオフセット処理を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する各実施形態の例における各種構成要素は、矛盾等が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。また、ある実施形態の例として説明した内容については、他の実施形態においてその説明を省略している場合がある。また、各実施形態の特徴部分に関係しない動作や処理については、その内容を省略している場合がある。さらに、以下で説明する各種フローやシーケンスを構成する各種処理の順序は、処理内容に矛盾等が生じない範囲で順不同である。
【0013】
[実施形態]
本発明の実施形態の概要について説明をする。以下では、実施形態として、コンピュータの一例であるサーバにおいて実行されるオブジェクト表示プログラムを例示して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するオブジェクト表示システム100の構成の例を示すブロック図である。オブジェクト表示システムの一例であるオブジェクト表示システム100は、サーバ10と、ユーザが使用するユーザ端末20とを備える。ユーザ端末20A、20B、および20Cはそれぞれ、ユーザ端末20の一例である。オブジェクト表示システム100の構成はこれに限定されない。例えば、オブジェクト表示システム100は、単一のユーザ端末を複数のユーザが使用する構成であってよい。オブジェクト表示システム100が複数のサーバを備えてもよい。
【0015】
サーバ10とユーザ端末20は、コンピュータの一例である。サーバ10とユーザ端末20は、それぞれインターネットなどの通信ネットワーク30に通信可能に接続されている。通信ネットワーク30とサーバ10との間の接続、および通信ネットワーク30とユーザ端末20との間の接続は有線接続であっても無線接続であってもよい。例えば、ユーザ端末20は、通信事業者が管理する基地局と無線通信回線によるデータ通信を行うことにより、通信ネットワーク30と接続してよい。
【0016】
オブジェクト表示システム100は、サーバ10とユーザ端末20とを備えることにより、ユーザの操作に応じて各種処理を実行するための各種機能を実現する。
【0017】
オブジェクト表示システム100は、ゲーム処理システムを兼ねてもよい。ゲーム処理システムが処理するゲームはビデオゲームであってよく、XR技術等を用いたあるいは用いない、現実空間を活用するゲームなどであってよい。オブジェクト表示システム100がゲーム処理システムを兼ねる場合、サーバ10はゲームの進行を制御する。サーバ10はプレイヤの操作に応じてゲームの進行を制御してよい。サーバ10は、オブジェクト表示システム100の管理者によって管理され、複数のユーザ端末20に対して各種処理に関する情報を提供するための各種機能を有する。サーバ10は、ゲーム画像をレンダリング可能なゲームサーバなどの情報処理装置によって構成されてよい。なお、オブジェクト表示システムとゲーム処理システムが複数のサーバによって構成されてもよい。
【0018】
サーバ10は、プロセッサ11と、メモリ12と、記憶装置13とを備える。プロセッサ11は、例えば、各種の演算および制御を行うCPU(Central Processing Unit)等の中央処理装置である。また、サーバ10がGPU(Graphics Processing Unit)を備える場合には、各種の演算および制御の一部をGPUによって行うようにしてもよい。サーバ10は、メモリ12に読み出したデータを用いて各種の情報処理をプロセッサ11にて実行し、得られた処理結果を必要に応じて記憶装置13に記憶させる。
【0019】
記憶装置13は、各種情報を格納する記憶媒体としての機能を有する。記憶装置13の構成は特に限定されないが、ユーザ端末20にかかる処理負荷を軽減させるといった観点から、オブジェクト表示システム100にて行われる制御に必要な各種情報を全て記憶可能な構成であることが好ましい。このような例には、HDDやSSDがある。ただし、各種情報を記憶する記憶装置は、サーバ10がアクセス可能な状態で記憶領域を備えていればよく、例えば専用の記憶領域をサーバ10の外部に有する構成とされていてもよい。
【0020】
ユーザ端末20は、通信ネットワーク30に接続し、サーバ10との通信を行うことにより各種処理を実行するためのハードウェア(例えば、座標に応じたブラウザ画面やゲーム画面を表示する表示装置など)およびソフトウェアを備える。なお、複数のユーザ端末20のそれぞれは、サーバ10を介さずに互いに直接通信を行うこともできる構成とされていてもよい。
【0021】
ユーザ端末20はユーザによって管理され、ネットワーク配信型のゲームを行うことが可能な通信端末によって構成されていてもよい。通信端末の例として、例えば携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯型ゲーム装置、VRゴーグル、ARグラス、スマートグラス、ARコンタクト、所謂ウェアラブルデバイスなどがある。オブジェクト表示システム100が含み得るユーザ端末の構成はこれらに限定されない。ユーザ端末の構成の他の例には、各種通信端末を組み合わせたものやパーソナルコンピュータ、据置型ゲーム装置がある。
【0022】
ユーザ端末20には表示装置が内蔵されていてよい。また、ユーザ端末20に対して、表示装置が無線接続あるいは有線接続されていてもよい。なお、表示装置は極めて一般的な構成であるため、ここでは図示を省略している。
【0023】
ユーザ端末がゲーム用途で用いられる場合、ゲーム画面は例えば、合成画像として表示装置によって表示され、ユーザがこの合成画像を認識する。ゲーム画面は例えば、ユーザ端末が備える表示装置の一例であるディスプレイや、ユーザ端末と接続された表示装置の一例であるディスプレイに表示される。表示装置には、例えば、ホログラム表示が可能なホログラムディスプレイ装置や、画像(ゲーム画面を含む)をスクリーン等に映写する映写装置、XR表示を行う装置なども含まれる。XRには、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)、およびSR(Substitutional Reality)などが含まれる。
【0024】
ユーザ端末20は、プロセッサ21と、メモリ22と、記憶装置23とを備える。プロセッサ21は、例えば、各種の演算および制御を行うCPU(Central Processing Unit)等の中央処理装置である。また、ユーザ端末20がGPU(Graphics Processing Unit)を備える場合には、各種の演算および制御の一部をGPUによって行うようにしてもよい。ユーザ端末20は、メモリ22に読み出したデータを用いて各種の情報処理をプロセッサ21にて実行し、得られた処理結果を必要に応じて記憶装置23に記憶させる。記憶装置23は、各種情報を格納する記憶媒体としての機能を有する。
【0025】
ユーザ端末20には入力装置が内蔵されていてよい。また、ユーザ端末20に対して入力装置が無線接続あるいは有線接続されていてもよい。入力装置はユーザによる操作入力を受け付ける。ユーザによる操作入力に応じて、サーバ10が備えるプロセッサまたはユーザ端末20が備えるプロセッサが、各種の制御処理を実行する。入力装置の例として、携帯電話端末が備えるタッチパネル画面、キーボード、マウス、ゲームパッド、ジョイスティック、その他のコントローラなどがある。また、ユーザ端末20に内蔵またはこれと接続されたカメラも入力装置に相当し得る。ユーザはカメラの前で手を動かす等のジェスチャーにより、操作入力を行う(ジェスチャー入力)。
【0026】
その他、ユーザ端末20はスピーカ等の他の出力装置を備えていてよい。他の出力装置は、ユーザに対して音声、振動、その他の各種の情報を出力する。
【0027】
図2は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するサーバの構成を示すブロック図である。サーバ10の構成の例であるサーバ10Aは、オフセット部101と、表示部102とを少なくとも備える。サーバ10Aが備えるプロセッサは、記憶装置に保持されたオブジェクト表示プログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、オフセット部101と、表示部102とを機能的に実現する。
【0028】
オフセット部101は、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから軸方向にオフセットさせる機能を有する。
【0029】
表示部102は、オフセットがなされた仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する機能を有する。
【0030】
次に、本発明の実施形態におけるプログラム実行処理について説明する。図3は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するオブジェクト表示プログラムの処理例を示すフローチャートである。
【0031】
オフセット部101は、仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから軸方向にオフセットさせる(St11)。表示部102は、オフセットがなされた仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する(St12)。
【0032】
仮想オブジェクトとは、現実空間に重ねて表示する対象となる、仮想的なオブジェクトを意味する。仮想オブジェクトの一例としては、プレイヤーキャラクタ、敵キャラクタ、剣などのアイテム、戦車などの乗り物がある。仮想オブジェクトはこれらには限られない。
【0033】
視点とは、仮想カメラの位置や、VRゴーグル、ARグラス、スマートグラス、ARコンタクト等のユーザ端末が取得したユーザの視点などを意味する。
【0034】
所定の軸方向とは、典型的には所定の空間の上方向であってよい。例えばYアップの座標空間におけるY軸方向、Zアップの座標空間におけるZ軸方向などが、所定の軸方向となる。ただし、上方向以外の方向を、所定の軸方向としてもよい。
【0035】
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標とは、仮想オブジェクトの所定の位置を所定の座標の値(例えば原点であるゼロ座標)であると仮定した場合の、視点についての座標を意味する。例えば仮想オブジェクトが人型のフィギュアである場合は、フィギュアの足元の座標を座標値0と仮定する。この場合の視点についての座標が、ここでいう仮想オブジェクトを基準とする視点についての座標に該当する。なお、オブジェクトの所定の位置は、システムの設計者等が適宜決定してよい。
【0036】
現実空間のオブジェクトとは、例えば机、椅子、床などの現実空間の物体を意味する。
【0037】
軸方向にオフセットさせるとは、表示位置を軸方向にずらす事を言う。
【0038】
[オフセットの具体例]
図4は、表示装置による表示例を示す図である。本例では、ユーザ端末、兼、表示装置としてスマートフォンを用いている。ユーザ端末が内蔵カメラで撮像した撮像画像に基づいて、オブジェクト表示システム100は現実空間のオブジェクトとして棚とマグカップとを検出する。オブジェクト表示システム100は、棚の水平面を検出面PLとして認識し、検出面PL上に仮想オブジェクトOBJをAR表示する。仮想オブジェクトのAR表示とは、仮想オブジェクトを現実空間に重ねて表示することを言う。
【0039】
本例では、仮想オブジェクトOBJはフィギュアである。オクルージョン機能を用いると、フィギュアの足元にチラツキが発生することがある。なぜなら、フィギュアの足は、現実空間のオブジェクトにおける検出面PLに接地しているため、フィギュアの足と検出面PLのうちどちらが手前側であるかが頻繁に切り替わるからである。
【0040】
図5は、オフセット部によるオフセット処理を例示する概念図である。
【0041】
オブジェクト表示システム100は、現実空間のオブジェクトを検出し、、現実空間のオブジェクトの検出面上に仮想オブジェクトOBJをAR表示させる。
【0042】
図5における参照符号Vは、仮想カメラなどの視点を意味する。視点の位置として、P1とP2とを例示した。
【0043】
図5はYアップの座標空間を例示している。このとき、座標C1およびC2は、仮想オブジェクトOBJの足元、すなわち検出面PLに接する部分を基準とする、視点VについてのY軸方向の座標である。
【0044】
本開示のオブジェクト表示システム100では、オフセット部101が、仮想オブジェクトOBJを基準とする、視点についての所定の軸方向(図5ではY軸方向)の座標に応じて、仮想オブジェクトOBJを現実空間のオブジェクトから軸方向にオフセットさせる。
【0045】
例えば、視点VがP1の位置にある場合には、仮想オブジェクトOBJを上から見下ろすことになるため、オクルージョン機能に由来するチラツキが発生しやすい。このチラツキを抑止するために、オフセット部101は、仮想オブジェクトOBJを軸方向にオフセットさせる。言い換えると、オフセット部101は、仮想オブジェクトOBJを検出面PLから少しだけ浮かせる。オフセット量は例えば、現実空間での長さに換算して1.5cm程度であってよい。ただし、オフセット量は1.5cm以外の値でもよく、環境に応じて適宜設定すればよい。
【0046】
視点VがP2の位置にある場合には、仮想オブジェクトOBJを横から見ることになるため、オクルージョン機能に由来するチラツキはほぼ発生しない。そのため、オフセット部101は、仮想オブジェクトOBJを軸方向にオフセットさせない。言い換えると、オフセット部101は、仮想オブジェクトOBJを検出面PLから浮かせないように接地させる。なお、内部処理としては、オフセット量=0としてオフセット処理を行ってもよい。
【0047】
[オフセット量についての処理例]
オフセット量については、0か所定の値かの2値として処理してもよい。オフセット量を2値よりも多くの値を取るように処理してもよい。
【0048】
オフセット部101は例えば、視点についての所定の軸方向の座標の絶対値が小さいほどオフセット量を小さくしてもよい。つまり、所定の軸方向が上方向である場合、仮想オブジェクトOBJをより上から見下ろす位置に視点が移動する程、オフセット量を大きくし、仮想オブジェクトOBJをより横から見る位置に視点が移動する程、オフセット量を小さくしてよい。より特定的には、オフセット部101は、視点についての所定の軸方向の座標の絶対値が所定の値より小さい場合、オフセット量をゼロにしてよい。これにより、オブジェクトOBJが検出面PLから浮いて見えないようにすることができる。
【0049】
オフセット部101は例えば、座標の値がb以上であればオフセット量=Y1、座標の値がa以上b未満であればオフセット量=Y2、軸座標の値がa未満であればオフセット量=0、といったように、1以上の閾値に基づいて段階的にオフセット量を設定してもよい。
【0050】
また、オフセット部101は、座標の値に基づく値を入力とし、オフセット量を導出可能な値を出力とする関数によってオフセット量を設定してもよい。
【0051】
なお、オフセット量には、上限値などを設けてもよい。
【0052】
実施形態の一側面として、オクルージョン機能に由来するチラツキを、簡易な方法で抑制することができる。
【0053】
実施形態の一側面として、チラツキを防止しつつ、仮想オブジェクトが現実空間のオブジェクトの検出面から浮いて見えないように表示することができる。
【0054】
実施形態の一側面として、仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトの上に配置する場合に、オクルージョン機能に由来するチラツキを、簡易な方法で抑制することができる。
【0055】
以上に説明したように、本願の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。なお、夫々の実施形態による効果は、非限定的な効果または効果の一例である。
【0056】
上述した各実施形態では、ユーザ端末20およびサーバ10は、自己が備える記憶装置に記憶されている各種制御プログラム(例えば、オブジェクト表示プログラム)に従って、上述した各種の処理を実行する。また、ユーザ端末20やサーバ10に限られない他のコンピュータが、自己が備える記憶装置に記憶されている各種制御プログラム(例えば、オブジェクト表示プログラム)に従って、上述した各種の処理を実行してもよい。
【0057】
また、オブジェクト表示システム100の構成は、上述した各実施形態の例として説明した構成に限定されない。例えばユーザ端末が実行する処理として説明した処理の一部または全部をサーバが実行する構成としてもよいし、サーバが実行する処理として説明した処理の一部または全部をユーザ端末が実行する構成としてもよい。また、サーバが備える記憶部(記憶装置)の一部または全部をユーザ端末が備える構成としてもよい。すなわち、オブジェクト表示システム100における、ユーザ端末とサーバのどちらか一方が備える機能の一部または全部を、他の一方が備える構成とされていてもよい。
【0058】
また、プログラムが、上述した各実施形態の例として説明した機能の一部または全部を、通信ネットワークを含まない装置単体に実現させる構成としてもよい。
【0059】
[付記]
上述した実施形態の説明は、少なくとも下記発明を、当該発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように記載した。
[1]
コンピュータに、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット機能と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示機能と、
を実現させる、オブジェクト表示プログラム。
[2]
前記オフセット機能では、前記座標の絶対値が小さいほどオフセット量が小さい、
[1]に記載のオブジェクト表示プログラム。
[3]
前記オフセット機能では、前記絶対値が所定の値より小さい場合、オフセット量をゼロにする、
[2]に記載のオブジェクト表示プログラム。
[4]
前記所定の軸方向は、所定の空間の上方向である、
[1]から[3]のうちいずれか一項に記載のオブジェクト表示プログラム。
[5]
少なくともユーザ端末を備えたオブジェクト表示システムであって、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット手段と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示手段と、を含む、
オブジェクト表示システム。
[6]
コンピュータによるオブジェクト表示方法であって、
仮想オブジェクトを基準とする、視点についての所定の軸方向の座標に応じて、前記仮想オブジェクトを現実空間のオブジェクトから前記軸方向にオフセットさせる、オフセット処理と、
前記オフセットがなされた前記仮想オブジェクトを、現実空間に重ねて表示する表示処理と、を含む、
オブジェクト表示方法。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の実施形態の一つによれば、オクルージョン機能に由来するチラツキを、簡易な方法で抑制できるオブジェクト表示プログラムおよびオブジェクト表示システムとして有用である。
【符号の説明】
【0061】
10、10A サーバ
11 プロセッサ
12 メモリ
13 記憶装置
20、20A、20B ユーザ端末
21 プロセッサ
22 メモリ
23 記憶装置
30 通信ネットワーク
100 オブジェクト表示システム
101 オフセット部
102 表示部

図1
図2
図3
図4
図5